(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-09
(45)【発行日】2025-07-17
(54)【発明の名称】加熱装置
(51)【国際特許分類】
H05B 6/64 20060101AFI20250710BHJP
H05B 6/80 20060101ALI20250710BHJP
C04B 35/64 20060101ALI20250710BHJP
F27B 9/06 20060101ALI20250710BHJP
B22F 3/14 20060101ALI20250710BHJP
【FI】
H05B6/64 D
H05B6/80 Z
C04B35/64
F27B9/06 Z
B22F3/14 A
(21)【出願番号】P 2024035502
(22)【出願日】2024-03-08
【審査請求日】2025-03-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】521109109
【氏名又は名称】株式会社SUN METALON
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】冨田 高嗣
(72)【発明者】
【氏名】古川 雄一
(72)【発明者】
【氏名】西岡 和彦
(72)【発明者】
【氏名】安 敬
(72)【発明者】
【氏名】前田 雄貴
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大地
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-031403(JP,A)
【文献】特開2012-096168(JP,A)
【文献】特開2006-035148(JP,A)
【文献】特開昭57-051133(JP,A)
【文献】特開昭52-110717(JP,A)
【文献】特開昭58-020735(JP,A)
【文献】特開昭61-117191(JP,A)
【文献】特開2014-067575(JP,A)
【文献】特開平05-031500(JP,A)
【文献】特開2020-192511(JP,A)
【文献】実開昭59-190099(JP,U)
【文献】特開2007-326765(JP,A)
【文献】特開2003-128469(JP,A)
【文献】特表2000-510434(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/64
H05B 6/80
C04B 35/64
F27B 9/06
B22F 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油及び水の少なくともいずれかを含む加熱対象にマイクロ波を照射
し、前記加熱対象を焼結又は溶融固化させるよう構成されたマイクロ波照射部と、
前記マイクロ波を照射された前記加熱対象から発生した流体を回収するよう構成された回収部と、
を含む、加熱装置であって、
前記流体が液体及び気体を含み、
前記液体が気化していない
前記油及び
前記水の少なくともいずれかであり、
前記気体が気化した
前記油及び
前記水の少なくともいずれかであり、
前記回収部が、前記液体を回収するよう構成された液体回収部と、前記気体を回収するよう構成された気体回収部と、を含み、
前記液体回収部が、前記加熱対象に対して重力方向下側に配置されており、
前記気体回収部が、前記マイクロ波を照射される前記加熱対象が配置される照射用チャンバに接続された気体回収パイプを含み、
前記気体回収部が、回収した前記気体を液化する液化装置を含む、
加熱装置。
【請求項2】
前記液体回収部が、前記液体を受けるドレンパンを含む、請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記液体回収部が、前記ドレンパンに接続され、前記液体が流れるドレンパイプをさらに含む、請求項2に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記液体回収部が、前記ドレンパイプを介して前記ドレンパンに接続されたタンクであって、前記液体を貯蔵するタンクをさらに含む、請求項3に記載の加熱装置。
【請求項5】
前記加熱対象を保持する保持部材であって、前記流体を前記回収部に透過させる開口が設けられた保持部材をさらに含む、請求項1に記載の加熱装置。
【請求項6】
前記保持部材が前記マイクロ波照射部に対して前記加熱対象を回転させる、請求項5に記載の加熱装置。
【請求項7】
前記保持部材が中空の形状を有し、当該保持部材内部に前記加熱対象が配置される、請求項5に記載の加熱装置。
【請求項8】
前記マイクロ波を照射される前記加熱対象が配置される照射用チャンバと、
前記照射用チャンバに接続された加熱前チャンバと、
前記照射用チャンバ内と前記加熱前チャンバ内に同じ気体を導入する気体環境調整装置と、
をさらに含み、
前記加熱前チャンバに、前記マイクロ波を照射される前の前記加熱対象が配置される、
請求項1に記載の加熱装置。
【請求項9】
前記マイクロ波を照射される前記加熱対象が配置される照射用チャンバと、
前記照射用チャンバに接続された加熱後チャンバと、
前記照射用チャンバ内と前記加熱後チャンバ内に同じ気体を導入する気体環境調整装置と、
をさらに含み、
前記加熱後チャンバに、前記マイクロ波を照射された後の前記加熱対象が配置される、
請求項1に記載の加熱装置。
【請求項10】
前記加熱対象を保持する保持部材であって、加熱促進剤を含む保持部材をさらに備える、請求項1に記載の加熱装置。
【請求項11】
前記加熱対象が金属を含み、前記加熱促進剤が、前記加熱対象の前記金属が前記マイクロ波を吸収する温度帯より少なくとも一部が低い温度帯で前記マイクロ波を吸収する吸収材料を含む、請求項10に記載の加熱装置。
【請求項12】
前記加熱対象が金属を含み、前記加熱促進剤が、前記加熱対象の前記金属より前記マイクロ波の透過性が高く、前記金属より前記マイクロ波を吸収する程度が低い断熱材料を含む、請求項10に記載の加熱装置。
【請求項13】
前記加熱対象に接触する接触部材であって、加熱促進剤を含む接触部材をさらに備える、請求項10に記載の加熱装置。
【請求項14】
前記加熱対象に圧力を加えるためのプレス機をさらに備える、請求項1に記載の加熱装置。
【請求項15】
