(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-11
(45)【発行日】2025-07-22
(54)【発明の名称】超音波接合ホーン及び超音波接合方法
(51)【国際特許分類】
B23K 20/10 20060101AFI20250714BHJP
H05K 13/04 20060101ALN20250714BHJP
【FI】
B23K20/10
H05K13/04 B
(21)【出願番号】P 2022063986
(22)【出願日】2022-04-07
【審査請求日】2024-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】岩尾 有佑
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-240293(JP,A)
【文献】国際公開第2010/150351(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102015222900(DE,A1)
【文献】特開2014-008728(JP,A)
【文献】米国特許第05921460(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/10
H05K 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面上に配置された被接合材に超音波振動を印加して、前記基板の表面上に前記被接合材を接合する超音波接合処理に用いられる超音波接合ホーンであって、
接合ブロックと、
前記接合ブロックの先端に設けられ、前記超音波接合処理の実行時に前記被接合材に接する先端突起を有し、
前記先端突起は内部空間を有する筒状に設けられ、前記先端突起の形成高さは一定であ
り、
前記先端突起は内部空間を有する円筒状に設けられ、
前記基板は、穴部を有するガラス板であり、
前記被接合材は前記穴部を塞ぐ金属箔であり、
前記先端突起の内径は、前記穴部の径と比較して1mm以上長く設定される、
超音波接合ホーン。
【請求項2】
請求項
1記載の超音波接合ホーンであって、
前記先端突起の形成高さは0.1mm以上、0.2mm以下に設定される、
超音波接合ホーン。
【請求項3】
請求項
1記載の超音波接合ホーンであって、
前記先端突起における径方向の厚みは、0.15mm以上、0.25mm以下に設定される、
超音波接合ホーン。
【請求項4】
基板の表面上に配置された被接合材に超音波振動を印加して、前記基板の表面上に前記被接合材を接合する超音波接合処理を実行する超音波接合方法であって、前記基板は穴部を有し、
(a) 前記穴部の径を認識するステップと、
(b) 前記ステップ(a)で認識した前記穴部に対応する超音波接合ホーンを穴部用超音波接合ホーンとして準備するステップとを備え、
前記穴部用超音波接合ホーンは、
接合ブロックと、
前記接合ブロックの先端に設けられ、前記超音波接合処理の実行時に前記被接合材に接する先端突起とを有し、
前記先端突起は内部空間を有する円筒状に設けられ、前記先端突起の形成高さは一定であり、
前記先端突起の内径は、前記穴部の径と比較して1mm以上長く設定され、
前記超音波接合方法は、
(c) 前記穴部を塞いで前記基板上に前記被接合材を配置するステップと、
(d) 前記穴部用超音波接合ホーンを用い、平面視して前記先端突起の前記内部空間内に前記穴部が位置する位置設定状態で、前記超音波接合処理を実行するステップとをさらに備える、
超音波接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板の表面に被接合材を接合する超音波接合処理に用いられる超音波接合ホーンに関する。
【背景技術】
【0002】
有機デバイスのカバーガラスとなるガラス板は、光電変換部(発電層)を保護するために設けられる。ガラス板は光電変換部の上部のカバーとして設けられるが、光電変換部から導通経路を確保すべく、ガラス板に穴部を空け、この穴部を塞いで集電電極である金属箔を配置し、超音波接合処理を実行して金属箔をガラス板上に接合している。なお、金属箔のガラス板への接合後、金属箔と光電変換部との電気的接続は既存技術を用いて行われる。上述した超音波接合処理において、ガラス板が基板として機能し、金属箔が穴部を塞ぐ被接合材として機能している。
【0003】
超音波接合処理に用いられる超音波接合ホーンは、超音波接合処理の実行時に被接合材と接触する先端突起を有している。先端突起を有する従来の超音波接合ホーンとして、例えば、特許文献1で開示された超音波接合用ルールや、特許文献2で開示された超音波接合ホーンがある。
【0004】
