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特許7709969アミノアルキルテトラヒドロピラン誘導体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-09
(45)【発行日】2025-07-17
(54)【発明の名称】アミノアルキルテトラヒドロピラン誘導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 309/06 20060101AFI20250710BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20250710BHJP
   A61K 31/351 20060101ALI20250710BHJP
【FI】
C07D309/06
A61P25/04
A61K31/351
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022532426
(86)(22)【出願日】2021-05-24
(86)【国際出願番号】 JP2021019651
(87)【国際公開番号】W WO2021256181
(87)【国際公開日】2021-12-23
【審査請求日】2024-03-15
(31)【優先権主張番号】P 2020106516
(32)【優先日】2020-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村田 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】西山 章
【審査官】堀 洋樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/156074(WO,A1)
【文献】MOHACSI,E. et al,Synthesis and stereochemistry of tetrahydro-4-aryl-3- [(dimethylamino)methyl]-2H-pyranols as potenti,Journal of Heterocyclic Chemistry,1990年,Vol.27, No.6,pp.1623-1628
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61P
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1);
【化1】

(式中、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1~12の置換又は無置換のアルキル基を表し、R~Rは、それぞれ独立して、炭素数1~12の置換又は無置換のアルキル基を表し、*1、*2は不斉炭素を表す。)で表されるアミノアルキルテトラヒドロピラン誘導体(1)、又はその薬学的に許容される塩の製造法であって、下記一般式(2);
【化2】

(式中、R~R、*1、*2は前記に同じ。Qは、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、p-トルエンスルホニル基、o-クロロベンゼンスルホニル基、m-クロロベンゼンスルホニル基、p-クロロベンゼンスルホニル基、o-ニトロベンゼンスルホニル基、m-ニトロベンゼンスルホニル基、p-ニトロベンゼンスルホニル基または(+)-10-カンファースルホニル基を表す。)で表されるアミン化合物(2)、又はその塩と塩基とを反応させ、前記式(1)で表されるアミノアルキルテトラヒドロピラン誘導体、又はその薬学的に許容される塩に変換する製造法。
【請求項2】
前記アミン化合物(2)又はその塩と、塩基とを水溶媒下で反応させることを特徴とする請求項1に記載の製造法。
【請求項3】
前記Rが水素原子である請求項1又は2に記載の製造法。
【請求項4】
前記R及びRが水素原子である請求項1~3のいずれかに記載の製造法。
【請求項5】
前記R及びRがメチル基である請求項1~4のいずれかに記載の製造法。
【請求項6】
前記Qがメタンスルホニル基又はp-トルエンスルホニル基である請求項1~5のいずれかに記載の製造法。
【請求項7】
下記一般式(3);
【化3】

(式中、R~R、*1、*2は前記に同じ。)で表されるフェノール誘導体(3)をジスルホニル化することにより、下記一般式(4);
【化4】

(式中R~R、*1、*2、Qは前記に同じ。)で表されるジスルホニル化合物(4)に変換し、続いて前記ジスルホニル化合物(4)と第2級アミンとを反応させ、前記アミン化合物(2)又はその塩を製造する工程を有する請求項1~6のいずれかに記載の製造法。
【請求項8】
前記フェノール誘導体(3)が、下記一般式(5);
【化5】

(式中R~R、*1、*2は前記に同じ。)で表されるアルコール誘導体(5)から製造される工程を有する請求項7に記載の製造法。
【請求項9】
前記アミノアルキルテトラヒドロピラン誘導体(1)が下式(6a);
【化6】

で表される3-[(3R,4R)-3-(ジメチルアミノメチル)テトラヒドロピラン-4-イル]フェノール、3-[(3S,4S)-3-(ジメチルアミノメチル)テトラヒドロピラン-4-イル]フェノール、又はそれら2つのエナンチオマーの混合物である請求項1~8のいずれかに記載の製造法。
【請求項10】
前記アミノアルキルテトラヒドロピラン誘導体(1)が、痛みの治療及び/又は予防に使用される有効成分であることを特徴とする、請求項1~9のいずれかに記載の製造法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、痛みの治療及び/又は予防に用いられるアミノアルキルテトラヒドロピラン誘導体、その塩、又は、それらの水和物の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
痛みの治療及び/又は予防に用いられるアミノアルキルテトラヒドロピラン誘導体の製造方法としては、4-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)-3,6-ジヒドロ-2H-ピラン-5-カルボン酸メチル及びアリールボロン酸によるカップリング反応で4-(3-メトキシフェニル)-3,6-ジヒドロ-2H-ピラン-5-カルボン酸メチルに変換し、水素添加反応によってオレフィンを還元した後、塩基存在下でシス体からトランス体に異性化を行い、更にエステルの還元によるアルコール誘導体への変換、スルホニル化を経由したジメチルアミノ基への置換、次いで脱メチル化させることにより誘導する方法が知られている(特許文献1)。
【0003】
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2019/156074号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された方法は、メトキシフェノールの脱メチル化反応を工業規模での製造には適さない-78℃という低温条件で行っており、且つ収率が極端に低いため、工業規模でアミノアルキルテトラヒドロピラン誘導体を提供するには不適である。また、スルホニル基からジメチルアミノ基への置換効率も悪いため、効率的な製造方法とは言い難い。
本発明の第1の目的は、-78℃での反応のような工業規模で製造するには適さない製造条件を用いることなく、アミノアルキルテトラヒドロピラン誘導体を製造する方法を提供することにある。
本発明の第2の目的は、アミノアルキルテトラヒドロピランを高収率で製造する方法を提供することにある。
本発明は、第1の目的及び第2の目的の片方を達成できればよく、両方を達成できることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討の結果、スルホニル化されたフェノール骨格を有するアミン化合物を塩基と反応させることで-78℃のような低温条件を必要とせず、高収率で合成可能なアミノアルキルテトラヒドロピラン誘導体の製造法を見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下のとおりである。
【0007】
[1] 下記一般式(1);
【化2】
(式中、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1~12の置換又は無置換のアルキル基を表し、R~Rは、それぞれ独立して、炭素数1~12の置換又は無置換のアルキル基を表し、*1、*2は不斉炭素を表す。)で表されるアミノアルキルテトラヒドロピラン誘導体(1)(以下、化合物(1)という場合がある)、又はその薬学的に許容される塩の製造法であって、下記式(2);
【化3】
(式中、R~R、*1、*2は前記に同じ。Qはスルホニル基を表す。)で表されるアミン化合物(2)(以下、化合物(2)という場合がある)、又はその塩と塩基とを反応させ、前記式(1)で表されるアミノアルキルテトラヒドロピラン誘導体、又はその薬学的に許容される塩に変換する製造法。
[2] 前記アミン化合物(2)又はその塩と、塩基とを水溶媒下で反応させることを特徴とする[1]に記載の製造法。
[3] 前記Rが水素原子である[1]又は[2]に記載の製造法。
