(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-08
(45)【発行日】2025-07-16
(54)【発明の名称】連携管理装置及び連携管理方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/06 20230101AFI20250709BHJP
G06N 99/00 20190101ALI20250709BHJP
B65G 61/00 20060101ALI20250709BHJP
【FI】
G06Q10/06
G06N99/00 180
B65G61/00 100
(21)【出願番号】P 2021168551
(22)【出願日】2021-10-14
【審査請求日】2024-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺本 やえみ
(72)【発明者】
【氏名】松葉 浩也
【審査官】野口 俊明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/149096(WO,A1)
【文献】特開2019-105973(JP,A)
【文献】特開2018-143046(JP,A)
【文献】国際公開第2017/094100(WO,A1)
【文献】特開2003-015704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G06N 99/00
B65G 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の個別システムを連携して1つの全体システムとして動作させる連携管理システムであって、
前記全体システムに関する評価指標である全体指標と、各個別システムに関する評価指標である個別指標又は前記個別指標を制御する各個別システムの動作パラメータと、の関係モデルを用いて、前記全体指標が向上する前記個別指標の条件又は前記動作パラメータを探索して決定する探索部と、
前記探索部によって決定された前記個別指標の条件又は前記動作パラメータを、各個別システムへ通知する通知部と、
前記全体指標と、前記個別指標又は前記動作パラメータとに基づいて、前記関係モデルを生成するモデル生成部
と
を有することを特徴とする連携管理システム。
【請求項2】
請求項
1に記載の連携管理システムにおいて、
前記全体指標を制御可能な前記個別指標又は前記動作パラメータを選定する選定部
をさらに有することを特徴とする連携管理システム。
【請求項3】
請求項
2に記載の連携管理システムにおいて、
前記選定部は、前記全体指標との相関が一定以上である前記個別指標又は前記動作パラメータを選定する
ことを特徴とする連携管理システム。
【請求項4】
複数の個別システムを連携して1つの全体システムとして動作させる連携管理システムであって、
前記全体システムに関する評価指標である全体指標と、各個別システムに関する評価指標である個別指標又は前記個別指標を制御する各個別システムの動作パラメータと、の関係モデルを用いて、前記全体指標が向上する前記個別指標の条件又は前記動作パラメータを探索して決定する探索部と、
前記探索部によって決定された前記個別指標の条件又は前記動作パラメータを、各個別システムへ通知する通知部と、
前記全体指標が向上する前記個別指標の条件又は前記動作パラメータを探索する探索問題に、前記関係モデルを適用する探索問題設定部と
を有し、
前記探索問題設定部は、前記関係モデルの定式化方法によって前記探索問題の特性を選定する
ことを特徴とする連携管理システム。
【請求項5】
複数の個別システムを連携して1つの全体システムとして動作させる連携管理システムであって、
前記全体システムに関する評価指標である全体指標と、各個別システムに関する評価指標である個別指標又は前記個別指標を制御する各個別システムの動作パラメータと、の関係モデルを用いて、前記全体指標が向上する前記個別指標の条件又は前記動作パラメータを探索して決定する探索部と、
前記探索部によって決定された前記個別指標の条件又は前記動作パラメータを、各個別システムへ通知する通知部と
を有し、
前記通知部は、各個別システムに通知した前記個別指標の条件又は前記動作パラメータの受入れ可否を各個別システムから受信し、受入れ否の場合は、前記個別指標の制約又は前記動作パラメータの制約を各個別システムから受信し、
前記探索部は、前記制約に基づいて、前記個別指標の条件又は前記動作パラメータの決定を再度実行する
ことを特徴とする連携管理システム。
【請求項6】
複数の個別システムを連携して1つの全体システムとして動作させる連携管理システムであって、
前記全体システムに関する評価指標である全体指標と、各個別システムに関する評価指標である個別指標又は前記個別指標を制御する各個別システムの動作パラメータと、の関係モデルを用いて、前記全体指標が向上する前記個別指標の条件又は前記動作パラメータを探索して決定する探索部と、
前記探索部によって決定された前記個別指標の条件又は前記動作パラメータを、各個別システムへ通知する通知部と
を有し、
前記全体指標は、複数であり、
前記探索部は、複数の前記全体指標が向上するように、前記個別指標の条件又は前記動作パラメータを決定する
ことを特徴とする連携管理システム。
【請求項7】
請求項
6に記載の連携管理システムにおいて、
前記探索部は、複数の前記全体指標のうちの第1の優先順位の前記全体指標について決定した前記個別指標の条件又は前記動作パラメータの範囲を、該第1の優先順位よりも低い第2の優先順位の前記全体指標について前記個別指標の条件又は前記動作パラメータを決定する際の探索範囲を限定する条件とする
ことを特徴とする連携管理システム。
【請求項8】
複数の個別システムを連携して1つの全体システムとして動作させる連携管理システムであって、
前記全体システムに関する評価指標である全体指標と、各個別システムに関する評価指標である個別指標又は前記個別指標を制御する各個別システムの動作パラメータと、の関係モデルを用いて、前記全体指標が向上する前記個別指標の条件又は前記動作パラメータを探索して決定する探索部と、
前記探索部によって決定された前記個別指標の条件又は前記動作パラメータを、各個別システムへ通知する通知部と
を有し、
前記探索部は、前記個別指標の組合せについて相反の有無を判定し、相反がある前記個別指標の組合せの該個別指標の条件又は該個別指標を制御する前記動作パラメータの決定を実行する際に、追加条件を設定する
ことを特徴とする連携管理システム。
【請求項9】
請求項
8に記載の連携管理システムにおいて、
前記追加条件は、前記個別指標の条件又は前記動作パラメータの上限もしくは下限である
ことを特徴とする連携管理システム。
【請求項10】
複数の個別システムを連携して1つの全体システムとして動作させる連携管理システムが実行する連携管理方法であって、
前記全体システムに関する評価指標である全体指標と、各個別システムに関する評価指標である個別指標又は前記個別指標を制御する各個別システムの動作パラメータと、の関係モデルを用いて、前記全体指標が向上する前記個別指標の条件又は前記動作パラメータを探索して決定し、
決定された前記個別指標の条件又は前記動作パラメータを、各個別システムに通知
し、
前記全体指標と、前記個別指標又は前記動作パラメータとに基づいて、前記関係モデルを生成する
各処理を有することを特徴とする連携管理方法。
