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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-14
(45)【発行日】2025-07-23
(54)【発明の名称】運搬用容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 6/18 20060101AFI20250715BHJP
【FI】
B65D6/18 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020187500
(22)【出願日】2020-11-10
(65)【公開番号】P2022076869
(43)【公開日】2022-05-20
【審査請求日】2023-10-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000010054
【氏名又は名称】岐阜プラスチック工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢崎 義久
【審査官】▲高▼木 直史
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-255241(JP,A)
【文献】特開2006-089067(JP,A)
【文献】特開2007-176562(JP,A)
【文献】特開平07-329960(JP,A)
【文献】特開2012-020743(JP,A)
【文献】特開2020-117312(JP,A)
【文献】特開2018-115021(JP,A)
【文献】特開2019-069785(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 6/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状の底部と、
前記底部の互いに平行な2辺部分に連結される一対の第1側板と、
前記底部に互いに平行な別の2辺部分に連結される一対の第2側板と、を備え、
前記一対の第1側板はそれぞれ、前記底部に対して回転自在に連結される下端部を有し、起立姿勢と倒伏姿勢との間で起倒自在となるように構成され、
前記一対の第2側板はそれぞれ、前記底部に対して回転自在に連結される下端部を有し、起立姿勢と倒伏姿勢との間で起倒自在となるように構成された運搬用容器であって、
前記一対の第1側板のそれぞれを構成する側板と、前記側板が連結される前記底部の端縁部とにおいて、
前記側板の前記下端部は、起倒の中心となる軸部を有し、
前記底部の前記端縁部は、前記側板が前記倒伏姿勢から前記起立姿勢に至る途中で前記下端部と摺接し、前記側板をその全体が上方に移動するように乗り上げさせる段部と、前記側板の移動に伴う前記軸部の上方への移動をガイドするガイド面と、前記ガイド面を外側方に開放する空間部と、を有し、
前記側板は、前記起立姿勢に至ったときに、前記下端部の一部が前記端縁部の上面に当接して自立するように構成されており、
前記ガイド面は、凹曲面を含み、
前記軸部は、前記側板が前記段部に摺接してせり上がることに伴って、前記ガイド面の前記凹曲面に摺接して上方に移動するように構成されており、
前記軸部の外周面は、前記側板が前記起立姿勢にあるときに上方を向く第1凸曲面と、前記側板が前記起立姿勢にあるときに内側方を向き、かつ前記第1凸曲面よりも大きな曲率半径を有する第2凸曲面とを含み、
前記側板が回転するときに、前記第2凸曲面が、前記ガイド面の前記凹曲面に摺接する
運搬用容器。
【請求項2】
前記下端部の前記一部は、
前記側板が前記起立姿勢にあるときに下方に突出した姿勢となる自立リブである
請求項1の運搬用容器
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、運搬用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された運搬用容器(折り畳みコンテナー)は、底部と、底部の上に倒すことが可能な二対の側板とを備えている。二対の側板に含まれる一対の長側板は、互いの一部が重なるように底部の上に倒すことができ、長側板の下端部に設けられたヒンジ部は、底部に対して所定範囲で上下動可能に構成されている。
【0003】
