(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-11
(45)【発行日】2025-07-22
(54)【発明の名称】打撃工具及び集塵システム
(51)【国際特許分類】
B25D 17/18 20060101AFI20250714BHJP
B25D 11/04 20060101ALI20250714BHJP
B23Q 11/00 20060101ALI20250714BHJP
B25F 5/00 20060101ALI20250714BHJP
【FI】
B25D17/18
B25D11/04
B23Q11/00 M
B25F5/00 Z
(21)【出願番号】P 2021093825
(22)【出願日】2021-06-03
【審査請求日】2024-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】吉兼 聖展
【審査官】大屋 静男
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0057037(US,A1)
【文献】米国特許第03511322(US,A)
【文献】特開2017-127968(JP,A)
【文献】特開2010-201526(JP,A)
【文献】特開2008-132550(JP,A)
【文献】特開2011-031340(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/00
B25D 11/04、17/18
B25F 5/00-5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集塵アタッチメントを取り付け可能なハウジングと、
前記ハウジング内に設けられ、前端に装着した先端工具を往復動する打撃子によって打撃可能な打撃機構部と、
前記ハウジング内で、前記打撃機構部の打撃軸線方向に対して回転軸が交差するように配置されるモータと、
前記回転軸に設けられる集塵ファンと、を含み、
前記集塵ファンが、前記モータの下側に配置されている
と共に、前記集塵ファンの回転により空気を吸い込む吸気口が、前記ハウジングの下面に設けられている打撃工具。
【請求項2】
前記回転軸には、前記回転軸の軸線方向で前記集塵ファンと隣接するモータ冷却用ファンが設けられている請求項1に記載の打撃工具。
【請求項3】
前記集塵ファンの回転により空気を排出する排気口が、前記ハウジングの下面に設けられている請求項1
又は2に記載の打撃工具。
【請求項4】
前記集塵ファンの回転により空気を排出する第2の排気口が、前記ハウジングの側面に設けられている請求項
3に記載の打撃工具。
【請求項5】
前記吸気口は、円盤状のシャッタによって開閉可能である請求項
1乃至4の何れかに記載の打撃工具。
【請求項6】
前記シャッタは、前記集塵ファンと同軸で配置されている請求項
5に記載の打撃工具。
【請求項7】
前記ハウジングにおける前記モータの収容部よりも、前記ハウジングにおける前記集塵ファンの収容部の方が左右幅が大きくなっている請求項1乃至
6の何れかに記載の打撃工具。
【請求項8】
前記ハウジング内で前記回転軸を支持する軸受が、前記集塵ファンよりも上側に配置されている請求項1乃至
7の何れかに記載の打撃工具。
【請求項9】
前記集塵アタッチメントは、前記ハウジングに対して所定の直線方向へ相対的にスライドさせることで、前記ハウジングと前記集塵アタッチメントとの何れか一方に設けられた凸側係合部と、他方に設けられた凹側係合部とが互いに係合して取り付け可能で、
前記ハウジングに設けられる前記凸側係合部又は前記凹側係合部は、前記直線方向で複数に分離して設けられている請求項1乃至
8の何れかに記載の打撃工具。
【請求項10】
請求項1乃至
9の何れかに記載の打撃工具と、
前記先端工具に対する吸込口を有して前記ハウジングに取り付けられ、前記集塵ファンの回転によって前記吸込口に吸引力を発生させる前記集塵アタッチメントと、を含んでなる集塵システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ハンマドリル等の打撃工具と、当該打撃工具に集塵アタッチメントを接続してなる集塵システムとに関する。
【背景技術】
【0002】
ハンマドリル等の打撃工具には、穿孔作業等の際に被加工材から発生する粉塵を集塵して貯留する集塵アタッチメントが取り付けられる場合がある。この打撃工具と集塵アタッチメントからなる集塵システムとして、例えば特許文献1には、打撃工具のモータ軸に集塵ファンを取り付けて、集塵装置(集塵アタッチメント)内部の空気流路と打撃工具内の空気流路とを連通させた発明が開示されている。この集塵システムでは、モータの駆動で集塵ファンが回転すると、工具先端に臨む吸込口から吸い込まれた空気が、集塵装置内のダストボックスを通過することで、粉塵をダストボックス内部のフィルタで捕捉して貯留することができる。フィルタを通過した空気は、打撃工具内の空気流路に入り、打撃工具のハウジングに設けた排気口を介して外部に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の打撃工具では、上下方向に延びるモータ軸の上部に集塵ファンが配置されている。このため、集塵ファンの外径に合わせてモータハウジングが径方向に大きくなり、コンパクト性が損なわれてしまう。
【0005】
そこで、本開示は、集塵ファンを設けてもコンパクト化を維持できる打撃工具及び集塵システムを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示は、打撃工具であって、集塵アタッチメントを取り付け可能なハウジングと、
前記ハウジング内に設けられ、前端に装着した先端工具を往復動する打撃子によって打撃可能な打撃機構部と、
前記ハウジング内で、前記打撃機構部の打撃軸線方向に対して回転軸が交差するように配置されるモータと、
前記回転軸に設けられる集塵ファンと、を含み、
前記集塵ファンが、前記モータの下側に配置されていると共に、前記集塵ファンの回転により空気を吸い込む吸気口が、前記ハウジングの下面に設けられていることを特徴とする。
上記目的を達成するために、本開示は、集塵システムであって、前記打撃工具と、
前記先端工具に対する吸込口を有して前記ハウジングに取り付けられ、前記集塵ファンの回転によって前記吸込口に吸引力を発生させる前記集塵アタッチメントと、を含んでなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、集塵ファンがモータの下側に配置されるので、集塵ファンの外径に合わせてモータの収容部を径方向に大きくする必要がなくなる。よって、集塵ファンを設けても打撃工具のコンパクト化を維持することができる。
