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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-09
(45)【発行日】2025-07-17
(54)【発明の名称】外用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/727 20060101AFI20250710BHJP
   A61K 31/135 20060101ALI20250710BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20250710BHJP
   A61K 31/4166 20060101ALI20250710BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20250710BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20250710BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20250710BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20250710BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20250710BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20250710BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20250710BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20250710BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20250710BHJP
【FI】
A61K31/727
A61K31/135
A61K31/704
A61K31/4166
A61K47/26
A61K47/10
A61P17/00
A61K47/18
A61K8/41
A61K8/49
A61K8/60
A61K8/73
A61Q19/00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020207443
(22)【出願日】2020-12-15
(65)【公開番号】P2022094515
(43)【公開日】2022-06-27
【審査請求日】2023-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 直子
【審査官】石井 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-162322(JP,A)
【文献】特開2016-130224(JP,A)
【文献】特開2009-242324(JP,A)
【文献】特開平11-035489(JP,A)
【文献】国際公開第2016/013551(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61K 47/00-47/69
A61K 8/00- 8/99
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩、(B)グリチルリチン酸及その塩よりなる群から選択される少なくとも1種、(C)アラントイン、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、アラントインヒドロキシアルミニウム、及びアラントインジヒドロキシアルミニウムよりなる群から選択される少なくとも1種、(D)ヘパリン類似物質、並びに(E)ソルビタン脂肪酸モノエステル及び/又はポリオキシエチレンアルキルエーテルを含有し、
前記ソルビタン脂肪酸モノエステルを構成する脂肪酸の炭素数が10~22であり、
前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルを構成する酸化エチレンの平均付加モル数が5~40モル、かつアルキル基又はアルケニル基の炭素数が10~24である、外用組成物。
【請求項2】
更に(F)トリエタノールアミンを含む、請求項1に記載の外用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジフェンヒドラミン及び/又はその塩と、グリチルリチン酸、その誘導体、及び/又はそれらの塩と、アラントイン及び/又はその誘導体と、ヘパリン類似物質を含み、保存によって生じる変色を抑制できる外用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ジフェンヒドラミン及びその塩には抗ヒスタミン作用があること、グリチルリチン酸及びその塩には抗炎症作用があること、アラントインには組織修復賦活作用、抗炎症作用等があること、ヘパリン類似物質には保湿作用、血行促進作用等があることが知られている。
【0003】
