(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-14
(45)【発行日】2025-07-23
(54)【発明の名称】多発性骨髄腫の処置方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20250715BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250715BHJP
A61K 31/573 20060101ALI20250715BHJP
A61K 31/454 20060101ALI20250715BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250715BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20250715BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20250715BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20250715BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20250715BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20250715BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20250715BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20250715BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20250715BHJP
【FI】
A61K39/395 E
A61P35/00
A61K39/395 T
A61K31/573
A61K31/454
A61P43/00 121
A61K9/08
A61K47/18
A61K47/26
A61P11/06
A61P11/00
A61P13/12
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
(21)【出願番号】P 2021543372
(86)(22)【出願日】2020-01-28
(86)【国際出願番号】 US2020015455
(87)【国際公開番号】W WO2020160020
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2023-01-27
(32)【優先日】2019-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2019-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507363864
【氏名又は名称】サノフィ-アベンティス・ユー・エス・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】フランク・カンパナ・ザンブラノ
(72)【発明者】
【氏名】エロイーズ・オーダ
(72)【発明者】
【氏名】オドレイ・ボネステベ
(72)【発明者】
【氏名】シルヴァン・ウイレ
(72)【発明者】
【氏名】ソレン・ル-ゲネック
(72)【発明者】
【氏名】リュシー・マナシェ-アルベリシ
【審査官】伊藤 良子
(56)【参考文献】
【文献】Journal of Clinical Oncology,2018年05月20日,Vol.36, No.15_suppl, Abstract No.8038
【文献】Future Oncol.,2017年12月22日,Vol.14, No.11,pp.1035-1047
【文献】日本内科学会雑誌,2016年,Vol.105, No.7,pp.1224-1230
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多発性骨髄腫の個体の腎機能障害を回復させる方法における使用のため
の、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(V
H
)および配列番号8または配列番号9のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(V
L
)を含む抗CD38抗体を含む医薬組成物であって、
該方法は、個体に該抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンを投与することを含み、
該抗CD38抗体は10mg/kgの用量で投与され、該ポマリドミドは4mgの用量で投与され、該デキサメタゾンは75歳未満の個体に対して40mgの用量で投与されるか、または該デキサメタゾンは75歳以上の個体に対して20mgの用量で投与され、
該個体は、多発性骨髄腫のための少なくとも2つの前治療を受けており、
該多発性骨髄腫のための少なくとも2つの前治療の少なくとも1つはレナリドマイドであり、2つの前治療の少なくとも1つはプロテアソーム阻害剤であり、
該個体は、該治療の後、該抗CD38抗体を含まず、ポマリドミドおよびデキサメタゾンを含む治療と比較して、腎完全奏功を達成する可能性が高い、前記医薬組成物。
【請求項2】
少なくとも2つの前治療は、抗CD38抗体による処置および/またはポマリドミドによる処置を含まなかった、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
個体は少なくとも2つの前治療の少なくとも1つに奏功しなかったか、個体は少なくとも2つの前治療の少なくとも1つの後に再発したか、または個体は2つの前治療の少なくとも1つによる処置の間もしくは後に疾患進行を経験した、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
多発性骨髄腫の個体は、腎臓障害を有する個体に基づいて投与について選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
個体は、約60mL/分/1.73m
2未満の推定された糸球体濾過率(eGFR)を有する、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
処置は個体の無増悪生存期間(PFS)を延長する、請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
処置は個体の全生存期間(OS)を延長する、請求項1~6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
処置は個体のPFSを少なくとも約9カ月間延長する、請求項6または7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
処置は、抗CD38抗体なしでポマリドミドおよびデキサメタゾンを含む処置を受けた
多発性骨髄腫を有する個体と比較して、個体のPFSを少なくとも約4.5カ月間延長する、請求項6~8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
個体は、抗CD38抗体なしでポマリドミドおよびデキサメタゾンを含む処置を受けた多発性骨髄腫を有する個体よりも迅速に処置への奏功を達成する、請求項1~9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
