(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-11
(45)【発行日】2025-07-22
(54)【発明の名称】膝掛け
(51)【国際特許分類】
A41D 13/06 20060101AFI20250714BHJP
【FI】
A41D13/06 105
(21)【出願番号】P 2024039042
(22)【出願日】2024-03-13
【審査請求日】2024-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】519438648
【氏名又は名称】株式会社ケアウィル
(74)【代理人】
【識別番号】100121430
【氏名又は名称】嶋田 義之
(72)【発明者】
【氏名】笈沼 清紀
(72)【発明者】
【氏名】海野 りか
(72)【発明者】
【氏名】多田 健太
【審査官】嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-290653(JP,A)
【文献】登録実用新案第3155616(JP,U)
【文献】登録実用新案第3077556(JP,U)
【文献】特開2005-023433(JP,A)
【文献】実開昭60-086517(JP,U)
【文献】登録実用新案第3221458(JP,U)
【文献】登録実用新案第3151574(JP,U)
【文献】実開平06-071366(JP,U)
【文献】登録実用新案第3172068(JP,U)
【文献】登録実用新案第3135011(JP,U)
【文献】登録実用新案第3163825(JP,U)
【文献】特開2017-200526(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0132043(US,A1)
【文献】米国特許第9049946(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0196126(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0037941(US,A1)
【文献】韓国登録実用新案第20-0375225(KR,Y1)
【文献】韓国登録実用新案第20-0468444(KR,Y1)
【文献】韓国登録実用新案第20-0467777(KR,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/06
A41B 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前身頃を有する本体部と、
前記本体部に取付けられる左右一対の帯状のストラップと、
を有する膝掛けであって、
前記ストラップは帯状体の基端ストラップとコキカン状のアジャスタと帯状体のメインストラップからなり、
前記基端ストラップは前記メインストラップよりも短く、一端において前記アジャスタに連結され他端においてスナップボタンにより前記本体部に着脱自在、かつ、回転可能に取付けられる膝掛け。
【請求項2】
前身頃を有する本体部と、
前記本体部に取付けられる左右一対の帯状のストラップと、
を有する膝掛けであって、
前記ストラップが基端において前記本体部に回転可能に取付けられ、
前記一対のストラップは先端側がループになっており、前記ループの先端に両者を連結するためのスナップボタンが備えられた膝掛け。
【請求項3】
前身頃を有する本体部と、
前記本体部に取付けられる左右一対の帯状のストラップと、
を有する膝掛けであって、
前記ストラップが基端において前記本体部に回転可能に取付けられ、
前記各ストラップは基端ストラップと、アジャスタと、メインストラップと、第1の面ファスナー要素と、第2の面ファスナー要素と、第3の面ファスナー要素とを有して構成され、
前記基端ストラップは前記本体部に回転可能に取付けられるとともに前記アジャスタに連結され、
前記メインストラップは前記アジャスタに挿通され挿通位置を調整することにより長さを調整可能であり、
前記第1の面ファスナー要素は前記基端ストラップに設置され、
前記第2の面ファスナー要素及び前記第3の面ファスナー要素は前記メインストラップの両端部に設置され、
前記第2の面ファスナー要素は同じストラップの前記第1の面ファスナー要素と着脱自在であり、
一方の前記ストラップの前記第3の面ファスナー要素は他方の前記ストラップの前記第3の面ファスナー要素と着脱自在である膝掛け。
【請求項4】
前身頃を有する本体部と、
前記本体部に取付けられる左右一対の帯状のストラップと、
を有する膝掛けであって、
前記ストラップが基端において前記本体部に回転可能に取付けられ、
