(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-08
(45)【発行日】2025-07-16
(54)【発明の名称】シッフ塩基オリゴマー
(51)【国際特許分類】
C07C 337/08 20060101AFI20250709BHJP
C07F 7/18 20060101ALI20250709BHJP
【FI】
C07C337/08 CSP
C07F7/18 Q
(21)【出願番号】P 2022551354
(86)(22)【出願日】2021-03-05
(86)【国際出願番号】 US2021020986
(87)【国際公開番号】W WO2021178739
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2024-02-13
(32)【優先日】2020-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【氏名又は名称】黒田 晋平
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【氏名又は名称】崔 允辰
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・マイケル・ツヴァイク
(72)【発明者】
【氏名】ウェイニー・エム・シュエット
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108144591(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 337/04
C07F 7/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
によって表されるオリゴマーであって、式中、
R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
10、R
11、R
12、R
13およびR
14の各実例が、水素、アルキル、シクロアルキル、アルコキシル、アリールオキシル、エーテルおよびヘテロシクリルからなる群から独立して選択され、
R
9の各実例が、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリルおよびエーテルからなる群から独立して選択され、
R
28およびR
29の各実例が、水素、アルキルおよびアリールからなる群から独立して選択され、
R
33の各実例が、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリルおよび結合からなる群から独立して選択され、
R
41の各実例が、独立して、-NH-または結合であり、R
40の各実例が、独立して、-NH-または-NH-NH-であり、
R
42の各実例が、独立して、-NH-または結合であり、R
43の各実例が、独立して、-NH-または-NH-NH-であり、
Qの各実例が、独立して、-CH
2-または酸素であり、
n、m、zおよびtの各実例が1から50の整数であり、
R
44は、ヒドロキシル、ヒドロキシ置換アルキルであるか、または構造:
【化2】
によって表され、式中、
R
1は、水素またはシリルであり、
R
2およびR
3は、水素、アルキルおよびアリールからなる群から独立して選択され、
R
31は、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリルおよび結合からなる群から選択され、
R
50は-NH-または結合であり、R
32は-NH-または-NH-NH-であり、
R
34は-NH-または結合であり、R
35は-NH-または-NH-NH-であり、
xは1から50の整数であり、
R
30は、水素、シリルであるか、または構造:
【化3】
によって表され、式中、
R
4’、R
5’、R
6’、R
7’、R
8’、R
10’、R
11’、R
12’、R
13’およびR
14’の各々は、水素、アルキル、シクロアルキル、アルコキシル、アリールオキシル、エーテルおよびヘテロシクリルからなる群から独立して選択され、
R
9’は、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリルおよびエーテルからなる群から選択され、
R
44’は、ヒドロキシルまたはヒドロキシ置換アルキルであり、
Q’の各実例が独立して、-CH
2-または酸素であり、
n’およびm’の各々は、1から50の整数である、オリゴマー。
【請求項2】
R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
10、R
11、R
12、R
13およびR
14の各実例が、水素およびC
1-C
5アルキルからなる群から独立して選択され、場合により、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
10、R
11、R
12、R
13およびR
14の各実例が水素である、請求項1に記載のオリゴマー。
【請求項3】
R
28およびR
29の各実例が、水素およびC
1-C
5アルキルからなる群から独立して選択される、請求項1に記載のオリゴマー。
【請求項4】
R
28およびR
29の各実例が水素である、請求項1に記載のオリゴマー。
【請求項5】
Qの各実例が酸素である、請求項1に記載のオリゴマー。
【請求項6】
R
41が-NH-である場合、R
40は-NH-であり、R
41が結合である場合、R
40は-NH-NH-であり、
R
42が-NH-である場合、R
43は-NH-であり、R
42が結合である場合、R
43は-NH-NH-である、
請求項1に記載のオリゴマー。
【請求項7】
R
9の各実例が、独立して、C
1-C
10アルキルまたはポリエーテルであり、場合により、R
9の各実例がポリエーテルである、請求項1に記載のオリゴマー。
【請求項8】
前記ポリエーテル
が400 g/mol
~700 g/molの分子量を有する、請求項
7に記載のオリゴマー。
【請求項9】
R
33の各実例が結合である、請求項1に記載のオリゴマー。
【請求項10】
R
33の各実例が、C
1-C
10アルキルから独立して選択される、請求項1に記載のオリゴマー。
【請求項11】
R
33の各実例が、式:
【化4】
または
【化5】
によって表されるフェニルから独立して選択され、式中、R
60、R
61、R
62およびR
63は、水素およびC
1-C
10アルキルから独立して選択される、請求項1に記載のオリゴマー。
【請求項12】
R
30およびR
1の各々が水素である、請求項1に記載のオリゴマー。
【請求項13】
R
30がシリルである、請求項1に記載のオリゴマー。
【請求項14】
前記シリルがグリシジルエーテルシリルであり、および/または前記シリルが、
【化6】
および
【化7】
からなる群から選択され、および/または前記シリルが、式:
【化8】
によって表され、式中、R
45、R
46およびR
47の各々は、水素およびC
1-C
20アルキルからなる群から独立して選択され、R
48は、アルキル、シクロアルキル、エーテルおよびアリールからなる群から選択される、請求項1に記載のオリゴマー。
【請求項15】
R
45、R
46およびR
47の各々が水素であり、および/またはR
45、R
46およびR
47の各々がC
1-C
5アルキルである、請求項1
4に記載のオリゴマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の態様は、シッフ塩基オリゴマーおよびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機、宇宙船、および他の機械の製造に使用される鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、および亜鉛めっき金属などの金属は、腐食を受けやすい可能性がある。六価クロムの亜鉛塩などのクロメートは、塗料、シーラントおよび洗浄プライマーなどの腐食防止コーティングの腐食防止剤として使用されてきた。コーティングおよび他の用途に使用されるクロメートの量を低減することが望まれている。
【0003】
いくつかの非クロメート腐食防止剤が提案されている。例えば、Guptaら「Green Schiff’s bases as corrosion inhibitors for mild steel in 1 M HCl solution:experimental and theoretical approach」RSC Adv.,2016,6,102076-102087には、腐食防止剤として分子量255.05以下のシステインシッフ塩基が開示されている。Rasoolら「Coordination Polymers:Preparation,Physicochemical Characterization,Thermal and Biological Evaluation of Thiosemicarbazide Polychelates」J Inorg Organomet Polym 25,763-771(2015)は、抗菌性および防汚性を有するCo、Ni、Cu、またはZnの遷移金属と錯体を形成したシッフ塩基ポリマーを開示している。
【0004】
全体として、六価クロム代替腐食防止剤は、六価クロムを含有するものと比較して制限を有する可能性があり、それらの接着性は下地の基板およびその上に配置されたコーティングには不十分であり得る。さらに、代替的な腐食防止剤は、航空宇宙性能要件を満たさないことが多い。
【0005】
六価クロムをほとんどまたは全く使用せずに、金属表面を腐食から保護するための改善されたコーティングを提供するための新しい腐食防止剤が必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Guptaら「Green Schiff’s bases as corrosion inhibitors for mild steel in 1 M HCl solution:experimental and theoretical approach」RSC Adv.,2016,6,102076-102087
【文献】Rasoolら「Coordination Polymers:Preparation,Physicochemical Characterization,Thermal and Biological Evaluation of Thiosemicarbazide Polychelates」J Inorg Organomet Polym 25,763-771(2015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の態様は、シッフ塩基オリゴマーおよびその使用に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
少なくとも1つの態様では、オリゴマーは、式(I):
【化1】
によって表され、式中、
R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
10、R
11、R
12、R
13およびR
14の各実例が、水素、アルキル、シクロアルキル、アルコキシル、アリールオキシル、エーテルおよびヘテロシクリルからなる群から独立して選択され、
R
9の各実例が、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリルおよびエーテルからなる群から独立して選択され、
R
28およびR
29の各実例が、水素、アルキルおよびアリールからなる群から独立して選択され、
R
33の各実例が、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリルおよび結合からなる群から独立して選択され、
R
41の各実例が、独立して、-NH-または結合であり、R
40の各実例が、独立して、-NH-または-NH-NH-であり、
R
42の各実例が、独立して、-NH-または結合であり、R
43の各実例が、独立して、-NH-または-NH-NH-であり、
Qの各実例が独立して、-CH
2-または酸素であり、