個体は、抗CD38抗体なしでポマリドミドおよびデキサメタゾンを含む処置を受けた多発性骨髄腫を有する個体よりも迅速に処置への腎奏功を達成する、請求項1~10のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
腎奏功は腎完全奏功である、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
腎完全奏功は少なくとも60日間持続する、請求項11または12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
抗CD38抗体はイサツキシマブである、請求項1~
13のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンは第1の28日周期に投与され、
該抗CD38抗体は該第1の28日周期の1、8、15および22日目に投与され、該ポマリドミドは該第1の28日周期の1~21日目に毎日投与され、該デキサメタゾンは該第1の28日周期の1、8、15および22日目に投与される、請求項1~
14のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンは、第1の28日周期の後の1つまたはそれ以上の28日周期にさらに投与され、
該抗CD38抗体は該第1の28日周期の後の該1つまたはそれ以上の28日周期の1および15日目に投与され、該ポマリドミドは該第1の28日周期の後の該1つまたはそれ以上の28日周期の1~21日目に毎日投与され、該デキサメタゾンは該第1の28日周期の後の該1つまたはそれ以上の28日周期の1、8、15および22日目に投与される、請求項
15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
ポマリドミドおよびデキサメタゾンは第1の28日周期の1日目の抗CD38抗体の前に投与される、請求項
15または
16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
デキサメタゾンは第1の28日周期の8、15および22日目の抗CD38抗体の前に投与され、該抗CD38抗体は該第1の28日周期の8および15日目のポマリドミドの前に投与される、請求項
15~
17のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
ポマリドミドおよびデキサメタゾンは第1の28日周期の後の1つまたはそれ以上の28日周期の1日目の抗CD38抗体の前に投与される、請求項
15~
18のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
デキサメタゾンは抗CD38抗体の前に投与され、該抗CD38抗体は第1の28日周期の後の1つまたはそれ以上の28日周期の15日目のポマリドミドの前に投与される、請求項
15~
19のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンは第1の28日周期に投与され、
該抗CD38抗体は該第1の28日周期に週1回投与され、該ポマリドミドは該第1の28日周期に21日間投与され、該デキサメタゾンは該第1の28日周期に週1回投与される、請求項1~
14のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンは、第1の28日周期の後の1つまたはそれ以上の28日周期にさらに投与され、
該抗CD38抗体は該第1の28日周期の後の該1つまたはそれ以上の28日周期の隔週に1回投与され、該ポマリドミドは該第1の28日周期の後の該1つまたはそれ以上の28日周期に21日間投与され、該デキサメタゾンは該第1の28日周期の後の該1つまたはそれ以上の28日周期に週1回投与される、請求項
21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
ポマリドミドおよびデキサメタゾンは第1の28日周期の抗CD38抗体の前に投与される、請求項
21または
22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
デキサメタゾンは抗CD38抗体の前に投与され、該抗CD38抗体は第1の28日周期のポマリドミドの前に投与される、請求項
21~
23のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項25】
ポマリドミドおよびデキサメタゾンは第1の28日周期の後の1つまたはそれ以上の28日周期の抗CD38抗体の前に投与される、請求項
21~
24のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項26】
デキサメタゾンは抗CD38抗体の前に投与され、該抗CD38抗体は第1の28日周期の後の1つまたはそれ以上の28日周期のポマリドミドの前に投与される、請求項
21~
25のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項27】
抗CD38抗体は静脈内投与される、請求項1~
26のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項28】
ポマリドミドは経口投与される、請求項1~
27のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項29】
デキサメタゾンは経口投与される、請求項1~
28のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項30】
デキサメタゾンは静脈内投与される、請求項1~
28のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項31】
個体は、多発性骨髄腫のための最も近い前治療に抵抗性であった、請求項1~
30のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項32】
最も近い前治療はレナリドマイドであった、請求項
31に記載の医薬組成物。
【請求項33】
最も近い前治療はプロテアソーム阻害剤であった、請求項
31に記載の医薬組成物。
【請求項34】
プロテアソーム阻害剤はボルテゾミブ、カルフィルゾミブおよびイキサゾミブからなる群から選択される、請求項1~
33のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項35】
レナリドマイドおよびプロテアソーム阻害剤は併用投与された、請求項1~
34のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項36】
個体は慢性閉塞性肺障害(COPD)を有する、請求項1~
35のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項37】
個体は喘息を有する、請求項1~
36のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項38】
個体は気管支けいれんを有する、請求項1~
37のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項39】
個体は、del(17p)、t(4;14)およびt(14;16)からなる群から選択される1つまたはそれ以上の細胞遺伝学的異常を有する、請求項1~
38のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項40】
個体は少なくとも65歳かつ75歳未満である、請求項1~
39のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項41】
個体は75歳以上である、請求項1~
39のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項42】
個体は、多発性骨髄腫のための少なくとも3つの前治療を受けている、請求項1~
41のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項43】
個体は東アジア人である、請求項1~
42のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項44】
個体は国際病期分類(ISS)による第III期である、請求項1~
43のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項45】
個体は改訂国際病期分類(R-ISS)による第III期である、請求項1~
44のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項46】
個体は、処置後に10
-4以下の閾値で最小残存疾病(MRD)陰性である、請求項1~
45のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項47】
個体は処置後に10
-5以下の閾値でMRD陰性である、請求項
46に記載の医薬組成物。
【請求項48】
個体は処置後に10
-6以下の閾値でMRD陰性である、請求項
46または
47に記載の医薬組成物。
【請求項49】
MRDは次世代シークエンシング(NGS)を通して調査される、請求項
46~
48のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項50】
MRDは次世代フローサイトメトリー(NGF)を通して調査される、請求項
46~
49のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項51】
請求項1~
50のいずれか1項に記載の医薬組成物により多発性骨髄腫の個体を処置するための、ポマリドミドおよびデキサメタゾンと組み合わせて使用するための抗CD38抗体を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2019年12月3日に出願の欧州特許出願公開第19306554.7号;2019年12月4日に出願の米国特許仮出願第62/943,716号;2019年11月5日に出願の米国特許仮出願第62/931,014号;2019年9月11日に出願の米国特許仮出願第62/899,094号;2019年6月14日に出願の米国特許仮出願第62/861,954号;2019年5月14日に出願の米国特許仮出願第62/847,826号;2019年1月28日に出願の米国特許仮出願第62/797,876号の優先権の利益を請求し、その各々の内容は参照によって本明細書に完全に組み入れられる。
【0002】
アスキーテキストファイルの配列表の提出
アスキーテキストファイルの以下の提出の内容は、参照によって本明細書に完全に組み入れられる:配列表のコンピュータ可読形式(CRF)(ファイル名:183952031241SEQLIST.txt、記録日:2020年1月23日、サイズ:11KB)。
【0003】
本開示は、抗CD38抗体をポマリドミドおよびデキサメタゾンと組み合わせて投与することによって多発性骨髄腫を処置する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
多発性骨髄腫(MM)は、骨髄(BM)中の形質細胞のクローン増殖およびモノクローナル免疫グロブリン(通常IgGもしくはIgA型、または遊離の尿軽鎖、すなわち、パラプロテイン、M-タンパク質もしくはM-構成要素)の過剰量の生成によって特徴付けられる悪性の形質細胞疾患である。MMを有する患者は、骨の疼痛、骨折、疲労、貧血、感染症、カルシウム過剰血および腎臓問題を経験することがある(非特許文献1)。CD38の発現は特にMMで注目すべきであるが、それは患者の98%超がこのタンパク質に陽性であるからである(非特許文献2;非特許文献3)。悪性のクローン性MM細胞の上のCD38の強力で均一な発現は、正常な細胞の上の制限された発現パターンと対照的であり、この抗原が腫瘍細胞の特異的標的化のために有益である可能性を示唆する。
【0005】
MM療法の現行の狙いは、生活の質を最大にし、生存を長くするために、疾患をできるだけ効果的に制御することである。疾患の軌跡は患者ごとに異なるが、再発は回避不能であり、再発後の各処置への奏功の深さおよび持続期間は一般的に低減する。一般に、MM患者は、彼らの生涯の間に、プロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ、イキサゾミブおよびカルフィルゾミブ)および免疫調節剤または「IMiD(登録商標)」(例えば、レナリドマイドおよびサリドマイド)、モノクローナル抗体(例えば、エロツズマブ)、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤(例えば、パノビノスタト)のような薬剤を単独または併用で使用した平均4~8つの異なるレジメンを受ける。しかし、患者がそれらの薬剤に抵抗性になった場合、生存は制限され、彼らが幹細胞移植(SCT)、化学療法、プロテアソーム阻害剤および免疫調節薬物(IMiD(登録商標))に失敗した後に患者を処置するために、より新しい処置オプションが必要である。より新しい治療による患者転帰の劇的な向上にもかかわらず、MMは不治の疾患のままである。したがって、プロテアソーム阻害剤および免疫調節剤を含む少なくとも2ラインの異なる治療を受けた患者、またはプロテアソーム阻害剤およびIMiD(登録商標)に二重抵抗性である患者の処置は、未だに満たされていない医学的必要性である。
【0006】
特許出願、特許公報およびUniProtKB/SwissProt受託番号を含む本明細書で引用される全ての参考文献は、各個々の参考文献が参照によって組み入れられることが具体的および個々に示されるかのように、参照によって完全に本明細書に組み入れられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Rollig等(2015)Lancet.385(9983):2197~208頁
【文献】Goldmacher等(1994)Blood.84(9):3017~25頁
【文献】Lin等(2004)Am J Clin Pathol.121(4):482~8頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
個体の多発性骨髄腫の処置における使用のための、(a)アミノ酸配列DYWMQ(配列番号1)を含むCDR-H1、アミノ酸配列TIYPGDGDTGYAQKFQG(配列番号2)を含むCDR-H2およびアミノ酸配列GDYYGSNSLDY(配列番号3)を含むCDR-H3を含む重鎖可変ドメイン(VH)、ならびに(b)アミノ酸配列KASQDVSTVVA(配列番号4)を含むCDR-L1、アミノ酸配列SASYRYI(配列番号5)を含むCDR-L2およびアミノ酸配列QQHYSPPYT(配列番号6)を含むCDR-L3を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗CD38抗体が提供され、処置は個体に抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンを投与することを含み、抗CD38抗体は10mg/kgの用量で投与され、ポマリドミドは4mgの用量で投与され、デキサメタゾンは75歳未満の個体に対して40mgの用量で投与されるか、またはデキサメタゾンは75歳以上の個体に対して20mgの用量で投与され、個体は多発性骨髄腫のための少なくとも2つの前治療を受けており、多発性骨髄腫のための少なくとも2つの前治療の少なくとも1つはレナリドマイドであり、2つの前治療の少なくとも1つはプロテアソーム阻害剤であり、処置は個体の無増悪生存期間(PFS)および/または全生存期間(OS)を延長する。