前記本体部の上端部に沿って帯状の芯材が設置され、前記芯材と重なる位置において前記ストラップの基端が前記本体部に取付けられ、
前記芯材は前記前身頃の上端部に設置された主部と、前記主部の左右に連結された一対の延在部と、を有し、前記前身頃の上端部の左右の端部において前記延在部が前記主部に対して折り曲げ可能である膝掛け。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レインウェアや防寒着として着用される車椅子の利用者のための膝掛けに関する。
【背景技術】
【0002】
車椅子の利用者のための様々なタイプのレインウェアや防寒着が市販されている。その一つとして膝掛けが知られている。なお、膝掛けがボトムスとして着用され、トップスとしてマント、ポンチョ、コート等が着用されることがある。膝掛けはシンプルな形態で下肢の上に載せるだけで容易に着用できる一方、風でずれたり捲れたりしやすい。このためストラップ等を介して膝掛けが車椅子や利用者に取付けられることがある。
【0003】
特許文献1には、一対の帯状体からなる引掛手段を車椅子の肘掛や移動用の取っ手等に巻き付けた後にホックを係合して閉ループ状に引っ掛け、膝掛の本体シートのずれ落ちを防止することが記載されている。
また、特許文献2には、ベルトと面ファスナーから形成される止着手段が車椅子の肘掛け部に着脱自在に巻回支持され、膝掛の前身頃部が不必要に搖動したり、空間が生じて妄りに風雨が侵入したりすることを防止することが記載されている。
また、特許文献3には、ひざ掛け的下半身カバーを留め付ける方法として、ウェストベルトの両サイドにスナップテープを付け、ウェストに巻き付けたり車椅子のパイプに巻き付け留めることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-023433号公報
【文献】特開2006-249640号公報
【文献】特開2013-079458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、車椅子の利用者は足が不自由であることに加え腕も不自由であることが少なくい。このためストラップをウェストに巻き付ける作業が困難な場合がある。また、アームレストやパイプ等の形状や配置は車椅子により異なる。このためアームレストやパイプ等にストラップを取付けても膝掛けのずれや捲れを充分に抑制できない場合がある。
本発明は以上の問題点に鑑みてなされたものであって、様々なタイプの車椅子に対応可能で車椅子の利用者が扱いやすい膝掛けを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前身頃を有する本体部と、本体部に取付けられる左右一対の帯状のストラップと、を有する膝掛けであって、ストラップが基端において本体部に回転可能に取付けられる膝掛けにより上記課題を解決したものである。
【0007】
この膝掛けはストラップが帯状で幅方向に変形しにくいので腕が不自由でも扱いやすい。さらにストラップが基端において本体部に回転可能に取付けられるので、様々な態様でストラップを車椅子の利用者や車椅子の構成要素に取付けることができる。例えば上下方向に延在するように一対のストラップを配置して両者を連結すれば車椅子の利用者の首にストラップを掛けることができる。また、左右方向に延在するように一対のストラップを配置して車椅子のアームレストにストラップを取付けることも可能である。また、安全ベルトを使用する場合、上下方向に延在するように一対のストラップを配置してそれぞれのストラップを安全ベルトに取付けることも可能である。また、左右方向に延在するように一対のストラップを配置して両者を連結し車椅子の利用者のウェストにストラップを取付けることも可能である。このように様々な態様でストラップを車椅子の利用者や車椅子の構成要素に取付けることができるので、様々なタイプの車椅子に対応可能で車椅子の利用者が扱いやすい。
【0008】
また、ストラップはスナップボタンにより基端において本体部に着脱自在、かつ、回転可能に取付けられてもよい。ストラップがスナップボタンにより本体部に着脱自在であれば、例えば予め一対のストラップの先端側を連結し利用者の首やウェストに回してからストラップの基端を本体部に取付けることができる。また、予め各ストラップを車椅子のアームレストやパイプ、安全ベルト等に取付けてからストラップの基端を本体部に取付けることもできる。このようにストラップの取付け方のバリエーションが増えるのでストラップの取付けの容易化に寄与する。また、スナップボタンは着脱自在の機能に加え回転機能も兼ね備えるので構成のシンプル化にも寄与する。
【0009】