[4] 前記R及びRが水素原子である[1]~[3]のいずれかに記載の製造法。
[5] 前記R及びRがメチル基である[1]~[4]のいずれかに記載の製造法。
[6] 前記Qがメタンスルホニル基又はp-トルエンスルホニル基である[1]~[5]のいずれかに記載の製造法。
[7] 下記一般式(3);
【化4】
(式中、R~R、*1、*2は前記に同じ。)で表されるフェノール誘導体(3)(以下、化合物(3)という場合がある)をジスルホニル化することにより、下記一般式(4);
【化5】
(式中R~R、*1、*2、Qは前記に同じ。)で表されるジスルホニル化合物(4)(以下、化合物(4)という場合がある)に変換し、続いて前記ジスルホニル化合物(4)と第2級アミンとを反応させ、前記アミン化合物(2)又はその塩を製造する工程を有する[1]~[6]のいずれかに記載の製造法。
[8] 前記フェノール誘導体(3)が、下記一般式(5);
【化6】
(式中R~R、*1、*2は前記に同じ。)で表されるアルコール誘導体(5)(以下、化合物(5)という場合がある)から製造される工程を有する特徴とする[7]に記載の製造法。
[9] 前記アミノアルキルテトラヒドロピラン誘導体(1)が下式(6a);
【化7】
で表される3-[(3R,4R)-3-(ジメチルアミノメチル)テトラヒドロピラン-4-イル]フェノール、3-[(3S,4S)-3-(ジメチルアミノメチル)テトラヒドロピラン-4-イル]フェノール、又はそれら2つのエナンチオマーの混合物である[1]~[8]のいずれかに記載の製造法。
[10] 前記アミノアルキルテトラヒドロピラン誘導体(1)が、痛みの治療及び/又は予防に使用される有効成分であることを特徴とする、[1]~[9]のいずれかに記載の製造法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、-78℃での反応のような工業規模で製造するには適さない製造条件を用いることなく、アミノアルキルテトラヒドロピラン誘導体を製造できる。
本発明によれば、アミノアルキルテトラヒドロピラン誘導体を高収率で製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係るアミノアルキルテトラヒドロピラン誘導体の製造方法について詳細に述べる。
【0010】
本発明の生成物であるアミノアルキルテトラヒドロピラン誘導体(1)は、下記式(1a);
【化8】
(式中、*1及び*2′は不斉炭素を表し、主生成物はトランス体のエナンチオマー又はその混合物であり、R、R、R、R、Rは前記に同じである。以下、化合物(1a)という場合がある。)
又は下記式(1b);
【化9】
(式中、*1及び*2′′は不斉炭素を表し、主生成物はシス体のエナンチオマー或いはその混合物であり、R、R、R、R、Rは前記に同じである。以下、化合物(1b)という場合がある。)で表されるものが好ましい。
前記アミノアルキルテトラヒドロピラン誘導体(1)として好ましくはトランス体のエナンチオマー又はその混合物である。
前記トランス及びシスは、*1の炭素に結合するフェニル基と*2の炭素に結合する環外メチレン基(化合物(1a)、化合物(1b)の例ではアミノメチル基が有するメチレン基)の関係に基づいて定める。また前記「その混合物」は、例えば、エナンチオマー同士の混合物を意味し、エナンチオマー同士の等量混合物(ラセミ体)及び非等量混合物のいずれでもよい。
【0011】
ここで、Rは水素原子、炭素数1~12の置換又は無置換のアルキル基を表す。無置換のアルキル基としては例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等が挙げられる。置換のアルキル基の置換基としては例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、ヒドロキシアミノ基、炭素数1~12のアルキルアミノ基、炭素数1~12のジアルキルアミノ基、炭素数7~12のアラルキルアミノ基、炭素数7~12のジアラルキルアミノ基、炭素数1~12のアルキルスルホニルアミノ基、スルホン酸基、スルホンアミド基、アジド基、トリフルオロメチル基、カルボキシ基、炭素数1~12のアシル基、炭素数7~12のアロイル基、ヒドロキシ基、炭素数1~12のアルキルオキシ基、炭素数1~12のアシルオキシ基、炭素数7~12のアロイルオキシ基、炭素数1~12のシリルオキシ基、炭素数1~12のアルキルカルボニルオキシ基、又は炭素数1~12のアルキルチオ基等が挙げられ、置換基の数は1~5個が挙げられる。
として好ましくは水素原子又は無置換のアルキル基が好ましく、更に好ましくは水素原子、又はメチル基である。
【0012】
ここで、R、Rは独立して炭素数1~12の置換、又は無置換のアルキル基を表す。これらの基の具体例は前記Rの説明における例示と同様である。また、アルキル基が有してもよい置換基の例及び数も前記Rの場合と同様である。
、Rとして好ましくは水素原子又は無置換のアルキル基が好ましく、更に好ましくは水素原子、又はメチル基である。RとRは同じであることが好ましい。
【0013】
ここで、R、Rは独立して炭素数1~12の置換又は無置換のアルキル基を表す。R、Rで示されるアルキル基の具体例としては、前記Rの説明における例示と同様である。また、アルキル基が有してもよい置換基の例及び数もRの場合と同様である。R、Rとして好ましくは無置換のアルキル基が好ましく、更に好ましくはメチル基である。
【0014】
また、本発明における前駆体であるアミン化合物(2)は、下記式(2a);
【化10】
(式中、*1及び*2′、R、R、R、R、R、Qは前記に同じである。以下、化合物(2a)という場合がある。化合物(2a)はトランス体のエナンチオマー又はその混合物である。)
又は下記式(2b);
【化11】
(式中、*1及び*2′′、R、R、R、R、R、Qは前記に同じである。以下、化合物(2b)という場合がある。化合物(2b)はシス体のエナンチオマー又はその混合物である。)で表されるものが好ましい。
トランス、シスの区別及び「その混合物」の意味は、化合物(1a)、化合物(1b)と同じである。
前記アミン化合物(2)としてより好ましくはトランス体のエナンチオマー又はその混合物(化合物(2a))である。
【0015】
ここで、Qはスルホニル基を示し、アシル基の-C(=O)-が-S(=O)-に置き換えられた形の基が好ましい。スルホニル基としては、例えば、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基などの、アルカン部位にハロゲン原子が結合していてもよい炭素数1~4のアルカンスルホニル基;ベンゼンスルホニル基、p-トルエンスルホニル基、o-クロロベンゼンスルホニル基、m-クロロベンゼンスルホニル基、p-クロロベンゼンスルホニル基、o-ニトロベンゼンスルホニル基、m-ニトロベンゼンスルホニル基、p-ニトロベンゼンスルホニル基などの、ベンゼン環に炭素数1~4のアルキル基、ハロゲン原子などが結合していてもよいベンゼンスルホニル基;(+)-10-カンファースルホニル基等が挙げられる。スルホニル基として好ましくは、メタンスルホニル基、又はp-トルエンスルホニル基であり、更に好ましくはメタンスルホニル基である。
【0016】
前記アミン化合物(2)、又はその塩を前駆体とし、塩基を用いてスルホニル基を加水分解することで、-78℃での反応のような工業規模で製造するには適さない低温条件の脱メチル化反応を回避し、かつ高収率で前記アミノアルキルテトラヒドロピラン誘導体(1)、又はその薬学的に許容される塩を製造することができる。
【0017】
また、前記アミン化合物(2)又はその塩は、フェノール誘導体(3)をジスルホニル化して得られるジスルホニル化合物(4)をアミノ化することで(例えば、第2級アミンとの反応によってアミノ化することで)製造できる。
【0018】
前記フェノール誘導体(3)は、下記式(3a);
【化12】
(式中、*1及び*2′、R、R、Rは前記に同じである。以下、化合物(3a)という場合がある。化合物(3a)はトランス体のエナンチオマー又はその混合物である。)
又は下記式(3b);
【化13】
(式中、*1及び*2′′、R、R、Rは前記に同じである。以下、化合物(3b)という場合がある。化合物(3b)はシス体のエナンチオマー又はその混合物である)で表されるものが好ましい。
トランス、シスの区別及び「その混合物」の意味は、化合物(1a)、化合物(1b)と同じである。
フェノール誘導体としてより好ましくはトランス体のエナンチオマー又はその混合物(化合物(3a))である。
【0019】
また、前記ジスルホニル化合物(4)は、下記式(4a);
【化14】
(式中、*1及び*2′、R、R、R、Qは前記に同じである。以下、化合物(4a)という場合がある。化合物(4a)はトランス体のエナンチオマー又はその混合物である。)
又は下記式(4b);
【化15】
(式中、*1及び*2′′、R、R、R、Qは前記に同じである。以下、化合物(4b)という場合がある。化合物(4b)はシス体のエナンチオマー又はその混合物である。)で表されるものが好ましい。
トランス、シスの区別及び「その混合物」の意味は、化合物(1a)、化合物(1b)と同じである。
ジスルホニル化合物として好ましくはトランス体のエナンチオマー又はその混合物(化合物(4a))である。
【0020】
