IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 浜松ホトニクス株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-09
(45)【発行日】2025-07-17
(54)【発明の名称】観察装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20250710BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20250710BHJP
   B23K 26/53 20140101ALI20250710BHJP
【FI】
H01L21/78 B
B23K26/00 P
B23K26/53
B23K26/00 M
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021199849
(22)【出願日】2021-12-09
(65)【公開番号】P2023085678
(43)【公開日】2023-06-21
【審査請求日】2024-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100156395
【弁理士】
【氏名又は名称】荒井 寿王
(72)【発明者】
【氏名】佐野 いく
(72)【発明者】
【氏名】坂本 剛志
(72)【発明者】
【氏名】荒谷 知巳
【審査官】柴垣 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-118288(JP,A)
【文献】国際公開第2021/205964(WO,A1)
【文献】特開2017-064746(JP,A)
【文献】特開2017-159333(JP,A)
【文献】特開2021-166229(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B23K 26/00
B23K 26/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に透過性を有する透過光を用いて前記対象物を観察する装置であって、
前記透過光を前記対象物に向けて集光する集光レンズと、
前記対象物で反射した前記透過光を受光し、前記対象物を撮像する撮像部と、
前記集光レンズを前記対象物に対して相対的に移動させる移動部と、
ユーザからの入力を受け付ける入力部と、
前記透過光の収差補正を行う収差補正部と、
少なくとも前記収差補正部を制御する制御部と、を備え、
前記収差補正部は、収差補正の補正量を切替え可能に構成され、
前記制御部は、
前記対象物における透過光入射面側の第1区間を前記撮像部で撮像する場合の前記収差補正部による収差補正である第1区間用収差補正と、前記対象物における内部の第2区間を前記撮像部で撮像する場合の前記収差補正部による収差補正である第2区間用収差補正と、前記対象物における透過光入射面の反対面側の第3区間を前記撮像部で撮像する場合の前記収差補正部による収差補正である第3区間用収差補正と、の少なくとも何れかの補正量を、前記入力部で受け付けた入力に応じて切り替える、観察装置。
【請求項2】
前記収差補正部は、収差補正の補正量を少なくとも第1補正量と第2補正量と第3補正量との間で切替え可能に構成され、
前記制御部は、
前記第1区間用収差補正、前記第2区間用収差補正及び前記第3区間用収差補正の補正量を、前記入力部で受け付けた入力に応じて、前記第1補正量、前記第2補正量及び前記第3補正量の中で切り替える、請求項1に記載の観察装置。
【請求項3】
前記集光レンズは、第1集光レンズ、第2集光レンズ及び第3集光レンズを有し、
前記収差補正部は、
前記第1集光レンズに設けられ、前記第1補正量の収差補正を実現する第1収差補正部と、
前記第2集光レンズに設けられ、前記第2補正量の収差補正を実現する第2収差補正部と、
前記第3集光レンズに設けられ、前記第3補正量の収差補正を実現する第3収差補正部と、
前記第1集光レンズ、前記第2集光レンズ及び前記第3集光レンズが取り付けられ、前記第1集光レンズ、前記第2集光レンズ及び前記第3集光レンズの何れかを前記透過光の光軸上に配置すると共に、前記透過光の光軸上に配置する前記第1集光レンズ、前記第2集光レンズ及び前記第3集光レンズの何れかが切り替わるように可動するレボルバと、を有する、請求項2に記載の観察装置。
【請求項4】
前記第1補正量は、前記第2補正量よりも小さく、
前記第2補正量は、前記第3補正量よりも小さい、請求項2又は3に記載の観察装置。
【請求項5】
前記第1区間用収差補正は、前記対象物における透過光入射面に露出する亀裂の有無を検査するための収差補正であり、
前記第3区間用収差補正は、前記対象物における透過光入射面の反対面に露出する亀裂の有無を検査するための収差補正である、請求項1~3の何れか一項に記載の観察装置。
【請求項6】
前記第2区間用収差補正は、前記対象物の内部に形成された改質領域を検査するための収差補正である、請求項5に記載の観察装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記移動部による前記集光レンズの移動量と補正係数とに基づいて、検出対象の位置に関する情報を取得し、
前記第1区間用収差補正、前記第2区間用収差補正及び前記第3区間用収差補正の補正量の切替えに応じて、前記補正係数を切り替える、請求項1~6の何れか一項に記載の観察装置。
【請求項8】
前記入力部は、前記対象物に対して行う検査の内容に関する入力を受け付け、
前記制御部は、
前記第1区間用収差補正、前記第2区間用収差補正及び前記第3区間用収差補正の補正量を、前記入力部で受け付けた前記検査の内容に関する入力に応じて切り替える、請求項1~7の何れか一項に記載の観察装置。
【請求項9】
前記入力部は、前記対象物に対して行うレーザ加工の加工条件の種類に関する入力を受け付け、
前記制御部は、
前記第1区間用収差補正、前記第2区間用収差補正及び前記第3区間用収差補正の補正量を、前記入力部で受け付けた前記加工条件の種類に関する入力に応じて切り替える、請求項1~8の何れか一項に記載の観察装置。
【請求項10】
前記入力部は、前記対象物の厚さに関する入力を受け付け、
前記制御部は、前記第1区間用収差補正、前記第2区間用収差補正及び前記第3区間用収差補正の補正量を、前記入力部で受け付けた前記対象物の厚さに関する入力に応じて切り替える、請求項1~9の何れか一項に記載の観察装置。
【請求項11】
前記入力部は、
入力モードが簡易入力モード及び詳細入力モードの何れであるかに関する入力を受け付けると共に、
前記入力モードとして前記詳細入力モードに関する入力を受け付けた場合に、前記第1区間用収差補正、前記第2区間用収差補正及び前記第3区間用収差補正の補正量の入力を受け付ける、請求項1~10の何れか一項に記載の観察装置。
【請求項12】
前記第1区間の前記第2区間側と前記第2区間の前記第1区間側とは、第1重複区間で互いに重複し、
前記第2区間の前記第3区間側と前記第3区間の前記第2区間側とは、第2重複区間で互いに重複し、
前記制御部は、
前記収差補正部により前記第1区間用収差補正を行いながら前記第1重複区間を前記撮像部で撮像する処理と、
前記収差補正部により前記第2区間用収差補正を行いながら前記第1重複区間を前記撮像部で撮像する撮像処理と、
前記収差補正部により前記第2区間用収差補正を行いながら前記第2重複区間を前記撮像部で撮像する処理と、
前記収差補正部により前記第3区間用収差補正を行いながら前記第2重複区間を前記撮像部で撮像する撮像処理と、を実行する、請求項1~11の何れか一項に記載の観察装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観察装置に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物に透過性を有する透過光を用いて、対象物を観察する観察装置が知られている。この種の技術として、例えば特許文献1には、レーザ加工装置に備え付けられた赤外線カメラにより、半導体基板の内部に形成された改質領域、機能素子層に形成された加工ダメージ等を観察することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-64746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような観察装置では、対象物の正確な観察を実現するべく、透過光の球面収差等を補正する収差補正が行われる場合がある。この場合、収差補正の補正量を固定すると、タクト(作業効率)は高いものの収差を十分に補正できないおそれがある。一方、集光レンズに設けられた補正環を観察の都度にユーザが回すことで、収差補正の補正量を最適化することも考えられる。しかしこの場合、例えば対象物において観察する深さ位置が変わると適正な補正量も変わることから、補正量の調整のためにタクトが低下するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、高いタクトと対象物の正確な観察との両立を実現することが可能な観察装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る観察装置は、対象物に透過性を有する透過光を用いて対象物を観察する装置であって、透過光を対象物に向けて集光する集光レンズと、対象物で反射した透過光を受光し、対象物を撮像する撮像部と、集光レンズを対象物に対して相対的に移動させる移動部と、ユーザからの入力を受け付ける入力部と、透過光の収差補正を行う収差補正部と、少なくとも収差補正部を制御する制御部と、を備え、収差補正部は、収差補正の補正量を切替え可能に構成され、制御部は、対象物における透過光入射面側の第1区間を撮像部で撮像する場合の収差補正部による収差補正である第1区間用収差補正と、対象物における内部の第2区間を撮像部で撮像する場合の収差補正部による収差補正である第2区間用収差補正と、対象物における透過光入射面の反対面側の第3区間を撮像部で撮像する場合の収差補正部による収差補正である第3区間用収差補正と、の少なくとも何れかの補正量を、入力部で受け付けた入力に応じて切り替える。
【0007】
この観察装置では、対象物において観察する区間を第1~第3区間(すなわち、対象物の透過光入射面側、内部、及び、透過光入射面の反対面側)に分け、これら第1~第3区間を観察する場合に、そのそれぞれ毎にユーザの入力に応じて切り替えられた補正量で収差補正を行うことができる。これにより、ユーザの入力に応じて適正化されるように補正量を切り替えることができると共に、当該切替えの頻度を抑えて高いタクトを維持することが可能となる。すなわち、高いタクトと対象物の正確な観察との両立を実現することが可能となる。
【0008】
本発明に係る観察装置では、収差補正部は、収差補正の補正量を少なくとも第1補正量と第2補正量と第3補正量との間で切替え可能に構成され、制御部は、第1区間用収差補正、第2区間用収差補正及び第3区間用収差補正の補正量を、入力部で受け付けた入力に応じて、第1補正量、第2補正量及び第3補正量の中で切り替えてもよい。この場合、第1区間用収差補正、第2区間用収差補正及び第3区間用収差補正の各補正量の切替えを、簡易に実現することが可能となる。
【0009】
本発明に係る観察装置では、集光レンズは、第1集光レンズ、第2集光レンズ及び第3集光レンズを有し、収差補正部は、第1集光レンズに設けられ、第1補正量の収差補正を実現する第1収差補正部と、第2集光レンズに設けられ、第2補正量の収差補正を実現する第2収差補正部と、第3集光レンズに設けられ、第3補正量の収差補正を実現する第3収差補正部と、第1集光レンズ、第2集光レンズ及び第3集光レンズが取り付けられ、第1集光レンズ、第2集光レンズ及び第3集光レンズの何れかを透過光の光軸上に配置すると共に、透過光の光軸上に配置する第1集光レンズ、第2集光レンズ及び第3集光レンズの何れかが切り替わるように可動するレボルバと、を有していてもよい。この場合、レボルバにより透過光の光軸上の集光レンズを第1~第3集光レンズの間で切り替えることで、第1区間用収差補正、第2区間用収差補正及び第3区間用収差補正の各補正量を第1~第3補正量の間で切り替えることが可能となる。
【0010】
本発明に係る観察装置では、第1補正量は、第2補正量よりも小さく、第2補正量は、第3補正量よりも小さくてもよい。このような大小関係の第1~第3補正量を利用して、補正量を適正化することが可能となる。
【0011】
