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特許7709711コメント生成プログラム、コメント生成装置およびコメント生成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-09
(45)【発行日】2025-07-17
(54)【発明の名称】コメント生成プログラム、コメント生成装置およびコメント生成方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/18 20120101AFI20250710BHJP
【FI】
G06Q50/18
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2024065325
(22)【出願日】2024-04-15
【審査請求日】2024-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】519313471
【氏名又は名称】株式会社リセ
(74)【代理人】
【識別番号】110004163
【氏名又は名称】弁理士法人みなとみらい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 美樹
(72)【発明者】
【氏名】寄合 龍太
【審査官】和田 財太
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2024/057589(WO,A1)
【文献】AIを使って契約書審査!?,第3回AI・人工知能EXPO,2019年04月03日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 50/00
G06F 40/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の当事者間で交わされる取決めに関する文書の作成を支援するためのプログラムであって、
取得部と、生成部と、としてコンピュータを機能させ、
前記取得部は、前記取決めに関する文書のドラフトにおける前記取決めの相手方の指摘を示す指摘事項を取得し、
前記生成部は、生成装置に、前記指摘事項と、コメントを作成するために参照可能な複数の参照事項の中から特定される、前記指摘事項に対応する参照事項と、に基づいて、当該指摘事項に関するコメント案を生成する命令を出力する、
コメント生成プログラム。
【請求項2】
前記指摘事項は、前記ドラフトにおいて前記取決めの相手方が元の文書から変更した内容、又は前記ドラフトにおいて前記相手方が指摘したコメントを含み、
前記生成部は、前記生成装置に、前記指摘事項と、前記参照事項と、に基づいて、当該指摘事項に対する回答を示す前記コメント案を生成するよう命令を送信する、請求項1に記載のコメント生成プログラム。
【請求項3】
前記ドラフトは、前記取決めにおいてユーザ側当事者が提示した文書案に対し、前記取決めの相手方が前記指摘事項を付加した文書である、請求項1に記載のコメント生成プログラム。
【請求項4】
前記指摘事項が、前記取決めの交渉過程で行われた過去の指摘である過去指摘に対する回答を示すものである場合に、
前記生成部は、前記指摘事項と、当該指摘事項に関連する前記過去指摘と、前記参照事項と、に基づいて、当該指摘事項に関するコメント案を生成する命令を前記生成装置に出力する、請求項に記載のコメント生成プログラム。
【請求項5】
前記過去指摘は、前記ドラフトの過去の版において、前記相手方が行った指摘事項を含む、請求項に記載のコメント生成プログラム。
【請求項6】
前記過去指摘は、前記ユーザ側当事者が提示した文書案において前記ユーザ側当事者が行った指摘事項を含む、請求項に記載のコメント生成プログラム。
【請求項7】
前記参照事項は、コメントを作成するための基礎となる参照文章又は参照方針を含む、請求項1に記載のコメント生成プログラム。
【請求項8】
前記参照事項は、文書の変更を拒否する旨の参照文章又は参照方針を含む、請求項に記載のコメント生成プログラム。
【請求項9】
前記参照文章は、回答コメントの例を示すコメント例を含む、請求項に記載のコメント生成プログラム。
【請求項10】
コンピュータを更に特定部として機能させ、
前記文書は、複数の項目を含み、
前記参照事項は、前記項目に対応付けて事前に登録され、
前記特定部は、前記指摘事項に対応する前記項目を特定して、当該項目に対応する前記参照事項を特定し、
前記生成部は、生成装置に、前記指摘事項及び、前記特定部により特定された前記参照事項に基づいて、当該指摘事項に関するコメント案を生成する命令を出力する、請求項1に記載のコメント生成プログラム。
【請求項11】
前記項目は、法的観点の共通するひとまとまりの規定を定める、複数の条項のグループを含む、請求項10に記載のコメント生成プログラム。
【請求項12】
前記参照事項は、前記項目ごとに1又は複数登録され、
前記特定部は、前記取決めに関する背景情報に基づいて、前記指摘事項に対応する項目に対応付けられた前記参照事項のうち、1つを特定する、請求項10に記載のコメント生成プログラム。
【請求項13】
前記命令は、前記生成装置に、複数の参照事項の中から、前記指摘事項に対応する参照事項を特定させ、当該参照事項を用いて前記コメント案を生成する旨の命令を含む、請求項1に記載のコメント生成プログラム。
【請求項14】
コンピュータを更に特定部として機能させ、
複数の前記参照事項は、データベースに登録され、
前記参照事項は、標準参照事項及びユーザ参照事項を含み、
前記特定部は、前記標準参照事項又はユーザ参照事項のうち何れを前記コメント案の生成に使用するかを示す設定を参照して、前記設定に従って前記参照事項を特定し、
前記生成部は、生成装置に、前記指摘事項及び、前記特定部により特定された前記参照事項に基づいて、当該指摘事項に関するコメント案を生成する命令を出力する、請求項1に記載のコメント生成プログラム。
【請求項15】
前記ユーザ参照事項は、過去の取決めに関する過去文書において付与された過去文書コメントを含む、請求項14に記載のコメント生成プログラム。
【請求項16】
前記文書は、複数の項目を含み、
前記過去文書コメントは、前記過去文書における前記項目と対応付けて前記データベースに登録され、
前記特定部は、前記コメント案に前記ユーザ参照事項を使用する旨の設定がされている場合に、前記指摘事項に対応する前記項目を特定して、当該項目に対応する前記過去文書コメントを前記参照事項として特定する、請求項15に記載のコメント生成プログラム。
【請求項17】
前記指摘事項は、前記ドラフトにおける指摘箇所に対応付けられており、
前記生成部は、前記指摘事項及び参照事項に加え、前記ドラフトにおける前記指摘箇所の記載内容に更に基づいて、前記コメント案を生成する命令を前記生成装置に出力する、請求項1に記載のコメント生成プログラム。
【請求項18】
前記生成部は、前記指摘事項及び参照事項に加え、前記取決めに関する背景情報に更に基づいて、前記コメント案を生成する命令を前記生成装置に出力する、請求項1に記載のコメント生成プログラム。
【請求項19】
前記取得部は、前記指摘事項が示す変更をユーザが拒否する場合に、拒否の強さの選択を受け付け、
前記生成部は、前記指摘事項及び参照事項に加え、前記拒否の強さに基づいて、前記コメント案を生成する命令を前記生成装置に出力する、請求項1に記載のコメント生成プログラム。
【請求項20】
前記取得部は、前記指摘事項のうち、前記コメント案の生成対象とするものの指定をユーザから受け付け、
前記生成部は、選択された前記指摘事項について、前記コメント案を生成する前記命令を前記生成装置に送信する、請求項1に記載のコメント生成プログラム。
【請求項21】
前記ドラフトには、1又は複数の前記指摘事項が対応付けられ、
前記取得部は、各指摘事項が示す変更を受け入れるか否かの選択を、前記指摘事項ごとにユーザから受け付け、
前記生成部は、ユーザが変更を拒否する旨を選択した前記指摘事項について、前記コメント案を生成する前記命令を前記生成装置に送信する、請求項1に記載のコメント生成プログラム。
【請求項22】
前記ドラフトには、複数の前記指摘事項が対応付けられ、
前記生成部は、複数の前記指摘事項について、一括して前記コメント案を生成する前記命令を前記生成装置に送信する、請求項1に記載のコメント生成プログラム。
【請求項23】
前記取得部は、前記ドラフトの本文又は前記ドラフトを表現したファイルにおいて記載されたコメントを、前記指摘事項として取得する、請求項1に記載のコメント生成プログラム。
【請求項24】
コンピュータを更に特定部として機能させ、
前記文書は、複数の項目を含み、
前記特定部は、前記指摘事項に対応する前記項目を特定して、項目に対応付けて事前に登録される付加事項の中から、当該項目に対応する付加事項を特定し、
前記生成部は、生成装置に、前記指摘事項及び前記参照事項に加え、前記特定部によって特定された前記付加事項に更に基づいて、前記コメント案を生成する命令を前記生成装置に送信する、請求項1に記載のコメント生成プログラム。
【請求項25】
複数の当事者間で交わされる取決めに関する文書の作成を支援するための装置であって、
取得部と、生成部と、を備え、
前記取得部は、前記取決めに関する文書のドラフトにおける前記取決めの相手方の指摘を示す指摘事項を取得し、
前記生成部は、生成装置に、前記指摘事項と、コメントを作成するために参照可能な複数の参照事項の中から特定される、前記指摘事項に対応する参照事項と、に基づいて、当該指摘事項に関するコメント案を生成する命令を出力する、
コメント生成装置。
【請求項26】
複数の当事者間で交わされる取決めに関する文書の作成を支援するためのコンピュータを利用した方法であって、コンピュータが、
前記取決めに関する文書のドラフトにおける前記取決めの相手方の指摘を示す指摘事項を取得し、
生成装置に、前記指摘事項と、コメントを作成するために参照可能な複数の参照事項の中から特定される、前記指摘事項に対応する参照事項と、に基づいて、当該指摘事項に関するコメント案を生成する命令を出力する、
コメント生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コメント生成プログラム、コメント生成装置およびコメント生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
法務の業務には、書面の作成や修正等の作業がある。例えば社内の関係者の間で確認と修正を繰り返して書面を作成する作業や、外部との間で取決めを交わす際に相手方との間でドラフト(文書案)の修正を複数回繰り返して調整を行う作業に、大きな手間がかかっていた。
【0003】
このような文書作成の業務において特に時間がかかる作業のひとつに、文書の確認者に向けたコメントを作成する作業がある。例えば大手企業等では、自社から契約書の雛形を送付した後、相手がそれを修正し、その修正を自社が受け入れられない場合には相手に対してその理由をコメントするという業務が多く、そのようなコメント作成業務が大きな負担になっていた。
【0004】
従来、文書作成の支援技術として、文書修正の参考情報を提供する技術が知られていた。例えば特許文献1には、過去の契約書のバージョンごとに修正と修正コメントを記憶しておき、入力契約書の所定の条項を修正する際の修正候補として、過去の契約書の類似条項の修正バージョンと修正に関するコメントを提示する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2020/230346号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、類似契約書に対する過去の修正及びそのコメントを参考に提示するにすぎない。そのため、コメントの作成の支援としては不十分であり、より効果的な支援が求められている。そこで本発明は、以上の問題を解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、複数の当事者間で交わされる取決めに関する文書の作成を支援するためのプログラムであって、取得部と、生成部と、としてコンピュータを機能させ、前記取得部は、前記取決めに関する文書のドラフトにおける前記取決めの相手方の指摘を示す指摘事項を取得し、前記生成部は、生成装置に、前記指摘事項と、コメントを作成するために参照可能な複数の参照事項の中から特定される、前記指摘事項に対応する参照事項と、に基づいて、当該指摘事項に関するコメント案を生成する命令を出力する、コメント生成プログラムである。