本発明における前記フェノール誘導体(3)から得られる前記ジスルホニル化合物(4)をアミノ化することで前記アミン化合物が収率よく製造できる。
【0021】
さらに、前記フェノール誘導体(3)は例えば、アルコール誘導体(5)を脱メチル化することで製造することができる。
【0022】
前記アルコール誘導体(5)は、下記式(5a);
【化16】
(式中、*1及び*2′、R、R、Rは前記に同じである。以下、化合物(5a)という場合がある。化合物(5a)はトランス体のエナンチオマー又はその混合物である。)
又は下記式(5b);
【化17】
(式中、*1及び*2′′、R、R、Rは前記に同じである。以下、化合物(5b)という場合がある。化合物(5b)はシス体のエナンチオマー又はその混合物である。)で表されるものが好ましい。
トランス、シスの区別及び「その混合物」の意味は、化合物(1a)、化合物(1b)と同じである。
前記アルコール誘導体(5)として好ましくはトランス体のエナンチオマー又はその混合物(化合物(5a))である。
【0023】
前記アルコール誘導体(6)としてより好ましくは下式(6a);
【化18】
で表される3-[(3R,4R)-3-(ジメチルアミノメチル)テトラヒドロピラン-4-イル]フェノール、3-[(3S,4S)-3-(ジメチルアミノメチル)テトラヒドロピラン-4-イル]フェノール、又はそれら2つのエナンチオマーの混合物である。
【0024】
本発明における前記アルコール化合物(5)からの脱メチル化反応では-78℃での反応のような工業規模で製造するには適さない低温条件を必要とせず、かつ高収率で前記フェノール誘導体を製造できる。
【0025】
次に、上記のアミノアルキルテトラヒドロピラン誘導体等の製造法について説明する。
【0026】
工程1:アミン化合物(2)又はその塩からアミノアルキルテトラヒドロピラン誘導体(1)、又はその薬学的に許容される塩を製造する工程
【化19】
(式中、*1及び*2、R、R、R、R、R、Qは前記に同じである。)
本工程は、溶媒中、化合物(2)又はその塩に対し、塩基を作用させて、化合物(1)を製造する工程である。
【0027】
本工程の反応溶媒としては、反応に影響を与えない限りにおいて特に制限はなく、例えば、水;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、tert-ブタノール、エチレングリコール等のアルコール系溶媒;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸tert-ブチル等のエステル系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;ジメチルプロピレンウレア等のウレア系溶媒;ヘキサメチルホスホン酸トリアミド等のホスホン酸トリアミド系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒を用いることができる。好ましくは水、tert-ブタノール、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフランであり、更に好ましくは水である。これらは単独で用いても良く、2種類以上を併用しても良い。2種類以上を併用する場合、その混合比は特に制限されない。2種類以上を併用する場合、水と水以外の溶媒との混合溶媒であることが好ましい。
【0028】
溶媒の使用量としては、多すぎるとコストや後処理の点で好ましくないため、上限としては、前記化合物(2)又はその塩に対して好ましくは50倍重量以下であり、更に好ましくは20倍重量以下である。下限としては、前記化合物(2)又はその塩に対して好ましくは0.1倍重量以上であり、更に好ましくは0.5倍重量以上である。このような範囲であればコストも掛かり過ぎず、後処理も簡便である。
【0029】
本工程の加水分解に使用する塩基としては、トリエチルアミン、トリn-ブチルアミン、N-メチルモルホリン、N-メチルピペリジン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、N,N-ジメチルアミノピリジン、1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン等の第3級アミン類;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化バリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの金属炭酸塩;炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の金属炭酸水素塩;リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、リチウムエトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、リチウムtert-ブトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド、カリウムtert-ブトキシド等の金属アルコキシド;水素化ナトリウム等の金属ヒドリドが挙げられる。好ましくは金属水酸化物、金属アルコキシドであり、より好ましくは水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムであり、更に好ましくは水酸化ナトリウム、又は水酸化カリウムであり、特に好ましくは水酸化ナトリウムである。
【0030】
前記塩基の使用量としては、好ましくは前記化合物(2)又はその塩に対して0.1~50倍モル量であり、更に好ましくは1~20倍モル量である。
【0031】
本工程の反応温度は反応時間を短縮する一方で、副反応を抑制する目的で、好ましくは-40~150℃であり、より好ましくは-20~100℃であり、さらに好ましくは40~100℃である。
【0032】
本工程の反応時間について特に制限はなく、適宜設定すればよいが、好ましくは0.001~72時間であり、更に好ましくは0.1~48時間である。
【0033】
本工程において、前記化合物(2)又はその塩、前記塩基、反応溶媒の混合順序や混合方法は特に制限されない。
【0034】
反応終了後の処理としては、反応液から目的物を取得するための一般的な処理を行ってもよい。例えば、反応終了後の反応液に水を必要に応じて加えるなどして目的物を含む塩基性水溶液とし、一般的な有機溶媒、例えば塩化メチレン、ジエチルエーテル、トルエン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン等を用いて目的物を水層側に回収する洗浄操作を行うとよい。
【0035】
目的物を含む塩基性水溶液(水を含む反応混合物、前記有機溶媒による洗浄で回収される水層など)から目的物を取得する方法として、目的物を含む塩基性水溶液に一般的な抽出溶媒、例えば塩化メチレン、ジエチルエーテル、トルエン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン等を加え、かつ酸を加える。酸を加えることにより、目的物を含む塩基性水溶液が塩基性、中性、又は酸性水溶液となり、目的物が抽出溶媒側に抽出されることで抽出液が得られる。
【0036】
前記酸としては、例えば、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム等の硫酸水素塩;リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム等のリン酸二水素塩;フッ化水素、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸等の無機酸;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ピバル酸、クロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、L-酒石酸、D-酒石酸、マンデル酸等のカルボン酸;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、又はカンファ―スルホン酸であり、より好ましくはリン酸二水素カリウム、塩化水素である。なお、塩化水素は気体で取り扱いにくいため、代わりに塩酸を用いてもよい。これらは単独で用いても良く、2種類以上を併用しても良い。2種類以上を併用する場合、その混合比は特に制限されない。
【0037】
前記塩基性、中性、又は酸性水溶液としては、好ましくはpH5~11であり、更に好ましくはpH6~9.5以下であり、特に好ましくはpH6.5~10である。
【0038】
前記酸と抽出溶媒(有機溶媒)を加えた抽出処理によって有機層を回収し、一旦除去された水層に再び前記抽出溶媒を加えて目的物を再抽出してもよい。前記一旦除去した水層は、塩基性、中性、酸性のいずれでもよいが、酸性(特にpHが5以下の酸性)(すなわち目的物を含む酸性水溶液)である場合には、該酸性水溶液から目的物を取得する方法として、該目的物を含む酸性水溶液に前記一般的な抽出溶媒(前記塩化メチレン、ジエチルエーテル、トルエン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン等)のみならず、塩基(例えば、加水分解に使用する上述の塩基と同様の塩基。好ましくは水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物)を加えることが好ましい。酸性水溶液に塩基を加えることでpHが前記好ましい範囲に調整でき(より好ましくは塩基性水溶液とすることができ)、層分離することで目的物が抽出溶媒(有機溶媒)に溶解した液(抽出液)が得られる。