一対のストラップは先端側がループになっており、ループの先端に両者を連結するためのスナップボタンが備えられていてもよい。一対のストラップを連結し利用者の首やウェストに回して着用する場合、このようなスナップボタンが備えられていれば、一対のストラップの連結や取外しが容易である。また、ストラップの先端側がループであれば利用者が把持しやすいので一対のストラップの連結、取外し作業の容易化に寄与する。さらにループの先端にスナップボタンが備えられていれば一対のストラップが連結された状態で連結部分からストラップの端部が周囲に延在することがないので好適である。なお、介助者がループを車椅子のハンドルに掛けて膝掛を車椅子に取付けることも可能である。
【0010】
各ストラップは基端ストラップと、アジャスタと、メインストラップと、第1の面ファスナー要素と、第2の面ファスナー要素と、第3の面ファスナー要素とを有して構成され、基端ストラップは本体部に回転可能に取付けられるとともにアジャスタに連結され、メインストラップはアジャスタに挿通され挿通位置を調整することにより長さを調整可能であり、第1の面ファスナー要素は基端ストラップに設置され、第2の面ファスナー要素及び第3の面ファスナー要素はメインストラップの両端部に設置され、第2の面ファスナー要素は同じストラップの第1の面ファスナー要素と着脱自在であり、一方のストラップの第3の面ファスナー要素は他方のストラップの第3の面ファスナー要素と着脱自在であってもよい。
【0011】
このように各ストラップに3つの面ファスナー要素が備えられることでストラップの取付け方をさらに多様化できる。例えば、各ストラップの第1の面ファスナー要素と第2の面ファスナー要素とを係着して各ストラップをアームレストや安全ベルトに取付けることができる。また、一方のストラップの第3の面ファスナー要素と他方のストラップの第3の面ファスナー要素を係着して一対のストラップを連結し利用者の首やウェストに回して着用することもできる。また、アジャスタで各ストラップを長い状態に調整して両者の先端側を連結し、連結されたストラップを利用者の首から胴体を介してウェストまで通した後に、作業しやすい利用者の前側においてストラップの長さをアジャスタで調整することも可能である。なお、一対のストラップを連結し車椅子の背もたれに回して着用することも可能である。
【0012】
また、本体部の上端部に沿って帯状の芯材が設置され、芯材と重なる位置においてストラップの基端が本体部に取付けられていてもよい。芯材と重なる位置においてストラップの基端が本体部に取付けられていれば、ストラップを本体部に対して回転させる際、本体部におけるストラップの取付部やその周辺部分が変形しにくい。したがって、ストラップを回転させる作業が容易である。また、膝掛けを芯材に巻き取って仕舞うことができ便利である。
【0013】
また、芯材は前身頃の上端部に設置された主部と、主部の左右に連結された一対の延在部と、を有し、前身頃の上端部の左右の端部において一対の延在部が主部に対して折り曲げ可能であってもよい。車椅子の利用者が膝掛を着用する際、延在部を主部に対して折り曲げて利用者の身体と車椅子のサイドガードとの間に挟むように配置することにより、膝掛けがずれたり捲れたりすることを防止または抑制する効果を高めることができる。また、視界が狭く下方を視認しにくい利用者であっても芯材を握る手の感覚によって芯材を腰部の適当な位置に誘導したり、芯材の延在部を身体と車椅子の側部との間に誘導することができる。また、膝掛けを仕舞う際、芯材の延在部を主部に重なるように折り曲げ主部及び延在部に膝掛けを巻き取ることができる。
【0014】
本体部は前身頃の左右に下肢の側面を覆うための側部を備え、芯材の延在部は側部の上端部に設置されてもよい。本体部が側部を備えることで雨や寒さから下肢を保護する効果を高めることができる。また、芯材の延在部が側部の上端部に設置されることで、車椅子の利用者が膝掛を着用する際、延在部を主部に対して折り曲げて利用者の身体と車椅子のサイドガードとの間に挟むように配置することにより、本体部の側部が下肢の側面を覆うように折られるので着用の容易化に寄与する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、様々なタイプの車椅子に対応可能で車椅子の利用者による取付けが容易な膝掛けを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態の膝掛けの着用態様を模式的に示す斜視図
【
図2】同膝掛けの本体部の上端部及びその周辺部分を拡大して模式的に示す平面図
【
図3】同膝掛けのストラップの構成を拡大して模式的に示す斜視図
【
図4】連結された同ストラップの先端及びその周辺を拡大して模式的に示す図
【
図5】同膝掛けの本体部の構成を模式的に示す斜視図
【
図6】同膝掛けの前身頃の裏側に芯部の延在部が折り曲げられた状態を模式的に示す図
