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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-08
(45)【発行日】2025-07-16
(54)【発明の名称】半導体素子のリーク電流検出回路
(51)【国際特許分類】
   H02M 1/08 20060101AFI20250709BHJP
   H02M 1/00 20070101ALI20250709BHJP
【FI】
H02M1/08 A
H02M1/00 H
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022006415
(22)【出願日】2022-01-19
(65)【公開番号】P2022173051
(43)【公開日】2022-11-17
【審査請求日】2024-05-10
(31)【優先権主張番号】P 2021078530
(32)【優先日】2021-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 淳一
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 章雅
【審査官】上野 力
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-118360(JP,A)
【文献】特開2003-143833(JP,A)
【文献】国際公開第2018/168328(WO,A1)
【文献】特開2004-201486(JP,A)
【文献】特開2007-324828(JP,A)
【文献】特開2010-226833(JP,A)
【文献】特開2013-192444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/08
H02M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電位側導通端子と、低電位側導通端子と、これらの端子と絶縁された状態で配置され、両端子間の導通状態を制御する信号が入力される制御端子とを備える半導体素子(1,52)について、
前記半導体素子をターンオンさせる際に、前記制御端子に充電電流が流入する期間を検出不能期間に設定する低電位側設定回路(10S)と、
前記検出不能期間が経過した後、前記制御端子から前記低電位側導通端子に流れるリーク電流を検出すると、検出信号を出力する低電位側検出部(6A~6H,7S,8S)と

前記半導体素子をターンオフさせる際に、前記制御端子から放電電流が流出する期間を検出不能期間に設定する高電位側設定回路(10D)と、
前記検出不能期間が経過した後、前記高電位側導通端子から前記制御端子に流れるリーク電流を検出すると、検出信号を出力する高電位側検出部(7D,8D)と、を備え
前記低電位側検出部は、前記制御端子への充電経路に配置される充電側抵抗素子(5H)に接続され、
前記高電位側検出部は、前記制御端子からの放電経路に配置される放電側抵抗素子(5L)に接続され、
前記充電側抵抗素子は、前記半導体素子を定電流駆動方式によりターンオンさせる駆動回路が備える一端が電源に接続されたシャント抵抗(22H)であり、
前記放電側抵抗素子は、前記半導体素子を定電流駆動方式によりターンオフさせる駆動回路が備える一端がグランドに接続されたシャント抵抗(22L)である半導体素子のリーク電流検出回路。
【請求項2】
前記低電位側検出部と前記高電位側検出部とは何れも、前記制御端子に直列に接続された共通の抵抗素子(5)に接続されている請求項記載の半導体素子のリーク電流検出回路。
【請求項3】
前記検出信号を低域濾波するフィルタ回路(32)を備える請求項1又は2記載の半導体素子のリーク電流検出回路。
【請求項4】
前記低電位側検出部(6A~6H)は、前記リーク電流の検出回数をカウントするカウンタ(34)を備え、
前記カウンタのカウント値が、前記半導体素子をターンオンさせる毎に連続して増加しながら所定値に達すると前記検出信号を出力する請求項1から3の何れか一項に記載の半導体素子のリーク電流検出回路。
【請求項5】
前記高電位側検出部(6A~6H)は、前記リーク電流の検出回数をカウントするカウンタ(34)を備え、
前記カウンタのカウント値が、前記半導体素子をターンオフさせる毎に連続して増加しながら所定値に達すると前記検出信号を出力する請求項からの何れか一項に記載の半導体素子のリーク電流検出回路。
【請求項6】
前記カウンタのカウント値が、所定時間内に前記所定値に達すると前記検出信号を出力する請求項又は記載の半導体素子のリーク電流検出回路。