【0039】
得られた抽出液(有機層)は減圧加熱等の操作により、抽出溶媒を留去すると目的物が得られる。このようにして得られた目的物は、後続工程で使用できる十分な純度を有しているが、純度を高める目的で、晶析、カラムクロマトグラフィー、活性炭処理等の一般的な精製手法により更に純度を高めてもよい。
【0040】
前記化合物(1)又はその薬学的に許容される塩(以下、化合物(1)又はその塩という)の晶析に用いる溶媒(以下、晶析溶媒という)としては特に制限はなく、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、ニトリル系溶媒が挙げられる。これらの具体例としては、前記反応溶媒として例示した溶媒が挙げられる。好ましくはアルコール系溶媒、ニトリル系溶媒であり、更に好ましくはエタノール、イソプロパノール、アセトニトリルであり、特に好ましくはアセトニトリルである。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。2種類以上を併用する場合は、その混合比は特に制限されない。
【0041】
晶析溶媒の使用量としては、多すぎるとコストや後処理の点で好ましくないため、前記化合物(1)又はその塩に対して好ましくは50倍重量以下であり、更に好ましくは20倍重量以下である。下限としては、前記化合物(1)又はその塩に対して好ましくは0.1倍重量以上であり、更に好ましくは0.5倍重量以上である。このような範囲であればコストも掛かり過ぎず、後処理も簡便である。
【0042】
晶析を行う方法としては、特に限定されないが、例えば以下のような方法が挙げられ、有機溶媒の組み合わせにより、適切に選択すればよい。
(a)前記化合物(1)又はその塩を有機溶媒に溶解させた後、冷却して結晶化させる方法。
(b)前記化合物(1)又はその塩を有機溶媒に溶解させた後、品溶媒を添加、又は貧溶媒に濃縮置換することにより結晶化させる方法。
(c)前記化合物(1)又はその塩を有機溶媒中で混合し、リスラリーさせる方法。
【0043】
(a)、(b)、又は(c)の方法は、適宜組み合わせて結晶化を行ってもよい。また、結晶化の際には種晶を加えてもよい。
【0044】
上記(a)~(c)の晶析方法における実施温度は、特に限定されないが、使用する溶媒の種類により適宜選択すればよく、好ましくは使用する溶媒又は混合溶媒種に、前記化合物(1)又はその塩が溶解する温度未満で、目標とする析出量と結晶の品質に応じて設定すればよい。
【0045】
上記(a)~(c)の晶析方法により析出した前記化合物(1)又はその塩は、減圧濾過、加圧ろ過、又は遠心分離等の方法により分離、取得することができる。また、所得した結晶中に母液が残存して結晶の純度が低下する場合は必要に応じて、更に有機溶媒で洗浄することにより、品質を高めることもできる。
【0046】
結晶の乾燥方法としては、熱分解や溶融を避けて約60℃以下で、減圧乾燥(真空乾燥)するのが好ましい。
【0047】
工程2:フェノール誘導体(3)からジスルホニル化合物(4)に変換し、続いて前記化合物(2)又はその塩を製造する工程
【化20】
(式中、*1及び*2、R、R、R、R、R、Qは前記に同じである。)
【0048】
ジスルホニル化工程
本工程は、溶媒中、前記式(3)で表されるフェノール誘導体に対し、塩基存在下にスルホニル化剤で処理し、前記式(4)で表されるジスルホニル化合物を製造する工程である。
【0049】
本工程の反応溶媒としては、反応に影響を与えない限りにおいて特に制限はなく、例えば、芳香族炭化水素系溶媒、ハロゲン系溶媒、エーテル系溶媒等が挙げられる。これらの具体例としては、工程1に反応溶媒として例示した溶媒が挙げられる。好ましくは芳香族炭化水素系溶媒、ハロゲン系溶媒であり、特に好ましくはトルエン、又は塩化メチレンである。これらは単独で用いても良く、2種類以上を併用しても良い。2種類以上を併用する場合、その混合比は特に制限されない。
【0050】
溶媒の使用量としては、多すぎるとコストや後処理の点で好ましくないため、前記化合物(3)に対して好ましくは50倍重量以下であり、更に好ましくは20倍重量以下である。下限としては、前記化合物(3)に対して好ましくは0.1倍重量以上であり、更に好ましくは0.5倍重量以上である。このような範囲であればコストも掛かり過ぎず、後処理も簡便である。
【0051】
本工程のジスルホニル化に使用する塩基としては、第3級アミン類、金属水酸化物、金属炭酸水素塩、金属アルコキシド、金属ヒドリド等が挙げられる。これらの具体例としては、工程1で加水分解に使用する塩基として例示した塩基が挙げられる。好ましくは第3級アミン類であり、更に好ましくはトリエチルアミン、トリn-ブチルアミン、N-メチルモルホリン、N-メチルピペリジン、ジイソプロピルエチルアミンであり、特に好ましくはトリエチルアミンである。
【0052】
前記塩基の使用量としては、好ましくは前記化合物(3)に対して0.1~50倍モル量であり、更に好ましくは1~20倍モル量である。
【0053】
本工程のスルホニル化剤としては、前記Qで表されるスルホニル基のハロゲン化物(塩化物、臭化物など)、酸無水物などが挙げられる。好ましくは、塩化メタンスルホニル、フッ化メタンスルホニル、臭化メタンスルホニル、メタンスルホン酸無水物、塩化エタンスルホニル、塩化ベンゼンスルホニル、塩化p-トルエンスルホニル、塩化o-クロロベンゼンスルホニル、塩化m-クロロベンゼンスルホニル、塩化p-クロロベンゼンスルホニル、塩化o-ニトロベンゼンスルホニル、塩化m-ニトロベンゼンスルホニル、塩化p-ニトロベンゼンスルホニル、無水トリフルオロメタンスルホニル、塩化(+)-10-カンファースルホニル等が挙げられる。より好ましくは塩化メタンスルホニル、又は塩化p-トルエンスルホニルであり、更に好ましくは塩化メタンスルホニルである。
【0054】
前記スルホニル化剤の使用量としては、好ましくは前記化合物(3)に対して0.1~50倍モル量であり、更に好ましくは2~10倍モル量である。
【0055】
本工程のジスルホニル化の反応温度は反応時間を短縮する一方で、副反応を抑制する目的で、好ましくは-40~80℃であり、更に好ましくは-20~50℃である。
【0056】
本工程のジスルホニル化の反応時間について特に制限はなく、適宜設定すればよいが、好ましくは0.001~24時間であり、更に好ましくは0.1~12時間である。
【0057】
本工程のジスルホニル化において、前記化合物(3)、塩基、スルホニル化剤、反応溶媒の混合順序や混合方法は特に制限されない。
【0058】
反応終了後の処理としては、反応液から生成物を取得するための一般的な処理を行えばよい。例えば反応終了後の反応液に水を加えて洗浄、又は必要に応じて塩酸水溶液、硫酸水溶液、塩化アンモニウム水溶液等の酸水溶液を加えて洗浄を行う。また、一般的な抽出溶媒、例えばトルエン、塩化メチレン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、ヘキサン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン等を用いて抽出を行ってもよい。得られた抽出液から減圧、加熱等の操作により、反応溶媒及び抽出溶媒を留去すると目的物が得られる。
【0059】
このようにして得られた目的物は、後続工程に使用できる十分な純度を有しているが、後続工程の収率、もしくは後続工程で得られる化合物の純度を更に高める目的で分別蒸留やカラムクロマトグラフィー、活性炭処理、晶析等の一般的な精製手法により、更に純度を高めてもよい。
【0060】
アミノ化工程
本工程は、溶媒中、前記化合物(4)に対し、第2級アミンを作用させて、前記化合物(2)又はその塩を製造する工程である。
【0061】
反応溶媒としては、反応に影響を与えない限りにおいて特に制限はなく、例えば、水、アミド系溶媒、エーテル系溶媒等が挙げられる。これらの具体例としては、工程1に反応溶媒として例示した溶媒が挙げられる。好ましくは水、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミドであり、更に好ましくは水である。これらは単独で用いても良く、2種類以上を併用しても良い。2種類以上を併用する場合、その混合比は特に制限されない。
【0062】
溶媒の使用量としては、多すぎるとコストや後処理の点で好ましくないため、前記化合物(4)に対して好ましくは50倍重量以下であり、更に好ましくは20倍重量以下である。下限としては、前記化合物(4)に対して好ましくは0.1倍重量以上であり、更に好ましくは0.5倍重量以上である。このような範囲であればコストも掛かり過ぎず、後処理も簡便である。
【0063】