【0008】
このような構成とすることで、コメントの作成に関してより効果的な支援をすることができる。具体的には、相手方からなされた指摘事項に基づいてコメント案を提供することが可能となり、相手方に提示するコメントの作成をより効果的に支援することができる。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、複数の当事者間で交わされる取決めに関する文書の作成を支援するためのプログラムであって、取得部と、生成部と、としてコンピュータを機能させ、前記取得部は、前記取決めに関する文書のドラフトに対する評価処理の結果として指摘事項を取得し、前記生成部は、生成装置に、前記指摘事項と、コメントを作成するために参照可能な複数の参照事項の中から特定される、前記指摘事項に対応する参照事項と、に基づいて、当該指摘事項に関するコメント案を生成する命令を出力する、コメント生成プログラムである。
【0010】
このような構成とすることで、コメントの作成に関してより効果的な支援をすることができる。具体的には、評価処理の結果として得られた指摘事項に基づいてコメント案を提供することが可能となり、効率的なコメントの作成を支援することができる。また評価処理の結果として得られた指摘事項に対するコメントを生成することで、例えば、社内におけるチェック業務の負担軽減に役立てることができる。
【0011】
本発明の好ましい形態では、前記指摘事項は、前記ドラフトにおいて前記取決めの相手方が元の文書から変更した内容、又は前記ドラフトにおいて前記相手方が指摘したコメントを含み、前記生成部は、前記生成装置に、前記指摘事項と、前記参照事項と、に基づいて、当該指摘事項に対する回答を示す前記コメント案を生成するよう命令を送信する。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記ドラフトは、前記取決めにおいてユーザ側当事者が提示した文書案に対し、前記取決めの相手方が前記指摘事項を付加した文書である。
【0013】
本発明の好ましい形態では、前記取決めの交渉過程で行われた過去の指摘である過去指摘に対する回答を示すものである場合に、前記生成部は、前記指摘事項と、当該指摘事項に関連する前記過去指摘と、前記参照事項と、に基づいて、当該指摘事項に関するコメント案を生成する命令を前記生成装置に出力する。
【0014】
このような構成とすることで、直近の指摘事項のみでなく、当該指摘事項がなされるにいたるまでの過去のやり取りを踏まえたコメント案の生成が可能となる。これにより、対象の指摘事項に関連する一連の過去指摘に反するコメントや、過去に自社が行ったコメントと同一のコメントを再度作成してしまうといった問題を防ぐ効果が期待される。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記過去指摘は、前記ドラフトの過去の版において、前記相手方が行った指摘事項を含む。
【0016】
本発明の好ましい形態では、前記過去指摘は、前記ユーザ側当事者が提示した文書案において前記ユーザ側当事者が行った指摘事項を含む。
【0017】
本発明の好ましい形態では、前記参照事項は、コメントを作成するための基礎となる参照文章又は参照方針を含む。
【0018】
本発明の好ましい形態では、前記参照事項は、文書の変更を拒否する旨の参照文章又は参照方針を含む。
【0019】
取決めに関する文書の修正においては、変更を拒否する場合に理由をコメントする重要性が高い。このような構成とすることで、変更を拒否する場合のコメントを適切に作成することができる。
【0020】
本発明の好ましい形態では、前記参照文章は、回答コメントの例を示すコメント例を含む。
【0021】
このような構成とすることで、コメント例をもとに、指摘事項に応じた自然なコメント案を生成することができる。
【0022】
本発明の好ましい形態では、コンピュータを更に特定部として機能させ、前記文書は、複数の項目を含み、前記参照事項は、前記項目に対応付けて事前に登録され、前記特定部は、前記指摘事項に対応する前記項目を特定して、当該項目に対応する前記参照事項を特定し、前記生成部は、生成装置に、前記指摘事項及び、前記特定部により特定された前記参照事項に基づいて、当該指摘事項に関するコメント案を生成する命令を出力する。
【0023】
このような構成とすることで、例えば契約書の条項や論点等、文書の項目に対応する参照事項に基づいて、より適切なコメント案を生成することができる。
【0024】
本発明の好ましい形態では、前記項目は、法的観点の共通するひとまとまりの規定を定める、複数の条項のグループを含む。
【0025】
本発明の好ましい形態では、前記参照事項は、前記項目ごとに1又は複数登録され、前記特定部は、前記取決めに関する背景情報に基づいて、前記指摘事項に対応する項目に対応付けられた前記参照事項のうち、1つを特定する。
【0026】
このような構成とすることで、対象とする取決め又は文書の背景に沿った、適切なコメントを生成することができる。
【0027】
本発明の好ましい形態では、前記命令は、前記生成装置に、複数の参照事項の中から、前記指摘事項に対応する参照事項を特定させ、当該参照事項を用いて前記コメント案を生成する旨の命令を含む。
【0028】
このような構成とすることで、例えば、候補となる参照事項を生成装置に事前に記憶させておき、適切な参照事項を用いてコメント案を生成させることが可能となる。
【0029】
本発明の好ましい形態では、コンピュータを更に特定部として機能させ、複数の前記参照事項は、データベースに登録され、前記参照事項は、標準参照事項及びユーザ参照事項を含み、前記特定部は、前記標準参照事項又はユーザ参照事項のうち何れを前記コメント案の生成に使用するかを示す設定を参照して、前記設定に従って前記参照事項を特定し、前記生成部は、生成装置に、前記指摘事項及び、前記特定部により特定された前記参照事項に基づいて、当該指摘事項に関するコメント案を生成する命令を出力する。
【0030】
このような構成とすることで、標準参照事項及びユーザ参照事項のうち、コメント案の生成に用いる参照事項をユーザが選択することができる。即ち、標準的な内容(標準参照事項)を用いるか、ユーザが情報の追加や修正等のカスタマイズを行った内容(ユーザ参照事項)を用いるかを、ユーザが切り替えることが可能となる。
【0031】
本発明の好ましい形態では、前記ユーザ参照事項は、過去の取決めに関する過去文書において付与された過去文書コメントを含む。
【0032】
このような構成とすることで、過去文書コメントを参照してコメント案を生成することができる。これにより、ユーザ又はその所属企業の癖や、回答の傾向等が反映され、より当事者の意向に沿ったコメント案が生成される効果が期待できる。
【0033】
本発明の好ましい形態では、前記文書は、複数の項目を含み、前記過去文書コメントは、前記過去文書における前記項目と対応付けて前記データベースに登録され、前記特定部は、前記コメント案に前記ユーザ参照事項を使用する旨の設定がされている場合に、前記指摘事項に対応する前記項目を特定して、当該項目に対応する前記過去文書コメントを前記参照事項として特定する。
【0034】
このような構成とすることで、過去文書において、対象の指摘事項に対応する項目と同じ項目に対してなされた過去文書コメントを、コメント案の生成に用いることができる。これにより、より適切なコメント案が生成される効果が期待される。
【0035】
本発明の好ましい形態では、前記指摘事項は、前記ドラフトにおける指摘箇所に対応付けられており、前記生成部は、前記指摘事項及び参照事項に加え、前記ドラフトにおける前記指摘箇所の記載内容に更に基づいて、前記コメント案を生成する命令を前記生成装置に出力する。
【0036】
このような構成とすることで、指摘箇所の記載に応じたコメント案を生成することができる。
【0037】
本発明の好ましい形態では、前記生成部は、前記指摘事項及び参照事項に加え、前記取決めに関する背景情報に更に基づいて、前記コメント案を生成する命令を前記生成装置に出力する。
【0038】
このような構成とすることで、対象とする取決め又は文書の背景に沿った、適切なコメントを生成することができる。
【0039】
本発明の好ましい形態では、前記取得部は、前記指摘事項が示す変更をユーザが拒否する場合に、拒否の強さの選択を受け付け、前記生成部は、前記指摘事項及び参照事項に加え、前記拒否の強さに基づいて、前記コメント案を生成する命令を前記生成装置に出力する。
【0040】
このような構成とすることで、ユーザが希望するニュアンスを反映したコメント案を生成することができる。
【0041】
本発明の好ましい形態では、前記取得部は、前記指摘事項のうち、前記コメント案の生成対象とするものの指定をユーザから受け付け、前記生成部は、選択された前記指摘事項について、前記コメント案を生成する前記命令を前記生成装置に送信する。
【0042】
このような構成とすることで、ユーザは、評価結果を見て必要と考える部分のみ、コメント案を得ることができる。これにより、不要な内容を提示せず、ユーザにとってわかりやすい提案を行うことが可能となる。更に、必要な部分についてのコメント案の生成命令を生成することにより、送受信する情報量及び、生成装置における処理量が削減される。これにより、処理速度の向上効果が期待でき、更なるユーザ体験の向上効果が見込まれる。
【0043】
本発明の好ましい形態では、前記ドラフトには、1又は複数の前記指摘事項が対応付けられ、前記取得部は、各指摘事項が示す変更を受け入れるか否かの選択を、前記指摘事項ごとにユーザから受け付け、前記生成部は、ユーザが変更を拒否する旨を選択した前記指摘事項について、前記コメント案を生成する前記命令を前記生成装置に送信する。
【0044】
取決めに関する文書の修正においては、変更を拒否する場合に理由をコメントする重要性が高い。このような構成とすることで、変更を拒否する指摘事項を対象に、コメント案を生成することができる。
【0045】
本発明の好ましい形態では、前記提案文書には、複数の前記指摘事項が対応付けられ、前記生成部は、複数の前記指摘事項について、一括して前記コメント案を生成する前記命令を前記生成装置に送信する。
【0046】
本発明の好ましい形態では、前記取得部は、前記ドラフトの本文又は前記ドラフトを表現したファイルにおいて記載されたコメントを、前記指摘事項として取得する。
【0047】
文書への指摘や修正は、企業によって様々な形式により行われうる。このような構成とすることで、多様なコメントを指摘事項として取得し、当該指摘事項に対するコメント案を生成することができる。
【0048】
本発明の好ましい形態では、コンピュータを更に特定部として機能させ、前記文書は、複数の項目を含み、前記特定部は、前記指摘事項に対応する前記項目を特定して、項目に対応付けて事前に登録される付加事項の中から、当該項目に対応する付加事項を特定し、前記生成部は、生成装置に、前記指摘事項及び前記参照事項に加え、前記特定部によって特定された前記付加事項に更に基づいて、前記コメント案を生成する命令を前記生成装置に送信する。
【0049】