【請求項11】
複数の個別システムを連携して1つの全体システムとして動作させる連携管理システムが実行する連携管理方法であって、
前記全体システムに関する評価指標である全体指標と、各個別システムに関する評価指標である個別指標又は前記個別指標を制御する各個別システムの動作パラメータと、の関係モデルを用いて、前記全体指標が向上する前記個別指標の条件又は前記動作パラメータを探索して決定し、
決定された前記個別指標の条件又は前記動作パラメータを、各個別システムへ通知し、
前記全体指標が向上する前記個別指標の条件又は前記動作パラメータを探索する探索問題に、前記関係モデルを適用し、
前記関係モデルの定式化方法によって前記探索問題の特性を選定する
各処理を有することを特徴とする連携管理方法。
【請求項12】
複数の個別システムを連携して1つの全体システムとして動作させる連携管理システムが実行する連携管理方法であって、
前記全体システムに関する評価指標である全体指標と、各個別システムに関する評価指標である個別指標又は前記個別指標を制御する各個別システムの動作パラメータと、の関係モデルを用いて、前記全体指標が向上する前記個別指標の条件又は前記動作パラメータを探索して決定し、
決定された前記個別指標の条件又は前記動作パラメータを、各個別システムへ通知し、
各個別システムに通知した前記個別指標の条件又は前記動作パラメータの受入れ可否を各個別システムから受信し、受入れ否の場合は、前記個別指標の制約又は前記動作パラメータの制約を各個別システムから受信し、
前記制約に基づいて、前記個別指標の条件又は前記動作パラメータの決定を再度実行する
各処理を有することを特徴とする連携管理方法。
【請求項13】
複数の個別システムを連携して1つの全体システムとして動作させる連携管理システムが実行する連携管理方法であって、
前記全体システムに関する評価指標である複数の全体指標と、各個別システムに関する評価指標である個別指標又は前記個別指標を制御する各個別システムの動作パラメータと、の関係モデルを用いて、前記全体指標が向上する前記個別指標の条件又は前記動作パラメータを探索して決定し、
決定された前記個別指標の条件又は前記動作パラメータを、各個別システムへ通知する
各処理を有し、
前記全体指標は、複数であり、
複数の前記全体指標が向上するように、前記個別指標の条件又は前記動作パラメータを決定する
ことを特徴とする連携管理方法。
【請求項14】
複数の個別システムを連携して1つの全体システムとして動作させる連携管理システムが実行する連携管理方法であって、
前記全体システムに関する評価指標である全体指標と、各個別システムに関する評価指標である個別指標又は前記個別指標を制御する各個別システムの動作パラメータと、の関係モデルを用いて、前記全体指標が向上する前記個別指標の条件又は前記動作パラメータを探索して決定し、
決定された前記個別指標の条件又は前記動作パラメータを、各個別システムへ通知する
各処理を有し、
前記個別指標の組合せについて相反の有無を判定し、相反がある前記個別指標の組合せの該個別指標の条件又は該個別指標を制御する前記動作パラメータの決定を実行する際に、追加条件を設定する
ことを特徴とする連携管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連携管理装置及び連携管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の個別システムが連携して一つのシステムとして動作するシステムがある。このようなシステムは、システム・オブ・システムズ(System of Systems)と呼ばれ、連携するシステム全体(以下、全体システムという)で達成すべき指標を持ちつつ、個々の個別システムもそれぞれに独立して達成すべき指標を持つ。
【0003】
全体システムの一例として、サプライチェーン・マネジメント・システムがある。サプライチェーン・マネジメントに関して、例えばサプライチェーン全体における重要業績評価指標が最適となるように、サプライチェーンを構成する複数の企業の行動ルールを生成する情報処理装置が特許文献1に開示されている。具体的には、特許文献1には、「行動ルールパターン生成部は、サプライチェーンを構成する第1の企業と、第1の企業のサプライチェーンを構成する第2の企業の状態に応じた行動ロジックとを対応付けた行動ルール情報の複数のパターンを生成する。シミュレーション部は、複数のパターンの行動ルール情報のそれぞれにおいて、サプライチェーンの全体における重要業績評価指標を算出する。最適行動ルール選択部は、重要業績評価指標に基づいて、サプライチェーンに適用する行動ルール情報を選択する。」ことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の従来技術では、ユーザ入力された各企業の行動ルールの候補に基づいて予め生成された行動ルールの候補の複数パターンから、サプライチェーン全体の重要業績評価指標が最良となるパターンを選択しており、サプライチェーン全体の重要業績評価指標をより良化する行動ルールが他にある場合に、それらを選択することに関する記載はない。また、ここで選択される各企業の行動ルールのパターンは、ユーザ入力に基づく限られた候補から選択されているが、必ずしもサプライチェーン全体の重要業績評価指標を最良化させるものであるとは限らない。
【0006】
またサプライチェーンを構成する企業の数が多くなればなるほど、重要業績評価指標が最良となる行動ルールのパターンを選択する計算が複雑かつ膨大になるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、複数の個別システムが連携した全体システムにおいて、上位システムである全体システムの目標をより良化するように、下位システムである個別システムの目標又は動作を容易かつ適切に決定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するため、本発明の一態様では、複数の個別システムを連携して1つの全体システムとして動作させる連携管理システムであって、前記全体システムに関する評価指標である全体指標と、各個別システムに関する評価指標である個別指標又は前記個別指標を制御する各個別システムの動作パラメータと、の関係モデルを用いて、前記全体指標が向上する前記個別指標の条件又は前記動作パラメータを探索して決定する探索部と、前記探索部によって決定された前記個別指標の条件又は前記動作パラメータを、各個別システムへ通知する通知部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、複数の個別システムが連携した全体システムにおいて、上位システムである全体システムの目標をより良化するように、下位システムである個別システムの目標又は動作を容易かつ適切に決定できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】実施形態に係る複数システム統合運用システムの構成を示す図。
【
図3】実施形態に係る複数システム統合運用システムの構成を示す機能ブロック図。
【
図4】実施形態に係る関係モデル作成処理を示すフローチャート。
【
図5】個別KPI/動作パラメータ選定処理を示すフローチャート。
【
図6】KPI/動作パラメータ関係モデル生成処理を示すフローチャート。
【
