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7709690架橋型ヌクレオシドおよびそれを用いたヌクレオチド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-09
(45)【発行日】2025-07-17
(54)【発明の名称】架橋型ヌクレオシドおよびそれを用いたヌクレオチド
(51)【国際特許分類】
   C07D 493/08 20060101AFI20250710BHJP
   C07H 21/04 20060101ALI20250710BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20250710BHJP
   A61P 43/00 20060101ALN20250710BHJP
   A61K 31/665 20060101ALN20250710BHJP
   A61K 48/00 20060101ALN20250710BHJP
   A61K 31/506 20060101ALN20250710BHJP
【FI】
C07D493/08 CSP
C07H21/04 B
C12N15/11 Z ZNA
A61P43/00 105
A61K31/665
A61K48/00
A61K31/506
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022501952
(86)(22)【出願日】2021-02-17
(86)【国際出願番号】 JP2021006017
(87)【国際公開番号】W WO2021166981
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2024-01-24
(31)【優先権主張番号】P 2020025726
(32)【優先日】2020-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元年度、日本医療研究開発機構(AMED)先端的バイオ創薬等基盤技術開発事業「デリバリーと安全性を融合した新世代核酸医薬プラットフォームの構築」に係る委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(73)【特許権者】
【識別番号】597128004
【氏名又は名称】国立医薬品食品衛生研究所長
(74)【代理人】
【識別番号】100182084
【弁理士】
【氏名又は名称】中道 佳博
(72)【発明者】
【氏名】小比賀 聡
(72)【発明者】
【氏名】山口 卓男
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 耀太
(72)【発明者】
【氏名】山本 知佳
(72)【発明者】
【氏名】杉田 慧
(72)【発明者】
【氏名】井上 貴雄
(72)【発明者】
【氏名】吉田 徳幸
【審査官】三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/100320(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/017521(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/067647(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/154401(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0022014(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0021515(US,A1)
【文献】PIET Herdewijn,Nucleic Acids with a Six-Membered 'Carbohydrate' Mimic in the Backbone,CHEMISTRY & BIODIVERSITY,2010年,Vol. 7,p.1-59
【文献】VAN Aerschot, et al.,1,5-Anhydrohexitol Nucleic Acids, a New Promising Antisense Construct,Angew Chem. Int. Ed.,1995年,Vol.34, No.12,p.1338-1339
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C07H
A61K
A61P
C12N
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(I)で表される化合物またはその塩:
【化1】
(式中、
Baseは、α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいプリン-9-イル基または2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基を表し、ここで、該α群は、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、炭素数1から6の直鎖アルキル基、炭素数1から6の直鎖アルコキシ基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、炭素数1から6の直鎖アルキルチオ基、アミノ基、炭素数1から6の直鎖アルキルアミノ基、核酸合成の保護基で保護されたアミノ基、およびハロゲン原子からなり、
およびRは、それぞれ独立して、水素原子、核酸合成の水酸基の保護基、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基、分岐または環を形成していてもよい炭素数2から7のアルケニル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から10のアリール基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール部分を有するアラルキル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいアシル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいシリル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいリン酸基、核酸合成の保護基で保護されたリン酸基、-P(R)R[式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、アミノ基、炭素数1から6のアルコキシ基、炭素数1から6のアルキルチオ基、炭素数1から6のシアノアルコキシ基、または炭素数1から6のアルキル基を有するジアルキルアミノ基を表す]を表し、
は、炭素数1~5のアルキレン基または炭素数2~5のアルケニレン基であり、
は酸素原子であり、
該保護基が、低級アルキル基;低級アルケニル基;アシル基;テトラヒドロピラニルまたはテトラヒドロチオピラニル基;テトラヒドロフラニルまたはテトラヒドロチオフラニル基;シリル基;低級アルコキシメチル基;低級アルコキシ化低級アルコキシメチル基;ハロゲノ低級アルコキシメチル基;低級アルコキシ化エチル基;ハロゲン化エチル基;1~3個のアリール基で置換されたメチル基;低級アルキル基、低級アルコキシ基、ハロゲン原子またはシアノ基でアリール環が置換された1~3個のアリール基で置換されたメチル基;低級アルコキシカルボニル基;ハロゲン原子またはトリ低級アルキルシリル基で置換された低級アルコキシカルボニル基;アルケニルオキシカルボニル基;あるいは低級アルコキシまたはニトロ基でアリール環が置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル基である)。
【請求項2】
前記式(I)が、以下の式(I-1)~(I-3):
【化2】
のいずれかで表される、請求項1に記載の化合物またはその塩。
【請求項3】
前記Baseが、6-アミノプリン-9-イル基、2,6-ジアミノプリン-9-イル基、2-アミノ-6-クロロプリン-9-イル基、2-アミノ-6-フルオロプリン-9-イル基、2-アミノ-6-ブロモプリン-9-イル基、2-アミノ-6-ヒドロキシプリン-9-イル基、6-アミノ-2-メトキシプリン-9-イル基、6-アミノ-2-クロロプリン-9-イル基、6-アミノ-2-フルオロプリン-9-イル基、2,6-ジメトキシプリン-9-イル基、2,6-ジクロロプリン-9-イル基、6-メルカプトプリン-9-イル基、2-オキソ-4-アミノ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、4-アミノ-2-オキソ-5-フルオロ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、4-アミノ-2-オキソ-5-クロロ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、2-オキソ-4-メトキシ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、2-オキソ-4-メルカプト-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、2-オキソ-4-ヒドロキシ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、2-オキソ-4-ヒドロキシ-5-メチル-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、または4-アミノ-5-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基である、請求項1または2に記載の化合物またはその塩。
【請求項4】
前記Baseが、以下の式:
【化3】
で表される基である、請求項1から3のいずれかに記載の化合物またはその塩。
【請求項5】
以下の式(II)で表されるヌクレオシド構造を少なくとも1つ含有するオリゴヌクレオチドまたはその薬理学上許容される塩:
【化4】
(式中、
Baseは、α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいプリン-9-イル基または2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基を表し、ここで、該α群は、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、炭素数1から6の直鎖アルキル基、炭素数1から6の直鎖アルコキシ基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、炭素数1から6の直鎖アルキルチオ基、アミノ基、炭素数1から6の直鎖アルキルアミノ基、核酸合成の保護基で保護されたアミノ基、およびハロゲン原子からなり、
は、炭素数1~5のアルキレン基または炭素数2~5のアルケニレン基であり、
は酸素原子であり、
該保護基が、低級アルキル基;低級アルケニル基;アシル基;テトラヒドロピラニルまたはテトラヒドロチオピラニル基;テトラヒドロフラニルまたはテトラヒドロチオフラニル基;シリル基;低級アルコキシメチル基;低級アルコキシ化低級アルコキシメチル基;ハロゲノ低級アルコキシメチル基;低級アルコキシ化エチル基;ハロゲン化エチル基;1~3個のアリール基で置換されたメチル基;低級アルキル基、低級アルコキシ基、ハロゲン原子またはシアノ基でアリール環が置換された1~3個のアリール基で置換されたメチル基;低級アルコキシカルボニル基;ハロゲン原子またはトリ低級アルキルシリル基で置換された低級アルコキシカルボニル基;アルケニルオキシカルボニル基;あるいは低級アルコキシまたはニトロ基でアリール環が置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル基である)。
【請求項6】
前記式(II)が、以下の式(II-1)~(II-3):
【化5】
のいずれかで表される、請求項5に記載のオリゴヌクレオチドまたはその薬理学上許容される塩。
【請求項7】
前記Baseが、6-アミノプリン-9-イル基、2,6-ジアミノプリン-9-イル基、2-アミノ-6-クロロプリン-9-イル基、2-アミノ-6-フルオロプリン-9-イル基、2-アミノ-6-ブロモプリン-9-イル基、2-アミノ-6-ヒドロキシプリン-9-イル基、6-アミノ-2-メトキシプリン-9-イル基、6-アミノ-2-クロロプリン-9-イル基、6-アミノ-2-フルオロプリン-9-イル基、2,6-ジメトキシプリン-9-イル基、2,6-ジクロロプリン-9-イル基、6-メルカプトプリン-9-イル基、2-オキソ-4-アミノ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、4-アミノ-2-オキソ-5-フルオロ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、4-アミノ-2-オキソ-5-クロロ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、2-オキソ-4-メトキシ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、2-オキソ-4-メルカプト-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、2-オキソ-4-ヒドロキシ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、2-オキソ-4-ヒドロキシ-5-メチル-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、または4-アミノ-5-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基である、請求項5または6に記載のオリゴヌクレオチドまたはその薬学上許容される塩。
【請求項8】
前記Baseが、以下の式:
【化6】
で表される基である、請求項5から7のいずれかに記載のオリゴヌクレオチドまたはその薬学上許容される塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋型ヌクレオシドおよびそれを用いたヌクレオチドに関する。より詳細には、良好なヌクレアーゼ耐性能を有する架橋型ヌクレオシドおよびそれを用いたヌクレオチドに関する。
【背景技術】
【0002】
DNAやRNAに対して優れた結合親和性を有する人工核酸は、遺伝子診断や核酸医薬への応用が可能であり、これまで様々なタイプの人工核酸が開発されている。中でも核酸糖部の配座を架橋によってN型配座に固定化した2’,4’-BNA(2’,4’-bridged nucleic acid;別名LNA)は、一本鎖RNA(ssRNA)に対して優れた結合親和性を有し、アンチセンス法などの様々な応用が可能な核酸医薬として期待されている(非特許文献1および2)。しかし、2’,4’-BNAは酵素耐性に乏しく、肝毒性を誘発し易いという課題を抱えている(非特許文献3)。
【0003】
これに対して、核酸糖部をピラノース環に置換したヘキシトール核酸(HNA)は天然核酸のN型配座を模倣した構造を有し、一本鎖RNA(ssRNA)に対する結合親和性を向上させることが知られている(非特許文献4および5)。そのため近年では、HNAやその類縁体をアンチセンス医薬に応用する研究が報告されており、優れた活性や毒性低減を示唆するような知見が得られている(非特許文献6および7)。
【0004】
このように、HNA骨格を有する人工核酸は医薬への応用に関して魅力的な性質を有し、2’,4’-BNAが抱える問題を改善するものとして注目されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】S. Obikaら, Tetrahedron Lett., 1997, 38, 8735-8738
【文献】S. Singhら, Chem. Commun., 1998, 455-456
【文献】E. Swayzeら, Nucleic Acids Res., 2007, 35, 687-700
【文献】A. Aerschotら, Angew. Chem. Int. Ed., 1995, 34, 1338-1339
【文献】P. Herdewijn, P. Chem. Biodiversity, 2010, 7, 1-59
【文献】M. Egliら, J. Am. Chem. Soc., 2011, 133, 16642-16649