前記加熱対象が金属を含み、前記焼結又は溶融固化した前記金属を溶解するよう構成された溶解炉をさらに備える、請求項1に記載の加熱装置。
【請求項16】
前記溶解炉が、中に溶湯を入れるよう構成されている、請求項15に記載の加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明のいくつかの態様は、加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱対象を加熱する際に、加熱対象にマイクロ波を照射する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-158790号公報
【文献】特開2017-145151号公報
【文献】特開2009-035776号公報
【文献】特開2013-216943号公報
【文献】特開2017-145151号公報
【文献】国際公開第2022/195989号
【文献】国際公開第2022/196681号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明のいくつかの態様は、マイクロ波照射による加熱対象の加熱効率を向上可能な加熱装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る加熱装置は、加熱対象にマイクロ波を照射するよう構成されたマイクロ波照射部と、マイクロ波を照射された加熱対象から発生した流体を回収するよう構成された回収部と、を含む。
【0006】
上記の加熱装置において、加熱対象が金属であってもよい。
【0007】
上記の加熱装置において、流体が液体であり、回収部が、液体を回収するよう構成された液体回収部を含んでいてもよい。
【0008】
上記の加熱装置において、液体回収部が、加熱対象に対して重力方向下側に配置されてもよい。
【0009】
上記の加熱装置において、液体回収部が、液体を受けるドレンパンを含んでいてもよい。
【0010】
上記の加熱装置において、液体回収部が、ドレンパンに接続され、液体が流れるドレンパイプをさらに含んでいてもよい。
【0011】
上記の加熱装置において、液体回収部が、ドレンパイプに接続され、液体を貯蔵するタンクをさらに含んでいてもよい。
【0012】
上記の加熱装置において、流体が気体であり、回収部が、気体を回収するよう構成された気体回収部を含んでいてもよい。
【0013】
上記の加熱装置において、気体回収部が、マイクロ波を照射される加熱対象が配置される照射用チャンバに接続された気体回収パイプを含んでいてもよい。
【0014】
上記の加熱装置において、気体回収部が、回収した気体を液化する液化装置を含んでいてもよい。液化装置は、回収した気体を冷却して液化してもよい。
【0015】
上記の加熱装置が、加熱対象を保持する保持部材であって、流体を回収部に透過させる開口が設けられた保持部材をさらに含んでいてもよい。
【0016】
上記の加熱装置において、保持部材が回転してもよい。
【0017】
上記の加熱装置において、保持部材が平行に移動してもよい。
【0018】
上記の加熱装置において、保持部材がステージであり、当該ステージ上に加熱対象が配置されてもよい。
【0019】
上記の加熱装置において、保持部材が中空の形状を有し、当該保持部材内部に加熱対象が配置されてもよい。
【0020】
上記の加熱装置において、中空の形状を有する保持部材が、回転してもよい。
【0021】
上記の加熱装置が、マイクロ波照射部に対して加熱対象を搬送する搬送装置をさらに含んでいてもよい。
【0022】
上記の加熱装置において、搬送装置が、加熱対象を押すように構成された押し部を含んでいてもよい。
【0023】
上記の加熱装置において、搬送装置が、ローラコンベアを含んでいてもよい。
【0024】
上記の加熱装置が、マイクロ波を照射される加熱対象が配置される照射用チャンバと、
照射用チャンバに接続された加熱前チャンバと、をさらに含み、加熱前チャンバに、マイクロ波を照射される前の加熱対象が配置されてもよい。
【0025】
上記の加熱装置が、照射用チャンバ内の気体環境と加熱前チャンバ内の気体環境を同じにする気体環境調整装置をさらに含んでいてもよい。
【0026】
上記の加熱装置が、マイクロ波を照射される加熱対象が配置される照射用チャンバと、照射用チャンバに接続された加熱後チャンバと、をさらに含み、加熱後チャンバに、マイクロ波を照射された後の加熱対象が配置されてもよい。
【0027】
上記の加熱装置が、照射用チャンバ内の気体環境と加熱後チャンバ内の気体環境を同じにする気体環境調整装置をさらに含んでいてもよい。
【0028】
上記の加熱装置が、マイクロ波を照射される前の加熱対象をマイクロ波の照射領域に供給するよう構成された供給機をさらに含んでいてもよい。
【0029】
上記の加熱装置において、流体が油及び水の少なくともいずれかであってもよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、マイクロ波照射による加熱対象の加熱効率的を向上可能な加熱装置を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、実施形態に係る加熱装置の模式図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る加熱装置の模式図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る加熱装置の模式図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る加熱装置の模式図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る加熱装置の模式図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る加熱装置の模式図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る加熱装置の模式図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る加熱装置の模式図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る加熱装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。ただし、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法等は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0033】