本発明に係る観察装置では、第1区間用収差補正は、対象物における透過光入射面に露出する亀裂の有無を検査するための収差補正であり、第3区間用収差補正は、対象物における透過光入射面の反対面に露出する亀裂の有無を検査するための収差補正であってもよい。この場合、対象物における透過光入射面に露出する亀裂の有無、及び、対象物における透過光入射面の反対面に露出する亀裂の有無について、精度よく検査することが可能となる。また、本発明に係る観察装置では、第2区間用収差補正は、対象物の内部に形成された改質領域を検査するための収差補正であってもよい。この場合、対象物の内部に形成された改質領域について精度よく検査することが可能となる。
【0012】
本発明に係る観察装置では、制御部は、移動部による集光レンズの移動量と補正係数とに基づいて、検出対象の位置に関する情報を取得し、第1区間用収差補正、第2区間用収差補正及び第3区間用収差補正の補正量の切替えに応じて、補正係数を切り替えてもよい。この場合、対象物における検出対象(例えば改質領域等)の深さ位置を精度よく取得することが可能となる。
【0013】
本発明に係る観察装置では、入力部は、対象物に対して行う検査の内容に関する入力を受け付け、制御部は、第1区間用収差補正、第2区間用収差補正及び第3区間用収差補正の補正量を、入力部で受け付けた検査の内容に関する入力に応じて切り替えてもよい。この場合、ユーザからの検査の内容に関する入力に応じて、第1区間用収差補正、第2区間用収差補正及び第3区間用収差補正の補正量を適正化することが可能となる。
【0014】
本発明に係る観察装置では、入力部は、対象物に対して行うレーザ加工の加工条件の種類に関する入力を受け付け、制御部は、第1区間用収差補正、第2区間用収差補正及び第3区間用収差補正の補正量を、入力部で受け付けた加工条件の種類に関する入力に応じて切り替えてもよい。この場合、ユーザからの加工条件の種類に関する入力に応じて、第1区間用収差補正、第2区間用収差補正及び第3区間用収差補正の補正量を適正化することが可能となる。
【0015】
本発明に係る観察装置では、入力部は、対象物の厚さに関する入力を受け付け、制御部は、第1区間用収差補正、第2区間用収差補正及び第3区間用収差補正の補正量を、入力部で受け付けた対象物の厚さに関する入力に応じて切り替えてもよい。この場合、ユーザからの対象物の厚さに関する入力に応じて、第1区間用収差補正、第2区間用収差補正及び第3区間用収差補正の補正量を適正化することが可能となる。
【0016】
本発明に係る観察装置では、入力部は、入力モードが簡易入力モード及び詳細入力モードの何れであるかに関する入力を受け付けると共に、入力モードとして詳細入力モードに関する入力を受け付けた場合に、第1区間用収差補正、第2区間用収差補正及び第3区間用収差補正の補正量の入力を受け付けてもよい。この場合、ユーザは、入力モードとして詳細入力モードを入力することで、第1区間用収差補正、第2区間用収差補正及び第3区間用収差補正の補正量を入力することが可能となる。
【0017】
本発明に係る観察装置では、第1区間の第2区間側と第2区間の第1区間側とは、第1重複区間で互いに重複し、第2区間の第3区間側と第3区間の第2区間側とは、第2重複区間で互いに重複し、制御部は、収差補正部により第1区間用収差補正を行いながら第1重複区間を撮像部で撮像する処理と、収差補正部により第2区間用収差補正を行いながら第1重複区間を撮像部で撮像する撮像処理と、収差補正部により第2区間用収差補正を行いながら第2重複区間を撮像部で撮像する処理と、収差補正部により第3区間用収差補正を行いながら第2重複区間を撮像部で撮像する撮像処理と、を実行してもよい。この場合、対象物の第1及び第2重複区間において、より正確な観察が可能となる。また、対象物の厚さ等の入力内容に応じて第1及び第3区間用収差収差補正のみでも正確に観察可能な場合もある。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、高いタクトと対象物の正確な観察との両立を実現することが可能な観察装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、実行形態に係るレーザ加工装置を示す構成図である。
図2図2は、図1の対象物を示す平面図である。
図3図3は、図2の対象物の一部分を示す断面図である。
図4図4は、図1のレーザ加工ヘッドを示す構成図である。
図5図5は、図1の観察ユニットを示す構成図である。
図6図6は、図1の観察ユニットの透過光集光レンズ及びレボルバを示す斜視図である。
図7図7は、図1のレーザ加工装置における動作例を示すフローチャートである。
図8図8は、直接観察及び裏面反射観察を説明するための対象物の断面図である。
図9図9(a)は、第1区間用収差補正、第2区間用収差補正及び第3区間用収差補正の補正量に関するデータテーブルの例を示す図である。図9(b)は、第1区間用収差補正、第2区間用収差補正及び第3区間用収差補正の補正量に関するデータテーブルの他の例を示す図である。
図10図10は、対象物の検査のための観察を行う場合におけるGUIの入力画面の例を示す図である。
図11図11は、対象物の検査のための観察を行う場合におけるGUIの入力画面の他の例を示す図である。
図12図12は、加工条件の策定のための対象物の観察を行う場合におけるGUIの入力画面の例を示す図である。
図13図13は、加工条件の策定のための対象物の観察を行う場合におけるGUIの入力画面の他の例を示す図である。
図14図14は、図1の観察装置において対象物の検査のための観察を行う場合の処理を示すフローチャートである。
図15図15は、図14の処理を説明するための対象物の概略断面図である。
図16図16は、図1の観察装置において加工条件の策定のための観察を行う場合の処理を示すフローチャートである。
図17図17は、図16の続きを示すフローチャートである。
図18図18は、図17の続きを示すフローチャートである。
図19図19(a)は、図16の処理を説明するための対象物の概略断面図である。図19(b)は、図19(a)の続きを示す概略断面図である。
図20図20は、図19(b)の続きを示す概略断面図である。
図21図21は、収差補正の補正量と複数種の検査内容の判定との関係を示す表である。
図22図22は、第1変形例に係る観察ユニットを示す斜視図である。
図23図23は、第2変形例に係る観察ユニットを示す斜視図である。
図24図24は、第3変形例に係る観察ユニットの構成を示す概略図である。
図25図25は、第4変形例に係る観察ユニットの構成を示す概略図である。
図26図26は、変形例に係るレーザ加工装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、実施形態について、図面を参照して詳細を説明する。各図の説明において、同一又は相当する部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。各図には、X軸、Y軸及びZ軸によって規定される直交座標系を示す場合がある。一例として、X方向及びY方向は、互いに交差(直交)する第1水平方向及び第2水平方向であり、Z方向は、X方向及びY方向に交差(直交)する鉛直方向である。
【0021】
図1に示されるように、実施形態に係るレーザ加工装置1は、ステージ2と、レーザ加工ヘッド3と、アライメント用カメラ5,6と、観察ユニット4と、第1鉛直移動機構7Aと、第2鉛直移動機構7Bと、第1水平移動機構8Aと、第2水平移動機構8Bと、制御部9と、GUI(Graphical User Interface)10と、を備える。レーザ加工装置1は、対象物20にレーザ光Lを照射することにより、対象物20に改質領域12(図4参照)を形成する装置である。
【0022】
図2及び図3に示されるように、対象物20は、例えばウェハである。対象物20は、半導体基板21と、機能素子層22と、を備えている。半導体基板21は、表面21a及び裏面21bを有する。半導体基板21は、例えば、シリコン基板である。機能素子層22は、半導体基板21の表面21aに形成されている。機能素子層22は、表面21aに沿って2次元に配列された複数の機能素子22aを含む。機能素子22aは、例えば、フォトダイオード等の受光素子、レーザダイオード等の発光素子、メモリ等の回路素子等である。機能素子22aは、複数の層がスタックされて3次元的に構成される場合もある。なお、対象物20は機能素子層22を有していても有していなくてもよく、ベアウェハであってもよい。半導体基板21には、結晶方位を示すノッチ21cが設けられているが、ノッチ21cの替わりにオリエンテーションフラットが設けられていてもよい。
【0023】
対象物20は、複数のライン15のそれぞれに沿って機能素子22aごとに切断される。複数のライン15は、対象物20の厚さ方向から見た場合に複数の機能素子22aのそれぞれの間を通っている。より具体的には、ライン15は、対象物20の厚さ方向から見た場合にストリート領域23の中心(幅方向における中心)を通っている。ストリート領域23は、機能素子層22において、隣り合う機能素子22aの間を通るように延在している。本実施形態では、複数の機能素子22aは、表面21aに沿ってマトリックス状に配列されており、複数のライン15は、格子状に設定されている。なお、ライン15は、仮想的なラインであるが、実際に引かれたラインであってもよい。
【0024】
図1に示されるように、ステージ2上には、対象物20が載置される。ステージ2は、例えば対象物20を吸着することにより、対象物20を支持する。ステージ2は、第1水平移動機構8AによりX方向に沿って移動可能である。ステージ2は、第2水平移動機構8BによりY方向に沿って移動可能である。ステージ2は、Z方向に沿う回転軸を中心に回転可能に構成されている。ステージ2は、モータ等の公知の回転駆動装置(不図示)を有し、その駆動力により回転軸を中心回転駆動される。ステージ2の回転は、制御部9により制御される。
【0025】
図1及び図4に示されるように、レーザ加工ヘッド3は、ステージ2に支持された対象物20に対して透過性を有するレーザ光Lを照射する照射部である。レーザ加工ヘッド3は、対象物20の内部にレーザ光Lを集光する。ステージ2に支持された対象物20の内部にレーザ光Lが集光されると、レーザ光Lの集光位置(集光領域の少なくとも一部)に対応する部分においてレーザ光Lが特に吸収され、対象物20の内部に改質領域12が形成される。
【0026】
改質領域12は、密度、屈折率、機械的強度、その他の物理的特性が周囲の非改質領域とは異なる領域である。改質領域12としては、例えば、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域等がある。改質領域12は、改質領域12からレーザ光Lの入射側及びその反対側に亀裂が延び易いという特性を有している。このような改質領域12の特性は、対象物20の切断に利用される。
【0027】
レーザ加工ヘッド3は、レーザ光集光レンズ33及び観察カメラ35を筐体H3内に有する。レーザ加工ヘッド3の筐体H3内には、外部の光源31からレーザ光Lが入射される。光源31は、例えばパルス発振方式によって、レーザ光Lを出力する。レーザ光集光レンズ33は、レーザ光Lをステージ2に支持された対象物20に集光する。レーザ加工ヘッド3では、光源31から入射されたレーザ光Lは、筐体H3内においてダイクロイックミラー32を介してレーザ光集光レンズ33に入射し、レーザ光集光レンズ33により対象物20に集光される。レーザ光集光レンズ33は、複数の対物レンズを含むレンズユニットであってもよい。筐体H3は、その側面に設けられた取付部39を含み、この取付部39を介して後述の第1鉛直移動機構7Aに接続されて支持されている。
【0028】
観察カメラ35は、ステージ2に支持された対象物20を可視光Vにより撮像する。観察カメラ35は、可視光源36から出射した可視光Vによる対象物20の像を撮像する。具体的には、可視光源36から出射した可視光Vは、ダイクロイックミラー37で反射され、ダイクロイックミラー32を透過した後、レーザ光集光レンズ33を介して対象物20に照射される。当該可視光Vは、対象物20のレーザ光入射面で反射され、レーザ光集光レンズ33及びダイクロイックミラー32,37を透過し、レンズ38を介して観察カメラ35で受光される。可視光Vの光路上には、可視光Vに目盛り線を付与するレチクル(不図示)が設けられていてもよい。観察カメラ35は、制御部9に接続されている。観察カメラ35は、撮像した可視画像を制御部9に出力する。観察カメラ35としては、特に限定されず、要求される性能を満たしていれば、公知の種々のカメラを用いることができる。
【0029】
アライメント用カメラ5,6は、対象物20におけるレーザ光Lの集光位置の位置合わせ(以下、単に「アライメント」ともいう)に用いられる情報を取得する。アライメント用カメラ5,6は、光を対象物20に照射し、対象物20から戻る当該光を検出することで、アライメントに用いられる情報として画像を取得する。アライメント用カメラ5,6は、ステージ2に支持された対象物20を撮像する。
【0030】