図11は従来の超音波接合ホーン50の側面構造を模式的に示す説明図である。
図12は
図11で示した超音波接合ホーンの先端突起60の平面構造を模式的に示す平面図である。
図11及び
図12それぞれにXYZ直交座標系を記している。
【0005】
これらの図に示すように、従来の超音波接合ホーン50は、基台61、接合ブロック62及び先端突起60を主要構成要素として含んでいる。
【0006】
基台61の-Z方向側の表面上に接合ブロック62が連結され、接合ブロック62の-Z方向側の先端に先端突起60が設けられる。先端突起60は超音波接合処理の実行時に被接合材に接する部位となる。
【0007】
図11に示すように、先端突起60は凸部と凹部とが交互に現れる山谷形状を呈している。山谷形状はYZ断面において複数の三角形が連結された形状となる。この山谷形状に替えて平面部に複数の凹部を有するドット形状にしても良い。
【0008】
図12に示すように、先端突起60は平面視して矩形状の矩形面を呈しており、矩形面の全体に亘って山谷形状が設けられている。
【0009】
図11及び
図12で示す従来の超音波接合ホーン50にける先端突起60は、矩形面の全体に亘って山谷形状が設けられている。このような超音波接合ホーン50を用いて、基板上に設けられた被接合材に先端突起60を接触させた状態で超音波接合処理を実行することにより、基板の表面上に被接合材を接合している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】国際公開第2010/150350号
【文献】特開2005-297055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述した従来の超音波接合ホーン50を用いて、基板に設けられた穴部を塞いで配置された被接合材に対し、超音波接合処理を実行する仮定接合状況を考える。仮定接合状況において、基板としてガラス基板、穴部としてガラス基板を貫通するガラス貫通穴、被接合材としてアルミ箔等の金属箔がそれぞれ想定される。
【0012】
上記仮定接合状況の場合、先端突起60を金属箔に接触させて状態で、基台61側の上方から超音波接合ホーン50に超音波振動を印加して、ガラス基板の表面上に金属箔を接合する超音波接合処理が実行される。
【0013】
上記仮定接合状況では、ガラス貫通穴の上方の貫通穴上領域において、先端突起60の山谷形状と金属箔とが接触している。すなわち、超音波接合処理の実行時に超音波接合ホーン50の先端突起60とガラス貫通穴とが干渉し、金属箔の貫通穴上領域の下方は空間領域(ガラス貫通穴)となる。
【0014】
このため、上記仮定接合状況では、超音波接合処理の実行時に、超音波接合ホーン50によってガラス貫通穴の空間領域に向けて金属箔を押し下げる力が働くため、金属箔が破断してしまうという第1の問題点があった。
【0015】
加えて、上記仮定接合状況では、超音波接合処理の実行時に、超音波接合ホーン50によってガラス貫通穴の内周面を金属箔を介して押し下げる力が働くため、ガラス貫通穴に割れが生じてしまうという第2の問題点があった。
【0016】
このように、先端突起60として山谷形状やドット形状を採用した従来の超音波接合ホーン50を用いて超音波接合処理を実行した場合、上述した第1及び第2の問題点が発生するため、ガラス貫通穴を塞いだ金属箔をガラス基板上に精度良く接合することができないという問題点があった。
【0017】
本開示は上記問題点を解決するためになされたもので、穴部を塞いで配置された被接合材を基板上に精度良く接合することができる超音波接合ホーンを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本開示に係る超音波接合ホーンは、基板の表面上に配置された被接合材に超音波振動を印加して、前記基板の表面上に前記被接合材を接合する超音波接合処理に用いられる超音波接合ホーンであって、接合ブロックと、前記接合ブロックの先端に設けられ、前記超音波接合処理の実行時に前記被接合材に接する先端突起を有し、前記先端突起は内部空間を有する筒状に設けられる。
【発明の効果】
【0019】
本開示の超音波接合ホーンにおける先端突起は内部空間を有する筒状に設けられているため、超音波接合処理の実行時において、先端突起の内部空間に超音波振動は印加されない。
【0020】
したがって、基板が穴部を有し被接合材が穴部を塞いで設けられ、先端突起の内部空間が穴部より平面形状が広く設定されている場合、穴部の周辺領域上において被接合材と先端突起を接触させた突起接触状態で本開示の超音波接合ホーンによる超音波接合処理を実行することができる。
【0021】
