(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-10
(45)【発行日】2025-07-18
(54)【発明の名称】移動体設定システム、移動体設定方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
B60R 25/01 20130101AFI20250711BHJP
B60R 25/24 20130101ALI20250711BHJP
【FI】
B60R25/01
B60R25/24
(21)【出願番号】P 2023052757
(22)【出願日】2023-03-29
【審査請求日】2023-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】松儀 良広
(72)【発明者】
【氏名】柴田 直生
(72)【発明者】
【氏名】臼井 翔吾
(72)【発明者】
【氏名】橋本 耕志
(72)【発明者】
【氏名】加持 将平
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-049918(JP,A)
【文献】特開2010-214972(JP,A)
【文献】特開2019-156155(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 25/01
B60R 25/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体が有する機器の設定を行う設定装置と、前記設定装置と通信可能な複数の端末装置とを備える移動体設定システムであって、
前記設定装置は、
前記設定装置のユーザアカウントを管理する管理部と、
前記機器の設定情報を記憶する記憶部であって、前記設定情報を前記
ユーザアカウントおよび前記複数の端末装置に紐づけて管理する記憶部と、
前記複数の端末装置
から受信される端末情報をもとに前記移動体の利用者
が使用する前記ユーザアカウントを特定する特定部と、
前記特定部により特定された
前記ユーザアカウントに紐づけられた前記機器の設定情報を前記記憶部から取得し、取得した前記設定情報に基づいて前記機器の設定を行う設定部と、
を備え、
前記複数の端末装置は、それぞれに記憶している
前記端末情報を前記設定装置に送信することにより、前記設定装置に対して前記機器の設定変更を指示するものであり、
前記
管理部により、ユーザアカウントのうち第1ユーザアカウントが管理されている場合、
前記設定装置は、前記複数の端末装置のそれぞれに対応する複数の第1ユーザアカウントが登録された状態を初期状態として前記移動体の利用者に提供され、
前記設定部が、前記複数の端末装置ごとに、前記端末装置に応じた前記機器の設定情報に基づいて前記機器の設定を行い、
前記管理部により、第1ユーザアカウントに加えて第2ユーザアカウントが管理されている場合、
前記設定部は、前記複数の端末装置から受信される端末情報をもとに第1ユーザアカウントもしくは第2ユーザアカウントを特定し、特定した前記第1ユーザアカウントもしくは前記第2ユーザアカウントに紐づけられた前記機器の設定情報に基づいて前記機器の設定を行う、
移動体設定システム。
【請求項2】
前記複数の端末装置が第1の端末装置および第2の端末装置を含み、
前記設定装置に
おける管理部が管理しているユーザアカウントが第1ユーザアカウントであり、前記機器の設定情報として第1の設定情報および第2の設定情報が前記記憶部に記憶されている場合、
前記記憶部は、前記第1の設定情報を前記第1の端末装置に紐づけて記憶し、前記第2の設定情報を前記第2の端末装置に紐づけて記憶する、
請求項1に記載の移動体設定システム。
【請求項3】
前記設定装置には
、一人の利用者に対して第1のユーザIDと第2のユーザIDとが登録されており、
前記第1のユーザIDは前記第1の端末装置に紐づけられ、前記第2のユーザIDは前記第2の端末装置に紐づけられる、
請求項2に記載の移動体設定システム。
【請求項4】
前記複数の端末装置が第1の端末装置および第2の端末装置を含み、
前記設定装置に
おける管理部が管理しているユーザアカウントが第1ユーザアカウントであり、
前記機器の設定情報として第1の設定情報および第2の設定情報が前記記憶部に記憶されている場合、
前記記憶部は、前記第1の設定情報を前記第1の端末装置に紐づけて記憶し、前記第2の設定情報を前記第2の端末装置に紐づけて記憶する、
請求項1に記載の移動体設定システム。
【請求項5】
前記設定装置に
おける管理部により、第1ユーザアカウントに加えて第2ユーザアカウントが管理されており、
前記設定装置が前記第1の端末装置または前記第2の端末装置から第1の端末情報を取得した後に、前記設定装置において前記
第2ユーザアカウントが選択された場合、
前記設定装置に前記第1の端末情報を送信した端末装置は、自身が記憶する前記第1の端末情報を前記設定装置において前記
第2ユーザアカウントに紐づけて記憶されている第2の端末情報に置き換える、
請求項4に記載の移動体設定システム。
【請求項6】
移動体が有する機器の設定を行う設定装置と、前記設定装置と通信可能な複数の端末装置とを備える移動体設定システムにおいて、
前記設定装置が、
前記設定装置のユーザアカウントを管理するユーザアカウント管理工程と、
前記機器の設定情報を前記
ユーザアカウントおよび前記複数の端末装置に紐づけて管理
する工程と、
前記複数の端末装置
から受信される端末情報をもとに前記移動体の利用者
が使用する前記ユーザアカウントを特定
するユーザアカウント特定工程と、
特定された
前記ユーザアカウントに紐づけられた前記機器の設定情報に基づいて前記機器の設定を行
う設定工程と、
前記複数の端末装置が、それぞれに記憶している
前記端末情報を前記設定装置に送信することにより、前記設定装置に対して前記機器の設定変更を指示する
工程と、
を有する移動体設定方法であって、
前記ユーザアカウント管理工程により、ユーザアカウントのうち第1ユーザアカウントが管理される場合、
前記複数の端末装置のそれぞれに対応する複数の第1ユーザアカウントが登録された状態を前記設定装置の初期状態として前記設定装置を前記移動体の利用者に提供し、