【文献】B. T. Leら, Chem. Commun., 2016, 52, 13467-13470
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するものであり、その目的とするところは、良好なヌクレアーゼ耐性能を有し、かつHNA骨格を有する架橋型ヌクレオシドおよびそれを用いたヌクレオチドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の式(I)で表される化合物またはその塩:
【0008】
【化1】
【0009】
(式中、
Baseは、α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいプリン-9-イル基または2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基を表し、ここで、該α群は、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、炭素数1から6の直鎖アルキル基、炭素数1から6の直鎖アルコキシ基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、炭素数1から6の直鎖アルキルチオ基、アミノ基、炭素数1から6の直鎖アルキルアミノ基、核酸合成の保護基で保護されたアミノ基、およびハロゲン原子からなり、
およびRは、それぞれ独立して、水素原子、核酸合成の水酸基の保護基、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基、分岐または環を形成していてもよい炭素数2から7のアルケニル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から10のアリール基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール部分を有するアラルキル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいアシル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいシリル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいリン酸基、核酸合成の保護基で保護されたリン酸基、-P(R)R[式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、アミノ基、炭素数1から6のアルコキシ基、炭素数1から6のアルキルチオ基、炭素数1から6のシアノアルコキシ基、または炭素数1から6のアルキル基を有するジアルキルアミノ基を表す]を表し、
は、炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルケニレン基、あるいは-Y-(CH-、-(CH-Y-または-(CH-Y-(CH-[ここで、Yはスルホニル基、スルホンアミド基、アミド基、エステル基、またはカルボニル基であり、nは1~5の整数であり、lおよびmは正の整数でありかつlとmとの合計が2~5である]であり、
は、酸素原子、硫黄原子、-NH-またはメチレン基である)である。
【0010】
1つの実施形態では、上記式(I)は、以下の式(I-1)~(I-3):
【0011】
【化2】
【0012】
のいずれかで表される。
【0013】
1つの実施形態では、上記Baseは、6-アミノプリン-9-イル基、2,6-ジアミノプリン-9-イル基、2-アミノ-6-クロロプリン-9-イル基、2-アミノ-6-フルオロプリン-9-イル基、2-アミノ-6-ブロモプリン-9-イル基、2-アミノ-6-ヒドロキシプリン-9-イル基、6-アミノ-2-メトキシプリン-9-イル基、6-アミノ-2-クロロプリン-9-イル基、6-アミノ-2-フルオロプリン-9-イル基、2,6-ジメトキシプリン-9-イル基、2,6-ジクロロプリン-9-イル基、6-メルカプトプリン-9-イル基、2-オキソ-4-アミノ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、4-アミノ-2-オキソ-5-フルオロ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、4-アミノ-2-オキソ-5-クロロ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、2-オキソ-4-メトキシ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、2-オキソ-4-メルカプト-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、2-オキソ-4-ヒドロキシ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、2-オキソ-4-ヒドロキシ-5-メチル-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、または4-アミノ-5-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基である。
【0014】
1つの実施形態では、上記Baseは、以下の式:
【0015】
【化3】
【0016】
で表される基である。
【0017】
本発明はまた、以下の式(II)で表されるヌクレオシド構造を少なくとも1つ含有するオリゴヌクレオチドまたはその薬理学上許容される塩:
【0018】
【化4】
【0019】
(式中、
Baseは、α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいプリン-9-イル基または2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基を表し、ここで、該α群は、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、炭素数1から6の直鎖アルキル基、炭素数1から6の直鎖アルコキシ基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、炭素数1から6の直鎖アルキルチオ基、アミノ基、炭素数1から6の直鎖アルキルアミノ基、核酸合成の保護基で保護されたアミノ基、およびハロゲン原子からなり、
は、炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルケニレン基、あるいは-Y-(CH-、-(CH-Y-または-(CH-Y-(CH-[ここで、Yはスルホニル基、スルホンアミド基、アミド基、エステル基、またはカルボニル基であり、nは1~5の整数であり、lおよびmは正の整数でありかつlとmとの合計が2~5である]であり、
は、酸素原子、硫黄原子、-NH-またはメチレン基である)である。
【0020】
1つの実施形態では、上記式(II)は、以下の式(II-1)~(II-3):
【0021】
【化5】
【0022】
のいずれかで表される。
【0023】
1つの実施形態では、上記Baseは、6-アミノプリン-9-イル基、2,6-ジアミノプリン-9-イル基、2-アミノ-6-クロロプリン-9-イル基、2-アミノ-6-フルオロプリン-9-イル基、2-アミノ-6-ブロモプリン-9-イル基、2-アミノ-6-ヒドロキシプリン-9-イル基、6-アミノ-2-メトキシプリン-9-イル基、6-アミノ-2-クロロプリン-9-イル基、6-アミノ-2-フルオロプリン-9-イル基、2,6-ジメトキシプリン-9-イル基、2,6-ジクロロプリン-9-イル基、6-メルカプトプリン-9-イル基、2-オキソ-4-アミノ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、4-アミノ-2-オキソ-5-フルオロ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、4-アミノ-2-オキソ-5-クロロ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、2-オキソ-4-メトキシ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、2-オキソ-4-メルカプト-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、2-オキソ-4-ヒドロキシ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、2-オキソ-4-ヒドロキシ-5-メチル-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、または4-アミノ-5-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基である。
【0024】
1つの実施形態では、上記Baseは、以下の式:
【0025】
【化6】
で表される基である。
【0026】
本発明はまた、上記オリゴヌクレオチドまたはその薬理学上許容される塩の製造方法であって、
以下の式(I)で表される化合物またはその薬理学上許容される塩:
【0027】
【化7】
【0028】
(式中、
Baseは、α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいプリン-9-イル基または2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基を表し、ここで、該α群は、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、炭素数1から6の直鎖アルキル基、炭素数1から6の直鎖アルコキシ基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、炭素数1から6の直鎖アルキルチオ基、アミノ基、炭素数1から6の直鎖アルキルアミノ基、核酸合成の保護基で保護されたアミノ基、およびハロゲン原子からなり、
およびRは、それぞれ独立して、水素原子、核酸合成の水酸基の保護基、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基、分岐または環を形成していてもよい炭素数2から7のアルケニル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から10のアリール基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール部分を有するアラルキル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいアシル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいシリル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいリン酸基、核酸合成の保護基で保護されたリン酸基、-P(R)R[式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、アミノ基、炭素数1から6のアルコキシ基、炭素数1から6のアルキルチオ基、炭素数1から6のシアノアルコキシ基、または炭素数1から6のアルキル基を有するジアルキルアミノ基を表す]を表し、
は、炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルケニレン基、あるいは-Y-(CH-、-(CH-Y-または-(CH-Y-(CH-[ここで、Yはスルホニル基、スルホンアミド基、アミド基、エステル基、またはカルボニル基であり、nは1~5の整数であり、lおよびmは正の整数でありかつlとmとの合計が2~5である]であり、
は、酸素原子、硫黄原子、-NH-またはメチレン基である)
を用いてオリゴヌクレオチドを合成する工程を包含する、方法である。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、HNA骨格を有する新規な架橋型ヌクレオシドを用いたヌクレオチドが提供される。本発明の架橋型ヌクレオシドは、特定の臓器への集積などが懸念されるホスホロチオエート修飾核酸の代替とすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】5’-TTTTTTTTTX-3’の配列の各種オリゴヌクレオチドを3’-エキソヌクレアーゼで処理した場合の、未切断オリゴヌクレオチドの割合の経時変化を示すグラフである。
図2】5’-TTTTTTTTXT-3’の配列の各種オリゴヌクレオチドを3’-エキソヌクレアーゼで処理した場合の、20分後における未切断オリゴヌクレオチドの割合を示すグラフである。
図3】各種オリゴヌクレオチド投与時のマウスの各種組織における相対的MALAT1発現レベルを示すグラフである。
図4】各種オリゴヌクレオチド投与時のマウスの各種組織における相対的MALAT1発現レベルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
まず、本明細書中で用いられる用語を定義する。
【0032】
本明細書において、用語「炭素数1から6の直鎖アルキル基」は、炭素数1~6の任意の直鎖アルキル基をいい、具体的にはメチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、またはn-ヘキシル基をいう。一方、用語「炭素数1から6のアルキル基」という場合は、炭素数1~6の任意の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基をいう。
【0033】
本明細書において、用語「炭素数1から6の直鎖アルコキシ基」は、炭素数1~6の任意の直鎖アルキル基を有するアルコキシ基を包含する。例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基などが挙げられる。一方、用語「炭素数1から6のアルコキシ基」という場合は、炭素数1~6の任意の直鎖、分岐鎖または環状のアルコキシ基をいう。
【0034】
本明細書において、用語「炭素数1から6のシアノアルコキシ基」は、炭素数1~6の任意の直鎖、分岐鎖または環状のアルコキシ基における少なくとも1つの水素原子がシアノ基で置換された基をいう。
【0035】
本明細書において、用語「炭素数1から6の直鎖アルキルチオ基」は、炭素数1~6の任意の直鎖アルキル基を有するアルキルチオ基を包含する。例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基などが挙げられる。一方、用語「炭素数1から6のアルキルチオ基」という場合は、炭素数1~6の任意の直鎖、分岐鎖または環状のアルキルチオ基をいう。
【0036】
本明細書において、用語「炭素数1から6の直鎖アルキルアミノ基」は、炭素数1~6の任意の直鎖アルキル基を有するアルキルアミノ基を1つまたは2つ有するアルキルアミノ基を包含する。例えば、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、ジエチルアミノ基などが挙げられる。
【0037】
本明細書において、用語「分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基」は、炭素数1~7の任意の直鎖アルキル基、炭素数3~7の任意の分岐鎖アルキル基、および炭素数3~7の任意の環状アルキル基を包含する。単に、「低級アルキル基」という場合もある。例えば、炭素数1~7の任意の直鎖アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、およびn-ヘプチル基が挙げられ、炭素数3~7の任意の分岐鎖アルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基などが挙げられ、そして炭素数3~7の任意の環状アルキル基としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
【0038】
