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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-08
(45)【発行日】2025-07-16
(54)【発明の名称】吸着剤充填カラム及び液精製装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 15/22 20060101AFI20250709BHJP
   C02F 1/42 20230101ALI20250709BHJP
   C02F 1/28 20230101ALI20250709BHJP
   B01D 36/00 20060101ALI20250709BHJP
【FI】
B01D15/22
C02F1/42 A
C02F1/28 E
C02F1/28 D
C02F1/28 F
B01D36/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021155794
(22)【出願日】2021-09-24
(65)【公開番号】P2023046939
(43)【公開日】2023-04-05
【審査請求日】2024-05-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 智子
【審査官】炭 喜達
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-195763(JP,A)
【文献】国際公開第2020/226911(WO,A1)
【文献】特表2019-520197(JP,A)
【文献】国際公開第2018/110177(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 15/00-15/42
C02F 1/28
C02F 1/42
B01D 24/00-35/05
B01D 35/10-37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内部に多孔質の吸着材を充填したカラムであって、
容器はフッ素樹脂で形成されており、容器上流側及び下流側に通液孔を有し、導電性物質は、該容器外表面の少なくとも一部に設けられており、該導電性物質の少なくとも一部が該容器の上端から下端まで繋がっている、吸着剤充填カラム。
【請求項2】
前記フッ素樹脂がパーフルオロアルコキシエチレン重合体またはポリテトラフルオロエチレンである請求項1記載の吸着材充填カラム。
【請求項3】
前記導電性物質が、カーボンブラック、カーボン繊維、グラファイト、コークスおよび金属微粉末からなる群より選ばれる1種又は2種以上である請求項1又は2記載の吸着材充填カラム。
【請求項4】
前記吸着材が、イオン交換体、ゼオライト、活性炭、および合成吸着剤からなる群より選ばれる1種又は2種以上である請求項1から3のいずれか1項に記載の吸着材充填カラム。
【請求項5】
前記容器の上流側及び下流側に、他の部材と接続するための継手を有し、該継手は、前記吸着材の流出防止部材を有している請求項1~4のいずれか1項に記載の吸着材充填カラム。
【請求項6】
カートリッジ形態である請求項1から5のいずれか1項に記載の吸着材充填カラム。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか1項に記載の吸着材充填カラムを備える液精製装置。
【請求項8】
微粒子補足用フィルターを有する請求項7記載の液精製装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に半導体製造プロセスに好適な吸着剤充填カラム及び液精製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機溶媒中の金属不純物濃度をpptレベルへ低減するためには、イオン交換樹脂やイオン吸着膜が金属不純物の低減に有効であり、非イオン性の微粒子状不純物を除去するための微粒子除去フィルターと組み合わせて精製することが特に有効である(特許文献1)。
【0003】
一方、PFA配管やチューブへ非導電性物質(有機溶媒や超純水など)やガスを高流速で流すと、静電気が内部に蓄積する。
特に、半導体製造プロセスにおいては、流体回路内の静電気の蓄積、及び回路への静電気放電は避けなければならない。しかしながら、半導体グレードの有機溶媒や超純水は導電性物質をほとんど含まないため、流体回路内に静電気が蓄積しやすいことが課題である。
