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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-09
(45)【発行日】2025-07-17
(54)【発明の名称】医薬物質用の一次包材
(51)【国際特許分類】
   A61J 1/05 20060101AFI20250710BHJP
【FI】
A61J1/05 315B
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019177222
(22)【出願日】2019-09-27
(65)【公開番号】P2020054811
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-07-01
【審判番号】
【審判請求日】2023-11-30
(31)【優先権主張番号】10 2018 124 115.1
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】323001797
【氏名又は名称】ショット ファーマ シュヴァイツ アー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT Pharma Schweiz AG
【住所又は居所原語表記】St. Josefen-Strasse 20, 9000 St. Gallen, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ユーディト アウアーバッハ
【合議体】
【審判長】井上 哲男
【審判官】栗山 卓也
【審判官】平瀬 知明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第2533165(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0202980(US,A1)
【文献】特開2017-221371号公報(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物質を収容するために用いられる一次包材であって、前記一次包材は、
中空体(1)と、
クロージャ(2)と、
を備え、
前記中空体(1)は、シクロオレフィンポリマーまたはシクロオレフィンコポリマーを含み、開口部(3)を有し、
前記クロージャ(2)は、前記開口部(3)を閉鎖し、熱可塑性のエラストマーを含み、カニューレを前記中空体(1)内に導入するために用いられる刺通領域(4)を有する一次包材において、
前記クロージャ(2)の前記熱可塑性のエラストマーは、破壊することなしには分離不能に前記中空体(1)に結合されており、
前記刺通領域(4)は、前記クロージャ(2)の上面から下面まで達しており、
前記クロージャ(2)は、熱可塑性のエラストマーを含む少なくとも1つの下側の第1の層(2a)と、熱可塑性のエラストマーを含む少なくとも1つの上側の第2の層(2b)と、を有し、
前記上側の第2の層(2b)と前記中空体(1)とは、素材結合式および/またはミクロ形状結合式に結合されている、
ことを特徴とする一次包材。
【請求項2】
前記クロージャ(2)の前記熱可塑性のエラストマーは、素材結合式および/またはミクロ形状結合式に前記中空体(1)に結合されている、
請求項1記載の一次包材。
【請求項3】
前記クロージャ(2)は、前記中空体(1)を密に閉鎖し、密閉性は、前記刺通領域(4)を通したカニューレの導入後、存立する、
請求項1または2記載の一次包材。
【請求項4】
中空体(1)およびクロージャ(2)は、両者がマクロ形状結合式に互いに結合されているように成形されている、
請求項1から3までのいずれか1項記載の一次包材。
【請求項5】
前記クロージャ(2)の少なくとも一部は、中空体(1)とクロージャ(2)との間の接触面の少なくとも一部において圧縮応力下にある、
請求項1から4までのいずれか1項記載の一次包材。
【請求項6】
前記クロージャは、前記刺通領域(4)に20~70のショア硬さ(ショアA)を有する、
請求項1から5までのいずれか1項記載の一次包材。
【請求項7】
前記中空体(1)は、前記中空体(1)の外面に、前記一次包材を装置内に形状結合式に収容するために用いられる少なくとも1つの形状結合要素(5)を有する、
請求項1から6までのいずれか1項記載の一次包材。
【請求項8】
前記クロージャ(2)は、前記中空体(1)の外面の少なくとも一部を覆う、
請求項1から7までのいずれか1項記載の一次包材。
【請求項9】
前記一次包材は、治療および/または診断目的の物質を含む、