本明細書において、用語「分岐または環を形成していてもよい炭素数2から7のアルケニル基」は、炭素数2~7の任意の直鎖アルケニル基、炭素数3~7の任意の分岐鎖アルケニル基、および炭素数3~7の任意の環状アルケニル基を包含する。単に、「低級アルケニル基」という場合もある。例えば、炭素数2~7の任意の直鎖アルケニル基としては、エテニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1-ヘキセニル基などが挙げられ、炭素数3~7の任意の分岐鎖アルケニル基としては、イソプロペニル基、1-メチル-1-プロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、2-メチル-1-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-メチル-2-ブテニル基などが挙げられ、そして炭素数3~7の任意の環状アルケニル基としては、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基などが挙げられる。
【0039】
本明細書において、用語「ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から10のアリール基」は、炭化水素のみで構成された、炭素数6~10の任意のアリール基と、当アリール基の環構造を構成する少なくとも1つの炭素原子がヘテロ原子(例えば、窒素原子、酸素原子、および硫黄原子、ならびにこれらの組合せ)で置換された、炭素数3~12の任意のヘテロアリール基とを包含する。当該炭素数6~10のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、インデニル基、アズレニル基などが挙げられ、そして当該炭素数3~12の任意のヘテロアリール基としては、ピリジル基、ピロリル基、キノリル基、インドリル基、イミダゾリル基、フリル基、チエニル基などが挙げられる。
【0040】
本明細書において、用語「ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール部分を有するアラルキル基」の例としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、3-フェニルプロピル基、2-フェニルプロピル基、4-フェニルブチル基、2-フェニルブチル基、ピリジルメチル基、インドリルメチル基、フリルメチル基、チエニルメチル基、ピロリルメチル基、2-ピリジルエチル基、1-ピリジルエチル基、3-チエニルプロピル基などが挙げられる。
【0041】
本明細書において、用語「アシル基」の例としては、脂肪族アシル基および芳香族アシル基が挙げられる。具体的には、脂肪族アシル基の例としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ペンタノイル基、ピバロイル基、バレリル基、イソバレリル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、3-メチルノナノイル基、8-メチルノナノイル基、3-エチルオクタノイル基、3,7-ジメチルオクタノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ペンタデカノイル基、ヘキサデカノイル基、1-メチルペンタデカノイル基、14-メチルペンタデカノイル基、13,13-ジメチルテトラデカノイル基、ヘプタデカノイル基、15-メチルヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、1-メチルヘプタデカノイル基、ノナデカノイル基、アイコサノイル基およびヘナイコサノイル基のようなアルキルカルボニル基;スクシノイル基、グルタロイル基、アジポイル基のようなカルボキシ化アルキルカルボニル基;クロロアセチル基、ジクロロアセチル基、トリクロロアセチル基、トリフルオロアセチル基のようなハロゲノ低級アルキルカルボニル基;メトキシアセチル基のような低級アルコキシ低級アルキルカルボニル基;(E)-2-メチル-2-ブテノイル基のような不飽和アルキルカルボニル基が挙げられる。また、芳香族アシル基の例としては、ベンゾイル基、α-ナフトイル基、β-ナフトイル基のようなアリールカルボニル基;2-ブロモベンゾイル基、4-クロロベンゾイル基のようなハロゲノアリールカルボニル基;2,4,6-トリメチルベンゾイル基、4-トルオイル基のような低級アルキル化アリールカルボニル基;4-アニソイル基のような低級アルコキシ化アリールカルボニル基;2-カルボキシベンゾイル基、3-カルボキシベンゾイル基、4-カルボキシベンゾイル基のようなカルボキシ化アリールカルボニル基;4-ニトロベンゾイル基、2-ニトロベンゾイル基のようなニトロ化アリールカルボニル基;2-(メトキシカルボニル)ベンゾイル基のような低級アルコキシカルボニル化アリールカルボニル基;4-フェニルベンゾイル基のようなアリール化アリールカルボニル基などが挙げられる。好適には、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ペンタノイル基、ピバロイル基、ベンゾイル基である。
【0042】
本明細書において、用語「シリル基」の例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、イソプロピルジメチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、メチルジイソプロピルシリル基、メチルジ-t-ブチルシリル基、トリイソプロピルシリル基のようなトリ低級アルキルシリル基;ジフェニルメチルシリル基、ブチルジフェニルブチルシリル基、ジフェニルイソプロピルシリル基、フェニルジイソプロピルシリル基のような1~2個のアリール基で置換されたトリ低級アルキルシリル基などが挙げられる。好適には、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、t-ブチルジフェニルシリル基であり、さらに好適にはトリメチルシリル基である。
【0043】
本明細書において、用語「ハロゲン原子」としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子が挙げられる。好適には、フッ素原子または塩素原子である。
【0044】
本明細書において、用語「核酸合成のアミノ基の保護基」、「核酸合成の水酸基の保護基」、「核酸合成の保護基で保護された水酸基」、「核酸合成の保護基で保護されたリン酸基」、「核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基」の「保護基」とは、核酸合成の際に安定してアミノ基、水酸基、リン酸基またはメルカプト基を保護し得るものであれば、特に制限されない。具体的には、酸性または中性条件で安定であり、加水素分解、加水分解、電気分解、および光分解のような化学的方法により開裂し得る保護基のことをいう。このような保護基としては、例えば、低級アルキル基、低級アルケニル基、アシル基、テトラヒドロピラニルまたはテトラヒドロチオピラニル基、テトラヒドロフラニルまたはテトラヒドロチオフラニル基、シリル基、低級アルコキシメチル基、低級アルコキシ化低級アルコキシメチル基、ハロゲノ低級アルコキシメチル基、低級アルコキシ化エチル基、ハロゲン化エチル基、1~3個のアリール基で置換されたメチル基、「低級アルキル基、低級アルコキシ基、ハロゲン原子またはシアノ基でアリール環が置換された1~3個のアリール基で置換されたメチル基」、低級アルコキシカルボニル基、「ハロゲン原子、低級アルコキシ基またはニトロ基で置換されたアリール基」、「ハロゲン原子またはトリ低級アルキルシリル基で置換された低級アルコキシカルボニル基」、アルケニルオキシカルボニル基、「低級アルコキシまたはニトロ基でアリール環が置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル基」などが挙げられる。
【0045】
より具体的には、テトラヒドロピラニル基またはテトラヒドロチオピラニル基としては、テトラヒドロピラン-2-イル基、3-ブロモテトラヒドロピラン-2-イル基、4-メトキシテトラヒドロピラン-4-イル基、テトラヒドロチオピラン-4-イル基、4-メトキシテトラヒドロチオピラン-4-イル基などが挙げられる。テトラヒドロフラニル基またはテトラヒドロチオフラニル基としては、テトラヒドロフラン-2-イル基、テトラヒドロチオフラン-2-イル基が挙げられる。低級アルコキシメチル基としては、メトキシメチル基、1,1-ジメチル-1-メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、イソプロポキシメチル基、ブトキシメチル基、t-ブトキシメチル基などが挙げられる。低級アルコキシ化低級アルコキシメチル基としては、2-メトキシエトキシメチル基などが挙げられる。ハロゲノ低級アルコキシメチル基としては、2,2,2-トリクロロエトキシメチル基、ビス(2-クロロエトキシ)メチル基などが挙げられる。低級アルコキシ化エチル基としては、1-エトキシエチル基、1-(イソプロポキシ)エチル基などが挙げられる。ハロゲン化エチル基としては、2,2,2-トリクロロエチル基などが挙げられる。1~3個のアリール基で置換されたメチル基としては、ベンジル基、α-ナフチルメチル基、β-ナフチルメチル基、ジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基、α-ナフチルジフェニルメチル基、9-アンスリルメチル基などが挙げられる。「低級アルキル基、低級アルコキシ基、ハロゲン原子またはシアノ基でアリール環が置換された1~3個のアリール基で置換されたメチル基」としては、4-メチルベンジル基、2,4,6-トリメチルベンジル基、3,4,5-トリメチルベンジル基、4-メトキシベンジル基、4-メトキシフェニルジフェニルメチル基、4,4’-ジメトキシトリフェニルメチル基、2-ニトロベンジル基、4-ニトロベンジル基、4-クロロベンジル基、4-ブロモベンジル基、4-シアノベンジル基などが挙げられる。低級アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t-ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基などが挙げられる。「ハロゲン原子、低級アルコキシ基またはニトロ基で置換されたアリール基」としては、4-クロロフェニル基、2-フロロフェニル基、4-メトキシフェニル基、4-ニトロフェニル基、2,4-ジニトロフェニル基などが挙げられる。「ハロゲン原子またはトリ低級アルキルシリル基で置換された低級アルコキシカルボニル基」としては、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基、2-トリメチルシリルエトキシカルボニル基などが挙げられる。アルケニルオキシカルボニル基としては、ビニルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基などが挙げられる。「低級アルコキシまたはニトロ基でアリール環が置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル基」としては、ベンジルオキシカルボニル基、4-メトキシベンジルオキシカルボニル基、3,4-ジメトキシベンジルオキシカルボニル基、2-ニトロベンジルオキシカルボニル基、4-ニトロベンジルオキシカルボニル基などが挙げられる。
【0046】
1つの実施形態では、「核酸合成の水酸基の保護基」としては、例えば脂肪族アシル基、芳香族アシル基、1~3個のアリール基で置換されたメチル基、「低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲン、シアノ基でアリール環が置換された1~3個のアリール基で置換されたメチル基」、およびシリル基が挙げられる。あるいは、1つの実施形態では、「核酸合成の水酸基の保護基」としては、例えばアセチル基、ベンゾイル基、ベンジル基、p-メトキシベンゾイル基、ジメトキシトリチル基、モノメトキシトリチル基、tert-ブチルジフェニルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル(TBDMS)基、[(トリイソプロピルシリル)オキシ]メチル(TOM)基、[(2-ニトロベンジル)オキシ]メチル(NBOM)基、ビス(アセトキシエトキシ)メチルエーテル(ACE)基、テトラヒドロ-4-メトキシ-2H-ピラン-2-イル(Mthp)基、1-(2-シアノエトキシ)エチル(CEE)基、2-シアノエトキシメチル(CEM)基、tert-ブチルジチオメチル(DTM)基、2-(4-トリルスルホニル)エトキシメチル(TEM)基、および4-(N-ジクロロアセチル-N-メチルアミノ)ベンジルオキシメチル(4-MABOM)基が挙げられる。
【0047】
1つの実施形態では、「核酸合成の保護基で保護された水酸基」の保護基としては、例えば脂肪族アシル基、芳香族アシル基、「1~3個のアリール基で置換されたメチル基」、「ハロゲン原子、低級アルコキシ基またはニトロ基で置換されたアリール基」、低級アルキル基、および低級アルケニル基が挙げられる。あるいは、1つの実施形態では、「核酸合成の保護基で保護された水酸基」の保護基としては、例えばベンゾイル基、ベンジル基、2-クロロフェニル基、4-クロロフェニル基、および2-プロペニル基が挙げられる。
【0048】
1つの実施形態では、「核酸合成のアミノ基の保護基」としては、例えばアシル基、好適には、ベンゾイル基が挙げられる。
【0049】
1つの実施形態では、「核酸合成の保護基で保護されたリン酸基」の「保護基」としては、例えば低級アルキル基、シアノ基で置換された低級アルキル基、アラルキル基、「ニトロ基またはハロゲン原子でアリール環が置換されたアラルキル基」、および「低級アルキル基、ハロゲン原子、またはニトロ基で置換されたアリール基」が挙げられる。あるいは、1つの実施形態では、「核酸合成の保護基で保護されたリン酸基」の「保護基」としては、例えば2-シアノエチル基、2,2,2-トリクロロエチル基、ベンジル基、2-クロロフェニル基、および4-クロロフェニル基が挙げられる。
【0050】
1つの実施形態では、「核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基」の「保護基」としては、例えば脂肪族アシル基および芳香族アシル基、好適には、ベンゾイル基が挙げられる。
【0051】
本明細書において、-P(R)R[式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、アミノ基、炭素数1から6のアルコキシ基、炭素数1から6のアルキルチオ基、炭素数1から6のシアノアルコキシ基、または炭素数1から6のアルキル基を有するジアルキルアミノ基を表す]で表される基のうち、RがOR4aでありそしてRがNR5aである基は、「ホスホロアミダイト基」という(ここで、R4aは例えば炭素数1から6のシアノアルコキシ基であり、そしてR5aは例えば炭素数1から6のアルキル基である)。ホスホロアミダイト基としては、好適には、式-P(OCCN)(N(iPr))で表される基、または式-P(OCH)(N(iPr))で表される基が挙げられる。ここで、iPrはイソプロピル基を表す。
【0052】
本明細書において、「炭素数1~5のアルキレン基」とは、-(CH-(ここで、nは1~5の整数である)で表される基、すなわちメチレン基(-CH-)ならびに2つ~5つのメチレン基で構成される2価のアルキレン基(エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基およびペンタメチレン基)をいう。
【0053】
本明細書において、「炭素数2~5のアルケニレン基」とは、1つの二重結合を含む炭素数2~5の直鎖で構成される二価の基をいい、具体的な例としては、-CH=CH-、-CH-CH=CH-、-CH=CH-CH-、-CH-CH-CH=CH-、-CH-CH=CH-CH-、-CH=CH-CH-CH-、-CH-CH-CH-CH=CH-、-CH-CH-CH=CH-CH-、-CH-CH=CH-CH-CH-および、-CH=CH-CH-CH-CH-が挙げられる。
【0054】
本明細書において、用語「ヌクレオシド」および「ヌクレオシド類縁体」とは、プリンまたはピリミジン塩基と糖とが結合した「ヌクレオシド」のうち非天然型のもの、ならびに、プリンおよびピリミジン以外の芳香族複素環および芳香族炭化水素環でプリンまたはピリミジン塩基との代用が可能なものと糖が結合したものをいう。
【0055】
本明細書において、用語「人工オリゴヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド類縁体」とは、同一または異なる「ヌクレオシド」または「ヌクレオシド類縁体」がリン酸ジエステル結合で例えば2~50個結合した「オリゴヌクレオチド」の非天然型誘導体をいう。そのような類縁体としては、好適には、糖部分が修飾された糖誘導体;リン酸ジエステル部分がチオエート化されたチオエート誘導体;末端のリン酸部分がエステル化されたエステル体;プリン塩基上のアミノ基がアミド化されたアミド体が挙げられる。