このような構成とすることで、項目に応じた付加事項を更に考慮して、コメント案を生成することができる。例えば、生成装置がWeb上の情報を学習した文章生成モデルによりコメント案を生成するものである場合、改正前の古い法律に基づく情報や、誤った情報を学習している場合がある。この場合、誤った内容や不要な内容を含むコメント案が生成されてしまう可能性がある。これに対し、項目に応じて事前に付加事項として除外事項や補足事項を登録しておき、これに基づいてコメント案を生成することにより、上述した問題の発生を抑制することができる。
【0050】
上記課題を解決するために、本発明は、複数の当事者間で交わされる取決めに関する文書の作成を支援するための装置であって、取得部と、生成部と、を備え、前記取得部は、前記取決めに関する文書のドラフトにおける前記取決めの相手方の指摘を示す指摘事項を取得し、前記生成部は、生成装置に、前記指摘事項と、コメントを作成するために参照可能な複数の参照事項の中から特定される、前記指摘事項に対応する参照事項と、に基づいて、当該指摘事項に関するコメント案を生成する命令を出力する、コメント生成装置である。
【0051】
上記課題を解決するために、本発明は、複数の当事者間で交わされる取決めに関する文書の作成を支援するための装置であって、取得部と、生成部と、を備え、前記取得部は、前記取決めに関する文書のドラフトに対する評価処理の結果として指摘事項を取得し、前記生成部は、生成装置に、前記指摘事項と、コメントを作成するために参照可能な複数の参照事項の中から特定される、前記指摘事項に対応する参照事項と、に基づいて、当該指摘事項に関するコメント案を生成する命令を出力する、コメント生成装置である。
【0052】
上記課題を解決するために、本発明は、複数の当事者間で交わされる取決めに関する文書の作成を支援するためのコンピュータを利用した方法であって、コンピュータが、前記取決めに関する文書のドラフトにおける前記取決めの相手方の指摘を示す指摘事項を取得し、生成装置に、前記指摘事項と、コメントを作成するために参照可能な複数の参照事項の中から特定される、前記指摘事項に対応する参照事項と、に基づいて、当該指摘事項に関するコメント案を生成する命令を出力する、コメント生成方法である。
【0053】
上記課題を解決するために、本発明は、複数の当事者間で交わされる取決めに関する文書の作成を支援するためのコンピュータを利用した方法であって、コンピュータが、前記取決めに関する文書のドラフトに対する評価処理の結果として指摘事項を取得し、生成装置に、前記指摘事項と、コメントを作成するために参照可能な複数の参照事項の中から特定される、前記指摘事項に対応する参照事項と、に基づいて、当該指摘事項に関するコメント案を生成する命令を出力する、コメント生成方法である。
【発明の効果】
【0054】
本発明によれば、指摘事項に対応した適切なコメント案を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】実施形態1のシステムの構成を示す図。
図2】実施形態1の情報処理装置及び端末装置のハードウェア構成図。
図3】実施形態1のコメント生成システムの機能構成を示すブロック図。
図4】実施形態1のデータベースにおける記憶情報の一例を示す図。
図5】実施形態1のコメント案の生成に係る処理の流れを示すシーケンス図。
図6】実施形態1の画面表示例。
図7】実施形態1の参照事項の特定処理の流れを示すフローチャート。
図8】実施形態1の画面表示例。
図9】実施形態2のコメント生成システムの機能構成を示すブロック図。
図10】実施形態2の評価、修正案の生成及びコメント案の生成に係る処理の流れを示すシーケンス図。
図11】実施形態2の画面表示例。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明は、複数の当事者間で交わされる取決めに関する文書の作成において、文書のドラフト(文書案、下書き)に付するコメントの作成を支援するための技術に関する。例えば契約書は、契約当事者間を往復して修正を繰り返して作成されることが多い。本発明は、文書に対して行われた指摘に対する返答となるコメント案を、指摘事項及び参照事項に基づいて生成するための技術である。
【0057】
以下、添付図面を参照して、さらに詳細に説明する。図面には好ましい実施形態が示されているが、多くの異なる形態で実施されることが可能であり、本明細書に記載される実施形態に限定されない。
【0058】
例えば、以下の実施形態ではコメント生成システムの構成、動作等について説明するが、コメント生成装置、コメント生成システム又はコメント生成装置が実行する方法、コメント生成プログラム等によっても、同様の作用効果を奏することができる。本実施形態では、コメント生成システムは、クライアント端末(ユーザ端末)でその機能を実現する為に、クライアント端末とネットワークを介して接続されるサーバ(コメント生成装置)において当該コメント生成プログラムを実行する、いわゆるクラウドコンピューティングの態様をとる。
【0059】
コメント生成プログラムは、任意のコンピュータ装置をコメント生成装置として機能させるために、コンピュータが読み取り可能な非一過性の記憶媒体としてコンピュータ装置へ提供されても良いし、外部のサーバからダウンロード可能に提供されても良い。また、コメント生成プログラムは、例えば、Microsoft Word(登録商標)等の文書編集ソフトウェアにおいて、アドオン(プラグイン)されるプログラムであっても良い。
【0060】
以下の実施形態において「部」とは、例えば、広義の回路によって実施されるハードウェア資源と、これらハードウェア資源によって具体的に実現され得るソフトウェアの情報処理とを合わせたものを含み得る。本実施形態において「情報」とは、例えば、電圧・電流を表す信号値の物理的な値、0又は1で構成される2進数のビット集合体としての信号値の高低、又は量子的な重ね合わせ(いわゆる量子ビット)によって表され、広義の回路上で通信・演算が実行され得る。広義の回路とは、回路(Circuit)、プロセッサ(Processor)及びメモリ(Memory)等を適宜組み合わせることによって実現される回路類(Circuitry)である。例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等のいずれかを含む回路類である。
【0061】
<定義>
まず、本発明における用語の定義を説明する。
本発明において「取決め」とは、複数の当事者間で交わされる決めごとであり、利用規約、利用者に対する宣言、相手との合意等を含む。
【0062】
また「取決めに関する文書」とは、取決めを示す任意の文書、特に法律に何らかの関連性がある法律文書を指す。具体的には、契約書や規則、規約、通知書、合意文書、催告書、委任状等が、取決めに関する文書の例として挙げられる。規則としては、就業規則等の法規範の文書等が考えられる。また、通知書としては、プライバシー等のポリシー宣言の文書等が考えられる。
【0063】
法律文書には、条、項、号等に区分された単位を含むものがあり、本実施形態においては、このような単位の各々を「条項」と呼ぶ。以下の実施形態では、作成対象となる文書が、複数の条項を含む、特定の相手との取決めに関する法律文書、特に契約書である場合を想定して説明する。
【0064】
また本発明において「項目」とは、例えば法律文書の検討又は評価の対象となる観点の一つである。例えば、条項を本発明の項目としてもよいし、法律文書の規定する論点を本発明の項目としてもよい。特に、取決めの種類(契約類型等)ごとに必要な項目を定めることが好ましく、以下に示す実施形態において「項目」と言う場合、取決めの種類ごとに分けられた項目を指す。
【0065】
契約書を含む法律文書には、法的観点からみてその内容・要否その他の事項について、現在又は将来において、議論又は交渉の余地のある事項が存在する。それを一般的には論点と呼ぶ。具体的には、本発明における論点としては、契約期間や、契約の対象、秘密保持契約における秘密情報の例外として定める、その具体的な例外の種類のそれぞれ、等を挙げることができる。また複数の条項によりひとまとまりの規定を定める場合、そのひとまとまりの規定をひとつの論点としてもよい。例えば、秘密情報の例外の5つの種類ごとに定める規定を秘密情報の例外というグループに集約し、当該グループをひとつの論点としてもよい。本実施形態では、論点を「項目」とする形態を例示して説明する。
【0066】
本発明において「ドラフト」とは、作成対象である文書の案、下書きのことを指す。例えば自社と外部の当事者との間で契約を交わす際には、一方の当事者が相手方(他方の当事者)に文書の初案を送り、その後相互に確認や修正を繰り返して、完成までに複数の版が作成されることが多い。本発明の「ドラフト」は、文書の完成までに作成される検討状態の文書案を広く含む。
【0067】
また本発明の「ドラフト」は、文書案の全文である必要はなく、少なくとも一部の案を含んでいればよい。例えば、部分的に文書の修正の検討を行っている場合には、当該部分のみをドラフトとして扱ってもよい。
【0068】
本発明は、このようなドラフトにおいて指摘がなされた場合に、当該指摘に関するコメントを作成する。この指摘を示す情報を本発明において「指摘事項」と呼ぶ。本実施形態においては、相手方からの指摘を示す情報を、指摘事項として想定する。具体的には、相手方により作成されたコメント(文章)や、ドラフトにおける元の文書からの変更が、指摘事項に含まれる。
【0069】
ここで、文書の作成においては上記の通り複数回の修正のやり取りが繰り返されることが多い。したがってこのような場合には、対象の取決めにおいて過去に自社が行った指摘に対して、相手方が行った回答が、指摘事項として含まれることがある。また過去に自社が行った指摘自体も、更にその前に相手方が行った指摘に対する回答である場合がある。このように、対象のドラフトにおける指摘事項が、過去の指摘に関する一連のやり取りを踏まえたものである場合がある。
【0070】
本発明では、このような過去の指摘(同一の取決めの交渉過程で行われた過去の指摘)全般を「過去指摘」と呼ぶ。以下において過去指摘と言う場合には、特に対象となる指摘事項の前提の指摘を指す。即ち過去指摘には、ドラフトの過去の版において相手方が行った指摘事項と、ユーザ側当事者が提示した文書案においてユーザ側当事者が行った指摘事項と、が含まれる。
【0071】
過去指摘の取得は任意の方法で行われてよいが、例えば、ドラフトのバージョン(版)管理を行い、同一の取決めにおける過去の版から、過去指摘が取得されてもよい。また、ドラフトに含まれるコメントの日時を取得し、その時期が古いコメントを過去指摘として取得してもよい。例えば、ドラフトに含まれる指摘のうち、相手のID(または自社以外のID)で付与された指摘のうち最も時期が新しい指摘を指摘事項、その指摘より前に行われた指摘を過去指摘として取得する。なお、コメントを複数に分けて行われる場合もあるため、最も日時が新しい相手のコメントから所定時間以内の相手のコメント、または最も日時が新しい自社のコメント以降の日時の相手コメントについては指摘事項として取得してもよい。
【0072】
なお他の実施形態では、例えば自社内で上司から行われた指摘を示す情報や、コンピュータによる評価結果として得られる指摘を示す情報を指摘事項としてもよい。このような指摘事項に対するコメント案を生成することで、例えば上司に対する返答やチェックツールによる評価結果を踏まえたコメントの作成を支援することができ、自社内での文書作成やチェック作業を支援することができる。なお上述の「コンピュータによる評価」については、後述の実施形態2の評価処理と同様に行うことができる。
【0073】
本発明の「参照事項」とは、指摘事項に対するコメントを生成するために参照可能な任意の情報を指す。具体的には、コメントを作成するための基礎となる参照文章及び参照方針を含む。参照文章は、指摘事項に対する回答コメントの例を示すコメント例を含み、過去のコメントをコメント例にしてもよい。また参照方針とは、コメントの趣旨や作成方針である。例えば、承諾又は拒否の別、あるいは拒否の強さを、参照方針とすることができる。
【0074】