【0009】
多発性骨髄腫の個体の腎機能障害を回復させる方法における使用のための、(a)アミノ酸配列DYWMQ(配列番号1)を含むCDR-H1、アミノ酸配列TIYPGDGDTGYAQKFQG(配列番号2)を含むCDR-H2およびアミノ酸配列GDYYGSNSLDY(配列番号3)を含むCDR-H3を含む重鎖可変ドメイン(VH)、ならびに(b)アミノ酸配列KASQDVSTVVA(配列番号4)を含むCDR-L1、アミノ酸配列SASYRYI(配列番号5)を含むCDR-L2およびアミノ酸配列QQHYSPPYT(配列番号6)を含むCDR-L3を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗CD38抗体が提供され、方法は、個体に抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンを投与することを含み、抗CD38抗体は10mg/kgの用量で投与され、ポマリドミドは4mgの用量で投与され、デキサメタゾンは75歳未満の個体に対して40mgの用量で投与されるか、またはデキサメタゾンは75歳以上の個体に対して20mgの用量で投与され、個体は多発性骨髄腫のための少なくとも2つの前治療を受けており、多発性骨髄腫のための少なくとも2つの前治療の少なくとも1つはレナリドマイドであり、少なくとも2つの前治療の少なくとも1つはプロテアソーム阻害剤であった。
【0010】
(a)5~20mg/mlの濃度のイサツキシマブ;(b)ヒスチジン、酢酸塩およびリン酸塩からなる群から選択される緩衝剤:(c)スクロースおよびマンニトールからなる群から選択される賦形剤、ならびに(d)ポリソルベート80(PS80)を含む液体医薬製剤も提供される。一部の実施形態では、イサツキシマブは5mg/mlの濃度で存在し、緩衝剤はヒスチジンであり、ヒスチジンは10mMの濃度であり、賦形剤はスクロースであり、スクロースは10%(w/v)の濃度であり、PS80は0.005%(w/v)の濃度で存在し、医薬製剤は約6.0または約6.5のpHを有する。一部の実施形態では、医薬製剤のpHは約6.5である。一部の実施形態では、イサツキシマブは20mg/mlの濃度で存在し、緩衝剤はヒスチジンであり、ヒスチジンは20mMの濃度であり、賦形剤はスクロースであり、スクロースは10%(w/v)の濃度で存在し、PS80は0.02%(w/v)の濃度で存在し、医薬製剤は約6.0のpHを有する。一部の実施形態では、製剤は無菌である
【0011】
多発性骨髄腫を有するヒト個体を処置する方法であって、個体に、(a)アミノ酸配列DYWMQ(配列番号1)を含むCDR-H1、アミノ酸配列TIYPGDGDTGYAQKFQG(配列番号2)を含むCDR-H2およびアミノ酸配列GDYYGSNSLDY(配列番号3)を含むCDR-H3を含む重鎖可変ドメイン(VH)、ならびに(b)アミノ酸配列KASQDVSTVVA(配列番号4)を含むCDR-L1、アミノ酸配列SASYRYI(配列番号5)を含むCDR-L2およびアミノ酸配列QQHYSPPYT(配列番号6)を含むCDR-L3を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗CD38抗体、ポマリドミドならびにデキサメタゾンを投与することを含む方法が提供され、処置は個体の無増悪生存期間(PFS)を延長する。一部の実施形態では、本方法は、10mg/kgの用量の抗CD38抗体、4mgの用量のポマリドミド、および個体が75歳未満の場合は40mgの用量、または個体が75歳以上の場合は20mgの用量のデキサメタゾンを投与することを含む。一部の実施形態では、個体は、多発性骨髄腫のための少なくとも2つの前治療を受けた。一部の実施形態では、多発性骨髄腫のための少なくとも2つの前治療の少なくとも1つはレナリドマイドであった。一部の実施形態では、2つの前治療の少なくとも1つはプロテアソーム阻害剤であった。一部の実施形態では、処置は個体の全生存期間(OS)を延長する。一部の実施形態では、処置は、個体の腎機能障害を回復させる。
【0012】
多発性骨髄腫を有するヒト個体を処置する方法であって、個体に、(a)アミノ酸配列DYWMQ(配列番号1)を含むCDR-H1、アミノ酸配列TIYPGDGDTGYAQKFQG(配列番号2)を含むCDR-H2およびアミノ酸配列GDYYGSNSLDY(配列番号3)を含むCDR-H3を含む重鎖可変ドメイン(VH)、ならびに(b)アミノ酸配列KASQDVSTVVA(配列番号4)を含むCDR-L1、アミノ酸配列SASYRYI(配列番号5)を含むCDR-L2およびアミノ酸配列QQHYSPPYT(配列番号6)を含むCDR-L3を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗CD38抗体、ポマリドミドならびにデキサメタゾンを投与することを含む方法も提供され、処置は個体の全生存期間(OS)を延長する。一部の実施形態では、抗CD38抗体は10mg/kgの用量で投与され、ポマリドミドは4mgの用量で投与され、デキサメタゾンは個体が75歳未満の場合は40mgの用量または個体が75歳以上の場合は20mgの用量で投与される。一部の実施形態では、個体は多発性骨髄腫のための少なくとも2つの前治療を受けた。一部の実施形態では、多発性骨髄腫のための少なくとも2つの前治療の少なくとも1つはレナリドマイドであった。一部の実施形態では、2つの前治療の少なくとも1つはプロテアソーム阻害剤であった。一部の実施形態では、処置は個体の腎機能障害を回復させる。
【0013】
多発性骨髄腫のヒト個体の腎臓障害を向上させる方法であって、個体に、(a)アミノ酸配列DYWMQ(配列番号1)を含むCDR-H1、アミノ酸配列TIYPGDGDTGYAQKFQG(配列番号2)を含むCDR-H2およびアミノ酸配列GDYYGSNSLDY(配列番号3)を含むCDR-H3を含む重鎖可変ドメイン(VH)、ならびに(b)アミノ酸配列KASQDVSTVVA(配列番号4)を含むCDR-L1、アミノ酸配列SASYRYI(配列番号5)を含むCDR-L2およびアミノ酸配列QQHYSPPYT(配列番号6)を含むCDR-L3を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗CD38抗体、ポマリドミドならびにデキサメタゾンを投与することを含む方法が提供される。一部の実施形態では、抗CD38抗体は10mg/kgの用量で投与され、ポマリドミドは4mgの用量で投与され、デキサメタゾンは個体が75歳未満の場合は40mgの用量または個体が75歳以上の場合は20mgの用量で投与される。
【0014】
本明細書の使用のための抗体または本明細書の方法の一部の実施形態では、少なくとも2つの前治療は抗CD38抗体による処置および/またはポマリドミドによる処置を含まなかった。本明細書の使用のための抗体または本明細書の方法の一部の実施形態では、個体は少なくとも2つの前治療の少なくとも1つに奏功しなかったか、または個体は少なくとも2つの前治療の少なくとも1つの後に再発したか、または個体は2つの前治療の少なくとも1つによる処置の間か後に疾患進行を経験した。