図7】実施形態に係る個別KPI/動作パラメータ決定処理を示すフローチャート。
【
図9】個別KPI/動作パラメータ探索処理を示すフローチャート。
【
図10】個別KPI/動作パラメータ通知処理を示すフローチャート。
【
図11】連携管理システムに接続される端末装置の表示画面を示す図。
【
図12】実施形態の複数システム統合運用システムをサプライチェーン計画・運用システムへ適用した例を示す図。
【
図13】実施形態の複数システム統合運用システムを電力グリッド保守管理システムへ適用した例を示す図。
【
図14】実施形態の複数システム統合運用システムを電力グリッド保守管理システムへ適用した他の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、図面を含めて例示に過ぎず、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また実施形態の中で説明されている諸要素及びその組合せの全てが、発明の解決手段に必須であるとは限らない。また発明の構成に必須だが周知である構成については、図示及び説明を省略する場合がある。
【0012】
以下の説明において、「プログラム」を主語として処理を説明する場合がある。プログラムは、プロセッサによって実行されることで、定められた処理を、適宜に記憶部及び/又はインターフェース等を用いながら行うため、処理の主体が、プロセッサ(或いは、そのプロセッサを有するコントローラのようなデバイス)とされてもよい。すなわち「XXXプログラム」の処理の主体が「XXX部」とされてもよい。
【0013】
プログラムは、計算機のような装置にインストールされてもよいし、例えば、プログラム配布サーバ又は計算機が読み取り可能な(例えば非一時的な)記録媒体にあってもよい。また以下の説明において、2以上のプログラムが1つのプログラムとして実現されてもよいし、1つのプログラムが2以上のプログラムとして実現されてもよい。
【0014】
また「プロセッサ」は、1又は複数である。プロセッサは、典型的には、CPU(Central Processing Unit)のようなマイクロプロセッサであるが、GPU(Graphics Processing Unit)のような他種のプロセッサでもよい。またプロセッサは、シングルコアでもよいしマルチコアでもよい。また、プロセッサは、処理の一部又は全部を行うハードウェア回路(例えばFPGA(Field-Programmable Gate Array)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit))といった広義のプロセッサでもよい。
【0015】
また以下の説明において、種々の対象の識別情報として、識別番号が使用されるが、識別番号以外の種類の識別情報(例えば、英字や符号を含んだ識別子)が採用されてもよい。以下の説明において、“#Y”は番号Yを表し、例えば“XXX#Y”は、番号Yで識別されるXXXを表す。
【0016】
また以下の説明において、同種の要素を区別しないで説明する場合には、参照符号(または、参照符号のうちの共通符号)を使用し、同種の要素を区別して説明する場合は、要素の識別番号(または参照符号)を使用することがある。また各図に示す各要素の数は一例であって、図示に限られるものではない。
【0017】
また以下の説明において、「A/B」なる標記は、「A及びBのうちの一方又は両方」を意味する。
【0018】
(実施形態の概要)
図1は、実施形態の概要を説明するための図である。本実施形態に係る複数システム統合運用システムSは、連携管理システム1と、複数の個別システム2(個別システム#1(個別システム2-1)、個別システム#2(個別システム2-2)、・・・、個別システム#N(個別システム2-N))と、を有する。複数の個別システム2は、通信回線を介して接続された連携管理システム1によって一部の情報を共有する連携が管理される。
【0019】
複数システム統合運用システムSには、達成すべき目標を表す指標が定められている。また各々の個別システム2にも達成すべき目標を表す指標が定められている。本実施形態では、目標を表す指標はKPI(Key Performance Indicators)である。以下では、KPIは、例え売上、利益、品質、コスト等の一般的なKPIに加え、リソース制限、納期等の制約条件も含むとする。
【0020】
複数システム統合運用システムSが達成すべき全体KPI(kpi)と、各々の個別システム#nが達成すべき個別KPI(kpin_k)は、下記式(1)のように、kpiを目的変数、kpin_kを説明変数とする関数で表される相関関係がある。n=1,2,・・・,N、k=1,2,・・・は、個別システム#nのkpi#kを識別するインデックスである。
kpi=F(kpi1_k1(Θ1),kpi2_k2(Θ2),kpi3_k3(Θ3),…,kpiN_kN(ΘN))
・・・(1)
但し、kpin_kはΘnの関数である。
また、Θnは、個別システム#nの動作パラメータである。
【0021】
式(1)の関数Fは、例えばkpiと、kpin_kのデータの学習により生成された関係モデルを適用することができる。
【0022】
ここで個別システム#nの個別KPI(kpin_k)及び動作パラメータΘnは複数あるが、上位の複数システム統合運用システムSの全体KPI(kpi)に強く影響するもののみに限定する。
図1に示すように、個別システム#n(n=1~N)の個別KPIのうち全体KPIに強く影響する個別KPIが各々kpin_kn(n=1,2,3,・・・)である場合、kpin_knを基に式(1)が生成される。
【0023】
そして連携管理システム1は、現在の複数システム統合運用システムSの最新状態を基に、所定の制約条件下で、式(1)を目的関数又は評価関数とする探索問題を解くことで、全体KPI(kpi)を最良にする各個別システム#nの個別KPI(kpin_kn)/動作パラメータΘnを決定する。連携管理システム1は、決定した個別KPI(kpin_kn)/動作パラメータΘnを各個別システム#nへ通知する。
【0024】
個別システム#nは、連携管理システム1から通知された個別KPI(kpin_kn)/動作パラメータΘnを自システムへ設定し、個別KPI(kpin_kn)/動作パラメータΘnの条件内で個々の目的に沿って自律的に動作する。
【0025】
このように連携管理システム1は、全体KPIを最良化するように個別KPI/動作パラメータを決定し、個別システム#nに対して通知する。個別システム#nは、通知された個別KPIとなるように自律的に動作する、あるいは、通知された動作パラメータに従って動作することで、全体KPIを最良化させつつ個々の個別システム#nの目標も達成することができる。
【0026】
(複数システム統合運用システムSの構成)
次に
図2を参照して、複数システム統合運用システムSの構成を説明する。
【0027】
図2は、実施形態に係る複数システム統合運用システムSの構成を示す図である。複数システム統合運用システムSは、連携管理システム1と、複数の個別システム2-1,・・・,2-Nとを有する。連携管理システム1と複数の個別システム2は、通信回線を介して接続されている。
【0028】
連携管理システム1は、CPU11と、メモリ12と、通信装置13と、プログラム記憶装置14と、データ記憶装置18と、を有する。CPU11は、プログラム記憶装置14から後述のプログラムを読出して、メモリ12及び通信装置13と協働して各処理を実行する。通信装置13は、連携管理システム1が個別システム2とデータ送受信を行うためのインターフェースである。