本実施形態では、参照事項は項目に対応付けられ、事前に登録される。これにより、本実施形態では、指摘事項に対応する項目に応じて、コメント案の生成に利用される参照事項が選択される。以下の実施形態においては、参照事項として参照文章を用いる場合を想定して説明する。
【0075】
参照事項の具体例を説明する。参照事項のうち参照文章として、例えば、損害賠償の金額に関する項目に対応付けて「ご指摘ありがとうございます。大変恐縮でございますが、当方が支払う損害賠償について上限を外すと当方のリスクが大きくなりすぎてしまうため、当該上限についての削除は致しかねます。そのため、元の文章に戻させて頂きました。ご了承のほど何卒よろしくお願いいたします。」といった文章を登録することが考えられる。
【0076】
このような参照事項とともに、指摘事項を踏まえてコメントの生成を行うことで、参照事項をもとに指摘事項に応じたコメントを生成することができる。例えば相手方の指摘コメントに「損害賠償のキャップを外させて頂きました」等とあった場合に「ご指摘ありがとうございます。大変恐縮でございますが、当方が支払う損害賠償についてキャップを削除しますと当方のリスクが大きくなりすぎてしまうため、当該キャップについての削除は致しかねます。そのため、元の文章に戻させて頂きました。ご了承のほど何卒よろしくお願いいたします。」等のように、使用する言葉を指摘事項に合わせた形でコメントの生成が行われることが期待される。
【0077】
(実施形態1)
<1.システム構成>
まず、実施形態1について説明する。図1に示すように、コメント生成システム0は、コメント生成装置1と、ユーザ端末2と、を備える。コメント生成装置1及びユーザ端末2は、ネットワークNWを介して通信可能に構成される。コメント生成装置1はサーバとして、ユーザ端末2はクライアント端末として動作する。またコメント生成装置1は、ネットワークNWを介して更に生成装置3と接続される。生成装置3は、文章生成モデルを提供する外部のサーバ装置である。ネットワークNWは、本実施形態では、IP(Internet Protocol)ネットワークであるが、通信プロトコルの種類、ネットワークの種類等にも制限はない。
【0078】
ユーザ端末2は、ユーザからドラフトや指摘事項に関する情報の入力を受け付け、コメント生成装置1との間で情報の送受信を行う。またコメント生成装置1から受信したコメント案に関する情報を表示する。
コメント生成装置1は、ユーザ端末2から受信した情報をもとに、指摘事項及び参照事項に基づいてコメント案を生成装置に生成させる命令を、生成装置3に送信する。
生成装置3は、文章生成モデルを提供する装置であり、コメント生成装置1からの命令を受け取って文章生成モデルに入力し、文章生成モデルの出力としてコメント案をコメント生成装置1に送信する。文章生成モデルについては後述する。
【0079】
なおコメント生成装置1が文章生成モデルを記憶し、外部の装置を利用せずにコメント案の生成が可能な構成であってもよいし、本実施形態においてコメント生成装置1が実行する処理の一部又は全部をユーザ端末2において実行する構成としてもよい。また本実施形態においてコメント生成装置1が実行する処理の一部を生成装置3において実行する構成としてもよい。
【0080】
コメント生成装置1は、ユーザ端末2のアプリケーションから送信されたリクエストに基づいて、各種の表示情報として所定の形式のデータをユーザ端末2のアプリケーションに送信する。所定の形式のデータは、例えばJSON(JavaScript(登録商標) Object Notation)形式やXML形式のデータである。ユーザ端末2のアプリケーションは、受信したデータをもとに表示データをレンダリングし、コメント案に基づく各種の情報をユーザ端末2のディスプレイ(表示装置)に表示する。
【0081】
例えば、ユーザ端末2のウェブブラウザアプリケーション上で各種情報の表示処理を実行する場合は、まずウェブブラウザアプリケーションはHTTP(Hypertext Transfer Protocol)リクエストをWebサーバに送信し、HTTPリクエストで要求されたファイルを含むHTTPレスポンスを受信する。受信するファイルは、コメント案を含む表示情報であり、表示するWebページの内容又は指示を示し、例えば、HTML(Hypertext Markup Language)などのマークアップ言語を用いて記述される。受信するファイルに、ウェブブラウザアプリケーション上で実行されるプログラムであるスクリプトが付加されていてもよい。ウェブブラウザアプリケーションは、受信したファイルに基づいて、表示領域にWebページを描画(レンダリング)する。ファイルにスクリプトが付加されている場合、ブラウザは、スクリプトを実行し、実行結果に応じてWebページを表示する。
【0082】
<2.ハードウェア構成>
コメント生成装置1や生成装置3としては、汎用のサーバやパーソナルコンピュータ等の情報処理装置10(コンピュータ装置)を1又は複数利用することができる。コメント生成装置1は、本実施形態では、コメント生成方法を実行するコンピュータプログラム(コメント生成プログラム)をインストールした情報処理装置10であるが、端末装置90にコメント生成プログラムをインストールすることでコメント生成装置1として機能させてもよい。
【0083】
またユーザ端末2としては、パーソナルコンピュータやスマートフォン、タブレット端末等の端末装置90(コンピュータ装置)を利用することができる。ユーザ端末2は、コメント生成装置1に対してリクエストを行い、レスポンスを受け取る為のアプリケーション(ウェブブラウザアプリケーション又は専用アプリケーション)を有し、このアプリケーションを介して、コメント生成装置1において実行されるコメント生成プログラムによる処理結果を利用する。
【0084】
図2(a)は、情報処理装置10のハードウェア構成図である。図2に示すように、情報処理装置10は、制御部101、記憶部102、及び通信部103を有し、各部及び各工程の作用発揮に用いられる。
【0085】
制御部101は、命令セットを実行可能なCPUなどのプロセッサを有し、OSやプログラムを実行する。
記憶部102は、命令セットを記憶可能なRAMなどの揮発性メモリ、OS、コメント生成プログラムやDBMS(データベースサーバ)等を記録可能な、HDDやSSDなどの不揮発性の記録媒体を有する。
通信部103は、ネットワークに物理的に接続するためのインタフェースを有し、ネットワークNWとの通信制御を実行して、情報の入出力を行う。
【0086】
図2(b)は、端末装置90のハードウェア構成図である。図2に示すように、端末装置90は、制御部901、記憶部902、通信部903、入力部904及び出力部905を有し、各部及び各工程の作用発揮に用いられる。
【0087】
制御部901は、命令セットを実行可能なCPUなどのプロセッサを有し、OSやプログラム等を実行する。
記憶部902は、命令セットを記憶可能なRAMなどの揮発性メモリ、OS、判定プログラム等を記録可能な、HDDやSSDなどの不揮発性の記録媒体を有する。
通信部903は、ネットワークに物理的に接続するためのインタフェースを有し、ネットワークNWとの通信制御を実行して、情報の入出力を行う。
入力部904は、タッチパネルやキーボードなどの入力処理が可能な操作入力デバイス、マイクなどの音声入力が可能な音声入力デバイス等を有する。
出力部905は、ディスプレイなどの表示処理が可能な表示デバイス、スピーカなどの音声出力デバイスを有する。
【0088】
<3.機能構成>
次に、機能構成について説明する。図3は、本実施形態のコメント生成システムの機能構成を示すブロック図である。
コメント生成装置1は、取得部11と、特定部12と、生成部13と、出力部14と、データベースDBと、を有する。これは、ソフトウェアによる情報処理が、ハードウェアによって具体的に実現されたものである。
【0089】
以下各機能構成について詳細に説明する。まず、データベースDBが記憶する情報について説明する。
図4は、本実施形態におけるデータベースDBが記憶する情報の一例を示す図である。データベースDBは、複数の参照事項を事前に登録する。本実施形態では、参照事項はそれぞれ項目に対応付けて登録される。特に本実施形態では、項目として、契約類型ごとに論点が登録されており、各論点について1以上の参照事項が紐づけて記憶されている。
【0090】
なお本実施形態では全ての項目に1以上の参照事項が紐づけて登録されるが、一部の項目についてのみ参照事項を登録し、項目を指定しない参照事項を別途用意してもよい。この場合、参照事項が紐づけられていない項目に関するコメント案は、項目を指定しない参照事項を用いて作成するようにしてもよい。
【0091】
本実施形態では、参照事項として、コメント例を示す参照文章が登録されるが、参照文章に代えて参照方針を登録してもよい。項目に対応付けて参照方針を登録する場合には、例えば項目ごとに、拒否の強さを登録することが想定される。例えば、重要な項目においては指摘事項が示す内容(例えば修正)を強く拒否する旨の参照事項を登録し、さほど重要でない項目においては弱く拒否する旨の参照事項を登録することが考えられる。
【0092】
ここで本実施形態では、項目ごとに1又は複数の参照事項を登録したデータセットを、複数用意する。具体的には、全てのユーザが初期時点で利用可能な標準参照事項からなる標準データセットと、ユーザの設定又は継続使用によりカスタマイズされたユーザ参照事項からなるユーザデータセットと、がデータベースDBに登録される。
【0093】
ユーザ参照事項は、標準参照事項のデータセットをユーザが編集したり、データ追加したりすることで作成される。例えばユーザは、過去の取決めに関する過去文書において付与された過去文書コメントを、ユーザ参照事項として標準データセットに追加して、ユーザデータセットを作成することができる。図4における参照文章は、このような過去文書コメントを登録した場合のユーザ参照事項の一例である。過去文書コメントは、契約IDにより契約背景情報に紐づけられる。またこの場合、当該過去文書において過去文書コメントに対応する項目が特定され、過去文書コメントは当該項目に対応付けてユーザ参照事項として登録される。
【0094】
なお、本実施形態ではこのようにデータベースDBが参照事項を含む各種の情報を事前に記憶する構成を想定するが、必ずしもこれらの情報がコメント生成装置1からアクセス可能な媒体に記憶されている必要はない。例えば、参照事項を指摘事項とともにユーザから受け付けることで後述の取得部11が取得してもよいし、事前に生成装置3が参照事項を記憶させておき、コメント案の生成に用いる参照事項が生成装置3において特定されてもよい。例えば、生成装置3に参照事項を学習させてもよいし、参照事項を入力して参照事項をコメント案の生成の際の参照対象とするように指定しておいてもよい。
【0095】
また本実施形態では、データベースDBは、一部の項目に対応付けて、更に付加事項を記憶する。付加事項は、生成部13が命令の生成に用いる、項目ごとの付加的な情報である。生成装置3において利用される文章生成モデルがWeb上の情報を学習したものである場合、改正前の古い法律に基づく情報や、誤った情報を学習している場合がある。この場合、誤った内容や不要な内容を含むコメント案が生成されてしまう可能性がある。これに対し、項目に応じて事前に付加事項として除外事項や補足事項を登録しておき、これに基づいてコメント案を生成することにより、上述した問題を解消することができる。
【0096】
したがって本実施形態では、特にこのような問題が生じやすい項目に対応付けて、付加事項が登録される。付加事項は、参照事項と異なり、全ての項目について登録される必要はない。付加事項は、ユーザが適宜追加登録や編集、削除を行うことができるように構成することが好ましい。
【0097】
