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7710150通信制御装置、無線通信システム、通信制御方法及びプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-10
(45)【発行日】2025-07-18
(54)【発明の名称】通信制御装置、無線通信システム、通信制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/06 20060101AFI20250711BHJP
   H04B 7/022 20170101ALI20250711BHJP
   H04W 16/28 20090101ALI20250711BHJP
   H04W 16/26 20090101ALI20250711BHJP
【FI】
H04B7/06 956
H04B7/022
H04W16/28
H04W16/26
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2024540144
(86)(22)【出願日】2022-08-10
(86)【国際出願番号】 JP2022030534
(87)【国際公開番号】W WO2024034042
(87)【国際公開日】2024-02-15
【審査請求日】2024-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】NTT株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】新井 拓人
(72)【発明者】
【氏名】内田 大誠
(72)【発明者】
【氏名】岩國 辰彦
(72)【発明者】
【氏名】北 直樹
【審査官】齊藤 晶
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0257780(US,A1)
【文献】和井秀樹 他,高周波数帯分散アンテナシステムにおけるビーム組合せ履歴に基づくビーム探索数削減法,電子情報通信学会技術研究報告,日本,電子情報通信学会,2021年10月14日,Vol.121, No.210,pp.31-36
【文献】和井秀樹 他,高周波数帯分散MIMOシステムにおける非再生無線中継局のビーム検索数軽減法,電子情報通信学会2021年総合大会講演論文集 通信1,日本,2021年02月23日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/06
H04B 7/022
H04W 16/28
H04W 16/26
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末装置との無線通信に用いるビームを探索するビーム探索期間において、複数の分散アンテナの各々に対して、送信可能な全ての方向にビームを送信して行う全ビームサーチを前記ビーム探索期間ごとに異なる前記分散アンテナの順序で行わせ、当該全ビームサーチによるビームの中で最良のビームを示すビーム識別子を1つ取得した場合、前記全ビームサーチを停止させ、取得した前記ビーム識別子と、当該ビーム識別子が示すビームを送信した前記分散アンテナを示す情報とによって特定されるビームを検出基準ビームとし、前記ビーム探索期間において前記全ビームサーチを行っていない前記分散アンテナのビーム識別子であって前記検出基準ビームと共に選択されたことがあるビームのビーム識別子を当該分散アンテナに対する候補ビーム識別子としてビーム組合せ履歴記憶部から検出する候補ビーム検出部と、
前記ビーム探索期間において前記全ビームサーチを行っていない前記分散アンテナに対して全ビームサーチを行わせるか否かを、前記候補ビーム検出部の検出結果に基づいて判定するビームサーチ実行判定部と、
前記ビーム探索期間において前記分散アンテナの各々において最良のビームとされたビームを示すビーム識別子の組合せを示すレコードを生成し、生成した前記レコードを前記ビーム組合せ履歴記憶部に記録するビーム組合せ記録部と、
を備える通信制御装置。
【請求項2】
前記ビームサーチ実行判定部は、
前記ビーム探索期間において前記全ビームサーチを行っていない前記分散アンテナであって前記候補ビーム検出部により前記候補ビーム識別子が検出されなかった前記分散アンテナを、前記全ビームサーチを行わせる前記分散アンテナとして判定し、
前記ビーム探索期間において前記分散アンテナの各々において最良のビームとされたビームとは、当該ビーム探索期間において前記全ビームサーチが行われた前記分散アンテナの送信するビームの中で前記端末装置が最良としたビームである、
請求項1に記載の通信制御装置。
【請求項3】
前記ビームサーチ実行判定部は、
前記候補ビーム検出部により前記候補ビーム識別子が検出された前記分散アンテナに前記候補ビーム識別子が示すビームを送信する部分ビームサーチを行わせ、当該部分ビームサーチによるビームの中で前記端末装置が最良としたビームの受信品質を示す値と、閾値とに基づいて、当該分散アンテナに全ビームサーチを行わせるか否かを判定し、
前記ビーム探索期間において前記分散アンテナの各々において最良のビームとされたビームとは、前記ビームサーチ実行判定部により前記分散アンテナに全ビームサーチを行わせないと判定された場合に当該分散アンテナによって直前に行われた前記部分ビームサーチによるビームの中で前記端末装置が最良としたビーム、または、前記ビームサーチ実行判定部により前記分散アンテナに全ビームサーチを行わせると判定された場合に当該分散アンテナが行う前記全ビームサーチによる前記ビームの中で前記端末装置が最良としたビームである、
請求項1又は請求項2に記載の通信制御装置。
【請求項4】
前記ビーム組合せ履歴記憶部には、前記分散アンテナごとの前記ビーム識別子の各々に関連付けて、当該ビーム識別子が示すビームを前記端末装置が受信した際の受信品質を示す値が記憶されており、
前記ビームサーチ実行判定部は、
前記ビーム組合せ履歴記憶部において前記候補ビーム識別子に関連付けられている前記受信品質を示す値から算出される前記閾値と、当該ビーム識別子が示すビームの受信品質を示す値とに基づいて、前記分散アンテナに全ビームサーチを行わせるか否かを判定する、
請求項3に記載の通信制御装置。
【請求項5】
前記ビーム探索期間の前に、試行周期ごとに前記分散アンテナの全てに行わせる前記全ビームサーチによるビームの中で前記端末装置が前記分散アンテナの各々に対して最良としたビームを示すビーム識別子の組合せを示すレコードを、前記試行周期ごとに前記ビーム組合せ履歴記憶部に記録するビーム組合せ履歴生成部、
をさらに含む請求項1に記載の通信制御装置。
【請求項6】
端末装置と、各々が1つの分散アンテナを備える複数の分散アンテナ装置と、通信制御装置とを備える無線通信システムであって、
前記通信制御装置は、
前記端末装置との無線通信に用いるビームを探索するビーム探索期間において、複数の分散アンテナの各々に対して、送信可能な全ての方向にビームを送信して行う全ビームサーチを前記ビーム探索期間ごとに異なる前記分散アンテナの順序で行わせ、当該全ビームサーチによるビームの中で最良のビームを示すビーム識別子を1つ取得した場合、前記全ビームサーチを停止させ、取得した前記ビーム識別子と、当該ビーム識別子が示すビームを送信した前記分散アンテナを示す情報とによって特定されるビームを検出基準ビームとし、前記ビーム探索期間において前記全ビームサーチを行っていない前記分散アンテナのビーム識別子であって前記検出基準ビームと共に選択されたことがあるビームのビーム識別子を当該分散アンテナに対する候補ビーム識別子としてビーム組合せ履歴記憶部から検出する候補ビーム検出部と、
前記ビーム探索期間において前記全ビームサーチを行っていない前記分散アンテナに対して全ビームサーチを行わせるか否かを、前記候補ビーム検出部の検出結果に基づいて判定するビームサーチ実行判定部と、
前記ビーム探索期間において前記分散アンテナの各々において最良のビームとされたビームを示すビーム識別子の組合せを示すレコードを生成し、生成した前記レコードを前記ビーム組合せ履歴記憶部に記録するビーム組合せ記録部と、
を備える無線通信システム。
【請求項7】
端末装置との無線通信に用いるビームを探索するビーム探索期間において、複数の分散アンテナの各々に対して、送信可能な全ての方向にビームを送信して行う全ビームサーチを前記ビーム探索期間ごとに異なる前記分散アンテナの順序で行わせ、当該全ビームサーチによるビームの中で最良のビームを示すビーム識別子を1つ取得した場合、前記全ビームサーチを停止させ、取得した前記ビーム識別子と、当該ビーム識別子が示すビームを送信した前記分散アンテナを示す情報とによって特定されるビームを検出基準ビームとし、前記ビーム探索期間において前記全ビームサーチを行っていない前記分散アンテナのビーム識別子であって前記検出基準ビームと共に選択されたことがあるビームのビーム識別子を当該分散アンテナに対する候補ビーム識別子としてビーム組合せ履歴記憶部から検出する候補ビーム検出ステップと、
前記ビーム探索期間において前記全ビームサーチを行っていない前記分散アンテナに対して全ビームサーチを行わせるか否かを、前記候補ビーム検出ステップによる検出結果に基づいて判定するビームサーチ実行判定ステップと、
前記ビーム探索期間において前記分散アンテナの各々において最良のビームとされたビームを示すビーム識別子の組合せを示すレコードを生成し、生成した前記レコードを前記ビーム組合せ履歴記憶部に記録するビーム組合せ記録ステップと、
を含む通信制御方法。
【請求項8】
コンピュータに、
端末装置との無線通信に用いるビームを探索するビーム探索期間において、複数の分散アンテナの各々に対して、送信可能な全ての方向にビームを送信して行う全ビームサーチを前記ビーム探索期間ごとに異なる前記分散アンテナの順序で行わせ、当該全ビームサーチによるビームの中で最良のビームを示すビーム識別子を1つ取得した場合、前記全ビームサーチを停止させ、取得した前記ビーム識別子と、当該ビーム識別子が示すビームを送信した前記分散アンテナを示す情報とによって特定されるビームを検出基準ビームとし、前記ビーム探索期間において前記全ビームサーチを行っていない前記分散アンテナのビーム識別子であって前記検出基準ビームと共に選択されたことがあるビームのビーム識別子を当該分散アンテナに対する候補ビーム識別子としてビーム組合せ履歴記憶部から検出する候補ビーム検出ステップと、
前記ビーム探索期間において前記全ビームサーチを行っていない前記分散アンテナに対して全ビームサーチを行わせるか否かを、前記候補ビーム検出ステップによる検出結果に基づいて判定するビームサーチ実行判定ステップと、
前記ビーム探索期間において前記分散アンテナの各々において最良のビームとされたビームを示すビーム識別子の組合せを示すレコードを生成し、生成した前記レコードを前記ビーム組合せ履歴記憶部に記録するビーム組合せ記録ステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信制御装置、無線通信システム、通信制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
(高周波数帯におけるビームフォーミング)
ミリ波帯やテラヘルツ帯等の高周波数帯では、マイクロ波帯等の低周波数帯と比較して自由空間伝搬損失が大きい。そのため、この損失を補償するために特定方向に電力を集中させるビームを形成するビームフォーミング技術を用いる必要がある(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
常に通信を行う無線局の組合せが決まっているP-P(Point-to-Point)型の通信で、かつその無線局の位置関係や無線局周囲の伝搬環境も変化しないような場合には、無線局の設置時などに予めビームの形成方向を定めて固定的にビームフォーミングを行うことができる。これに対して、複数の無線局を収容するP-MP(Point-to-Multi Point)型、または、無線局の少なくとも一方が移動するような場合には固定的にビームフォーミングを行うことができない。この場合、複数の無線局のうち通信を必要とする無線局の位置や、無線局の移動、無線局の周囲の伝搬環境の変化にあわせて適応的にビームの形成方向を制御する適応ビームフォーミングを行う必要がある。
【0004】
適応ビームフォーミングは、機械的な駆動部を用いることなく、複数のアンテナ素子間で放射する電波の位相関係を調整してビームの形成方向を制御することにより行われるのが一般的である。ただし、その位相関係を適切に調整するためには、送信側と受信側の両無線局の各アンテナ素子間の位相関係を把握した上で適切な位相関係を導出する必要がある。すなわち、送信側と受信側の両無線局の各アンテナ素子間の伝搬路の状態を各アンテナ素子の全組合せにおいて把握する必要がある。
【0005】
伝搬路の状態は、送信側の無線局と、受信側の無線局との間で既知の信号を送受信することにより把握することができるが、その送受信の間は他の通信が行えず、また受信側の無線局から送信側の無線局に伝搬路の状態を正確に伝達する必要があるため通信のオーバヘッドが増大する。
【0006】
オーバヘッドの増大を抑制するため、適応ビームフォーミングでは、予め離散的に複数設定される候補ビームに関連付けられたビーム識別子(以下、ビームID(Identifier)という)を含む信号を各候補ビームで送信し、この中から最も通信に適していると判断されたビームのビームIDを選択する技術が用いられる。この技術は、3GPP(登録商標) 5G(5th Generation)やIEEE802.11adのような近年実用化が進められている無線通信システムの仕様として規定されており、実装も行われている(例えば、非特許文献1、2、3参照)。
【0007】
(ビーム選択手順)
無線局の送信側ビームを選択する際、送信側の無線局は、送信に利用した各ビームを受信側の無線局が一意に特定することができる信号を送信する。そのような信号として、例えば、送信に利用するビームのビームIDをディジタル情報として埋め込んだビームサーチ信号がある。送信側の無線局は、それぞれ異なるビームIDが埋め込まれたビームサーチ信号を載せたビームの各々を、時間的に方向を切り替えて送信する。受信側の無線局は、複数のビームを受信し、受信した複数のビームの各々のビームサーチ信号に含まれているビームIDを読み出し、各ビームの受信品質を測定して、どの送信側ビームの受信品質が最良であるかを判定する。受信側の無線局が、受信品質が最良である送信側ビームのビームIDを送信側の無線局が一意に特定することができるフィードバック信号を送信側の無線局に送信することにより、送信側の無線局が送信側ビームを選択することができる。
【0008】
無線局の受信側ビーム選択について、送受信に同一周波数を用いるTDD(Time Division Duplex)のようなシステムでは、送信側と同一のビームを選択することも可能である。これに対して、送受信に別周波数を用いるFDD(Frequency Division Duplex)のようなシステムでは、送信側ビーム選択と同様に、受信側ビームもビーム選択を行う必要がある。無線局の受信側ビームを選択する場合、受信側の無線局は、送信側の無線局に対して受信ビームサーチ手順を要求する信号を送信する。受信側の無線局は、送信側の無線局が送信する信号に合わせて時間的に方向を切り替えて受信し、受信した信号の受信品質を測定する。これにより、受信側の無線局は、どの受信ビームで受信した受信品質が最良であるかを判定することにより受信側ビームを選択することができる。
【0009】
(分散アンテナシステム)
図36は、従来における一般的な無線通信システムの一例である無線通信システム500の構成を示す図である。図36では、一例として、無線通信システム500において5つのセル100-1~100-5が存在する構成を示している。無線通信システム500は、1つのセルに対して1つのアンテナが設置される構成になっている。すなわち、無線通信システム500は、セル100-1~100-5の各々に、アンテナ装置200-1~200-5の各々が設置される構成になっている。アンテナ装置200-1~200-5の各々には、信号の送受信を行うディジタル信号処理装置210-1~210-5の各々が接続される。セル100-1についてみると、アンテナ装置200-1と、ディジタル信号処理装置210-1とが、いわゆる基地局装置になり、1台の端末局が、例えば、セル100-1に位置している場合、当該端末局は、1つのアンテナ装置200-1から無線電波によって接続されることになる。
【0010】
ここで、前述したようにミリ波帯やテラヘルツ帯等の高周波数帯では、ビームフォーミング技術を用いることから反射波や回折波の影響が小さくなる。そのため、高周波数帯では、ビームが遮蔽されると通信断となる可能性が高くなり、見通し通信が基本になるという特徴がある。ところで、空間多重技術として有力なMIMO(Multiple Input Multiple Output)という技術がある。MIMOでは、送受信に複数のアンテナを利用することにより、同一時間、同一周波数リソースで空間多重により最大アンテナ数倍に伝送速度が向上する技術である。しかし、高周波数帯では見通し通信が基本となることから、MIMO技術の適用時に送受信の複数アンテナ間の空間相関が高くなり、空間多重が困難となる。
【0011】
そこで、高周波数帯では遮蔽耐性の向上効果や空間相関の低減効果を有する分散アンテナシステムが検討されている(例えば、非特許文献4、5を参照)。図37は、高周波数帯分散アンテナシステムの一例である無線通信システム500aの構成を示す図である。図36の無線通信システム500と同様に、無線通信システム500aには、5つのセル100-1~100-5が存在している。ただし、無線通信システム500aは、無線通信システム500とは異なり、1つのセルに対して複数のアンテナが分散して設置される構成になっている。以下、分散して設置される複数のアンテナの各々を分散アンテナという。セル100-1についてみると、それぞれが1つの分散アンテナを備える分散アンテナ装置200a、~200a-1-4が分散して設置されており、分散アンテナ装置200a-1-1~200a-1-4に、1台のディジタル信号処理装置210a-1が接続されている。無線通信システム500aでは、分散アンテナ装置200a-1-1~200a-1-4と、ディジタル信号処理装置210a-1とが、いわゆる基地局装置になり、セル100-2~100-5においても同様の構成になる。無線通信システム500aでは、1台の端末局が、例えば、セル100-1に位置している場合、当該端末局は、複数の分散アンテナ装置200a-1-1~200a-1-4から無線電波によって接続されることになる。
【0012】
(分散アンテナにおけるビーム選択手順)
分散して設置される複数のアンテナ、すなわち分散アンテナを備える無線局と、複数のアンテナを備える1台の端末局との間におけるMIMO、すなわち、シングルユーザMIMOを適用することにより空間相関が低減され、空間多重が可能となる。ただし、事前に、無線局の複数のアンテナの各々と、端末局の複数のアンテナの各々と間のリンクにおいてビームを選択することが不可欠となる。なお、以下の説明では、分散アンテナを備える無線局と、複数アンテナを備える端末局との間のMIMOのことを分散MIMOという。
【0013】
ここで、高周波数帯における分散MIMOを行うための一般的な送信ビーム選択方法について説明する。無線局の複数の送信アンテナの各々に対して予め離散的に複数設定される候補ビームの各々に関連付けられたビームIDと、複数の送信アンテナの各々に関連付けられたアンテナIDとをディジタル情報として埋め込んだビームサーチ信号を、ビームIDとアンテナIDの組合せごとに複数生成する。生成した複数のビームサーチ信号の各々を、各々に含まれているアンテナIDに対応する送信アンテナが時間的に切り替えて送信する送信ビームであって、各々に含まれているビームIDに対応する送信ビームに載せて送信する。
【0014】
通信相手側となる端末局は、複数の受信アンテナの各々で複数のビームを受信し、受信した複数のビームの各々のビームサーチ信号に含まれているビームIDと、送信アンテナIDとを読み出し、受信したビームの受信品質を測定する。端末局は、送信アンテナIDごとに、受信品質が最良のビームIDを選択し、送信側の無線局に、送信アンテナIDと、当該送信アンテナIDに対して選択したビームIDと、当該ビームIDに対応する受信品質とを組合せたデータをフィードバックする。このフィードバックを受けた無線局は、MIMOによる空間多重数分の複数の送信ビームを受信品質に基づいて選択する。これに加え、通信相手側の端末局が、複数の受信ビームを受信側ビーム選択により順に選択する。これにより、高周波数帯において、複数の送受信ビーム間でMIMOによる送受信が可能となる。
【0015】
図37に示す無線通信システム500aに対して分散MIMOを適用することを想定する。例えば、セル100-1に1台の端末局が位置している場合、セル100-1に位置している複数の分散アンテナ装置200a-1-1~200a-1-4の各々が、当該端末局に対してビームサーチ信号を送信するビームサーチを行い、ビームサーチによる複数のビームの中から受信品質が最良のビームを選択する必要がある。そのため、無線通信システム500aでは、分散アンテナ装置200a-1-1~200a-1-4の台数分のビームサーチのためにオーバヘッドが増大し、データ伝送の効率が低下する。つまり、分散アンテナ装置200a-1-1~200a-1-4を増やすことによりオーバヘッドが増加することが課題となる。
【0016】
このオーバヘッドが増加する課題に対して、例えば、複数の分散アンテナの各々に対して選択されるビームの組合せを記憶し、ビームの組合せの履歴に基づいてビーム探索数を削減する手法が非特許文献6において開示されている。
【0017】
図38図39は、非特許文献6に開示されている技術の概要を示す図である。図38(a)に示す無線通信システム500bには、図37に示した無線通信システム500aにおけるセル100-1~100-5のいずれか1つに相当するセル100が存在している。セル100には、3つの分散アンテナ装置200a-1~200a-3が分散して設置されており、分散アンテナ装置200a-1~200a-3に、1台のディジタル信号処理装置210が接続する。通信制御装置220は、複数の分散アンテナ装置200a-1~200a-3に対して選択されるビームの組合せの履歴を記憶している。通信制御装置220は、ビームの組合せの履歴に基づいてビーム探索数を削減する手法を実行する装置であり、ディジタル信号処理装置210に接続する。セル100には、上記した端末局に相当する1台の端末装置300が存在し、セル100内を移動する。
【0018】
高周波数帯では、自由空間伝搬損失と回折損失が大きいことやビームフォーミングを用いることから、見通し波を中心とした少数パスが支配的となる。このことから、分散アンテナ装置200a-1~200a-3の各々が分散MIMOのために選択するビーム組合せは、端末装置300の位置の各々において限られた組合せになる。そこで、いずれか1つの分散アンテナ装置200a-1~200a-3が、送信可能な全ての方向にビームサーチ信号を載せたビームを送信する。当該ビームサーチ信号に基づいて選択された1つのビームと過去に組合せて選択された他の分散アンテナ装置200a-1~200a-3のビームを候補ビームとし、候補ビームについてのみ部分的にビームサーチを行うことでビーム探索数を削減することができる。このビーム探索数の削減の処理を行うため、通信制御装置220は、分散アンテナ装置200a-1~200a-3に対して選択されるビームの組合せを記憶する記憶モードと、ビームの組合せの履歴に基づいてビーム探索数を削減する参照モードという2種類のモードの処理を行う。図38が、記憶モードの処理の概要を示す図になり、図39が、参照モードの処理の概要を示す図になる。
【0019】
記憶モードにおいて、通信制御装置220は、ディジタル信号処理装置210に対して、分散アンテナ装置200a-1~200a-3の各々に、各々が送信可能な全ての方向にビームサーチ信号を載せたビームを送信させる指示を行う。端末装置300は、分散アンテナ装置200a-1~200a-3の各々が送信するビームサーチ信号を載せたビームの各々を受信すると、ビームサーチ信号に含まれているビームIDを読み出し、ビームの受信品質を測定する。端末装置300は、分散アンテナ装置200a-1~200a-3ごとに、どのビームの受信品質が最良であるかを測定した受信品質を示す値に基づいて判定し、受信品質が最良のビームIDを通信制御装置220が一意に特定することができるフィードバック信号を送信する。
【0020】
通信制御装置220は、分散アンテナ装置200a-1~200a-3及びディジタル信号処理装置210を通じてフィードバック信号を取得すると、取得したフィードバック信号に基づいて図38(b)に示すビーム組合せ履歴のテーブルにレコードを生成する。図38(b)に示すテーブルにおいて「アンテナ」の項目の下の「1」が、分散アンテナ装置200a-1を示しており、「2」が、分散アンテナ装置200a-2を示しており、「3」が、分散アンテナ装置200a-3を示している。テーブルにおける「#」付きの番号は、ビームIDを示しており、例えば、1行目のレコードは、分散アンテナ装置200a-1~200a-3の各々において、ビームID「#3」,「#4」,「#5」のビームが最良のビームとして選択されたことを示している。端末装置300がセル100内を移動する間、通信制御装置220が繰り返し記憶モードの処理を行うと、ビーム組合せ履歴のテーブルに異なる組合せのレコードが行方向に追加されていくことになる。
【0021】
参照モードにおいて、通信制御装置220は、例えば、図39(a)に示すように、ディジタル信号処理装置210に対して、分散アンテナ装置200a-1に送信可能な全ての方向にビームサーチ信号のビームを送信させる指示を行う。これにより、分散アンテナ装置200a-1において、ビームID「#3」のビームが最良のビームとして選択されたとする。この場合、通信制御装置220は、分散アンテナ装置200a-1のビームID「#3」のビームを検出基準ビームとし、図39(b)に示すように、ビーム組合せ履歴のテーブルから検出基準ビームと共に組合せて選択されたことがある分散アンテナ装置200a-2のビームを示すビームID「#4」と「#5」を、候補ビームを示すビームIDとして検出する。通信制御装置220は、検出基準ビームと共に組合せて選択されたことがある分散アンテナ装置200a-3のビームを示すビームID「#4」と「#5」と「#6」を、候補ビームを示すビームIDとして検出する。通信制御装置220は、ディジタル信号処理装置210に対して、分散アンテナ装置200a-2にビームID「#4」と「#5」に対応する方向にビームサーチ信号のビームを送信させる指示を行う。通信制御装置220は、ディジタル信号処理装置210に対して、分散アンテナ装置200a-3にビームID「#4」と「#5」と「#6」に対応する方向にビームサーチ信号のビームを送信させる指示を行う。このように、分散アンテナ装置200a-2,200a-3において送信可能な全ての方向にビームサーチを行うことなく、候補ビームに絞り込んで部分的にビームサーチを行うので、ビーム探索数を削減することが可能になる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0022】
【文献】須山聡 他,“5Gマルチアンテナ技術”, NTT DOCOMOテクニカル・ジャーナル, Vol.23, No.4, pp.30-39, 2016年1月
【文献】武田和晃 他,“5Gにおける物理レイヤ要素技術と高周波数帯利用に関する検討状況”, NTT DOCOMOテクニカル・ジャーナル, Vol.25, No.3, pp.23-32, 2017年10月
【文献】滝波浩二 他,“ミリ波帯無線LANシステムの標準化動向と要素技術”, 電子情報通信学会 通信ソサイエティマガジン, No.38 秋号, pp.100-106, 2016年
【文献】内田大誠 他,“端末高密度/遮蔽環境での高周波数帯分散アンテナシステムの一検討”, 電子情報通信学会総合大会 通信講演論文集1,B-5-87, p.375, 2020年3月
【文献】岩渕匡史 他,“多数多様な中継系による高周波数帯マルチパス形成制御の提案”, 電子情報通信学会総合大会 通信講演論文集1,B-5-101, p.389, 2020年3月
【文献】和井秀樹 他,“高周波数帯分散アンテナシステムにおけるビーム組合せ履歴に基づく探索数削減法”, 信学技報, vol. 121, no. 210, RCS2021-123, pp. 31-36, 2021年10月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
複数の分散アンテナ装置200a-1~200a-3が送信するビームの全組合せ数は端末装置300が存在する範囲、分散アンテナ装置200a-1~200a-3の位置、分散アンテナ装置200a-1~200a-3が送信する離散ビームの角度間隔などで決まる。そのため、通信制御装置220が記憶モードで行う処理の際に、例えば、図40において符号400で示すエリアのように、過去に端末装置300が存在していなかったエリア付近では、検出基準ビームと共に組合せて選択されたことがある候補ビームを取得することができない場合がある。この場合、ビーム組合せの履歴のテーブルに十分な数のレコードが蓄積されないため、適切なビーム探索及びビーム選択ができない場合があり、このような場合に伝送容量が低下してしまう。伝送容量を低下させないために、例えば、図41に示すように、記憶モードで行う処理の際に、サービス提供エリアであるセル100内の全体にわたって、伝送容量を低下させない程度の間隔で端末装置300を少しずつ移動させてビーム組合せ履歴のテーブルに、十分な数のレコードを蓄積しておくといった対策をとることが考えられる。十分な数のレコードを蓄積する手法として、例えば、事業者により行う手法やユーザの端末装置300を利用して行う手法がある。
【0024】
事業者により行う場合、サービス提供エリアであるセル100内の全体にわたって、伝送容量を低下させない程度の間隔で端末装置300を少しずつ移動させるのに非常にコストがかかるという問題がある。これに対して、ユーザの端末装置300を利用する場合、コストを抑えることはできるが、ユーザが無線通信システム500bの運用者側において理想とする動き方をする可能性が低い。そのため、ユーザの端末装置300を利用する場合、十分な数のレコードが得られるまでに莫大な時間がかかるという問題がある。特に搬送波周波数が大きくなるほど、ビーム幅が小さくなるため、伝送容量を低下させないようにするためには、端末装置300を移動させる際の間隔の長さを短くする必要があり、十分な数のレコードが得られるまでに要する時間が更に増大することになる。
【0025】
そのため、事前にサービス提供エリア内の全体にわたって伝送容量を低下させない程度の間隔で端末装置を少しずつ移動させてビーム組合せの履歴を示すレコードを生成することなく、ビーム探索の処理を行う際に、伝送容量を低下させず、かつビーム探索数の削減を行うのに十分な数のレコードを蓄積することを可能にすることが求められる。このような課題に対して、例えば、探索期間(モード)を定義して、探索期間における通信品質をビームの組合せごとに履歴として記録するという方法が考えられる。また、例えば、探索期間を設けずに、随時、通信品質の測定を行い、測定の都度、ビームの組み合わせごとに通信品質の履歴を更新するという方法が考えられる。
【0026】
しかしながら、上記の方法においては、ビーム探索を行う無線局(張り出し局)及び分散アンテナ装置の順序を固定して処理が行われることが想定される。このように処理の順序が固定化されたビーム探索では、たとえビーム探索が繰り返し行われるとしても、探索されるビームの組合せが、実際に最良品質を得られるビームの組合せとは乖離した状態で固定化されてしまう可能性がある。
【0027】
上記事情に鑑み、本発明は、分散アンテナシステムにおけるビーム探索において、探索されるビームの組合せの固定化を防ぎつつ、ビーム探索数の削減を行うことができる技術の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明の一態様は、端末装置との無線通信に用いるビームを探索するビーム探索期間において、複数の分散アンテナの各々に対して、送信可能な全ての方向にビームを送信して行う全ビームサーチを前記ビーム探索期間ごとに異なる前記分散アンテナの順序で行わせ、当該全ビームサーチによるビームの中で最良のビームを示すビーム識別子を1つ取得した場合、前記全ビームサーチを停止させ、取得した前記ビーム識別子と、当該ビーム識別子が示すビームを送信した前記分散アンテナを示す情報とによって特定されるビームを検出基準ビームとし、前記ビーム探索期間において前記全ビームサーチを行っていない前記分散アンテナのビーム識別子であって前記検出基準ビームと共に選択されたことがあるビームのビーム識別子を当該分散アンテナに対する候補ビーム識別子としてビーム組合せ履歴記憶部から検出する候補ビーム検出部と、前記ビーム探索期間において前記全ビームサーチを行っていない前記分散アンテナに対して全ビームサーチを行わせるか否かを、前記候補ビーム検出部の検出結果に基づいて判定するビームサーチ実行判定部と、前記ビーム探索期間において前記分散アンテナの各々において最良のビームとされたビームを示すビーム識別子の組合せを示すレコードを生成し、生成した前記レコードを前記ビーム組合せ履歴記憶部に記録するビーム組合せ記録部と、を備える通信制御装置である。
【0029】
本発明の一態様は、端末装置と、各々が1つの分散アンテナを備える複数の分散アンテナ装置と、通信制御装置とを備える無線通信システムであって、前記通信制御装置は、前記端末装置との無線通信に用いるビームを探索するビーム探索期間において、複数の分散アンテナの各々に対して、送信可能な全ての方向にビームを送信して行う全ビームサーチを前記ビーム探索期間ごとに異なる前記分散アンテナの順序で行わせ、当該全ビームサーチによるビームの中で最良のビームを示すビーム識別子を1つ取得した場合、前記全ビームサーチを停止させ、取得した前記ビーム識別子と、当該ビーム識別子が示すビームを送信した前記分散アンテナを示す情報とによって特定されるビームを検出基準ビームとし、前記ビーム探索期間において前記全ビームサーチを行っていない前記分散アンテナのビーム識別子であって前記検出基準ビームと共に選択されたことがあるビームのビーム識別子を当該分散アンテナに対する候補ビーム識別子としてビーム組合せ履歴記憶部から検出する候補ビーム検出部と、前記ビーム探索期間において前記全ビームサーチを行っていない前記分散アンテナに対して全ビームサーチを行わせるか否かを、前記候補ビーム検出部の検出結果に基づいて判定するビームサーチ実行判定部と、前記ビーム探索期間において前記分散アンテナの各々において最良のビームとされたビームを示すビーム識別子の組合せを示すレコードを生成し、生成した前記レコードを前記ビーム組合せ履歴記憶部に記録するビーム組合せ記録部と、を備える無線通信システムである。
【0030】
本発明の一態様は、端末装置との無線通信に用いるビームを探索するビーム探索期間において、複数の分散アンテナの各々に対して、送信可能な全ての方向にビームを送信して行う全ビームサーチを前記ビーム探索期間ごとに異なる前記分散アンテナの順序で行わせ、当該全ビームサーチによるビームの中で最良のビームを示すビーム識別子を1つ取得した場合、前記全ビームサーチを停止させ、取得した前記ビーム識別子と、当該ビーム識別子が示すビームを送信した前記分散アンテナを示す情報とによって特定されるビームを検出基準ビームとし、前記ビーム探索期間において前記全ビームサーチを行っていない前記分散アンテナのビーム識別子であって前記検出基準ビームと共に選択されたことがあるビームのビーム識別子を当該分散アンテナに対する候補ビーム識別子としてビーム組合せ履歴記憶部から検出する候補ビーム検出ステップと、前記ビーム探索期間において前記全ビームサーチを行っていない前記分散アンテナに対して全ビームサーチを行わせるか否かを、前記候補ビーム検出ステップによる検出結果に基づいて判定するビームサーチ実行判定ステップと、前記ビーム探索期間において前記分散アンテナの各々において最良のビームとされたビームを示すビーム識別子の組合せを示すレコードを生成し、生成した前記レコードを前記ビーム組合せ履歴記憶部に記録するビーム組合せ記録ステップと、を含む通信制御方法である。
【0031】
本発明の一態様は、コンピュータに、端末装置との無線通信に用いるビームを探索するビーム探索期間において、複数の分散アンテナの各々に対して、送信可能な全ての方向にビームを送信して行う全ビームサーチを前記ビーム探索期間ごとに異なる前記分散アンテナの順序で行わせ、当該全ビームサーチによるビームの中で最良のビームを示すビーム識別子を1つ取得した場合、前記全ビームサーチを停止させ、取得した前記ビーム識別子と、当該ビーム識別子が示すビームを送信した前記分散アンテナを示す情報とによって特定されるビームを検出基準ビームとし、前記ビーム探索期間において前記全ビームサーチを行っていない前記分散アンテナのビーム識別子であって前記検出基準ビームと共に選択されたことがあるビームのビーム識別子を当該分散アンテナに対する候補ビーム識別子としてビーム組合せ履歴記憶部から検出する候補ビーム検出ステップと、前記ビーム探索期間において前記全ビームサーチを行っていない前記分散アンテナに対して全ビームサーチを行わせるか否かを、前記候補ビーム検出ステップによる検出結果に基づいて判定するビームサーチ実行判定ステップと、前記ビーム探索期間において前記分散アンテナの各々において最良のビームとされたビームを示すビーム識別子の組合せを示すレコードを生成し、生成した前記レコードを前記ビーム組合せ履歴記憶部に記録するビーム組合せ記録ステップと、
を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0032】
本発明により、分散アンテナシステムにおけるビーム探索において、探索されるビームの組合せの固定化を防ぎつつ、ビーム探索数の削減を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】第1の実施形態の無線通信システムの構成を示すブロック図である。
図2】第1の実施形態の通信制御装置の内部構成と、通信制御装置とディジタル信号処理装置の接続関係を示すブロック図である。
図3】第1の実施形態のビームサーチ実行指示部が内部に記憶するビーム数テーブルのデータ形式を示す図である。
図4】第1の実施形態のビーム組合せ履歴記憶部が記憶するビーム組合せ履歴テーブルのデータ形式を示す図である。
図5】第1の実施形態の端末装置の内部構成を示すブロック図である。
図6】第1の実施形態の端末装置による処理の流れを示すフローチャート(その1)である。
図7】第1の実施形態の端末装置による処理の流れを示すフローチャート(その2)である。
図8】第1の実施形態の無線通信システムによる処理の全体的な流れを示すフローチャートである。
図9】第1の実施形態のビーム組合せ生成処理の流れを示すフローチャートである。
図10】第1の実施形態のビーム探索処理の流れを示すフローチャートである。
図11】第1の実施形態のビーム探索処理において実行される全ビームサーチ実行判定のサブルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
図12】第1の実施形態の無線通信システムに行われる処理の概要を示す図である。
図13】第2の実施形態の通信制御装置の内部構成と、通信制御装置とディジタル信号処理装置の接続関係を示すブロック図である。
図14】第2の実施形態のビーム組合せ履歴記憶部が記憶するビーム組合せ履歴テーブルのデータ形式を示す図である。
図15】第2の実施形態のビーム探索処理の流れを示すフローチャートである。
図16】第2の実施形態のビーム探索処理において実行される全ビームサーチ実行判定のサブルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
図17】第3の実施形態の通信制御装置の内部構成と、通信制御装置とディジタル信号処理装置の接続関係を示すブロック図である。
図18】第3の実施形態のビーム探索処理の流れを示すフローチャートである。
図19】第4の実施形態の通信制御装置の内部構成と、通信制御装置とディジタル信号処理装置の接続関係を示すブロック図である。
図20】第4の実施形態のビーム探索処理の流れを示すフローチャートである。
図21】第5の実施形態の通信制御装置の内部構成と、通信制御装置とディジタル信号処理装置の接続関係を示すブロック図である。
図22】第5の実施形態のビーム探索処理の流れを示すフローチャートである。
図23】第6の実施形態の通信制御装置の内部構成と、通信制御装置とディジタル信号処理装置の接続関係を示すブロック図である。
図24】第6の実施形態のビーム探索処理の流れを示すフローチャートである。
図25】第7の実施形態の通信制御装置の内部構成と、通信制御装置とディジタル信号処理装置の接続関係を示すブロック図である。
図26】第7の実施形態のビーム探索処理の流れを示すフローチャートである。
図27】第7の実施形態の端末装置の内部構成を示すブロック図である。
図28】第7の実施形態の端末装置による処理の流れを示すフローチャート(その1)である。
図29】第7の実施形態の端末装置による処理の流れを示すフローチャート(その2)である。
図30】第8の実施形態の通信制御装置の内部構成と、通信制御装置とディジタル信号処理装置の接続関係を示すブロック図である。
図31】第8の実施形態のビーム探索処理の流れを示すフローチャートである。
図32】第9の実施形態の通信制御装置の内部構成と、通信制御装置とディジタル信号処理装置の接続関係を示すブロック図である。
図33】第9の実施形態のビーム探索処理において実行される全ビームサーチ実行判定のサブルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
図34】第10の実施形態の通信制御装置の内部構成と、通信制御装置とディジタル信号処理装置の接続関係を示すブロック図である。
図35】第10の実施形態のビーム探索処理において実行される全ビームサーチ実行判定のサブルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
図36】従来における一般的な無線通信システムの構成を示すブロック図である。
図37】高周波数帯分散アンテナシステムの一例の構成を示すブロック図である。
図38】非特許文献6に開示されている技術の概要を説明するための図(その1)である。
図39】非特許文献6に開示されている技術の概要を説明するための図(その2)である。
図40】非特許文献6に開示されている技術における課題を説明するための図(その1)である。
図41】非特許文献6に開示されている技術における課題を説明するための図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、第1の実施形態における無線通信システム1の構成の一例を示すブロック図である。無線通信システム1は、少なくとも1つのセル100を含んでいる。セル100のエリア内に、分散アンテナ装置30-1,30-2,30-3,30-4と、端末装置40とを備える。無線通信システム1は、通信制御装置10と、ディジタル信号処理装置20とを備える。通信制御装置10は、ディジタル信号処理装置20に接続している。ディジタル信号処理装置20は、分散アンテナ装置30-1~30-4の各々に接続している。通信制御装置10と、ディジタル信号処理装置20と、分散アンテナ装置30-1~30-4とによって、いわゆる基地局装置が構成されることになる。
【0035】
なお、図1に示す無線通信システム1は、一例としての構成であり、無線通信システム1は、セル100内に、複数の分散アンテナ装置30-1~30-Nが設置され、分散アンテナ装置30-1~30-Nの各々にディジタル信号処理装置20が接続する構成であってもよい。ここで、Nは、2以上の整数である。無線通信システム1は、図18に示すような構成、すなわち、複数のセル100を含む構成であってもよく、この場合、セル100の数に一致する数のディジタル信号処理装置20と、通信制御装置10とを備え、通信制御装置10の各々は、各々に対応するディジタル信号処理装置20に接続し、ディジタル信号処理装置20の各々は、各々に対応するセル100内の分散アンテナ装置30-1~30-Nに接続することになる。
【0036】
分散アンテナ装置30-1~30-4の各々は、方向を切り替えて無線電波のビームを形成するビームフォーミングが可能になっており、無線電波により端末装置40に接続する。なお、図1では、一例として、分散アンテナ装置30-1~30-4が、9個の方向にビームを形成する例を示しているが、分散アンテナ装置30-1~30-4がビームを形成できる方向の数は2個以上であればよい。分散アンテナ装置30-1~30-4がビームを形成できる方向の最大数は、分散アンテナ装置30-1~30-4の仕様によって予め定められるものであり、運用者が任意にビーム数を定められるようになっていてもよい。分散アンテナ装置30-1~30-4の各々は、1つの分散アンテナ31-1~31-4と、1つの本体装置32-1~32-4とを備える。分散アンテナ31-1~31-4の各々には、各々を一意に識別可能な分散アンテナIDが予め付与されている。
【0037】
本体装置32-1~32-4の各々は、各々に接続する分散アンテナ31-1~31-4を通じて無線周波数のアナログ信号の送受信を行う。すなわち、本体装置32-1~32-4の各々は、ディジタル信号処理装置20が出力する送信データのディジタル信号に基づいて搬送波を変調して無線周波数のアナログ信号を生成する。本体装置32-1~32-4の各々は、生成したアナログ信号を各々に接続する分散アンテナ31-1~31-4から無線電波により送信する。本体装置32-1~32-4の各々は、各々に接続する分散アンテナ31-1~31-4が無線電波を受信して出力するアナログ信号を復調してディジタル信号に変換する。本体装置32-1~32-4の各々は、変換したディジタル信号をディジタル信号処理装置20に出力する。
【0038】
ビームフォーミングの観点では、本体装置32-1~32-4の各々は、ディジタル信号処理装置20が出力する送信データとしてのビームサーチ信号のディジタル信号を取り込む。本体装置32-1~32-4の各々は、取り込んだビームサーチ信号に含まれているビームIDに対応する方向にビームを形成するようにビームサーチ信号に基づいて搬送波を変調する。本体装置32-1~32-4の各々は、変調により生成したビームサーチ信号を載せた無線周波数のアナログ信号を、各々に接続する分散アンテナ31-1~31-4を通じて送信する。
【0039】
ここで、ビームIDは、例えば、1から始まる連続した整数値に「ビームID#」という文字列が付与された識別子であり、分散アンテナ装置30-1~30-4ごとに予め定められる識別子である。例えば、分散アンテナ装置30-1が、40方向の異なる方向にビームを形成することができる場合、40方向のビームの各々に対して「ビームID#1」~「ビームID#40」までのビームIDが予め固定的に付与されて、ビームIDと方向の対応関係を示すデータが、本体装置32-1の内部の記憶領域に予め記憶される。言い換えると、分散アンテナ装置30-1の本体装置32-1に対して、ビームサーチ信号により「ビームID#1」が指定された場合、分散アンテナ装置30-1の分散アンテナ31-1が形成するビームの方向は、一意に定まることになる。これは、他の分散アンテナ装置30-2~30-4についても同様であり、この場合に、分散アンテナ装置30-1~30-4の各々において、同一のビームIDが存在する場合もある。
【0040】
ディジタル信号処理装置20は、送信データのディジタル信号を、本体装置32-1~32-4に出力する。ディジタル信号処理装置20は、通信制御装置10からビームサーチ指示信号を受けると、ビームサーチ指示信号に含まれている分散アンテナIDを送信元アンテナIDとし、送信元アンテナIDと、ビームサーチ指示信号に含まれているビームIDとを含むビームサーチ信号を生成する。ディジタル信号処理装置20は、生成したビームサーチ信号を、ビームサーチ指示信号に含まれている分散アンテナIDに対応する本体装置32-1~32-4に出力する。これにより、ビームサーチ信号が載せられたビームを受信する端末装置40は、ビームサーチ信号に含まれている送信元アンテナIDを参照することで、ビームサーチ信号の送信元の分散アンテナ31-1~31-4を特定することができ、更に、ビームサーチ信号に含まれているビームIDを参照することで、ビームサーチ信号を載せていたビームを特定することができる。
【0041】
ディジタル信号処理装置20は、本体装置32-1~32-4が出力するディジタル信号からディジタル信号に含まれている受信データを検出する。ディジタル信号処理装置20は、検出した受信データが、端末装置40が無線電波に載せて送信したフィードバック信号である場合、当該フィードバック信号を通信制御装置10に出力する。
【0042】
(第1の実施形態の通信制御装置の構成)
通信制御装置10は、図2に示すように、ビームサーチ実行指示部11、フィードバック信号受信部12、ビーム組合せ履歴生成部13、ビーム組合せ履歴記憶部14、候補ビーム検出部15、ビームサーチ実行判定部16及びビーム組合せ記録部17を備える。
【0043】