例えば、特許文献2には、微粒子除去フィルター内部に導電性フルオロポリマー糸(カーボンとPFAの混合物)を含有させることで、導電性を付与した技術が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2020/217911号公報
【文献】特表2019-520197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の如く、半導体製造プロセスにおいて、流体回路内の静電気の蓄積、及び回路への静電気放電の回避は重要な課題である。
微粒子除去フィルターには導電性の物が存在するが、イオン交換樹脂による精製において導電性のカラムやカートリッジは存在しない。
導電性のカラムやカートリッジの構成の一例として、SUS製容器の内面にフッ素樹脂を塗布したカラムが考えられるが、重量の面で使い勝手が悪く好ましくない。また半導体製造プロセスでは、クリーン度の面から、フッ素樹脂製のカラムが主に用いられているため、イオン交換樹脂を充填する容器もフッ素樹脂が最も好ましい。
したがって、本発明の目的は、クリーン度が高く、静電気を蓄積せず、特に半導体製造プロセスに好適な吸着剤充填カラム及び液精製装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、下記[1]ないし[8]により達成される。
[1] 容器内部に多孔質の吸着材を充填したカラムであって、
容器はフッ素樹脂で形成されており、容器上流側及び下流側に通液孔を有し、導電性物質は、該容器外表面の少なくとも一部に設けられており、該導電性物質の少なくとも一部が該容器の上端から下端まで繋がっている、吸着剤充填カラム。
[2] 前記フッ素樹脂がパーフルオロアルコキシエチレン重合体またはポリテトラフルオロエチレンである前記[1]記載の吸着材充填カラム。
[3] 前記導電性物質が、カーボンブラック、カーボン繊維、グラファイト、コークスおよび金属微粉末からなる群より選ばれる1種又は2種以上である前記[1]又は[2]記載の吸着材充填カラム。
[4] 前記吸着材が、イオン交換体、ゼオライト、活性炭、および合成吸着剤からなる群より選ばれる1種又は2種以上である前記[1]から[3]のいずれか1つに記載の吸着材充填カラム。
[5] 前記容器の上流側及び下流側に、他の部材と接続するための継手を有し、該継手は、前記吸着材の流出防止部材を有している前記[1]~[4]のいずれか1つに記載の吸着材充填カラム。
[6] カートリッジ形態である前記[1]から[5]のいずれか1つに記載の吸着材充填カラム。
[7] 前記[1]から[6]のいずれか1つに記載の吸着材充填カラムを備える液精製装置。
[8] 微粒子補足用フィルターを有する前記[7]記載の液精製装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、クリーン度が高く、静電気を蓄積せず、特に半導体製造プロセスに好適な吸着剤充填カラム及び液精製装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る吸着材充填カラムの模式図を示す。
図2図2は、図1に記載の吸着材充填カラムにおいて、容器と継手との接合部分を分解して示した模式図である。
図3図3は、図1に記載の吸着材充填カラムにおいて、継手を分解して示した模式図である。
図4】(a)は、流出防止部材に関し、図3とは別の実施形態の継手を分解して示した模式図であり、(b)は(a)に記載の継手を構成する流出防止部分(目板)を正面から見た図である。
図5図5は、継手に関し、図1とは異なる形態を有する本発明の他の実施形態に係る吸着材充填カラムにおいて、容器と継手との接合部分を分解して示した模式図である。
図6図6は、導電性物質に関し、図1とは異なる形態を有する本発明の他の実施形態に係る吸着材充填カラムの模式図を示す。
図7図7は、導電性物質に関し、図1とは異なる形態を有する本発明の他の実施形態に係る吸着材充填カラムの模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の吸着材充填カラムは、必要に応じ、微粒子補足用フィルターと組み合わせて、非導電性物質(有機溶媒や超純水など)やガスの精製、特に液精製装置などに取り付けて、純水や超純水、その純水を得るための前段階の処理水を得るために好適に用いることができる。液精製装置などに取り付けられた吸着材充填カラムは、カラム内に精製対象の液を通すことによって、カラム内の吸着剤に不純物を吸着させて、液を精製することができる。なお、本発明に関して、「純水」は、抵抗率(25℃)が一般に0.1MΩ・cm以上の水を指し、「超純水」は、抵抗率が15MΩ・cm超もしくは18MΩ・cm超の水を差す。