n、m、zおよびtの各実例が1から50の整数であり、
R
44は、ヒドロキシル、ヒドロキシ置換アルキルであるか、または構造:
【化2】
によって表され、式中、
R
1は、水素またはシリルであり、
R
2およびR
3は、独立して、水素、アルキルおよびアリールからなる群から選択され、
R
31は、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリルおよび結合からなる群から選択され、
R
50は、-NH-または結合であり、R
32は、-NH-または-NH-NH-であり、
R
34は-NH-または結合であり、R
35は-NH-または-NH-NH-であり、
xは1から50の整数であり、
R
30は、水素、シリルであるか、または構造:
【化3】
によって表され、式中、
R
4’、R
5’、R
6’、R
7’、R
8’、R
10’、R
11’、R
12’、R
13’およびR
14’の各々は、水素、アルキル、シクロアルキル、アルコキシル、アリールオキシル、エーテルおよびヘテロシクリルからなる群から独立して選択され、
R
9’は、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリルおよびエーテルからなる群から選択され、
R
44’は、ヒドロキシルまたはヒドロキシ置換アルキルであり、
Q’の各実例が、独立して、-CH
2-または酸素であり、
n’およびm’の各々は、1から50の整数である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の態様は、シッフ塩基オリゴマーおよびその使用に関する。シッフ塩基オリゴマーは、金属への結合を提供して腐食を防止し、かつ金属および金属酸化物への接着を増強するために、1つ以上のシリル基を有し得る。一般に、シッフ塩基は、一般構造R1R2C=NR’(式中、R’≠H)を有する化合物である。
【0010】
いくつかの態様では、シッフ塩基オリゴマーは、シッフ塩基単量体単位の2つ以上の繰り返し単位を含み、各シッフ塩基単量体単位は、少なくとも1つのチオカルボニル基を有する。シッフ塩基オリゴマーは、シッフ塩基単量体単位の2つ以上の繰り返し単位を連結する連結単位を有し得る。例えば、連結単位は、水酸基を有し得る。あるいは、連結単位は、尿素含有単位であり得る。
【0011】
シッフ塩基オリゴマーは、溶媒に分散可能であり得る。シッフ塩基オリゴマーは、1つ以上の金属を含む(例えば、分散されているか、またはイオン結合されている)組成物であってもよい。例えば、金属は、遷移金属のカチオン種であり得る。
【0012】
いくつかの態様では、シッフ塩基オリゴマーは、シッフ塩基単量体単位が金属腐食を防止する膜形成コーティングとして働く。シッフ塩基オリゴマーは、従来の腐食防止剤と比較して、金属の表面へのシッフ塩基オリゴマーの改善された接着および表面での防止剤の濃度の増加を提供する。シッフ塩基オリゴマーは、300ダルトン未満の小分子シッフ塩基などの小分子シッフ塩基と比較して、ポリマーまたはオリゴマーのゆっくりとした溶解またはゆっくりとした加水分解による長期腐食防止を提供することができる徐放または制御放出システムを提供することができる。
【0013】
特定の態様では、シッフ塩基オリゴマーは、300ダルトン以上、例えば500ダルトン以上、例えば1,000ダルトン以上、例えば10,000ダルトン以上、例えば15,000ダルトン以上の分子量を有する。
【0014】
シッフ塩基オリゴマーは、第3級窒素原子およびチオカルボニル硫黄原子を介して金属(例えば、組成物および/または金属基板)と相互作用することができる。金属と相互作用(例えば、キレート化)することができる同じ分子上に多数の基を有することにより、最初の基が例えば金属表面と相互作用すると、各後続の基はより低いエンタルピー損失と相互作用することができ、形成に対する障壁を低下させ、安定性を高め、最終的に従来の腐食防止剤と比較してシッフ塩基オリゴマーの接着性を改善する。さらに、シッフ塩基オリゴマーがシリル末端封鎖を有する例では、シリル基は、シリル基の1つ以上の原子を介して基板へのシッフ塩基オリゴマーのさらなる接着性を提供することができる。
【0015】
特定の態様では、シッフ塩基オリゴマーは、金属(例えば、純金属、金属合金、および/または金属酸化物)表面への良好な接着性を有し、イミン、チオカルボニル、第2級ヒドロキシル基、および/または尿素含有単位を介した表面への配位による腐食防止を提供する。さらに、第2級ヒドロキシル基は、エポキシおよびウレタンプライマーと反応して結合層形態を提供することができる。例えば、シッフ塩基オリゴマーのヒドロキシル基は、ウレタンプライマーのイソシアネート基と反応することができる。オリゴマーは、耐久性を提供するのに役立ち、かつ結晶化を回避するのに十分低いガラス転移温度(Tg)(例えば、約-25℃以下)を有する複数の機能的結合部位を提供する。
【0016】
接着性は、遊離シッフ塩基錯体および関連する金属錯体の詳細なIR(表2)、1 H NMR(セクション5.3)および電子スペクトル(セクション5.4および表3)を提供するRasoolらのJ.Inorg.Organomet Polym 2015,Vol.15,pp 763-771に記載されているように決定することができる。データは、錯体中の窒素原子および酸素原子への金属結合の形成を確認している。IR延伸周波数は、金属-窒素または金属-酸素結合の形成時に8から25cm-1シフトする。シッフ塩基は、個別の金属原子に対して錯体を形成するポリマー種である。
【0017】
特定の態様では、シッフ塩基オリゴマーは、イミンおよびチオカルボニル基ならびに金属基板への接着性を提供するための1つ以上の任意選択の第2級ヒドロキシル基および/または1つ以上の尿素含有単位を有するポリマーチオセミカルバゾン単量体単位を含む。
【0018】
シッフ塩基オリゴマーを、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジグリシジルエーテル、または他の適切なエーテルなどのエーテルと反応させて、シッフ塩基オリゴマーの分散性を高めることができる。分散性シッフ塩基ポリマー(例えば、水溶性、水分散性、水性有機溶剤ブレンド可溶性、水性有機溶剤ブレンド分散性、有機溶剤可溶性、有機溶剤分散性)は、金属および金属酸化物表面への良好な接着性を有し、イミン、チオカルボニル/カルボニルおよび/またはヒドロキシル基を介した表面への配位による腐食防止を提供する。さらに、第2級ヒドロキシル基などのヒドロキシル基は、エポキシおよびウレタンプライマーと反応して結合層形態を提供することができる。例えば、利用可能な第2級ヒドロキシル基は、ポリウレタンコーティング配合物のイソシアネートと反応することができる。共有結合の形成は、プライマーに結合するために望ましい場合がある。ポリマーは複数の機能的結合部位を提供し、これは必要な耐久性を提供するのに役立ち、例えば寒冷環境での使用中に結晶化を回避するのに十分低いTg(例えば、約-25℃以下)を有する。本開示のシッフ基板は、4万フィートの外気温度が-40°F以下であり得る民間および防衛航空機で遭遇する温度範囲を経験する金属に適した腐食防止コーティングを提供することができる。
【0019】
シッフ塩基オリゴマーの製造方法
シッフ塩基オリゴマーを製造する方法は、第1の反応生成物を形成するために少なくとも1つのチオカルボニル基および少なくとも2つの末端-NH2基を有するシッフ塩基単量体をジカルボニルと反応させるステップを含む。例えば、シッフ塩基単量体は、チオカルバジドまたはチオセミカルバジドであり得る。第1の反応生成物は、2つの末端-NH2基を有する。いくつかの態様では、シッフ塩基単量体を加熱し、続いてジカルボニルおよび酸(例えば、HClなどの強酸など)を添加して反応混合物を形成することができる。反応混合物を冷却(および場合により周囲温度未満に冷却)して、第1の反応生成物を形成することができる。
【0020】
第1の反応生成物は、1つ以上のエポキシ含有化合物と反応させて、1つ以上のヒドロキシル基を有する第2の反応生成物を形成することができる。あるいは、第1の反応生成物を1つ以上のイソシアネート含有化合物と反応させて、1つ以上の尿素含有連結およびチオカルボニル基を有する1つ以上の単量体単位を有する第2の反応生成物を形成することができる。第1の反応生成物とエポキシ含有化合物(またはイソシアネート含有化合物)との反応は、塩基(NaOHなど)および/または酸(バルビツール酸など)の存在下で行うことができる。
【0021】
シッフ塩基オリゴマーは、2つ以上のシッフ塩基単量体単位を含み得る。使用されるシッフ塩基単量体は、チオセミカルバジド、チオカルバジド、または2つ以上の末端(-NH2)基を有する任意の適切なチオカルボニル含有化合物であり得る。例えば、シッフ塩基オリゴマーは、チオカルバジドまたはチオセミカルバジドと、2つ以上のカルボニル基を含むジカルボニルとを反応させることによって作製することができる。2つ以上のカルボニル基を含むカルボニルは、本明細書では「ジカルボニル」と呼ばれる。カルボニル基は、アルデヒド、ケトン、およびそれらの組み合わせであり得る。ジカルボニルのカルボニル基は、チオカルバジドまたはチオセミカルバジドのいずれかの末端の窒素原子と反応することができる。ジカルボニルは、2つ以上のチオカルバジドまたはチオセミカルバジドを一緒に連結して、第1の反応生成物を形成することができる。
【0022】
あるいは、シッフ塩基オリゴマーは、チオカルバジドまたはチオセミカルバジドと、2つ以上のイソシアネート基を含むジイソシアネートとを反応させることによって作製することができる。2つ以上のイソシアネート基を含むカルボニルは、本明細書では「ジイソシアネート」と呼ばれる。ジイソシアネートのカルボニル基は、チオカルバジドまたはチオセミカルバジドのいずれかの末端の窒素原子と反応することができる。ジイソシアネートは、2つ以上のチオカルバジドまたはチオセミカルバジドを一緒に連結して、第1の反応生成物を形成することができる。
【0023】
第1の反応生成物の末端アミン基は、ジエポキシドと反応してシッフ塩基オリゴマーを形成することができる。ジエポキシドは、分散性を高めることができる。例えば、親水性基を有するジエポキシドは、水性溶媒または水性有機ブレンド溶媒中のシッフ塩基オリゴマーの分散性を高めることができる。例えば、疎水性基(例えば、アルキル、アリールなどの有機基)を有するエポキシは、有機溶媒中のシッフ塩基オリゴマーの分散性を高めることができる。水分散性を高めることができるエポキシとしては、例えば、フェノールグリシジルエーテル、ラウリルアルコールグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルが挙げられる。特定の態様では、エポキシは、低分子量ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルなどの低分子量エポキシ(例えば、約600ダルトン以下)である。
【0024】
あるいは、第1の反応生成物の末端アミン基は、ジイソシアネートと反応してシッフ塩基オリゴマーを形成することができる。ジイソシアネートは、分散性を高めることができる。例えば、親水性基を有するジイソシアネートは、水性溶媒または水性有機ブレンド溶媒中のシッフ塩基オリゴマーの分散性を高めることができる。例えば、疎水性基(例えば、アルキル、アリールなどの有機基)を有するジイソシアネートは、有機溶媒中のシッフ塩基オリゴマーの分散性を高めることができる。水分散性を高め得るジイソシアネートとしては、例えば、メチレン-ビス(フェニルイソシアネート)(MDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、メチレンビス-シクロヘキシルイソシアネート(HMDI)(水添MDI)、およびイソホロンジイソシアネート(IPDI)等が挙げられる。
【0025】
いくつかの態様では、シッフ塩基オリゴマーは、シリル末端封鎖シッフ塩基オリゴマーである。シッフ塩基オリゴマーは、1つ以上の末端アミン基を有し得る。1つ以上の末端アミン基をシリル含有末端封鎖化合物と反応させて、シリル末端封鎖シッフ塩基オリゴマーを得ることができる。例えば、シリル含有末端封鎖は、反応性部分(例えば、エポキシ基またはハロゲンなどの脱離基)を有することができる。いくつかの例では、シリル含有末端封鎖はエポキシ含有シリル含有末端封鎖である。シリル末端封鎖シッフ塩基オリゴマーは、基板に追加の接着能力を提供することができる。