【0056】
本明細書において、用語「その塩」とは、本発明の式(I)で表される化合物の塩をいう。そのような塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩のようなアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩のようなアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、ニッケル塩、コバルト塩などの金属塩;アンモニウム塩のような無機塩、t-オクチルアミン塩、ジベンジルアミン塩、モルホリン塩、グルコサミン塩、フェニルグリシンアルキルエステル塩、エチレンジアミン塩、N-メチルグルカミン塩、グアニジン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩、クロロプロカイン塩、プロカイン塩、ジエタノールアミン塩、N-ベンジル-フェネチルアミン塩、ピペラジン塩、テトラメチルアンモニウム塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩のような有機塩等のアミン塩;フッ化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩のようなハロゲン原子化水素酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩;メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩のような低級アルカンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩のようなアリールスルホン酸塩、酢酸塩、リンゴ酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩等の有機酸塩;および、グリシン塩、リジン塩、アルギニン塩、オルニチン塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩のようなアミノ酸塩が挙げられる。
【0057】
本明細書において、用語「その薬理学上許容される塩」としては、本発明の式(II)で表されるヌクレオシド構造を少なくとも1つ含有するオリゴヌクレオチド類縁体の塩をいう。そのような塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩のようなアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩のようなアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、ニッケル塩、コバルト塩などの金属塩;アンモニウム塩のような無機塩、t-オクチルアミン塩、ジベンジルアミン塩、モルホリン塩、グルコサミン塩、フェニルグリシンアルキルエステル塩、エチレンジアミン塩、N-メチルグルカミン塩、グアニジン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩、クロロプロカイン塩、プロカイン塩、ジエタノールアミン塩、N-ベンジル-フェネチルアミン塩、ピペラジン塩、テトラメチルアンモニウム塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩のような有機塩等のアミン塩;フッ化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩のようなハロゲン原子化水素酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩;メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩のような低級アルカンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩のようなアリールスルホン酸塩、酢酸塩、リンゴ酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩等の有機酸塩;および、グリシン塩、リジン塩、アルギニン塩、オルニチン塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩のようなアミノ酸塩が挙げられる。
【0058】
以下、本発明について詳述する。
【0059】
(架橋型ヌクレオシド)
本発明の架橋型ヌクレオシドは、以下の式(I):
【0060】
【化8】
【0061】
(式中、
Baseは、α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいプリン-9-イル基または2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基を表し、ここで、該α群は、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、炭素数1から6の直鎖アルキル基、炭素数1から6の直鎖アルコキシ基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、炭素数1から6の直鎖アルキルチオ基、アミノ基、炭素数1から6の直鎖アルキルアミノ基、核酸合成の保護基で保護されたアミノ基、およびハロゲン原子からなり、
およびRは、それぞれ独立して、水素原子、核酸合成の水酸基の保護基、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基、分岐または環を形成していてもよい炭素数2から7のアルケニル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から10のアリール基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール部分を有するアラルキル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいアシル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいシリル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいリン酸基、核酸合成の保護基で保護されたリン酸基、-P(R)R[式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、アミノ基、炭素数1から6のアルコキシ基、炭素数1から6のアルキルチオ基、炭素数1から6のシアノアルコキシ基、または炭素数1から6のアルキル基を有するジアルキルアミノ基を表す]を表し、
は、炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルケニレン基、あるいは-Y-(CH-、-(CH-Y-または-(CH-Y-(CH-[ここで、Yはスルホニル基、スルホンアミド基、アミド基、エステル基、またはカルボニル基であり、nは1~5の整数であり、lおよびmは正の整数でありかつlとmとの合計が2~5である]であり、
は、酸素原子、硫黄原子、-NH-またはメチレン基である)で表される化合物またはその塩である。
【0062】
上記式(I)において、「Base」は、例えばプリン塩基(すなわち、プリン-9-イル基)またはピリミジン塩基(すなわち、2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基)である。これらの塩基は、水酸基、炭素数1から6の直鎖アルキル基、炭素数1から6の直鎖アルコキシ基、メルカプト基、炭素数1から6の直鎖アルキルチオ基、アミノ基、炭素数1から6の直鎖アルキルアミノ基、およびハロゲン原子からなるα群より選択される任意の置換基を1以上有していてもよい。
【0063】
上記「Base」の具体例としては、アデニニル基、グアニニル基、シトシニル基、ウラシニル基、およびチミニル基、ならびに6-アミノプリン-9-イル基、2,6-ジアミノプリン-9-イル基、2-アミノ-6-クロロプリン-9-イル基、2-アミノ-6-フルオロプリン-9-イル基、2-アミノ-6-ブロモプリン-9-イル基、2-アミノ-6-ヒドロキシプリン-9-イル基、6-アミノ-2-メトキシプリン-9-イル基、6-アミノ-2-クロロプリン-9-イル基、6-アミノ-2-フルオロプリン-9-イル基、2,6-ジメトキシプリン-9-イル基、2,6-ジクロロプリン-9-イル基、6-メルカプトプリン-9-イル基、2-オキソ-4-アミノ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、4-アミノ-2-オキソ-5-フルオロ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、4-アミノ-2-オキソ-5-クロロ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、2-オキソ-4-メトキシ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、2-オキソ-4-メルカプト-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、2-オキソ-4-ヒドロキシ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、2-オキソ-4-ヒドロキシ-5-メチル-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、および4-アミノ-5-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基が挙げられる。
【0064】
あるいは、「Base」は、核酸医薬への導入という観点から、以下の構造式:
【0065】
【化9】
【0066】
でそれぞれ表される基、ならびに2-オキソ-4-ヒドロキシ-5-メチル-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、2-オキソ-4-アミノ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、6-アミノプリン-9-イル基、2-アミノ-6-ヒドロキシプリン-9-イル基、4-アミノ-5-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、および2-オキソ-4-ヒドロキシ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基が好ましい。「Base」はまた、オリゴヌクレオチドの合成の際には、上記基を構成する水酸基およびアミノ基が保護基により保護されているものであることが好ましい。
【0067】
式(I)に示すように、本発明の架橋型ヌクレオチドは、核酸糖部がピラノース環で構成されているヘキシトール核酸(HNA)骨格を有し、当該HNA骨格の1’位と3’位との間に架橋構造(-X-X-)が導入されている。
【0068】
ここで、この架橋構造に着目すると、1つの実施形態では、式(I)で表される化合物の一例としては、以下の式(I-a)~(I-d):
【0069】
【化10】
【0070】
(式(I-a)~(I-d)中、Base、R、RおよびXは、上記式(I)で定義されるものと同様である)で表される化合物が挙げられる。
【0071】
あるいは、1つの実施形態では、式(I)で表される化合物の他の例としては、以下の式(I-e)~(I-h):
【0072】
【化11】
【0073】
(式(I-e)~(I-g)中、Base、R、R、X、Y、l、m、およびnは上記式(I)で定義されるものと同様である)で表される化合物が挙げられる。
【0074】
こうした式(I)で表される化合物の具体的な例としては、必ずしも限定されないが、以下の式(I-1)~(I-3):
【0075】
【化12】
【0076】
(式(I-1)~(I-3)中、Base、R、およびRは上記式(I)で定義されるものと同様である)で表される化合物が挙げられる。
【0077】
本発明の架橋型ヌクレオシドは、上記式(I)から明らかなように天然核酸のN型配座に類似するHNA骨格を有する。これにより後述するオリゴヌクレオチドは一本鎖RNA(ssRNA)に対して良好な結合親和性を有する。
【0078】
(オリゴヌクレオチド)
本発明において、オリゴヌクレオチドは、このような式(I)の架橋型ヌクレオシドを用い、例えば、当該分野において周知のアミダイト法、またはM. Kuwaharaら、Nucleic Acids Res.,2008年,36巻,13号,4257-4265頁に記載されるような三リン酸化を経て容易に製造することができる。
【0079】
本発明のオリゴヌクレオチドまたはその薬理学上許容される塩(以下、これらをまとめて「本発明のオリゴヌクレオチド」を言うことがある)は、以下の式(II):
【0080】
【化13】
【0081】
(式中、
Baseは、α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいプリン-9-イル基または2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基を表し、ここで、該α群は、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、炭素数1から6の直鎖アルキル基、炭素数1から6の直鎖アルコキシ基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、炭素数1から6の直鎖アルキルチオ基、アミノ基、炭素数1から6の直鎖アルキルアミノ基、核酸合成の保護基で保護されたアミノ基、およびハロゲン原子からなり、
は、炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルケニレン基、あるいは-Y-(CH-、-(CH-Y-または-(CH-Y-(CH-[ここで、Yはスルホニル基、スルホンアミド基、アミド基、エステル基、またはカルボニル基であり、nは1~5の整数であり、lおよびmは正の整数でありかつlとmとの合計が2~5である]であり、
は、酸素原子、硫黄原子、-NH-またはメチレン基である)で表されるヌクレオシド構造を少なくとも1つ含む。
【0082】
1つの実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチドに含まれる式(II)のヌクレオシド構造の一例としては、以下の式(II-a)~(II-d):
【0083】
【化14】
【0084】
(式(II-a)~(II-d)中、BaseおよびXは、上記式(II)で定義されるものと同様である)で表されるものが挙げられる。
【0085】
あるいは、1つの実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチドに含まれる式(II)のヌクレオシド構造の他の例としては、以下の式(II-e)~(II-h):
【0086】
【化15】
【0087】
(式(II-e)~(II-g)中、Base、X、Y、l、m、およびnは上記式(II)で定義されるものと同様である)で表されるものが挙げられる。
【0088】
こうした本発明のオリゴヌクレオチドに含まれる式(II)のヌクレオシド構造の具体的な例としては、必ずしも限定されないが、以下の式(II-1)~(II-3):
【0089】
【化16】
【0090】
(式(II-1)~(II-3)中、Baseは上記式(I)で定義されるものと同様である)で表されるものが挙げられる。
【0091】
本発明のオリゴヌクレオチドは、上記ヌクレオシド構造を、任意の位置に少なくとも1つ有する。その位置および数は、特に限定されず、目的に応じて適宜設計され得る。
【0092】
このようなヌクレオシド構造を含むオリゴヌクレオチド(アンチセンス分子)は、従来の2’,4’-BNA/LNAを用いる場合と比較して、ヌクレアーゼ耐性能が飛躍的に向上する。また、公知の2’,4’-BNA/LNAに匹敵するssRNA結合親和性を有する。本発明のオリゴヌクレオチドはまた、現在市販されている多くの核酸医薬品に含まれているホスホロチオエート修飾核酸(以下、PS修飾核酸ということがある)を凌駕する酵素耐性能を有する。
【0093】
これらのことから、本発明の架橋型ヌクレオシドを用いて合成されたオリゴヌクレオチドは、抗腫瘍剤、抗ウイルス剤をはじめとした、特定の遺伝子の働きを阻害または回復して疾病を治療する医薬品(アンチセンス分子)としての有用性が期待される。
【0094】