【0029】
データ記憶装置18は、関係モデルデータベース181と、個別システム設定・動作データベース182と、を含む。個別システム設定・動作データベース182は、各個別システム2から収集した各個別システム2の設定情報及び実稼働データを保存する。
【0030】
プログラム記憶装置14は、KPI関係モデル生成モジュール15と、個別システム動作パラメータ決定モジュール16と、データ入出力モジュール17と、を記憶している。
【0031】
KPI関係モデル生成モジュール15は、全体KPI算出プログラム151と、個別システムデータ収集プログラム152と、個別KPI/動作パラメータ選定プログラム153と、KPI/動作パラメータ関係モデル生成プログラム154と、を含む。
【0032】
全体KPI算出プログラム151は、上記式(1)に基づいて全体KPIを算出する。個別システムデータ収集プログラム152は、各個別システム2から各個別システム2に関する各種データを定期的に収集する。各個別システム2に関する各種データは、本実施形態の連携管理システム1の各処理で用いられるデータを含む。
【0033】
個別KPI/動作パラメータ選定プログラム153は、各個別システム2の個別KPIを制御可能な動作パラメータを選定する。個別KPI/動作パラメータ選定プログラム153は、例えば外部(個々の個別システム2等)から入力や通知を受けて、各個別システム2の個別KPIを制御可能な動作パラメータを選定してもよい。または個別KPI/動作パラメータ選定プログラム153は、連携管理システム1内に保持する個別システム2の設定情報から、各個別システム2の個別KPIを制御可能な動作パラメータを選定してもよい。
【0034】
さらに個別KPI/動作パラメータ選定プログラム153は、個別システム2毎の個別KPI/動作パラメータから、全体KPIに対する影響が強い個別KPI/動作パラメータをそれぞれ選定する。例えば全体KPIとの相関係数が最大の個別KPI/動作パラメータを個別システム2毎に1つ選定したり、相関係数が一定以上の個別KPI/動作パラメータを個別システム2毎に複数選定したりしてもよい。
【0035】
個別KPI/動作パラメータ選定プログラム153によって選定された、各個別システム2の個別KPIを制御可能な動作パラメータ、かつ、全体KPIに対する影響が強い個別KPI/動作パラメータを「対象個別KPI/動作パラメータ」と呼ぶ。
【0036】
KPI/動作パラメータ関係モデル生成プログラム154は、全体KPIと、個別システムデータ収集プログラム152により収集された個別システム2毎の個別KPI/動作パラメータと、の各データの関係を学習し、関係モデルを生成する。KPI/動作パラメータ関係モデル生成プログラム154は、生成した関係モデルを、関係モデルデータベース181へ格納する。
【0037】
個別システム動作パラメータ決定モジュール16は、探索問題設定プログラム161と、個別KPI/動作パラメータ探索プログラム162と、個別システム状態取得プログラム163と、個別KPI/動作パラメータ通知プログラム164と、を記憶している。
【0038】
探索問題設定プログラム161は、関係モデルデータベース181から関係モデルを読出し、全体KPIを最良にする個別システム2毎の個別KPI/動作パラメータを探索し決定するための探索問題を設定する。探索問題は、目的関数/評価関数を上記式(1)の全体KPI(kpi)とし、目的関数/評価関数を最良にする個別システム2毎の個別KPI(kpin_k)条件/動作パラメータΘnを探索する問題として設定される。個別KPI条件は、個別KPIの値、上限、下限、及び範囲を含む。
【0039】
個別KPI/動作パラメータ探索プログラム162は、探索問題設定プログラム161により設定された探索問題の解、すなわち制約条件下で全体KPIを最良にする個別システム2毎の個別KPI条件/動作パラメータを探索し決定する。
【0040】
個別システム状態取得プログラム163は、各個別システム2からそれぞれの最新のシステム状態を取得する。最新のシステム状態は、探索問題設定プログラム161によって探索問題が設定される際に、探索問題の入力値又は設定値となり得る情報を含む。
【0041】
個別KPI/動作パラメータ通知プログラム164は、個別KPI/動作パラメータ探索プログラム162により決定された個別システム2毎の個別KPI条件/動作パラメータを各個別システム2へ通知する。
【0042】
データ入出力モジュール17は、KPI関係モデル生成モジュール15及び個別システム動作パラメータ決定モジュール16が、個別システム2とデータ送受信するためのデータ入出力プログラムを含む。
【0043】
個別システム2(2-1,…,2-N)のそれぞれは、CPU21と、メモリ22と、通信装置23と、プログラム記憶装置24と、データ記憶装置28と、を有する。CPU21は、プログラム記憶装置24から後述のプログラムを読出して、メモリ22及び通信装置23と協働して各処理を実行する。通信装置23は、個別システム2が連携管理システム1とデータ送受信を行うためのインターフェースである。
【0044】
プログラム記憶装置24は、個別システム運用モジュール25と、パラメータ通知モジュール26と、を記憶している。
【0045】
個別システム運用モジュール25は、個別システム運用プログラム251と、個別KPI算出プログラム252と、を含む。
【0046】
個別システム運用プログラム251は、自システムの目的を達成するためのシステム動作を制御する。個別KPI算出プログラム252は、自システムの個別KPIを算出する。
【0047】
パラメータ通知モジュール26は、コントロール可能パラメータ通知プログラム261と、個別KPI受入可否通知プログラム262と、を含む。
【0048】
コントロール可能パラメータ通知プログラム261は、自システムの個別KPI/動作パラメータのうち、全体KPIを制御可能な個別KPI/動作パラメータを、連携管理システム1へ通知する。
【0049】
個別KPI受入可否通知プログラム262は、連携管理システム1から受信した全体KPIを最良とする個別KPI条件/動作パラメータを受入れた場合の自システムの個別KPIが自システムの目標を達成するか否かを判定する。
【0050】
そして個別KPI受入可否通知プログラム262は、個別KPIが自システムの目標を達成する場合、受信した個別KPI条件/動作パラメータを受入れ可である旨を連携管理システム1へ通知する。また個別KPI受入可否通知プログラム262は、個別KPIが自システムの目的を達成しない場合、受信した個別KPI条件/動作パラメータを受入れ不可である旨と共に、個別KPIが自システムの目的を達成するために必要な追加条件を連携管理システム1へ通知する。
【0051】
連携管理システム1の探索問題設定プログラム161は、各個別システム2から個別KPI条件/動作パラメータが受入れ不可である旨及び追加条件を個別システム2から通知された場合に、追加条件を探索問題へ追加設定する。そして個別KPI/動作パラメータ探索プログラム162は、追加条件が追加設定された探索問題の解の探索及び決定を再度実行する。
【0052】
図3は、実施形態に係る複数システム統合運用システムSの構成を示す機能ブロック図である。
【0053】
連携管理システム1は、