近年、外用組成物には、多機能性が求められており、前述する成分を併用した製剤処方が報告されている。例えば、特許文献1には、(A)ヘパリン類似物質と、(B)トコフェロール、トコフェロール酢酸エステル、ニコチン酸トコフェロール、リノレン酸トコフェロール、コハク酸トコフェロール、パンテノール及びビタミンA類からなる群より選択される少なくとも一種と、(C)グリチルリチン酸、グリチルレチン酸、グリチルレチン酸ステアリル、アラントイン、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種の抗炎症剤と、(D)ジフェンヒドラミン及び塩酸ジフェンヒドラミンからなる群から選択される少なくとも一種の鎮痒剤とを含む皮膚外用製剤が、痒みを伴う乾燥性皮膚疾患を根本的に治療し得ることが記載されている。
【0004】
しかしながら、外用組成物を実用化するには、機能性のみならず、製剤安定性についても十分な配慮する必要があるが、従来技術では、前述する成分を併用した外用組成物の製剤安定性については十分な検討がなされていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-196419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、ジフェンヒドラミン及び/又はその塩と、グリチルリチン酸、その誘導体、及び/又はそれらの塩と、アラントインと、ヘパリン類似物質を含む外用組成物を実用化すべく検討を進めたところ、当該外用組成物では、保存によって変色(黄変)が生じ、良好な外観性状を維持できず、製剤安定性が悪いという新たな課題を知得した。
【0007】
そこで、本発明の目的は、ジフェンヒドラミン及び/又はその塩と、グリチルリチン酸、その誘導体、及び/又はそれらの塩と、アラントイン及び/又はその誘導体と、ヘパリン類似物質を含む外用組成物において、保存によって生じる変色を抑制でき、優れた製剤安定性を備えさせる製剤技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、ジフェンヒドラミン及び/又はその塩と、グリチルリチン酸、その誘導体及び/又はそれらの塩と、アラントイン及び/又はその誘導体と、ヘパリン類似物質と共に、ソルビタン脂肪酸エステル及び/又はポリオキシエチレンアルキルエーテルを組み合わせて配合した外用組成物は、保存によって生じる変色(黄変)が抑制され、優れた製剤安定性を備え得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0009】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩、(B)グリチルリチン酸、その誘導体及びそれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種、(C)アラントイン及び/又はその誘導体、(D)ヘパリン類似物質、並びに(E)ソルビタン脂肪酸エステル及び/又はポリオキシエチレンアルキルエーテルを含有する、外用組成物。
項2. 更に(F)トリエタノールアミンを含む、項1に記載の外用組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明の外用組成物によれば、ジフェンヒドラミン及び/又はその塩と、グリチルリチン酸及び/又はその塩と、アラントインと、ヘパリン類似物質を含んでいながらも、保存による変色を抑制でき、優れた製剤安定性を備えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.外用組成物
本発明の外用組成物は、(A)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩、(B)グリチルリチン酸、その誘導体及びそれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種、(C)アラントイン及び/又はその誘導体、(D)ヘパリン類似物質、並びに(E)ソルビタン脂肪酸エステル及び/又はポリオキシエチレンアルキルエーテルを含有することを特徴とする。以下、本発明の外用組成物について詳述する。
【0012】
[(A)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩]
本発明の外用組成物は、ジフェンヒドラミン及び/又はその塩((A)成分と表記することもある)を含有する。ジフェンヒドラミンは、抗ヒスタミン作用があることが知られている公知の薬剤である。
【0013】
ジフェンヒドラミンの塩としては、薬学的に許容されるものである限り特に制限されないが、具体的には、塩酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、サリチル酸塩、ジフェニルジスルホン酸塩、タンニン酸塩、ラウリル硫酸塩、硫酸塩等の酸付加塩が挙げられる。これらの塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0014】
本発明の外用組成物は、(A)成分として、ジフェンヒドラミン及びその塩の中から、1種を選択して使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0015】
これらの(A)成分の中でも、好ましくはジフェンヒドラミン、塩酸ジフェンヒドラミンが挙げられる。
【0016】
本発明の外用組成物における(A)成分の含有量としては、外用組成物に備えさせるべき薬効の程度等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、(A)成分の総量で0.01~5重量%、好ましくは0.05~3重量%、より好ましくは0.1~2重量%、更に好ましくは0.2~0.8重量%が挙げられる。
【0017】
[(B)グリチルリチン酸、その誘導体及び/又はその塩]