そのため、上記した従来の運搬用容器では、一対の長側板のうち先に倒した方の長側板(下側の長側板)のヒンジ部が、後に倒した方の長側板(上側の長側板)のヒンジ部に対して、低く位置する。つまり、上側の長側板のヒンジ部は、底部に対して上下動可能な範囲のうち上側の領域に位置し、下側の長側板のヒンジ部は、底部に対して上下動可能な範囲のうち下側の領域に位置する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4944728号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来の運搬用容器において、底部の上で重なっている一対の長側板を起立させる場合には、上側の長側板をまず起立させ、次いで、下側の長側板を起立させる。
【0006】
ここで、下側の長側板を起立させるときには、下側の長側板のヒンジ部が、上下動可能な範囲のうち下側の領域にあるため、この長側板を使用者が持ち上げてヒンジ部を上方に移動させたうえで、ヒンジ部を中心に全体を回転させる必要がある。
【0007】
本開示が解決しようとする課題は、底部の上に重なった一対の側板のうち下側の側板を、簡単にかつ円滑に回転させて起立させることができる運搬用容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一様態に係る運搬用容器は、矩形状の底部と、前記底部の互いに平行な2辺部分に連結される一対の第1側板と、前記底部に互いに平行な別の2辺部分に連結される一対の第2側板と、を備え、前記一対の第1側板はそれぞれ、前記底部に対して回転自在に連結される下端部を有し、起立姿勢と倒伏姿勢との間で起倒自在となるように構成され、前記一対の第2側板はそれぞれ、前記底部に対して回転自在に連結される下端部を有し、起立姿勢と倒伏姿勢との間で起倒自在となるように構成された運搬用容器である。前記一対の第1側板のそれぞれを構成する側板と、前記側板が連結される前記底部の端縁部とにおいて、前記側板の前記下端部は、起倒の中心となる軸部を有し、前記底部の前記端縁部は、前記側板が前記倒伏姿勢から前記起立姿勢に至る途中で前記下端部と摺接し、前記側板をその全体が上方に移動するように乗り上げさせる段部と、前記側板の移動に伴う前記軸部の上方への移動をガイドするガイド面とを有し、前記側板は、前記起立姿勢に至ったときに、前記下端部の一部が前記端縁部の上面に当接して自立するように構成されている。
【発明の効果】
【0009】
本開示は、底部の上に重なった一対の側板のうち下側の側板を、簡単にかつ円滑に回転させて起立させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一実施形態の運搬用容器の斜視図である。
図2図2は、同上の運搬用容器が備える側板と底部との連結部分を一部破断して示す側面図である。
図3図3Aは、図2のA-A線断面図である。図3Bは、図3Aにおいて側板が傾いた状態を示す断面図である。図3Cは、図3Aにおいて側板が倒れた状態を示す断面図である。
図4図4Aは、図2のB-B線断面図である。図4Bは、図4Aにおいて側板が傾いた状態を示す断面図である。図4Cは、図4Aにおいて側板が倒れた状態を示す断面図である。
図5図5Aは、図2のC-C線断面図である。図5Bは、図5Aにおいて側板が傾いた状態を示す断面図である。図5Cは、図5Aにおいて側板が倒れた状態を示す断面図である。
図6図6Aは、図2のD-D線断面図である。図6Bは、図6Aにおいて側板が傾いた状態を示す断面図である。図6Cは、図6Aにおいて側板が倒れた状態を示す断面図である。
図7図7は、同上の側板の下端部と底部の端縁部とを、一部破断して示す側面図である。
図8図8は、同上の側板の下端部を示す下面図である。
図9図9は、同上の底部の端縁部近傍を一部破断して示す上面図である。
図10図10Aは、変形例の要部を示す断面図である。図10Bは、図10Aにおいて側板が傾いた状態を示す断面図である。図10Cは、図10Aにおいて側板が倒れた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[一実施形態]
図1は、一実施形態の運搬用容器1の全体を示している。一実施形態の運搬用容器1は、上方に開口した箱型の容器であって、その全体が合成樹脂で形成されている。
【0012】
(運搬用容器の全体構造)
一実施形態の運搬用容器1は、平板状の底部2と、同じく平板状の二対の側板3,4とを備える。
【0013】