図3に示すように、KPI関係モデル生成処理部101と、個別KPI/動作パラメータ決定処理部102と、データ入出力処理部103と、を有する。また連携管理システム1は、表示画面を含む端末装置5が接続されている。
【0054】
KPI関係モデル生成処理部101は、CPU11(
図2)によるKPI関係モデル生成モジュール15の実行によって実現される。個別KPI/動作パラメータ決定処理部102は、CPU11による個別システム動作パラメータ決定モジュール16の実行によって実現される。
【0055】
またデータ入出力処理部103は、CPU11によるデータ入出力モジュール17の実行によって実現される。データ入出力処理部103は、KPI関係モデル生成処理部101及び個別KPI/動作パラメータ決定処理部102が個別システム2とデータ送受信を行うためのデータ入出力処理を行う。
【0056】
個別システム2(2-1,…,2-N)は、それぞれ個別システム運用処理部201と、パラメータ通知処理部202と、データ入出力処理部203と、を有する。
【0057】
個別システム運用処理部201は、CPU21(
図2)による個別システム運用モジュール25(
図2)の実行によって実現される。パラメータ通知処理部202は、CPU21によるパラメータ通知モジュール26(
図2)の実行によって実現される。
【0058】
データ入出力処理部203は、CPU21によるデータ入出力モジュール(不図示)の実行によって実現される。データ入出力処理部203は、個別システム運用処理部201及びパラメータ通知処理部202が連携管理システム1とデータ送受信を行うためのデータ入出力処理を行う。
【0059】
連携管理システム1のKPI関係モデル生成処理部101は、全体KPIと個別KPI/動作パラメータの関係モデルを生成し、関係モデルデータベース181へ格納する。個別KPI/動作パラメータ決定処理部102は、関係モデルデータベース181から読出した関係モデルに基づく探索問題の解として、全体KPIを最良化する個別KPI/動作パラメータを求め、各個別システム2へ通知する。
【0060】
各個別システム2のパラメータ通知処理部202は、連携管理システム1から通知された個別KPI/動作パラメータが自システムの目標を達成する場合に受入れ、自システムの目標を達成しない場合に追加条件と共に受入れ不可の旨を連携管理システム1へ通知する。
【0061】
連携管理システム1は、個別システム2から個別KPI/動作パラメータの受入れ不可の旨及び追加条件を通知されると、通知された追加条件を探索問題へ追加して解の探索を再度実行し、全体KPIを最良化する個別KPI/動作パラメータを求め、各個別システム2へ再度通知する。
【0062】
連携管理システム1は、探索問題の解の探索の実行の繰返しを、所定条件(所定時間、所定回数、個別システム2から個別KPI/動作パラメータの受入れ可の旨の通知されること等)が充足されるまで繰り返す。
【0063】
(連携管理システム1の関係モデル生成処理)
図4は、実施形態に係る連携管理システム1の関係モデル生成処理を示すフローチャートである。連携管理システム1のKPI関係モデル生成処理部101は、指定されたスケジュール又はユーザの実行指示タイミングで関係モデル生成処理を実行する。
【0064】
先ずステップS11では、個別KPI/動作パラメータ選定プログラム153は、個別KPI/動作パラメータ選定処理を実行する。個別KPI/動作パラメータ選定処理の詳細は、
図5を参照して後述する。
【0065】
次にステップS12では、KPI/動作パラメータ関係モデル生成プログラム154は、KPI/動作パラメータ関係モデル生成処理を実行する。KPI/動作パラメータ関係モデル生成処理の詳細は、
図6を参照して後述する。
【0066】
関係モデル生成処理では、全体KPI、個別KPI、これらをコントロールできる個別システム2の動作パラメータのデータを取得し、それらの関係をデータドリブンでモデル化する。また全体KPIの変動に影響する個別KPIのデータに限定してデータ収集する。また制御可能な動作パラメータは、個別システム2に問い合わせて取得することもできる。また関係モデルのベースについて、ユーザから与えられた関係グラフを使用してもよい。また全体KPIと個別KPIの直接的な関係のみではなく、間に中間変数が介在する関係としてモデル化してもよい。
【0067】
(個別KPI/動作パラメータ選定処理)
図5は、ステップS11(
図4)の個別KPI/動作パラメータ選定処理を示すフローチャートである。
【0068】
先ずステップS11aでは、個別KPI/動作パラメータ選定プログラム153は、全体KPIと、任意の個別システム2の個別KPI/動作パラメータと、のデータの組を取得する。動作パラメータは、各個別システム2の個別KPIを制御可能な動作パラメータに予め絞っておく。ここで全体KPIは、全体KPIの算出に用いられる任意の指標に代えてもよい。また取得するデータの組は、実稼働データであってもよいし、シミュレーションデータであってもよい。
【0069】
次にステップS11bでは、個別KPI/動作パラメータ選定プログラム153は、ステップS11aで取得したデータの組を基に、全体KPIと、任意の個別KPI/動作パラメータと、の関係性を表す数値、例えば相関係数を算出する。
【0070】
次にステップS11cでは、個別KPI/動作パラメータ選定プログラム153は、全体KPIと、ステップS11bで算出した関係性を表す数値が所定条件を充足する、例えば相関係数が一定以上の個別KPI/動作パラメータを選定する。
【0071】
次にステップS11dでは、個別KPI/動作パラメータ選定プログラム153は、ステップS11cで選定された個別KPI/動作パラメータを、全体KPIに対する影響度が一定以上である対象個別KPI/動作パラメータとしてリスト化して出力する。
【0072】
なお対象個別KPI/動作パラメータの選定は、個別KPI/動作パラメータ選定処理に依らず、外部からの入力によって指定されてもよい。この場合、個別KPI/動作パラメータ選定処理は省略される。
【0073】
(KPI/動作パラメータ関係モデル生成処理)
図6は、ステップS12(
図4)のKPI/動作パラメータ関係モデル生成処理を示すフローチャートである。
【0074】
先ずステップS12aでは、KPI/動作パラメータ関係モデル生成プログラム154は、全体KPIと、個別KPI/動作パラメータ選定処理(
図5)又は外部入力によって選定された対象個別KPI/動作パラメータと、のデータの組を取得する。ステップS11a(
図5)と同様に、全体KPIは、全体KPIの算出に用いられる任意の指標としてもよい。また取得するデータの組は、実稼働データであってもよいし、シミュレーションデータであってもよい。
【0075】
次にステップS12bでは、KPI/動作パラメータ関係モデル生成プログラム154は、ステップS12aで取得した全体KPIと、任意の個別システム2の個別KPI/動作パラメータと、のデータの組について生成する関係モデルのモデル形式を選定する。関係モデルのモデル形式には、線形モデルと非線形モデルがある。関係モデルを埋め込む探索問題が、線形計画問題であれば線形モデルが選択され、シミュレーションベース探索問題であれば線形モデル及び非線形モデルのうち精度が高くなる方が選択される。
【0076】