その結果、本開示の超音波接合ホーンを用いて超音波接合処理を実行することにより、穴部と干渉することなく、被接合材を基板上に精度良く接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本開示の実施の形態である超音波接合ホーンの側面構造を模式的に示す説明図である。
【
図2】
図1で示した超音波接合ホーンの着目領域の側面構造を拡大して示す説明図である。
【
図3】
図1で示した超音波接合ホーンを下方から視た平面構造を模式的に示す説明図である。
【
図4】
図3で示した超音波接合ホーンの着目領域の平面構造を拡大して示す説明図である。
【
図5】本実施の形態の超音波接合ホーン1を用いた超音波接合方法の処理手順を示すフローチャートである。
【
図6】超音波接合ホーンの使用状況を模式的に示す説明図(その1)である。
【
図7】超音波接合ホーンの使用状況を模式的に示す説明図(その2)である。
【
図8】超音波接合ホーンの使用状況を模式的に示す説明図(その3)である。
【
図9】超音波接合ホーンの使用状況を模式的に示す説明図(その4)である。
【
図10】超音波接合処理の実行後のアルミ箔の平面構造を模式的に示す説明図である。
【
図11】従来の超音波接合ホーンの側面構造を模式的に示す説明図である。
【
図12】
図11で示した超音波接合ホーンの先端突起の平面構造を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<実施の形態>
(超音波接合ホーンの構造)
図1は本開示の実施の形態である超音波接合ホーン1の側面構造を模式的に示す説明図である。
図2は
図1で示した超音波接合ホーン1の着目領域R1の側面構造を拡大して示す説明図である。
図3は
図1で示した超音波接合ホーン1を下方から視た平面構造を模式的に示す説明図である。
図4は
図3で示した超音波接合ホーン1の着目領域R2の平面構造を拡大して示す説明図である。
図1~
図4それぞれにXYZ直交座標系を記している。
【0024】
これらの図に示すように、本実施の形態の超音波接合ホーン1は、基台11、接合ブロック12及び先端突起10を主要構成要素として含んでいる。
【0025】
超音波接合ホーン1は、基板に設けられた穴部を塞いで基板の表面上に配置された被接合材に超音波振動を印加して、基板の表面上に被接合材を接合する超音波接合処理に用いられる。
【0026】
基台11の-Z方向側の表面上に接合ブロック12が連結され、接合ブロック12の-Z方向側の先端に先端突起10が設けられる。先端突起10は超音波接合処理の実行時に被接合材に接する部位となる。
【0027】
図3に示すように、先端突起10は内部空間SP1を有する円筒状に設けられる。すなわち、先端突起10は平面視して突起内径d10を有する円環状を呈している。先端突起10の突起内径d10内の領域が内部空間SP1となる。
【0028】
図1及び
図2に示すように、先端突起10のZ方向に沿った形成高さである突起高さh10は、0.1mm以上、0.2mm以下に設定される。
【0029】
図3及び
図4に示すように、先端突起10における径方向の厚みである突起肉厚t10は、0.15mm以上、0.25mm以下に設定される。
【0030】
(超音波接合方法)
図5は本実施の形態の超音波接合ホーン1を用いた超音波接合方法の処理手順を示すフローチャートである。
図6~
図9は超音波接合ホーン1の使用状況を模式的に示す説明図である。
図6~
図9それぞれにXYZ直交座標系を記している。
【0031】
以下、
図5を参照しつつ、
図6~
図9を適宜引用して超音波接合ホーン1を用いた超音波接合方法の処理手順を説明する。
【0032】
図6に示すように、超音波接合対象となる基板であるガラス板20はガラス貫通穴21を有している。
図6において、ガラス板20の形成面をXY平面としている。
【0033】
図5に戻って、ステップS1において、ガラス貫通穴21の径(直径)を認識する。例えば、ノギスやマイクロスコープを用いた人手による測定処理を行うことによりガラス貫通穴21の径を認識することができる。
【0034】
ガラス板20は例えば太陽電池の光電変換部(発電層)を保護するカバー部材として、光電変換部上に設けられる。この構造で光電変換部と電気的に接続を図るべく、ガラス板20には光電変換部に到達するためのガラス貫通穴21が設けられる。ガラス貫通穴21が基板に設けられる穴部となる。
【0035】
その後、ステップS2において、ステップS1で認識したガラス貫通穴21に対応する超音波接合ホーン1を穴部用超音波接合ホーン1Xとして準備する。
【0036】
例えば、ガラス貫通穴21の径が径d21の場合、径d21より長さΔD分長い突起内径d10を有する先端突起10を備えた超音波接合ホーン1を穴部用超音波接合ホーン1Xとする。ここで長さΔDは1.0mm以上に設定される。