本発明の外用組成物は、グリチルリチン酸、その誘導体及びそれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種((B)成分と表記することもある)を含有する。グリチルリチン酸は、抗炎症作用や抗アレルギー作用等を有することが知られている公知の薬剤である。
【0018】
グリチルリチン酸の誘導体としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、具体的には、グリチルリチン酸メチル、グリチルリチン酸ステアリル等が挙げられる。
【0019】
グリチルリチン酸及び/又はその誘導体の塩としては、薬学的に許容されるものである限り特に制限されないが、具体的には、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0020】
本発明の外用組成物は、(B)成分として、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸の誘導体、及びその塩の中から、1種を選択して使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0021】
これらの(B)成分の中でも、好ましくはグリチルリチン酸及びその塩、より好ましくはグリチルリチン酸の塩、更に好ましくはグリチルリチン酸二カリウムが挙げられる。
【0022】
本発明の外用組成物における(B)成分の含有量としては、外用組成物に備えさせるべき薬効の程度等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、(B)成分の総量で0.01~5重量%、好ましくは0.05~2重量%、更に好ましくは0.1~1重量%が挙げられる。
【0023】
本発明の外用組成物において、(A)成分と(B)成分の比率については、(A)成分及び(B)成分の各含有量に応じて定まるが、例えば、(A)成分の総量1重量部当たり、(B)成分が総量で0.01~100重量部、好ましくは0.1~10重量部、より好ましくは0.5~5重量部が挙げられる。
【0024】
[(C)アラントイン及び/又はその誘導体]
本発明の外用組成物は、アラントイン及び/又はその誘導体((C)成分と表記することもある)を含有する。アラントインは、5-ウレイドヒダントインとも称される化合物であり、組織修復賦活作用、抗炎症作用、鎮痒作用等を有することが知られている公知の薬剤である。
【0025】
アラントインの誘導体としては、薬学的に許容できることを限度として特に制限されないが、具体的には、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、アラントインヒドロキシアルミニウム、アラントインジヒドロキシアルミニウム、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム等が挙げられる。
【0026】
本発明の外用組成物は、(C)成分として、アラントイン及びその誘導体の中から、1種を選択して使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
これらの(C)成分の中でも、好ましくはアラントインが挙げられる。
【0028】
本発明の外用組成物における(C)成分の含有量としては、外用組成物に備えさせるべき薬効の程度等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、(C)成分の総量で0.01~5重量%、好ましくは0.1~3重量%、より好ましくは0.2~1重量%が挙げられる。
【0029】
本発明の外用組成物において、(A)成分と(C)成分の比率については、(A)成分及び(C)成分の各含有量に応じて定まるが、例えば、(A)成分の総量1重量部当たり、(C)成分が総量で0.001~20重量部、好ましくは0.005~1重量部、より好ましくは0.05~5重量部が挙げられる。
【0030】
[(D)ヘパリン類似物質]
本発明の外用組成物は、ヘパリン類似物質((D)成分と表記することもある)を含有する。ヘパリン類似物質は、コンドロイチン多硫酸等の多硫酸化ムコ多糖であり、保湿作用や血行促進作用等を有することが知られている公知の薬剤である。
【0031】
本発明で使用されるヘパリン類似物質の由来については、特に制限されないが、例えば、ムコ多糖類を多硫酸化することにより得られたもの、食用獣の組織(例えば、ウシの気管軟骨を含む肺臓)から抽出したもの等が挙げられる。本発明の外用乳化組成物では、ヘパリン類似物質として、日本薬局方外医薬品規格に収戴されているヘパリン類似物質が好適に使用される。
【0032】
本発明の外用組成物における(D)成分の含有量としては、外用組成物に備えさせるべき薬効の程度等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、(D)成分の総量で0.01~10重量%、好ましくは0.05~0.5重量%、より好ましくは0.1~0.4重量%が挙げられる。
【0033】
本発明の外用組成物において、(A)成分と(D)成分の比率については、(A)成分及び(D)成分の各含有量に応じて定まるが、例えば、(A)成分の総量1重量部当たり、(D)成分が総量で0.001~20重量部、好ましくは0.005~1重量部、より好ましくは0.06~6重量部が挙げられる。
【0034】
[(E)ソルビタン脂肪酸エステル及び/又はポリオキシエチレンアルキルエーテル]