【0015】
本明細書の使用のための抗体または本明細書の方法の一部の実施形態では、多発性骨髄腫の個体は、腎臓障害を有する個体に基づいて、抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンによる投与について選択される。本明細書の使用のための抗体または本明細書の方法の一部の実施形態では、腎臓障害の個体は、処置の開始前に約60未満、約50未満または約30mL/分/1.73m2未満の推定された糸球体濾過率(eGFR)を有する。本明細書の使用のための抗体または本明細書の方法の一部の実施形態では、腎臓障害の個体は、処置の開始前に約60未満、約50未満または約30mL/分/1.73m2未満のクレアチニンクリアランスを有する。本明細書の使用のための抗体または本明細書の方法の一部の実施形態では、個体は多発性骨髄腫のための少なくとも2つの前治療を受けた。本明細書の使用のための抗体または本明細書の方法の一部の実施形態では、少なくとも2つの前治療の少なくとも1つはレナリドマイドであった。本明細書の使用のための抗体または本明細書の方法の一部の実施形態では、少なくとも2つの前治療の少なくとも1つはプロテアソーム阻害剤であった。本明細書の使用のための抗体または本明細書の方法の一部の実施形態では、本方法は個体の無増悪生存期間(PFS)を延長する。本明細書の使用のための抗体または本明細書の方法の一部の実施形態では、本方法は個体の全生存期間(OS)を延長する。
【0016】
本明細書では、個体の多発性骨髄腫の処置における使用のための、(a)アミノ酸配列DYWMQ(配列番号1)を含むCDR-H1、アミノ酸配列TIYPGDGDTGYAQKFQG(配列番号2)を含むCDR-H2およびアミノ酸配列GDYYGSNSLDY(配列番号3)を含むCDR-H3を含む重鎖可変ドメイン(VH)、ならびに(b)アミノ酸配列KASQDVSTVVA(配列番号4)を含むCDR-L1、アミノ酸配列SASYRYI(配列番号5)を含むCDR-L2およびアミノ酸配列QQHYSPPYT(配列番号6)を含むCDR-L3を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗CD38抗体も提供され、処置は個体に抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンを投与することを含み、処置は無増悪生存期間(PFS)および/または全生存期間(OS)を延長する。本明細書の使用のための抗体または本明細書の方法の一部の実施形態では、抗CD38抗体は10mg/kgの用量で投与され、ポマリドミドは4mgの用量で投与され、デキサメタゾンは個体が75歳未満の場合は40mgの用量または個体が75歳以上の場合は20mgの用量で投与される。本明細書の使用のための抗体または本明細書の方法の一部の実施形態では、個体は多発性骨髄腫のための少なくとも2つの前治療を受けた。本明細書の使用のための抗体または本明細書の方法の一部の実施形態では、多発性骨髄腫のための少なくとも2つの前治療の少なくとも1つはレナリドマイドであった。本明細書の使用のための抗体または本明細書の方法の一部の実施形態では、2つの前治療の少なくとも1つはプロテアソーム阻害剤であった。
【0017】
個体の腎機能障害の回復における使用のための、(a)アミノ酸配列DYWMQ(配列番号1)を含むCDR-H1、アミノ酸配列TIYPGDGDTGYAQKFQG(配列番号2)を含むCDR-H2およびアミノ酸配列GDYYGSNSLDY(配列番号3)を含むCDR-H3を含む重鎖可変ドメイン(VH)、ならびに(b)アミノ酸配列KASQDVSTVVA(配列番号4)を含むCDR-L1、アミノ酸配列SASYRYI(配列番号5)を含むCDR-L2およびアミノ酸配列QQHYSPPYT(配列番号6)を含むCDR-L3を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗CD38抗体も提供され、処置は個体に抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンを投与することを含む。本明細書の使用のための抗体または本明細書の方法の一部の実施形態では、個体は多発性骨髄腫を有する。本明細書の使用のための抗体または本明細書の方法の一部の実施形態では、個体は、腎臓障害を有することに基づいて、抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンによる投与のために選択される。本明細書の使用のための抗体または本明細書の方法の一部の実施形態では、個体は、処置の開始前に約60未満、約50未満または約30mL/分/1.73m2未満の推定された糸球体濾過率(eGFR)を有する。本明細書の使用のための抗体または本明細書の方法の一部の実施形態では、個体は、処置の開始前に約60未満、約50未満または約30mL/分/1.73m2未満のクレアチニンクリアランスを有する。本明細書の使用のための抗体または本明細書の方法の一部の実施形態では、抗CD38抗体は10mg/kgの用量で投与され、ポマリドミドは4mgの用量で投与され、デキサメタゾンは個体が75歳未満の場合は40mgの用量または個体が75歳以上の場合は20mgの用量で投与される。本明細書の使用のための抗体または本明細書の方法の一部の実施形態では、個体は多発性骨髄腫のための少なくとも2つの前治療を受けた。本明細書の使用のための抗体または本明細書の方法の一部の実施形態では、多発性骨髄腫のための少なくとも2つの前治療の少なくとも1つはレナリドマイドであった。本明細書の使用のための抗体または本明細書の方法の一部の実施形態では、2つの前治療の少なくとも1つはプロテアソーム阻害剤であった。
【0018】
一部の実施形態では、本明細書の使用のための抗体または本明細書の方法は、個体のPFSを少なくとも約9カ月間延長する。一部の実施形態では、本明細書の使用のための抗体または本明細書の方法は、個体のPFSを約11.53カ月間延長する。一部の実施形態では、本明細書の使用のための抗体または本明細書の方法は、個体のPFSを約11.14カ月間延長する。一部の実施形態では、本明細書の使用のための抗体または本明細書の方法は、抗CD38抗体なしでポマリドミドおよびデキサメタゾンを含む処置を受けた多発性骨髄腫を有する個体と比較して、個体のPFSを少なくとも約4.5カ月間延長する。
【0019】
一部の実施形態では、例えば本明細書の使用のための抗体または本明細書の方法による、抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンによる処置を受ける個体は、ポマリドミドおよびデキサメタゾンを含むが抗CD38抗体なしの処置を受けた多発性骨髄腫を有する個体よりも迅速に処置への奏功を達成する。一部の実施形態では、個体は、ポマリドミドおよびデキサメタゾンを含むが抗CD38抗体なしの処置を受けた多発性骨髄腫を有する個体よりも迅速に処置(例えば、例えば本明細書の使用のための抗体または本明細書の方法による、抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンによる処置)への腎奏功を達成する。一部の実施形態では、腎奏功は腎完全奏功である。一部の実施形態では、腎完全奏功は少なくとも60日間持続する。
【0020】
一部の実施形態では、抗CD38抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)および配列番号8または配列番号9のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、抗CD38抗体はイサツキシマブである。