【
図7】本発明の第2実施形態の膝掛けの着用態様を模式的に示す斜視図
【
図8】本発明の第3実施形態の膝掛けの着用態様を模式的に示す斜視図
【
図9】車椅子の利用者のウェストにストラップが巻かれて取付けられる膝掛けの着用態様を模式的に示す斜視図
【
図10】車椅子の背もたれにストラップが巻かれて取付けられる膝掛けの着用態様を模式的に示す斜視図
【
図11】車椅子のハンドルにストラップが取付けられる膝掛けの着用態様を模式的に示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1及び2に示されるように、本発明の第1実施形態の膝掛け10は、前身頃を有する本体部12と、本体部12に取付けられる左右一対の帯状のストラップ14と、を有し、ストラップ14が基端において本体部12に回転可能に取付けられる。膝掛け10はストラップ14により車椅子16あるいは利用者18に取付け可能である。
図1は膝掛け10がストラップ14により利用者18に取付けられた着用態様を示す。
【0018】
ストラップ14はスナップボタン20により基端において本体部12に着脱自在、かつ、回転可能に取付けられている。スナップボタン20は第1スナップ20A及び第2スナップ20Bで構成されている(
図3及び5参照)。第1スナップ20Aは上スナップ(凸)であり、第2スナップ20Bは下スナップ(凹)である。なお、第1スナップ20Aが下スナップで第2スナップ20Bが上スナップでもよい。
図3に示されるように、ストラップ14は、基端ストラップ22と、アジャスタ24と、メインストラップ26と、を有して構成されている。基端ストラップ22及びメインストラップ26は帯状体で材質はナイロン等である。スナップボタン20の材質は真鍮、ステンレス、樹脂等である。基端ストラップ22はメインストラップ26よりも短く、第1スナップ20Aは基端ストラップ22に取付けられている。第2スナップ20Bは本体部12の上端部(利用者18のウェスト側の端部)に取付けられている。これにより基端ストラップ22は本体部12の上端部に回転可能に取付けられている。基端ストラップ22の一端はアジャスタ24に連結されている。一方、メインストラップ26はアジャスタ24に折り返すようにして挿通され、メインストラップ26におけるアジャスタ24の挿通位置を調整することによりストラップ14の長さを調整可能である。
【0019】
また、メインストラップ26の両端は折り返されて縫着され短ループ30と長ループ32を形成している。長ループ32の先端(折り曲げ部)には一対のストラップ14を連結するためのスナップボタン28が備えられている。
図4に示されるように、スナップボタン28は第1スナップ28A及び第2スナップ28Bで構成されている。第1スナップ28A及び第2スナップ28Bの一方は上スナップ(凸)であり、他方は下スナップ(凹)である。また、スナップボタン28の材質は樹脂、真鍮、ステンレス等である。
【0020】
また、各ストラップ14には第1の面ファスナー要素34と、第2の面ファスナー要素36と、第3の面ファスナー要素38が備えられている。第1の面ファスナー要素34は基端ストラップ22におけるスナップボタン20が取付けられた面と反対側の面に設置されている。第2の面ファスナー要素36はメインストラップ26の長ループ38の部分に設置されている。また、第3の面ファスナー要素38はメインストラップ26の短ループ30の部分に設置されている。なお、第1の面ファスナー要素34と第3の面ファスナー要素38は同じくらいの長さである。また、第2の面ファスナー要素36は第1の面ファスナー要素34及び第3の面ファスナー要素38よりも長い。第1の面ファスナー要素34はフックであり、第2の面ファスナー要素36はループである。これにより第2の面ファスナー要素36は同じストラップ14の第1の面ファスナー要素34と着脱自在である。なお、第1の面ファスナー要素34がループで、第2の面ファスナー要素36がフックであってもよい。また、一方のストラップ14の第3の面ファスナー要素38はフックであり、他方のストラップ14の第3の面ファスナー要素38はループである。これにより一方のストラップ14の第3の面ファスナー要素38は他方のストラップ14の第3の面ファスナー要素38と着脱自在である。なお、一方のストラップ14の第3の面ファスナー要素38はメインストラップ26における第2の面ファスナー要素36が設置された側と同じ側に設置されており、他方のストラップ14の第3の面ファスナー要素38はメインストラップ26における第2の面ファスナー要素36が設置された側と反対側に設置されている。
【0021】
本体部12は、