【0026】
基板上にシッフ塩基オリゴマーを配置する方法
いくつかの態様では、方法は、金属基板などの基板にシッフ塩基オリゴマー(例えば、溶媒中に分散されている)を適用することを含む。シッフ塩基オリゴマーは、例えば表面の完全なコーティングのために、スプレー、ブラッシング、ローラーコーティング、または浸漬によって金属上に適用することができる。様々な方法によって適用することができる材料は、この技術の使用をスケールアップすることを可能にする。航空機産業はスプレーを使用する場合があるが、自動車会社は自動車フレーム用の浸漬槽を使用する場合があり、鉄道車両製造業者はローラーまたはブラシ法を使用する場合がある。シッフ塩基オリゴマーは、水性溶媒、有機溶媒、または水性有機溶媒ブレンドに分散可能であり得る。シッフ塩基オリゴマーの官能基は、例えば、その分散性を高めるために、他の成分と反応させることができる。比較すると、小分子シッフ塩基は多くの場合固体であり、多くの場合粒子としてのみ適用することができる。
【0027】
特定の態様では、シッフ塩基オリゴマーは、3000時間のASTM B117塩霧暴露試験の合格/不合格によって決定されるように、長期間にわたって腐食保護を提供する。シッフ塩基オリゴマーは、長期間にわたって金属表面の腐食防止を提供する連続膜を形成することができる。シッフ塩基オリゴマーは、航空宇宙ビークル、自動車、トラック、列車、ボート、船舶、建物、橋、および他の金属部品の金属表面の腐食を防止するためのコーティングを形成することができる。
【0028】
シッフ塩基オリゴマー
いくつかの態様では、シッフ塩基オリゴマーは、式(I):
【化4】
によって表され、式中、
R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
10、R
11、R
12、R
13およびR
14の各実例が、水素、アルキル、シクロアルキル、アルコキシル、アリールオキシル、エーテルおよびヘテロシクリルからなる群から独立して選択され、
R
9の各実例が、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリルおよびエーテルからなる群から独立して選択され、
R
28およびR
29の各実例が、水素、アルキルおよびアリールからなる群から独立して選択され、
R
33の各実例が、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリルおよび結合からなる群から独立して選択され、
R
41の各実例が、独立して、-NH-または結合であり、R
40の各実例が、独立して、-NH-または-NH-NH-であり、
R
42の各実例が、独立して、-NH-または結合であり、R
43の各実例が、独立して、-NH-または-NH-NH-であり、
Qの各実例が独立して、-CH
2-または酸素であり、
n、m、zおよびtの各実例が、1から50の整数、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、および10からなる群から独立して選択される整数であり、
R
44は、ヒドロキシル、ヒドロキシ置換アルキルであるか、または構造:
【化5】
によって表され、式中、
R
1は、水素またはシリルであり、
R
2およびR
3は、独立して、水素、アルキルおよびアリールからなる群から選択され、
R
31は、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリルおよび結合からなる群から選択され、
R
50は、-NH-または結合であり、R
32は、-NH-または-NH-NH-であり、
R
34は-NH-または結合であり、R
35は-NH-または-NH-NH-であり、
xは、1から50の整数、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、および10からなる群から選択される整数であり、
R
30は、水素、シリルであるか、または構造:
【化6】
によって表され、式中、
R
4’、R
5’、R
6’、R
7’、R
8’、R
10’、R
11’、R
12’、R
13’およびR
14’の各々は、水素、アルキル、シクロアルキル、アルコキシル、アリールオキシル、エーテルおよびヘテロシクリルからなる群から独立して選択され、
R
9’は、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリルおよびエーテルからなる群から選択され、
R
44’は、ヒドロキシルまたはヒドロキシ置換アルキルであり、
Q’の各実例が、独立して、-CH
2-または酸素であり、
n’およびm’の各々は、1から50の整数、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、および10からなる群から独立して選択される整数である。
【0029】
いくつかの態様では、R4、R5、R6、R7、R8、R10、R11、R12、R13およびR14(またはR4’、R5’、R6’、R7’、R8’、R10’、R11’、R12’、R13’およびR14’)の各実例が、水素およびC1-C5アルキルからなる群から独立して選択される。いくつかの態様では、R4、R5、R6、R7、R8、R10、R11、R12、R13およびR14(またはR4’、R5’、R6’、R7’、R8’、R10’、R11’、R12’、R13’およびR14’)の各実例が、水素である。いくつかの態様では、R28またはR29(またはR2およびR3)の各実例が、水素およびC1-C5アルキルからなる群から独立して選択される。いくつかの態様では、R28またはR29(またはR2およびR3)の各実例が、水素である。いくつかの態様では、Qの各実例が酸素である。
【0030】
いくつかの態様では、R41が-NH-である場合、R40は-NH-であり、および/またはR41が結合である場合、R40は-NH-NH-である。いくつかの態様では、R42が-NH-である場合、R43は-NH-であり、および/またはR42が結合である場合、R43は-NH-NH-である。
【0031】
いくつかの態様では、R50が-NH-である場合、R32は-NH-であり、R50が結合である場合、R32は-NH-NH-である。いくつかの態様では、R34が-NH-である場合、R35は-NH-であり、R34が結合である場合、R35は-NH-NH-である。
【0032】
いくつかの態様では、R9(またはR9’)の各実例が、独立して、C1-C10アルキルまたはポリエーテルである。例えば、R9(またはR9’)は、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールから選択されるポリエーテルであってもよい。ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールは、約100 g/mol~約1,000 g/mol、例えば約400 g/mol~約700 g/molの分子量を有することができる。
【0033】
いくつかの態様において、R
33(またはR
31)の各実例が、結合である。いくつかの態様では、R
33(またはR
31)の各実例が、C
1-C
10アルキルから独立して選択される。いくつかの態様では、R
33(またはR
31)の各実例が、フェニルから独立して選択される。例えば、フェニルは、式:
【化7】
または
【化8】
によって表され、式中、R
60、R
61、R
62およびR
63は、水素およびC
1-C
10アルキルから独立して選択される。いくつかの例において、R
60、R
61、R
62およびR
63の各々は、水素である。
【0034】
いくつかの態様では、R
30およびR
1は水素である。いくつかの態様では、R
30およびR
1の一方または両方はシリルである。例えば、シリルはグリシジルエーテルシリルであり得る。いくつかの態様では、シリルは、式:
【化9】
によって表され、式中、R
45、R
46およびR
47は、水素およびC
1-C
20アルキル、例えばC
1-C
5アルキルからなる群から独立して選択され、R
48は、(二価)アルキル、シクロアルキル、エーテルおよびアリールからなる群から選択される。いくつかの態様では、R
48はアルキルまたはエーテルである。いくつかの態様では、シリルは
【化10】
または
【化11】
である。
【0035】
いくつかの態様では、シッフ塩基オリゴマーは、式(II):
【化12】
によって表され、式中、
波線は、単結合を分断する線であり、式(II)によって表されるオリゴマーの第2の波線における接続点を示し(換言すれば、R
36は、R
14のアルファに位置する炭素に結合している)、
R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21、R
23、R
24、R
25、R
26およびR
27の各々は、アルキル、シクロアルキル、アルコキシル、アリールオキシル、ヘテロシクリルおよびエーテルからなる群から独立して選択され、
R
9およびR
22の各々は、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールおよびエーテルからなる群から独立して選択され、
R
2、R
3、R
15、R
16、R
28およびR
29の各実例が、水素、アルキル、シクロアルキルおよびアリールからなる群から独立して選択され、
R
31、R
33およびR
51の各実例が、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリルおよび結合からなる群から独立して選択され、
R
34、R
37、R
38、R
41、R
42およびR
50の各実例が、独立して、-NH-または結合であり、R
32、R
35、R
36、R
39、R
40およびR
43の各実例が、独立して、-NH-または-NH-NH-であり、
Qの各実例が独立して、-CH
2-または酸素であり、
n、m、p、q、x、y、およびzの各実例が、1から50の整数、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、および10からなる群から独立して選択される整数であり、
R
1およびR
30の各々は、水素およびシリルからなる群から独立して選択される。
【0036】
いくつかの態様では、式(II)のx、y、およびzの各々は、整数1である。
【0037】
いくつかの態様では、式(II)のR4、R5、R6、R7、R8、R10、R11、R12、R13、R14、R17、R18、R19、R20、R21、R23、R24、R25、R26およびR27の各実例が、水素およびC1-C5アルキルからなる群から独立して選択される。いくつかの態様では、R4、R5、R6、R7、R8、R10、R11、R12、R13、R14、R17、R18、R19、R20、R21、R23、R24、R25、R26およびR27の各実例が、水素である。いくつかの態様では、R2、R3、R15、R16、R28およびR29の各実例が、水素およびC1-C5アルキルからなる群から独立して選択される。いくつかの態様では、R2、R3、R15、R16、R28およびR29の各実例が、水素である。いくつかの態様では、Qの各実例が酸素である。
【0038】
いくつかの態様では、式(II)のR34、R37、R38、R41、R42およびR50がそれぞれ-NH-である場合、R32、R35、R36、R39、R40およびR43はそれぞれ-NH-である。いくつかの態様では、R34、R37、R38、R41、R42およびR50が結合である場合、R32、R35、R36、R39、R40およびR43はそれぞれ-NH-NH-である。
【0039】
いくつかの態様では、式(II)のR9およびR22の各実例が、独立して、C1-C10アルキルまたはポリエーテルである。例えば、R9またはR22は、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールから選択されるポリエーテルであってもよい。ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールは、約100 g/mol~約1,000 g/mol、例えば約400 g/mol~約700 g/molの分子量を有することができる。