底部2は、矩形状の外形を有し、その外周縁には直線状の4辺部分が含まれている。底部2の4辺部分は、互いに平行な長辺側の2辺部分と、互いに平行な短辺側の2辺部分とで構成されている。
【0014】
二対の側板3,4は、互いに平行な姿勢で起立することができる一対の側板3と、互いに平行な姿勢で起立することができる一対の側板4とで構成されている。一対の側板3が対向する方向と、一対の側板4が対向する方向とは、互いに直交している。
【0015】
一対の側板3は、底部2が有する長辺側の2辺部分に対して、それぞれ所定範囲内で回転自在に連結されている。一対の側板3は、言い換えれば一対の長側板3であり、更に言い換えれば一対の第1側板3である。
【0016】
一対の側板3は、それぞれ矩形状の外形を有し、より詳細には、横に長い長方形状の外形を有する。一対の側板3の下端部31は、底部2が有する一対の端縁部21に対して、それぞれ回転自在に連結されている。各側板3の下端部31は、側板3が起立した姿勢(以下「起立姿勢」という。)にあるときに、側板3の下端領域を構成する横に長い直線状の部分である。
【0017】
一対の側板4は、底部2が有する短辺側の2辺部分に対して、それぞれ所定範囲内で回転自在に連結されている。一対の側板4は、言い換えれば、一対の短側板4であり、更に言い換えれば、一対の第2側板4である。
【0018】
一対の側板4は、それぞれ矩形状の外形を有する。一対の側板4の下端部41は、底部2が有する一対の端縁部22に対して、それぞれ回転自在に連結されている。各側板4の下端部41は、側板4が起立した姿勢(以下「起立姿勢」という。)にあるときに、側板4の下端領域を構成する横に長い直線状の部分である。
【0019】
底部2が有する一対の端縁部21と一対の端縁部22はそれぞれ、底部2の他の部分(つまり、底部2のうち一対の端縁部21と一対の端縁部22に囲まれ、主体を構成する部分)よりも高い位置にまで隆起した土手状の形状を有する。一対の端縁部21は、長辺側の一対の端縁部21であり、互いに平行に位置している。一対の端縁部22は、短辺側の一対の端縁部22であり、互いに平行に位置している。一対の端縁部21が対向する方向と、一対の端縁部22が対向する方向とは、互いに直交している。
【0020】
長辺側の一対の端縁部21と、短辺側の一対の端縁部22とは、底部2の外周縁部において、周方向に交互に位置している。周方向において互いに隣接する長辺側の端縁部21と短辺側の端縁部22とは、L字状に連続している。これら二対の端縁部21,22は、その全体が平面視矩形状となるように、全周にわたって連続している。
【0021】
長辺側の一対の端縁部21は、短辺側の一対の端縁部22よりも高く隆起するように形成されている。長辺側の端縁部21は、短辺側の端縁部22よりも高い位置に上面を有する。長辺側の一対の端縁部21の高さは互いに同一であり、短辺側の一対の端縁部21の高さは互いに同一である。
【0022】
一実施形態の運搬用容器1において、二対の側板3,4はそれぞれ、底部2の上方に重なるように直角に倒れることが可能である。本文中で用いる直角の文言は、厳密な意味での直角に限定されず、略直角な場合を含む。
【0023】
二対の側板3,4を起立姿勢から倒す順は、まず短辺側の一対の側板4を底部2の上に重なるように倒し、次いで長辺側の一対の側板3を底部2の上に重なるように倒すように設定されている。短辺側の一対の側板4を倒した段階で、一対の側板4は、互いの先端部が重なり合う。ここでの側板4の先端部は、側板4が起立姿勢にあるときの上端部である。一対の側板4を、互いに重なり合わないように設けることも可能である。短辺側の一対の側板4を倒した段階で、長辺側の一対の側板3は、それぞれ対応する端縁部21の上で自立状態を保持している。
【0024】
長辺側の一対の側板3を倒した段階で、一対の側板3は、互いの主要部分が上下に重なり合う姿勢となる。ここでの側板3の主要部分は、側板3のうち少なくとも下端部31を除いた部分である。上下に重なる一対の側板3は、ともに底部2と平行な倒伏姿勢にある。一対の側板3のうち先に倒した側板3が下に位置し、後に倒した側板3が上に位置する。本文中で用いる平行の文言は、厳密な意味での平行に限定されず、略平行な場合を含む。
【0025】
一実施形態の運搬用容器1は、底部2の上に重なった一対の側板3のうち、下側の側板3(つまり先に倒した側の側板3)を、簡単にかつ円滑に回転させて起立させることができるように構成されている。以下、そのための具体的な構造について説明する。
