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特許7709815硬化性組成物、繊維含有樹脂成形体、及び、車両のウインドガラス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-09
(45)【発行日】2025-07-17
(54)【発明の名称】硬化性組成物、繊維含有樹脂成形体、及び、車両のウインドガラス
(51)【国際特許分類】
   C08L 33/06 20060101AFI20250710BHJP
   C08F 220/20 20060101ALI20250710BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20250710BHJP
【FI】
C08L33/06
C08F220/20
C08K7/14
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018247264
(22)【出願日】2018-12-28
(65)【公開番号】P2020105443
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-11-05
【審判番号】
【審判請求日】2023-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000250384
【氏名又は名称】リケンテクノス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】中島 耕平
(72)【発明者】
【氏名】鷲尾 望
(72)【発明者】
【氏名】芦塚 貢一
【合議体】
【審判長】細井 龍史
【審判官】小出 直也
【審判官】岡谷 祐哉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/154428(WO,A1)
【文献】特開2005-163033(JP,A)
【文献】特開2013-28776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 23/20
C08J 5/04
C08K 7/14
C08L 33/06
C08L 220/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維を含む樹脂成形体を形成するための硬化性組成物であって、
5質量%以上90質量%以下の(A)多官能(メタ)アクリレートと、
10質量%以上95質量%以下の(B)単官能(メタ)アクリレート、又は、単官能N-置換(メタ)アクリルアミドと、を含み、
上記成分(A)と上記成分(B)との合計が100質量%であり、
前記繊維と前記硬化性組成物との屈折率差が0.10以下であり、
前記繊維は、無機ガラス繊維であり、
更に、(C)1分子中に2個以上の2級チオール基を有する化合物を、上記成分(A)と上記成分(B)との合計を100質量部として、0.5質量部以上20質量部以下含み、
前記繊維の屈折率は、温度を25℃に変更したこと以外は、JIS K7142:2014のB法に準拠し、波長が589.3nmであるナトリウムD線、及び、1-ブロモナフタレンを接触液とする条件で測定される値であり、
前記硬化性組成物の屈折率は、完全硬化した前記硬化性組成物を測定対象として、温度を25℃に変更したこと以外は、JIS K7142:2014のA法に準拠し、波長が589.3nmであるナトリウムD線、及び、1-ブロモナフタレンを接触液とする条件で測定される値であり、
溶剤を含まない、
硬化性組成物
ここで、前記硬化性組成物の硬化物のガラス転移温度は、160℃以下であり、
前記ガラス転移温度は、JIS K7244-4:1999に準拠し、熱機械的分析装置を使用し、引張正弦波を1Hzに設定し、昇温速度が2℃/分の条件で測定して得られた温度-損失正接tanδ曲線のピークトップの温度である。
【請求項2】
更に、(D)シランカップリング剤を、上記成分(A)と上記成分(B)との合計を100質量部として、0.5質量部以上10質量部以下含む、
請求項1に記載の硬化性組成物
【請求項3】
更に、(E)屈折率が1.5以上2.8以下である高屈折率微粒子を、上記成分(A)と上記成分(B)との合計を100質量部として、10質量部以上200質量部以下含む、
請求項1又は2に記載の硬化性組成物
【請求項4】
前記成分(A)が、(A1)芳香環を有する多官能(メタ)アクリレートを含む
請求項1から3の何れか一項に記載の硬化性組成物
【請求項5】
前記成分(A)が、フルオレン骨格を有する多官能(メタ)アクリレートを含む
請求項1から4の何れか一項に記載の硬化性組成物
【請求項6】
前記成分(B)が、(B1)単官能N-置換(メタ)アクリルアミド化合物を含む
請求項1から5の何れか一項に記載の硬化性組成物
【請求項7】
請求項1から6の何れか一項に記載の硬化性組成物を用いて形成されて前記無機ガラス繊維を含有する
繊維含有樹脂成形体。
【請求項8】
前記無機ガラス繊維が、5質量%以上40質量%以下である
請求項7に記載の繊維含有樹脂成形体。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の繊維含有樹脂成形体を備える車両のウインドガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維を含む樹脂成形体を形成するための硬化性組成物、当該硬化性組成物から成形された繊維含有樹脂成形体、及び、当該繊維含有樹脂成形体を含む物品に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス繊維などの繊維を含む樹脂製品は、繊維を含まない樹脂製品と比べて優れた機械的強度を有し、かつ、ガラス製品と比べて軽量化が可能であるため、例えば、ディスプレイやソーラーパネルなどの数多くの物品への適用が提案されている(例えば、特許文献1~4を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-231280号公報
【文献】特開2011-148882号公報
【文献】特開2015-166145号公報
【文献】特開2018-140616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、樹脂組成物と繊維との屈折率差は、繊維含有樹脂成形体での光の散乱を生じさせて、移動体の窓や車両のサンルーフなどの高い透光性が要求される物品に上述した繊維含有樹脂成形体を適用し難くしてしまう。
本発明の目的は、繊維含有樹脂成形体の透光性を向上可能な樹脂組成物、繊維含有樹脂成形体、及び、物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は鋭意研究した結果、特定の樹脂組成物によって上記課題を解決できることを見出した。すなわち、上記課題を解決するための樹脂組成物は、繊維を含む樹脂成形体を形成するための樹脂組成物であって、5質量%以上90質量%以下の(A)多官能(メタ)アクリレートと、10質量%以上95質量%以下の(B)単官能(メタ)アクリレートと、を含み、成分(A)と成分(B)との合計は、100質量%であり、前記繊維と前記樹脂組成物との屈折率差は、0.10以下であり、溶剤を含まない。
前記繊維は、無機ガラス繊維を含み得る。
成分(A)は、(A1)芳香環を有する多官能(メタ)アクリレートを含み得る。
成分(A)は、フルオレン骨格を有する多官能(メタ)アクリレートを含み得る。
成分(B)は、(B1)N-置換(メタ)アクリルアミド化合物を含み得る。