【請求項7】
前記カウンタのカウント値が、前記半導体素子をオンオフ制御する信号が所定回数だけ出力される内に前記所定値に達すると前記検出信号を出力する請求項又は記載の半導体素子のリーク電流検出回路。
【請求項8】
前記低電位側検出部は、前記リーク電流の検出回数をカウントするカウンタ(34)を備え、
前記カウンタのカウント値が、前記半導体素子をターンオンさせる毎に連続して増加しながら所定値に達すると前記検出信号を出力し、
前記半導体素子をオンにする信号の出力期間が、前記検出不能期間に前記フィルタ回路の時定数期間を加えたものよりも短ければ、前記オンの期間を前記連続の要件から除外するオン期間判定部(37)を備える請求項記載の半導体素子のリーク電流検出回路。
【請求項9】
前記高電位側検出部は、前記リーク電流の検出回数をカウントするカウンタ(34)を備え、
前記カウンタのカウント値が、前記半導体素子をターンオフさせる毎に連続して増加しながら所定値に達すると前記検出信号を出力し、
前記半導体素子をオフにする信号の出力期間が、前記検出不能期間に前記フィルタ回路の時定数期間を加えたものよりも短ければ、前記オフの期間を前記連続の要件から除外するオフ期間判定部を備える請求項記載の半導体素子のリーク電流検出回路。
【請求項10】
前記半導体素子が、電気角周期毎に所定の波形に応じてオンオフ制御されている際に、
前記低電位側検出部(6C、6E、6H)は、1電気角周期内において、前記カウンタのカウント値が前記所定値に達すると前記検出信号を出力するリーク判定部(41)を備える請求項4,5,8又は9の何れか一項に記載の半導体素子のリーク電流検出回路。
【請求項11】
前記半導体素子が、電気角周期毎に所定の波形に応じてオンオフ制御されている際に、
前記低電位側検出部(6C、6E、6H)は、1電気角周期内において、前記カウンタのカウント値が前記所定に達する状態が複数の電気角周期に亘り連続すると、前記検出信号を出力するリーク判定部(44)を備える請求項4,5,8又は9の何れか一項に載の半導体素子のリーク電流検出回路。
【請求項12】
前記低電位側検出部(6E,6H)は、前記オンオフ制御する信号の極性が変化するゼロクロス点に基づいて、前記1電気角周期を判定する請求項1又は1記載の半導体素子のリーク電流検出回路。
【請求項13】
前記オンオフ制御する信号を出力する信号出力部(74)を備え、
前記低電位側検出部(6H)は、前記信号出力部より入力される電気角周期の情報に基づいて、前記1電気角周期を判定する請求項1から1の何れか一項に記載の半導体素子のリーク電流検出回路。
【請求項14】
前記低電位側検出部は、前記半導体素子をターンオンさせる際にオン駆動され、前記制御端子に充電電流を流入させるオン駆動素子(3)のオン抵抗を利用してリーク電流を検出する請求項1記載の半導体素子のリーク電流検出回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子において制御端子と導通端子との間に発生するリーク電流を検出する回路に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばパワーMOSFET等のパワー素子において、ドレイン-ゲート間やゲート-ソース間に発生するリーク電流を検出する回路については、従来様々なものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-236036号公報
【文献】特開2011-71174号公報
【文献】特開2013-192444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、NチャネルMOSFETをターンオンさせる際にはゲートに充電電流が流入し、ターンオフさせる際にはゲートから放電電流が流出する。したがって、リーク電流を検出するには、上記のように充電電流や放電電流が流れる期間との切り分けを行う必要がある。しかしながら、上記の従来技術では何れも、リーク電流の検出に際して、充放電電流が流れる期間との切り分けをどのように行うかについて、具体的な開示がない。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、半導体素子の導通制御が行われる期間においても、リーク電流を切り分けて確実に検出できる半導体素子のリーク電流検出回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の半導体素子のリーク電流検出回路によれば、低電位側設定回路は、半導体素子をターンオンさせる際に、制御端子に充電電流が流入する期間を検出不能期間に設定し、低電位側検出部は、その検出不能期間が経過した後、制御端子から低電位側導通端子に流れるリーク電流を検出すると検出信号を出力する。このように構成すれば、低電位側検出部は、制御端子に充電電流が流入する期間を確実に排除してリーク電流を検出することができる。