特に、集塵ファンの回転により空気を排出する吸気口がハウジングの下面に設けられているので、吸気口から粉塵等の異物が侵入しにくくなり、開口面積も広く確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図5】
図4のモータハウジング部及びファン収容部の拡大図である。
【
図8】ファン収容部内の上方からの分解斜視図である。
【
図9】ファン収容部内の下方からの分解斜視図である。
【
図11】集塵アタッチメントの後方からの斜視図である。
【
図14】集塵アタッチメントの中央縦断面図である。
【
図16】集塵アタッチメントをハンマドリルに取り付ける際のセット位置を示す説明図である(集塵アタッチメント及びハンマドリルの一部は中央縦断面で示す)。
【
図17】集塵システムにおける集塵アタッチメントの取付部分の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の一実施形態において、回転軸には、回転軸の軸線方向で集塵ファンと隣接するモータ冷却用ファンが設けられていてもよい。この構成によれば、集塵ファンに加えてモータ冷却用ファンを設けても、モータの収容部を径方向に大きくする必要がなくなり、コンパクト化を維持できる。
本開示の一実施形態において、集塵ファンの回転により空気を吸い込む吸気口が、ハウジングの下面に設けられていてもよい。この構成によれば、吸気口から粉塵等の異物が侵入しにくくなり、開口面積も広く確保できる。
本開示の一実施形態において、集塵ファンの回転により空気を排出する排気口が、ハウジングの下面に設けられていてもよい。この構成によれば、排気口から粉塵等の異物が侵入しにくくなり、開口面積も広く確保できる。
本開示の一実施形態において、集塵ファンの回転により空気を排出する第2の排気口が、ハウジングの側面に設けられていてもよい。この構成によれば、必要な風量を確保できる。
【0010】
本開示の一実施形態において、吸気口は、円盤状のシャッタによって開閉可能としてもよい。この構成によれば、吸気口を設けても打撃工具の防塵性及び防水性を確保することができる。
本開示の一実施形態において、シャッタは、集塵ファンと同軸で配置されていてもよい。この構成によれば、シャッタをコンパクトに配置できる。また、シャッタが開放した際の空気の流れもスムーズとなる。
本開示の一実施形態において、ハウジングにおけるモータの収容部よりも、ハウジングにおける集塵ファンの収容部の方が左右幅が大きくなっていてもよい。この構成によれば、モータの収容部がスリムとなって見栄えがよくなる。
本開示の一実施形態において、ハウジング内で回転軸を支持する軸受が、集塵ファンよりも上側に配置されていてもよい。この構成によれば、軸受部分も含めてモータの収容部のコンパクト化が維持できる。
【0011】
本開示の一実施形態において、集塵アタッチメントは、ハウジングに対して所定の直線方向へ相対的にスライドさせることで、ハウジングと集塵アタッチメントとの何れか一方に設けられた凸側係合部と、他方に設けられた凹側係合部とが互いに係合して取り付け可能で、ハウジングに設けられる凸側係合部又は凹側係合部は、直線方向で複数に分離して設けられていてもよい。この構成によれば、凸側係合部及び凹側係合部を長く形成しなくても集塵アタッチメントをがたつきなく取り付けることができる。このため、ハウジングの形状変更が不要となり、コンパクト化や軽量化が維持可能となる。
【実施例】
【0012】
以下、本開示の実施例を図面に基づいて説明する。
(ハンマドリルの説明)
図1は、打撃工具の一例であるハンマドリルの下方からの斜視図、
図2は側面図、
図3は平面図、
図4はハンマドリルの中央縦断面図である。
ハンマドリル1は、外郭を形成するハウジング2を備えている。ハウジング2は、本体ハウジング3と、後ハウジング4と、前ハウジング5とを含んでいる。
本体ハウジング3は、下部にモータ6を収容し、上部に前ハウジング5を連結している。モータ6は、回転軸7を上下方向に向けた姿勢で収容されている。回転軸7の上端には、ピニオン8が上向きに取り付けられている。本体ハウジング3は、左右の半割ハウジング3a,3bをネジ止めして形成されている。本体ハウジング3の上面には、複数の上吸気口3c,3c・・が形成されている。
【0013】
後ハウジング4は、上下方向に延びるグリップ部9を備えて本体ハウジング3とループ状に繋がっている。後ハウジング4は、左右の半割ハウジング4a,4bをネジ止めして形成されている。グリップ部9の上部には、トリガ11を前方に突出させたスイッチ10が設けられている。グリップ部9の下部には、バッテリ装着部12が形成されている。バッテリ装着部12には、後方からバッテリパック13がスライド装着されている。バッテリ装着部12内には、バッテリパック13と電気的に接続される端子台14が保持されている。端子台14の上側には、コントローラ15が収容されている。
【0014】
前ハウジング5は、筒状で、後筒部16と前筒部17とを備えている。後筒部16は、横断面が上下方向に延びる略四角形状で、本体ハウジング3の上部に前方からネジ止めされる。前筒部17は、横断面が円形で、後筒部16の上方への偏心位置から前方へ突出している。後筒部16の左側面には、動作モードの切替ツマミ18が設けられている。
本体ハウジング3内の上部には、後筒部16に組み付けられるインナハウジング19が設けられている。前ハウジング5とインナハウジング19との内部には、打撃機構部20が設けられている。
打撃機構部20には、中間軸21とツールホルダ22とがそれぞれ前後方向に設けられている。中間軸21は、前ハウジング5及びインナハウジング19の内部下側で回転可能に支持されている。中間軸21には、後方から、第1ギヤ23、ボススリーブ24、クラッチ25、第2ギヤ26が設けられている。回転軸7のピニオン8は、インナハウジング19を下方から貫通して軸受27に支持され、第1ギヤ23と噛合している。
【0015】
ツールホルダ22は、筒状で、中間軸21の上方で前筒部17と同軸で回転可能に支持されている。ツールホルダ22の中間部には、第3ギヤ28が設けられている。第3ギヤ28は、中間軸21の第2ギヤ26と噛合している。ツールホルダ22の前端は、前筒部17から前方へ突出している。ツールホルダ22の前端には、ビットを着脱可能な操作スリーブ29が設けられている。
ツールホルダ22の後部には、ピストンシリンダ30が前後移動可能に遊挿されている。ピストンシリンダ30の後端には、アーム31が連結されている。アーム31は、ボススリーブ24に軸線を傾けたスワッシュベアリングを介して外装されて、前後に揺動可能となっている。ピストンシリンダ30の内部には、空気室32を介してストライカ33が前後移動可能に収容されている。ピストンシリンダ30の前方でツールホルダ22内には、インパクトボルト34が設けられている。