ビームサーチ実行指示部11は、ディジタル信号処理装置20を介して、分散アンテナ装置30-1~30-4の各々に対して、各々が送信可能な全ての方向の各々に対して時間を切り替えてビームを送信する全ビームサーチを行わせたり、1つ、または、複数の特定の方向に対して時間を切り替えてビームを送信する部分ビームサーチを行わせたりする。ビームサーチ実行指示部11は、内部の記憶領域に、図3に示すビーム数テーブル110を予め記憶させている。ビーム数テーブル110は、「分散アンテナID」と「ビームID最大値」の項目を有している。「分散アンテナID」の項目には、分散アンテナ31-1~31-4の各々に付与されている分散アンテナIDである「分散アンテナID#1」,「分散アンテナID#2」,「分散アンテナID#3」,「分散アンテナID#4」が予め書き込まれる。ここで、「分散アンテナID#1」が分散アンテナ31-1に付与されている分散アンテナIDに対応し、「分散アンテナID#2」が分散アンテナ31-2に付与されている分散アンテナIDに対応し、「分散アンテナID#3」が分散アンテナ31-3に付与されている分散アンテナIDに対応し、「分散アンテナID#4」が分散アンテナ31-4に付与されている分散アンテナIDに対応する。
【0044】
「ビームID最大値」の項目には、分散アンテナ31-1~31-4ごとのビームIDの最大値、すなわち分散アンテナ31-1~31-4の各々が送信可能なビームの送信方向の数が予め書き込まれる。なお、図3では、分散アンテナ31-1~31-4の「ビームID最大値」の値は、全て「40」としているが、異なる値であってもよい。
【0045】
ビームサーチ実行指示部11は、分散アンテナIDを含む全ビームサーチ要求信号を受けると、ビーム数テーブル110を参照し、全ビームサーチ要求信号に含まれている分散アンテナIDに対応するビームID最大値を読み出す。ビームサーチ実行指示部11は、読み出したビームID最大値に一致する数のビームサーチ指示信号であって、それぞれに含まれるビームIDが全て異なるビームIDになるように、1からビームID最大値までの間のビームIDを1つずつ含んだビームサーチ指示信号を生成する。ビームサーチ実行指示部11は、生成したビームサーチ指示信号の各々に対して、全ビームサーチ要求信号に含まれている分散アンテナIDを書き込む。
【0046】
例えば、ビームサーチ実行指示部11は、分散アンテナIDが「分散アンテナID#1」である全ビームサーチ要求信号を受けた場合、40個のビームサーチ指示信号を生成することになる。より具体的には、ビームサーチ実行指示部11は、「ビームID#1」~「ビームID#40」を生成するので、生成する40個のビームサーチ指示信号の各々には、(「分散アンテナID#1」,「ビームID#1」)、(「分散アンテナID#1」,「ビームID#2」),…,(「分散アンテナID#1」,「ビームID#40」)が含まれることになる。なお、ビームサーチ実行指示部11が生成する「ビームID#1」~「ビームID#40」は、上記したように、分散アンテナ装置30-1の本体装置32-1において、分散アンテナ31-1が形成する40方向のビームの各々に対して、予め固定的に対応付けられている。そのため、ビームサーチ実行指示部11が行うビームIDの生成の処理は、改めて分散アンテナ装置30-1が送信するビームの方向に対して、新たなビームIDを生成して対応付ける処理を行っているのではなく、単に、全方向分のビームIDを生成する処理を行っているだけである。
【0047】
ビームサーチ実行指示部11は、分散アンテナIDと、1つ、または、複数のビームIDとを含む部分ビームサーチ要求信号を受けると、部分ビームサーチ要求信号に含まれているビームIDの数に一致する数のビームサーチ指示信号を生成する。ビームサーチ実行指示部11は、生成したビームサーチ指示信号の各々に含まれているビームIDが全て異なるビームIDになるように、部分ビームサーチ要求信号に含まれているビームIDを1つずつビームサーチ指示信号の各々に書き込む。ビームサーチ実行指示部11は、生成したビームサーチ指示信号の各々に、部分ビームサーチ要求信号に含まれている分散アンテナIDを書き込む。ビームサーチ実行指示部11は、全ビームサーチ要求信号、または、部分ビームサーチ要求信号を受けて生成したビームサーチ指示信号を、予め定められる一定の時間間隔で、生成した順に1つずつディジタル信号処理装置20に出力する。
【0048】
ビーム組合せ履歴生成部13は、ビーム組合せを生成するビーム組合せ生成処理が開始されると、試行周期ごとに、分散アンテナ装置30-1~30-4の全てに全ビームサーチを行わせることにより、分散アンテナ装置30-1~30-4の各々において最良のビームとされたビームを示すビームIDの組合せを示すレコードを生成する。
【0049】
ビーム組合せ履歴記憶部14は、例えば、図4に示すビーム組合せ履歴テーブル140を記憶する。図4に示すように、ビーム組合せ履歴テーブル140は、横軸に「分散アンテナID」に項目を有しており、縦軸に「レコードID」の項目を有している。「分散アンテナID」の項目には、分散アンテナ31-1~31-4の各々に付与されている分散アンテナIDである「分散アンテナID#1」,「分散アンテナID#2」,「分散アンテナID#3」,「分散アンテナID#4」が予め書き込まれる。
【0050】
「レコード」の項目には、試行周期ごとに生成されるレコードに対して付与されるレコードIDであって、それぞれが異なる識別子であるレコードIDが書き込まれる。例えば、「レコードID#1」が初回の試行周期によって生成されたレコードに付与されたレコードIDであり、「レコードID#2」が2回目の試行周期によって生成されたレコードに付与されたレコードIDである。横軸の分散アンテナIDと、縦軸のレコードIDによって特定される要素の各々には、ビームIDを示す情報が書き込まれる。すなわち、「分散アンテナID#1」の「レコード1」の要素の「ビームID#23」は、初回の試行周期において、分散アンテナ装置30-1において最良のビームであるとされたビームを示すビームIDが「ビームID#23」であることを示している。
【0051】
フィードバック信号受信部12は、出力先切替指示信号を受けると、出力先切替指示信号により指定されているビーム組合せ履歴生成部13、候補ビーム検出部15、ビームサーチ実行判定部16のいずれか1つをフィードバック信号の出力先に設定する。フィードバック信号受信部12は、ディジタル信号処理装置20が出力するフィードバック信号を取り込むと、取り込んだフィードバック信号を設定した出力先に出力する。
【0052】
候補ビーム検出部15は、ビームを探索するビーム探索処理が開始されると、分散アンテナ装置30-1~30-4の各々に対して、1台ずつ順に全ビームサーチを行わせる。すなわち、候補ビーム検出部15は、分散アンテナ31-1~31-4の分散アンテナIDを順に1つずつ指定し、指定した1つの分散アンテナIDを含む全ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力する。候補ビーム検出部15は、ビーム探索処理を開始した後に、最初のフィードバック信号を取り込むと、全ビームサーチを停止させ、当該フィードバック信号に含まれている送信元アンテナIDと、ビームIDとによって特定されるビームを検出基準ビームとする。候補ビーム検出部15は、ビーム探索期間において全ビームサーチを行っていない分散アンテナ装置30-1~30-4のビームIDであって、検出基準ビームと共に選択されたことがあるビームのビームIDと、当該ビームIDに対応する分散アンテナIDとをビーム組合せ履歴テーブル140から検出する。ここで、ビーム探索期間とは、例えば、ビーム探索処理の1回分の処理に割り当てられる時間である。ビームの探索の処理は、周期的に行われる処理であり、当該周期をビーム探索周期という。ビーム探索周期の各々において、1回分のビーム探索処理が行われるビーム探索期間と、ビーム探索期間の後に分散アンテナ装置30-1~30-4の分散アンテナ31-1~31-4と、端末装置40の端末アンテナ41-1~41-Mとの間において行われるデータ伝送の期間とが存在する。なお、上記した「ビーム探索期間」、及び、以下に記載する「ビーム探索期間」とは、特に、別の意味があることを言及しない限り、ある1つのビーム探索周期の期間に含まれる1回分のビーム探索期間のことを示すものとする。候補ビーム検出部15は、検出したビームIDを、検出した分散アンテナIDに対応する分散アンテナ装置30-1~30-4における候補ビームを示すビームID(以下、候補ビームIDともいう)とし、検出した分散アンテナIDと候補ビームIDの組合せを検出結果とする。
【0053】
ビームサーチ実行判定部16は、候補ビーム検出部15の検出結果に基づいて、ビーム探索期間において全ビームサーチを行っていない分散アンテナ装置30-1~30-4に対して全ビームサーチを行わせるか否かを判定する。より詳細には、ビームサーチ実行判定部16は、ビーム探索期間において全ビームサーチを行っていない分散アンテナ装置30-1~30-4であって、候補ビーム検出部15の検出結果に候補ビームIDが含まれていない分散アンテナ装置30-1~30-4を、全ビームサーチを行わせる分散アンテナ装置30-1~30-4として判定する。
【0054】
ビームサーチ実行判定部16は、候補ビーム検出部15の検出結果に候補ビームIDが含まれている分散アンテナ装置30-1~30-4に対して、検出結果に含まれている候補ビームIDによる部分ビームサーチを行わせる。すなわち、ビームサーチ実行判定部16は、検出結果に含まれている分散アンテナIDと、候補ビームIDとを含む部分ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力する。ビームサーチ実行判定部16は、部分ビームサーチによるビームを受信した端末装置40が送信するフィードバック信号に含まれている受信電力値と、予め定められる閾値とに基づいて、当該フィードバック信号に含まれている送信元アンテナIDに対応する分散アンテナ装置30-1~30-4に対して、全ビームサーチを行わせるか否かを判定する。ビームサーチ実行判定部16は、全ビームサーチを行わせると判定した場合、判定対象としたフィードバック信号に含まれる送信元アンテナIDを指定する。ビームサーチ実行判定部16は、指定した送信元アンテナIDを含む全ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力する。
【0055】
ビーム組合せ記録部17は、ビーム探索期間において、分散アンテナ装置30-1~30-4の各々において最終的に最良のビームとされたビームのビームIDと、当該ビームIDに対応する送信元アンテナIDとの組合せに基づいて1つのレコードを生成する。ビーム組合せ記録部17は、生成した1つのレコードに新たなレコードIDを付与して、ビーム組合せ履歴テーブル140に書き込む。
【0056】
(第1の実施形態の端末装置の構成)
図5は、端末装置40の構成を示すブロック図である。端末装置40は、M本の端末アンテナ41-1~41-M、アナログ信号送受信部42、ディジタル信号処理部43、ビームサーチ信号受信部44、最良ビーム選択部45及びフィードバック信号生成部46を備える。ここで、Mは、2以上の整数である。端末アンテナ41-1~41-Mと、分散アンテナ装置30-1~30-4の各々が備える分散アンテナ31-1~31-4との間で、分散MIMOによる無線通信が行われる。
【0057】
アナログ信号送受信部42は、ディジタル信号処理部43が出力する送信データのディジタル信号に基づいて搬送波に対して変調を行って無線周波数のアナログ信号を生成する。アナログ信号送受信部42は、生成したアナログ信号を端末アンテナ41-1~41-Mを通じて無線電波により送信する。アナログ信号送受信部42は、端末アンテナ41-1~41-Mが無線電波を受信して出力するアナログ信号を復調してディジタル信号に変換する。アナログ信号送受信部42は、変換したディジタル信号をディジタル信号処理部43に出力する。アナログ信号送受信部42は、端末アンテナ41-1~41-Mで受信したビームの受信電力を測定する。アナログ信号送受信部42は、測定により得られた受信電力値を測定対象のビームに対応するディジタル信号に関連付けてディジタル信号処理部43に出力する。
【0058】
ディジタル信号処理部43は、フィードバック信号生成部46が出力するフィードバック信号のディジタル信号をアナログ信号送受信部42に出力する。ディジタル信号処理部43は、アナログ信号送受信部42が出力するディジタル信号と、当該ディジタル信号に関連付けられている受信電力値とを取り込む。ディジタル信号処理部43は、取り込んだディジタル信号に受信データとして含まれているビームサーチ信号に、取り込んだ受信電力値を関連付けてビームサーチ信号受信部44に出力する。
【0059】
ビームサーチ信号受信部44は、ディジタル信号処理部43が出力するビームサーチ信号と、当該ビームサーチ信号に関連付けられている受信電力値とを取り込む。ビームサーチ信号受信部44は、取り込んだビームサーチ信号に含まれている送信元アンテナID及びビームIDと、取り込んだ受信電力値とを組合せて1組のデータとして内部の記憶領域に書き込んで記憶させる。ビームサーチ信号受信部44は、分散アンテナ装置30-1~30-4のいずれか1つに対して、全てのビームサーチ信号を取り込むと、内部の記憶領域が記憶するデータの中で、ビームサーチ信号を全て取り込んだ分散アンテナ装置30-1~30-4に対応する送信元アンテナIDを含む全てのデータを検出して読み出す。ビームサーチ信号受信部44は、読み出した全てのデータを1セットのデータとして最良ビーム選択部45に出力する。
【0060】
最良ビーム選択部45は、ビームサーチ信号受信部44が出力する1セットのデータを取り込む。最良ビーム選択部45は、取り込んだ1セットのデータの中で最大の受信電力値に対応するデータを選択する。言い換えると、最良ビーム選択部45は、選択した最大の受信電力値に対応するビームIDが示すビームを、送信元アンテナIDに対応する分散アンテナ装置30-1~30-4における最良のビームとして選択していることになる。最良ビーム選択部45は、選択したデータに含まれる送信元アンテナIDと、ビームIDと、受信電力値とをフィードバック信号生成部46に出力する。フィードバック信号生成部46は、最良ビーム選択部45が出力する送信元アンテナIDと、ビームIDと、受信電力値とを含むフィードバック信号を生成する。フィードバック信号生成部46は、生成したフィードバック信号をディジタル信号処理部43に出力する。
【0061】
(第1の実施形態の端末装置による処理)
図6図7を参照しつつ端末装置40による処理について説明する。図6は、端末装置40が、分散アンテナ装置30-1~30-4が送信するビームを受信する際に行われる処理の流れを示すフローチャートである。
【0062】
アナログ信号送受信部42は、分散アンテナ装置30-1~30-4の分散アンテナ31-1~31-4が送信するビームの受信を待機し(ステップSta1)、繰り返し端末アンテナ41-1~41-Mを通じてビームを受信したか否かを判定する(ステップSta2)。アナログ信号送受信部42は、ビームを受信していないと判定した場合(ステップSta2、No)、引き続きステップSta1の処理、すなわちビームの受信を待機する。
【0063】
一方、アナログ信号送受信部42は、ビームを受信したと判定した場合(ステップSta2、Yes)、端末アンテナ41-1~41-Mを通じて受信したビームの受信電力を測定する。アナログ信号送受信部42は、受信したビームをディジタル信号に変換する。アナログ信号送受信部42は、変換により得られたディジタル信号に、測定により得られた受信電力値を関連付けてディジタル信号処理部43に出力する。ディジタル信号処理部43は、アナログ信号送受信部42が出力するディジタル信号と、当該ディジタル信号に関連付けられている受信電力値とを取り込む。ディジタル信号処理部43は、取り込んだディジタル信号から受信データを検出することにより、ディジタル信号に受信データとして含まれているビームサーチ信号を取得する。ディジタル信号処理部43は、取得したビームサーチ信号に、取り込んだ受信電力値を関連付けてビームサーチ信号受信部44に出力する。
【0064】
ビームサーチ信号受信部44は、ディジタル信号処理部43が出力するビームサーチ信号と、ビームサーチ信号に関連付けられている受信電力値とを取り込む。ビームサーチ信号受信部44は、取り込んだビームサーチ信号に含まれている送信元アンテナIDと、ビームIDとを読み出す(ステップSta3)。
【0065】
ビームサーチ信号受信部44は、内部に複数のタイマを生成することができるようになっており、読み出した送信元アンテナIDが、いずれかのタイマに関連付けられているか否かを判定する(ステップSta4)。ビームサーチ信号受信部44は、いずれのタイマにも読み出した送信元アンテナIDが関連付けられていないと判定した場合(ステップSta4、No)、読み出した送信元アンテナIDに関連付けてタイマを1つ生成して起動する。ビームサーチ信号受信部44は、タイマを起動する際、送信するビーム数が最も多い分散アンテナ装置30-1~30-4が全てのビームを送信するのに要する時間をタイマに設定する。なお、当該時間は、予め定められる時間であるものとする(ステップSta5)。
【0066】
一方、ビームサーチ信号受信部44は、いずれかのタイマに読み出した送信元アンテナIDが関連付けられていると判定した場合(ステップSta4、Yes)、または、ステップSta5の処理の後、読み出した送信元アンテナID及びビームIDと、取り込んだ受信電力値とを組合せて1組のデータとし、当該1組のデータを内部の記憶領域に書き込んで記憶させる(ステップSta6)。その後、ステップSta1以降の処理が繰り返し行われる。
【0067】
上記のステップSta4の判定処理について別の言い方をすると、ビームサーチ信号受信部44は、当該判定処理において、取り込んだビームサーチ信号が、分散アンテナ装置30-1~30-4の各々が行う全ビームサーチ、または、部分ビームサーチにおける初回のビームサーチ信号であるか否かを、タイマの起動の有無によって判定していることになる。ビームサーチ信号受信部44が取り込んだビームサーチ信号に含まれている送信元アンテナIDに関連付けられてタイマが生成されていない場合、当該ビームサーチ信号は、初回のビームサーチ信号ということになり、タイマが生成されている場合、当該ビームサーチ信号は、2回目以降のビームサーチ信号ということになる。
【0068】
図7は、ビームサーチ信号受信部44が起動したタイマが満了した際に行われる処理の流れを示すフローチャートである。ビームサーチ信号受信部44は、図6のステップSta5の処理において起動したタイマの満了を待機する。なお、タイマは、計測中の時間が、設定された時間になって満了するとタイマ満了通知信号を出力するようになっているものとする(ステップStb1)。
【0069】
ビームサーチ信号受信部44は、繰り返し、いずれかのタイマからタイマ満了通知を受けたか否かを判定し(ステップStb2)、タイマ満了通知を受けていないと判定した場合(ステップStb2、No)、引き続きステップStb1の処理、すなわちタイマの満了を待機する。一方、ビームサーチ信号受信部44は、いずれかのタイマからタイマ満了通知を受けたと判定した場合(ステップStb2、Yes)、満了したタイマに関連付けられている送信元アンテナIDを取得して当該タイマを消去する。ビームサーチ信号受信部44は、内部の記憶領域に記憶させているデータの中から、取得した送信元アンテナIDを含む全てのデータ、すなわち送信元アンテナIDと、ビームIDと、受信電力値とを組合せたデータを検出して読み出す。ビームサーチ信号受信部44は、読み出した後に内部の記憶領域から読み出したデータを削除する。ビームサーチ信号受信部44は、読み出した全てのデータを1セットのデータとして最良ビーム選択部45に出力する(ステップStb3)。
【0070】
最良ビーム選択部45は、ビームサーチ信号受信部44が出力する1セットのデータを取り込む。最良ビーム選択部45は、取り込んだ1セットのデータの中で最大の受信電力値を含むデータ選択する(ステップStb4)。最良ビーム選択部45は、選択したデータに含まれている送信元アンテナIDと、ビームIDと、受信電力値とをフィードバック信号生成部46に出力する。フィードバック信号生成部46は、最良ビーム選択部45が出力する送信元アンテナIDと、ビームIDと、受信電力値とを取り込み、取り込んだ送信元アンテナIDと、ビームIDと、受信電力値とを含むフィードバック信号を生成する。フィードバック信号生成部46は、生成したフィードバック信号をディジタル信号処理部43に出力する(ステップStb5)。
【0071】
なお、第1の実施形態では、フィードバック信号生成部46は、必ずしも受信電力値をフィードバック信号に含めなくてもよい。フィードバック信号生成部46は、取り込んだ送信元アンテナID及びビームIDのみをを含むフィードバック信号を生成するようにしてもよい。なお、後述される第3,5,7,9の実施形態でも同様に、フィードバック信号生成部46は、必ずしも受信電力値をフィードバック信号に含めなくてもよい。
【0072】
ディジタル信号処理部43は、フィードバック信号生成部46が出力するフィードバック信号を取り込む。ディジタル信号処理部43は、取り込んだフィードバック信号をアナログ信号送受信部42に出力する。アナログ信号送受信部42は、ディジタル信号処理部43が出力するフィードバック信号から無線周波数のアナログ信号を生成する。アナログ信号送受信部42は、生成したアナログ信号を端末アンテナ41-1~41-Mを通じて無線電波により送信する(ステップStb6)。
【0073】
(第1の実施形態の無線通信システムによる処理)
図8は、無線通信システム1が行う処理の全体を示すフローチャートである。通信制御装置10において、例えば、無線通信システム1を運用する運用者の操作を受けて、最初にビーム組合せ履歴テーブル140を生成するため、ビーム組合せ履歴生成部13がビーム組合せ生成処理を行う(ステップS1)。ビーム組合せ履歴生成部13によるビーム組合せ生成処理が終了すると、運用者の操作を受けて、候補ビーム検出部15が、ビーム探索処理を開始する(ステップS2)。ビーム探索処理が終了すると、例えば、ディジタル信号処理装置20に接続する通信装置と、端末装置40との間で、分散アンテナ装置30-1~30-4のビームであって、ビーム探索処理によって選択されたビームを利用したデータ伝送の処理が開始される(ステップS3)。データ伝送の処理の途中で、候補ビーム検出部15は、ビーム探索周期が経過しているか否かを判定するために、一定の間隔で、後述するビーム探索周期タイマが満了しているか否かを繰り返し判定する(ステップS4)。候補ビーム検出部15が、ビーム探索周期タイマが満了していないと判定した場合(ステップS4、No)、データ伝送の処理が継続して行われる。一方、候補ビーム検出部15が、ビーム探索周期タイマが満了していると判定した場合(ステップS4、Yes)、データ伝送の処理を終了させるデータ伝送終了指示信号をディジタル信号処理装置20に出力する。ディジタル信号処理装置20は、データ伝送終了指示信号を受けると、分散アンテナ装置30-1~30-4に対して送信するデータの出力を停止する。これにより、ディジタル信号処理装置20に接続する通信装置と、端末装置40との間で分散アンテナ装置30-1~30-4を介して行われていたデータ伝送の処理が終了することになる。
【0074】
運用者は、通信制御装置10によるビーム探索の処理を停止させるか否かを判断する(ステップS5)。運用者は、通信制御装置10によるビーム探索の処理を停止させないと判断した場合(ステップS5、No)、処理は、ステップS2に進められ、候補ビーム検出部15は、次のビーム探索周期の処理を開始する。一方、運用者は、通信制御装置10によるビーム探索の処理を停止させると判断した場合(ステップS5、Yes)、通信制御装置10を操作して、ビーム探索の処理を停止させる。以下、ステップS1のビーム組合せ生成処理と、ステップS2のビーム探索処理の詳細について説明する。
【0075】
(第1の実施形態のビーム組合せ生成処理)
図9は、図8のステップS1の処理において行われるビーム組合せ生成処理の流れを示すフローチャートである。無線通信システム1の運用者の操作を受けて、通信制御装置10のビーム組合せ履歴生成部13は、ビーム組合せ生成処理の初回の試行周期の処理を開始する。ビーム組合せ履歴生成部13は、ビーム組合せ履歴記憶部14が記憶するビーム組合せ履歴テーブル140の分散アンテナIDの項目に書き込まれている全ての分散アンテナIDを読み出す。ビーム組合せ履歴生成部13は、内部の記憶領域にカウンタiを設けてi=1に初期化する。ここで、iは、1~Nまでの整数値であるが、図1の無線通信システム1は、4台の分散アンテナ装置30-1~30-4を備えており、ビーム組合せ履歴生成部13は、ビーム組合せ履歴テーブル140から「分散アンテナID#1」,「分散アンテナID#2」,「分散アンテナID#3」,「分散アンテナID#4」という4つの分散アンテナIDを読み出すため、以下では、N=4として説明を行う。i番目の分散アンテナ装置を分散アンテナ装置30-iとし、i番目の分散アンテナを分散アンテナ31-iとし、i番目の本体装置を本体装置32-iとして、以下の説明を行う。
【0076】
ビーム組合せ履歴生成部13は、フィードバック信号受信部12に対して、出力先をビーム組合せ履歴生成部13にする出力先切替指示信号を出力する。フィードバック信号受信部12は、ビーム組合せ履歴生成部13から出力先をビーム組合せ履歴生成部13にする出力先切替指示信号を受けると、フィードバック信号の出力先をビーム組合せ履歴生成部13に設定する。
【0077】
ビーム組合せ履歴生成部13は、i番目の分散アンテナ31-iを備える分散アンテナ装置30-iに全ビームサーチを行わせるため、i番目の分散アンテナ31-iに付与されている分散アンテナIDを含む全ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力する。ビーム組合せ履歴生成部13は、全ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力した後、内部に備えるフィードバック信号タイマを起動する。ビーム組合せ履歴生成部13は、フィードバック信号タイマを起動する際、ビーム組合せ履歴生成部13が全ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力してから、送信するビーム数が最も多い分散アンテナ装置30-1~30-4によって行われる全ビームサーチによるフィードバック信号を取得するまでに要する時間をフィードバック信号タイマに設定する。なお、当該時間は、予め定められる時間であり、予めビーム組合せ履歴生成部13に設定される。
【0078】
ビームサーチ実行指示部11は、ビーム組合せ履歴生成部13が出力する全ビームサーチ要求信号を取り込み、取り込んだ全ビーム要求指示信号に含まれているi番目の分散アンテナ31-iの分散アンテナIDを読み出す。ビームサーチ実行指示部11は、内部の記憶領域のビーム数テーブル110から読み出したi番目の分散アンテナ31-iの分散アンテナIDに対応するビームID最大値を読み出す。ここでは、一例として、ビームサーチ実行指示部11は、ビームID最大値として「40」を読み出したとする。
【0079】
ビームサーチ実行指示部11は、読み出したビームID最大値、すなわち「40」に一致する数のビームサーチ指示信号であって、それぞれに含まれるビームIDが全て異なるビームIDになるように、1からビームID最大値までの間のビームIDを1つずつ含んだビームサーチ指示信号を生成する。ビームサーチ実行指示部11は、生成したビームサーチ指示信号の各々に対して、読み出したi番目の分散アンテナ31-iの分散アンテナIDを書き込む。ビームサーチ実行指示部11は、生成した40個のビームサーチ指示信号を予め定められる一定の時間間隔で、生成した順に1つずつディジタル信号処理装置20に出力する。
【0080】
ディジタル信号処理装置20は、ビームサーチ実行指示部11が出力する40個のビームサーチ指示信号を順次取り込む。ディジタル信号処理装置20は、取り込んだビームサーチ指示信号からビームサーチ信号を生成する。ディジタル信号処理装置20は、生成したビームサーチ信号を、生成した順に、ビームサーチ指示信号に含まれている分散アンテナIDに対応するi番目の本体装置32-iに出力する。i番目の本体装置32-iは、ディジタル信号処理装置20が出力するビームサーチ信号を取り込む。i番目の本体装置32-iは、取り込んだビームサーチ信号に含まれているビームIDに対応する方向にビームを形成するようにビームサーチ信号に基づいて搬送波を変調する。i番目の本体装置32-iは、変調により生成したビームサーチ信号を載せた無線周波数のアナログ信号を生成する。i番目の本体装置32-iが、生成した無線周波数のアナログ信号をi番目の分散アンテナ31-iに出力することにより、i番目の分散アンテナ31-iは、ビームサーチ信号に含まれているビームIDの方向に、ビームサーチ信号を載せたビームを送信する(ステップSa1)。
【0081】
端末装置40は、分散アンテナ31-iが送信する全てのビームを受信する。端末装置40は、受信したビームの各々に対して、図6図7を参照して説明した処理を行う。分散アンテナ31-iは、端末装置40が送信するフィードバック信号が載せられた無線電波を受信する。分散アンテナ31-iは、受信した無線電波をアナログ信号として本体装置32-iに出力する。本体装置32-iは、フィードバック信号を含むアナログ信号をディジタル信号に変換してディジタル信号処理装置20に出力する。ディジタル信号処理装置20は、本体装置32-iが出力するディジタル信号に含まれているフィードバック信号を検出して取得する。ディジタル信号処理装置20は、取得したフィードバック信号を通信制御装置10のフィードバック信号受信部12に出力する。フィードバック信号受信部12は、ディジタル信号処理装置20が出力するフィードバック信号を取り込み、取り込んだフィードバック信号を出力先として設定されているビーム組合せ履歴生成部13に出力する。
【0082】
ビーム組合せ履歴生成部13は、フィードバック信号タイマが計測する時間が、フィードバック信号タイマに設定された時間に到達して、フィードバック信号タイマ満了するまでにi番目の分散アンテナ31-iの分散アンテナIDが送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んだか否かを判定する(ステップSa2)。
【0083】
ビーム組合せ履歴生成部13は、フィードバック信号タイマが満了するまでにi番目の分散アンテナ31-iの分散アンテナIDが送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んだと判定した場合(ステップSa2、Yes)、取り込んだフィードバック信号に含まれているビームIDをi番目の分散アンテナ装置30-iにおける最良のビームを示すビームIDとする。ビーム組合せ履歴生成部13は、取り込んだフィードバック信号に含まれている送信元アンテナIDと、ビームIDとを組合せたデータを内部の記憶領域に書き込んで記録する(ステップSa3)。
【0084】
一方、ビーム組合せ履歴生成部13は、フィードバック信号タイマが満了するまでにi番目の分散アンテナ31-iの分散アンテナIDが送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んでいないと判定したとする(ステップSa2、No)。ここで、ビーム組合せ履歴生成部13が、フィードバック信号を取り込めない場合とは、例えば、i番目の分散アンテナ31-iと、端末装置40との間に見通しがなく、i番目の分散アンテナ31-iが送信したビームが、端末装置40に到達しなかった場合、i番目の分散アンテナ31-iが送信したビームが端末装置40に到達したが、端末装置40に到達したビームの受信レベルが、端末装置40の受信感度よりも低いために、端末装置40のアナログ信号送受信部42が復調できず破棄してしまった場合、端末装置40が送信したフィードバック信号を載せた無線電波の受信レベルが、分散アンテナ装置30-iの受信感度よりも低いために、本体装置32-iが復調することができず破棄してしまった場合、端末装置40の内部の処理等による遅延によりフィードバック信号を載せた無線電波の送信が遅延し、フィードバック信号タイマが満了した後に、フィードバック信号受信部12が、ビーム組合せ履歴生成部13にフィードバック信号を出力した場合などが想定される。
【0085】
ビーム組合せ履歴生成部13は、ステップSa3の処理の後、または、ステップSa2の処理において「No」の判定をした後、その時点でのiの値がN(ここでは、N=4)でなければ、iに1を加えた値を新たなiの値として、再びステップSa1~ステップSa3の処理が行われる(ループLa1s~La1e)。ビーム組合せ履歴生成部13は、その時点でのiの値がN(ここでは、N=4)である場合、ループLa1s~La1eの処理を終了する。ビーム組合せ履歴生成部13は、内部の記憶領域に書き込まれているデータを全て読み出し、読み出し後に、全てのデータを内部の記憶領域から削除する。ビーム組合せ履歴生成部13は、読み出した全てのデータに基づいて、分散アンテナ装置30-1~30-4における最良のビームの組合せを示すレコードを生成する(ステップSa4)。
【0086】
ビーム組合せ履歴生成部13は、ビーム組合せ履歴テーブル140に既に記録されているレコードのビームIDの組合せから、生成したレコードに含まれているビームIDの組合せに一致しているレコードの数を検出し、検出した数が、予め定められる所定レコード数-未満であるか否かを判定する(ステップSa5)。ビーム組合せ履歴生成部13は、検出した数が、予め定められる所定レコード数未満であると判定した場合(ステップSa5、No)、ビーム組合せ履歴テーブル140に新たな行を生成する。ビーム組合せ履歴生成部13は、新たなレコードIDを生成する。ビーム組合せ履歴生成部13は、生成した新たなレコードIDを新たな行の「レコードID」の項目に書き込む。ビーム組合せ履歴生成部13は、送信元アンテナIDと、ビームIDとの組合せに基づいて、新たな行における「分散アンテナID#1」,「分散アンテナID#2」,「分散アンテナID#3」,「分散アンテナID#4」の各々の要素に、各々に対応するビームIDを書き込む(ステップSa6)。その後、ビーム組合せ履歴生成部13は、次の試行周期の処理として、再びループLa1s~La1eの処理を行う。
【0087】
一方、ビーム組合せ履歴生成部13は、検出した数が、予め定められる所定レコード数未満でないと判定したとする(ステップSa5、Yes)。この場合、ビーム組合せ生成処理の間に、セル100内を端末装置40が移動した範囲内で、分散アンテナ装置30-1~30-4における最良のビームの組合せのパターンが十分に得られているとみなすことができる。そのため、ビーム組合せ履歴生成部13は、処理を終了する。なお、ビーム組合せ履歴生成部13は、処理を終了する前に、ビーム組合せ履歴テーブル140に記憶されているビームIDの組合せとして同一のレコードが複数存在する場合、いずれか1つのレコードを残して、他のレコードを削除するようにしてもよい。また、ビーム組合せ生成処理において、分散アンテナ装置30-1~30-4における最良のビームの組合せのパターンが十分に得られていなくてもよい場合、ビーム組合せ履歴生成部13は、ステップSa5の判定処理に替えて、ビーム組合せ履歴テーブル140に記憶されているレコードの数が、予め定められるレコード数に到達するまでは、ステップSa6の処理を行い、予め定められるレコード数に到達すると、図9の処理を終了する判定処理を行うようにしてもよい。このようにすることで、ビーム組合せ履歴テーブル140に記憶されているレコード数がある一定量のレコード数になった状態で、図8のステップS2のビーム探索処理を開始させるようにすることができる。
【0088】
これにより、例えば、ビーム組合せ履歴生成部13が、ループLa1s~La1eの処理をM回繰り返し行った場合、すなわち、M回分の試行周期が終わった場合、図4に示すように、ビーム組合せ履歴テーブル140においてM個のレコードが生成されることになる。なお、図4に示すビーム組合せ履歴テーブル140において「分散アンテナID#3」の「レコードID#2」,「レコードID#4」,「レコードID#6」には、ビームIDが書き込まれていない。これは、「レコードID#2」,「レコードID#4」,「レコードID#6」の試行周期において、上記したビーム組合せ履歴生成部13がフィードバック信号を取り込めない場合のいずれかの事象が発生したことにより、ビーム組合せ履歴生成部13が、「分散アンテナID#3」に対応する分散アンテナ装置30-3が行った全ビームサーチによるフィードバック信号を取得することができなかったことを示している。
【0089】
(第1の実施形態のビーム探索処理)
図10は、図8のステップS2の処理において行われるビーム探索処理の流れを示すフローチャートである。図8に示すビーム探索処理が開始される前提として、ビーム組合せ履歴記憶部14に、図4に示すビーム組合せ履歴テーブル140が生成されているものとする。
【0090】
無線通信システム1の運用者の操作を受けて、通信制御装置10の候補ビーム検出部15は、ビーム探索処理を開始する。候補ビーム検出部15は、内部に備えるビーム探索周期タイマを起動する。候補ビーム検出部15は、ビーム探索周期タイマを起動する際に、予め定められる1つのビーム探索周期の期間の長さを示す時間を設定する。
【0091】
候補ビーム検出部15は、ビーム組合せ履歴記憶部14が記憶するビーム組合せ履歴テーブル140の分散アンテナIDの項目に書き込まれている全ての分散アンテナIDを読み出す。候補ビーム検出部15は、内部の記憶領域にカウンタiを設けてi=1に初期化する。ここで、iは、1~Nまでの整数値であるが、図1の無線通信システム1は、4台の分散アンテナ装置30-1~30-4を備えており、候補ビーム検出部15は、ビーム組合せ履歴テーブル140から「分散アンテナID#1」,「分散アンテナID#2」,「分散アンテナID#3」,「分散アンテナID#4」という4つの分散アンテナIDを読み出すため、以下では、N=4として説明を行う。i番目の分散アンテナ装置を分散アンテナ装置30-iとし、i番目の分散アンテナを分散アンテナ31-iとし、i番目の本体装置を本体装置32-iとして、以下の説明を行う。
【0092】
候補ビーム検出部15は、フィードバック信号受信部12に対して、出力先を候補ビーム検出部15にする出力先切替指示信号を出力する。フィードバック信号受信部12は、候補ビーム検出部15から出力先を候補ビーム検出部15にする出力先切替指示信号を受けると、フィードバック信号の出力先を候補ビーム検出部15に設定する。
【0093】
候補ビーム検出部15は、i=1の場合、以下の処理を行う。すなわち、候補ビーム検出部15は、1番目の分散アンテナ31-1を備える分散アンテナ装置30-1に全ビームサーチを行わせるため、1番目の分散アンテナ31-1に付与されている分散アンテナIDである「分散アンテナID#1」を含む全ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力する。候補ビーム検出部15は、全ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力した後、内部に備えるフィードバック信号タイマを起動する。候補ビーム検出部15は、フィードバック信号タイマを起動する際に、図9のステップSa1の処理において、ビーム組合せ履歴生成部13がフィードバック信号タイマに設定したのと同一の時間を設定する。なお、当該時間は、予め定められる時間であり、予め候補ビーム検出部15に設定される。ビームサーチ実行指示部11が、候補ビーム検出部15が出力する全ビームサーチ要求信号を取り込むと、その後、図9のステップSa1の処理において、ビームサーチ実行指示部11が全ビームサーチ要求信号を取り込んだ後の処理が、i=1として、ビームサーチ実行指示部11、ディジタル信号処理装置20、本体装置32-1、分散アンテナ31-1及び端末装置40によって行われる(i=1の場合のステップSb1)。
【0094】
候補ビーム検出部15は、フィードバック信号タイマが満了するまでに1番目の分散アンテナ31-1の分散アンテナIDである「分散アンテナID#1」が送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んだか否かを判定する(i=1の場合のステップSb2)。
【0095】
ここでは、上記したビーム組合せ履歴生成部13がフィードバック信号を取り込めない場合のいずれかの事象が発生したとする。この場合、候補ビーム検出部15は、フィードバック信号タイマが満了するまでに1番目の分散アンテナ31-1の分散アンテナIDである「分散アンテナID#1」が送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んでいないと判定する(ステップSb2、No)。候補ビーム検出部15は、その時点でのiの値がN(ここでは、N=4)でなければ、iに1を加えた値を新たなiの値とし、再びステップSb1,Sb2の処理が行われる(ループLb1s~Lb1e)。ここでは、その時点でのiの値は「1」であるため、候補ビーム検出部15は、「2」を新たなiの値とする。
【0096】
候補ビーム検出部15は、i=2の場合、ループLb1s~Lb1eの2回目の処理として、以下の処理を行う。すなわち、候補ビーム検出部15は、2番目の分散アンテナ31-2を備える分散アンテナ装置30-2に全ビームサーチを行わせるため、2番目の分散アンテナ31-2に付与されている分散アンテナIDである「分散アンテナID#2」を含む全ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力する。候補ビーム検出部15は、全ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力した後、内部に備えるフィードバック信号タイマを起動する。候補ビーム検出部15は、フィードバック信号タイマを起動する際に、図9のステップSa1の処理において、ビーム組合せ履歴生成部13がフィードバック信号タイマに設定したのと同一の時間を設定する。ビームサーチ実行指示部11が、候補ビーム検出部15が出力する全ビームサーチ要求信号を取り込むと、その後、図9のステップSa1の処理において、ビームサーチ実行指示部11が全ビームサーチ要求信号を取り込んだ後の処理が、i=2として、ビームサーチ実行指示部11、ディジタル信号処理装置20、本体装置32-2、分散アンテナ31-2及び端末装置40によって行われる(i=2の場合のステップSb1)。
【0097】
候補ビーム検出部15は、フィードバック信号タイマが満了するまでに2番目の分散アンテナ31-2の分散アンテナIDである「分散アンテナID#2」が送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んだか否かを判定する(i=2の場合のステップSb2)。ここでは、上記したビーム組合せ履歴生成部13がフィードバック信号を取り込めない場合のいずれかの事象が発生せず、フィードバック信号受信部12が候補ビーム検出部15にフィードバック信号を出力したとする。この場合、候補ビーム検出部15は、フィードバック信号タイマが満了するまでに2番目の分散アンテナ31-2の分散アンテナIDである「分散アンテナID#2」が送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んだと判定する(i=2の場合のステップSb2、Yes)。
【0098】
候補ビーム検出部15は、ループLb1s~Lb1eの処理を抜けて、取り込んだフィードバック信号に含まれているビームIDを2番目の分散アンテナ装置30-2における最良のビームを示すビームIDとする。候補ビーム検出部15は、当該ビームIDと、フィードバック信号に含まれている送信元アンテナIDである「分散アンテナID#2」とによって特定されるビームを検出基準ビームとする。ここでは、候補ビーム検出部15が取り込んだフィードバック信号に含まれているビームIDは、「ビームID#33」であるとする。
【0099】
候補ビーム検出部15は、フィードバック信号に含まれている送信元アンテナIDと、ビームIDと、受信電力値とを組合せて1組のデータとし、当該1組のデータをビーム組合せ記録部17に出力する。ビーム組合せ記録部17は、候補ビーム検出部15が出力する1組のデータを取り込む。候補ビーム検出部15は、フィードバック信号受信部12に対して、出力先をビームサーチ実行判定部16にする出力先切替指示信号を出力する。フィードバック信号受信部12は、候補ビーム検出部15から出力先をビームサーチ実行判定部16にする出力先切替指示信号を受けると、フィードバック信号の出力先をビームサーチ実行判定部16に設定する(ステップSb3)。
【0100】
上記のステップSb2,Sb3の処理について別の言い方をすると、候補ビーム検出部15は、全ての分散アンテナ装置30-1~30-4に対して順に全ビームサーチを行わせる処理を行い、その処理の途中で、1つのフィードバック信号を取り込むと、ループLb1s~Lb1eの処理を終了し、取り込んだフィードバック信号に含まれている送信元アンテナIDと、ビームIDとによって特定されるビームを検出基準ビームとしていることになる。
【0101】
この時点で、ビーム探索期間において、全ビームサーチを行っていないのは、分散アンテナ装置30-3,30-4の2台になる。仮に、無線通信システム1が、N台の分散アンテナ装置30-1~30-Nを備えている場合、ループLb1s~Lb1eを抜けた時点でのiの値と、Nの値とを用いて、全ビームサーチを行っていない分散アンテナ装置30-1~30-Nの台数は、N-iで表されることになる。候補ビーム検出部15は、内部の記憶領域にカウンタkを設けてk=i+1に初期化する。kは、(i+1)~Nまでの整数値であり、ここでは、kは、「3」,「4」の値を取る。
【0102】
候補ビーム検出部15は、k=3の場合、以下の処理を行う。すなわち、候補ビーム検出部15は、3番目の分散アンテナ装置30-3のビームであって、検出基準ビームと共に選択されたことがあるビームを候補ビームとしてビーム組合せ履歴テーブル140から検出する。ここで、検出基準ビームは、「分散アンテナID#2」の「ビームID#33」によって特定されるビームである。ビーム組合せ履歴テーブル140において、検出基準ビームに対応する「分散アンテナID#2」の「ビームID#33」は、「レコードID#2」,「レコードID#4」,「レコードID#6」に含まれているが、「レコードID#2」,「レコードID#4」,「レコードID#6」の「分散アンテナID#3」の項目は、空欄になっている。そのため、候補ビーム検出部15は、3番目の分散アンテナ装置30-3のビームであって、検出基準ビームと共に選択されたことがある候補ビームを示す候補ビームIDは存在しないことを検出結果とする。候補ビーム検出部15は、「分散アンテナID#3」のみを含む検出結果を示すデータを生成する(k=3の場合のステップSb4)。
【0103】
候補ビーム検出部15は、「分散アンテナID#3」のみを含む検出結果を示すデータをビームサーチ実行判定部16に出力する(k=3の場合のステップSb5)。ビームサーチ実行判定部16は、候補ビーム検出部15から検出結果を示すデータを受けると、図11に示す全ビームサーチ実行判定の処理のサブルーチンを開始する(k=3の場合のステップSb6)。
【0104】
ビームサーチ実行判定部16は、候補ビーム検出部15が出力する検出結果を示すデータを取り込む(k=3の場合のステップSc1)。ビームサーチ実行判定部16は、取り込んだ検出結果を示すデータに候補ビームIDが含まれているか否かを判定する(k=3の場合のステップSc2)。ここでは、検出結果を示すデータに候補ビームIDは含まれていないため、ビームサーチ実行判定部16は、取り込んだ検出結果を示すデータに候補ビームIDが含まれていないと判定する(k=3の場合のステップSc2、No)。
【0105】
以下、ステップSc3~ステップSc6の処理について説明する。ビームサーチ実行判定部16は、検出結果を示すデータに含まれている「分散アンテナID#k」を読み出し、読み出した「分散アンテナID#k」に基づいて、k番目の分散アンテナ31-kを備える分散アンテナ装置30-kに全ビームサーチを行わせるため、「分散アンテナID#k」を含む全ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力する。ビームサーチ実行判定部16は、全ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力した後、内部に備えるフィードバック信号タイマを起動する。ビームサーチ実行判定部16は、フィードバック信号タイマを起動する際に、図9のステップSa1の処理において、ビーム組合せ履歴生成部13がフィードバック信号タイマに設定したのと同一の時間を設定する。なお、当該時間は、予め定められる時間であり、予めビームサーチ実行判定部16に設定される。ビームサーチ実行指示部11が、ビームサーチ実行判定部16が出力する全ビームサーチ要求信号を取り込むと、その後、図9のステップSa1の処理において、ビームサーチ実行指示部11が全ビームサーチ要求信号を取り込んだ後の処理が、i=kとして、ビームサーチ実行指示部11、ディジタル信号処理装置20、本体装置32-k、分散アンテナ31-k及び端末装置40によって行われる(ステップSc3)。
【0106】
ビームサーチ実行判定部16は、フィードバック信号タイマが満了するまでにk番目の分散アンテナ31-kの分散アンテナIDである「分散アンテナID#k」が送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んだか否かを判定する(ステップSc4)。
【0107】