【0007】
また、請求項記載の半導体素子のリーク電流検出回路によれば、高電位側設定回路は、半導体素子をターンオフさせる際に、制御端子から放電電流が流出する期間を検出不能期間に設定し、高電位側検出部は、その検出不能期間が経過した後、高電位側導通端子から制御端子に流れるリーク電流を検出すると検出信号を出力する。このように構成すれば、高電位側検出部は、制御端子から放電電流が流出する期間を確実に排除してリーク電流を検出することができる。
更に、低電位側検出部は、制御端子への充電経路に配置される充電側抵抗素子に接続され、高電位側検出部は、制御端子からの放電経路に配置される放電側抵抗素子に接続されている。充電側抵抗素子は、半導体素子を定電流駆動方式によりターンオンさせる駆動回路が備える一端が電源に接続されたシャント抵抗であり、放電側抵抗素子は、半導体素子を定電流駆動方式によりターンオフさせる駆動回路が備える一端がグランドに接続されたシャント抵抗である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態であり、リーク電流検出回路の構成を示す図
図2】ゲート電圧波形,ゲート電流波形及びリーク電流の検出タイミングを示す図
図3】第2実施形態であり、リーク電流検出回路の構成を示す図
図4】ゲート電圧波形,ゲート電流波形及びリーク電流の検出タイミングを示す図
図5】マスク回路の具体例を示す図(その1)
図6】マスク回路の具体例を示す図(その2)
図7】第3実施形態であり、リーク電流検出回路の構成を示す図
図8】ゲート電圧波形,ゲート電流波形及びリーク電流の検出タイミングを示す図
図9】第4実施形態であり、リーク電流検出回路の構成を示す図
図10】第5実施形態であり、定電流駆動方式の駆動回路を示す図
図11】リーク電流検出回路の構成を示す図
図12】第6実施形態であり、リーク電流検出回路の構成を示す図
図13】第7実施形態であり、リーク電流検出回路の構成を示す図
図14】ゲート電圧波形及び各回路の出力信号を示す図
図15】第8実施形態であり、リーク電流検出回路の構成を示す図
図16】カウンタのカウント値の変化を示すタイミングチャート
図17】第9実施形態であり、リーク電流検出回路の構成を示す図
図18】ゲート電圧のオン時間が、リーク電流の検出が可能な長さの場合を示す図
図19】ゲート電圧のオン時間が、リーク電流の検出が不能な長さの場合を示す図
図20】カウンタのカウント値の変化を示すタイミングチャート
図21】第10実施形態であり、リーク電流検出回路の構成を示す図
図22】リーク電流の判定周期を示す図
図23】リーク電流なしの場合を示す図
図24】リーク電流ありの場合を示す図
図25】第11実施形態であり、リーク電流検出回路の構成を示す図
図26】カウンタのカウント値の変化を示すタイミングチャート
図27】第12実施形態であり、電流センスアンプの具体例を示す図
図28】第13実施形態であり、電流センスアンプの具体例を示す図
図29】第14実施形態であり、電流センスアンプの具体例を示す図
図30】第15実施形態であり、インバータ回路の上下アームのパワー素子それぞれにリーク電流検出回路を設けた構成を示す図
図31】第16実施形態であり、リーク電流検出回路の構成を示す図
図32】第17実施形態であり、リーク電流検出回路の構成を示す図
図33】リーク電流の判定周期を示す図
図34】第18実施形態であり、リーク電流検出回路の構成を示す図
図35】第19実施形態であり、リーク電流検出回路の構成を示す図
図36】第20実施形態であり、リーク電流検出回路の構成を示す図
図37】第21実施形態であり、リーク電流検出回路の構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
図1に示すように、本実施形態では、インバータを構成する下アーム側のパワー素子1を駆動する駆動回路2において、パワー素子1のゲート-ソース間に発生するリーク電流を検出する。半導体素子の一例であるパワー素子1は、例えばNチャネルMOSFETである。駆動回路2は、電源とグランドとの間に接続されるオン側駆動素子3及びオフ側駆動素子4の直列回路を備えており、これらの素子3及び4の共通接続点は、ゲート抵抗5を介してパワー素子1のゲートに接続されている。オン側駆動素子3,オフ側駆動素子4は、例えばそれぞれPチャネルMOSFET,NチャネルMOSFETである。
