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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-11
(45)【発行日】2025-07-22
(54)【発明の名称】電動作業機
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20250714BHJP
   E02F 9/00 20060101ALI20250714BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20250714BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20250714BHJP
   B60L 9/18 20060101ALI20250714BHJP
【FI】
E02F9/20 N
E02F9/20 Z
E02F9/00 C
B60L50/60
B60L15/20 J
B60L9/18 J
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2024511629
(86)(22)【出願日】2023-03-09
(86)【国際出願番号】 JP2023008995
(87)【国際公開番号】W WO2023189344
(87)【国際公開日】2023-10-05
【審査請求日】2024-09-20
(31)【優先権主張番号】P 2022060020
(32)【優先日】2022-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐井 拓真
(72)【発明者】
【氏名】魚谷 育弘
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 準起
(72)【発明者】
【氏名】丹波 大樹
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-132967(JP,A)
【文献】特開2016-061016(JP,A)
【文献】特開2021-080707(JP,A)
【文献】特開平09-158255(JP,A)
【文献】特開2012-041716(JP,A)
【文献】特開平06-346488(JP,A)
【文献】特開2000-314333(JP,A)
【文献】特開2020-039239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
E02F 9/00
B60L 50/60
B60L 15/20
B60L 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体と、
前記機体に搭載されたバッテリユニットと、
前記バッテリユニットからの電力により駆動される電動モータと、
前記電動モータからの動力により作動する油圧機器と、
前記油圧機器から供給された作動油の油圧により作動する作業装置と、
前記電動モータの駆動を制御する制御装置と、
前記作業装置の作動を許可する第1位置と前記作業装置の作動を許可しない第2位置のいずれかに切り換え可能な切換部材と、
前記作動油の温度を検出する油温検出装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記電動モータの駆動中に、前記切換部材が前記第2位置に切り換えられ、且つ前記作動油の温度が低温状態でも高温状態でもない所定の許容温度範囲内にある場合、前記電動モータの回転数を前記電動モータの停止状態に相当する所定の第1回転数に制御し、
前記電動モータの駆動中に、前記切換部材が前記第2位置に切り換えられ、且つ前記作動油の温度が前記許容温度範囲内にない場合、前記電動モータの回転数を前記第1回転数より大きく、且つ前記作業装置により作業を行うときの回転数の下限値以下である所定のアイドリング回転数に制御する電動作業機。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記電動モータの駆動中に、前記切換部材が前記第2位置に切り換えられた場合、
前記作動油の温度が前記許容温度範囲の下限値より低ければ、前記電動モータの回転数を所定の第3回転数に一致するように制御し、
前記作動油の温度が前記許容温度範囲の上限値より高ければ、前記電動モータの回転数を前記第1回転数より大きくて前記第3回転数より小さい所定の第2回転数に制御する請求項に記載の電動作業機。
【請求項3】
前記作動油の油圧により前記作業装置の作動の有無を検出する作業検出装置を備え、
前記第2回転数は、前記作業検出装置が前記作業装置の作動の有無を検出可能な前記作動油の油圧を生じさせることができる回転数に設定されている請求項に記載の電動作業
機。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記電動モータの駆動中に、前記切換部材が前記第1位置に有り、且つ前記作業装置が所定時間以上作動しなかった場合、
前記作動油の温度が前記許容温度範囲の下限値より低ければ、前記電動モータの回転数を前記第3回転数に一致するように制御し、
前記作動油の温度が前記許容温度範囲の下限値以上であれば、前記電動モータの回転数を前記第2回転数に制御する請求項に記載の電動作業機。
【請求項5】
機体と、
前記機体に搭載されたバッテリユニットと、
前記バッテリユニットからの電力により駆動される電動モータと、
前記電動モータからの動力により作動する油圧機器と、
前記油圧機器から供給された作動油の油圧により作動する作業装置と、
前記電動モータの駆動を制御する制御装置と、
前記作業装置の作動を許可する第1位置と前記作業装置の作動を許可しない第2位置のいずれかに切り換え可能な切換部材と、
前記作動油の温度を検出する油温検出装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記電動モータの駆動中に、前記切換部材が前記第1位置に有り、且つ前記作業装置が所定時間以上作動しなかった場合、
前記作動油の温度が所定の許容温度範囲の下限値より低ければ、前記電動モータの回転数を、前記電動モータの停止状態に相当する所定の第1回転数より大きく且つ前記作業装置により作業を行うときの回転数の下限値以下である所定の第3回転数に一致するように制御し、
前記作動油の温度が前記許容温度範囲の下限値以上であれば、前記電動モータの回転数を、前記第1回転数より大きく且つ前記第3回転数より小さい所定の第2回転数に制御する電動作業機。
【請求項6】
前記電動モータの回転数を指示するために操作される指示部材を備え、
前記制御装置は、
前記指示部材の操作により指示可能な前記電動モータの回転数を前記作動油の温度に応じて設定する請求項1~5のいずれか1項に記載の電動作業機。
【請求項7】
第1モードと当該第1モードよりも消費電力を低減する第2モードとのいずれかを選択する選択部材を備え、
前記制御装置は、前記作動油の温度が前記許容温度範囲内にある場合、前記第2モードが前記選択部材により選択されたときの前記指示部材の操作による前記電動モータの回転数の指示範囲の上限値を、前記第1モードが前記選択部材により選択されたときの前記指示範囲の上限値より小さく設定する請求項6に記載の電動作業機。
【請求項8】
前記制御装置は、前記作動油の温度が前記許容温度範囲より低い所定の第1温度未満である場合、前記第1モードと前記第2モードのいずれが前記選択部材により選択されても、前記指示部材の操作による前記電動モータの回転数の前記指示範囲の上限値を所定の最大回転数より小さい値に設定し、
前記最大回転数は、前記作動油の温度が前記許容温度範囲内にあり且つ前記第1モードが選択されている場合に、前記指示部材により指示可能な回転数の上限値である請求項7に記載の電動作業機。
【請求項9】
前記制御装置は、前記作動油の温度が前記許容温度範囲より高い所定の第2温度よりも高いときに、前記第1モードと前記第2モードのいずれが前記選択部材により選択されても、前記指示部材により指示可能な回転数を前記第1回転数より大きい所定の第3回転数に設定する請求項7に記載の電動作業機。
【請求項10】
前記作動油を冷却する冷却装置を備え、
前記制御装置は、
油温検出装置により検出された前記作動油の温度が前記許容温度範囲の上限値より高いときに、前記冷却装置を駆動することにより前記作動油を冷却し、
前記作動油の温度が前記許容温度範囲の下限値以下のときに、前記冷却装置を停止する請求項1に記載の電動作業機。
【請求項11】
前記バッテリユニットから前記電動モータに供給する電力を調整するインバータと、
前記電動モータの回転数を検出する回転数検出装置と、
前記作業装置の作動を操作する作業用操作部材と、を備え、
前記切換部材は、前記作業装置の作動を許可するロード位置と前記作業装置の作動を許可しないアンロード位置のいずれかに切り換え操作可能なアンロード用操作部材を含み、
前記制御装置は、
前記回転数検出装置により検出された前記電動モータの回転数に基づいて、前記インバータから前記電動モータに供給する電力を調整することで、前記電動モータの回転数を制御する請求項1に記載の電動作業機。
【請求項12】
前記作動油を冷却する冷却装置を備え、
前記制御装置は、
油温検出装置により検出された前記作動油の温度が前記許容温度範囲の上限値より高いときに、前記冷却装置を駆動することにより前記作動油を冷却し、
前記作動油の温度が前記許容温度範囲の下限値以下のときに、前記冷却装置を停止する請求項5に記載の電動作業機。
【請求項13】
前記バッテリユニットから前記電動モータに供給する電力を調整するインバータと、
前記電動モータの回転数を検出する回転数検出装置と、
前記作業装置の作動を操作する作業用操作部材と、を備え、
前記切換部材は、前記作業装置の作動を許可するロード位置と前記作業装置の作動を許可しないアンロード位置のいずれかに切り換え操作可能なアンロード用操作部材を含み、
前記制御装置は、