請求項1から8までのいずれか1項記載の一次包材。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項記載の一次包材を製造する方法であって、
中空体(1)と、前記クロージャ(2)の少なくとも一部と、から選択されるコンポーネントの少なくとも1つを用意するステップaと、
中空体(1)と、前記クロージャ(2)の少なくとも一部と、から選択される残余の前記コンポーネントを射出成形法で製造するステップbと、
を含み、
前記クロージャ(2)は、前記開口部(3)を閉鎖し、破壊することなしには分離不能な結合が、クロージャ(2)と中空体(1)との間に生じる、
方法。
【請求項11】
ステップaで前記クロージャ(2)を用意し、
ステップbで前記中空体(1)を射出成形法で製造し、
シクロオレフィンポリマーまたはシクロオレフィンコポリマーを使用し、
前記クロージャ(2)を覆うように射出成形し、
クロージャ(2)と中空体(1)とをマクロ形状結合式に結合する、
請求項10記載の方法。
【請求項12】
ステップaで、前記開口部(3)を有する前記中空体(1)を用意し、
前記クロージャ(2)の少なくとも一部を前記開口部(3)上に載置し、
ステップbで、熱可塑性のエラストマーによる射出成形で前記クロージャ(2)を完全に形成し、
クロージャ(2)と中空体(1)とを素材結合式および/またはミクロ形状結合式に結合する、
請求項10記載の方法。
【請求項13】
ステップaで、前記クロージャ(2)の少なくとも一部を用意し、
ステップbで、マルチコンポーネント射出成形で、シクロオレフィンポリマーまたはシクロオレフィンコポリマーを射出成形して前記中空体(1)を製造し、熱可塑性のエラストマーを射出成形して前記クロージャ(2)を完全に形成し、
クロージャ(2)と中空体(1)とをマクロ形状結合式および/または素材結合式および/またはミクロ形状結合式に結合する、
請求項10記載の方法。
【請求項14】
前記クロージャ(2)の少なくとも一部を、前記射出成形法の最中または前に、圧縮応力下に置き、前記圧縮応力を、射出成形した材料の冷却後、残留させる、
請求項10から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
中空体(1)とクロージャ(2)との間の接触面の少なくとも一部を、少なくとも一方の表面の活性化、粗面化または構造化により、前処理する、
請求項10から14までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬物質を収容するために用いられる一次包材および一次包材を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬用一次包材、例えば小瓶およびカープルは、医薬物質の無菌保存に使用され、一部では、後の投与の際に直接使用されることもある。医薬物質の取り出しは、通例、カニューレを介して行われる。このために一次包材のクロージャ内に設けられた相応の刺通領域が刺通される。小瓶の場合、医薬物質が、通例、まず注射器により取り出される一方、カープルからは、好適な注入装置を用いて医薬物質が直接投与され得る。後の用途にかかわらず、この種の一次包材にとっては、無菌を保証すると同時に、カニューレを用いた簡単な取り出しを可能にする密なクロージャが、最も重要である。
【0003】
医薬用一次包材、例えば小瓶およびカープルは、通例、従来技術によれば以下に説明するように形成されている。一次包材は、一般に、胴部、肩部、首部、縁曲げ縁部および開口部を有する中空体からなっている。中空体は、種々異なる材料、とりわけガラス、シクロオレフィンポリマーまたはシクロオレフィンコポリマーから製造され得る。付加的に、大抵の場合は医薬物質の充填後に、クロージャが口に取着される。クロージャは、2つの要素、セプタムとクリンプとからなっている。セプタムは、通例、ゴムからなり、刺入領域を有している。クリンプは、一般にアルミニウム合金からなり、刺入領域のために中央部の切欠きを有している。クロージャは、両要素から別途製造される。医薬用一次包材のための相応のクロージャは、従来技術において十分に公知であり、例えばISO 8872:2003により規制されている。セプタムは、クリンプの縁曲げにより中空体に結合される。その際、セプタムは、クリンプにより加圧され、これにより中空体は、クロージャに形状結合式に結合される。中空体とセプタムとの間の結合は、クリンプの除去により破壊することなしにかつ残渣なしに分離可能である。クリンプを中空体上で改めて縁曲げすることで、同じセプタムを用いて結合を同じ品質で再形成することが可能である。
【0004】