【0026】
(側板の下端部)
まず、側板3の下端部31の構造について説明する。側板3の説明における上下方向は、側板3が起立姿勢にあるときを基準とする。
【0027】
図7等に示すように、側板3の下端部31は、水平方向に長い直線状の下端部本体32と、下端部本体32から下方に突出する複数のヒンジ部33と、下端部本体32から下方に突出する複数の係止部36とを有する。
【0028】
複数のヒンジ部33は、下端部31の長手方向に互いに距離をあけて位置する5つのヒンジ部33であり、側板3を底部2に対して回転自在に連結させるために設けられている。以下において、下端部31の長手方向を第1方向D1と称する。
【0029】
ヒンジ部33は、下端部本体32から下方に突出する支柱34と、支柱34の下端部に設けられた2つの突起状の軸部35とを含む。2つの軸部35は、第1方向D1において互いに離れる側に突出している。これらの軸部35が、側板3の起倒の中心となる。
【0030】
複数の係止部36は、第1方向D1に互いに距離をあけて位置する4つの係止部36であり、起立姿勢にあるときの側板3が底部2に対して浮き上がることを抑えるために設けられている。
【0031】
図3A等に示すように、係止部36は、下端部本体32から下方に突出する縦片361と、縦片361の一部から水平方向に突出する横片362とを含んだ、L字状の部分である。係止部36は、下端部本体32のうち内側方(言い換えれば底部2の主体を構成する部分に近い側)の端部から、下方に突出している。横片362は、縦片361の下端部から外側方(言い換えれば底部2の主体を構成する部分から離れる側)に突出している。
【0032】
5つのヒンジ部33と、4つの係止部36は、第1方向D1において交互に位置している(図7等参照)。5つのヒンジ部33のうち、第1方向D1において互いに隣接する2つのヒンジ部33の間に、4つの係止部36のうち1つが位置している。
【0033】
図8等に示すように、側板3の下端部31は、複数の凹部37と、複数の自立リブ38とを更に有する。
【0034】
複数の凹部37は、第1方向D1に互いに距離をあけて位置する4つの凹部37である。凹部37は、下端部本体32の下面から上方に凹んだ部分である。5つのヒンジ部33のうち、第1方向D1の一端側に位置するヒンジ部33とこれに隣接するヒンジ部33との間に、2つの凹部37が、第1方向D1に並んで位置している。第1方向D1において、並んで位置する2つの凹部37の間に、複数の係止部36のうち1つが位置している。
【0035】
同様に、5つのヒンジ部33のうち、第1方向D1の他端側に位置するヒンジ部33とこれに隣接するヒンジ部33との間に、別の2つの凹部37が、第1方向D1に並んで位置している。第1方向D1において、並んで位置する別の2つの凹部37の間に、複数の係止部36のうち別の1つが位置している。
【0036】
複数の自立リブ38は、上記した4つの凹部37の外側方に一対一で位置する。複数の自立リブ38は、第1方向D1に互いに距離をあけて位置する4つの自立リブ38である。自立リブ38は、下端部本体32から下方に突出している。
【0037】
5つのヒンジ部33のうち、第1方向D1の一端側に位置するヒンジ部33とこれに隣接するヒンジ部33との間に、2つの自立リブ38が、第1方向D1に並んで位置している。第1方向D1において、並んで位置する2つの自立リブ38の間に、複数の係止部36のうち1つが位置している。当該1つの係止部36の縦片361は、その両側の2つの自立リブ38に対して、第1方向D1において一直線状に並んで位置している。
【0038】
同様に、5つのヒンジ部33のうち、第1方向D1の他端側に位置するヒンジ部33とこれに隣接するヒンジ部33との間に、別の2つの自立リブ38が、第1方向D1に並んで位置している。第1方向D1において、並んで位置する別の2つの自立リブ38の間に、複数の係止部36のうち別の1つが位置している。当該別の1つの係止部36の縦片361は、その両側の2つの自立リブ38に対して、第1方向D1において一直線状に並んで位置している。
【0039】
(底部の端縁部)
次に、底部2の端縁部21について説明する。底部2の説明における上下方向は、底部2が水平面に設置されたときを基準とする。
【0040】
図7等に示すように、底部2の端縁部21は、水平方向に長い土手状の端縁部本体210と、端縁部本体210に設けられた複数の底側ヒンジ部23と、端縁部本体210に設けられた複数の底側係止部26とを有する。