【0040】
いくつかの態様では、式(II)のR
31、R
33およびR
51の各実例が、結合である。いくつかの態様では、R
31、R
33およびR
51の各実例が、C
1-C
10アルキルから独立して選択される。いくつかの態様では、R
31、R
33およびR
51の各実例の各実例が、フェニルから独立して選択される。例えば、フェニルは、式:
【化13】
または
【化14】
によって表され、式中、R
60、R
61、R
62およびR
63は、水素およびC
1-C
10アルキルからなる群から独立して選択される。いくつかの例において、R
60、R
61、R
62およびR
63の各々は、水素である。
【0041】
いくつかの態様では、式(II)のR
1およびR
30は水素である。いくつかの態様では、R
1およびR
30の一方または両方はシリルである。例えば、シリルはグリシジルエーテルシリルであり得る。いくつかの態様では、シリルは、式:
【化15】
によって表され、式中、R
45、R
46およびR
47は、水素およびC
1-C
20アルキル、例えばC
1-C
5アルキルからなる群から独立して選択され、R
48は、(二価)アルキル、シクロアルキル、エーテルおよびアリールからなる群から選択される。いくつかの態様では、R
48はアルキルまたはエーテルである。いくつかの態様では、シリルは
【化16】
または
【化17】
である。
【0042】
いくつかの態様では、シッフ塩基オリゴマーは、式(III)
【化18】
によって表され、式中、
波線は、式(III)によって表されるオリゴマーの第2の波線における接続点を示すように示される単結合を分断する線であり(換言すれば、波線に隣接するNH基は、R
14のアルファに位置する炭素に結合している)、
R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21、R
23、R
24、R
25、R
26およびR
27のそれぞれは、水素、アルキル、シクロアルキル、アルコキシル、アリールオキシル、ヘテロシクリルおよびエーテルからなる群から独立して選択され、
R
9およびR
22の各々は、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールおよびエーテルからなる群から独立して選択され、
R
2、R
3、R
15、R
16、R
28およびR
29の各実例が、水素、アルキル、シクロアルキルおよびアリールからなる群から独立して選択され、
R
31、R
32およびR
33の各実例が、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリルおよび結合からなる群から独立して選択され、
n、m、p、およびqの各実例が、1から50の整数、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、および10からなる群から独立して選択される整数であり、
R
1およびR
30の各々は、水素およびシリルからなる群から独立して選択される。
【0043】
いくつかの態様では、式(III)のR4、R5、R6、R7、R8、R10、R11、R12、R13、R14、R17、R18、R19、R20、R21、R23、R24、R25、R26およびR27の各実例が、水素およびC1-C5アルキルからなる群から独立して選択される。いくつかの態様では、R4、R5、R6、R7、R8、R10、R11、R12、R13、R14、R17、R18、R19、R20、R21、R23、R24、R25、R26およびR27の各実例が、水素である。いくつかの態様では、R2、R3、R15、R16、R28およびR29の各実例が、水素およびC1-C5アルキルからなる群から独立して選択される。いくつかの態様では、R2、R3、R15、R16、R28およびR29の各実例が、水素である。
【0044】
いくつかの態様では、式(III)のR9およびR22の各実例が、独立して、C1-C10アルキルまたはポリエーテルである。例えば、R9またはR22は、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールから選択されるポリエーテルであってもよい。ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールは、約100 g/mol~約1,000 g/mol、例えば約400 g/mol~約700 g/molの分子量を有することができる。
【0045】
いくつかの態様では、式(III)のR
31、R
32およびR
33の各実例が、結合である。いくつかの態様では、R
31、R
32およびR
33の各実例が、C
1-C
10アルキルから独立して選択される。いくつかの態様では、R
31、R
32およびR
33の各実例の各実例が、フェニルから独立して選択される。例えば、フェニルは、式:
【化19】
または
【化20】
によって表され、式中、R
60、R
61、R
62およびR
63は、水素およびC
1-C
10アルキルからなる群から独立して選択される。いくつかの例において、R
60、R
61、R
62およびR
63の各々は、水素である。
【0046】
いくつかの態様では、式(III)のR
1およびR
30は水素である。いくつかの態様では、R
1およびR
30の一方または両方はシリルである。例えば、シリルはグリシジルエーテルシリルであり得る。いくつかの態様では、シリルは、式:
【化21】
によって表され、式中、R
45、R
46およびR
47は、水素およびC
1-C
20アルキル、例えばC
1-C
5アルキルからなる群から独立して選択され、R
48は、(二価)アルキル、シクロアルキル、エーテルおよびアリールからなる群から選択される。いくつかの態様では、R
48はアルキルまたはエーテルである。いくつかの態様では、シリルは
【化22】
または
【化23】
である。
【0047】
いくつかの態様では、シッフ塩基オリゴマーは、式(IV):
【化24】
によって表され、式中、
R
9の各実例が、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールおよびエーテルからなる群から独立して選択され、
R
28およびR
29の各実例が、水素、アルキル、シクロアルキルおよびアリールからなる群から独立して選択され、
R
33の各実例が、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリルおよび結合からなる群から独立して選択され、
R
41の各実例が、独立して、-NH-または結合であり、R
40の各実例が、独立して、-NH-または-NH-NH-であり、
R
42の各実例が、独立して、-NH-または結合であり、R
43の各実例が、独立して、-NH-または-NH-NH-であり、
zおよびtの各実例が、1から50の整数、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、および10からなる群から独立して選択される整数であり、
R
44は、ヒドロキシルまたはその脱カルボキシル化誘導体であるか、または構造:
【化25】
によって表され、式中、
R
1は、水素またはシリルであり、
R
2およびR
3は、水素、アルキル、シクロアルキルおよびアリールからなる群から独立して選択され、
R
31は、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリルおよび結合からなる群から選択され、
R
50は、-NH-または結合であり、R
32は、-NH-または-NH-NH-であり、
R
34は-NH-または結合であり、R
35は-NH-または-NH-NH-であり、
xは、1から50の整数、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9および10からなる群から選択される整数であり、
R
30は、水素、シリルであるか、または構造:
【化26】
によって表され、式中、
R
9’は、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールおよびエーテルからなる群から選択され、
R
44’は、ヒドロキシルまたはその脱カルボキシル化誘導体である。
【0048】
式(IV)のいくつかの態様では、R28またはR29(またはR2およびR3)の各実例が、水素およびC1-C5アルキルからなる群から独立して選択される。いくつかの態様では、R28またはR29(またはR2およびR3)の各実例が、水素である。
【0049】
式(IV)のいくつかの態様では、R41が-NH-である場合、R40は-NH-であり、および/またはR41が結合である場合、R40は-NH-NH-である。いくつかの態様では、R42が-NH-である場合、R43は-NH-であり、および/またはR42が結合である場合、R43は-NH-NH-である。
【0050】
式(IV)のいくつかの態様では、R50が-NH-である場合、R32は-NH-であり、R50が結合である場合、R32は-NH-NH-である。いくつかの態様では、R34が-NH-である場合、R35は-NH-であり、R34が結合である場合、R35は-NH-NH-である。
【0051】
式(IV)のいくつかの態様では、R
9(またはR
9’)の各実例が、独立して、C
1-C
10アルキルまたはアリールである。R
9(またはR
9’)は、シクロヘキシルであるC
1-C
10シクロアルキルであり得る。R
9(またはR
9’)は、フェニルであるアリールであり得る。例えば、フェニルは、式:
【化27】
または
【化28】
によって表され、式中、R
60、R
61、R
62およびR
63は、水素およびC
1-C
10アルキルから独立して選択される。いくつかの例において、R
60、R
61、R
62およびR
63の各々は、水素である。
【0052】
式(IV)のいくつかの態様では、R
33(またはR
31)の各実例が、結合である。いくつかの態様では、R
33(またはR
31)の各実例が、C
1-C
10アルキルから独立して選択される。いくつかの態様では、R
33(またはR
31)の各実例が、フェニルから独立して選択される。例えば、フェニルは、式:
【化29】
または
【化30】
によって表され、式中、R
60、R
61、R
62およびR
63は、水素およびC
1-C
10アルキルから独立して選択される。いくつかの例において、R
60、R
61、R
62およびR
63の各々は、水素である。
【0053】
式(IV)のいくつかの態様では、R
30およびR
1は水素である。いくつかの態様では、R
30およびR
1の一方または両方はシリルである。例えば、シリルはグリシジルエーテルシリルであり得る。いくつかの態様では、シリルは、式:
【化31】
によって表され、式中、R
45、R
46およびR
47は、水素およびC
1-C
20アルキル、例えばC
1-C
5アルキルからなる群から独立して選択され、R
48は、(二価)アルキル、シクロアルキル、エーテルおよびアリールからなる群から選択される。いくつかの態様では、R
48はアルキルまたはエーテルである。いくつかの態様では、シリルは
【化32】
または
【化33】
である。
【0054】
いくつかの態様では、シッフ塩基オリゴマーは、式(V):
【化34】
によって表され、式中、
波線は、式(V)によって表されるオリゴマーの第の2波線における接続点を示すように示される単結合を分断する線であり(換言すれば、R
36は、R
14のアルファに位置する炭素に結合している)、
R
2、R
3、R
15、R
16、R
28およびR
29の各実例が、水素、アルキル、シクロアルキルおよびアリールからなる群から独立して選択され、
R
9およびR
22の各々は、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールおよびエーテルからなる群から独立して選択され、
R
31、R
33およびR
51の各実例が、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリルおよび結合からなる群から独立して選択され、