【0016】
本体ハウジング3における前ハウジング5の下方には、筒状のモータハウジング部35が形成されている。モータハウジング部35に、モータ6が収容されている。モータ6は、ステータ36と、回転軸7を有するロータ37とを備えたブラシレスモータである。回転軸7の下部は、モータハウジング部35内に形成された軸受保持部38を貫通して軸受39に支持されている。軸受保持部38の前方でモータハウジング部35の前面には、ツールホルダ22の前方を照射するライト40が設けられている。
ライト40の左右でモータハウジング部35の前面から側面にかけて、左右一対の面取部41,41が形成されている。面取部41,41の上側には、左右一対の上側係合部42,42が形成されている。各上側係合部42は、面取部41から上方へ向けてモータハウジング部35の外面に切り込まれ、側面及び下面を開口した溝状となっている。各上側係合部42の下部は、下方へ向かうに従って溝幅が広くなるテーパ状となっている。上側係合部42,42は、後述する集塵アタッチメント90の取付用である。上側係合部42,42より上方で後筒部16の下面の左右中央には、前後方向に延びる係合溝43が形成されている。係合溝43の前端は前方へ開口している。
【0017】
モータハウジング部35の下方には、ファン収容部45が形成されている。ファン収容部45は、
図5にも示すように、上板部46と後板部47とにより、本体ハウジング3内でモータハウジング部35及びバッテリ装着部12と仕切形成されている。上板部46は、本体ハウジング3内を上下に仕切る前後左右方向の板状である。上板部46の上面には、軸受保持部38が一体に形成されている。後板部47は、上板部46の後端から下方に延びて本体ハウジング3内を前後に仕切る上下左右方向の板状である。
回転軸7の下端は、上板部46を貫通してファン収容部45内に突出している。ファン収容部45内で回転軸7の下端には、ダブルファン48が直交状に取り付けられている。ダブルファン48は、平面視円形の仕切板49を境にして、上側にモータ冷却用ファン50を、下側に集塵ファン51をそれぞれ形成したものである。両ファン50,51は何れも遠心ファンである。モータ冷却用ファン50の各フィン50aの上端は、上板部46に近接している。集塵ファン51の下部には、中央部を除いて各フィン51aを下方から覆うカバー52が設けられている。カバー52の内周縁及びその径方向外側には、同心円上に2つのリング状の上側リブ53,53が下向きに形成されている。
モータ冷却用ファン50の上方で上板部46には、軸受保持部38の前後に開口する上通気口54,54が左右方向に形成されている。
【0018】
図6にも示すように、ファン収容部45は、モータハウジング部35よりも左右幅が大きく形成されている。ファン収容部45の前面も、モータハウジング部35の前面よりも前方に張り出している。ファン収容部45の左右幅は、バッテリ装着部12及びバッテリパック13の左右幅と略等しくなっている。
ファン収容部45の左右の側面で前面寄りの位置には、左右一対の下側係合部55,55が形成されている。下側係合部55,55は、ファン収容部45の下面から上方へ向けて切り込まれ、側面及び下面を開口した溝状である。下側係合部55,55も、集塵アタッチメント90の取付用である。下側係合部55,55は、上側係合部42,42と平行であるが、形成位置は、上側係合部42,42よりも前方で且つ左右外側となっている。
ファン収容部45の左右の側面下部で下側係合部55,55の後方には、
図7にも示すように、前後方向に延びる係止溝56,56が形成されている。係止溝56,56の後部には、左右奥側の面がファン収容部45の内部側へ張り出す張出部57,57が形成されている。各張出部57の上下に、ファン収容部45内を係止溝56内と連通させるスリット状の側面排気口58,58が形成されている。係止溝56,56が形成されるファン収容部45の左右の下部側面は、
図6に示すように、下方へ向かうに従って左右幅が狭くなるテーパ面となっている。
【0019】
ファン収容部45内でダブルファン48の下方には、バッフルプレート60が設けられている。バッフルプレート60は、
図8及び
図9にも示すように、前側が平面視略円形、後側が平面視略四角形を有している。バッフルプレート60の略円形部分の中心には、円形の下通気口61が形成されている。下通気口61の内周縁及びその径方向外側には、同心円上に2つのリング状の下側リブ62,62が上向きに形成されている。
バッフルプレート60の下面には、下通気口61と同軸で、且つ下通気口61よりも大径の下筒部63が下向きに形成されている。バッフルプレート60の前端には、前方へ突出する係止片64が形成されている。係止片64の左側には、上向きに立ち上がる半筒部65が形成されている。半筒部65は、開放側をバッフルプレート60の径方向外側へ向けた姿勢で形成されている。
【0020】
ファン収容部45の内部には、バッフルプレート60の受けリブ66が形成されている。受けリブ66は、
図10にも示すように、左右の係止溝56,56の上方でバッフルプレート60の後部及び左右、そして前部右側の外周縁を周回する格好で形成されている。受けリブ66の左右及び前部右側は、ファン収容部45の内面から突設されている。受けリブ66の左側は、下側係合部55を形成するためにファン収容部45の内側に膨出した膨出部67と繋がっている。膨出部67の上側には、上下方向に複数の縦リブ68,68・・が形成されている。受けリブ66の前部右側は、バッフルプレート60の係止片64の右側まで形成されている。
受けリブ66の後部は、後板部47よりも前側でファン収容部45の底面から上方へ立ち上げ形成された仕切壁69の上端に形成されている。仕切壁69は、ダブルファン48の下方でファン収容部45内を前後に仕切っている。仕切壁69の後側でファン収容部45の底面には、左右方向に延びる底面排気口70が形成されている。
ファン収容部45の前部内面には、係止片64が係止する溝71が形成されている。
【0021】
底面排気口70の前方でファン収容部45の底面には、円形孔72が形成されている。円形孔72は、バッフルプレート60の下筒部63と同軸で且つ略同径に形成されている。円形孔72には、内側からキャップ73が嵌合されている。キャップ73とバッフルプレート60との間に、シャッタ74とコイルバネ75とが介在されている。
キャップ73は、下面に、円形孔72に嵌合する嵌合部76を有している。嵌合部76の中心に、円形の下吸気口77が形成されている。キャップ73の外周には、バッフルプレート60の下筒部63の下端が差込嵌合する周壁部78が形成されている。