データベースDBは、この他更に、ユーザ参照事項に対応付けて、過去文書における文書背景情報や契約背景情報を記憶していてもよい。文書背景情報及び契約背景情報は、いずれも本発明における「取決めに関する背景情報」に含まれる。文書背景情報は、取決めにおける識別、ステータスや担当といった文書の背景に関する情報であり、例えば、文書IDと、各文書が規定する契約(取決め)の調整における段階を示すステータスタグと、文書の作成日時と、文書をデータベースDBに入力した入力者と、当該文書を担当した法務担当者と、を示す情報を含む。また文書背景情報に紐づけて、文書の内容を示すデータ本体も記憶していてもよい。
【0098】
文書背景情報は、各文書が規定する契約(取決め)に関する契約背景情報を特定する契約IDにより、契約背景情報と紐づいている。法務担当者の情報については、文書の登録時にユーザの選択により入力されてもよいし、指摘事項(修正履歴やコメント)の作成者のID等から特定されてもよい。
【0099】
契約背景情報は、取決めにおける種別や関係性といった契約の背景に関する情報であり、例えば、契約類型と、契約者(契約の相手)と、自社の立場と、契約対象と、の情報を含む。契約類型は、本発明における「取決めの種類」の一例である。取決めの種類としては、他に非典型契約、規約又は規則の種類等が挙げられる。また自社の立場とは、契約上の立場を指し、例えば秘密保持契約における情報の開示者又は受領者等の情報である。契約対象とは、「取決めの対象」の一例であり、各契約(取決め)において対象となる、商品やサービス、あるいは事業等のことを指す。例えば売買契約における対象商品等が、契約対象に該当する。
【0100】
ここで上述の通り、ひとつの契約を締結するまでの間において、修正を繰り返して複数の文書が作成されることが多い。本実施形態では、同一の契約を締結する過程で作成された複数の文書に係る文書背景情報は、データベースDBにおいてそれぞれ同一の契約背景情報に紐づけられる。これにより、本実施形態では同一の取決めに係る文書を特定することができる。
【0101】
なおデータの構造は任意に変更することができる。例えば、文書背景情報及び契約背景情報の他、更に互いに関連のある契約書のグループを管理するための契約書ファミリ情報を定義してもよい。具体的には、文書背景情報が契約書ファミリ情報を特定する契約書ファミリIDを含み、同一の契約を締結する過程で作成された複数の文書に係る文書背景情報は契約書ファミリIDによって管理されてもよい。この場合、契約書ファミリ情報が契約背景情報を特定する契約IDを含み、文書背景情報は契約IDを含まない構成としてもよい。
【0102】
次に、コメント生成装置1が備える各部の処理概要について説明する。
取得部11は、取決めに関する文書のドラフトにおける前記取決めの相手方の指摘を示す指摘事項を取得する。本実施形態では、ドラフトを表現した文書ファイルをユーザ端末2から受信し、当該文書ファイルにおいて記載されたコメントを、指摘事項として取得部11が取得する。具体的には、文書ファイルにおいて本文中に記載されたメッセージや、本文とは別に付加されたコメント、変更履歴の記録等を、指摘事項として取得することができる。なお、変更履歴とは、変更内容を含む情報であり、変更前の文章と変更後の文章を含む情報であってもよいし、変更された箇所の内容を含む情報であってもよい。
【0103】
またこの他、ドラフトを表現した文書ファイルとは別に、指摘事項を記載したファイルを取得してもよい。別のファイルにより指摘事項を取得する場合の例としては、例えば、指摘箇所の本文の記載内容、変更内容、及び変更に関するコメントを、表形式で表現したファイルを取得することが想定される。この場合、変更内容及びコメントが、指摘事項して取得される。
【0104】
また本実施形態では、指摘事項に加え、各指摘事項に関係する過去指摘、ドラフトの内容、指摘事項に対応する参照事項、を取得部11が取得する。更に取得部11は、文書の背景を示す文書背景情報及び文書が規定する契約の背景を示す契約背景情報(取決め背景情報)を、対象の文書について取得してもよい。ドラフトについては、指摘事項に関連する部分の記載内容のみでもよいが、全文を取得することが好ましい。また参照事項については、データベースDBに登録された複数の参照事項の中から特定部12によって特定された参照事項を、取得部11が取得する。
【0105】
特定部12は、指摘事項に対応する項目を特定して、当該項目に対応する参照事項をデータベースDBに登録された参照事項の中から特定する。特定部12は、項目に対応する参照事項が複数登録されている場合には、文書背景情報及び契約背景情報を含む背景情報に基づいて、コメント案の生成に用いる参照事項を特定する。なお、参照事項を事前に生成装置3に学習させておき、特定部12に相当する構成を生成装置3が備えていてもよい。
【0106】
生成部13は、取得部11が取得した指摘事項と、コメントを作成するために参照可能な複数の参照事項の中から特定される、指摘事項に対応する参照事項と、に基づいて、当該指摘事項に関するコメント案を生成する命令を、生成装置3に出力する。本実施形態の生成部13は、指摘事項と、特定部12により特定された参照事項と、に基づいて指摘事項に対する回答を示すコメント案を生成する旨の命令文を生成する。
【0107】
本実施形態では、指摘事項及び参照事項を含む文章を、命令として生成部13が生成する。なお、データベースDBにおいて、指摘事項に対応する項目に対応付けて付加事項が登録されている場合には、更に付加事項に基づいて命令が生成される。背景情報を更に用いて命令が生成されてもよい。具体的には、指摘事項と、参照事項と、付加事項と、背景情報と、を含む文章が、命令として生成される。生成部13は、このように生成された命令を、生成装置3に送信する。
【0108】
出力部14は、生成部13により出力された命令に応じて生成装置3により出力された、コメント案に関する情報を、ユーザ端末2に送信する。具体的には、コメント案に基づく情報を表示処理して、処理結果をユーザ端末2に送信することにより、ユーザ端末2にコメント案を表示させる。また出力部14は、この他にも各種の情報を表示処理して処理結果を送信し、ユーザ端末2において各種の画面を表示させる。
【0109】
次に、生成装置3について説明する。
生成装置3は、文章生成モデルを提供する装置であり、コメント生成装置1からの命令を受け取って文章生成モデルに入力し、文章生成モデルの出力としてコメント案をコメント生成装置1に送信する。
【0110】
文章生成モデルとは、文章を出力可能な任意のモデルを指す。文章生成モデルとしては、機械学習により生成されたモデルを代表的に利用することができる。本実施形態では、文章を入力することにより、入力された文章に対する回答として文章を生成する、会話型の文章生成モデルを利用することを想定して説明する。
【0111】
より具体的には、文章生成モデルとは、自然言語処理向けの機械学習モデルであり、入力された情報に基づき文章を生成する機能を有するモデルである。例えば、文章生成モデルはself-attentionメカニズムを有するTransformerモデルに基づく機械学習モデルである。Transformerモデルは、例えばGPT(Generative Pre-trained Transformer)モデルである。文章生成モデルは大規模なデータセットにより学習を実行することにより、一般的な自然言語生成タスクだけでなく、専門性の高い文章生成タスクが可能となる。
【0112】
例えば、文章生成モデルは、OpenAIが開発したGPT-3またはGPT-4アルゴリズムを用いて大規模なデータセットにより学習したモデル(例えば、大規模なデータセットによる学習と報酬予測モデルを用いた強化学習を組み合わせて生成されたChatGPTモデル)が適用されうる。また、本実施形態ではモデルへの入力がテキスト情報の例を説明するが、画像情報や音声情報の入力であってもよい。
【0113】
<4.処理手順>
次に、本実施形態においてコメント案を生成する際の処理手順について、図5を参照して詳細に説明する。図5は、コメント案の生成に係る流れを示すシーケンス図である。
まずステップS501においては、ユーザ端末2が、相手方による指摘がなされた(指摘事項を含む)、ドラフトを表現した文書ファイルをコメント生成装置1に送信する。
【0114】
コメント生成装置1においては、ステップS502で取得部11が文書ファイルを受信して、文書ファイルから指摘事項を認識する。具体的には、文書ファイルが文章作成ソフトウェアによる形式(例えば、Microsoft Word(登録商標)による形式やクラウド上で実行される文章作成ソフトによる形式)においては、本文と異なるデータ形式でコメントが挿入されている場合や変更履歴が記録されている場合には、当該コメント又は変更履歴を指摘事項として取得する。例えば、各コメントまたは変更履歴と、コメントまたは変更を行ったIDと、コメントまたは変更が行われた日時とを取得し、IDと日時に基づいて相手方の最新のコメントまたは変更履歴を指摘事項として取得する。
【0115】
また、文書ファイルが表作成ソフトウェアによる形式(例えば、Microsoft Excel(登録商標)による形式やクラウド上で実行される表作成ソフトによる形式)においては、表形式にて列ごとに自社または相手方が変更内容(修正案)やコメントを記入していく場合には、変更前後の内容やコメントが記載された列の内容を指摘事項として取得する。例えば、表の所定の列の列タイトルに基づいて相手方の最新のコメントまたは変更履歴を判定し、判定された列に記載の内容を指摘事項として取得する。
【0116】
また、本文中に直接コメントが記載されている場合には、全文を生成装置3に送信して、その中からコメントを抽出させてもよい。例えば、本文とコメントは文体が異なる場合が多く、また、カッコ書きや記号などで囲われていることも多いため、本文とは異なる文体や書式、記載傾向で記載された箇所について、該当する記載があった項目と、記載内容とを抽出する命令と、本文を含む情報とを生成装置3に送信し、生成装置3が出力した結果を指摘事項として取得する。
【0117】
また取得部11は、指摘事項とともに本文中の指摘箇所を併せて特定する。具体的には、例えば文書ファイルにおいて、指摘箇所と対応付けたコメントが付加されている場合には、当該指摘箇所を特定する。そして取得部11は、指摘箇所の示す記載内容(本文の一部の記載内容)についても取得する。またこの他、背景情報についても取得部11が取得する。例えば、取得部11は、コメントまたは変更履歴が付与された項目を指摘箇所として取得する。また、例えば取得部11は、コメントまたは変更履歴が付与された項目の記載内容(本文の一部)についても取得する。
【0118】
次にステップS503においては、出力部14が、ステップS502における認識結果を表示処理して処理結果をユーザ端末2に送信する。図6は、ユーザ端末2における認識結果の表示例を示す図である。
【0119】
指摘事項表示画面W6は、画面上部に文書の概要及び、認識された指摘事項の数を表示する。画面左側に文書ファイルにより特定されるドラフトの内容を表示する。また「読み取り内容編集」のボタンが配置され、文書の内容に誤りがある場合にはこのボタンを選択することにより内容を編集することができる。
【0120】
画面右側には、指摘事項の認識結果が表示される。指摘事項ごとに、指摘事項に対応する条項の番号とともに、指摘事項表示部W61が表示され、指摘事項の内容、日付及びコメント作成方針の選択ボタンW62が表示される。
【0121】
また各指摘事項について、指摘マークが付され、通し番号が表示される。同様の指摘マークは画面左側の文書における当該指摘事項の対応部分(指摘箇所)にも通し番号とともに表示され、対象文書中の指摘事項に対応する位置をユーザが認識できるように表示されるとともに、対象文書中の対象の部分がハイライト等で強調して表示される。
【0122】
図6の「第6条」の指摘事項表示部W61のように、過去指摘に対する回答である指摘事項については、過去指摘についても日付とともにその内容及び指摘を行った当事者が表示される。
【0123】
ユーザは、各指摘事項について、選択ボタンW62を選択することにより、コメント案の生成を指示することができる。そして、コメント作成ボタンW63をユーザが選択することにより、図5におけるステップS505のコメント生成要求が送信される。