実施形態に係る加熱装置は、
図1に示すように、加熱対象14にマイクロ波を照射するよう構成されたマイクロ波照射部3と、マイクロ波を照射された加熱対象14から発生した流体を回収するよう構成された回収部105と、を含む。マイクロ波は、例えば周波数が300MHz以上30GHz以下の電磁波である。
【0034】
加熱対象14は、例えば金属を含む。加熱対象14は、例えばセラミックを含む。また、加熱対象14は、例えば、油、有機物、及び水等の非金属を含む。本開示において、油はエマルションを含む。加熱対象14にマイクロ波を照射すると、加熱対象14は加熱され、金属やセラミックよりも融点及び沸点が低い非金属は、流体となって加熱対象から離脱する。加熱対象14は、マイクロ波を照射されて還元されてもよい。加熱対象14は、マイクロ波を照射されて、焼結又は溶融固化してもよい。
【0035】
加熱対象14から発生する流体は、液体及び気体を含む。回収部105は、液体を回収するよう構成された液体回収部106を含み得る。液体の例としては、水、油、及び有機物が挙げられる。回収部105は、気体を回収するよう構成された気体回収部107を含み得る。気体の例としては、気化した水、気化した油、及び気化した有機物が挙げられる。
【0036】
油は水溶性であってもよいし、非水溶性であってもよい。油は、界面活性剤、防錆剤、及び防腐剤の少なくともいずれかを含んでいてもよい。油は、水に混合されエマルションをなしていてもよい。油の例としては、切削油、及び離型剤が挙げられる。切削油の例としては、鉱物油、動植物系油脂、合成油、及び鉱物油、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0037】
また、油は、圧延油、押し出し加工の際に用いる押し出し加工油、引き抜き加工の際に用いる引き抜き加工油、プレス加工の際に用いるプレス加工油、鍛造加工の際に用いる鍛造油、金属加工又は切削の際に加工用機械から漏洩する作動油、冷却油、防錆油、及び潤滑油等の加熱対象14を加工する機械から加熱対象14に付着した油であってもよい。
【0038】
有機物の例としては、界面活性剤、及びシリコーンオイルが挙げられる。
【0039】
図2に示すように、液体回収部106は、マイクロ波を照射されるときの加熱対象14に対して重力方向下側に配置される。液体回収部106は、加熱対象14から離脱した液体を受けるドレンパン15と、ドレンパン15に接続され、液体が流れるドレンパイプ17と、ドレンパイプ17に接続され、液体28を貯蔵するタンク21を含み得る。ドレンパン15とドレンパイプ17の間には弁17aが設けられていてもよい。弁17aは、後述する照射用チャンバ36内に外気が進入することを抑制する。
【0040】
実施形態に係る加熱装置は、マイクロ波を照射されるときの加熱対象14を保持する保持部材425をさらに含み得る。保持部材425は、例えばステージであり、当該ステージ上に加熱対象14が配置される。保持部材425には、例えば、マイクロ波を照射されて加熱された加熱対象14から離脱した液体を液体回収部106に透過させる開口が設けられている。開口は一つであってもよいし、複数であってもよい。
【0041】
マイクロ波を照射されて加熱された加熱対象14から離脱した液体は、保持部材425の開口を経てドレンパン15に落ちる。ドレンパン15に貯まった液体は、ドレンパイプ17を経てタンク21に送られる。
【0042】
実施形態に係る加熱装置は、マイクロ波を照射される加熱対象14が内部に配置される照射用チャンバ36をさらに含み得る。マイクロ波照射部3は、照射用チャンバ36内に配置された加熱対象14にマイクロ波を照射する。照射用チャンバ36は、例えば、マイクロ波照射部3がマイクロ波を照射するときに、内部を外部から密閉可能である。照射用チャンバ36の底部がドレンパン15をなしていてもよい。
【0043】
照射用チャンバ36には、例えば、照射用チャンバ36内に加熱対象14を搬入するための搬入扉410Aと、照射用チャンバ36内から加熱対象14を搬出するための搬出扉410Bと、が設けられる。
【0044】
気体回収部107は、照射用チャンバ36に接続された気体回収パイプ20と、照射用チャンバ36内の気体を気体回収パイプ20に吸引する吸引ポンプ24と、回収した気体を液化する液化装置25と、を含み得る。マイクロ波を照射されて加熱された加熱対象14から離脱した気体は、気体回収パイプ20を介して吸引ポンプ24によって照射用チャンバ36から回収され、液化装置25に送られる。液化装置25は、例えば、回収した気体を冷却して、気体を液化する。
【0045】
加熱対象14は、金属単体を含んでいてもよいし、合金等の金属化合物を含んでいてもよい。金属の例としては、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、コバルト(Co)、タングステン(W)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、スズ(Sn)、セリウム(Ce)、鉛(Pb)、水銀(Hg)、ナトリウム(Na)、ビスマス(Bi)、及びガリウム(Ga)が挙げられる。
【0046】
鉄(Fe)の焼結温度は例えば1200℃である。鉄(Fe)の融点は1538℃である。ニッケル(Ni)の焼結温度は例えば1200℃である。ニッケル(Ni)の融点は1495℃である。銅(Cu)の焼結温度は例えば800℃である。銅(Cu)の融点は1085℃である。金(Au)の焼結温度は例えば800℃である。金(Au)の融点は1064℃である。銀(Ag)の焼結温度は例えば750℃である。銀(Ag)の融点は962℃である。アルミニウム(Al)の焼結温度は例えば500℃である。アルミニウム(Al)の融点は660℃である。コバルト(Co)の焼結温度は例えば1100℃である。コバルト(Co)の融点は1455℃である。
【0047】