【0010】
吸着材充填カラムを備えた液精製装置の精製対象の液(被処理水)は、任意であり、水又は水溶液であってもよいし、例えば、IPA(イソプロピルアルコール)、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)、PGEE(プロピレングリコールモノエチルエーテル)等の有機溶媒(非水液)であってもよい。精製対象の液は、水又は前記有機溶媒の混合物、水又は溶媒にポリマー等を溶解した溶液、或いは、酸又はアルカリ水溶液であってもよい。或いは、液精製装置は、例えば、家庭において浄水を得るための家庭用浄水器等として用いることができる。
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)を、図面を参照して説明する。ただし、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る吸着材充填カラム1の模式図であり、図2は、図1に記載の吸着材充填カラムにおいて、容器と継手との接合部分を分解して示した模式図であり、図3は、図1に記載の吸着材充填カラムにおいて、継手を分解して示した模式図である。
図1に示すように、吸着材充填カラム1は、多孔質の吸着材2と、当該吸着材2を充填したフッ素樹脂製の容器3とを備えている。
容器3の上流側及び下流側には、精製対象の液が通過する通液孔7、8が設けられており、例えば、図1の矢印に示される方向、即ち、精製対象の液がカラム容器3の上流側から通液孔7を通して供給され、カラム容器3内で精製されて、下流側の通液孔8から液が抜けていくダウンフロー形式であってもよいし、図1の矢印とは逆の方向、即ち、精製対象の液がカラム容器3の下流側の通液孔8から供給されて、カラム容器3内で精製されて、上流側の通液孔7を通って精製対象の液が抜けていくアップフロー形式であってもよい。
カラム容器3と他の部材と接合するための継手5との接合は、特に限定されないが、例えば、図1及び2に示されるように、カラム容器3の上流側及び下流側に、それぞれ、スリーブ9を挿入し、継手5及びナット6により、カラム容器3の上流側及び下流側と継手5との接合が可能となる。このような継手としては、図3に示されるように、2つのねじ部52及び53、及びその間に吸着材の流出防止部材51が挟持されている態様が挙げられる。吸着材の流出防止部材51は、目板511とメッシュ512から形成され、そのことにより、吸着剤2の流出が防止される。ねじ部52と53のサイズは、必要に応じ適宜調整されるものであり、同一のサイズのねじでも異なるサイズのねじでも良い。
吸着材の流出防止部材51を形成する目板511は、メッシュ512を押さえて固定するために設置されており、精製対象液の流れを阻害しないサイズの孔が形成されている。それに対してメッシュ512は、カラムに充填された吸着剤の流出防止のために設置されており、メッシュの目開きは30から350μmが好ましい。またカラムに充填される吸着剤の粒子径によっては、図4に示されるようにメッシュを設けず、スリット状や格子状の隙間が設けられた目板511のみを吸着剤の流出防止に使用しても良い。該スリットおよび格子の目開きは、吸着剤の平均粒子径の1/2以下が好ましい。
カラム容器3と継手5との接合は、図5に示されるように、カラム容器の上流及び下流側の先端部31をフレア加工(ヒートガンで先端部31を先端部31が塑性変形する程度の温度で加熱する)し、カラム容器3の先端部31が塑性変形したタイミングで、先端部31の内側に、一端に吸着材の流出防止部材51が設けられた継手5の流出防止部材51が入るように押圧し、カラム容器3を、継手5と接合することもできる。カラム容器3の先端31はフレア加工により広がっており、ナットが脱落することが防止される。なお、この場合、継手5の流出防止部材51を構成する目板511とメッシュ512はいずれもフレア加工したカラム容器3の内側に入る程度のサイズである必要がある。また継手5の流出防止部材51とは反対側には、他の部材と接続するためのねじ部54が設けられていてもよい。このねじ部54は、継手5と一体的に構成される態様であっても、継手5と分離可能な態様であってもよく特に制限されない。