特に、アンチセンス法では、相補センス鎖RNAに対する結合親和性および生体内DNA分解酵素への耐性の両方が必要とされる。一般的に、核酸は、一本鎖状態では、糖部の構造が絶えずDNA二重鎖に近い形と、DNA-RNA二重鎖やRNA二重鎖に近い形との間で揺らいでいることが知られている。このため、核酸糖部のコンホメーションを本発明のように予め所定の様式で化学修飾することにより、標的ssRNAに対する結合親和性を大幅に向上させることが可能である。また、核酸分解酵素はオリゴ核酸のリン酸ジエステル部分を切断するが、本発明の架橋型ヌクレオシドでは、糖部に嵩高い置換基が配置されているので、立体障害によってオリゴ核酸の分解を抑制することができる。さらに、本発明の架橋型ヌクレオシドでは、上記のようにHNA骨格の1’位と3’位との間に架橋構造(-X-X-)が導入されている。当該HNA骨格および架橋構造によって、本発明の架橋型ヌクレオシドは、これら標的ssRNAに対する結合親和性および酵素耐性能の両方が高められている。
【0095】
本発明のオリゴヌクレオチドは、例えば、賦形剤、結合剤、防腐剤、酸化安定剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味剤などの医薬の製剤技術分野において通常用いられる補助剤を配合して、非経口投与製剤またはリポソーム製剤とすることができる。また、例えば、当該技術分野で通常用いられる医薬用担体を配合して、液剤、クリーム剤、軟膏剤などの局所用の製剤を調製することができる。
【実施例
【0096】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0097】
(実施例1:架橋型ヌクレオシドの合成(1))
【0098】
【化17】
【0099】
(1-1)化合物2の合成
【0100】
【化18】
【0101】
化合物1(3.00g,11.02mmol)とビストリメチルシリルアセチレン(3.76g,22.04mmol)との無水ジクロロメタン溶液(50mL)に窒素気流下にて-20℃で、1.0MのSnCl・ジクロロメタン溶液(16.53mL,16.53mmol)を添加し、同温で0.5時間撹拌した。反応が完結した後、反応溶液を飽和重曹水/飽和ロッシェル塩水溶液(=1:1(容量比),200mL)に加え、0℃で30分間撹拌した。その後、混合物をジクロロメタンで抽出し、水および飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させて溶媒を減圧下で留去することにより化合物2を粗生成物として得た。この化合物2を精製することなくそのまま次の反応に用いた。
【0102】
(1-2)化合物3の合成
【0103】
【化19】
【0104】
上記で得られた化合物2のメタノール溶液(50mL)に氷冷下で、5Mのナトリウムメトキシド・メタノール溶液(2.20mL,11.02mmol)を添加し、窒素気流下室温で1時間撹拌した。反応が完結した後、反応溶液に強酸性陽イオン交換樹脂(富士フイルム和光純薬株式会社製DOWEX 50×8 200-400メッシュ)を加えて30分間撹拌し、中和した。その後混合物を濾過し、濾液を濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO,メタノール/CHCl=5%)により精製し、化合物3(1.60g,94%,化合物1から2工程)を無色油状物質として得た。
【0105】
得られた化合物3の物性データを表1に示す。
【0106】
【表1】
【0107】
(1-3)化合物4の合成
【0108】
【化20】
【0109】
上記で得られた化合物3(5.36g,34.8mmol)のジクロロメタン溶液(150mL)に、氷冷下でメタクロロ安息香酸(mCPBA)(純度70%,17.1g,69.5mmol)を添加し、室温で24時間撹拌した。反応が完結した後、反応溶液を直接シリカゲルカラムクロマトグラフィー上に担持し、簡易的に精製し(SiO,ヘキサン/酢酸エチル=1:1から0/1)、エポキシジオールの立体異性体混合物(5.62g)を無色油状物質として得た。次いで、このエポキシジオール(5.62g)、p-アニスアルデヒドジメチルアセタール(11.8mL,69.5mmol)および(±)-カンファースルホン酸(807.6mg,3.48mmol)の無水アセトニトリル溶液(150mL)を窒素気流下で1.5時間加熱還流した。反応が完結した後、反応溶液をトリエチルアミン(1mL)で中和し、ゆっくりと氷冷した。生じた白色固体を濾過で回収し、濾液を減圧留去し、メタノールで洗浄した。生じた白色固体を再び濾過で回収し、合わせて化合物4を得た(6.23g,62%,化合物3から2工程)。
【0110】
得られた化合物4の物性データを表2に示す。
【0111】
【表2】
【0112】
(1-4)化合物5の合成
【0113】
【化21】
【0114】
上記で得られた化合物4(300mg,1.04mmol)のメタノール/1,4-ジオキサン混合溶液(10mL,メタノール/1,4-ジオキサン=1:4(容量比))にパラジウム/ポリエチエレンイミン(Pd/PEI)(30mg,10重量%)を添加し、水素気流下にて室温で1.5時間撹拌した。反応が完結した後、混合物をショートシリカゲルカラムクロマトグラフィーに担持して洗浄(CHCl/メタノール=14/1)することにより化合物5を粗生成物として得た。この粗生成物(化合物5)では、過剰に還元された1-エチル体が分離困難であったため、これ以上精製することなくそのまま次の反応に用いた。
【0115】
(1-5)化合物6の合成
【0116】
【化22】
【0117】
上記で得られた化合物5(298mg)のメタノール/ジクロロメタン混合溶液(10mL,DCM/MeOH=4:1(容量比))を-78℃でオゾンと反応させた。1時間後、水素化ホウ素ナトリウム(157mg,4.16mmol)を同温で加え、ゆっくりと室温まで昇温させた。1時間撹拌した後、飽和塩化アンモニウム水溶液および酢酸エチルを加え、抽出した。有機層を飽和重曹水および飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させて溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO,アセトン/CHCl=20%から27%)により精製し、化合物6(250mg,82%,化合物4から2工程)を白色固体として得た。
【0118】
得られた化合物6の物性データを表3に示す。
【0119】
【表3】
【0120】
(1-6)化合物7の合成
【0121】
【化23】
【0122】
上記で得られた化合物6(353.1mg,1.20mmol)、チミン(302.6mg,2.40mmol)およびジアザビシクロウンデセン(DBU)(717.7μL,4.80mmol)の無水アセトニトリル溶液(12mL)を、マイクロウェーブの照射下にて、85℃で48時間加熱した。反応が完結した後、生じた白色固体を濾過で回収し、化合物7を粗生成物として得た。この化合物7を精製することなくそのまま次の反応に用いた。
【0123】
(1-7)化合物8の合成
【0124】
【化24】
【0125】
上記で得られた化合物7(516.5mg)、トリエチルアミン(334.5μL,2.40mmol)および4,4-ジメチルアミノピリジン(14.7mg,0.120mmol)の無水ジクロロメタン溶液(12mL)に、氷冷下にてp-トルエンスルホニルクロリド(TsCl)(274.5mg,1.44mmol)を添加し、窒素気流下にて室温で2.5時間撹拌した。反応が完結した後、反応溶液を飽和重曹水に加え、ジクロロメタンで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させて溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO,酢酸エチル/CHCl=30%から80%)により精製し、化合物8(360mg,52%,化合物6から2工程)を白色固体として得た。
【0126】
得られた化合物8の物性データを表4に示す。
【0127】
【表4】
【0128】
(1-8)化合物9の合成
【0129】
【化25】
【0130】
上記で得られた化合物8(360mg,0.626mmol)の無水DMF溶液(6.0mL)に60%油性水素化ナトリウム(62.7mg,1.57mmol)を加え、窒素気流下にて室温で1時間撹拌した。反応が完結した後、飽和塩化アンモニウム水溶液および酢酸エチルを加え、抽出した。有機層を飽和重曹水および飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させて溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO,酢酸エチル/ヘキサン=60%から90%)により精製し、化合物9(244.6mg,97%)を白色固体として得た。
【0131】
得られた化合物9の物性データを表5に示す。
【0132】
【表5】
【0133】
(1-9)化合物10の合成
【0134】
【化26】
【0135】
上記で得られた化合物9(28.7mg,0.0713mmol)のメタノール溶液(1.0mL)にPd(OH)/C(7.1mg)を加え、水素気流下にて室温で1時間撹拌した。反応が完結した後、混合物を濾過しメタノールで洗浄した後、濾液を減圧留去して、化合物10を粗生成物として得た。この化合物10を精製することなくそのまま次の反応に用いた。
【0136】
(1-10)化合物11の合成
【0137】
【化27】
【0138】
上記で得られた化合物10の無水ピリジン溶液(1.0mL)に4,4’-ジメトキシトリチルクロリド(36.2mg,0.107mmol)を加え、窒素気流下にて室温で3時間撹拌した。反応が完結した後、反応溶液にメタノールを加え、溶媒を減圧留去した。得られた残渣に酢酸エチルおよび飽和重曹水を加え、抽出した。有機層を飽和重曹水および飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させて溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO,酢酸エチル/ヘキサン=70%から100%)により精製し、化合物11(31.2mg,75%,化合物9から2工程)を白色固体として得た。
【0139】
得られた化合物11の物性データを表6に示す。
【0140】
【表6】
【0141】
(1-11)化合物12の合成
【0142】
【化28】
【0143】
上記で得られた化合物11(321.9mg,0.549mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(286.7μL,1.65mmol)および1-メチルイミダゾール(13.2μL,0.165mmol)の無水アセトニトリル溶液(5.5mL)に氷冷下で、2-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルホスホロクロリダート(183.6μL,0.823mmol)を加え、窒素気流下にて室温で1時間撹拌した。反応が完結した後、飽和重曹水および酢酸エチルを加え、抽出した。有機層を飽和重曹水および飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させて溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO,酢酸エチル/ヘキサン=65%から95%)により精製し、化合物12(341.4mg,79%)を白色固体として得た。
【0144】
得られた化合物12の物性データを表7に示す。
【0145】
【表7】
【0146】
(実施例2:架橋型ヌクレオシドの合成(2))
【0147】
【化29】
【0148】
(2-1)化合物13の合成
【0149】
【化30】
【0150】
まず、実施例1と同様にして化合物4から化合物5を得た。次いで、得られた化合物5(1.03g)の無水テトラヒドロフラン溶液(6.0mL)に0.5Mの9-ボラビシクロ[3.3.1]ノナン(9-BBN)・テトラヒドロフラン溶液(13.9mL,6.94mmol)を加え、窒素気流下にて室温で1時間撹拌した。原料が消失した後、反応溶液に氷冷下で、水(20mL)および過ホウ素酸ナトリウム・四水和物(5.33g,34.7mmol)を加え、室温でさらに1時間撹拌した。その後、混合物を濾過し、濾液を酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させて溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO,メタノール/CHCl=2%から5%)により精製し、化合物13(910mg,85%,化合物4から2工程)を白色固体として得た。
【0151】
得られた化合物13の物性データを表8に示す。
【0152】
【表8】
【0153】
(2-2)化合物14の合成
【0154】
【化31】
【0155】
上記で得られた化合物13(1.10g,3.57mmol)、チミン(900mg,7.14mmol)およびジアザビシクロクロウンデンセン(DBU)(2.13mL,14.3mmol)の無水アセトニトリル溶液(17.8mL)をマイクロウェーブ照射下、100℃で24時間加熱した。反応が完結した後、溶媒を減圧留去し、ジクロロメタンと飽和重曹水を加え抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去して化合物14を粗生成物として得た。この化合物14を精製することなくそのまま次の反応に用いた。
【0156】
(2-3)化合物15の合成
【0157】
【化32】
【0158】
上記で得られた化合物14(1.58g)、トリエチルアミン(1.24mL,8.92mmol)および4,4-ジメチルアミノピリジン(43.6mg,0.357mmol)の無水ジクロロメタン溶液(36mL)に氷冷下で、p-トルエンスルホニルクロリド(TsCl)(1.02g,5.35mmol)を加え、窒素気流下にて室温で6時間撹拌した。反応が完結した後、反応溶液を飽和重曹水に加え、ジクロロメタンで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させて溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO,酢酸エチル/CHCl=30%から80%)により精製し、化合物15(1.08g,51%,化合物13から2工程)を白色固体として得た。
【0159】
得られた化合物15の物性データを表9に示す。
【0160】
【表9】
【0161】
(2-4)化合物16の合成
【0162】
【化33】
【0163】
上記で得られた化合物15(1.08g,1.84mmol)の無水DMF溶液(18mL)に60%油性水素化ナトリウム(183.5mg,4.59mmol)を加え、窒素気流下にて90℃で48時間撹拌した。反応が完結した後、飽和塩化アンモニウム水溶液および酢酸エチルを加え、抽出した。有機層を飽和重曹水および飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させて溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO,酢酸エチル/ヘキサン=60%から100%)により精製し、化合物16(480mg,63%)を白色固体として得た。
【0164】
得られた化合物16の物性データを表10に示す。
【0165】
【表10】
【0166】
(2-5)化合物17の合成
【0167】
【化34】
【0168】
上記で得られた化合物16(47.1mg,0.113mmol)のメタノール溶液(1.0mL)にPd(OH)/C(11.3mg)を加え、水素気流下にて室温で1時間撹拌した。反応が完結した後、混合物を濾過しメタノールで洗浄した後、濾液を減圧留去することにより化合物17を粗生成物として得た。この化合物17を精製することなくそのまま次の反応に用いた。
【0169】
(2-6)化合物18の合成
【0170】
【化35】
【0171】
上記で得られた化合物17の無水ピリジン溶液(1.0mL)に4,4’-ジメトキシトリチルクロリド(57.5mg,0.170mmol)を加え、窒素気流下にて室温で3時間撹拌した。反応が完結した後、反応溶液にメタノールを加え、溶媒を減圧留去した。得られた残渣に酢酸エチルおよび飽和重曹水を加え、抽出した。有機層を飽和重曹水および飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させて溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO,酢酸エチル/ヘキサン=70%から100%)により精製し、化合物18(41.5mg,61%,化合物16から2工程)を白色固体として得た。