アライメント用カメラ5は、対象物20に対して透過性を有する光を出力する光源を有する。光源は、例えば、ハロゲンランプ及びフィルタによって構成されており、近赤外領域の光を出力する。アライメント用カメラ5は、対象物20における表面21aで反射された光を検出する光検出部を有する。光検出部は、例えば、Siカメラ又はInGaAsカメラによって構成されており、近赤外領域の光を検出する。
【0031】
例えばアライメント用カメラ5は、レーザ光入射面である裏面21b側から光を対象物20に照射すると共に、表面21a(機能素子層22)から戻る光を検出することにより、機能素子層22を撮像する。また例えば、アライメント用カメラ5は、同様に、裏面21b側から光を対象物20に照射すると共に、半導体基板21における改質領域12の形成位置から戻る光を検出することにより、改質領域12を含む領域の画像を取得する。これらの画像は、アライメントに用いられる。アライメント用カメラ6は、そのレンズがより低倍率である点を除いて、アライメント用カメラ5と同様の構成を備える。アライメント用カメラ6は、アライメント用カメラ5と同様にアライメントに用いられる。
【0032】
アライメント用カメラ5,6は、レーザ加工ヘッド3に設けられ、レーザ加工ヘッド3と一体で移動する。図示する例では、アライメント用カメラ5,6は、レーザ加工ヘッド3の取付部39に固定されている。アライメント用カメラ5,6は、制御部9に接続されている。アライメント用カメラ5,6は、撮像した画像を制御部9に出力する。アライメント用カメラ5,6としては、特に限定されず、要求される性能を満たしていれば、公知の種々のカメラを用いることができる。
【0033】
図1及び図5に示されるように、観察ユニット4は、対象物20に透過性を有する透過光を用いて対象物20を観察する。観察ユニット4は、対象物20に透過光を照射し、対象物20から戻る当該透過光を検出することで、対象物20の内部を観察する。例えば観察ユニット4は、対象物20に形成された改質領域12及び改質領域12から延びた亀裂14の先端を撮像する。
【0034】
図5に示されるように、観察ユニット4は、光源41と、ミラー42と、透過光集光レンズ(集光レンズ)43と、光検出部44と、を筐体H4内に備える。筐体H4は、その側面に設けられた取付部49を含み、この取付部49を介して後述の第2鉛直移動機構7Bに接続されて支持されている。観察ユニット4は、制御部9に接続されている。観察ユニット4は、光検出部44で撮像した画像(内部画像)を制御部9に出力する。
【0035】
光源41は、透過性を有する透過光I1を出力する。光源41は、例えば、ハロゲンランプ及びフィルタによって構成されており、近赤外領域の透過光I1を出力する。光源41から出力された透過光I1は、ミラー42によって反射されて透過光集光レンズ43を通過し、半導体基板21の裏面21b側から対象物20に照射される。
【0036】
透過光集光レンズ43は、透過光I1を対象物20の半導体基板21に向けて集光するレンズである。透過光集光レンズ43は、半導体基板21の表面21aで反射された透過光I1を通過させる。透過光集光レンズ43は、第1集光レンズ43A、第2集光レンズ43B及び第3集光レンズ43Cを有する(図6参照)。第1集光レンズ43A、第2集光レンズ43B及び第3集光レンズ43Cの各仕様は、互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。第1集光レンズ43A、第2集光レンズ43B及び第3集光レンズ43Cの外形は、その光軸を軸方向とする円柱状を呈している。
【0037】
光検出部44は、透過光集光レンズ43及びミラー42を透過した透過光I1を検出する。光検出部44は、例えば、InGaAsカメラによって構成されている。光検出部44は、対象物20で反射した近赤外領域の透過光I1を受光し、対象物20を撮像する。光検出部44は、撮像部を構成する。
【0038】
観察ユニット4は、透過光I1の収差補正(以下、単に「収差補正」ともいう)を行う収差補正部46を備える。収差補正部46は、収差補正の補正量を切替え可能に構成されている。収差補正部46は、透過光I1に生じる球面収差を補正する。球面収差は、球面を含む光学系において、点光源からの光線が焦点に収束せずばらつく収差をいう。例えばレンズに光が入射されると、レンズの光軸に近いところを通る光と光軸から離れたところを通る光とは1点に集まらず広がってしまう場合があり、これが球面収差である。収差補正部46は、第1収差補正部47A、第2収差補正部47B、第3収差補正部47C及びレボルバ48を含む。
【0039】
第1収差補正部47Aは、第1集光レンズ43Aに設けられ、第1補正量の収差補正を実現する。第1収差補正部47Aは、補正環47xを有する。つまり、第1集光レンズ43Aは、いわゆる補正環レンズを構成する。第1収差補正部47Aでは、補正環47xを回転させることで第1集光レンズ43Aを構成するレンズ群の一部を光軸方向に移動させ、これにより、第1補正量を調整する。第2収差補正部47Bは、第2集光レンズ43Bに設けられ、第2補正量の収差補正を実現する。第2収差補正部47Bは、補正環47yを有する。つまり、第2集光レンズ43Bは、いわゆる補正環レンズを構成する。第2収差補正部47Bでは、補正環47yを回転させることで第2集光レンズ43Bを構成するレンズ群の一部を光軸方向に移動させ、これにより、第2補正量を調整する。
【0040】
第3収差補正部47Cは、第3集光レンズ43Cに設けられ、第3補正量の収差補正を実現する。第3収差補正部47Cは、補正環47zを有する。つまり、第3集光レンズ43Cは、いわゆる補正環レンズを構成する。第3収差補正部27Cは、補正環47zを回転させることで第3集光レンズ43Cを構成するレンズ群の一部を光軸方向に移動させ、これにより、第3補正量を調整する。補正環47x,47y,47zの回転は、ユーザによる手動で実現されてもよいし、制御部9の制御下において不図示の駆動部により実現されてもよい。第1収差補正部47A、第2収差補正部47B及び第3収差補正部47Cとしては、特に限定されず、例えば非球面レンズを用いてもよい。
【0041】
レボルバ48は、固定部48a及び回転部48bを含む。固定部48aは、筐体H4に固定されている。回転部48bは、Z方向を厚さ方向とする円板状を呈し、その中心を通る回転軸を基軸に固定部48aに対して回転可能に設けられている。回転部48bにおいて周方向に等間隔の3つの位置には、第1集光レンズ43A、第2集光レンズ43B及び第3集光レンズ43Cが取り付けられている。第1集光レンズ43A、第2集光レンズ43B及び第3集光レンズ43Cは、その光軸をZ方向に沿う向きにして配置されている。
【0042】
レボルバ48は、第1集光レンズ43A、第2集光レンズ43B及び第3集光レンズ43Cの何れかを透過光I1の光軸上に配置すると共に、透過光I1の光軸上に配置する第1集光レンズ43A、第2集光レンズ43B及び第3集光レンズ43Cの何れかが切り替わるように可動(回転軸を基軸に固定部48aに対して回転)する。以上の構成により、収差補正部46は、レボルバ48の回転部48bを回転させることで、収差補正の補正量を少なくとも第1補正量と第2補正量と第3補正量との間で切替え可能に構成される。
【0043】
図1に示されるように、第1鉛直移動機構7Aは、Z方向に沿ってレーザ加工ヘッド3をアライメント用カメラ5,6と共に移動させる移動機構である。第1鉛直移動機構7Aは、柱状の第1ベース部75に設けられた第1鉛直軸71を有する。第1ベース部75は、例えば設置面等に固定されている。第1鉛直軸71は、Z方向に沿って延在する。第1鉛直軸71には、レーザ加工ヘッド3の取付部39がZ方向に沿って移動可能に取り付けられている。このような第1鉛直移動機構7Aは、不図示の駆動源の駆動力により、レーザ加工ヘッド3を第1鉛直軸71に沿ってZ方向に移動させる。第1鉛直移動機構7Aとしては、特に限定されず、レーザ加工ヘッド3をZ方向に移動できれば種々の機構を用いることができる。
【0044】
第2鉛直移動機構7Bは、Z方向に沿って観察ユニット4を移動させる移動機構である。第2鉛直移動機構7Bは、例えば設置面等に固定された柱状の第2ベース部76に設けられた第2鉛直軸72を有する。第2ベース部76は、第1ベース部75に対してX方向に離間する。例えば第1ベース部75に対する第2ベース部76の離間距離は、レーザ加工ヘッド3のX方向の幅以上である。
【0045】
第2鉛直軸72は、Z方向に沿って延在する。第2鉛直軸72には、観察ユニット4の取付部49がZ方向に沿って移動可能に取り付けられている。このような第2鉛直移動機構7Bは、不図示の駆動源の駆動力により、観察ユニット4を第2鉛直軸72に沿ってZ方向に移動させる。第2鉛直移動機構7Bとしては、特に限定されず、観察ユニット4をZ方向に移動できれば種々の機構を用いることができる。第2鉛直移動機構7Bは、透過光集光レンズ43を対象物20に対して相対的に移動させる移動部を構成する。
【0046】
第1水平移動機構8Aは、X方向に沿ってステージ2を移動させる移動機構である。第1水平移動機構8Aは、例えば設置面等に固定された第1水平軸81を有する。第1水平軸81は、X方向に沿って延在する。第1水平軸81には、第2水平移動機構8Bを介してステージ2がX方向に沿って移動可能に取り付けられている。このような第1水平移動機構8Aは、不図示の駆動源の駆動力により、ステージ2及び第2水平移動機構8Bを第1水平軸81に沿ってX方向に移動させる。第1水平移動機構8Aとしては、特に限定されず、ステージ2をX方向に移動できれば種々の機構を用いることができる。
【0047】
第2水平移動機構8Bは、Y方向に沿ってステージ2を移動させる移動機構である。第2水平移動機構8Bは、例えば第1水平移動機構8A上に設けられた第2水平軸82を有する。第2水平軸82は、Y方向に沿って延在する。第2水平軸82には、ステージ2がY方向に沿って移動可能に取り付けられている。第2水平軸82は、ステージ2と共に第1水平軸81に沿って移動可能である。このような第2水平移動機構8Bは、不図示の駆動源の駆動力により、ステージ2を第2水平軸82に沿ってY方向に移動させる。第2水平移動機構8Bとしては、特に限定されず、ステージ2をY方向に移動できれば種々の機構を用いることができる。
【0048】
制御部9は、プロセッサ、メモリ、ストレージ及び通信デバイス等を含むコンピュータ装置として構成されている。制御部9では、プロセッサが、メモリ等に読み込まれたソフトウェア(プログラム)を実行し、メモリ及びストレージにおけるデータの読み出し及び書き込み、並びに、通信デバイスによる通信を制御する。制御部9は、レーザ加工装置1の各種の動作を制御する。制御部9は、ステージ2の回転駆動装置、レーザ加工ヘッド3、アライメント用カメラ5,6、観察ユニット4、第1鉛直移動機構7A、第2鉛直移動機構7B、第1水平移動機構8A、第2水平移動機構8B及びGUI10の動作を制御する。
【0049】
GUI10は、各種の情報を表示する。GUI10は、観察ユニット4の撮像結果、及び、アライメント用カメラ5,6の撮像結果を表示する。GUI10は、例えばタッチパネルディスプレイを含む。GUI10には、ユーザのタッチ等の操作により、加工条件等に関する各種の設定が入力される。GUI10は、ユーザからの入力を受け付ける入力部を構成する。
【0050】
レーザ加工装置1では、一例として、半導体基板21の裏面21b側から対象物20にレーザ光Lを照射すると共に、ステージ2をライン15に沿って移動させ、対象物20に対してレーザ光Lの集光位置(集光点)をライン15に沿って相対的に移動させることにより、複数の改質スポットがライン15に沿って並ぶように形成される。1つの改質スポットは、1パルスのレーザ光Lの照射によって形成される。1列の改質領域12は、1列に並んだ複数の改質スポットの集合である。隣り合う改質スポットは、対象物20に対する集光位置の相対的な移動速度及びレーザ光Lの繰り返し周波数によって、互いに繋がる場合も、互いに離れる場合もある。本実行形態では、図4に示されるように、ライン15に沿って半導体基板21の内部に2列の改質領域12を形成する。2列の改質領域12は、対象物20の厚さ方向(Z方向)において隣り合っている。2列の改質領域12は、半導体基板21に対して2つの集光位置Cがライン15に沿って相対的に移動させられることにより形成される。
【0051】
レーザ加工装置1では、上述したように、レーザ加工ヘッド3の筐体H3が第1鉛直移動機構7AでZ方向に移動可能に支持されており、これにより、レーザ加工ヘッド3及びレーザ加工ヘッド3に設けられたアライメント用カメラ5,6は、Z方向に移動可能で、且つ、X方向及びY方向には移動不能に構成される。レーザ加工装置1では、上述したように、観察ユニット4の筐体H4が第2鉛直移動機構7BでZ方向に移動可能に支持されており、これにより、観察ユニット4は、Z方向に移動可能で、且つ、X方向及びY方向には移動不能に構成される。上記において、ステージ2、観察ユニット4、第2鉛直移動機構7B、制御部9、GUI10、第1水平移動機構8A及び第2水平移動機構8Bは、観察装置100を構成する。