R
34、R
37、R
38、R
41、R
42およびR
50の各実例が、独立して、-NH-または結合であり、R
32、R
35、R
36、R
39、R
40およびR
43の各実例が、独立して、-NH-または-NH-NH-であり、
x、yおよびzの各実例が、1から50の整数、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、および10からなる群から独立して選択される整数であり、
R
1およびR
30の各々は、水素およびシリルからなる群から独立して選択される。
【0055】
いくつかの態様では、式(V)のx、y、およびzの各々は、整数1である。
【0056】
式(V)のいくつかの態様では、R2、R3、R15、R16、R28およびR29の各実例が、水素およびC1-C5アルキルからなる群から独立して選択される。いくつかの態様では、R2、R3、R15、R16、R28およびR29の各実例が、水素である。
【0057】
いくつかの態様では、式(V)のR34、R37、R38、R41、R42およびR50がそれぞれ-NH-である場合、R32、R35、R36、R39、R40およびR43はそれぞれ-NH-である。いくつかの態様では、R34、R37、R38、R41、R42およびR50が結合である場合、R32、R35、R36、R39、R40およびR43はそれぞれ-NH-NH-である。
【0058】
いくつかの態様では、式(V)のR
9およびR
22の各実例が、独立して、C
1-C
10アルキルまたはアリールである。R
9およびR
22は、シクロヘキシルであるC
1-C
10シクロアルキルであり得る。R
9およびR
22は、フェニルであるアリールであり得る。例えば、フェニルは、式:
【化35】
または
【化36】
によって表され、式中、R
60、R
61、R
62およびR
63は、水素およびC
1-C
10アルキルから独立して選択される。いくつかの例において、R
60、R
61、R
62およびR
63の各々は、水素である。
【0059】
いくつかの態様では、式(II)のR
31、R
33およびR
51の各実例が、結合である。いくつかの態様では、R
31、R
33およびR
51の各実例が、C
1-C
10アルキルから独立して選択される。いくつかの態様では、R
31、R
33およびR
51の各実例の各実例が、フェニルから独立して選択される。例えば、フェニルは、式:
【化37】
または
【化38】
によって表され、式中、R
60、R
61、R
62およびR
63は、水素およびC
1-C
10アルキルからなる群から独立して選択される。いくつかの例において、R
60、R
61、R
62およびR
63の各々は、水素である。
【0060】
いくつかの態様では、式(V)のR
1およびR
30は水素である。いくつかの態様では、R
1およびR
30の一方または両方はシリルである。例えば、シリルはグリシジルエーテルシリルであり得る。いくつかの態様では、シリルは、式:
【化39】
によって表され、式中、R
45、R
46およびR
47は、水素およびC
1-C
20アルキル、例えばC
1-C
5アルキルからなる群から独立して選択され、R
48は、(二価)アルキル、シクロアルキル、エーテルおよびアリールからなる群から選択される。いくつかの態様では、R
48はアルキルまたはエーテルである。いくつかの態様では、シリルは
【化40】
または
【化41】
である。
【0061】
いくつかの態様では、シッフ塩基オリゴマーは、式(VI):
【化42】
によって表され、式中、
波線は、式(VI)によって表されるオリゴマーの第2の波線における接続点を示すように示される単結合を分断する線であり(換言すれば、波線の隣のNHは、R
14のアルファに位置する炭素に結合している)、
R
9およびR
22の各々は、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールおよびエーテルからなる群から独立して選択され、
R
2、R
3、R
15、R
16、R
28およびR
29の各々は、水素、アルキル、シクロアルキルおよびアリールからなる群から独立して選択され、
R
31、R
32およびR
33の各々は、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリルおよび結合からなる群から独立して選択され、
R
1およびR
30の各々は、水素およびシリルからなる群から独立して選択される。
【0062】
式(VI)のいくつかの態様では、R2、R3、R15、R16、R28およびR29の各々は、水素およびC1-C5アルキルからなる群から独立して選択される。いくつかの態様では、R2、R3、R15、R16、R28およびR29の各々は、水素である。
【0063】
いくつかの態様では、式(VI)のR
9およびR
22の各実例が、独立して、C
1-C
10アルキルまたはアリールである。R
9およびR
22は、シクロヘキシルであるC
1-C
10シクロアルキルであり得る。R
9およびR
22は、フェニルであるアリールであり得る。例えば、フェニルは、式:
【化43】
または
【化44】
によって表され、式中、R
60、R
61、R
62およびR
63は、水素およびC
1-C
10アルキルから独立して選択される。いくつかの例において、R
60、R
61、R
62およびR
63の各々は、水素である。
【0064】
いくつかの態様では、式(VI)のR
31、R
32およびR
33の各実例が、結合である。いくつかの態様では、R
31、R
32およびR
33の各実例が、C
1-C
10アルキルから独立して選択される。いくつかの態様では、R
31、R
32およびR
33の各実例の各実例が、フェニルから独立して選択される。例えば、フェニルは、式:
【化45】
または
【化46】
によって表され、式中、R
60、R
61、R
62およびR
63は、水素およびC
1-C
10アルキルからなる群から独立して選択される。いくつかの例において、R
60、R
61、R
62およびR
63の各々は、水素である。
【0065】
いくつかの態様では、式(VI)のR
1およびR
30は水素である。いくつかの態様では、R
1およびR
30の一方または両方はシリルである。例えば、シリルはグリシジルエーテルシリルであり得る。いくつかの態様では、シリルは、式:
【化47】
によって表され、式中、R
45、R
46およびR
47は、水素およびC
1-C
20アルキル、例えばC
1-C
5アルキルからなる群から独立して選択され、R
48は、(二価)アルキル、シクロアルキル、エーテルおよびアリールからなる群から選択される。いくつかの態様では、R
48はアルキルまたはエーテルである。いくつかの態様では、シリルは
【化48】
または
【化49】
である。
【0066】
金属
シッフ塩基オリゴマーは、溶媒に分散可能であり得る。シッフ塩基オリゴマーは、1つ以上の金属を含む(例えば、分散されているか、またはイオン結合されている)組成物であってもよい。例えば、金属は、遷移金属のカチオン種であり得る。
【0067】
金属は、カチオンまたは金属塩の形態であり得る。例えば、金属は、アルカリ土類金属、遷移金属および希土類金属塩、例えば、Zn、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ce、Co、Y、Bi、Cd、Pb、Ag、Sb、Sn、Cu、Fe、Ni、Li、Ca、Sr、Mg、Zr、Nd、Ba、Sc、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されてもよい。例えば、金属は、Zn、La、Pr、Ce、Co、Y、Ca、Sr、Ba、Sc、およびZrからなる群から選択されてもよい。金属は、Zn、PrおよびCeのうちの少なくとも1つから選択されてもよい。金属はZnであってもよい。金属はCeであってもよい。金属はPrであってもよい。使用され得る塩のいくつかの例は、硝酸塩、塩化物塩、酢酸塩、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0068】
金属は、任意の適切な酸化状態を有し得ることが理解されよう。例えば、Znの典型的な酸化状態は+2である。Prの典型的な酸化状態は、+2、+3および/または+4である。Ceの典型的な酸化状態は、+2、+3および+4である。上記の金属塩の様々な組み合わせおよび基が本開示の組成物に使用され得ることが理解されるであろう。
【0069】
腐食防止用基板
シッフ塩基オリゴマーまたはその組成物によって腐食から保護され得る基板は、金属基板またはプラスチック基板などの任意の適切な基板であり得る。金属基板は、その表面の少なくとも一部が金属であり、例えばその外面の一部が金属である任意の基板材料を含むことができる。金属基板は、腐食からの保護を必要とする任意の金属を含んでもよい。金属基板は、アルミニウム、例えばアルミニウム合金から選択される金属または合金を含むことができる。金属基板は、アルミニウム合金、例えば、アルミニウムと、銅、マグネシウム、マンガン、ケイ素、スズ、亜鉛、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の金属との合金であってもよい。アルミニウム合金は、銅を含む合金であってもよい。金属基板は、銅含有アルミニウム合金などの銅含有合金であってもよい。合金中の銅の量は、約1重量%~約20重量%、約1重量%~約18重量%、約1重量%~約10重量%、または約1重量%~約6重量%であってもよい。アルミニウム合金は、航空宇宙合金、例えばAA2XXXおよびAA7XXX型であってもよい。例えば、アルミニウム合金は、AA2024型およびAA7075型であってもよい。アルミニウム合金は、自動車用合金、例えばAA6XXX型であってもよい。アルミニウム合金は、海洋合金、例えばAA5XXX型であってもよい。
【0070】
組成物
本開示はまた、(a)シッフ塩基オリゴマーおよび(b)希土類金属、アルカリ土類金属、遷移金属、またはそれらの組み合わせから選択される金属(例えば、金属塩)を含む組成物(例えば、腐食を抑制するための)に関する。シッフ塩基オリゴマーは、金属と相互作用(例えば、キレート)し得る。溶媒(水など)が本開示の組成物に含まれる場合、シッフ塩基オリゴマーは金属から解離する(例えば、可逆的に配位する)ことができる。組成物が溶媒を実質的に含まない態様では、シッフ塩基オリゴマーおよび金属(例えば、金属塩)は、配位オリゴマー(例えば、シッフ塩基オリゴマーと金属との間にイオン結合を有する化合物)の形態であり得るが、このような配位オリゴマーは、依然として本開示の目的のための組成物と考えられる。
【0071】
例えば、組成物は、(a)少なくとも1つのシッフ塩基オリゴマーおよび(b)少なくとも1つの金属(例えば、金属塩)を含むことができ、金属は、Zn、La、Pr、Ce、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Co、Y、Ca、Sr、Ba、Sc、およびZrからなる群から選択される。例えば、少なくとも1つの金属は、Zn、Ce、Pr、またはそれらの組み合わせのいずれか1つであってもよい。
【0072】
組成物は、(a)少なくとも1つのシッフ塩基オリゴマーおよび(b)少なくとも1つの金属(例えば、金属塩)を含むことができ、金属は、Zn、Pr、Ceおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0073】
本開示の組成物は、シッフ塩基オリゴマーの溶解性/分散性を提供するために溶媒をさらに含んでもよい。溶媒は、水、グリコールまたはケトンであり得る。グリコールは、グリコールエーテルアセテートなどのグリコールアセテートを含むことができる。ケトンは、アセトンまたはペンタノンを含むことができる。いくつかの態様では、溶媒は、1-メトキシ-2-プロパノールアセテート、4-メチル-2-ペンタノン、またはそれらの組み合わせである。
【0074】
シッフ塩基オリゴマーの濃度は、約0.001重量%~約20重量%、例えば約0.1重量%~約10重量%、例えば約1重量%~約5重量%、あるいは約5重量%~約10重量%であってもよく、これは、シッフ塩基オリゴマーの溶解性/分散性を提供することができる。