前記回転数検出装置により検出された前記電動モータの回転数に基づいて、前記インバータから前記電動モータに供給する電力を調整することで、前記電動モータの回転数を制御する請求項5に記載の電動作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータの動力により駆動する電動作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、電動モータの動力により駆動する電動作業機が開示されている。特許文献1に開示された電動作業機は、バッテリユニットが出力する電力によって駆動される電動モータと、電動モータによって駆動されて作動油を吐出する油圧ポンプと、油圧ポンプが吐出した作動油によって駆動される油圧機器と、油圧機器によって動作する作業装置と、油圧機器を操作する操作装置と、電動モータの回転数を制御する制御装置などを備えている。制御装置は、バッテリユニットからの出力電流値が所定値以上である場合に、操作装置の操作に応じて電動モータの回転数を設定し、バッテリユニットからの出力電流値が所定値未満である場合に、電動モータの回転数を所定のアイドリング回転数に設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国公開特許公報「特開2021-80707号公報」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
オペレータが電動作業機を操作しないときに、電動モータが回転駆動していると、電力が無駄に消費されて、電動作業機の作業効率が低下してしまう。
【0005】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、電動作業機において無駄な消費電力を低減し、作業効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る電動作業機は、機体と、前記機体に搭載されたバッテリユニットと、前記バッテリユニットからの電力により駆動される電動モータと、前記電動モータからの動力により作動する油圧機器と、前記油圧機器から供給された作動油の油圧により作動する作業装置と、前記電動モータの駆動を制御する制御装置と、前記作業装置の作動を許可する第1位置と前記作業装置の作動を許可しない第2位置のいずれかに切り換え可能な切換部材と、前記作動油の温度を検出する油温検出装置と、を備え、前記制御装置は、
前記電動モータの駆動中に、前記切換部材が前記第2位置に切り換えられ、且つ前記作動油の温度が低温状態でも高温状態でもない所定の許容温度範囲内に有る場合、前記電動モータの回転数を前記電動モータの停止状態に相当する所定の第1回転数に制御し、前記電動モータの駆動中に、前記切換部材が前記第2位置に切り換えられ、且つ前記作動油の温度が前記許容温度範囲内にない場合、前記電動モータの回転数を前記第1回転数より大きく、且つ前記作業装置により作業を行うときの回転数の下限値以下である所定のアイドリング回転数に制御する。
【0007】
前記制御装置は、前記電動モータの駆動中に、前記切換部材が前記第2位置に切り換えられ場合、前記作動油の温度が前記許容温度範囲の下限値より低ければ、前記電動モータの回転数を所定の第3回転数に一致するように制御し、前記作動油の温度が前記許容温度範囲の上限値より高ければ、前記電動モータの回転数を前記第1回転数より大きくて前記第3回転数より小さい所定の第2回転数に制御してもよい。
【0008】
前記電動作業機は、前記作動油の油圧により前記作業装置の作動の有無を検出する作業検出装置を備え、前記第2回転数は、前記作業検出装置が前記作業装置の作動の有無を検出可能な前記作動油の油圧を生じさせることができる回転数に設定されてもよい。
【0009】
前記電動作業機において前記制御装置は、前記電動モータの駆動中に、前記切換部材が前記第1位置に有り、且つ前記作業装置が所定時間以上作動しなかった場合、前記作動油の温度が前記許容温度範囲の下限値より低ければ、前記電動モータの回転数を前記第3回転数に一致するように制御し、前記作動油の温度が前記許容温度範囲の下限値以上であれば、前記電動モータの回転数を前記第2回転数に制御してもよい。
【0010】
本発明の一態様に係る電動作業機は、機体と、前記機体に搭載されたバッテリユニットと、前記バッテリユニットからの電力により駆動される電動モータと、前記電動モータからの動力により作動する油圧機器と、前記油圧機器から供給された作動油の油圧により作動する作業装置と、前記電動モータの駆動を制御する制御装置と、前記作業装置の作動を許可する第1位置と前記作業装置の作動を許可しない第2位置のいずれかに切り換え可能な切換部材と、前記作動油の温度を検出する油温検出装置と、を備え、前記制御装置は、
前記電動モータの駆動中に、前記切換部材が前記第1位置に有り、且つ前記作業装置が所定時間以上作動しなかった場合、前記作動油の温度が前記許容温度範囲の下限値より低ければ、前記電動モータの回転数を、前記電動モータの停止状態に相当する所定の第1回転数より大きく且つ前記作業装置により作業を行うときの回転数の下限値以下である所定の第3回転数に一致するように制御し、前記作動油の温度が前記許容温度範囲の下限値以上であれば、前記電動モータの回転数を、前記第1回転数より大きく且つ前記第3回転数より小さい所定の第2回転数に制御する
【0011】
前記電動作業機は、前記電動モータの回転数を指示するために操作される指示部材を備え、前記制御装置は、前記指示部材の操作により指示可能な前記電動モータの回転数を前記作動油の温度に応じて設定してもよい。
【0012】
前記電動作業機は、第1モードと当該第1モードよりも消費電力を低減する第2モードとのいずれかを選択する選択部材を備え、前記制御装置は、前記作動油の温度が前記許容温度範囲内にある場合、前記第2モードが前記選択部材により選択されたときの前記指示部材の操作による前記電動モータの回転数の指示範囲の上限値を、前記第1モードが前記選択部材により選択されたときの前記指示範囲の上限値より小さく設定してもよい。
【0013】
前記制御装置は、前記作動油の温度が前記許容温度範囲より低い所定の第1温度未満である場合、前記第1モードと前記第2モードのいずれが前記選択部材により選択されても、前記指示部材の操作による前記電動モータの回転数の前記指示範囲の上限値を所定の最大回転数より小さい値に設定し、前記最大回転数は、前記作動油の温度が前記許容温度範囲内にあり且つ前記第1モードが選択されている場合に、前記指示部材により指示可能な回転数の上限値であってもよい。
【0014】
前記制御装置は、前記作動油の温度が前記許容温度範囲より高い所定の第2温度よりも高いときに、前記第1モードと前記第2モードのいずれが前記選択部材により選択されても、前記指示部材により指示可能な回転数を前記第1回転数より大きい所定の第3回転数に設定してもよい。
【0015】
前記電動作業機は、前記作動油を冷却する冷却装置を備え、前記制御装置は、油温検出装置により検出された前記作動油の温度が前記許容温度範囲の上限値より高いときに、前記冷却装置を駆動することにより前記作動油を冷却し、前記作動油の温度が前記許容温度範囲の下限値以下のときに、前記冷却装置を停止してもよい。
【0016】
前記電動作業機は、前記バッテリユニットから前記電動モータに供給する電力を調整するインバータと、前記電動モータの回転数を検出する回転数検出装置と、前記作業装置の作動を操作する作業用操作部材と、を備え、前記切換部材は、前記作業装置の作動を許可するロード位置と前記作業装置の作動を許可しないアンロード位置のいずれかに切り換え操作可能なアンロード用操作部材を含み、前記制御装置は、前記回転数検出装置により検出された前記電動モータの回転数に基づいて、前記インバータから前記電動モータに供給する電力を調整することで、前記電動モータの回転数を制御してもよい。
【発明の効果】
【0017】
上記構成によれば、電動作業機において無駄な消費電力を低減し、作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】電動作業機の電気ブロック図である。
図2】電動作業機の油圧回路図である。
図3】電動モータの回転数の制御マップの一例を示す図である。
図4A】電動モータの回転数の制御動作を示すフローチャートである。
図4B】電動モータの回転数の制御動作を示すフローチャートである。
図4C】電動モータの回転数の制御動作を示すフローチャートである。
図5】電動作業機の全体側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
先ず、本実施形態の電動作業機1の全体構成について説明する。図5は、電動作業機1の全体側面図である。電動作業機1は、バックホーと呼ばれる掘削機である。電動作業機1は、機体(旋回台)2、走行装置10、作業装置20などを備えている。また、電動作業機1は、原動機として電動モータ9(図1)を備え、当該電動モータ9の動力により動作する。
【0021】
電動作業機1の機体2の上には、オペレータ(作業者)が着座する運転席4と、運転席4を前後、左右、及び上から保護する保護機構6が設けられている。保護機構6は、キャビンと呼ばれている。保護機構6の各側面には、運転席4から周囲を目視可能な透明部分(いわゆる窓)が設けられている。保護機構6は、運転席4が設けられた内部空間と外部とを仕切っている。
【0022】
保護機構6の内部の運転席4の周囲には、電動作業機1を操作するための操作装置5が設けられている。オペレータは、運転席4に着座した状態で、操作装置5を操作可能である。本実施形態では、保護機構6に対して作業装置20側(図5の矢印A1方向)を前方、この反対側(図5の矢印A2方向)を後方として説明する。また、その前後方向に直交する水平方向を幅方向として説明する。さらに、前方A1に向いた状態で、左側を左方、右側を右方として説明する。
【0023】