本発明の外用組成物は、ソルビタン脂肪酸エステル及び/又はポリオキシエチレンアルキルエーテル((E)成分と表記することもある)を含有する。従来技術では、前記(A)~(D)成分を含む医薬組成物では、保存によって生じる変色が生じるが、本発明の医薬組成物では、前記(A)~(D)成分と共に(E)成分を含むことにより、保存により生じる変色を抑制し、優れた製剤安定性を備えることが可能になっている。
【0035】
ソルビタン脂肪酸エステルとは、ソルビタンと脂肪酸のエステルであり、公知のノニオン性界面活性剤である。ソルビタン脂肪酸エステル1分子当たりに結合している脂肪酸の数としては、特に制限されないが、例えば、1~4個、好ましくは1~3個、より好ましくは1又は2個、更に好ましくは1個が挙げられる。ソルビタン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の炭素数としては、特に制限されないが、例えば、10~22個、好ましくは14~22個、より好ましくは16~20個が挙げられる。ソルビタン脂肪酸エステルとして、具体的には、モノオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、ヤシ油脂肪酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン等が挙げられる。これらのソルビタン脂肪酸エステルの中でも、保存による変色をより一層効果的に抑制するという観点から、好ましくはモノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、より好ましくはモノステアリン酸ソルビタンが挙げられる。
【0036】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルとは、ポリオキシエチレン鎖がアルキル基又はアルケニル基とエーテル結合している化合物であり、公知のノニオン性界面活性剤である。ポリオキシエチレンアルキルエーテルを構成する酸化エチレン(EO)の平均付加モル数としては、特に制限されないが、例えば、5~40モル、好ましくは10~30モル、より好ましくは15~25モルが挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテルを構成するアルキル基又はアルケニル基の炭素数としては、特に制限されないが、例えば、10~24個、好ましくは14~24個、より好ましくは15~24個が挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテルとして、具体的には、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル等が挙げられる。これらのポリオキシエチレンアルキルエーテルの中でも、保存による変色をより一層効果的に抑制するという観点から、好ましくはポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、より好ましくはポリオキシエチレンベヘニルエーテルが挙げられる。
【0037】
本発明の外用組成物は、(E)成分として、ソルビタン脂肪酸エステル及びポリオキシエチレンアルキルエーテルの中から、1種を選択して使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0038】
保存による変色をより一層効果的に抑制するという観点から、(E)成分として、ソルビタン脂肪酸エステルとポリオキシエチレンアルキルエーテルを組み合わせて使用することが好ましい。ソルビタン脂肪酸エステルとポリオキシエチレンアルキルエーテルを組み合わせて使用する場合、これらの比率については、特に制限されないが、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル1重量部当たり、ポリオキシエチレンアルキルエーテルが0.01~150重量部、好ましくは0.05~15重量部、より好ましくは0.1~20重量部が挙げられる。
【0039】
本発明の外用組成物における(E)成分の含有量としては、例えば、(E)成分の総量で0.1~25重量%、好ましくは0.5~12重量%、より好ましくは1~12重量%が挙げられる。より具体的には、ソルビタン脂肪酸エステルの場合であれば、本発明の外用組成物におけるソルビタン脂肪酸エステルの含有量として、例えば、0.1~10重量%、好ましくは0.5~5重量%、より好ましくは1~5重量%が挙げられる。また、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの場合であれば、本発明の外用組成物におけるポリオキシエチレンアルキルエーテルの含有量として、例えば、0.1~15重量%、0.5~7重量%、より好ましくは1.5~7重量%が挙げられる。
【0040】
本発明の外用組成物において、(A)成分と(E)成分の比率については、(A)成分及び(E)成分の各含有量に応じて定まるが、例えば、(A)成分の総量1重量部当たり、(E)成分が総量で0.01~160重量部、好ましくは0.05~130重量部、より好ましくは0.2~80重量部が挙げられる。より具体的には、ソルビタン脂肪酸エステルの場合であれば、(A)成分の総量1重量部当たり、ソルビタン脂肪酸エステルが0.01~60重量部、好ましくは0.05~40重量部、より好ましくは0.2~30重量部が挙げられる。また、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの場合であれば、(A)成分の総量1重量部当たり、ポリオキシエチレンアルキルエーテルが0.01~100重量部、好ましくは0.05~70重量部、より好ましくは0.4~50重量部が挙げられる。