図5に示されるように、前身頃40と、一対の側部42と、底部44と、を有して構成されている。前身頃40、側部42、底部44の材質はポリエステルやナイロンであり、本体部12は全体としても布地のような柔軟な風合いである。
図5は着用時の本体部12の形態を模式的に示している。前身頃40は車椅子16の利用者18の下肢の前面を覆う略長方形の布地である。詳細には前身頃40は上下方向の中央部付近から下端に向かって左右方向の幅が連続的に僅かに広がる形状である。
【0022】
本体部12にはその上端部に沿って帯状の芯材46が設置されている。芯材46は前身頃40の上端部に設置された主部48と、主部48の左右に連結された一対の延在部50と、を有し、前身頃40の上端部の左右の端部において一対の延在部50は主部48に対して折り曲げ可能である。なお、延在部50は側部42の上端部(利用者18のウェスト側の端部)に設置されている。また、主部48は前身頃40の上端部の左右方向の中央部で分割されており分割部において折り曲げ可能である。スナップボタン20の第2スナップ20Bは前身頃40における芯材46(主部48)と重なる位置に設置されている。すなわち、芯材46と重なる位置においてストラップ14の基端が本体部12に取付けられている。芯材46の材質はポリプロピレン等の樹脂である。
【0023】
また、前身頃40には、
図2に示されるように、ポケット52が備えられている。前身頃40を構成する生地がZ字状に折られ、裏面側の2枚の折り重なる部分が縫い目52Aにおいて縫い付けられることによりポケット52が形成されている。表側の生地には縫い目52Aが及んでおらず縫い目52Aから雨水が浸透することがないように構成されている。ポケット52の上部の開口部にはカバー部54が備えられている。カバー部54も前身頃40を構成する生地がZ字状に折られることにより形成されている。ポケット52の上部とカバー部54の裏面には面ファスナー56が設置されておりポケット52の開口部が閉じた状態に保持可能である。また、カバー部54にはループ状ストラップ58が設置されており、ループ状ストラップ58を指でつまんで引っ張ることによりポケット52の開口部を開けることができるようになっている。また、前身頃40の左右の周縁部の上下方向中央部付近には反射プリント59が設けられている。
【0024】
側部42は車椅子16の利用者18の下肢の側面を覆うための布地であり、前身頃40の左右の周縁部に接着及び/又は縫着により連結されている。側部42における前身頃40との連結部分の膝よりも上に対応する部位と膝よりも下に対応する部位は鈍角をなす直線状である。側部42の上端部は芯材46の延在部50を収容する袋状の布地で構成されており、これよりも下の他の部分と接着及び/又は縫着により連結されている。なお、延在部50を収容する布地の先端は下方の側部42の他の部分よりも若干突出している。側部42の下端は底部44と連結されている。また、側部42における前身頃40との連結部分の反対側は開放された略直線の周縁をなし、その長手方向中央付近にはループ状ストラップ60が設置されている。また、この周縁におけるループ状ストラップ60よりも下の一定範囲にはゴムギャザーが設置され弾性及び伸縮性が付与されている。
【0025】
底部44は車椅子16の利用者18の足先を下方から覆う略長方形の部位で前身頃40を構成する生地の延在部分として形成されている。なお、略長方形の生地が前身頃40の下端に接着及び/又は縫着により連結されることにより底部44が形成されてもよい。底部44は前身頃40の下部及び一対の側部42の下部とともに利用者18の足先を包む袋部を形成している。底部44における前身頃40との境界の反対側は開放された略直線の周縁をなし、その左右方向中央付近の一定範囲にはゴムギャザーが設置され弾性及び伸縮性が付与されている。また、底部44の開放された周縁の左右の両端には上スナップ61Aが設置されている。また、側部42における前身頃40との境界の膝よりも下の部位には下スナップ61Bが設置されている。上スナップ61Aと下スナップ61Bが係着されることにより底部44が前身頃40の裏面に折り重なる状態が保持され本体部12の上下方向の長さが短縮されるようになっている。
【0026】
車椅子16は、
図1に示されるように、アームレスト62、ハンドル64、パイプ66、サイドガード68等を有して構成されている。膝掛け10の取付けのためにこれらの部位が利用されることがある。
【0027】