前記設定工程において、前記複数の端末装置ごとに、前記端末装置に応じた前記機器の設定情報に基づいて前記機器の設定を行い、
前記ユーザアカウント管理工程により、第1ユーザアカウントに加えて第2ユーザアカウントが管理される場合、
前記ユーザアカウント特定工程において、前記複数の端末装置から受信される端末情報をもとに第1ユーザアカウントもしくは第2ユーザアカウントを特定し、
前記設定工程において、特定した前記第1ユーザアカウントもしくは前記第2ユーザアカウントに紐づけられた前記機器の設定情報に基づいて前記機器の設定を行う、
移動体設定方法。
【請求項7】
移動体が有する機器の設定を行う設定装置と、
前記設定装置と通信可能な複数の端末装置であって、それぞれに記憶している端末情報を前記設定装置に送信することにより、前記設定装置に対して前記機器の設定変更を指示する複数の端末装置と、
を備える移動体設定システムにおいて、
前記設定装置に、
前記設定装置のユーザアカウントを管理するユーザアカウント管理処理と、
前記機器の設定情報を前記
ユーザアカウントおよび前記複数の端末装置に紐づけて管理
する処理と、
前記複数の端末装置
から受信される端末情報をもとに前記移動体の利用者
が使用する前記ユーザアカウントを特定
するユーザアカウント特定処理と、
特定された
前記ユーザアカウントに紐づけられた前記機器の設定情報に基づいて前記機器の設定を行
う設定処理と、
を実行させるためのプログラムであって、
前記複数の端末装置は、それぞれに記憶している前記端末情報を前記設定装置に送信することにより、前記設定装置に対して前記機器の設定変更を指示するものであり、
前記ユーザアカウント管理処理により、ユーザアカウントのうち第1ユーザアカウントが管理される場合、
前記設定装置は、前記複数の端末装置のそれぞれに対応する複数の第1ユーザアカウントが登録された状態を初期状態として提供され、
前記設定処理において、前記複数の端末装置ごとに、前記端末装置に応じた前記機器の設定情報に基づいて前記機器の設定を行い、
前記ユーザアカウント管理処理により、第1ユーザアカウントに加えて第2ユーザアカウントが管理される場合、
前記ユーザアカウント特定処理において、前記複数の端末装置から受信される端末情報をもとに第1ユーザアカウントもしくは第2ユーザアカウントを特定し、
前記設定処理において、特定した前記第1ユーザアカウントもしくは前記第2ユーザアカウントに紐づけられた前記機器の設定情報に基づいて前記機器の設定を行う、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体設定システム、移動体設定方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子キー等の携帯機ごとに固有な情報であるキーID(携帯機固有情報)を照合することにより、携帯機を取り出すことなく、車両ドアを施錠及び解錠することのできるいわゆるスマートエントリー機能が知られている。このようなスマートエントリー機能に関し、利用者の電子キーに記憶された個人情報を無線通信により車両側装置に送信し、車両側装置が受信された個人情報に対応付けられた設定情報を読み出し、当該設定情報に基づいて車両の運転環境(シート位置など)を自動調整する技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。従来のスマートエントリー機能には、複数の電子キーに異なる設定情報を紐づけることができるものも存在する。また近年では、車両の運転環境を自動調整する技術として、車両ECU(Electronic Control Unit)に接続された車載装置でユーザ管理を行い、ログインしたユーザの設定情報をもとに運転環境を自動調整する技術も開発されている。この場合、利用者はログインユーザを変更することによって運転環境の設定内容を柔軟に変更することができるので車両の利便性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車載装置による自動調整機能を使用する場合、利用者は車載装置のオペレーティングシステムを操作してユーザ登録作業を行う必要がある。そのため、車載装置による自動調整機能では、従来の電子キーに紐づけた運転環境の設定で十分な利用者や、車載装置の操作を面倒に感じる利用者などに対しては、使い勝手が悪化させてしまう場合があった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、ユーザ管理機能を有する車載装置と連動して車両の運転環境を自動調整する車両用制御システムに関し、当該自動調整に関する操作性を向上させることができる移動体設定システム、移動体設定方法、およびプログラムを提供することを目的の一つとする。そして、延いては交通の安全性をより一層改善して持続可能な輸送システムの発展に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1):この発明の一態様に係る移動体設定システムは、移動体が有する機器の設定を行う設定装置と、前記設定装置と通信可能な複数の端末装置とを備える移動体設定システムであって、前記設定装置は、前記機器の設定情報を記憶する記憶部であって、前記設定情報を前記移動体の利用者に紐づけて管理する記憶部と、前記複数の端末装置と通信した結果をもとに前記移動体の利用者を特定する特定部と、前記特定部により特定された利用者に紐づけられた前記機器の設定情報を前記記憶部から取得し、取得した前記設定情報に基づいて前記機器の設定を行う設定部と、を備え、前記複数の端末装置は、それぞれに記憶している端末情報を前記設定装置に送信することにより、前記設定装置に対して前記機器の設定変更を指示するものであり、前記記憶部は、前記設定装置に登録された利用者が一人である場合、前記機器ごとに複数の設定情報を記憶可能である。
【0007】
(2):上記の(1)の態様において、前記複数の端末装置が第1の端末装置および第2の端末装置を含み、前記設定装置に登録された利用者が一人であり、前記機器の設定情報として第1の設定情報および第2の設定情報が前記記憶部に記憶されている場合、前記記憶部は、前記第1の設定情報を前記第1の端末装置に紐づけて記憶し、前記第2の設定情報を前記第2の端末装置に紐づけて記憶するものである。