シャッタ74は、中心の円板部80と、その外側のリング部81と、円板部80とリング部81とを連結する十字リブ82とを有する。円板部80は、キャップ73の下吸気口77よりも大径で、下面中心には、下方へ突出する円形突起83が設けられている。リング部81は、円板部80の外径よりも大きい内径を有し、円板部80と同心で配置されている。リング部81は、下筒部63の内径よりも小径で、キャップ73の周壁部78の内側に嵌合可能となっている。十字リブ82は、円板部80とリング部81との上面へ同心で配置されて両者を連結している。よって、円板部80とリング部81との間には、周方向に等間隔で4つの円弧状の透孔84,84・・が形成されている。
コイルバネ75は、下筒部63内に収容されている。コイルバネ75の下端は、シャッタ74の十字リブ82の外側でリング部81の上面に当接している。コイルバネ75の上端は、バッフルプレート60の下面に当接している。
【0022】
ファン収容部45では、シャッタ74及びコイルバネ75を保持させたバッフルプレート60とキャップ73とを、まず左側の半割ハウジング3aの受けリブ66とファン収容部45の底面との間に組み付ける。このときバッフルプレート60は、半筒部65を左側の膨出部67上で縦リブ68,68に当接させ、係止片64を溝71に係止させる。この状態で右側の半割ハウジング3bを組み付けると、コイルバネ75の反発力により、バッフルプレート60は、左右及び後部が受けリブ66に下方から当接する位置に付勢される。同時にシャッタ74は、キャップ73と共に下方へ付勢される。よって、キャップ73は、嵌合部76が円形孔72に嵌合する位置に押圧され、シャッタ74は、円板部80が下吸気口77を閉塞する位置に押圧される。
この状態でバッフルプレート60の下側リブ62,62と、集塵ファン51のカバー52の上側リブ53,53とは、互いに非接触で径方向へ交互にオーバーラップする。よって、集塵ファン51とバッフルプレート60との間にはラビリンスが形成される。
こうして受けリブ66に位置決めされるバッフルプレート60により、ファン収容部45内は、
図5,6に示すように、バッフルプレート60の上側空間A1と下側空間A2とに仕切られる。上側空間A1は、仕切壁69の後方及び底面排気口70と連通している。下側空間A2は、仕切壁69の前方に形成されて、左右の側面排気口58,58と連通している。但し、係止片64と半筒部65との間には、上側空間A1と下側空間A2とを連通させる連通口85(
図10)が形成されている。
【0023】
こうして本体ハウジング3内には、ダブルファン48のモータ冷却用ファン50の回転により、モータ冷却流路R1が形成される。モータ冷却流路R1では、本体ハウジング3上面の上吸気口3cから吸い込まれた空気が、
図5に点線矢印で示すように、本体ハウジング3と前ハウジング5及びインナハウジング19との間と、モータ6とを通過する。その後、空気は、上通気口54からファン収容部45の上側空間A1に入り、底面排気口70から排出される。
一方、ファン収容部45内には、ダブルファン48の集塵ファン51の回転により、本機側集塵流路R2が形成される。本機側集塵流路R2では、シャッタ74がコイルバネ75の付勢に抗して上昇し、下吸気口77を開口させている状態で、
図5に一点鎖線矢印で示すように、下吸気口77から下側空間A2内に吸い込まれた空気が、シャッタ74の透孔84、バッフルプレート60の下筒部63及び下通気口61を通過して上側空間A1に入り、モータ冷却流路R1と同様に、集塵ファン51の径方向外側から底面排気口70に流れる。
但し、モータ冷却流路R1及び本機側集塵流路R2は、分岐流路R3を備えている。分岐流路R3では、上側空間A1に入った空気の一部が、
図5に二点鎖線矢印で示すように、ダブルファン48の径方向外側から連通口85を介して下側空間A2に入り、バッフルプレート60の下筒部63の外周を通って側面排気口58,58から排出される。
【0024】
(集塵アタッチメントの説明)
図11は、集塵アタッチメント(以下、単に「アタッチメント」という。)の一例を示す斜視図である。
図12は、アタッチメントの側面図、
図13は平面図、
図14はアタッチメントの中央縦断面図である。
アタッチメント90は、側面視L字状のケーシング91を備えている。ケーシング91は、左右の半割ケーシング91a,91bを組み付けてなる。ケーシング91の前側には、ダストボックス93を備えた本体部92が設けられている。ケーシング91の後側には、本体部92の下部から後方へ突出する突出部94が設けられている。本体部92の左側上部には、前方へ突出するスライド部95が設けられている。
【0025】
ケーシング91は、本体部92の上面を形成する前天板96と、突出部94の上面を形成する後天板97と、本体部92及び突出部94の下面を形成する底板98と、本体部92及び突出部94の側面を形成する一対の側板99,99と、本体部92の背面を形成する前背板100と、突出部94の背面を形成する後背板101とを備えている。本体部92の前方は開口して、ダストボックス93は、前方から本体部92内に着脱可能となっている。
スライド部95は、スライド筒102とフレキシブルホース103とを備えている。スライド筒102は、前天板96に設けたガイド金具104によって前後移動可能に保持されている。スライド筒102の先端には、吸込口106を備えたノズル105が直交状に取り付けられている。吸込口106は、本体部92の上側で左右方向の中央に位置している。
【0026】
フレキシブルホース103は、スライド筒102に遊挿されて、前端がノズル105の基端と連結されている。フレキシブルホース103の後端は、本体部92の左側後部に突設したダクト107の上流端に連結されている。フレキシブルホース103は、螺旋状のワイヤを一体に備えてノズル105とダクト107との間に圧縮され、スライド筒102を前方へ付勢している。スライド筒102の前進位置及び後退位置は、スライド筒102の側面に設けたストッパ108,108によって規制可能となっている。
ダクト107の下流端は、本体部92内に開口し、ダストボックス93に設けた図示しない入口と連通する。ダストボックス93は、フィルタ110を備える蓋体109と、蓋体109にヒンジ結合されてフィルタ110を前方から覆うボックス本体111とを備えている。ダストボックス93は、ボックス本体111の下面が、底板98の前端に設けた受け軸112に係止し、蓋体109から前方に突設した掛止片113が、前天板96の前端に弾性係止することで取り付けられる。蓋体109の下部には、フィルタ110を通過した空気の出口114が設けられている。ボックス本体111の前面には、振動発生器115が設けられている。振動発生器115は、回転操作によってボックス本体111に振動を発生させてフィルタ110に付着した粉塵を払い落とすためのものである。