【0010】
オン側駆動素子3,オフ側駆動素子4のゲートは、制御ブロック6の出力端子に接続されており、これらの駆動制御は制御ブロック6により行われる。電流センスアンプ7Sの非反転入力端子は、素子3及び4の共通接続点に接続されており、反転入力端子はパワー素子1のゲートに接続されている。電流センスアンプ7Sの出力端子はコンパレータ8Sの非反転入力端子に接続されており、コンパレータ8Sの反転入力端子には、閾値電圧を付与する電圧源9Sが接続されている。
【0011】
コンパレータ8Sの出力端子は、マスク回路10Sを介して制御ブロック6の入力端子に接続されている。また、マスク回路10Sには、制御ブロック6がオン側駆動素子3に出力するゲート駆動信号が入力されている。マスク回路10Sは、コンパレータ8Sの出力信号を、制御ブロック6がオン側駆動素子3にゲート駆動信号を出力した時点から、一定時間だけマスクするように動作する。この「一定時間だけマスクする」期間はマスク期間であり、検出不能期間に相当する。
【0012】
以上において、パワー素子1のゲート,ドレイン,ソースは、それぞれ制御端子,高電位側導通端子,低電位側導通端子の一例である。電流センスアンプ7S及びコンパレータ8Sは低電位側検出部に相当し、マスク回路10Sは低電位側設定部に相当する。また、構成7S~10Sは、リーク電流検出回路11Sを構成している。
【0013】
次に、本実施形態の作用について説明する。制御ブロック6がパワー素子1をターンオンさせる際には、オン側駆動素子3をオンにして、オフ側駆動素子4をオフにする。このとき、図2に示すように、パワー素子1のゲートにオン側駆動素子3を介してハイレベルのゲート電圧が印加されるが、ゲート電圧がハイレベルに立ち上がると、パワー素子1のゲートを充電する電流が瞬間的に流れる。マスク回路10Sは、この期間にコンパレータ8Sの出力信号が、制御ブロック6に入力されることを阻止するようにマスクを行う。
【0014】
パワー素子1のゲート-ソース間にリーク電流が流れていれば、ゲートを充電する電流が流れた後においてもゲート抵抗5に電流が流れるので、電流センスアンプ7Sの入力端子間には、ゲート抵抗5の端子電圧分の電位差が発生する。これにより、コンパレータ8Sの出力信号がハイレベルとなり、その信号がマスク期間の経過後に制御ブロック6に入力されるので、制御ブロック6は、パワー素子1のゲート-ソース間についてリーク故障が発生していることを検出できる。
【0015】
以上のように本実施形態によれば、マスク回路10Sは、パワー素子1をターンオンさせる際に、ゲートに充電電流が流入する期間をマスク期間に設定し、電流センスアンプ7S及びコンパレータ8Sは、マスク期間が経過した後、パワー素子1のゲートからソースに流れるリーク電流を検出すると検出信号を出力する。このように構成すれば、マスク回路10Sにより、ゲートに充電電流が流入する期間を確実に排除してリーク電流を検出できる。
【0016】
(第2実施形態)
以下、第1実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、異なる部分について説明する。図3に示すように、第2実施形態では、リーク電流検出回路11Sに替えて、パワー素子1のドレインからゲートに流れるリーク電流を検出するリーク電流検出回路11Dを示す。リーク電流検出回路11Dは、リーク電流検出回路11Sの構成に対応する電流センスアンプ7D,コンパレータ8D,電圧源9D及びマスク回路10Dを備えている。
【0017】
電流センスアンプ7Dの非反転入力端子はパワー素子1のゲートに接続されており、反転入力端子は素子3及び4の共通接続点に接続されている。マスク回路10Dには、制御ブロック6がオフ側駆動素子4に出力するゲート駆動信号が入力されている。マスク回路10Dは、例えば図5図6に示すように構成される。
【0018】
図5に示すマスク回路10D(1)では、抵抗素子12及びコンデンサ13で構成されるRCフィルタにおいて、コンデンサ13に並列にNチャネルMOSFET14を接続し、オフ駆動素子4のゲート駆動信号を、NOTゲート15を介してFET14のゲートに与える。オフ駆動素子4がオフの期間では、FET14がオンしているのでコンデンサ13を短絡する。オフ駆動素子4がオンの期間では、FET14がオフしてRCフィルタの作用により出力信号を遅延させてマスクする。
【0019】