【0008】
(3):上記の(1)または(2)の態様において、前記設定装置には、前記一人の利用者に対して第1のユーザIDと第2のユーザIDとが登録されており、前記第1のユーザIDは前記第1の端末装置に紐づけられ、前記第2のユーザIDは前記第2の端末装置に紐づけられるものである。
【0009】
(4):上記の(1)から(3)のいずれかの態様において、前記複数の端末装置が第1の端末装置および第2の端末装置を含み、前記設定装置に第1の利用者および第2の利用者が登録されており、前記機器の設定情報として第1の設定情報および第2の設定情報が前記記憶部に記憶されている場合、前記記憶部は、前記第1の設定情報を前記第1の端末装置に紐づけて記憶し、前記第2の設定情報を前記第2の端末装置に紐づけて記憶するものである。
【0010】
(5):上記の(4)の態様において、前記設定装置に第3の利用者がさらに登録されており、前記設定装置が前記第1の端末装置または前記第2の端末装置から第1の端末情報を取得した後に、前記設定装置において前記第3の利用者が選択された場合、前記設定装置に前記第1の端末情報を送信した端末装置は、自身が記憶する前記第1の端末情報を前記設定装置において前記第3の利用者に紐づけて記憶されている第2の端末情報に置き換えるものである。
【0011】
(6):この発明の一態様に係る移動体設定方法は、移動体が有する機器の設定を行う設定装置と、前記設定装置と通信可能な複数の端末装置とを備える移動体設定システムにおいて、前記設定装置が、前記機器の設定情報を前記移動体の利用者に紐づけて管理し、前記複数の端末装置と通信した結果をもとに前記移動体の利用者を特定し、特定された利用者に紐づけられた前記機器の設定情報に基づいて前記機器の設定を行い、前記複数の端末装置が、それぞれに記憶している端末情報を前記設定装置に送信することにより、前記設定装置に対して前記機器の設定変更を指示するものであり、前記設定装置に登録された利用者が一人である場合、前記設定装置は前記機器ごとに複数の設定情報を記憶可能である。
【0012】
(7):この発明の一態様に係るプログラムは、移動体が有する機器の設定を行う設定装置と、前記設定装置と通信可能な複数の端末装置であって、それぞれに記憶している端末情報を前記設定装置に送信することにより、前記設定装置に対して前記機器の設定変更を指示する複数の端末装置と、を備える移動体設定システムにおいて、前記設定装置に、前記機器の設定情報を前記移動体の利用者に紐づけて管理させ、前記複数の端末装置と通信した結果をもとに前記移動体の利用者を特定させ、特定された利用者に紐づけられた前記機器の設定情報に基づいて前記機器の設定を行わせるものであり、前記設定装置に登録された利用者が一人である場合、前記設定装置に、前記機器ごとに複数の設定情報を管理させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0013】
(1)~(7)によれば、ユーザ管理機能を有する車載装置と連動して車両の運転環境を自動調整する車両用制御システムに関し、当該自動調整に関する操作性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態の車両用制御システム1の構成例を示す図である。
【
図2】アカウント管理情報92の内容の一例を示す図である。
【
図3】制御部70により実行される処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】実施形態の車両用制御システム1の動作例を示す図(その1)である。
【
図5】実施形態の車両用制御システム1の動作例を示す図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照し、本発明の移動体設定システム、移動体設定方法、およびプログラムの実施形態について説明する。
【0016】
[1.車両用制御システムの全体構成]
図1は、実施形態の車両用制御システム1の構成例を示す図である。車両用制御システム1は、複数の携帯無線端末10と、制御対象の車両(以下「自車両」という。)に搭載される車載装置30と、を備える。携帯無線端末10は車両用の「電子キー」の一例である。携帯無線端末10と車載装置30とは無線通信によって互いに通信可能であり、車載装置30は携帯無線端末10との通信を契機として自車両に所定の動作を行わせる。このような機構により、利用者は携帯無線端末10を利用して、自車両にドアロックの開錠やエンジンスタートなどの動作を行わせることができるものである。車両用制御システム1は「移動体設定システム」の一例であり、車載装置30は「設定装置」の一例である。自車両は移動体の一例であり、移動体設定システムにおける設定の対象は船舶や航空機など車両以外の移動体であってもよい。
【0017】
携帯無線端末10Aおよび10Bは複数の携帯無線端末10の一例であり、同様の機能構成を有有するものである。ここではメインキーおよびスペアキーを想定して2つの携帯無線端末10を例示するが、携帯無線端末10の数は1つでもよいし、3つ以上でもよい。以下、特に区別しない場合、携帯無線端末10Aおよび10Bを総称して携帯無線端末10と記載する。また以下では、上記同様の機能構成について携帯無線端末10Aおよび10Bを区別して説明する必要がある場合、各機能部の符号に「A」または「B」を付加して区別する場合がある。例えば「通信部12A」は携帯無線端末10Aの通信部12を意味するものとする。携帯無線端末10は「端末装置」の一例である。携帯無線端末10Aは「第1の端末装置」の一例であり、携帯無線端末10Bは「第2の端末装置」の一例である。
【0018】
[2.携帯無線端末の構成]
携帯無線端末10は、例えば、いわゆるFOBキー(key fob)や薄型のカードキーなどである。これらの携帯無線端末10は、例えば、財布に収容可能な大きさである。携帯無線端末10は、例えば、縦数cm~10cm、横数cm~10cm、厚さ数mm~数cm程度の大きさである。以下の実施形態では、携帯無線端末10は、一例としてFOBキーであるものとして説明するが、その他の電子キーであってもよい。また、携帯無線端末10は、スマートフォンなどの携帯電話、タブレット端末などにアプリケーションプログラムがインストールされることで上述した機能が付与されたものであってもよい。