本工程のアミノ化に用いる第2級アミンとしては、NHR(式中、R、Rは前記と同じ)が挙げられ、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリンであり、好ましくはジメチルアミンである。なお、ジメチルアミンは気体で取り扱いにくいため、代わりにジメチルアミン塩酸塩、或いはジメチルアミン水溶液を用いてもよい。特に好ましくはジメチルアミン水溶液である。
【0064】
前記第2級アミンの使用量としては、好ましくは前記化合物(4)に対して0.1~100倍モル量であり、更に好ましくは1~50倍モル量であり、特に好ましくは20倍モル量である。
【0065】
本工程の反応温度は反応時間を短縮する一方で、副反応を抑制する目的で、好ましくは-40~150℃であり、より好ましくは-20~120℃、更に好ましくは40~100℃である。
【0066】
本工程の反応時間について特に制限はなく、適宜設定すればよいが、好ましくは0.001~72時間であり、更に好ましくは0.1~48時間である。
【0067】
本工程において、前記化合物(4)、第2級アミン、反応溶媒の混合順序や混合方法は特に制限されない。
【0068】
反応終了後の処理としては、特に何も行わず、後続工程に進めてもよく、反応液から目的物を取得するための一般的な処理を行ってもよい。例えば、反応終了後の反応液に一般的な抽出溶媒、例えば塩化メチレン、ジエチルエーテル、トルエン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン等を用いて抽出操作を行うとよい。
【0069】
このようにして得られた目的物を含む抽出液(有機層)は、後続工程の収率、もしくは後続工程で得られる化合物の純度をさらに高める目的で、抽出液に対し、水及び酸を加えて酸性とすることで、目的物を含む酸性水溶液(水層)として取得してもよい。目的物を水層側に転溶することで、有機不純物を低減できる。
【0070】
前記目的物である化合物(2)を含む抽出液に加える酸としては、例えば、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム等の硫酸水素塩;リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム等のリン酸二水素塩;フッ化水素、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸等の無機酸;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ピバル酸、クロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、L-酒石酸、D-酒石酸、マンデル酸等のカルボン酸;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、又はカンファ―スルホン酸であり、より好ましくは硫酸水素カリウム、塩化水素である。なお、塩化水素は気体で取り扱いにくいため、代わりに塩酸を用いてもよい。これらは単独で用いても良く、2種類以上を併用しても良い。2種類以上を併用する場合、その混合比は特に制限されない。
【0071】
前記酸性水溶液としては、好ましくはpH7以下であり、更に好ましくはpH6以下であり、特に好ましくはpH5以下である。
【0072】
次いで、目的物を含む酸性水溶液から有機層側に目的物を取得する方法として、目的物を含む酸性水溶液に一般的な抽出溶媒、例えば塩化メチレン、ジエチルエーテル、トルエン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン等を加え、塩基を加えることで塩基性水溶液とすることで抽出液(有機層)が得られる。
【0073】
前記目的物を含む酸性水溶液に加える塩基としては、第3級アミン類、金属水酸化物、金属炭酸水素塩、金属アルコキシド、等が挙げられる。これらの具体例としては、工程1で加水分解に使用する塩基として例示した塩基が挙げられる。好ましくは金属水酸化物であり、更に好ましくは水酸化ナトリウムである。なお、固体の水酸化ナトリウムは固体で潮解性があり、取り扱いにくいため、代わりに水酸化ナトリウム水溶液を用いてもよい。
【0074】
前記塩基性水溶液としては、好ましくはpH7以上であり、更に好ましくはpH8以上であり、特に好ましくはpH9以上である。
【0075】
得られた抽出液は減圧加熱等の操作により、抽出溶媒を留去すると目的物が得られる。また有機層側に目的物を取得せず、前記の目的物を含む酸性水溶液から水を除去することで化合物(2)の塩を得てもよい。このようにして得られた目的物(化合物(2)又はその塩)は、後続工程使用できる十分な純度を有しているが、純度を高める目的で、晶析、カラムクロマトグラフィー、活性炭処理等の一般的な精製手法により更に純度を高めてもよい。
【0076】
前記化合物(2)の晶析に用いる溶媒としては特に制限はなく、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、ニトリル系溶媒が挙げられる。これらの具体例としては、工程1に反応溶媒として例示した溶媒が挙げられる。好ましくはアルコール系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒であり、更に好ましくはエタノールである。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。2種類以上を併用する場合は、その混合比は特に制限されない。
【0077】
溶媒の使用量としては、多すぎるとコストや後処理の点で好ましくないため、前記化合物(2)に対して好ましくは50倍重量以下であり、更に好ましくは20倍重量以下である。下限としては、前記化合物(2)に対して好ましくは0.1倍重量以上であり、更に好ましくは0.5倍重量以上である。このような範囲であればコストも掛かり過ぎず、後処理も簡便である。
【0078】
晶析を行う方法としては、前記化合物(1)の晶析方法と同様の方法で行うことができる。
【0079】
結晶の乾燥方法は、前記化合物(1)の乾燥方法と同様の方法で行うことができる。
【0080】
工程3:アルコール誘導体(5)から前記化合物(3)を製造する工程
【化21】
(式中、*1及び*2、R、R、Rは前記に同じである。)
本工程は、溶媒中、前記式(5)で表されるアルコール誘導体(5)に対し、酸及び捕捉剤を作用させることで前記化合物(3)を製造する工程である。
【0081】
反応溶媒としては、反応に影響を与えない限りにおいて特に制限はなく、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、ハロゲン系溶媒、エステル系溶媒、スルホキシド溶媒、アミド系溶媒、ウレア系溶媒、ホスホン酸トリアミド系溶媒、ケトン系溶媒、ニトリル系溶等を用いることができる。これらの具体例としては、工程1に反応溶媒として例示した溶媒が挙げられる。好ましくは芳香族炭化水素系溶媒、ハロゲン系溶媒であり、特に好ましくはトルエン、又は塩化メチレンである。これらは単独で用いても良く、2種類以上を併用しても良い。2種類以上を併用する場合、その混合比は特に制限されない。
【0082】
溶媒の使用量としては、多すぎるとコストや後処理の点で好ましくないため、前記化合物(5)に対して好ましくは50倍重量以下であり、更に好ましくは20倍重量以下である。下限としては、前記化合物(5)に対して好ましくは0.1倍重量以上であり、更に好ましくは0.5倍重量以上である。このような範囲であればコストも掛かり過ぎず、後処理も簡便である。
【0083】
本工程に使用する酸としては、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素等のハロゲン化ホウ素、塩化アルミニウム(III)、臭化アルミニウム(III)等のハロゲン化アルミニウムなどのルイス酸及びこれらの溶媒和物が挙げられ、好ましくは塩化アルミニウム(III)である。なお、三フッ化ホウ素については、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体を用いてもよい。
【0084】
前記酸の使用量としては、好ましくは前記化合物(5)に対して0.01~20倍モル量であり、更に好ましくは0.1~10倍モル量である。
【0085】
本工程に使用する捕捉剤としては、メタンチオール、エタンチオール、ブタンチオール、オクタンチオール、ドデカンチオール、チオグリコール酸等のチオール類;ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、テトラヒドロチオフェン、チオアニソール等のチオエーテル類が挙げられ、好ましくはチオール類であり、更に好ましくは1-ドデカンチオールなどの炭素数が6~15程度のチオールである。
【0086】
前記捕捉剤の使用量としては、好ましくは前記化合物(5)に対して0.01~20倍モル量であり、更に好ましくは0.1~10倍モル量である。
【0087】
本工程は-78℃の極低温で行うことも可能であるが、該極低温を必要としない点に利点がある。本工程の反応温度は反応時間を短縮する一方で、副反応を抑制する目的で、好ましくは-40~200℃であり、更に好ましくは-20~150℃であり、特に好ましくは-10~50℃である。
【0088】