従来技術は、以下に述べる欠点を有している。中空体を製造した後にクロージャを別途製造し、組み立てなければならない。これにより、一次包材を製造するのに複数の要素と製造ステップとを要し、これにより、材料消費量は増し、製造は長期化し、より手間あるいはコストを要するものとなり、ひいては自動化も困難になってしまう。さらに、種々異なる要素および製造ステップを使用することは、付加的に不都合に働く。一方では、一次包材が個々の製造ステップ中に粒子により汚染されてしまう可能性を高める。他方では、クロージャを別途組み立てることは、菌が混入するリスクをはらんでいるので、クロージャの封止面は、手間あるいはコストを要して滅菌しなければならない。さらに、クロージャの縁曲げ時には、一次包材が密に閉鎖されず、収容した医薬物質が漏れ出たり、または菌が外部から侵入したりする可能性があるという虞が生じる。
【0005】
クロージャを中空体に取り付ける従来技術によるやり方も、不都合である。クロージャの縁曲げのために、中空体は、必然的に縁曲げ縁部を有していなければならない。縁曲げ縁部は、例えばカープルについて、ISO 13926-1:2005-10により規格化されている。それゆえ、中空体の形状を変えることは、実現不能であるか、または限定的にのみ実現可能である。これにより、一次包材のデザイン変更、例えば形状、大きさの面での適合や、形状結合要素の追加は、実現不能であるか、または限定的にのみ実現可能である。
【0006】
特にカープル等の、好適な注入装置内での物質の直接的な投与に好適な一次包材の場合、形状面でのデザインの制限は、口の領域における望ましくないデッドボリュームに繋がる。プランジャは、テーパが開始するところまでしか前進できず、これにより、残っている物質を一次包材から送り出すことができない。デッドボリュームの減少は、上述の形状面での制約に基づいて達成され得ないか、または限定的にのみ達成され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、従来技術の欠点を克服すること、特に、粒子または菌の混入のリスクを減じ、製造手間あるいは製造コストを最小化する医薬物質用の一次包材を提供するとともに、一次包材の相応の製造方法を提供することである。さらに本発明の課題は、一次包材の形状および大きさの面での高められたデザイン自由度を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、独立請求項により解決される。好ましい実施の形態は、従属請求項に記載されている。
【0009】
物質、好ましくは医薬品を収容するために用いられる本発明に係る一次包材、好ましくは医薬用一次包材、特に好ましくは小瓶またはカープルは、中空体とクロージャとを備え、中空体は、シクロオレフィンポリマーまたはシクロオレフィンコポリマーを含み、開口部を有し、クロージャは、開口部を閉鎖し、通常のエラストマーおよび/または熱可塑性のエラストマーを含み、カニューレを中空体内に導入するために用いられる刺通領域を有し、クロージャの通常のエラストマーおよび/または熱可塑性のエラストマーは、破壊することなしには分離不能に中空体に結合されていることを特徴としている。
【0010】
中空体は、小瓶またはカープルの形態で形成されていてもよい。小瓶およびカープルは、典型的には、胴部、肩部、首部、縁曲げ縁部および開口部を形成している。中空体は、底部を有していてもよい。中空体は、シクロオレフィンポリマーまたはシクロオレフィンコポリマーの他に別の材料を含んでいてもよい。その際、シクロオレフィンポリマーまたはシクロオレフィンコポリマーは、添加剤を含んでいてもよい。添加剤として、好ましくは染料が使用される。さらに中空体は、別の材料から製造されていてもよい。種々異なる材料からなる中空体の多層の構造も可能であり、例えばサンドイッチ射出成形法により製造される。中空体の壁厚さは、好ましくは0.5mm~3mmであるが、別の壁厚さも可能である。中空体の形状は、開口部を形成するという点においてのみ制限されている。
【0011】
開口部を通して、収容した物質は、中空体から取り出すことができる。付加的に中空体は、第2の開口部、例えば充填用の第2の開口部を有していてもよい。カープルは、通例、第2の開口部を有している。以後、第2の開口部についてこれ以上立ち入ることはしない。開口部なる概念は、クロージャにより閉鎖される取り出し用の開口部に関する。
【0012】
クロージャは、開口部上に配置されている。その際、クロージャと中空体とは、補助手段なしに自立して堅固に互いに結合されている。縁曲げされるクリンプまたは同等の取り付け用の装置は、省略可能である。
【0013】
通常のエラストマーとは、分解なしには互いに再分離され得ない化学的に架橋されたポリマーと解すべきである。通常のエラストマーは、引っ張り荷重および圧縮荷重下では弾性変形可能であるが、除荷時には再びその初期形状をとる。さらに通常のエラストマーは、熱供給下で熱可塑性の挙動を示さず、それゆえ射出成形法によっては製造不能または成形不能である。