次に、第1実施形態の膝掛け10の着用方法ついて説明する。まず利用者18は車椅子16に座った状態で前身頃40が下肢の前面を覆うように膝掛け10の本体部12を自身の下肢の上に掛ける。この際、底部44が足先に掛かるようにする。底部44にゴムギャザーが設置され弾性及び伸縮性が付与されているので底部44が足先に掛かりやすい。そして利用者18は芯材46の延在部50を主部48に対して折り曲げ、利用者18の身体と車椅子16のサイドガード68との間に延在部50が挟まれるように延在部50を配置する。これにより本体部12の側部42が利用者18の下肢の側面を覆うように配置される。なおこの際、利用者18が芯材46を過剰に引き上げても底部44にゴムギャザーが設置されているので底部44が足先から外れにくい。
【0028】
次に利用者18はスナップボタン20の回転位置を調整し、上下方向に延在するように一対のストラップ14を配置する。次に利用者18は各ストラップ14の長ループ32の先端(折り曲げ部)のスナップボタン28で両者を連結する。これにより一対のストラップ14がループ状に連結される。次に利用者18は連結されたストラップ14を自身の首に掛ける。なお、必要に応じてアジャスタ24により各ストラップ14の長さを適宜調整する。これにより膝掛け10の着用が完了する。なお、例えば風が強い場合、ループ状ストラップ60と車椅子16のパイプ66とを図示しないストラップ等で連結してもよい。
【0029】
次に膝掛け10の仕舞い方について説明する。利用者18は連結されたストラップ14を自身の首から外し、さらにスナップボタン20においてストラップ14を本体部12から分離する。次に
図6に示されるように、利用者18は芯材46の主部48の裏側に一対の延在部50が重なるように主部48に対して延在部50を折り曲げる。本体部12の一対の側部42も前身頃40の裏側に折り重なるように折り曲げる。さらに左右方向の中央部で本体部12を折り曲げる。この際、芯材46の主部48は左右方向の中央の分割部で折り曲げられる。この状態で利用者18は芯材46(主部48及び延在部50)の周りに本体部12を巻き取り本体部12をコンパクトな形態とする。さらに利用者18はコンパクトな形態となった本体部12を、底部44が前身頃40の下部及び一対の側部42の下部とともに形成する袋部に収容する。底部44にゴムギャザーが設置され弾性及び伸縮性が付与されているので袋部に本体部12を収容しやすい。なお、他の袋等を用意し、コンパクトな形態とした本体部12を収容してもよい。また、ストラップ14が本体部12に取付けられた状態で芯材46の周りに本体部12を巻き取るようにしてもよい。この場合、スナップボタン20の回転位置を調整し、芯材46に沿うように一対のストラップ14を配置して芯材46の周りに本体部12を巻き取るようにしてもよい。
【0030】
以上説明したように、第1実施形態では利用者18がストラップ14を自身の首に掛けて膝掛け10が着用されるので、車椅子16の構成に拘わらず安定した状態で膝掛け10を取付けることができ、膝掛け10がずれたり捲れたりすることを防止または抑制できる。さらに、芯材46の延在部50が利用者18の身体と車椅子16のサイドガード68との間に挟まれるように配置されることにより、膝掛け10がずれたり捲れたりすることを防止または抑制する効果が高められる。また、利用者18が芯材46の延在部50を主部48に対して折り曲げ、利用者18の身体と車椅子16のサイドガード68との間に挟まれるように延在部50を配置することにより本体部12の側部42が利用者18の下肢の側面を覆うように配置されるので着用が容易である。また、利用者18の視界が狭く下方を視認しにくい場合であっても芯材46を握る手の感覚によって芯材46を腰部の適当な位置に誘導したり、芯材46の延在部50を利用者18の身体と車椅子16のサイドガード68との間に誘導することができるので、この点でも着用が容易である。また、芯材46の主部48と重なる位置においてストラップ14の基端がスナップボタン20により本体部12に取付けられているので、ストラップ14を本体部12に対して回転させる際、本体部12におけるストラップ14の取付部やその周辺部分が変形しにくい。したがって、ストラップ14を回転させる作業も容易である。また、長ループ32の先端にスナップボタン28が設置されているので利用者18が把持しやすく、一対のストラップ14の連結作業も容易である。また、長ループ32の先端にスナップボタン28が設置されているので一対のストラップ14が連結された状態で連結部分からストラップ14の端部が周囲に延在することがなくシンプルで好適である。また、芯材46(主部48及び延在部50)の周りに本体部12を巻き取ることにより本体部12を容易にコンパクトな形態にできるので膝掛け10を仕舞う作業も容易である。また、コンパクトな形態とした本体部12を、底部44等で形成される袋部に収容できるので、この点でも仕舞う作業が容易である。