【0019】
携帯無線端末10は、例えば、通信部12と、集積回路等を含むコントロールユニット14と、記憶部16と、受電部18と、電源20と、機械式キー22とを筐体11内に収納している。通信部12は、例えば受信した電波に対して増幅や復調等の所定の処理を行ったり、送信する電波を生成したりする。記憶部16は予め携帯無線端末10の識別情報である端末IDを記憶している。端末IDは「端末情報」の一例である。
【0020】
コントロールユニット14は、通常、携帯無線端末10を省電力の状態であるスリープ状態に制御する。コントロールユニット14は、車載装置30からリクエスト信号を受信すると、携帯無線端末10をスリープ状態から起動状態に制御する。コントロールユニット14は、車載装置30から送信された(車室外または車室内)リクエスト信号の受信に応じた応答信号である(車室外または車室内)レスポンス信号を通信部12に送信させる。
【0021】
電源20は、例えばボタン電池などである。携帯無線端末10は、電源20から供給された電力によって作動する。電源20に蓄えられた電力量(残存電力量)が不足している場合、携帯無線端末10は、作動しない。この場合、利用者は、例えばボタン電池を交換する必要がある。電源20は、例えば、USB(Universal Serial Bus)給電により充電可能な電池であってもよい。
【0022】
機械式キー22は、機械的にドアのロック(ドアロック)の開錠または施錠を行うための鍵である。利用者が自車両のドアの鍵穴に機械式キー22を挿入して所定の操作を行うことで、自車両のドアロックは開錠または施錠状態に遷移する。
【0023】
[3.車載装置の構成]
車載装置30は、自車両に搭載される。車載装置30は、自車両の各部を制御して所定の動作を行わせることができる。所定の動作は、自車両の運転環境を利用者に応じた態様に調整するための動作である。本実施形態では、運転環境の調整の一例としてシート位置の調整について説明する。車載装置30は、ユーザアカウントの管理機能(ユーザ管理機能)を有し、ユーザアカウントごとに動作環境を切り替えることができる。車載装置30は、利用者が自車両を使用する際に、指定されたユーザアカウントの設定情報をもとにシート位置の調整を行うものである。例えば、ユーザ管理機能は、オペレーティングシステムによって実現される。また、シート位置の自動調整機能は、オペレーティングシステムの機能として実現されてもよいし、当該オペレーティングシステム上で動作するアプリケーションプログラムの機能として実現されてもよい。
【0024】
車載装置30が搭載される自車両は、例えば、三輪や、四輪等の自動車であり、ディーゼルエンジンやガソリンエンジン等の内燃機関を動力源とした自動車や、電動機を動力源とした電気自動車、内燃機関および電動機を兼ね備えたハイブリッド自動車等を含む。また、上述の電気自動車は、例えば、二次電池、水素燃料電池、金属燃料電池、アルコール燃料電池等の電池により放電される電力を使用して駆動される。
【0025】
車載装置30は、例えば、エンジンスイッチ部32と、給電ユニット34と、情報出力部36と、ドアロック制御部38と、ドアセンサ40と、シート制御部42と、車室外通信ユニット50と、車室内通信ユニット60と、制御部70と、エンジンECU82と、車載側記憶部90とを備える。
【0026】
エンジンスイッチ部32は、例えば、自車両の利用者が操作可能な位置に設けられたスイッチである。エンジンスイッチ部32は、例えば機械的スイッチである。エンジンスイッチ部32は、利用者に操作されると、操作されたことを示す操作信号を制御部70に出力する。
【0027】
給電ユニット34は、例えば、エンジンスイッチ部32付近に設けられる。給電ユニット34は、エンジンスイッチ部32が操作された場合に、制御部70の制御に基づいて、エンジンスイッチ部32から所定の範囲内に存在する携帯無線端末10に電力を供給する。例えば、給電ユニット34と携帯無線端末10の受電部18とは、電磁誘導の原理を用いて電力を送受電する。
【0028】
情報出力部36は、制御部70の指示に従って所定の情報を出力する。情報出力部36は、インジケータや情報を画像として表示する表示部である。表示部は、例えば、自車両の状態(速度等)を表示するインストルメントパネルの表示部である。また、表示部は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)や、有機EL(Electroluminescence)表示装置等であってもよい。表示部は、自車両のウィンドウに画像を反射させるヘッドアップディスプレイであってもよいし、ナビゲーション装置が備える表示部等であってもよい。また、情報出力部36は、音声を出力するスピーカであってもよい。
【0029】
ドアロック制御部38およびシート制御部42は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサがプログラムを実行することで実現される。ドアロック制御部38は、不図示のドアロックアクチュエータ、ドアセンサ40、および制御部70と接続されている。ドアロック制御部38は、例えば制御部70から自車両のドアロックの施錠または解錠を指示する信号を受信した場合、ドアロックアクチュエータを制御し、ドアロックの施錠または解錠を実行する。ドアロックアクチュエータは、自車両に設けられたドアのロック機構を駆動させることにより、ドアロックを開放状態または閉止状態に制御する。なお、ドアロック制御部38は、制御部70の一部であってもよい。
【0030】
ドアセンサ40は、例えば利用者がドアハンドルに触れると静電容量が変化する静電容量変化型のタッチセンサである。ドアセンサ40は、通常、オフ状態である。ドアセンサ40は、利用者がドアハンドルに触れ、静電容量が所定値以上に変化した場合、オン状態となってドアロックを解錠させるための指示信号を、ドアロック制御部38を介して制御部70に出力する。
【0031】