走行装置10は、機体2を走行可能に支持している。走行装置10は、走行フレーム(トラックフレーム)11と走行機構12とを有している。走行フレーム11は、周囲に走行機構12を取り付け、且つ上部に機体2を支持する構造体である。走行機構12は、例えばクローラ式の走行機構である。走行機構12は、走行フレーム11の左側と右側にそれぞれ設けられている。走行機構12は、アイドラ13と、駆動輪14と、複数の転輪15と、無端状のクローラベルト16と、走行モータML、MRとを有している。
【0024】
アイドラ13は、走行フレーム11の前部に配置されている。駆動輪14は、走行フレーム11の後部に配置されている。複数の転輪15は、アイドラ13と駆動輪14との間に設けられている。クローラベルト16は、アイドラ13、駆動輪14、及び転輪15に亘って巻掛けられている。
【0025】
左用走行モータMLは、走行フレーム11の左側にある走行機構12に含まれている。右用走行モータMRは、走行フレーム11の右側にある走行機構12に含まれている。これら走行モータML、MRは、油圧モータから構成されている。各走行機構12では、走行モータML、MRの動力により、駆動輪14が回転駆動して、クローラベルト16を周方向に循環回走させる。
【0026】
走行装置10の前部には、ドーザ装置18が装着されている。ドーザ装置18は、ドーザシリンダC5の伸縮によって上下に揺動する。ドーザシリンダC5は、走行フレーム11に取り付けられている。ドーザシリンダC5は、油圧シリンダから構成されている。
【0027】
機体2は、走行フレーム11上に旋回ベアリング3を介して、旋回軸心X回りに回転可能に支持されている。機体2の内部には、旋回モータMTが設けられている。旋回モータMTは、油圧モータ(油圧機器に含まれる油圧アクチュエータ)から構成されている。機体2は、旋回モータMTの動力により旋回軸心X回りに旋回する。
【0028】
作業装置20は、機体2の前部に支持されている。作業装置20は、ブーム21と、アーム22と、バケット(作業具)23と、油圧シリンダC1~C5を有する。ブーム21の基端側は、スイングブラケット24に横軸(機体2の幅方向に延伸する軸心)廻りに回動可能に枢着されている。このため、ブーム21は上下方向(鉛直方向)に揺動可能になっている。アーム22は、ブーム21の先端側に横軸廻りに回動可能に枢着されている。このため、アーム22は、前後方向或いは上下方向に揺動可能になっている。バケット23は、アーム22の先端側にスクイ動作及びダンプ動作が可能に設けられている。
【0029】
バケット23に代えて、或いはバケット23に加えて、油圧アクチュエータにより駆動可能な他の作業具(油圧アタッチメント)をアーム22の先端部に装着することが可能である。他の作業具として、油圧ブレーカ、油圧圧砕機、アングルブルーム、アースオーガ、パレットフォーク、スイーパー、モア、スノーブロアなどを例示することができる。
【0030】
スイングブラケット24は、機体2内に備えられたスイングシリンダC1の伸縮によって左右に揺動する。ブーム21は、ブームシリンダC2の伸縮によって上下(前後)に揺動する。アーム22は、アームシリンダC3の伸縮によって上下(前後)に揺動する。バケット23は、バケットシリンダ(作業具シリンダ)C4の伸縮によってスクイ動作及びダンプ動作を行う。スイングシリンダC1、ブームシリンダC2、アームシリンダC3、及びバケットシリンダC4は、油圧シリンダから構成されている。
【0031】
電動作業機1は、走行モータML、MRにより走行装置10を駆動し、油圧シリンダC1~C5により作業装置20を駆動し、旋回モータMTにより機体2を旋回させて、掘削などの作業を行う。走行モータML、MR、旋回モータMT、及び油圧シリンダC1~C5といった油圧アクチュエータは、油圧機器に含まれる。作業装置20だけでなく走行装置10も、電動作業機1に備わる作業装置である。以下、便宜上、作業装置20及び走行装置10を、まとめて「作業装置20、10」と言う。
【0032】
次に、電動作業機1の電気的構成について説明する。図1は、電動作業機1の電気ブロック図である。図1において、制御装置7は、CPU7aと記憶部7bとを有している。CPU7aは、図1に示す電動作業機1に備わる各部の動作を制御する。記憶部7bは揮発性メモリ及び不揮発性メモリなどから構成されている。CPU7aが各部の動作を制御するための情報、データ、及びプログラムなどは、記憶部7bに読み書き可能に記憶されている。
【0033】
操作装置5は、作業用操作レバー5a、走行用操作レバー5b、アンロードレバー5c、アクセルダイヤル5d、及びモード選択SW(スイッチ)5eなどの操作部材を有している。また、操作装置5は、各操作部材5a~5eの操作の有無、操作位置、若しくは操作量を検出するための、ポテンションメータ、スイッチ、又はセンサなど(図示省略)も有している。
【0034】
作業用操作レバー5aは、作業装置20の作動を操作する部材である。走行用操作レバー5bは、走行装置10の作動を操作する部材である。図1では、便宜上、作業用操作レバー5aと走行用操作レバー5bをそれぞれ1つのブロックで示しているが、実際には、作業用操作レバー5aと走行用操作レバー5bはそれぞれ複数設けられている。作業用操作レバー5a及び走行用操作レバー5bは、本発明の「作業用操作部材」の一例である。
【0035】
アンロードレバー5cは、作業装置20の作動を許可するロード位置(第1位置)と、作業装置20の作動を許可しない(禁止する)アンロード位置(第2位置)のいずれかに切り換え操作可能な部材である。アンロードレバー5cは、例えば運転席4(図5)の側方に、上下へ揺動可能に設置されている。
【0036】
アンロードレバー5cを下方へ揺動させて、ロード位置(第1位置、下降位置)に位置させることで、オペレータが運転室4Rに対して乗降する通路が閉鎖される。アンロードレバー5cを上方へ揺動させて、アンロード位置(第2位置、上昇位置)に位置させることで、上記通路が開放される。アンロードレバー5cは、本発明の「アンロード用操作部材」の一例である。また、アンロードレバー5cは、本発明の「切換部材」に含まれる構成の一例である。
【0037】
アクセルダイヤル5dは、電動モータ9の回転数を指示するために回転操作される。アクセルダイヤル5dを回転操作可能な角度範囲が電動モータ9の回転数を指示可能な指示範囲に対応している。このため、アクセルダイヤル5dの操作位置を変更することで、電動モータ9の回転数の指示値も変更することができる。詳しくは、制御装置7が、アクセルダイヤル5dの操作状態(操作の有無と操作位置)に応じて、電動モータ9の回転数の指示値を演算する。アクセルダイヤル5dは、本発明の「指示部材」の一例である。
【0038】
モード選択SW5eは、電動モータ9の駆動を制御するための、通常モード(第1モード)と、当該通常モードよりも消費電力を低減するECOモード(エコロジーモード、第2モード)とのいずれかを選択するために操作されるスイッチである。モード選択SW5eは、本発明の「選択部材」の一例である。
【0039】
スタータSW(スイッチ)8は、保護機構6の内部に設けられ、運転席4に着座したオペレータが操作可能になっている。スタータSW8は、電動作業機1を始動させたり停止させたりするために操作される。詳しくは、スタータSW8をオン操作することで、制御装置7が電動作業機1に備わる各部を始動させる。また、スタータSW8をオフ操作することで、制御装置7が電動作業機1に備わる各部を停止させる。
【0040】
電動モータ9は、電動作業機1の駆動源(原動機の一例)であって、例えば永久磁石埋込式の三相交流同期モータから構成されている。インバータ38は、電動モータ9を駆動させるモータ駆動装置である。インバータ38は、電動モータ9及びジャンクションボックス39と接続されている。
【0041】
ジャンクションボックス39は、インバータ38の他に、バッテリユニット30とDC-DCコンバータ40と充電口41とに接続されている。ジャンクションボックス39は、バッテリユニット30から出力された電力をインバータ38やDC-DCコンバータ40に出力する。
【0042】
インバータ38は、バッテリユニット30からジャンクションボックス39を経由して入力された直流電力を三相交流電力に変換し、当該三相交流電力を電動モータ9に供給する。これにより、電動モータ9が駆動する。また、インバータ38は、電動モータ9に供給する電力の電流や電圧を任意に調整可能である。制御装置7は、インバータ38の動作を制御して、電動モータ9を駆動させたり停止させたりする。
【0043】
回転数検出装置42は、電動モータ9の回転数(実回転数)を検出するセンサ、エンコーダ、又はパルス発生器などから構成されている。制御装置7は、例えば回転数検出装置42により検出された電動モータ9の回転数(実回転数)に基づいて、インバータ38により電動モータ9の駆動を制御する。より詳しくは、制御装置7は、回転数検出装置42により検出された電動モータ9の実回転数が、目標回転数(アクセルダイヤル5dによる指示値又は後述する所定の回転数R1~R3)に一致するように、インバータ38により電動モータ9の駆動を制御する。
【0044】
DC-DCコンバータ40は、バッテリユニット30からジャンクションボックス39を経由して入力された直流電力の電圧を、異なる電圧に変換する電圧変換装置である。本実施形態では、DC-DCコンバータ40は、バッテリユニット30の高電圧を、電動作業機1に備わる電装品に応じた所定の低電圧に変換する降圧コンバータである。DC-DCコンバータ40は、電圧変換後に低圧バッテリ33へ電力を供給する。電動作業機1に備わる電装品には、図1に示す各部以外に、照明及びヒータなどが含まれている。
【0045】
充電口41は、充電ケーブル(図示省略)が嵌合されるコネクタ(図示省略)と、接続検出装置41aとを有している。充電口41には、充電ケーブルを経由して外部電源(商用電源等)に接続される。接続検出装置41aは、充電口41に充電ケーブルが嵌合されて、外部電源が接続されたことを検出するセンサ等から成る。
【0046】