例えば、上記したビーム組合せ履歴生成部13がフィードバック信号を取り込めない場合のいずれかの事象が発生せず、フィードバック信号受信部12がビームサーチ実行判定部16にフィードバック信号を出力したとする。この場合、ビームサーチ実行判定部16は、フィードバック信号タイマが満了するまでにk番目の分散アンテナ31-kの分散アンテナIDである「分散アンテナID#k」が送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んだと判定する(ステップSc4、Yes)。ビームサーチ実行判定部16は、フィードバック信号に含まれているビームIDをk番目の分散アンテナ装置30-kにおける最良のビームを示すビームIDとする。ビームサーチ実行判定部16は、フィードバック信号に含まれている送信元アンテナIDと、ビームIDと、受信電力値とを組合せて1組のデータとし、当該1組のデータをビーム組合せ記録部17に出力する。ビーム組合せ記録部17は、ビームサーチ実行判定部16が出力する1組のデータを取り込む。(ステップSc5)。
【0108】
これに対して、上記したビーム組合せ履歴生成部13がフィードバック信号を取り込めない場合のいずれかの事象が発生したとする。この場合、ビームサーチ実行判定部16は、フィードバック信号タイマが満了するまでにk番目の分散アンテナ31-kの分散アンテナIDである「分散アンテナID#k」が送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んでいないと判定する(ステップSc4、No)。
【0109】
ビームサーチ実行判定部16は、ステップSc5の処理の後、または、ステップSc4の処理において「No」の判定をした後、k番目の分散アンテナ装置30-kに対する処理が終了したことを示す終了通知信号であって、カウンタkの値を含む終了通知信号を候補ビーム検出部15に出力して(ステップSc6)、サブルーチンの処理を終了する。
【0110】
図10に戻り、候補ビーム検出部15は、ビームサーチ実行判定部16が出力する終了通知信号を取り込むと、その時点でのkの値がN(ここでは、N=4)でなければ、kに1を加えた値を新たなkの値として、再びステップSb4~ステップSb6の処理が行われる(ループLb2s~Lb2e)。ここでは、その時点でのkの値は「3」であるため、候補ビーム検出部15は、「4」を新たなkの値とする。
【0111】
候補ビーム検出部15は、k=4の場合、以下の処理を行う。すなわち、候補ビーム検出部15は、4番目の分散アンテナ装置30-4のビームであって、検出基準ビームと共に選択されたことがあるビームのビームIDをビーム組合せ履歴テーブル140から検出する。ここで、検出基準ビームは、「分散アンテナID#2」の「ビームID#33」によって特定されるビームである。ビーム組合せ履歴テーブル140において、検出基準ビームに対応する「分散アンテナID#2」の「ビームID#33」は、「レコードID#2」,「レコードID#4」,「レコードID#6」に含まれている。「レコードID#2」,「レコードID#4」,「レコードID#6」の「分散アンテナID#4」の項目には、「ビームID#15」,「ビームID#16」,「ビームID#15」が書き込まれている。
【0112】
したがって、候補ビーム検出部15は、4番目の分散アンテナ装置30-4のビームであって、検出基準ビームと共に選択されたことがあるビームのビームIDとして「ビームID#15」と「ビームID#16」とをビーム組合せ履歴テーブル140から検出する。候補ビーム検出部15は、「ビームID#15」と「ビームID#16」とを「分散アンテナID#4」に対応する分散アンテナ装置30-4の候補ビームを示す候補ビームIDとする。候補ビーム検出部15は、「分散アンテナID#4」と、候補ビームIDである「ビームID#15」と、「ビームID#16」とを含む検出結果を示すデータを生成する(k=4の場合のステップSb4)。候補ビーム検出部15は、生成した検出結果を示すデータをビームサーチ実行判定部16に出力する(k=4の場合のステップSb5)。ビームサーチ実行判定部16は、候補ビーム検出部15から検出結果を示すデータを受けると、図11に示す全ビームサーチ実行判定の処理のサブルーチンを開始する(k=4の場合のステップSb6)。
【0113】
ビームサーチ実行判定部16は、候補ビーム検出部15が出力する検出結果を示すデータを取り込む(k=4の場合のステップSc1)。ビームサーチ実行判定部16は、取り込んだ検出結果を示すデータに候補ビームIDが含まれているか否かを判定する(k=4の場合のステップSc2)。ここでは、検出結果を示すデータに「ビームID#15」と、「ビームID#16」とが含まれているため、ビームサーチ実行判定部16は、取り込んだ検出結果を示すデータに候補ビームIDが含まれていると判定する(k=4の場合のステップSc2、Yes)。
【0114】
ビームサーチ実行判定部16は、4番目の分散アンテナ31-4を備える分散アンテナ装置30-4に、候補ビームIDに対する部分ビームサーチを行わせるため、「分散アンテナID#4」と、「ビームID#15」と、「ビームID#16」とを含む部分ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力する。ビームサーチ実行判定部16は、部分ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力した後、内部に備えるフィードバック信号タイマを起動する。ビームサーチ実行判定部16は、フィードバック信号タイマを起動する際に、図9のステップSa1の処理において、ビーム組合せ履歴生成部13がフィードバック信号タイマに設定したのと同一の時間を設定する。
【0115】
ビームサーチ実行指示部11は、ビームサーチ実行判定部16が出力する部分ビームサーチ要求信号を取り込み、取り込んだ部分ビーム要求指示信号に含まれている「分散アンテナID#4」と、「ビームID#15」と、「ビームID#16」とを読み出す。ビームサーチ実行指示部11は、「分散アンテナID#4」と、「ビームID#15」とを含むビームサーチ指示信号と、「分散アンテナID#4」と、「ビームID#16」とを含むビームサーチ指示信号とを生成する。ビームサーチ実行指示部11は、生成した2個のビームサーチ指示信号を予め定められる一定の時間間隔で、生成した順に1つずつディジタル信号処理装置20に出力する。ディジタル信号処理装置20は、ビームサーチ実行指示部11が出力する2個のビームサーチ指示信号を順次取り込む。その後、図9のステップSa1の処理において、ディジタル信号処理装置20がビームサーチ指示信号を取り込んだ後の処理が、i=4として、ディジタル信号処理装置20、本体装置32-4、分散アンテナ31-4及び端末装置40によって行われる(k=4の場合のステップSc7)。
【0116】
ビームサーチ実行判定部16は、フィードバック信号タイマが満了するまでに4番目の分散アンテナ31-4の分散アンテナIDである「分散アンテナID#4」が送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んだか否かを判定する(ステップSc8)。
【0117】
例えば、上記したビーム組合せ履歴生成部13がフィードバック信号を取り込めない場合のいずれかの事象が発生したとする。この場合、ビームサーチ実行判定部16は、フィードバック信号タイマが満了するまでに4番目の分散アンテナ31-4の分散アンテナIDである「分散アンテナID#4」が送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んでいないと判定し(k=4の場合のステップSc8、No)、処理をステップSc3に進める。
【0118】
これに対して、上記したビーム組合せ履歴生成部13がフィードバック信号を取り込めない場合のいずれかの事象が発生せず、フィードバック信号受信部12がビームサーチ実行判定部16にフィードバック信号を出力したとする。この場合、ビームサーチ実行判定部16は、フィードバック信号タイマが満了するまでに4番目の分散アンテナ31-4の分散アンテナIDである「分散アンテナID#4」が送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んだと判定する(k=4の場合のステップSc8、Yes)。
【0119】
この場合、ビームサーチ実行判定部16は、フィードバック信号に含まれている受信電力値が、予め定められる閾値を超えているか否かを判定する(k=4の場合のステップSc9)。ビームサーチ実行判定部16は、フィードバック信号に含まれている受信電力値が、予め定められる閾値を超えていないと判定した場合(k=4の場合のステップSc9、No)、処理をステップSc3に進める。一方、ビームサーチ実行判定部16は、フィードバック信号に含まれている受信電力値が、予め定められる閾値を超えていると判定した場合(k=4の場合のステップSc9、Yes)、処理をステップSc5に進める。
【0120】
上記のステップSc7,Sc8,Sc9の処理について別の言い方をすると、ビームサーチ実行判定部16は、「分散アンテナID#4」に対応する分散アンテナ装置30-4に「ビームID#15」に対応するビームと、「ビームID#16」に対応するビームとを送信させる部分ビームサーチを行わせることになる。当該部分ビームサーチによるフィードバック信号が得られなかった場合、ビームサーチ実行判定部16は、処理をステップSc3に進めて「分散アンテナID#4」に対応する分散アンテナ装置30-4に全ビームサーチを行わせて、分散アンテナ装置30-4に対する最良のビームを再度探索することになる。また、この場合における全ビームサーチでは、ビームサーチ実行判定部16は、「ビームID#15」に対応するビーム及び「ビームID#16」に対応するビーム以外のビームのみを探索することになる。
【0121】
そして、ビームサーチ実行判定部16は、ステップSc4においてフィードバック信号タイマが満了するまでに「分散アンテナID#4」が送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んだ場合、処理をステップSc5に進めることにより、フィードバック信号に含まれているビームIDを、ビーム組合せ履歴テーブル140に追加する対象のデータとする。
【0122】
これに対して、当該部分ビームサーチによるフィードバック信号が得られた場合、フィードバック信号に含まれる受信電力値、つまり、端末装置40において最良のビームとして選択されたビームの受信電力値が、閾値を超えていないときには、ビームサーチ実行判定部16は、フィードバック信号によって示されたビームは通常運用に利用することができない適切でないビームであると判定していることになる。そのため、ビームサーチ実行判定部16は、処理をステップSc3に進めて「分散アンテナID#4」に対応する分散アンテナ装置30-4に全ビームサーチを行わせて、分散アンテナ装置30-4に対する最良のビームを再度探索することになる。また、この場合における全ビームサーチでは、ビームサーチ実行判定部16は、「ビームID#15」に対応するビーム及び「ビームID#16」に対応するビーム以外のビームのみを探索することになる。
【0123】
そして、ビームサーチ実行判定部16は、ステップSc4においてフィードバック信号タイマが満了するまでに「分散アンテナID#4」が送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んだ場合、処理をステップSc5に進めることにより、フィードバック信号に含まれているビームIDを、ビーム組合せ履歴テーブル140に追加する対象のデータとする。
【0124】
一方、フィードバック信号に含まれる受信電力値が、閾値を超えているときには、ビームサーチ実行判定部16は、処理をステップSc5に進めて、当該ビームを分散アンテナ装置30-4における最良のビームであると判定していることになる。この場合、ビームサーチ実行判定部16は、分散アンテナ装置30-4について全ビームサーチを行うことなく、当該ビームを通常運用に利用することができる適切であるビームとすることができるので、ビームの探索数を削減することができていることになる。
【0125】
図10に戻り、候補ビーム検出部15は、ビームサーチ実行判定部16が出力する終了通知信号を取り込むと、その時点でのkの値がN(ここでは、N=4)になっていれば、ループLb2s~Lb2eの処理を終了して、処理をステップSb7に進める。
【0126】
ビーム組合せ記録部17は、ステップSb3の処理及びステップSc5の処理において取り込んだ1組のデータ、すなわち送信元アンテナIDと、ビームIDと、受信電力値とを組合せたデータから受信電力値を除いた、残りのデータに基づいて、ビーム組合せ履歴テーブル140に1つのレコードを生成する。すなわち、ビーム組合せ記録部17は、ビーム組合せ履歴テーブル140に新たな行を生成することで、新たなレコードIDとして「レコードID#M+1」を生成する。ビーム組合せ記録部17は、生成した新たな行の「レコードID」の項目に、生成した新たなレコードIDである「レコードID#M+1」を書き込む。ビーム組合せ記録部17は、送信元アンテナIDと、ビームIDとの組合せに基づいて、「レコードID#M+1」の行における「分散アンテナID#1」,「分散アンテナID#2」,「分散アンテナID#3」,「分散アンテナID#4」の各々の要素に、各々に対応するビームIDを書き込む(ステップSb7)。
【0127】
上記の第1の実施形態の無線通信システム1において、候補ビーム検出部15は、端末装置40との無線通信に用いるビームを探索するビーム探索期間において、複数の分散アンテナ31-1~31-4の各々に対して、送信可能な全ての方向にビームを送信して行う全ビームサーチを行わせ、全ビームサーチによるビームの中で最良のビームを示すビーム識別子を1つ取得した場合、全ビームサーチを停止させ、取得したビーム識別子と、当該ビーム識別子が示すビームを送信した分散アンテナ31-1~31-4を示す情報とによって特定されるビームを検出基準ビームとし、ビーム探索期間において全ビームサーチを行っていない分散アンテナ31-1~31-4のビーム識別子であって検出基準ビームと共に選択されたことがあるビームのビーム識別子を当該分散アンテナ31-1~31-4に対する候補ビーム識別子としてビーム組合せ履歴記憶部14から検出する。ビームサーチ実行判定部16は、ビーム探索期間において全ビームサーチを行っていない分散アンテナ31-1~31-4に対して全ビームサーチを行わせるか否かを、候補ビーム検出部15の検出結果に基づいて判定する。ビーム組合せ記録部17は、ビーム探索期間において分散アンテナの各々において最良のビームとされたビームを示すビーム識別子の組合せを示すレコードを生成する。ビーム組合せ記録部17は、生成したレコードをビーム組合せ履歴記憶部に記録する。これにより、ビーム組合せ履歴生成部13が行うビーム組合せ生成処理において、サービス提供エリア内であるセル100の全体にわたって伝送容量を低下させない程度の間隔で端末装置40を少しずつ移動させてビーム組合せの履歴を示す十分なレコードを生成できていなくても、ビーム探索処理を行う際に、伝送容量を低下させず、かつビーム探索数の削減を行うのに十分な数のレコードを蓄積することを可能にするという効果を奏する。
【0128】
図12を参照しつつ、上記の第1の実施形態のビーム探索処理の内容を整理する。分散アンテナ装置30-1については、i=1の場合のステップSb2の処理において、候補ビーム検出部15は、分散アンテナ装置30-1に行わせた全ビームサーチによりフィードバック信号タイマが満了するまでにフィードバック信号を取得することができていないため、ビームを探索できないということになる。分散アンテナ装置30-2については、i=2の場合のステップSb2の処理において、候補ビーム検出部15は、分散アンテナ装置30-2に行わせた全ビームサーチによりフィードバック信号を取得することができ、取得したフィードバック信号に含まれている「ビームID#33」のビームIDが示すビームを、分散アンテナ装置30-2における最良のビームとして探索することができることになる。
【0129】
分散アンテナ装置30-3については、候補ビーム検出部15は、分散アンテナ装置30-2における最良のビームである「ビームID#33」と共に選択されたことがあるビームのビームIDを、ビーム組合せ履歴テーブル140から検出することができない。そのため、ビームサーチ実行判定部16は、図12(a)に示すように、図11のステップSc3の処理に進めて、全ビームサーチを分散アンテナ装置30-3に行わせるようにしている。ビームサーチ実行判定部16が、分散アンテナ装置30-3による全ビームサーチによりフィードバック信号を取得できていれば、分散アンテナ装置30-3における最良のビームを探索できることになり、フィードバック信号を取得できていなければ、分散アンテナ装置30-3における最良のビームを探索できないことになる。
【0130】
分散アンテナ装置30-4については、候補ビーム検出部15は、分散アンテナ装置30-2における最良のビームである「ビームID#33」と共に選択されたことがあるビームのビームIDとして、ビーム組合せ履歴テーブル140から「ビームID#15」と「ビームID#16」とを検出することができている。そのため、ビームサーチ実行判定部16は、図12(b)に示すように、図11のステップSc7において「ビームID#15」と「ビームID#16」とが示すビームを候補ビームとして部分ビームサーチを分散アンテナ装置30-4に行わせるようにしている。ビームサーチ実行判定部16が、分散アンテナ装置30-4による部分ビームサーチによりフィードバック信号を取得しており、更に取得したフィードバック信号に含まれる受信電力値が、予め定められる閾値を超えていれば、当該フィードバック信号に含まれるビームIDを分散アンテナ装置30-4における最良のビームとして探索できることになる。これに対して、ビームサーチ実行判定部16が、分散アンテナ装置30-4による部分ビームサーチによりフィードバック信号が得られていない場合や、フィードバック信号が得られている場合に当該フィードバック信号に含まれる受信電力値が、予め定められる閾値を超えていなければ、ビームサーチ実行判定部16は、図11のステップSc3の処理に進めて、全ビームサーチを分散アンテナ装置30-4に行わせるようにしている。ビームサーチ実行判定部16が、分散アンテナ装置30-4による全ビームサーチによりフィードバック信号を取得できれば、分散アンテナ装置30-4における最良のビームを探索できることになり、フィードバック信号が取得できなければ、分散アンテナ装置30-4における最良のビームを探索できないことになる。
【0131】
したがって、図10のステップSb1,Sb2の処理及び図11のステップSc3,Sc4の処理において行われる全ビームサーチの処理は、ビーム組合せ履歴生成部13によるビーム組合せ生成処理によって十分な数のレコードがビーム組合せ履歴テーブル140に記録されていない場合に、レコードの不足分をカバーする処理ということができる。これに対して、図11のステップSc7~ステップSc9の処理において行われる部分ビームサーチの処理は、ビーム探索数を削減しつつビームを探索する処理であるが、ビーム組合せ履歴テーブル140に十分な数のレコードが記録されていない場合、候補ビームを絞り込んだ際に、絞り込んだ候補ビームに最良となるビームが含まれず、伝送容量が低下してしまうこともある。そのような場合に、ステップSc3に処理を進めて全ビームサーチを行わせることで、新たに最良のビームを選択する。これにより、ビーム組合せ履歴テーブル140に十分な数のレコードがなくても、ビーム探索の処理を行う際に、伝送容量を低下させず、かつビーム探索数の削減を行うのに十分な数のレコードを蓄積することが可能になる。
【0132】
(第2の実施形態)
図13は、第2の実施形態における通信制御装置10aの構成を示すブロック図である。通信制御装置10aは、第1の実施形態の通信制御装置10に替えて用いられる装置であり、以下、説明の便宜上、通信制御装置10に替えて通信制御装置10aを備える無線通信システム1を無線通信システム1aという。通信制御装置10aにおいて、第1の実施形態の通信制御装置10と同一の構成については、同一の符号を付し、以下、異なる構成について説明する。
【0133】
通信制御装置10aは、ビームサーチ実行指示部11、フィードバック信号受信部12、ビーム組合せ履歴生成部13a、ビーム組合せ履歴記憶部14a、候補ビーム検出部15a、ビームサーチ実行判定部16a及びビーム組合せ記録部17aを備える。
【0134】
ビーム組合せ履歴記憶部14aは、図14に示すビーム組合せ履歴テーブル140aを記憶する。ビーム組合せ履歴テーブル140aは、図4に示した第1の実施形態のビーム組合せ履歴テーブル140と、要素に書き込まれるデータが異なる点以外については、同一のデータ形式を有する。第1の実施形態のビーム組合せ履歴テーブル140は、要素として、ビームIDのみが書き込まれるデータ構成になっていた。これに対して、第2の実施形態のビーム組合せ履歴テーブル140aは、要素として、ビームIDと、当該ビームIDが示すビームを端末装置40が受信した際に端末装置40が測定した受信電力値とが書き込まれる。なお、受信電力値として、例えば、「dBm」の単位で表される数値が書き込まれる。
【0135】
ビーム組合せ履歴生成部13aは、以下で説明する構成以外の構成は、第1の実施形態のビーム組合せ履歴生成部13と同一の構成を備える。第1の実施形態のビーム組合せ履歴生成部13は、図9のステップSa3の処理において、取り込んだフィードバック信号に含まれている送信元アンテナIDと、ビームIDとを組合せたデータを内部の記憶領域に書き込んで記録するようにしている。これに対して、第2の実施形態のビーム組合せ履歴生成部13aは、図9のステップSa3の処理において、取り込んだフィードバック信号に含まれている受信電力値を加えて、送信元アンテナIDと、ビームIDと、受信電力値とを組合せたデータを内部の記憶領域に書き込んで記録する。
【0136】
第1の実施形態のビーム組合せ履歴生成部13が、図9のステップSa4の処理において生成するレコードには、受信電力値は含まれていない。これに対して、第2の実施形態のビーム組合せ履歴生成部13aは、図9のステップSa4の処理において、送信元アンテナIDと、ビームIDとに受信電力値を加えたレコードを生成する。そのため、ビーム組合せ履歴生成部13aは、ステップSa6の処理において、受信電力値を含むレコードをビーム組合せ履歴テーブル140aに書き込む。その際、ビーム組合せ履歴生成部13aは、レコードに含まれるビームID及び受信電力値を組合せたデータの各々を、ビーム組合せ履歴テーブル140aにおける当該レコードに対して新たに生成した行と、ビームID及び受信電力値を組合せたデータに対応する送信元アンテナIDの列とによって特定される箇所の要素として書き込む。なお、第1の実施形態では、ビーム組合せ履歴生成部13は、処理を終了する前に、ビーム組合せ履歴テーブル140に記憶されているビームIDの組合せが同一のレコードが複数存在する場合、いずれか1つのレコードを残して、他のレコードを削除するようにしてもよいとしたが、第2の実施形態では、ビームIDの組合せが同一であっても、受信電力値が異なる場合があるため、ビーム組合せ履歴テーブル140aに書き込んだレコードを全て残す必要がある。
【0137】
候補ビーム検出部15aは、以下で説明する構成以外の構成は、第1の実施形態の候補ビーム検出部15と同一の構成を備える。候補ビーム検出部15aは、ビーム探索期間において全ビームサーチを行っていない分散アンテナ装置30-1~30-4のビームIDであって、検出基準ビームと共に選択されたことがあるビームのビームIDと、当該ビームIDに対応する分散アンテナIDとをビーム組合せ履歴テーブル140aから検出する際、ビーム組合せ履歴テーブル140aにおいて、検出したビームIDと共に要素として書き込まれている受信電力値を検出する。候補ビーム検出部15aは、検出したビームIDと、検出した受信電力値との組合せに基づいて、ビームIDごとの受信電力値の平均値を算出し、算出した平均値の最大値を、検出した分散アンテナIDに対する平均受信電力値とする。候補ビーム検出部15aは、算出した平均受信電力値を、検出結果を示すデータに含める。
【0138】
ビームサーチ実行判定部16aは、以下で説明する構成以外の構成は、第1の実施形態のビームサーチ実行判定部16と同一の構成を備える。ビームサーチ実行判定部16aは、候補ビーム検出部15が出力する検出結果を示すデータに、候補ビームIDが含まれている場合、以下の処理を行う。すなわち、ビームサーチ実行判定部16aは、検出結果を示すデータに含まれている平均受信電力値を読み出し、読み出した平均受信電力値にマージンを与えた値を、検出結果を示すデータに含まれている分散アンテナIDに対する閾値とする。ここで、平均受信電力値にマージンを与えた値を閾値とするのは、平均受信電力値よりも若干小さい受信電力値を許容するためである。具体的には、ビームサーチ実行判定部16aは、予め算出される受信電力値において生じる誤差の値を所定値とし、平均受信電力値から所定値を減算して得られる減算値を閾値とする。
【0139】
ビームサーチ実行判定部16aは、部分ビームサーチをいずれかの分散アンテナ装置30-1~30-4に行わせた際に取得するフィードバック信号に含まれる送信元アンテナIDに対する閾値を、算出した閾値の中から選択し、選択した閾値と、当該フィードバック信号に含まれる受信電力値とに基づいて、当該フィードバック信号に含まれる送信元アンテナIDに対応する分散アンテナ装置30-1~30-4に全ビームサーチを行わせるか否かを判定する。
【0140】
ビーム組合せ記録部17aは、以下で説明する構成以外の構成は、第1の実施形態のビーム組合せ記録部17と同一の構成を備える。第1の実施形態のビーム組合せ記録部17は、図10のステップSb7の処理において、送信元アンテナIDと、ビームIDと、受信電力値とを組合せたデータから受信電力値を除いた、残りのデータに基づいて1つのレコードを生成していた。これに対して、第2の実施形態のビーム組合せ記録部17aは、図10のステップSb7の処理に対応する図15のステップSd7の処理において、受信電力値を除かずに、送信元アンテナIDと、ビームIDと、受信電力値とを組合せたデータから1つのレコードを生成する。ビーム組合せ記録部17aは、レコードに含まれるビームID及び受信電力値を組合せたデータの各々を、ビーム組合せ履歴テーブル140aにおける当該レコードに対して新たに生成した行と、ビームID及び受信電力値を組合せたデータに対応する送信元アンテナIDの列とによって特定される箇所の要素として書き込む。
【0141】
(第2の実施形態の無線通信システムによる処理)
第1の実施形態と同様に、第2の実施形態の無線通信システム1aにおいても図8に示すステップS1のビーム組合せ生成処理と、ステップS2のビーム探索処理が行われる。ただし、以下に説明する点において、第2の実施形態で行われるビーム組合せ生成処理と、ビーム探索処理とは、第1の実施形態で行われる処理と異なる。
【0142】
(第2の実施形態のビーム組合せ生成処理)
図9に示すビーム組合せ生成処理において、ステップSa3,Sa4,Sa6の処理が上記した処理に置き換えられる他は、第1の実施形態と同一の処理が、ビームサーチ実行指示部11、フィードバック信号受信部12、ディジタル信号処理装置20及び分散アンテナ装置30-1~30-4によって行われ、ビーム組合せ履歴生成部13によって行われていた処理は、ビーム組合せ履歴生成部13aによって行われる。
【0143】
(第2の実施形態のビーム探索処理)
図15は、第2の実施形態のビーム探索処理を示すフローチャートであり、図16は、図15のステップSd6において行われる全ビームサーチ実行判定のサブルーチンの処理を示すフローチャートである。図15において、ステップSd1,Sd2の処理及びステップSd1,Sd2の処理を繰り返すループLd1s~Ld1eの処理、並びにステップSd3の処理は、図10のステップSb1,Sb2の処理及びステップSb1,Sb2の処理を繰り返すループLb1s~Lb1eの処理、並びにステップSb3の処理と同一の処理が、ビームサーチ実行指示部11、フィードバック信号受信部12、ディジタル信号処理装置20、分散アンテナ装置30-1~30-4によって行われ、候補ビーム検出部15によって行われていた処理は、候補ビーム検出部15aによって行われる。ステップSd7の処理は、上記した処理が、ビーム組合せ記録部17aによって行われる。
【0144】
ループLd2s~Ld2eの処理において、k=3の場合は、第1の実施形態と同様に、候補ビーム検出部15aは、ビーム組合せ履歴テーブル140aから「分散アンテナID#3」に対応する候補ビームIDを検出できない。そのため、この場合、候補ビーム検出部15aは、受信電力値も検出できないことになる。したがって、候補ビーム検出部15aは、平均受信電力値を算出することもなく、第1の実施形態のステップSb4の処理と同様に、3番目の分散アンテナ装置30-3のビームであって、検出基準ビームと共に選択されたことがある候補ビームを示す候補ビームIDは存在しないことを検出結果とする。候補ビーム検出部15aは、「分散アンテナID#3」のみを含む検出結果を示すデータを生成する(k=3の場合のステップSd4)。
【0145】
候補ビーム検出部15aは、「分散アンテナID#3」のみを含む検出結果を示すデータをビームサーチ実行判定部16aに出力する(k=3の場合のステップSb5)。ビームサーチ実行判定部16aは、候補ビーム検出部15aから検出結果を示すデータを受けると、図16に示す全ビームサーチ実行判定の処理のサブルーチンを開始する(k=3の場合のステップSd6)。
【0146】
第2の実施形態のビーム探索処理のステップSd6において行われる全ビームサーチ実行判定の処理のサブルーチンについて、図16を参照しつつ説明する。ステップSe1~ステップSe6までの処理は、図11に示したステップSc1~ステップSc6と同一の処理が、ビームサーチ実行指示部11、フィードバック信号受信部12、ディジタル信号処理装置20、分散アンテナ装置30-1~30-4によって行われ、ビームサーチ実行判定部16によって行われていた処理は、ビームサーチ実行判定部16aによって行われる。そのため、k=3の場合、ステップSe2の判定処理で、ビームサーチ実行判定部16aは、「No」と判定し、処理は、ステップSe3に進められるため、その後、第1の実施形態におけるk=3の場合と同一の処理が行われることになる。
【0147】
図15に示すループLd2s~Ld2eの処理において、k=4まで処理が進んだとする。候補ビーム検出部15aは、第1の実施形態と同様に、4番目の分散アンテナ装置30-4のビームであって、検出基準ビームと共に選択されたことがあるビームのビームIDをビーム組合せ履歴テーブル140aから検出する。ここで、検出基準ビームは、「分散アンテナID#2」の「ビームID#33」によって特定されるビームである。ビーム組合せ履歴テーブル140aにおいて、検出基準ビームに対応する「分散アンテナID#2」の「ビームID#33」は、「レコードID#2」,「レコードID#4」,「レコードID#6」に含まれている。「レコードID#2」,「レコードID#4」,「レコードID#6」の「分散アンテナID#4」の項目には、「ビームID#15」,「ビームID#16」,「ビームID#15」が書き込まれている。
【0148】
したがって、候補ビーム検出部15aは、4番目の分散アンテナ装置30-4のビームであって、検出基準ビームと共に選択されたことがあるビームのビームIDとして「ビームID#15」と「ビームID#16」とをビーム組合せ履歴テーブル140から検出する。候補ビーム検出部15aは、「ビームID#15」と「ビームID#16」とを「分散アンテナID#4」に対応する分散アンテナ装置30-4の候補ビームを示す候補ビームIDとする。
【0149】
候補ビーム検出部15aは、更に、「ビームID#15」について、「レコードID#2」の「(受信電力値2-4)」と、「レコードID6」の「(受信電力値6-4)」とを検出し、「ビームID#16」について、「レコードID#4」の「(受信電力値4-4)」を検出する。候補ビーム検出部15aは、「ビームID#15」に対応する「(受信電力値2-4)」と「(受信電力値6-4)」の平均値を算出する。「ビームID#16」については、「(受信電力値4-4)」の1つしかないため、「(受信電力値4-4)」を平均値とする。候補ビーム検出部15aは、「ビームID#15」に対応する平均値及び「ビームID#16」の平均値の中で最大の平均値を「分散アンテナID#4」に対する平均受信電力値とする。候補ビーム検出部15は、「分散アンテナID#4」と、候補ビームIDである「ビームID#15」と、「ビームID#16」と、算出した平均受信電力値とを含む検出結果を示すデータを生成する(k=4の場合のステップSd4)。候補ビーム検出部15aは、生成した検出結果を示すデータをビームサーチ実行判定部16aに出力する(k=4の場合のステップSd5)。
【0150】
続くステップSd6の処理において行われる図16の全ビームサーチ実行判定の処理のサブルーチンのステップSe1の処理において、ビームサーチ実行判定部16aは、候補ビーム検出部15aが出力する検出結果データを取り込み、ステップSe2の処理において、取り込んだ検出結果を示すデータに候補ビームIDが含まれていると判定する(k=4の場合のステップSe2、Yes)。
【0151】
ステップSe7,Se8の処理は、それぞれ図11のステップSc7,Sc8と同一の処理が、ビームサーチ実行指示部11、フィードバック信号受信部12、ディジタル信号処理装置20、分散アンテナ装置30-4によって行われ、ビームサーチ実行判定部16によって行われていた処理は、ビームサーチ実行判定部16aによって行われる。ビームサーチ実行判定部16aは、ステップSe8の判定処理において「Yes」の判定をした場合、検出結果を示すデータに含まれている平均受信電力値を読み出し、読み出した平均受信電力値にマージンを与えて「分散アンテナID#4」に対する閾値を算出する(ステップSe9)。ビームサーチ実行判定部16aは、フィードバック信号に含まれている受信電力値が、フィードバック信号に含まれている送信元アンテナID(ここでは、「分散アンテナID#4」)に対して算出した閾値を超えているか否かを判定する(k=4の場合のステップSe10)。
【0152】
ビームサーチ実行判定部16aは、フィードバック信号に含まれている受信電力値が、当該フィードバック信号に含まれている送信元アンテナIDに対して算出した閾値を超えていると判定した場合(ステップSe10、Yes)、その後、処理をステップSe5の処理に進める。一方、ビームサーチ実行判定部16aは、フィードバック信号に含まれている受信電力値が、当該フィードバック信号に含まれている送信元アンテナIDに対して算出した閾値を超えていないと判定した場合(ステップSe10、No)、その後、処理をステップSe3の処理に進める。
【0153】
これにより、第2の実施形態では、ビームサーチ実行判定部16aが、分散アンテナ装置30-1~30-4のいずれかに部分ビームサーチを行わせると判定した場合、当該部分ビームサーチにより取得したフィードバック信号に含まれる受信電力値が、当該部分ビームサーチの対象の分散アンテナ装置30-1~30-4の過去の平均受信電力値程度の値であれば、当該フィードバック信号に含まれるビームIDが示すビームを、当該フィードバック信号に含まれる送信元アンテナIDに対応する分散アンテナ装置30-1~30-4の最良のビームとして探索できることになる。ビームサーチ実行判定部16aは、当該ビームに関連するデータをビーム組合せ履歴テーブル140aに追加することができることになる。これに対して、ビームサーチ実行判定部16aは、当該部分ビームサーチにより取得したフィードバック信号に含まれる受信電力値が、当該部分ビームサーチの対象の分散アンテナ装置30-1~30-4の過去の平均受信電力値程度の値でなければ、当該フィードバック信号に含まれる送信元アンテナIDに対応する分散アンテナ装置30-1~30-4に対して全ビームサーチを行わせる。ビームサーチ実行判定部16が、当該全ビームサーチによりフィードバック信号を取得できれば、全ビームサーチの対象の分散アンテナ装置30-1~30-4における最良のビームを探索できることになり、フィードバック信号が取得できなければ、全ビームサーチの対象の分散アンテナ装置30-1~30-4における最良のビームを探索できないことになる。したがって、第2の実施形態では、第1の実施形態の通信制御装置10が奏する効果に加えて、部分ビームサーチを行わせる際に、第1の実施形態より正確に最良のビームを探索することができることになる。
【0154】
なお、前述の第1の実施形態では、予め定められる受信電力値の閾値をより高く設定することによって、通信品質の観点において最良ではないビームが選択される可能性をより低くすることができる。しかしながら、この場合、第1の実施形態では、より多くの分散アンテナ装置について全ビームサーチが行われることになるため、ビーム探索数の削減をすることが難しくなる。また、最適な閾値は、端末装置の位置等によっても変化するため、ビーム探索数を削減しつつ最良なビームを選択するための閾値を、一律の値として設定することは困難である。これに対し、第2の実施形態は、ビームの組み合わせごとに閾値を変更することによって実質的に端末装置40の位置ごとに閾値の変更をしていることになり、閾値を適応的に設定するような構成となっている。
【0155】
なお、第2の実施形態では、検出したビームIDごとの受信電力値の平均値が基準として用いられる方法について説明したが、平均値に限られるものではない。例えば、基準として用いられる値は、中央値であってもよいし、最頻値であってもよいし、最大値であってもよいし、あるいは最小値であってもよい。また、これらの値の中でも、最大値、最小値、あるいは平均値が基準として用いられる場合については、同一のビームIDの組合せで毎回算出しておくことで、他のレコードを削除するようにしてもよい。
【0156】
上記の第1の実施形態では、図10に示されるビーム探索処理において、候補ビーム検出部15は、全ての分散アンテナ装置30-1~30-4に対して順に全ビームサーチを行わせる処理を行う。候補ビーム検出部15は、その処理の途中で1つのフィードバック信号を取り込むと、ループLb1s~Lb1eの処理を終了し、取り込んだフィードバック信号に含まれている送信元アンテナIDと、ビームIDとによって特定される最良のビームを検出基準ビームとする。そして、候補ビーム検出部15は、検出基準ビームと共に選択されたことがあるビームを候補ビームとしてビーム組合せ履歴テーブル140から検出する。
【0157】
上記の第2の実施形態でも同様に、図15に示されるビーム探索処理において、候補ビーム検出部15aは、全ての分散アンテナ装置30-1~30-4に対して順に全ビームサーチを行わせる処理を行う。候補ビーム検出部15aは、その処理の途中で1つのフィードバック信号を取り込むと、ループLd1s~Ld1eの処理を終了し、取り込んだフィードバック信号に含まれている送信元アンテナIDと、ビームIDとによって特定される最良のビームを検出基準ビームとする。そして、候補ビーム検出部15aは、検出基準ビームと共に選択されたことがあるビームを候補ビームとしてビーム組合せ履歴テーブル140aから検出する。
【0158】
このように、第1の実施形態及び第2の実施形態では、全ての分散アンテナ装置30-1~30-4に対して順に全ビームサーチを行わせる処理が行われ、検出基準ビームが選択される。そして、検出基準ビームと共に選択されたことがあるビームである候補ビームに対して部分ビームサーチが行われる。そして、部分ビームサーチにおいて、フィードバック信号に含まれている受信電力値が予め定められる閾値を超えていれば、当該フィードバック信号に基づくビームが選択されることになる。
【0159】
しかしながら、このようにして選択されたビームは、あくまで受信電力値が予め定められる閾値を超えているビームであって、通信品質の観点において最良のビームであるとは限らない。そして、受信電力値が閾値を超えているビームが選択される場合には、ビーム探索の対象である分散アンテナ装置について全ビームサーチは行われず、ビーム組合せ履歴テーブルの更新も行われない。そのため、分散アンテナ装置30-1~30-4に対して固定された順序で全ビームサーチが行われた場合には、最良ではないビームの組合せが選択され続けることが生じうる。
【0160】
これに対し、閾値を高く設定することによって、通信品質の観点において最良ではないビームが選択される可能性をより低くすることができる。しかしながら、この場合、より多くの分散アンテナ装置について全ビームサーチが行われることになるため、ビーム探索数の削減をすることが難しくなる。
【0161】
以下に説明する第3の実施形態における無線通信システム1b及び第4の実施形態における無線通信システム1cは、ビーム探索の処理の最初の段階で、分散アンテナ装置30-1~30-4に対して固定された順序で全ビームサーチを行うのではなく、分散アンテナ装置30-1~30-4に対してランダムな順序で全ビームサーチを行う。このような構成を備えることで、以下に説明する第3の実施形態及び第4の実施形態では、最良なビームではないが受信電力値が閾値を超えているビームが部分ビームサーチによって選択されることにより全ビームサーチが行われなかった分散アンテナ装置に対しても、ランダムなタイミングで全ビームサーチが行われることになる。よって、ビーム組合せ履歴テーブルの更新も行われる。これにより、以下に説明する第3の実施形態及び第4の実施形態によれば、ビーム探索数を削減しつつ、最良ではないビームの組合せが固定的に選択され続けることを防ぐことができる。
【0162】
(第3の実施形態)
図17は、第3の実施形態における通信制御装置10bの構成を示すブロック図である。通信制御装置10bは、第1の実施形態の通信制御装置10に替えて用いられる装置であり、以下、説明の便宜上、通信制御装置10に替えて通信制御装置10bを備える無線通信システム1を無線通信システム1bという。通信制御装置10bにおいて、第1の実施形態の通信制御装置10と同一の構成については、同一の符号を付し、以下、異なる構成について説明する。
【0163】
第3の実施形態における無線通信システム1bの構成のうち、第1の実施形態における無線通信システム1の構成と異なる点は、ビーム探索の処理の最初の段階で、固定された順序で複数の分散アンテナ装置による全ビームサーチを行うのではなく、ランダムに分散アンテナ装置を選択して全ビームサーチを行う点である。
【0164】
通信制御装置10bは、ビームサーチ実行指示部11、フィードバック信号受信部12、ビーム組合せ履歴生成部13、ビーム組合せ履歴記憶部14、候補ビーム検出部15b、ビームサーチ実行判定部16及びビーム組合せ記録部17を備える。
【0165】
候補ビーム検出部15bは、ビームを探索するビーム探索処理が開始されると、分散アンテナ装置30-1~30-4の各々に対して、1台ずつランダムな順序で全ビームサーチを行わせる。すなわち、候補ビーム検出部15bは、分散アンテナ31-1~31-4の分散アンテナIDをランダムな順序で1つずつ指定し、指定した1つの分散アンテナIDを含む全ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力する。候補ビーム検出部15bは、ビーム探索処理を開始した後に、最初のフィードバック信号を取り込むと、全ビームサーチを停止させ、当該フィードバック信号に含まれている送信元アンテナIDと、ビームIDとによって特定されるビームを検出基準ビームとする。
【0166】
候補ビーム検出部15bは、ビーム探索期間において全ビームサーチを行っていない分散アンテナ装置30-1~30-4のビームIDであって、検出基準ビームと共に選択されたことがあるビームのビームIDと、当該ビームIDに対応する分散アンテナIDとをビーム組合せ履歴テーブル140から検出する。候補ビーム検出部15bは、検出したビームIDを、検出した分散アンテナIDに対応する分散アンテナ装置30-1~30-4における候補ビームを示す候補ビームIDとし、検出した分散アンテナIDと候補ビームIDの組合せを検出結果とする。
【0167】
(第3の実施形態の無線通信システムによる処理)
第1の実施形態と同様に、第3の実施形態の無線通信システム1bにおいても図8に示すステップS1のビーム組合せ生成処理と、ステップS2のビーム探索処理が行われる。ただし、以下に説明する点において、第3の実施形態で行われるビーム探索処理は、第1の実施形態で行われる処理と異なる。
【0168】
(第3の実施形態のビーム組合せ生成処理)
図9に示す第1の実施形態と同一のビーム組合せ生成処理が、ビームサーチ実行指示部11、フィードバック信号受信部12、ビーム組合せ履歴生成部13、ディジタル信号処理装置20及び分散アンテナ装置30-1~30-4によって行われる。
【0169】
(第3の実施形態のビーム探索処理)
図18は、第3の実施形態のビーム探索処理を示すフローチャートである。図18は、図8のステップS2の処理において行われるビーム探索処理の流れを示すフローチャートである。図8に示すビーム探索処理が開始される前提として、ビーム組合せ履歴記憶部14に、図4に示すビーム組合せ履歴テーブル140が生成されているものとする。
【0170】
図18において、ステップSf1,Sf2の処理及びステップSf1,Sf2の処理を繰り返すループLf1s~Lf1eの処理は、上記した処理が、候補ビーム検出部15bによって行われる。ステップSf3の処理、ステップSf4~ステップSf6の処理、ステップSf4~ステップSf6の処理を繰り返すループLf2s~Lf2eの処理、並びにステップSf7の処理は、図10のステップSb3の処理、ステップSb4~ステップSb6の処理、ステップSb4~ステップSb6の処理を繰り返すループLb2s~Lb2eの処理、並びにステップSb7の処理と同一の処理が、ビームサーチ実行指示部11、フィードバック信号受信部12、ビーム組合せ記録部17、ディジタル信号処理装置20、分散アンテナ装置30-1~30-4によって行われ、候補ビーム検出部15によって行われていた処理は、候補ビーム検出部15bによって行われる。
【0171】
無線通信システム1bの運用者の操作を受けて、通信制御装置10bの候補ビーム検出部15bは、ビーム探索処理を開始する。候補ビーム検出部15bは、内部に備えるビーム探索周期タイマを起動する。候補ビーム検出部15bは、ビーム探索周期タイマを起動する際に、予め定められる1つのビーム探索周期の期間の長さを示す時間を設定する。
【0172】
候補ビーム検出部15bは、ビーム組合せ履歴記憶部14が記憶するビーム組合せ履歴テーブル140の分散アンテナIDの項目に書き込まれている全ての分散アンテナIDを読み出す。候補ビーム検出部15bは、内部の記憶領域に変数iを設ける。ここで、iは、1~Nまでの整数値をとりうる変数であるが、図1の無線通信システム1は、4台の分散アンテナ装置30-1~30-4を備えており、候補ビーム検出部15bは、ビーム組合せ履歴テーブル140から「分散アンテナID#1」,「分散アンテナID#2」,「分散アンテナID#3」,「分散アンテナID#4」という4つの分散アンテナIDを読み出すため、以下では、N=4として説明を行う。i番目の分散アンテナ装置を分散アンテナ装置30-iとし、i番目の分散アンテナを分散アンテナ31-iとし、i番目の本体装置を本体装置32-iとして、以下の説明を行う。
【0173】
候補ビーム検出部15bは、フィードバック信号受信部12に対して、出力先を候補ビーム検出部15bにする出力先切替指示信号を出力する。フィードバック信号受信部12は、候補ビーム検出部15bから出力先を候補ビーム検出部15bにする出力先切替指示信号を受けると、フィードバック信号の出力先を候補ビーム検出部15bに設定する。
【0174】
候補ビーム検出部15bは、変数iの値として1~Nの中からランダムに1つを選択する。候補ビーム検出部15bは、変数iが取りうる値(すなわち、1~N)、及びすでに選択されたことがある値を、内部の記憶領域に書き込んで記録するようにしている。ここでは、例えば、変数iの値として「4」が選択されたとする。i=4の場合、以下の処理を行う。すなわち、候補ビーム検出部15bは、4番目の分散アンテナ31-4を備える分散アンテナ装置30-4に全ビームサーチを行わせるため、4番目の分散アンテナ31-4に付与されている分散アンテナIDである「分散アンテナID#4」を含む全ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力する。
【0175】
候補ビーム検出部15bは、全ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力した後、内部に備えるフィードバック信号タイマを起動する。候補ビーム検出部15bは、フィードバック信号タイマを起動する際に、図9のステップSa1の処理において、ビーム組合せ履歴生成部13がフィードバック信号タイマに設定したのと同一の時間を設定する。なお、当該時間は、予め定められる時間であり、予め候補ビーム検出部15bに設定される。ビームサーチ実行指示部11が、候補ビーム検出部15bが出力する全ビームサーチ要求信号を取り込むと、その後、図9のステップSa1の処理において、ビームサーチ実行指示部11が全ビームサーチ要求信号を取り込んだ後の処理が、i=4として、ビームサーチ実行指示部11、ディジタル信号処理装置20、本体装置32-4、分散アンテナ31-4及び端末装置40によって行われる(i=4の場合のステップSf1)。
【0176】
候補ビーム検出部15bは、フィードバック信号タイマが満了するまでに4番目の分散アンテナ31-4の分散アンテナIDである「分散アンテナID#4」が送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んだか否かを判定する(i=4の場合のステップSf2)。