カラム容器3は、導電性物質4を有する。カラム容器3に設けられた導電性物質4により、フッ素樹脂で形成されたカラム容器3内を非導電性物質(有機溶媒や超純水など)やガスを高流速で流すことにより発生する静電気の蓄積が防止される。
導電性物質4は、カラム容器3の外表面上の少なくとも一部又は全部に設けられていてもよく、またカラム容器3を形成するフッ素樹脂中に含まれていてもよく、またその両方でもよい。ただし、導電性物質はカラム容器3中を流れる精製対象とは接触しない必要がある。
導電性物質4がカラム容器3の外表面の少なくとも一部に設けられる態様としては、図に示されるように、導電性物質4がストライプ状に設けられる態様であってもよく、また図に示されるように、導電性物質4が梯子状に設けられる態様であってもよく、導電性物質の態様は特に制限されない。
【0013】
多孔質の吸着材2は、イオン交換体、ゼオライト、活性炭、および合成吸着剤からなる群より選ばれる一種であってもよく、或いは、イオン交換体、ゼオライト、活性炭、および合成吸着剤からなる群から任意に選択される二種以上の組み合わせで構成されてもよい。
【0014】
イオン交換体は、例えば、粒状のカチオン交換樹脂、粒状のキレート樹脂、粒状のアニオン交換樹脂、粒状のカチオン交換樹脂と粒状のキレート樹脂と粒状のアニオン交換樹脂の組み合わせ等の粒状のイオン交換樹脂、モノリス状有機多孔質カチオン交換体、モノリス状有機多孔質キレート交換体、モノリス状有機多孔質アニオン交換体、モノリス状有機多孔質カチオン交換体とモノリス状有機多孔質キレート交換体とモノリス状有機多孔質アニオン交換体の組み合わせ等のモノリス状有機多孔質イオン交換体、又は粒状のイオン交換樹脂とモノリス状有機多孔質イオン交換体の組み合わせである。イオン交換体が、粒状のカチオン交換樹脂、粒状のキレート交換樹脂、粒状のアニオン交換樹脂の組み合わせの場合、粒状のカチオン交換樹脂と粒状のキレート交換樹脂と粒状のアニオン交換樹脂が均一に混合されている混床として用いる場合と、イオン交換体の充填領域の上流側に、粒状のカチオン交換樹脂及び/又は粒状のキレート交換樹脂が充填され、且つ、イオン交換体の充填領域の下流側に、粒状のアニオン交換樹脂が充填されているか、又はイオン交換体の充填領域の上流側に、粒状のアニオン交換樹脂が充填され、且つ、イオン交換体の充填領域の下流側に、粒状のカチオン交換樹脂及び/又は粒状のキレート交換樹脂が充填されている複床として用いる場合がある。また、イオン交換体が、モノリス状有機多孔質カチオン交換体とモノリス状有機多孔質アニオン交換体の組み合わせのときは、イオン交換体の充填領域の上流側に、モノリス状有機多孔質カチオン及び/又はモノリス状有機多孔質キレート交換体が充填され、且つ、イオン交換体の充填領域の下流側に、モノリス状有機多孔質アニオン交換体が充填されているか、又はイオン交換体の充填領域の上流側に、モノリス状有機多孔質アニオン交換体が充填され、且つ、イオン交換体の充填領域の下流側に、モノリス状有機多孔質カチオン交換体及び/又はモノリス状有機多孔質キレート交換体が充填されている複床として用いる。イオン交換体が、粒状のイオン交換樹脂とモノリス状有機多孔質イオン交換体の組み合わせの場合、イオン交換体の充填領域の上流側に、モノリス状有機多孔質イオン交換体が充填され、且つ、イオン交換体の充填領域の下流側に、粒状のイオン交換樹脂が充填される。
【0015】
粒状のカチオン交換樹脂は、強酸性カチオン交換樹脂であっても、弱酸性カチオン交換樹脂であっても、キレート樹脂でもそれらの併用であってもよい。強酸性カチオン交換樹脂としては、オルライトDS-1、オルライトDS-4、XSC-1415HG等が挙げられる。また、弱酸性カチオン交換樹脂としては、アンバーライト(登録商標)IRC76等が挙げられる。キレート樹脂としては、オルライトDS-21、DS-22等が挙げられる。被処理液中のカチオン性の不純物を低減するためには、カチオン交換樹脂はH形で使用することが望ましい。
【0016】
粒状のアニオン交換樹脂は、強塩基性アニオン交換樹脂であっても、弱塩基性アニオン交換樹脂であっても、それらの併用であってもよい。強塩基性アニオン交換樹脂としては、オルライトDS-2、オルライトDS-5、XSA-2415HG等が挙げられる。また、弱塩基性アニオン交換樹脂としては、オルライトDS-6、グルカミン基を官能基に持つホウ素選択性陰イオン交換樹脂としては、アンバーライト(登録商標)IRA743が挙げられる。被処理液中のアニオン性の不純物を低減するためには、アニオン交換樹脂はOH形で使用することが望ましい。ただし炭酸が不純物にならない場合は、炭酸形、重炭酸形で使用することができる。