加熱対象14は、1種類の金属を含んでいてもよいし、複数種類の金属を含んでいてもよい。金属化合物の例としては、複数の金属元素からなる合金、金属元素と非金属元素からなる合金、金属の酸化物、金属の水酸化物、金属の塩化物、金属の炭化物、金属のホウ化物、及び金属の硫化物が挙げられるが、特に限定されない。金属原料は、合金成分として、例えば、ケイ素(Si)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、炭素(C)、ホウ素(B)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、亜鉛(Zn)、アンチモン(Sb)、パラジウム(Pd)、ランタン(La)、金(Au)、カリウム(K)、カドミウム(Cd)、インジウム(In)、モリブデン(Mo)、及び硫黄(S)等を含んでいてもよい
【0048】
加熱対象14の形状、大きさは、特に限定されない。加熱対象14は、固体であってもよいし、粉末からなっていてもよい。加熱対象14は、板状であってもよいし、シート状であってもよい。加熱対象14は、金属粉末の圧粉体を含んでいてもよい。加熱対象14は、金属の断片を含んでいてもよい。加熱対象14は、ブリケットであってもよい。
【0049】
加熱対象14が金属材料の成形体である場合、金属原料を成形体に成形する際には、金属原料に、例えば、1MPa以上、100MPa以上、あるいは200MPa以上であり、2000MPa以下、1900MPa以下、あるいは1800MPa以下の圧力を加えてもよい。圧力を加えることにより、加熱対象14を加熱して金属が焼結又は溶融固化して製造される金属固体が緻密になる傾向にある。加圧方法としては、一軸成型、冷間静水圧加圧(CIP)成型、熱間等方圧加圧法(HIP)成型、及びローラ加圧などが挙げられる。
【0050】
保持部材425は、マイクロ波を照射された加熱対象14の加熱を促進する加熱促進剤を含んでいてもよい。
【0051】
加熱促進剤は、加熱対象14の金属原料がマイクロ波を吸収する温度帯より少なくとも一部が低い温度帯でマイクロ波を吸収する吸収材料を含んでいてもよい。吸収材料は、金属原料の融点より高い融点を有する。吸収材料がマイクロ波を吸収する温度帯の少なくも一部は、金属原料がマイクロ波を吸収する温度帯より低い。金属原料がマイクロ波を吸収する温度帯は、例えば、300℃以上1200℃以下、450℃以上1100℃以下、あるいは600℃以上800℃以下である。吸収材料がマイクロ波を吸収する温度帯は、例えば、25℃以上1000℃以下、50℃以上1000℃以下、75℃以上1000℃以下、100℃以上1000℃以下、250℃以上900℃以下、あるいは400℃以上600℃以下である。
【0052】
吸収材料がマイクロ波を吸収する温度帯の少なくも一部は、金属原料がマイクロ波を吸収する温度帯と重なっていることが好ましい。吸収材料は、金属原料がマイクロ波を吸収する温度帯より少なくとも一部が低い温度帯でマイクロ波を吸収するため、金属原料より早く発熱する。そのため、吸収材料は、金属原料がマイクロ波を吸収する温度帯に達するまでに、金属原料を加熱することが可能である。
【0053】
したがって、加熱促進剤が吸収材料を含むと、金属原料の温度がマイクロ波を吸収する温度帯に達するのが速くなり、金属原料の加熱時間を短縮することが可能である。また、吸収材料は、金属原料がマイクロ波を吸収する温度帯より少なくとも一部が低い温度帯でマイクロ波を吸収するため、加熱促進剤が必要以上に加熱されることを抑制することが可能である。そのため、マイクロ波を照射された金属原料が、焼結又は溶融している間も、吸収材料を含む加熱促進剤は、形状が安定し得る。
【0054】
吸収材料は、例えば、炭素材料を含む。炭素材料の例としては、カーボンブラック、非晶質カーボン、黒鉛、炭化ケイ素、炭素樹脂、及び金属炭化物が挙げられるが、特に限定されない。吸収材料は、加熱対象の金属原料がマイクロ波を吸収する温度帯より少なくとも一部が低い温度帯でマイクロ波を吸収する金属原料、金属窒化物、金属酸化物、及び金属硼化物等を含んでいてもよい。吸収材料は、これらの化合物であってもよい。吸収材料は、揮発成分を含まないことが好ましい。吸収材料が揮発成分を含まないことにより、マイクロ波が揮発成分に吸収されることを回避することが可能である。
【0055】
加熱促進剤は、金属原料よりマイクロ波の透過性が高く、金属原料よりマイクロ波を吸収する程度が低い断熱材料を含んでいてもよい。断熱材料は、金属原料の融点より高い融点を有する。断熱材料は、マイクロ波を吸収する程度が低いことにより、マイクロ波を照射されても発熱の程度が低く、断熱効果を発揮する。また、断熱材料は、金属原料より融点が高いため、マイクロ波を照射されても、形状が安定する。そのため、マイクロ波を照射された金属原料が、焼結又は溶融している間も、断熱材料を含む加熱促進剤は、形状が安定し得る。
【0056】
断熱材料は、金属の酸化物を含んでいてもよいし、半金属の酸化物を含んでいてもよい。金属及び半金属の酸化物の例としては、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ケイ素(SiO2)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、及び酸化チタン(TiO2)が挙げられるが、特に限定されない。例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)の融点は2072℃である。酸化ケイ素(SiO2)の融点は1710℃である。酸化マグネシウム(MgO)の融点は2852℃である。断熱材料は、これらの化合物であってもよい。
【0057】
加熱促進剤は、金属原料を還元する還元材料を含んでいてもよい。還元材料は、金属原料の融点より高い融点を有する。還元材料の例としては、炭素、及び炭化ケイ素が挙げられる。吸収材料として使用される炭素材料が、還元材料としても機能し得る。
【0058】
加熱促進剤は、断熱材料のみからなっていてもよいし、吸収材料のみからなっていてもよいし、還元材料のみからなっていてもよいし、断熱材料と吸収材料の混合物を含んでいてもよいし、吸収材料と還元材料の混合物を含んでいてもよいし、還元材料と断熱材料の混合物を含んでいてもよいし、断熱材料と吸収材料と還元材料の混合物を含んでいてもよい。また、断熱材料、吸収材料、及び還元材料は、それぞれ、性質及び機能が重複する場合がある。例えば、炭素材料は、吸収材料としても機能し得るし、還元材料としても機能し得る。