本工程の反応時間について特に制限はなく、適宜設定すればよいが、好ましくは0.001~72時間であり、更に好ましくは0.1~48時間である。
【0089】
本工程の反応において、前記化合物(5)、酸、捕捉剤、反応溶媒の混合順序や混合方法は特に制限されない。
【0090】
反応終了後の処理としては、反応液から目的物を取得するための一般的な処理を行えばよい。例えば、反応終了後の反応液に水を加え、一般的な抽出溶媒、例えば塩化メチレン、ジエチルエーテル、トルエン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン等を用いて抽出操作を行うとよい。また、必要に応じて目的物の抽出効率を改善する目的で塩化ナトリウム等の無機塩を加えてもよい。無機塩は固体でもよく、特に濃度が制限されない無機塩の水溶液を用いてもよい。
【0091】
このようにして得られた目的物を含む抽出液は、後続工程の収率、もしくは後続工程で得られる化合物の純度をさらに高める目的で、抽出液に対し、水及び塩基又は塩基の水溶液を加えて塩基性とすることで、目的物を含む塩基性水溶液として取得してもよい。
【0092】
前記抽出液に加える塩基としては、第3級アミン類、金属水酸化物、金属炭酸水素塩、金属アルコキシド、等が挙げられる。これらの具体例としては、工程1で加水分解に使用する塩基として例示した塩基が挙げられる。好ましくは金属水酸化物であり、更に好ましくは水酸化ナトリウムである。なお、固体の水酸化ナトリウムは固体で潮解性があり、取り扱いにくいため、代わりに水酸化ナトリウム水溶液を用いてもよい。
【0093】
前記塩基性水溶液としては、好ましくはpH7以上であり、更に好ましくはpH8以上であり、特に好ましくはpH9以上である。
【0094】
次いで、目的物を含む塩基性水溶液から目的物を取得する方法として、目的物を含む塩基性水溶液に一般的な抽出溶媒、例えば塩化メチレン、ジエチルエーテル、トルエン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン等を加え、酸を加えることで酸性水溶液とすることで抽出液が得られる。
【0095】
前記酸としては、例えば、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸等の無機酸;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ピバル酸、クロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、L-酒石酸、D-酒石酸、マンデル酸等のカルボン酸;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、又はカンファ―スルホン酸であり、より好ましくは塩化水素である。なお、塩化水素は気体で取り扱いにくいため、代わりに塩酸を用いてもよい。
【0096】
前記酸性水溶液としては、好ましくはpH7以下であり、更に好ましくはpH6以下であり、特に好ましくはpH5以下である。
【0097】
得られた抽出液は水、或いは塩化ナトリウム水溶液等の水溶液を加えて洗浄を行ってもよい。得られた抽出液から減圧加熱等の操作により、反応溶媒及び抽出溶媒を留去すると目的物が得られる。このようにして得られた目的物は、後続工程使用できる十分な純度を有しているが、純度を高める目的で、晶析、カラムクロマトグラフィー、活性炭処理等の一般的な精製手法により更に純度を高めてもよい。
【0098】
前記化合物(3)の晶析に用いる溶媒としては特に制限はなく、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、tert-ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;アルコール系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、ニトリル系溶媒が挙げられる。これらの具体例としては、工程1に反応溶媒として例示した溶媒が挙げられる。好ましくはアルコール系溶媒、ニトリル系溶媒であり、更に好ましくはアセトニトリルである。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。2種類以上を併用する場合は、その混合比は特に制限されない。
【0099】
溶媒の使用量としては、多すぎるとコストや後処理の点で好ましくないため、前記化合物(3)に対して好ましくは50倍重量以下であり、更に好ましくは20倍重量以下である。下限としては、前記化合物(2)に対して好ましくは0.1倍重量以上であり、更に好ましくは0.5倍重量以上である。このような範囲であればコストも掛かり過ぎず、後処理も簡便である。
【0100】
晶析を行う方法としては、前記化合物(1)の晶析方法と同様の方法で行うことができる。
【0101】
結晶の乾燥方法も前記化合物(1)の乾燥方法と同様の方法で行うことができる。
【0102】
本願は、2020年6月19日に出願された日本国特許出願第2020-106516号に基づく優先権の利益を主張するものである。2020年6月19日に出願された日本国特許出願第2020-106516号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【実施例
【0103】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、以下においては、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味し、「area%」は面積百分率を意味している。
【0104】
以下の実施例において、使用したHPLC分析条件は下記の通りである。
【0105】
分析条件1
測定機器:Agilent 1220 Infinity
カラム:YMC Meteoric Core C18(150×4.6mm)
流速:1.5ml/min
検出波長:210nm
注入量:10μl
カラム温度:40℃
移動相A:0.1%リン酸水溶液
移動相B:アセトニトリル
グラジエント条件(移動相B濃度、時間):15%(0分)→80%(8~15分)→15%(15.1~20分)
【0106】
分析条件2
測定機器:Agilent 1220 Infinity
カラム:YMC Meteoric Core C18(150×4.6mm)
流速:1.5ml/min
検出波長:210nm
注入量:10μl
カラム温度:40℃
移動相A:10mMラウリル硫酸ナトリウム水溶液(pH2)
移動相B:アセトニトリル
グラジエント条件(移動相B濃度、時間):30%(0分)→70%(8~15分)→30%(15.1~20分)
【0107】
以下の実施例において、使用した質量分析測定条件は下記の通りである。
【0108】
測定機器:Waters ACQUITY UPLC H-Class
カラム:BEH(50×2.1mm,1.7μm)
流速:0.74ml/min
検出波長:190-400nm
注入量:10μl
カラム温度:40℃
移動相A:0.1%ギ酸/H
移動相B:0.1%ギ酸/アセトニトリル
グラジエント条件(移動相B濃度、時間):10%(0分)→90%(4.5分)→10%(4.5-5.0分)
質量分析法:ESI(Electron Spray Ionization)
【0109】
以下の実施例において、核磁気共鳴スペクトル(以下H NMRとする)はテトラメチルシランを標準物質に用い、δ値(ppm)で表記した。また、測定溶媒には重クロロホルム(以下CDClとする)を用いた。
【0110】
実施例の欄で使用する記号の意味は以下の通りである。
DIPEA:N,N-ジイソプロピルエチルアミン
(TfO)O:トリフルオロメタンスルホン酸無水物
NaOMe:ナトリウムメトキシド
THF:テトラヒドロフラン
LiAlH:水素化リチウムアルミニウム
【0111】
(参考例)[(3R,4R)-4-(3-メトキシフェニル)テトラヒドロピラン-3-イル]-メタノール及び[(3S,4S)-4-(3-メトキシフェニル)テトラヒドロピラン-3-イル]-メタノールの混合物(7a)の製造
【0112】
【化22】
【0113】
4-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)-3,6-ジヒドロ-2H-ピラン-5-カルボン酸メチル(8)の製造
【0114】
【化23】
【0115】
4-オキソテトラヒドロピラン-3-カルボン酸メチル(40.0g、252.9mmol)をジクロロメタン(400g)に溶解し、DIPEA(65.4g、505.8mmol)を加えた後、0℃に冷却した。(TfO)O(78.5g、278.2mmol)を滴下し、0℃で10分間攪拌した。分析条件1で反応の終了を確認後、反応混合物を5%炭酸水素ナトリウム水溶液(200g)で2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。有機層を減圧下で濃縮することで化合物(8)を油状物として得た(124.8g、純分量73.4g、252.9mmol、収率100%)。
H NMR(500MHz、CDCl):δ4.45-4.46(t,2H,J=2.5Hz)、3.88-3.91(t,2H,J=5.5Hz)、3.82(s,3H)、2.52-2.56(m,2H).