また、図6に示すマスク回路10D(2)は、ANDゲート16とタイマ17との組合せである。ANDゲート16の入力端子の一方に、コンパレータ8Dの出力信号を与え、入力端子の他方にはオフ駆動素子4のゲート駆動信号を、タイマ17を介して与える。タイマ17は、ゲート駆動信号がハイレベルになるとクロックのカウントを開始し、設定されたマスク時間が経過すると、ANDゲート16の入力端子をハイレベルにして、コンパレータ8Dの出力信号を出力させる。尚、マスク回路10Sについても、マスク回路10D(1),10(D2)と同様の原理で構成可能である。
以上において、電流センスアンプ7D及びコンパレータ8Dは高電位側検出部に相当し、マスク回路10Dは高電位側設定部に相当する。また、構成7S~10Sは、リーク電流検出回路11Sを構成している。
【0020】
次に、第2施形態の作用について説明する。制御ブロック6がパワー素子1をターンオフさせる際には、オン側駆動素子3をオフにして、オフ側駆動素子4をオンにする。このとき、図4に示すように、パワー素子1のゲートにオフ側駆動素子4を介してローレベルのゲート電圧が印加されるが、ゲート電圧がローレベルに立ち下がると、パワー素子1のゲートより放電電流が瞬間的に流れる。マスク回路10Dは、この期間にコンパレータ8Dの出力信号が、制御ブロック6に入力されることを阻止するようにマスクを行う。
【0021】
パワー素子1のドレイン-ゲート間にリーク電流が流れていれば、ゲートから放電電流が流れた後においてもゲート抵抗5に電流が流れるので、電流センスアンプ7Dの入力端子間には、ゲート抵抗5の端子電圧分の電位差が発生する。これにより、コンパレータ8Dの出力信号がハイレベルとなり、その信号がマスク期間の経過後に制御ブロック6に入力されるので、制御ブロック6は、パワー素子1のドレイン-ゲート間についてリーク故障が発生していることを検出できる。
【0022】
以上のように第2実施形態によれば、マスク回路10Dは、パワー素子1をターンオフさせる際に、ゲートから放電電流が流出する期間をマスク期間に設定し、電流センスアンプ7D及びコンパレータ8Dは、マスク期間が経過した後、パワー素子1のドレインからゲートに流れるリーク電流を検出すると検出信号を出力する。このように構成すれば、マスク回路10Dにより、ゲートに充電電流が流入する期間を確実に排除してリーク電流を検出できる。
【0023】
(第3実施形態)
図7及び図8に示すように、第3実施形態は、第1実施形態のリーク電流検出回路11S及び第2実施形態のリーク電流検出回路11Dを双方共に備えた構成である。
【0024】
(第4実施形態)
図9に示すように、第4実施形態は、第3実施形態の構成におけるゲート抵抗5に替えて、オン駆動素子3のソースとパワー素子1のゲートとの間に接続されるゲート抵抗5Hと、オフ駆動素子4のドレインとパワー素子1のゲートとの間に接続されるゲート抵抗5Lとが接続されている場合を示す。この際に、電流センスアンプ7Sの入力端子間にはゲート抵抗5Hが接続され、電流センスアンプ7Dの入力端子間にはゲート抵抗5Lが接続される。
【0025】
以上に構成される第4実施形態によれば、パワー素子1のターンオン時間と、ターンオフ時間とを個別に調整するため、ゲート抵抗5H,5Lの抵抗値が異なる値に設定されている場合にも、パワー素子1のゲート-ソース間,ドレイン-ゲート間についてリーク故障が発生していることを検出できる。
【0026】
(第5実施形態)
図10に示すように、第5実施形態は、駆動回路2に替わる駆動回路21が定電流駆動方式の場合である。図10では、オン駆動素子3側のみを示している。電源とオン駆動素子3のドレインとの間にはシャント抵抗22Hが接続されており、駆動アンプ23Hの非反転入力端子は、正側端子が電源に接続された電圧源24の負側端子に接続され、反転入力端子は、オン駆動素子3のソースに接続されている。駆動アンプ23Hの出力端子は、オン駆動素子3のゲートに接続されている。駆動アンプ23Hのイネーブル制御は、図示しない制御ロジックにより行われる。駆動アンプ23Hは、シャント抵抗22Hの端子電圧が非反転入力端子に付与されている電位に等しくなるように、オン駆動素子3のゲート電位を制御する。
【0027】
図11は、リーク電流検出回路をオフ駆動素子4側も加えて示しているが、駆動アンプ23の図示は省略している。オフ駆動素子4のソースとグランドとの間にはシャント抵抗22Lが接続されている。電流センスアンプ7Sの非反転入力端子は電源に接続され、反転入力端子は、オン駆動素子3のソースに接続されている。電流センスアンプ7Dの非反転入力端子は、オフ駆動素子4のソースに接続され、反転入力端子はグランドに接続されている。
【0028】