次にステップS12cでは、KPI/動作パラメータ関係モデル生成プログラム154は、ステップS12bで選定した関係モデルの形式で、全体KPIを目的変数とし、個別KPI/動作パラメータを説明変数とする関係モデルのパラメータ(係数)を機械学習する。なお関係モデルの説明変数には、個別KPI/動作パラメータ以外に、モデル精度を向上させるため、例えばシステム状態を表す数値を追加してもよい。
【0077】
次にステップS12dでは、KPI/動作パラメータ関係モデル生成プログラム154は、ステップS12cで学習した関係モデルデータ(モデル形式及びパラメータ)を出力する。
【0078】
(実施形態に係る個別KPI/動作パラメータ決定処理)
図7は、実施形態に係る個別KPI/動作パラメータ決定処理を示すフローチャートである。連携管理システム1の個別KPI/動作パラメータ決定処理部102は、指定されたスケジュール又はユーザの実行指示タイミングで個別KPI/動作パラメータ決定処理を実行する。個別KPI/動作パラメータ決定処理は、関係モデル生成処理(
図4)とは独立又は同期したタイミングで実行される。
【0079】
先ずステップS13では、探索問題設定プログラム161は、探索問題設定処理を実行する。探索問題設定処理の詳細は、
図8を参照して後述する。
【0080】
次にステップS14では、個別KPI/動作パラメータ探索プログラム162は、個別KPI/動作パラメータ探索処理を実行する。個別KPI/動作パラメータ探索処理の詳細は、
図9を参照して後述する。
【0081】
次にステップS15では、個別KPI/動作パラメータ通知プログラム164は、個別KPI/動作パラメータ通知処理を実行する。個別KPI/動作パラメータ通知処理の詳細は、
図10を参照して後述する。
【0082】
次にステップS16では、個別KPI/動作パラメータ通知プログラム164は、ステップS15で個別システム2から動作パラメータの受入れ可の旨を受信したか否かを判定する。個別KPI/動作パラメータ通知プログラム164は、受入れ可の旨を受信した場合(ステップS16YES)は個別KPI/動作パラメータ決定処理を終了し、受入れ否の旨を受信した場合(ステップS16NO)はステップS17へ処理を移す。
【0083】
ステップS17では、個別KPI/動作パラメータ通知プログラム164は、ステップS16で受入れ否であると判定された個別KPI/動作パラメータと共に受信した個別KPI/動作パラメータに関する追加条件を、ステップS13で設定した探索問題へ追加し、ステップS14へ処理を戻す。ステップS17から処理を移されたステップS14では、個別KPI/動作パラメータ探索プログラム162は、ステップS17で追加設定された追加条件を含んだ探索問題での個別KPI/動作パラメータの探索処理を再度実行する。
【0084】
個別KPI/動作パラメータ決定処理では、全体KPIと個別KPIの関係モデル、個別KPIと制御可能な動作パラメータの関係モデルを、線形計画問題の探索範囲の限定、制約定義、目的関数/報酬定義に反映させ、全体KPIを向上させる個別システムのパラメータを決定する。また全体KPIと個別KPIと制御可能な動作パラメータとの関係を、線形計画問題の制約に変換して導入する。また全体KPIと個別KPIと制御可能な動作パラメータの関係を、線形計画問題の目的関数算出式に導入する。また全体KPIと個別KPIと制御可能な動作パラメータの関係を、最適解探索に用いるシミュレータの計算モデルに変換して導入する。また全体KPIと個別KPIと制御可能な動作パラメータの関係を、強化学習の報酬算出式に導入してもよい。
【0085】
(探索問題設定処理)
図8は、ステップS13(
図7)の探索問題設定処理を示すフローチャートである。
【0086】
先ずステップS13aでは、探索問題設定プログラム161は、探索問題のタイプを設定する。探索問題のタイプは、KPI/動作パラメータ関係モデル生成処理(
図6)で生成された関係モデルの形式が「線形モデル」であれば「線形計画問題」又は「シミュレーションベース探索問題」が設定でき、関係モデルの形式が「非線形モデル」であれば「シミュレーションベース探索問題」が設定できる。「線形モデル」の場合、ステップS12b(
図6)と同様に、「線形計画問題」及び「シミュレーションベース探索問題」のうちモデル精度が高くなる方が問題タイプとして設定される。なおステップS13aで設定される問題タイプは、「線形計画問題」及び「シミュレーションベース探索問題」を例示しているが、これに限られず、その他の問題タイプでもよい。
【0087】
次にステップS13bでは、探索問題設定プログラム161は、ステップS13aで設定された探索問題のタイプが「線形計画問題」であればステップS13cへ処理を移し、「シミュレーションベース探索問題」であればステップS13gへ処理を移す。
【0088】
ステップS13cでは、探索問題設定プログラム161は、線形計画問題の目的関数に全体KPIの算出式を設定する。次にステップS13dでは、探索問題設定プログラム161は、線形計画問題の決定変数に、対象とする個別KPI、個別KPI条件、動作パラメータを設定する。次にステップS13eでは、探索問題設定プログラム161は、所定の制約条件を設定する。次にステップS13fでは、探索問題設定プログラム161は、対象個別KPI/動作パラメータの関係モデルを、線形計画問題の制約条件又は目的関数の計算式に設定する。探索問題設定プログラム161は、ステップS13fが終了すると、ステップS13jへ処理を移す。
【0089】
一方ステップS13gでは、探索問題設定プログラム161は、シミュレーションベース探索問題の評価関数に全体KPIの算出式を設定する。次にステップS13hでは、探索問題設定プログラム161は、シミュレーションベース探索問題の探索対象の変数に、対象とする個別KPI、個別KPI条件、動作パラメータを設定する。次にステップS13iでは、探索問題設定プログラム161は、対象個別KPI/動作パラメータの関係モデルを、シミュレーション内の計算モデル又は評価関数の計算式に設定する。探索問題設定プログラム161は、ステップS13iが終了すると、ステップS13jへ処理を移す。
【0090】
ステップS13jでは、探索問題設定プログラム161は、上述の処理で設定された探索問題を出力する。
【0091】
(個別KPI/動作パラメータ探索処理)
図9は、ステップS14(
図7)の個別KPI/動作パラメータ探索処理を示すフローチャートである。
【0092】
先ずステップS14aでは、個別KPI/動作パラメータ探索プログラム162は、探索問題設定処理(
図7)によって設定された探索問題の入力を受付ける。次にステップS14bでは、探索問題に関係する任意の個別KPIの組について相関分析によりトレードオフ(例えば相関係数が負)の関係を特定する。
【0093】
次にステップS14cでは、個別KPI/動作パラメータ探索プログラム162は、ステップS14bでトレードオフの関係が特定されたか否かを判定する。個別KPI/動作パラメータ探索プログラム162は、トレードオフの関係ありの場合(ステップS14cYES)にステップS14dへ処理を移し、トレードオフの関係なしの場合(ステップS14cNO)にステップS14eへ処理を移す。
【0094】
ステップS14dでは、個別KPI/動作パラメータ探索プログラム162は、トレードオフの関係を持つ個別KPIについて、トレードオフを考慮した個別KPI/動作パラメータの上限、下限、又は範囲の条件を探索問題へ条件として追加する。個別KPI/動作パラメータの上限、下限、又は範囲は、個別システム2に問合せるなどする。