【0116】
4-(3-メトキシフェニル)-3,6-ジヒドロ-2H-ピラン-5-カルボン酸メチル(9)の製造
【0117】
【化24】
【0118】
4-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)-3,6-ジヒドロ-2H-ピラン-5-カルボン酸メチル(8)(124.8g、純分量73.4g、252.9mmo)を1,4-ジオキサン(400g)に溶解し、3-メトキシフェニルボロン酸(40.4g、265.5mmol)、炭酸カリウム(52.4g、379.4mmol)を加えて懸濁させた。窒素置換後、[1,1´-ビス(ジフェニルホスフィノフェロセン)]ジクロロパラジウム(II)(1.9g、2.5mmol)を加え、110℃に加熱し、還流下で終夜攪拌した。分析条件1にて反応終了を確認後、反応混合物を室温まで冷却し、減圧下で濃縮した。濃縮物に水(300g)及び酢酸エチル(100g)を加えて混合した後、層分離して有機層(有機層A)を回収した。層分離後の水層を酢酸エチル(200g)で2回洗浄し、得られた洗浄液(有機層)を前記有機層(有機層A)と混合後、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/n-ヘキサン)で精製することで化合物(9)を油状化合物として取得した(57.3g、純分56.0g、225.6mmol、収率89.2%)。
H NMR(500MHz、CDCl):δ7.25-7.28(t,1H,J=7.8Hz)、6.83-6.86(dd,1H,J=2.5Hz,8.5Hz)、6.74-6.75(m,1H)、6.70(m,1H)、4.44-4.46(t,2H,J=2.8Hz)、3.88-3.91(t,2H,J=5.8Hz)、3.80(s,3H)、3.51(s,3H)、2.49-2.52(m,2H).
【0119】
(3R,4R)-4-(3-メトキシフェニル)テトラヒドロピラン-3-カルボン酸メチル及び(3S,4S)-4-(3-メトキシフェニル)テトラヒドロピラン-3-カルボン酸メチルの混合物(10b)の製造
【0120】
【化25】
【0121】
4-(3-メトキシフェニル)-3,6-ジヒドロ-2H-ピラン-5-カルボン酸メチル(9)(108.3g、純分105.7g、425.9mmol)に酢酸エチル(161.5g)、エタノール(713.0g)を加えて溶解した。窒素雰囲気下、約50%水湿潤品の10%パラジウム炭素(32.5g)を加えて混合した後、雰囲気を水素置換し、室温で2.5時間攪拌した。分析条件1にて反応終了を確認後、反応混合物をセライトろ過し、ろ過ケーキを酢酸エチル(200ml)で洗浄して洗浄液とろ液を合わせた。洗浄液とろ液の混合液を減圧下で濃縮することで、化合物(10b)を油状化合物として取得した(106.0g、純分90.6g、362.0mmol、収率85.0%)。
H NMR(500MHz、CDCl):δ7.22-7.25(t,1H,J=8.0Hz)、6.86-6.88(d,1H,J=8.5Hz)、6.83(m,1H)、6.75-6.78(dd,1H,J=2.5Hz,8.0Hz)、4.28-4.31(dd,1H,J=1.0Hz,12.0Hz)、4.18-4.22(m,1H)、3.80(s,3H)、3.74-3.79(m,1H)、3.55-3.60(m,1H)、3.53(s,3H)、3.05-3.08(m、1H)、2.92(s,1H)、2.70-2.79(m,1H)、1.72-1.75(m、1H).
【0122】
(3S,4R)-4-(3-メトキシフェニル)テトラヒドロピラン-5-カルボン酸メチル及び(3R,4S)-4-(3-メトキシフェニル)テトラヒドロピラン-5-カルボン酸メチルの混合物(10a)の製造
【0123】
【化26】
【0124】
(3R,4R)-4-(3-メトキシフェニル)テトラヒドロピラン-3-カルボン酸メチル及び(3S,4S)-4-(3-メトキシフェニル)テトラヒドロピラン-3-カルボン酸メチルの混合物(10b)(104.9g、純分89.7g、358.2mmol)にメタノール(525.1g)を加えて溶解し、28%NaOMe/メタノール溶液(82.6g、純分23.1g、428.4mmol)を加えた後、70℃で1時間攪拌した。分析条件1にて反応終了を確認後、反応混合物を室温まで冷却し、10%塩化アンモニウム水溶液(419.4g)中に添加した。減圧下で濃縮後、酢酸エチル(419.4g)を加えて混合し、層分離して有機層(有機層A)を得た。層分離後の水層を酢酸エチル(419.4g)にて洗浄した。得られた洗浄液(有機層)を前記有機層(有機層A)と混合した。混合液を10%塩化ナトリウム水溶液(104.9g)で洗浄して水層を除去した後、有機層を減圧下で濃縮することで化合物(10a)を油状化合物として取得した(104.5g、純分90.7g、362.1mmol、収率101.2%)。
H NMR(500MHz、CDCl):δ7.20-7.24(m,1H)、6.80-6.81(d、1H,J=8.0Hz)、6.75-6.77(m,2H)、4.16-4.19(dd,1H,J=4.5Hz,11.5Hz)、4.06-4.09(dd,1H,J=4.0Hz,11.5Hz)、3.80(s,3H)、3.52-3.58(m,2H)、3.48(s,3H)、3.01-3.06(m,1H)、2.90-2.95(m,1H)、1.77-1.90(m,2H).
【0125】
[(3R,4R)-4-(3-メトキシフェニル)テトラヒドロピラン-3-イル]-メタノール及び[(3S,4S)-4-(3-メトキシフェニル)テトラヒドロピラン-3-イル]-メタノールの混合物(7a)の製造
【0126】
【化27】
【0127】
(3S,4R)-4-(3-メトキシフェニル)テトラヒドロピラン-5-カルボン酸メチル及び(3R,4S)-4-(3-メトキシフェニル)テトラヒドロピラン-5-カルボン酸メチルの混合物(10a)(87.5g、純分76.0g、303.8mmol)にTHF(612.5g)を加えて溶解し、-5℃に冷却後、LiAlH(8.6g、227.2mmol)を分割して添加した。-5℃で1時間攪拌し、分析条件1にて反応終了を確認後、10%塩化アンモニウム水溶液(612.5g)を滴下した。ジクロロメタン(612.5g)を添加後、反応混合物をセライトろ過し、ろ液を層分離して有機層(有機層A)を回収した。層分離後の水層をジクロロメタン(612.5g)で2回洗浄した。得られた洗浄液(有機層)を前記有機層(有機層A)と混合した。混合液を水(175.0g)で洗浄して水層を除去した後、有機層を減圧下で濃縮し、トルエン(262.5g)を追加して再度減圧下で濃縮することで化合物(7a)を油状化合物として取得した(73.5g、純分63.9g、287.4mmol、収率94.6%)。
H NMR(500MHz、CDCl):δ7.23-7.26(m,1H),6.81-6.83(d、1H,J=7.0Hz)、6.76-6.78(m,2H)、4.20-4.23(dd,1H,J=4.0Hz,11.0Hz)、4.04-4.07(dd,1H,J=4.0Hz,11.5Hz),3.81(s,3H)、3.47-3.52(m,1H)、3.42-3.45(m,1H)、3.35-3.39(t,1H,J=11.0Hz)、3.26-3.31(m,1H)、2.54-2.60(m,1H)、2.01-2.06(m,1H)、1.85-1.91(m,1H)、1.72-1.75(m,1H).