【0059】
図3に示すように、加熱対象14にマイクロ波を照射するときに、加熱対象14に加熱促進剤を含む接触部材420を接触させてもよい。接触部材420は、例えば、加熱対象14の上面に接触する。接触部材420は、重力方向に移動可能であってもよい。接触部材420は、加熱促進剤を含み得る。加熱対象14を加熱促進剤を含む保持部材425と加熱促進剤を含む接触部材420で挟むことにより、加熱対象14の加熱が促進される。
【0060】
加熱対象14を均一に加熱するために、マイクロ波照射部3に対して加熱対象14を回転させてもよい。例えば、実施形態に係る加熱装置は、保持部材425上に配置された加熱対象14を回転させる回転台440をさらに含む。回転台440には軸430が接続されており、回転台440は軸430を中心に回転する。軸430の長手方向は、例えば、マイクロ波照射部3の照射窓と平行であり、マイクロ波照射部3から照射されるマイクロ波の主な進行方向に対して垂直である。
【0061】
回転台440で加熱対象14を回転させる際に、加熱対象14の上面に接触している接触部材420を回転させてもよい。接触部材420は、加熱対象14の回転に伴い、受動的に回転してもよい。接触部材420に軸435が接続されていてもよい。接触部材420の中心に開口を設け、当該開口に軸435を装入してもよい。照射用チャンバ36に、軸435が挿入されるスリーブ431が設けられていてもよい。軸435及びスリーブ431の長手方向は軸430と平行であり、軸430の中心と軸435の中心は同一線上にある。接触部材420は軸435を中心に回転する。
【0062】
加熱対象14が金属酸化物を含む場合、加熱対象14にマイクロ波を照射することにより、金属酸化物は還元される。加熱対象14が金属を含む場合、加熱対象14を焼結温度以上であって、融点の付近まで加熱すると、ち密な焼結体が得られやすい。したがって、加熱対象14を、マイクロ波によって、1400℃以上、あるいは1500℃以上まで加熱してもよい。加熱対象14を溶融固化する場合は、加熱対象14を、融点以上まで加熱すればよい。
【0063】
加熱対象14が加熱されると、加熱対象14に含まれる成分が液化及び気化して、加熱対象14から液体及び気体が発生し得る。加熱対象14から発生した液体及び気体が照射用チャンバ36に存在し続けると、加熱対象14及び照射用チャンバ36の内壁に付着し得る。また、マイクロ波の照射が終了し、照射用チャンバ36内の温度が低下すると、加熱対象14及び照射用チャンバ36の内壁に付着した液体及び気体が固化し得る。
【0064】
加熱対象14から発生する液体及び気体は不純物であり得る。したがって、加熱対象14から発生した液体及び気体が、再び加熱対象14に付着するのは好ましくない。また、加熱対象14から発生した液体及び気体が、マイクロ波照射部3のマイクロ波透過窓に付着すると、マイクロ波の照射効率が低下し、好ましくない。また、照射用チャンバ36内に温度計等の計測機器が設けられている場合、計測機器に加熱対象14から発生した液体及び気体が付着すると、計測機器の計測精度が低下し得るため、好ましくない。
【0065】
また、加熱される前の加熱対象14が油を含む場合、油が加熱されると、ベンゼン及びトルエン等の有毒ガスが発生し得る。
【0066】
しかし、実施形態に係る加熱装置は、マイクロ波を照射された加熱対象14から発生した流体を回収するよう構成された回収部を含むため、加熱対象14から発生した液体及び気体が、加熱対象14、照射用チャンバ36の内壁、マイクロ波透過窓、及び計測機器に付着することを抑制することが可能である。また、有毒な気体が加熱装置の周囲に拡散することを抑制することが可能である。
【0067】
実施形態に係る加熱装置は、照射用チャンバ36に接続された加熱前チャンバ400をさらに含んでいてもよい。加熱前チャンバ400に、マイクロ波を照射される前の加熱対象14が配置される。加熱前チャンバ400には、外部から内部に加熱対象14を搬入するための不図示の搬入扉が設けられている。加熱前チャンバ400と照射用チャンバ36の間に搬入扉410Aが配置され、加熱前チャンバ400から照射用チャンバ36に加熱対象14を移動させる際には、搬入扉410Aが開かれる。
【0068】
加熱前チャンバ400はロードロックチャンバとして機能し得る。例えば、加熱装置は、照射用チャンバ36内の気体環境と加熱前チャンバ400内の気体環境を同じにする気体環境調整装置を含んでいてもよい。例えば、照射用チャンバ36に気体導入管255と気体排出管260が設けられ、加熱前チャンバ400に気体導入管256と気体排出管261が設けられる。
【0069】
照射用チャンバ36を密閉した状態で、気体排出管260から照射用チャンバ36内の気体を排出し、気体導入管255から所望の組成の気体を照射用チャンバ36内に導入することにより、照射用チャンバ36内に所望の気体条件を設定することが可能である。また、加熱前チャンバ400を密閉した状態で、気体排出管261から加熱前チャンバ400内の気体を排出し、気体導入管256から所望の組成の気体を加熱前チャンバ400内に導入することにより、加熱前チャンバ400内の気体を所望の条件に設定することが可能である。
【0070】
加熱前チャンバ400及び照射用チャンバ36に導入される気体は、不活性ガスであってもよい。不活性ガスの例としては、アルゴン(Ar)、及びヘリウム(He)が挙げられる。加熱前チャンバ400及び照射用チャンバ36に導入される気体は、中性ガスであってもよい。中性ガスの例としては、窒素(N2)、乾燥水素(H2)、及びアンモニア(NH3)が挙げられる。加熱前チャンバ400及び照射用チャンバ36に導入される気体は、還元ガスであってもよい。還元ガスの例としては、水素(H2)、一酸化炭素(CO)、及び炭化水素ガス(CH4、C3H8、C4H10など)が挙げられる。
【0071】
加熱対象14を加熱前チャンバ400内に配置した後、加熱前チャンバ400を密閉し、加熱前チャンバ400内の気体条件を照射用チャンバ36内の気体条件と同じにする。その後、加熱前チャンバ400と照射用チャンバ36の間の搬入扉410Aを開けて、加熱対象14を照射用チャンバ36内に移動させ、搬入扉410Aを閉じることにより、照射用チャンバ36内に外気が侵入することを防止することが可能である。