【0172】
得られた化合物18の物性データを表11に示す。
【0173】
【表11】
【0174】
(2-7)化合物19の合成
【0175】
【化36】
【0176】
上記で得られた化合物18(282.0mg,0.469mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(245.3μL,1.41mmol)および1-メチルイミダゾール(11.3μL,0.141mmol)の無水アセトニトリル溶液(4.7mL)に氷冷下で、2-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルホスホロクロリダート(157.1μL,0.704mmol)を加え、窒素気流下にて室温で1時間撹拌した。反応が完結した後、飽和重曹水および酢酸エチルを加え、抽出した。有機層を飽和重曹水および飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させて溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO,酢酸エチル/ヘキサン=65%から95%)により精製し、化合物19(317.3mg,84%)を白色固体として得た。
【0177】
得られた化合物19の物性データを表12に示す。
【0178】
【表12】
【0179】
(実施例3:架橋型ヌクレオシドの合成(3))
【0180】
【化37】
【0181】
(3-1)化合物20の合成
【0182】
【化38】
【0183】
まず、実施例1と同様にして化合物4から化合物5を得た。次いで、得られた化合物5(1.15g)、チミン(1.01g,8.00mmol)およびジアザビシクロウンデセン(DBU)(2.39mL,16.0mmol)の無水アセトニトリル溶液(18mL)をマイクロウェーブ照射下にて、100℃で24時間加熱した。反応が完結した後、溶媒を減圧留去し、ジクロロメタンおよび飽和重曹水を加え抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させて溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO,アセトン/CHCl=20%から40%)により精製し、化合物20および1-エチル体(副生成物)の混合物(1.17g,化合物20:1-エチル体=1:0.26)を淡黄色固体として得た。化合物20および1-エチル体の分離が困難であったため、これらを精製することなくそのまま次の反応に用いた。
【0184】
得られた化合物20の物性データを表13に示す。なお、NMRについては、副生成物(1-エチル体)と化合物20の混合物の状態で測定し、得られた化合物20のシグナルのみの帰属を示す。
【0185】
【表13】
【0186】
(3-2)化合物21の合成
【0187】
【化39】
【0188】
上記で得られた化合物20および1-エチル体の混合物(1.17g,約2.81mmol)の無水テトラヒドロフラン溶液(4.7mL)に60%油性水素化ナトリウム(336.8mg,8.42mmol)を加え、窒素気流下にて室温で1時間撹拌した。次いで、反応溶液に、臭化アリル(308.9μL,3.65mmol)を加え、窒素気流下にて室温で4日間撹拌した。反応が完結した後、飽和塩化アンモニウム水溶液および酢酸エチルを加え、抽出した。有機層を飽和重曹水および飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させて溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO,酢酸エチル/ヘキサン=40%から70%)により精製し、化合物21および1-エチル体(副生成物)の混合物(900mg,化合物21:1-エチル体=1:0.26)を黄色固体として得た。
【0189】
得られた化合物21の物性データを表14に示す。なお、NMRについては、副生成物(1-エチル体)と化合物21の混合物の状態で測定し、得られた化合物21のシグナルのみの帰属を示す。
【0190】
【表14】
【0191】
(3-3)化合物22の合成
【0192】
【化40】
【0193】
上記で得られた化合物21および1-エチル体の混合物(900mg,約1.56mmol)の脱酸素トルエン溶液(31mL)に第二世代グラブス触媒(66.3mg,0.078mmol)を窒素気流下にて室温で加え、50℃で5.5時間撹拌した。その後、反応溶液を減圧留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO,酢酸エチル/ヘキサン=60%から100%)により精製し、化合物22(564.1mg,化合物4からの33%)を淡黄色固体として得た。
【0194】
得られた化合物22の物性データを表15に示す。
【0195】
【表15】
【0196】
(3-4)化合物23の合成
【0197】
【化41】
【0198】
上記で得られた化合物22(522.9mg,1.22mmol)のメタノール溶液(12.0mL)にPd(OH)/C(122.0mg)を加え、水素気流下にて室温で3時間撹拌した。反応が完結した後、混合物を濾過してメタノールで洗浄し、濾液を減圧留去することにより化合物23を粗生成物として得た。この化合物23を精製することなくそのまま次の反応に用いた。
【0199】
(3-5)化合物24の合成
【0200】
【化42】
【0201】
上記で得られた化合物23の無水ピリジン溶液(12.0mL)に4,4’-ジメトキシトリチルクロリド(620.3mg,1.83mmol)を加え、窒素気流下にて室温で2.5時間撹拌した。反応が完結した後、反応溶液にメタノールを加え、溶媒を減圧留去した。得られた残渣に酢酸エチルおよび飽和重曹水を加え、抽出した。有機層を飽和重曹水および飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させて溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO,アセトン/クロロホルム=15%から40%)により精製し、化合物24(530.1mg,71%,化合物22から2工程)を白色固体として得た。
【0202】
得られた化合物24の物性データを表16に示す。
【0203】
【表16】
【0204】
(3-6)化合物25の合成
【0205】
【化43】
【0206】
上記で得られた化合物24(227.2mg,0.370mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(193.2μL,1.12mmol)および1-メチルイミダゾール(8.90μL,0.111mmol)の無水アセトニトリル溶液(3.7mL)に氷冷下にて2-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルホスホロクロリダート(123.7μL,0.554mmol)を加え、窒素気流下にて室温で1時間撹拌した。反応が完結した後、飽和重曹水および酢酸エチルを加え、抽出した。有機層を飽和重曹水および飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させて溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO,酢酸エチル/ヘキサン=40%から80%)により精製し、化合物25(235.4mg,78%)を白色固体として得た。
【0207】
得られた化合物25の物性データを表17に示す。
【0208】
【表17】
【0209】
(実施例4:架橋型ヌクレオシドの合成(4))
【0210】
【化44】
【0211】
(4-1)化合物26の合成
【0212】
【化45】
【0213】
上記で得られた化合物24(484.7mg,0.79mmol)のピリジン溶液(8mL)に、クロロトリエチルシラン(650μL,3.9mmol)を滴下し、窒素気流下室温で4時間撹拌した。反応が完結した後、飽和重曹水と酢酸エチルを加え、抽出した。有機層を水および飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO,ヘキサン/酢酸エチル=60/40から40/60)により精製し、化合物26(551.2mg,96%)を白色固体として得た。
【0214】
得られた化合物26の物性データを表18に示す。
【0215】
【表18】
【0216】
(4-2)化合物27の合成
【0217】
【化46】
【0218】
上記で得られた化合物26(514.3mg,0.71mmol)、トリエチルアミン(1.5mL,10.8mmol)と1,2,4-トリアゾール(714.4mg,10.3mmol)の無水アセトニトリル溶液(7mL)に塩化ホスホリル(200μL,2.15mmol)を滴下し、窒素気流下にて室温で45分撹拌した。反応が完結した後、飽和重曹水と酢酸エチルを加え、抽出した。有機層を水および飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ溶媒を減圧留去した。1,4-ジオキサン(7mL)、28%アンモニウム水溶液(1.2mL,9.9mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。反応完結後、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO,酢酸エチル/メタノール=95/5から90/10)により精製し、化合物27(511.9mg,99%)を白色固体として得た。
【0219】
得られた化合物27の物性データを表19に示す。
【0220】
【表19】
【0221】
(4-3)化合物28の合成
【0222】
【化47】
【0223】
上記で得られた化合物27(702.8mg,0.97mmol)のピリジン溶液(10mL)に、無水安息香酸(328.4mg,1.45mmol)を加え、窒素気流下にて40℃で6時間撹拌した。反応が完結した後、飽和重曹水と酢酸エチルを加え、抽出した。有機層を水および飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO,クロロホルム/メタノール=99/1から97/3)により精製し、化合物28(634.8mg,79%)を白色固体として得た。
【0224】
得られた化合物28の物性データを表20に示す。
【0225】
【表20】
【0226】
(4-4)化合物29の合成
【0227】
【化48】
【0228】
上記で得られた化合物28(43.5mg,0.05mmol)のテトラヒドロフラン(THF)溶液(1.0mL)に、テトラブチルアンモニウムフルオリド(1M THF溶液、157μL,0.16mmol)を滴下し、室温で4時間撹拌した。反応が完結した後、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO,ヘキサン/酢酸エチル=60/40から40/60)により精製し、化合物29(35.6mg,95%)を白色固体として得た。
【0229】
得られた化合物29の物性データを表21に示す。
【0230】
【表21】
【0231】
(4-5)化合物30の合成
【0232】
【化49】
【0233】
上記で得られた化合物29(31,0mg,0.04mmol)の無水アセトニトリル溶液(1mL)に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(23μL,0.13mmol)、1-メチルイミダゾール(1μL,0.013mmol)および2-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルホスホロクロリダート(15μL,0.067mmol)を加え、窒素気流下にて室温で4時間撹拌した。反応が完結した後、メタノール、飽和重曹水と酢酸エチルを加え、抽出した。有機層を水および飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO,ヘキサン/酢酸エチル=65/35から45/55)により精製し、化合物30(34.3mg,84%)を白色固体として得た。
【0234】
得られた化合物30の物性データを表22に示す。
【0235】
【表22】
【0236】
(実施例5:架橋型ヌクレオシドの合成(5))
【0237】
【化50】
【0238】
(5-1)化合物31の合成
【0239】
【化51】
【0240】
上記で得られた化合物5(1.27g,4.36mmol)、アデニン(650mg,4.81mmol)およびジアザビシクロウンデセン(DBU)(976μL,6.54mmol)の無水ジメチルホルムアミド溶液(11.0mL)をマイクロウェーブ照射下、150℃で2時間加熱した。放冷後、酢酸エチルと水を加え抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO,酢酸エチル/メタノール=95/5から85/15)により精製し、化合物31および1-エチル体の混合物(1.69g)を淡黄色固体として得た。化合物31および1-エチル体の分離が困難であったため、これらを精製することなくそのまま次の反応に用いた。
【0241】
得られた化合物31の物性データを表23に示す。なお、NMRについては、副生成物(1-エチル体)と化合物31の混合物の状態で測定し、得られた化合物31のシグナルのみの帰属を示す。
【0242】
【表23】
【0243】
(5-2)化合物32の合成
【0244】
【化52】
【0245】
上記で得られた化合物31および1-エチル体の混合物(423mg,約0.10mmol)の無水テトラヒドロフラン溶液(10mL)にN,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(400μL,2.99mmol)を加え、窒素気流下にて室温で16時間撹拌した。反応が完結した後、溶媒を減圧留去し、無水ジメチルホルムアミド(10mL)、60%油性水素化ナトリウム(60.1mg,1.50mmol)を加え、窒素気流下にて-30℃で1時間撹拌した。その後反応溶液に、臭化アリル(100μL,1.19mmol)、ヨウ化ナトリウム(30.1mg,0.20mmol)を加え、アルゴン気流下にて-30℃で3時間撹拌した。反応が完結した後、メタノール(1mL)を加えて-20℃で20分間撹拌した後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和重曹水、水および飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO,酢酸エチル/メタノール=98/2から93/7)により精製し、化合物32および1-エチル体の混合物(426.0mg)を白色固体として得た。
【0246】
得られた化合物32の物性データを表24に示す。なお、NMRについては、副生成物(1-エチル体)と化合物32の混合物の状態で測定し、得られた化合物32のシグナルのみの帰属を示す。
【0247】
【表24】
【0248】
(5-3)化合物33の合成
【0249】
【化53】
【0250】
上記で得られた化合物32および1-エチル体の混合物(254.8mg,約0.49mmol)のメタノール溶液(4.9mL)に2Nの水酸化ナトリウム水溶液(1.46mL,2.92mmol)を加え、40℃で1時間撹拌した。反応が完結した後、析出した白色固体を濾取した。濾液を減圧留去し、得られた残渣をメタノールで洗浄し、生じた白色固体を再び濾過で回収し、合わせて化合物33および1-エチル体の混合物(194.6mg)を白色固体として得た。
【0251】
得られた化合物33の物性データを表25に示す。なお、NMRについては、副生成物(1-エチル体)と化合物33の混合物の状態で測定し、得られた化合物33のシグナルのみの帰属を示す。
【0252】
【表25】
【0253】
(5-4)化合物34の合成
【0254】
【化54】
【0255】
上記で得られた化合物33および1-エチル体の混合物(23.5mg,約0.045mmol)の脱酸素トルエン溶液(4.5mL)に第二世代ホベイダ-グラブス触媒(3.2mg,0.005mmol)、p-ベンゾキノン(0.7mg,0.006mmol)を窒素気流下にて室温で加え、50℃で20時間撹拌した。その後、反応溶液を減圧留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO,クロロホルム/アセトン=95/5から70/30)により精製し、化合物34(18.2mg,53%,化合物4より6工程)を白色固体として得た。
【0256】
得られた化合物34の物性データを表26に示す。
【0257】
【表26】