【0052】
次に、レーザ加工装置1の動作の概要について、図7のフローチャートを参照して例示する。まず、起動後、各装置のウォームアップ及びキャリブレーションを行った後、不図示のロボットアームによりステージ2上に対象物20を載置し、対象物20をステージ2上に吸着させる(ステップS101)。続いて、アライメントを行う(ステップS102)。ステップS102では、制御部9により、アライメント用カメラ5又はアライメント用カメラ6で取得された画像(例えば、対象物20が有する機能素子層22の像)に基づいて第1水平移動機構8A及び第2水平移動機構8Bの動作を制御し、レーザ光Lの集光位置がアライメント位置に合うようにX方向及びY方向に沿ってステージ2を移動させる。例えばアライメント位置は、Z方向から見てライン15上の加工開始位置(所定位置)である。また、ステップS102では、アライメント時のステージ2の位置情報を、アライメント情報として取得する。
【0053】
続いて、ハイトセットを行う(ステップS103)。ステップS103では、制御部9により、観察カメラ35によって取得された可視画像(例えば、対象物20のレーザ光入射面の像)に基づいて第1鉛直移動機構7Aの動作を制御し、レーザ光Lの集光位置がレーザ光入射面上に位置するように、Z方向に沿ってレーザ加工ヘッド3(すなわち、レーザ光集光レンズ33)を移動させる。続いて、制御部9により第1鉛直移動機構7Aの動作を制御し、ハイトセット時の位置を基準としてレーザ光Lの集光位置がレーザ光入射面から所定深さに位置するように、Z方向に沿ってレーザ加工ヘッド3を移動させる。続いて、制御部9により、レーザ加工ヘッド3からのレーザ光LのON/OFF、並びに、第1水平移動機構8A、第2水平移動機構8B及びステージ2の回転駆動装置の動作を適宜制御し、レーザ光Lの集光位置が複数のライン15に沿って相対的に移動するようにステージ2を移動させる。これにより、複数のライン15に沿って対象物20の内部に改質領域12を形成する(ステップS104)。
【0054】
続いて、対象物20の内部観察を行う。対象物20の内部観察では、制御部9によりステージ2の回転駆動装置、第1水平移動機構8A及び第2水平移動機構8Bの動作を制御し、観察ユニット4による内部観察の開始位置に対象物20が位置するようにステージ2を移動させる(ステップS105)。ステップS105では、上記ステップS102で取得したアライメント情報に基づいて、対象物20のアライメント位置(ここでは、ライン15上の加工開始位置)に透過光集光レンズ43の光軸が合うように、X方向、Y方向及びθ方向における対象物20の位置を制御する。
【0055】
続いて、観察ユニット4により対象物20の内部観察を行い、複数の内部画像を取得する(ステップS106)。ステップS106では、例えば各ライン15の少なくとも一箇所において、制御部9の制御のもと、観察ユニット4により次の内部観察処理を実行する。すなわち、第2鉛直移動機構7BによりZ方向に沿って観察ユニット4を移動させ、対象物20の内部の複数の位置に透過光I1の集光位置を合わせて対象物20を撮像し、複数の内部画像を取得する。複数の内部画像のそれぞれに対して観察ユニット4の移動量に関する情報を関連付け、これを撮像データとして取得する。このような撮像データの取得を、同じライン15上又は別のライン15上の他の箇所に透過光集光レンズ43の光軸を合わせて繰り返す。
【0056】
続いて、制御部9により、取得した撮像データに基づいて加工状態を判定する(ステップS107)。ステップS107では、一例として、画像認識によって複数の撮像データにおける内部画像のうち亀裂14の像が相対的に鮮明な何れかを自動的に判定する(AI判定を行う)。制御部9は、判定した当該内部画像を撮像したときの移動量に基づいて亀裂位置を算出する。亀裂位置は、例えば、所定の補正係数を移動量に乗じることにより算出できる。補正係数については、後述する。また、制御部9は、取得された亀裂位置等に基づいて、改質領域12の位置等を推定する。続いて、制御部9は、上記ステップS107で判定した判定結果を任意の記憶装置に保存する。制御部9により、上記ステップS107で判定した判定結果をGUI10に表示させる(ステップS8)。以上により、処理を終了する。
【0057】
本実施形態の観察ユニット4による観察では、例えば「直接観察」及び「裏面反射観察」により、亀裂14及び改質領域12を検出し、それらの位置に関する情報を取得することができる。図8に示されるように、直接観察は、透過光I1を裏面21bから入射させつつ、表面21aでの反射を経ることなく直接的に透過光I1の集光点を亀裂14に合わせた場合(裏面21b側から亀裂14に焦点Fを合わせた場合)の観察である。裏面反射観察は、透過光I1を裏面21bから入射させつつ、表面21aで反射された透過光I1の集光点を亀裂14に合わせた場合(表面21aに対して裏面21bとは反対側の領域に裏面21b側から焦点を合わせて、表面21aに関して焦点と対称な仮想焦点を亀裂14に合わせた場合)の観察である。
【0058】
本実施形態における加工状態の判定(AI判定)では、例えば、対象物20の内部画像について、まず、直線群を検出する。直線群の検出には、Hough変換又はLSD(Line Segment Detector)等のアルゴリズムが用いられる。Hough変換とは、画像上の点に対してその点を通る全ての直線を検出し特徴点をより多く通る直線に重み付けしながら直線を検出する手法である。LSDとは、画像内の輝度値の勾配と角度を計算することにより線分となる領域を推定し、該領域を矩形に近似することにより直線を検出する手法である。直線群について亀裂線との類似度を算出することにより、直線群から亀裂14を検出する。
【0059】
また、本実施形態における加工状態の判定(AI判定)では、例えば、対象物20の内部画像について、画像内のコーナー(エッジの集中)をキーポイントとして検出し、その位置、大きさ、方向を検出して特徴点を検出する。このようにして特徴点を検出する手法としては、Eigen、Harris、Fast、SIFT、SURF、STAR、MSER、ORB、AKAZE等が知られている。改質領域(だ痕)12は、円形や矩形等の形が一定間隔で並ぶため、コーナーとしての特徴が強い。このため、画像内の特徴点の特徴量を集計することにより、改質領域12を高精度に検出することが可能になる。深さ方向にシフトして撮像した画像毎の特徴量合計を比較すると、亀裂14の列量を示すような山の変化が確認できる。当該変化のピークを改質領域12の位置として推定する。
【0060】
次に、本実施形態の制御部9における処理及びGUI10の入力に関して、具体的に説明する。
【0061】
制御部9は、収差補正部46を制御する。制御部9は、対象物20における透過光入射面側の第1区間を光検出部44で撮像する場合の収差補正部46による収差補正である第1区間用収差補正と、対象物20における内部の第2区間を光検出部44で撮像する場合の収差補正部46による収差補正である第2区間用収差補正と、対象物20における透過光入射面の反対面側の第3区間を光検出部44で撮像する場合の収差補正部46による収差補正である第3区間用収差補正と、の少なくとも何れかの補正量を、GUI10で受け付けた入力に応じて切り替える。
【0062】
第1区間用収差補正は、対象物20における透過光I1が入射する透過光入射面である裏面21bに露出する亀裂14の有無を検査するための収差補正であってもよい。第1区間用収差補正は、対象物20における裏面21b側の改質領域12(打痕)を検査するための収差補正であってもよい。第2区間用収差補正は、対象物20における内部(表面21a側以外で且つ裏面21b側以外の部分)に形成された改質領域12を検査するための収差補正であってもよい。第2区間用収差補正は、対象物20の内部において、切断後の切断面に凹凸(いわゆる端面凹凸)として出現し得る箇所、及び、黒い筋状の箇所(いわゆる黒筋)の有無を検査するための収差補正であってもよい。第3区間用収差補正は、対象物20における透過光入射面の反対面である表面21aに露出する亀裂14の有無を検査するための収差補正であってもよい。第3区間用収差補正は、対象物20における表面21a側の改質領域12を検査するための収差補正であってもよい。
【0063】
第1~第3区間の範囲については、対象物20に厚さ毎に設定されて制御部9に記憶されていてもよいし、後述するようにGUI10を介して入力又は選択可能であってもよい。例えば、制御部9は、GUI10の入力内容別で第1~第3区画用収差補正の各補正量が分けられてなるデータテーブルを予め記憶し、当該データテーブルとGUI10にて実際に受け付けた入力とに基づくことで、第1~第3区画用収差補正の補正量を切り替えてもよい。
【0064】
制御部9は、第1区間用収差補正、第2区間用収差補正及び第3区間用収差補正の補正量を、GUI10で受け付けた入力に応じて、第1補正量、第2補正量及び第3補正量の中で切り替える。具体的には、制御部9は、収差補正の補正量を第1補正量へ切り替える場合には、第1収差補正部47Aが設けられた第1集光レンズ43Aが透過光I1の光軸上に配置されるように、レボルバ48を回転させる。制御部9は、収差補正の補正量を第2補正量へ切り替える場合には、第2収差補正部47Bが設けられた第2集光レンズ43Bが透過光I1の光軸上に配置されるように、レボルバ48を回転させる。制御部9は、収差補正の補正量を第3補正量へ切り替える場合には、第3収差補正部47Cが設けられた第3集光レンズ43Cが透過光I1の光軸上に配置されるように、レボルバ48を回転させる。
【0065】
制御部9は、第2鉛直移動機構7Bによる観察ユニット4(透過光集光レンズ43)のZ方向に沿った移動量と補正係数とに基づいて、検出対象(例えば改質領域12又は亀裂14)の深さ位置(Z方向の位置)に関する情報を取得する。制御部9は、第1区間用収差補正、第2区間用収差補正及び第3区間用収差補正の補正量の切替えに応じて補正係数を切り替える。補正係数について、以下に具体的に説明する。
【0066】
補正係数は、透過光集光レンズ43のZ方向における移動量に対して乗じる所定の係数である。半導体基板21の内部において透過光I1の集光点の位置を調整すべく、観察ユニット4をZ方向に沿って移動量Fzだけ移動させたとする。このとき、半導体基板21がなければ、透過光I1の集光点の移動量も移動量Fzとなる。しかし、透過光I1の集光点が半導体基板21の内部に形成されている場合、透過光I1の集光点の移動量は、移動量Fzと異なる実移動量Hzとなる。実移動量Hzは、半導体基板21内における実際の撮像位置、すなわち、検出対象の位置を規定する。一方で、制御部9が直接的に取得可能な情報は、観察ユニット4の移動量Fz(すなわち、半導体基板21がない場合の集光点の移動量Fz)である。したがって、制御部9が、半導体基板21内の実際の検出対象の位置を取得するためには、移動量Fzに対して何らかの係数を乗じる必要がある。このときに適用される係数が補正係数である。
【0067】
GUI10は、対象物20に対して行う検査の内容に関する入力を受け付ける。制御部9は、第1区間用収差補正、第2区間用収差補正及び第3区間用収差補正の補正量を、GUI10で受け付けた検査の内容に関する入力に応じて切り替える。検査の内容としては、例えば、対象物20における表面21aから裏面21bに亘って亀裂14及び改質領域12が形成されていることを検査するFC検査、対象物20における透過光入射面の反対面である表面21aに亀裂14が露出していることを検査するBHC検査、対象物20における表面21a及び裏面21bには亀裂14が露出していないことを検査するST検査、が挙げられる。
【0068】
GUI10は、対象物20に対して行うレーザ加工の加工条件の種類に関する入力を受け付ける。制御部9は、第1区間用収差補正、第2区間用収差補正及び第3区間用収差補正の補正量を、GUI10で受け付けた加工条件の種類に関する入力に応じて切り替える。加工条件の種類としては、例えば、改質領域12を対象物20の内部に形成すると共に対象物20を研磨して薄化させるSDBG条件、対象物20における表面21aから裏面21bに亘って亀裂14及び改質領域12を形成するFC条件、が挙げられる。また、加工条件の種類としては、パーティクル抑制のために端面凹凸が少なくなるようにFC条件で加工するするMEMS条件、下亀裂の直進性及びダメージ抑制等のデバイス品質を担保してSDBG条件で加工するメモリ条件、デバイスの種類やユーザの要求する品質に応じて設定されるデバイス条件が挙げられる。
【0069】
GUI10は、対象物20の厚さに関する入力を受け付ける。制御部9は、第1区間用収差補正、第2区間用収差補正及び第3区間用収差補正の補正量を、GUI10で受け付けた対象物20の厚さに関する入力に応じて切り替える。