【0177】
ここでは、上記したビーム組合せ履歴生成部13がフィードバック信号を取り込めない場合のいずれかの事象が発生したとする。この場合、候補ビーム検出部15bは、フィードバック信号タイマが満了するまでに4番目の分散アンテナ31-4の分散アンテナIDである「分散アンテナID#4」が送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んでいないと判定する(ステップSf2、No)。候補ビーム検出部15bは、その時点で分散アンテナの数Nの分だけランダムな順序で変数iの値が選択されていなければ(すなわち、変数iが取りうる全ての値がいずれも選択されたことがある状態となっていなければ)、変数iの値として、1~Nのうちまだ選択されていない値をランダムに1つ選択する。ここでは、例えば、変数iの値として「2」が選択されたとする。そして、再びステップSf1,Sf2の処理が行われる(ループLf1s~Lf1e)。
【0178】
候補ビーム検出部15bは、i=2の場合、ループLf1s~Lf1eの2回目の処理として、以下の処理を行う。すなわち、候補ビーム検出部15bは、2番目の分散アンテナ31-2を備える分散アンテナ装置30-2に全ビームサーチを行わせるため、2番目の分散アンテナ31-2に付与されている分散アンテナIDである「分散アンテナID#2」を含む全ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力する。候補ビーム検出部15bは、全ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力した後、内部に備えるフィードバック信号タイマを起動する。候補ビーム検出部15bは、フィードバック信号タイマを起動する際に、図9のステップSa1の処理において、ビーム組合せ履歴生成部13がフィードバック信号タイマに設定したのと同一の時間を設定する。ビームサーチ実行指示部11が、候補ビーム検出部15bが出力する全ビームサーチ要求信号を取り込むと、その後、図9のステップSa1の処理において、ビームサーチ実行指示部11が全ビームサーチ要求信号を取り込んだ後の処理が、i=2として、ビームサーチ実行指示部11、ディジタル信号処理装置20、本体装置32-2、分散アンテナ31-2及び端末装置40によって行われる(i=2の場合のステップSf1)。
【0179】
候補ビーム検出部15bは、フィードバック信号タイマが満了するまでに2番目の分散アンテナ31-2の分散アンテナIDである「分散アンテナID#2」が送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んだか否かを判定する(i=2の場合のステップSf2)。ここでは、上記したビーム組合せ履歴生成部13がフィードバック信号を取り込めない場合のいずれかの事象が発生せず、フィードバック信号受信部12が候補ビーム検出部15bにフィードバック信号を出力したとする。この場合、候補ビーム検出部15bは、フィードバック信号タイマが満了するまでに2番目の分散アンテナ31-2の分散アンテナIDである「分散アンテナID#2」が送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んだと判定する(i=2の場合のステップSf2、Yes)。
【0180】
候補ビーム検出部15bは、ループLf1s~Lf1eの処理を抜けて、取り込んだフィードバック信号に含まれているビームIDを2番目の分散アンテナ装置30-2における最良のビームを示すビームIDとする。候補ビーム検出部15bは、当該ビームIDと、フィードバック信号に含まれている送信元アンテナIDである「分散アンテナID#2」とによって特定されるビームを検出基準ビームとする。ここでは、候補ビーム検出部15bが取り込んだフィードバック信号に含まれているビームIDは、「ビームID#33」であるとする。
【0181】
候補ビーム検出部15bは、フィードバック信号に含まれている送信元アンテナIDと、ビームIDと、受信電力値とを組合せて1組のデータとし、当該1組のデータをビーム組合せ記録部17に出力する。ビーム組合せ記録部17は、候補ビーム検出部15bが出力する1組のデータを取り込む。候補ビーム検出部15bは、フィードバック信号受信部12に対して、出力先をビームサーチ実行判定部16にする出力先切替指示信号を出力する。フィードバック信号受信部12は、候補ビーム検出部15bから出力先をビームサーチ実行判定部16にする出力先切替指示信号を受けると、フィードバック信号の出力先をビームサーチ実行判定部16に設定する(ステップSf3)。
【0182】
上記のステップSf2,Sf3の処理について別の言い方をすると、候補ビーム検出部15bは、全ての分散アンテナ装置30-1~30-4に対してランダムな順序で全ビームサーチを行わせる処理を行い、その処理の途中で、1つのフィードバック信号を取り込むと、ループLf1s~Lf1eの処理を終了し、取り込んだフィードバック信号に含まれている送信元アンテナIDと、ビームIDとによって特定されるビームを検出基準ビームとしていることになる。
【0183】
この時点で、ビーム探索期間において、全ビームサーチを行っていないのは、分散アンテナ装置30-1,30-3の2台になる。仮に、無線通信システム1bが、N台の分散アンテナ装置30-1~30-Nを備えている場合、ループLf1s~Lf1eを抜けた時点でそれまでに選択されたことがある変数iの値と、Nの値とを用いて、全ビームサーチを行っていない分散アンテナ装置30-kが特定される。ここでは、変数kは、「1」,「3」の値を取る。候補ビーム検出部15bは、変数kが取りうる値、及びすでに選択されたことがある値を、内部の記憶領域に書き込んで記録するようにしている。
【0184】
候補ビーム検出部15bは、k=1の場合、以下の処理を行う。すなわち、候補ビーム検出部15bは、1番目の分散アンテナ装置30-1のビームであって、検出基準ビームと共に選択されたことがあるビームのビームIDをビーム組合せ履歴テーブル140から検出する。ここで、検出基準ビームは、「分散アンテナID#2」の「ビームID#33」によって特定されるビームである。ビーム組合せ履歴テーブル140において、検出基準ビームに対応する「分散アンテナID#1」の「ビームID#33」は、「レコードID#2」,「レコードID#4」,「レコードID#6」に含まれている。「レコードID#2」,「レコードID#4」,「レコードID#6」の「分散アンテナID#1」の項目には、「ビームID#13」,「ビームID#25」が書き込まれている。
【0185】
したがって、候補ビーム検出部15bは、1番目の分散アンテナ装置30-1のビームであって、検出基準ビームと共に選択されたことがあるビームのビームIDとして「ビームID#13」と「ビームID#25」とをビーム組合せ履歴テーブル140から検出する。候補ビーム検出部15bは、「ビームID#13」と「ビームID#25」とを「分散アンテナID#1」に対応する分散アンテナ装置30-1の候補ビームを示す候補ビームIDとする。候補ビーム検出部15bは、「分散アンテナID#1」と、候補ビームIDである「ビームID#13」と、「ビームID#25」とを含む検出結果を示すデータを生成する(k=1の場合のステップSf4)。候補ビーム検出部15bは、生成した検出結果を示すデータをビームサーチ実行判定部16に出力する(k=1の場合のステップSf5)。ビームサーチ実行判定部16は、候補ビーム検出部15bから検出結果を示すデータを受けると、図11に示す全ビームサーチ実行判定の処理のサブルーチンを開始する(k=1の場合のステップSf6)。
【0186】
ビームサーチ実行判定部16は、候補ビーム検出部15bが出力する検出結果を示すデータを取り込む(k=1の場合のステップSc1)。ビームサーチ実行判定部16は、取り込んだ検出結果を示すデータに候補ビームIDが含まれているか否かを判定する(k=1の場合のステップSc2)。ここでは、検出結果を示すデータに「ビームID#13」と、「ビームID#25」とが含まれているため、ビームサーチ実行判定部16は、取り込んだ検出結果を示すデータに候補ビームIDが含まれていると判定する(k=1の場合のステップSc2、Yes)。
【0187】
ビームサーチ実行判定部16は、1番目の分散アンテナ31-1を備える分散アンテナ装置30-1に、候補ビームIDに対する部分ビームサーチを行わせるため、「分散アンテナID#1」と、「ビームID#13」と、「ビームID#25」とを含む部分ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力する。ビームサーチ実行判定部16は、部分ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力した後、内部に備えるフィードバック信号タイマを起動する。ビームサーチ実行判定部16は、フィードバック信号タイマを起動する際に、図9のステップSa1の処理において、ビーム組合せ履歴生成部13がフィードバック信号タイマに設定したのと同一の時間を設定する。
【0188】
ビームサーチ実行指示部11は、ビームサーチ実行判定部16が出力する部分ビームサーチ要求信号を取り込み、取り込んだ部分ビームサーチ要求指示信号に含まれている「分散アンテナID#1」と、「ビームID#13」と、「ビームID#25」とを読み出す。ビームサーチ実行指示部11は、「分散アンテナID#1」と、「ビームID#13」とを含むビームサーチ指示信号と、「分散アンテナID#1」と、「ビームID#25」とを含むビームサーチ指示信号とを生成する。ビームサーチ実行指示部11は、生成した2個のビームサーチ指示信号を予め定められる一定の時間間隔で、生成した順に1つずつディジタル信号処理装置20に出力する。ディジタル信号処理装置20は、ビームサーチ実行指示部11が出力する2個のビームサーチ指示信号を順次取り込む。その後、図9のステップSa1の処理において、ディジタル信号処理装置20がビームサーチ指示信号を取り込んだ後の処理が、i=1として、ディジタル信号処理装置20、本体装置32-1、分散アンテナ31-1及び端末装置40によって行われる(k=1の場合のステップSc7)。
【0189】
ビームサーチ実行判定部16は、フィードバック信号タイマが満了するまでに1番目の分散アンテナ31-1の分散アンテナIDである「分散アンテナID#1」が送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んだか否かを判定する(ステップSc8)。
【0190】
例えば、上記したビーム組合せ履歴生成部13がフィードバック信号を取り込めない場合のいずれかの事象が発生したとする。この場合、ビームサーチ実行判定部16は、フィードバック信号タイマが満了するまでに1番目の分散アンテナ31-1の分散アンテナIDである「分散アンテナID#1」が送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んでいないと判定し(k=1の場合のステップSc8、No)、処理をステップSc3に進める。
【0191】
これに対して、上記したビーム組合せ履歴生成部13がフィードバック信号を取り込めない場合のいずれかの事象が発生せず、フィードバック信号受信部12がビームサーチ実行判定部16にフィードバック信号を出力したとする。この場合、ビームサーチ実行判定部16は、フィードバック信号タイマが満了するまでに1番目の分散アンテナ31-1の分散アンテナIDである「分散アンテナID#1」が送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んだと判定する(k=1の場合のステップSc8、Yes)。
【0192】
この場合、ビームサーチ実行判定部16は、フィードバック信号に含まれている受信電力値が、予め定められる閾値を超えているか否かを判定する(k=1の場合のステップSc9)。ビームサーチ実行判定部16は、フィードバック信号に含まれている受信電力値が、予め定められる閾値を超えていないと判定した場合(k=1の場合のステップSc9、No)、処理をステップSc3に進める。一方、ビームサーチ実行判定部16は、フィードバック信号に含まれている受信電力値が、予め定められる閾値を超えていると判定した場合(k=1の場合のステップSc9、Yes)、処理をステップSc5に進める。
【0193】
上記のステップSc7,Sc8,Sc9の処理について別の言い方をすると、ビームサーチ実行判定部16は、「分散アンテナID#1」に対応する分散アンテナ装置30-1に「ビームID#13」に対応するビームと、「ビームID#25」に対応するビームとを送信させる部分ビームサーチを行わせることになる。当該部分ビームサーチによるフィードバック信号が得られなかった場合、ビームサーチ実行判定部16は、処理をステップSc3に進めて「分散アンテナID#1」に対応する分散アンテナ装置30-1に全ビームサーチを行わせて、分散アンテナ装置30-1に対する最良のビームを再度探索することになる。また、この場合における全ビームサーチでは、ビームサーチ実行判定部16は、「ビームID#13」に対応するビーム及び「ビームID#25」に対応するビーム以外のビームのみを探索することになる。
【0194】
そして、ビームサーチ実行判定部16は、ステップSc4においてフィードバック信号タイマが満了するまでに「分散アンテナID#1」が送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んだ場合、処理をステップSc5に進めることにより、フィードバック信号に含まれているビームIDを、ビーム組合せ履歴テーブル140に追加する対象のデータとする。
【0195】
これに対して、当該部分ビームサーチによるフィードバック信号が得られた場合、フィードバック信号に含まれる受信電力値、つまり、端末装置40において最良のビームとして選択されたビームの受信電力値が、閾値を超えていないときには、ビームサーチ実行判定部16は、フィードバック信号によって示されたビームは通常運用に利用することができない適切でないビームであると判定していることになる。そのため、ビームサーチ実行判定部16は、処理をステップSc3に進めて「分散アンテナID#1」に対応する分散アンテナ装置30-1に全ビームサーチを行わせて、分散アンテナ装置30-1に対する最良のビームを再度探索することになる。また、この場合における全ビームサーチでは、ビームサーチ実行判定部16は、「ビームID#13」に対応するビーム及び「ビームID#25」に対応するビーム以外のビームのみを探索することになる。
【0196】
そして、ビームサーチ実行判定部16は、ステップSc4においてフィードバック信号タイマが満了するまでに「分散アンテナID#1」が送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んだ場合、処理をステップSc5に進めることにより、フィードバック信号に含まれているビームIDを、ビーム組合せ履歴テーブル140に追加する対象のデータとする。
【0197】
一方、フィードバック信号に含まれる受信電力値が、閾値を超えているときには、ビームサーチ実行判定部16は、処理をステップSc5に進めて、当該ビームを分散アンテナ装置30-1における最良のビームであると判定していることになる。この場合、ビームサーチ実行判定部16は、分散アンテナ装置30-1について全ビームサーチを行うことなく、当該ビームを通常運用に利用することができる適切であるビームとすることができるので、ビームの探索数を削減することができていることになる。
【0198】
候補ビーム検出部15bは、その時点で変数kのとりうる値(ここでは、「1」,「3」)のうち選択されたことがない値があれば、その選択されたことがない値を選択して、再びステップSf4~ステップSf6の処理が行われる(ループLf2s~Lf2e)。ここでは、変数kのとりうる値(ここでは、「1」,「3」)のうち「3」はまだ選択されたことがないため、候補ビーム検出部15bは、「3」を新たなkの値とする。
【0199】
候補ビーム検出部15bは、k=3の場合(変数kが取りうる、もう一方の値である「3」の場合について)、以下の処理を行う。すなわち、候補ビーム検出部15bは、3番目の分散アンテナ装置30-3のビームであって、検出基準ビームと共に選択されたことがあるビームを候補ビームとしてビーム組合せ履歴テーブル140から検出する。ここで、検出基準ビームは、「分散アンテナID#2」の「ビームID#33」によって特定されるビームである。ビーム組合せ履歴テーブル140において、検出基準ビームに対応する「分散アンテナID#2」の「ビームID#33」は、「レコードID#2」,「レコードID#4」,「レコードID#6」に含まれているが、「レコードID#2」,「レコードID#4」,「レコードID#6」の「分散アンテナID#3」の項目は、空欄になっている。そのため、候補ビーム検出部15bは、3番目の分散アンテナ装置30-3のビームであって、検出基準ビームと共に選択されたことがある候補ビームを示す候補ビームIDは存在しないことを検出結果とする。候補ビーム検出部15bは、「分散アンテナID#3」のみを含む検出結果を示すデータを生成する(k=3の場合のステップSf4)。
【0200】
候補ビーム検出部15bは、「分散アンテナID#3」のみを含む検出結果を示すデータをビームサーチ実行判定部16に出力する(k=3の場合のステップSf5)。ビームサーチ実行判定部16は、候補ビーム検出部15bから検出結果を示すデータを受けると、図11に示す全ビームサーチ実行判定の処理のサブルーチンを開始する(k=3の場合のステップSf6)。
【0201】
候補ビーム検出部15bは、ビームサーチ実行判定部16が出力する終了通知信号を取り込むと、その時点で変数kのとりうる値(ここでは、「1」,「3」)のうち選択されたことがない値があれば、その選択されたことがない値を選択して、再びステップSf4~ステップSf6の処理が行われる(ループLf2s~Lf2e)。
【0202】
候補ビーム検出部15bは、ビームサーチ実行判定部16が出力する終了通知信号を取り込むと、その時点で変数kのとりうる値(ここでは、「1」,「3」)のうち選択されたことがない値がなければ、ループLf2s~Lf2eの処理を終了して、処理をステップSf7に進める。ここでは、その時点で変数kのとりうる値のうち、選択されたことがない値はもう存在しないため、ループLf2s~Lf2eの処理が終了し、ステップSf7の処理に進む。
【0203】
ビーム組合せ記録部17は、ステップSf3の処理及びステップSc5の処理において取り込んだ1組のデータ、すなわち送信元アンテナIDと、ビームIDと、受信電力値とを組合せたデータから受信電力値を除いた、残りのデータに基づいて、ビーム組合せ履歴テーブル140に1つのレコードを生成する。すなわち、ビーム組合せ記録部17は、ビーム組合せ履歴テーブル140に新たな行を生成することで、新たなレコードIDとして「レコードID#M+1」を生成する。ビーム組合せ記録部17は、生成した新たな行の「レコードID」の項目に、生成した新たなレコードIDである「レコードID#M+1」を書き込む。ビーム組合せ記録部17は、送信元アンテナIDと、ビームIDとの組合せに基づいて、「レコードID#M+1」の行における「分散アンテナID#1」,「分散アンテナID#2」,「分散アンテナID#3」,「分散アンテナID#4」の各々の要素に、各々に対応するビームIDを書き込む(ステップSf7)。
【0204】
上記の第3の実施形態の無線通信システム1bにおいて、候補ビーム検出部15bは、端末装置40との無線通信に用いるビームを探索するビーム探索期間において、ランダムな順序で複数の分散アンテナ31-1~31-4の各々に対して、送信可能な全ての方向にビームを送信して行う全ビームサーチを行わせ、全ビームサーチによるビームの中で最良のビームを示すビーム識別子を1つ取得した場合、全ビームサーチを停止させ、取得したビーム識別子と、当該ビーム識別子が示すビームを送信した分散アンテナ31-1~31-4を示す情報とによって特定されるビームを検出基準ビームとし、ビーム探索期間において全ビームサーチを行っていない分散アンテナ31-1~31-4のビーム識別子であって検出基準ビームと共に選択されたことがあるビームのビーム識別子を当該分散アンテナ31-1~31-4に対する候補ビーム識別子としてビーム組合せ履歴記憶部14から検出する。
【0205】
ビームサーチ実行判定部16は、ビーム探索期間において全ビームサーチを行っていない分散アンテナ31-1~31-4に対して全ビームサーチを行わせるか否かを、候補ビーム検出部15bの検出結果に基づいて判定する。ビーム組合せ記録部17は、ビーム探索期間において分散アンテナの各々において最良のビームとされたビームを示すビーム識別子の組合せを示すレコードを生成する。ビーム組合せ記録部17は、生成したレコードをビーム組合せ履歴記憶部14に記録する。これにより、ビーム組合せ履歴生成部13が行うビーム組合せ生成処理において、サービス提供エリア内であるセル100の全体にわたって伝送容量を低下させない程度の間隔で端末装置40を少しずつ移動させてビーム組合せの履歴を示す十分なレコードを生成できていなくても、ビーム探索処理を行う際に、伝送容量を低下させず、かつビーム探索数の削減を行うのに十分な数のレコードを蓄積することを可能にするという効果を奏する。
【0206】
また、第3の実施形態における無線通信システム1bは、ビーム探索の処理の最初の段階で、分散アンテナ装置30-1~30-4に対して固定された順序で全ビームサーチを行うのではなく、分散アンテナ装置30-1~30-4に対してランダムな順序で全ビームサーチを行う。このような構成を備えることで、無線通信システム1bは、最良なビームではないが受信電力値が閾値を超えているビームが部分ビームサーチによって選択されることにより全ビームサーチが行われなかった分散アンテナ装置に対しても、ランダムなタイミングで全ビームサーチが行われることになる。よって、ビーム組合せ履歴テーブル140の更新も行われる。これにより、第3の実施形態における無線通信システム1bによれば、ビーム探索数を削減しつつ、最良ではないビームの組合せが固定的に選択され続けることを防ぐことができる。
【0207】
(第4の実施形態)
図19は、第4の実施形態における通信制御装置10cの構成を示すブロック図である。通信制御装置10cは、第2の実施形態の通信制御装置10aに替えて用いられる装置であり、以下、説明の便宜上、通信制御装置10aに替えて通信制御装置10cを備える無線通信システム1aを無線通信システム1cという。通信制御装置10cにおいて、第2の実施形態の通信制御装置10aと同一の構成については、同一の符号を付し、以下、異なる構成について説明する。
【0208】
第4の実施形態における無線通信システム1cの構成のうち、第2の実施形態における無線通信システム1aの構成と異なる点は、ビーム探索の処理の最初の段階で、固定された順序で複数の分散アンテナ装置による全ビームサーチを行うのではなく、ランダムに分散アンテナ装置を選択して全ビームサーチを行う点である。
【0209】
通信制御装置10cは、ビームサーチ実行指示部11、フィードバック信号受信部12、ビーム組合せ履歴生成部13a、ビーム組合せ履歴記憶部14a、候補ビーム検出部15c、ビームサーチ実行判定部16a及びビーム組合せ記録部17aを備える。
【0210】
候補ビーム検出部15cは、ビームを探索するビーム探索処理が開始されると、分散アンテナ装置30-1~30-4の各々に対して、1台ずつランダムな順序で全ビームサーチを行わせる。すなわち、候補ビーム検出部15cは、分散アンテナ31-1~31-4の分散アンテナIDをランダムな順序で1つずつ指定し、指定した1つの分散アンテナIDを含む全ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力する。候補ビーム検出部15cは、ビーム探索処理を開始した後に、最初のフィードバック信号を取り込むと、全ビームサーチを停止させ、当該フィードバック信号に含まれている送信元アンテナIDと、ビームIDとによって特定されるビームを検出基準ビームとする。候補ビーム検出部15cは、ビーム探索期間において全ビームサーチを行っていない分散アンテナ装置30-1~30-4のビームIDであって、検出基準ビームと共に選択されたことがあるビームのビームIDと、当該ビームIDに対応する分散アンテナIDとを、例えば図14に示されるビーム組合せ履歴テーブル140aから検出する。
【0211】
その際、候補ビーム検出部15cは、ビーム組合せ履歴テーブル140aにおいて、検出したビームIDと共に要素として書き込まれている受信電力値を検出する。候補ビーム検出部15cは、検出した分散アンテナIDに対応する分散アンテナ装置30-1~30-4における候補ビームのビームIDを候補ビームIDとし、検出した分散アンテナIDと候補ビームIDの組合せを検出結果とする。候補ビーム検出部15cは、検出したビームIDと、検出した受信電力値との組合せに基づいて、ビームIDごとの受信電力値の平均値を算出し、算出した平均値の最大値を、検出した分散アンテナIDに対する平均受信電力値とする。候補ビーム検出部15cは、算出した平均受信電力値を、検出結果を示すデータに含める。
【0212】
(第4の実施形態の無線通信システムによる処理)
第2の実施形態と同様に、第4の実施形態の無線通信システム1cにおいても図8に示すステップS1のビーム組合せ生成処理と、ステップS2のビーム探索処理が行われる。ただし、以下に説明する点において、第4の実施形態で行われるビーム探索処理は、第2の実施形態で行われる処理と異なる。
【0213】
(第4の実施形態のビーム組合せ生成処理)
図9に示す第1の実施形態と同一のビーム組合せ生成処理が、ビームサーチ実行指示部11、フィードバック信号受信部12、ビーム組合せ履歴生成部13a、ディジタル信号処理装置20及び分散アンテナ装置30-1~30-4によって行われる。
【0214】
(第4の実施形態のビーム探索処理)
図20は、第4の実施形態のビーム探索処理を示すフローチャートである。図20は、図8のステップS2の処理において行われるビーム探索処理の流れを示すフローチャートである。
【0215】
図20において、ステップSg1,Sg2の処理及びステップSg1,Sg2の処理を繰り返すループLg1s~Lg1eの処理、並びにステップSg3の処理は、図15のステップSd1,Sd2の処理及びステップSd1,Sd2の処理を繰り返すループLd1s~Ld1eの処理、並びにステップSd3の処理と同一の処理が、ビームサーチ実行指示部11、フィードバック信号受信部12、ディジタル信号処理装置20、分散アンテナ装置30-1~30-4によって行われ、候補ビーム検出部15aによって行われていた処理は、候補ビーム検出部15cによって行われる。ステップSg7の処理は、上記した処理が、ビーム組合せ記録部17aによって行われる。
【0216】
無線通信システム1cの運用者の操作を受けて、通信制御装置10cの候補ビーム検出部15cは、ビーム探索処理を開始する。候補ビーム検出部15cは、内部に備えるビーム探索周期タイマを起動する。候補ビーム検出部15cは、ビーム探索周期タイマを起動する際に、予め定められる1つのビーム探索周期の期間の長さを示す時間を設定する。
【0217】
候補ビーム検出部15cは、ビーム組合せ履歴記憶部14aが記憶するビーム組合せ履歴テーブル140aの分散アンテナIDの項目に書き込まれている全ての分散アンテナIDを読み出す。候補ビーム検出部15cは、内部の記憶領域に変数iを設ける。ここで、iは、1~Nまでの整数値をとりうる変数であるが、図1の無線通信システム1は、4台の分散アンテナ装置30-1~30-4を備えており、候補ビーム検出部15cは、ビーム組合せ履歴テーブル140aから「分散アンテナID#1」,「分散アンテナID#2」,「分散アンテナID#3」,「分散アンテナID#4」という4つの分散アンテナIDを読み出すため、以下では、N=4として説明を行う。i番目の分散アンテナ装置を分散アンテナ装置30-iとし、i番目の分散アンテナを分散アンテナ31-iとし、i番目の本体装置を本体装置32-iとして、以下の説明を行う。
【0218】
候補ビーム検出部15cは、フィードバック信号受信部12に対して、出力先を候補ビーム検出部15cにする出力先切替指示信号を出力する。フィードバック信号受信部12は、候補ビーム検出部15cから出力先を候補ビーム検出部15cにする出力先切替指示信号を受けると、フィードバック信号の出力先を候補ビーム検出部15cに設定する。
【0219】
候補ビーム検出部15cは、変数iの値として1~Nの中からランダムに1つを選択する。候補ビーム検出部15cは、変数iが取りうる値(すなわち、1~N)、及びすでに選択されたことがある値を、内部の記憶領域に書き込んで記録するようにしている。ここでは、例えば、変数iの値として「4」が選択されたとする。i=4の場合、以下の処理を行う。すなわち、候補ビーム検出部15cは、4番目の分散アンテナ31-4を備える分散アンテナ装置30-4に全ビームサーチを行わせるため、4番目の分散アンテナ31-4に付与されている分散アンテナIDである「分散アンテナID#4」を含む全ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力する。候補ビーム検出部15cは、全ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力した後、内部に備えるフィードバック信号タイマを起動する。
【0220】
候補ビーム検出部15cは、フィードバック信号タイマを起動する際に、図9のステップSa1の処理において、ビーム組合せ履歴生成部13aがフィードバック信号タイマに設定したのと同一の時間を設定する。なお、当該時間は、予め定められる時間であり、予め候補ビーム検出部15cに設定される。ビームサーチ実行指示部11が、候補ビーム検出部15cが出力する全ビームサーチ要求信号を取り込むと、その後、図9のステップSa1の処理において、ビームサーチ実行指示部11が全ビームサーチ要求信号を取り込んだ後の処理が、i=4として、ビームサーチ実行指示部11、ディジタル信号処理装置20、本体装置32-4、分散アンテナ31-4及び端末装置40によって行われる(i=4の場合のステップSg1)。
【0221】
候補ビーム検出部15cは、フィードバック信号タイマが満了するまでに4番目の分散アンテナ31-4の分散アンテナIDである「分散アンテナID#4」が送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んだか否かを判定する(i=4の場合のステップSg2)。
【0222】
ここでは、上記したビーム組合せ履歴生成部13aがフィードバック信号を取り込めない場合のいずれかの事象が発生したとする。この場合、候補ビーム検出部15cは、フィードバック信号タイマが満了するまでに4番目の分散アンテナ31-4の分散アンテナIDである「分散アンテナID#4」が送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んでいないと判定する(ステップSg2、No)。候補ビーム検出部15cは、その時点で分散アンテナの数Nの分だけランダムな順序で変数iの値が選択されていなければ(すなわち、変数iが取りうる全ての値がいずれも選択されたことがある状態となっていなければ)、変数iの値として、1~Nのうちまだ選択されていない値をランダムに1つ選択する。ここでは、例えば、変数iの値として「2」が選択されたとする。そして、再びステップSg1,Sg2の処理が行われる(ループLg1s~Lg1e)。
【0223】
候補ビーム検出部15cは、i=2の場合、ループLg1s~Lg1eの2回目の処理として、以下の処理を行う。すなわち、候補ビーム検出部15cは、2番目の分散アンテナ31-2を備える分散アンテナ装置30-2に全ビームサーチを行わせるため、2番目の分散アンテナ31-2に付与されている分散アンテナIDである「分散アンテナID#2」を含む全ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力する。候補ビーム検出部15cは、全ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力した後、内部に備えるフィードバック信号タイマを起動する。候補ビーム検出部15cは、フィードバック信号タイマを起動する際に、図9のステップSa1の処理において、ビーム組合せ履歴生成部13aがフィードバック信号タイマに設定したのと同一の時間を設定する。ビームサーチ実行指示部11が、候補ビーム検出部15cが出力する全ビームサーチ要求信号を取り込むと、その後、図9のステップSa1の処理において、ビームサーチ実行指示部11が全ビームサーチ要求信号を取り込んだ後の処理が、i=2として、ビームサーチ実行指示部11、ディジタル信号処理装置20、本体装置32-2、分散アンテナ31-2及び端末装置40によって行われる(i=2の場合のステップSg1)。
【0224】
候補ビーム検出部15cは、フィードバック信号タイマが満了するまでに2番目の分散アンテナ31-2の分散アンテナIDである「分散アンテナID#2」が送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んだか否かを判定する(i=2の場合のステップSg2)。ここでは、上記したビーム組合せ履歴生成部13aがフィードバック信号を取り込めない場合のいずれかの事象が発生せず、フィードバック信号受信部12が候補ビーム検出部15cにフィードバック信号を出力したとする。この場合、候補ビーム検出部15cは、フィードバック信号タイマが満了するまでに2番目の分散アンテナ31-2の分散アンテナIDである「分散アンテナID#2」が送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んだと判定する(i=2の場合のステップSg2、Yes)。
【0225】
候補ビーム検出部15cは、ループLg1s~Lg1eの処理を抜けて、取り込んだフィードバック信号に含まれているビームIDを2番目の分散アンテナ装置30-2における最良のビームを示すビームIDとする。候補ビーム検出部15cは、当該ビームIDと、フィードバック信号に含まれている送信元アンテナIDである「分散アンテナID#2」とによって特定されるビームを検出基準ビームとする。ここでは、候補ビーム検出部15cが取り込んだフィードバック信号に含まれているビームIDは、「ビームID#33」であるとする。
【0226】
候補ビーム検出部15cは、フィードバック信号に含まれている送信元アンテナIDと、ビームIDと、受信電力値とを組合せて1組のデータとし、当該1組のデータをビーム組合せ記録部17aに出力する。ビーム組合せ記録部17aは、候補ビーム検出部15cが出力する1組のデータを取り込む。候補ビーム検出部15cは、フィードバック信号受信部12に対して、出力先をビームサーチ実行判定部16aにする出力先切替指示信号を出力する。フィードバック信号受信部12は、候補ビーム検出部15cから出力先をビームサーチ実行判定部16aにする出力先切替指示信号を受けると、フィードバック信号の出力先をビームサーチ実行判定部16aに設定する(ステップSg3)。
【0227】
上記のステップSg2,Sg3の処理について別の言い方をすると、候補ビーム検出部15cは、全ての分散アンテナ装置30-1~30-4に対してランダムな順序で全ビームサーチを行わせる処理を行い、その処理の途中で、1つのフィードバック信号を取り込むと、ループLg1s~Lg1eの処理を終了し、取り込んだフィードバック信号に含まれている送信元アンテナIDと、ビームIDとによって特定されるビームを検出基準ビームとしていることになる。
【0228】
この時点で、ビーム探索期間において、全ビームサーチを行っていないのは、分散アンテナ装置30-1,30-3の2台になる。仮に、無線通信システム1cが、N台の分散アンテナ装置30-1~30-Nを備えている場合、ループLg1s~Lg1eを抜けた時点でそれまでに選択されたことがある変数iの値と、Nの値とを用いて、全ビームサーチを行っていない分散アンテナ装置30-kが特定される。ここでは、変数kは、「1」,「3」の値を取る。候補ビーム検出部15cは、変数kが取りうる値、及びすでに選択されたことがある値を、内部の記憶領域に書き込んで記録するようにしている。
【0229】
候補ビーム検出部15cは、k=1の場合、以下の処理を行う。すなわち、候補ビーム検出部15cは、1番目の分散アンテナ装置30-1のビームであって、検出基準ビームと共に選択されたことがあるビームのビームIDをビーム組合せ履歴テーブル140aから検出する。ここで、検出基準ビームは、「分散アンテナID#2」の「ビームID#33」によって特定されるビームである。ビーム組合せ履歴テーブル140aにおいて、検出基準ビームに対応する「分散アンテナID#2」の「ビームID#33」は、「レコードID#2」,「レコードID#4」,「レコードID#6」に含まれている。「レコードID#2」,「レコードID#4」,「レコードID#6」の「分散アンテナID#1」の項目には、「ビームID#13」,「ビームID#25」が書き込まれている。
【0230】
したがって、候補ビーム検出部15cは、1番目の分散アンテナ装置30-1のビームであって、検出基準ビームと共に選択されたことがあるビームのビームIDとして「ビームID#13」と「ビームID#25」とをビーム組合せ履歴テーブル140aから検出する。候補ビーム検出部15cは、「ビームID#13」と「ビームID#25」とを「分散アンテナID#1」に対応する分散アンテナ装置30-1の候補ビームを示す候補ビームIDとする。
【0231】
候補ビーム検出部15cは、更に、「ビームID#25」について、「レコードID#2」の「(受信電力値2-1)」と、「レコードID#6」の「(受信電力値6-1)」とを検出し、「ビームID#13」について、「レコードID#4」の「(受信電力値4-1)」を検出する。候補ビーム検出部15cは、「ビームID#25」に対応する「(受信電力値2-1)」と「(受信電力値6-1)」の平均値を算出する。「ビームID#13」については、「(受信電力値4-1)」の1つしかないため、「(受信電力値4-1)」を平均値とする。候補ビーム検出部15cは、「ビームID#13」に対応する平均値及び「ビームID#25」の平均値の中で最大の平均値を「分散アンテナID#1」に対する平均受信電力値とする。候補ビーム検出部15cは、「分散アンテナID#1」と、候補ビームIDである「ビームID#13」と、「ビームID#25」と、算出した平均受信電力値とを含む検出結果を示すデータを生成する(k=4の場合のステップSg4)。候補ビーム検出部15cは、生成した検出結果を示すデータをビームサーチ実行判定部16aに出力する(k=1の場合のステップSg5)。
【0232】
続くステップSg6の処理において行われる図16の全ビームサーチ実行判定の処理のサブルーチンのステップSe1の処理において、ビームサーチ実行判定部16aは、候補ビーム検出部15cが出力する検出結果データを取り込み、ステップSe2の処理において、取り込んだ検出結果を示すデータに候補ビームIDが含まれていると判定する(k=1の場合のステップSe2、Yes)。
【0233】
ビームサーチ実行判定部16aは、ステップSe8の判定処理において「Yes」の判定をした場合、検出結果を示すデータに含まれている平均受信電力値を読み出し、読み出した平均受信電力値にマージンを与えて「分散アンテナID#1」に対する閾値を算出する(ステップSe9)。ビームサーチ実行判定部16aは、フィードバック信号に含まれている受信電力値が、フィードバック信号に含まれている送信元アンテナID(ここでは、「分散アンテナID#1」)に対して算出した閾値を超えているか否かを判定する(k=1の場合のステップSe10)。
【0234】
ビームサーチ実行判定部16aは、フィードバック信号に含まれている受信電力値が、当該フィードバック信号に含まれている送信元アンテナIDに対して算出した閾値を超えていると判定した場合(ステップSe10、Yes)、その後、処理をステップSe5の処理に進める。一方、ビームサーチ実行判定部16aは、フィードバック信号に含まれている受信電力値が、当該フィードバック信号に含まれている送信元アンテナIDに対して算出した閾値を超えていないと判定した場合(ステップSe10、No)、その後、処理をステップSe3の処理に進める。
【0235】
候補ビーム検出部15cは、その時点で変数kのとりうる値(ここでは、「1」,「3」)のうち選択されたことがない値があれば、その選択されたことがない値を選択して、再びステップSg4~ステップSg6の処理が行われる(ループLg2s~Lg2e)。ここでは、変数kのとりうる値(ここでは、「1」,「3」)のうち「3」はまだ選択されたことがないため、候補ビーム検出部15cは、「3」を新たなkの値とする。
【0236】
候補ビーム検出部15cは、k=3の場合(変数kが取りうる、もう一方の値である「3」の場合について)、以下の処理を行う。ループLg2s~Lg2eの処理において、k=3の場合は、第1の実施形態及び第3の実施形態と同様に、候補ビーム検出部15cは、ビーム組合せ履歴テーブル140aから「分散アンテナID#3」に対応する候補ビームIDを検出できない。そのため、この場合、候補ビーム検出部15cは、受信電力値も検出できないことになる。したがって、候補ビーム検出部15cは、平均受信電力値を算出することもなく、第1の実施形態のステップSb4及び第3の実施形態のステップSd4の処理と同様に、3番目の分散アンテナ装置30-3のビームであって、検出基準ビームと共に選択されたことがある候補ビームを示す候補ビームIDは存在しないことを検出結果とする。候補ビーム検出部15cは、「分散アンテナID#3」のみを含む検出結果を示すデータを生成する(k=3の場合のステップSg4)。
【0237】
候補ビーム検出部15cは、「分散アンテナID#3」のみを含む検出結果を示すデータをビームサーチ実行判定部16aに出力する(k=3の場合のステップSg5)。ビームサーチ実行判定部16aは、候補ビーム検出部15cから検出結果を示すデータを受けると、図16に示す全ビームサーチ実行判定の処理のサブルーチンを開始する(k=3の場合のステップSg6)。
【0238】
第4の実施形態のビーム探索処理のステップSg6において行われる全ビームサーチ実行判定の処理のサブルーチンについて、図16を参照しつつ説明する。ステップSe1~ステップSe6までの処理は、図11に示したステップSc1~ステップSc6と同一の処理が、ビームサーチ実行指示部11、フィードバック信号受信部12、ディジタル信号処理装置20、分散アンテナ装置30-1~30-4によって行われ、ビームサーチ実行判定部16によって行われていた処理は、ビームサーチ実行判定部16aによって行われる。そのため、k=3の場合、ステップSe2の判定処理で、ビームサーチ実行判定部16aは、「No」と判定し、処理は、ステップSe3に進められるため、その後、第1の実施形態におけるk=3の場合及び第3の実施形態におけるk=3の場合と同一の処理が行われることになる。
【0239】
これにより、第4の実施形態では、ビームサーチ実行判定部16aが、分散アンテナ装置30-1~30-4のいずれかに部分ビームサーチを行わせると判定した場合、当該部分ビームサーチにより取得したフィードバック信号に含まれる受信電力値が、当該部分ビームサーチの対象の分散アンテナ装置30-1~30-4の過去の平均受信電力値程度の値であれば、当該フィードバック信号に含まれるビームIDが示すビームを、当該フィードバック信号に含まれる送信元アンテナIDに対応する分散アンテナ装置30-1~30-4の最良のビームとして探索できることになる。ビームサーチ実行判定部16aは、当該ビームに関連するデータをビーム組合せ履歴テーブル140aに追加することができることになる。
【0240】
これに対して、ビームサーチ実行判定部16aは、当該部分ビームサーチにより取得したフィードバック信号に含まれる受信電力値が、当該部分ビームサーチの対象の分散アンテナ装置30-1~30-4の過去の平均受信電力値程度の値でなければ、当該フィードバック信号に含まれる送信元アンテナIDに対応する分散アンテナ装置30-1~30-4に対して全ビームサーチを行わせる。ビームサーチ実行判定部16aが、当該全ビームサーチによりフィードバック信号を取得できれば、全ビームサーチの対象の分散アンテナ装置30-1~30-4における最良のビームを探索できることになり、フィードバック信号が取得できなければ、全ビームサーチの対象の分散アンテナ装置30-1~30-4における最良のビームを探索できないことになる。したがって、第4の実施形態では、第1の実施形態の通信制御装置10及び第3の実施形態の通信制御装置10bが奏する効果に加えて、部分ビームサーチを行わせる際に、第1の実施形態及び第3の実施形態より正確に最良のビームを探索することができることになる。
【0241】
なお、前述の第3の実施形態では、予め定められる受信電力値の閾値をより高く設定することによって、通信品質の観点において最良ではないビームが選択される可能性をより低くすることができる。しかしながら、この場合、第3の実施形態では、より多くの分散アンテナ装置について全ビームサーチが行われることになるため、ビーム探索数の削減をすることが難しくなる。また、最適な閾値は、端末装置の位置等によっても変化するため、ビーム探索数を削減しつつ最良なビームを選択するための閾値を、一律の値として設定することは困難である。これに対し、第4の実施形態は、ビームの組み合わせごとに閾値を変更することによって実質的に端末装置40の位置ごとに閾値の変更をしていることになり、閾値を適応的に設定するような構成となっている。
【0242】
なお、第4の実施形態では、検出したビームIDごとの受信電力値の平均値が基準として用いられる方法について説明したが、平均値に限られるものではない。例えば、基準として用いられる値は、中央値であってもよいし、最頻値であってもよいし、最大値であってもよいし、あるいは最小値であってもよい。また、これらの値の中でも、最大値、最小値、あるいは平均値が基準として用いられる場合については、同一のビームIDの組合せで毎回算出しておくことで、他のレコードを削除するようにしてもよい。
【0243】
また、第4の実施形態における無線通信システム1cは、ビーム探索の処理の最初の段階で、分散アンテナ装置30-1~30-4に対して固定された順序で全ビームサーチを行うのではなく、分散アンテナ装置30-1~30-4に対してランダムな順序で全ビームサーチを行う。このような構成を備えることで、無線通信システム1cは、最良なビームではないが受信電力値が閾値を超えているビームが部分ビームサーチによって選択されることにより全ビームサーチが行われなかった分散アンテナ装置に対しても、ランダムなタイミングで全ビームサーチが行われることになる。よって、ビーム組合せ履歴テーブル140aの更新も行われる。これにより、第4の実施形態における無線通信システム1cによれば、ビーム探索数を削減しつつ、最良ではないビームの組合せが固定的に選択され続けることを防ぐことができる。
【0244】
以上説明したように、第3の実施形態における無線通信システム1b及び第4の実施形態における無線通信システム1cは、ビーム探索の処理の最初の段階で、分散アンテナ装置30-1~30-4についてランダムな順序で1台ずつ順に全ビームサーチを行う構成であった。全ビームサーチを行う分散アンテナ装置30-1~30-4がランダムに選択されることにより、最良ではないビームの組合せが固定的に選択され続けることを防ぐことができる。
【0245】
これに対し、分散アンテナ装置30-1~30-4についてランダムな順序で1台ずつ順に全ビームサーチを行う代わりに、分散アンテナ装置30-1~30-4のうちランダムに選択された複数の分散アンテナ装置を用いて同時に全ビームサーチを行う構成としてもよい。この場合にも、全ビームサーチを行う分散アンテナ装置30-1~30-4の組合せがランダムに選択されるため、最良ではないビームの組合せが固定的に選択され続けることを防ぐことができる。
【0246】
なお、分散アンテナ装置を用いて同時に全ビームサーチを行う方法としては、例えば、周波数多重、あるいは、符号多重等の技術が用いられてもよい。その他、分散アンテナ装置間における干渉が小さい場合等には、複数の分散アンテナ装置において同一リソースを用いた全ビームサーチが行われてもよい。
【0247】
以下に説明する第5の実施形態における無線通信システム1d及び第6の実施形態における無線通信システム1eは、ビーム探索の処理の最初の段階で、分散アンテナ装置30-1~30-4のうちランダムに選択された複数の分散アンテナ装置を用いて同時に全ビームサーチを行う。このような構成を備えることで、以下に説明する第5の実施形態及び第6の実施形態では、最良なビームではないが受信電力値が閾値を超えているビームが部分ビームサーチによって選択されることにより全ビームサーチが行われなかった分散アンテナ装置に対しても、ランダムなタイミングで全ビームサーチが行われることになる。よって、ビーム組合せ履歴テーブル140及びビーム組合せ履歴テーブル140aの更新も行われる。これにより、以下に説明する第5の実施形態及び第6の実施形態によれば、ビーム探索数を削減しつつ、最良ではないビームの組合せが固定的に選択され続けることを防ぐことができる。
【0248】
(第5の実施形態)
図21は、第5の実施形態における通信制御装置10dの構成を示すブロック図である。通信制御装置10dは、第1の実施形態の通信制御装置10に替えて用いられる装置であり、以下、説明の便宜上、通信制御装置10に替えて通信制御装置10dを備える無線通信システム1を無線通信システム1dという。通信制御装置10dにおいて、第1の実施形態の通信制御装置10と同一の構成については、同一の符号を付し、以下、異なる構成について説明する。
