IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-圧縮機 図1
  • 特許-圧縮機 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-14
(45)【発行日】2025-07-23
(54)【発明の名称】圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/44 20060101AFI20250715BHJP
【FI】
F04D29/44 P
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022151351
(22)【出願日】2022-09-22
(65)【公開番号】P2024046142
(43)【公開日】2024-04-03
【審査請求日】2024-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】後藤 啓一
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-234813(JP,A)
【文献】国際公開第2015/001644(WO,A1)
【文献】特開2011-185168(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0079299(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103277342(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第115030918(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転翼を収納するハウジングと、
固定翼を有し、前記ハウジングの内周面に設けられた筒部と、
PCV通路と、を具備し、
前記ハウジングは、前記ハウジングの壁を貫通する第1開口部を有し、
前記筒部は、前記筒部の壁を貫通し、かつ前記第1開口部に重なる第2開口部を有し、
前記PCV通路は前記第1開口部および前記第2開口部に挿入され、
前記PCV通路の端部は、前記筒部の外面と前記筒部の内面との間に位置する圧縮機。
【請求項2】
前記第2開口部の幅は前記第1開口部の幅よりも大きい請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】
前記第1開口部および前記第2開口部は、空気の流れる方向において前記回転翼および前記固定翼よりも上流側に位置する請求項1または2に記載の圧縮機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機によって空気を過給することで、内燃機関の出力を向上させることができる。空気の逆流を抑制するため、圧縮機のコンプレッサハウジングに固定翼を設けることがある(例えば特許文献1など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-059988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ブローバイガスを還流させるために、PCV(Positive crankcase ventilation)通路を吸気通路に接続することがある。PCV通路を流れるガス(PCVガス)は空気とともに圧縮機に流入する。PCVガスに比べて、空気は低温である。PCVガスと空気とが合流することで、PCVガスが冷却され、PCVガス内水分が凝縮水となって析出される。凝縮水が凍結し、PCV通路の出口付近に氷が付着する恐れがある。氷が剥がれ、インペラに接触することでインペラが破損する可能性もある。そこで、PCV通路の出口付近における着氷を抑制することが可能な圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的は、回転翼を収納するハウジングと、固定翼を有し、前記ハウジングの内周面に設けられた筒部と、PCV通路と、を具備し、前記ハウジングは、前記ハウジングの壁を貫通する第1開口部を有し、前記筒部は、前記筒部の壁を貫通し、かつ前記第1開口部に重なる第2開口部を有し、前記PCV通路は前記第1開口部および前記第2開口部に挿入され、前記PCV通路の端部は、前記筒部の外面と前記筒部の内面との間に位置する圧縮機によって達成することができる。
【0006】
前記第2開口部の幅は前記第1開口部の幅よりも大きくてもよい。
【0007】
前記第1開口部および前記第2開口部は、空気の流れる方向において前記回転翼および前記固定翼よりも上流側に位置してもよい。
【発明の効果】
【0008】
PCV通路の出口付近における着氷を抑制することが可能な圧縮機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1(a)は実施形態に係る圧縮機を例示する模式図である。図1(b)はPCV通路の出口付近を拡大した図である。
図2図2(a)は比較例1に係る圧縮機を例示する図である。図2(b)は比較例2に係る圧縮機を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1(a)は実施形態に係る圧縮機100を例示する模式図である。圧縮機100は、車両に搭載される過給機の一部である。圧縮機100は、コンプレッサハウジング10、インペラ12(回転翼)、筒部14、PCV通路16を有する。圧縮機100には図1中の矢印のようにガスが流れ込む。
【0011】
コンプレッサハウジング10は内部に空洞を有する。インペラ12はコンプレッサハウジング10の内部に収納され、不図示のタービンと連結されている。インペラ12は回転可能である。
【0012】
コンプレッサハウジング10に筒部14が取り付けられている。筒部14はコンプレッサハウジング10の内周面に圧入される。筒部14の外周面はコンプレッサハウジング10の内周面に接触する。筒部14の内周面に、複数のインレットスプリッタ15(固定翼)が設けられている。インレットスプリッタ15は、例えば空気の流れる方向に沿って延伸する。複数のインレットスプリッタ15は、筒部14の周方向に沿って、互いに離間して配置されている。
【0013】