ジャンクションボックス39は、外部電源から充電ケーブルを経由して充電口41より入力された電力を、バッテリユニット30に出力する。バッテリユニット30は、充電口41からジャンクションボックス39を経由して入力された電力で充電される。
【0047】
バッテリユニット30は、複数のバッテリパック31、32を有している。各バッテリパック31、32は、少なくとも1つのバッテリから構成されたリチウムイオン電池等の二次電池(蓄電池)である。各バッテリパック31、32を複数のバッテリから構成した場合、当該複数のバッテリは電気的に直列及び/又は並列に接続される。また、各バッテリパック31、32を構成するバッテリは、内部に複数のセルを有しており、当該複数のセルが電気的に直列及び/又は並列に接続されて構成されている。各バッテリパック31、32は、電動作業機1の各部を所定時間稼働可能な電気容量を有している。バッテリパック31、32同士は、並列に接続されている。
【0048】
本実施形態では、バッテリユニット30に2つのバッテリパック31、32を設けているが、バッテリユニット30が有するバッテリパックの数は2つに限定されず、1つでもよいし、又は3つ以上でもよい。
【0049】
各バッテリパック31、32には、接続切替部31a、32aが設けられている。各接続切替部31a、32aは、例えばリレー又はスイッチ等から構成されていて、接続状態と遮断状態とに切替可能である。
【0050】
制御装置7は、接続切替部31a、32aのうち、一方の接続切替部を接続状態に切り替えて、他方の接続切替部を遮断状態に切り替えることにより、複数のバッテリパック31、32のうち、一方のバッテリパックからジャンクションボックス39に電力を出力し、他方のバッテリパックからの電力の出力を停止する。つまり、制御装置7は、各バッテリパック31、32の電力の出力と出力停止とを制御する。
【0051】
また、制御装置7は、ジャンクションボックス39の内部の接続状態を切り替えて、各バッテリパック31、32に対してインバータ38、DC-DCコンバータ40、又は充電口41を接続したり切断したりする。ジャンクションボックス39と接続切替部31a、32aとは、各バッテリパック31、32に対するインバータ38、DC-DCコンバータ40、及び充電口41の接続と切断とを切り替える接続切替装置である。
【0052】
また、各バッテリパック31、32には、BMU(battery management unit;バッテリ監視装置)31b、32bが設けられている。図1では、BMU31b、32bは対応するバッテリパック31、32内に設けられているが、BMU31b、32bは対応するバッテリパック31、32に内蔵されていてもよいし、又はバッテリパック31、32の外側に設置されていてもよい。
【0053】
BMU31bは、対応するバッテリパック31を監視及び制御する。BMU32bは、対応するバッテリパック32を監視及び制御する。具体的には、BMU31b、32bは、バッテリパック31、32の内部に備わるリレーの開閉を制御して、バッテリパック31、32からの電力供給の開始及び停止を制御する。また、BMU31b、32bは、バッテリパック31、32の温度、電圧、電流、又は内部のセルの端子電圧等を検出する。
【0054】
さらに、BMU31b、32bは、例えばバッテリパック31、32の内部のセルの端子電圧に基づいて、電圧測定方式によりバッテリパック31、32の残容量(残電力量)を検出する。なお、バッテリパック31、32の残容量の検出方法は、電圧測定方式に限定されず、クーロン・カウンタ方式、電池セル・モデリング方式、インピーダンス・トラック方式などのような他の方式であってもよい。また、バッテリパック31、32の残容量を検出する容量検出部を、BMU31b、32bとは別に設けてもよい。
【0055】
低圧バッテリ33は、バッテリユニット30より低電圧の蓄電池である。低圧バッテリ33は、DC-DCコンバータ40から供給される電力により充電される。低圧バッテリ33は、電動作業機1に備わる電装品に電力を供給する。
【0056】
ラジエータ35は、電動モータ9、インバータ38、DC-DCコンバータ40、及びバッテリユニット30等の高発熱型の電気機器を冷却するための冷却水を冷却する。高発熱型の電気機器とは、電力で動作することにより、電動作業機1に備わる他の電気機器より高い熱を発する電気機器のことである。冷却水は、単なる水ではなく、例えば寒冷地でも凍らないような液体から構成されている。
【0057】
ラジエータ35は、ファンモータ35aと、当該ファンモータ35aの動力により回転駆動するラジエータファン及び熱交換部(図示省略)を有している。ファンモータ35aは、低圧バッテリ33の電力で駆動する。
【0058】
冷却用ポンプ36は、ラジエータ35及び上記の高発熱型の電気機器と共に、機体2内に配設された冷却水路(図示省略)に設けられている。冷却用ポンプ36は、その冷却水路に対して冷却水を吐出及び循環させる。
【0059】
オイルクーラ37は、前述した油圧アクチュエータML、MR、MT、C1~C5や、後述する油圧ポンプP1、P2及びコントロールバルブCV(図2等に図示)といった油圧機器を通過した作動油を冷却する。オイルクーラ37は、ファンモータ37aと、当該ファンモータ37aの動力により回転駆動するオイルクーラファン及び熱交換部(図示省略)を有している。ファンモータ37aは、低圧バッテリ33の電力で駆動する。オイルクーラ37は、本発明の「冷却装置」の一例である。
【0060】
表示装置43は、液晶ディスプレイ又はタッチパネルなどから構成されていて、各種の情報を表示する。油温検出装置44は、作動油の温度を検出するセンサから構成されている。以下、作動油の温度を「作動油温」と言う。
【0061】
AI(オートアイドリング)-SW(スイッチ)45は、作動油の油圧により作動する圧力センサから構成されている。AI-SW45は、作業装置20、10の少なくともいずれかが作動しているときにオン状態になり、作業装置20、10がいずれも作動していないときにオフ状態になる。即ち、AI-SW45は、作業装置20、10の作動の有無を検出する。AI-SW45は、本発明の「作業検出装置」の一例である。
【0062】
次に、電動作業機1に備わる油圧回路について説明する。図2は、電動作業機1に備わる油圧回路Kを示した図である。油圧回路Kには、油圧アクチュエータC1~C5、ML、MR、MT、コントロールバルブCV、油圧ポンプP1、P2、作動油タンク48、オイルクーラ37、操作弁PV1~PV6、アンロード弁58、及び油路50などの油圧機器が設けられている。
【0063】
複数設けられた油圧ポンプP1、P2のうち、一方は作動用油圧ポンプP1であり、他方はコントロール用油圧ポンプP2である。これらの油圧ポンプP1、P2は、電動モータ9の動力により駆動する。
【0064】
作動用油圧ポンプP1は、作動油タンク48に貯留された作動油を吸引した後、コントロールバルブCVに向かって作動油を吐出する。図2では、便宜上、作動用油圧ポンプP1を1つ図示しているが、これに限らず、各油圧アクチュエータC1~C5、ML、MR、MTへ作動油を供給可能に、作動用油圧ポンプP1を適宜数設ければよい。
【0065】
コントロール用油圧ポンプP2は、作動油タンク48に貯留された作動油を吸引した後吐出することにより、信号用又は制御用等の油圧を出力する。即ち、コントロール用油圧ポンプP2はパイロット油を供給(吐出)する。コントロール用油圧ポンプP2も適宜数設ければよい。
【0066】
コントロールバルブCVは、複数の制御弁V1~V8を有している。各制御弁V1~V8は、油圧ポンプP1、P2から各油圧アクチュエータC1~C5、ML、MR、MTに出力する作動油の流量制御(調整)する。
【0067】
具体的には、スイング制御弁V1は、スイングシリンダC1に供給する作動油の流量を制御する。ブーム制御弁V2は、ブームシリンダC2に供給する作動油の流量を制御する。アーム制御弁V3は、アームシリンダC3に供給する作動油の流量を制御する。バケット制御弁V4は、バケットシリンダC4に供給する作動油の流量を制御する。ドーザ制御弁V5は、ドーザシリンダC5に供給する作動油の流量を制御する。左用走行制御弁V6は、左側の走行モータMLに供給する作動油の流量を制御する。右用走行制御弁V7は、右側の走行モータMRに供給する作動油の流量を制御する。旋回制御弁V8は、旋回モータMTに供給する作動油の流量を制御する。
【0068】
操作弁(リモコン弁)PV1~PV6は、操作装置5に備わる操作レバー5a、5b(図1)の操作に応じて作動する。各操作弁PV1~PV6の作動量(操作量)に比例して、パイロット油が各制御弁V1~V8に作用することで、各制御弁V1~V8のスプールが直進移動する。そして、各制御弁V1~V8のスプールの移動量に比例する流量の作動油が、制御対象の油圧アクチュエータC1~C5、ML、MR、MTに供給される。さらに、各油圧アクチュエータC1~C5、ML、MR、MTが、各制御弁V1~V8からの作動油の供給量に応じて駆動する。
【0069】
言い換えれば、操作レバー5a、5bが操作されることで、制御弁V1~V8に作用する作動油(パイロット油)が調整されて、制御弁V1~V8が制御される。そして、制御弁V1~V8から油圧アクチュエータC1~C5、ML、MR、MTに供給される作動油の流量が調整されて、油圧アクチュエータC1~C5、ML、MR、MTの駆動と停止とが制御される。
【0070】
油路50は、例えばホース又は金属等の材料で形成された管から構成されている。油路50は、油圧回路Kに設けられた各部を接続し、各部に対して作動油又はパイロット油を流す流路である。油路50には、第1油路51、第2油路52、第1吸引油路54、第2吸引油路55、及び制限油路57が含まれている。
【0071】