【0095】
ステップS14eでは、個別KPI/動作パラメータ探索プログラム162は、各個別システム2の状態のデータ入力を受付ける。
【0096】
次にステップS14fでは、個別KPI/動作パラメータ探索プログラム162は、個別システム状態取得プログラム163により取得された個別システムの最新状態を探索問題へ設定又は入力する。次にステップS14gでは、個別KPI/動作パラメータ探索プログラム162は、対象となる全体KPIが複数であるか否かを判定する。個別KPI/動作パラメータ探索プログラム162は、対象となる全体KPIが複数である場合(ステップS14gYES)にステップS14hへ処理を移し、対象となる全体KPIが1つである場合(ステップS14gNO)にステップS14jへ処理を移す。
【0097】
ステップS14hでは、個別KPI/動作パラメータ探索プログラム162は、複数の全体KPIの優先順位を決定する。優先順位は、複数システム統合運用システムSの目的に応じた重要度の順とすればよい。
【0098】
次にステップS14iでは、個別KPI/動作パラメータ探索プログラム162は、優先順位が高いものから順に全体KPIを1つ選択し、目的関数/評価関数へ設定する。
【0099】
次にステップS14jでは、個別KPI/動作パラメータ探索プログラム162は、目的関数/評価関数が最良(例えば最大)となる個別KPI条件/動作パラメータを算出する。
【0100】
なお全体KPIが複数の場合で、探索問題が線形計画問題であれば複数KPIの加重和を目的関数にしたり、探索問題を解く際に全体KPIを一つずつ適用しながら順次最適解範囲を絞っていったりすることもできる。全体KPIが複数の場合で、探索問題がシミュレーションベース最適化の場合は、シミュレーション結果においてすべての全体KPIが指定条件を満たす場合のみ解候補として採用することもできる。
【0101】
次にステップS14kでは、個別KPI/動作パラメータ探索プログラム162は、全ての全体KPIを処理したか否かを判定する。個別KPI/動作パラメータ探索プログラム162は、全ての全体KPIを処理した場合(ステップS14kYES)にステップS14lへ処理を移し、未処理の全体KPIがある場合(ステップS14kNO)にステップS14mへ処理を移す。全体KPIが1つの場合(ステップS14gNO)には、ステップS14kはYESとなる。
【0102】
ステップS14lでは、個別KPI/動作パラメータ探索プログラム162は、個別KPI条件/動作パラメータを出力する。
【0103】
一方ステップS14mでは、個別KPI/動作パラメータ探索プログラム162は、ステップS14jで算出された目的関数/評価関数の範囲もしくは個別KPI条件/動作パラメータの範囲を、探索範囲を限定する条件として探索問題へ追加する。個別KPI/動作パラメータ探索プログラム162は、ステップS14mが終了するとステップS14iへ処理を移す。ステップS14mから処理を移されたステップS14iでは、前回選択された全体KPIの次に優先順位が高い全体KPIについて処理を実行する。
【0104】
(個別KPI/動作パラメータ通知処理)
図10は、ステップS15(
図7)の個別KPI/動作パラメータ通知処理を示すフローチャートである。
【0105】
先ずステップS15aでは、個別KPI/動作パラメータ通知プログラム164は、各個別システム2へ、個別KPI/動作パラメータ探索処理(
図9)による探索結果である各個別システム2の各々の個別KPI/動作パラメータを通知する。次にステップS15bでは、個別KPI/動作パラメータ通知プログラム164は、各個別システム2から、通知した各個別システム2の各々の個別KPI/動作パラメータの受入れ可否と追加条件(個別KPIの範囲、動作パラメータの範囲)を受信する。
【0106】
なお
図7~
図10を参照して説明した個別KPI/動作パラメータ決定処理では、1つの関係モデルを適用した探索問題のタイプは、線形計画問題及びシミュレーション問題の何れか1つに設定されるとしたが、これに限られない。すなわち、1つの関係モデルを全ての探索問題のタイプに設定して、全体KPIをより良い結果が得られる探索問題のタイプを採用するようにしてもよい。
【0107】
(端末装置5の表示画面500)
図11は、連携管理システム1に接続される端末装置5の表示画面500を示す図である。
図11の例では、個別システム#1以外の個別システムについても、個別KPI及び動作パラメータが異なる以外は同様であるが、適宜図示を省略している。
【0108】
表示画面500は、最適解計算ボタン50と、全体KPI及び優先順位51と、個別システムの個別KPI及び動作パラメータ52,53,・・・と、を含む。最適解計算ボタン50が押下されると、個別KPI/動作パラメータ決定処理(
図7)が実行される。
【0109】
全体KPI及び優先順位51には、全体KPI及び優先順位が表示されている。
図11の例では、全体KPI1,2,3があり、それぞれの優先順位が3、7、5であり、全体KPI1が最も優先順位が高い。
【0110】
個別システム#1の個別KPI及び動作パラメータ52は、個別KPI521、動作パラメータ522を含む。
図11の例では、個別KPI521には、個別KPI1-1,1-2,1-3がある。動作パラメータ522には、動作パラメータ1-1,1-2,1-3がある。
【0111】
また個別KPI及び動作パラメータ52は、個別KPI及び動作パラメータ毎に、全体KPI相関係数52a、対象該否52b、最適値52c、受入れ可否52d、現在値52e、トレードオフ52f、及び、制約52gを含む。
【0112】
全体KPI相関係数52aは、個別システム#1の該当の個別KPI/動作パラメータと、該当の個別KPI/動作パラメータを算出に用いる全体KPIとの相関係数を表す。
図11の例では、個別システム#1の個別KPI1-1の相関係数は、“0.76”であることが示されている。
【0113】
対象該否52bは、全体KPI相関係数52aの値が閾値以上であり、該当の個別KPI/動作パラメータが探索問題求解による最適化対象に該当する場合に“○”、該当しない場合にブランクが表示される。
図11の例では、個別システム#1の個別KPI1-1は、“○”であることが示されている。
【0114】
最適値52cは、該当の個別KPI/動作パラメータの最適値を表し、例えば探索問題求解により最適化された該当の個別KPI/動作パラメータの値が表示される。
図11の例では、個別システム#1の個別KPI1-1の最適値は、“3.6”であることが示されている。
【0115】
受入れ可否52dは、探索問題求解により最適化された該当の個別KPI/動作パラメータが個別システム#1によって受入れ可否を判断された結果を表し、受入れ可の場合“可”、受入れ否の場合ブランクが表示される。
図11の例では、個別システム#1の個別KPI1-1は、“受入れ可”であることが示されている。
【0116】
現在値52eは、該当の個別KPI/動作パラメータの現在値であり、個別KPIの場合は個別システム#1の現在の状態を加味して算出された値であり、動作パラメータの場合は現在の設定値である。
図11の例では、個別システム#1の個別KPI1-1の現在値は、“3.4”であることが示されている。
【0117】
トレードオフ52fは、該当の個別KPI/動作パラメータがトレードオフの関係を有する他の個別KPI/動作パラメータを表す。