PCV通路16は、ユニオン17とホース18とを有する。PCVガスの流れる方向において、ユニオン17はホース18より下流側に位置し、ホース18はユニオン17より上流側に位置する。ユニオン17の1つの端部は、コンプレッサハウジング10および筒部14のうち、インペラ12およびインレットスプリッタ15よりも上流の位置に接続されている。ユニオン17のもう1つの端部にホース18が接続されている。ホース18は不図示の内燃機関に接続されている。ユニオン17は金属製である。ホース18は例えばゴム製である。PCVガスは、PCV通路16を流れて、コンプレッサハウジング10の内部に導入される。
【0014】
コンプレッサハウジング10の1つの端部に吸気通路20が接続されている。吸気通路20を通じて、コンプレッサハウジング10に空気が流入する。
【0015】
空気の流れる方向において、上流側から下流側にかけて、インレットスプリッタ15およびインペラ12が順番に配置されている。空気はインレットスプリッタ15およびインペラ12を通過して、不図示の内燃機関に導入される。PCVガスは、PCV通路16を流れ、空気と合流し、内燃機関に導入される。
【0016】
内燃機関の排気がタービンに吹き付けることで、タービンが回転する。インペラ12はタービンとともに回転し、空気を圧縮する。
【0017】
図1(b)はPCV通路16の出口付近を拡大した図である。図中の矢印はガスの流れを表す。図1(b)に示すように、コンプレッサハウジング10は開口部11(第1開口部)を有する。開口部11はコンプレッサハウジング10の壁を貫通する穴である。筒部14は開口部13(第2開口部)を有する。開口部13は筒部14の壁を貫通する穴であり、開口部11に重なる。開口部11と開口部13とが1つの穴を形成する。開口部13の直径D1(幅)は開口部11の直径D2(幅)よりも大きい。開口部11および13は、インペラ12およびインレットスプリッタ15よりも上流側に位置する。
【0018】
ユニオン17は、コンプレッサハウジング10の開口部11に圧入され、筒部14の開口部13の内側まで突出する。PCV通路16の端部16a(PCV通路16の出口)は、筒部14の壁の外面14aよりも筒部14の内側に位置し、かつ筒部14の壁の内面14bよりも外側に位置する。PCV通路16の内径は、開口部11の直径D2および開口部13の直径D1より小さい。
【0019】
PCVガスは、PCV通路16を流れ、PCV通路16の端部16aを通り、空気に合流する。PCVガス中の水分が凍結し氷が発生すると、氷によって圧縮機100の部品が破損する恐れがある。例えばインペラ12に氷が噛みこんで破損する恐れがある。
【0020】
図2(a)は比較例1に係る圧縮機を例示する図であり、PCV通路16の出口付近を図示している。図2(a)の例ではPCV通路16の端部16aが、筒部14の外面14aよりも外側に位置する。筒部14の開口部13は、コンプレッサハウジング10の開口部11より広い。PCVガスが端部16aから流出するとき、PCV通路16から筒部14の開口部13へと広がる。PCVガスが広がることで、流速が低下する。流速の低下によってPCVガス中の水分が凍結し、端部16aまたは筒部14の開口部13の端部に付着する可能性がある。
【0021】
図2(b)は比較例2に係る圧縮機を例示する図であり、PCV通路16の出口付近を図示している。図2(b)の例ではPCV通路16の端部16aが、筒部14の内面14bよりも内側に位置する。PCVガスの流速の低下は抑制される。しかしPCV通路16のユニオン17は、内面14bより内側に位置し、コンプレッサハウジング10の内部の空洞まで突出する。コンプレッサハウジング10内の空気がユニオン17に衝突する。空気の流れが阻害されてしまう。
【0022】
本実施形態によれば、図1(b)に示すように、PCV通路16はコンプレッサハウジング10の開口部11および筒部14の開口部13に挿入されている。PCV通路16の端部16aは、筒部14の外面14aと内面14bとの間に位置する。端部16aが外面14aよりも内側に位置するため、PCVガスは、端部16aを通った直後に空気に合流する。比較例1のようなPCVガスが広がることによる流速の低下が発生しにくい。流速の低下による水分の凍結が抑制される。端部16a付近への着氷を抑制することができる。端部16aが内面14bよりも外側に位置するため、PCV通路16と空気との衝突が抑制され、空気の流れが阻害されにくい。
【0023】
PCV通路16の圧入深さは、筒部14の外面14aから内面14bまでである。PCV通路16の端部16aは内面14bと同じ位置にあってもよい。端部16aは外面14aと同じ位置にあってもよい。しかし端部16aが外面14aと同じ位置にある場合、PCV通路16が抜けやすくなる。端部16aが外面14aより深い位置にあることで、PCV通路16が筒部14に圧入される。PCV通路16の抜け落ち、回転などが抑制される。
【0024】
筒部14の開口部13が、コンプレッサハウジング10の開口部11よりも小さい場合、開口部11と開口部13との間に筒部14が突出して段差を形成する。当該段差によって、PCVガスの流れが阻害され、流速が低下してしまう。段差に水分がたまり、凍結する恐れもある。そこで、図1(b)のように、筒部14の開口部13の幅(直径D1)を、コンプレッサハウジング10の開口部11の幅(直径D2)よりも大きくする。PCVガスの流れが阻害されにくい。ガスおよび水分の対流も抑制される。
【0025】
開口部11および開口部13は、空気の流れる方向においてインペラ12およびインレットスプリッタ15よりも上流側に位置する。PCVガスは、インペラ12およびインレットスプリッタ15よりも上流側において空気に合流する。PCV通路16の端部16aは内面14bからは突出しない。空気は、PCV通路16に衝突せずにインペラ12に導入される。圧縮機100が効果的に動作する。インレットスプリッタ15は空気の流れを制御し、例えばインペラ12側からの空気の逆流を抑制する。ガスがコンプレッサハウジング10内を流れやすくなり、滞留が抑制される。PCV通路16の接続位置付近でのガスの滞留が抑制されることで、氷の発生が効果的に抑制される。
【0026】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0027】
10 コンプレッサハウジング
11、13 開口部
12 インペラ
14 筒部
14a 外面
14b 内面
15 インレットスプリッタ
16 PCV通路
16a 端部
17 ユニオン
18 ホース
20 吸気通路
100 圧縮機
図1
図2