【0037】
以下、ステップS2にて準備された穴部用超音波接合ホーン1Xの先端突起10を特に「選択先端突起10X」と称して説明する。
【0038】
次に、ステップS3において、
図6に示すように、ガラス貫通穴21の上方に穴部用超音波接合ホーン1Xを配置する。具体的には、接合ブロック12が基台11より下方になる状態で、
図6で図示しない先端突起10とガラス板20とが対向するように、穴部用超音波接合ホーン1Xは配置されている。さらに、平面視してガラス貫通穴21の中心と先端突起10の中心とが一致するように配置されている。
【0039】
次に、ステップS4において、
図7に示すように、ガラス板20上にガラス貫通穴21を塞いでアルミ箔25を配置する。具体的には、ガラス貫通穴21の全てを覆って、ガラス板20の表面上に金属箔であるアルミ箔25を配置する。アルミ箔25がガラス板20の表面上に設けられる被接合材となる。太陽電池構造の場合、アルミ箔25は集電電極として機能する。
【0040】
そして、ステップS5において、ステップS4にてガラス板20の表面上に配置されたアルミ箔25に対し、穴部用超音波接合ホーン1Xを用いた超音波接合処理を行う。
【0041】
まず、
図7に示すように、穴部用超音波接合ホーン1Xを下降方向D1に沿って所定の荷重をかけながら下降させる。下降方向D1は-Z方向に合致した方向となる。
【0042】
そして、
図8に示すように、接合ブロック12の先端に設けられた選択先端突起10X(
図8では図示せず)がアルミ箔25に所定の荷重をかけながら接触する突起接触状態にして、穴部用超音波接合ホーン1Xを用いた超音波接合処理を実行することにより、アルミ箔25をガラス板20の表面上に接合する。
【0043】
この際、平面視して選択先端突起10Xの内部空間SP1内にガラス貫通穴21が位置する位置設定状態となる。すなわち、突起接触状態は、選択先端突起10Xはガラス貫通穴21と干渉することなく、ガラス貫通穴21の周辺領域上でアルミ箔25と接触する状態となる。
【0044】
このように、ステップS5は、選択先端突起10Xを有する穴部用超音波接合ホーン1Xを用い、平面視して選択先端突起10Xの内部空間SP1内にガラス貫通穴21が位置する位置設定状態で、超音波接合処理を実行するステップとなる。
【0045】
上記位置設定状態となるのは以下の寸法配置設定(1)~(3)がなされているからである。
(1) 選択先端突起10Xは、ガラス貫通穴21の径d21より長さΔD分長い突起内径d10を有している。
(2) ステップS3において、ガラス貫通穴21の中心と先端突起10の中心とが平面視して一致するように配置される。
(3) ステップS5において、穴部用超音波接合ホーン1Xを下降方向D1に沿って下降させて、先端突起10をアルミ箔25に接触させている。
【0046】
その後、
図9に示すように、穴部用超音波接合ホーン1Xを上昇方向D2に沿って上昇させて、突起接触状態を解消して超音波接合処理を終了する。
【0047】
その結果、
図9に示すように、アルミ箔25上に選択先端突起10Xの平面形状を反映した円環状の接合痕30が残る。
【0048】
図10は、ステップS5の超音波接合処理の実行後のアルミ箔25の平面構造を模式的に示す説明図である。
図10にXYZ直交座標系を記している。
【0049】
同図に示すように、アルミ箔25上にガラス貫通穴21の径d21より長さΔD分、長い内径の接合痕30が残存する。接合痕30の径方向の肉厚は突起肉厚t10と同程度となる。なお、長さΔDはステップS2において1.0mm以上に設定されている。
【0050】
(効果)
本実施の形態の超音波接合ホーン1(1X)における先端突起10は内部空間SP1を有する円筒状に設けられているため、超音波接合処理の実行時において、先端突起10(10X)の内部空間SP1に超音波振動は印加されない。
【0051】
図6~
図9で示すように、ガラス板20が穴部となるガラス貫通穴21を有し、被接合材となるアルミ箔25がガラス貫通穴21を塞いで設けられ、超音波接合ホーン1(1X)の内部空間SP1がガラス貫通穴21より平面形状が広く設定されている。
図6~
図9で示す構成の場合、ガラス貫通穴21の周辺領域上において、アルミ箔25と先端突起10とを接触させた突起接触状態で超音波接合ホーン1による超音波接合処理を実行することができる。
【0052】
その結果、本実施の形態の超音波接合ホーン1を用いて超音波接合処理を実行することにより、ガラス貫通穴21と干渉することなく、アルミ箔25をガラス板20の表面上に精度良く接合することができる。
【0053】
なお、本実施の形態では先端突起10の形状を円筒状としたが角筒状に形成しても良い。すなわち、先端突起10は内部空間を有する筒状(円筒状または角筒状)に形成することにより、上述した効果を発揮することができる。