【0014】
熱可塑性のエラストマーとは、室温では通常のエラストマーと同等の弾性的な変形挙動を示す架橋されたポリマーと解すべきである。しかし、熱供給時、熱可塑性のエラストマーは、塑性変形可能である。この過程は、可逆であり、冷却と、改めての加熱と、により反復され得る。それゆえ本件出願の意味で、通常のエラストマーと熱可塑性のエラストマーとは、区別すべきである。熱可塑性のエラストマーは、例えば熱可塑性のポリオレフィンエラストマー、例えばシクロオレフィンポリマーエラストマーまたはシクロオレフィンコポリマーエラストマーであってもよい。この種の熱可塑性のエラストマーは、TOPAS(登録商標)エラストマー E-140という商標名で入手可能である。
【0015】
刺通領域は、クロージャの全体積の一部に相当する。その際、刺通領域は、好ましくは、クロージャ内の中心位置に、鉛直に方向付けられた円柱の形態で配置されている。さらに好ましくは、クロージャ内における刺通領域への移行は、均質であり、はっきりとした境界面によって特徴付けられていない。
【0016】
クロージャの通常のエラストマーおよび/または熱可塑性のエラストマーと、中空体のシクロオレフィンポリマーまたはシクロオレフィンコポリマーと、の間の結合は、本発明により破壊することなしには切り離し不能である。破壊することなしには切り離し不能とは、中空体とクロージャとを切り離したら、同じクロージャを同じ品質で、元の結合に応じて改めて結合することは不可能であることと解すべきである。さらにクロージャは、残渣なしには中空体から切り離され得ない。切り離す際に、中空体およびクロージャは、損傷を受けるので、材料の残渣がそれぞれ他方のコンポーネントに残留する。
【0017】
収容する医薬品は、例えば液体または固体であってもよい。さらに、規定通りの簡単な投与またはその他の使用のために、作用物質を所定量に調量した状態で物質を収容することが可能である。
【0018】
中空体およびクロージャの形状面でのデザイン自由度は、本発明に係る一次包材では、大幅に向上する。これにより、種々異なる装置および方法での柔軟かつ個別の使用が可能である。さらに、デザインの問題、例えば物質を取り出す際のデッドボリュームは、解消または少なくとも軽減され得る。本発明に係る一次包材は、単回の方法で製造され得る。この理由から、材料消費および製造時間は最小化され得る。さらに、製造の簡単化により、一次包材の汚染または菌の混入は、防止または少なくとも減少される。
【0019】
一次包材の好ましい一実施の形態において、クロージャの通常のエラストマーおよび/または熱可塑性のエラストマーは、素材結合式(stoffschluessig)および/またはミクロ形状結合式(mikroformschluessig)に中空体に結合されている。
【0020】
素材結合とは、結合される構成部材を原子間および/または分子間の力により保持する結合と解すべきである。原子間および分子間の力は、非共有結合的な相互作用、例えばファンデルワールス相互作用を含む。素材結合は、破壊することでのみ切り離される。
【0021】
ミクロ形状結合とは、結合される構成部材が微視的な長さ領域で互いに係合すると解すべきである。その際、構成部材は、外部からのまたは相互間の力伝達がないときでも解けない。構成部材の結合は、特にその表面の微視的な性状に基づいて行われる。表面構造は、気孔、高められた粗さまたは適当な材料凹凸もしくは材料構造化を有していてもよい。ミクロ形状結合は、破壊することでのみ切り離される。
【0022】
一次包材の好ましい一実施の形態において、クロージャは、中空体を密に、好ましくは液密に、特に好ましくは気密に閉鎖し、好ましくは、密閉性は、刺通領域を通したカニューレの導入および導出後、存立する。
【0023】
密なクロージャは、物質または菌が一次包材の内室内に達するのを防止する。これにより、内室および/または収容した物質の汚染は、防止され、一次包材の無菌は、保証される。さらに密なクロージャは、収容した物質が一次包材の内室から漏れ出るのを防止し、不活性保存を実現する。一次包材は、これらの特性をカニューレの導入後にも保持し、カニューレを介して導入される物質のみを収容する。密なクロージャは、中空体の開口部への通常のエラストマーおよび/または熱可塑性のエラストマーの素材結合式および/またはミクロ形状結合式および/またはマクロ形状結合式(makroformschluessig)の被着により製造され得る。
【0024】
一次包材の好ましい一実施の形態において、中空体およびクロージャは、両者がマクロ形状結合式に互いに結合されているように成形されている。
【0025】