以上のように構成される第5実施形態によれば、パワー素子1を駆動する際にゲート抵抗を用いない構成においても、パワー素子1のゲート-ソース間,ドレイン-ゲート間についてリーク故障が発生していることを検出できる。
【0029】
(第6実施形態)
図12に示すように、第6実施形態は、第1実施形態のような電圧駆動方式の駆動回路2において、第5実施形態のシャント抵抗22H,22Lを、ゲート抵抗5に替えて、リーク電流の検出用に利用したものである。すなわち、電流センスアンプ7Sの入力端子はシャント抵抗22Hの両端に接続され、電流センスアンプ7Dの入力端子はシャント抵抗22Lの両端に接続されている。また、制御ブロック6は、オン駆動素子3,オフ駆動素子4のゲート電位を、駆動アンプ26H,26Lを介して制御する。
【0030】
(第7実施形態)
図13に示す第7実施形態のリーク電流検出回路31Sは、第1実施形態のリーク電流検出回路11Sにおいて、マスク回路10と制御ブロック6との間にローパスフィルタ32Sを配置している。パワー素子1のゲート配線は、非常にノイズが載り易い端子であり、リーク電流は、ターンオン時,ターンオフ時に流れる電流に比較してレベルが小さい信号である。そのような微小なレベルの信号を検出するように、コンパレータ8の閾値電圧を設定すると、ノイズについても検出してしまうおそれがある。そこで、第7実施形態では、ローパスフィルタ32Sを配置して、図14に示すように、不定期に発生するノイズを除去する。
【0031】
(第8実施形態)
図15に示す第8実施形態のリーク電流検出回路33Sは、制御ブロック6Aの内部にカウンタ34を備え、マスク回路10S及びフィルタ32Sを介して入力されるコンパレータ8Sの出力信号が連続してハイレベルに変化した回数をカウントする。カウンタ34には、ゲート駆動部35がオン駆動素子3のゲートに出力する二値レベルの信号,すなわちゲート電圧が入力されている。低電位側検出部はカウンタ34を含んで構成される。
【0032】
例えば図16に示すように、ゲート駆動部35がオン駆動素子3を交互にオンオフさせるようにゲート電圧を変化させている場合、オンオフの3周期連続でフィルタ32Sの出力信号が閾値を超えると、カウンタ34のカウント値が「3」に達した時点でカウンタ34がリーク電流の検出信号を出力する。コンパレータ8Sの出力信号が連続してハイレベルに変化しなければ、カウンタ34はリセットされる。
【0033】
(第9実施形態)
図17に示す第9実施形態のリーク電流検出回路36Sは、第8実施形態の制御ロジック6Aにオン期間判定部37を加えた制御ロジック6Bを備えている。図18に示すように、ゲート電圧のオンパルス幅が、マスク回路10Sで設定されるマスク期間にフィルタ32Sの時定数時間を加えたものよりも長い場合はリーク電流の検出が可能である。
【0034】
これに対して、図19に示すように、上記のオンパルス幅がマスク期間に時定数時間を加えたものよりも短くなると、リーク電流は検出できない。そこで、第9実施形態では、オン期間判定部37がオンパルス幅の長さを(マスク期間+時定数時間)を閾値として比較し、図20に示すように、オンパルス幅が閾値よりも短い場合はカウンタ34のリセットを阻止する。これにより、実際にはリーク電流が流れているにも関わらず、オン駆動素子3のオン期間が短いためにカウンタ34がリセットされてしまい、リーク電流の検出ができなくなったり遅延することを防止できる。
【0035】
(第10実施形態)
図21に示す第10実施形態のリーク電流検出回路38Sは、第8実施形態のリーク電流検出回路33Sにおける制御ブロック6Aを、制御ブロック6Cに置き換えた構成である。制御ブロック6Cは、制御ブロック6Aにオン時間測定部39,オン時間レジスタ40(n)及び40(n+1)並びにリーク判定部41を加えたものである。これらも、低電位側検出部を構成する。
【0036】
図22に示すように、第10実施形態ではパワー素子1のオンオフ制御のパターンを、例えば正弦波のような所定の波形に応じて電気角周期毎に繰り返すことを前提とする。オン時間測定部39は、ゲート駆動部35が出力するゲート駆動信号のオン時間幅を測定して、オン時間レジスタ40(n+1)に順次格納する。オン時間レジスタ40(n)には、前回の測定結果が格納されている。リーク判定部41は、オン時間レジスタ40(n),40(n+1)のレジスタ値を比較し、前者の値が後者の値よりも小さくなると、その時点のオン時間レジスタ40(n)の値を最小値として確定する。その最小値から次の最小値を確定するまでの間が電気角の1周期であり、図22に示すゲート-ソース間のリーク判定周期となる。
【0037】