【0072】
加熱前チャンバ400の底面と照射用チャンバ36の底面は一連のステージ1をなしていてもよい。実施形態に係る加熱装置は、加熱対象14を加熱前チャンバ400内から照射用チャンバ36内に移動させる搬送装置をさらに含んでいてもよい。搬送装置は、加熱対象14を加熱前チャンバ400内から照射用チャンバ36内に向けて押すように構成された押し部11を含んでいてもよい。押し部11は、例えばロッドを含み、加熱前チャンバ400と照射用チャンバ36の間を往復運動する。
【0073】
実施形態に係る加熱装置は、照射用チャンバ36に接続された加熱後チャンバ401をさらに含んでいてもよい。加熱後チャンバ401に、マイクロ波を照射された後の加熱対象14aが配置される。照射用チャンバ36と加熱後チャンバ401の間に搬出扉410Bが配置され、照射用チャンバ36から加熱後チャンバ401に加熱対象14aを移動させる際には、搬出扉410Bが開かれる。加熱後チャンバ401には、内部から外部に加熱対象14aを搬出するための搬出扉411が設けられている。
【0074】
加熱後チャンバ401はロードロックチャンバとして機能し得る。例えば、加熱装置は、照射用チャンバ36内の気体環境と加熱後チャンバ401内の気体環境を同じにする気体環境調整装置を含んでいてもよい。例えば、加熱後チャンバ401に気体導入管257と気体排出管262が設けられる。加熱後チャンバ401を密閉した状態で、気体排出管262から加熱後チャンバ401内の気体を排出し、気体導入管257から所望の組成の気体を加熱後チャンバ401内に導入することにより、加熱後チャンバ401内の気体を所望の条件に設定することが可能である。
【0075】
加熱対象14aを照射用チャンバ36から加熱後チャンバ401に搬出する前に、加熱後チャンバ401を密閉し、加熱後チャンバ401内の気体条件を照射用チャンバ36内の気体条件と同じにする。その後、照射用チャンバ36と加熱後チャンバ401の間の搬出扉410Bを開けて、加熱対象14aを加熱後チャンバ401内に移動させ、搬出扉410Bを閉じ、次に、加熱後チャンバ401の搬出扉411を開けて加熱後チャンバ401から加熱対象14aを搬出することにより、照射用チャンバ36内に外気が侵入することを防止することが可能である。
【0076】
実施形態に係る加熱装置は、加熱対象14aを加熱後チャンバ401内から外部に移動させる搬送装置をさらに含んでいてもよい。搬送装置は、加熱対象14aを加熱後チャンバ401内から外部に搬出するように構成されたキャタピラコンベア19を含んでいてもよい。
【0077】
図4に示す実施形態に係る加熱装置においては、照射用チャンバ36に搬入口412と搬出口413が設けられている。
図4に示す加熱装置は、搬入口412及び搬出口413を介して照射用チャンバ36を貫通する加熱対象14の搬送装置を含む。搬送装置は、例えば、上面を加熱対象14が流れるローラコンベア31と、ローラコンベア31上の加熱対象14を押す押し部11を含む。ローラコンベア31上を複数の加熱対象14が流れ、複数の加熱対象14のそれぞれが照射用チャンバ36内で連続的にマイクロ波を照射されてもよい。
【0078】
照射用チャンバ36にマイクロ波照射部3が設けられる位置は任意である。
図4に示す例においては、照射用チャンバ36内の加熱対象14が配置される位置より重力方向下側にマイクロ波流入口が設けられている。マイクロ波照射部3は、例えば、マイクロ波を発生させるマイクロ波発生部2と、マイクロ波発生部2で発生したマイクロ波が透過するマイクロ波透過窓103と、マイクロ波透過窓103の表面に照射用チャンバ36内の揮発物質が付着することを抑制するエアカーテン供給機6と、を含んでいてもよい。マイクロ波透過窓103は、例えば、石英ガラスからなる。エアカーテン供給機6は、マイクロ波透過窓103に沿ったエアカーテンを供給することで、マイクロ波透過窓103に揮発物質が付着することを抑制する。他の図に示す加熱装置においても同様である。
【0079】
また、加熱装置は、照射用チャンバ36内に、マイクロ波を拡散させるためのファン130を含んでいてもよい。ファン130が回転し、ファン130の表面がマイクロ波を反射することにより、マイクロ波が攪拌され、照射用チャンバ36内でマイクロ波同士が干渉して生じるマイクロ波の強度が弱いデッドスポットの位置を経時的に変化する。これにより、加熱対象14を均一に加熱することが可能である。他の図に示す加熱装置においても、照射用チャンバ36内にファンを設けてもよい。
【0080】
気体回収部107は、照射用チャンバ36内から回収した気体の成分を分析する分析装置155を含んでいてもよい。分析装置155は、例えば、気体回収パイプ20から分岐するパイプ150に接続されている。分析装置155の例としては、ガスクロマトグラフ(GC)、ガスクロマトグラフ質量分析装置(GC/MS)、赤外分光装置、及びフーリエ変換赤外分光装置が挙げられる。他の図に示す加熱装置においても、気体回収部が分析装置を含んでいてもよい。
【0081】
照射用チャンバ36内の加熱対象14が配置される位置と気体回収部107の間に、多孔質体の仕切り16を配置してもよい。多孔質体の仕切り16の例としては、パンチングメタルが挙げられる。多孔質体の仕切り16は、照射用チャンバ36内の加熱対象14が配置される位置と液体回収部106の間に配置されていてもよい。
【0082】
加熱対象14aが金属である場合、加熱装置で加熱された加熱対象14aは、溶解炉22中の溶湯29に投入されてもよい。溶湯が含む金属の少なくとも一部と、加熱された加熱対象14aが含む金属の少なくとも一部は、同じであることが好ましい。溶湯29をカメラ26で監視してもよい。例えば、加熱対象14aが溶解した溶湯を鋳型に入れ、鋳型の中で溶湯を固化することにより、金属鋳物を製造してもよい。
【0083】
例えば、加熱装置で加熱された加熱対象14aは還元され、酸化膜がないため、溶湯に投入するのに適している。また、加熱装置で加熱された加熱対象14aは、非金属が液化又は気化して除去されているため、溶湯に投入するのに適している。具体的には、酸化物及び非金属が除去された加熱対象14aは、溶湯に投入されても、ガス、水蒸気爆発、発火、ノロ、及びブリスターが発生しにくい。また、酸化物が除去された加熱対象14aは、溶湯に対して濡れ性が高いため、溶湯に沈みやすい。溶湯に沈んだ加熱対象14aは、内部に容易に熱が伝わるため、溶解速度が速い。