【0054】
ただし、穴部はガラス貫通穴21のように円柱状に設けられる場合が一般的であるため、先端突起10の形状もガラス貫通穴21の形状に反映して円筒状に形成することが望ましい。この場合、実施の形態1の超音波接合ホーン1は、超音波接合処理の実行時に、必要最小限の長さΔDに設定し、平面視して円状のガラス貫通穴21との干渉を適切に回避することができる。
【0055】
本実施の形態の超音波接合ホーン1は先端突起10の形成高さである突起高さh10を0.1mm以上に設定することにより、超音波接合処理の実行期間中において先端突起10以外の接合ブロック12の先端領域の一部等がアルミ箔25に接触する現象を確実に回避してアルミ箔25をガラス板20の表面上に接合することができる。
【0056】
本実施の形態の超音波接合ホーン1は先端突起10の突起高さh10を0.2mm以下に設定することにより、超音波接合処理の実行期間中における先端突起10のアルミ箔25に対する超音波振動内容を変化させることなく一定にしてアルミ箔25をガラス板20の表面上に接合することができる。
【0057】
本実施の形態の超音波接合ホーン1は先端突起10の径方向における厚みである突起肉厚t10を0.15mm以上、かつ、0.25mm以下に設定することにより、先端突起10にかかる荷重を適切な状態にしてアルミ箔25をガラス板20の表面上に接合することができる。
【0058】
以下、この点を詳述する。突起肉厚t10が0.15mm未満であれば、先端突起10にかかる荷重が大きくなりすぎてアルミ箔25に割れが発生する危険性がある。一方、突起肉厚t10が0.25mmを上回る場合、先端突起10にかかる荷重が所望の値より小さくなりすぎて、ガラス板20の表面上にアルミ箔25を適切に接合できない可能性がある。
【0059】
したがって、先端突起10の突起肉厚t10を0.15mm以上、かつ、0.25mm以下に設定して、選択先端突起10Xにかかる荷重を適切な状態にすることができる。
【0060】
本実施の形態の超音波接合ホーン1(1X)の先端突起10(10X)の突起内径d10は、ガラス貫通穴21の径d21と比較して1mm以上の長さΔD分長く設定される。このため、ステップS3の実行時における中心位置ズレ及び超音波接合処理の水平方向振動距離に伴う総合位置ズレ量を長さΔD内に抑えることができる。
【0061】
なお、「中心位置ズレ」とは、先端突起10の中心とガラス貫通穴21の中心との位置ズレを意味し、「水平方向振動距離」は、ステップS5の超音波接合処理の実行時における先端突起10の水平方向にける振動距離を意味する。水平方向振動距離は20μm程度が想定される。
【0062】
したがって、本実施の形態の超音波接合ホーン1は、上述した中心位置ズレ及び水平方向振動距離を加味しても、超音波接合処理の実行期間中において、平面視して先端突起10の内部空間SP1内にガラス貫通穴21が位置する位置設定状態を維持することができる。
【0063】
その結果、本実施の形態の超音波接合ホーンは、先端突起10とガラス板20に設けたガラス貫通穴21とが干渉する現象を確実に回避して、アルミ箔25をガラス板20の表面上に精度良く接合することができる。
【0064】
図5で示した本実施の形態の超音波接合方法のステップS2において、穴部用超音波接合ホーン1Xの選択先端突起10Xの突起内径d10は、ガラス貫通穴21の径d21と比較して1mm以上の長さΔD分、長く設定される。
【0065】
本実施の形態の超音波接合方法のステップS3,S4後に実行されるステップS5において、平面視して選択先端突起10Xの突起内径d10の内部空間SP1内にガラス貫通穴21が位置する位置設定状態で超音波接合処理を実行している。
【0066】
このため、ステップS3の実行時に生じる上記中心位置ズレ及びステップS5の実行時に生じる上記水平方向振動距離を加味しても、ステップS5の超音波接合処理の実行期間中に選択先端突起10Xとガラス板20に設けたガラス貫通穴21とが干渉する現象を確実に回避することができる。
【0067】
その結果、本実施の形態の超音波接合方法は、ガラス貫通穴21を塞いで配置されたアルミ箔25をガラス板20に精度良く接合することができる。
【0068】
なお、本開示は、その開示の範囲内において、実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 超音波接合ホーン、1X 穴部用超音波接合ホーン、10 先端突起、10X 選択先端突起、11 基台、12 接合ブロック、20 ガラス板、21 ガラス貫通穴、25 アルミ箔、30 接合痕、d10 突起内径、h10 突起高さ、t10 突起肉厚。