【0124】
ここで、ユーザは全ての指摘事項について選択ボタンW62を選択する必要はなく、一部の指摘事項についてのみ選択が行われた場合には、選択ボタンW62によりコメント作成方針が選択された1又は複数の指摘事項について、コメント生成要求が送信される。即ちユーザは、選択ボタンW62により、ドラフトに付加された指摘事項のうち、コメント案の生成対象とするものの指定を行うことができる。ここで選択ボタンW62によるコメント作成方針の選択は、対象の指摘事項を受け入れるか否か、及び拒否する強さの選択に相当する。
【0125】
ここで、一部の指摘事項に関するコメント作成要求を行う場合、コメント作成要求には、当該指摘事項に関する事項のみが含まれる。これにより、ドラフト全体における全ての指摘事項についてコメント案を一括作成する場合よりも、生成部13により生成される命令が短くなる。更に、ユーザが個別に必要な部分を選択してコメント作成要求を行うことにより、処理時間が短縮される。
これらの作用により、ユーザ体験を向上する効果が期待できるため、複数の指摘事項のうち一部、特に、ユーザが選択した指摘事項に対応する部分について、コメント案の生成を行うことがより好ましい。
【0126】
ステップS506では、特定部12が、コメント案の生成対象となる各指摘事項に対応する参照事項を特定する。参照事項の特定処理については、図7を用いて説明する。まずステップS701では、ステップS501において取得部11がドラフトとともに取得した背景情報を特定部12が取得する。
【0127】
そしてステップS702~ステップS704で、特定部12が参照事項を特定する。
本実施形態では、まずステップS702で、特定部12が、指摘事項の指摘箇所に対応する項目を特定する。例えば、指摘箇所が定義条項の記載箇所であった場合には、定義条項に関する項目が、指摘事項に対応する項目として特定される。
【0128】
次にステップS703において、特定部12は、データベースDBにおいて当該項目に対応付けて登録された参照文章(参照事項)を特定する。このとき、特定部12は、事前に登録された、標準データセット又はユーザデータセットのうち何れをコメント案の生成に使用するかを示す設定を参照する。そして、データベースDBに登録された参照事項のデータセットのうち、設定に応じたデータセットから、参照文章の特定を行う。
【0129】
項目に対応付けて登録された参照文章が複数存在する場合には、ステップS703において、特定部12は、ステップS501において取得部11が取得した背景情報に基づいて、コメント案の生成に用いる参照文章を特定する。
【0130】
具体的には、例えば、入力された背景情報を、データベースDBに登録された各参照文章に対応する背景情報と比較し、一致する情報の多い参照文章を、コメント案の生成に用いる参照文章として特定すればよい。
【0131】
また、データベースDBにおいて、参照文章ごとにコメント作成方針を登録しておき、ユーザが選択したコメント作成方針に基づいて参照文章を特定してもよい。例えば、項目ごとに、各コメント作成方針に対応した参照文章を登録しておき、ユーザが選択したコメント作成方針に対応するものを、コメント案の生成に用いる参照事項として特定してもよい。
【0132】
図5に戻り、上記のようにしてステップS506における参照事項の特定が完了すると、ステップS507において、生成部13が生成装置3に対する命令を生成する。生成部13は、特定された参照文章及び指摘事項に基づいて、指摘事項に対する回答を示すコメント案を文章生成モデルに生成させるためのコメント命令を生成する。
【0133】
本実施形態の文章生成モデルは、自然言語による文章を入力として、回答となる文章を生成する会話型のモデルであるため、生成命令は自然言語による文章として生成される。より具体的には、予め用意した指示文、指摘事項及び参照文章を組み合わせた文章を生成することにより、生成部13がコメント命令を生成することができる。
【0134】
指示文としては、例えば「以下の指摘に対して、次の参照文章をもとに強く拒否する旨の返信を作成してください。」、「以下の指摘に対して、次の参照文章をもとに弱く拒否する旨の返信を作成してください。」、「以下の指摘に対して、承諾する旨の返信を作成してください。」等、ユーザが選択したコメント作成方針ごとの文を予めデータベースDBに格納しておくことができる。
【0135】
ここで、データベースDBにおいて指摘事項に対応する項目に対応付けられた付加事項が登録されている場合には、付加事項についてもコメント命令の文章の中に含めることが好ましい。例えば、改正民法により「瑕疵」という文言が使用されなくなったことを適切にするために、売買契約において契約不適合に関する条文について、「瑕疵」という単語については「契約不適合」に置き換えるというルールを付加事項として用いることが想定される。文章生成モデルは学習データが古かったり誤っていたりすると、誤った文章(例えば、使用すべきではない単語や冗長な文章を含む文章の生成等)を生成することがある。例えば、法改正前の契約書にて学習を行っていた場合、法改正により条文の種類によっては使用されなくなった単語(例えば、瑕疵等)を含む文章を生成してしまうことがある。このような誤った文章が生成される傾向は項目(論点)ごとに異なるため、項目ごとに誤った文章が発生しないように調整することが好ましい。そこで、予め登録された項目ごとに対応する、誤った文章が生成されないように調整するルールである付加事項をコメント命令の文章の中に含めることで、より適切な文章の生成が可能となる。
【0136】
またこの他に、背景情報や、指摘事項に係るドラフト本文中の指摘箇所の記載内容についても、コメント命令の文章の中に含めることが好ましい。
【0137】
なお変形例として、生成装置3の側で参照事項の特定処理を行う場合には、指摘事項に基づいて複数の参照事項の中から、コメント案の生成に用いる参照事項を特定する旨を命令する文章が、コメント命令の中に更に含まれる。
【0138】
生成命令が生成されると、ステップS508に進み、生成部13がコメント命令を生成装置3に送信する。生成装置3は、コメント命令を受け取ると、当該コメント命令を文章生成モデルに入力する。これにより文章生成モデルがコメント案を出力する(ステップS509)。
【0139】
生成装置3は、文章生成モデルが出力したコメント案をステップS510でコメント生成装置1に送信する。そしてステップS511で出力部14が、文章生成モデルにより出力されたコメント案に基づく情報をユーザ端末2に送信する。以上の処理により、ユーザは、ドラフトを表現した文書ファイルの入力により、コメント案を取得することができる。
【0140】
図8は、ユーザ端末2において出力されるコメント案表示画面W8の表示例である。指摘事項表示画面W6と同様に、画面上部に文書の概要及び、認識された指摘事項の数を表示する。画面左側に文書ファイルにより特定されるドラフトの内容を表示する。また「読み取り内容編集」のボタンが配置され、文書の内容に誤りがある場合にはこのボタンを選択することにより内容を編集することができる。
【0141】
画面右側には、各指摘事項に対して生成されたコメント案が表示される。指摘事項ごとに、指摘事項に対応する条項の番号とともに、指摘事項の内容、日付及び、コメント案表示部W81が表示される。コメント案表示部W81においては、生成されたコメント案とともにコピーボタンが表示され、ユーザはコピーボタンを選択することによりそのテキストをコピーできる。また本発明のコメント生成プログラムが、文書編集ソフトウェアにおいてアドオン(アドイン、プラグイン)されるプログラムとして提供される場合には、コピーボタンの代わりにコメント追加ボタンを配置してもよい。この場合、ユーザがコメント追加ボタンを操作すると、文書編集ソフトウェア上で、直接コメント案によるコメントの追加(返信)が行われる。
【0142】
また指摘事項表示画面W6と同様に、各指摘事項について指摘マークが付され、通し番号が表示される。同様の指摘マークは画面左側の文書における当該指摘事項の対応部分(指摘箇所)にも通し番号とともに表示され、対象文書中の指摘事項に対応する位置をユーザが認識できるように表示されるとともに、対象文書中の対象の部分がハイライト等で強調して表示される。
【0143】
以上のように、実施形態1に係るコメント生成システムによれば、相手方によりなされた指摘事項に対応した回答を示すコメント案を生成することができる。これにより、契約書等のやり取りに係るコメントの作成業務の負担を大幅に削減することができる。
【0144】
また更に、コメント案だけでなく、指摘箇所に対応する修正案についても生成させてもよい。具体的には、生成部13が、指摘事項、参照事項、ドラフトにおける指摘箇所の記載内容、背景情報等に基づいて、当該指摘事項に関する修正案を生成する命令を、生成装置3に出力してもよい。具体的には、指摘事項、参照事項、ドラフトにおける指摘箇所の記載内容及び背景情報に基づく命令文を、生成部13が生成し、これを生成装置3に送信する。これにより、相手の指摘に対応した修正及びそれに付随するコメント案を、一括して生成させることができる。
【0145】
また、さらに指摘事項だけでなく、自社の修正案もふまえたコメント案を生成させてもよい。具体的には、生成部13が、指摘事項、参照事項、自社の修正案等に基づいて、当該指摘事項と自社修正案に関するコメントを生成する命令を、生成装置3に出力してもよい。自社の修正案は、生成装置3が生成した修正案であってもよいし、ユーザが入力した修正案であってもよい。これにより、相手の指摘事項だけでなく、自社の修正案にも対応するコメント(例えば、修正の意図等)が可能となる。
【0146】
なお、自社の修正案に基づいて、指摘事項に対応する参照事項を特定させてもよい。例えば、修正の種類をユーザに選択させる構成とし、修正の種類に紐づく参照事項を特定する構成としてもよい。例えば、特定部12は、ユーザが選択した自社の修正案の種類を判定し、選択された修正の種類が誤記訂正であった場合は、誤記訂正に紐づく参照事項として「こちらは誤記でしたので修正させて頂きます」という参照文章を参照事項として特定する。このとき、相手方の指摘コメントが「損壊賠償とはどういう意味ですか」、自社の修正案が「損害賠償」であった場合に、「損壊賠償は誤記でしたので、損害賠償と修正させて頂きます」といった、自社の修正案と相手の指摘事項をふまえたコメントの生成が行われることが期待される。自社の修正案に基づいて参照事項を特定する方法はユーザ選択に限られず、自社の修正案の内容に対応する参照事項を特定可能であればよい。例えば、修正前の文章と自社による修正後の文章を文章生成モデルに入力し、予め定めた複数の参照事項から参照する参照事項を特定させてもよい。
【0147】
(実施形態2)
次に、実施形態2について説明する。実施形態2においても、指摘事項及び参照事項に基づいて指摘事項に関するコメント案を生成する点については実施形態1と同様である。一方、実施形態2のコメント生成装置1は、更に評価部及び修正部を備え、ドラフトに対する評価処理及び修正処理を行い、その内容に応じたコメント案を生成する点において実施形態1と異なる。
【0148】
また実施形態1においては、相手方による指摘がなされたドラフトを対象に、相手方からの指摘を示す指摘事項に対するコメント案を作成する例を示したが、実施形態2においては、相手方による指摘ではなく、自社が行う指摘事項に関するコメント案を作成する例について説明する。例えば相手方が用意した指摘事項を含まない文書の雛形をドラフトとした場合等について、修正及びそれに関する相手方へのコメントを行う形態を想定する。
【0149】
以下においては、実施形態1と異なる部分を中心に説明を行い、実施形態1と共通する部分については説明を省略する。即ち、記載されていない部分については実施形態1と同様である。
【0150】
<1.機能構成>
図9は、本実施形態におけるコメント生成システムの機能構成を示すブロック図である。