図11の例では、個別システム#1の個別KPI1-1が、個別システム#2の個別KPI21とトレードオフの関係にあり、個別システム#1の動作パラメータ1-1が、個別システム#2の個別KPI23とトレードオフの関係にあることが示されている。
【0118】
制約52gは、該当の個別KPI/動作パラメータの上限、下限、又は範囲の条件である。この個別KPIの上限、下限、又は範囲の条件は、トレードオフの関係を生じさせないための条件として設定される場合もあるし、満たすべき前提条件として設定される場合もある。
図11の例では、個別システム#1の個別KPI1-1は、「3から7まで」の値の制限を受けることが示されている。また個別システム#1の動作パラメータ1-1は、「26より小」の値の制限を受けることが示されている。
【0119】
(実施形態の効果)
上述の実施形態によれば、複数システム統合運用システムSの全体KPIと、各個別システム2の個別KPI又は個別KPIを制御する各個別システム2の動作パラメータと、の関係モデルを用いる。そして全体KPIが向上する個別KPI条件又は動作パラメータを探索して決定し、決定された個別KPI条件/動作パラメータを、各個別システムへ通知する。よって複数システム統合運用システムSの全体KPIがより向上するように、個別KPIの条件及び動作パラメータの候補の事前入力がなくとも個々のシステムを適切に運用できる。
【0120】
また複数システム統合運用システムSを運用しながら、複数システム統合運用システムSの全体KPI、全体KPIに影響する個々の個別システム2の個別KPI、個別KPIに影響する制御可能な動作パラメータの関係モデルを構築し、順次更新する。よって最新のシステムの状況を反映したモデルに基づいて、個別システム2を制御する個別KPI条件/動作パラメータを決定できる。
【0121】
また個別KPIを制御可能な動作パラメータを選定し、最小限の情報を用いることで、個別システム2、動作パラメータの数が膨大になっても、容易かつ適切に個別KPI条件/動作パラメータを決定できる。
【0122】
また全体KPIとの相関が一定以上である個別KPI又は動作パラメータを選定し、最小限の情報を用いることで、全体KPI、個別KPI、動作パラメータの数が膨大になっても、容易かつ適切に個別KPI条件/動作パラメータを決定できる。
【0123】
また全体KPIが向上する個別KPI条件/動作パラメータを探索する探索問題に、上述の関係モデルを適用するので、関係モデルを適用した探索問題により決定した個別KPI条件/動作パラメータが、複数システム統合運用システムS及び個別システム2の過去の実績に基づく根拠ある信頼できるものとなる。
【0124】
また関係モデルの定式化方法によって探索問題の特性を選定するので、探索問題の特性を制御可能になり、問題に対してより適切な特性の探索問題を用いるようにすることができる。
【0125】
また個別システム2に対して、探索問題により決定した個別KPI条件/動作パラメータの実行可否を問合せ、否の場合は、否の通知と共に個別システム2から受信した制約を探索問題に追加設定して個別KPI条件/動作パラメータ再探索する。よって全体KPIを向上させることによって個別KPIを低下させる不都合を回避できる。
【0126】
また複数の全体KPIがあっても、個別KPI条件/動作パラメータを決定し、個々の個別システム2を適切に制御することができる。
【0127】
また複数の全体KPIのうちの第1の優先順位の全体KPIについて決定した個別KPI条件/動作パラメータの範囲を、第1の優先順位よりも低い第2の優先順位の全体KPIについて個別KPI条件/動作パラメータを決定する際の探索範囲を限定する条件とする。よって優先順位が高い全体KPIを優先しつつ、複数の全体KPIがそれぞれ向上するように、個別KPI条件/動作パラメータを決定できる。
【0128】
また任意の個別KPIの組合せについて相反の有無を判定し、相反がある個別KPIの組合せの個別KPI条件/個別KPIを制御する動作パラメータの決定を実行する際に、事前に追加条件を設定する。よって個別KPIの組合せに相反があっても、個別システム2を制御する個別KPI条件/動作パラメータを適切に決定できる。
【0129】
また相反がある個別KPIの組合せについて個別KPI条件/個別KPIを制御する動作パラメータの探索及び決定を実行する際に事前追加する追加条件は、個別KPI条件/動作パラメータの上限、下限、又は範囲である。よって予め探索範囲を絞った上で効率的に個別KPI条件/動作パラメータの探索を行うことができる。
【0130】
(実施形態の適用例)
図12は、実施形態の複数システム統合運用システムSをサプライチェーン計画・運用システム1Sへ適用した例を示す図である。
【0131】
サプライチェーン計画・運用システム1Sは、調達計画システム20A-1、生産計画システム20A-2、輸送計画システム20A-3、販売計画システム20A-4、及びこれらのサブシステムの連携を管理するサプライチェーン全体計画立案システム10Aを含んで構成される。サプライチェーン全体計画立案システム10Aは、最新需要が入力された状態のサプライチェーン計画・運用システム1Sにおいて、全体計画(売上、コスト、利益等)を最良化する調達計画、生産計画、輸送計画、及び販売計画を立案できる。
【0132】
図13は、実施形態の複数システム統合運用システムSを電力グリッド保守管理システム2Sへ適用した例を示す図である。
【0133】
電力グリッド保守管理システム2Sは、地域Aシステム20B-1、地域Bシステム20B-2、地域Cシステム20B-3、地域Dシステム20B-4、及びこれらのサブシステムの連携を管理する電力グリッド全体計画立案システム10Bを含んで構成される。電力グリッド全体計画立案システム10Bは、最新の外部環境(電力需要や気象条件等)が入力された最新状態の電力グリッド保守管理システム2Sにおいて、全体計画(無停電時間、コスト等)をより向上させる地域毎の保守管理を立案できる。
【0134】
また
図14に示すように、最新の外部環境が入力された最新状態の電力グリッド保守管理システム2Sにおいて、電力グリッド全体計画立案システム10Cは、全体計画をより向上させるリスク要因毎の保守管理を立案できる。
【0135】
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例を含む。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、矛盾しない限りにおいて、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成で置き換え、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、構成の追加、削除、置換、統合、又は分散をすることが可能である。また、実施形態で示した構成及び処理は、処理効率又は実装効率に基づいて適宜分散、統合、または入れ替えることが可能である。
【符号の説明】
【0136】
S:複数システム統合運用システム、1:連携管理システム、2:個別システム、153:個別KPI/動作パラメータ選定プログラム、154:KPI/動作パラメータ関係モデル生成プログラム、161:探索問題設定プログラム、162:個別KPI/動作パラメータ探索プログラム、164:個別KPI/動作パラメータ通知プログラム、CPU11、12:メモリ