【0021】
一部の実施形態では、抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンは第1の28日周期に投与され、抗CD38抗体は第1の28日周期の1、8、15および22日目に投与され、ポマリドミドは、第1の28日周期の1~21日目に毎日投与され、デキサメタゾンは、第1の28日周期の1、8、15および22日目に投与される。一部の実施形態では、抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンは、第1の28日周期の後の1つまたはそれ以上の28日周期にさらに投与され、抗CD38抗体は第1の28日周期の後の1つまたはそれ以上の28日周期の1および15日目に投与され、ポマリドミドは第1の28日周期の後の1つまたはそれ以上の28日周期の1~21日目に毎日投与され、デキサメタゾンは第1の28日周期の後の1つまたはそれ以上の28日周期の1、8、15および22日目に投与される。一部の実施形態では、ポマリドミドおよびデキサメタゾンは第1の28日周期の1日目の抗CD38抗体の前に投与される。一部の実施形態では、デキサメタゾンは第1の28日周期の8、15および22日目の抗CD38抗体の前に投与され、抗CD38抗体は第1の28日周期の8および15日目のポマリドミドの前に投与される。一部の実施形態では、ポマリドミドおよびデキサメタゾンは第1の28日周期の後の1つまたはそれ以上の28日周期の1日目の抗CD38抗体の前に投与される。一部の実施形態では、デキサメタゾンは抗CD38抗体の前に投与され、抗CD38抗体は第1の28日周期の後の1つまたはそれ以上の28日周期の15日目のポマリドミドの前に投与される。一部の実施形態では、抗CD38抗体は静脈内投与される。一部の実施形態では、ポマリドミドは経口投与される。一部の実施形態では、デキサメタゾンは経口投与される。一部の実施形態では、デキサメタゾンは静脈内投与される。
【0022】
一部の実施形態では、抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンは第1の28日周期に投与される。一部の実施形態では、抗CD38抗体は第1の28日周期に週1回投与され、ポマリドミドは第1の28日周期に21日間投与され、デキサメタゾンは第1の28日周期に週1回投与される。一部の実施形態では、抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンは、第1の28日周期の後の1つまたはそれ以上の28日周期にさらに投与される。一部の実施形態では、抗CD38抗体は第1の28日周期の後の1つまたはそれ以上の28日周期の隔週に1回投与され、ポマリドミドは第1の28日周期の後の1つまたはそれ以上の28日周期に21日間投与され、デキサメタゾンは第1の28日周期の後の1つまたはそれ以上の28日周期に週1回投与される。一部の実施形態では、ポマリドミドおよびデキサメタゾンは第1の28日周期の抗CD38抗体の前に投与される。一部の実施形態では、デキサメタゾンは抗CD38抗体の前に投与され、抗CD38抗体は第1の28日周期のポマリドミドの前に投与される。一部の実施形態では、ポマリドミドおよびデキサメタゾンは第1の28日周期の後の1つまたはそれ以上の28日周期の抗CD38抗体の前に投与される。一部の実施形態では、デキサメタゾンは抗CD38抗体の前に投与され、抗CD38抗体は第1の28日周期の後の1つまたはそれ以上の28日周期のポマリドミドの前に投与される。一部の実施形態では、抗CD38抗体は静脈内投与される。一部の実施形態では、ポマリドミドは経口投与される。一部の実施形態では、デキサメタゾンは経口投与される。一部の実施形態では、デキサメタゾンは静脈内投与される。
【0023】
一部の実施形態では、個体は、多発性骨髄腫のための最も近い前治療に抵抗性であった。一部の実施形態では、最も近い前治療はレナリドマイドであった。一部の実施形態では、最も近い前治療はプロテアソーム阻害剤であった。本明細書の使用のための抗体または本明細書の方法のいずれかによる一部の実施形態では、プロテアソーム阻害剤はボルテゾミブ、カルフィルゾミブおよびイキサゾミブからなる群から選択される。一部の実施形態では、レナリドマイドおよびプロテアソーム阻害剤は併用投与された。
【0024】
一部の実施形態では、個体は慢性閉塞性肺障害(COPD)を有する。一部の実施形態では、個体は喘息を有する。一部の実施形態では、個体は気管支けいれんを有する。一部の実施形態では、個体はポマリドミドによる前治療を受けていない。一部の実施形態では、個体は抗CD38抗体による前治療を受けていない。一部の実施形態では、個体はダラツムマブによる前治療を受けていない。一部の実施形態では、個体はdel(17p)、t(4;14)およびt(14;16)からなる群から選択される1つまたはそれ以上の細胞遺伝学的異常を有する。一部の実施形態では、個体は少なくとも65歳かつ75歳未満である。一部の実施形態では、個体は、75歳以上である。一部の実施形態では、個体は多発性骨髄腫のための少なくとも3つの前治療を受けている。一部の実施形態では、個体は東アジア人(例えば、日本の個人、韓国の個人または台湾の個人)である。一部の実施形態では、個体は国際病期分類(ISS)による第III期である。一部の実施形態では、個体は改訂国際病期分類(R-ISS)による第III期である。一部の実施形態では、個体は処置後に10-4以下(例えば、「10-4」は、患者骨髄試料において104の骨髄細胞につき1つ未満の腫瘍細胞があることを意味する)、処置後に10-5以下(例えば、「10-5」は、患者骨髄試料において105の骨髄細胞につき1つ未満の腫瘍細胞があることを意味する)、または処置後に10-6以下(例えば、「10-6」は、患者骨髄試料において106の骨髄細胞につき1つ未満の腫瘍細胞があることを意味する)の閾値で最小残存疾病(MRD)陰性である。一部の実施形態では、MRDは次世代シークエンシング(NGS)を通して調査される。一部の実施形態では、MRDは、次世代フローサイトメトリー(NGF)を通して調査される。さらに、あるいは、一部の実施形態では、MRDは、陽電子放射断層撮影-コンピュータ断層撮影法(PET-CT)スキャンを通して調査される。
【0025】
本明細書で提供される方法または使用のための抗体により個体の多発性骨髄腫を処置するための、ポマリドミドおよびデキサメタゾンと組み合わせて使用するための抗CD38抗体を含むキットが提供される。
【0026】
イサツキシマブを含む液体医薬製剤も提供される。一部の実施形態では、本明細書の医薬製剤は、5~20mg/mlの濃度のイサツキシマブ、ヒスチジン、酢酸塩およびリン酸塩からなる群から選択される緩衝剤、ならびにスクロースおよびマンニトールからなる群から選択される賦形剤、ならびに非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート20(PS20)、ポリソルベート80(PS80)またはポロキサマー188)を含み、ここで、医薬製剤のpHは約5.5~約7.4である。一部の実施形態では、医薬製剤は約20mMヒスチジン、約10%(w/v)スクロース、約0.2%(w/v)ポリソルベート80および約20mg/mlイサツキシマブを含み、ここで、医薬製剤のpHは約6.0である。
【0027】
この特許または出願書類は、少なくとも1つの着色した図面を含有する。カラー図面を含むこの特許または特許出願公報のコピーは、請求および必要な料金の支払いにより、所定機関より提供される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】実施例1に記載の臨床試験の研究デザインの概略図である。IPd(実験)群には、154人の患者が含まれていた。Pd(対照)群には、153人の患者が含まれていた。