【0017】
また、イオン交換体は、これらの混床のイオン交換体であってもよい。粒状の強酸性カチオン交換樹脂(陽イオン交換樹脂)と粒状の強塩基性アニオン交換樹脂(陰イオン交換樹脂)との混合品である混床イオン交換樹脂としては、オルライトDS-3、オルライトDS-7、XSM-N411HG等が挙げられる。
【0018】
粒状のイオン交換体の平均粒径は、特に制限されないが、好ましくは200~1000μm、特に好ましくは300~800μmである。なお、イオン交換体の平均粒径は、レーザ回折式粒度分布測定装置により測定される値である。
【0019】
モノリス状有機多孔質イオン交換体としては、モノリス状の有機多孔質体にイオン交換基が導入されているものであれば、特に制限されないが、例えば、以下に示すモノリス状有機多孔質イオン交換体が挙げられる。
【0020】
モノリス状有機多孔質イオン交換体としては、例えば、連続骨格相と連続空孔相からなり、連続骨格の厚みは1~100μm、連続空孔の平均直径は1~1000μm、全細孔容積は0.5~50mL/gであり、カチオン交換基又はアニオン交換基が導入されており、乾燥状態での重量当たりのイオン交換容量が1~6mg当量/gであり、イオン交換基が有機多孔質イオン交換体中に均一に分布しているモノリス状有機多孔質イオン交換体(以下、第一の形態のモノリス状有機多孔質イオン交換体とも記載する。)が挙げられる。
【0021】
また、第一の形態のモノリス状有機多孔質イオン交換体としては、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が平均直径30~300μmの開口となる連続マクロポア構造体であり、全細孔容積が0.5~10ml/g、カチオン交換基又はアニオン交換基が導入されており、乾燥状態での重量当りのイオン交換容量が1~6mg当量/gであり、イオン交換基が有機多孔質イオン交換体中に均一に分布しており、且つ、連続マクロポア構造体(乾燥体)の切断面のSEM画像において、断面に表れる骨格部面積が、画像領域中25~50%であるモノリス状有機多孔質イオン交換体が挙げられる。
【0022】
また、第一の形態のモノリス状有機多孔質イオン交換体としては、前記モノリス状有機多孔質イオン交換体が、イオン交換基が導入された全構成単位中、架橋構造単位を0.1~5.0モル%含有する芳香族ビニルポリマーからなる平均太さが1~60μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に平均直径が10~200μmの三次元的に連続した空孔とからなる共連続構造体であり、全細孔容積が0.5~10mL/gであり、カチオン交換基又はアニオン交換基が導入されており、乾燥状態での重量当りのイオン交換容量が1~6mg当量/gであり、イオン交換基が有機多孔質イオン交換体中に均一に分布しているモノリス状有機多孔質イオン交換体が挙げられる。
【0023】
粒子がイオン交換体で構成される場合の被処理液(液)は、例えば、IPA(イソプロピルアルコール)、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)、PGEE(プロピレングリコールモノエチルエーテル)、NMP(N-メチル-2-ピロリドン)である。酸性からアルカリ性を示す水溶液を被処理液(液)としても良い。被処理液(液)中で除去される不純物は、例えば、Li、Na、Mg、A1、K、Ca、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Cd、Pb等の金属イオン、Cl、SO、NO、PO、CO、HCO等のアニオン、ギ酸、酢酸、マレイン酸、プロピオン酸等の有機酸、プラスないしマイナスの荷電を持つ中から高分子化合物である。
【0024】
ゼオライトとしては、例えば、結晶性ゼオライトから選ばれる一種以上を挙げることができる。
上記結晶性ゼオライトとしては、A型、Y型、X型、チャバサイト、フェリエライト、ZSM-5およびクリノプチロライト等から選ばれる一種以上の結晶性ゼオライトを挙げることができる。
【0025】
さらに、上記結晶性ゼオライトは、結晶性ゼオライトを構成するSi/Alモル比が1~5であるものが好ましい。Si/Alモル比が上記範囲内にあることにより、構造上安定であるとともに、適度なカチオン含有率を有し好適に被処理液(液)中の不純物を吸着除去することができる。