前記繊維は、繊維含有樹脂成形体において5質量%以上40質量%以下で含み得る。
前記繊維は、無機ガラス繊維を含み得る。
上記課題を解決するための繊維含有樹脂成形体は、上記樹脂組成物を用いて形成されて繊維を含有する。
上記課題を解決するための物品は、上記繊維含有樹脂成形体を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る樹脂組成物は、繊維と樹脂組成物との屈折率差が0.10以下であり、かつ、溶剤を含まない。そのため、樹脂組成物の硬化時における収縮を抑制可能として、繊維含有樹脂成形体の透光性を向上可能とする。本発明に係る好ましい樹脂組成物は、無機ガラス繊維などの高屈折率の繊維に適用可能であるから、繊維含有樹脂成形体の機械的強度をさらに向上可能でもある。本発明に係る繊維含有樹脂成形体、及び、物品は、上記樹脂組成物を用いて形成されるため、透光性を向上可能であって、移動体の窓などの高い透光性が要求される物品に対して好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】成分(A2)の一例における微分分子量分布曲線を示すグラフ。
図2】繊維含有樹脂成形体の製造方法の一例を示すフロー図。
図3】繊維含有樹脂成形体を用いた物品の一例を示す斜視図。
図4】繊維含有樹脂成形体を用いた物品の一例を示す断面図。
図5】繊維含有樹脂成形体の一例を拡大して示す部分平面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書に記載の「樹脂」という用語は、1種類の樹脂を示す他に、2種以上の樹脂を含む樹脂混合物、及び、樹脂と樹脂以外の成分とを含む樹脂組成物を含む。
【0009】
本明細書に記載の「積層」という用語は、一の層と他の層とを順に直接積み重ねることを示す他に、一の層と他の層との間にアンカー層などの別の機能層を1層以上介在させて積み重ねることを含む。
【0010】
本明細書に記載の数値範囲に係る「数値n以上」という用語は、数値n又は数値n超である(nは実数)。例えば、「20%以上」は、20%又は20%超である。本明細書に記載の数値範囲に係る「数値n以下」という用語は、数値n又は数値n未満である。例えば、「20%以下」は、20%又は20%未満である。本明細書に記載の数値範囲に係る「数値n~数値m」という表記は、数値n、数値n超かつ数値m未満、又は数値mを示す(mはnよりも大きい実数)。例えば、「10~90%」は、10%、10%超かつ90%未満、又は90%である。
【0011】
以下、繊維含有樹脂成形体を形成するための樹脂組成物、繊維含有樹脂成形体、及び、物品の一実施形態を図面を参照して説明する。
[1.樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、繊維を含む樹脂成形体を形成するための樹脂組成物である。樹脂組成物は、(A)多官能(メタ)アクリレート、及び、(B)単官能(メタ)アクリレートを含む。本発明の樹脂組成物は、繊維を含む樹脂成形体の形成に好適に用いることができる。本発明の樹脂組成物は、樹脂組成物と繊維との屈折率差が0.10以下である。本発明の樹脂組成物は、溶剤を含まない。
【0012】
繊維の種類は、無機繊維、有機繊維、及び、無機コートされた有機繊維からなる群から選択される少なくとも一種である。無機繊維は、例えば、ガラス繊維、バサルト繊維などの鉱物繊維、及び、アルミナ繊維やシリカ繊維等のセラミック繊維である。有機繊維は、例えば、パラ型アラミド系繊維、メタ型アラミド系繊維、ポリアリレート系繊維、ポリイミド系繊維、ポリエチレン繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール系繊維、ポリパラフェニレンテレフタラミド系繊維、ポリプロピレン繊維、ポリベンズイミダゾール系繊維、セルロース繊維である。繊維含有樹脂成形体が含む繊維は、繊維含有樹脂成形体の透光性を高める観点から、透明な材料から構成される繊維が好ましい。高い透光性を有する繊維は、例えば、無機ガラス繊維である。
【0013】
無機ガラス繊維を構成する材料は、例えば、高い絶縁性を有した無アルカリガラス(Eガラス)、耐酸性に優れた含アルカリガラス(Cガラス)、高い強度と弾性率とを有したガラス(Sガラス、Tガラス等)、耐アルカリ性に優れたガラス(ARガラス)、NEガラス等である。無機ガラス繊維は、1種類のガラス材料から構成されてもよいし、相互に異なるガラス材料からなるガラス繊維の2種類の以上組み合わせから構成されてもよい。
【0014】
無機ガラス繊維の表面は、アクリルシラン系シランカップリング剤等の表面処理剤によってコーティングされることが好ましい。表面処理剤は、無機ガラス繊維と樹脂組成物との界面での接着強度を高めて、応力白化などによる透光性の低下を抑制する。
【0015】
繊維の形状は、例えば、1本の連続した単繊維であるモノフィラメント糸、複数の連続した単繊維からなるマルチフィラメント糸、あるいは、短繊維化された繊維を含む紡績糸等である。繊維の形態は、例えば、ランダムな配向を有して樹脂組成物のなかに繊維が分散した形態、あるいは、不織布、平織りや綾織りなどの織布、網布等のシート状である。
【0016】
繊維の配合比は、繊維含有樹脂成形体の機械的強度を高める観点から、繊維含有樹脂成形体を100質量%として、5質量%以上であることが好ましく、8質量%以上であることがより好ましい。繊維の配合比は、繊維含有樹脂成形体の透光性を高める観点から、繊維含有樹脂成形体を100質量%として、40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることが更に好ましい。
【0017】
本明細書において、繊維の屈折率は、温度を25℃に変更したこと以外は、JIS K7142:2014のB法、すなわちベッケ線法に準拠し、波長が589.3nmであるナトリウムD線、及び、1-ブロモナフタレンとベンジルアルコールとの混合液を浸液とする条件で測定した値である。なお、屈折率が既知である溶媒中に繊維を分散したものを顕微鏡で観察すると、繊維と溶媒との境界面上に輝線であるベッケ線を観察することができる。このとき、鏡筒を上方向に僅かに動かして焦点を僅かにずらすと、ベッケ線は屈折率の高い方へ移動する。反対に、鏡筒を下方向に僅かに動かして焦点を僅かにずらすと、ベッケ線は屈折率が低い方へ移動する。ベッケ線法は、溶媒を変更してこの操作を繰り返すことによって屈折率を求める。
【0018】
本明細書において、樹脂組成物の屈折率は、完全硬化した樹脂組成物を測定対象として、温度を25℃に変更したこと以外は、JIS K7142:2014のA法に準拠し、波長が589.3nmであるナトリウムD線、及び、1-ブロモナフタレンを接触液とする条件で測定した値である。
繊維と樹脂組成物との屈折率差Δnは次式から求められる。
Δn=|nF-nC|
ここでnFは繊維の屈折率、nCは樹脂組成物の屈折率である。
【0019】
本発明の樹脂組成物は、樹脂組成物と繊維との屈折率差が0.10以下、好ましくは0.05以下、より好ましくは0.01以下、更に好ましくは0.005以下である。樹脂組成物と繊維との屈折率差は、透光性の観点から、小さい程好ましい。
【0020】
繊維含有樹脂成形体がフィルム、シート、及び、板である場合、本明細書において、「透光性を有する」とは、繊維含有樹脂成形体の可視光線透過率が70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上であることを意味する。本明細書において、可視光線透過率は、繊維含有樹脂成形体をガラス板に貼り合わせず、繊維含有樹脂成形体そのものを測定したこと以外は、JIS A5759:2016の6.4可視光線透過率試験に準拠して測定した値である。