コメント生成装置1は、取得部11と、特定部12と、生成部13と、出力部14と、データベースDBと、に加え、評価部15と、修正部16と、を有する。
【0151】
評価部15は、ドラフトに対して評価処理を実行し、ドラフトの一部に対応付けられた指摘事項を含む評価情報を取得する。評価情報は、入力文書に対する評価を行う外部の装置から取得されてもよいが、本実施形態では評価部15がドラフトに対して評価処理を実行することで、評価情報を取得する。
【0152】
評価情報は、1又は複数の指摘事項の各々について、当該指摘事項に対応するドラフト中の条項と、評価コメントと、を含む。評価コメントとは、例えば「協議条項を規定する必要はありませんか。」や「秘密保持義務を負う期間が必要以上に長く設定されていませんか。」等、入力文書の内容について修正の提案や問題点の指摘を行う文である。この他更に、その指摘に関する条項についての解説文や当該条項のひな型、その指摘事項の重要性を示すリスクレベル等の情報が評価コメントに含まれていてよい。指摘事項は法的な評価であり、例えば法的に論点となりうる観点からの評価である。
【0153】
具体的には、取得部11が背景情報とともにドラフトの少なくとも一部を取得し、その情報を評価部15が取得する。そして背景情報に基づいて、ドラフトの評価を行う。評価は、機械学習モデルによる評価やルールベースによる評価等、任意の方法で行われてよい。例えば、ルールベースによる評価が適用される場合は、評価部15は、ドラフトの一部(例えば条項)ごとに予め定められた複数の評価コメントのうち、どの評価コメントを対応づけるかを、当該ドラフトの一部に含まれるキーワードと予め定められたキーワードの基準(ル―ルベースモデル)とに基づいて決定する。
【0154】
また、機械学習による評価が適用される場合は、評価部15は、入力されたドラフトの一部の内容に基づいて予め定められた複数の評価コメントのうちどの評価コメントが対応付けられるべきかを推定した結果である推定結果を出力する機械学習モデルにより、当該ドラフトの一部に対応づける評価コメントを決定する。他、機械学習モデルの一種として文章生成モデルを適用し、評価部15は、ドラフトの一部に対して予め定めた評価ルールのもと評価コメントを生成させる構成としてもよい。背景情報として例えば契約類型及び契約上の立場と、ドラフトにおける各条項のタイトルと、を用いて、各条項の内容及び複数の条項の関係について評価を行うことができる。評価においては、不要な条項(又は背景情報に含まれる相手との関係から、自身が不利になる条項)が含まれていないか、追加すべき条項がないか、条項の内容が適切か、等の観点から評価を行えばよい。
【0155】
本実施形態では、ルールベースで項目ごとに評価処理が行われるため、評価コメント(指摘事項)は項目に対応付けられている。これにより、各指摘事項の項目が特定されている。
【0156】
修正部16は、ドラフト及び評価情報を生成装置3に入力し、ドラフトに対応する修正案を生成装置3に生成させて、当該修正案を取得する。本実施形態では、修正部16が自然言語による修正命令を生成して生成装置3に送信し、生成装置3が、文章生成モデルを利用して修正案を生成する例について説明する。文章生成モデルとしては、コメント生成を行うための文章生成モデルと同様のモデルを用いることができる。
【0157】
修正命令とは、ドラフトの本文及び評価情報を含み、文章生成モデルに対してドラフトの修正案を出力させるための命令を示す情報である。本実施形態では、文章を入力とする会話型の文章生成モデルを利用するため、修正命令として、ドラフト及び評価情報を用いて入力文書情報の修正を命令する、自然言語による文又は文章を生成して送信する。そして修正部16は、文章生成モデルが回答として出力する文又は文章を受け取り、修正案を取得する。
【0158】
また修正案の生成においては、評価情報に代えて又は加えて、関連文書の内容を示す関連文書情報を用いてもよい。関連文書とは、作成対象の文書に関連する文書であって、作成対象の文書の修正の参考とされるものを指す。関連文書は特に、取決めの種類、相手、自社の立場、契約対象等の背景情報において、作成対象の文書と共通する文書であることが好ましい。
【0159】
関連文書情報は、関連文書の中で、特に入力文書情報に対応する部分の内容を示す情報である。例えば入力文書情報が、入力文書のうち、ある規定を定める条項の内容を示す情報である場合、関連文書の中で同様の規定を定める条項の内容を示す情報が、関連文書情報となる。
【0160】
また本実施形態の関連文書情報は、関連文書の作成に際して、その関連文書情報が示す部分に対して行われた修正に関する情報を含む。修正に関する情報は、例えば、その修正前後の記載内容、修正箇所、修正を行ったユーザ、修正に係るコメント、等の情報であってよい。修正箇所は、修正前及び修正後の記載内容の差分に基づいて特定されてもよく、文書中の位置を特定する情報である。
【0161】
ここで本実施形態の修正部16は、評価情報に含まれる指摘事項ごとに修正命令を生成する。その際、データベースDBにおいて、指摘事項に対応する項目に対応付けて付加事項が登録されている場合には、付加事項についても修正命令に含めることが好ましい。これにより、改正前の古い法律に基づく情報や、誤った情報を学習した生成装置3により、誤った内容や不要な内容を含む修正案が生成されてしまうことを防ぐ効果が期待される。
【0162】
また本実施形態の取得部11は、実施形態1において取得した相手方からの指摘を示す指摘事項に代えて、上述の評価情報を構成する評価コメント及び、修正部により行われた修正内容を指摘事項として取得する。またその他、実施形態1において取得した情報と同様の情報を取得する。
【0163】
<2.処理手順>
次に、評価、修正案の生成及びコメント案の生成に係る処理手順について、図10を参照して説明する。図10は、評価、修正案の生成及びコメント案の生成に係る流れを示すシーケンス図である。
【0164】
(1)評価処理
まずステップS1001~ステップS1004において、評価処理が実行される。なおこの処理はドラフトの評価を示す評価情報を取得するための処理である。本実施形態では以下に説明するように、評価部15がドラフトの評価を行うが、外部の装置にドラフトの評価を行わせることで評価情報を取得してもよい。
【0165】
ステップS1001では、ユーザ端末2がコメント生成装置1に対しドラフトとともに評価要求を送信する。評価要求は、ドラフト及び背景情報を含む。本実施形態では契約書のドラフトを記載した文書のファイルがアップロードされる。背景情報は、実施形態1と同様である。
【0166】
コメント生成装置1においては取得部11が評価要求を受信し、ステップS1002において評価部15がドラフト及び背景情報に基づいて評価処理を実行する。ドラフトの評価は、機械学習モデルによる評価やルールベースによる評価等、任意の方法で行われてよい。一例として、本実施形態では背景情報に応じて、ルールベースで論点や条項を評価する方法を用いる。
【0167】
特に本実施形態では、背景情報のうち契約類型及び契約上の立場と、ドラフトにおける各条項のタイトルと、を用いて、各条項の内容及び複数の条項の関係について評価を行う。ここで複数の条項とは、ひとまとまりの規定を定める複数の条項のグループを指す。例えばグループ内で、A条項の内容に応じてB条項の有無又は内容を判断し、更にその結果に基づいてC条項を確認する、等、内容に応じて評価処理が分岐するように規定しておくことで複数の条項の関係についてルールベースで評価することができる。
【0168】
ドラフトの評価においては、不要な条項(又は背景情報における相手との関係から、自身が不利になる条項)が含まれていないか、追加すべき条項がないか、条項の内容が適切か、等の観点から評価が行われる。
【0169】
本実施形態では、上記のルールと紐づけて指摘事項を事前にデータベースDBに登録しておくことで、ドラフトに対する指摘事項を特定する。具体的には、指摘事項ごとに、上述の評価のルールと、指摘の種別(条項の削除、追加、内容修正のうち何れか)と、評価コメントと、リスクレベルと、が予め記憶部に記憶される。
【0170】
評価コメントとは、例えば「協議条項を規定する必要はありませんか。」や「秘密保持義務を負う期間が必要以上に長く設定されていませんか。」等、ドラフトの内容について修正の提案や問題点の指摘を行う文である。この他更に、その指摘に関する条項についての解説文や当該条項のひな型の情報が評価コメントに含まれていてよい。またリスクレベルとは、各指摘事項において想定されるリスクの度合いを示す情報である。リスクレベルは、システム側で固定(変更不可)としてもよいし、ユーザの入力により変更できるようにしてもよい。
【0171】
リスクレベルの設定の例は以下の通りである。契約後に問題になりやすく、会社の重要な権利や義務に関わる争点が関連する指摘事項についてはリスクレベル「A」に設定することができる。例えば、「知的財産の帰属」、「損害賠償の範囲」、「秘密情報の定義」等が含まれる。また、抜けていても問題となる可能性が低い争点が関連する指摘事項についてはリスクレベル「C」に設定することができる。例えば、「秘密情報の例外」、「途中の報告義務」等が含まれる。そして、複数のグループのうち、AとCに該当しない指摘事項をリスクレベル「B」に設定することができる。なお、リスクレベルは争点ごとに設定されてもよいし、条項の文言に基づいて判定されたリスクであってもよい。例えば、リスクレベルは条項の文言に基づいて自社が有利か不利かを判定し、判定に基づいて設定されたリスクレベルであってもよい。
【0172】
以上のように評価部15が評価処理を実行し、ドラフトの評価を示す評価情報を作成して、取得部11が評価情報を取得する(ステップS1003)。評価情報は、上記の処理で特定された1又は複数の指摘事項の各々について、当該指摘事項に対応する項目と、評価コメントと、リスクレベルと、を含む。また外部の装置から評価情報を取得する場合にも、指摘事項ごとに、当該指摘事項に対応する条項と、評価コメントと、リスクレベルと、を含む評価情報が取得される。
【0173】
なお、文章生成モデルを用いてドラフトの評価を行ってもよい。文章生成モデルは、コメント生成に用いる文章生成モデルや修正に用いる文章生成モデルと同様でもよいし、異なっていてもよい。例えば、コメント生成装置1は、取得部11によりドラフトと背景情報を取得して、評価部15により背景情報に基づいて予め記憶された評価ルールを読み出し、ドラフトと、背景情報に応じた評価ルールと、に基づく評価命令を生成して生成装置3に送信し、生成装置3が生成した評価結果(評価情報)を取得する。
【0174】
このとき評価命令は、自然言語による文章として生成される。これにより、文章の表記揺れや表現の違い等による評価への影響が軽減する効果が期待できる。また、複数の評価ルールのうち、背景情報(例えば契約類型)に基づいて読み出された評価ルール(例えば契約類型ごとに設定された評価ルール)を用いることで適切な評価を行うことが期待できる。
【0175】
さらに、文章生成モデルによる評価と、ルールベースの評価を同時に行ってもよい。このとき、文章生成モデルによる評価とルールベースによる評価が異なった場合は、ルールベースの評価を優先する処理を行うことが好ましい。これにより、機械学習による評価の不確かさが生じたとしてもルールベースで最低限の評価を保証することができる。なお、背景情報ごとに対応する複数の評価ルールのうち、評価部15が背景情報に基づいて評価命令に含める評価ルールを判定してもよいし、複数の評価ルールを評価命令に含めるとともに複数のルールから背景情報に基づいて適切なルールを使用する旨を評価命令に含めることで文章生成モデルが使用する評価ルールを判定する構成としてもよい。
【0176】
評価部15がドラフトの評価を終えると、ステップS1004において出力部14は評価情報を表示処理して処理結果をユーザ端末2に送信する。ユーザ端末2が評価情報を受信すると、評価情報が表示処理され処理結果がディスプレイに表示される。