【0041】
複数の底側ヒンジ部23は、端縁部21の長手方向に互いに距離をあけて位置する5つの底側ヒンジ部23であり、側板3を底部2に対して回転自在に連結させるために設けられている。以下において、端縁部21の長手方向を第2方向D2と称する。端縁部21に側板3が連結された状態で、第2方向D2は第1方向D1と一致する。
【0042】
底側ヒンジ部23は、側板3のヒンジ部33が上方から挿し込まれ、かつ回動自在に引っ掛かるように設けられている。底側ヒンジ部23は、上方及び内側方に開口した凹状の部分である。底側ヒンジ部23の上方への開口を通じて、底側ヒンジ部23内にヒンジ部33を挿し込むことができ、かつ、底側ヒンジ部23の内側方への開口を通じて、ヒンジ部33を直角に倒すことができる。
【0043】
凹状である底側ヒンジ部23の内面には、ヒンジ部33の2つの軸部35が一対一で当たるように、第2方向D2に距離をあけて2つの規制部24が設けられている。規制部24は、底側ヒンジ部23の第2方向D2の両端に位置し、底側ヒンジ部23の底部から起立するように設けられている。規制部24は、ガイド部241と抜け止め部245とを含む(図4等参照)。
【0044】
ガイド部241の外側方を向く面が、突起状の軸部35に摺接してこれをガイドするように設けられた凹曲面状のガイド面25である。ガイド面25は、使用者が側板3を回転操作するときの軸部35の移動を、円滑にガイドするように構成されている。ガイド面25は、傾斜した第1ガイド面251と、凹曲面状の第2ガイド面252と、鉛直な第3ガイド面253とを含む。第1ガイド面251は、内側方の部分ほど上方に位置するように、その全体が傾斜している。第2ガイド面252は、第1ガイド面251の上端と第3ガイド面253の下端とを滑らかにつなぐように、円弧状に湾曲している。
【0045】
抜け止め部245は、ガイド部241の上側に設けられている。抜け止め部245はガイド部241と一つながりに形成されている。抜け止め部245は、その下方のガイド部241よりも外側方に張り出したフック状の形状を有する。抜け止め部245に対して軸部35が下方から引っ掛かることで、側板3は底部2に対して抜け止めされる。
【0046】
複数の底側係止部26は、第2方向D2に互いに距離をあけて位置する4つの底側係止部26であり、側板3が起立姿勢にあるときに、側板3の4つの係止部36が一対一で係止するように構成されている(図3A等参照)。これにより、底部2に対して側板3が浮き上がることが抑えられる。底側係止部26は、係止部36の横片362が内側方から挿し込まれる構造を有し、かつ挿し込まれた横片362が上方に抜けないように横片362を係止する構造を有している。底側係止部26は、内側方と外側方に開口した凹状の部分である。底側係止部26の内側方の開口部分の上縁に、底側係止部26に挿し込まれた横片362が下方から係止することで、側板3の浮き上がりが抑えられる。
【0047】
上記の5つの底側ヒンジ部23と4つの底側係止部26は、第2方向D2において交互に位置している。5つの底側ヒンジ部23のうち、第2方向D2において互いに隣接する2つの底側ヒンジ部23の間に、4つの底側係止部26のうち1つが位置している。
【0048】
図9等に示すように、底部2の端縁部21は、複数の段部27を更に有する。複数の段部27は、側板3が倒伏姿勢から起立姿勢に至る途中で、側板3の下端部31の一部に摺接し、側板3を乗り上げさせるための部分である。側板3は、その全体が上方に移動するように、これら複数の段部27に乗り上がる。
【0049】
複数の段部27は、第2方向D2に互いに距離をあけて位置する6つの段部27である。6つの段部27は、5つの底側ヒンジ部23のうち中央の底側ヒンジ部23とこれに隣接する1つの底側ヒンジ部23との間に設けられた2つの段部27と、中央の底側ヒンジ部23とこれに隣接するもう1つの底側ヒンジ部23との間に設けられた2つの段部27と、5つの底側ヒンジ部23を挟んだ両端の位置に設けられた2つの段部27とで、構成されている。中央の底側ヒンジ部23を挟んだ両側において、互いに隣接する2つの段部27の間には1つの底側係止部26が位置している。
【0050】
段部27の内側方の端部には、側板3の下端部31が摺接する傾斜面270が設けられている。傾斜面270は、外側方の部分ほど上方に位置するように、その全体が傾斜している(図5A図5B及び図5C参照)。段部27の上面のうち、傾斜面270よりも外側方の部分は、平坦な面で構成されている。