【0258】
(5-5)化合物35の合成
【0259】
【化55】
【0260】
上記で得られた化合物34(57.8mg,0.13mmol)のメタノール/THF混合溶媒(3.9mL,メタノール/THF=2/1)に酢酸(116μL)を添加し、水酸化パラジウム/炭素(約50%水湿潤、48.1mg)を加えた後、水素気流下にて60℃で7時間撹拌した。反応が完結した後、混合物を濾過し、酢酸エチルで洗浄した後、濾液を減圧留去し化合物35(29.5mg,70%)を白色固体として得た。
【0261】
得られた化合物35の物性データを表27に示す。
【0262】
【表27】
【0263】
(5-6)化合物36の合成
【0264】
【化56】
【0265】
上記で得られた化合物35(25.2mg,0.078mmol)のピリジン溶液(1mL)にテトラメチルシリルクロリド(40μL,0.32mmol)を加え、窒素気流下にて室温で2時間撹拌した後、ベンゾイルクロリド(35μL,0.30mmol)を滴下し、窒素気流下にて室温で18時間撹拌した。反応が完結した後、アンモニア水(680μL)を加え、5時間後、反応液を濃縮した。残渣にピリジン(1mL)、アンモニア水を加え、3時間室温で撹拌した後、反応液を濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO,酢酸エチル/メタノール=100/0から93/7)により精製し、化合物36(18.2mg,55%)を白色固体として得た。
【0266】
得られた化合物36の物性データを表28に示す。
【0267】
【表28】
【0268】
(5-7)化合物37の合成
上記で得られた化合物36の無水ピリジン溶液に4,4’-ジメトキシトリチルクロリドを加え、窒素気流下にて撹拌する。反応が完結した後、反応溶液にメタノールを加え、溶媒を減圧留去する。得られた残渣に酢酸エチルおよび飽和重曹水を加え、抽出する。有機層を飽和重曹水および飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させて溶媒を減圧留去する。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物37を得る。
【0269】
(5-8)化合物38の合成
上記で得られた化合物37、N,N-ジイソプロピルエチルアミンおよび1-メチルイミダゾールの無水アセトニトリル溶液に氷冷下にて2-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルホスホロクロリダートを加え、窒素気流下にて撹拌する。反応が完結した後、飽和重曹水および酢酸エチルを加え、抽出する。有機層を飽和重曹水および飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させて溶媒を減圧留去する。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで化合物38を得る。
【0270】
(実施例6:架橋型ヌクレオシドの合成(6))
【0271】
【化57】
【0272】
(6-1)化合物39の合成
【0273】
【化58】
【0274】
上記で得られた化合物5(170.6mg,0.59mmol)、2-アミノ-6-クロロプリン(199.3mg,1.18mmol)および炭酸カリウム(448.0mg,3.24mmol)、18-クラウン-6(387.7mg,1.47mmol)のHMPA(2mL)溶液を室温で窒素気流下にて14時間撹拌した。反応が完結した後、氷水に反応液をあけ1時間撹拌した。析出した白色固体をろ取し、氷水およびジエチルエーテルで洗浄した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO,クロロホルム/メタノール=100/0から95/5)により精製し、化合物39および1-エチル体の混合物(75.4mg)を白色固体として得た。
【0275】
得られた化合物39の物性データを表29に示す。なお、NMRについては、副生成物(1-エチル体)と化合物39の混合物の状態で測定し、得られた化合物39のシグナルのみの帰属を示す。
【0276】
【表29】
【0277】
(6-2)化合物40の合成
【0278】
【化59】
【0279】
上記で得られた化合物39および1-エチル体の混合物(72.0mg,約0.16mmol)の無水ジメチルホルムアミド(16mL)溶液にN,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(199.3mg,1.18mmol)を加え、50℃で窒素気流下にて19時間撹拌した。反応が完結した後、反応液を濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO,酢酸エチル)により精製し、化合物40および1-エチル体の混合物(50.1mg)を白色固体として得た。
【0280】
得られた化合物40の物性データを表30に示す。なお、NMRについては、副生成物(1-エチル体)と化合物40の混合物の状態で測定し、得られた化合物40のシグナルのみの帰属を示す。
【0281】
【表30】
【0282】
(6-8)化合物48の合成
上記で得られた化合物40を用いて、実施例5と同様の方法(化合物31から化合物38までの各合成方法)により化合物40から化合物48を合成する。
【0283】
(実施例7:架橋型ヌクレオシドの合成(7))
【0284】
【化60】
【0285】
(7-1)化合物51の合成
【0286】
【化61】
【0287】
化合物1(1.03g,3.77mmol)の無水アセトニトリル(14.7mL)溶液に、氷冷下でアリルトリメチルシラン(0.705ml,4.44mmol)を加えた後、トリメチルシリルトリフラート(0.71ml,3.93mmol)を滴下し、窒素気流下にて室温で1時間撹拌した。反応が完結した後、反応溶液に飽和重曹水を加えて撹拌した。その後、混合物を酢酸エチルで抽出した。水および飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物をこれ以上精製することなくそのまま次の反応に用いた。
【0288】
(7-2)化合物52の合成
【0289】
【化62】
【0290】
上記で得られた化合物51のメタノール(14.4mL)溶液に氷冷下、5MのNaOMe(メタノール溶液,0.75mL,3.75mmol)を加え、窒素気流下にて室温で1時間撹拌した。反応が完結した後、反応溶液にDOWEX 50×8 200meshを加えて撹拌し、中和した。その後混合物を濾過し、濾液を濃縮して化合物52(0.56g,87%,化合物1より2工程)を黄褐色油状物質として得た。なお、この化合物52は、Mallikharjuna R. Lambuら、J. Med. Chem., 2013, 56, 6122-6135に記載されている。
【0291】
(7-3)化合物54の合成
【0292】
【化63】
【0293】
上記で得られた化合物52(201.1mg,1.18mmol)のトルエン(4.70mL)溶液に氷冷下、mCPBA(純度70%,866mg,3.51mmol)を加え、0℃で1時間撹拌した。反応が完結した後、反応溶液にシクロヘキセンを加えて撹拌した。その後混合物を濾過し、濾液を濃縮した。次に、得られたエポキシジオールをトルエンで共沸した後、無水アセトニトリル(5.0mL)およびp-アニスアルデヒドジメチルアセタール(0.40mL,2.35mmol)および(±)-カンファースルホン酸(27.3mg,0.118mmol)を加え、窒素気流下にて50℃で16時間撹拌した。反応が完結した後、反応溶液を氷冷下トリエチルアミン(0.25mL)で中和した。生じた混合溶液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO,ヘキサン/酢酸エチル=80/20から20/80))により精製し、化合物54(92.1mg,26%,化合物52より2工程)を黄色固体として得た。
【0294】
得られた化合物54の物性データを表31に示す。
【0295】
【表31】
【0296】
(7-4)化合物55の合成
【0297】
【化64】
【0298】
上記で得られた化合物54(574.8mg,1.89mmol)、チミン(480mg,3.81mmol)およびジアザビシクロウンデセン(DBU)(1.13mL,7.57mmol)の無水アセトニトリル(9.4mL)溶液をマイクロウェーブ照射下、100℃で24.5時間加熱した。反応溶液にさらにチミン(477.2mg,3.78mmol)およびDBU(1.13mL,7.57mmol)を加えて100℃で17時間反応させた。反応が完結した後、生じた混合溶液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO,ヘキサン/酢酸エチル=40/60)により精製した。得られた化合物をジクロロメタンに溶解させ、飽和重曹水および飽和食塩水で洗浄後した。その後、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ溶媒を減圧留去したところ白色固体55(732.7mg,90%)を得た。
【0299】
得られた化合物55の物性データを表32に示す。
【0300】
【表32】
【0301】
(7-5)化合物56の合成
【0302】
【化65】
【0303】
上記で得られた化合物55(254.4mg,0.59mmol)の無水THF(6.0mL)溶液に氷冷下で水素化ナトリウム(60%油性,61.8mg,1.55mmol)を加え、窒素気流下にて室温で1時間撹拌した。その後、溶液にアリルブロミド(60μL,0.71mmol)を滴下し、ヨウ化ナトリウム(27.1mg,0.18mmol)を加えて50℃で9時間撹拌した。反応が完結した後、飽和塩化アンモニウム水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和重曹水および飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ溶媒を減圧留去した。生じた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO,クロロホルム/メタノール=7/1)により精製し、化合物56(55.5mg,63%)を白色固体として得た。
【0304】
得られた化合物56の物性データを表33に示す。
【0305】
【表33】
【0306】
(7-6)化合物57の合成
【0307】
【化66】
【0308】
上記で得られた化合物56(234.7mg,0.50mmol)の脱酸素ジクロロエタン溶液(50mL)に1,4-ベンゾキノン(5.2mg,0.048mmol)と第二世代ホベイダ-グラブス触媒(17.0mg,0.027mmol)を窒素気流下にて室温で加え、70℃で1.5時間撹拌した。その後、反応溶液を減圧留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO,ヘキサン/酢酸エチル=33/67)により精製した。得られた粗生成物をこれ以上精製することなくそのまま次の反応に用いた。
【0309】
(7-7)化合物58の合成
【0310】
【化67】
【0311】
上記で得られた化合物57の粗生成物(128.5mg,約0.291mmol)のメタノール溶液(2.9mL)にPd(OH)/C(31.1mg,約50%水湿潤)を加え、水素気流下にて室温で10分撹拌した。反応が完結した後、混合物を濾過し、メタノールで洗浄した後、濾液を減圧留去した。得られた粗生成物58をこれ以上精製することなくそのまま次の反応に用いた。
【0312】
(7-8)化合物59の合成
【0313】
【化68】
【0314】
上記で得られた化合物58の無水ピリジン溶液(3.0mL)に4,4’-ジメトキシトリチルクロリド(142.7mg,0.42mmol)を加え、窒素気流下にて室温で1.5時間撹拌した。反応が完結した後、反応溶液に重曹水と酢酸エチルを加え、抽出した。有機層を飽和重曹水および飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO,ヘキサン/酢酸エチル=25/75)により精製し、化合物59(118.2mg,38%,化合物56から3工程)を白色固体として得た。
【0315】
得られた化合物59の物性データを表34に示す。
【0316】
【表34】
【0317】
(7-9)化合物60の合成
【0318】
【化69】
【0319】
上記で得られた化合物59(34.6mg,0.055mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(30μL,0.176mmol)の無水アセトニトリル溶液(1.0mL)に10%の1-メチルイミダゾール(無水アセトニトリル溶液,13.0μL,0.0163mmol)を加えた後、氷冷下で2-シアノエチル-,N-ジイソプロピルホスホロクロリダート(20.0μL,0.0897mmol)を加え、アルゴン気流下にて室温で1時間撹拌した。反応が完結した後、飽和重曹水と酢酸エチルを加え、抽出した。有機層を飽和重曹水および飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO,ヘキサン/酢酸エチル=33/67)により精製し、化合物60(38.3mg,84%)を白色固体として得た。
【0320】
得られた化合物60の物性データを表35に示す。
【0321】
【表35】
【0322】
(実施例8:オリゴヌクレオチドの合成および精製)
実施例1~3で作製された化合物12、19および25をアミダイトブロックとして用い、以下のようにしてオリゴヌクレオチドを合成した。オリゴヌクレオチドを構成する化合物12、19および25以外の化合物は、特に表記がない限り、Proligo社から購入した。
【0323】
実施例1~3で作製された化合物12、19および25から、各々0.1Mの無水アセトニトリル溶液として調製し、GeneDesign社製nS-8 Oligonucleotides Synthesizerに仕込んだ。各合成をトリチルオフ条件で行った。活性化剤にはActivator-42(登録商標)(Proligo社製)を用い、化合物12、19および25の縮合時間を120秒×5に延長した。その他の操作については通常のホスホロアミダイト法に従って合成を行った。
【0324】
合成完了後、生成物を、28%アンモニア水溶液を用いて室温下で1.5時間処理してカラム担体からの切り出しを行い、次いで55℃で15時間静置することで塩基部およびリン酸部の脱保護を行った。次いで、得られた粗オリゴヌクレオチドを逆相HPLCで精製した。
【0325】
なお、このHPLCの条件は以下の通りであった。
溶離液
・A液:0.1M酢酸トリエチルアンモニウム緩衝液(pH7.0)
・B液:アセトニトリル
グラジエント
・B液濃度:6~12%(20分間)
カラム
・Waters社製XBridgeTM OST C18 2.5μm(10×50mm)(分取)
・Waters社製XBridgeTM OST C18 2.5μm(4.6×50mm)(分析)
流速
・4.0mL/分(分取)
・1.0mL/分(分析)
カラム温度
・50℃
検出
・UV(260nm)
【0326】
精製したオリゴヌクレオチドの組成をMALDI-TOF-MS測定により決定した。当該測定にあたり、まず、3-ヒドロキシピコリン酸水溶液(10mg/mL)とクエン酸二アンモニウム水溶液(1mg/mL)とを1:1の容量比で混合したマトリックス(1μL)を乾燥させたアンカーチップ上に、オリゴヌクレオチド水溶液(50μM,1μL)を載せて再度乾燥させ、その後MALDI-TOF-MS測定を行った。分子量の測定をネガティブモードで行い、オリゴチミジル酸(7mer、15merおよび23mer)を外部標準として用いた。また、合成したオリゴヌクレオチドの定量を、吸光度測定装置(株式会社島津製作所製SHIMADZU UV-1800)を用いて260nmにおける紫外部吸収を測定して行った。
【0327】
(実施例9:二重鎖形成能の評価)
実施例8に記載のようにして、以下の表に示す配列のオリゴヌクレオチドを合成および精製した。
(1)5’-d(GCGTTTTTTGCT)-3’(配列番号1)
(2)5’-d(GCGTTHTTTGCT)-3’(配列番号2)
(3)5’-d(GCGTT1TTTGCT)-3’(配列番号3)
(4)5’-d(GCGTT2TTTGCT)-3’(配列番号4)
(5)5’-d(GCGTT3TTTGCT)-3’(配列番号5)
(6)5’-d(GCGHTHTHTGCT)-3’(配列番号6)
(7)5’-d(GCG1T1T1TGCT)-3’(配列番号7)
(8)5’-d(GCG2T2T2TGCT)-3’(配列番号8)