【0027】
突出部94には、前端が出口114と繋がる排気筒116が設けられている。排気筒116は、突出部94内で後方へ延びた後、上向きに折曲する角筒状である。排気筒116の後端上面には、排気口117が形成されている。排気口117には、ゴムキャップ118が被せられている。ゴムキャップ118は、上部に、上方へ向かうに従って小径となるテーパ状のシール部119を有している。シール部119の中心には、排気口117と同軸で且つ略同径の開口120が形成されている。ゴムキャップ118は、排気口117の上方で後天板97に設けた丸孔121に嵌合している。シール部119は、丸孔121から上方へ突出している。排気口117の下側で排気筒116の後端内には、上向きに突出するピン122が設けられている。ピン122は、排気口117及びゴムキャップ118の開口120の中心を貫通してゴムキャップ118よりも上方へ突出している。
こうして、アタッチメント90には、
図14に一点鎖線矢印で示すアタッチメント側集塵流路R4が形成される。アタッチメント側集塵流路R4では、吸込口106から進入した空気が、ノズル105からフレキシブルホース103、ダクト107を介してダストボックス93内に入る。そして、空気は、フィルタ110を通過した後、出口114から排気筒116に入り、排気口117から上向きに排出される。
【0028】
前天板96の上面には、前部よりも後部が低くなる段差が形成されている。前天板96の後部に、ハンマドリル1の前ハウジング5の後筒部16の下面が載置可能となっている。当該後部の左右方向の中央には、前後方向に係合レール123が突設されている。係合レール123は、後筒部16の下面に設けた係合溝43に対応している。前天板96の後縁は、ハンマドリル1のモータハウジング部35が合致する湾曲形状となっている。前天板96の後縁と繋がる左右の側板99,99の後部上端は、側板99,99の前部及び下部よりも左右幅が狭い一対の腕部124,124となっている。腕部124,124の左右幅は、モータハウジング部35の上部の左右幅よりやや大きくなっている。腕部124,124の互いの対向面には、モータハウジング部35に設けた上側係合部42,42に嵌合する上突条125,125が、上下方向に形成されている。
上突条125,125の下方で左右の側板99,99の左右幅は、ファン収容部45の左右幅よりやや大きくなっている。上突条125,125の下方で側板99,99の下部の互いの対向面には、ファン収容部45に設けた下側係合部55,55に嵌合する下突条126,126が、上下方向に形成されている。下突条126,126は、上側係合部42,42と下側係合部55,55との前後位置と同様に、上突条125,125よりも前方に位置している。前背板100には、モータハウジング部35及びファン収容部45の前面に合致して後面を湾曲形状とした複数のリブ127,127・・が、上下方向に間隔をおいて左右方向に形成されている。
【0029】
突出部94における左右の側板99,99は、後天板97よりも上方へ突出している。当該側板99,99には、上下方向へ帯状に左右一対の切欠部130,130が形成されている。切欠部130,130には、左右一対のフック板131,131が設けられている。各フック板131は、
図15に示すように、切欠部130内で前後方向に架設された支持ピン132によって、上下端が左右方向へ揺動可能に支持されている。各フック板131の上端には、内側へ突出する爪部133が形成されている。爪部133は、上面が左右の中心側へ向かうに従って下方へ傾斜する返し形状となっている。各フック板131は、支持ピン132の内側で突出部94内に保持されたトーションバネ134により、上端が内側へ揺動する向きへ回転付勢されている。但し、切欠部130の前後の側縁には、フック板131の前後の側縁が当接するストッパ部135,135(
図13,14)が形成されている。よって、フック板131,131は、常態では、上端の側縁がストッパ部135に当接する側板99,99との平行姿勢で回転規制される。この平行姿勢では、爪部133,133が側板99,99よりも内側に突出している。支持ピン132,132の下方でフック板131,131の外面には、指掛け部136,136が凹設されている。
【0030】
(集塵システムの説明)
上記ハンマドリル1には、上記アタッチメント90が取り付けられる。この取り付けは、まず
図16に示すように、ハンマドリル1とアタッチメント90とを、突出部94がファン収容部45の下方に位置し、且つモータハウジング部35の上側係合部42,42の下方に側板99,99の腕部124,124が位置するように配置する。そして、ファン収容部45の前面に、アタッチメント90の前背板100のリブ127を当接させる。このセット位置では、上側係合部42,42の真下に上突条125,125が位置すると同時に、下側係合部55,55の真下に下突条126,126が位置する。また、係合溝43の真下に係合レール123が位置する。この状態で突出部94のゴムキャップ118及びピン122は、下吸気口77を閉塞するシャッタ74の真下に位置している。
【0031】
ここからアタッチメント90を上方へスライド、若しくはハンマドリル1を下方へスライドさせる。すると、相対移動した上突条125,125が上側係合部42,42に、下突条126,126が下側係合部55,55にそれぞれ下方から係合する。但し、上下長さの違いにより、係合するタイミングは上下で異なり、上突条125,125が上側係合部42,42に係合するより先に、下突条126,126が下側係合部55,55に係合する。よって、先に係合する下突条126,126と下側係合部55,55とにより、上突条125,125は上側係合部42,42との係合位置へスムーズにガイドされる。ここで多少のがたつきがあっても、上側係合部42,42の下部のテーパ形状によって上突条125,125は上側係合部42,42へ確実に導かれる。一方、アタッチメント90の相対移動に伴い、係合レール123も係合溝43に下方から係合する。
そして、上突条125が上側係合部42の上面に当接し、下突条126が下側係合部55の上面に当接し、係合レール123が前ハウジング5の下面に当接すると、アタッチメント90の相対移動が規制される。
【0032】