シート制御部42は、不図示のシート駆動用アクチュエータ、および制御部70と接続されている。シート制御部42は、例えば制御部70から自車両内のシートの位置変更を指示する信号を受信した場合、シート駆動用アクチュエータを制御し、シートを前後に移動させる。シート制御部42の制御対象は、典型的には運転席および/または助手席のシートであるが、他のシートが電動制御可能である場合には他のシートも制御対象とされてよい。シート駆動用アクチュエータは、自車両に設けられたスライド機構を駆動してシートを前後移動させることにより、シートを指定された位置に移動させる。シートが電動制御可能なリクライニングシートである場合、シート制御部42は、シート位置に加えて、シートの傾きを制御するように構成されてもよい。なお、シート制御部42は、制御部70の一部であってもよい。
【0032】
車室外通信ユニット50は、車室外アンテナ52と、車室外アンテナ52に電気的に接続された車室外通信部54を備える。車室外アンテナ52は、例えば自車両の運転席側のドアミラーや、ドアハンドル等に設けられる。車室外通信部54は、例えばインストルメントパネル表面下に設けられる。車室外通信ユニット50は、制御部70からドアロックを開錠させる指示信号、またはドアロックを施錠させる指示信号を受信したことに応じて、車室外の携帯無線端末10に対して端末IDの送信を要求する車室外リクエスト信号を送信する。車室外アンテナ52は、携帯無線端末10から送信された車室外レスポンス信号を受信する。車室外通信部54は、車室外アンテナ52により受信された車室外レスポンス信号を取得し、取得した車室外レスポンス信号に対して増幅や復号等の処理を行って、車室外レスポンス信号に含まれる情報を制御部70に出力する。
【0033】
車室内通信ユニット60は、例えばインストルメントパネル表面下に設けられる。車室内通信ユニット60は、車室内アンテナ62と、車室内アンテナ62に電気的に接続された車室内通信部64を備える。車室内アンテナ62は、車室内の携帯無線端末10に車室内リクエスト信号を送信する。車室内アンテナ62は、車室内の携帯無線端末10から車室内レスポンス信号を受信する。車室内通信部64は、車室内アンテナ62により受信された車室内レスポンス信号を取得し、取得した車室内信号に対して増幅や復号等の処理を行って、車室内レスポンス信号に含まれる情報を制御部70に出力する。
【0034】
制御部70は、例えば、給電制御部72と、通信制御部74と、利用許可部76と、ユーザ管理部78と、を備える。給電制御部72、通信制御部74、利用許可部76、およびユーザ管理部78は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。プログラムは、例えば、自車両の制御機能を有する車両用オペレーティングシステムとして実装されてもよいし、車両用オペレーティングシステム上で動作するアプリケーションプログラムとして実装されてもよい。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。車載側記憶部90は、例えば、ROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等の不揮発性の記憶装置と、RAM(Random Access Memory)、レジスタ等の揮発性の記憶装置によって実現される。
【0035】
給電制御部72は、給電ユニット34を制御して、携帯無線端末10に電力を供給し、携帯無線端末10が供給された電力を用いて端末IDを自車両に対して送信することを可能にする。
【0036】
通信制御部74は、車室外通信ユニット50、または車室内通信ユニット60を制御して、携帯無線端末10と通信する。通信制御部74は、給電ユニット34が電磁誘導により携帯無線端末10に電力を供給した際に、利用許可部76が自車両の発進を許可した場合に、車室内通信ユニット60に車内に対して車室内リクエスト信号を送信させ、送信させた車室内リクエスト信号に対する携帯無線端末10の応答である車室内レスポンス信号を検出する。
【0037】
利用許可部76は、利用者による自車両の利用について許可または不許可を決定する。ここでいう自車両の利用許可とは、例えば、自車両のドアロックの開錠を許可することや、自車両の発進を許可することなどである。例えば、利用許可部76は、携帯無線端末10から車室外通信ユニット50を用いて受信した端末IDを予め車載側記憶部90に登録された端末IDと照合し、照合結果に基づいて自車両のドアロックの開錠を許可する。例えば、利用許可部76は、受信した端末IDと予め車載側記憶部90に登録された端末IDとが一致した場合に、車両のドアロックの開錠を許可する。この端末IDは、車室外レスポンス信号に含まれる。
【0038】
また、例えば、利用許可部76は、携帯無線端末10から車室内通信ユニット60を用いて受信した端末IDを予め車載側記憶部90に登録された端末IDと照合し、照合結果に基づいて車両の発進を許可する。利用許可部76は、受信した端末IDと予め車載側記憶部90に登録された端末IDとが一致した場合に、車両の発進を許可する。この端末IDは、車室内レスポンス信号に含まれる。また、車室内レスポンス信号には、電源20の残存電力量を示す情報が含まれている。車両の発進を許可するとは、エンジンの始動や、モータの始動、ステアリングホイールのロックの解除など任意の状態に制御することを許可することをいう。
【0039】
ユーザ管理部78は、自車両の利用者について車載装置30に登録されるユーザアカウントの管理を行う。ユーザアカウントには、シート位置の自動調整のための設定情報(以下「シート位置設定情報」という。)が対応づけられる。ユーザアカウントは必ずしも利用者と一対一に対応するものでなくてもよい。例えば、利用者はシート位置設定情報について設定内容が異なるユーザアカウントを複数作成しておき、利用状況や用途などに応じて使い分けてもよい。以下では簡単のため、車載装置30には利用者ごとに1つのユーザアカウントが登録されるものとする。ユーザアカウントの管理情報(以下「アカウント管理情報」という。)は例えば車載側記憶部90に保存される。
【0040】