(9)5’-d(GCG3T3T3TGCT)-3’(配列番号9)
(10)5’-d(GCGTTHHHTGCT)-3’(配列番号10)
(11)5’-d(GCGTT111TGCT)-3’(配列番号11)
(12)5’-d(GCGTT222TGCT)-3’(配列番号12)
(13)5’-d(GCGTT333TGCT)-3’(配列番号13)
(14)5’-d(GCGHHHHHHGCT)-3’(配列番号14)
(15)5’-d(GCG111111GCT)-3’(配列番号15)
(16)5’-d(GCG222222GCT)-3’(配列番号16)
(17)5’-d(GCG333333GCT)-3’(配列番号17)
【0328】
上記のH、1、2および3は以下を表す:
H=HNA-T(非特許文献4の化合物)
1=化合物12(BANA-T1)
2=化合物19(BANA-T2)
3=化合物25(BANA-T3)
【0329】
標的鎖として、一本鎖オリゴRNA5’-r(AGCAAAAAACGC)-3’(配列番号18)および一本鎖オリゴDNA5’-d(AGCAAAAAACGC)-3’(配列番号19)を用いて、以下のようにして二重鎖形成能(結合親和性)を調べた。
【0330】
オリゴヌクレオチドの二重鎖形成能を、各種オリゴヌクレオチドと標的鎖とをアニーリング処理して二重鎖を形成させた後、T値を測定することにより調べた。より詳細には、各オリゴヌクレオチド(終濃度4μM)と塩化ナトリウム(終濃度100mM)のリン酸緩衝液(10mM,pH7.2,130μL)の混合液を沸騰水中に浴し、室温までゆっくり冷却した。その後、窒素気流下で5℃まで冷却し、測定を開始した。0.5℃/分で90℃まで昇温し、0.5℃間隔で260nmにおける吸光度をプロットした。T値を中線法または微分法(配列番号17)により算出し、独立した3回の測定における平均値とした。
【0331】
表36(配列(1)~(9))および表37(配列(1)および(10)~(17))に二重鎖形成能の結果を示す。これらの表中、一本鎖オリゴRNAに対する結果を「ssRNA」、一本鎖オリゴDNAに対する結果を「ssDNA」に示し、そして各オリゴヌクレオチドのTと、人工修飾核酸1塩基当たりのT変動温度(「ΔT/mod.」)とを示す。
【0332】
【表36】
【0333】
【表37】
【0334】
ssRNAに対し、T値は、BANA-T3(化合物25)が最も高く、次いでBANA-T2(化合物19)、BANA-T1(化合物12)の順であった。BANA-T1、BANA-T2(化合物19)およびBANA-T3(化合物25)のそれぞれについて、オリゴヌクレオチドに複数導入することにより、ssRNAに対するT値は上昇し、RNAに対する二重鎖形成能が向上する傾向を示した。また、BANA-T1、BANA-T2(化合物19)およびBANA-T3(化合物25)のそれぞれについて、連続的に導入することによってRNAに対する二重鎖形成能がより向上し、HNA-Tの場合よりも高い二重鎖形成能を示した。
【0335】
(実施例10:塩基選択性の評価)
上記の配列(1)~(5)について、標的鎖として、一本鎖オリゴRNA5’-r(AGCAAAYAACGC)-3’および一本鎖オリゴDNA5’-d(AGCAAAYAACGC)-3’を用いて、同様に二重鎖形成能(結合親和性)を調べた。
Yは、一本鎖オリゴRNAについては、rA(配列番号18)、rU(配列番号20)、rG(配列番号21)およびrC(配列番号22)のいずれかであり、そして一本鎖オリゴDNAについては、dA(配列番号19)、dT(配列番号23)、dG(配列番号24)およびdC(配列番号25)のいずれかとした。
【0336】
結果を以下の表38に示す。表中、ΔTは、ミスマッチのT値からマッチ(dAまたはrA)のT値を差し引いて求めた。
【0337】
【表38】
【0338】
BANA-T1(化合物12)、BANA-T2(化合物19)およびBANA-T3(化合物25)のそれぞれについてオリゴヌクレオチドに導入することにより、天然DNA(dT)を用いた場合(配列番号1)と比べて、Gとの塩基対の形成が抑制された。
【0339】
(実施例11:ヌクレアーゼ耐性能の評価)
実施例8に記載のようにして、以下の10merの配列のオリゴヌクレオチドを合成および精製し、被験オリゴヌクレオチドとして用いた:
5’-d(TTTTTTTTTX)-3’
【0340】
Xは、以下のいずれかとした:
X=チミジン(dT)
X=5’-ホスホロチオエートチミジン(PS)
X=LNA-T(LNA)
X=HNA-T(HNA)
X=化合物12(BANA-T1)
X=化合物19(BANA-T2)
X=化合物25(BANA-T3)
【0341】
7.5μM被験オリゴヌクレオチドと10mM塩化マグネシウムを含む50mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)に、1.0μg/mLの3’-エキソヌクレアーゼ(Crotalus adamanteus venom phosphodiesterase,CAVP)を加え、37℃でインキュベートした。インキュベーションの開始時(0分)、5分後、10分後、20分後、40分後にそれぞれ20μLずつ試料を取り出し、MilliQ90μLと合わせて110μLとした。このうち100μLを逆相HPLCで解析し、未切断のオリゴヌクレオチドの割合を算出した。また、評価は独立した3回の測定により導き出した。
【0342】
結果を図1に示す。図1から明らかなように、XがLNA-T(LNA)またはHNA-T(HNA)である場合は、天然DNA(dT)と同様にヌクレアーゼによってオリゴヌクレオチドは分解した。ホスホロチオエート化(PS)オリゴ(X=5’-ホスホロチオエートチミジン(PS))である場合も、ヌクレアーゼ処理40分後の未切断オリゴヌクレオチドの残存率は約20%ほどであったのに対し、Xとして化合物12(BANA-T1)、化合物19(BANA-T2)および化合物25(BANA-T3)のそれぞれを用いた場合はヌクレアーゼ処理の40分後でも約60%が未切断で残存しており、分解されにくかった。
【0343】
(実施例12:ヌクレアーゼ耐性能の評価)
実施例8に記載のようにして、以下の10merの配列のオリゴヌクレオチドを合成および精製し、被験オリゴヌクレオチドとして用いた:
5’-d(TTTTTTTTXT)-3’
【0344】
Xは、以下のいずれかとした:
X=3’-ホスホロチオエートチミジン(PS)
X=LNA-T(LNA)
X=HNA-T(HNA)
X=化合物12(BANA-T1)
X=化合物19(BANA-T2)
X=化合物25(BANA-T3)
【0345】
7.5μM被験オリゴヌクレオチドと10mM塩化マグネシウムを含む50mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)に、1.0μg/mLの3’-エキソヌクレアーゼ(Crotalus adamanteus venom phosphodiesterase,CAVP)を加え、37℃でインキュベートした。インキュベーションの開始時から20分後に20μL試料を取り出し、MilliQ90μLと合わせて110μLとした。このうち100μLを逆相HPLCで解析し、未切断のオリゴヌクレオチドの割合を算出した。
【0346】
結果を図2に示す。図2から明らかなように、XがLNA-T(LNA)またはHNA-T(HNA)である場合は、ヌクレアーゼによってオリゴヌクレオチドは完全に分解した。ホスホロチオエート化(PS)オリゴ(X=3’-ホスホロチオエートチミジン(PS))については、ヌクレアーゼ処理20分後の未切断オリゴヌクレオチドの残存率は約50%ほどであった。Xとして化合物12(BANA-T1)、化合物19(BANA-T2)の用いた場合は、ヌクレアーゼ処理の20分後残存率が、それぞれ2%、33%であったのに対し、Xとして化合物25(BANA-T3)を用いた場合では95%が残存しており、その他の修飾と比較して圧倒的に分解されにくかった。
【0347】
(実施例13:オリゴヌクレオチドの合成および精製ならびに二重鎖形成能の評価)
実施例8に記載のようにして、以下の配列のオリゴヌクレオチドを合成および精製した:
(18)5’-d(GCGTTLLLTGCT)-3’(配列番号26)
(19)5’-d(GCGTTL33TGCT)-3’(配列番号27)
(20)5’-d(GCGTT3L3TGCT)-3’(配列番号28)
(21)5’-d(GCGTT33LTGCT)-3’(配列番号29)
【0348】
上記のLおよび3は以下を表す:
L=LNA-T(LNA)
3=化合物25(BANA-T3)
【0349】
各オリゴヌクレオチドの収率およびMALDI-TOF MS測定の結果を表39に示す。
【0350】
【表39】
【0351】
さらに、実施例9に記載のようにして、各オリゴヌクレオチドについて、RNAに対する二重鎖形成能を評価した。標的鎖として、一本鎖オリゴRNA5’-r(AGCAAAAAACGC)-3’(配列番号18)を用いた。結果を表38に示す。表38は、二本鎖形成時の各オリゴヌクレオチドの融解温度Tと、配列(18)とのTの差異(「ΔT」)とを示す。表40に示されるように、化合物25(BANA-T3)を含むオリゴヌクレオチドは、LNAを含むオリゴヌクレオチドと同等の高い二重鎖形性能を有することが分かった。
【0352】
【表40】
【0353】
(実施例14:オリゴヌクレオチドの合成および精製ならびに二重鎖形成能の評価)
化合物25(BANA-T3)および化合物30(BANA-C3)を用いて、実施例8に記載のようにして、表41に示す配列(22)~(25)のオリゴヌクレオチドを合成および精製した(それぞれ配列番号30~33にも示す)。表41中のオリゴヌクレオチドは、mMALAT1に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【0354】
ホスホロチオエート(PS)化を、0.05M((ジメチルアミノ-メチリデン)アミノ)-3H-1,2,4-ジチアゾリン-3-チオン(DDTT)(ピリジン/アセトニトリル(3:2)溶液、GLEN RESEARCH社)を用いて、当該試薬の製造会社が推奨する方法にて行った。
【0355】
表41は、これらのオリゴヌクレオチドの収率およびMALDI-TOF MS測定の結果もまた示す。
【0356】
【表41】
【0357】
さらに、実施例9と同様にして、各オリゴヌクレオチドについて、RNAに対する二重鎖形成能を評価した。コントロールとして、以下の表42に示す2つの配列を用いた(それぞれ配列番号34および35にも示す)。
【0358】
【表42】
【0359】
標的鎖として、一本鎖オリゴRNA5’-r(GCAUUCAGUGAACUAG)-3’(配列番号36)を用いた。結果を表43に示す。表43は、二本鎖形成時の各オリゴヌクレオチドの融解温度Tと、配列(26)とのTの差異(「ΔT」)とを示す。表41に示すように、化合物30(BANA-C3)および化合物25(BANA-T3)を含むオリゴヌクレオチドは、LNAを含むオリゴヌクレオチドと同等の高い二重鎖形性能を有することが分かった。
【0360】
【表43】
【0361】
(実施例15:オリゴヌクレオチドの合成および 精製ならびに毒性低減効果の評価)
実施例8に記載のようにして、表44に示す配列(28)のオリゴヌクレオチドを合成および精製した(配列番号37)。ホスホロチオエート(PS)化を実施例14と同様に行った。表44は、このオリゴヌクレオチドの収率およびMALDI-TOF MS測定の結果もまた示す。
【0362】
【表44】
【0363】
6週齢のマウス(C57BL/6J、雄)の腹腔内に、表45に示す被験オリゴヌクレオチド(20mg/kg)を投与した(5匹/群)。96時間後、吸入麻酔下(イソフルラン)で採血を行い、放血安楽死させた。その後、血清中のアスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)およびアラニントランスアミナーゼ(ALT)の活性を自動分析装置(FUJIFILM製 富士ドライケム4000V)により測定した。
【0364】
【表45】
【0365】
表46は、被験オリゴヌクレオチドを投与した場合ならびに生理食塩水投与の場合の血液中のアスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)およびアラニントランスアミナーゼ(ALT)の活性を示す。肝毒性を示すことが知られている配列(29)を投与した群では、マウスが5匹全て死亡した。一方で、配列(29)のオリゴヌクレオチドの配列の一部をBANAにて置換した配列(28)のオリゴヌクレオチドは、ほとんどALTとASTの上昇を示しておらず、毒性の低減効果が確認された。
【0366】
【表46】
【0367】
(実施例16:マウス体内でのアンチセンスオリゴヌクレオチドの発現抑制効果の評価)
実施例8に記載のようにして、表47に示す配列(22)~(25)および(30)のオリゴヌクレオチドを合成および精製した(それぞれ配列番号30~33および39にも示す)。ホスホロチオエート(PS)化を実施例14と同様に行った。表47中のオリゴヌクレオチドは、mMALAT1に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【0368】
【表47】
【0369】
6週齢のマウス(BALB/cAnNCrlCrlj、雌)の尾静脈に、被験オリゴヌクレオチド(20nmol:100μM生理食塩水溶液を200μL)を投与した(5匹/群)。72時間後、吸入麻酔下(イソフルラン)で採血を行い、放血安楽死させた。その後、各組織を採取し、RNA抽出(使用キット:RNeasy)を行った。各組織におけるMALAT1のmRNA発現量をリアルタイムPCR(使用キット:One Step TB Green(登録商標) PrimeScriptTM RT-PCR Kit (Perfect Real Time)、タカラバイオ株式会社製)により測定した。リアルタイムPCRでは、以下のプライマーを使用した:
MALAT1 forward:acattccttgaggtcggcaa(配列番号40)
MALAT1 reverse:cacccgcaaaggcctacata(配列番号41)
GAPDH forward:tcaccaccatggagaaggc(配列番号42)
GAPDH reverse:gctaagcagttggtggtgca(配列番号43)
【0370】
結果を図3および図4に示す。図3および図4は、各種オリゴヌクレオチド投与時のマウスの各種組織における相対的MALAT1発現レベルを示す(図3:肝臓、心臓、腎臓、膵臓、骨格筋、肺および胃、ならびに図4:脾臓、皮膚、大腸、脳、乳腺、眼球および軟骨)。「相対的MALAT1発現レベル」は、生理食塩水のみ投与(オリゴヌクレオチドなし)の場合の発現レベルを1とした場合の相対値として表した。図3および図4中、配列(22)~(25)のオリゴヌクレオチドをそれぞれON22~ON25として示す。図3および図4中、結果を示す棒の表示を、化合物25(BANA-T3)および化合物30(BANA-C3)を含むオリゴヌクレオチドである配列(22)~(25)のオリゴヌクレオチド(「ON22」~「ON25」)、化合物25および化合物30に代えてLNAを含むオリゴヌクレオチドである配列(30)のオリゴヌクレオチド(「ON30」)、およびコントロール(生理食塩水のみ投与)(「生理食塩水」)の間で区別した。
【0371】
化合物25および化合物30のようなBANAを含む配列(22)~(25)のオリゴヌクレオチドは、多くの組織において、BANAに代えてLNAを含む配列(30)のオリゴヌクレオチドと比較して同等かそれ以上の高い標的遺伝子抑制効果を示した。
【0372】
(実施例17:オリゴヌクレオチドの合成および精製)
化合物60(BANA-T4)を用いて、実施例8に記載のようにして、以下に示す配列(31)のオリゴヌクレオチドを合成および精製した。
(31) 5’-d(GCGTT4TTTGCT)-3’(配列番号44)
4=化合物60(BANA-T4)
【0373】
精製したオリゴヌクレオチドの組成を実施例8に記載のようにMALDI-TOF-MS測定により決定した。合成したオリゴヌクレオチドを、吸光度測定装置を用いて定量した。
【0374】
【表48】
【産業上の利用可能性】
【0375】
本発明によれば、ホスホロチオエート修飾核酸の代替とすることが可能な新規な架橋型ヌクレオシドおよびそれを用いたヌクレオチドが提供される。本発明の架橋型ヌクレオシドを用いて得られるオリゴヌクレオチドは、例えば、核酸医薬への素材として有用である。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
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