【0084】
図4以外の図に示す加熱装置においても、加熱された加熱対象が溶湯に投入されてもよい。
図4に示す加熱装置のその他の構成要素は、
図2及び
図3に示した加熱装置と同様であるので、説明は省略する。
【0085】
加熱対象14を搬送する方法は特に限定されず、加熱対象14を搬送装置で直接搬送してもよいし、
図5に示すように、トレー30に入れられた加熱対象14を搬送装置で搬送してもよい。トレー30の底面には、マイクロ波を照射された加熱対象14から発生した流体を透過させるための開口32が設けられていてもよい。一つのトレー30に一つの加熱対象14を載せてもよいし、
図6に示すように、一つのトレー30に複数の加熱対象14を載せてもよい。
【0086】
図5及び
図6に示すように、照射用チャンバ36に搬入される前の加熱対象14をカメラ27で監視してもよい。照射用チャンバ36に温度観測用の窓5を設け、照射用チャンバ36の外から、非接触温度計4で、照射用チャンバ36内の温度を計測してもよい。非接触温度計は、例えば放射温度計である。放射温度計は、測定対象の放射率に基づき、測定対象の温度を計測する。放射温度計は、例えばファイバー型放射温度計である。マイクロ波を照射され照射用チャンバ36から搬出された加熱対象の温度を、非接触温度計200で計測してもよい。
図5及び
図6に示す加熱装置のその他の構成要素は、
図2及び
図3に示した加熱装置と同様であるので、説明は省略する。
【0087】
図7に示すように、加熱対象14を保持する保持部材426は、中空の形状を有していてもよい。保持部材426は、例えば、円筒の形状を有する。保持部材426は、加熱促進剤を含む部分8と、加熱促進剤を含まない部分13と、を含んでいてもよい。例えば、保持部材426の加熱促進剤を含む部分8は、マイクロ波を照射される位置に配置され、保持部材426の加熱促進剤を含まない部分13は、マイクロ波を照射されない位置に配置される。当該保持部材426の内部に加熱対象14が配置される。保持部材426の加熱促進剤を含む部分8に、加熱対象14の少なくとも一部が接触してもよい。
【0088】
保持部材426の加熱促進剤を含む部分8には、加熱対象14から発生した流体を保持部材426の外部に透過させるための開口9が設けられていてもよい。保持部材426の加熱促進剤を含まない部分13には、加熱対象14から発生した流体を保持部材426の外部に透過させるための開口113が設けられていてもよい。
【0089】
中空の形状を有する保持部材426は、中心軸が重力方向に対して垂直になるよう、照射用チャンバ36内に配置されてもよい。加熱装置は、保持部材426の中心軸を中心として保持部材426を回転させる回転装置18を含んでいてもよい。保持部材426内部の加熱対象14は、保持部材426の回転に伴って摩擦力により回転してもよいし、回転しなくてもよい。保持部材426を回転させながら、保持部材426にマイクロ波を照射することにより、保持部材426が均一に加熱され、保持部材426の内部の加熱対象14も均一に加熱される。
【0090】
加熱対象14の形状は特に限定されないが、保持部材426が円筒形状を有する場合は、加熱対象14は円盤形状を有していてもよい。例えば、円盤形状の加熱対象14の外周部分の少なくとも一部が、保持部材426の内周部分と接触するように、加熱対象14を保持部材426の内部に配置してもよい。
【0091】
中空の形状を有する保持部材426の搬入側の開口から押し部11で加熱対象14を押して、保持部材426内部の加熱対象14を搬出側の開口に向けて移動させてもよい。保持部材426内部の加熱対象14が倒れないように、保持部材426の搬出側の開口から支え部111で加熱対象14を支えてもよい。押し部11と支え部111は加熱対象14を挟んだ状態で等速で移動する。押し部11の軸と支え部111の軸は、照射用チャンバ36に設けられた開口を貫通していてもよい。
【0092】
照射用チャンバ36に搬入用ハッチ115が設けられ、加熱対象14は搬入用ハッチ115から照射用チャンバ36内に搬入されてもよい。加熱装置は、搬入用ハッチ115を開閉する駆動部116を含んでいてもよい。照射用チャンバ36内に搬入された加熱対象14は、押し部11で押されて中空の形状を有する保持部材426の内部に移動する。
【0093】
照射用チャンバ36に搬出用ハッチ117が設けられ、加熱対象14は搬出用ハッチ117から照射用チャンバ36の外へ搬出されてもよい。加熱装置は、搬出用ハッチ117を開閉する駆動部118を含んでいてもよい。例えば、搬出用ハッチ117は、照射用チャンバ36の底面に設けられていてもよい。マイクロ波を照射された加熱対象14は、押し部11で押されて保持部材426の内部から搬出用ハッチ117の上に移動し、搬出用ハッチ117が開くと、照射用チャンバ36の下に落下する。
図7に示す加熱装置のその他の構成要素は、
図2及び
図3に示した加熱装置と同様であるので、説明は省略する。
【0094】
図8に示すように、加熱装置が供給機166を含んでいてもよい。供給機166は、フィーダであってもよい。供給機166から供給された加熱対象14の原料340を押し部325で照射用チャンバ36内に搬入し、加熱対象14としてマイクロ波を照射してもよい。押し部325はガイド335で保持されていてもよい。照射用チャンバ36内のステージ1には、加熱対象14から発生した流体を透過させるための開口9が設けられていてもよい。
【0095】
図9から
図11に示すように、加熱対象14を、照射用チャンバ36の重力方向下方から搬入及び搬出してもよい。
図9に示すように、加熱装置は、照射用チャンバ36の下方に搬入ステージ34を含む。押し部11は、搬入ステージ34上の加熱対象14を可動ステージ40上に移動させる。加熱装置は、加熱対象14が可動ステージ40から落下しないためのストッパ41を含んでいてもよい。
【0096】
可動ステージ40は上下方向に移動可能である。可動ステージ40には、加熱対象14から発生する流体を透過させるための開口が設けられていてもよい。