第1吸引油路54は、作動用油圧ポンプP1が作動油タンク48から吸引した作動油を流す流路である。第2吸引油路55は、コントロール用油圧ポンプP2が作動油タンク48から吸引した作動油を流す流路である。第1油路51は、作動用油圧ポンプP1が吐出した作動油をコントロールバルブCVの制御弁V1~V8に向かって流す流路である。第1油路51は、コントロールバルブCV内で複数に分岐して、各制御弁V1~V8に接続されている。第2油路52は、制御弁V1~V8を通過した作動油を作動油タンク48に向かって流す流路である。作動油タンク48は作動油を貯留する。第2油路52には、往復油路52aと排出油路52bとが含まれている。
【0072】
往復油路52aは、各制御弁V1~V8と制御対象の油圧アクチュエータC1~C5、ML、MR、MTとを2本1対で接続するように複数設けられている。往復油路52aは、接続された制御弁V1~V8から油圧アクチュエータC1~C5、ML、MR、MTに作動油を供給したり、油圧アクチュエータC1~C5、ML、MR、MTから制御弁V1~V8に作動油を戻したりする流路である。排出油路52bの一端側は複数に分岐して、各制御弁V1~V8に接続されている。排出油路52bの他端部は、作動油タンク48に接続されている。
【0073】
第1油路51を通っていずれかの制御弁V1~V8に流れた作動油の一部は、当該制御弁V1~V8を通過して往復油路52aの一方を通り、制御対象の油圧アクチュエータC1~C5、ML、MR、MTに供給される。そして、その油圧アクチュエータC1~C5、ML、MR、MTから排出された作動油は、往復油路52aの他方を通って接続された制御弁V1~V8に戻り、当該制御弁V1~V8を通過して、排出油路52b流れる。
【0074】
また、第1油路51を通っていずれかの制御弁V1~V8に流れた作動油の他部は、油圧アクチュエータC1~C5、ML、MR、MTへ供給されることなく、当該制御弁V1~V8を通過して排出油路52bに流れる。排出油路52bには、オイルクーラ37が設けられている。オイルクーラ37は、いずれかの制御弁V1~V8から排出油路52bを通って流れて来た作動油を冷却する。
【0075】
オイルクーラ37で冷却された作動油は、排出油路52bを通って作動油タンク48に戻る。上述したように、油路54、51、52は、作動油を作動油タンク48と油圧ポンプP1とコントロールバルブCVの制御弁V1~V8と(一部の作動油は油圧アクチュエータC1~C5、ML、MR、MTも)に対して循環させるように配設されている。
【0076】
制限油路57は、コントロール用油圧ポンプP2が吐出した作動油を操作弁PV1~PV6に流す流路である。制限油路57の一端部は、コントロール用油圧ポンプP2に接続され、他端側は複数に分岐して、各操作弁PV1~PV6の一次側のポート(一次ポート)に接続されている。
【0077】
制限油路57には、2位置切換弁から成るアンロード弁58が設けられている。アンロード弁58は、アンロードレバー5c(図1)の操作に連動して、第1位置58aと第2位置58bのいずれかに切り替わる。アンロード弁58が第1位置58aに切り換わることで、作動用油圧ポンプP1から油圧アクチュエータC1~C5、ML、MR、MTへ作動油が供給され、油圧アクチュエータC1~C5、ML、MR、MT、作業装置20、及び走行装置10の作動が許可される。また、アンロード弁58が第2位置58bに切り換わることで、作動用油圧ポンプP1から油圧アクチュエータC1~C5、ML、MR、MTへの作動油の供給が遮断され、油圧アクチュエータC1~C5、ML、MR、MT、作業装置20、及び走行装置10の作動が許可されなくなる(作動禁止状態)。
【0078】
詳しくは、アンロードレバー5cがロード位置(第1位置)に操作されることで、アンロード弁58が制御装置7により第1位置(油供給位置、ロード位置)58aに切り換えられ、コントロール用油圧ポンプP2から制限油路57に吐出された作動油が操作弁PV1~PV6に供給されて、制御弁V1~V8が操作可能になる。これにより、油圧アクチュエータC1~C5、ML、MR、MT、作業装置20、及び走行装置10も操作可能になり、これら各部C1~C5、ML、MR、MT、20、10の作動が許可される。操作弁PV1~PV6から排出された作動油は、別の排出油路(図示省略)を通って作動油タンク48に戻る。
【0079】
また、アンロードレバー5cがアンロード位置(第2位置)に操作されることで、アンロード弁58が制御装置7により第2位置(油遮断位置、アンロード位置)58bに切り換えられ、コントロール用油圧ポンプP2から制限油路57に吐出された作動油が操作弁PV1~PV6に供給されなくなり、制御弁V1~V8が操作不可能になる(操作禁止状態)。これにより、油圧アクチュエータC1~C5、ML、MR、MT、作業装置20、及び走行装置10も操作不可能になり、これら各部C1~C5、ML、MR、MT、20、10の作動が許可されなくなる。アンロードレバー5cだけでなくアンロード弁58も、本発明の「切換部材」に含まれる構成の一例である。
【0080】
油圧回路Kには、上記以外にも、制御弁V1~V8の操作状態を検知するための操作検知油路(図示省略)が設けられている。操作検知油路は、コントロール用油圧ポンプP2から吐出されたパイロット油を、制御弁V1~V8の位置をそれぞれ切り換えるための複数の切換弁を順次経由させて、作動油タンク48に戻す油路である。操作検知油路において、最もコントロール用油圧ポンプP2側に配置された制御弁V1の上流側には、AI-SW45(図1)が接続されている。
【0081】
制御弁V1~V8のいずれかが中立位置から切換位置に操作されることで、上記操作検知油路の一部が遮断されて、当該操作検知油路内のパイロット油の圧力がある程度高くなり(いわゆる圧が立った状態)、AI-SW45がオン状態になる。即ち、少なくともいずれかの作業装置20、10の作動が有ることが、AI-SW45により検出される。また、制御弁V1~V8がいずれも中立位置にあるときは、上記操作検知油路が開通するため、当該操作検知油路内のパイロット油の圧力がある程度まで高くならず(いわゆる圧が立っていない状態)、AI-SW45がオフ状態になる。即ち、作業装置20、10の作動が無いことが、AI-SW45により検出される。
【0082】
次に、電動作業機1の動作を説明する。図3は、電動モータ9の回転数の制御マップの一例を示す図である。詳しくは、図3の制御マップは、電動モータ9の回転数の制御値と作動油温との相関関係をグラフで示している。図3の制御マップの横軸は、作動油温[℃]を示し、縦軸は、電動モータ9の回転数[rpm]を示している。図3の制御マップを表すデータは、制御装置7の記憶部7b(図1)に予め記憶されている。
【0083】
制御装置7は、油温検出装置44により検出された作動油温Tが、図3に示す5つの所定の温度範囲I~Vのいずれかにあるかを判別する。第3温度範囲IIIは、許容温度範囲であり、所定の温度T2(例えば30℃)以上で且つ所定の温度T3(例えば87℃)以下である。当該温度T2、T3及び許容温度範囲T2~T3は、例えば電動作業機1の各部を安定に動作させることが可能な作動油温及び温度範囲に設定されている。
【0084】
許容温度範囲IIIより低い温度範囲I、IIのうち、第1温度範囲Iは、所定の温度T1(例えば2℃)未満に設定されている。第2温度範囲IIは、温度T1以上で且つ温度T2未満に設定されている。許容温度範囲IIIより高い温度範囲IV、Vのうち、第4温度範囲IVは、温度T3より高くて所定の温度T4(例えば103℃)以下に設定されている。温度T1は、本発明の「第1温度」の一例であり、温度T4は、本発明の「第2温度」の一例である。第5温度範囲Vは、温度T4(例えば103℃)より高く設定されている。
【0085】
制御装置7は、電動モータ9の駆動中に、作動油温T、アンロードレバー5c、及びAI-SW45の状態に応じて、電動モータ9の回転数Rを所定の範囲R1~R5内で制御する。第1回転数R1は、電動モータ9の停止状態に相当する回転数(例えば0rpm)である。
【0086】
第2回転数R2は、AI-SW45が作業装置20、10の作動の有無を検出可能な作動油の油圧を生じさせることができる電動モータ9の回転数(例えば250rpm)である。より詳しくは、作業装置20、10の少なくともいずれかが作動したときに、AI-SW45がオン状態に切り換わり、作業装置20、10が作動していないときに、AI-SW45がオフ状態に切り換わることが可能な、作動油の最小油圧以上の油圧を生じさせるための電動モータ9の回転数に、第2回転数R2は設定されている。
【0087】
第3回転数R3は、作業装置20、10により作業を行うための電動モータ9の回転数の下限値(例えば1,000rpm)である。より詳しくは、操作レバー5a、5bの操作に応じて作業装置20、10を即座に作動させることが可能な電動モータ9の無負荷状態の回転数に、第3回転数R3は設定されている。第3回転数R3は、第1回転数R1及び第2回転数R2より大きい回転数であり、アイドリング回転数でもある。第2回転数R2は、第1回転数R1より大きくて第3回転数R3より小さい回転数である。また、第2回転数R2は、作業装置20、10による作業を行うときの電動モータ9の回転数よりも低いアイドリング回転数でもある。
【0088】
第5回転数R5は、電動モータ9に対して設定可能な所定の最大回転数(例えば2,200rpm)である。第4回転数R4は、第5回転数R5より小さく制限された回転数であって、第3回転数R3より大きい回転数である。
【0089】
なお、上述した温度T1~T4及び回転数R1~R5の数値は一例であって、上記に限定するわけではない。また、電動モータ9の停止状態に対応する第1回転数R1は、0rpmに限定せず、例えば1rpm未満などの極微小な回転数であってもよい。また、本例では、制御装置7が、電動モータ9の回転数を0rpm(第1回転数)に設定する際に、インバータ38から電動モータ9への電力供給を継続する。然るに、例えば制御装置7が、インバータ38から電動モータ9への電力供給を遮断して、電動モータ9を完全に停止させることにより、電動モータ9の回転数を0rpmに設定してもよい。
【0090】
図4A図4Cは、電動作業機1における電動モータ9の回転数の制御動作を示すフローチャートである。図4A図4C示す一連の制御動作は、制御装置7のCPU7a(図1)が、記憶部7bに予め記憶されたソフトウェアプログラムと図3の制御マップに基づいて実行する。以下、便宜上、電動モータ9の回転数を「モータ回転数」と言う。