【0249】
第5の実施形態における無線通信システム1dの構成のうち、第1の実施形態における無線通信システム1の構成と異なる点は、ビーム探索の処理の最初の段階で、複数の分散アンテナ装置に対して固定された順序で1台ずつ全ビームサーチを行うのではなく、複数の分散アンテナ装置のうちランダムに選択された一部の複数の分散アンテナ装置を用いて同時に全ビームサーチを行う点である。
【0250】
通信制御装置10dは、ビームサーチ実行指示部11、フィードバック信号受信部12、ビーム組合せ履歴生成部13、ビーム組合せ履歴記憶部14、候補ビーム検出部15d、ビームサーチ実行判定部16及びビーム組合せ記録部17を備える。
【0251】
候補ビーム検出部15dは、ビームを探索するビーム探索処理が開始されると、N台の分散アンテナ装置30-1~30-Nのうち、複数の(X個の)分散アンテナ装置をランダムに選択する。例えば、候補ビーム検出部15dは、4台(N=4)の分散アンテナ装置30-1~30-4のうち、2台(X=2)の分散アンテナ装置をランダムに選択する。なお、ビーム探索処理が行われる度に、同数の(例えば2台(X=2)の)分散アンテナ装置がランダムに選択される構成であってもよいし、異なる数の(例えば2~3台(X=2~3)の)分散アンテナ装置がランダムに選択される構成であってもよい。
【0252】
候補ビーム検出部15dは、選択された複数の分散アンテナ装置の各々に対して同時に全ビームサーチを行わせる。すなわち、候補ビーム検出部15dは、ランダムに選択された、例えば分散アンテナ31-1及び31-4の2台分の分散アンテナIDを指定し、指定した2つの分散アンテナIDを含む全ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力する。候補ビーム検出部15dは、ビーム探索処理を開始した後に、最初のフィードバック信号を取り込むと、全ビームサーチを停止させ、当該フィードバック信号に含まれている送信元アンテナIDと、ビームIDとによって特定されるビームを検出基準ビームとする。
【0253】
候補ビーム検出部15dは、分散アンテナ装置30-1~30-4のうちビーム探索期間において全ビームサーチを行っていない分散アンテナ装置のビームIDであって、検出基準ビームと共に選択されたことがあるビームのビームIDと、当該ビームIDに対応する分散アンテナIDとをビーム組合せ履歴テーブル140から検出する。候補ビーム検出部15dは、検出したビームIDを、検出した分散アンテナIDに対応する分散アンテナ装置30-1~30-4における候補ビームを示す候補ビームIDとし、検出した分散アンテナIDと候補ビームIDの組合せを検出結果とする。
【0254】
(第5の実施形態の無線通信システムによる処理)
第1の実施形態と同様に、第5の実施形態の無線通信システム1dにおいても図8に示すステップS1のビーム組合せ生成処理と、ステップS2のビーム探索処理が行われる。ただし、以下に説明する点において、第5の実施形態で行われるビーム探索処理は、第1の実施形態で行われる処理と異なる。
【0255】
(第5の実施形態のビーム組合せ生成処理)
図9に示す第1の実施形態と同一のビーム組合せ生成処理が、ビームサーチ実行指示部11、フィードバック信号受信部12、ビーム組合せ履歴生成部13、ディジタル信号処理装置20及び分散アンテナ装置30-1~30-4によって行われる。
【0256】
(第5の実施形態のビーム探索処理)
図22は、第5の実施形態のビーム探索処理を示すフローチャートである。図22は、図8のステップS2の処理において行われるビーム探索処理の流れを示すフローチャートである。図8に示すビーム探索処理が開始される前提として、ビーム組合せ履歴記憶部14に、図4に示すビーム組合せ履歴テーブル140が生成されているものとする。
【0257】
図22において、ステップSh1,Sh2の処理及びステップSh1,Sh2の処理を繰り返すループLh1s~Lh1eの処理は、上記した処理が、候補ビーム検出部15dによって行われる。ステップSh3の処理、ステップSh4~ステップSh6の処理、ステップSh4~ステップSh6の処理を繰り返すループLh2s~Lh2eの処理、並びにステップSh7の処理は、図10のステップSb3の処理、ステップSb4~ステップSb6の処理、ステップSb4~ステップSb6の処理を繰り返すループLb2s~Lb2eの処理、並びにステップSb7の処理と同一の処理が、ビームサーチ実行指示部11、フィードバック信号受信部12、ビーム組合せ記録部17、ディジタル信号処理装置20、分散アンテナ装置30-1~30-4によって行われ、候補ビーム検出部15によって行われていた処理は、候補ビーム検出部15dによって行われる。
【0258】
無線通信システム1dの運用者の操作を受けて、通信制御装置10dの候補ビーム検出部15dは、ビーム探索処理を開始する。候補ビーム検出部15dは、内部に備えるビーム探索周期タイマを起動する。候補ビーム検出部15dは、ビーム探索周期タイマを起動する際に、予め定められる1つのビーム探索周期の期間の長さを示す時間を設定する。
【0259】
候補ビーム検出部15dは、ビーム組合せ履歴記憶部14が記憶するビーム組合せ履歴テーブル140の分散アンテナIDの項目に書き込まれている全ての分散アンテナIDを読み出す。候補ビーム検出部15dは、内部の記憶領域に変数iを設ける。ここで、iは、1~Nまでの整数値をとりうる変数であるが、図1の無線通信システム1は、4台の分散アンテナ装置30-1~30-4を備えており、候補ビーム検出部15dは、ビーム組合せ履歴テーブル140から「分散アンテナID#1」,「分散アンテナID#2」,「分散アンテナID#3」,「分散アンテナID#4」という4つの分散アンテナIDを読み出すため、以下では、N=4として説明を行う。i番目の分散アンテナ装置を分散アンテナ装置30-iとし、i番目の分散アンテナを分散アンテナ31-iとし、i番目の本体装置を本体装置32-iとして、以下の説明を行う。
【0260】
また、候補ビーム検出部15dは、内部の記憶領域に変数Xを設ける。ここで、Xは、2以上の整数値をとりうる変数である。Xは同時に全ビームサーチが行われる分散アンテナ装置の数を表す。以下では、一例としてX=2であるものとして説明を行う。
【0261】
候補ビーム検出部15dは、フィードバック信号受信部12に対して、出力先を候補ビーム検出部15dにする出力先切替指示信号を出力する。フィードバック信号受信部12は、候補ビーム検出部15dから出力先を候補ビーム検出部15dにする出力先切替指示信号を受けると、フィードバック信号の出力先を候補ビーム検出部15dに設定する。
【0262】
候補ビーム検出部15dは、変数iの値として1~Nの中からランダムに2つ(X=2)の値を選択する。候補ビーム検出部15dは、変数iが取りうる値(すなわち、1~N)、及びすでに選択されたことがある値を、内部の記憶領域に書き込んで記録するようにしている。ここでは、例えば、変数iの値として「1」及び「3」が選択されたとする。i=1及び3の場合、以下の処理を行う。すなわち、候補ビーム検出部15dは、1番目の分散アンテナ31-1を備える分散アンテナ装置30-1、及び3番目の分散アンテナ31-3を備える分散アンテナ装置30-3に対して、同時に全ビームサーチを行わせるため、1番目の分散アンテナ31-1に付与されている分散アンテナIDである「分散アンテナID#1」及び3番目の分散アンテナ31-3に付与されている分散アンテナIDである「分散アンテナID#3」を含む全ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力する。
【0263】
候補ビーム検出部15dは、全ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力した後、内部に備えるフィードバック信号タイマを起動する。候補ビーム検出部15dは、フィードバック信号タイマを起動する際に、図9のステップSa1の処理において、ビーム組合せ履歴生成部13がフィードバック信号タイマに設定したのと同一の時間を設定する。なお、当該時間は、予め定められる時間であり、予め候補ビーム検出部15dに設定される。ビームサーチ実行指示部11が、候補ビーム検出部15dが出力する全ビームサーチ要求信号を取り込むと、その後、図9のステップSa1の処理において、ビームサーチ実行指示部11が全ビームサーチ要求信号を取り込んだ後の処理が、i=1及び3として、ビームサーチ実行指示部11、ディジタル信号処理装置20、本体装置32-1、本体装置32-3、分散アンテナ31-1、分散アンテナ31-3及び端末装置40によって行われる(i=1及び3の場合のステップSh1)。
【0264】
候補ビーム検出部15dは、フィードバック信号タイマが満了するまでに、分散アンテナ31-1の分散アンテナIDである「分散アンテナID#1」又は分散アンテナ31-3の分散アンテナIDである「分散アンテナID#3」のいずれかが送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んだか否かを判定する(i=1及び3の場合のステップSh2)。
【0265】
ここでは、上記したビーム組合せ履歴生成部13がフィードバック信号を取り込めない場合のいずれかの事象が発生したとする。この場合、候補ビーム検出部15dは、フィードバック信号タイマが満了するまでに1番目の分散アンテナ31-1の分散アンテナIDである「分散アンテナID#1」及び3番目の分散アンテナ31-3の分散アンテナIDである「分散アンテナID#3」が送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んでいないと判定する(ステップSh2、No)。候補ビーム検出部15dは、その時点で分散アンテナの数Nの分だけ変数iの値が選択されていなければ(すなわち、変数iが取りうる全ての値がいずれも選択されたことがある状態となっていなければ)、変数iの値として1~Nの中からランダムに2つ(X=2)の値を選択する。ここでは、変数iの値として残りの「2」及び「4」が選択されることになる。そして、再びステップSh1,Sh2の処理が行われる(ループLh1s~Lh1e)。
【0266】
候補ビーム検出部15dは、ループLh1s~Lh1eの2回目の処理として、以下の処理を行う。すなわち、候補ビーム検出部15dは、2番目の分散アンテナ31-2を備える分散アンテナ装置30-2及び4番目の分散アンテナ31-4を備える分散アンテナ装置30-4に同時に全ビームサーチを行わせるため、2番目の分散アンテナ31-2に付与されている分散アンテナIDである「分散アンテナID#2」及び4番目の分散アンテナ31-4に付与されている分散アンテナIDである「分散アンテナID#4」を含む全ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力する。
【0267】
候補ビーム検出部15dは、全ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力した後、内部に備えるフィードバック信号タイマを起動する。候補ビーム検出部15dは、フィードバック信号タイマを起動する際に、図9のステップSa1の処理において、ビーム組合せ履歴生成部13がフィードバック信号タイマに設定したのと同一の時間を設定する。ビームサーチ実行指示部11が、候補ビーム検出部15dが出力する全ビームサーチ要求信号を取り込むと、その後、図9のステップSa1の処理において、ビームサーチ実行指示部11が全ビームサーチ要求信号を取り込んだ後の処理が、i=2及び4として、ビームサーチ実行指示部11、ディジタル信号処理装置20、本体装置32-2、本体装置32-4、分散アンテナ31-2、分散アンテナ31-4及び端末装置40によって行われる(i=2及び4の場合のステップSh1)。
【0268】
候補ビーム検出部15dは、フィードバック信号タイマが満了するまでに2番目の分散アンテナ31-2の分散アンテナIDである「分散アンテナID#2」、又は、4番目の分散アンテナ31-4の分散アンテナIDである「分散アンテナID#4」が送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んだか否かを判定する(i=2及び4の場合のステップSh2)。ここでは、上記したビーム組合せ履歴生成部13がフィードバック信号を取り込めない場合のいずれかの事象が発生せず、フィードバック信号受信部12が候補ビーム検出部15dに、2番目の分散アンテナ31-2の分散アンテナIDである「分散アンテナID#2」が送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を出力したとする。この場合、候補ビーム検出部15dは、フィードバック信号タイマが満了するまでに2番目の分散アンテナ31-2の分散アンテナIDである「分散アンテナID#2」が送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んだと判定する(i=2及び4の場合のステップSh2、Yes)。
【0269】
候補ビーム検出部15dは、ループLh1s~Lh1eの処理を抜けて、取り込んだフィードバック信号に含まれているビームIDを2番目の分散アンテナ装置30-2における最良のビームを示すビームIDとする。候補ビーム検出部15dは、当該ビームIDと、フィードバック信号に含まれている送信元アンテナIDである「分散アンテナID#2」とによって特定されるビームを検出基準ビームとする。ここでは、候補ビーム検出部15dが取り込んだフィードバック信号に含まれているビームIDは、「ビームID#33」であるとする。
【0270】
候補ビーム検出部15dは、フィードバック信号に含まれている送信元アンテナIDと、ビームIDと、受信電力値とを組合せて1組のデータとし、当該1組のデータをビーム組合せ記録部17に出力する。ビーム組合せ記録部17は、候補ビーム検出部15dが出力する1組のデータを取り込む。候補ビーム検出部15dは、フィードバック信号受信部12に対して、出力先をビームサーチ実行判定部16にする出力先切替指示信号を出力する。フィードバック信号受信部12は、候補ビーム検出部15dから出力先をビームサーチ実行判定部16にする出力先切替指示信号を受けると、フィードバック信号の出力先をビームサーチ実行判定部16に設定する(ステップSh3)。
【0271】
上記のステップSh2,Sh3の処理について別の言い方をすると、候補ビーム検出部15dは、分散アンテナ装置30-1~30-4のうちランダムに選択された複数の分散アンテナ装置を用いて同時に全ビームサーチを行わせる処理を行う。候補ビーム検出部15dは、その処理の途中で、1つのフィードバック信号を取り込むと、ループLh1s~Lh1eの処理を終了し、取り込んだフィードバック信号に含まれている送信元アンテナIDと、ビームIDとによって特定されるビームを検出基準ビームとしていることになる。
【0272】
仮に、無線通信システム1dが、N台の分散アンテナ装置30-1~30-Nを備えている場合、ループLh1s~Lh1eを抜けた時点でそれまでに選択されたことがある変数iの値と、Nの値とを用いて、全ビームサーチを行っていない分散アンテナ装置30-kが特定される。候補ビーム検出部15dは、変数kが取りうる値、及びすでに選択されたことがある値を、内部の記憶領域に書き込んで記録するようにしている。
【0273】
候補ビーム検出部15dは、k=1の場合、以下の処理を行う。すなわち、候補ビーム検出部15dは、1番目の分散アンテナ装置30-1のビームであって、検出基準ビームと共に選択されたことがあるビームのビームIDをビーム組合せ履歴テーブル140から検出する。ここで、検出基準ビームは、「分散アンテナID#2」の「ビームID#33」によって特定されるビームである。ビーム組合せ履歴テーブル140において、検出基準ビームに対応する「分散アンテナID#1」の「ビームID#33」は、「レコードID#2」,「レコードID#4」,「レコードID#6」に含まれている。「レコードID#2」,「レコードID#4」,「レコードID#6」の「分散アンテナID#1」の項目には、「ビームID#13」,「ビームID#25」が書き込まれている。
【0274】
したがって、候補ビーム検出部15dは、1番目の分散アンテナ装置30-1のビームであって、検出基準ビームと共に選択されたことがあるビームのビームIDとして「ビームID#13」と「ビームID#25」とをビーム組合せ履歴テーブル140から検出する。候補ビーム検出部15dは、「ビームID#13」と「ビームID#25」とを「分散アンテナID#1」に対応する分散アンテナ装置30-1の候補ビームを示す候補ビームIDとする。候補ビーム検出部15dは、「分散アンテナID#1」と、候補ビームIDである「ビームID#13」と、「ビームID#25」とを含む検出結果を示すデータを生成する(k=1の場合のステップSh4)。候補ビーム検出部15dは、生成した検出結果を示すデータをビームサーチ実行判定部16に出力する(k=1の場合のステップSh5)。ビームサーチ実行判定部16は、候補ビーム検出部15dから検出結果を示すデータを受けると、図11に示す全ビームサーチ実行判定の処理のサブルーチンを開始する(k=1の場合のステップSh6)。
【0275】
ビームサーチ実行判定部16は、候補ビーム検出部15dが出力する検出結果を示すデータを取り込む(k=1の場合のステップSc1)。ビームサーチ実行判定部16は、取り込んだ検出結果を示すデータに候補ビームIDが含まれているか否かを判定する(k=1の場合のステップSc2)。ここでは、検出結果を示すデータに「ビームID#13」と、「ビームID#25」とが含まれているため、ビームサーチ実行判定部16は、取り込んだ検出結果を示すデータに候補ビームIDが含まれていると判定する(k=1の場合のステップSc2、Yes)。
【0276】
ビームサーチ実行判定部16は、1番目の分散アンテナ31-1を備える分散アンテナ装置30-1に、候補ビームIDに対する部分ビームサーチを行わせるため、「分散アンテナID#1」と、「ビームID#13」と、「ビームID#25」とを含む部分ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力する。ビームサーチ実行判定部16は、部分ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力した後、内部に備えるフィードバック信号タイマを起動する。ビームサーチ実行判定部16は、フィードバック信号タイマを起動する際に、図9のステップSa1の処理において、ビーム組合せ履歴生成部13がフィードバック信号タイマに設定したのと同一の時間を設定する。
【0277】
ビームサーチ実行指示部11は、ビームサーチ実行判定部16が出力する部分ビームサーチ要求信号を取り込み、取り込んだ部分ビーム要求指示信号に含まれている「分散アンテナID#1」と、「ビームID#13」と、「ビームID#25」とを読み出す。ビームサーチ実行指示部11は、「分散アンテナID#1」と、「ビームID#13」とを含むビームサーチ指示信号と、「分散アンテナID#1」と、「ビームID#25」とを含むビームサーチ指示信号とを生成する。ビームサーチ実行指示部11は、生成した2個のビームサーチ指示信号を予め定められる一定の時間間隔で、生成した順に1つずつディジタル信号処理装置20に出力する。ディジタル信号処理装置20は、ビームサーチ実行指示部11が出力する2個のビームサーチ指示信号を順次取り込む。その後、図9のステップSa1の処理において、ディジタル信号処理装置20がビームサーチ指示信号を取り込んだ後の処理が、i=1として、ディジタル信号処理装置20、本体装置32-1、分散アンテナ31-1及び端末装置40によって行われる(k=1の場合のステップSc7)。
【0278】
ビームサーチ実行判定部16は、フィードバック信号タイマが満了するまでに1番目の分散アンテナ31-1の分散アンテナIDである「分散アンテナID#1」が送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んだか否かを判定する(ステップSc8)。
【0279】
例えば、上記したビーム組合せ履歴生成部13がフィードバック信号を取り込めない場合のいずれかの事象が発生したとする。この場合、ビームサーチ実行判定部16は、フィードバック信号タイマが満了するまでに1番目の分散アンテナ31-1の分散アンテナIDである「分散アンテナID#1」が送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んでいないと判定し(k=1の場合のステップSc8、No)、処理をステップSc3に進める。
【0280】
これに対して、上記したビーム組合せ履歴生成部13がフィードバック信号を取り込めない場合のいずれかの事象が発生せず、フィードバック信号受信部12がビームサーチ実行判定部16にフィードバック信号を出力したとする。この場合、ビームサーチ実行判定部16は、フィードバック信号タイマが満了するまでに1番目の分散アンテナ31-1の分散アンテナIDである「分散アンテナID#1」が送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んだと判定する(k=1の場合のステップSc8、Yes)。
【0281】
この場合、ビームサーチ実行判定部16は、フィードバック信号に含まれている受信電力値が、予め定められる閾値を超えているか否かを判定する(k=1の場合のステップSc9)。ビームサーチ実行判定部16は、フィードバック信号に含まれている受信電力値が、予め定められる閾値を超えていないと判定した場合(k=1の場合のステップSc9、No)、処理をステップSc3に進める。一方、ビームサーチ実行判定部16は、フィードバック信号に含まれている受信電力値が、予め定められる閾値を超えていると判定した場合(k=1の場合のステップSc9、Yes)、処理をステップSc5に進める。
【0282】
上記のステップSc7,Sc8,Sc9の処理について別の言い方をすると、ビームサーチ実行判定部16は、「分散アンテナID#1」に対応する分散アンテナ装置30-1に「ビームID#13」に対応するビームと、「ビームID#25」に対応するビームとを送信させる部分ビームサーチを行わせることになる。当該部分ビームサーチによるフィードバック信号が得られなかった場合、ビームサーチ実行判定部16は、処理をステップSc3に進めて「分散アンテナID#1」に対応する分散アンテナ装置30-1に全ビームサーチを行わせて、分散アンテナ装置30-1に対する最良のビームを再度探索することになる。また、この場合における全ビームサーチでは、ビームサーチ実行判定部16は、「ビームID#13」に対応するビーム及び「ビームID#25」に対応するビーム以外のビームのみを探索することになる。
【0283】
そして、ビームサーチ実行判定部16は、ステップSc4においてフィードバック信号タイマが満了するまでに「分散アンテナID#1」が送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んだ場合、処理をステップSc5に進めることにより、フィードバック信号に含まれているビームIDを、ビーム組合せ履歴テーブル140に追加する対象のデータとする。
【0284】
これに対して、当該部分ビームサーチによるフィードバック信号が得られた場合、フィードバック信号に含まれる受信電力値、つまり、端末装置40において最良のビームとして選択されたビームの受信電力値が、閾値を超えていないときには、ビームサーチ実行判定部16は、フィードバック信号によって示されたビームは通常運用に利用することができない適切でないビームであると判定していることになる。そのため、ビームサーチ実行判定部16は、処理をステップSc3に進めて「分散アンテナID#1」に対応する分散アンテナ装置30-1に全ビームサーチを行わせて、分散アンテナ装置30-1に対する最良のビームを再度探索することになる。また、この場合における全ビームサーチでは、ビームサーチ実行判定部16は、「ビームID#13」に対応するビーム及び「ビームID#25」に対応するビーム以外のビームのみを探索することになる。
【0285】
そして、ビームサーチ実行判定部16は、ステップSc4においてフィードバック信号タイマが満了するまでに「分散アンテナID#1」が送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んだ場合、処理をステップSc5に進めることにより、フィードバック信号に含まれているビームIDを、ビーム組合せ履歴テーブル140に追加する対象のデータとする。
【0286】
一方、フィードバック信号に含まれる受信電力値が、閾値を超えているときには、ビームサーチ実行判定部16は、処理をステップSc5に進めて、当該ビームを分散アンテナ装置30-1における最良のビームであると判定していることになる。この場合、ビームサーチ実行判定部16は、分散アンテナ装置30-1について全ビームサーチを行うことなく、当該ビームを通常運用に利用することができる適切であるビームとすることができるので、ビームの探索数を削減することができていることになる。
【0287】
候補ビーム検出部15dは、その時点で変数kのとりうる値(ここでは、「1」,「3」,「4」)のうち選択されたことがない値があれば、その選択されたことがない値を選択して、再びステップSh4~ステップSh6の処理が行われる(ループLh2s~Lh2e)。ここでは、変数kのとりうる値(ここでは、「1」,「3」,「4」)のうち「3」(及び「4」)はまだ選択されたことがないため、候補ビーム検出部15dは、「3」を新たなkの値とする。
【0288】
候補ビーム検出部15dは、k=3の場合、以下の処理を行う。すなわち、候補ビーム検出部15dは、3番目の分散アンテナ装置30-3のビームであって、検出基準ビームと共に選択されたことがあるビームを候補ビームとしてビーム組合せ履歴テーブル140から検出する。ここで、検出基準ビームは、「分散アンテナID#2」の「ビームID#33」によって特定されるビームである。ビーム組合せ履歴テーブル140において、検出基準ビームに対応する「分散アンテナID#2」の「ビームID#33」は、「レコードID#2」,「レコードID#4」,「レコードID#6」に含まれているが、「レコードID#2」,「レコードID#4」,「レコードID#6」の「分散アンテナID#3」の項目は、空欄になっている。そのため、候補ビーム検出部15dは、3番目の分散アンテナ装置30-3のビームであって、検出基準ビームと共に選択されたことがある候補ビームを示す候補ビームIDは存在しないことを検出結果とする。候補ビーム検出部15dは、「分散アンテナID#3」のみを含む検出結果を示すデータを生成する(k=3の場合のステップSh4)。
【0289】
候補ビーム検出部15dは、「分散アンテナID#3」のみを含む検出結果を示すデータをビームサーチ実行判定部16に出力する(k=3の場合のステップSh5)。ビームサーチ実行判定部16は、候補ビーム検出部15dから検出結果を示すデータを受けると、図11に示す全ビームサーチ実行判定の処理のサブルーチンを開始する(k=3の場合のステップSh6)。
【0290】
候補ビーム検出部15dは、ビームサーチ実行判定部16が出力する終了通知信号を取り込むと、その時点で変数kのとりうる値(ここでは、「1」,「3」,「4」)のうち選択されたことがない値があれば、その選択されたことがない値を選択して、再びステップSh4~ステップSh6の処理が行われる(ループLh2s~Lh2e)。
【0291】
候補ビーム検出部15dは、ビームサーチ実行判定部16が出力する終了通知信号を取り込むと、その時点で変数kのとりうる値(ここでは、「1」,「3」,「4」)のうち選択されたことがない値がなければ、ループLh2s~Lh2eの処理を終了して、処理をステップSh7に進める。
【0292】
ここでは、変数kのとりうる値(ここでは、「1」,「3」,「4」)のうち「4」はまだ選択されたことがないため、候補ビーム検出部15dは、「4」を新たなkの値とする。候補ビーム検出部15dは、k=4の場合、以下の処理を行う。すなわち、候補ビーム検出部15dは、4番目の分散アンテナ装置30-4のビームであって、検出基準ビームと共に選択されたことがあるビームのビームIDをビーム組合せ履歴テーブル140から検出する。ここで、検出基準ビームは、「分散アンテナID#2」の「ビームID#33」によって特定されるビームである。ビーム組合せ履歴テーブル140において、検出基準ビームに対応する「分散アンテナID#2」の「ビームID#33」は、「レコードID#2」,「レコードID#4」,「レコードID#6」に含まれている。「レコードID#2」,「レコードID#4」,「レコードID#6」の「分散アンテナID#4」の項目には、「ビームID#15」,「ビームID#16」,「ビームID#15」が書き込まれている。
【0293】
したがって、候補ビーム検出部15dは、4番目の分散アンテナ装置30-4のビームであって、検出基準ビームと共に選択されたことがあるビームのビームIDとして「ビームID#15」と「ビームID#16」とをビーム組合せ履歴テーブル140から検出する。候補ビーム検出部15dは、「ビームID#15」と「ビームID#16」とを「分散アンテナID#4」に対応する分散アンテナ装置30-4の候補ビームを示す候補ビームIDとする。候補ビーム検出部15dは、「分散アンテナID#4」と、候補ビームIDである「ビームID#15」と、「ビームID#16」とを含む検出結果を示すデータを生成する(k=4の場合のステップSh4)。候補ビーム検出部15dは、生成した検出結果を示すデータをビームサーチ実行判定部16に出力する(k=4の場合のステップSh5)。ビームサーチ実行判定部16は、候補ビーム検出部15dから検出結果を示すデータを受けると、図11に示す全ビームサーチ実行判定の処理のサブルーチンを開始する(k=4の場合のステップSh6)。
【0294】
ビームサーチ実行判定部16は、候補ビーム検出部15dが出力する検出結果を示すデータを取り込む(k=4の場合のステップSc1)。ビームサーチ実行判定部16は、取り込んだ検出結果を示すデータに候補ビームIDが含まれているか否かを判定する(k=4の場合のステップSc2)。ここでは、検出結果を示すデータに「ビームID#15」と、「ビームID#16」とが含まれているため、ビームサーチ実行判定部16は、取り込んだ検出結果を示すデータに候補ビームIDが含まれていると判定する(k=4の場合のステップSc2、Yes)。
【0295】
ビームサーチ実行判定部16は、4番目の分散アンテナ31-4を備える分散アンテナ装置30-4に、候補ビームIDに対する部分ビームサーチを行わせるため、「分散アンテナID#4」と、「ビームID#15」と、「ビームID#16」とを含む部分ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力する。ビームサーチ実行判定部16は、部分ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力した後、内部に備えるフィードバック信号タイマを起動する。ビームサーチ実行判定部16は、フィードバック信号タイマを起動する際に、図9のステップSa1の処理において、ビーム組合せ履歴生成部13がフィードバック信号タイマに設定したのと同一の時間を設定する。
【0296】
ビームサーチ実行指示部11は、ビームサーチ実行判定部16が出力する部分ビームサーチ要求信号を取り込み、取り込んだ部分ビーム要求指示信号に含まれている「分散アンテナID#4」と、「ビームID#15」と、「ビームID#16」とを読み出す。ビームサーチ実行指示部11は、「分散アンテナID#4」と、「ビームID#15」とを含むビームサーチ指示信号と、「分散アンテナID#4」と、「ビームID#16」とを含むビームサーチ指示信号とを生成する。ビームサーチ実行指示部11は、生成した2個のビームサーチ指示信号を予め定められる一定の時間間隔で、生成した順に1つずつディジタル信号処理装置20に出力する。ディジタル信号処理装置20は、ビームサーチ実行指示部11が出力する2個のビームサーチ指示信号を順次取り込む。その後、図9のステップSa1の処理において、ディジタル信号処理装置20がビームサーチ指示信号を取り込んだ後の処理が、i=4として、ディジタル信号処理装置20、本体装置32-4、分散アンテナ31-4及び端末装置40によって行われる(k=4の場合のステップSc7)。
【0297】
ビームサーチ実行判定部16は、フィードバック信号タイマが満了するまでに4番目の分散アンテナ31-4の分散アンテナIDである「分散アンテナID#4」が送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んだか否かを判定する(ステップSc8)。
【0298】
例えば、上記したビーム組合せ履歴生成部13がフィードバック信号を取り込めない場合のいずれかの事象が発生したとする。この場合、ビームサーチ実行判定部16は、フィードバック信号タイマが満了するまでに4番目の分散アンテナ31-4の分散アンテナIDである「分散アンテナID#4」が送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んでいないと判定し(k=4の場合のステップSc8、No)、処理をステップSc3に進める。
【0299】
これに対して、上記したビーム組合せ履歴生成部13がフィードバック信号を取り込めない場合のいずれかの事象が発生せず、フィードバック信号受信部12がビームサーチ実行判定部16にフィードバック信号を出力したとする。この場合、ビームサーチ実行判定部16は、フィードバック信号タイマが満了するまでに4番目の分散アンテナ31-4の分散アンテナIDである「分散アンテナID#4」が送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んだと判定する(k=4の場合のステップSc8、Yes)。
【0300】
この場合、ビームサーチ実行判定部16は、フィードバック信号に含まれている受信電力値が、予め定められる閾値を超えているか否かを判定する(k=4の場合のステップSc9)。ビームサーチ実行判定部16は、フィードバック信号に含まれている受信電力値が、予め定められる閾値を超えていないと判定した場合(k=4の場合のステップSc9、No)、処理をステップSc3に進める。一方、ビームサーチ実行判定部16は、フィードバック信号に含まれている受信電力値が、予め定められる閾値を超えていると判定した場合(k=4の場合のステップSc9、Yes)、処理をステップSc5に進める。
【0301】
上記のステップSc7,Sc8,Sc9の処理について別の言い方をすると、ビームサーチ実行判定部16は、「分散アンテナID#4」に対応する分散アンテナ装置30-4に「ビームID#15」に対応するビームと、「ビームID#16」に対応するビームとを送信させる部分ビームサーチを行わせることになる。当該部分ビームサーチによるフィードバック信号が得られなかった場合、ビームサーチ実行判定部16は、処理をステップSc3に進めて「分散アンテナID#4」に対応する分散アンテナ装置30-4に全ビームサーチを行わせて、分散アンテナ装置30-4に対する最良のビームを再度探索することになる。また、この場合における全ビームサーチでは、ビームサーチ実行判定部16は、「ビームID#15」に対応するビーム及び「ビームID#16」に対応するビーム以外のビームのみを探索することになる。
【0302】
そして、ビームサーチ実行判定部16は、ステップSc4においてフィードバック信号タイマが満了するまでに「分散アンテナID#4」が送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んだ場合、処理をステップSc5に進めることにより、フィードバック信号に含まれているビームIDを、ビーム組合せ履歴テーブル140に追加する対象のデータとする。
【0303】
これに対して、当該部分ビームサーチによるフィードバック信号が得られた場合、フィードバック信号に含まれる受信電力値、つまり、端末装置40において最良のビームとして選択されたビームの受信電力値が、閾値を超えていないときには、ビームサーチ実行判定部16は、フィードバック信号によって示されたビームは通常運用に利用することができない適切でないビームであると判定していることになる。そのため、ビームサーチ実行判定部16は、処理をステップSc3に進めて「分散アンテナID#4」に対応する分散アンテナ装置30-4に全ビームサーチを行わせて、分散アンテナ装置30-4に対する最良のビームを再度探索することになる。また、この場合における全ビームサーチでは、ビームサーチ実行判定部16は、「ビームID#15」に対応するビーム及び「ビームID#26」に対応するビーム以外のビームのみを探索することになる。
【0304】
そして、ビームサーチ実行判定部16は、ステップSc4においてフィードバック信号タイマが満了するまでに「分散アンテナID#4」が送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んだ場合、処理をステップSc5に進めることにより、フィードバック信号に含まれているビームIDを、ビーム組合せ履歴テーブル140に追加する対象のデータとする。
【0305】
一方、フィードバック信号に含まれる受信電力値が、閾値を超えているときには、ビームサーチ実行判定部16は、処理をステップSc5に進めて、当該ビームを分散アンテナ装置30-4における最良のビームであると判定していることになる。この場合、ビームサーチ実行判定部16は、分散アンテナ装置30-4について全ビームサーチを行うことなく、当該ビームを通常運用に利用することができる適切であるビームとすることができるので、ビームの探索数を削減することができていることになる。
【0306】
図22に戻り、候補ビーム検出部15dは、ビームサーチ実行判定部16が出力する終了通知信号を取り込むと、その時点で変数kのとりうる値(ここでは、「1」,「3」,「4」)のうち選択されたことがない値があれば、その選択されたことがない値を選択して、再びステップSh4~ステップSh6の処理が行われる(ループLh2s~Lh2e)。ここでは、その時点で変数kのとりうる値のうち、選択されたことがない値はもう存在しないため、ループLh2s~Lh2eの処理が終了し、ステップSh7の処理に進む。
【0307】
ビーム組合せ記録部17は、ステップSh3の処理及びステップSc5の処理において取り込んだ1組のデータ、すなわち送信元アンテナIDと、ビームIDと、受信電力値とを組合せたデータから受信電力値を除いた、残りのデータに基づいて、ビーム組合せ履歴テーブル140に1つのレコードを生成する。すなわち、ビーム組合せ記録部17は、ビーム組合せ履歴テーブル140に新たな行を生成することで、新たなレコードIDとして「レコードID#M+1」を生成する。ビーム組合せ記録部17は、生成した新たな行の「レコードID」の項目に、生成した新たなレコードIDである「レコードID#M+1」を書き込む。ビーム組合せ記録部17は、送信元アンテナIDと、ビームIDとの組合せに基づいて、「レコードID#M+1」の行における「分散アンテナID#1」,「分散アンテナID#2」,「分散アンテナID#3」,「分散アンテナID#4」の各々の要素に、各々に対応するビームIDを書き込む(ステップSh7)。
【0308】
上記の第5の実施形態の無線通信システム1dにおいて、候補ビーム検出部15dは、端末装置40との無線通信に用いるビームを探索するビーム探索期間において、分散アンテナ装置30-1~30-4のうちランダムに選択された複数の分散アンテナ装置を用いて同時に全ビームサーチを行わせ、全ビームサーチによるビームの中で最良のビームを示すビーム識別子を1つ取得した場合、全ビームサーチを停止させ、取得したビーム識別子と、当該ビーム識別子が示すビームを送信した分散アンテナ31-1~31-4を示す情報とによって特定されるビームを検出基準ビームとし、ビーム探索期間において全ビームサーチを行っていない分散アンテナ31-1~31-4のビーム識別子であって検出基準ビームと共に選択されたことがあるビームのビーム識別子を当該分散アンテナ31-1~31-4に対する候補ビーム識別子としてビーム組合せ履歴記憶部14から検出する。
【0309】
ビームサーチ実行判定部16は、ビーム探索期間において全ビームサーチを行っていない分散アンテナ31-1~31-4に対して全ビームサーチを行わせるか否かを、候補ビーム検出部15dの検出結果に基づいて判定する。ビーム組合せ記録部17は、ビーム探索期間において分散アンテナの各々において最良のビームとされたビームを示すビーム識別子の組合せを示すレコードを生成する。ビーム組合せ記録部17は、生成したレコードをビーム組合せ履歴記憶部14に記録する。これにより、ビーム組合せ履歴生成部13が行うビーム組合せ生成処理において、サービス提供エリア内であるセル100の全体にわたって伝送容量を低下させない程度の間隔で端末装置40を少しずつ移動させてビーム組合せの履歴を示す十分なレコードを生成できていなくても、ビーム探索処理を行う際に、伝送容量を低下させず、かつビーム探索数の削減を行うのに十分な数のレコードを蓄積することを可能にするという効果を奏する。
【0310】
また、第5の実施形態における無線通信システム1dは、ビーム探索の処理の最初の段階で、分散アンテナ装置30-1~30-4に対して固定された順序で全ビームサーチを行うのではなく、分散アンテナ装置30-1~30-4のうちランダムに選択された複数の分散アンテナ装置を用いて同時に全ビームサーチを行う。このような構成を備えることで、無線通信システム1dは、最良なビームではないが受信電力値が閾値を超えているビームが部分ビームサーチによって選択されることにより全ビームサーチが行われなかった分散アンテナ装置に対しても、ランダムなタイミングで全ビームサーチが行われることになる。よって、ビーム組合せ履歴テーブル140の更新も行われる。これにより、第5の実施形態における無線通信システム1dによれば、ビーム探索数を削減しつつ、最良ではないビームの組合せが固定的に選択され続けることを防ぐことができる。
【0311】
(第6の実施形態)
図23は、第6の実施形態における通信制御装置10eの構成を示すブロック図である。通信制御装置10eは、第2の実施形態の通信制御装置10aに替えて用いられる装置であり、以下、説明の便宜上、通信制御装置10aに替えて通信制御装置10eを備える無線通信システム1aを無線通信システム1eという。通信制御装置10eにおいて、第2の実施形態の通信制御装置10aと同一の構成については、同一の符号を付し、以下、異なる構成について説明する。
【0312】
第6の実施形態における無線通信システム1eの構成のうち、第2の実施形態における無線通信システム1aの構成と異なる点は、ビーム探索の処理の最初の段階で、分散アンテナ装置に対して固定された順序で全ビームサーチを行うのではなく、複数の分散アンテナ装置のうちランダムに選択された一部の複数の分散アンテナ装置を用いて同時に全ビームサーチを行う点である。
【0313】
通信制御装置10eは、ビームサーチ実行指示部11、フィードバック信号受信部12、ビーム組合せ履歴生成部13a、ビーム組合せ履歴記憶部14a、候補ビーム検出部15e、ビームサーチ実行判定部16a及びビーム組合せ記録部17aを備える。
【0314】
候補ビーム検出部15eは、ビームを探索するビーム探索処理が開始されると、N台の分散アンテナ装置30-1~30-Nのうち、複数の(X個の)分散アンテナ装置をランダムに選択する。例えば、候補ビーム検出部15eは、4台(N=4)の分散アンテナ装置30-1~30-4のうち、2台(X=2)の分散アンテナ装置をランダムに選択する。なお、ビーム探索処理が行われる度に、同数の(例えば2台(X=2)の)分散アンテナ装置がランダムに選択される構成であってもよいし、異なる数の(例えば2~3台(X=2~3)の)分散アンテナ装置がランダムに選択される構成であってもよい。
【0315】
候補ビーム検出部15eは、選択された複数の分散アンテナ装置の各々に対して同時に全ビームサーチを行わせる。すなわち、候補ビーム検出部15eは、ランダムに選択された、例えば分散アンテナ31-1及び31-4の2台分の分散アンテナIDを指定し、指定した2つの分散アンテナIDを含む全ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力する。候補ビーム検出部15eは、ビーム探索処理を開始した後に、最初のフィードバック信号を取り込むと、全ビームサーチを停止させ、当該フィードバック信号に含まれている送信元アンテナIDと、ビームIDとによって特定されるビームを検出基準ビームとする。候補ビーム検出部15eは、ビーム探索期間において全ビームサーチを行っていない分散アンテナ装置30-1~30-4のビームIDであって、検出基準ビームと共に選択されたことがあるビームのビームIDと、当該ビームIDに対応する分散アンテナIDとを、例えば図14に示されるビーム組合せ履歴テーブル140aから検出する。
【0316】
その際、候補ビーム検出部15eは、ビーム組合せ履歴テーブル140aにおいて、検出したビームIDと共に要素として書き込まれている受信電力値を検出する。候補ビーム検出部15eは、検出した分散アンテナIDに対応する分散アンテナ装置30-1~30-4における候補ビームを示す候補ビームIDとし、検出した分散アンテナIDと候補ビームIDの組合せを検出結果とする。候補ビーム検出部15eは、検出したビームIDと、検出した受信電力値との組合せに基づいて、ビームIDごとの受信電力値の平均値を算出し、算出した平均値の最大値を、検出した分散アンテナIDに対する平均受信電力値とする。候補ビーム検出部15eは、算出した平均受信電力値を、検出結果を示すデータに含める。
【0317】
(第6の実施形態の無線通信システムによる処理)
第2の実施形態と同様に、第6の実施形態の無線通信システム1eにおいても図8に示すステップS1のビーム組合せ生成処理と、ステップS2のビーム探索処理が行われる。ただし、以下に説明する点において、第6の実施形態で行われるビーム探索処理は、第2の実施形態で行われる処理と異なる。
【0318】
(第6の実施形態のビーム組合せ生成処理)
図9に示す第1の実施形態と同一のビーム組合せ生成処理が、ビームサーチ実行指示部11、フィードバック信号受信部12、ビーム組合せ履歴生成部13a、ディジタル信号処理装置20及び分散アンテナ装置30-1~30-4によって行われ、ビーム組合せ履歴生成部13aによって行われていた処理は、ビーム組合せ履歴生成部13eによって行われる。
【0319】
(第6の実施形態のビーム探索処理)
図24は、第6の実施形態のビーム探索処理を示すフローチャートである。図24は、図8のステップS2の処理において行われるビーム探索処理の流れを示すフローチャートである。
【0320】
図24において、ステップSi1,Si2の処理及びステップSi1,Si2の処理を繰り返すループLi1s~Li1eの処理、並びにステップSi3の処理は、図15のステップSd1,Sd2の処理及びステップSd1,Sd2の処理を繰り返すループLd1s~Ld1eの処理、並びにステップSd3の処理と同一の処理が、ビームサーチ実行指示部11、フィードバック信号受信部12、ディジタル信号処理装置20、分散アンテナ装置30-1~30-4によって行われ、候補ビーム検出部15aによって行われていた処理は、候補ビーム検出部15eによって行われる。ステップSi7の処理は、上記した処理が、ビーム組合せ記録部17aによって行われる。
【0321】
無線通信システム1eの運用者の操作を受けて、通信制御装置10eの候補ビーム検出部15eは、ビーム探索処理を開始する。候補ビーム検出部15eは、内部に備えるビーム探索周期タイマを起動する。候補ビーム検出部15eは、ビーム探索周期タイマを起動する際に、予め定められる1つのビーム探索周期の期間の長さを示す時間を設定する。
【0322】
候補ビーム検出部15eは、ビーム組合せ履歴記憶部14aが記憶するビーム組合せ履歴テーブル140aの分散アンテナIDの項目に書き込まれている全ての分散アンテナIDを読み出す。候補ビーム検出部15eは、内部の記憶領域に変数iを設ける。ここで、iは、1~Nまでの整数値をとりうる変数であるが、図1の無線通信システム1は、4台の分散アンテナ装置30-1~30-4を備えており、候補ビーム検出部15eは、ビーム組合せ履歴テーブル140aから「分散アンテナID#1」,「分散アンテナID#2」,「分散アンテナID#3」,「分散アンテナID#4」という4つの分散アンテナIDを読み出すため、以下では、N=4として説明を行う。i番目の分散アンテナ装置を分散アンテナ装置30-iとし、i番目の分散アンテナを分散アンテナ31-iとし、i番目の本体装置を本体装置32-iとして、以下の説明を行う。
【0323】
また、候補ビーム検出部15eは、内部の記憶領域に変数Xを設ける。ここで、Xは、2以上の整数値をとりうる変数である。Xは同時に全ビームサーチが行われる分散アンテナ装置の数を表す。以下では、一例としてX=2であるものとして説明を行う。
【0324】
候補ビーム検出部15eは、フィードバック信号受信部12に対して、出力先を候補ビーム検出部15eにする出力先切替指示信号を出力する。フィードバック信号受信部12は、候補ビーム検出部15eから出力先を候補ビーム検出部15eにする出力先切替指示信号を受けると、フィードバック信号の出力先を候補ビーム検出部15eに設定する。
【0325】