【
図2】独立効果判定委員会(IRC)のアセスメントによる、IPd群(イサツキシマブ+ポマリドミド+デキサメタゾン)とPd群(ポマリドミド+デキサメタゾン)の患者の無増悪生存期間(PFS)のカプラン-マイヤープロットである。
【
図3】治験責任医師のアセスメントによる、IPd群(イサツキシマブ+ポマリドミド+デキサメタゾン)とPd群(ポマリドミド+デキサメタゾン)の患者の無増悪生存期間(PFS)のカプラン-マイヤープロットである。
【
図4】IPd群(イサツキシマブ+ポマリドミド+デキサメタゾン)とPd群(ポマリドミド+デキサメタゾン)の患者の全生存期間(OS)のカプラン-マイヤープロットである。
【
図5】IPd群とPd群における、様々なベースライン特性(例えば、年齢、eGFR、前治療歴、前治療のASCT(自家幹細胞移植)、細胞遺伝学的リスク因子、他)を有する患者におけるPFSのサブグループ分析を示すフォレストプロットである。
【
図6A】IPd群(イサツキシマブ+ポマリドミド+デキサメタゾン)における、微小残存病変(MRD)陰性であった患者、MRD陽性であったが、VGPRまたはそれより良い反応を達成した患者、PRを達成した患者、または処置開始の後、PR未満の達成であった患者の無増悪生存期間(PFS)のカプラン-マイヤープロットである。
【
図6B】IPd群(イサツキシマブ+ポマリドミド+デキサメタゾン)における、微小残存病変(MRD)陰性であった患者、MRD陽性であったが、VGPRまたはそれより良い反応を達成した患者、PRを達成した患者、または処置開始の後、PR未満の達成であった患者の全生存期間(OS))のカプラン-マイヤープロットである。
【
図7】Isa-Pd群とPd群における、ベースラインeGFR<50mL/分/1.73m
2を有する患者の腎完全奏功(CRenal)および耐久性CRenalまでの時間を示す図である。耐久性CRenal(別名「持続的CRenal」)は、少なくとも60日間維持される腎完全奏功である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
定義
本明細書および添付の請求項で使用されるように、内容が明らかに別途指図しない限り、単数形「a」、「an」および「the」には複数形が含まれる。したがって、例えば、「分子」への言及には、2つ以上のそのような分子の組合せが場合により含まれる、などである。
【0030】
「持続的奏功」は、疾患(例えば、多発性骨髄腫)を予防もしくはその進行を遅らせることおよび/または処置の停止の後に1つまたはそれ以上の効果判定基準を向上させることに及ぼす持続的効果を指す。例えば、多発性骨髄腫のための処置への奏功は、Kumar等(2016)「International Myeloma Working Group consensus criteria for response and minimal residual disease assessment in multiple myeloma。」Lancet Oncol.17(8):e328~e346頁)、およびDurie等(2006)「International uniform response criteria for multiple myeloma」。Leukemia.20:1467~1473頁の判定基準によって測定することができる。(下の表Aおよび本明細書の表Bも参照)。一部の実施形態では、持続的奏功は少なくとも処置期間と同じ、例えば処置期間の少なくとも1.5×、2.0×、2.5×または3.0×の長さの期間を有する。
【0031】
【0032】
用語「医薬製剤」は、有効成分の生物学的活性を有効にするような形であり、製剤が投与される対象に許容されないほど毒性である追加の構成成分を含有しない調製物を指す。そのような製剤は無菌である。「薬学的に許容される」賦形剤(ビヒクル、添加剤)は、用いられる有効成分の有効用量を提供するために対象哺乳動物に合理的に投与することができるものである。
【0033】
本明細書で使用されるように、用語「処置」は、臨床病理の過程で処置される疾患または細胞(例えば、がん細胞)の自然経過を変更するように設計された臨床的介入を指す。処置の望ましい効果には、疾患進行の速度を低下させること、疾患状態を改善または緩和すること、および寛解または予後の向上が含まれる。例えば、がん細胞の増殖を低減(または、破壊)し、疾患に起因する症状を減少させ、疾患を患っている者の生活の質を向上させ、疾患を処置するために必要な他の医薬品の用量を減少させ、および/または個体の生存期間を延長することを限定されずに含めて、がんと関連する1つまたはそれ以上の症状が軽減または除去される場合、個体は成功のうちに「処置される」。
【0034】
本明細書で使用されるように、「疾患の進行を遅らせる」は、疾患(がんなど)の発生を延ばし、妨げ、遅くさせ、遅らせ、安定させ、および/または延期することを意味する。この遅延は、病歴および/または処置される個体によって様々な長さの時間であってよい。当業者に明白であるように、十分なまたは有意な遅延は、個体が疾患を発症しないという点で実質的に予防を包含することができる。例えば、転移の発生などの後期のがんを遅らせることができる。
【0035】
「有効量」は、特定の障害の測定可能な向上または予防を成就するために必要とされる少なくとも最小限の量である。本明細書において有効量は、患者の疾患状態、年齢、性別および体重などの因子、ならびに個体で所望の奏功を導き出す抗体の能力によって異なってよい。有効量は、処置のいかなる毒性および有害作用よりも、治療的に有益な効果が上回るものでもある。予防的使用に関して、有益であるか所望の結果には、リスクを除去もしくは低減すること、重症度を低くすること、または疾患の発達中に現れる疾患の生化学的、組織学的ならびに/もしくは挙動の症状、その合併症および中間の病理学的表現型を含む疾患の発症を遅らせることなどの結果が含まれる。治療的使用に関して、有益であるか所望の結果には、疾患に起因する1つまたはそれ以上の症状を減少させ、疾患を患っている者の生活の質を向上させ、疾患を処置するために必要な他の医薬品の用量を減少させ、例えば標的化を通して別の医薬品の効果を増強し、疾患の進行を遅らせ、および/または生存期間を延長することなどの臨床結果が含まれる。がんまたは腫瘍の場合、薬物の有効量は、がん細胞の数を低減すること;腫瘍サイズを低減すること;末梢器官へのがん細胞の浸潤を阻害すること(すなわち、ある程度遅らせること、または望ましくは停止すること);腫瘍転移を阻害すること(すなわち、ある程度遅らせること、望ましくは停止すること);腫瘍増殖をある程度阻害すること;および/または障害に関連する症状の1つもしくはそれ以上をある程度軽減することにおいて効果を発揮することができる。有効量は、1回またはそれ以上の回数で投与することができる。本発明のために、薬物、化合物または医薬組成物の有効量は、予防的または治療的処置を直接的または間接的に達成するのに十分な量である。臨床場面で理解されているように、薬物、化合物または医薬組成物の有効量は、別の薬物、化合物または医薬組成物と併用して達成されても、されなくてもよい。したがって、「有効量」は1つまたはそれ以上の治療剤を投与する状況で考慮されてもよく、および1つまたはそれ以上の他の薬剤と併用して望ましい結果を達成することができるかまたは達成される場合、単一の薬剤を有効量で与えることを考慮することができる。
【0036】