【0070】
GUI10は、入力モードが簡易入力モード及び詳細入力モードの何れであるかに関する入力を受け付ける。GUI10は、入力モードとして詳細入力モードに関する入力を受け付けた場合に、第1区間用収差補正、第2区間用収差補正及び第3区間用収差補正の補正量の入力を受け付ける。制御部9は、GUI10で受け付けた第1区間用収差補正、第2区間用収差補正及び第3区間用収差補正の補正量の入力に応じて、これらの補正量を切り替える。GUI10は、入力モードとして詳細入力モードに関する入力を受け付けた場合に、第1区間、第2区間及び第3区間の範囲に関する入力を受け付ける。制御部9は、GUI10で受け付けた第1区間、第2区間及び第3区間の範囲に関する入力に応じて、第1区間、第2区間及び第3区間を切り替える。
【0071】
図9(a)及び図9(b)は、第1区間用収差補正、第2区間用収差補正及び第3区間用収差補正の補正量に関するデータテーブルの例を示す図である。図9(a)は、検査内容がFC検査時の場合に利用されるデータテーブルである。図9(b)は、加工条件がSDBG条件の場合に利用されるデータテーブルである。「-」は、観察をしない、もしくは、収差補正の補正量は特に限定されないこと(任意の補正量)を意味する。図中の「0mm補正」、「0.1mm補正」、「0.2mm補正」、「0.4mm補正」及び「0.8mm補正」は、収差補正の補正量を表し、この順に補正量が大きい。「0mm補正」、「0.1mm補正」、「0.2mm補正」、「0.4mm補正」及び「0.8mm補正」は、第1収差補正部47A、第2収差補正部47B及び第3収差補正部47Cにおいて補正環47x,47y,47zを適宜に回転させることにより、実現することができる。例えば「0.8mm補正」とは、対象物20の内部の0.8mmの深さ位置で最も球面収差が少ないように設定された補正量を意味する。図中の括弧は、括弧内の補正量で補正してもよいこと意味する。これらの説明は以下において同様である。
【0072】
制御部9は、例えばGUI10にて検査内容をFC検査とする入力を受け付けた場合、図9(a)に示されるデータテーブルを用いて、GUI10にて受け付けた対象物20の厚さに関する入力に基づき、第1~第3区画用収差補正の補正量を切り替えてもよい。同様に、制御部9は、例えばGUI10にて加工条件をSDBG条件とする入力を受け付けた場合、図9(b)に示されるデータテーブルを用いて、GUI10にて受け付けた対象物20の厚さに関する入力に基づき、第1~第3区画用収差補正の補正量を切り替えてもよい。
【0073】
図10は、対象物20の検査のための観察を行う場合におけるGUI10の入力画面10aの例を示す図である。図10に示される例では、ユーザによりGUI10の入力画面10aにおいて、加工が「未」と選択され、レーザ加工前であることが入力されている。また、ユーザによりGUI10の入力画面10aにおいて、検査内容が「FC検査」、入力モードが「簡易入力モード」、対象物20の厚さが「400μm」と選択されて入力されている。
【0074】
GUI10による当該入力の結果、制御部9は、例えば予め設定されたデータテーブルを用い、当該入力に基づいてレーザ加工条件を決定し、決定したレーザ加工条件を入力画面10aに「レーザ加工条件(案)」として表示させる。例えば、制御部9は、レーザ加工条件のレシピを決定する。レシピには、パス数(形成する改質領域12の厚さ方向における列数)、加工Z位置(改質領域12の各列のZ方向における位置)、及び、加工エネルギ(レーザ光Lのエネルギ)等が含まれる。
【0075】
また、GUI10による当該入力の結果、制御部9は、例えば予め設定されたデータテーブルを用い、当該入力に基づいて、第1区間用収差補正、第2区間用収差補正及び第3区間用収差補正の補正量を切り替える。例えば、制御部9は、第1区間用収差補正の補正量として「0mm補正」、第2区間用収差補正の補正量として「0.2mm補正」、及び、第3区間用収差補正の補正量として「0.4mm補正」へ切り替える。また、制御部9は、第1区間用収差補正、第2区間用収差補正及び第3区間用収差補正の補正量の切替えに応じて、例えば予め設定されたデータテーブルを用い、第1区間用収差補正、第2区間用収差補正及び第3区間用収差補正のそれぞれを実行時の各補正係数を切り替える。例えば、制御部9は、第1区間用収差補正を実行時の補正係数として「0mm補正係数」、第2区間用収差補正を実行時の補正係数として「0.2mm補正係数」、及び、第3区間用収差補正を実行時の補正係数として「0.4mm補正係数」へ切り替える。そして、制御部9は、切り替えた各補正量及び各補正係数を入力画面10aに表示させる。
【0076】
また、GUI10による当該入力の結果、制御部9は、例えば予め設定されたデータテーブルを用い、当該入力に基づいて、第1区間、第2区間及び第3区間の範囲を切り替え、切り替えた第1区間、第2区間及び第3区間を入力画面10aに表示させる。また、GUI10による当該入力の結果、制御部9は、例えば予め設定されたデータテーブルを用い、当該入力に基づいて第1区間、第2区間及び第3区間を観察する際の観察順序を切り替え、切り替えた観察順序を入力画面10aに表示させる。
【0077】
また、GUI10による当該入力の結果、制御部9は、例えば予め設定されたデータテーブルを用い、当該入力に基づいて第1区間用収差補正、第2区間用収差補正及び第3区間用収差補正の検査項目(判定項目)を切り替え、切り替えた検査項目を入力画面10aに表示させる。図中において、「HC/ST」は、対象物20の透過光入射面に露出する亀裂14の有無を意味し、「BHC/ST」は、対象物20における透過光入射面の反対面に露出する亀裂14の有無を意味する。なお、図10に示される例では、簡易入力モードであることから、レーザ加工条件、第1~第3区間用収差補正の補正量、第1~第3区間の範囲、観察順序、及び、検査項目について、入力画面10aに表示されるがユーザは変更又は入力はできない。
【0078】
図11は、対象物20の検査のための観察を行う場合におけるGUI10の入力画面10aの他の例を示す図である。図11に示される例では、ユーザによりGUI10の入力画面10aにおいて、加工が「済」と選択され、レーザ加工後であることが入力されている。また、ユーザによりGUI10の入力画面10aにおいて、検査内容が「BHC検査」、入力モードが「詳細入力モード」、対象物20の厚さが「775μm」と選択されて入力されている。
【0079】
GUI10による当該入力の結果、制御部9は、例えば予め設定されたデータテーブルを用い、当該入力に基づいてレーザ加工条件を決定し、決定したレーザ加工条件を入力画面10aに「レーザ加工条件(済)」として表示させる。また、GUI10による当該入力の結果、制御部9は、例えば予め設定されたデータテーブルを用い、当該入力に基づいて、第1区間用収差補正、第2区間用収差補正及び第3区間用収差補正の補正量を切り替える。例えば、制御部9は、第1区間用収差補正の補正量として「任意の補正量」、第2区間用収差補正の補正量として「任意の補正量」、及び、第3区間用収差補正の補正量として「0.8mm補正」へ切り替える。また、制御部9は、第1区間用収差補正、第2区間用収差補正及び第3区間用収差補正の補正量の切替えに応じて、例えば予め設定されたデータテーブルを用い、第1区間用収差補正、第2区間用収差補正及び第3区間用収差補正のそれぞれを実行時の各補正係数を切り替える。例えば、制御部9は、第3区間用収差補正を実行時の補正係数として「0.8mm補正係数」へ切り替える。そして、制御部9は、切り替えた各補正量及び各補正係数を入力画面10aに表示させる。
【0080】
また、GUI10による当該入力の結果、制御部9は、例えば予め設定されたデータテーブルを用い、当該入力に基づいて第1区間、第2区間及び第3区間の範囲を切り替え、切り替えた第1区間、第2区間及び第3区間を入力画面10aに表示させる。また、GUI10による当該入力の結果、制御部9は、例えば予め設定されたデータテーブルを用い、当該入力に基づいて第1区間、第2区間及び第3区間を観察する際の観察順序を切り替え、切り替えた観察順序を入力画面10aに表示させる。
【0081】
また、GUI10による当該入力の結果、制御部9は、例えば予め設定されたデータテーブルを用い、当該入力に基づいて第1区間用収差補正、第2区間用収差補正及び第3区間用収差補正の検査項目を切り替え、切り替えた検査項目を入力画面10aに表示させる。なお、図11に示される例では、詳細入力モードであることから、レーザ加工条件、第1~第3区間用収差補正の補正量、第1~第3区間の範囲、観察順序、及び、検査項目について、入力画面10aにてユーザは変更又は入力可能である。
【0082】
図12は、加工条件の策定(いわゆる条件出し)のための対象物20の観察を行う場合におけるGUI10の入力画面10aの例を示す図である。図12に示される例では、ユーザによりGUI10の入力画面10aにおいて、加工が「未」と選択され、レーザ加工前であることが入力されている。また、ユーザによりGUI10の入力画面10aにおいて、加工条件が「SDBG条件」、入力モードが「簡易入力モード」、対象物20の厚さが「775μm」と選択されて入力されている。
【0083】
GUI10による当該入力の結果、制御部9は、例えば予め設定されたデータテーブルを用い、当該入力に基づいてレーザ加工条件を決定し、決定したレーザ加工条件を入力画面10aに「レーザ加工条件(案)」として表示させる。また、GUI10による当該入力の結果、制御部9は、例えば予め設定されたデータテーブルを用い、当該入力に基づいて要求品質を切り替え、切り替えた要求品質を入力画面10aに表示させる。要求品質としては、例えば端面凹凸の大きさが10μm以内であること、BHC直進性が6μm以内であること、パーティクル抑制のレベルが所定レベルであること(又は不問であること)等が挙げられる。BHC直進性は、対象物20における透過光入射面の反対面に露出する亀裂14が蛇行する場合の蛇行幅に相当する。
【0084】
また、GUI10による当該入力の結果、制御部9は、例えば予め設定されたデータテーブルを用い、当該入力に基づいて第1区間用収差補正、第2区間用収差補正及び第3区間用収差補正の補正量を切り替える。例えば、制御部9は、第1区間用収差補正の補正量として「任意の補正量」、第2区間用収差補正の補正量として「任意の補正量」、及び、第3区間用収差補正の補正量として「0.8mm補正」へ切り替える。また、制御部9は、第1区間用収差補正、第2区間用収差補正及び第3区間用収差補正の補正量の切替えに応じて、例えば予め設定されたデータテーブルを用い、第1区間用収差補正、第2区間用収差補正及び第3区間用収差補正のそれぞれを実行時の各補正係数を切り替える。例えば、制御部9は、第3区間用収差補正を実行時の補正係数として「0.8mm補正係数」へ切り替える。そして、制御部9は、切り替えた各補正量及び各補正係数を入力画面10aに表示させる。
【0085】
また、GUI10による当該入力の結果、制御部9は、例えば予め設定されたデータテーブルを用い、当該入力に基づいて第1区間、第2区間及び第3区間の範囲を切り替え、切り替えた第1区間、第2区間及び第3区間を入力画面10aに表示させる。また、GUI10による当該入力の結果、制御部9は、例えば予め設定されたデータテーブルを用い、当該入力に基づいて第1区間、第2区間及び第3区間を観察する際の観察順序を切り替え、切り替えた観察順序を入力画面10aに表示させる。
【0086】
また、GUI10による当該入力の結果、制御部9は、例えば予め設定されたデータテーブルを用い、当該入力に基づいて第1区間用収差補正、第2区間用収差補正及び第3区間用収差補正の検査項目を切り替え、切り替えた検査項目を入力画面10aに表示させる。なお、図12に示される例では、簡易入力モードであることから、レーザ加工条件、要求品質、第1~第3区間用収差補正の補正量、第1~第3区間の範囲、観察順序、及び、検査項目について、入力画面10aに表示されるがユーザは変更又は入力はできない。
【0087】
図13は、加工条件の策定のための対象物20の観察を行う場合におけるGUI10の入力画面10aの他の例を示す図である。図13に示される例では、ユーザによりGUI10の入力画面10aにおいて、加工が「済」と選択され、レーザ加工後であることが入力されている。また、ユーザによりGUI10の入力画面10aにおいて、加工条件が「MEMS条件」、入力モードが「詳細入力モード」、対象物20の厚さが「400μm」と選択されて入力されている。
【0088】
GUI10による当該入力の結果、制御部9は、例えば予め設定されたデータテーブルを用い、当該入力に基づいてレーザ加工条件を決定し、決定したレーザ加工条件を入力画面10aに「レーザ加工条件(済)」として表示させる。また、GUI10による当該入力の結果、制御部9は、例えば予め設定されたデータテーブルを用い、当該入力に基づいて要求品質を切り替え、切り替えた要求品質を入力画面10aに表示させる。