候補ビーム検出部15eは、変数iの値として1~Nの中からランダムに2つ(X=2)の値を選択する。候補ビーム検出部15eは、変数iが取りうる値(すなわち、1~N)、及びすでに選択されたことがある値を、内部の記憶領域に書き込んで記録するようにしている。ここでは、例えば、変数iの値として「1」及び「3」が選択されたとする。i=1及び3の場合、以下の処理を行う。すなわち、候補ビーム検出部15eは、1番目の分散アンテナ31-1を備える分散アンテナ装置30-1、及び3番目の分散アンテナ31-3を備える分散アンテナ装置30-3に対して、同時に全ビームサーチを行わせるため、1番目の分散アンテナ31-1に付与されている分散アンテナIDである「分散アンテナID#1」及び3番目の分散アンテナ31-3に付与されている分散アンテナIDである「分散アンテナID#3」を含む全ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力する。
【0326】
候補ビーム検出部15eは、全ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力した後、内部に備えるフィードバック信号タイマを起動する。候補ビーム検出部15eは、フィードバック信号タイマを起動する際に、図9のステップSa1の処理において、ビーム組合せ履歴生成部13aがフィードバック信号タイマに設定したのと同一の時間を設定する。なお、当該時間は、予め定められる時間であり、予め候補ビーム検出部15eに設定される。ビームサーチ実行指示部11が、候補ビーム検出部15eが出力する全ビームサーチ要求信号を取り込むと、その後、図9のステップSa1の処理において、ビームサーチ実行指示部11が全ビームサーチ要求信号を取り込んだ後の処理が、i=1及び3として、ビームサーチ実行指示部11、ディジタル信号処理装置20、本体装置32-1、本体装置32-3、分散アンテナ31-1、分散アンテナ31-3及び端末装置40によって行われる(i=1及び3の場合のステップSi1)。
【0327】
候補ビーム検出部15eは、フィードバック信号タイマが満了するまでに、分散アンテナ31-1の分散アンテナIDである「分散アンテナID#1」又は分散アンテナ31-3の分散アンテナIDである「分散アンテナID#3」のいずれかが送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んだか否かを判定する(i=1及び3の場合のステップSi2)。
【0328】
ここでは、上記したビーム組合せ履歴生成部13aがフィードバック信号を取り込めない場合のいずれかの事象が発生したとする。この場合、候補ビーム検出部15eは、フィードバック信号タイマが満了するまでに1番目の分散アンテナ31-1の分散アンテナIDである「分散アンテナID#1」及び3番目の分散アンテナ31-3の分散アンテナIDである「分散アンテナID#3」が送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んでいないと判定する(ステップSi2、No)。候補ビーム検出部15eは、その時点で分散アンテナの数Nの分だけ変数iの値が選択されていなければ(すなわち、変数iが取りうる全ての値がいずれも選択されたことがある状態となっていなければ)、変数iの値として、1~Nの中からランダムに2つ(X=2)の値を選択する。ここでは、変数iの値として残りの「2」及び「4」が選択されることになる。そして、再びステップSi1,Si2の処理が行われる(ループLi1s~Li1e)。
【0329】
候補ビーム検出部15eは、ループLi1s~Li1eの2回目の処理として、以下の処理を行う。すなわち、候補ビーム検出部15eは、2番目の分散アンテナ31-2を備える分散アンテナ装置30-2及び4番目の分散アンテナ31-4を備える分散アンテナ装置30-4に同時に全ビームサーチを行わせるため、2番目の分散アンテナ31-2に付与されている分散アンテナIDである「分散アンテナID#2」及び4番目の分散アンテナ31-4に付与されている分散アンテナIDである「分散アンテナID#4」を含む全ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力する。
【0330】
候補ビーム検出部15eは、全ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力した後、内部に備えるフィードバック信号タイマを起動する。候補ビーム検出部15eは、フィードバック信号タイマを起動する際に、図9のステップSa1の処理において、ビーム組合せ履歴生成部13がフィードバック信号タイマに設定したのと同一の時間を設定する。ビームサーチ実行指示部11が、候補ビーム検出部15eが出力する全ビームサーチ要求信号を取り込むと、その後、図9のステップSa1の処理において、ビームサーチ実行指示部11が全ビームサーチ要求信号を取り込んだ後の処理が、i=2及び4として、ビームサーチ実行指示部11、ディジタル信号処理装置20、本体装置32-2、本体装置32-4、分散アンテナ31-2、分散アンテナ31-4及び端末装置40によって行われる(i=2及び4の場合のステップSi1)。
【0331】
候補ビーム検出部15eは、フィードバック信号タイマが満了するまでに2番目の分散アンテナ31-2の分散アンテナIDである「分散アンテナID#2」、又は、4番目の分散アンテナ31-4の分散アンテナIDである「分散アンテナID#4」が送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んだか否かを判定する(i=2及び4の場合のステップSi2)。ここでは、上記したビーム組合せ履歴生成部13aがフィードバック信号を取り込めない場合のいずれかの事象が発生せず、フィードバック信号受信部12が候補ビーム検出部15eに、2番目の分散アンテナ31-2の分散アンテナIDである「分散アンテナID#2」が送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を出力したとする。この場合、候補ビーム検出部15eは、フィードバック信号タイマが満了するまでに2番目の分散アンテナ31-2の分散アンテナIDである「分散アンテナID#2」が送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んだと判定する(i=2及び4の場合のステップSi2、Yes)。
【0332】
候補ビーム検出部15eは、ループLi1s~Li1eの処理を抜けて、取り込んだフィードバック信号に含まれているビームIDを2番目の分散アンテナ装置30-2における最良のビームを示すビームIDとする。候補ビーム検出部15eは、当該ビームIDと、フィードバック信号に含まれている送信元アンテナIDである「分散アンテナID#2」とによって特定されるビームを検出基準ビームとする。ここでは、候補ビーム検出部15eが取り込んだフィードバック信号に含まれているビームIDは、「ビームID#33」であるとする。
【0333】
候補ビーム検出部15eは、フィードバック信号に含まれている送信元アンテナIDと、ビームIDと、受信電力値とを組合せて1組のデータとし、当該1組のデータをビーム組合せ記録部17aに出力する。ビーム組合せ記録部17aは、候補ビーム検出部15eが出力する1組のデータを取り込む。候補ビーム検出部15eは、フィードバック信号受信部12に対して、出力先をビームサーチ実行判定部16aにする出力先切替指示信号を出力する。フィードバック信号受信部12は、候補ビーム検出部15eから出力先をビームサーチ実行判定部16aにする出力先切替指示信号を受けると、フィードバック信号の出力先をビームサーチ実行判定部16aに設定する(ステップSi3)。
【0334】
上記のステップSi2,Si3の処理について別の言い方をすると、候補ビーム検出部15eは、全ての分散アンテナ装置30-1~30-4に対してランダムな順序で全ビームサーチを行わせる処理を行い、その処理の途中で、1つのフィードバック信号を取り込むと、ループLi1s~Li1eの処理を終了し、取り込んだフィードバック信号に含まれている送信元アンテナIDと、ビームIDとによって特定されるビームを検出基準ビームとしていることになる。
【0335】
仮に、無線通信システム1eが、N台の分散アンテナ装置30-1~30-Nを備えている場合、ループLi1s~Li1eを抜けた時点でそれまでに選択されたことがある変数iの値と、Nの値とを用いて、全ビームサーチを行っていない分散アンテナ装置30-kが特定される。候補ビーム検出部15eは、変数kが取りうる値、及びすでに選択されたことがある値を、内部の記憶領域に書き込んで記録するようにしている。
【0336】
候補ビーム検出部15eは、k=1の場合、以下の処理を行う。すなわち、候補ビーム検出部15eは、1番目の分散アンテナ装置30-1のビームであって、検出基準ビームと共に選択されたことがあるビームのビームIDをビーム組合せ履歴テーブル140aから検出する。ここで、検出基準ビームは、「分散アンテナID#2」の「ビームID#33」によって特定されるビームである。ビーム組合せ履歴テーブル140aにおいて、検出基準ビームに対応する「分散アンテナID#2」の「ビームID#33」は、「レコードID#2」,「レコードID#4」,「レコードID#6」に含まれている。「レコードID#2」,「レコードID#4」,「レコードID#6」の「分散アンテナID#1」の項目には、「ビームID#13」,「ビームID#25」が書き込まれている。
【0337】
したがって、候補ビーム検出部15eは、1番目の分散アンテナ装置30-1のビームであって、検出基準ビームと共に選択されたことがあるビームのビームIDとして「ビームID#13」と「ビームID#25」とをビーム組合せ履歴テーブル140aから検出する。候補ビーム検出部15eは、「ビームID#13」と「ビームID#25」とを「分散アンテナID#1」に対応する分散アンテナ装置30-1の候補ビームを示す候補ビームIDとする。
【0338】
候補ビーム検出部15eは、更に、「ビームID#25」について、「レコードID#2」の「(受信電力値2-1)」と、「レコードID#6」の「(受信電力値6-1)」とを検出し、「ビームID#13」について、「レコードID#4」の「(受信電力値4-1)」を検出する。候補ビーム検出部15eは、「ビームID#25」に対応する「(受信電力値2-1)」と「(受信電力値6-1)」の平均値を算出する。「ビームID#13」については、「(受信電力値4-1)」の1つしかないため、「(受信電力値4-1)」を平均値とする。候補ビーム検出部15eは、「ビームID#13」に対応する平均値及び「ビームID#25」の平均値の中で最大の平均値を「分散アンテナID#1」に対する平均受信電力値とする。候補ビーム検出部15eは、「分散アンテナID#1」と、候補ビームIDである「ビームID#13」と、「ビームID#25」と、算出した平均受信電力値とを含む検出結果を示すデータを生成する(k=1の場合のステップSi4)。候補ビーム検出部15eは、生成した検出結果を示すデータをビームサーチ実行判定部16aに出力する(k=1の場合のステップSi5)。
【0339】
続くステップSi6の処理において行われる図16の全ビームサーチ実行判定の処理のサブルーチンのステップSe1の処理において、ビームサーチ実行判定部16aは、候補ビーム検出部15eが出力する検出結果データを取り込み、ステップSe2の処理において、取り込んだ検出結果を示すデータに候補ビームIDが含まれていると判定する(k=1の場合のステップSe2、Yes)。
【0340】
ビームサーチ実行判定部16aは、ステップSe8の判定処理において「Yes」の判定をした場合、検出結果を示すデータに含まれている平均受信電力値を読み出し、読み出した平均受信電力値にマージンを与えて「分散アンテナID#1」に対する閾値を算出する(ステップSe9)。ビームサーチ実行判定部16aは、フィードバック信号に含まれている受信電力値が、フィードバック信号に含まれている送信元アンテナID(ここでは、「分散アンテナID#1」)に対して算出した閾値を超えているか否かを判定する(k=1の場合のステップSe10)。
【0341】
ビームサーチ実行判定部16aは、フィードバック信号に含まれている受信電力値が、当該フィードバック信号に含まれている送信元アンテナIDに対して算出した閾値を超えていると判定した場合(ステップSe10、Yes)、その後、処理をステップSe5の処理に進める。一方、ビームサーチ実行判定部16aは、フィードバック信号に含まれている受信電力値が、当該フィードバック信号に含まれている送信元アンテナIDに対して算出した閾値を超えていないと判定した場合(ステップSe10、No)、その後、処理をステップSe3の処理に進める。
【0342】
これにより、第6の実施形態では、ビームサーチ実行判定部16aが、分散アンテナ装置30-1~30-4のいずれかに部分ビームサーチを行わせると判定した場合、当該部分ビームサーチにより取得したフィードバック信号に含まれる受信電力値が、当該部分ビームサーチの対象の分散アンテナ装置30-1~30-4の過去の平均受信電力値程度の値であれば、当該フィードバック信号に含まれるビームIDが示すビームを、当該フィードバック信号に含まれる送信元アンテナIDに対応する分散アンテナ装置30-1~30-4の最良のビームとして探索できることになる。ビームサーチ実行判定部16aは、当該ビームに関連するデータをビーム組合せ履歴テーブル140aに追加することができることになる。
【0343】
これに対して、ビームサーチ実行判定部16aは、当該部分ビームサーチにより取得したフィードバック信号に含まれる受信電力値が、当該部分ビームサーチの対象の分散アンテナ装置30-1~30-4の過去の平均受信電力値程度の値でなければ、当該フィードバック信号に含まれる送信元アンテナIDに対応する分散アンテナ装置30-1~30-4に対して全ビームサーチを行わせる。ビームサーチ実行判定部16aが、当該全ビームサーチによりフィードバック信号を取得できれば、全ビームサーチの対象の分散アンテナ装置30-1~30-4における最良のビームを探索できることになり、フィードバック信号が取得できなければ、全ビームサーチの対象の分散アンテナ装置30-1~30-4における最良のビームを探索できないことになる。したがって、第6の実施形態では、第1の実施形態の通信制御装置10、第3の実施形態の通信制御装置10b、及び第5の実施形態の通信制御装置10dが奏する効果に加えて、部分ビームサーチを行わせる際に、第1の実施形態、第3の実施形態、及び第5の実施形態より正確に最良のビームを探索することができることになる。
【0344】
なお、前述の第5の実施形態では、予め定められる受信電力値の閾値をより高く設定することによって、通信品質の観点において最良ではないビームが選択される可能性をより低くすることができる。しかしながら、この場合、第5の実施形態では、より多くの分散アンテナ装置について全ビームサーチが行われることになるため、ビーム探索数の削減をすることが難しくなる。また、最適な閾値は、端末装置の位置等によっても変化するため、ビーム探索数を削減しつつ最良なビームを選択するための閾値を、一律の値として設定することは困難である。これに対し、第6の実施形態は、ビームの組み合わせごとに閾値を変更することによって実質的に端末装置40の位置ごとに閾値の変更をしていることになり、閾値を適応的に設定するような構成となっている。
【0345】
なお、第6の実施形態では、検出したビームIDごとの受信電力値の平均値が基準として用いられる方法について説明したが、平均値に限られるものではない。例えば、基準として用いられる値は、中央値であってもよいし、最頻値であってもよいし、最大値であってもよいし、あるいは最小値であってもよい。また、これらの値の中でも、最大値、最小値、あるいは平均値が基準として用いられる場合については、同一のビームIDの組合せで毎回算出しておくことで、他のレコードを削除するようにしてもよい。
【0346】
候補ビーム検出部15eは、その時点で変数kのとりうる値(ここでは、「1」,「3」,「4」)のうち選択されたことがない値があれば、その選択されたことがない値を選択して、再びステップSi4~ステップSi6の処理が行われる(ループLi2s~Li2e)。ここでは、変数kのとりうる値(ここでは、「1」,「3」,「4」)のうち「3」(及び「4」)はまだ選択されたことがないため、候補ビーム検出部15eは、「3」を新たなkの値とする。
【0347】
候補ビーム検出部15eは、k=3の場合、以下の処理を行う。ループLi2s~Li2eの処理において、k=3の場合は、第1の実施形態、第3の実施形態、及び第5の実施形態と同様に、候補ビーム検出部15eは、ビーム組合せ履歴テーブル140aから「分散アンテナID#3」に対応する候補ビームIDを検出できない。そのため、この場合、候補ビーム検出部15eは、受信電力値も検出できないことになる。したがって、候補ビーム検出部15eは、平均受信電力値を算出することもなく、第1の実施形態のステップSb4、第3の実施形態のステップSd4、及び第5の実施形態のステップSh4の処理と同様に、3番目の分散アンテナ装置30-3のビームであって、検出基準ビームと共に選択されたことがある候補ビームを示す候補ビームIDは存在しないことを検出結果とする。候補ビーム検出部15eは、「分散アンテナID#3」のみを含む検出結果を示すデータを生成する(k=3の場合のステップSi4)。
【0348】
候補ビーム検出部15eは、「分散アンテナID#3」のみを含む検出結果を示すデータをビームサーチ実行判定部16aに出力する(k=3の場合のステップSi5)。ビームサーチ実行判定部16aは、候補ビーム検出部15eから検出結果を示すデータを受けると、図16に示す全ビームサーチ実行判定の処理のサブルーチンを開始する(k=3の場合のステップSi6)。
【0349】
第6の実施形態のビーム探索処理のステップSi6において行われる全ビームサーチ実行判定の処理のサブルーチンについて、図16を参照しつつ説明する。ステップSe1~ステップSe6までの処理は、図11に示したステップSc1~ステップSc6と同一の処理が、ビームサーチ実行指示部11、フィードバック信号受信部12、ディジタル信号処理装置20、分散アンテナ装置30-1~30-4によって行われ、ビームサーチ実行判定部16によって行われていた処理は、ビームサーチ実行判定部16aによって行われる。そのため、k=3の場合、ステップSe2の判定処理で、ビームサーチ実行判定部16aは、「No」と判定し、処理は、ステップSe3に進められるため、その後、第1の実施形態におけるk=3の場合、第3の実施形態におけるk=3の場合、及び第5の実施形態におけるk=3の場合と同一の処理が行われることになる。
【0350】
これにより、第6の実施形態では、ビームサーチ実行判定部16aが、分散アンテナ装置30-1~30-4のいずれかに部分ビームサーチを行わせると判定した場合、当該部分ビームサーチにより取得したフィードバック信号に含まれる受信電力値が、当該部分ビームサーチの対象の分散アンテナ装置30-1~30-4の過去の平均受信電力値程度の値であれば、当該フィードバック信号に含まれるビームIDが示すビームを、当該フィードバック信号に含まれる送信元アンテナIDに対応する分散アンテナ装置30-1~30-4の最良のビームとして探索できることになる。ビームサーチ実行判定部16aは、当該ビームに関連するデータをビーム組合せ履歴テーブル140aに追加することができることになる。
【0351】
これに対して、ビームサーチ実行判定部16aは、当該部分ビームサーチにより取得したフィードバック信号に含まれる受信電力値が、当該部分ビームサーチの対象の分散アンテナ装置30-1~30-4の過去の平均受信電力値程度の値でなければ、当該フィードバック信号に含まれる送信元アンテナIDに対応する分散アンテナ装置30-1~30-4に対して全ビームサーチを行わせる。ビームサーチ実行判定部16aが、当該全ビームサーチによりフィードバック信号を取得できれば、全ビームサーチの対象の分散アンテナ装置30-1~30-4における最良のビームを探索できることになり、フィードバック信号が取得できなければ、全ビームサーチの対象の分散アンテナ装置30-1~30-4における最良のビームを探索できないことになる。したがって、第6の実施形態では、第1の実施形態の通信制御装置10、第3の実施形態の通信制御装置10b、及び第5の実施形態の通信制御装置10dが奏する効果に加えて、部分ビームサーチを行わせる際に、第1の実施形態、第3の実施形態、及び第5の実施形態より正確に最良のビームを探索することができることになる。
【0352】
また、第6の実施形態における無線通信システム1eは、ビーム探索の処理の最初の段階で、分散アンテナ装置30-1~30-4に対して固定された順序で全ビームサーチを行うのではなく、分散アンテナ装置30-1~30-4のうちランダムに選択された複数の分散アンテナ装置を用いて同時に全ビームサーチを行う。このような構成を備えることで、無線通信システム1eは、最良なビームではないが受信電力値が閾値を超えているビームが部分ビームサーチによって選択されることにより全ビームサーチが行われなかった分散アンテナ装置に対しても、ランダムなタイミングで全ビームサーチが行われることになる。よって、ビーム組合せ履歴テーブル140aの更新も行われる。これにより、第6の実施形態における無線通信システム1eによれば、ビーム探索数を削減しつつ、最良ではないビームの組合せが固定的に選択され続けることを防ぐことができる。
【0353】
なお、上記の第3の実施形態~第6の実施形態における無線通信システムは、ビーム探索の処理の最初の段階で、ランダムに1又は複数の分散アンテナ装置30-1~30-4を選択することを繰り返し、順に全ビームサーチを行う構成であった。これに対し、無線通信システムは、ビーム探索の処理の最初の段階で、初回のみランダムに1又は複数の分散アンテナ装置30-1~30-4を選択し、その後は選択順を毎回1つずつずらしていくようにしてもよい。
【0354】
すなわち、例えば、候補ビーム検出部15b,15cは、ビーム探索の処理の最初の段階で、まず初回に変数iの値として1~N(ここでは、N=4とする。)の中からランダムに1つを選択する。例えば、ここではi=2が選択されたこととする。これにより、候補ビーム検出部15b,15cは、まず、2番目の分散アンテナ31-2を備える分散アンテナ装置30-2に全ビームサーチを行わせる。その後は、候補ビーム検出部15b,15cは、変数iの値として1~Nの中からランダムに1つを選択するのではなく、変数iの値に1を加算したi=3を選択する。これにより、候補ビーム検出部15b,15cは、次に、3番目の分散アンテナ31-3を備える分散アンテナ装置30-3に全ビームサーチを行わせる。その後も、候補ビーム検出部15b,15cは、変数iの値に1を順に加算し、i=4、i=1の順に選択していく。これにより、候補ビーム検出部15b,15cは、次に、4番目の分散アンテナ31-4を備える分散アンテナ装置30-4に全ビームサーチを行わせ、その次に、1番目の分散アンテナ31-1を備える分散アンテナ装置30-1に全ビームサーチを行わせる。
【0355】
このように、候補ビーム検出部15b,15cは、初回に変数iの値としてランダムな選択によって2を選択した場合、この変数iの値を、2,3,4,1の順に選択していく。そして、次の回の候補ビーム検出処理においては、候補ビーム検出部15b,15cは、変数iの値として上記ランダムに選択された値である2に1を加算した3を選択し、この変数iの値を、3,4,1,2の順に選択していく。そして、さらにその次の回の候補ビーム検出処理においては、候補ビーム検出部15b,15cは、変数iの値として上記加算された値である3にさらに1を加算した4を選択し、この変数iの値を、4,1,2,3の順に選択していく。
【0356】
または、例えば、候補ビーム検出部15d,15eは、ビーム探索の処理の最初の段階で、まず初回に変数iの値として1~N(ここでは、N=8とする。)の中からランダムに2つ(ここでは、X=2とする。)を選択する。例えば、ここではi=2及び6が選択されたこととする。これにより、候補ビーム検出部15d,15eは、まず、2番目の分散アンテナ31-2を備える分散アンテナ装置30-2、及び6番目の分散アンテナ31-6(不図示)を備える分散アンテナ装置30-6(不図示)に全ビームサーチを行わせる。その後は、候補ビーム検出部15d,15eは、変数iの値として1~Nの中からランダムに1つを選択するのではなく、変数iの値に1を加算したi=3及び7を選択する。これにより、候補ビーム検出部15d,15eは、次に、3番目の分散アンテナ31-3を備える分散アンテナ装置30-3、及び7番目の分散アンテナ31-7(不図示)を備える分散アンテナ装置30-7(不図示)に全ビームサーチを行わせる。
【0357】
その後も、候補ビーム検出部15d,15eは、変数iの値に1を順に加算し、i=4及び8、i=5及び1の順に選択していく。これにより、候補ビーム検出部15d,15eは、次に、4番目の分散アンテナ31-4を備える分散アンテナ装置30-4及び8番目の分散アンテナ31-8(不図示)を備える分散アンテナ装置30-8(不図示)に全ビームサーチを行わせ、その次に、5番目の分散アンテナ31-5(不図示)を備える分散アンテナ装置30-5(不図示)及び1番目の分散アンテナ31-1を備える分散アンテナ装置30-1に全ビームサーチを行わせる。
【0358】
このように、候補ビーム検出部15d,15eは、初回に変数iの値としてランダムな選択によって2及び6を選択した場合、この変数iの値を、2及び6,3及び7,4及び8,5及び1の順に選択していく。そして、次の回の候補ビーム検出処理においては、候補ビーム検出部15d,15eは、変数iの値として上記ランダムに選択された値である2及び6にそれぞれ1を加算した3及び7を選択し、この変数iの値を、3及び7,4及び8,5及び1,6及び2の順に選択していく。そして、さらにその次の回の候補ビーム検出処理においては、候補ビーム検出部15d,15eは、変数iの値として上記加算された値である3及び7にさらにそれぞれ1を加算した4及び8を選択し、この変数iの値を、4及び8,5及び1,6及び2,7及び3の順に選択していく。
【0359】
このような構成を備えることで、無線通信システムは、ビーム探索の処理の最初の段階で、初回のみランダムに1又は複数の分散アンテナ装置30-1~30-4を選択し、その後は選択順を毎回1つずつずらしていく。このような構成を備えることで、無線通信システムは、最良なビームではないが受信電力値が閾値を超えているビームが部分ビームサーチによって選択されることにより全ビームサーチが行われなかった分散アンテナ装置に対しても、ランダムなタイミングで全ビームサーチが行われることになる。よって、ビーム組合せ履歴テーブルの更新も行われる。これにより、無線通信システムによれば、ビーム探索数を削減しつつ、最良ではないビームの組合せが固定的に選択され続けることを防ぐことができる。
【0360】
一般的に、高周波数帯を用いた分散アンテナシステムは、端末装置の移動及び周囲の環境変化等に伴う伝搬路変動に追従するため、適切な頻度で周期的にビーム選択を行う必要がある。しかしながら、分散アンテナの台数の増加によって一回のビーム選択に要する時間が長くなりすぎると、当該ビーム選択に要する時間がビーム選択の実行周期より長くなってしまう場合がある。この場合、ビーム選択の実行周期内でビーム選択を完了させることができなくなるため、データ伝送そのものの実施が困難になる。
【0361】
これに対し、以上説明した第5の実施形態における無線通信システム1d及び第6の実施形態における無線通信システム1eは、ビーム探索の処理の最初の段階で、分散アンテナ装置30-1~30-4のうちランダムに選択された複数の分散アンテナ装置を用いて同時に全ビームサーチを行う構成である。このとき、分散アンテナ装置を用いて同時に全ビームサーチを行う方法としては、例えば、周波数多重、あるいは、符号多重等の技術が用いられる。
【0362】
なお、第5及び第6実施形態においては、直交する無線リソースを用いて同時に複数の分散アンテナで全ビームサーチを行うことができる。但し、全ての分散アンテナでこれを実施した場合には、全てのビームサーチが完了するため履歴を用いる部分ビームサーチは不要となるが、ビームサーチに必要な無線リソースが膨大になる。そのため、第5及び第6実施形態は、一部の複数の分散アンテナで同時に全ビームサーチを行い、残りの分散アンテナに対しては履歴を用いる部分ビームサーチを行う構成である。
【0363】
これに対し、以下に説明する第7及び第8実施形態では、全ての分散アンテナで同時に同一のビームサーチ信号を送信し、端末装置40aにおけるビームIDごとの受信品質から最良のビームが決定される。そして、分散アンテナ側におけるフィードバック信号の受信品質により、その最良ビームを持つ分散アンテナが特定される。このように、以下に説明する第7及び第8実施形態では、同一無線リソースで行わるため、ビームサーチに費やす無線リソースを第5及び第6実施形態より削減することができる。そして、第7及び第8実施形態では、上記の構成により、最良の分散アンテナの最良ビームは探索することはできるが、他の分散アンテナからの最良ビームは探索することができないため、ここに履歴を用いた部分ビームサーチが用いられる。
【0364】
さらに、以下に説明する第7の実施形態及び第8の実施形態では、無線通信システムが、ビーム探索の処理の最初の段階で、複数の分散アンテナ装置の全てを用いて同時に全ビームサーチを行う構成である。
【0365】
(第7の実施形態)
図25は、第7の実施形態における通信制御装置10fの構成を示すブロック図である。通信制御装置10fは、第1の実施形態の通信制御装置10に替えて用いられる装置であり、以下、説明の便宜上、通信制御装置10に替えて通信制御装置10fを備える無線通信システム1を無線通信システム1fという。通信制御装置10fにおいて、第1の実施形態の通信制御装置10と同一の構成については、同一の符号を付し、以下、異なる構成について説明する。
【0366】
第7の実施形態における無線通信システム1fの構成のうち、第1の実施形態における無線通信システム1の構成と異なる点は、ビーム探索の処理の最初の段階で、複数の分散アンテナ装置に対して固定された順序で1台ずつ全ビームサーチを行うのではなく、複数の分散アンテナ装置の全てを用いて同時に全ビームサーチを行う点である。
【0367】
通信制御装置10fは、ビームサーチ実行指示部11、フィードバック信号受信部12、ビーム組合せ履歴生成部13、ビーム組合せ履歴記憶部14、候補ビーム検出部15f、ビームサーチ実行判定部16及びビーム組合せ記録部17を備える。
【0368】
候補ビーム検出部15fは、ビームを探索するビーム探索処理が開始されると、N台の分散アンテナ装置30-1~30-Nの全てに対して同時に全ビームサーチを行わせる。このとき、候補ビーム検出部15fは、分散アンテナ装置30-1~30-Nの全てに対して、同一のビームIDを含むビームサーチ信号を送信させるための全ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力する。ここでは、候補ビーム検出部15fは、4台(N=4)の分散アンテナ装置30-1~30-4の全てから、同一のビームIDを含むビームが同時に送信されるように、全ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力する。
【0369】
候補ビーム検出部15fは、ビーム探索処理を開始した後に、全ての分散アンテナ装置(ここでは、N=4であるため、分散アンテナ装置30-1~30-4)で最初のフィードバック信号を取り込むと、全ビームサーチを停止させる。
【0370】
第7の実施形態及び後述される第8の実施形態では、前述の各実施形態とは異なり、フィードバック信号にビームIDは含まれているが、分散アンテナIDは含まれていない。なぜならば、第7の実施形態及び第8の実施形態における無線通信システムでは、全ての分散アンテナ装置から同時に、同一のビームIDを含むビームサーチ信号が後述される端末装置40aへ送信されるため、送信に用いられたビームを特定するための情報であるビームIDをビームサーチ信号に含めることはできるが、送信に用いられた分散アンテナ装置を特定する分散アンテナIDを含めることはできないからである。
【0371】
そこで、第7の実施形態及び第8の実施形態における無線通信システムでは、端末装置40aから送信されたフィードバック信号を各分散アンテナ装置(ここでは、分散アンテナ装置30-1~30-4)によってそれぞれ受信し、分散アンテナ装置ごとにフィードバック信号の受信品質(例えば、受信電力)を測定し、どの分散アンテナ装置が端末装置40aとの無線通信に最良であるかを判定する。
【0372】
第7の実施形態及び第8の実施形態における無線通信システムでは、複数の分散アンテナ装置から同時に同一のビームサーチ信号を送信するため、端末装置40aで受信される際に、一般的なガードインターバルなどの範囲の遅延波では、干渉とならずに受信可能となる。但し、このような構成によって、第7の実施形態及び第8の実施形態における無線通信システムでは、端末装置40a側においては、最良の分散アンテナの決定はできず、最良のビームしか決定できない。そのため、第7の実施形態及び第8の実施形態における無線通信システムでは、端末装置40aから送信されるフィードバック信号を複数の分散アンテナによって受信し、受信品質が最良の(例えば、受信電力が最大の)分散アンテナを最良のアンテナとして決定する。
【0373】
候補ビーム検出部15fは、端末装置40aから送信されたフィードバック信号に含まれるビームIDを読み出す。また、候補ビーム検出部15fは、フィードバック信号の受信電力を測定し、当該受信電力が最大であった分散アンテナ装置を特定する。候補ビーム検出部15fは、特定された分散アンテナ装置を示す分散アンテナIDと、フィードバック信号から読み出されたビームIDとによって特定されるビームを検出基準ビームとする。
【0374】
候補ビーム検出部15fは、受信電力が最大であった分散アンテナ装置以外の分散アンテナ装置のビームIDであって、検出基準ビームと共に選択されたことがあるビームのビームIDと、当該ビームIDに対応する分散アンテナIDとをビーム組合せ履歴テーブル140から検出する。候補ビーム検出部15fは、検出したビームIDを、検出した分散アンテナIDに対応する分散アンテナ装置30-1~30-4における候補ビームを示す候補ビームIDとし、検出した分散アンテナIDと候補ビームIDの組合せを検出結果とする。
【0375】
(第7の実施形態の無線通信システムによる処理)
第1の実施形態と同様に、第7の実施形態の無線通信システム1fにおいても図8に示すステップS1のビーム組合せ生成処理と、ステップS2のビーム探索処理が行われる。ただし、以下に説明する点において、第7の実施形態で行われるビーム探索処理は、第1の実施形態で行われる処理と異なる。
【0376】
(第7の実施形態のビーム組合せ生成処理)
図9に示す第1の実施形態と同一のビーム組合せ生成処理が、ビームサーチ実行指示部11、フィードバック信号受信部12、ビーム組合せ履歴生成部13、ディジタル信号処理装置20及び分散アンテナ装置30-1~30-4によって行われる。
【0377】
(第7の実施形態のビーム探索処理)
図26は、第7の実施形態のビーム探索処理を示すフローチャートである。図26は、図8のステップS2の処理において行われるビーム探索処理の流れを示すフローチャートである。図8に示すビーム探索処理が開始される前提として、ビーム組合せ履歴記憶部14に、図4に示すビーム組合せ履歴テーブル140が生成されているものとする。
【0378】
図26において、ステップSj1~ステップSj3の処理は、上記した処理が、候補ビーム検出部15fによって行われる。ステップSj4~ステップSj6の処理、ステップSj4~ステップSj6の処理を繰り返すループLj2s~Lj2eの処理、並びにステップSj7の処理は、図10のステップSb3の処理、ステップSb4~ステップSb6の処理、ステップSb4~ステップSb6の処理を繰り返すループLb2s~Lb2eの処理、並びにステップSb7の処理と同一の処理が、ビームサーチ実行指示部11、フィードバック信号受信部12、ビーム組合せ記録部17、ディジタル信号処理装置20、分散アンテナ装置30-1~30-4によって行われ、候補ビーム検出部15によって行われていた処理は、候補ビーム検出部15fによって行われる。
【0379】
無線通信システム1fの運用者の操作を受けて、通信制御装置10fの候補ビーム検出部15fは、ビーム探索処理を開始する。候補ビーム検出部15fは、内部に備えるビーム探索周期タイマを起動する。候補ビーム検出部15fは、ビーム探索周期タイマを起動する際に、予め定められる1つのビーム探索周期の期間の長さを示す時間を設定する。
【0380】
候補ビーム検出部15fは、ビーム組合せ履歴記憶部14が記憶するビーム組合せ履歴テーブル140の分散アンテナIDの項目に書き込まれている全ての分散アンテナIDを読み出す。候補ビーム検出部15fは、内部の記憶領域に変数iを設ける。ここで、iは、1~Nまでの整数値をとりうる変数であるが、図1の無線通信システム1は、4台の分散アンテナ装置30-1~30-4を備えており、候補ビーム検出部15fは、ビーム組合せ履歴テーブル140から「分散アンテナID#1」,「分散アンテナID#2」,「分散アンテナID#3」,「分散アンテナID#4」という4つの分散アンテナIDを読み出すため、以下では、N=4として説明を行う。i番目の分散アンテナ装置を分散アンテナ装置30-iとし、i番目の分散アンテナを分散アンテナ31-iとし、i番目の本体装置を本体装置32-iとして、以下の説明を行う。
【0381】
候補ビーム検出部15fは、フィードバック信号受信部12に対して、出力先を候補ビーム検出部15fにする出力先切替指示信号を出力する。フィードバック信号受信部12は、候補ビーム検出部15fから出力先を候補ビーム検出部15fにする出力先切替指示信号を受けると、フィードバック信号の出力先を候補ビーム検出部15fに設定する。
【0382】
候補ビーム検出部15fは、変数iの値として1~N(ここでは、N=4)の全ての値を選択する。候補ビーム検出部15fは、1番目の分散アンテナ31-1を備える分散アンテナ装置30-1、2番目の分散アンテナ31-2を備える分散アンテナ装置30-2、3番目の分散アンテナ31-3を備える分散アンテナ装置30-3、及び4番目の分散アンテナ31-4を備える分散アンテナ装置30-4に対して、同時に同一のビームIDを含むビームサーチ信号を送信する全ビームサーチを行わせるため、1番目の分散アンテナ31-1に付与されている分散アンテナIDである「分散アンテナID#1」、2番目の分散アンテナ31-2に付与されている分散アンテナIDである「分散アンテナID#2」、3番目の分散アンテナ31-3に付与されている分散アンテナIDである「分散アンテナID#3」、及び4番目の分散アンテナ31-4に付与されている分散アンテナIDである「分散アンテナID#4」を含む全ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力する。
【0383】
候補ビーム検出部15fは、全ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力した後、内部に備えるフィードバック信号タイマを起動する。候補ビーム検出部15fは、フィードバック信号タイマを起動する際に、図9のステップSa1の処理において、ビーム組合せ履歴生成部13がフィードバック信号タイマに設定したのと同一の時間を設定する。なお、当該時間は、予め定められる時間であり、予め候補ビーム検出部15fに設定される。
【0384】
ビームサーチ実行指示部11は、内部の記憶領域のビーム数テーブル110からビームID最大値を読み出す。ここでは、一例として、ビームサーチ実行指示部11は、ビームID最大値として「40」を読み出したとする。ビームサーチ実行指示部11は、読み出したビームID最大値、すなわち「40」に一致する数のビームサーチ指示信号であって、それぞれに含まれるビームIDが全て異なるビームIDになるように、1からビームID最大値までの間のビームIDを1つずつ含んだ同時ビームサーチ指示信号を生成する。
【0385】
ここでいう同時ビームサーチ指示信号とは、複数の分散アンテナ装置から同じビームIDを含むビームサーチ信号を同時に端末装置40aへ送信し、端末装置40aに最良のビームIDを示すフィードバック信号を返信させるための指示信号である。ビームサーチ実行指示部11は、生成した40個のビームサーチ指示信号を予め定められる一定の時間間隔で、生成した順に1つずつディジタル信号処理装置20に出力する(ステップSj1)。
【0386】
ディジタル信号処理装置20は、ビームサーチ実行指示部11が出力する40個のビームサーチ指示信号を順次取り込む。ディジタル信号処理装置20は、取り込んだビームサーチ指示信号からビームサーチ信号を生成する。ディジタル信号処理装置20は、生成したビームサーチ信号を、生成した順に、全ての本体装置32-i(i=1~N)にそれぞれ出力する。各本体装置32-i(i=1~N)は、ディジタル信号処理装置20が出力するビームサーチ信号を取り込む。各本体装置32-i(i=1~N)は、取り込んだビームサーチ信号に含まれているビームIDに対応する方向にビームを形成するようにビームサーチ信号に基づいて搬送波を変調する。各本体装置32-i(i=1~N)は、変調により生成したビームサーチ信号を載せた無線周波数のアナログ信号を生成する。各本体装置32-i(i=1~N)が、生成した無線周波数のアナログ信号をi番目の分散アンテナ31-i(i=1~N)に出力することにより、全ての分散アンテナ31-i(i=1~N)が、ビームサーチ信号に含まれている同一のビームIDの方向に、ビームサーチ信号を載せたビームをそれぞれ送信する。
【0387】
端末装置40aは、分散アンテナ31-i(i=1~N)が送信する全てのビームを受信する。端末装置40は、受信したビームの各々に対して、後述される処理を行い、最良のビームを示すビームIDを含むフィードバック信号を全ての分散アンテナ31-i(i=1~N)へ送信する。各分散アンテナ31-i(i=1~N)は、端末装置40aが送信するフィードバック信号が載せられた無線電波をそれぞれ受信する。各分散アンテナ31-i(i=1~N)は、受信した無線電波をアナログ信号として各本体装置32-i(i=1~N)にそれぞれ出力する。各本体装置32-i(i=1~N)は、フィードバック信号を含むアナログ信号をディジタル信号に変換してディジタル信号処理装置20に出力する。ディジタル信号処理装置20は、各本体装置32-i(i=1~N)が出力するディジタル信号に含まれているフィードバック信号を検出して取得する。ディジタル信号処理装置20は、取得したフィードバック信号を通信制御装置10fのフィードバック信号受信部12に出力する。フィードバック信号受信部12は、ディジタル信号処理装置20が出力するフィードバック信号を取り込み、取り込んだフィードバック信号を出力先として設定されている候補ビーム検出部15fに出力する。
【0388】
候補ビーム検出部15fは、端末装置40aから送信され、各分散アンテナ31-i(i=1~N)によってそれぞれ受信されたフィードバック信号を取り込む。候補ビーム検出部15fは、取り込まれたフィードバック信号に含まれるビームIDを読み出す。また、候補ビーム検出部15fは、フィードバック信号の受信電力を測定し、当該受信電力が最大であった分散アンテナを最良の分散アンテナとして特定する(ステップSj2)。また、候補ビーム検出部15fは、フィードバック信号から読み出されたビームIDとによって特定されるビームを、上記最良の分散アンテナを有する分散アンテナ装置における最良のビームとし、検出基準ビームとする(ステップSj3)。
【0389】
ここでは、受信電力が最大であった分散アンテナは、2番目の分散アンテナ31-2であるものとする。2番目の分散アンテナ31-2の分散アンテナIDは「分散アンテナID#2」である。また、ここでは、候補ビーム検出部15fが取り込んだフィードバック信号に含まれているビームIDは、「ビームID#33」であるとする。
【0390】
候補ビーム検出部15fは、受信電力が最大であった分散アンテナ装置以外の分散アンテナ装置のビームIDであって、検出基準ビームと共に選択されたことがあるビームのビームIDと、当該ビームIDに対応する分散アンテナIDとをビーム組合せ履歴テーブル140から検出する。候補ビーム検出部15fは、検出したビームIDを、検出した分散アンテナIDに対応する分散アンテナ装置30-1~30-4における候補ビームを示す候補ビームIDとし、検出した分散アンテナIDと候補ビームIDの組合せを検出結果とする(ステップSj4)。
【0391】
候補ビーム検出部15fは、フィードバック信号受信部12に対して、出力先をビームサーチ実行判定部16にする出力先切替指示信号を出力する。フィードバック信号受信部12は、候補ビーム検出部15fから出力先をビームサーチ実行判定部16にする出力先切替指示信号を受けると、フィードバック信号の出力先をビームサーチ実行判定部16に設定する(ステップSj5)。
【0392】
候補ビーム検出部15fは、k=1の場合、以下の処理を行う。すなわち、候補ビーム検出部15fは、1番目の分散アンテナ装置30-1のビームであって、検出基準ビームと共に選択されたことがあるビームのビームIDをビーム組合せ履歴テーブル140から検出する。ここで、検出基準ビームは、「分散アンテナID#2」の「ビームID#33」によって特定されるビームである。ビーム組合せ履歴テーブル140において、検出基準ビームに対応する「分散アンテナID#1」の「ビームID#33」は、「レコードID#2」,「レコードID#4」,「レコードID#6」に含まれている。「レコードID#2」,「レコードID#4」,「レコードID#6」の「分散アンテナID#1」の項目には、「ビームID#13」,「ビームID#25」が書き込まれている。
【0393】
したがって、候補ビーム検出部15fは、1番目の分散アンテナ装置30-1のビームであって、検出基準ビームと共に選択されたことがあるビームのビームIDとして「ビームID#13」と「ビームID#25」とをビーム組合せ履歴テーブル140から検出する。候補ビーム検出部15fは、「ビームID#13」と「ビームID#25」とを「分散アンテナID#1」に対応する分散アンテナ装置30-1の候補ビームを示す候補ビームIDとする。候補ビーム検出部15fは、「分散アンテナID#1」と、候補ビームIDである「ビームID#13」と、「ビームID#25」とを含む検出結果を示すデータを生成する(k=1の場合のステップSj4)。候補ビーム検出部15fは、生成した検出結果を示すデータをビームサーチ実行判定部16に出力する(k=1の場合のステップSh5)。ビームサーチ実行判定部16は、候補ビーム検出部15fから検出結果を示すデータを受けると、図11に示す全ビームサーチ実行判定の処理のサブルーチンを開始する(k=1の場合のステップSj6)。
【0394】
ビームサーチ実行判定部16は、候補ビーム検出部15fが出力する検出結果を示すデータを取り込む(k=1の場合のステップSc1)。ビームサーチ実行判定部16は、取り込んだ検出結果を示すデータに候補ビームIDが含まれているか否かを判定する(k=1の場合のステップSc2)。ここでは、検出結果を示すデータに「ビームID#13」と、「ビームID#25」とが含まれているため、ビームサーチ実行判定部16は、取り込んだ検出結果を示すデータに候補ビームIDが含まれていると判定する(k=1の場合のステップSc2、Yes)。
【0395】
ビームサーチ実行判定部16は、1番目の分散アンテナ31-1を備える分散アンテナ装置30-1に、候補ビームIDに対する部分ビームサーチを行わせるため、「分散アンテナID#1」と、「ビームID#13」と、「ビームID#25」とを含む部分ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力する。ビームサーチ実行判定部16は、部分ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力した後、内部に備えるフィードバック信号タイマを起動する。ビームサーチ実行判定部16は、フィードバック信号タイマを起動する際に、図9のステップSa1の処理において、ビーム組合せ履歴生成部13がフィードバック信号タイマに設定したのと同一の時間を設定する。
【0396】
ビームサーチ実行指示部11は、ビームサーチ実行判定部16が出力する部分ビームサーチ要求信号を取り込み、取り込んだ部分ビーム要求指示信号に含まれている「分散アンテナID#1」と、「ビームID#13」と、「ビームID#25」とを読み出す。ビームサーチ実行指示部11は、「分散アンテナID#1」と、「ビームID#13」とを含むビームサーチ指示信号と、「分散アンテナID#1」と、「ビームID#25」とを含むビームサーチ指示信号とを生成する。ビームサーチ実行指示部11は、生成した2個のビームサーチ指示信号を予め定められる一定の時間間隔で、生成した順に1つずつディジタル信号処理装置20に出力する。ディジタル信号処理装置20は、ビームサーチ実行指示部11が出力する2個のビームサーチ指示信号を順次取り込む。その後、図9のステップSa1の処理において、ディジタル信号処理装置20がビームサーチ指示信号を取り込んだ後の処理が、i=1として、ディジタル信号処理装置20、本体装置32-1、分散アンテナ31-1及び端末装置40aによって行われる(k=1の場合のステップSc7)。
【0397】
ビームサーチ実行判定部16は、フィードバック信号タイマが満了するまでに1番目の分散アンテナ31-1の分散アンテナIDである「分散アンテナID#1」が送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んだか否かを判定する(ステップSc8)。
【0398】