【0075】
いくつかの態様では、組成物中の金属のモル比(例えば、金属塩:シッフ塩基オリゴマー)は、金属と相互作用することができるシッフ塩基オリゴマーの複数の部分の存在に起因して、シッフ塩基オリゴマーと比較して過剰の金属(例えば、金属塩)を含んで提供される。例えば、組成物中の金属塩:シッフ塩基オリゴマーのモル比は、約1:1より大きく、約1.1:1より大きく、約1.2:1より大きく、約1.3:1より大きく、約1.4:1より大きく、約1.5:1より大きく、約1.6:1より大きく、約1.7:1より大きく、約1.8:1より大きく、約1.9:1より大きく、約2:1より大きく、約3:1より大きく、約4:1より大きく、約5:1より大きく、約6:1より大きく、約7:1より大きく、約8:1より大きく、約9:1より大きく、または約10:1より大きくてもよい。組成物中の金属塩:シッフ塩基オリゴマーの比は、約45:1未満、約40:1未満、約35:1未満、約30:1未満、約25:1未満、約20:1未満、約15:1未満、または約10:1未満であってもよい。組成物中の金属:腐食防止剤の比は、約1:1~約45:1、約1.5:1~約40:1、約2:1~約35:1、約2.5:1~約30:1、約3:1~約25:1、約3.5:1~約20:1、約4:1~約15:1、または約5:1~約10:1より大きくてもよい。例えば、組成物中の金属:腐食防止剤の比は、約1.1:1~約45:1、約1.2:1~約40:1、約1.3:1~約35:1、約1.4:1~約30:1、約1.5:1~約25:1、約1.6:1~約20:1、約1.7:1~約15:1、約1.8:1~約10:1、約1.9:1~約9:1、または約2:1~約8:1であってもよい。
【0076】
腐食防止剤組成物は、金属基板などの様々な基板への使用および適用に適しており、例えば、コーティング組成物として提供することができる。組成物は、目的の基板と共に使用するのに適した1つ以上の他の添加剤または腐食防止剤を含み得る。
【0077】
組成物を基板上に堆積させた後、溶媒(使用される場合)は、任意の適切な硬化プロセスによって部分的に、実質的に、または完全に除去することができる。例えば、コーティング組成物は、湿潤状態または経時的に乾燥または硬化する、すなわち溶媒が蒸発する「完全に硬化していない」状態のいずれかで基板に適用することができる。コーティングは、周囲温度で、または加速手段、例えば紫外線硬化システムによって乾燥または硬化して、フィルムまたは「硬化」塗料を形成することができる。コーティングは、接着剤などの半硬化状態または完全硬化状態で適用することもできる。
【0078】
組成物は、膜形成有機ポリマーを含むコーティング組成物であり得る。コーティング組成物は、塗料組成物であってもよい。コーティング組成物は、1つ以上の樹脂、例えばエポキシ系樹脂を含んでもよい。コーティング組成物は、塗料組成物、例えばエポキシ樹脂系塗料組成物であってもよい。
【0079】
コーティング組成物は、粉末コーティング組成物、例えば、本明細書に記載のアルミニウム合金または鋼を含む様々な金属基板の粉末コーティングでの使用に適した粉末コーティング組成物であってもよい。
【0080】
本開示の組成物は、顔料、充填剤および延長剤などの1つ以上の添加剤を含むことができる。本明細書に記載の腐食防止剤を組み合わせることができる適切な添加剤の例としては、例えば、結合剤、溶媒、顔料(可溶性または不溶性の延長剤、充填剤、腐食防止顔料などを含む)、添加剤(例えば、硬化剤、界面活性剤、染料、アミノ酸など)などが挙げられる。いくつかの添加剤は、顔料と適切に考えることもでき、その逆も可能であることに留意されたい(例えば、艶消し剤)。より具体的には、これらの「添加剤」には、グリシン、アルギニン、メチオニン、およびアミノ酸の誘導体、例えばメチオニンスルホキシド、メチルスルホキシド、およびヨウ化物/ヨウ素酸塩、ゼラチンおよびゼラチン誘導体、例えば動物および魚ゼラチン誘導体、直鎖および環状デキストリン、例えばαおよびβシクロデキストリン、トリフル酸、トリフラート、アセテート、タルク、カオリン、有機系イオン交換樹脂、例えば有機系カチオンおよびアニオン交換樹脂、希土類材料の塩、酸化物、および/または混合酸化物と予備交換または反応させた有機系イオン交換樹脂、および/または金属硫酸塩、例えば希土類材料の硫酸塩、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム(無水および水和形態)、硫酸ストロンチウム、硫酸バリウムなど、およびそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0081】
組成物はまた、レオロジー調整剤、充填剤、強化剤、熱またはUV安定剤、難燃剤、潤滑剤、界面活性剤などの他の添加剤を含んでもよい。添加剤は、通常、硬化後の組成物の総重量に基づいて約10%未満の量で存在する。例としては、以下が挙げられる。
(a)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、Methocell 311、Dow)、変性尿素(例えば、Byk 411、410)およびポリヒドロキシカルボン酸アミド(例えば、Byk 405)などのレオロジー調整剤、
(b)ジカルボン酸のエステル(例えば、Lusolvan FBH、BASF社)、グリコールエーテル(例えば、Dowanol、Dow)等の造膜剤、
(c)フッ素系界面活性剤(例えば3M Fluorad)、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン(例えば、Byk 307、333)等の湿潤剤、
(d)脂肪酸誘導体(例えば、Bermadol SPS 2543、Akzo)および第4級アンモニウム塩などの界面活性剤、
(e)第1級アルコール(例えば、Merpol 4481、Dupont)およびアルキルフェノール-ホルムアルデヒド-重硫化物縮合物(例えば、Clariants1494)に基づく非イオン性界面活性剤などの分散剤、
(f)消泡剤
(g)リン酸エステル(例えば、ADDAPT、Anticor C6)、(2-ベンゾチアゾリルチオ)コハク酸のアルキルアンモニウム塩(例えば、Irgacor153 CIBA)、トリアジンジチオール等の腐食防止剤、
(h)ベンゾイミダゾール誘導体(例えば、Bayer、Preventol BCM、殺生物性膜保護)などの安定剤、
(i)フルオロカーボン変性ポリマー(例えば、EFKA 3777)などのレベリング剤、
(j)蛍光剤(Royale Pigment and chemicals)などの顔料または染料、
(k)フルオロセインなどの有機および無機染料、および
(l)塩化リチウム、塩化亜鉛、塩化ストロンチウム、塩化カルシウムおよび塩化アルミニウムなどのルイス酸、
(m)以下のいずれか(またはそれらの組み合わせ)を任意に含むことができる、火炎伝播、熱放出および/または発煙を遅延させる適切な難燃剤:
・リン酸塩、ポリリン酸塩、亜リン酸塩、ホスファジンおよびホスフィン官能基を含有する分子などのリン誘導体、例えば、リン酸メラミン、リン酸ジメラミン、ポリリン酸メラミン、リン酸アンモニア、ポリリン酸アンモニア、リン酸ペンタエリスリトール、亜リン酸メラミンおよびトリフェニルホスフィン。
・メラミン、メラミンシアヌレート、フタル酸メラミン、メラミンフタルイミド、メラムシアヌレート、メレムシアヌレート、メロンシアヌレート、ヘキサメチレンテトラアミン、イミダゾール、アデニン、グアニン、シトシンおよびチミンなどの窒素含有誘導体。
・ホウ酸アンモニアおよびホウ酸亜鉛などのホウ酸官能基を含有する分子。
・ペンタエリスリトール、ポリエチレングリコール、ポリグリコールおよび炭水化物、例えばグルコース、スクロースおよびデンプンなどの2つ以上のアルコール基を含有する分子。
・不燃性分解ガス、例えば金属水酸化物、例えば水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムを吸熱的に放出する分子。
・膨張性グラファイト。
【0082】
態様
本開示は、とりわけ、以下の態様を提供し、その各々は任意の代替の態様を任意選択的に含むと考えることができる。
条項1.式(I):
【化50】
によって表されるオリゴマーであって、式中、
R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
10、R
11、R
12、R
13およびR
14の各実例が、水素、アルキル、シクロアルキル、アルコキシル、アリールオキシル、エーテルおよびヘテロシクリルからなる群から独立して選択され、
R
9の各実例が、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリルおよびエーテルからなる群から独立して選択され、
R
28およびR
29の各実例が、水素、アルキルおよびアリールからなる群から独立して選択され、
R
33の各実例が、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリルおよび結合からなる群から独立して選択され、
R
41の各実例が、独立して、-NH-または結合であり、R
40の各実例が、独立して、-NH-または-NH-NH-であり、
R
42の各実例が、独立して、-NH-または結合であり、R
43の各実例が、独立して、-NH-または-NH-NH-であり、
Qの各実例が独立して、-CH
2-または酸素であり、
n、m、zおよびtの各実例が、1から50の整数、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、および10からなる群から独立して選択される整数であり、
R
44は、ヒドロキシル、ヒドロキシ置換アルキルであるか、または構造:
【化51】
によって表され、式中、
R
1は、水素またはシリルであり、
R
2およびR
3は、独立して、水素、アルキルおよびアリールからなる群から選択され、
R
31は、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリルおよび結合からなる群から選択され、
R
50は、-NH-または結合であり、R
32は、-NH-または-NH-NH-であり、
R
34は-NH-または結合であり、R
35は-NH-または-NH-NH-であり、
xは、1から50の整数、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、および10からなる群から選択される整数であり、
R
30は、水素、シリルであるか、または構造:
【化52】
によって表され、式中、
R
4’、R
5’、R
6’、R
7’、R
8’、R
10’、R
11’、R
12’、R
13’およびR
14’の各々は、水素、アルキル、シクロアルキル、アルコキシル、アリールオキシル、エーテルおよびヘテロシクリルからなる群から独立して選択され、
R
9’は、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリルおよびエーテルからなる群から選択され、
R
44’は、ヒドロキシルまたはヒドロキシ置換アルキルであり、
Q’の各実例が、独立して、-CH
2-または酸素であり、
n’およびm’の各々は、1から50の整数、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、および10からなる群から独立して選択される整数である。
条項2.R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
10、R
11、R
12、R
13およびR
14の各実例が、水素およびC
1-C
5アルキルからなる群から独立して選択される、条項1に記載のオリゴマー。
条項3.R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
10、R
11、R
12、R
13およびR
14の各実例が水素である、条項1または2に記載のオリゴマー。
条項4.R
28およびR
29の各実例が、水素およびC
1-C
5アルキルからなる群から独立して選択される、条項1から3のいずれか一項に記載のオリゴマー。
条項5.R
28およびR