【0031】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図7に示されるように、第2実施形態では各ストラップ14はそれぞれ車椅子16の左右のアームレスト62に取付けられる。具体的には、各ストラップ14はアームレスト62に巻き付けられ、第2の面ファスナー要素36が第1の面ファスナー要素34と係着されてアームレスト62に取付けられる。一対のストラップ14は左右方向に延在するようにスナップボタン20の回転位置が調整される。他の構成は第1実施形態と同じであるので同じ構成については
図1~6と同一符号を付することとして説明を省略する。車椅子16のアームレスト62の形状や配置、利用者18の体形によっては、ストラップ14がアームレスト62に取付けられることで膝掛け10がずれたり捲れたりすることを充分に防止または抑制できる場合がある。このような場合、一対のストラップ14が左右方向に延在するようにスナップボタン20の回転位置を調整することにより、ストラップ14をアームレスト62に容易に取付けることができる。
【0032】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
図8に示されるように、第3実施形態では利用者18が安全ベルト70を装着する。なお、安全ベルト70は利用者18のウェストと車椅子16の背もたれを取り巻いて装着されている。各ストラップ14はそれぞれ安全ベルト70に取付けられる。第1実施形態と同様に各ストラップ14は上下方向に延在するようにスナップボタン20の回転位置が調整される。各ストラップ14は安全ベルト70に巻き付けられ、第2の面ファスナー要素36が第1の面ファスナー要素34と係着されて安全ベルト70に取付けられる。他の構成は第1実施形態と同じであるので同じ構成については
図1~6と同一符号を付することとして説明を省略する。安全ベルト70の形状や装着位置、利用者18の体形によっては、ストラップ14が安全ベルト70に取付けられることで膝掛け10がずれたり捲れたりすることを充分に防止または抑制できる場合がある。このような場合、一対のストラップ14が上下方向に延在するようにスナップボタン20の回転位置を調整することにより、ストラップ14を安全ベルト70に容易に取付けることができる。
【0033】
なお、第1実施形態において一対のストラップ14は長ループ32の先端のスナップボタン28によりループ状に連結されるが、一方のストラップ14の第3の面ファスナー要素38と他方のストラップ14の第3の面ファスナー要素38が係着されることにより両者がループ状に連結されてもよい。
【0034】
また、第1実施形態においてループ状に連結された一対のストラップ14は利用者18の首に掛けられるが、
図9に示されるように、ループ状に連結された一対のストラップ14は利用者18のウェストに巻かれて取付けられてもよい。また、
図10に示されるように、ループ状に連結された一対のストラップ14は車椅子16の背もたれに巻かれて取付けられてもよい。なお、
図9及び10では便宜上、車椅子16の左側のアームレスト62の図示を省略している。
【0035】
また、第2実施形態において一対のストラップ14はそれぞれ車椅子16の左右のアームレスト62に取付けられるが、一対のストラップ14はそれぞれ車椅子16の左右のハンドル64に取付けられてもよい。この場合、
図11に示されるように、短ループ30または長ループ32をハンドル64に掛けてストラップ14がハンドル64に取付けられてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、車椅子の利用者のためのレインウェアや防寒着に利用できる。
【符号の説明】
【0037】
10 膝掛け
12 本体部
14 ストラップ
16 車椅子
18 利用者
20、28 スナップボタン
20A、28A、61A 上スナップ
20B、28B、61B 下スナップ
22 基端ストラップ
24 アジャスタ
26 メインストラップ
30 短ループ
32 長ループ
34 第1の面ファスナー要素
36 第2の面ファスナー要素
38 第3の面ファスナー要素
40 前身頃
42 側部
44 底部
46 芯材
48 主部
50 延在部
52 ポケット
52A 縫い目
54 カバー部
56 面ファスナー
58、60 ループ状ストラップ
59 反射プリント
62 アームレスト
64 ハンドル
66 パイプ
68 サイドガード
70 安全ベルト
【要約】
【課題】様々なタイプの車椅子に対応可能で車椅子の利用者が扱いやすい膝掛けを提供する。
【解決手段】膝掛け10は、前身頃を有する本体部12と、本体部12に取付けられる左右一対の帯状のストラップ14と、を有し、ストラップ14が基端において本体部12に回転可能に取付けられる。膝掛け10はストラップ14により車椅子16あるいは利用者18に取付け可能である。
【選択図】
図1