【0128】
(実施例1)3-[(3R,4R)-3-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロピラン-4-イル]フェノール及び3-[(3S,4S)-3-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロピラン-4-イル]フェノールの混合物(11a)の製造
【0129】
【化28】
【0130】
[(3R,4R)-4-(3-メトキシフェニル)テトラヒドロピラン-3-イル]-メタノール及び[(3S,4S)-4-(3-メトキシフェニル)テトラヒドロピラン-3-イル]-メタノールの混合物(7a)(36.0g、純分31.3g、140.7mmol)にジクロロメタン(541.1g)を加えて溶解し、ドデカンチオール(71.2g、351.7mmol)を加えて0℃に冷却した。塩化アルミニウム(III)(46.9g、351.7mmol)を分割して添加し、室温で20時間攪拌した。分析条件1にて反応終了を確認後、反応混合物に水(312.7g)を加えて攪拌し、層分離して有機層(有機層A)を回収した。前記層分離で得られた水層にジクロロメタン(180.0g)、塩化ナトリウム(80.0g)を加え混合し、層分離することで得られた有機層を前記有機層(有機層A)と混合後、減圧下で濃縮し、トルエン(180.0g)を用いて溶媒置換後、THF(50.0g)を加えて混合した。水(93.8g)を添加し、30%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH13に調整した。有機層を除去することで得られた水層に濃塩酸を滴下し、pH7に調整後、酢酸エチル(180.0g)を加えて混合し、濃塩酸でpH1に調整し、層分離して有機層(有機層B)を回収した。層分離後の水層を酢酸エチル(180.0g)で洗浄し、得られた洗浄液(有機層)を前記有機層(有機層B)と混合後、混合液を20%食塩水(31.3g)で洗浄して水層を除去した後、有機層を減圧下で濃縮することで化合物(11a)を固体として取得した(25.2g、純分23.1g、110.7mmol、収率78.7%)。
H NMR(500MHz、CDCl):δ7.16-7.19(t,1H,J=7.8Hz)、6.70-6.76(m,3H)、6.16(s,1H)、4.26-4.30(dd,1H,J=4.5Hz,12.0Hz)、4.10-4.11(dd,1H,J=4.0Hz,11.5Hz)、3.51-3.55(m,1H)、3.44-3.47(dd,1H,J=3.5Hz,11.0Hz)、3.35-3.40(t,1H,J=11.3Hz)、3.24-3.28(dd,1H,J=7.5Hz,11.0Hz)、2.50-2.55(m,1H)、2.10-2.11(m,1H)、1.85-1.90(m,1H)、1.75-1.78(m,1H).
【0131】
(実施例2)3-[(3R,4R)-3-(ジメチルアミノメチル)テトラヒドロピラン-4-イル]フェノール及び3-[(3S,4S)-3-(ジメチルアミノメチル)テトラヒドロピラン-4-イル]フェノール(6a)の混合物の製造
【0132】
【化29】
【0133】
(実施例2-1)メタンスルホン酸[[(3R,4R)-4-(3-メチルスルホニルオキシフェニル)テトラヒドロピラン-3-イル]メチル]及びメタンスルホン酸[[(3S,4S)-4-(3-メチルスルホニルオキシフェニル)テトラヒドロピラン-3-イル]メチル]の混合物(12a)の製造
【0134】
【化30】
【0135】
3-[(3R,4R)-3-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロピラン-4-イル]フェノール及び3-[(3S,4S)-3-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロピラン-4-イル]フェノールの混合物(11a)(21.4g、102.5mmol)をジクロロメタン(680.0g)に溶解し、トリエチルアミン(31.1g、307.6mmol)を加えて0℃に冷却した。塩化メタンスルホニル(35.2g、307.6mmol)を滴下し、0℃で10分間攪拌後、分析条件1にて反応終了を確認した。反応混合液を10%塩化アンモニウム水溶液(310.0g)で2回洗浄して水層を除去した後、有機層を水(310.0g)で2回洗浄して水層を除去し、得られた有機層を減圧下で濃縮することですることで化合物(12a)を油状物として取得した(43.4g)。
【0136】
(実施例2-2)メタンスルホン酸[3-[(3R,4R)-3-(ジメチルアミノメチル)テトラヒドロピラン-4-イル]フェニル]及びメタンスルホン酸[3-[(3S,4S)-3-(ジメチルアミノメチル)テトラヒドロピラン-4-イル]フェニル]の混合物(13a)の製造
【0137】
【化31】
【0138】
メタンスルホン酸[[(3R,4R)-4-(3-メチルスルホニルオキシフェニル)テトラヒドロピラン-3-イル]メチル]及びメタンスルホン酸[[(3S,4S)-4-(3-メチルスルホニルオキシフェニル)テトラヒドロピラン-3-イル]メチル]の混合物(12a)(43.4g)に50%ジメチルアミン水溶液(74.0g、純分37.0g、820.1mmol)を加えて80℃で終夜攪拌した。分析条件2にて反応終了を確認後、反応混合物を20℃に冷却し、2-メチルテトラヒドロフラン(164.5g)を用いて2回抽出した。2回の抽出で得られたそれぞれの有機層を混合し、混合液に5%硫酸水素カリウム水溶液(85.5g)を加えた後、濃塩酸を用いてpH2に調整し、層分離して水層(水層A)を得た。層分離で得られた有機層に水(42.7g)を加えて洗浄した。得られた洗浄液(水層)を前記水層(水層A)と混合した。混合液に30%水酸化ナトリウム水溶液を添加してpH11に調整し、2-メチルテトラヒドロフラン(85.5g)で抽出した。抽出液を減圧下で濃縮することで化合物(13a)の2-メチルテトラヒドロフラン溶液(55.8g)を取得した。
H NMR(500MHz、CDCl):δ7.37-7.40(t,1H,J=7.8Hz)、7.14-7.18(m,3H)、4.40(m,1H)、4.05-4.08(dd,1H,J=3.5Hz,11.0Hz)、3.46-3.51(m,1H)、3.17-3.21(m,4H)、2.42-2.44(m,1H)、2.15(m,7H)、1.81-1.89(m,2H)、1.74-1.77(m,1H)、1.61(m,1H).
【0139】
(実施例2-3)3-[(3R,4R)-3-(ジメチルアミノメチル)テトラヒドロピラン-4-イル]フェノール及び3-[(3S, 4S)-3-(ジメチルアミノメチル)テトラヒドロピラン-4-イル]フェノールの混合物(6a)の製造
【0140】
【化32】
【0141】
メタンスルホン酸[3-[(3R,4R)-3-(ジメチルアミノメチル)テトラヒドロピラン-4-イル]フェニル]及びメタンスルホン酸[3-[(3S,4S)-3-(ジメチルアミノメチル)テトラヒドロピラン-4-イル]フェニル]の混合物(13a)の2-メチルテトラヒドロフラン溶液(55.8g)に水(50.0g)を加えて混合し、30%水酸化ナトリウム(41.0g、純分12.3g、307.6mmol)を添加して80℃で22.5時間攪拌した。分析条件2にて反応終了を確認後、反応混合物を20℃に冷却し、水(85.4g)、ジクロロメタン(85.4g)を加えて洗浄及び層分離して、水層側に目的物を回収した。得られた水層をジクロロメタン(85.4g)で洗浄後、層分離して再び水層側に目的物を回収した。層分離した後の水層にジクロロメタン(85.4g)を加え、リン酸二水素カリウムを用いてpH8に調整し、水層(水層A)を分離除去して有機層側(有機層A)に目的物を抽出した。次いで水層Aにジクロロメタン(85.4g)を加えて有機層側(有機層B)に目的物を再抽出した。得られた有機層A、及び有機層Bを混合後、フィルターろ過(孔径1μm)を行い、ろ液を減圧下で濃縮した。濃縮物にアセトニトリル(82.9g)を添加し、65℃で2時間攪拌後、0℃まで冷却し、フィルターろ過により固体と母液を分離し、冷アセトニトリルを用いて固体を洗浄した。得られた湿結晶を40℃で減圧乾燥することにより、化合物(6a)(19.0g、80.6mmol、収率78.6%、化学純度100area%)を取得した。
H NMR(500MHz、CDCl):δ7.16-7.19(t,1H,J=8.3Hz)、6.73-6.75(d,1H,J=8.0Hz)、6.68-6.69(m,2H)、4.32-4.35(dd,1H,J=11.5Hz,2.5Hz)、4.04-4.07(dd,1H,J=11.0Hz,4.5Hz)、3.46-3.51(t,1H,J=12.0Hz)、3.15-3.20(t,1H,J=10.8Hz)、2.30-2.35(m,1H)、2.01-2.08(m,8H)、1.82-1.90(m,2H)、1.71-1.74(m,1H).MS(ESI)m/z:236.4(M+H)
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明によって製造されるアミノアルキルテトラヒドロピラン誘導体(1)は、痛みの治療及び/又は予防に用いるための有効成分として利用できる。