【0041】
[(F)トリエタノールアミン]
本発明の外用組成物は、必要に応じて、トリエタノールアミン((F)成分と表記することもある)が含まれていてもよい。特に、本発明の外用組成物の剤型がクリーム剤である場合に、前記(A)~(E)成分に加えてトリエタノールを含んでいると、クリーム剤の硬さと塗布時の皮膚上での伸びの双方が良好になり、優れた使用感を備えさせることができる。
【0042】
本発明の外用組成物に(F)成分を含有させる場合、その含有量については、特に制限されないが、例えば、0.001~10重量%、好ましくは0.01~4重量%、より好ましくは0.05~4重量%、更に好ましくは0.2~1重量%が挙げられる。
【0043】
本発明の外用組成物に(F)成分を含有させる場合、(A)成分と(F)成分の比率については、(A)成分及び(F)成分の各含有量に応じて定まるが、例えば、(A)成分の総量1重量部当たり、(F)成分が0.001~20重量部、好ましくは0.005~10重量部、より好ましくは0.05~5重量部、更に好ましくは0.4~5重量部が挙げられる。
【0044】
[(E)成分以外の界面活性剤]
本発明の外用組成物は、必要に応じて、前記(E)成分以外の界面活性剤を含んでいてもよい。前記(E)成分以外の界面活性剤としては、前記(E)成分以外のノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。これらの界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの界面活性剤の中でも、好ましくはノニオン性界面活性剤が挙げられる。
【0045】
本発明で使用されるノニオン性界面活性剤(前記(E)成分以外)としては、薬学的に許容されることを限度として、特に制限されないが、例えば、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が挙げられる。これらのノニオン性界面活性剤(前記(E)成分以外)は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0046】
これらのノニオン性界面活性剤の中でも、好ましくはポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルが挙げられる。
【0047】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを構成する酸化エチレン(EO)の平均付加モル数としては、特に制限されないが、例えば、5~40モル、好ましくは10~30モル、より好ましくは15~25モルが挙げられる。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の炭素数としては、特に制限されないが、例えば、10~22個、好ましくは14~22個、より好ましくは16~20個が挙げられる。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとして、具体的には、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン等が挙げられる。これらのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの中でも、好ましくは酸化エチレン(EO)の平均付加モル数が20であるモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート60)が挙げられる。
【0048】
グリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の炭素数としては、例えば、10~22個、好ましくは14~22個、より好ましくは16~20個が挙げられる。グリセリン脂肪酸1分子当たりに結合している脂肪酸の数としては、特に制限されないが、例えば、1~3個、好ましくは1又は2個、より好ましくは1個が挙げられる。グリセリン脂肪酸エステルとして、具体的には、モノステアリン酸グリセリル、モノイソステアリン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、ジミリスチン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル等が挙げられる。これらのグリセリン脂肪酸エステルの中でも、好ましくは、モノステアリン酸グリセリルが挙げられる。
【0049】
本発明の外用組成物に前記(E)成分以外の界面活性剤を含有させる場合、その含有量については、特に制限されないが、例えば、前記(E)成分以外の界面活性剤の総量で0.01~20重量%、好ましくは0.05~10重量%、より好ましくは0.1~5重量%が挙げられる。
【0050】
[多価アルコール]
本発明の外用組成物には、必要に応じて、多価アルコールが含まれていてもよい。多価アルコールとしては、薬学的に許容されることを限度として、特に制限されないが、例えば、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等が挙げられる。これらの多価アルコールの中でも、好ましくは1,3-ブチレングリコール、グリセリン、より好ましくは1,3-ブチレングリコールが挙げられる。これらの多価アルコールは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0051】