ユーザ管理部78は、設定対象として指定されたユーザアカウント(以下「対象アカウント」という。)に応じてシート位置の自動調整を行う。より具体的には、ユーザ管理部78は、アカウント管理情報を参照して対象ユーザアカウントのシート位置設定情報を取得し、取得したシート位置設定情報に基づいてシート位置の自動調整を行う。なお、対象アカウントは、利用者が車載装置30に登録されているユーザアカウントの中から対象アカウントとして使用するユーザアカウントを選択する操作を行うことによって指定されてもよい。また、対象アカウントは、携帯無線端末10から端末IDが送信された際に、携帯無線端末10との紐づけにより機械的に決定されてもよい。ユーザ管理部78は「特定部」および「設定部」の一例である。
【0041】
図2は、アカウント管理情報の一具体例を示す図である。アカウント管理情報92は、例えば、ユーザIDに対して、対応端末IDと、シート位置設定情報とが対応付けられたテーブルとして管理される。ユーザIDはユーザアカウントの識別情報である。対応端末IDは、ユーザアカウントと携帯無線端末10との紐づけを表すものであり、対応するユーザアカウントに紐づけられた携帯無線端末10の識別情報(端末ID)が格納される。
図2の例は、携帯無線端末10A(ここでは端末ID“1”)が“既定ユーザ#1”に紐づけられ、携帯無線端末10B(ここでは端末ID“2”)が“既定ユーザ#2”に紐づけられた場合を表すものである。“既定ユーザ#1”は「第1のユーザID」の一例であり、“既定ユーザ#2”は「第2のユーザID」の一例である。
【0042】
シート位置設定情報は、例えば、制御対象のシートの識別情報と目的とするシート位置の情報(例えば基準位置からの変位量)との組で表される。
図2の例において、“既定ユーザ#1”のシート位置設定情報は、“S1”で識別されるシートをシート位置“aaa”に制御することを表すものである。また、
図2の例において、“既定ユーザ#2”のシート位置設定情報は、“S1”で識別されるシートをシート位置“bbb”に制御するとともに、“S2”で識別されるシートをシート位置“ccc”に制御することを表すものである。このように、シート位置設定情報は、複数シートの設定情報を含んでもよい。
【0043】
また、
図2の例において、“一般ユーザ#1”のシート位置設定情報は、複数の設定パターン(ここではパターン1~4)が登録された場合を表すものである。なお、上述の“既定ユーザ#1”および“既定ユーザ#2”のシート位置設定情報はいずれも1つの設定パターンが登録された場合の例である。複数の設定パターンのうちどれを採用するかは、デフォルト値によって決定されてもよいし、利用者の選択操作によって決定されてもよい。また、複数の設定パターンは、利用者の切り替え操作によって変更されてもよいし、前回使用されたものが自動的に引き継がれるようにしてもよい。
【0044】
また、
図2の例における“既定ユーザ#1”および“既定ユーザ#2”は初期状態の車載装置30に予め登録されている既定のユーザアカウントであり、利用者の携帯無線端末10に対応づけられたユーザアカウントである。ここでは携帯無線端末10Aおよび10Bの2台を想定して、2つの既定のユーザアカウントが作成されている。例えば、既定のユーザアカウントは、自車両のメーカーや車載装置のメーカー、自車両や車載装置を販売するカーディーラーなどによって車載装置30に登録される。また、既定のユーザアカウントに設定されるシート位置設定情報は、登録者(例えばメーカーやカーディーラーなど)が一律に決定したものであってもよいし、登録者が利用者の要望を反映するように決定したものであってもよい。
【0045】
例えば、自車両の利用者が一人の場合、初期状態の車載装置30には複数の携帯無線端末10に対応付けられた既定のユーザアカウントのみが登録されてもよい。この場合、利用者がいずれかの携帯無線端末10を使用して自車両を利用することにより、使用した携帯無線端末10に紐づけられたユーザアカウントが選択され、当該ユーザアカウントに紐づけられたシート位置設定情報によりシート位置の自動調整が行われる。このように、自車両の利用者が一人の場合には、携帯無線端末10に紐づけられた既定のユーザアカウントが予め登録された状態の車載装置30が利用者に提供されることにより、利用者は、車載装置30に対してユーザアカウントの登録作業または設定作業を行わなくても、自車両の利用時に、シート位置の自動調整機能を使用することが可能になる。
【0046】
一方、例えば、自車両の利用者が複数人である場合、初期状態の車載装置30には既定のユーザアカウントに加えて、複数人の利用者に応じたユーザアカウントが登録されてもよい。この場合、複数の携帯無線端末10のうちの少なくとも1つは既定のユーザアカウントに紐づけられ、その他の携帯無線端末10は既定のユーザアカウント以外のアカウントに紐づけられる。この場合、複数の利用者のうちの既定の利用者(例えば自車両のオーナー)は、既定のユーザアカウントに紐づけられた携帯無線端末10を使用して自車両を利用することにより、使用した携帯無線端末10に紐づけられたユーザアカウントが選択され、当該ユーザアカウントに紐づけられたシート位置設定情報によりシート位置の自動調整が行われる。また、この場合、複数の利用者のうちの既定の利用者以外の利用者は、既定のユーザアカウントに紐づけられていない携帯無線端末10を使用して自車両を利用することにより、使用した携帯無線端末10に紐づけられたユーザアカウント(既定のユーザアカウント以外のユーザアカウント)が選択され、当該ユーザアカウントに紐づけられたシート位置設定情報によりシート位置の自動調整が行われる。このように、自車両の利用者が複数人である場合には、複数の携帯無線端末10が異なる利用者のユーザアカウントに紐づけられた状態の車載装置30が利用者に提供されることにより、複数の携帯無線端末10を複数人の利用者で使い分けることができ、複数人の利用者はそれぞれのシート位置設定情報でシート位置の自動調整機能を使用することが可能になる。
【0047】
[4.乗車および発進する際の処理]
[4.1.乗車する際の処理;通信によりドアのロックが開錠される場合]
利用者が、自車両に乗車する際、以下の処理が行われる。例えば、所定の条件を満たした場合(例えば、制御部70がドアのロックを解錠させるための指示信号を取得した場合)、制御部70の通信制御部74は、車室外通信ユニット50に車室外リクエスト信号を送信させる。
【0048】
携帯無線端末10は、車室外リクエスト信号を受信すると、車室外リクエスト信号の応答である車室外レスポンス信号を車室外通信ユニット50に送信する。
【0049】