例えば、上記したビーム組合せ履歴生成部13がフィードバック信号を取り込めない場合のいずれかの事象が発生したとする。この場合、ビームサーチ実行判定部16は、フィードバック信号タイマが満了するまでに1番目の分散アンテナ31-1の分散アンテナIDである「分散アンテナID#1」が送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んでいないと判定し(k=1の場合のステップSc8、No)、処理をステップSc3に進める。
【0399】
これに対して、上記したビーム組合せ履歴生成部13がフィードバック信号を取り込めない場合のいずれかの事象が発生せず、フィードバック信号受信部12がビームサーチ実行判定部16にフィードバック信号を出力したとする。この場合、ビームサーチ実行判定部16は、フィードバック信号タイマが満了するまでに1番目の分散アンテナ31-1の分散アンテナIDである「分散アンテナID#1」が送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んだと判定する(k=1の場合のステップSc8、Yes)。
【0400】
この場合、ビームサーチ実行判定部16は、フィードバック信号に含まれている受信電力値が、予め定められる閾値を超えているか否かを判定する(k=1の場合のステップSc9)。ビームサーチ実行判定部16は、フィードバック信号に含まれている受信電力値が、予め定められる閾値を超えていないと判定した場合(k=1の場合のステップSc9、No)、処理をステップSc3に進める。一方、ビームサーチ実行判定部16は、フィードバック信号に含まれている受信電力値が、予め定められる閾値を超えていると判定した場合(k=1の場合のステップSc9、Yes)、処理をステップSc5に進める。
【0401】
上記のステップSc7,Sc8,Sc9の処理について別の言い方をすると、ビームサーチ実行判定部16は、「分散アンテナID#1」に対応する分散アンテナ装置30-1に「ビームID#13」に対応するビームと、「ビームID#25」に対応するビームとを送信させる部分ビームサーチを行わせることになる。当該部分ビームサーチによるフィードバック信号が得られなかった場合、ビームサーチ実行判定部16は、処理をステップSc3に進めて「分散アンテナID#1」に対応する分散アンテナ装置30-1に全ビームサーチを行わせて、分散アンテナ装置30-1に対する最良のビームを再度探索することになる。また、この場合における全ビームサーチでは、ビームサーチ実行判定部16は、「ビームID#13」に対応するビーム及び「ビームID#25」に対応するビーム以外のビームのみを探索することになる。
【0402】
そして、ビームサーチ実行判定部16は、ステップSc4においてフィードバック信号タイマが満了するまでに「分散アンテナID#1」が送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んだ場合、処理をステップSc5に進めることにより、フィードバック信号に含まれているビームIDを、ビーム組合せ履歴テーブル140に追加する対象のデータとする。
【0403】
これに対して、当該部分ビームサーチによるフィードバック信号が得られた場合、フィードバック信号に含まれる受信電力値、つまり、端末装置40aにおいて最良のビームとして選択されたビームの受信電力値が、閾値を超えていないときには、ビームサーチ実行判定部16は、フィードバック信号によって示されたビームは通常運用に利用することができない適切でないビームであると判定していることになる。そのため、ビームサーチ実行判定部16は、処理をステップSc3に進めて「分散アンテナID#1」に対応する分散アンテナ装置30-1に全ビームサーチを行わせて、分散アンテナ装置30-1に対する最良のビームを再度探索することになる。また、この場合における全ビームサーチでは、ビームサーチ実行判定部16は、「ビームID#13」に対応するビーム及び「ビームID#25」に対応するビーム以外のビームのみを探索することになる。
【0404】
そして、ビームサーチ実行判定部16は、ステップSc4においてフィードバック信号タイマが満了するまでに「分散アンテナID#1」が送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んだ場合、処理をステップSc5に進めることにより、フィードバック信号に含まれているビームIDを、ビーム組合せ履歴テーブル140に追加する対象のデータとする。
【0405】
一方、フィードバック信号に含まれる受信電力値が、閾値を超えているときには、ビームサーチ実行判定部16は、処理をステップSc5に進めて、当該ビームを分散アンテナ装置30-1における最良のビームであると判定していることになる。この場合、ビームサーチ実行判定部16は、分散アンテナ装置30-1について全ビームサーチを行うことなく、当該ビームを通常運用に利用することができる適切であるビームとすることができるので、ビームの探索数を削減することができていることになる。ビームサーチ実行判定部16は、処理をステップSc5に進めることにより、当該ビームに関するデータを、ビーム組合せ履歴テーブル140に追加する対象のデータとしていることになる。
【0406】
候補ビーム検出部15fは、その時点で変数kのとりうる値(ここでは、「1」,「3」,「4」)のうち選択されたことがない値があれば、その選択されたことがない値を選択して、再びステップSh4~ステップSh6の処理が行われる(ループLh2s~Lh2e)。ここでは、変数kのとりうる値(ここでは、「1」,「3」,「4」)のうち「3」(及び「4」)はまだ選択されたことがないため、候補ビーム検出部15fは、「3」を新たなkの値とする。
【0407】
候補ビーム検出部15fは、k=3の場合、以下の処理を行う。すなわち、候補ビーム検出部15fは、3番目の分散アンテナ装置30-3のビームであって、検出基準ビームと共に選択されたことがあるビームを候補ビームとしてビーム組合せ履歴テーブル140から検出する。ここで、検出基準ビームは、「分散アンテナID#2」の「ビームID#33」によって特定されるビームである。ビーム組合せ履歴テーブル140において、検出基準ビームに対応する「分散アンテナID#2」の「ビームID#33」は、「レコードID#2」,「レコードID#4」,「レコードID#6」に含まれているが、「レコードID#2」,「レコードID#4」,「レコードID#6」の「分散アンテナID#3」の項目は、空欄になっている。そのため、候補ビーム検出部15fは、3番目の分散アンテナ装置30-3のビームであって、検出基準ビームと共に選択されたことがある候補ビームを示す候補ビームIDは存在しないことを検出結果とする。候補ビーム検出部15fは、「分散アンテナID#3」のみを含む検出結果を示すデータを生成する(k=3の場合のステップSj4)。
【0408】
候補ビーム検出部15fは、「分散アンテナID#3」のみを含む検出結果を示すデータをビームサーチ実行判定部16に出力する(k=3の場合のステップSj5)。ビームサーチ実行判定部16は、候補ビーム検出部15fから検出結果を示すデータを受けると、図11に示す全ビームサーチ実行判定の処理のサブルーチンを開始する(k=3の場合のステップSj6)。
【0409】
候補ビーム検出部15fは、ビームサーチ実行判定部16が出力する終了通知信号を取り込むと、その時点で変数kのとりうる値(ここでは、「1」,「3」,「4」)のうち選択されたことがない値があれば、その選択されたことがない値を選択して、再びステップSj4~ステップSj6の処理が行われる(ループLj2s~Lj2e)。
【0410】
候補ビーム検出部15fは、ビームサーチ実行判定部16が出力する終了通知信号を取り込むと、その時点で変数kのとりうる値(ここでは、「1」,「3」,「4」)のうち選択されたことがない値がなければ、ループLh2s~Lh2eの処理を終了して、処理をステップSj7に進める。
【0411】
ここでは、変数kのとりうる値(ここでは、「1」,「3」,「4」)のうち「4」はまだ選択されたことがないため、候補ビーム検出部15fは、「4」を新たなkの値とする。候補ビーム検出部15fは、k=4の場合、以下の処理を行う。すなわち、候補ビーム検出部15fは、4番目の分散アンテナ装置30-4のビームであって、検出基準ビームと共に選択されたことがあるビームのビームIDをビーム組合せ履歴テーブル140から検出する。ここで、検出基準ビームは、「分散アンテナID#2」の「ビームID#33」によって特定されるビームである。ビーム組合せ履歴テーブル140において、検出基準ビームに対応する「分散アンテナID#2」の「ビームID#33」は、「レコードID#2」,「レコードID#4」,「レコードID#6」に含まれている。「レコードID#2」,「レコードID#4」,「レコードID#6」の「分散アンテナID#4」の項目には、「ビームID#15」,「ビームID#16」,「ビームID#15」が書き込まれている。
【0412】
したがって、候補ビーム検出部15fは、4番目の分散アンテナ装置30-4のビームであって、検出基準ビームと共に選択されたことがあるビームのビームIDとして「ビームID#15」と「ビームID#16」とをビーム組合せ履歴テーブル140から検出する。候補ビーム検出部15fは、「ビームID#15」と「ビームID#16」とを「分散アンテナID#4」に対応する分散アンテナ装置30-4の候補ビームを示す候補ビームIDとする。候補ビーム検出部15fは、「分散アンテナID#4」と、候補ビームIDである「ビームID#15」と、「ビームID#16」とを含む検出結果を示すデータを生成する(k=4の場合のステップSj4)。候補ビーム検出部15fは、生成した検出結果を示すデータをビームサーチ実行判定部16に出力する(k=4の場合のステップSj5)。ビームサーチ実行判定部16は、候補ビーム検出部15fから検出結果を示すデータを受けると、図11に示す全ビームサーチ実行判定の処理のサブルーチンを開始する(k=4の場合のステップSj6)。
【0413】
ビームサーチ実行判定部16は、候補ビーム検出部15fが出力する検出結果を示すデータを取り込む(k=4の場合のステップSc1)。ビームサーチ実行判定部16は、取り込んだ検出結果を示すデータに候補ビームIDが含まれているか否かを判定する(k=4の場合のステップSc2)。ここでは、検出結果を示すデータに「ビームID#15」と、「ビームID#16」とが含まれているため、ビームサーチ実行判定部16は、取り込んだ検出結果を示すデータに候補ビームIDが含まれていると判定する(k=4の場合のステップSc2、Yes)。
【0414】
ビームサーチ実行判定部16は、4番目の分散アンテナ31-4を備える分散アンテナ装置30-4に、候補ビームIDに対する部分ビームサーチを行わせるため、「分散アンテナID#4」と、「ビームID#15」と、「ビームID#16」とを含む部分ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力する。ビームサーチ実行判定部16は、部分ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力した後、内部に備えるフィードバック信号タイマを起動する。ビームサーチ実行判定部16は、フィードバック信号タイマを起動する際に、図9のステップSa1の処理において、ビーム組合せ履歴生成部13がフィードバック信号タイマに設定したのと同一の時間を設定する。
【0415】
ビームサーチ実行指示部11は、ビームサーチ実行判定部16が出力する部分ビームサーチ要求信号を取り込み、取り込んだ部分ビーム要求指示信号に含まれている「分散アンテナID#4」と、「ビームID#15」と、「ビームID#16」とを読み出す。ビームサーチ実行指示部11は、「分散アンテナID#4」と、「ビームID#15」とを含むビームサーチ指示信号と、「分散アンテナID#4」と、「ビームID#16」とを含むビームサーチ指示信号とを生成する。ビームサーチ実行指示部11は、生成した2個のビームサーチ指示信号を予め定められる一定の時間間隔で、生成した順に1つずつディジタル信号処理装置20に出力する。ディジタル信号処理装置20は、ビームサーチ実行指示部11が出力する2個のビームサーチ指示信号を順次取り込む。その後、図9のステップSa1の処理において、ディジタル信号処理装置20がビームサーチ指示信号を取り込んだ後の処理が、i=4として、ディジタル信号処理装置20、本体装置32-4、分散アンテナ31-4及び端末装置40aによって行われる(k=4の場合のステップSc7)。
【0416】
ビームサーチ実行判定部16は、フィードバック信号タイマが満了するまでに4番目の分散アンテナ31-4の分散アンテナIDである「分散アンテナID#4」が送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んだか否かを判定する(ステップSc8)。
【0417】
例えば、上記したビーム組合せ履歴生成部13がフィードバック信号を取り込めない場合のいずれかの事象が発生したとする。この場合、ビームサーチ実行判定部16は、フィードバック信号タイマが満了するまでに4番目の分散アンテナ31-4の分散アンテナIDである「分散アンテナID#4」が送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んでいないと判定し(k=4の場合のステップSc8、No)、処理をステップSc3に進める。
【0418】
これに対して、上記したビーム組合せ履歴生成部13がフィードバック信号を取り込めない場合のいずれかの事象が発生せず、フィードバック信号受信部12がビームサーチ実行判定部16にフィードバック信号を出力したとする。この場合、ビームサーチ実行判定部16は、フィードバック信号タイマが満了するまでに4番目の分散アンテナ31-4の分散アンテナIDである「分散アンテナID#4」が送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んだと判定する(k=4の場合のステップSc8、Yes)。
【0419】
この場合、ビームサーチ実行判定部16は、フィードバック信号に含まれている受信電力値が、予め定められる閾値を超えているか否かを判定する(k=4の場合のステップSc9)。ビームサーチ実行判定部16は、フィードバック信号に含まれている受信電力値が、予め定められる閾値を超えていないと判定した場合(k=4の場合のステップSc9、No)、処理をステップSc3に進める。一方、ビームサーチ実行判定部16は、フィードバック信号に含まれている受信電力値が、予め定められる閾値を超えていると判定した場合(k=4の場合のステップSc9、Yes)、処理をステップSc5に進める。
【0420】
上記のステップSc7,Sc8,Sc9の処理について別の言い方をすると、ビームサーチ実行判定部16は、「分散アンテナID#4」に対応する分散アンテナ装置30-4に「ビームID#15」に対応するビームと、「ビームID#16」に対応するビームとを送信させる部分ビームサーチを行わせることになる。当該部分ビームサーチによるフィードバック信号が得られなかった場合、ビームサーチ実行判定部16は、処理をステップSc3に進めて「分散アンテナID#4」に対応する分散アンテナ装置30-4に全ビームサーチを行わせて、分散アンテナ装置30-4に対する最良のビームを再度探索することになる。また、この場合における全ビームサーチでは、ビームサーチ実行判定部16は、「ビームID#15」に対応するビーム及び「ビームID#26」に対応するビーム以外のビームのみを探索することになる。
【0421】
そして、ビームサーチ実行判定部16は、ステップSc4においてフィードバック信号タイマが満了するまでに「分散アンテナID#4」が送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んだ場合、処理をステップSc5に進めることにより、フィードバック信号に含まれているビームIDを、ビーム組合せ履歴テーブル140に追加する対象のデータとする。
【0422】
これに対して、当該部分ビームサーチによるフィードバック信号が得られた場合、フィードバック信号に含まれる受信電力値、つまり、端末装置40aにおいて最良のビームとして選択されたビームの受信電力値が、閾値を超えていないときには、ビームサーチ実行判定部16は、フィードバック信号によって示されたビームは通常運用に利用することができない適切でないビームであると判定していることになる。そのため、ビームサーチ実行判定部16は、処理をステップSc3に進めて「分散アンテナID#4」に対応する分散アンテナ装置30-4に全ビームサーチを行わせて、分散アンテナ装置30-4に対する最良のビームを再度探索することになる。また、この場合における全ビームサーチでは、ビームサーチ実行判定部16は、「ビームID#15」に対応するビーム及び「ビームID#26」に対応するビーム以外のビームのみを探索することになる。
【0423】
そして、ビームサーチ実行判定部16は、ステップSc4においてフィードバック信号タイマが満了するまでに「分散アンテナID#4」が送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んだ場合、処理をステップSc5に進めることにより、フィードバック信号に含まれているビームIDを、ビーム組合せ履歴テーブル140に追加する対象のデータとする。
【0424】
一方、フィードバック信号に含まれる受信電力値が、閾値を超えているときには、ビームサーチ実行判定部16は、処理をステップSc5に進めて、当該ビームを分散アンテナ装置30-4における最良のビームであると判定していることになる。この場合、ビームサーチ実行判定部16は、分散アンテナ装置30-4について全ビームサーチを行うことなく、当該ビームを通常運用に利用することができる適切であるビームとすることができるので、ビームの探索数を削減することができていることになる。
【0425】
図26に戻り、候補ビーム検出部15fは、ビームサーチ実行判定部16が出力する終了通知信号を取り込むと、その時点で変数kのとりうる値(ここでは、「1」,「3」,「4」)のうち選択されたことがない値があれば、その選択されたことがない値を選択して、再びステップSj4~ステップSj6の処理が行われる(ループLj2s~Lj2e)。ここでは、その時点で変数kのとりうる値のうち、選択されたことがない値はもう存在しないため、ループLj2s~Lj2eの処理が終了し、ステップSj7の処理に進む。
【0426】
ビーム組合せ記録部17は、ステップSj3の処理及びステップSc5の処理において取り込んだ1組のデータ、すなわち送信元アンテナIDと、ビームIDと、受信電力値とを組合せたデータから受信電力値を除いた、残りのデータに基づいて、ビーム組合せ履歴テーブル140に1つのレコードを生成する。すなわち、ビーム組合せ記録部17は、ビーム組合せ履歴テーブル140に新たな行を生成することで、新たなレコードIDとして「レコードID#M+1」を生成する。ビーム組合せ記録部17は、生成した新たな行の「レコードID」の項目に、生成した新たなレコードIDである「レコードID#M+1」を書き込む。ビーム組合せ記録部17は、送信元アンテナIDと、ビームIDとの組合せに基づいて、「レコードID#M+1」の行における「分散アンテナID#1」,「分散アンテナID#2」,「分散アンテナID#3」,「分散アンテナID#4」の各々の要素に、各々に対応するビームIDを書き込む(ステップSj7)。
【0427】
(第7の実施形態の端末装置の構成)
図27は、端末装置40aの構成を示すブロック図である。なお、後述される第8の実施形態における端末装置も、以下に説明する端末装置40aの構成と同様である。
【0428】
端末装置40aは、M本の端末アンテナ41-1~41-M、アナログ信号送受信部42、ディジタル信号処理部43、ビームサーチ信号受信部44、最良ビーム選択部45a及びフィードバック信号生成部46aを備える。ここで、Mは、2以上の整数である。端末アンテナ41-1~41-Mと、分散アンテナ装置30-1~30-4の各々が備える分散アンテナ31-1~31-4との間で、分散MIMOによる無線通信が行われる。
【0429】
アナログ信号送受信部42は、ディジタル信号処理部43が出力する送信データのディジタル信号に基づいて搬送波に対して変調を行って無線周波数のアナログ信号を生成する。アナログ信号送受信部42は、生成したアナログ信号を端末アンテナ41-1~41-Mを通じて無線電波により送信する。アナログ信号送受信部42は、端末アンテナ41-1~41-Mが無線電波を受信して出力するアナログ信号を復調してディジタル信号に変換する。アナログ信号送受信部42は、変換したディジタル信号をディジタル信号処理部43に出力する。アナログ信号送受信部42は、端末アンテナ41-1~41-Mで受信したビームの受信電力を測定する。アナログ信号送受信部42は、測定により得られた受信電力値を測定対象のビームに対応するディジタル信号に関連付けてディジタル信号処理部43に出力する。
【0430】
ディジタル信号処理部43は、フィードバック信号生成部46aが出力するフィードバック信号のディジタル信号をアナログ信号送受信部42に出力する。ディジタル信号処理部43は、アナログ信号送受信部42が出力するディジタル信号と、当該ディジタル信号に関連付けられている受信電力値とを取り込む。ディジタル信号処理部43は、取り込んだディジタル信号に受信データとして含まれているビームサーチ信号に、取り込んだ受信電力値を関連付けてビームサーチ信号受信部44に出力する。
【0431】
ビームサーチ信号受信部44は、ディジタル信号処理部43が出力するビームサーチ信号と、当該ビームサーチ信号に関連付けられている受信電力値とを取り込む。ビームサーチ信号受信部44は、取り込んだビームサーチ信号に含まれているビームIDと、取り込んだ受信電力値とを組合せて1組のデータとして内部の記憶領域に書き込んで記憶させる。ビームサーチ信号受信部44は、全てのビームサーチ信号を取り込むと、内部の記憶領域に記憶させた全てのデータを読み出す。ビームサーチ信号受信部44は、読み出した全てのデータを1セットのデータとして最良ビーム選択部45aに出力する。
【0432】
最良ビーム選択部45aは、ビームサーチ信号受信部44が出力する1セットのデータを取り込む。最良ビーム選択部45aは、取り込んだ1セットのデータの中で最大の受信電力値に対応するデータを選択する。言い換えると、最良ビーム選択部45aは、選択した最大の受信電力値に対応するビームIDが示すビームを最良のビームとして選択していることになる。最良ビーム選択部45aは、選択したデータに含まれるビームIDと、受信電力値とをフィードバック信号生成部46aに出力する。フィードバック信号生成部46aは、最良ビーム選択部45aが出力するビームIDと、受信電力値とを含むフィードバック信号を生成する。フィードバック信号生成部46aは、生成したフィードバック信号をディジタル信号処理部43に出力する。
【0433】
(第7の実施形態の端末装置による処理)
図28図29を参照しつつ端末装置40aによる処理について説明する。図28は、端末装置40aが、分散アンテナ装置30-1~30-4が送信するビームを受信する際に行われる処理の流れを示すフローチャートである。
【0434】
アナログ信号送受信部42は、分散アンテナ装置30-1~30-4の分散アンテナ31-1~31-4が送信するビームの受信を待機し(ステップStc1)、繰り返し端末アンテナ41-1~41-Mを通じてビームを受信したか否かを判定する(ステップStc2)。アナログ信号送受信部42は、ビームを受信していないと判定した場合(ステップStc2、No)、引き続きステップStc1の処理、すなわちビームの受信を待機する。
【0435】
一方、アナログ信号送受信部42は、ビームを受信したと判定した場合(ステップStc2、Yes)、端末アンテナ41-1~41-Mを通じて受信したビームの受信電力を測定する。アナログ信号送受信部42は、受信したビームをディジタル信号に変換する。アナログ信号送受信部42は、変換により得られたディジタル信号に、測定により得られた受信電力値を関連付けてディジタル信号処理部43に出力する。ディジタル信号処理部43は、アナログ信号送受信部42が出力するディジタル信号と、当該ディジタル信号に関連付けられている受信電力値とを取り込む。ディジタル信号処理部43は、取り込んだディジタル信号から受信データを検出することにより、ディジタル信号に受信データとして含まれているビームサーチ信号を取得する。ディジタル信号処理部43は、取得したビームサーチ信号に、取り込んだ受信電力値を関連付けてビームサーチ信号受信部44に出力する。
【0436】
ビームサーチ信号受信部44は、ディジタル信号処理部43が出力するビームサーチ信号と、ビームサーチ信号に関連付けられている受信電力値とを取り込む。ビームサーチ信号受信部44は、取り込んだビームサーチ信号に含まれているビームIDを読み出す(ステップStc3)。
【0437】
ビームサーチ信号受信部44は、内部にタイマを生成することができるようになっており、当該タイマを起動する。ビームサーチ信号受信部44は、タイマを起動する際、送信するビーム数が最も多い分散アンテナ装置30-1~30-4が全てのビームを送信するのに要する時間をタイマに設定する。なお、当該時間は、予め定められる時間であるものとする(ステップSta4)。
【0438】
ビームサーチ信号受信部44は、読み出したビームIDと、取り込んだ受信電力値とを組合せて1組のデータとし、当該1組のデータを内部の記憶領域に書き込んで記憶させる(ステップStc5)。その後、ステップStc1以降の処理が繰り返し行われる。
【0439】
図29は、ビームサーチ信号受信部44が起動したタイマが満了した際に行われる処理の流れを示すフローチャートである。ビームサーチ信号受信部44は、図28のステップStc4の処理において起動したタイマの満了を待機する。なお、タイマは、計測中の時間が、設定された時間になって満了するとタイマ満了通知信号を出力するようになっているものとする(ステップStd1)。
【0440】
ビームサーチ信号受信部44は、繰り返し、タイマ満了通知を受けたか否かを判定し(ステップStd2)、タイマ満了通知を受けていないと判定した場合(ステップStd2、No)、引き続きステップStd1の処理、すなわちタイマの満了を待機する。一方、ビームサーチ信号受信部44は、タイマ満了通知を受けたと判定した場合(ステップStd2、Yes)、当該タイマを消去する。ビームサーチ信号受信部44は、内部の記憶領域に記憶させているデータの中から、満了したタイマに関連付けられている全てのデータ、すなわちビームIDと、受信電力値とを組合せたデータを検出して読み出す。ビームサーチ信号受信部44は、読み出した後に内部の記憶領域から読み出したデータを削除する。ビームサーチ信号受信部44は、読み出した全てのデータを1セットのデータとして最良ビーム選択部45aに出力する(ステップStd3)。
【0441】
最良ビーム選択部45aは、ビームサーチ信号受信部44が出力する1セットのデータを取り込む。最良ビーム選択部45aは、取り込んだ1セットのデータの中で最大の受信電力値を含むデータ選択する(ステップStd4)。最良ビーム選択部45aは、選択したデータに含まれているビームIDと、受信電力値とをフィードバック信号生成部46aに出力する。フィードバック信号生成部46aは、最良ビーム選択部45aが出力するビームIDと、受信電力値とを取り込み、取り込んだビームIDと、受信電力値とを含むフィードバック信号を生成する。フィードバック信号生成部46aは、生成したフィードバック信号をディジタル信号処理部43に出力する(ステップStd5)。
【0442】
なお、第7の実施形態では、フィードバック信号生成部46は、必ずしも受信電力値をフィードバック信号に含めなくてもよい。フィードバック信号生成部46は、取り込んだ送信元アンテナID及びビームIDのみをを含むフィードバック信号を生成するようにしてもよい。
【0443】
ディジタル信号処理部43は、フィードバック信号生成部46aが出力するフィードバック信号を取り込む。ディジタル信号処理部43は、取り込んだフィードバック信号をアナログ信号送受信部42に出力する。アナログ信号送受信部42は、ディジタル信号処理部43が出力するフィードバック信号から無線周波数のアナログ信号を生成する。アナログ信号送受信部42は、生成したアナログ信号を端末アンテナ41-1~41-Mを通じて無線電波により送信する(ステップStd6)。
【0444】
上記の第7の実施形態の無線通信システム1fにおいて、候補ビーム検出部15fは、端末装置40aとの無線通信に用いるビームを探索するビーム探索期間において、複数の分散アンテナ装置の全てを用いて同一のビームIDを含むビームサーチ信号を送信する全ビームサーチを同時に行わせ、フィードバック信号を全てのアンテナ装置によって受信する。無線通信システム1fは、フィードバック信号に含まれる、全ビームサーチによるビームの中で最良のビームを示すビーム識別子を1つ取得した場合、全ビームサーチを停止させ、取得したビーム識別子と、当該フィードバック信号の受信品質(例えば、受信電力)が最良であった分散アンテナ31-1~31-4を示す情報とによって特定されるビームを検出基準ビームとする。無線通信システム1fは、検出基準ビームを持つ上記最良の分散アンテナ以外の分散アンテナのビーム識別子であって検出基準ビームと共に選択されたことがあるビームのビーム識別子を当該分散アンテナ31-1~31-4に対する候補ビーム識別子としてビーム組合せ履歴記憶部14から検出する。
【0445】
ビームサーチ実行判定部16は、ビーム探索期間において全ビームサーチを行っていない分散アンテナ31-1~31-4に対して全ビームサーチを行わせるか否かを、候補ビーム検出部15fの検出結果に基づいて判定する。ビーム組合せ記録部17は、ビーム探索期間において分散アンテナの各々において最良のビームとされたビームを示すビーム識別子の組合せを示すレコードを生成する。ビーム組合せ記録部17は、生成したレコードをビーム組合せ履歴記憶部14に記録する。これにより、ビーム組合せ履歴生成部13が行うビーム組合せ生成処理において、サービス提供エリア内であるセル100の全体にわたって伝送容量を低下させない程度の間隔で端末装置40aを少しずつ移動させてビーム組合せの履歴を示す十分なレコードを生成できていなくても、ビーム探索処理を行う際に、伝送容量を低下させず、かつビーム探索数の削減を行うのに十分な数のレコードを蓄積することを可能にするという効果を奏する。
【0446】
(第8の実施形態)
図30は、第8の実施形態における通信制御装置10gの構成を示すブロック図である。通信制御装置10gは、第2の実施形態の通信制御装置10aに替えて用いられる装置であり、以下、説明の便宜上、通信制御装置10aに替えて通信制御装置10gを備える無線通信システム1aを無線通信システム1gという。通信制御装置10eにおいて、第2の実施形態の通信制御装置10aと同一の構成については、同一の符号を付し、以下、異なる構成について説明する。
【0447】
第8の実施形態における無線通信システム1gの構成のうち、第2の実施形態における無線通信システム1aの構成と異なる点は、ビーム探索の処理の最初の段階で、複数の分散アンテナ装置に対して固定された順序で1台ずつ全ビームサーチを行うのではなく、複数の分散アンテナ装置の全てを用いて同時に全ビームサーチを行う点である。
【0448】
通信制御装置10gは、ビームサーチ実行指示部11、フィードバック信号受信部12、ビーム組合せ履歴生成部13a、ビーム組合せ履歴記憶部14a、候補ビーム検出部15g、ビームサーチ実行判定部16a及びビーム組合せ記録部17aを備える。
【0449】
候補ビーム検出部15gは、ビームを探索するビーム探索処理が開始されると、N台の分散アンテナ装置30-1~30-Nの全てに対して同時に全ビームサーチを行わせる。このとき、候補ビーム検出部15gは、分散アンテナ装置30-1~30-Nの全てに対して、同一のビームIDを含むビームサーチ信号を送信させるための全ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力する。ここでは、候補ビーム検出部15gは、4台(N=4)の分散アンテナ装置30-1~30-4の全てから、同一のビームIDを含むビームが同時に送信されるように、全ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力する。
【0450】
候補ビーム検出部15gは、ビーム探索処理を開始した後に、全ての分散アンテナ装置(ここでは、N=4であるため、分散アンテナ装置30-1~30-4)で最初のフィードバック信号を取り込むと、全ビームサーチを停止させる。
【0451】
第7の実施形態と同様に、第8の実施形態では、前述の各実施形態とは異なり、フィードバック信号にビームIDは含まれているが、分散アンテナIDは含まれていない。なぜならば、第8の実施形態における無線通信システム1gでは、全ての分散アンテナ装置から同時に、同一のビームIDを含むビームサーチ信号が後述される端末装置40aへ送信されるため、送信に用いられたビームを特定するための情報であるビームIDをビームサーチ信号に含めることはできるが、送信に用いられた分散アンテナ装置を特定する分散アンテナIDを含めることはできないからである。
【0452】
そこで、第8の実施形態における無線通信システム1gでは、端末装置40aから送信されたフィードバック信号を各分散アンテナ装置(ここでは、分散アンテナ装置30-1~30-4)によってそれぞれ受信し、分散アンテナ装置ごとにフィードバック信号の受信品質(例えば、受信電力)を測定し、どの分散アンテナ装置が端末装置40aとの無線通信に最良であるかを判定する。
【0453】
第8の実施形態における無線通信システム1gでは、複数の分散アンテナ装置から同時に同一のビームサーチ信号を送信するため、端末装置40aで受信される際に、一般的なガードインターバルなどの範囲の遅延波では、干渉とならずに受信可能となる。但し、このような構成によって、第8の実施形態における無線通信システム1gでは、端末装置40a側においては、最良の分散アンテナの決定はできず、最良のビームしか決定できない。そのため、第8の実施形態における無線通信システム1gでは、端末装置40aから送信されるフィードバック信号を複数の分散アンテナによって受信し、受信品質が最良となる(例えば、受信電力が最大となる)分散アンテナを最良のアンテナとして決定する。
【0454】
候補ビーム検出部15gは、端末装置40aから送信されたフィードバック信号に含まれるビームIDを読み出す。また、候補ビーム検出部15gは、フィードバック信号の受信電力を測定し、当該受信電力が最大であった分散アンテナ装置を特定する。候補ビーム検出部15gは、特定された分散アンテナ装置を示す分散アンテナIDと、フィードバック信号から読み出されたビームIDとによって特定されるビームを検出基準ビームとする。
【0455】
候補ビーム検出部15gは、ビーム探索期間において全ビームサーチを行っていない分散アンテナ装置30-1~30-4のビームIDであって、検出基準ビームと共に選択されたことがあるビームのビームIDと、当該ビームIDに対応する分散アンテナIDとを、例えば図14に示されるビーム組合せ履歴テーブル140aから検出する。その際、候補ビーム検出部15gは、ビーム組合せ履歴テーブル140aにおいて、検出したビームIDと共に要素として書き込まれている受信電力値を検出する。候補ビーム検出部15gは、検出した分散アンテナIDに対応する分散アンテナ装置30-1~30-4における候補ビームを示す候補ビームIDとし、検出した分散アンテナIDと候補ビームIDの組合せを検出結果とする。候補ビーム検出部15gは、検出したビームIDと、検出した受信電力値との組合せに基づいて、ビームIDごとの受信電力値の平均値を算出し、算出した平均値の最大値を、検出した分散アンテナIDに対する平均受信電力値とする。候補ビーム検出部15gは、算出した平均受信電力値を、検出結果を示すデータに含める。
【0456】
(第8の実施形態の無線通信システムによる処理)
第2の実施形態と同様に、第8の実施形態の無線通信システム1gにおいても図8に示すステップS1のビーム組合せ生成処理と、ステップS2のビーム探索処理が行われる。ただし、以下に説明する点において、第8の実施形態で行われるビーム探索処理は、第2の実施形態で行われる処理と異なる。
【0457】
(第8の実施形態のビーム組合せ生成処理)
図9に示す第1の実施形態と同一のビーム組合せ生成処理が、ビームサーチ実行指示部11、フィードバック信号受信部12、ビーム組合せ履歴生成部13a、ディジタル信号処理装置20及び分散アンテナ装置30-1~30-4によって行われる。
【0458】
(第8の実施形態のビーム探索処理)
図31は、第8の実施形態のビーム探索処理を示すフローチャートである。図31は、図8のステップS2の処理において行われるビーム探索処理の流れを示すフローチャートである。
【0459】
ステップSk1~ステップSk3の処理は、上記した処理が、候補ビーム検出部15gによって行われる。ステップSk4~ステップSk6の処理、ステップSk4~ステップSk6の処理を繰り返すループLk2s~Lk2eの処理、並びにステップSk7の処理は、図10のステップSb3の処理、ステップSb4~ステップSb6の処理、ステップSb4~ステップSb6の処理を繰り返すループLb2s~Lb2eの処理、並びにステップSb7の処理と同一の処理が、ビームサーチ実行指示部11、フィードバック信号受信部12、ビーム組合せ記録部17a、ディジタル信号処理装置20、分散アンテナ装置30-1~30-4によって行われ、候補ビーム検出部15aによって行われていた処理は、候補ビーム検出部15gによって行われる。
【0460】
無線通信システム1gの運用者の操作を受けて、通信制御装置10gの候補ビーム検出部15gは、ビーム探索処理を開始する。候補ビーム検出部15gは、内部に備えるビーム探索周期タイマを起動する。候補ビーム検出部15gは、ビーム探索周期タイマを起動する際に、予め定められる1つのビーム探索周期の期間の長さを示す時間を設定する。
【0461】
候補ビーム検出部15gは、ビーム組合せ履歴記憶部14aが記憶するビーム組合せ履歴テーブル140aの分散アンテナIDの項目に書き込まれている全ての分散アンテナIDを読み出す。候補ビーム検出部15gは、内部の記憶領域に変数iを設ける。ここで、iは、1~Nまでの整数値をとりうる変数であるが、図1の無線通信システム1は、4台の分散アンテナ装置30-1~30-4を備えており、候補ビーム検出部15gは、ビーム組合せ履歴テーブル140から「分散アンテナID#1」,「分散アンテナID#2」,「分散アンテナID#3」,「分散アンテナID#4」という4つの分散アンテナIDを読み出すため、以下では、N=4として説明を行う。i番目の分散アンテナ装置を分散アンテナ装置30-iとし、i番目の分散アンテナを分散アンテナ31-iとし、i番目の本体装置を本体装置32-iとして、以下の説明を行う。
【0462】
候補ビーム検出部15gは、フィードバック信号受信部12に対して、出力先を候補ビーム検出部15gにする出力先切替指示信号を出力する。フィードバック信号受信部12は、候補ビーム検出部15gから出力先を候補ビーム検出部15gにする出力先切替指示信号を受けると、フィードバック信号の出力先を候補ビーム検出部15gに設定する。
【0463】
候補ビーム検出部15gは、変数iの値として1~N(ここでは、N=4)の全ての値を選択する。候補ビーム検出部15gは、1番目の分散アンテナ31-1を備える分散アンテナ装置30-1、2番目の分散アンテナ31-2を備える分散アンテナ装置30-2、3番目の分散アンテナ31-3を備える分散アンテナ装置30-3、及び4番目の分散アンテナ31-4を備える分散アンテナ装置30-4に対して、同時に同一のビームIDを含むビームサーチ信号を送信する全ビームサーチを行わせるため、1番目の分散アンテナ31-1に付与されている分散アンテナIDである「分散アンテナID#1」、2番目の分散アンテナ31-2に付与されている分散アンテナIDである「分散アンテナID#2」、3番目の分散アンテナ31-3に付与されている分散アンテナIDである「分散アンテナID#3」、及び4番目の分散アンテナ31-4に付与されている分散アンテナIDである「分散アンテナID#4」を含む全ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力する。
【0464】
候補ビーム検出部15gは、全ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力した後、内部に備えるフィードバック信号タイマを起動する。候補ビーム検出部15gは、フィードバック信号タイマを起動する際に、図9のステップSa1の処理において、ビーム組合せ履歴生成部13がフィードバック信号タイマに設定したのと同一の時間を設定する。なお、当該時間は、予め定められる時間であり、予め候補ビーム検出部15gに設定される。
【0465】
ビームサーチ実行指示部11は、内部の記憶領域のビーム数テーブル110からビームID最大値を読み出す。ここでは、一例として、ビームサーチ実行指示部11は、ビームID最大値として「40」を読み出したとする。ビームサーチ実行指示部11は、読み出したビームID最大値、すなわち「40」に一致する数のビームサーチ指示信号であって、それぞれに含まれるビームIDが全て異なるビームIDになるように、1からビームID最大値までの間のビームIDを1つずつ含んだ同時ビームサーチ指示信号を生成する。
【0466】
前述の通り、ここでいう同時ビームサーチ指示信号とは、複数の分散アンテナ装置から同じビームIDを含むビームサーチ信号を同時に端末装置40aへ送信し、端末装置40aに最良のビームIDを示すフィードバック信号を返信させるための指示信号である。ビームサーチ実行指示部11は、生成した40個のビームサーチ指示信号を予め定められる一定の時間間隔で、生成した順に1つずつディジタル信号処理装置20に出力する(ステップSk1)。
【0467】
ディジタル信号処理装置20は、ビームサーチ実行指示部11が出力する40個のビームサーチ指示信号を順次取り込む。ディジタル信号処理装置20は、取り込んだビームサーチ指示信号からビームサーチ信号を生成する。ディジタル信号処理装置20は、生成したビームサーチ信号を、生成した順に、全ての本体装置32-i(i=1~N)にそれぞれ出力する。各本体装置32-i(i=1~N)は、ディジタル信号処理装置20が出力するビームサーチ信号を取り込む。各本体装置32-i(i=1~N)は、取り込んだビームサーチ信号に含まれているビームIDに対応する方向にビームを形成するようにビームサーチ信号に基づいて搬送波を変調する。各本体装置32-i(i=1~N)は、変調により生成したビームサーチ信号を載せた無線周波数のアナログ信号を生成する。各本体装置32-i(i=1~N)が、生成した無線周波数のアナログ信号をi番目の分散アンテナ31-i(i=1~N)に出力することにより、全ての分散アンテナ31-i(i=1~N)が、ビームサーチ信号に含まれている同一のビームIDの方向に、ビームサーチ信号を載せたビームをそれぞれ送信する。
【0468】
端末装置40aは、分散アンテナ31-i(i=1~N)が送信する全てのビームを受信する。端末装置40は、受信したビームの各々に対して、後述される処理を行い、最良のビームを示すビームIDを含むフィードバック信号を全ての分散アンテナ31-i(i=1~N)へ送信する。各分散アンテナ31-i(i=1~N)は、端末装置40aが送信するフィードバック信号が載せられた無線電波をそれぞれ受信する。各分散アンテナ31-i(i=1~N)は、受信した無線電波をアナログ信号として各本体装置32-i(i=1~N)にそれぞれ出力する。各本体装置32-i(i=1~N)は、フィードバック信号を含むアナログ信号をディジタル信号に変換してディジタル信号処理装置20に出力する。ディジタル信号処理装置20は、各本体装置32-i(i=1~N)が出力するディジタル信号に含まれているフィードバック信号を検出して取得する。ディジタル信号処理装置20は、取得したフィードバック信号を通信制御装置10gのフィードバック信号受信部12に出力する。フィードバック信号受信部12は、ディジタル信号処理装置20が出力するフィードバック信号を取り込み、取り込んだフィードバック信号を出力先として設定されている候補ビーム検出部15gに出力する。
【0469】
候補ビーム検出部15gは、端末装置40aから送信され、各分散アンテナ31-i(i=1~N)によってそれぞれ受信されたフィードバック信号を取り込む。候補ビーム検出部15gは、取り込まれたフィードバック信号に含まれるビームIDを読み出す。また、候補ビーム検出部15gは、フィードバック信号の受信電力を測定し、当該受信電力が最大であった分散アンテナを最良の分散アンテナとして特定する(ステップSk2)。また、候補ビーム検出部15gは、フィードバック信号から読み出されたビームIDとによって特定されるビームを、上記最良の分散アンテナを有する分散アンテナ装置における最良のビームとし、検出基準ビームとする(ステップSk3)。
【0470】
ここでは、受信電力が最大であった分散アンテナ装置は、2番目の分散アンテナ31-2であるものとする。2番目の分散アンテナ31-2の分散アンテナIDは「分散アンテナID#2」である。また、ここでは、候補ビーム検出部15gが取り込んだフィードバック信号に含まれているビームIDは、「ビームID#33」であるとする。
【0471】
候補ビーム検出部15gは、フィードバック信号受信部12aに対して、出力先をビームサーチ実行判定部16aにする出力先切替指示信号を出力する。フィードバック信号受信部12は、候補ビーム検出部15gから出力先をビームサーチ実行判定部16aにする出力先切替指示信号を受けると、フィードバック信号の出力先をビームサーチ実行判定部16aに設定する(ステップSk5)。
【0472】
候補ビーム検出部15gは、k=1の場合、以下の処理を行う。すなわち、候補ビーム検出部15gは、1番目の分散アンテナ装置30-1のビームであって、検出基準ビームと共に選択されたことがあるビームのビームIDをビーム組合せ履歴テーブル140aから検出する。ここで、検出基準ビームは、「分散アンテナID#2」の「ビームID#33」によって特定されるビームである。ビーム組合せ履歴テーブル140aにおいて、検出基準ビームに対応する「分散アンテナID#2」の「ビームID#33」は、「レコードID#2」,「レコードID#4」,「レコードID#6」に含まれている。「レコードID#2」,「レコードID#4」,「レコードID#6」の「分散アンテナID#1」の項目には、「ビームID#13」,「ビームID#25」が書き込まれている。
【0473】
したがって、候補ビーム検出部15gは、1番目の分散アンテナ装置30-1のビームであって、検出基準ビームと共に選択されたことがあるビームのビームIDとして「ビームID#13」と「ビームID#25」とをビーム組合せ履歴テーブル140aから検出する。候補ビーム検出部15gは、「ビームID#13」と「ビームID#25」とを「分散アンテナID#1」に対応する分散アンテナ装置30-1の候補ビームを示す候補ビームIDとする。
【0474】
候補ビーム検出部15gは、更に、「ビームID#25」について、「レコードID#2」の「(受信電力値2-1)」と、「レコードID#6」の「(受信電力値6-1)」とを検出し、「ビームID#13」について、「レコードID#4」の「(受信電力値4-1)」を検出する。候補ビーム検出部15gは、「ビームID#25」に対応する「(受信電力値2-1)」と「(受信電力値6-1)」の平均値を算出する。「ビームID#13」については、「(受信電力値4-1)」の1つしかないため、「(受信電力値4-1)」を平均値とする。候補ビーム検出部15gは、「ビームID#13」に対応する平均値及び「ビームID#25」の平均値の中で最大の平均値を「分散アンテナID#1」に対する平均受信電力値とする。候補ビーム検出部15gは、「分散アンテナID#1」と、候補ビームIDである「ビームID#13」と、「ビームID#25」と、算出した平均受信電力値とを含む検出結果を示すデータを生成する(k=1の場合のステップSk4)。候補ビーム検出部15gは、生成した検出結果を示すデータをビームサーチ実行判定部16aに出力する(k=1の場合のステップSk5)。
【0475】
続くステップSk6の処理において行われる図16の全ビームサーチ実行判定の処理のサブルーチンのステップSe1の処理において、ビームサーチ実行判定部16aは、候補ビーム検出部15gが出力する検出結果データを取り込み、ステップSe2の処理において、取り込んだ検出結果を示すデータに候補ビームIDが含まれていると判定する(k=1の場合のステップSe2、Yes)。
【0476】
ビームサーチ実行判定部16aは、ステップSe8の判定処理において「Yes」の判定をした場合、検出結果を示すデータに含まれている平均受信電力値を読み出し、読み出した平均受信電力値にマージンを与えて「分散アンテナID#1」に対する閾値を算出する(ステップSe9)。ビームサーチ実行判定部16aは、フィードバック信号に含まれている受信電力値が、フィードバック信号に含まれている送信元アンテナID(ここでは、「分散アンテナID#1」)に対して算出した閾値を超えているか否かを判定する(k=1の場合のステップSe10)。
【0477】
ビームサーチ実行判定部16aは、フィードバック信号に含まれている受信電力値が、当該フィードバック信号に含まれている送信元アンテナIDに対して算出した閾値を超えていると判定した場合(ステップSe10、Yes)、その後、処理をステップSe5の処理に進める。一方、ビームサーチ実行判定部16aは、フィードバック信号に含まれている受信電力値が、当該フィードバック信号に含まれている送信元アンテナIDに対して算出した閾値を超えていないと判定した場合(ステップSe10、No)、その後、処理をステップSe3の処理に進める。