【0026】
上記結晶性ゼオライトは、カチオンがリチウムイオンやカルシウムイオン等で交換されたものであってもよいし、交換されていないものであってもよい。
【0027】
上記結晶性ゼオライトとしては、球状や円柱状のものが好ましく、直径が、0.5~5mmのものが好ましい。
結晶性ゼオライト直径が上記範囲内にあることにより、ハンドリング性を低下させることなく、被処理液(液)を好適に含侵することができる。
【0028】
活性炭は、商業的に入手可能な活性炭である。活性炭粒子の直径は、任意である。活性炭は、例えば0.7nm~数十μmの直径の微細孔を有し、被処理液(液)中の有機不純物(有機酸、色素、油など)を物理的に除去できる。また、活性炭中の炭素成分を用いて塩素を分解できる。活性炭としては、炭化フェノール樹脂が挙げられる。活性炭としては、合成吸着剤やイオン交換体を炭化したものを用いても良い。
【0029】
合成吸着剤としては、スチレン-ジビニルベンゼン系吸着剤、アクリル系吸着剤およびフェノール系吸着剤を挙げることができる。これらの吸着剤は、市販品を用いることもできる。市販品としては、特に限定されるものではないが、例えば、合成吸着剤XAD2000、XAD4、FPX66、XAD1180N、XAD7HP、XAD-2(いずれも商品名、オルガノ株式会社製)、AMBERLITE(登録商標、デュポン社製)、ダイヤイオン(登録商標)HP20、HP21、セパビーズ(登録商標)SP850、SP825L、SP700(いずれも商品名、三菱ケミカル株式会社製)、炭化フェノール樹脂(株式会社MET製)等が挙げられる。
【0030】
容器を形成するフッ素樹脂としては、パーフルオロアルコキシエチレン重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリトリフルオロクロロエチレン、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンとフルオロアルキルビニルエーテルとヘキサフルオロプロピレンとの三元共重合体等が挙げられる。これらの中でも耐熱性や耐薬品性等が特に優れる点でPFAまたはPTFEが特に好ましい。
【0031】
導電性物質としては、低ガス透過性の導電性物質であることが好ましく、特にガス中の不純物や揮発性物質、アンモニア、水分、弗酸などがチューブ内へ溶け込むことを防げることが好ましい。このような観点から、カーボンブラック、カーボン繊維、グラファイト、コークスおよび金属微粉末からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。金属微粉末としては、窒化硼素、銅、銀等が挙げられる。
【0032】
以上説明した本発明の吸着材充填カラムは、次に示す方法により施工することができる。
即ち、必要な長さの市販のPFA配管又はチューブ(導電性物質を含まない)を用意し、その内部に吸着剤を充填する。次に、PFA配管又はチューブの上流側及び下流側に適当な治具を用いてスリーブを挿入する。
スリーブ挿入後、導電性物質を含むチューブカバー(導電性チューブカバー)をPFA配管又はチューブの上から取り付ける。この導電性チューブカバーは、導電性フィルムを取り付けたり、導電性バンドを巻き付けたりすることに代替することもできる。あるいは、導電性物質を内部及び/又は外表面に有するPFA配管又はチューブを用いることにより、導電性チューブカバーの取り付け作業を省略することもできる。
なお、スリーブの挿入は、導電性チューブカバーの取り付け後に行ってもよい。
そして、図3又は図4で示されるような吸着材の流出防止部材51を有する継手のねじ部をナットにより締めることにより施工することができる。
また本発明の吸着材充填カラムは、カートリッジの形態で提供することもできる。
【0033】
以上の施工方法により得られた本発明の吸着材充填カラムは、特に半導体の製造工程において、フッ素樹脂を使用しているにもかかわらず、その内部に静電気を蓄積せず、またフッ素樹脂製であるためクリーン度が高く、取り扱い性にも優れる。
【符号の説明】
【0034】
1 吸着材充填カラム
2 吸着材
3 容器
31 容器の先端部
4 導電性物質
5 継手
6 ナット
7 スリーブ
8、9 通液孔
51 吸着剤の流出防止部材
52、53、54 ねじ部
511 目板
512 メッシュ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7