マクロ形状結合とは、結合される構成部材が巨視的な長さ領域で互いに係合すると解すべきである。その際、構成部材は、外部からのまたは相互間の力伝達がないときでも解けない。構成部材の結合は、特に構成部材の巨視的な構造的な特徴に基づいて行われる。構成部材は、構成部材間の結合の分離を空間的に妨げるノッチまたは隆起部を有していてもよい。マクロ形状結合は、十分な無菌バリアを保証すべく、素材結合および/またはミクロ形状結合を補うものであってもよい。
【0026】
一次包材の好ましい一実施の形態において、クロージャの少なくとも一部は、中空体とクロージャとの間の接触面の少なくとも一部において圧縮応力下にある。
【0027】
クロージャに対する圧縮応力は、一次包材の製造中のクロージャの圧縮の結果として生じさせてもよい。クロージャの弾性変形可能性に基づいて、而して圧縮応力が、中空体とクロージャとの間の接触面において生じる。これにより、中空体とクロージャとの間の結合および密閉性は、強化され得る。
【0028】
一次包材の好ましい一実施の形態において、クロージャは、刺通領域に20~70のショア硬さ(ショアA)を有し、荷重は、最大で30N、好ましくは最大で20N、特に好ましくは最大で10Nである。
【0029】
ショア硬さは、材料の硬さの尺度である。クラシカルな熱可塑性のエラストマーに関して、ショア硬さは、ばね付勢された鋼ピンの侵入深さを基に測定される。ショアAのショア硬さの測定は、ISO 868:2003-10を基に、4mmの試料厚さで、3秒または15秒の保持時間および12.5Nの荷重にて行われ得る。
【0030】
一次包材の好ましい一実施の形態において、中空体は、中空体の外面に、一次包材を装置内に形状結合式に収容するために用いられる少なくとも1つの形状結合要素を有している。
【0031】
形状結合要素は、特に、一次包材がクラシカルなフランジを有しない場合に、重要である。形状結合要素は、ノッチまたは隆起部の形態で中空体の外面に配置されていてもよい。好ましくは、形状結合要素は、中空体の胴部に配置されている。単一のまたは多数の形状結合要素が存在していてもよい。形状結合要素は、好ましくは、中空体と同じ材料からなり、好ましくは、マクロ形状結合式および/またはミクロ形状結合式および/または素材結合式に中空体に結合されているか、あるいは中空体と1ピースに形成されている。
【0032】
一次包材の好ましい一実施の形態において、クロージャは、中空体の外面の少なくとも一部を覆っている。
【0033】
表面をクロージャ材料で覆うことは、とりわけ一次包材の把持性を高めることができるか、または装置との結合を強めることができる。一次包材の用途に応じて、クロージャは、中空体の外面の様々な部分を覆うことができる。その際、中空体の外面の部分が、本来のクロージャには結合されていない別体のクロージャ材料により覆われることも可能である。
【0034】
一次包材の好ましい一実施の形態において、クロージャは、通常のエラストマーまたは熱可塑性のエラストマーを含む少なくとも1つの第1の層と、通常のエラストマーまたは熱可塑性のエラストマーを含む少なくとも1つの第2の層と、を有している。その際、層は、マクロ形状結合式および/またはミクロ形状結合式および/または素材結合式に結合されていてもよい。
【0035】
多層のクロージャは、様々な材料の組み合わせを可能にする。この場合、様々な層のために、材料固有の特性が有利に利用され得る。例えば、収容した物質と接触している層は、収容した物質に対して化学的に不活性の熱可塑性のエラストマーからなっていてもよい。隣接する別の層は、一次包材の高められた密閉性を保証する通常のエラストマーからなっていてもよい。複数の層からなるクロージャのために、それぞれ異なる有利な材料特性を利用した様々な材料組み合わせと層数とが可能である。加えて、複数の層を使用することで、材料コストを下げることができる。
【0036】
一次包材の好ましい一実施の形態において、一次包材は、物質、好ましくは治療および/または診断目的の物質、特に好ましくは単回の分量の物質を含んでいる。
【0037】
一次包材には、物質、例えば作用物質または医薬品を入れることができる。好ましくは、一次包材には、所定の分量の作用物質または医薬品が入れられる。これにより、調量または直接的な投与は、大幅に簡単化される。
【0038】
一次包材の別の好ましい一実施の形態において、クロージャと中空体との間に存在する間隙寸法は、分子サイズであり、好ましくは、間隙は存在しない。
【0039】
クロージャと中空体との間の間隙は、ミクロ形状結合の場合、存在することがある。しかし、間隙は、クロージャおよび中空体の材料に応じて、個々の分子または原子のオーダに制限されている。
【0040】