【0021】
[1-1.成分(A)]
(A)多官能(メタ)アクリレートは、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートである。成分(A)は、熱又は紫外線や電子線等の活性エネルギー線によって重合及び硬化して、樹脂成形体を形成するように作用する。多官能性(メタ)アクリレートは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
多官能(メタ)アクリレートは、例えば、2官能(メタ)アクリレート、3官能以上の(メタ)アクリレート、(A1)芳香環を有する多官能(メタ)アクリレート等である。
【0023】
2官能(メタ)アクリレートは、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の2官能脂肪族(メタ)アクリレート;例えば、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等の2官能脂環式(メタ)アクリレート;例えば、エトキシ化イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート等の2官能複素環(メタ)アクリレートである。
【0024】
3官能以上の(メタ)アクリレートは、例えば、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の3官能以上脂肪族(メタ)アクリレート;エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート等の3官能以上複素環式(メタ)アクリレートである。
【0025】
成分(A1)は、例えば、ビスフェノールA型ジエトキシジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAF型ジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAF型ジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化ビスフェノールAF型ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型エポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型エポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAF型エポキシジ(メタ)アクリレート等の2官能芳香族(メタ)アクリレート;例えば、エトキシ化フルオレン型ジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化フルオレン型ジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化フルオレン型ジ(メタ)アクリレート等のフルオレン骨格を有する2官能(メタ)アクリレート;例えば、フェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート等の3官能芳香族(メタ)アクリレートである。
【0026】
成分(A)として、成分(A1)を含むことは好ましい。成分(A1)を用いる構成であれば、繊維含有樹脂成形体の耐熱性が向上可能である。特に、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどのフルオレン骨格を有する成分(A1)を用いる構成であれば、繊維含有樹脂成形体に含まれる繊維が無機ガラス繊維などの高屈折率の繊維である場合であっても、屈折率差Δnを小さくして、繊維含有樹脂成形体の透光性を得ることができる。
【0027】
成分(A)として、(A2)1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するプレポリマーを含むことは好ましい。成分(A2)を用いる構成であれば、繊維含有樹脂成形体のタックを低減可能である。プレポリマーは、モノマーの重合もしくは縮合反応を途中段階で停止させた中間体であり、硬化剤によって重合や架橋反応を容易に進める。プレポリマーの質量平均分子量Mwは、1000以上である。
【0028】
成分(A2)は、例えば、ポリウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリアクリル(メタ)アクリレート、ポリエポキシ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールポリ(メタ)アクリレート、及び、ポリエーテル(メタ)アクリレートなどのプレポリマー等である。
【0029】
成分(A2)の質量平均分子量Mwは、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、GPCと示すことがある。)により測定した微分分子量分布曲線(以下、GPC曲線と略すことがある。)から求めたポリスチレン換算の値である。成分(A2)の質量平均分子量Mwは、繊維含有樹脂成形体のタックを低減する観点から、1000以上、好ましくは2000以上、より好ましくは2500以上である。一方、本発明の樹脂組成物を、溶剤を含まないにも係わらず、工業的に容易に取り扱えるような粘度が得られやすい観点から、成分(A2)の質量平均分子量Mwは、10000以下、好ましくは7000以下、より好ましくは5000以下である。
【0030】
なお、質量平均分子量Mwを得るためのGPCの測定システムは、高速液体クロマトグラフィーシステム「HLC-8320(商品名)」(東ソー株式会社製:デガッサー、送液ポンプ、オートサンプラー、カラムオーブン及びRI(示差屈折率)検出器を含むシステム)を用いた。GPCカラムとして、Shodex社製のGPCカラム「KF-806L(商品名)」を2本、「KF-802(商品名)」及び「KF-801(商品名)」を各1本の合計4本を、上流側からKF-806L、KF-806L、KF-802、及びKF-801の順に連結して用いた。移動相として、和光純薬工業株式会社製の高速液体クロマトグラフ用テトラヒドロフラン(安定剤不含)を用いた。流速は、1.0ミリリットル/分、カラム温度は40℃、試料濃度は1ミリグラム/ミリリットル、及び、試料注入量は100マイクロリットルであった。各保持容量における溶出量は、測定試料の屈折率の分子量依存性が無いと見なしてRI検出器の検出量から求められた。保持容量からポリスチレン換算分子量への較正曲線は、アジレントテクノロジー(Agilent Technology)株式会社製の標準ポリスチレン「EasiCal PS-1(商品名)」(Plain Aの分子量6375000、573000、117000、31500、3480;Plain Bの分子量2517000、270600、71800、10750、705)を用いて作成された。解析プログラムは、東ソー株式会社製の「TOSOH HLC-8320GPC EcoSEC(商品名)」が用いられた。なお、GPCの理論及び測定については、「サイズ排除クロマトグラフィー 高分子の高速液体クロマトグラフィー、著者:森定雄、初版第1刷1991年12月10日(共立出版株式会社)」、「合成高分子クロマトグラフィー、編者:大谷肇、寶崎達也、初版第1刷2013年7月25日(株式会社オーム社)」を参照することができる。
【0031】
図1は、成分(A2)の一例であるウレタン(メタ)アクリレート「EBECRYL 4100(商品名)」(ダイセルオルネクス社製)について上述したGPC測定によって得た微分分子量分布曲線を示す。