このアタッチメント90の相対移動の際、突出部94のフック板131,131は、爪部133,133がファン収容部45の下部側面の傾斜に当接することで、トーションバネ134,134の付勢に抗して上端が左右へ拡がる。よって、アタッチメント90の相対移動を許容する。各係合部同士の当接でアタッチメント90の相対移動が規制されると、同時に爪部133,133が係止溝56,56に達する。すると、フック板131,131は、トーションバネ134,134の付勢によって平行姿勢に復帰する。よって、
図17に示すように、各係合部同士の係合と共に、爪部133,133が係止溝56,56に係止する。
一方、アタッチメント90の相対移動と共に、シャッタ74の円形突起83に当接したピン122が、シャッタ74をコイルバネ75の付勢に抗して押し上げる。よって、
図18に示すように、下吸気口77が開口すると共に、ゴムキャップ118のシール部119がキャップ73の下面に当接して弾性変形し、下吸気口77と排気口117との間をシールする。
【0033】
こうしてアタッチメント90が、ハンマドリル1に対して上下及び前後左右に移動規制された状態で取り付けられた集塵システムSが得られる。この状態でアタッチメント側集塵流路R4は、本機側集塵流路R2と連通する。
この集塵システムSを形成する際は、
図16のセット位置のアタッチメント90を、
図17,18の取付位置へ相対移動させればよい。よって、取り付けの際のアタッチメント90の相対移動のストロークが短くて済む。また、モータハウジング部35及びファン収容部45の前面にケーシング91の前背板100のリブ127を前方から当接させた
図16のセット位置では、そのまま上側係合部42と上突条125、下側係合部55と下突条126、係合溝43と係合レール123とが上下方向の同一線上に並ぶ位置決め状態となる。よって、各係合部同士の位置合わせが簡単に行え、その後のアタッチメント90の取り付けがスムーズに行える。
【0034】
集塵システムSでは、アタッチメント90の吸込口106を被加工材の被加工面に押し当ててビットB(
図18)の先端を吸込口106内にセットする。この状態で、ハンマドリル1のトリガ11を押し込み操作する。すると、スイッチ10がONしてコントローラ15がモータ6を駆動させる。よって、回転軸7と、ピニオン8を介して中間軸21とが回転する。このとき、前ハウジング5の側面に設けた切替ツマミ18を操作することでクラッチ25をスライドさせる。すると、クラッチ25が第2ギヤ26のみと係合する前進位置(ドリルモード)、クラッチ25がボススリーブ24のみと係合する後退位置(ハンマモード)、クラッチ25が第2ギヤ26及びボススリーブ24と同時に係合する中間位置(ハンマドリルモード)の何れかを選択することができる。ドリルモードでは、第3ギヤ28を介してツールホルダ22が回転してビットBを回転させる。ハンマモードでは、アーム31の揺動によってピストンシリンダ30が往復動する。よって、空気室32を介してストライカ33が連動して往復動する。すると、ストライカ33がインパクトボルト34を介してビットBを打撃する。ハンマドリルモードでは、ツールホルダ22の回転とインパクトボルト34の打撃とが同時に行われる。
【0035】
吸込口106をセットした状態でハンマドリル1を前進させると、ノズル105と共にスライド筒102が後退し、ビットBが吸込口106を貫通して被加工材の加工が可能となる。
ダブルファン48は、回転軸7の回転と同時に回転する。よって、モータ冷却用ファン50の回転により、モータ冷却流路R1内に空気が流れる。すなわち、上吸気口3cから吸い込まれた空気が、本体ハウジング3と前ハウジング5、モータ6とを順に通過してそれぞれを冷却する。そして、冷却後の空気は、上通気口54からファン収容部45の上側空間A1に入り、底面排気口70から排出される。
【0036】
一方、集塵ファン51の回転により、アタッチメント側集塵流路R4及び本機側集塵流路R2内に空気が流れる。すなわち、吸引力が発生した吸込口106から吸い込まれた空気が、フレキシブルホース103、ダクト107、ダストボックス93、排気筒116の順に流れた後、下吸気口77からバッフルプレート60の下通気口61を通過して上側空間A1に入り、底面排気口70から排出される。同時に上側空間A1に入った空気の一部は、分岐流路R3に流れる。すなわち、空気の一部は、連通口85を介して下側空間A2に入り、側面排気口58,58から排出される。
従って、被加工材から生じた粉塵は、吸込口106に吸い込まれてノズル105及びフレキシブルホース103、ダクト107を介してダストボックス93内に進入し、フィルタ110に捕捉されてボックス本体111内に貯留することになる。
【0037】
アタッチメント90を取り外す際は、突出部94の左右のフック板131,131の指掛け部136,136を挟んで内側へ押し込む。すると、フック板131,131が平行姿勢から上端が左右外側へ拡開する拡開姿勢となり、互いの爪部133,133を係止溝56,56から離間させる。よって、そのままアタッチメント90を下方へスライド、若しくはハンマドリル1を上方へスライドさせると、
図16のように、上突条125及び下突条126がそれぞれ上側係合部42及び下側係合部55から下方に外れる。同時に係合レール123が係合溝43から下方に外れたセット位置となる。よって、アタッチメント90をハンマドリル1から前方へ相対移動させればハンマドリル1から離間させることができる。こうしてアタッチメント90を
図17及び
図18の取付位置から
図16のセット位置へ相対移動させればよいため、取り外す際のアタッチメント90の相対移動のストロークも短くて済む。
ダストボックス93のボックス本体111に貯留した粉塵は、アタッチメント90からダストボックス93を取り外し、蓋体109を開放すれば廃棄することができる。
【0038】
(ハンマドリルに係る開示の効果)
上記実施例のハンマドリル1は、アタッチメント90を取り付け可能なハウジング2と、ハウジング2内に設けられ、前端に装着したビットB(先端工具)を往復動するストライカ33(打撃子)によって打撃可能な打撃機構部20とを含む。また、ハンマドリル1は、ハウジング2内で、打撃機構部20の打撃軸線方向に対して回転軸7が交差するように配置されるモータ6と、回転軸7に設けられる集塵ファン51と、を含む。そして、集塵ファン51が、モータ6の下側に配置されている。
この構成によれば、集塵ファン51の外径に合わせてモータハウジング部35(モータハウジング)を径方向に大きくする必要がなくなる。よって、集塵ファン51を設けてもハンマドリル1のコンパクト化を維持することができる。
【0039】
特に、回転軸7には、回転軸7の軸線方向で集塵ファン51と隣接するモータ冷却用ファン50が設けられている。よって、集塵ファン51に加えてモータ冷却用ファン50を設けても、モータハウジング部35(モータの収容部)を径方向に大きくする必要がなくなり、コンパクト化を維持できる。