制御部70のユーザ管理部78は、車室外通信ユニット50により受信された車室外レスポンス信号に含まれるユーザIDと、車載側記憶部90に記憶されたユーザIDとが一致するか否かを判定する。ユーザIDが一致する場合、ユーザ管理部78は、ドアロック制御部38に自車両のドアロックを開錠させる。これにより、利用者は、自車両に乗車することができる。
【0050】
[4.2.発進する際の処理;通常時の処理]
例えば、上述したように通信によりドアロックが開錠され、エンジン始動操作が行われると、通信制御部74は、車室内通信ユニット60に車室内リクエスト信号を送信させる。エンジン始動操作とは、例えば、ブレーキペダルが踏まれた状態でエンジンスイッチ部32が押下された操作である。携帯無線端末10は、車室内リクエスト信号を受信すると、車室内リクエスト信号の応答である車室内レスポンス信号を車室内通信ユニット60に送信する。
【0051】
制御部70のユーザ管理部78は、車室内通信ユニット60により受信された車室内レスポンス信号に含まれるユーザIDと、車載側記憶部90に記憶されたユーザIDとが一致するか否かを判定する。ユーザIDが一致する場合、ユーザ管理部78は、エンジンECU82にエンジンを稼働させる。これにより、利用者は、自車両のエンジンを始動させることができる。
【0052】
[5.シート位置の自動調整機能]
図3は、利用者が自車両を利用する際に、車載装置30がシート位置の自動調整のために実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。まず、車載装置30が携帯無線端末10から端末IDを受信する(S101)。続いて、車載装置30は、受信した端末IDを予め車載側記憶部90に登録された端末IDと照合し(S102)、両者が一致した場合に自車両の利用(ドアロックの開錠または自車両の発信)を許可する(S103)。続いて、車載装置30は、受信した端末IDをもとにアカウント管理情報92を参照して対象アカウントを特定する(S104)。続いて、車載装置30は、特定した対象アカウントのシート位置設定情報に基づいてシート位置の自動調整を行う(S105)。
【0053】
図4は、自車両の利用者が一人の場合において車載装置30がシート位置の自動調整を行う場合の動作例を示す図である。上述のとおり、車載装置30には少なくとも携帯無線端末10に紐づく既定のユーザアカウントが登録された状態(初期状態)で利用者に提供されるものである。
図4の例は、ユーザアカウントとして“既定のユーザ#1”および“既定のユーザ#2”のみが登録された場合であって、“既定のユーザ#1”に携帯無線端末10A(端末ID“1”)が、“既定のユーザ#2”に携帯無線端末10B(端末ID“2”)が紐づけられた状態を表している。また、
図4の例は、“既定のユーザ#1”および“既定のユーザ#2”のシート位置設定情報に、それぞれ4つの設定パターンが登録された場合を表している。この場合、一人の利用者は携帯無線端末10Aおよび10Bを使い分けることにより、すなわち、“既定のユーザ#1”および“既定のユーザ#2”を使い分けることにより、同じシートに対して異なるシート位置設定情報を使い分けることができる。
【0054】
この例において、パターン1は運転席のシート位置の設定内容を表し、パターン2は、助手席のシート位置の設定内容を表すものである。また、この例において、パターン3は、いわゆるシートメモリ機能に対応したシート位置を表すものであってもよい。シートメモリ機能は、利用者の手動により、または自動でシート位置を保存し、保存したシート位置を必要に応じて復元する機能である。車載装置30は、シートメモリ機能を有する場合、保存したシート位置を対象アカウントのシート位置設定情報に登録してもよい。また、この例において、パターン4は、いわゆるイージーエントリー機能に対応したシート位置を表すものであってもよい。イージーエントリー機能は、利用者の乗車時において、車内環境(シート位置を含む)を利用者が乗車しやすい状態に制御する機能である。車載装置30がイージーエントリー機能を有する場合、当該機能で実現すべきシート位置が既定のユーザアカウントのシート位置情報に登録されてもよい。
【0055】
図4は、この4つの設定パターンのうちパターン1がデフォルト値として選択される場合を表すものである。この場合、利用者が携帯無線端末10Aを所持している場合には、“既定のユーザ#1”のシート位置設定情報IF1のパターン1がシート位置の自動調整に適用されることとなる。同様に、利用者が携帯無線端末10Bを所持している場合には、“既定のユーザ#2”のシート位置設定情報IF2のパターン1がシート位置の自動調整に適用されることとなる。
【0056】
これに対して、
図5は、自車両の利用者が複数人である場合において車載装置30がシート位置の自動調整を行う場合の動作例を示す図である。
図5の例は、初期状態の車載装置30において、“既定ユーザ#1”、“既定ユーザ#2”、“一般ユーザ#1”、“一般ユーザ#2”、“一般ユーザ#3”、“一般ユーザ#4”、および“ゲストユーザ”が登録された場合を表している。
図4の例では、“既定ユーザ#1”および“既定ユーザ#2”に対して携帯無線端末10Aおよび10Bの両方が紐づけられたのに対し、
図5の例では、携帯無線端末10Aが“既定ユーザ#1”に紐づけられ、携帯無線端末10Bが“一般ユーザ#1”に紐づけられている。この場合、既定の利用者(例えば自車両のオーナー)は、携帯無線端末10Aを自身で使用し、他の利用者に携帯無線端末10Bを使用させることができる。
【0057】
この場合、既定の利用者が携帯無線端末10Aを使用した場合には、“既定のユーザ#1”のシート位置設定情報IF1のパターン1がシート位置の自動調整に適用されることとなる。一方、他の利用者が携帯無線端末10Bを使用した場合には、“一般ユーザ#1”のシート位置設定情報IF3のパターン1がシート位置の自動調整に適用されることとなる。
【0058】
このように、自車両の利用者が複数人である場合には、複数の携帯無線端末10が異なるユーザアカウントに紐づけられた状態で車載装置30が利用者に提供されることにより、携帯無線端末10を複数人の利用者で使い分け、複数人の利用者がそれぞれのシート位置設定情報でシート位置の自動調整機能を使用することができる。