【0051】
5つの底側ヒンジ部23のうち、両端の底側ヒンジ部23とこれに隣接する底側ヒンジ部23との間の2つの部分28(図9参照)には、側板3を乗り上げさせるための段部27は設けられていない。つまり、この2つの部分28には、側板3が摺接するための傾斜面270は設けられていない。各部分28の上面は平坦である。
【0052】
以上の構成を備える一実施形態の運搬用容器1においては、側板3を倒伏姿勢から起立姿勢に回転させるときに、側板3が自ずとせり上がる機能(以下「側板せり上がり機能」という。)と、起立姿勢において側板3が安定的に自立する機能(以下「側板自立機能」という。)と、起立姿勢において側板3の浮き上がりが抑えられる機能(以下「側板浮き上がり抑制機能」という。)とが、それぞれ発揮される。以下、各機能について説明する。
【0053】
(側板せり上がり機能)
図5C図5B図5Aをこの順に見て理解できるように、側板3が倒伏姿勢から起立姿勢にまで回転する途中で、側板3の下端部31の一部は、底部2の端縁部21の段部27に当たり、傾斜面270に摺接してせり上がるように構成されている。端縁部21のうち、側板3の下端部31が最初に当たる部分は、段部27の傾斜面270でもよいし、傾斜面270よりも下側の部分でもよい。ここでの下端部31の一部は、下端部31の外側方の端部である。図4C図4B図4Aをこの順に見て理解できるように、側板3のせり上がりにより、側板3が有する各軸部35は、倒伏姿勢から起立姿勢に至る途中で上方に持ち上げられる。
【0054】
各軸部35は、側板3が倒伏姿勢にあるときは、端縁部21に設けられたガイド面25のうち、第1ガイド面251又は第2ガイド面252の部分に当たることができる。各軸部35は、側板3が段部27に摺接してせり上がることに伴って、第2ガイド面252に摺接して上方に移動し、更に第3ガイド面253に摺接して一層上方へと円滑に移動する。
【0055】
このように、一実施形態の運搬用容器1では、側板3の下端部31が段部27に乗り上がることに伴って、軸部35がガイド面25に沿って上方に移動するが、側板3が回転してせり上がる形態は、これに限定されない。例えば、側板3の軸部35がガイド面25に摺接して上方に移動し、これに伴って側板3の下端部31が段部27に乗り上がる形態でもよい。
【0056】
一実施形態の運搬用容器1において、円柱状である軸部35の断面形状は真円でない。断面真円状の円柱を仮想したとき、一実施形態の軸部35は、この仮想的な円柱の一部を切り欠いた形状を有する。具体的には、一実施形態の軸部35の外周面は、側板3が起立姿勢にあるときに上方を向く第1凸曲面351と、側板3が起立姿勢にあるときに内側方を向く第2凸曲面352とを含む。
【0057】
第2凸曲面352は、第1凸曲面351よりも大きな曲率半径を有しており、側板3が起立姿勢にあるときに軸部35は縦長である。側板3が回転するときには、軸部35の外周面のうち曲率半径が比較的大きな第2凸曲面352が、ガイド面25に摺接する。言い換えれば、一実施形態の運搬用容器1では、軸部35の外周面のうち側板3が回転するときにガイド面25に摺接する部分(第2凸曲面352)を、他の部分(第1凸曲面351)よりも大きな曲率半径を有するように設けている。
【0058】
そのため、側板3が回転するときに、軸部35の中心はガイド面25に接近することになり、側板3の下端部本体32は、軸部35とガイド面25とが接する部分を基準として、該部分から比較的大きな距離を隔てて回転することになる。これにより、一実施形態の運搬用容器1においては、回転途中の下端部本体32が端縁部21に引っ掛かることが抑えられ、側板3の円滑な移動が実現される。
【0059】
但し、軸部35が上記形状であることは必須でなく、他の形状を有することも可能であり、軸部35の断面形状が真円であっても構わない。
【0060】
(側板自立機能)
図6C図6B図6Aをこの順に見て理解できるように、側板3が倒伏姿勢から起立姿勢に至ったときに、側板3の下端部31の一部を構成する各自立リブ38は、底部2の端縁部21の上面に当接するように構成されている。各自立リブ38は、側板3が起立姿勢にあるときに下方に突出した姿勢となり、各自立リブ38の下端部が、端縁部21の上面の内側方の端部に当たることで、側板3は自立を保持することができる。