リーク判定部41は、上記の判定周期内に、カウンタ34のカウント値が、例えば図24に示すように「4」以上となった場合に、ゲート-ソース間の「リークあり」と判定する。尚、図22に示すゲート-ソース間のリーク判定周期については、上記と同様にオン時間レジスタ40(n),40(n+1)のレジスタ値を比較して最大値を確定し、次の最大値を確定するまでを判定周期とすれば良い。
【0038】
(第11実施形態)
図25に示す第11施形態のリーク電流検出回路42Sは、第10実施形態のリーク電流検出回路38Sにおける制御ブロック6Cを、制御ブロック6Dに置き換えた構成である。制御ブロック6Dは、制御ブロック6Cのリーク判定部41をサブリーク判定部41として、サブリーク判定部41の出力端子にカウンタ43及びリーク判定部44を直列に接続した構成である。これらも、低電位側検出部を構成する。
【0039】
カウンタ43は、サブリーク判定部41が「リークあり」と判定した回数をカウントする。また、リーク判定周期内にカウンタ34のカウント値が「4」に達しなかった場合は、カウンタ43をリセットする。そして、図26に示すように、カウンタ43が3判定周期に亘ってインクリメントされ、そのカウント値が「3」に達すると、リーク判定部44は「リークあり」と判定する。
【0040】
尚、第7~第11実施形態は、ソース側のリーク電流を検出する回路を示したが、ドレイン側のリーク電流を検出する回路についても各実施形態と同様に構成できる。第9実施形態をドレイン側のリーク電流を検出する回路に適用する際に、オン期間判定部37に相当するものは、パワー素子1のオフ期間について判定を行なうオフ期間判定部となる。
【0041】
(第12~第14実施形態)
第12~第14実施形態は、電流センスアンプ7の具体回路例を示す。図27に示す第12実施形態は、電流センスアンプ7Aを1段の増幅回路で構成した場合を示す。
図28に示す第13実施形態は、電流センスアンプ7Bを計装アンプで構成した場合を示す。
図29に示す第14実施形態は、電流センスアンプ7Cをスイッチトキャパシタ回路で構成した場合を示す。
【0042】
(第15実施形態)
第1~第11実施形態では、リーク電流検出回路を、図30に示すインバータ回路51において、下アーム側のパワー素子52Dについてリーク電流を検出する回路53Dを示したが、同図に示すように、上アーム側のパワー素子52Uについても、同様のリーク電流検出回路53Uを適用することができる。パワー素子52UがIGBTであれば、高電位側導通端子はコレクタ、低電位側導通端子はエミッタとなる。また、パワー素子52UがPチャネルMOSFETであれば、高電位側導通端子はソース、低電位側導通端子はドレインとなる。
【0043】
(第16実施形態)
図31に示す第16実施形態のリーク電流検出回路61Sは、第1実施形態の構成において、電流センスアンプ7Sの非反転入力端子,反転入力端子を、それぞれオン駆動素子3のドレイン,ソースに接続した構成である。すなわち、ゲート抵抗5に替えて、オン駆動素子3のオン抵抗を利用してリーク電流を検出する。尚、リーク電流検出回路61Dを構成する場合は、オフ駆動素子4のオン抵抗を利用すれば良い。
【0044】
(第17実施形態)
図32及び図33に示す第17実施形態のリーク電流検出回路62Sは、第10実施形態のリーク電流検出回路38Sにおける制御ブロック6Cを、制御ブロック6Eに置き換えた構成である。第10実施形態と同様に、パワー素子1のオンオフ制御のパターンを、所定の波形に応じて電気角周期毎に繰り返す際に、波形のゼロクロス点を検出することで、リーク判定周期としての電気角周期を検出する。
【0045】
制御ブロック6Eでは、オン時間測定部39,オン時間レジスタ40(n)及び40(n+1)並びにリーク判定部41に替えて、オン/オフ時間測定部63,オン時間レジスタ64及びオフ時間レジスタ65並びにリーク判定部66を備えている。これらは、低電位側検出部を構成する。高電位側検出部についても同様に構成できる。他の実施形態についても同様である。
【0046】
次に、第17実施形態の作用について説明する。ゼロクロス点では、PWM信号のデューティ比が50%になるので、その前後でパワー素子1のオン時間、オフ時間の大小関係が入れ替わる。オン/オフ時間測定部63は、ゲート駆動部35より入力されるオンパルス信号及びオフパルス信号のパルス幅;時間を測定する。測定結果は、それぞれオン時間レジスタ64、オフ時間レジスタ65に格納される。リーク判定部66は、レジスタ64、65に格納されたレジスタ値の大小を比較する。
【0047】
リーク判定部66において、
(オン時間レジスタ値)<(オフ時間レジスタ値)から
(オン時間レジスタ値)>(オフ時間レジスタ値)に変化したタイミング、又は