29の各実例が水素である、条項1から4のいずれか一項に記載のオリゴマー。
条項6.Qの各実例が酸素である、条項1から5のいずれか一項に記載のオリゴマー。
条項7.R
41が-NH-である場合、R
40は-NH-であり、R
41が結合である場合、R
40は-NH-NH-であり、
R
42が-NH-である場合、R
43は-NH-であり、R
42が結合である場合、R
43は-NH-NH-である、
条項1から6のいずれか一項に記載のオリゴマー。
条項8.R
9の各実例が、独立してC
1-C
10アルキルまたはポリエーテルである、条項1から7のいずれか一項に記載のオリゴマー。
条項9.R
9の各実例がポリエーテルである、条項1から8のいずれか一項に記載のオリゴマー。
条項10.前記ポリエーテルが約400 g/mol~約700 g/molの分子量を有する、条項1から9のいずれか一項に記載のオリゴマー。
条項11.R
33の各実例が結合である、条項1から10のいずれか一項に記載のオリゴマー。
条項12.R
33の各実例がC
1-C
10アルキルから独立して選択される、条項1から11のいずれか一項に記載のオリゴマー。
条項13.R
33の各実例が、式:
【化53】
または
【化54】
によって表されるフェニルから独立して選択され、式中、R
60、R
61、R
62およびR
63は、水素およびC
1-C
10アルキルから独立して選択される、条項1から12のいずれか一項に記載のオリゴマー。いくつかの例において、R
60、R
61、R
62およびR
63の各々は、水素である。
条項14.R
30およびR
1の各々が水素である、条項1から13のいずれか一項に記載のオリゴマー。
条項15.R
30がシリルである、条項1から14のいずれか一項に記載のオリゴマー。
条項16.シリルがグリシジルエーテルシリルである、条項1から16のいずれか一項に記載のオリゴマー。
条項17.シリルが、式:
【化55】
によって表され、式中、R
45、R
46およびR
47の各々は、水素およびC
1-C
20アルキルからなる群から独立して選択され、R
48は、アルキル、シクロアルキル、エーテルおよびアリールからなる群から選択される、条項1から16のいずれか一項に記載のオリゴマー。
条項18.R
45、R
46、およびR
47の各々が水素である、条項1から17のいずれか一項に記載のオリゴマー。
条項19.R
45、R
46、およびR
47の各々がC
1-C
5アルキルである、条項1から18のいずれか一項に記載のオリゴマー。
条項20.前記シリルが、
【化56】
および
【化57】
からなる群から選択される、条項1から19のいずれか一項に記載のオリゴマー。
【0083】
実施例
実施例1
ビス-チオセミカルバゾン、ジカルボニル化合物の合成を行った後、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルまたは同様のジグリシジルエーテルを用いてオリゴマーを形成した。ポリエチレングリコールの水溶性ジグリシジルエーテルは、Nagase America LLC(Nagase、2020 a、2020 b)から20 kg量で市販されており、平均して4、9、13または22のEO(エチレンオキシド)繰り返し単位を有し、それぞれ約300、480、640および1000の分子量に等しい。
【0084】
実施例2
メチルグリオキサールまたはイソフタルアルデヒドなどの単純なジアルデヒドを、2分子のチオセミカルバジドと反応させて、エタノール中での還流によってビス-チオセミカルバゾンを得る。これは、チオカルボニルおよびシッフ塩基の第3級窒素原子を介して金属表面に結合する能力と、別のカルボニル基またはジグリシジルエーテルなどの反応性鎖延長種と反応することによってチオカルバミド基を介してポリマーを形成する能力の両方を有する。2,4-ペンタンジオン(アセチルアセトン)または2,5-ヘキサンジオン(アセトニルアセトン)を同様に反応させて、結合部位間の距離がより大きいビス-チオセミカルバゾンを得ることができる低コストのジケトンの使用も実施した。
【0085】
単量体シッフ塩基の合成
チオセミカルバジド(0.01mol、0.91 g)を250cm3三口丸底フラスコ中のエタノール(50cm3)に溶解し、磁気撹拌機に取り付けた氷冷還流凝縮器に取り付けた。この溶液に、エタノール(20cm3)中のサリチルアルデヒド(0.02mol、2.44cm3)を滴加した。反応混合物を濃HClで酸性化し、室温で2時間絶えず撹拌しながら還流した。反応混合物を40分間放置した。淡黄色沈殿が得られ、これを濾過し、蒸留水およびジエチルエーテルで繰り返し洗浄することによって精製した。これを40℃で8時間乾燥させて、単量体シッフ塩基、N,N’-ビス(サリチリデン)チオセミカルバジドシッフ塩基、収率72%を得た。
【0086】
シッフ塩基オリゴマー(STFB)の合成
温度計、凝縮器および磁気撹拌機を備えた250cm3の三口丸底フラスコ中の50cm3のDMF中の単量体シッフ塩基(0.01 mol、2.99 gm)にホルムアルデヒド(0.02 mol、1.5cm3)をモル比(2:1)で添加することによって、シッフ塩基オリゴマーを合成した。40%のNaOH水溶液0.5cm3をこの反応混合物に添加した。連続的に撹拌しながら温度を70±5℃まで1時間維持した。反応の進行をTLC(薄層クロマトグラフィー)によって監視した。この混合物に、20cm3 DMF中のバルビツール酸(0.01 mol、1.28 gm)を添加し、赤黄色の粘着性化合物が得られるまで、100℃まで約2.5時間再び撹拌した。次いで、これを蒸留水中に沈殿させ、アセトンおよびジエチルエーテルで数回洗浄した。これをオーブン内で40℃で5~7時間乾燥させた後、シッフ塩基オリゴマーSTFBを収率70%で得た。
【0087】
配位オリゴマーの合成
等モル比(1:1)のシッフ塩基配位子および金属(II)アセテートを使用することによって、[Mn(II)、Co(II)、Ni(II)、Cu(II)およびZn(II)]の配位オリゴマーを調製した。マンガン(II)の金属ポリキレートの典型的な調製手順は以下の通りであった。シッフ塩基オリゴマー(0.01 mol)を(20cm3)DMFに溶解し、氷冷凝縮器に取り付けた三口丸底フラスコ中で60℃で加熱した。酢酸マンガン(II)四水和物Mn(CH3COO)2化4H2O(0.01 mol、2.45 gm)の溶液を、絶えず撹拌しながら15cm3 DMF中でシッフ塩基の高温で透明な溶液に添加し、7時間還流した。完全な溶解および明確な色変化が達成されるまで撹拌を続けた。最後に、褐色の粘性溶液を得た。次いで、これを沈殿させ、濾過し、蒸留水およびジエチルエーテルで数回洗浄し、これにより褐色沈殿物を得た。次いで、これを45℃で5~6時間オーブン乾燥させて、マンガンのポリキレート[STFB-Mn(II)]を収率81%で得た。
【0088】
反応1-シッフ塩基反応の概念実証
溶媒としてエタノールを使用し、反応触媒として濃HClを使用すると、チオセミカルバジドの両端は、72%の単離収率で以下に示すようにサリチルアルデヒドなどのアルデヒドと反応する。
スキーム1
【化58】
【0089】
反応2
以下に示すように、約1.8当量のジアルデヒド(またはケト-アルデヒドもしくはジケトンなどの他のジカルボニル)および1当量のチオセミカルバジドを使用してオリゴマー種を作製する。
スキーム2
【化59】
反応3
スキーム3
【化60】
反応4
スキーム4
【化61】
【0090】
テレフタルアルデヒドのビス-チオセミカルバゾンの形成(1)
250 mLの三口丸底フラスコに、100 mLのエタノールに溶解したチオセミカルバジド(9.11 g、0.100mol)の溶液を装入した。PTFE撹拌棒を加え、フラスコを磁気撹拌プレート上の軟質加熱マントル内に置く。中央ネックに還流凝縮器を取り付けた。一方の側頸部に、50 mLのエタノール中のテレフタルアルデヒド(6.57 g、0.049mol)の溶液を装入した滴下漏斗を取り付けた。他方の側頸部に、20 mLのエタノール中の1 mLの12NHCl(濃HCl)の溶液を装入した第2の滴下漏斗を取り付けた。
スキーム5
【化62】
【0091】
テレフタルアルデヒドの溶液を30分間にわたって室温で撹拌しながらフラスコにゆっくりと加え、続いてHClの溶液を加えた。酸を添加した後、加熱マントルの電源を入れ、混合物を2~3時間還流した。加熱を止め、混合物をゆっくりと室温に戻した。生成物が黄色固体として沈殿し、ブフナー漏斗で濾過することによって回収した。生成物を純水(3×50 mL)およびエチルエーテル(1×50 mL)で洗浄し、100 Fのオーブンで一晩乾燥させた。C10H12 N6S2:分子量280.41.収率=13.74の生成物。副産物は、0.18 gの過剰のチオセミカルバジドおよび1.76 gの水である。
【0092】
(1)とジグリシジルエーテルまたはジイソシアネートとの反応
前のセクションで作製した5グラムのポリマーおよび0.05グラムの適切な触媒の溶液を25 mLの溶媒に溶解した。この溶液を、PTFE撹拌子を含有し、還流凝縮器、滴下漏斗および熱電対を取り付けた100 mLの三口丸底フラスコに装入した。フラスコを水浴に入れ、磁気加熱撹拌プレートの上に置いた。滴下漏斗に、25 mLの同じ溶媒に溶解した0.9当量の所望の鎖延長剤(下記)の溶液を装入した。これを30分間撹拌しながらフラスコに滴下し、温度をモニターした。2つの成分が結合すると、温度が上昇するはずである。温度は、氷を水浴に加えるなどの適切な手段によって100℃未満に維持されるべきである。
【0093】
1時間後、反応性鎖延長剤はすべて消費されるはずである。残留エポキシ含有量は、滴定(ASTM D1652)によって決定することができ、残留イソシアネートは、滴定(Dow、2000)によって決定することができる。
【0094】
【0095】
ピルビンアルデヒドのビス-チオセミカルバゾンの形成(2)
250 mLの三口丸底フラスコに、100 mLのエタノールに溶解したチオセミカルバジド(10.02 g、0.110mol)の溶液を装入した。PTFE撹拌棒を加え、フラスコを磁気撹拌プレート上の軟質加熱マントル内に置いた。中央ネックに還流凝縮器を取り付けた。一方の側頸部に、50 mLのエタノール中のピルビンアルデヒドジメチルアセタール(5.78 g、0.049mol)の溶液を装入した滴下漏斗を取り付けた。この化合物は、メチルグリオキサールジメチルアセタールとも呼ばれた。他方の側頸部に、20 mLのエタノール中の1 mLの12NHCl(濃HCl)の溶液を装入した第2の滴下漏斗を取り付けた。
スキーム6
【化63】
【0096】
【0097】
チオセミカルバジドの溶液を50~60℃(還流直下)に加熱した。これに、室温で30~40分間撹拌しながらピルビンアルデヒドジメチルアセタールの溶液を加え、続いてHClの溶液を加えた。酸を加えた後、加熱マントルおよび撹拌機を停止し、混合物を室温に約2時間ゆっくり冷却した。可能であれば、反応混合物を冷蔵庫に2日間または3日間入れて粗収率を高める。生成物は黄色固体として沈殿するはずである。固体をブフナー漏斗で収集した。
【0098】
粗生成物を、換気フード内のホットプレート上のビーカー内で最小量の還流メタノールに溶解することによって再結晶させた。等量の蒸留水を加え、熱から取り出し、次いで冷却した。生成物は、黄色がかった白色針状物として沈殿した。
ブフナー漏斗で濾過によって回収する。100 Fのオーブンで一晩乾燥させる。
C5H10N6S2:分子量218.29 収率=生成物の10.69
副産物は、1.09 gの過剰のチオセミカルバジド、3.13 gのメタノールおよび0.88 gの水である。
参考文献:Petering、1964。
【0099】
(2)と一般的なジグリシジルエーテルとの反応
2つのシッフ塩基(SB)と3つのジグリシジルエーテルとの反応を以下に示す。出発SBは結晶性固体であるが、生成物は、金属表面を独立してまたはコーティング配合物中の成分としてコーティングするのにより適した粘性液体であると予想される。他の二官能性鎖延長剤を考慮することができる。
スキーム7
【化64】
【0100】
シッフ塩基オリゴマーおよびエポキシ組成物#1