【0032】
図1が示すように、微分分子量分布曲線において、合計3本のシャープなピークが認められ、ピークトップ位置でのポリスチレン換算分子量は、低分子量側から順に620、1800、及び3300であった。また、3本のピークよりも低分子量側に、ブロードなピークが認められ、そのピークトップ位置でのポリスチレン換算分子量は130であった。このことから、ブロードなピークは、未反応/残留モノマーのピークと推定される。また、最も高分子量側の成分のポリスチレン換算分子量は2万程度であると認められた。そして、全体の数平均分子量は1100、質量平均分子量Mwは2800、Z平均分子量Mzは4900であった。
【0033】
成分(A2)のなかの(メタ)アクリロイル基の数は、繊維含有樹脂成形体の耐熱性を高める観点から、好ましくは3個以上、より好ましくは6個以上、さらに好ましくは10個以上である。
【0034】
成分(A)の中の成分(A1)の配合比は、特に制限されない。成分(A)の中の成分(A1)の配合比は、成分(A)の総量を100質量%として、繊維含有樹脂成形体の耐熱性、及び透光性を高める観点から、20質量%以上、好ましくは40質量%以上、より好ましくは60質量%以上である。一方、成分(A)の中の成分(A1)の配合比は、繊維含有樹脂成形体のタックを低減する観点から、90質量%以下、好ましくは80質量%以下である。
【0035】
成分(A)の中の成分(A2)の配合比は、特に制限されない。成分(A)の中の成分(A2)の配合比は、成分(A)の総量を100質量%として、繊維含有樹脂成形体のタックを低減する観点から、10質量%以上、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。一方、成分(A)の中の成分(A2)の配合比は、繊維含有樹脂成形体の透光性を高める観点から、90質量%以下、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。なお、成分(A1)の一部が成分(A2)として機能し得る場合、当該成分(A2)の配合比は、成分(A1)の配合比として扱われる。すなわち、成分(A2)の配合比は、単独でプレポリマーとして機能し得る成分の配合比である。
【0036】
[1-2.成分(B)]
(B)単官能(メタ)アクリレートは、1分子中に1個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートである。単官能(メタ)アクリレートは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
単官能(メタ)アクリレートは、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の単官能脂肪族(メタ)アクリレート;例えば、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の単官能脂環式(メタ)アクリレート;例えば、2-テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、N-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-N-カルバゾール等の単官能複素環式(メタ)アクリレート;(B1)N-置換(メタ)アクリルアミド化合物;(B2)芳香環を有する単官能(メタ)アクリレート;(B3)エポキシ基を含有する単官能(メタ)アクリレート等である。
【0038】
成分(B1)は、例えば、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-イソブチル(メタ)アクリルアミド、N-ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N-アルコキシ(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N-(メタ)アクリロイルモルホリン、アリル(メタ)アクリルアミド、2-エチルヘキシル(メタ)アクリルアミド等である。
【0039】
成分(B2)は、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ナフトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ヒドロキシ-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等である。
【0040】
成分(B3)は、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレート等の脂肪族エポキシ(メタ)アクリレート;例えば、3,4-エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート等の脂環式エポキシ(メタ)アクリレートである。成分(B3)は、これらのエポキシ基を含有する単官能(メタ)アクリレートを出発物質として、その含有するエポキシ基を変性して得られる(メタ)アクリレートであって、エポキシ基の一部が変性されずに残存している(メタ)アクリレートを用いることもできる。
【0041】
成分(B3)のエポキシ指数は、無機ガラス繊維との親和性を高められる観点から、0.001eq/Kg以上、好ましくは0.01eq/Kg以上、より好ましくは0.1eq/Kg以上である。一方、本発明の樹脂組成物の硬化時に、全てのエポキシ基を費消させる観点から、成分(B3)のエポキシ指数は、20eq/Kg以下、好ましくは10eq/Kg以下、より好ましくは5eq/Kg以下である。本明細書において、エポキシ指数は、JIS K7236:2001に準拠した電位差滴定装置を使用して測定した値である。
【0042】
本発明の樹脂組成物を、溶剤を含まないにも係わらず、工業的に容易に取り扱えるような粘度が得られる観点から、成分(B)として、成分(B1)を含むことは好ましい。
【0043】
繊維含有樹脂成形体の耐熱性を高められる観点から、成分(B)として、成分(B2)を含むことは好ましい。成分(B2)を用いる構成であれば、繊維含有樹脂成形体に含まれる繊維が無機ガラス繊維などの高屈折率の繊維である場合であっても、屈折率差Δnを小さくして、繊維含有樹脂成形体の透光性を得ることができる。
繊維が無機ガラス繊維である場合、無機ガラス繊維との親和性を高められる観点から、成分(B)として、成分(B3)を含むことは好ましい。
【0044】
成分(B)の中の成分(B1)の配合比は、特に制限されない。本発明の樹脂組成物において、溶剤を含まないにも係わらず、工業的に容易に取り扱えるような粘度が得られやすい観点から、成分(B)の中の成分(B1)の配合比は、成分(B)の総量を100質量%として、10質量%以上、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上である。一方、繊維含有樹脂成形体のタックを低減する観点から、成分(B)の中の成分(B1)の配合比は、成分(B)の総量を100質量%として、80質量%以下、好ましくは60質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。
【0045】