集塵ファン51の回転により空気を吸い込む下吸気口77(吸気口)が、ハウジング2の下面に設けられている。よって、下吸気口77から粉塵等の異物が侵入しにくくなり、開口面積も広く確保できる。
集塵ファン51の回転により空気を排出する底面排気口70(排気口)が、ハウジング2の下面に設けられている。よって、底面排気口70から粉塵等の異物が侵入しにくくなり、開口面積も広く確保できる。
集塵ファン51の回転により空気を排出する側面排気口58(第2の排気口)が、ハウジング2の側面に設けられている。よって、必要な風量を確保できる。
【0040】
下吸気口77は、円盤状のシャッタ74によって開閉可能である。よって、下吸気口77を設けてもハンマドリル1の防塵性及び防水性を確保することができる。
シャッタ74は、集塵ファン51と同軸で配置されている。よって、シャッタ74をコンパクトに配置できる。また、シャッタ74が開放した際の空気の流れもスムーズとなる。
ハウジング2におけるモータハウジング部35よりも、ハウジング2におけるファン収容部45(集塵ファンの収容部)の方が左右幅が大きくなっている。よって、モータハウジング部35がスリムとなって見栄えがよくなる。
ハウジング2内で回転軸7を支持する軸受39が、集塵ファン51よりも上側に配置されている。よって、軸受39部分も含めてモータハウジング部35のコンパクト化が維持できる。
【0041】
アタッチメント90は、ハウジング2に対して上下方向(所定の直線方向)へ相対的にスライドさせることで、ハウジング2に設けられた上側係合部42及び下側係合部55と、アタッチメント90に設けられた上突条125及び下突条126とが互いに係合して取り付け可能となっている。そして、ハウジング2に設けられる上側係合部42と下側係合部55とは、上下方向で分離して設けられている。
よって、上側係合部42及び下側係合部55を長く形成しなくてもアタッチメント90をがたつきなく取り付けることができる。このため、ハウジング2の形状変更が不要となり、コンパクト化や軽量化が維持可能となる。
【0042】
(ハンマドリルに係る開示の変更例)
集塵ファンの形状や大きさは上記実施例に限らない。例えば下面にカバーを備えない集塵ファンも採用できる。遠心ファン以外のファンも採用できる。
上記実施例では、集塵ファンにモータ冷却用ファンを隣接したダブルファンを採用しているが、ダブルファンとせず、モータの下側に集塵ファンのみを設けてもよい。
モータは、回転軸が打撃軸線方向に交差する配置であればよく、上記実施例のような直交配置に限定しない。
吸気口の位置や形状は、上記実施例の下吸気口に限定されない。シャッタの形状も適宜変更可能である。シャッタは、上記実施例のように上下動して吸気口を開閉する構造でなく、例えば、シャッタの一部をファン収容部にヒンジ等で結合し、シャッタが軸周りに回転して吸気口を開閉する構造としてもよい。シャッタが吸気口と交差方向に直線移動して吸気口を開閉する構造としてもよい。
吸気口及び排気口は、ハウジングの下面以外に設けることもできる。よって、キャップ及びシャッタは、吸気口の位置に合わせて位置及び形状を変更すればよい。
ファン収容部において、上側空間と下側空間との連通口をなくすこともできる。すなわち、分岐流路をなくして側面排気口を省略することもできる。
ファン収容部内の本機側集塵流路の形態も適宜変更できる。空気をバッテリ装着部側へ送ってコントローラの冷却に用いてもよい。
【0043】
本開示において、打撃工具に設けるアタッチメントとの係合部は、上記実施例の上側係合部及び下側係合部のように上下方向で分離させる構造に限らない。すなわち、上下方向に延びる1又は一対の凸側係合部と1又は一対の凹側係合部とを互いに係合させてアタッチメントを取り付ける構造であってもよい。
上記実施例では、ハンマドリルに対してアタッチメントを上下方向へ相対移動させて着脱可能としているが、前後方向や左右方向へ相対移動させて着脱可能としてもよい。
但し、本開示におけるハウジングへのアタッチメントの取付構造は、上記実施例のように直線移動による係合部同士の係合に限らない。例えばフック等の係止部と凹部等の被係止部との係脱構造とする等、適宜変更可能である。
打撃機構部の構成は、上記実施例に限定されない。ブラシレス以外のモータも採用できる。
本開示は、ハンマドリルに限らず、電動ハンマ等の他の打撃工具であっても採用可能である。DC工具でなくAC工具も採用できる。
【0044】
(集塵システムに係る開示の効果)
上記集塵システムSにおいて、アタッチメント90は、ハンマドリル1のハウジング2に対して上下方向(所定の直線方向)へ相対的にスライドさせることで、ハウジング2に設けられた上側係合部42及び下側係合部55(凹側係合部)と、アタッチメント90に設けられた上突条125及び下突条126(凸側係合部)とが互いに係合して取り付け可能となっている。そして、凸側係合部と凹側係合部とは、それぞれ上下方向で分離して、アタッチメント90の取り付け状態で互いに係合する上側係合部42(第1の凹側係合部)及び上突条125(第1の凸側係合部)と、当該取り付け状態で互いに係合する下側係合部55(第2の凹側係合部)及び下突条126(第2の凸側係合部)とを含んでいる。
この構成によれば、上側係合部42及び下側係合部55を長く形成しなくてもアタッチメント90をがたつきなく取り付けることができる。このため、ハウジング2の形状変更が不要となり、コンパクト化及び軽量化が維持可能となる。
【0045】
特に、上側係合部42及び上突条125と、下側係合部55及び下突条126とは、それぞれ左右に一対ずつ設けられている。よって、アタッチメント90をバランスよく取り付けでき、取り付け状態でのアタッチメント90の左右方向のがたつきを効果的に抑制することができる。
一対の上側係合部42及び上突条125と、一対の下側係合部55及び下突条126とは、左右幅が互いに異なっている。よって、ハウジング2の形状に合わせた係合部同士の左右の配置が可能となる。
直線方向は、上下方向であり、上側で互いに係合する一対の上側係合部42及び上突条125の左右幅は、下側で互いに係合する一対の下側係合部55及び下突条126の左右幅よりも小さくなっている。よって、モータハウジング部35とファン収容部45とのように上下で異なるハウジング2の形状に合わせた係合部同士の左右の配置が可能となる。また、下側の係合部同士の左右幅が大きいため、ファン収容部45と突出部94との結合状態が安定する。
上側係合部42及び上突条125と、下側係合部55及び下突条126とは、前後方向の位置が互いに異なっている。よって、ハウジング2の形状に合わせた係合部同士の前後の配置が可能となる。
【0046】