【0177】
図11に、評価情報の表示処理結果としてユーザ端末2において表示される評価画面の表示例を示す。評価画面W11は、画面上部に文書のドラフトの概要及び、評価結果の概要を表示する。画面左側にドラフト情報により特定されるドラフトの内容を表示する。また「読み取り内容編集」のボタンが配置され、ドラフト情報から特定された内容に誤りがある場合にはこのボタンを選択することにより内容を編集することができる。
【0178】
画面右側には、評価情報に基づく評価結果が表示される。指摘事項ごとに、その指摘が条項の削除、追加、内容修正のうち何れであるかを示す種別と、解説と、が評価コメントとして表示される。
【0179】
また各指摘事項について、指摘の種別ごとに異なる形状の指摘マークが付され、種別ごとの通し番号が表示される。同様の指摘マークは画面左側のドラフトにおける当該指摘事項の対応部分にも通し番号とともに表示され、ドラフト中の指摘事項に対応する位置をユーザが認識できるように表示されるとともに、ドラフト中の対象の部分がハイライト等で強調して表示される。図11の例では、丸印が条項の内容修正、三角印が不足する条項に関する指摘事項を示す。
【0180】
また本実施形態では、指摘事項ごとに、修正入力部W111が表示される。本実施形態では、修正処理において評価情報及び関連契約書の両方を用いるため、修正入力部W111において関連契約書が表示される。そして、修正ボタンW112が配置され、表示されている関連契約書を用いて修正を行うことができる。なお複数の関連契約書の候補を表示して、修正に用いる関連契約書をユーザが選択する形態としてもよい。
【0181】
コメント指示部W113は、修正ボタンW112が選択された場合に操作可能に表示され、修正に関するコメント案の生成を希望する旨の入力をユーザから受け付ける。そして、ステップS1006の修正要求が送信される。
【0182】
ここで、ユーザは全ての指摘事項について修正ボタンW112を選択する必要はなく、ユーザが修正または修正に関するコメント案の生成を希望する指摘事項についてのみ修正ボタンW112を選択する構成とすることが好ましい。これにより、ユーザが修正または修正に関するコメント案の生成を希望する指摘事項についてのみ修正または修正に関するコメント案の生成が可能となる。例えば、ユーザが選択した修正ボタンW112により修正の指示が行われた1又は複数の指摘事項について、修正要求が送信される。
【0183】
また修正ボタンW112が選択された指摘事項のうち、コメント指示部W113において「あり」が選択された場合、修正要求と併せて、当該指摘事項の修正に関するコメント生成要求も送信される。即ちユーザは、修正ボタンW112及びコメント指示部W113により、評価処理の結果なされた指摘事項のうち、修正の対象とするもの及びコメント案の生成対象とするものの指定を行うことができる。なおコメント指示部W113において、実施形態1と同様に、強く拒否又は弱く拒否等の、コメント作成方針を更に受け付けてもよい。また、修正ボタンW112とコメント指示部W113を統合し、統合された修正ボタンをユーザが押すことで、修正案の生成とコメントの生成を同時に指示するように構成してもよい。
【0184】
(2)修正処理
次に、ドラフトの修正処理について説明する。ステップS1005~ステップS1010においては、修正処理が実行される。上述のように修正要求を受け付けると、ステップS1006において取得部11が、ドラフト、評価情報及び関連契約書を取得する。また本実施形態の取得部11は、更に上述の背景情報を取得する。本実施形態では、ステップS1001で受信したドラフト及び背景情報と、ステップS1002で評価部15が生成した評価情報とを、データベースDBに格納しておき、取得部11がそれらに基づいてドラフト、背景情報、評価情報、及び関連契約書を取得する。評価を外部の装置により実施する場合は、取得部11が、ユーザ端末2や当該外部の装置から、評価情報を取得すればよい。
【0185】
なおドラフトは文書全体の内容を含んでいなくてもよく、修正の対象である指摘事項に関係する部分のみがドラフトに含まれるようにしてもよい。ただし、例えば、ひとまとまりの規定を定める複数の条項のグループが存在し、そのグループに含まれる条項についての指摘事項の修正を行う場合には、指摘事項に対応する単一の条項のみではなく、当該グループの複数の条項全体の内容を含むことが好ましい。
【0186】
次にステップS1007において、取得部11により取得されたドラフト、背景情報、評価情報及び関連契約書に基づいて、修正部16が、文章生成モデルにドラフトの修正案を生成させるための修正命令を生成する。本実施形態の文章生成モデルは、自然言語による文章を入力として、回答となる文章を生成する会話型のモデルであるため、修正命令は自然言語による文章として生成される。
【0187】
本実施形態の修正部16は、修正命令として、修正に関する指示を指摘事項に対応する条項ごとに記載した文章を生成する。特に、例えば一つの条項又はひとまとまりの規定を定める複数の条項のグループの中に複数の指摘事項がある場合、指摘事項単位で修正命令を生成すると、矛盾する複数の修正案が生成されてしまう可能性がある。したがって本実施形態の修正部16は、複数の指摘事項が存在する条項又は条項のグループに関する修正命令として、当該複数の指摘事項に対応する条項又は条項のグループごとに、修正命令の文章を生成する。
【0188】
以下修正命令の生成について具体的に説明する。まず背景情報について、背景情報が選択により入力される場合、まず選択された背景情報に対応する言葉を特定する。例えば、背景情報の選択肢ごとに、それぞれ対応する言葉を予め設定しておくことにより、選択された背景情報に対応する言葉を特定することができる。
【0189】
そして、その言葉と、ドラフトと、別途事前にコメント生成装置1の記憶部に登録された指示文と、に基づいて、修正部16が修正命令を生成する。なお、背景情報が自由記述のテキストで入力される場合には、入力された背景情報及び事前に用意された指示文を用いて修正命令を生成すればよい。
【0190】
ここで、背景情報に対応する言葉として、背景情報に応じた文書作成のルールを記載した文字列を格納しておくことが好ましい。例えば法律文書においては、規定の一文の中に例外を記載する場合と、一文の後に但し書きの文を別途記載する場合とで、法的な意味が異なることがある。背景情報に応じてこのような記載方法のルールを指定する言葉を組み合わせることにより、適切な法律文書を作成させることができる。なお、背景情報ごとに対応する複数のルールのうち、コメント生成装置1が背景情報に基づいて修正命令に含めるルールを判定してもよいし、複数のルールを修正命令に含めるとともに複数のルールから背景情報に基づいて適切なルールを使用する旨を修正命令に含めることで文章生成モデルが使用するルールを判定する構成としてもよい。
【0191】
指示文としては、例えば「上記のドラフトに対して、レビューの結果以下の指摘がなされました。指摘を踏まえ、以下の条件に基づいて、修正案を作成してください。」、又は「上記のドラフトに対して、レビューの結果以下の指摘がなされました。指摘を踏まえ、以下のルールに基づいて、適切な契約書の文章を作成してください。」等の文を予めデータベースDBに格納しておくことができる。そして、ドラフトの内容と、指示文と、背景情報に基づく言葉と、を組み合わせた文章を、文章生成モデルに対してドラフトの修正を指示するための修正命令として生成すればよい。
【0192】
ここで、データベースDBにおいて指摘事項に対応する項目に対応付けられた付加事項が登録されている場合には、付加事項についてもコメント命令の文章の中に含めることが好ましい。あるいは、上記の指示文を、項目ごとに異ならせることにより、項目ごとの除外事項や補足事項等を、指示文に含めてもよい。これにより、改正前の古い法律に基づく情報や、誤った情報を学習した生成装置3により、誤った内容や不要な内容を含む修正案が生成されてしまうことを防ぐ効果が期待される。
【0193】
修正命令が生成されると、ステップS1008に進み、生成された修正命令を修正部16が生成装置3に送信する。なお上記のように生成された指摘事項ごと、条項ごと又は条項のグループごとの修正命令は、それぞれ複数回に分けて送信されてもよい。例えば、まず修正命令のうち指示文の部分を送信し、続けて指摘事項や要望に応じた言葉を送信するように構成することもできる。また、修正命令の文字数に応じて、一度に送信するか複数回に分けて送信するかを決定する構成としてもよい。
【0194】
生成装置3は、修正命令を受け取ると、当該修正命令を文章生成モデルに入力する。これにより文章生成モデルがドラフトの修正案を出力し(ステップS1009)、ステップS1010において修正案がコメント生成装置1に送信される。なお修正部16が、ステップS1008においてひとつの指摘事項に対して複数の修正案を提案するよう命令する修正命令を生成し、ステップS1009においては生成装置3が一部又は全部の指摘事項に対して複数の修正案を取得してもよい。
【0195】
(3)コメント生成処理
次に、コメント生成処理について説明する。ステップS1011~ステップS1016においては、コメントの生成処理が行われる。
ステップS1011~ステップS1016における処理の流れについては、実施形態1におけるステップS506~ステップS511と概ね同様である。
【0196】
ただしステップS1012における命令の生成においては、用いる情報及び命令の趣旨が実施形態1と異なる。具体的には、本実施形態の生成部13は、指摘事項として、上述の評価情報(評価コメント)及び、修正部16がステップS1010で生成装置3から受信した修正案又はそれに基づく修正内容を用いる。そして生成部13は、これらの情報に基づいて、指摘事項の趣旨、意図又は理由を確認者に伝えるためのコメント案を生成する旨の命令を生成する。
【0197】
そして、ステップS1013~ステップS1016においては、同様にコメント案の生成及び情報の出力が行われ、ステップS1016ではユーザに対してコメント案を含む画面が表示される。
【0198】
以上のように、実施形態2に係るコメント生成システムによれば、評価処理の結果得られた指摘事項に対応して修正を行うとともに、当該修正の趣旨、意図又は理由を示すコメント案を生成することができる。これにより、例えば相手方から受け取ったドラフトの修正を行った場合の、相手方に対するコメントの作成業務の負担を大幅に削減することができる。
【符号の説明】
【0199】
0 :コメント生成システム
1 :コメント生成装置
11 :取得部
12 :特定部
13 :生成部
14 :出力部
15 :評価部
16 :修正部
2 :ユーザ端末
3 :生成装置
90 :端末装置
901 :制御部
902 :記憶部
903 :通信部
904 :入力部
905 :出力部
10 :情報処理装置
101 :制御部
102 :記憶部
103 :通信部
W11 :評価画面
W111 :修正入力部
W112 :修正ボタン
W113 :コメント指示部
W6 :指摘事項表示画面
W61 :指摘事項表示部
W62 :選択ボタン
W63 :コメント作成ボタン
W8 :コメント案表示画面
W81 :コメント案表示部
【要約】
【課題】指摘事項に対応した適切なコメント案を生成すること。
【解決手段】複数の当事者間で交わされる取決めに関する文書の作成を支援するためのプログラムであって、取得部と、生成部と、としてコンピュータを機能させ、取得部は、取決めに関する文書のドラフトにおける取決めの相手方の指摘を示す指摘事項を取得し、生成部は、生成装置に、指摘事項と、コメントを作成するために参照可能な複数の参照事項の中から特定される、指摘事項に対応する参照事項と、に基づいて、当該指摘事項に関するコメント案を生成する命令を出力する、コメント生成プログラム。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11