成分(B)の中の成分(B2)の配合比は、特に制限されない。繊維含有樹脂成形体の耐熱性、及び透光性を高められる観点から、成分(B)の中の成分(B2)の配合比は、成分(B)の総量を100質量%として、10質量%以上、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上である。一方、繊維含有樹脂成形体のタックを低減する観点から、成分(B)の中の成分(B2)の配合比は、成分(B)の総量を100質量%として、80質量%以下、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。
【0046】
成分(B)の中の成分(B3)の配合比は、特に制限されない。繊維が無機ガラス繊維である場合、無機ガラス繊維との親和性を高められる観点から、成分(B)の中の成分(B3)の配合比は、成分(B)の総量を100質量%として、10質量%以上、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上である。一方、本発明の樹脂組成物の硬化時に、全てのエポキシ基を費消させる観点から、成分(B)の中の成分(B3)の配合比は、成分(B)の総量を100質量%として、80質量%以下、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。
【0047】
なお、成分(B1)の一部が芳香環を有する成分である場合、当該成分の配合比は、成分(B1)の配合比として扱われる。成分(B1)の一部がエポキシ基を含有する成分である場合、当該成分の配合比は、成分(B1)の配合比として扱われる。成分(B2)の一部がエポキシ基を含有する成分である場合、当該成分の配合比は、成分(B2)の配合比として扱われる。
【0048】
成分(A)と成分(B)との配合比は、繊維含有樹脂成形体のタックを低減する観点と、本発明の樹脂組成物において、溶剤を含まないにも係わらず、工業的に容易に取り扱えるような粘度が得られやすい観点とのバランスの観点から適宜選択される。
【0049】
繊維含有樹脂成形体のタックを低減する観点から、成分(A)と成分(B)との配合比は、成分(A)と成分(B)との合計を100質量%として、成分(A)が5質量%以上、かつ、成分(B)が95質量%以下である。好ましくは、成分(A)が10質量%以上、かつ、成分(B)90質量%以下、より好ましくは、成分(A)が15質量%以上、かつ、成分(B)が85質量%以下、更に好ましくは、成分(A)が20質量%以上、かつ、成分(B)が80質量%以下である。
【0050】
一方、本発明の樹脂組成物において、溶剤を含まないにも係わらず、工業的に容易に取り扱えるような粘度が得られやすい観点から、成分(A)と成分(B)との配合比は、成分(A)と成分(B)との合計を100質量%として、成分(B)が10質量%以上、かつ、成分(A)が90質量%以下である。好ましくは、成分(B)20質量%以上、かつ、成分(A)が80質量%以下、より好ましくは、成分(B)が30質量%以上、かつ、成分(A)が70質量%以下である。
【0051】
繊維含有樹脂成形体の中の繊維の配合比が高い場合、特に、繊維を不織布や織布などの形態で繊維含有樹脂成形体の中に含ませようとする場合、繊維含有樹脂成形体の製造方法は、不織布や織布を破損しないようにする観点から、不織布や織布に樹脂組成物を含浸させる。あるいは、樹脂組成物に不織布や織布を浸漬し、その後、樹脂組成物を硬化させる方法が好適である。一方、該製造方法に用いられる樹脂組成物が溶剤を含むものであると、樹脂組成物は硬化時に大きく収縮してしまい、その結果、繊維と樹脂組成物との界面で樹脂組成物の硬化物が繊維から剥離して、繊維含有樹脂成形体の透光性を低下させたり、不織布や織布が破損したりする。そこで、本発明の樹脂組成物は、溶剤を含まない構成として、上述の問題を解決したものである。
【0052】
ここで、溶剤を「含まない」とは、有意な量の溶剤を含んではいないという意味である。樹脂組成物、特に硬化性樹脂組成物の分野において、溶剤の有意な量は、樹脂組成物を工業的に容易に取り扱えるような粘度にする観点から、成分(A)と成分(B)との合計を100質量部として、10質量部程度以上である。すなわち、溶剤を「含まない」とは、成分(A)と成分(B)との合計を100質量部として、溶剤の量が10質量部未満、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部、更に好ましくは1質量部以下、より更に好ましくは0.5質量部以下、最も好ましくは0.1質量部以下と言い換えることもできる。
【0053】
[1-3.成分(C),(D),(E)]
本発明の樹脂組成物は、繊維含有樹脂成形体のタックを低減する観点から、更に(C)1分子中に2個以上の2級チオール基を有する化合物を含むことが好ましい。成分(C)は、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)等である。
【0054】
成分(C)の配合比は、任意成分であるから特に制限されない。成分(C)の配合比は、成分(A)と成分(B)との合計を100質量部として、成分(C)の使用効果を確実に得る観点から、0.5質量部以上、好ましくは1質量部以上、より好ましくは1.5質量部以上である。一方、繊維含有樹脂成形体の剛性を高める観点から、成分(C)の配合比は、成分(A)と成分(B)との合計を100質量部として、20質量部以下、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。
【0055】
繊維が無機ガラス繊維である場合、無機ガラス繊維と樹脂組成物との親和性を高める観点から、本発明の樹脂組成物に、更に(D)シランカップリング剤を含ませることは好ましい。成分(D)は、例えば、ビニルエトキシシラン、ビニルメトキシシラン等のビニル系シランカップリング剤;ポリエトキシジメチルシロキサン、ポリエトキシジメチルシロキサン等のポリマー型シランカップリング剤;3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3-(メタクリロイルオキシ)プロピルメチルジメトキシシラン等のメタクリレート系シランカップリング剤等である。
【0056】
成分(D)の配合比は、任意成分であるから特に制限されない。成分(D)の配合比は、成分(A)と成分(B)との合計を100質量部として、成分(D)の使用効果を確実に得る観点から、0.5質量部以上、好ましくは1質量部以上、より好ましくは1.5質量部以上である。一方、本発明の樹脂組成物におけるポットライフを長くする観点から、成分(D)の配合比は、成分(A)と成分(B)との合計を100質量部として、10質量部以下、好ましくは7質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。
【0057】
繊維含有樹脂成形体に含まれる繊維が無機ガラス繊維などの高屈折率の繊維である場合に、屈折率差Δnを小さくできる観点から、本発明の樹脂組成物に、更に(E)高屈折率微粒子を含ませることは好ましい。ここで高屈折率とは、屈折率が1.5以上、好ましくは1.6~2.8であることを意味する。高屈折率微粒子は、例えば、無機微粒子、無機コート有機微粒子等である。無機微粒子は、酸化ジルコニウム微粒子等のジルコニウム含有粒子、酸化チタン微粒子等のチタン含有粒子、ニオブ含有粒子、錫含有粒子、亜鉛含有粒子、アルミニウム含有粒子、ケイ素含有粒子、マグネシウム含有粒子等である。
【0058】
本明細書において、微粒子の屈折率は、有機溶媒に微粒子を分散させた透明分散液を調製し、波長が589.3nmであるナトリウムD線を用い、20℃において測定した屈折率を、微粒子と有機溶媒の比重とに基づいて、微粒子が100体積%である状態に外挿して算出した値である。
【0059】