【0091】
オペレータによりスタータSW8がオン操作されると、制御装置7は、インバータ38により電動モータ9を始動する。電動モータ9の駆動中に、制御装置7は、油温検出装置44により作動油温Tを検出する(図4AのS1)。
【0092】
作動油温Tが所定の許容温度範囲III内(温度T2以上で且つ温度T3以下)にある場合(図4AのS2:YES)、制御装置7は、モード選択SW5e(図1)によるモードの選択状態を確認する。このとき、通常モードがモード選択SW5eにより選択されているときは(図4AのS3:NO)、制御装置7が、アクセルダイヤル5d(図1)によるモータ回転数Rの指示範囲Rrangeを、第3回転数R3以上で且つ第5回転数R5以下に設定する(図4AのS5、図3の許容温度範囲IIIのS丸印)。即ち、制御装置7は、アクセルダイヤル5dによるモータ回転数Rの指示範囲Rrangeの下限値に第3回転数R3を設定し、上限値に第5回転数R5を設定する。
【0093】
対して、ECOモードがモード選択SW5eにより選択されているときは(図4AのS3:YES)、制御装置7が、アクセルダイヤル5dによるモータ回転数Rの指示範囲Rrangeを、第3回転数R3以上で且つ第4回転数R4以下に設定する(図4AのS4、図3の許容温度範囲IIIのE丸印)。即ち、制御装置7は、アクセルダイヤル5dによるモータ回転数Rの指示範囲Rrangeの下限値に第3回転数R3を設定し、上限値に第4回転数R4を設定する。
【0094】
また、作業装置20、10が所定時間(例えば4秒)以上作動しなかったため、AI-SW45が所定時間(例えば4秒)以上オフ状態になると(図4AのS6:YES)、制御装置7は、モータ回転数Rを第2回転数R2に一致するように制御する(図4AのS7、図3の許容温度範囲IIIの黒丸印)。この図4Aの処理S6、S7は、いわゆるAI(オートアイドリング)制御である。
【0095】
また、アンロードレバー5c(図1)及びアンロード弁58(図2)がアンロード位置に切り換わると(図4AのS8:YES)、制御装置7は、モータ回転数Rを第1回転数R1に一致するように制御する(図4AのS9、図3の許容温度範囲IIIの黒四角印)。これにより、電動モータ9が回転停止状態になる。この図4Aの処理S8、S9は、いわゆるAS(オートストップ)制御である。
【0096】
また、アンロードレバー5c及びアンロード弁58がロード位置に有る状態で、アクセルダイヤル5dが操作されると(図4AのS10:YES)、制御装置7は、アクセルダイヤル5dの操作位置に応じてモータ回転数Rの指示値を演算し、当該指示値に一致するようにモータ回転数Rを変更する(図4AのS11)。
【0097】
このとき、作動油温Tが許容温度範囲IIIにあるため、モード選択SW5eにより通常モードが選択されているときは、図4Aの処理S5で設定された指示範囲Rrange内(R3~R5)で、制御装置7が、アクセルダイヤル5dの操作位置に応じてモータ回転数Rの指示値を演算する。また、モード選択SW5eによりECOモードが選択されているときは、図4Aの処理S4で設定された指示範囲Rrange内(R3~R4)で、制御装置7が、アクセルダイヤル5dの操作位置に応じてモータ回転数Rの指示値を演算する。
【0098】
その後、オペレータによりスタータSW8がオフ操作されると、制御装置7は、電動モータ9の停止指示が有ったと判断して(図4AのS12:YES)、インバータ38により電動モータ9への電力供給を停止することにより、電動モータ9の駆動を停止する(図4AのS13)。これにより、電動作業機1が停止状態となる。
【0099】
一方、オペレータによりスタータSW8がオフ操作されなければ、制御装置7は、電動モータ9の停止指示が無いと判断して(図4AのS12:NO)、再度処理S1から以降の処理を実行する。この場合、電動モータ9は駆動中である。
【0100】
また、作動油温Tが許容温度範囲III(T2~T3)外にあり(図4AのS2:NO)且つ作動油温Tが許容温度範囲IIIより低い(図4AのS14:YES)場合、制御装置7は、さらに作動油温Tが温度範囲I、IIのいずれかにあるかを判別する。
【0101】
例えば、作動油温Tが温度T1以上で且つ温度T2未満の低温度範囲II内にある場合(図4BのS15:YES)、制御装置7は、モード選択SW5eによるモードの選択状態を確認する。このとき、通常モードがモード選択SW5eにより選択されているときは(図4BのS16:NO)、制御装置7が、アクセルダイヤル5dによるモータ回転数Rの指示範囲Rrangeを、第3回転数R3以上で且つ第5回転数R5以下に設定する(図4BのS18、図3温度範囲IIのS丸印)。
【0102】
対して、ECOモードがモード選択SW5eにより選択されているときは(図4BのS16:YES)、制御装置7が、アクセルダイヤル5dによるモータ回転数Rの指示範囲Rrangeを、第3回転数R3以上で且つ第4回転数R4以下に設定する(図4BのS17、図3温度範囲IIのE丸印)。
【0103】
また、AI-SW45が所定時間以上オフ状態になると(図4BのS19:YES)、
制御装置7は、モータ回転数Rを第3回転数R3に一致するように制御する(図4BのS20、図3温度範囲IIの黒丸印)。この図4Bの処理S19、S20もAI制御である。
【0104】
また、アンロードレバー5c及びアンロード弁58がアンロード位置に切り換わっても(図4BのS21:YES)、制御装置7は、モータ回転数Rを第3回転数R3に一致するように制御する(図4BのS22)。即ち、作動油温Tが許容温度範囲IIIより低い温度範囲IIに有るときは、オペレータによりアンロードレバー5cがアンロード位置に切り換えられて、作業装置20、10を作動させない意図が示されても、制御装置7は、AS(オートストップ)制御を実行せず、電動モータ9を第3回転数R3以上で回転駆動させ続けて、作動油を循環させることにより暖機を行う。図4Bの処理S19~S22は、いわゆる暖機制御である。
【0105】
また、アンロードレバー5cなどがロード位置に有る状態で、アクセルダイヤル5dが操作されると(図4AのS10:YES)、制御装置7は、アクセルダイヤル5dの操作位置に応じてモータ回転数Rの指示値を演算し、当該指示値に一致するようにモータ回転数Rを変更する(図4AのS11)。
【0106】
このとき、作動油温Tが低温度範囲IIにあるため、モード選択SW5eにより通常モードが選択されているときは、図4Bの処理S18で設定された指示範囲Rrange内(R3~R5)で、制御装置7が、アクセルダイヤル5dの操作位置に応じてモータ回転数Rの指示値を演算する。また、モード選択SW5eによりECOモードが選択されているときは、図4Bの処理S17で設定された指示範囲Rrange内(R3~R4)で、制御装置7が、アクセルダイヤル5dの操作位置に応じてモータ回転数Rの指示値を演算する。
【0107】
また、作動油温Tが温度T1未満の極低温度範囲I内にある場合(図4BのS15:NO、T<T1)、制御装置7は、モード選択SW5eにより通常モードとECOモードのいずれが選択されていても、アクセルダイヤル5dによるモータ回転数Rの指示範囲Rrangeを、第3回転数R3以上で且つ第4回転数R4以下に設定する(図4BのS17、図3の極低温度範囲IのS丸印とE丸印)。
【0108】
また、AI-SW45が所定時間以上オフ状態になったり(図4BのS19:YES)、アンロードレバー5cなどがアンロード位置に切り換わったり(図4BのS21:YES)しても、制御装置7は、モータ回転数Rを第3回転数R3に一致するように制御する(図4BのS20、S22、図3の極低温度範囲Iの黒丸印)。即ち、作動油温Tが許容温度範囲III及び低温度範囲IIより低い極低温度範囲Iに有るときは、アンロードレバー5cがアンロード位置に切り換えられて、作業装置20、10を作動させない意図が示されても、制御装置7は、AS(オートストップ)制御を実行せず、電動モータ9を第3回転数R3以上で回転駆動させ続けて、作動油を循環させることにより、暖機を行う。
【0109】
また、アンロードレバー5cなどがロード位置に有る状態で、アクセルダイヤル5dが操作されると(図4AのS10:YES)、制御装置7は、アクセルダイヤル5dの操作位置に応じてモータ回転数Rの指示値を演算し、当該指示値に一致するようにモータ回転数Rを変更する(図4AのS11)。このとき、作動油温Tが極低温度範囲Iにあるため、モード選択SW5eにより通常モードとECOモードのいずれが選択されていても、図4Bの処理S17で設定された指示範囲Rrange内(R3~R4)で、制御装置7が、アクセルダイヤル5dの操作位置に応じてモータ回転数Rの指示値を演算する。
【0110】
また、作動油温Tが許容温度範囲III(T2~T3)外にあり(図4AのS2:NO)且つ作動油温Tが許容温度範囲IIIより高い(図4AのS14:NO)場合、制御装置7は、さらに作動油温Tが温度範囲IV、Vのいずれかにあるかを判別する。
【0111】
例えば、作動油温Tが温度T3より高くて温度T4以下の高温度範囲IV内にある場合(図4CのS23:YES)、制御装置7は、モード選択SW5eによるモードの選択状態を確認する。このとき、通常モードがモード選択SW5eにより選択されているときは(図4CのS24:NO)、制御装置7が、アクセルダイヤル5dによるモータ回転数Rの指示範囲Rrangeを、第3回転数R3以上で且つ第5回転数R5以下に設定する(図4CのS26、図3の高温度範囲IVのS丸印)。
【0112】
対して、ECOモードがモード選択SW5eにより選択されているときは(図4CのS24:YES)、制御装置7は、アクセルダイヤル5dによるモータ回転数Rの指示範囲Rrangeを、第3回転数R3以上で且つ第4回転数R4以下に設定する(図4CのS25、図3の高温度範囲IVのE丸印)。
【0113】