一次包材の別の好ましい一実施の形態において、中空体は、ISO 13926-1:2005-10に応じて形成されており、好ましくは、肩部と首部との間に約30°の角度、首部とフランジとの間に10°~20°の角度、そしてフランジと開口部との間に8°~14°の角度を有して形成されている。
【0041】
一次包材の別の好ましい一実施の形態において、クロージャは、ISO 8872:2003に応じて形成されており、好ましくは、100N/mm~180N/mmの引っ張り強さおよび少なくとも80N/mmの破断伸びを有して形成されている。
【0042】
一次包材の別の好ましい一実施の形態において、中空体は、ISO 11040-1:2015(E)に応じて形成されており、好ましくは、肩部と首部との間に35°~45°の角度、首部とフランジとの間に10°~20°の角度、そしてフランジと口との間に9°~13°の角度を有して形成されている。
【0043】
一次包材の別の好ましい一実施の形態において、クロージャは、ISO 11040-3:2012(E)に応じて形成されており、好ましくは、1.3mm~1.5mmまたは1.45mm~1.95mmの高さ、7.5mmの直径および3.0mmの刺通領域(8)の直径を有して形成されている。
【0044】
中空体およびクロージャを上述の規格に則って形成することは、本発明に係る一次包材が既存の確立した装置および方法で使用され得るという利点を含んでいる。
【0045】
さらに本発明は、一次包材を製造する方法であって、
中空体と、クロージャの少なくとも一部と、から選択されるコンポーネントの少なくとも1つを任意選択的に用意するステップaと、
中空体と、クロージャの少なくとも一部とから選択される残余のコンポーネントを射出成形法で製造するステップbと、
を含み、
クロージャは、開口部を閉鎖し、破壊することなしには分離不能な結合が、クロージャと中空体との間に生じる、
一次包材を製造する方法を含んでいる。
【0046】
方法の好ましい一実施の形態において、ステップaでクロージャを用意し、ステップbで中空体を射出成形法で製造し、シクロオレフィンポリマーまたはシクロオレフィンコポリマーを使用し、クロージャを覆うように射出成形し、好ましくは、クロージャと中空体とをマクロ形状結合式に結合する。
【0047】
一次包材を製造するのに、射出成形またはその他の方法で製造したクロージャの前置が可能である。複数のパーツからなるクロージャを前置してもよい。前置したクロージャを覆うように、好ましくは、シクロオレフィンポリマーまたはシクロオレフィンコポリマーを射出成形し、その際に中空体を形成する。
【0048】
方法の好ましい一実施の形態において、ステップaで、開口部を有する中空体を用意し、任意選択的にクロージャの少なくとも一部を開口部上に載置し、ステップbで、熱可塑性のエラストマーによる射出成形でクロージャを完全に形成し、好ましくは、クロージャと中空体とを素材結合式および/またはミクロ形状結合式に結合する。
【0049】
一次包材を製造するのに、射出成形またはその他の方法で製造した中空体の前置が可能である。付加的にクロージャの第1の部分、好ましくは、通常のエラストマーを前置してもよい。前置したこれらの部材を覆うように、好ましくは、熱可塑性のエラストマーを射出成形し、その際にクロージャの第2の部分を形成する。さらに、クロージャの一部を前置することなく、前置した中空体を覆うように射出成形を行ってもよい。この場合は、前置した中空体を覆うように、好ましくは、熱可塑性のエラストマーを射出成形し、その際にクロージャ全体を形成する。
【0050】
方法の好ましい一実施の形態において、ステップaで、任意選択的にクロージャの少なくとも一部を用意し、ステップbで、マルチコンポーネント射出成形で、シクロオレフィンポリマーまたはシクロオレフィンコポリマーを射出成形して中空体を製造し、熱可塑性のエラストマーを射出成形してクロージャを完全に形成し、好ましくは、クロージャと中空体とをマクロ形状結合式および/または素材結合式および/またはミクロ形状結合式に結合する。
【0051】
好ましくは、一次包材全体、つまり中空体とクロージャとをマルチコンポーネント射出成形により全体として製造する。マルチコンポーネント射出成形時、2つ以上のそれぞれ異なるプラスチックからなる1つの射出成形部材を製造することができる。マルチコンポーネント射出成形法により、異なるプラスチックを互いに接するように射出成形し、而してプラスチック間の物理的な結合を形成することが可能である。マルチコンポーネント射出成形用の射出成形機は、通例、射出ユニットを2つ以上有し、かつ型締めユニットを1つだけ有している。さらに、予め射出成形したまたはその他の方法で予め製造した部材を、これを覆うように射出成形を行うべく、インサートしてもよい。マルチコンポーネント射出成形の種々の方法が可能である。而して、とりわけ明確に分けられたコンポーネントによるマルチコンポーネント法も実施可能である。まず予射出成形体を形成し、続いて予射出成形体を被覆するように別のコンポーネントを射出成形する。第2のコンポーネントのためのスペースを提供すべく、種々の方法、例えば移送技術、回転技術/スライド技術またはコアバック技術が可能である。マルチコンポーネント射出成形法は、1つの型のみを用いた1回の作業工程での低コストの製造を可能にする。付加的に、シングルコンポーネントの従来慣用の組み立てと比較して、小さい位置公差が実現可能である。さらに汚染のリスクは最小化される。