成分(E)の平均粒子径は、特に制限されないが、透光性の観点から、好ましくは300nm以下、より好ましくは200nm以下、更に好ましくは100nm以下である。一方、本発明の樹脂組成物中に、成分(E)を工業的に容易に分散させやすい観点から、好ましくは1nm以上、より好ましくは5nm以上である。本明細書において、微粒子の平均粒子径は、レーザー回折・散乱法で測定した粒子径分布曲線において、微粒子の小さい方からの累積が50質量%となる粒子径である。
【0060】
成分(E)の配合比は、任意成分であるから特に制限されない。成分(E)の配合比は、成分(A)と成分(B)との合計を100質量部として、成分(E)の使用効果を確実に得る観点から、10質量部以上、好ましくは20質量部以上、より好ましくは30質量部以上である。一方、繊維含有樹脂成形体の耐衝撃性を高める観点から、成分(E)の配合比は、200質量部以下、好ましくは120質量部以下、より好ましくは80質量部以下である。
【0061】
本発明の樹脂組成物は、樹脂組成物の硬化性を良好にする観点から、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物、及び光重合開始剤の少なくとも一方を更に含むことが好ましい。
【0062】
1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物は、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート;例えば、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;例えば、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、1,3-シクロペンタンジイソシアネート等の脂肪環イソシアネートである。
【0063】
光重合開始剤は、例えば、1-ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等のアセトフェノン系重合開始剤;例えば、ベンゾイン、2,2-ジメトキシ1,2-ジフェニルエタン-1-オン等のベンゾイン系重合開始剤;例えば、ベンゾフェノン、[4-(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタノン、4-ヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系重合開始剤;例えば、2-クロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系重合開始剤である。
【0064】
本発明の樹脂組成物は、上記成分(A)~(E)以外の他の成分を含んでもよい。他の成分は、例えば、増感剤、樹脂ビーズやガラスビーズ等のビーズ、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、着色剤、消泡剤、腐食防止剤等である。繊維含有樹脂成形体において、樹脂組成物の線膨張率と繊維の線膨張率との差による表面の平坦性の低下を抑える観点から、直径が2~10μm程度のホウケイ酸ガラスのマイクロガラスビーズを含むことが好ましい。
【0065】
本発明の樹脂組成物は、上記各成分を混合、及び攪拌することによって得られる。本発明の樹脂組成物の硬化物におけるガラス転移温度は、繊維含有樹脂組成物の耐熱性を高める観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは80℃以上、更に好ましくは100℃以上である。一方、本発明の樹脂組成物の硬化物におけるガラス転移温度は、繊維含有樹脂組成物の耐衝撃性を高める観点から、200℃以下、好ましくは160℃以下である。
【0066】
樹脂組成物の硬化物におけるガラス転移温度は、JIS K7244-4:1999に準拠し、熱機械的分析装置を使用し、引張正弦波を1Hzに設定し、昇温速度が2℃/分の条件で測定して得られた温度-損失正接tanδ曲線のピークトップの温度である。なお、ピークトップが複数あるときは、樹脂組成物の硬化物におけるガラス転移温度が複数あるものと解釈する。例えば、樹脂組成物の硬化物が海島構造のモルフォロジーを示す場合には、海と島それぞれに対応する2つのガラス転移温度が観察され得る。
【0067】
[2.繊維含有樹脂成形体、及び物品]
本発明の繊維含有樹脂成形体は、本発明の樹脂組成物を用いて形成され、かつ、繊維を包含している。繊維含有樹脂成形体の形状の一例は、繊維を不織布又は織布の形態で含むフィルム、シート、又は板である。本発明の物品は、繊維含有樹脂成形体を備える。本発明の物品の一例は、繊維含有樹脂成形体の一例であるシートとガラス層とを備えた積層ガラスである。本発明の物品の他の一例は、画像表示装置等の前面板であり、繊維含有樹脂成形体の一例であるシート又は板を加工して得られる。
【0068】
図2が示すように、繊維含有樹脂成形体の製造方法は、繊維の形態の一例である不織布に樹脂組成物を含浸させる工程(ステップ101)、及び、不織布に含浸された樹脂組成物を硬化してシートを形成する工程(ステップ102)を含む。物品の製造方法は、繊維含有樹脂成形体の製造方法と、当該製造方法によって製造されたシートをガラス層に接着する工程(ステップ103)とを含む。
【0069】
不織布に樹脂組成物を含浸させる工程は、例えば、樹脂組成物の一例として紫外線硬化性樹脂組成物を用い、紫外線硬化性樹脂組成物を不織布に含浸させる。シートを形成する工程は、例えば、紫外線硬化性樹脂組成物が含浸された不織布に対して紫外線を照射することによって行われる。
【0070】
図3が示すように、物品の一例である積層ガラス1は、例えば、車両10のサンルーフ11、フロントウインドガラス、リアウインドガラス、サイドウインドガラス等のウインドガラス12等として用いられる。
【0071】
図4が示すように、積層ガラス1は、無機ガラス20iを構成材料に含むガラス層21と、ガラス層21に積層された透光性樹脂層22と、を備える。無機ガラス20iは、例えば、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス等である。透光性樹脂層22は、繊維含有樹脂成形体の一例であるシートである。積層ガラス1は、ガラス層21と透光性樹脂層22との間に、ガラス層21と透光性樹脂層22とを接着するための接着層を備える。積層ガラス1は、ガラス層21を車外、かつ、透光性樹脂層22を車内に向けて使用される。
【0072】
図5が示すように、透光性樹脂層22は、上述した樹脂組成物の硬化物24と、上述した繊維23と、を備える。繊維23は、ランダムに配向した形態で硬化物24に包含されている。硬化物24に包含される繊維23の構成材料は、例えば、無機ガラス23gである。
【0073】
繊維23の構成材料と、ガラス層21の構成材料とは、相互に同じ材料であってもよいし、相互に異なる材料であってもよい。繊維23の構成材料と、ガラス層21の構成材料とが、相互に同じ材料である場合、積層ガラス1は、ガラス層21の線膨張係数と、透光性樹脂層22の線膨張係数との差が小さいため、上述したサンルーフ11やウインドガラス12のように、温度変化が大きい環境で使用される物品に好適である。
【0074】
本発明の繊維含有樹脂成形体の一例として、可視光線透過率(繊維含有樹脂成形体をガラス板に貼合せず、繊維含有樹脂成形体そのものを測定したこと以外は、JIS A5759:2016の6.4可視光線透過率試験に準拠して測定。)は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、更に好ましくは88%以上であってよい。繊維含有樹脂成形体の可視光線透過率が80%以上であることにより、高い透明性を要求される物品、例えば、サンルーフやウインドガラスに好適に用いることができる。高い透明性を所望する場合は、可視光線透過率は高いほど好ましい。