また、AI-SW45が所定時間以上オフ状態になると(図4CのS27:YES)、制御装置7は、モータ回転数Rを第2回転数R2に一致するように制御する(図4CのS28、図3の高温度範囲IVの黒丸印)。この図4Cの処理S27、S28もAI制御である。
【0114】
また、アンロードレバー5c及びアンロード弁58がアンロード位置に切り換わっても(図4CのS29:YES)、制御装置7は、モータ回転数Rを第2回転数R2に一致するように制御する(図4CのS30、図3の高温度範囲IVの黒丸印)。即ち、作動油温Tが許容温度範囲IIIより高い高温度範囲IVに有るときは、アンロードレバー5cがアンロード位置に切り換えられて、作業装置20、10を作動させない意図が示されても、制御装置7は、AS(オートストップ)制御を実行せず、電動モータ9を第3回転数R3より小さい第2回転数R2で回転駆動させ続けて、作動油を循環させることにより、作動油の冷却を行う。図4Cの処理S27~S30は、いわゆる冷却制御である。
【0115】
また、アンロードレバー5cなどがロード位置に有る状態で、アクセルダイヤル5dが操作されると(図4AのS10:YES)、制御装置7は、アクセルダイヤル5dの操作位置に応じてモータ回転数Rの指示値を演算し、当該指示値に一致するようにモータ回転数Rを変更する(図4AのS11)。
【0116】
このとき、作動油温Tが高温度範囲IVにあるため、モード選択SW5eにより通常モードが選択されているときは、図4Cの処理S26で設定された指示範囲Rrange内(R3~R5)で、制御装置7が、アクセルダイヤル5dの操作位置に応じてモータ回転数Rの指示値を演算する。また、モード選択SW5eによりECOモードが選択されているときは、図4Cの処理S25で設定された指示範囲Rrange内(R3~R4)で、制御装置7が、アクセルダイヤル5dの操作位置に応じてモータ回転数Rの指示値を演算する。
【0117】
また、作動油温Tが温度T4より高い極高温度範囲V内にある場合(図4CのS23:NO、T>T4)、制御装置7は、モード選択SW5eにより通常モードとECOモードのいずれが選択されていても、アクセルダイヤル5dによるモータ回転数Rの指示範囲Rrangeの上限値と下限値を、第3回転数R3に設定する(図4CのS31、図3の極高温度範囲VのS丸印とE丸印)。即ち、作動油温Tが極高温度範囲V内にあるときには、アクセルダイヤル5dによるモータ回転数Rの指示範囲Rrangeが、一定の第3回転数R3に設定される。このため、アクセルダイヤル5dを中立位置からいずれの位置へ操作しても、モータ回転数Rの指示値が第3回転数R3になり、電動モータ9の回転数Rが第3回転数R3に制限される。
【0118】
また、AI-SW45が所定時間以上オフ状態になったり(図4CのS27:YES)、アンロードレバー5cなどがアンロード位置に切り換わったり(図4CのS29:YES)しても、制御装置7は、モータ回転数Rを第2回転数R2に一致するように制御する(図4CのS30、図3の極高温度範囲Vの黒丸印)。即ち、作動油温Tが極高温度範囲Vに有るときは、アンロードレバー5cがアンロード位置に切り換えられて、作業装置20、10を作動させない意図が示されても、制御装置7は、AS制御を実行せず、電動モータ9を第2回転数R2で回転駆動させ続けて、作動油を循環させることにより、作動油の冷却を行う。
【0119】
また、アンロードレバー5cなどがロード位置に有る状態で、アクセルダイヤル5dが操作されると(図4AのS10:YES)、制御装置7は、モータ回転数Rの指示値を演算し、当該指示値に一致するようにモータ回転数Rを変更する(図4AのS11)。このとき作動油温Tが極高温度範囲Vにあるため、モード選択SW5eによるモードの選択状態とアクセルダイヤル5dの操作位置とにかかわらず、制御装置7は、図4Cの処理S31で設定された一定値R3を、モータ回転数Rの指示値として決定する。
【0120】
作動油温Tが許容温度範囲IIIより高い温度範囲IV、Vにある場合、制御装置7は、モータ回転数Rを第2回転数R2に一致するように制御したときに、オイルクーラ37のファンモータ37aを所定の回転数で回転駆動させて、作動油を冷却してもよい。即ち、作業装置20、10が作動しないときに、電動モータ9を第2回転数R2で回転させつつ、オイルクーラ37を駆動して、作動油を冷却する。
【0121】
また、作動油温Tが許容温度範囲IIIより低い場合、制御装置7は、モータ回転数Rを第3回転数R3に一致するように制御したときに、オイルクーラ37を停止して、消費電力を低減し、作動油の暖機を促進してもよい。さらに、作動油温Tが許容温度範囲III内にある場合にも、制御装置7は、モータ回転数Rを第1回転数R1又は第2回転数R2に一致するように制御したときに、オイルクーラ37を停止して、消費電力を低減してもよい。
【0122】
以上の実施形態では、作動油温Tの温度範囲を第1~第5温度範囲I~Vの5つに区分した例を示したが、これに限定するわけではない。例えば、許容温度範囲内と許容温度範囲外の2つに、作動油温Tの温度範囲を区分してもよい。また、許容温度範囲内と、許容温度範囲より低い温度範囲と、許容温度範囲より高い温度範囲の3つに、作動油温Tの温度範囲を区分してもよい。さらに、作動油温Tの温度範囲を4つ或いは6つ以上に区分してもよい。また、各温度範囲でAI制御を行う際のモータ回転数Rとして、第2回転数R2と第3回転数R3の2つだけでなく、3つ以上の所定の回転数を設定してもよい。
【0123】
以上の実施形態では、電動モータ9の第2~第4回転数R2~R4を一定値にした例を示したが、これに限定するわけではない。例えば制御装置7が、バッテリユニット30に設けられたバッテリパック31、32の残容量に応じて、第2~第4回転数R2~R4を変更してもよい。具体的には、バッテリパック31、32の残容量が少ない程、第2~第4回転数R2~R4の少なくとも1つを小さく変更してもよい。
【0124】
以上の実施形態では、作業用操作部材として作業用操作レバー5aと走行用操作レバー5bを用い、切換部材及びアンロード用操作部材としてアンロードレバー5cを用い、選択部材としてモード選択SW5eを用い、指示部材としてアクセルダイヤル5dを用いた例を示したが、これらに限定するわけではない。例えば、レバー、ジョイスティック、スライドスイッチ、タンブラスイッチ、押しボタン、ダイヤル、又はキーなどの各種の操作部材を、作業用操作部材、切換部材、アンロード用操作部材、選択部材、及び指示部材として用いてもよい。また、例えばアンロード弁58として、機械的に作動する作動弁或いは電気的に作動する電磁弁を用いてもよい。
【0125】
以上の実施形態では、作業検出装置として、圧力スイッチから成るAI-SW45を用いた例を示したが、これに限定するわけではない。例えば、作業用操作レバー5a及び走行用操作レバー5bの操作の有無を検出するポテンションメータ、センサ、又はスイッチなどを、作業検出装置として用いてもよい。
【0126】
本実施形態の電動作業機1は、以下の構成を備え、効果を奏する。
【0127】
本実施形態の電動作業機1は、機体2と、機体2に搭載されたバッテリユニット30と、バッテリユニット30からの電力により駆動される電動モータ9と、電動モータ9からの動力により作動する油圧機器(油圧モータML、MR、MT、油圧シリンダC1~C5、油圧ポンプP1、P2、コントロールバルブCV)と、油圧機器から供給された作動油の油圧により作動する作業装置20、10(作業装置20、走行装置10)と、電動モータ9の駆動を制御する制御装置7と、作業装置20、10の作動を許可する第1位置と作業装置20、10の作動を許可しない第2位置のいずれかに切り換え可能な切換部材5c、58(アンロードレバー5c、アンロード弁58)と、作動油の温度Tを検出する油温検出装置44と、を備え、制御装置7は、電動モータ9の駆動中に、切換部材5c、58が第2位置に切り換えられ、且つ作動油の温度Tが低温状態でも高温状態でもない所定の許容温度範囲III(所定の温度T2~T3)内にある場合、電動モータ9の回転数Rを電動モータ9の停止状態に相当する所定の第1回転数R1に制御する。
【0128】
上記の構成によれば、オペレータが電動作業機1を操作しないため、切換部材5c、58を作業装置20、10の作動を許可しない第2位置に切り換えたときに、作動油の温度Tが許容温度範囲III内にあれば、電動モータ9の回転数Rが停止状態に相当する第1回転数R1に低下する。このため、バッテリユニット30の電力が電動モータ9で無駄に消費されるのを抑制することができ、電動作業機1において無駄な消費電力を低減し、作業効率を向上させることが可能となる。また、作動油の温度Tが許容温度範囲III外に有る場合、即ち作動油の温度Tが低温状態と高温状態のいずれかに有る場合に、電動モータ9の回転数Rを第1回転数R1に制御しないことで、電動モータ9が完全に停止状態にならずに回転し続けるので、油圧ポンプP1、P2などの油圧機器により作動油を循環させて、作動油を暖機したり冷却したりすることができ、作業効率を向上させることが可能となる。
【0129】
本実施形態では、制御装置7は、電動モータ9の駆動中に、切換部材5c、58が第2位置に切り換えられ、且つ作動油の温度Tが許容温度範囲III内に無い場合、電動モータ9の回転数Rを第1回転数R1より大きく、且つ作業装置20、10により作業を行うときの回転数の下限値以下である所定のアイドリング回転数R2、R3に制御する。
【0130】
上記により、切換部材5c、58が第2位置に切り換えられたときに、作動油の温度Tが許容温度範囲III内に有るか否かに応じて、電動モータ9の回転数Rが第1回転数R1或いはアイドリング回転数R2、R3に低下するので、無駄な消費電力を低減することができる。また、無駄な消費電力を低減した分、作業装置20、10の稼働時間を延ばして、作業効率を向上させることができる。
【0131】