ハウジング2に対してアタッチメント90を上下方向へ相対的にスライドさせて取り付ける際、下側係合部55及び下突条126は、上側係合部42及び上突条125よりも先に係合する。よって、先に係合する下側係合部55と下突条126とにより、下突条126は下側係合部55との係合位置へスムーズにガイドされる。
アタッチメント90を上下方向へ相対的にスライドさせる前にハウジング2に当接させた所定位置では、上側係合部42と上突条125と、下側係合部55と下突条126とは、それぞれ上下方向の同一線上に位置している。よって、各係合部同士の位置合わせが簡単に行え、その後のアタッチメント90の取り付けがスムーズに行える。
ハウジング2に、打撃機構部20の打撃軸線方向に延びる係合溝43(第3の凹側係合部)が、アタッチメント90に、ハウジング2へのアタッチメント90の取り付け状態で係合溝43に係合する係合レール123(第3の凸側係合部)がそれぞれ設けられている。よって、アタッチメント90の左右方向のがたつきがより効果的に抑えられ、ハウジング2とアタッチメント90との一体性が高まる。
【0047】
アタッチメント90は、ハウジング2への取り付け状態でハウジング2の下側に位置する突出部94を有し、突出部94に、取り付け状態でハウジング2に係止するフック板131(フック部)が設けられている。よって、ハウジング2からのアタッチメント90の脱落が規制され、アタッチメント90が不意にずれたり外れたりすることがなくなる。
モータ6の下側に集塵ファン51が配置され、ハウジング2の下面に、集塵ファン51の回転により空気を吸い込む下吸気口77が設けられている。よって、集塵ファン51を設けてもモータハウジング部35を径方向に大きくする必要がなくなり、コンパクト化を維持できる。また、下吸気口77から粉塵等の異物が侵入しにくくなり、開口面積も広く確保できる。
【0048】
ハウジング2の下面に、アタッチメント90を取り付けない状態で下吸気口77を閉塞するシャッタ74が設けられて、突出部94に、ハウジング2への取り付け状態でシャッタ74を下吸気口77の開放位置へ移動させるピン122(ピン部材)が設けられている。よって、下吸気口77を設けてもハンマドリル1の防塵性及び防水性を確保することができる。また、アタッチメント90の取り付けと同時にピン122によってシャッタ74を確実に開放させることができる。
アタッチメント90には、前端に吸込口106を備えたスライド部95が、左右方向の中心から左側へオフセットした位置に配置されている。よって、スライド部95があってもアタッチメント90をハウジング2の正面に取り付けることができる。
【0049】
(集塵システムに係る開示の変更例)
上記実施例では、ハンマドリルのハウジング側に溝形状の凹側係合部を、アタッチメント側に突条の凸側係合部をそれぞれ形成しているが、これと逆にしてもよい。すなわち、ハウジング側に突条の凸側係合部を、ハウジング側に溝形状の凹側係合部をそれぞれ形成してもよい。ハウジングとアタッチメントとに、それぞれ凸側係合部と凹側係合部とを混在させて設けてもよい。
上記実施例では、下側の係合部同士が上側の係合部同士よりも先に係合するタイミングとなっているが、これと逆であってもよい。また、分離した係合部同士を同じタイミングで係合させてもよい。
凸側係合部と凹側係合部とは、一対ずつ設ける構造に限らない。例えば凸側係合部と凹側係合部とをアリ溝形状で係合させれば、凸側係合部と凹側係合部とが1つずつであっても着脱は可能である。
係合溝及び係合レールも同様の変更が可能である。すなわち、ハウジング側に係合レールを、アタッチメント側に係合溝をそれぞれ形成してもよい。但し、係合溝と係合レールとは、省略することもできる。
上記実施例では、凸側係合部と凹側係合部とを上下方向に2箇所分離させているが、
3箇所以上分離して形成してもよい。凸側係合部及び凹側係合部の左右幅や前後の位置関係も適宜変更できる。よって、凸側係合部及び凹側係合部の左右幅と前後の位置関係とが同じであってもよい。
【0050】
上記実施例では、ハンマドリルに対してアタッチメントを上下方向へ相対移動させて着脱可能としているが、前後方向や左右方向へ相対移動させて着脱可能としても、本開示の採用は可能である。よって、凸側係合部と凹側係合部とは、アタッチメントを着脱させる直線方向に応じて向きを変えればよい。
アタッチメントにおいて、スライド部の位置は左右逆にしてもよい。アタッチメントの取り付けに支障がなければスライド部を左右方向の中央に配置してもよい。ダストボックスの構造も適宜変更できる。突出部を設けずに、打撃工具のハウジングの前面とアタッチメントのケーシングの背面との間で集塵流路同士を連通させてもよい。
上記実施例では、ハンマドリルに集塵ファンを設けて、アタッチメントの取り付け状態でアタッチメント側集塵流路内に空気が流れる構造となっているが、本開示はこの構造に限らない。例えば、アタッチメントのケーシング内にモータ及び集塵ファンを設けて、打撃工具への取り付け状態で打撃工具から電源を得てモータ及び集塵ファンを回転させる構造であっても本開示の係合部同士の取付構造は採用できる。
打撃機構部の構成は、上記実施例に限定されない。ブラシレス以外のモータも採用できる。モータの向きも変更可能で、集塵ファンがモータの上側にあってもよい。
本開示の集塵システムでは、ハンマドリルに限らず、電動ハンマ等の他の打撃工具であっても採用可能である。DC工具でなくAC工具も採用できる。
【符号の説明】
【0051】
1・・ハンマドリル、2・・ハウジング、3・・本体ハウジング、3c・・上吸気口、4・・後ハウジング、5・・前ハウジング、6・・モータ、7・・回転軸、16・・後筒部、17・・前筒部、20・・打撃機構部、21・・中間軸、22・・ツールホルダ、27,39・・軸受、35・・モータハウジング部、38・・軸受保持部、42・・上側係合部、43・・係合溝、45・・ファン収容部、46・・上板部、47・・後板部、48・・ダブルファン、50・・モータ冷却用ファン、51・・集塵ファン、54・・上通気口、55・・下側係合部、58・・側面排気口、60・・バッフルプレート、69・・仕切壁、70・・底面排気口、73・・キャップ、74・・シャッタ、75・・コイルバネ、77・・下吸気口、90・・集塵アタッチメント、91・・ケーシング、92・・本体部、93・・ダストボックス、94・・突出部、95・・スライド部、106・・吸込口、110・・フィルタ、117・・排気口、118・・ゴムキャップ、122・・ピン、123・・係合レール、124・・腕部、125・・上突条、126・・下突条、131・・フック板、B・・ビット、R1・・モータ冷却流路、R2・・本機側集塵流路、R3・・分岐流路、R4・・アタッチメント側集塵流路、A1・・上側空間、A2・・下側空間、S・・集塵システム。