図10に示すように、加熱対象14を載せられると、可動ステージ40は上昇し、照射用チャンバ36の底面の開口から加熱対象14を照射用チャンバ36内に搬入する。加熱装置は、照射用チャンバ36内に配置された加熱対象14の周囲を囲う囲い50を含んでいてもよい。囲い50は、例えば、加熱促進剤を含む。照射用チャンバ36内には、マイクロ波を反射するための反射板225が設けられていてもよい。
【0097】
加熱装置は、可動ステージ40上の加熱対象14に圧力を加えるためのプレス機205を含んでいてもよい。プレス機205の加圧面に、絶縁層215と加熱促進部材220が設けられていてもよい。加熱促進部材220は、加熱促進剤を含む。例えば、絶縁層215は、プレス機205の加圧面と加熱促進部材220の間に配置される。加熱促進部材220は、プレス機205が加熱対象14に圧力を加える際に、加熱対象14に接触する。絶縁層215は、マイクロ波で加熱された加熱対象14及び加熱促進部材220の熱がプレス機205に移動することを抑制する。絶縁層215及び加熱促進部材220は、治具230によりプレス機205に固定されてもよい。
【0098】
加熱装置は、プレス機205で加熱対象14に圧力を加えながら、加熱対象14にマイクロ波を照射してもよい。加熱対象14に加えられる圧力は、例えば、1MPa以上、100MPa以上、あるいは200MPa以上であり、2000MPa以下、1900MPa以下、あるいは1800MPa以下であるが、特に限定されない。加熱対象14に圧力を加えながらマイクロ波を照射することにより、加熱後の加熱対象14が緻密になる傾向にある。また、プレス機205は、加熱対象14に対するマイクロ波の照射が終了した後も、加熱対象14に圧力を加えてもよい。
【0099】
加熱される加熱対象14の温度を、プレス機205が含む温度計210a、210bで計測してもよい。加熱対象14にマイクロ波を照射した後、
図11に示すように、可動ステージ40は下降し、加熱対象14を照射用チャンバ36の外に搬出する。下降した可動ステージ40上の加熱対象14を押し部43がローラコンベア48上に押し出す。押し部43は台座42上に配置されていてもよく、ローラコンベア48は台座45上に配置されていてもよい。ローラコンベア48を介して、例えば、加熱された加熱対象14は、別のコンベア38上に搬送されてもよい。
【0100】
図12に示すように、照射用チャンバ36は運搬可能であってもよい。ローラコンベア31で移動している照射用チャンバ36内の加熱対象14にマイクロ波照射部3からマイクロ波を照射し、照射用チャンバ36の底面に設けられた開口を介して、加熱対象14から発生した流体を照射用チャンバ36の外部に排出してもよい。マイクロ波照射部3のランチャに加熱促進剤を含む加熱促進部材140を固定し、加熱促進部材140を透過したマイクロ波を、加熱対象14に照射してもよい。照射用チャンバ36の開閉可能な部位の隙間には、電磁波シールド145を配置してもよい。
【0101】
上記のように本発明を様々な実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす記述及び図面はこの発明を限定するものであると理解するべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかになるはずである。例えば、異なる図面に示した加熱装置の構成要素同士を組み合わせてもよい。このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を包含するということを理解すべきである。
【符号の説明】
【0102】
1・・・ステージ、2・・・マイクロ波発生部、3・・・マイクロ波照射部、4・・・非接触温度計、5・・・窓、6・・・エアカーテン供給機、8・・・加熱促進剤を含む部分、9・・・開口、11・・・押し部、13・・・加熱促進剤を含まない部分、14・・・加熱対象、15・・・ドレンパン、17・・・ドレンパイプ、17a・・・弁、18・・・回転装置、19・・・キャタピラコンベア、20・・・気体回収パイプ、21・・・タンク、22・・・溶解炉、24・・・吸引ポンプ、25・・・液化装置、26・・・カメラ、27・・・カメラ、28・・・液体、29・・・溶湯、30・・・トレー、31・・・ローラコンベア、32・・・開口、34・・・搬入ステージ、36・・・照射用チャンバ、38・・・コンベア、40・・・可動ステージ、41・・・ストッパ、42・・・台座、43・・・押し部、45・・・台座、48・・・ローラコンベア、103・・・マイクロ波透過窓、105・・・回収部、106・・・液体回収部、107・・・気体回収部、111・・・支え部、113・・・開口、115・・・搬入用ハッチ、116・・・駆動部、117・・・搬出用ハッチ、118・・・駆動部、130・・・ファン、140・・・加熱促進部材、145・・・電磁波シールド、150・・・パイプ、155・・・分析装置、160・・・ホッパ、165・・・スクリュ、166・・・供給機、167・・・駆動部、200・・・非接触温度計、205・・・プレス機、210a・・・温度計、215・・・絶縁層、220・・・加熱促進部材、225・・・反射板、230・・・治具、255・・・気体導入管、256・・・気体導入管、257・・・気体導入管、260・・・気体排出管、261・・・気体排出管、262・・・気体排出管、325・・・押し部、335・・・ガイド、340・・・原料、400・・・加熱前チャンバ、401・・・加熱後チャンバ、410A・・・搬入扉、410B・・・搬出扉、411・・・搬出扉、412・・・搬入口、413・・・搬出口、420・・・接触部材、425・・・保持部材、426・・・保持部材、430・・・軸、431・・・スリーブ、435・・・軸、440・・・回転台
【要約】
【課題】マイクロ波照射による加熱対象の加熱効率を向上可能な加熱装置を提供する。
【解決手段】加熱対象14にマイクロ波を照射するよう構成されたマイクロ波照射部3と、マイクロ波を照射された加熱対象14から発生した流体を回収するよう構成された回収部105と、を含む加熱装置。マイクロ波は、例えば周波数が300MHz以上30GHz以下の電磁波である。加熱対象14は、例えば金属を含む。また、加熱対象14は、例えば、油、有機物、及び水等の非金属を含む。加熱対象14にマイクロ波を照射すると、加熱対象14は加熱され、金属よりも融点及び沸点が低い非金属は、流体となって加熱対象から離脱する。
【選択図】
図1