また、本実施形態では、制御装置7は、電動モータ9の駆動中に、切換部材5c、58が第2位置に切り換えられた場合、作動油の温度Tが許容温度範囲IIIより低ければ、電動モータ9の回転数Rを作業装置20、10がアイドリング状態になるための所定の第3回転数R3に一致するように制御し、作動油の温度Tが許容温度範囲IIIより高ければ、電動モータ9の回転数Rを第1回転数R1より大きくて第3回転数R3より小さい所定の第2回転数R2に一致するように制御する。
【0132】
上記により、切換部材5c、58が第2位置に切り換えられ、且つ作動油の温度Tが許容温度範囲IIIより低い場合に、電動モータ9の回転数Rが第3回転数R3に低下するので、無駄な消費電力を低減し、且つ油圧ポンプP1、P2などの油圧機器を作動させて、作動油を循環させることにより暖機することができ、暖機にかかる時間を短縮することもできる。また、切換部材5c、58が第2位置に切り換えられ、且つ作動油の温度Tが許容温度範囲IIIより高い場合に、電動モータ9の回転数Rが第3回転数R3より小さい第2回転数R2に低下するので、無駄な消費電力を低減し、且つ作動油を循環させることにより冷却することができる。さらに、上記のように、切換部材5c、58が第2位置に切り換えられたときに、作動油の温度Tに応じて電動モータ9の回転数Rを第1~第3回転数R1~R3に制御することで、作動油の暖機と冷却のバランスを保ちながら、無駄な消費電力を低減することが可能になる。
【0133】
また、本実施形態では、電動作業機1は、作動油の油圧により作動して、作業装置20、10の作動の有無を検出する作業検出装置(AI-SW)45を備え、第2回転数R2は、作業検出装置45が作業装置20、10の作動の有無を検出可能な作動油の油圧を生じさせることができる電動モータ9の回転数Rに設定されている。これにより、電動モータ9の回転数Rを第2回転数R2に低下させても、作業検出装置45によって作業装置20、10の作動の有無を検出することができる。
【0134】
また、本実施形態では、制御装置7は、電動モータ9の駆動中に、切換部材5c、58が第1位置に有り、且つ作業装置20、10が所定時間以上作動しなかった場合、作動油の温度Tが許容温度範囲IIIより低ければ、電動モータ9の回転数Rを第3回転数R3に一致するように制御し、作動油の温度Tが許容温度範囲III以上であれば、電動モータ9の回転数Rを第2回転数R2に一致するように制御する。これにより、作業装置20、10が所定時間以上作動しなかった場合に、許容温度範囲IIIに対する作動油の温度Tの高低に応じて、電動モータ9の回転数Rを第3回転数R3或いは第2回転数R2に低下させて、無駄な消費電力を低減し、且つ作動油を循環させることにより暖機或いは冷却を行うことができる。
【0135】
また、本実施形態では、電動作業機1は、電動モータ9の回転数Rを指示するために操作される指示部材(アクセルダイヤル)5dを備え、制御装置7は、指示部材5dの操作により指示可能な電動モータ9の回転数Rを作動油の温度Tに応じて設定する。また、制御装置7は、電動モータ9の駆動中に、指示部材5dの操作状態に応じて、電動モータ9の回転数Rの指示値を演算して、当該指示値に一致するように、電動モータ9の回転数Rを制御する。これにより、指示部材5dの操作状態と作動油の温度Tとに応じて、電動モータ9の回転数Rを制御して、作動油を適切な流速及び圧力で循環させることができ、作業装置20、10を安定に作動させることが可能となる。
【0136】
また、本実施形態では、制御装置7は、作業装置20、10がアイドリング状態になるための電動モータ9の第3回転数R3から、設定可能な電動モータ9の回転数の上限値である最大回転数(第5回転数)R5までの範囲内で、指示部材5dの操作により指示可能な電動モータ9の回転数Rの指示範囲Rrangeを作動油の温度Tに応じて設定する。これにより、指示部材5dの操作状態と作動油の温度Tとに応じて、電動モータ9の回転数Rを適切な範囲で変更することができる。
【0137】
また、本実施形態では、電動作業機1は、第1モード(通常モード)と当該第1モードよりも消費電力を低減する第2モード(ECOモード)とのいずれかを選択する選択部材(モード選択SW)5eを備え、制御装置7は、作動油の温度Tが許容温度範囲III内にある場合、第2モードが選択部材5eにより選択されたときの指示部材5dの操作による電動モータ9の回転数Rの指示範囲Rrangeの上限値を、第1モードが選択部材5eにより選択されたときの指示範囲Rrangeの上限値より小さく設定する。これにより、作動油の温度Tが極低温度範囲I及び極高温度範囲Vのいずれにもない場合に、第2モードが選択されたときに、電動モータ9の回転数Rの上限値を、第1モードが選択されたときの回転数Rの上限値より小さく抑えて、消費電力を低減することができる。
【0138】
また、本実施形態では、制御装置7は、作動油の温度Tが許容温度範囲IIIより低い所定の第1温度T1未満である場合、第1モードと第2モードのいずれが選択部材5eにより選択されても、指示部材5dの操作による電動モータ9の回転数Rの指示範囲Rrangeの上限値を最大回転数R5より小さい値に設定する。最大回転数R5は、例えば、作動油の温度Tが許容温度範囲III内にあり且つ第1モードが選択部材5eにより選択されている場合に、指示部材5dにより指示可能な電動モータ9の回転数の上限値である。上記により、作動油の温度Tが極温度範囲Vにあって、作動油の動粘度が高いときに、指示部材5dが最大限操作されても、電動モータ9の回転数Rを最大回転数R5より小さく抑えて、作動油が流れる油圧機器又は油路でキャビテーションが発生するのを防ぎ、且つ消費電力を低減することができる。
【0139】
また、本実施形態では、制御装置7は、作動油の温度Tが許容温度範囲IIIより高い所定の第2温度T4よりも高いときに、第1モードと第2モードのいずれが選択部材5eにより選択されても、指示部材5dにより指示可能な電動モータ9の回転数R(指示範囲Rrangeの上限値及び下限値)を第3回転数R3に設定する。これにより、作動油の温度Tが極高温度範囲Vにあるときに、高温状態の作動油が流れて、油圧機器又は油路が摩耗したり損傷したりするのを防ぐことができる。
【0140】
また、本実施形態では、電動作業機1は、作動油を冷却する冷却装置(オイルクーラ)37を備え、制御装置7は、油温検出装置44により検出された作動油の温度Tが許容温度範囲IIIより高いときに、冷却装置37を駆動することにより作動油を冷却し、作動油の温度Tが許容温度範囲III以下のときに、冷却装置37を停止する。これにより、作動油の温度Tが高い場合に、切換部材5c、58が第2位置に切り換えられたり、作業装置20、10が所定時間以上作動しなかったりしたときに、電動モータ9を低速な第2回転数R2で回転させて、無駄な消費電力を低減し、且つ冷却装置37を併用して、作動油を許容温度範囲IIIまで冷却するのにかかる時間を短縮することができる。また、作動油の温度Tが低い場合に、冷却装置37を停止して、無駄な消費電力を低減し、且つ電動モータ9を回転させて、作動油を循環させることにより暖機することができる。
【0141】
さらに、本実施形態では、電動作業機1は、バッテリユニット30から電動モータ9に供給する電力を調整するインバータ38と、電動モータ9の回転数Rを検出する回転数検出装置42と、作業装置20、10の作動を操作する作業用操作部材5a、5b(作業用操作レバー5a、走行用操作レバー5b)と、を備え、切換部材5c、58は、作業装置20、10の作動を許可するロード位置と作業装置20、10の作動を許可しないアンロード位置のいずれかに切り換え操作可能なアンロード用操作部材5cを含み、制御装置7は、回転数検出装置42により検出された電動モータ9の回転数Rに基づいて、インバータ38から電動モータ9に供給する電力を調整することで、電動モータ9の回転数Rを制御する。
【0142】
上記により、アンロード用操作部材5cをロード位置とアンロード位置のいずれかに切り換え操作することで、作業装置20、10の作動を許可し又は許可しないようにすることができる。また、電動モータ9の回転数Rを指示部材5dによる指示値又は所定の回転数R1~R3に確実に設定することができる。また、作業装置20、10の作動の有無に対応する作業用操作部材5a、5bの操作の有無を、AI-SW45により検出することができる。さらに、インバータ38によりバッテリユニット30から電動モータ9への電力供給を続けた状態で、電動モータ9の回転数Rを第1回転数R1に制御することで、バッテリユニットか30から電動モータ9への電力供給を遮断する場合よりも、その後電動モータ9の回転数Rを上昇させる際に消費電力を低減することができ、また電動モータ9の即応性を向上させることができる。
【0143】
以上の実施形態では、本発明をバックホー等の電動作業機1に適用する場合の例について説明したが、本発明の適用対象はこれに限らず、例えば、ホイールローダ、コンパクトトラックローダ、スキッドステアローダ等の他の建設機械に適用してもよく、トラクター、コンバイン、田植機、芝刈機等の農業機械に適用してもよい。
【符号の説明】
【0144】
1 電動作業機
2 機体
5a 作業用操作レバー(作業用操作部材)
5b 走行用操作レバー(作業用操作部材)
5c アンロードレバー(切換部材、アンロード用操作部材)
5d アクセルダイヤル(指示部材)
5e モード選択SW(モード選択スイッチ、選択部材)
7 制御装置
9 電動モータ
10 走行装置(作業装置)
20 作業装置
30 バッテリユニット
37 オイルクーラ(冷却装置)
38 インバータ
42 回転数検出装置
44 油温検出装置
45 AI-SW(アイドリングスイッチ、作業検出装置)
58 アンロード弁(切換部材)
C1~C5 油圧シリンダ
CV コントロールバルブ
ML、MR、MT 油圧モータ
P1、P2 油圧ポンプ
R 回転数
R1 第1回転数
R2 第2回転数
R3 第3回転数
R5 最大回転数、第5回転数
Rrange 指示範囲
T 作動油の温度
T1 第1温度
T4 第2温度
III(T2~T3) 許容温度範囲
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5