【0052】
方法の好ましい一実施の形態において、クロージャの少なくとも一部を、射出成形法の最中または前に、圧縮応力下に置き、圧縮応力を、射出成形した材料の冷却後、残留させる。
【0053】
クロージャは、これを覆うようにまたはこれに付着させるように射出成形を行う射出成形中、圧縮を受ける。圧縮は、圧力をクロージャに及ぼす構成部材により引き起こされてもよい。好ましくは、圧力を及ぼす構成部材は、射出成形の終了前に再び、クロージャに対する圧縮応力は維持したまま除去される。
【0054】
方法の好ましい一実施の形態において、中空体とクロージャとの間の接触面の少なくとも一部を、好ましくは、少なくとも一方の表面、好ましくは両方の表面の活性化、粗面化または構造化により、前処理する。
【0055】
表面の活性化は、とりわけ火炎、プラズマまたはコロナにより実施され得る。表面の粗面化は、機械的または化学的に実施され得る。表面の構造化は、溝および格子等のパターン、化学的な機能化またはコーティングを包含し得る。その際、中空体か、クロージャの接触面の表面だけを前処理してもよいし、両方の表面を前処理してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1】本発明に係る一次包材の第1の実施の形態の断面図である。
図2】本発明に係る一次包材の第2の実施の形態の断面図である。
図3】本発明に係る一次包材の第3の実施の形態の断面図である。
図4】本発明に係る一次包材の第4の実施の形態の断面図である。
図5a】刺通領域を有するクロージャの第1の実施の形態の概略図である。
図5b】刺通領域を有するクロージャの第2の実施の形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
図1は、本発明に係る一次包材の好ましい第1の実施の形態の断面図を示している。中空体(1)は、その外面に環状に延びる形状結合要素(5)を有している。中空体(1)の開口部(3)は、クロージャ(2)により閉鎖される。中空体(1)とクロージャ(2)とは、マクロ形状結合式に結合されている。クロージャ(2)は、口(2)の領域で中空体(1)の内面に設けられたノッチに係合している。クロージャ(2)は、中央部に、刺通領域(4)を形成する、貫通した体積要素を有している。中空体(1)は、シクロオレフィンポリマーまたはシクロオレフィンコポリマーからなっており、クロージャ(2)は、通常のエラストマーまたは熱可塑性のエラストマーからなっている。中空体(1)の壁厚さは、0.5mm~3mmである。好ましい第1の実施の形態を製造するには、クロージャ(2)を用意し、射出成形で、クロージャ(2)を覆うようにシクロオレフィンポリマーまたはシクロオレフィンコポリマーを射出成形して中空体(1)を形成する。
【0058】
図2は、本発明に係る一次包材の好ましい第2の実施の形態の断面図を示している。中空体(1)は、その外面に少なくとも2つの屈曲した形状結合要素(5)を有している。中空体(1)の開口部(3)は、クロージャ(2)により閉鎖される。クロージャ(2)は、下側のクロージャ層(2a)と上側のクロージャ層(2b)とを有している。下側のクロージャ層(2a)は、上側のクロージャ層(2b)によって、ミクロ形状結合式およびマクロ形状結合式に開口部(3)上に保持される。下側のクロージャ層(2a)は、中空体(1)および上側のクロージャ層(2b)に対する接触面において軸方向の圧縮応力下にあってもよい。上側のクロージャ層(2b)と中空体(1)とは、素材結合式および/またはミクロ形状結合式に結合されている。中空体(1)は、上側のクロージャ層(2b)との接触面を拡大させるべく、開口部(3)の領域の外面にノッチを有している。クロージャ(2)は、中央部に、刺通領域(4)を形成する、下側のクロージャ層(2a)と上側のクロージャ層(2b)とを貫く体積要素を有している。中空体(1)は、シクロオレフィンポリマーまたはシクロオレフィンコポリマーからなっている。下側のクロージャ層(2a)は、通常のエラストマーからなっており、上側のクロージャ層(2b)は、熱可塑性のエラストマーからなっている。中空体(1)の壁厚さは、0.5mm~3mmである。好ましい第2の実施の形態を製造するには、下側のクロージャ層(2a)を用意し、マルチコンポーネント射出成形で、シクロオレフィンポリマーまたはシクロオレフィンコポリマーを射出成形して中空体(1)を形成し、熱可塑性のエラストマーを射出成形して上側のクロージャ層(2b)を形成する。あるいは、好ましい第2の実施の形態を製造するのに、開口部(3)を有する中空体(1)を用意し、下側のクロージャ層(2a)を用意して開口部(3)上に載置し、熱可塑性のエラストマーによる射出成形で上側のクロージャ層(2b)を形成する。