本発明の外用組成物に、多価アルコールを含有させる場合、その含有量については、特に制限されないが、例えば、多価アルコールの総量で1~30重量%、好ましくは2~25重量%、より好ましくは4~20重量%が挙げられる。
【0052】
[油性基剤]
本発明の外用組成物は、所望の製剤形態への調製等のために、必要に応じて、油性基剤が含まれていてもよい。油性基剤としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、高級アルコール、炭化水素油、脂肪酸アルキルエステル、脂肪酸、植物油、動物油、シリコーンオイル等が挙げられる。これらの油性基剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0053】
これらの油性基剤の中でも、好ましくは高級アルコール、炭化水素油、脂肪酸アルキルエステルが挙げられる。
【0054】
高級アルコールとしては、薬学的に許容されるものである限り特に制限されないが、例えば、炭素数12~34の1価アルコールが挙げられ、具体的には、ラウリルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリシルアルコール、ゲジルアルコール等が挙げられる。これらの高級アルコールの中でも、好ましくはセタノール、ステアリルアルコールが挙げられる。
【0055】
炭化水素油としては、薬学的に許容されるものである限り特に制限されないが、例えば、流動パラフィン、α-オレフィンオリゴマー、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、水添ポリイソブテン等が挙げられる。これらの炭化水素油の中でも、好ましくは流動パラフィン、ワセリンが挙げられる。
【0056】
脂肪酸アルキルエステルとしては、例えば、炭素数4~30の脂肪酸と炭素数1~34のアルコールのエステルが挙げられ、具体的には、アジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、セバシン酸ジエチル等が挙げられる。これらの脂肪酸アルキルエステルの中でも、好ましくはミリスチン酸イソプロピルが挙げられる。
【0057】
本発明の外用組成物に油性基剤を含有させる場合、その含有量については、製剤形態、使用感等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、油性基剤の総量で0.1~60重量%、好ましくは1~40重量%、より好ましくは10~30重量%が挙げられる。
【0058】
[水]
本発明の皮膚の外用組成物は、基材として水を含有することができる。本発明の外用組成物に油性基剤を含有させる場合、その含有量については、製剤形態、使用感等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、10~90重量%、好ましくは20~85重量%、更に好ましくは40~85重量%が挙げられる。
【0059】
[その他の成分]
本発明の外用組成物は、前述する成分の他に、必要に応じて、通常使用される他の添加剤が含まれていてもよい。このような添加剤としては、例えば、1価低級アルコール、増粘剤、溶剤、pH調節剤、緩衝剤、可溶化剤、防腐剤、保存剤、酸化防止剤、安定化剤、香料、着色料等が挙げられる。本発明の外用組成物において、これらの添加剤を含有させる場合、その含有量については、使用する添加剤の種類等に応じて適宜設定すればよい。
【0060】
本発明の外用組成物は、前述する成分の他に、薬理成分が含まれていてもよい。このような薬理成分としては、例えば、ステロイド剤、抗ヒスタミン剤((A)成分以外)、局所麻酔剤、抗炎症剤((B)成分及び(C)成分以外)、保湿剤((D)成分以外)、殺菌剤、抗菌剤、鎮痒剤、皮膚保護剤、血行促進成分((D)成分以外)、ビタミン類、ムコ多糖類等が挙げられる。これらの薬理成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、本発明の外用組成物において、これらの薬理成分を含有させる場合、その濃度については、使用する薬理成分の種類、期待する効果等に応じて適宜設定すればよい。
【0061】
[pH]
本発明の外用組成物のpHについては、特に制限されないが、例えば2~9、好ましくは3~8、より好ましくは4~7.5、更に好ましくは4~5.5が挙げられる。
【0062】
[剤型・製剤形態]
本発明の外用組成物の剤型については、経皮適用可能であることを限度として特に制限されず、液状、半固形状(クリーム状、ゲル状、軟膏状、ペースト状)、固形状等のいずれであってもよいが、好ましくは液状又は半固形状が挙げられる。また、本発明の外用組成物は、水中油型乳化製剤、油中水型乳化製剤等の乳化製剤であってもよく、また可溶化型製剤、水性軟膏等の非乳化製剤であってもよい。本発明の外用組成物として、好ましくはクリーム状の水中油型乳化製剤が挙げられる。
【0063】
本発明の外用組成物の製剤形態として、具体的には、クリーム剤、ローション剤、ジェル剤、乳液剤、液剤、パップ剤、貼付剤、リニメント剤、エアゾール剤、水性軟膏剤、パック剤等の皮膚外用医薬品;水性軟膏、クリーム、乳液、化粧水、ローション、パック、ゲル等の化粧料等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは皮膚外用医薬品が挙げられる。
【0064】