【0061】
一実施形態の運搬用容器1において、端縁部21の上面の内側方の端部には、上方に突出した底側リブ29が設けられている。底側リブ29は、側板3が有する4つの自立リブ38が一対一で乗るように、第2方向D2に互いに距離をあけて4つ設けられている(図9参照)。
【0062】
なお、側板3の下端部31には、各自立リブ38に隣接して凹部37が設けられているので、各自立リブ38が端縁部21に当たる前に、下端部31の各自立リブ38以外の部分が端縁部21に当たることは抑えられている。
【0063】
ところで、一実施形態の運搬用容器1では、側板自立機能を発揮するための底側リブ29を、端縁部21の第2方向D2の中央部分を除いた部分に、設けている。具体的には、端縁部21の中央部分を挟んだ両側の部分に、それぞれ底側リブ29(つまり側板3の自立リブ38に当接して側板3を自立させるための部分)を設けている。その理由は、側板3は経時変化によってその中央部分が外側方に膨らむように変形しやすく、仮に底側リブ29が端縁部21の第2方向D2の中央部分に設けられていれば、側板3が経時変形したときに、底側リブ29と自立リブ38が干渉しやすくなると想定されるからである。
【0064】
一方、一実施形態の運搬用容器1において、側板せり上がり機能を発揮するための段部27は、端縁部21の第2方向D2の中央部分に設けている。具体的には、端縁部21において距離をあけて位置する両側の底側リブ29に挟まれる部分に、複数の段部27(つまり側板3の下端部31に摺接して側板3を上方にせり上げるための部分)を設けている。その理由は、側板3が経時変化によって外側方に膨らむように変形したときであっても、側板3の下端部31は各段部27に対して安定的に摺接する位置関係を保ちやすく、側板せり上がり機能を安定的に発揮しやすいと想定されるからである。このように、側板3の経年変化を考慮した場合、側板せり上がり機能を発揮するための構造は端縁部21の中央部分に設け、側板自立機能を発揮するための構造は、端縁部21の中央部分を挟んだ両側部分に設けることが好ましい。
【0065】
底側リブ29は、上記の機能に加えて、運搬用容器1を折り畳み状態(つまり全ての側板3,4を倒伏姿勢とした状態)で複数積み重ねたときに、上側の運搬用容器1の脚部215に係合することができる機能を有している。図1に示すように、脚部215は、底部2の端縁部21の底面から下方に突出した部分であり、側面視において、下側の部分ほど幅が狭くなる台形状の外形を有している。各端縁部21において、第二方向D2に距離をあけて2つの脚部215が設けられている。
【0066】
運搬用容器1を折り畳み状態で複数積み重ねたとき、上側の運搬用容器1が有する脚部215は、下側の運搬用容器1が有する底側リブ29に対して、外側方に位置する。このとき、脚部215は、下側の運搬用容器1の端縁部21が有する別のリブ295(図9参照)に対して上方に位置するか、又はリブ295に対して内側方に位置する。リブ295は、端縁部21の上面の外側方の端部に、上方に突出するように設けられたリブであり、端縁部21の略全長にわたって一直線状に設けられている。脚部215がリブ295の上方に位置するとき、脚部215はリブ295の上に載った状態にある。脚部215がリブ295の内側方に位置するとき、脚部215は、リブ295と底側リブ29との間に形成された端縁部21上面の溝部分に、上方から嵌まり込んだ状態にある。
【0067】
運搬用容器1が折り畳み状態で段積みされているとき、例えば荷重等を原因として、下側の運搬用容器1の端縁部21が外側方に変位した場合には、該端縁部21が有する上方に突出した底側リブ29が、上側の運搬用容器1の端縁部21が有する下方に突出した脚部215に対して内側から当たり、底側リブ29と脚部215が係合する。上側の運搬用容器1の端縁部21が内側方に変位した場合には、該端縁部21が有する脚部215が、下側の運搬用容器1の端縁部21が有する底側リブ29に対して外側から当たり、底側リブ29と脚部215が係合する。これにより、段積み状態における各運搬用容器1の端縁部21の変位が抑制され、安定的な段積みが可能となる。
【0068】
(側板浮き上がり抑制機能)
図3C図3B図3Aをこの順に見て理解できるように、側板3が倒伏姿勢から起立姿勢に至ったときに、側板3の下端部31の一部を構成するL字状の各係止部36は、底部2の端縁部21が有する複数の底側係止部26のうち対応する1つの底側係止部26に挿し込まれ、この1つの底側係止部26に係止される。これにより、側板3が起立姿勢に至った段階で、側板3の上方への浮き上がりが抑えられる。