500 ccの撹拌機および水冷凝縮器を取り付けた反応容器に、78.5グラムのシッフ塩基ポリマーのエポキシ当量を有するポリプロピレングリコールのジグリシジルポリエーテル179グラム(0.5mol)、および触媒として2.6グラムの粉末水酸化ナトリウムを装入した。最初の1時間の間、冷却を使用して反応を100℃~120℃に緩和した。この時間の終わりに、ジエポキシドの1%未満が未反応のままであった。
【0101】
シッフ塩基オリゴマーおよびエポキシ組成物#2
2.47グラムのシッフ塩基オリゴマーおよびエポキシ組成物またはシッフ塩基オリゴマー組成物を、0.87グラム(0.01当量)のトルエンジイソシアネート(TDI)および1.5グラムのジメチルホルムアミド希釈剤と混合した。これらの化合物を混合し、最後にTDIを加えた。接着鋼パネル上にフィルムをキャストし、300°Fで数分間焼成して、高硬度を有する熱硬化性の透明なオレンジ色のコーティングを得た。
【0102】
材料
以下の表は、ジグリシジルエーテルおよびジイソシアネートを含む例示的な二官能性鎖延長分子を含む、本明細書に開示されるように使用される材料を列挙する。
【0103】
【0104】
シリル末端封鎖を有するシッフ塩基オリゴマー
前のセクションで作製した5グラムのビス-チオセミカルバゾンおよび0.05グラムの適切な触媒の溶液を25 mLの所望の溶媒に溶解した。この溶液を、PTFE撹拌子を含有し、還流凝縮器、滴下漏斗および熱電対を取り付けた100 mLの三口丸底フラスコに装入した。フラスコを水浴に入れ、磁気加熱撹拌プレートの上に置いた。滴下漏斗に、25 mLの同じ溶媒に溶解した1.2当量の所望の鎖延長剤の溶液を装入した。これを30分間撹拌しながらフラスコに滴下し、温度をモニターした。2つの成分が結合すると、温度が上昇するはずである。氷を水浴に加えるなどの適切な手段によって温度を100℃未満に維持した。1時間後、反応性鎖延長剤はすべて消費されるはずである。残留エポキシ含有量は、滴定(ASTM D1652)によって決定することができ、残留イソシアネートは、滴定(Dow、2000)によって決定することができる。
【0105】
少量のトリメトキシシリルプロピルグリシジルエーテルを使用すると、金属-O-Si結合形成を介して金属表面と反応し得る末端基が得られた。
スキーム8
【化65】
【0106】
この種の構造は、3つのビス-シッフ塩基基、2級ヒドロキシル基、および例えば、金属表面上のOH基による3つのエトキシシリル基の開裂によるものを含む金属表面への結合の複数の様式を有する。
【0107】
シリル末端封鎖を有するこのシッフ塩基オリゴマーは、低固形分で適切な溶液に溶解して、金属部品を浸漬コーティングまたはスプレーコーティングするための溶液を調製することができる。乾燥は、IR熱源、熱風源、またはこれら2つの何らかの組み合わせで加熱することによって達成することができる。
【0108】
化学用語
本明細書で使用される場合、化学構造の波線は、示されている部分と分子の残りの部分との間の接続点を示す。
【0109】
本明細書で使用される場合、「組成物」という用語は、組成物の成分(例えば、オリゴマーおよび金属および/または金属塩)および/または組成物の2つ以上の成分の反応生成物を含み得る。
【0110】
別段の記載/請求がない限り、本開示に記載のシッフ塩基オリゴマーの基/部分は、非置換または置換されている。「置換」という用語は、基が任意の利用可能な位置で置換されていることを意味する。置換は、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、ホルミル、アルカノイル、シクロアルカノイル、アロイル、ヘテロアロイル、カルボキシル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルオキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロシクリルオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、アルキルアミノカルボニル、シクロアルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、ヘテロシクリルアミノカルボニル、ヘテロアリールアミノカルボニル、シアノ、アルコキシ、シクロアルコキシ、アリールオキシ、ヘテロシクリルオキシ、ヘテロアリールオキシ、アルカノエート、シクロアルカノエート、アリールエート、ヘテロシクリレート、ヘテロアリールエート、アルキルカルボニルアミノ、シクロアルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、ヘテロシクリルカルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、ニトロ、ヒドロキシル、ハロ(-F、-Cl、-Br、-I)、ハロアルキル、ハロアリール、ハロヘテロシクリル、ハロヘテロアリール、ハロアルコキシ、シリルアルキル、アルケニルシリルアルキル、アルキニルシリルアルキルまたはアミノから選択される1つ以上の基であり得る。いくつかの態様では、置換は、ハロ、アルキル、ホルミル、またはアミノであり得る。任意選択の置換基は、基の塩、例えばカルボキシレート塩を含み得る。「置換された」は、具体的に記載されていない他の基を含んでもよいことが理解されよう。
【0111】
「アルキル」は、単独で使用されるか、またはアルコキシ、アルキルチオ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノまたはハロアルキルなどの化合物語で使用されるかにかかわらず、1から約10個の炭素原子またはそれを超えるサイズの範囲の直鎖または分岐鎖炭化水素を表す。したがって、アルキル部分には、より小さい基に明示的に限定されない限り、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルなどの1~約6個の炭素原子またはそれを超えるサイズの範囲の部分、および例えば、約6~約10個の炭素原子またはそれを超えるサイズの範囲の直鎖または分岐鎖炭化水素を含む高級異性体が含まれる。
【0112】
「シクロアルキル」は、様々なサイズ、例えば約3~約10個の炭素原子、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはシクロヘプチルの単環式または多環式環系を表す。シクロアルキルオキシという用語は、シクロペンチルオキシおよびシクロヘキシルオキシなどの酸素原子を介して結合した同じ基を表す。シクロアルキルチオという用語は、シクロペンチルチオおよびシクロヘキシルチオなどの硫黄原子を介して結合した同じ基を表す。
【0113】
理解されるように、芳香族基は、4 m+2個のπ電子を有する環状基を意味し、mは1以上の整数である。本明細書で使用される場合、「芳香族」は、芳香族基の結合価にかかわらず、芳香族基を指すために「アリール」と交換可能に使用される。したがって、アリールは、一価の芳香族基、二価の芳香族基およびより高い多価の芳香族基を指す。
【0114】
「アリール」は、単独で使用されるか、またはアリールアルキル、アリールオキシもしくはアリールチオなどの化合物語で使用されるかにかかわらず、(i)場合により置換されている、例えば、約6~約60個の炭素原子を有する単環式または多環式芳香族炭素環式部分、例えば、フェニル、ナフチルまたはフルオレニルまたは(ii)アリールおよびシクロアルキルまたはシクロアルケニル基が一緒に縮合して、テトラヒドロナフチル、インデニル、インダニルまたはフルオレン環などの環状構造を形成している、場合により置換されている部分飽和多環式炭素環式芳香族環系を表す。
【0115】
単独で使用されるか、またはヘテロシクリルオキシなどの化合物語で使用されるかにかかわらず、「ヘテロシクリル」または「複素環式」は、(i)場合により置換されているシクロアルキルまたはシクロアルケニル基、例えば、窒素、酸素、または硫黄などの1つ以上のヘテロ原子を含み得る約3~約60個の環員のシクロアルキルまたはシクロアルケニル基(例としては、ピロリジニル、モルホリノ、チオモルホリノ、または完全もしくは部分的に水素化されたチエニル、フリル、ピロリル、チアゾリル、オキサゾリル、オキサジニル、チアジニル、ピリジルおよびアゼピニルが挙げられる)、(ii)アリール(またはヘテロアリール)環と複素環基とが一緒に縮合して環構造を形成している、場合により置換されている部分飽和多環系(例としては、クロマニル、ジヒドロベンゾフリルおよびインドリニルが挙げられる)、または(iii)1つ以上の架橋(例としては、キヌクリジニルおよびジヒドロ-1,4-エポキシナフチルが挙げられる)を有する、場合により置換されている完全または部分飽和多環式縮合環系を表す。
【0116】
ヘテロ芳香族基は、N、O、S、Se、SiまたはPなどの1つ以上のヘテロ原子を含む芳香族基または環である。本明細書で使用される場合、「ヘテロ芳香族」は「ヘテロアリール」と交換可能に使用され、ヘテロアリール基は、1つ以上のヘテロ原子を含む一価の芳香族基、二価の芳香族基およびより高い多価の芳香族基を指す。「ヘテロアリール」は、「ヘテロシクリル」の1つの非限定的な種類と考えられる。
【0117】
「ヘテロアリール」は、単独で使用されるか、またはヘテロアリールオキシなどの化合物語で使用されるかにかかわらず、(i)場合により置換されている単環式または多環式芳香族有機部分、例えば、環員の1つ以上が炭素以外の元素、例えば、窒素、酸素、硫黄またはケイ素である約1~約10個の環員を表し、ヘテロ原子は、炭素環式環構造を中断し、環が隣接する酸素および/または硫黄原子を含まない限り、芳香族性を提供するのに十分な数の非局在化π電子を有する。典型的な6員ヘテロアリール基は、ピラジニル、ピリダジニル、ピラゾリル、ピリジルおよびピリミジニルである。すべての位置異性体、例えば、2-ピリジル、3-ピリジルおよび4-ピリジルが企図される。典型的な5員ヘテロアリール環は、フリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、オキサジアゾリル、ピロリル、1,3,4チアジアゾリル、チアゾリル、チエニル、トリアゾリルおよびシロールである。すべての位置異性体、例えば2-チエニルおよび3-チエニルが企図される。二環式基は、典型的には、上記のヘテロアリール基から誘導されるベンゾ縮合環系、例えば、ベンゾフリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、インドリル、インドリジニル、イソキノリル、キナゾリニル、キノリルおよびベンゾチエニル、または(ii)ヘテロアリールとシクロアルキルまたはシクロアルケニル基とが一緒に縮合して、テトラヒドロキノリルまたはピリンジニル環などの環状構造を形成している、場合により置換されている部分飽和多環式ヘテロアリール環系である。
【0118】
「ヒドロキシル」および「ヒドロキシ」は交換可能に使用することができ、-OH部分を表す。
【0119】
「アルコキシ」および「アルコキシル」は交換可能に使用することができ、アルキル基が上に定義される通りである-O-アルキル基を表す。例としては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、ならびに異なるブトキシ、ペントキシ、ヘキシルオキシおよび高級異性体が挙げられる。
【0120】
「アリールオキシ」および「アリールオキシル」は交換可能に使用することができ、アリール基が上に定義される通りである-O-アリール基を表す。例としては、フェノキシおよびナフトキシが挙げられるが、これらに限定されない。
【0121】
本明細書に記載される化合物は、それらの化合物の塩、溶媒和物、水和物、異性体、互変異性体、ラセミ体、立体異性体、エナンチオマーまたはジアステレオ異性体を含み得る。例えば、塩は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、硝酸塩、リン酸塩、硫酸塩、塩化物、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0122】
上記は本開示の態様を対象にしているが、本開示の他の態様およびさらなる態様は、その基本的な範囲から逸脱することなく考案されてよく、その範囲は以下の添付特許請求の範囲によって決定される。