【0059】
なお、自車両の利用者が複数人である場合の車載装置30の構成は、車載装置30に対する既定の利用者の操作によって実現されてもよい。例えば、
図4の構成から
図5の構成に変更する場合、既定の利用者は、以下の作業を行えばよい。
(1)“一般ユーザ#1”、“一般ユーザ#2”、“一般ユーザ#3”、“一般ユーザ#4”、“げユーザ#1”を作成する。
(2)各ユーザアカウントにシート位置設定情報を登録する。なお、シート位置の設定作業を利用者に任せる場合、この作業は省略されてもよい。
(3)対応端末IDの紐づけを変更する。具体的には、携帯無線端末10B(端末ID“2”)との紐づけを“既定ユーザ#2”から“一般ユーザ#1”に変更する。
【0060】
なお、携帯無線端末10とユーザアカウントの紐づけの変更は、上記(3)のアカウント管理情報92を変更する方法に代えて、携帯無線端末10が記憶している端末IDを変更することによっても実現可能である。例えば、アカウント管理情報92では、ユーザIDとシート位置設定情報の紐づけを管理するようにし、携帯無線端末10には、端末IDの代わりに、登録済みのユーザアカウントのうちいずれか1つのユーザIDを記憶させるようにする。このような方法でも携帯無線端末10をいずれかのユーザアカウントに紐づけることができるので、上記同様に、シート位置の自動調整機能を作動させることができる。この場合、車載装置30は、携帯無線端末10を使用して自車両が操作された(例えばドアロック解除操作など)際に変更先のユーザアカウントの選択操作を受け付け、当該携帯無線端末10との紐づけを選択されたユーザアカウントに変更するように構成されてもよい。また、この場合、車載装置30は、携帯無線端末10を使用して自車両が操作されてから所定時間が経過するまでの間に変更先ユーザアカウントの選択操作を受け付けるように構成されてもよい。
【0061】
以上説明した実施形態の車両用制御システム1によれば、ユーザ管理機能を有する車載装置30と連動して自車両の運転環境を自動調整する車両用制御システム1に関し、当該自動調整に関する操作性を向上させることができる。
【0062】
上述のとおり実施形態の車載装置30は、ユーザ管理機能を有し、運転環境の自動調整をユーザアカウントごとに管理することができるものであるが、このような機能を有さない従来型の車載装置を搭載した車両では、運転環境の自動調整を携帯無線端末に紐づけて管理することが行われていたが、このような従来車両の利用者の中には、運転環境の自動調整について従来方式での操作感や操作性を好む者も少なからず存在する。一方で、情報機器の高度化が進んでおり、車載装置についても、実施形態の車載装置30のように、ユーザ管理機能を有し、車両に関する各種設定をユーザアカウントごとに管理することができるものが今後一般的になっていくことも想定される。実施形態の車載装置30によれば、このような車載装置の高度化に対応しつつも、運転環境の自動調整については従来方式と同様の操作感や操作性を実現することができるものである。
【0063】
上記の実施形態では、ユーザ管理部78が運転環境の一例としてシート位置を調整する場合について説明したが、調整対象の運転環境はこれに限定されない。例えば、ユーザ管理部78は、フェンダーミラーの角度やシートの傾き、ステアリングホイールの位置や角度などを制御するように構成されてもよい。このような場合においても、それぞれの制御設定情報をユーザアカウントに対応づけて管理することにより、シート位置の自動調整と同様の方法で実現することができるものである。
【0064】
また、上記の実施形態では、利用許可部76による自車両の利用許可がユーザ管理機能から独立して実行される場合について説明したが、利用許可部76は、ユーザ管理機能と連携して自車両の利用許可を行うように構成されてもよい。例えば、車載側記憶部90に登録された端末IDをアカウント管理情報92で管理するようにしてもよい。この場合、利用許可部76は、アカウント管理情報92を参照して端末IDの照合を行うことにより、対象アカウントと対応端末IDを認識するように構成されてもよい。この場合、利用許可部76が、自車両の利用許可に続けて、運転環境の自動調整処理を行うように構成されてもよい。
【0065】
また、車載装置30のユーザ管理部78は、ユーザアカウントについてログイン処理を行ってもよい。例えば、ユーザ管理部78は、ユーザIDごとにパスワードを管理し、利用者が入力したユーザIDおよびパスワードが車載装置30で管理されているものと一致した場合にログイン状態に遷移するように構成されてもよい。この場合、運転環境の自動調整は、ログイン状態に遷移する処理の一環として行われてもよい。
【0066】
また、ユーザ管理部78は、スイッチやボタン等の入力装置に対する操作に応じて、シート位置設定情報の設定パターンを切り替えるように構成されてもよい。例えば、このような入力装置は、ドアスイッチとして実現されてもよい。例えば、各設定パターンに対応する個数のドアスイッチを設け、操作されたドアスイッチに対応づけられた設定パターンが選択されてもよい。また、ユーザ管理部78は、この選択に応じて、運転環境の自動調整を行ってもよい。また、ユーザ管理部78は、複数のドアスイッチを設ける代わりに1つのドアスイッチを設け、操作があるごとに設定パターンを切り替えたり、操作の態様(例えばボタン操作の回数やボタン押下の長さなど)で選択すべき設定パターンを認識したりするように構成されてもよい。
【0067】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0068】
1…車両用制御システム、10,10A,10B…携帯無線端末、11…筐体、12…通信部、14…コントロールユニット、16…記憶部、18…受電部、20…電源、22…機械式キー、30…車載装置、32…エンジンスイッチ部、34…給電ユニット、36…情報出力部、38…ドアロック制御部、40…ドアセンサ、42…シート制御部、50…車室外通信ユニット、52…車室外アンテナ、54…車室外通信部、60…車室内通信ユニット、62…車室内アンテナ、64…車室内通信部、70…制御部、72…給電制御部、74…通信制御部、76…利用許可部、78…ユーザ管理部、82…エンジンECU、90…車載側記憶部、92…アカウント管理情報