【0089】
また、GUI10による当該入力の結果、制御部9は、例えば予め設定されたデータテーブルを用い、当該入力に基づいて第1区間用収差補正、第2区間用収差補正及び第3区間用収差補正の補正量を切り替える。例えば、制御部9は、第1区間用収差補正の補正量として「0mm補正」、第2区間用収差補正の補正量として「0.2mm補正」、及び、第3区間用収差補正の補正量として「0.4mm補正」へ切り替える。また、制御部9は、第1区間用収差補正、第2区間用収差補正及び第3区間用収差補正の補正量の切替えに応じて、例えば予め設定されたデータテーブルを用い、第1区間用収差補正、第2区間用収差補正及び第3区間用収差補正のそれぞれを実行時の各補正係数を切り替える。例えば、制御部9は、第1区間用収差補正を実行時の補正係数として「0mm補正係数」、第2区間用収差補正を実行時の補正係数として「0.2mm補正係数」、及び、第3区間用収差補正を実行時の補正係数として「0.4mm補正係数」へ切り替える。そして、制御部9は、切り替えた各補正量及び各補正係数を入力画面10aに表示させる。
【0090】
また、GUI10による当該入力の結果、制御部9は、例えば予め設定されたデータテーブルを用い、当該入力に基づいて第1区間、第2区間及び第3区間の範囲を切り替え、切り替えた第1区間、第2区間及び第3区間を入力画面10aに表示させる。また、GUI10による当該入力の結果、制御部9は、例えば予め設定されたデータテーブルを用い、当該入力に基づいて第1区間、第2区間及び第3区間を観察する際の観察順序を切り替え、切り替えた観察順序を入力画面10aに表示させる。
【0091】
また、GUI10による当該入力の結果、制御部9は、例えば予め設定されたデータテーブルを用い、当該入力に基づいて第1区間用収差補正、第2区間用収差補正及び第3区間用収差補正の検査項目を切り替え、切り替えた検査項目を入力画面10aに表示させる。なお、図13に示される例では、詳細入力モードであることから、レーザ加工条件、要求品質、第1~第3区間用収差補正の補正量、第1~第3区間の範囲、観察順序、及び、検査項目について、入力画面10aにてユーザは変更又は入力可能である。例えばユーザが要求品質を変更した場合には、それに応じて検査項目が変わり、それに伴い、第1~第3区間用収差補正の補正量も変わる。
【0092】
次に、対象物20の検査のための観察を行う場合の処理を、図14のフローチャート及び図15の概略断面図を参照して説明する。なお、図15では、説明の便宜上、裏面反射観察の場合の対象物20の断面を仮想断面として示し、第3区画に当該仮想断面の範囲を含めて示している(図19及び図20において同じ)。
【0093】
ユーザにより、GUI10の入力画面10aにおいて、例えば図10に示される入力がなされているとする。第1収差補正部47Aの補正環47xを適宜に回転させられて、第1補正量が「0mm補正」とされている。第2収差補正部47Bの補正環47yが適宜に回転させられて、第2収差補正部47Bの第2補正量が「0.2mm補正」とされている。第3収差補正部47Cの補正環47zが適宜に回転させられて、第3収差補正部47Cの第3補正量が「0.4mm補正」とされている。この場合において、制御部9により、次の処理を実行する。
【0094】
まず、第1集光レンズ43Aが透過光I1の光軸上に配置されるようにレボルバ48を回転させ、収差補正部46による収差補正の補正量を、第1収差補正部47Aによる第1補正量へ切り替える(ステップS1)。補正量を第1補正量へ切り替えたことに応じて、補正係数を第1補正量に対応する補正係数へ切り替える(ステップS2)。続いて、ハイトセットを行う(ステップS3)。ステップS3では、例えば、制御部9により第2鉛直移動機構7Bの動作を制御し、透過光I1の集光位置が透過光入射面である裏面21b上に位置するように、Z方向に沿って観察ユニット4を移動させ、そのときの位置を基準位置とする。
【0095】
続いて、観察ユニット4により対象物20の第1区間の内部観察を行い、複数の内部画像を取得する(ステップS4)。ステップS4では、例えば第2鉛直移動機構7Bにより、ステップS3のハイトセット時の基準位置を基準としてZ方向に沿って観察ユニット4を移動させ、対象物20の第1区間の複数の位置に透過光I1の集光位置を合わせて対象物20を撮像し、複数の内部画像を取得する。複数の内部画像のそれぞれに対して、観察ユニット4のZ方向の移動量に補正係数を乗じてなる深さ位置情報を関連付け、これを撮像データとして取得する。ここでの第1区間の内部観察は直接観察である。
【0096】
続いて、第2集光レンズ43Bが透過光I1の光軸上に配置されるようにレボルバ48を回転させ、収差補正部46による収差補正の補正量を、第2収差補正部47Bによる第2補正量へ切り替える(ステップS5)。補正量を第2補正量へ切り替えたことに応じて、補正係数を第2補正量に対応する補正係数へ切り替える(ステップS6)。続いて、ステップS3と同様にハイトセットを行う(ステップS7)。
【0097】
続いて、観察ユニット4により対象物20の第2区間の内部観察を行い、複数の内部画像を取得する(ステップS8)。ステップS4では、例えば第2鉛直移動機構7Bにより、ステップS8のハイトセット時の基準位置を基準としてZ方向に沿って観察ユニット4を移動させ、対象物20の第2区間の複数の位置に透過光I1の集光位置を合わせて対象物20を撮像し、複数の内部画像を取得する。複数の内部画像のそれぞれに対して、観察ユニット4のZ方向の移動量に補正係数を乗じてなる深さ位置情報を関連付け、これを撮像データとして取得する。ここでの第2区間の内部観察は直接観察である。
【0098】
続いて、第3集光レンズ43Cが透過光I1の光軸上に配置されるようにレボルバ48を回転させ、収差補正部46による収差補正の補正量を、第3収差補正部47Cによる第3補正量へ切り替える(ステップS9)。補正量を第3補正量へ切り替えたことに応じて、補正係数を第3補正量に対応する補正係数へ切り替える(ステップS10)。続いて、ハイトセットを行う(ステップS11)。ステップS11では、例えば、制御部9により第2鉛直移動機構7Bの動作を制御し、透過光I1の集光位置が裏面21b上に位置するようにZ方向に沿って観察ユニット4を移動させ、そのときの位置を基準位置とする。またステップS11では、制御部9により第2鉛直移動機構7Bの動作を制御し、透過光I1の集光位置が表面21a上に位置するようにZ方向に沿って観察ユニット4を移動させ、そのときの位置を他の基準位置とする。
【0099】
続いて、観察ユニット4により対象物20の第3区間の内部観察を行い、複数の内部画像を取得する(ステップS12)。ステップS12では、例えば第2鉛直移動機構7Bにより、ステップS11のハイトセット時の基準位置を基準としてZ方向に沿って観察ユニット4を移動させ、対象物20の第3区間の複数の位置に透過光I1の集光位置を合わせて対象物20を撮像し、複数の内部画像を取得する。複数の内部画像のそれぞれに対して、観察ユニット4のZ方向の移動量に補正係数を乗じてなる深さ位置情報を関連付け、これを撮像データとして取得する。ここでの第2区間の内部観察は、直接観察及び裏面反射観察である。
【0100】
以上の観察の結果、ステップS4で取得した撮像データに基づいて、上述したAI判定により第1区間の内部状態を判定し、その判定結果からHCの有無及び打痕の状態を検査する。ステップS8で取得した撮像データに基づいて、上述したAI判定により第2区間の内部状態を判定し、その判定結果から打痕の状態を検査する。ステップS12で取得した撮像データに基づいて、上述したAI判定により第3区間の内部状態を判定し、その判定結果からBHCの有無及び打痕の状態を検査する。
【0101】
次に、加工条件の策定のための観察を行う場合の処理を、図16図17及び図18のフローチャートと図19及び図20の概略断面図とを参照して説明する。
【0102】
ユーザにより、GUI10の入力画面10aにおいて、例えば図10に示される入力と同様な入力がなされているとする。ここでは、観察順序については、入力画面10aに「第3区間」、「第1区間」及び「全区間(第1~第3区間)」がこの順に入力されているとする。第1収差補正部47Aの補正環47xを適宜に回転させられて、第1補正量が「0mm補正」とされている。第2収差補正部47Bの補正環47yが適宜に回転させられて、第2収差補正部47Bの第2補正量が「0.2mm補正」とされている。第3収差補正部47Cの補正環47zが適宜に回転させられて、第3収差補正部47Cの第3補正量が「0.4mm補正」とされている。この場合において、制御部9により、次の処理を実行する。
【0103】
まず、図19(a)に示されるように、ステージ2上の対象物20の第3区画において、設定された加工条件に基づいて、レーザ加工ヘッド3により上述したレーザ加工を行い、改質領域12及び亀裂14を形成する(ステップS21)。制御部9によりステージ2、第1水平移動機構8A及び第2水平移動機構8Bを制御し、観察ユニット4による対象物20の内部観察が可能な位置(以下、「観察系」ともいう)へステージ2を移動させる(ステップS22)。
【0104】
続いて、第3集光レンズ43Cが透過光I1の光軸上に配置されるようにレボルバ48を回転させ、収差補正部46による収差補正の補正量を、第3収差補正部47Cによる第3補正量へ切り替える(ステップS23)。補正量を第3補正量へ切り替えたことに応じて、補正係数を第3補正量に対応する補正係数へ切り替える(ステップS24)。
【0105】
続いて、ハイトセットを行う(ステップS25)。ステップS25では、例えば、制御部9により第2鉛直移動機構7Bの動作を制御し、透過光I1の集光位置が裏面21b上に位置するようにZ方向に沿って観察ユニット4を移動させ、そのときの位置を基準位置とする。またステップS25では、制御部9により第2鉛直移動機構7Bの動作を制御し、透過光I1の集光位置が表面21a上に位置するようにZ方向に沿って観察ユニット4を移動させ、そのときの位置を他の基準位置とする。
【0106】
続いて、観察ユニット4により対象物20の第3区間の内部観察を行い、複数の内部画像を取得する(ステップS26)。ステップS26では、例えば第2鉛直移動機構7Bにより、ステップS25のハイトセット時の基準位置を基準としてZ方向に沿って観察ユニット4を移動させ、対象物20の第3区間の複数の位置に透過光I1の集光位置を合わせて対象物20を撮像し、複数の内部画像を取得する。複数の内部画像のそれぞれに対して、観察ユニット4のZ方向の移動量に補正係数を乗じてなる深さ位置情報を関連付け、これを撮像データとして取得する。ここでの第3区間の内部観察は直接観察及び裏面反射観察である。
【0107】
続いて、制御部9により、ステップS26で取得した撮像データに基づいて、第3区間の内部状態を判定する(ステップS27)。例えばステップS27では、上述したAI判定により、第3区間の検査対象(改質領域12及び亀裂14)の像が相対的に鮮明な内部画像を判定し、そのときの観察ユニット4の移動量に補正係数を乗じることにより検査対象の深さ位置を算出する。第3区間の検査対象の当該内部画像及び深さ位置に基づいて、GUI10によるユーザからの入力に応じた要求品質(図10参照)を満たすか否かを判定する。要求品質を満たさない場合、第3区間の内部状態は正常ではないと判定し(ステップS28でNO)、設定された加工条件を変更し、上記ステップS21に戻る。一方、要求品質を満たす場合、第3区間の内部状態は正常であると判定し(ステップS28でYES)、制御部9によりステージ2、第1水平移動機構8A及び第2水平移動機構8Bを制御し、レーザ加工ヘッド3による対象物20のレーザ加工が可能な位置(以下、「レーザ加工系」ともいう)へステージ2を移動させる(ステップS29)。
【0108】
続いて、図19(b)に示されるように、ステージ2上の対象物20の第1区画において、設定された加工条件に基づいて、レーザ加工ヘッド3により上述したレーザ加工を行い、改質領域12及び亀裂14を形成する(ステップS30)。制御部9によりステージ2、第1水平移動機構8A及び第2水平移動機構8Bを制御し、観察系へステージ2を移動させる(ステップS31)。第1集光レンズ43Aが透過光I1の光軸上に配置されるようにレボルバ48を回転させ、収差補正部46による収差補正の補正量を、第1収差補正部47Aによる第1補正量へ切り替える(ステップS32)。補正量を第1補正量へ切り替えたことに応じて、補正係数を第1補正量に対応する補正係数へ切り替える(ステップS33)。
【0109】