【0069】
[変形例]
以上、一実施形態に基づいて本開示の運搬用容器1を説明したが、運搬用容器1は前記した一実施形態に限定されず、適宜の設計変更を行うことが可能である。
【0070】
図10A図10B及び図10Cには、一実施形態の運搬用容器1の変形例を示している。この変形例においては、底部2の端縁部21の上面の内側方の端部に、底側リブ29が設けられてなく、その代わりに、下方に凹んだ凹段部5が設けられている。凹段部5は、上方及び内側方に開口した凹状の段部である。端縁部21には、側板3が有する4つの自立リブ38が一対一で嵌るように、第2方向D2に互いに距離をあけて4つ設けられている。
【0071】
[作用効果]
以上、一実施形態及び変形例に基づいて説明したように、本開示の運搬用容器1は、矩形状の底部2と、底部2の互いに平行な2辺部分に連結される一対の第1側板3(側板3)と、底部2に互いに平行な別の2辺部分に連結される一対の第2側板4とを備える。一対の第1側板3はそれぞれ、底部2に対して回転自在に連結される下端部31を有し、起立姿勢と倒伏姿勢との間で起倒自在となるように構成されている。同様に、一対の第2側板4はそれぞれ、底部2に対して回転自在に連結される下端部41を有し、起立姿勢と倒伏姿勢との間で起倒自在となるように構成されている。
【0072】
一対の第1側板3のそれぞれを構成する側板3と、側板3が連結される底部2の端縁部21とにおいて、側板3の下端部31は、起倒の中心となる軸部35を有する。底部2の端縁部21は、段部27と、ガイド面25とを有する。段部27は、側板3が倒伏姿勢から起立姿勢に至る途中で下端部31と摺接し、側板3をその全体が上方に移動するように乗り上げさせる。ガイド面25は、側板3の移動に伴う軸部35の上方への移動をガイドする。側板3は、起立姿勢に至ったときに、下端部31の一部が端縁部21の上面に当接して自立するように構成されている。
【0073】
したがって、本開示の運搬用容器1によれば、下側の側板3を倒伏姿勢から起こしていく途中で、側板3の下端部31が段部27に摺接することで、側板3は上方へと徐々にせり上がり、更に、軸部35はガイド面25にガイドされながら上方へと移動することになる。そのため、使用者は側板3をいったん持ち上げるような動作を行う必要がない。本開示の運搬用容器1によれば、底部2の上に重なった一対の側板3のうち下側の側板3を、簡単にかつ円滑に回転させて起立させることができる。ここで、従来技術のように、使用者が側板をいったん持ち上げて回転させる必要がある構造であれば、側板が底部の端縁部から浮き上がった状態で引っ掛かる虞もあるが、本開示の運搬用容器1では、使用者は側板3を回転させるだけでよく、側板3をいったん持ち上げる必要がないので、側板3が端縁部21から浮き上がった状態で引っ掛かることが、抑えられる。
【0074】
加えて、本開示の運搬用容器1において、下端部31の一部は、側板3が起立姿勢にあるときに下方に突出した姿勢となる自立リブ38である。
【0075】
したがって、本開示の運搬用容器1によれば、倒伏姿勢にあった側板3を、軸部35が徐々に上方に移動するように円滑に回転させ、起立姿勢に至った段階では、自立リブ38によって底部2の端縁部21上に安定的に自立させることができる。
【0076】
加えて、本開示の運搬用容器1において、軸部35の外周面は、側板3が起立姿勢にあるときに上方を向く第1凸曲面351と、側板3が起立姿勢にあるときに内側方を向き、かつ第1凸曲面351よりも大きな曲率半径を有する第2凸曲面352とを含む。
【0077】
したがって、本開示の運搬用容器1によれば、倒伏姿勢にあった側板3を、軸部35がガイド面25に沿って上方に移動するように回転させていく途中で、軸部35の中心をガイド面25に接近させることができる。これにより、回転途中の側板3が端縁部21に引っ掛かることが抑えられ、側板3の円滑な移動が実現される。
【符号の説明】
【0078】
1 運搬用容器
2 底部
21 端縁部
25 ガイド面
27 段部
3 側板(第1側板)
31 下端部
35 軸部
351 第1凸曲面
352 第2凸曲面
38 自立リブ
4 側板(第2側板)
41 下端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10