本発明の外用組成物は、(A)~(D)成分に基づく薬効が奏されるので、例えば、きずややけどのあとの皮膚のしこりやつっぱり;ひじ、ひざ、かかと、くるぶしの角化症;手指の荒れ、手足のひびやあかぎれ;乾皮症、小児の乾燥性皮ふ、しもやけ、打身やねんざ後の晴れ、筋肉痛や関節痛、肌荒れ、乾燥性皮膚疾患、炎症性皮膚疾患、肥厚性瘢痕、ケロイド等の改善に使用できる。
【実施例
【0065】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0066】
試験例1
表1及び2に示す組成の外用組成物(クリーム状の水中油型乳化製剤)を調製した。具体的には、先ず、界面活性剤(モノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、モノステアリン酸グリセリル、ポリソルベート60、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60)、及び油性基剤(ステアリルアルコール、セタノール、白色ワセリン、流動パラフィン、ミリスチン酸イソプロピル、ジフェンヒドラミン)を所定量混合し、80℃で加熱溶解することにより、油相用組成物を調製した。また、別途、グリチルリチン酸二カリウム、アラントイン、ヘパリン類似物質、カルボキシビニルポリマー、1,3-ブチレングリコール、クエン酸、及び水を所定量混合することにより、水相用組成物を調製した。次いで、80℃に加熱した水相用組成物を、80℃に加熱している油相用組成物に徐々に添加し混合して乳化操作を行い、外用組成物(クリーム状の水中油型乳化製剤)を得た。製造直後の外用組成物は、いずれも白色を呈していた。
【0067】
得られた各外用組成物10gを13.5ml容のガラス瓶に充填し、50℃の遮光条件で1カ月間保存した。1カ月間保存後の各外用組成物の外観を目視にて観察し、「黄変が全く認められず、実用化に全く問題ない状態」を15点、「著しい黄変が認められ、実用化に不適合である状態」を1点として、黄変の程度を1~15点の間で評点化した。
【0068】
結果を表1及び2に示す。ジフェンヒドラミン、グリチルリチン酸二カリウム、及びアラントインを含む外用組成物において、ヘパリン類似物質を含まない場合には、保存による黄変は生じなかった(参考例1及び2)。一方、ジフェンヒドラミン、グリチルリチン酸二カリウム、アラントイン、及びヘパリン類似物質含む外用組成物では、ソルビタン脂肪酸エステル又はポリオキシエチレンアルキルエーテルを含まない場合には、保存によって顕著な黄変が認められた(比較例1~3)。
【0069】
これに対して、ジフェンヒドラミン、グリチルリチン酸二カリウム、アラントイン、及びヘパリン類似物質と共に、ソルビタン脂肪酸エステル及び/又はポリオキシエチレンアルキルエーテルを含む外用組成物では、保存による黄変を効果的に抑制できていた(実施例1~9)。特に、ソルビタン脂肪酸エステルとポリオキシエチレンアルキルエーテルの双方を含む場合には保存による黄変を抑制する効果が更に向上しており(実施例1及び6~9)、とりわけモノステアリン酸ソルビタンとポリオキシエチレンベヘニルエーテルを併用した場合では、保存による黄変を格段顕著に抑制できていた(実施例1及び6)。また、実施例1~9の各外用組成物のpHを4.2又は5.5に変更した外用組成物においても、実施例1~9と同様に保存による黄変を抑制できていた。また、実施例9の外用組成物におけるモノオレイン酸ソルビタンをモノパルミチン酸ソルビタンに変更し、かつ、ポリオキシエチレンセチルエーテルをポリオキシエチレンステアリルエーテル(酸化エチレンの平均付加モル数が20)に変更した外用組成物においても、実施例9と同程度に黄変を抑制できていた。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
試験例2
表3に示す組成の外用組成物(クリーム状の水中油型乳化製剤)を前記試験例1と同様の手法で調製した。被験者10名が、得られた各外用組成物2gを腕部に塗布し、塗布時の硬さ、伸び、及び総合的な塗布感について評価した。硬さの評価は、「硬い」、「やや硬い」、「ちょうどよい」、「やや柔らかい」、及び「柔らかい」の5段階で評価し、「ちょうどよい」と評価した被験者の合計人数の割合(%)の小数点第一を四捨五入した値を、硬さのスコアとして算出した。また、伸びの評価は、「強い」、「やや強い」、「ちょうどよい」、「やや弱い」、及び「弱い」の5段階で評価し、「ちょうどよい」と評価した被験者の合計人数の割合(%)の小数点第一を四捨五入した値を、伸びのスコアとして算出した。総合的な塗布感の評価は、「良好」、「やや良好」、「やや不良」、及び「不良」の4段階で評価し、「良好」と評価した被験者の合計人数の割合(%)の小数点第一を四捨五入した値を、総合的な塗布感のスコアとして算出した。
【0073】
結果を表3に示す。この結果、ジフェンヒドラミン、グリチルリチン酸二カリウム、アラントイン、ヘパリン類似物質、ソルビタン脂肪酸エステル及び/又はポリオキシエチレンアルキルエーテルを含む外用組成物において、トリエタノールアミンを更に含む場合には、塗布時に感じる硬さと伸びのバランスが卓越しており、格段に優れた塗布感が得られることが分かった(実施例10及び11)。また、実施例10及び11の各外用組成物のpHを4.2又は5.5に変更した場合においても、実施例10及び11と同様に格段に優れた塗布感が得られた。
【0074】
【表3】
【0075】
処方例
表4に示す組成の外用組成物(クリーム状の水中油型乳化製剤)を試験例1及び2の方法で黄変の程度及び塗布感の評価を行ったところ。処方例1~8のいずれの外用組成物においても、黄変の抑制効果及び塗布感に優れていた。
【0076】
【表4】