続いて、ハイトセットを行う(ステップS34)。例えばステップS34では、制御部9により第2鉛直移動機構7Bの動作を制御し、透過光I1の集光位置が裏面21b上に位置するようにZ方向に沿って観察ユニット4を移動させ、そのときの位置を基準位置とする。続いて、観察ユニット4により対象物20の第1区間の内部観察を行い、複数の内部画像を取得する(ステップS35)。例えばステップS35では、第2鉛直移動機構7Bにより、ステップS34のハイトセット時の基準位置を基準としてZ方向に沿って観察ユニット4を移動させ、対象物20の第1区間の複数の位置に透過光I1の集光位置を合わせて対象物20を撮像し、複数の内部画像を取得する。複数の内部画像のそれぞれに対して、観察ユニット4のZ方向の移動量に補正係数を乗じてなる深さ位置情報を関連付け、これを撮像データとして取得する。ここでの第1区間の内部観察は直接観察である。
【0110】
続いて、制御部9により、ステップS35で取得した撮像データに基づいて、第1区間の内部状態を判定する(ステップS36)。例えばステップS36では、上述したAI判定により、第1区間の検査対象の像が相対的に鮮明な内部画像を判定し、そのときの観察ユニット4の移動量に補正係数を乗じることにより検査対象の深さ位置を算出する。第1区間の検査対象の当該内部画像及び深さ位置に基づいて、GUI10によるユーザからの入力に応じた要求品質(図10参照)を満たすか否かを判定する。要求品質を満たさない場合、第1区間のの内部状態は正常ではないと判定し(ステップS37でNO)、設定された加工条件を変更し、ステップS29に戻る。一方、要求品質を満たす場合、第1区間の内部状態は正常であると判定し(ステップS37でYES)、制御部9によりステージ2、第1水平移動機構8A及び第2水平移動機構8Bを制御し、レーザ加工系へステージ2を移動させる(ステップS38)。
【0111】
続いて、図20に示されるように、ステージ2上の対象物20の全区画(第1~第3区画)において、設定された加工条件に基づいて、レーザ加工ヘッド3により上述したレーザ加工を行い、改質領域12及び亀裂14を形成する(ステップS39)。制御部9によりステージ2、第1水平移動機構8A及び第2水平移動機構8Bを制御し、観察系へステージ2を移動させる(ステップS40)。第1集光レンズ43Aが透過光I1の光軸上に配置されるようにレボルバ48を回転させ、収差補正部46による収差補正の補正量を、第1収差補正部47Aによる第1補正量へ切り替える(ステップS41)。補正量を第1補正量へ切り替えたことに応じて、補正係数を第1補正量に対応する補正係数へ切り替える(ステップS42)。ステップS34と同様にハイトセットを行う(ステップS43)。ステップS35と同様に観察ユニット4により対象物20の第1区間の内部観察を行い、複数の内部画像を取得する(ステップS44)。
【0112】
続いて、第2集光レンズ43Bが透過光I1の光軸上に配置されるようにレボルバ48を回転させ、収差補正部46による収差補正の補正量を、第2収差補正部47Bによる第2補正量へ切り替える(ステップS45)。補正量を第2補正量へ切り替えたことに応じて、補正係数を第1補正量に対応する補正係数へ切り替える(ステップS46)。ステップS34と同様にハイトセットを行う(ステップS47)。観察ユニット4により対象物20の第2区間の内部観察を行い、複数の内部画像を取得する(ステップS48)。例えばステップS48では、第2鉛直移動機構7Bにより、ステップS47のハイトセット時の基準位置を基準としてZ方向に沿って観察ユニット4を移動させ、対象物20の第2区間の複数の位置に透過光I1の集光位置を合わせて対象物20を撮像し、複数の内部画像を取得する。複数の内部画像のそれぞれに対して、観察ユニット4のZ方向の移動量に補正係数を乗じてなる深さ位置情報を関連付け、これを撮像データとして取得する。ここでの第2区間の内部観察は直接観察である。
【0113】
続いて、第3集光レンズ43Cが透過光I1の光軸上に配置されるようにレボルバ48を回転させ、収差補正部46による収差補正の補正量を、第3収差補正部47Cによる第3補正量へ切り替える(ステップS49)。補正量を第3補正量へ切り替えたことに応じて、補正係数を第3補正量に対応する補正係数へ切り替える(ステップS50)。ステップS25と同様にハイトセットを行う(ステップS51)。ステップS26と同様に観察ユニット4により対象物20の第3区間の内部観察を行い、複数の内部画像を取得する(ステップS52)。
【0114】
そして、制御部9により、ステップS44、ステップS48及びステップS52で取得した撮像データに基づいて、全区間の内部状態を判定する(ステップS53)。例えばステップS53では、上述したAI判定により、全区間の検査対象(改質領域12及び亀裂14)の像が相対的に鮮明な内部画像を判定し、そのときの観察ユニット4の移動量に補正係数を乗じることにより検査対象の深さ位置を算出する。全区間の検査対象の内部画像及び深さ位置に基づいて、GUI10によるユーザからの入力に応じた要求品質(図10参照)を満たすか否かを判定する。要求品質を満たさない場合、全区間の内部状態は正常ではないと判定し(ステップS54でNO)、設定された加工条件を変更し、上記ステップS39に戻る。一方、要求品質を満たす場合、全区間の内部状態は正常であると判定し(ステップS54でYES)、処理を終了する。
【0115】
以上、観察装置100では、対象物20において観察する区間を、重要度の高い3つの第1~第3区間(すなわち、対象物20の透過光入射面側、内部、及び、透過光入射面の反対面側)に分け、これら第1~第3区間を観察する場合に、そのそれぞれ毎にユーザの入力に応じて切り替えられた補正量で収差補正を行うことができる。これにより、にユーザの入力に応じて適正化されるように補正量を切り替えることができと共に、観察の都度に補正量を最適化する場合に比べて、当該切替えの頻度を抑えて高いタクトを維持することが可能となる。すなわち、高いタクトと対象物20の正確な観察との両立を実現することが可能となる。
【0116】
観察装置100では、収差補正部46は、収差補正の補正量を少なくとも第1補正量と第2補正量と第3補正量との間で切替え可能に構成されている。制御部9は、第1区間用収差補正、第2区間用収差補正及び第3区間用収差補正の補正量を、GUI10で受け付けた入力に応じて、第1補正量、第2補正量及び第3補正量の中で切り替える。この場合、第1区間用収差補正、第2区間用収差補正及び第3区間用収差補正の各補正量の切替えを、簡易に実現することが可能となる。
【0117】
観察装置100では、透過光集光レンズ43は、第1集光レンズ43A、第2集光レンズ43B及び第3集光レンズ43Cを有する。収差補正部46は、第1集光レンズ43Aに設けられた第1収差補正部47Aと、第2集光レンズ43Bに設けられた第2収差補正部47Bと、第3集光レンズ43Cに設けられた第3収差補正部47Cと、レボルバ48と、を備える。この場合、レボルバ48により透過光I1の光軸上の透過光集光レンズ43を第1~第3集光レンズ43A~43Cの間で切り替えることで、第1区間用収差補正、第2区間用収差補正及び第3区間用収差補正の各補正量を第1~第3補正量の間で切り替えることが可能となる。
【0118】
観察装置100では、第1補正量は、第2補正量よりも小さく、第2補正量は、第3補正量よりも小さい。このような大小関係の第1~第3補正量を利用して、補正量を適正化することが可能となる。
【0119】
観察装置100では、第1区間用収差補正は、対象物20の透過光入射面に露出する亀裂14の有無を検査するための収差補正であってもよい。第2区間用収差補正は、対象物20の内部に形成された改質領域12を検査するための収差補正であってもよい。第3区間用収差補正は、対象物20における透過光入射面の反対面である表面21aに露出する亀裂14の有無を検査するための収差補正であってもよい。この場合、対象物20のHCの有無、対象物20の内部に形成された改質領域12、及び、対象物20のBHCの有無について、精度よく検査することが可能となる。
【0120】
ところで、対象物20の内部において透過光I1の集光点の位置を調整すべく、観察ユニット4をZ方向に沿って移動量Fzだけ移動させた場合、この移動量Fzにばらつきが生じる場合があり、その原因として、透過光集光レンズ43の集光ボケによる観察位置ずれが考えれる。また、移動量Fzにばらつきが生じる原因としては、いわゆる補正環レンズの操作前後のずれが考えられる。すなわち、透過光集光レンズ43が補正環47x,47y,47zを有する場合、収差補正の補正量の変化量に対する補正環47x,47y,47zの操作量が一定でない場合があり、この結果、補正環47x,47y,47zの操作前後で観察位置がずれる場合がある。さらに、観察ユニット4の透過光集光レンズ43の機差又はその脱着等も、移動量Fzのばらつきの一因となる。このようにばらついた移動量Fzに対して一定の補正係数を乗じて検出対象の深さ位置を算出すると、算出結果もばらつくこととなる。そこで、観察装置100では、検出対象の正確な深さ位置を取得するために、適切な補正係数を使用するべく、第1区間用収差補正、第2区間用収差補正及び第3区間用収差補正の補正量の切替えに応じて、補正係数を切り替える。これにより、対象物20における検出対象の深さ位置を精度よく取得することが可能となる。
【0121】
観察装置100では、GUI10は、対象物20に対して行う検査内容に関する入力を受け付ける。制御部9は、第1区間用収差補正、第2区間用収差補正及び第3区間用収差補正の補正量を、GUI10で受け付けた検査内容に関する入力に応じて切り替える。この場合、ユーザからの検査内容に関する入力に応じて、第1区間用収差補正、第2区間用収差補正及び第3区間用収差補正の補正量を適正化することが可能となる。
【0122】
観察装置100では、GUI10は、対象物20に対して行うレーザ加工の加工条件の種類に関する入力を受け付ける。制御部9は、第1区間用収差補正、第2区間用収差補正及び第3区間用収差補正の補正量を、GUI10で受け付けた加工条件の種類に関する入力に応じて切り替える。この場合、ユーザからの加工条件の種類に関する入力に応じて、第1区間用収差補正、第2区間用収差補正及び第3区間用収差補正の補正量を適正化することが可能となる。
【0123】
観察装置100では、GUI10は、対象物20の厚さに関する入力を受け付ける。制御部9は、第1区間用収差補正、第2区間用収差補正及び第3区間用収差補正の補正量を、GUI10で受け付けた対象物20の厚さに関する入力に応じて切り替える。この場合、ユーザからの対象物20の厚さに関する入力に応じて、第1区間用収差補正、第2区間用収差補正及び第3区間用収差補正の補正量を適正化することが可能となる。
【0124】
観察装置100では、GUI10は、入力モードが簡易入力モード及び詳細入力モードの何れであるかに関する入力を受け付けると共に、入力モードとして詳細入力モードに関する入力を受け付けた場合に、第1区間用収差補正、第2区間用収差補正及び第3区間用収差補正の補正量の入力を受け付ける。この場合、ユーザは、入力モードとして詳細入力モードを入力することで、第1区間用収差補正、第2区間用収差補正及び第3区間用収差補正の補正量を入力することが可能となる。
【0125】
図21は、収差補正の補正量と複数種の検査内容の判定との関係を示す表である。図中において、「〇」は正確に判定可能であることを示し、「△」は判定可能であることを示し、「×」は判定不能であることを示す。HC検出は、対象物20の透過光入射面に露出する亀裂14の検出を意味する。HC蛇行は、対象物20の透過光入射面に露出する亀裂14の蛇行を意味する。上亀裂検出は、対象物20の内部において亀裂14の最も透過光入射面側の端の検出を意味する。打痕(直接観察)は、直接観察による打痕(改質領域12)の検出を意味する。下亀裂検出は、対象物20の内部において亀裂14の最も透過光入射面の反対面側の端の検出を意味する。打痕(裏面反射観察)は、裏面反射観察による打痕の検出を意味する。
【0126】
図中の例では、対象物20の厚さは400μmとしている。ここでは、厚さ方向において透過光入射面から0.2mmまでの範囲を第1区間とし、厚さ方向において透過光入射面の反対面から0.2mmまでの範囲を第3区画とし、対象物20の内部の第1及び第2区間以外の範囲を第2区間としている。HC検出、HC蛇行及び上亀裂検出は、第1区間の観察で判定可能な検査内容である。打痕(直接観察)、黒筋及び端面凹凸は、第2区間の観察で判定可能な検査内容である。下亀裂検出及び弾痕(裏面反射観察)は、第3区間の観察で判定可能な検査内容である。図21に示されるように、収差補正の補正量を固定するのではなく、第1~第3区間で分けることで、多くの検査内容にて正確に判定可能になることがわかる。
【0127】