(オン時間レジスタ値)>(オフ時間レジスタ値)から
(オン時間レジスタ値)<(オフ時間レジスタ値)に変化したタイミング、を検出する。各タイミングの間が電気角1周期に相当するので、それを判定周期とする。
【0048】
リーク判定部66は、上記の判定周期内に、例えば第10実施形態と同様に、カウンタ34のカウント値が「4」以上となった場合に、ゲート-ソース間の「リークあり」と判定する。
【0049】
尚、ゼロクロス点を判定する際には、デューティ比50%の判定にマージンを持たせても良い。例えば、オン時間レジスタ値にマージン値を加減算した値をオフ時間レジスタ値と比較したり、オフ時間レジスタ値にマージン値を加減算した値をオン時間レジスタ値と比較しても良い。また、上下アームの短絡を防止するため、上下同時にオフとなる期間であるデッドタイムを付与することで、デューティ比が50%から前後する場合についても、同様に適用が可能である。
【0050】
(第18実施形態)
図34に示す第18実施形態のリーク電流検出回路67Sは、第17実施形態のリーク電流検出回路62Sにおける制御ブロック6Eを、制御ブロック6Fに置き換えた構成である。制御ブロック6Fでは、制御ブロック6Eのオン/オフ時間測定部63,オン時間レジスタ64及びオフ時間レジスタ65並びにリーク判定部66を、クロック発生回路68、カウンタ69及びリーク判定部70に置き換えている。
【0051】
カウンタ69は、クロック発生回路68が出力するクロックパルスの数をカウントし、カウント値が所定値に達するとリーク判定回路70に通知を行うと共に、カウント値をリセットする。所定値は、例えば2極モータで回転数が3000rpm、PWM制御のキャリア周波数が10kHzであれば、200以上に設定すれば良い。リーク判定回路70は、カウンタ69からの通知の間隔を判定周期とする。判定周期は、例えば上述の電気角1周期よりも十分に長い時間とする。
【0052】
(第19実施形態)
図35に示す第19実施形態のリーク電流検出回路71Sは、第18実施形態のリーク電流検出回路67Sにおける制御ブロック6Fを、制御ブロック6Gに置き換えた構成である。制御ブロック6Gでは、クロック発生回路68を削除して、カウンタ69は、ゲート駆動部35より出力されるオン信号又はオフ信号のパルス出力数をカウントし、第18実施形態と同様にリーク判定部70に通知を行う。すなわち、パルス出力数をカウントした値の所定値が判定周期となる。
【0053】
(第20実施形態)
図36に示す第20実施形態のリーク電流検出回路72Sは、第19実施形態のリーク電流検出回路71Sにおける制御ブロック6Gを、制御ブロック6Hに置き換えた構成である。制御ブロック6Gは、カウンタ34、ゲート駆動部35及びリーク判定部73で構成される。PWM信号生成回路74は、交流電圧指令Vx及び内部のキャリアカウンタが発生させる電気角情報θに基づいてPWM信号を生成し、ゲート駆動部35に出力する。リーク判定部73には、電気角情報θが入力されており、その電気角情報θに基づいて第17実施形態と同様に電気角1周期を検知して判定周期とする。
【0054】
(第21実施形態)
図37に示す第21実施形態のリーク電流検出回路75Sは、第4実施形態のようにゲート抵抗5H、5Lを備えている構成において、ゲート抵抗5Hの端子電圧をA/Dコンバータ76H,76LによりA/D変換して検出する。A/Dコンバータ76Hの入力端子は、オン側駆動素子3のドレインに接続され、A/Dコンバータ76Lの入力端子は、ゲート抵抗5H、5Lの共通接続点に接続されている。A/Dコンバータ76H,76Lそれぞれの基準電位は、何れもグランドである。
【0055】
A/D変換されたデータは、それぞれレジスタ77H、77Lに格納され、これらのレジスタ値は減算回路78に入力される。減算回路78がレジスタ77Hのレジスタ値より、レジスタ77Lのレジスタ値を減算すれば、ゲート抵抗5Hの端子電圧を検出でき、その端子電圧よりゲート抵抗5Hを流れる電流を検出できる。
【0056】
(その他の実施形態)
パワー素子は、MOSFETやIGBTに限らない。
リーク電流を判定するカウンタのカウンタ値等は、適宜変更すれば良い。
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0057】
図面中、1はパワー素子、2は駆動回路、3はオン側駆動素子、4はオフ側駆動素子、7は電流センスアンプ、8はコンパレータ、10はマスク回路、11はリーク電流検出回路を示す。
図1
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