【0478】
これにより、第8の実施形態では、ビームサーチ実行判定部16aが、分散アンテナ装置30-1~30-4のいずれかに部分ビームサーチを行わせると判定した場合、当該部分ビームサーチにより取得したフィードバック信号に含まれる受信電力値が、当該部分ビームサーチの対象の分散アンテナ装置30-1~30-4の過去の平均受信電力値程度の値であれば、当該フィードバック信号に含まれるビームIDが示すビームを、当該フィードバック信号に含まれる送信元アンテナIDに対応する分散アンテナ装置30-1~30-4の最良のビームとして探索できることになる。ビームサーチ実行判定部16aは、当該ビームに関連するデータをビーム組合せ履歴テーブル140aに追加することができることになる。
【0479】
これに対して、ビームサーチ実行判定部16aは、当該部分ビームサーチにより取得したフィードバック信号に含まれる受信電力値が、当該部分ビームサーチの対象の分散アンテナ装置30-1~30-4の過去の平均受信電力値程度の値でなければ、当該フィードバック信号に含まれる送信元アンテナIDに対応する分散アンテナ装置30-1~30-4に対して全ビームサーチを行わせる。ビームサーチ実行判定部16aが、当該全ビームサーチによりフィードバック信号を取得できれば、全ビームサーチの対象の分散アンテナ装置30-1~30-4における最良のビームを探索できることになり、フィードバック信号が取得できなければ、全ビームサーチの対象の分散アンテナ装置30-1~30-4における最良のビームを探索できないことになる。したがって、第8の実施形態では、第1の実施形態の通信制御装置10、第3の実施形態の通信制御装置10b、第5の実施形態の通信制御装置10d、及び第7の実施形態の通信制御装置10fが奏する効果に加えて、部分ビームサーチを行わせる際に、第1の実施形態、第3の実施形態、第5の実施形態、及び第7の実施形態より正確に最良のビームを探索することができることになる。
【0480】
候補ビーム検出部15gは、その時点で変数kのとりうる値(ここでは、「1」,「3」,「4」)のうち選択されたことがない値があれば、その選択されたことがない値を選択して、再びステップSk4~ステップSk6の処理が行われる(ループLk2s~Lk2e)。ここでは、変数kのとりうる値(ここでは、「1」,「3」,「4」)のうち「3」(及び「4」)はまだ選択されたことがないため、候補ビーム検出部15gは、「3」を新たなkの値とする。
【0481】
候補ビーム検出部15gは、k=3の場合、以下の処理を行う。ループLk2s~Lk2eの処理において、k=3の場合は、第1の実施形態、第3の実施形態、第5の実施形態、及び第7の実施形態と同様に、候補ビーム検出部15gは、ビーム組合せ履歴テーブル140aから「分散アンテナID#3」に対応する候補ビームIDを検出できない。そのため、この場合、候補ビーム検出部15gは、受信電力値も検出できないことになる。したがって、候補ビーム検出部15gは、平均受信電力値を算出することもなく、第1の実施形態のステップSb4、第3の実施形態のステップSd4、第5の実施形態のステップSh4、及び第7の実施形態のステップSj4の処理と同様に、3番目の分散アンテナ装置30-3のビームであって、検出基準ビームと共に選択されたことがある候補ビームを示す候補ビームIDは存在しないことを検出結果とする。候補ビーム検出部15gは、「分散アンテナID#3」のみを含む検出結果を示すデータを生成する(k=3の場合のステップSk4)。
【0482】
候補ビーム検出部15gは、「分散アンテナID#3」のみを含む検出結果を示すデータをビームサーチ実行判定部16aに出力する(k=3の場合のステップSk5)。ビームサーチ実行判定部16aは、候補ビーム検出部15gから検出結果を示すデータを受けると、図16に示す全ビームサーチ実行判定の処理のサブルーチンを開始する(k=3の場合のステップSk6)。
【0483】
第8の実施形態のビーム探索処理のステップSk6において行われる全ビームサーチ実行判定の処理のサブルーチンについて、図16を参照しつつ説明する。ステップSe1~ステップSe6までの処理は、図11に示したステップSc1~ステップSc6と同一の処理が、ビームサーチ実行指示部11、フィードバック信号受信部12、ディジタル信号処理装置20、分散アンテナ装置30-1~30-4によって行われ、ビームサーチ実行判定部16によって行われていた処理は、ビームサーチ実行判定部16aによって行われる。そのため、k=3の場合、ステップSe2の判定処理で、ビームサーチ実行判定部16aは、「No」と判定し、処理は、ステップSe3に進められるため、その後、第1の実施形態におけるk=3の場合、第3の実施形態におけるk=3の場合、第5の実施形態におけるk=3の場合、及び第7の実施形態におけるk=3の場合と同一の処理が行われることになる。
【0484】
これにより、第8の実施形態では、ビームサーチ実行判定部16aが、分散アンテナ装置30-1~30-4のいずれかに部分ビームサーチを行わせると判定した場合、当該部分ビームサーチにより取得したフィードバック信号に含まれる受信電力値が、当該部分ビームサーチの対象の分散アンテナ装置30-1~30-4の過去の平均受信電力値程度の値であれば、当該フィードバック信号に含まれるビームIDが示すビームを、当該フィードバック信号に含まれる送信元アンテナIDに対応する分散アンテナ装置30-1~30-4の最良のビームとして探索できることになる。ビームサーチ実行判定部16aは、当該ビームに関連するデータをビーム組合せ履歴テーブル140aに追加することができることになる。
【0485】
これに対して、ビームサーチ実行判定部16aは、当該部分ビームサーチにより取得したフィードバック信号に含まれる受信電力値が、当該部分ビームサーチの対象の分散アンテナ装置30-1~30-4の過去の平均受信電力値程度の値でなければ、当該フィードバック信号に含まれる送信元アンテナIDに対応する分散アンテナ装置30-1~30-4に対して全ビームサーチを行わせる。ビームサーチ実行判定部16aが、当該全ビームサーチによりフィードバック信号を取得できれば、全ビームサーチの対象の分散アンテナ装置30-1~30-4における最良のビームを探索できることになり、フィードバック信号が取得できなければ、全ビームサーチの対象の分散アンテナ装置30-1~30-4における最良のビームを探索できないことになる。したがって、第8の実施形態では、第1の実施形態の通信制御装置10、第3の実施形態の通信制御装置10b、第5の実施形態の通信制御装置10d、及び第7の実施形態の通信制御装置10fが奏する効果に加えて、部分ビームサーチを行わせる際に、第1の実施形態、第3の実施形態、第5の実施形態、及び第7の実施形態より正確に最良のビームを探索することができることになる。
【0486】
ところで、全ビームサーチを行っても候補ビームを選択することができないような分散アンテナ装置と端末装置との位置関係では、ビーム組合せ履歴テーブル140又はビーム組合せ履歴テーブル140aにはレコードは記録されない。そのため、上記のような位置関係の場合、ビーム組合せ履歴テーブル140又はビーム組合せ履歴テーブル140aを参照したとしても、候補ビームとなるビームのビームIDが常に検出されない状況となる可能性がある。この場合、前述の各実施形態では、分散アンテナ装置は、常に全ビームサーチを実行することになる。これにより、ビーム探索数の削減効果が低下してしまう。
【0487】
これに対し、以下に説明する第9の実施形態及び第10の実施形態では、候補ビームとなるビームのビームIDがビーム組合せ履歴テーブル140又はビーム組合せ履歴テーブル140aに存在しなかった場合であっても、無線通信システムは必ずしも全ビームサーチを行うとは限らないようにした構成である。第9の実施形態及び第10の実施形態における無線通信システムは、候補ビームとなるビームのビームIDがビーム組合せ履歴テーブル140又はビーム組合せ履歴テーブル140aに存在しなかった場合には、全ビームサーチを行うか否かを所定の判定ルールに従って判定する。
【0488】
(第9の実施形態)
図32は、第9の実施形態における通信制御装置10hの構成を示すブロック図である。通信制御装置10hは、第1の実施形態の通信制御装置10に替えて用いられる装置であり、以下、説明の便宜上、通信制御装置10に替えて通信制御装置10hを備える無線通信システム1を無線通信システム1hという。通信制御装置10hにおいて、第1の実施形態の通信制御装置10と同一の構成については、同一の符号を付し、以下、異なる構成について説明する。
【0489】
第9の実施形態における無線通信システム1hの構成のうち、第1の実施形態における無線通信システム1の構成と異なる点は、候補ビームとなるビームのビームIDがビーム組合せ履歴テーブル140に存在しない場合に、必ずしも全ビームサーチを行うのではなく、当該全ビームサーチを行うか否かを所定の判定ルールに従って判定する点である。なお、当該所定の判定ルールの一例については、後に説明する。
【0490】
通信制御装置10hは、ビームサーチ実行指示部11、フィードバック信号受信部12、ビーム組合せ履歴生成部13、ビーム組合せ履歴記憶部14、候補ビーム検出部15、ビームサーチ実行判定部16h及びビーム組合せ記録部17を備える。
【0491】
ビームサーチ実行判定部16hは、候補ビーム検出部15の検出結果に基づいて、ビーム探索期間において全ビームサーチを行っていない分散アンテナ装置30-1~30-4に対して全ビームサーチを行わせるか否かを判定する。
【0492】
より詳細には、ビームサーチ実行判定部16hは、ビーム探索期間において全ビームサーチを行っていない分散アンテナ装置30-1~30-4であって、候補ビーム検出部15の検出結果に候補ビームIDが含まれていない分散アンテナ装置30-1~30-4について、後述される所定の判定ルールに従い、全ビームサーチを行わせる分散アンテナ装置30-1~30-4とするか否かを判定する。ここで、全ビームサーチを行わせると判定されなかった分散アンテナ装置30-1~30-4については、最良となるビームの選択は行われない。
【0493】
ビームサーチ実行判定部16hは、候補ビーム検出部15の検出結果に候補ビームIDが含まれている分散アンテナ装置30-1~30-4に対して、検出結果に含まれている候補ビームIDによる部分ビームサーチを行わせる。すなわち、ビームサーチ実行判定部16hは、検出結果に含まれている分散アンテナIDと、候補ビームIDとを含む部分ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力する。ビームサーチ実行判定部16hは、部分ビームサーチによるビームを受信した端末装置40が送信するフィードバック信号に含まれている受信電力値と、予め定められる閾値とに基づいて、当該フィードバック信号に含まれている送信元アンテナIDに対応する分散アンテナ装置30-1~30-4に対して、全ビームサーチを行わせるか否かを判定する。ビームサーチ実行判定部16hは、全ビームサーチを行わせると判定した場合、判定対象としたフィードバック信号に含まれる送信元アンテナIDを指定する。ビームサーチ実行判定部16hは、指定した送信元アンテナIDを含む全ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力する。
【0494】
(第9の実施形態の全ビームサーチ実行判定処理)
以下、第9の実施形態における全ビームサーチ実行判定処理について説明する。例えば、図10に示されるビーム探索処理において、候補ビーム検出部15は、k=3の場合、以下の処理を行う。すなわち、候補ビーム検出部15は、3番目の分散アンテナ装置30-3のビームであって、検出基準ビームと共に選択されたことがあるビームを候補ビームとしてビーム組合せ履歴テーブル140から検出する。ここで、検出基準ビームは、「分散アンテナID#2」の「ビームID#33」によって特定されるビームである。ビーム組合せ履歴テーブル140において、検出基準ビームに対応する「分散アンテナID#2」の「ビームID#33」は、「レコードID#2」,「レコードID#4」,「レコードID#6」に含まれているが、「レコードID#2」,「レコードID#4」,「レコードID#6」の「分散アンテナID#3」の項目は、空欄になっている。そのため、候補ビーム検出部15は、3番目の分散アンテナ装置30-3のビームであって、検出基準ビームと共に選択されたことがある候補ビームを示す候補ビームIDは存在しないことを検出結果とする。候補ビーム検出部15は、「分散アンテナID#3」のみを含む検出結果を示すデータを生成する(k=3の場合のステップSb4)。
【0495】
候補ビーム検出部15は、「分散アンテナID#3」のみを含む検出結果を示すデータをビームサーチ実行判定部16hに出力する(k=3の場合のステップSb5)。ビームサーチ実行判定部16hは、候補ビーム検出部15から検出結果を示すデータを受けると、図33に示す全ビームサーチ実行判定の処理のサブルーチンを開始する(k=3の場合のステップSb6)。
【0496】
ビームサーチ実行判定部16hは、候補ビーム検出部15が出力する検出結果を示すデータを取り込む(k=3の場合のステップSl1)。ビームサーチ実行判定部16hは、取り込んだ検出結果を示すデータに候補ビームIDが含まれているか否かを判定する(k=3の場合のステップSl2)。ここでは、検出結果を示すデータに候補ビームIDは含まれていないため、ビームサーチ実行判定部16hは、取り込んだ検出結果を示すデータに候補ビームIDが含まれていないと判定する(k=3の場合のステップSl2、No)。
【0497】
取り込んだ検出結果を示すデータに候補ビームIDが含まれていないと判定された場合(k=3の場合のステップSl2、No)、ビームサーチ実行判定部16hは、全ビームサーチを実行するか否かを所定の判定ルールに従って判定する(k=3の場合のステップSl3)。全ビームサーチを実行しないと判定された場合(k=3の場合のステップSl3、No)、図33に示されるサブルーチンの処理を終了する。
【0498】
以下、全ビームサーチを実行すると判定された場合の(k=3の場合のステップSl3、Yes)、ステップSl4~ステップSl7の処理について説明する。ビームサーチ実行判定部16hは、検出結果を示すデータに含まれている「分散アンテナID#k」を読み出し、読み出した「分散アンテナID#k」に基づいて、k番目の分散アンテナ31-kを備える分散アンテナ装置30-kに全ビームサーチを行わせるため、「分散アンテナID#k」を含む全ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力する。ビームサーチ実行判定部16hは、全ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力した後、内部に備えるフィードバック信号タイマを起動する。
【0499】
ビームサーチ実行判定部16hは、フィードバック信号タイマを起動する際に、図9のステップSa1の処理において、ビーム組合せ履歴生成部13がフィードバック信号タイマに設定したのと同一の時間を設定する。なお、当該時間は、予め定められる時間であり、予めビームサーチ実行判定部16hに設定される。ビームサーチ実行指示部11が、ビームサーチ実行判定部16hが出力する全ビームサーチ要求信号を取り込むと、その後、図9のステップSa1の処理において、ビームサーチ実行指示部11が全ビームサーチ要求信号を取り込んだ後の処理が、i=kとして、ビームサーチ実行指示部11、ディジタル信号処理装置20、本体装置32-k、分散アンテナ31-k及び端末装置40によって行われる(ステップSl4)。
【0500】
ビームサーチ実行判定部16hは、フィードバック信号タイマが満了するまでにk番目の分散アンテナ31-kの分散アンテナIDである「分散アンテナID#k」が送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んだか否かを判定する(ステップSl5)。
【0501】
例えば、上記したビーム組合せ履歴生成部13がフィードバック信号を取り込めない場合のいずれかの事象が発生せず、フィードバック信号受信部12がビームサーチ実行判定部16hにフィードバック信号を出力したとする。この場合、ビームサーチ実行判定部16hは、フィードバック信号タイマが満了するまでにk番目の分散アンテナ31-kの分散アンテナIDである「分散アンテナID#k」が送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んだと判定する(ステップSl5、Yes)。ビームサーチ実行判定部16hは、フィードバック信号に含まれているビームIDをk番目の分散アンテナ装置30-kにおける最良のビームを示すビームIDとする。ビームサーチ実行判定部16hは、フィードバック信号に含まれている送信元アンテナIDと、ビームIDと、受信電力値とを組合せて1組のデータとし、当該1組のデータをビーム組合せ記録部17に出力する。ビーム組合せ記録部17は、ビームサーチ実行判定部16hが出力する1組のデータを取り込む。(ステップSl6)。
【0502】
これに対して、上記したビーム組合せ履歴生成部13がフィードバック信号を取り込めない場合のいずれかの事象が発生したとする。この場合、ビームサーチ実行判定部16hは、フィードバック信号タイマが満了するまでにk番目の分散アンテナ31-kの分散アンテナIDである「分散アンテナID#k」が送信元アンテナIDとして含まれているフィードバック信号を取り込んでいないと判定する(ステップSl5、No)。
【0503】
ビームサーチ実行判定部16hは、ステップSl6の処理の後、または、ステップSl5の処理において「No」の判定をした後、k番目の分散アンテナ装置30-kに対する処理が終了したことを示す終了通知信号であって、カウンタkの値を含む終了通知信号を候補ビーム検出部15に出力して(ステップSl7)、サブルーチンの処理を終了する。
【0504】
図10に戻り、候補ビーム検出部15は、ビームサーチ実行判定部16hが出力する終了通知信号を取り込むと、その時点でのkの値がN(ここでは、N=4)でなければ、kに1を加えた値を新たなkの値として、再びステップSb4~ステップSb6の処理が行われる(ループLb2s~Lb2e)。
【0505】
(候補ビームが無い場合の全ビームサーチ実行判定ルール)
以下に、候補ビームとなるビームのビームIDがビーム組合せ履歴テーブル140に存在しなかった場合の、全ビームサーチを実行するか否かについての判定ルールの一例を挙げる。なお、以下に例示する判定ルールは、後述される第10の実施形態においても適用可能である。
【0506】
・判定ルール(1)
複数の分散アンテナの最良ビームの組合せ記録(すなわち、ビーム組合せ履歴テーブル140)のレコード数が所定の数(Yレコード)を超えた場合に、全ビームサーチを実行しないと判定する。すなわち、レコードが蓄積されていき、記録されたレコード数が十分であると判定されると、候補ビームが存在しない場合に全ビームサーチを行う動作を行わないようにする構成である。端末装置40が静止状態である場合に全ビームサーチの実行回数が増加しないように、最良ビームの組合せが連続して重複する場合、または過去の所定の回数(A回)の中で重複する場合に、全ビームサーチを実行しないようにしてもよい。
【0507】
・判定ルール(2)
検出基準ビームと候補ビームとなるビームIDがない分散アンテナとの組合せごとに全ビームサーチの実行回数をカウントしておき、所定の実行回数(Z回)を超えた上記の組合せにおいて候補ビームとなるビームIDがないと出力されたときに、全ビームサーチを実行しないと判定する(端末装置40が静止状態である場合に全ビームサーチの実行回数が増加しないように、上記組合せが連続して重複する場合、または過去の所定の実行回数(A回)の中で重複する場合に、全ビームサーチを実行しないようにしてもよい。
【0508】
・判定ルール(3)
過去の所定の実行回数(B回)のビーム探索周期で、受信電力が閾値を上回らずに選択されなかった分散アンテナに対して候補ビームとなるビームIDが無い場合に、所定の確率(C%)で全ビームサーチを実行しないと判定する。なぜならば、上記の条件を満たす場合に毎回全ビームサーチをするようにした場合、永久に全ビームサーチが実行されるため、ビーム探索回数の削減効果が低下するからである。
【0509】
なお、以上説明した第9の実施形態における無線通信システム1hの構成は、前述の第1の実施形態、第3の実施形態、第5の実施形態、及び第7の実施形態の構成にも適用可能である。すなわち、上記の各実施形態においても、候補ビームとなるビームのビームIDがビーム組合せ履歴テーブル140に存在しない場合に、必ずしも全ビームサーチを行うのではなく、当該全ビームサーチを行うか否かを所定の判定ルールに従って判定するような構成にしてもよい。
【0510】
なお、第9の実施形態では、検出基準ビームと組み合わせて選択されたことがあるビームを示す候補ビームIDが存在しない場合において、所定の判定ルールに基づき全ビームサーチを行う動作を停止させる構成であった。但し、この構成に限られるものではなく、例えば、部分ビームサーチにおいて受信電力が閾値を超えていない場合に行われる全ビームサーチの動作を、所定の判定ルールに停止させるような構成であってもよい。
【0511】
前述の通り、全ビームサーチを行っても候補ビームを選択することができないような分散アンテナ装置と端末装置との位置関係では、ビーム組合せ履歴テーブル140にはレコードは記録されない。そのため、上記のような位置関係の場合、ビーム組合せ履歴テーブル140を参照したとしても、候補ビームとなるビームのビームIDが常に検出されない状況となる可能性がある。この場合、前述の第1~8の実施形態では、分散アンテナ装置は、常に全ビームサーチを実行することになる。これにより、ビーム探索数の削減効果が低下してしまう。
【0512】
これに対し、第9の実施形態では、候補ビームとなるビームのビームIDがビーム組合せ履歴テーブル140に存在しなかった場合であっても、無線通信システム1hは必ずしも全ビームサーチを行うとは限らないようにした構成である。第9の実施形態における無線通信システム1hは、候補ビームとなるビームのビームIDがビーム組合せ履歴テーブル140に存在しなかった場合には、全ビームサーチを行うか否かを所定の判定ルールに従って判定する。このような構成を備えることで、第9の実施形態における無線通信システム1hは、全ビームサーチを行っても候補ビームを選択することができないような分散アンテナ装置と端末装置との位置関係であっても、ビーム探索数の削減効果の低下を抑制することができる。
【0513】
(第10の実施形態)
図34は、第10の実施形態における通信制御装置10iの構成を示すブロック図である。通信制御装置10iは、第2の実施形態の通信制御装置10aに替えて用いられる装置であり、以下、説明の便宜上、通信制御装置10aに替えて通信制御装置10iを備える無線通信システム1aを無線通信システム1iという。通信制御装置10iにおいて、第2の実施形態の通信制御装置10aと同一の構成については、同一の符号を付し、以下、異なる構成について説明する。
【0514】
第10の実施形態における無線通信システム1iの構成のうち、第2の実施形態における無線通信システム1aの構成と異なる点は、候補ビームとなるビームのビームIDがビーム組合せ履歴テーブル140aに存在しない場合に、必ずしも全ビームサーチを行うのではなく、当該全ビームサーチを行うか否かを所定の判定ルールに従って判定する点である。
【0515】
通信制御装置10iは、ビームサーチ実行指示部11、フィードバック信号受信部12、ビーム組合せ履歴生成部13a、ビーム組合せ履歴記憶部14a、候補ビーム検出部15a、ビームサーチ実行判定部16i及びビーム組合せ記録部17aを備える。
【0516】
ビームサーチ実行判定部16iは、候補ビーム検出部15aの検出結果に基づいて、ビーム探索期間において全ビームサーチを行っていない分散アンテナ装置30-1~30-4に対して全ビームサーチを行わせるか否かを判定する。
【0517】
より詳細には、ビームサーチ実行判定部16iは、ビーム探索期間において全ビームサーチを行っていない分散アンテナ装置30-1~30-4であって、候補ビーム検出部15aの検出結果に候補ビームIDが含まれていない分散アンテナ装置30-1~30-4について、後述される所定の判定ルールに従い、全ビームサーチを行わせる分散アンテナ装置30-1~30-4とするか否かを判定する。ここで、全ビームサーチを行わせると判定されなかった分散アンテナ装置30-1~30-4については、最良となるビームの選択は行われない。
【0518】
ビームサーチ実行判定部16iは、候補ビーム検出部15の検出結果に候補ビームIDが含まれている分散アンテナ装置30-1~30-4に対して、検出結果に含まれている候補ビームIDによる部分ビームサーチを行わせる。すなわち、ビームサーチ実行判定部16iは、検出結果に含まれている分散アンテナIDと、候補ビームIDとを含む部分ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力する。ビームサーチ実行判定部16iは、部分ビームサーチによるビームを受信した端末装置40aが送信するフィードバック信号に含まれている受信電力値と、予め定められる閾値とに基づいて、当該フィードバック信号に含まれている送信元アンテナIDに対応する分散アンテナ装置30-1~30-4に対して、全ビームサーチを行わせるか否かを判定する。ビームサーチ実行判定部16iは、全ビームサーチを行わせると判定した場合、判定対象としたフィードバック信号に含まれる送信元アンテナIDを指定する。ビームサーチ実行判定部16iは、指定した送信元アンテナIDを含む全ビームサーチ要求信号をビームサーチ実行指示部11に出力する。
【0519】
(第10の実施形態の全ビームサーチ実行判定処理)
以下、第10の実施形態における全ビームサーチ実行判定処理について説明する。例えば、図15に示されるビーム探索処理のループLd2s~Ld2eの処理において、k=3の場合は、第1の実施形態と同様に、候補ビーム検出部15aは、ビーム組合せ履歴テーブル140aから「分散アンテナID#3」に対応する候補ビームIDを検出できない。そのため、この場合、候補ビーム検出部15aは、受信電力値も検出できないことになる。したがって、候補ビーム検出部15aは、平均受信電力値を算出することもなく、第1の実施形態のステップSb4の処理と同様に、3番目の分散アンテナ装置30-3のビームであって、検出基準ビームと共に選択されたことがある候補ビームを示す候補ビームIDは存在しないことを検出結果とする。候補ビーム検出部15aは、「分散アンテナID#3」のみを含む検出結果を示すデータを生成する(k=3の場合のステップSd4)。
【0520】
候補ビーム検出部15aは、「分散アンテナID#3」のみを含む検出結果を示すデータをビームサーチ実行判定部16iに出力する(k=3の場合のステップSb5)。ビームサーチ実行判定部16iは、候補ビーム検出部15aから検出結果を示すデータを受けると、図35に示す全ビームサーチ実行判定の処理のサブルーチンを開始する(k=3の場合のステップSd6)。
【0521】
ビームサーチ実行判定部16iは、候補ビーム検出部15が出力する検出結果を示すデータを取り込む(k=3の場合のステップSm1)。ビームサーチ実行判定部16iは、取り込んだ検出結果を示すデータに候補ビームIDが含まれているか否かを判定する(k=3の場合のステップSm2)。ここでは、検出結果を示すデータに候補ビームIDは含まれていないため、ビームサーチ実行判定部16iは、取り込んだ検出結果を示すデータに候補ビームIDが含まれていないと判定する(k=3の場合のステップSm2、No)。
【0522】
取り込んだ検出結果を示すデータに候補ビームIDが含まれていないと判定された場合(k=3の場合のステップSm2、No)、ビームサーチ実行判定部16iは、全ビームサーチを実行するか否かを所定の判定ルールに従って判定する(k=3の場合のステップSm3)。全ビームサーチを実行しないと判定された場合(k=3の場合のステップSm3、No)、図35に示されるサブルーチンの処理を終了する。
【0523】
以下、全ビームサーチを実行すると判定された場合の(k=3の場合のステップSm3、Yes)、ステップSm4~ステップSm7までの処理は、図16に示したステップSe3~ステップSe6と同一の処理が、ビームサーチ実行指示部11、フィードバック信号受信部12、ディジタル信号処理装置20、分散アンテナ装置30-1~30-4によって行われ、ビームサーチ実行判定部16aによって行われていた処理は、ビームサーチ実行判定部16iによって行われる。
【0524】
(候補ビームが無い場合の全ビームサーチ実行判定ルール)
上記の第9の実施形態において例示した候補ビームが無い場合の全ビームサーチ実行判定ルールが、第10の実施形態においても適用可能である。
【0525】
なお、以上説明した第10の実施形態における無線通信システム1iの構成は、前述の第2の実施形態、第4の実施形態、第6の実施形態、及び第8の実施形態の構成にも適用可能である。すなわち、上記の各実施形態においても、候補ビームとなるビームのビームIDがビーム組合せ履歴テーブル140aに存在しない場合に、必ずしも全ビームサーチを行うのではなく、当該全ビームサーチを行うか否かを所定の判定ルールに従って判定するような構成にしてもよい。
【0526】
前述の通り、全ビームサーチを行っても候補ビームを選択することができないような分散アンテナ装置と端末装置との位置関係では、ビーム組合せ履歴テーブル140aにはレコードは記録されない。そのため、上記のような位置関係の場合、ビーム組合せ履歴テーブル140aを参照したとしても、候補ビームとなるビームのビームIDが常に検出されない状況となる可能性がある。この場合、前述の第1~8の実施形態では、分散アンテナ装置は、常に全ビームサーチを実行することになる。これにより、ビーム探索数の削減効果が低下してしまう。
【0527】
これに対し、第10の実施形態では、候補ビームとなるビームのビームIDがビーム組合せ履歴テーブル140aに存在しなかった場合であっても、無線通信システム1iは必ずしも全ビームサーチを行うとは限らないようにした構成である。第10の実施形態における無線通信システム1iは、候補ビームとなるビームのビームIDがビーム組合せ履歴テーブル140aに存在しなかった場合には、全ビームサーチを行うか否かを所定の判定ルールに従って判定する。このような構成を備えることで、第10の実施形態における無線通信システム1iは、全ビームサーチを行っても候補ビームを選択することができないような分散アンテナ装置と端末装置との位置関係であっても、ビーム探索数の削減効果の低下を抑制することができる。
【0528】
(補足的な形態)
上記の第1~第10の実施形態における無線通信システムは、全ビームサーチを行っていない全ての分散アンテナ装置に対して繰り返し全ビームサーチを行う構成を含むが、この構成に限られるものではない。例えば、無線通信システムは、全ての分散アンテナ装置に対しては全ビームサーチを行わずに処理を終了し、既に検出したビームを用いてデータ伝送を行うようにしてもよい。
【0529】
また、上記の全ビームサーチの処理が繰り返される際の分散アンテナ装置の順番についても、固定的な順番としない構成にしてもよい。例えば、全ビームサーチの処理が繰り返される際の分散アンテナ装置の順番をランダムな順番にするようにしてもよいし、ビーム探索周期ごとに当該順番を順にずらしていくようにしてもよい。
【0530】
上記の第1~第10の実施形態では、分散アンテナ装置30-1~30-4、ディジタル信号処理装置20及び通信制御装置10,10a~10iにおける送信側ビームを探索する処理を示している。例えば、無線通信システム1,1a~1iが、送受信に別周波数を用いるFDDのようなシステムである場合、受信側となる端末装置40,40aは、受信側ビームを探索する処理を行う必要がある。受信側ビームを探索する処理は、例えば、以下のようにして行われる。受信側である端末装置40,40aが受信ビームサーチ手順を要求する信号を送信側となる分散アンテナ31-1~31-4の各々に送信する。ディジタル信号処理装置20は、分散アンテナ装置30-1~30-4を経由して、受信ビームサーチ手順を要求する信号を取り込むと、分散アンテナ装置30-1~30-4の各々に対して、各々が備える分散アンテナ31-1~31-4を通じて定期的に信号を送信させる。端末装置40,40aは、複数の端末アンテナ41-1~41-Mによって形成する受信側ビームの方向を切り替えて、分散アンテナ31-1~31-4が定期的に送信する信号を受信する。端末装置40,40aは、受信した信号の受信電力を測定する。
【0531】
これにより、端末装置40,40aは、端末アンテナ41-1~41-Mが形成するいずれの方向の受信側ビームで受信した際の受信電力値が最良であるかを判定することにより受信側ビームを選択することができる。なお、分散アンテナ装置30-1~30-4の各々が、各々が備える分散アンテナ31-1~31-4を通じて、定期的に信号を送信している場合、端末装置40,40aは、受信ビームサーチ手順を要求する信号を送信することなく、当該信号を受信して受信側ビームを選択するようにしてもよい。この受信側ビームを選択する処理においても、上記した第1~第10の実施形態の仕組みを適用するようにしてもよい。逆に、端末装置40,40aが送信側ビームを探索し、分散アンテナ装置30-1~30-4、ディジタル信号処理装置20及び通信制御装置10,10a~10iが受信側ビームを探索する構成おいても、上記した第1~第10の実施形態の仕組みを適用するようにしてもよい。
【0532】
上記の第1~第10の実施形態では、端末装置40,40aは、受信電力を測定し、測定により得られた受信電量値に基づいて最良のビームを選択するようにしている。ここで、受信電力値とは、一例であり、搬送波対雑音比や信号対雑音比など他の受信品質を示す指標を、端末装置40,40aが測定し、測定した受信品質を示す値に基づいて最良のビームを選択するようにしてもよい。
【0533】
上記の第1~第10の実施形態では、端末装置40,40aが、分散アンテナ31-1~31-4の各々が送信する複数のビームサーチ信号に基づいて、分散アンテナ装置30-1~30-4の各々における最良のビームを選択するようにしている。これに対して、通信制御装置10,10a~10i側で分散アンテナ装置30-1~30-4の各々における最良のビームを選択するようにしてもよい。例えば、端末装置40,40aが最良ビーム選択部45を備えず、ビームサーチ信号受信部44が、図7のステップStb3、及び図29のステップStd3の処理において、読み出した全てのデータを1セットのデータとしてフィードバック信号生成部46に出力する。フィードバック信号生成部46は、1セットのデータの全てにおいて共通である送信元アンテナIDと、1セットのデータに含まれる複数のビームIDと、当該ビームIDに対応する受信電力値とを含む1つのフィードバック信号を生成する。ビーム組合せ履歴生成部13,13a、候補ビーム検出部15,15a~15g、ビームサーチ実行判定部16,16a,16h,16iは、取り込んだ1つのフィードバック信号に含まれる複数のビームIDと、複数のビームIDの各々に対応する受信電力値との組合せに基づいて、当該フィードバック信号に含まれる送信元アンテナIDに対応する分散アンテナ装置30-1~30-4に対する最良のビームを選択することができる。
【0534】
上記の第1~第10の実施形態では、運用者が、通信制御装置10,10a~10iを操作することによって、ステップS1のビーム組合せ生成処理の開始のタイミングと、ステップS2のビーム探索処理の開始のタイミングとを指定するとしている。これに対して、運用者が、通信制御装置10,10a~10iを操作することによって、ステップS1のビーム組合せ生成処理が開始されると、ステップS1の処理の後、ビーム組合せ履歴生成部13,13aが、候補ビーム検出部15,15a~15gを起動させて、ステップS2のビーム探索処理が、運用者の操作を介さずに自動的に開始されるようにしてもよい。
【0535】
上記の第1~第10の実施形態において、ステップS1のビーム組合せ生成処理を行わずに、ステップS2のビーム探索処理から開始するようにしてもよい。この場合、ビーム探索処理が開始される前の状態では、ビーム組合せ履歴記憶部14,14aのビーム組合せ履歴テーブル140,140aには、レコードが存在しないことになる。そのため、候補ビーム検出部15,15a~15gは、候補ビームを検出することができないので、例えば、第1の実施形態では、図10のステップSb1,Sb2及び図11のステップSc3,Sc4、並びに、第2の実施形態では、図15のステップSd1,Sd2及び図16のステップSe3,Se4の全ビームサーチの処理が主に行われることになる。これらのビーム探索処理における全ビームサーチの処理が繰り返し行われることで、ビーム組合せ履歴記憶部14,14aのビーム組合せ履歴テーブル140,140aにレコードが蓄積され、次第に、部分ビームサーチの処理が行われることになる。したがって、この場合、通信制御装置10,10a~10gは、ビーム組合せ履歴生成部13,13aを備える必要がないことから、事前にビーム組合せの履歴を示すレコードを生成することなく、ビーム探索の処理を行う際に、伝送容量を低下させず、かつビーム探索数の削減を行うのに十分な数のレコードを蓄積することが可能になる。
【0536】
上記の第1~第10の実施形態において、端末装置40,40aのビームサーチ信号受信部44は、図7及び図29のフローチャートに示すように、タイマが満了してから、ステップStb3及びステップStd3の処理を行うようにしている。これに対して、ビームサーチ信号受信部44は、以下に示すように、ある1つの送信アンテナIDに対応する分散アンテナ装置30-1~30-4が送信するビームサーチ信号が載せられたビームを全て受信したと判定できる場合には、タイマの満了を待たずにステップStb3及びステップStd3の処理を行うようにしてもよい。例えば、分散アンテナ装置30-1~30-4が送信可能なビームの数が、全て同一数であり、この数が既知であるものとする。
【0537】
この場合、ビームサーチ信号受信部44は、ディジタル信号処理部43が出力するビームサーチ信号を取り込むごとに、ビームサーチ信号に含まれる送信元アンテナIDごとに、取り込んだビームサーチ信号の数をカウントする。ビームサーチ信号受信部44は、カウントするごとに、送信元アンテナIDの各々に対してカウントした数が、既知である分散アンテナ装置30-1~30-4が送信可能なビームの数に一致するか否かを判定する。ビームサーチ信号受信部44は、いずれかの送信元アンテナIDの各々に対してカウントした数が、既知である分散アンテナ装置30-1~30-4が送信可能なビームの数に一致したと判定したとする。この場合、ビームサーチ信号受信部44は、当該送信元アンテナIDに対応する分散アンテナ装置30-1~30-4が送信したビームサーチ信号を全て取り込んだとみなすことができるので、当該送信元アンテナIDに関連付けて起動されているタイマの満了を待たずに、ステップStb3及びステップStd3の処理を行うことができる。
【0538】
上記の第1~第6の実施形態において、ビームサーチ実行指示部11は、ある1つの分散アンテナIDに対応して複数のビームサーチ指示信号を生成する場合、生成する複数のビームサーチ指示信号の中で最初にディジタル信号処理装置20に出力するビームサーチ指示信号に、生成したビームサーチ指示信号の数、言い換えると、当該分散アンテナIDに対応する分散アンテナ31-1~31-4が送信するビーム数と、ビームを送信する間隔である送信タイミングとを加えて生成するようにしてもよい。ここで、送信タイミングは、無線通信システムにおいて適宜定める時間であってもよいし、仕様などにおいて定められている時間であってもよい。この場合、ディジタル信号処理装置20は、ビーム数と、送信タイミングと、分散アンテナIDと、ビームIDとを含むビームサーチ指示信号を取り込むと、取り込んだビームサーチ指示信号からビーム数と、送信タイミングと、送信元アンテナIDと、ビームIDとを含むビームサーチ信号を生成する。
【0539】
なお、各実施形態において用いられる「ビームサーチ信号」は、「パイロット信号」、「参照信号」、「制御信号」、「制御情報」、あるいは「制御チャネル」等によって読み替えてられてもよい。
【0540】
ディジタル信号処理装置20は、生成したビームサーチ信号を、生成した順に送信元アンテナIDに対応する本体装置32-1~32-4に出力するので、ビーム数と、送信タイミングとを含むビームサーチ信号が、最初に端末装置40に到達することになる。端末装置40のビームサーチ信号受信部44は、ステップSta5の処理において、取り込んだビームサーチ信号に含まれているビーム数と、送信タイミングとに基づいて、タイマに設定する時間を算出し、算出した時間をタイマに設定することができる。このようにすることで、端末装置40は、ある1つの分散アンテナ装置30-1~30-4が、ビーム探索期間において、送信するビームの数を、当該1つの分散アンテナ装置30-1~30-4に対応する最初のビームサーチ信号を受信した際に把握することができ、より適切な時間をタイマに設定することができることになり、ビーム探索処理に要する時間を短縮することができることになる。
【0541】
上記の第2の実施形態では候補ビーム検出部15aが図15のステップSd4の処理において、上記の第4の実施形態では候補ビーム検出部15cが図20のステップSg4の処理において、上記の第6の実施形態では候補ビーム検出部15eが図24のステップSi4の処理において、及び上記の第8の実施形態では候補ビーム検出部15gが図31のステップSk4の処理において、検出した候補ビームIDと共にビーム組合せ履歴テーブル140aの同一の要素の箇所に書き込まれている受信電力値を検出して平均受信電力値を算出するようにしている。これに対して、以下のような手順で平均受信電力値を算出するようにしてもよい。
【0542】
例えば、候補ビーム検出部15aは、図15のステップSd4、図20のステップSg4、図24のステップSi4、及び図31のステップSk4の処理において候補ビームIDのみを検出し、検出した候補ビームIDと、処理対象の分散アンテナIDと、検出基準ビームを示すデータとを含む検出結果を示すデータを生成してビームサーチ実行判定部16aに出力する。ビームサーチ実行判定部16aが、例えば、図16のステップSe7の処理の後、検出結果を示すデータに含まれる分散アンテナIDと、検出基準ビームを示すデータとに基づいて、候補ビームIDと共に同一の要素の箇所に書き込まれている受信電力値を検出して平均受信電力値を算出するようにしてもよい。このようにすることによって、ステップSd4,ステップSg4,ステップSi4,又はステップSk4とステップSe7との2つの処理において、同一の候補ビームIDをビーム組合せ履歴テーブル140aから検出する処理を行うことになるものの、平均受信電力値の算出処理を、ステップSe2の判定処理おいて「Yes」の判定がされた場合のみ行うようにすることができ、ステップSe8の処理において、フィードバック信号を取り込むまでの間の時間を利用して平均受信電力値を算出し、算出した平均受信電力値から閾値を算出することができることになる。
【0543】
上記の第1~第10の実施形態において、端末装置40,40aは、複数の端末アンテナ41-1~41-Mを備えているが、1本の端末アンテナを備えるようにしてもよい。この場合、分散アンテナ装置30-1~30-4が送信側となり、端末装置40,40aが受信側となる場合、MISO(Multiple Input Single Output)が行われることになり、分散アンテナ装置30-1~30-4が受信側となり、端末装置40,40aが送信側となる場合、SIMO(Single Input Multiple Output)が行われることになる。また、端末装置40,40aが、1本の端末アンテナを備える場合に、複数候補の分散アンテナ装置30-1~30-4から受信電力値が最良のいずれか1つの分散アンテナ装置30-1~30-4を適応的に選択して無線による通信を行うサイトダイバーシチを行うようにしてもよい。
【0544】
上記の第1~第10の実施形態の構成では、図11に示すステップSc9、図16に示すステップSe10、図33に示すステップSl10、図35に示すステップSm11、の処理において、受信電力値が閾値を超えているか否かという判定処理を行っている。しかしながら、本発明は、当該実施の形態に限られるものではなく、「超えているか否か」という判定処理は一例に過ぎず、閾値の定め方に応じて、受信電力値が閾値以上であるか否かという判定処理に置き換えられてもよい。
【0545】
上記の第1~第10の実施形態において、通信制御装置10,10a~10gが、ディジタル信号処理装置20を内部に備える構成としてもよい。通信制御装置10,10a~10gのビームサーチ実行指示部11と、フィードバック信号受信部12とが、ディジタル信号処理装置20に備えられる構成としてもよい。
【0546】
上記の第1~第10の実施形態では、全ビームサーチを行う場合に全てのビーム方向に対してビームサーチ信号を送信するようにしている。これに対して、例えば、全ビームサーチを行う場合に、1段階目に広いビーム幅のビームで荒くビームサーチをして、2段階目に1段階目で選択された範囲内を狭いビーム幅のビームで精密にビームサーチする2段階ビームサーチを適用してもよいし、端末装置40,40aの位置情報が既知の場合には、端末装置40,40aが存在する方向の周辺に絞ってビームサーチを行うようにしてもよいし、端末装置40,40aに対して事前に接続されていたビームの周辺だけをビームサーチするようにしてもよい。
【0547】
上記の第1~第10の実施形態において、端末装置40,40aが静止している場合、ビーム組合せ履歴生成部13,13a、ビーム組合せ記録部17,17aは、短時間の間に、ビームIDの組合せが同一になるレコードを生成してしまう場合が想定される。この場合、ビームIDの組合せが同一になるレコードが、ビーム組合せ履歴テーブル140,140aに連続して記録されないようにするために、例えば、ビーム組合せ履歴生成部13,13a、ビーム組合せ記録部17,17aは、ビーム組合せ履歴テーブル140,140aに対して直前に書き込んだレコードを内部の記憶領域に記憶させておき、予め定められる一定時間内に、内部の記憶領域に記憶させている直前に書き込んだレコードのビームIDの組合せと同一のビームIDの組合せのレコードを生成した場合、生成したレコードをビーム組合せ履歴テーブル140,140aに書き込まずに破棄するようにしてもよい。
【0548】
上述した実施形態によれば、通信制御装置は、候補ビーム検出部と、ビームサーチ実行判定部と、ビーム組合せ記録部とを備える。候補ビーム検出部は、端末装置との無線通信に用いるビームを探索するビーム探索期間において、複数の分散アンテナの各々に対して、送信可能な全ての方向にビームを送信して行う全ビームサーチをビーム探索期間ごとに異なる分散アンテナの順序で行わせる。ここでいう、全ビームサーチを探索期間ごとに異なる分散アンテナの順序で行わせることとは、例えば、複数の分散アンテナ装置に対して固定された順序で全ビームサーチを行わせるのではなく、複数の分散アンテナ装置に対してランダムな順序で全ビームサーチを行わせることである。あるいは、全ビームサーチを探索期間ごとに異なる分散アンテナの順序で行わせることとは、例えば、複数の分散アンテナ装置の選択順を毎回1つずつずらしながら全ビームサーチを行わせることである。候補ビーム検出部は、当該全ビームサーチによるビームの中で最良のビームを示すビーム識別子を1つ取得した場合、全ビームサーチを停止させる。候補ビーム検出部は、取得したビーム識別子と、当該ビーム識別子が示すビームを送信した分散アンテナを示す情報とによって特定されるビームを検出基準ビームとする。候補ビーム検出部は、ビーム探索期間において全ビームサーチを行っていない分散アンテナのビーム識別子であって検出基準ビームと共に選択されたことがあるビームのビーム識別子を当該分散アンテナに対する候補ビーム識別子としてビーム組合せ履歴記憶部から検出する。ビームサーチ実行判定部は、ビーム探索期間において全ビームサーチを行っていない分散アンテナに対して全ビームサーチを行わせるか否かを、候補ビーム検出部の検出結果に基づいて判定する。ビーム組合せ記録部は、ビーム探索期間において分散アンテナの各々において最良のビームとされたビームを示すビーム識別子の組合せを示すレコードを生成する。ビーム組合せ記録部は、生成したレコードをビーム組合せ履歴記憶部に記録する。
【0549】
上記した第1~第10の実施形態における通信制御装置10,10a~10gをコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組合せで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0550】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0551】
分散アンテナを備える無線通信システムに適用することができる。
【符号の説明】
【0552】
1…無線通信システム、10…通信制御装置、11…ビームサーチ実行指示部、12…フィードバック信号受信部、13…ビーム組合せ履歴生成部、14…ビーム組合せ履歴記憶部、15…候補ビーム検出部、16…ビームサーチ実行判定部、17…ビーム組合せ記録部、20…ディジタル信号処理装置、30-1~30-4…分散アンテナ装置、31-1~31-4…分散アンテナ、32-1~32-4…本体装置、40…端末装置
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