【0075】
本発明の繊維含有樹脂成形体の一例として、ヘーズ(JIS K 7136:2000に準拠して測定。)は、好ましくは10%以下、より好ましくは6%以下、更に好ましくは4%以下、より更に好ましくは3%以下であってよい。繊維含有樹脂成形体のヘーズが10%以下であることにより、すっきりとした透明感を要求される物品、例えば、サンルーフやウインドガラスに好適に用いることができる。すっきりとした透明感を所望する場合は、ヘーズは小さいほど好ましい。
【0076】
本発明の繊維含有樹脂成形体の一例として、ヘーズ(JIS K 7136:2000に準拠して測定。)と熱処理後のヘーズ(90℃で2分間の処理をした後、JIS K 7136:2000に準拠して測定。)との差(絶対値)は、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、更に好ましくは3%以下、より更に好ましくは2%以下、最も好ましくは1%以下であってよい。繊維含有樹脂成形体のヘーズと熱処理後のヘーズとの差が10%以下であることにより、温度変化が大きい環境で使用される物品、例えば、サンルーフやウインドガラスに好適に用いることができる。温度変化が大きい環境で使用される場合は、ヘーズと熱処理後のヘーズとの差は小さいほど好ましい。
【0077】
[実施例]
以下、実施例を示して本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。
[測定方法]
(1-1)樹脂組成物の屈折率
温度を25℃に変更したこと以外は、JIS K7142:2014のA法に準拠し、多波長アッベ屈折計「DR-M4(商品名)」(株式会社アタゴ製)を用いて、樹脂組成物の硬化物における屈折率を測定した。この際、波長が589.3nmであるナトリウムD線を用い、また、接触液として1-ブロモナフタレンを用い、サンプル作成時に下側のガラス板に接していたサンプルの面がプリズムに接する表面となる条件で測定した。なお、サンプルは、2枚のガラス板にスペーサーと共に樹脂組成物を挟み、硬化後の厚みが300μmである樹脂成形体を用いた。
【0078】
(1-2)樹脂組成物のガラス転移温度
JIS K7244-4:1999に準拠し、熱機械的分析装置(TMA)「DMS6100(商品名)」(セイコーインスツル株式会社製)を用いて、樹脂組成物の硬化物におけるガラス転移温度を測定した。この際、チャック間距離を10mm、引張正弦波を1Hzに設定し、-50℃で3分間にわたりサンプルを保持した後、昇温速度を2℃/分として200℃まで昇温するという条件で測定した。そして、温度-損失正接tanδ曲線のピークトップ値を、樹脂組成物の硬化物におけるガラス転移温度とした。ピークが2つ以上存在するときは、2つのピークトップ値を記録した。なお、サンプルは、(1-1)と同様にして得た硬化物から切り出されたものであり、縦が20mm、横が10mmの大きさを有するサンプル片を用いた。
【0079】
(1-3)繊維の屈折率
温度を25℃に変更したこと以外は、JIS K7142:2014のB法に準拠し、多波長アッベ屈折計「DR-M4(商品名)」(株式会社アタゴ製)と、デジタルマイクロスコープ「KH-8700(商品名)」(株式会社ハイロックス製)とを用いて、繊維の屈折率を測定した。この際、波長が589.3nmであるナトリウムD線を用い、また、浸液として1-ブロモナフタレンとベンジルアルコールとの混合液を用いた。
【0080】
(2)繊維含有樹脂成形体の評価
(2-1)可視光線透過率
繊維含有樹脂成形体をガラス板に貼合せず、繊維含有樹脂成形体そのものを測定したこと以外は、JIS A5759:2016の6.4可視光線透過率試験に準拠し、分光光度計「SolidSpec-3700(商品名)」(島津製作所社製)を用い、繊維含有樹脂成形体の可視光線透過率(単位%)を測定した。
【0081】
(2-2)ヘーズ
JIS K 7136:2000に準拠し、濁度計「NDH2000(商品名)」(日本電色工業株式会社製)を用いて、繊維含有樹脂成形体のヘーズ(単位%)を測定した。
【0082】
(2-3)線膨張係数
JIS K 7197:2012に準拠し、熱機械的分析装置(TMA)「DMS6100(商品名)」(セイコーインスツル株式会社製)を用いて、繊維含有樹脂成形体の線膨張係数(単位ppm)を測定した。この際、チャック間距離を10mm、引張荷重を4mN/mmに設定し、-50℃で3分間にわたりサンプルを保持した後、昇温速度を5℃/分として150℃まで昇温するという条件で測定した。そして、温度-試験片長さ曲線から、低温側温度-40℃、高温側温度120℃として、繊維含有樹脂成形体の線膨張係数(単位ppm)を算出した。また、繊維含有樹脂成形体の寸法安定性の指標として線膨張係数を測定する目的から、測定最高温度における繊維含有樹脂成形体の状態の調節は行わなかった。なお、サンプルは、繊維含有樹脂成形体から、縦が20mm、横が10mmの大きさを有するサンプル片を用いた。
【0083】
(2-4)表面平滑性
JIS B0633:2001に準拠し、接触式粗度計「ハンディサーフE-35B(商品名)」(株式会社東京精密製)を用い、カットオフ値λcを0.8mm、測定長を4.0mmに設定して、繊維含有樹脂成形体の算術平均粗さRa(単位μm)を測定した。
【0084】
(2-5)熱処理後のヘーズ
繊維含有樹脂成形体を90℃のギヤオーブンの中で2分間にわたり加熱した後、上記(2-2)と同様にして、熱処理後における繊維含有樹脂成形体のヘーズ(単位%)を測定した。
【0085】
(2-6)熱処理後の表面平滑性
繊維含有樹脂成形体を90℃のギヤオーブンの中で2分間にわたり加熱した後、上記(2-4)と同様にして、熱処理後における繊維含有樹脂成形体の算術平均粗さRa(単位μm)を測定した。
【0086】
(2-7)落球試験
繊維含有樹脂成形体を厚みが1mmのステンレス板の面の上に平置きし、10cmごとに設定された所定の高さから、直径が20mm、重さが45gの鋼球を落下させる試験を繰り返し、繊維含有樹脂成形体にクラックが生じる最低の高さを求めた。なお、表1には、最低の高さを示し、例えば、表1に記載の数値が50cmであれば、高さ40cmではクラックが生じなかったが、50cmでは生じたことを示す。また、表1に記載の「>70cm」は、高さが70cmでもクラックが生じなかったため、試験を中止したことを意味する。
【0087】
[構成材料]
以下に列挙する成分を用いて各実施例の樹脂組成物、及び繊維含有樹脂成形体を得た。
(A1-1)2官能芳香族(メタ)アクリレート:エチレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジアクリレート(CAS番号64401-02-1)
(A1-2)多官能芳香族(メタ)アクリレート:「OGSOL EA-F5710(商品名)」(大阪ガスケミカル株式会社製/フルオレン骨格を有する多官能(メタ)アクリレート)
(A2-1)プレポリマー:ウレタン(メタ)アクリレート「EBECRYL 4100(商品名)」(ダイセルオルネクス社製)/1分子中の(メタ)アクリロイル基数が3個、数平均分子量が1100、質量平均分子量が2800。
(A2-2)プレポリマー:「GX-8821L-M9(商品名)」(第一工業製薬株式会社製)/1分子中の(メタ)アクリロイル基が2個以上。
(A3-1)2官能脂肪環式アクリレート:トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(CAS番号42594-17-2)