なお、本実施形態では、第1区間の第2区間側と第2区間の第1区間側とは、第1重複区間で互いに重複し、第2区間の第3区間側と第3区間の第2区間側とは、第2重複区間で互いに重複してもよい。この場合、第1重複区間では、収差補正の補正量を変えた2回の観察(第1区間用収差補正を行う観察及び第2区間用収差補正を行う観察)を行い、第2重複区間においても、収差補正の補正量を変えた2回の観察(第2区間用収差補正を行う観察及び第3区間用収差補正を行う観察)を行ってもよい。すなわち、この場合、制御部9は、収差補正部46により第1区間用収差補正を行いながら第1重複区間を光検出部44で撮像する処理と、収差補正部46により第2区間用収差補正を行いながら第1重複区間を光検出部44で撮像する撮像処理と、収差補正部46により第2区間用収差補正を行いながら第2重複区間を光検出部44で撮像する処理と、収差補正部46により第3区間用収差補正を行いながら第2重複区間を光検出部44で撮像する撮像処理と、を実行してもよい。これにより、対象物20の第1及び第2重複区間において、より正確な観察が可能となる。また、対象物20の厚さ等の入力内容に応じて第1及び第3区間用収差収差補正のみでも正確に観察可能(判定可能)な場合もある。
【0128】
本発明の一態様は、上記実施形態に限定されることなく、任意に変形される。
【0129】
図22は、第1変形例に係る観察ユニット104を示す斜視図である。図22に示される観察ユニット104は、その光検出部44がアライメント用カメラ5の光検出部として併用される点で上記観察ユニット4(図5参照)と異なる。観察ユニット104は、レボルバ148を有し、レボルバ148の回転部148bにおいて周方向に等間隔の4つの位置には、第1集光レンズ43A、第2集光レンズ43B、第3集光レンズ43C及び、アライメント用レンズ5Dが取り付けられている。レボルバ148は、第1集光レンズ43A、第2集光レンズ43B、第3集光レンズ43C及びアライメント用レンズ5Dの何れかを透過光I1の光軸上に配置すると共に、透過光I1の光軸上に配置するこれらの何れかが切り替わるように可動(回転軸を基軸に固定部148aに対して回転)する。
【0130】
第1集光レンズ43A、第2集光レンズ43B及び第3集光レンズ43Cは、例えば倍率が50倍のいわゆる補正環レンズであり、光検出部44を内部観察に用いる場合に、レボルバ148の駆動により透過光I1の光軸上に配置される。アライメント用レンズ5Dは、例えば倍率が10倍(又は20倍)のレンズであり、光検出部44を高倍率のアライメントに用いる場合に、レボルバ148の駆動により透過光I1の光軸上に配置される。このような変形例では、内部観察と高倍率のアライメントとで光検出部44を共通化して、コストを抑制できる効果がある。
【0131】
図23は、第2変形例に係る観察ユニット204を示す斜視図である。図23に示される観察ユニット204は、上記観察ユニット104(図22参照)と同様に、その光検出部44がアライメント用カメラ5の光検出部として併用される。観察ユニット204は、直動ステージ248を有する。直動ステージ248においてX方向又はY方向に等間隔の4つの位置には、第1集光レンズ43A、第2集光レンズ43B、第3集光レンズ43C及び、アライメント用レンズ5Dが取り付けられている。直動ステージ248は、第1集光レンズ43A、第2集光レンズ43B、第3集光レンズ43C及びアライメント用レンズ5Dの何れかを透過光I1の光軸上に配置すると共に、透過光I1の光軸上に配置するこれらの何れかが切り替わるように可動(X方向又はY方向に直線的に移動)する。
【0132】
第1集光レンズ43A、第2集光レンズ43B及び第3集光レンズ43Cは、光検出部44を内部観察に用いる場合に、直動ステージ248の駆動により透過光I1の光軸上に配置される。アライメント用レンズ5Dは、光検出部44を高倍率のアライメントに用いる場合に、直動ステージ248の駆動により透過光I1の光軸上に配置される。このような変形例においても、内部観察と高倍率のアライメントとで光検出部44を共通化して、コストを抑制できる効果がある。
【0133】
図24は、第3変形例に係る観察ユニット304の構成を示す概略図である。図24に示される観察ユニット304は、上記観察ユニット104(図22参照)と同様に、その光検出部44がアライメント用カメラ5の光検出部として併用される。また、観察ユニット304は、その光路がシャッタ301A,301Bで切り替えられる。シャッタ301A,301Bは、例えば電動のメカニカルシャッタであり、制御部9(図1参照)に接続されて、その開閉が制御される。
【0134】
観察ユニット304では、内部観察を行う場合、制御部9によりシャッタ301Aが閉状態とされると共にシャッタ301Bが開状態とされる。この場合、透過光I1は、レチクルRTを通過し、ハーフミラー302によって反射され、透過光集光レンズ43を通過し、対象物20(図5参照)に照射される。対象物20で反射した透過光I1は、透過光集光レンズ43及びハーフミラー302を通過し、シャッタ301Bを通過し、全反射ミラー303で反射し、ハーフミラー314で反射した後、光検出部44で受光される。一方、観察ユニット304では、アライメントを行う場合、制御部9によりシャッタ301Bが閉状態とされると共にシャッタ301Aが開状態とされる。この場合、透過光I1は、ハーフミラー305によって反射され、アライメント用レンズ5Dを通過し、対象物20に照射される。対象物20で反射した透過光I1は、アライメント用レンズ5D及びシャッタ301Aを通過し、ハーフミラー314を通過した後、光検出部44で受光される。
【0135】
透過光集光レンズ43は、例えば倍率が50倍のいわゆる補正環レンズである。透過光集光レンズ43の収差補正の補正量は、その補正環が駆動部310により回転させられることで切り替えられる。なお、透過光集光レンズ43は、図22又は図23に示されるように、第1~第3集光レンズ43A~43Cを有し、その何れかがレボルバ148又は直動ステージ248の駆動により透過光I1の光軸上に配置されてもよい。図示する例では、内部観察用のレチクルRTがアライメント用画像に映らないように、透過光I1の光源を分けている。
【0136】
このような変形例においても、内部観察と高倍率のアライメントとで光検出部44を共通化して、コストを抑制できる効果がある。また、観察ユニットをアライメント用途に用いるためには、内部観察と比較して、X方向、Y方向及びθ方向の精度が重要であるため、アライメント用の光路はX方向、Y方向及びθ方向の精度を担保した構成が必要になる。観察ユニット304では、X方向、Y方向及びθ方向の精度を担保した構成を実現できる。
【0137】
図25は、第4変形例に係る観察ユニット404の構成を示す概略図である。図25に示される観察ユニット404は、上記観察ユニット304(図24参照)と同様に、その光検出部44がアライメント用カメラ5の光検出部として併用される。また、観察ユニット404は、その光路が全反射ミラー401の移動により切り替えられる。全反射ミラー401は、制御部9(図1参照)に接続されて、その移動が制御される。
【0138】
観察ユニット404では、内部観察を行う場合、制御部9により全反射ミラー401が移動されて透過光I1の光路上に配置される。この場合、透過光I1は、レチクルRTを通過し、ハーフミラー402によって反射され、透過光集光レンズ43を通過し、対象物20(図5参照)に照射される。対象物20で反射した透過光I1は、透過光集光レンズ43及びハーフミラー402を通過し、全反射ミラー403で反射し、全反射ミラー401で反射した後、光検出部44で受光される。一方、観察ユニット404では、アライメントを行う場合、制御部9により全反射ミラー401が移動されて透過光I1の光路から離れる位置に移動される。この場合、透過光I1は、ハーフミラー405によって反射され、アライメント用レンズ5Dを通過し、対象物20に照射される。対象物20で反射した透過光I1は、アライメント用レンズ5D及びハーフミラー405を通過した後、光検出部44で受光される。
【0139】
このような変形例においても、内部観察と高倍率のアライメントとで光検出部44を共通化して、コストを抑制できる効果がある。また、観察ユニット404では、X方向、Y方向及びθ方向の精度を担保した構成を実現できる。
【0140】
上記実施形態において、レーザ加工装置1の構成は限定されず、例えば図26に示されるレーザ加工装置101としてもよい。レーザ加工装置101が上記実施形態に係るレーザ加工装置1(図1参照)と異なる点は、第1鉛直移動機構7A(図1参照)に代えて第1鉛直移動機構107Aを備え、第2鉛直移動機構7B(図1参照)に代えて第2鉛直移動機構107Bを備える点である。
【0141】
第1鉛直移動機構107Aは、Z方向に沿ってレーザ加工ヘッド3をアライメント用カメラ5,6と共に移動させる機構である。第1鉛直移動機構107Aは、柱状の第1ベース部175におけるX方向の一方側に設けられた第1鉛直軸171を有する。第1ベース部175は、例えば設置面等に固定されている。第1鉛直軸171は、Z方向に沿って延在する。第1鉛直軸171には、レーザ加工ヘッド3の取付部39がZ方向に沿って移動可能に取り付けられている。このような第1鉛直移動機構107Aは、不図示の駆動源の駆動力により、レーザ加工ヘッド3を第1鉛直軸171に沿ってZ方向に移動させる。第1鉛直移動機構107Aとしては、特に限定されず、レーザ加工ヘッド3をZ方向に移動できれば種々の機構を用いることができる。
【0142】
第2鉛直移動機構107Bは、Z方向に沿って観察ユニット4を移動させる機構(移動部)である。第2鉛直移動機構107Bは、第1ベース部175におけるX方向の他方側に設けられた第2鉛直軸172を有する。つまり、第1鉛直軸171と第2鉛直軸172とは、第1ベース部175にともに設けられており、且つ、第1ベース部175を介して対向するように配置されている。第2鉛直軸172は、Z方向に沿って延在する。第2鉛直軸172には、観察ユニット4の取付部49がZ方向に沿って移動可能に取り付けられている。このような第2鉛直移動機構107Bは、不図示の駆動源の駆動力により、観察ユニット4を第2鉛直軸172に沿ってZ方向に移動させる。第2鉛直移動機構107Bとしては、特に限定されず、観察ユニット4をZ方向に移動できれば種々の機構を用いることができる。レーザ加工装置101では、第1鉛直軸171及び第2鉛直軸172を設けるベース部を第1ベース部175として共用した装置構成を実現することができる。
【0143】
上記実施形態では、アライメント用カメラ5,6は、レーザ加工ヘッド3及び観察ユニット4とは別軸でZ方向に沿って移動可能であってもよい。上記実施形態では、観察ユニット4の全体をZ方向に移動させる第2鉛直移動機構7B,107Bを移動部として用いたが、これに代えて、透過光集光レンズ43をZ方向に移動させるアクチュエータ等を移動部として用いてもよい。
【0144】
上記実施形態において、GUI10によるユーザからの入力は、上述した各入力の少なくとも何れかを含んでいればよい。また、GUI10によるユーザからの入力は、上述した各入力に限定されず、その他の対象物20の情報に関する入力、及び、その他の検査内容に関する入力を含んでいてもよい。例えばユーザから入力される対象物20の情報として、対象物20の材料に関する情報を含んでいてもよい。また例えばユーザから入力される検査内容として、レーザ加工装置1,101の状態検査、良品検査(歩留まり検査)に関する情報、及び要求品質検査に関する情報を含んでいてもよい。上記実施形態では、第1~第3集光レンズ43A,43B,43Cの補正環47x,47y,47zを設定時から回さずに(つまり、一定で保持して)観察を行ってもよい。この場合、補正環47x,47y,47zを回すことで補正係数がずれることがなくなり、再度に補正係数を導出しなおす必要がなくなるため、タクトを高めることが可能となる。
【0145】
上記実施形態では、収差補正部46として、透過光I1の光路上に配置した空間光変調器を用いてもよい。上記実施形態では、観察装置100をレーザ加工装置1に適用したが、その他の加工装置に適用してもよい。上記実施形態及び変形例における各構成には、上述した材料及び形状に限定されず、様々な材料及び形状を適用することができる。また、上述した実施形態及び変形例における各構成は、他の実施形態又は変形例における各構成に任意に適用することができる。
【符号の説明】
【0146】
1,101…レーザ加工装置、2…ステージ、4,104,204,304,404…観察ユニット、5,6…アライメント用カメラ、7B,107B…第2鉛直移動機構(移動部)、8A…第1水平移動機構、8B…第2水平移動機構、9…制御部、10…GUI(入力部)、12…改質領域、14…亀裂、20…対象物、21a…表面(反対面)、21b…裏面(透過光入射面)、43…透過光集光レンズ(集光レンズ)、43A…第1集光レンズ、43B…第2集光レンズ、43C…第3集光レンズ、44…光検出部(撮像部)、46…収差補正部、47A…第1収差補正部、47B…第2収差補正部、47C…第3収差補正部、48…レボルバ、100…観察装置、I1…透過光。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26