【0059】
図3は、本発明に係る一次包材の好ましい第3の実施の形態の断面図を示している。中空体(1)は、胴部(6)、肩部(7)、首部(8)および縁曲げ縁部(9)を有している。中空体(1)の開口部(3)は、クロージャ(2)により閉鎖される。中空体(1)とクロージャ(2)とは、素材結合式および/またはミクロ形状結合式に結合されている。クロージャ(2)は、中央部に、刺通領域(4)を形成する、貫通した体積要素を有している。中空体(1)は、シクロオレフィンポリマーまたはシクロオレフィンコポリマーからなっており、クロージャ(2)は、熱可塑性のエラストマーからなっている。中空体(1)の壁厚さは、0.5mm~3mmである。好ましい第3の実施の形態を製造するには、マルチコンポーネント射出成形で、シクロオレフィンポリマーまたはシクロオレフィンコポリマーを射出成形して中空体(1)を製造し、熱可塑性のエラストマーを射出成形してクロージャ(2)を形成する。
【0060】
図4は、本発明に係る一次包材の好ましい第4の実施の形態の断面図を示している。中空体(1)は、胴部(6)、肩部(7)、首部(8)および縁曲げ縁部(9)を有している。中空体(1)の開口部(3)は、クロージャ(2)により閉鎖される。中空体(1)とクロージャ(2)とは、素材結合式および/またはミクロ形状結合式に結合されている。クロージャは、側方のクロージャ層(2c)を有し、側方のクロージャ層(2c)は、縁曲げ縁部(9)の少なくとも一部を覆っている。側方のクロージャ層(2c)は、一次包材の把持性を高める。クロージャ(2)は、中央部に、刺通領域(4)を形成する、貫通した体積要素を有している。中空体(1)は、シクロオレフィンポリマーまたはシクロオレフィンコポリマーからなっており、クロージャ(2)および側方のクロージャ層(2c)は、熱可塑性のエラストマーからなっている。中空体(1)の壁厚さは、0.5mm~3mmである。好ましい第4の実施の形態を製造するには、開口部(3)を有する中空体(1)を用意し、熱可塑性のエラストマーによる射出成形でクロージャ(2)および側方のクロージャ層(2c)を形成する。
【0061】
図5aおよび図5bは、それぞれ、クロージャ(2)の概略図を示している。刺通領域(4)は、クロージャ(2)の部分体積として形成されている。刺通領域(4)は、クロージャ(2)の上面から下面まで達している。このことは、カニューレを一次包材の中空体内に導入することを可能にする。クロージャは、種々異なって形成されていてもよい。図5aおよび図5bにより例示的に示す形状は、限定と解すべきものではない。むしろ形状は、開口部の領域における中空体の性状および形成による。同じことは、刺通領域(4)にもいえる。刺通領域(4)は、種々異なる幾何学的な形状で形成されていてもよい。好ましくは、刺通領域は、クロージャ(2)の残余の部分への均質な移行を示し、はっきりとした境界面を有しない。
【0062】
本発明に係る一次包材は、セプタムとアルミニウムクリンプとからなるクロージャを備える従来使用される一次包材とは根本的に相違している。中空体とクロージャとの間の本発明による結合に基づいて、中空体の形状は、相応の用途に自在に適合され得る。而して、例えばカープルの開口部の領域におけるデッドボリュームと、デッドボリュームから結果として生じる、収容した物質を取り出す際の損失と、は排除または少なくとも最小化され得る。
【0063】
さらに、本発明に係る一次包材の製造の複雑性および手間は、従来使用される一次包材と比較して低い。必要とされる構成部材の数は、少なく済み、本発明に係る一次包材は、1回のプロセスで射出成形により製造可能である。1回のプロセスステップで製造すれば、異物または菌が混入してしまうリスクは、排除または少なくとも減少され得る。これにより、総じて製造コストを下げることができる。
【符号の説明】
【0064】
1 中空体
2 クロージャ
2a 下側のクロージャ層
2b 上側のクロージャ層
2c 側方のクロージャ層
3 開口部
4 刺通領域
5 形状結合要素
6 胴部
7 肩部
8 首部
9 縁曲げ縁部
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b