【0088】
(B1-1)N‐置換(メタ)アクリルアミド化合物:4-アクリロイルモルホリン(CAS番号5117-12-4)
(B2-1)芳香族単官能(メタ)アクリレート:2-プロペン酸(3-フェノキシフェニル)メチルエステル(CAS番号409325-06-0)
(B2-2)芳香族単官能(メタ)アクリレート:2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート(CAS番号16969-10-1)
【0089】
(C-1)1分子中に2個以上の2級チオール基を有する化合物:ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)(CAS番号3177589-0)
(D-1)シランカップリング剤:ポリマー型シランカップリング剤「X12-1050(商品名)」(信越化学工業株式会社製)
(E-1)高屈折率微粒子:酸化ジルコニウムの分散液「NSX-401M(商品名)」(共栄社化学株式会社製)。
(F-1)光重合開始剤:1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン(CAS番号947-19-3)
(F-2)光重合開始剤:2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキサイド(CAS番号75980-60-8)
(P-1)繊維:無機ガラス繊維「MF30P(商品名)」(日東紡績株式会社)を650℃でか焼処理して使用した。
【0090】
なお、成分(A1-2)は、成分(A1-2)を含む各実施例において、プレポリマーとしても機能し得る。成分(B2-2)は、エポキシ基を含有する単官能(メタ)アクリレートを出発物質として、その含有するエポキシ基を変性して得られる(メタ)アクリレートであり、未反応の出発物質が少量残存してエポキシ指数が1.0×10-2eq/Kgであるから、上述した成分(B3)としても機能し得る。
【0091】
[実施例1]
成分(A1-1)を15質量部、成分(A2-1)を8質量部、成分(B1-1)を26質量部、成分(B2-1)を20質量部、成分(B2-2)を31質量部、成分(C-1)を2質量部、成分(D-1)を3質量部、成分(F-1)を2質量部、成分(F-2)を1質量部として、実施例1の樹脂組成物(R-1)を得た。
【0092】
実施例1の樹脂組成物(R-1)と成分(P-1)とを用いた上述の繊維含有樹脂成形体の製造方法によって、厚みが0.35mmのシートである、実施例1の繊維含有樹脂成形体を得た。この際、成分(P-1)の含有量を11.1質量%とした。
【0093】
成分(P-1)の屈折率を表1に示す。また、実施例1の繊維含有樹脂成形体における屈折率、ガラス転移温度、屈折率差Δn、可視光線透過率(単位%)、ヘーズ(単位%)、線膨張係数(単位ppm)、算術平均粗さRa(単位μm)、熱処理後のヘーズ(単位%)、熱処理後の算術平均粗さ(単位μm)、及び落球試験(単位cm)の測定結果を表1に示す。
【0094】
[実施例2]
実施例1の樹脂組成物(R-1)と成分(P-1)とを用いた上述の繊維含有樹脂成形体の製造方法によって、厚みが0.55mmのシートである、実施例2の繊維含有樹脂成形体を得た。この際、成分(P-1)の含有量を14.1質量%とした。実施例2の繊維含有樹脂成形体における各測定結果を表1に示す。
【0095】
[実施例3]
成分(A2-2)を24質量部、成分(A3-1)を21質量部、成分(B1-1)を56質量部、成分(C-1)を8質量部、成分(D-1)を5質量部、成分(E-1)を51質量部、成分(F-1)を3質量部、成分(F-2)を2質量部として、実施例3の樹脂組成物(R-2)を得た。
【0096】
実施例3の樹脂組成物(R-2)と成分(P-1)とを用いた上述の繊維含有樹脂成形体の製造方法によって、厚みが0.32mmのシートである、実施例3の繊維含有樹脂成形体を得た。この際、成分(P-1)の含有量を10.9質量%とした。実施例3の繊維含有樹脂成形体における各測定結果を表1に示す。
【0097】
[実施例4]
成分(A1-2)を42質量部、成分(A3-1)を21質量部、成分(B1-1)を37質量部、成分(C-1)を5質量部、成分(D-1)を3質量部、成分(F-1)を2質量部、成分(F-2)を1質量部として、実施例4の樹脂組成物(R-2)を得た。
【0098】
実施例4の樹脂組成物(R-3)と成分(P-1)とを用いた上述の繊維含有樹脂成形体の製造方法によって、厚みが0.35mmのシートである、実施例4の繊維含有樹脂成形体を得た。この際、成分(P-1)の含有量を11.5質量%とした。実施例4の繊維含有樹脂成形体における各測定結果を表1に示す。
【0099】
[実施例5]
実施例4の樹脂組成物(R-3)と成分(P-1)とを用いた上述の繊維含有樹脂成形体の製造方法によって、厚みが0.58mmのシートである、実施例5の繊維含有樹脂成形体を得た。この際、成分(P-1)の含有量を13.3質量%とした。実施例5の繊維含有樹脂成形体における各測定結果を表1に示す。
【0100】
[実施例6]
繊維含有樹脂成形体の製造方法において、成分(P-1)を加えないこと以外は実施例1と同じくして、厚みが0.28mmのシートである、実施例6の樹脂成形体を得た。実施例6の樹脂成形体における各測定結果を表1に示す。
【0101】
【表1】
【0102】
表1が示すように、実施例1~5のいずれの繊維含有樹脂成形体においても、繊維と樹脂組成物との屈折率差は0.10以下である。実施例1~5の繊維含有樹脂成形体の可視光線透過率は、いずれも89.1%以上の高い値を示し、かつ、繊維を含まない実施例6の可視光線透過率とほぼ同等であることが認められた。すなわち、溶媒を含まない樹脂組成物によって、樹脂組成物の硬化時における収縮が抑制されて、繊維含有樹脂成形体の透光性が向上可能であることが認められた。
【0103】
また、実施例1~5のいずれの繊維含有樹脂成形体においても、熱処理前のヘーズは8.9%以下の低い値を示し、特に、実施例3~5においては、繊維を含まない実施例6のヘーズと同等、もしくは、実施例6よりも良好であることが認められた。さらに、実施例1、3~5のいずれの繊維含有樹脂成形体においても、熱処理後のヘーズは9.5%以下の低い値を示し、特に、実施例3~5においては、繊維を含まない実施例6のヘーズよりも良好であって、温度変化が大きい環境に対して好適に適用可能であることが認められた。
【0104】
また、実施例1~5のいずれの繊維含有樹脂成形体においても、算術平均粗さRaは0.19μm以下の低い値を示し、特に、実施例3~5においては、繊維を含まない実施例6の算術平均粗さRaと同等、もしくは、実施例6よりも良好であることが認められた。さらに、実施例3~5のいずれの繊維含有樹脂成形体においても、熱処理後の算術平均粗さRaは0.12μm以下の低い値を示し、特に、実施例4、5においては、繊維を含まない実施例6の算術平均粗さRaよりも良好であることが認められた。
【0105】
そして、実施例1~5のいずれの繊維含有樹脂成形体においても、落球試験での最低の高さは20cm以上の高い値を示し、特に、実施例1においては、50cmという良好な耐衝撃性を有することが認められた。なお、厚みが1mmのソーダライムガラスについて、上記試験(2-7)を行ったところ、高さが10cmで破砕が認められた。
【符号の説明】
【0106】
1…積層ガラス、10…車両、11…サンルーフ、12…ウインドガラス、20i,23g…無機ガラス、21…ガラス層、22…透光性樹脂層、23…繊維、24…硬化物、101,102,103…ステップ。
図1
図2
図3
図4
図5