本明細書で使用されるように、「と併用」は、別の処置療法に加えた1つの処置療法の投与を指す。このように、「と併用」は、個体への他の処置療法の投与の前、その間またはその後の1つの処置療法の投与を指す。
【0037】
処置目的のための「対象」または「個体」は、ヒト、家畜および畜産動物、ならびに動物園、スポーツまたは愛玩動物、例えばイヌ、ウマ、ネコ、ウシ等を含む哺乳動物に分類される任意の動物を指す。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
【0038】
本明細書における用語「抗体」は最も広い意味で使用され、具体的にはモノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異的抗体(例えば、二重特異的抗体)、および、それらが所望の生物活性を示す限り抗体断片を包含する。
【0039】
ヒト軽鎖はカッパおよびラムダ軽鎖に一般的に分類され、ヒト重鎖はミュー、デルタ、ガンマ、アルファまたはイプシロンに一般的に分類され、抗体のアイソタイプをそれぞれIgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEと規定する。IgGは、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を限定されずに含むいくつかのサブクラスを有する。IgMは、IgM1およびIgM2を限定されずに含むサブクラスを有する。IgAは、IgA1およびIgA2を限定されずに含むサブクラスに同様に細分化される。完全長軽鎖および重鎖の中では、可変および定常ドメインは約12以上のアミノ酸の「J」領域によって一般的に連結され、重鎖は約10以上のアミノ酸の「D」領域も含む。例えば、本明細書において完全に参照によって組み入れられる、FUNDAMENTAL IMMUNOLOGY(Paul、W.編、Raven Press、第2版、1989年)を参照されたい。各軽鎖/重鎖対の可変領域は、抗原結合性部位を一般的に形成する。抗体の可変ドメインは、相補性決定領域またはCDRとも呼ばれる3つの超可変領域によって連結される、比較的保存されたフレームワーク領域(FR)の同じ一般構造を一般的に示す。各対の2つの鎖のCDRはフレームワーク領域によって一般的に整列され、それは特異的エピトープへの結合を可能にする。アミノ末端からカルボキシル末端にかけて、軽鎖および重鎖の可変ドメインの両方は、順番にドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4を一般的に含む。
【0040】
用語「CDRセット」は、抗原に結合することが可能な単一の可変領域に存在する3つのCDRの群を指す。これらのCDRの正確な境界は、異なるシステムによって異なって規定されている。Kabat(Kabat等、SEQUENCES OF PROTEINS OF IMMUNOLOGICAL INTEREST(National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1987)および(1991))によって記載されるシステムは、抗体の任意の可変領域に適用可能な明白な残基ナンバリングシステムを提供するだけでなく、3つのCDRを規定する正確な残基境界も提供する。これらのCDRは、Kabat CDRと呼ぶことができる。
【0041】
本明細書で使用される用語「Fc」は、抗体の消化からもたらされるかまたは単量体もしくは多量体の形で他の手段によって生成され、ヒンジ領域を含有することができる非抗原結合性断片の配列を指す。天然Fcの元の免疫グロブリン供与源は好ましくはヒト起源であり、免疫グロブリンのいずれであってもよい。Fc分子は、共有結合(すなわち、ジスルフィド結合)および非共有結合によって二量体または多量体の形に連結することができる、単量体のポリペプチドで構成される。天然のFc分子の単量体サブユニット間の分子間ジスルフィド結合の数は、クラス(例えば、IgG、IgAおよびIgE)またはサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgA1、IgGA2およびIgG4)によって1から4の範囲内である。Fcの1つの例は、IgGのパパイン消化からもたらされるジスルフィド結合二量体である。本明細書で使用される用語「天然Fc」は、単量体、二量体および多量体の形の総称である。
【0042】
本明細書で使用されるように、用語「全奏功率」または「ORR」は、Kumar等(2016)「International Myeloma Working Group consensus criteria for response and minimal residual disease assessment in multiple myeloma」。Lancet Oncol.17(8):e328~e346頁およびDurie等(2006)「International uniform response criteria for multiple myeloma」。Leukemia.20:1467~1473頁に記載されるIMWG効果判定基準を使用してIRCによって調査される、厳密な完全奏功(sCR)、完全奏功(CR)、最良部分奏功(VGPR)および部分奏功(PR)の患者の割合を指す。表Aおよび表Bも参照されたい。
【0043】
概要
本明細書では、多発性骨髄腫のための少なくとも2つの前治療を受けた個体において、多発性骨髄腫を処置するかまたはその進行を遅らせるための方法または使用のための抗体が提供される。本明細書で提供される方法または使用のための抗体は、個体に抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)、ポマリドミドおよびデキサメタゾンの有効量を投与することを含む。一部の実施形態では、処置は個体の無増悪生存期間(PFS)および/または全生存期間(OS)を延長する。一部の実施形態では、個体は処置後に最小残存疾病(MRD)が陰性である。一部の実施形態では、処置は、抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)なしでポマリドミドおよびデキサメタゾンの投与を含む処置と比較して、個体の無増悪生存期間(PFS)および/または全生存期間(OS)を延長する。一部の実施形態では、処置は腎機能障害を向上させる。多発性骨髄腫を有する個体の腎臓障害の向上において使用するための方法または抗体も提供される。
【0044】
抗CD38抗体
一部の実施形態では、抗CD38抗体はヒトCD38に結合する。一部の実施形態では、抗CD38抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体である。一部の実施形態では、抗CD38抗体は、(a)アミノ酸配列DYWMQ(配列番号1)を含むCDR-H1、アミノ酸配列TIYPGDGDTGYAQKFQG(配列番号2)を含むCDR-H2およびアミノ酸配列GDYYGSNSLDY(配列番号3)を含むCDR-H3を含む重鎖可変ドメイン(VH)、ならびに(b)アミノ酸配列KASQDVSTVVA(配列番号4)を含むCDR-L1、アミノ酸配列SASYRYI(配列番号5)を含むCDR-L2およびアミノ酸配列QQHYSPPYT(配列番号6)を含むCDR-L3を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。一部の実施形態では、抗CD38抗体は、配列番号7と少なくとも90%(例えば、91%、92%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の少なくともいずれか1つ、これらの値の間の任意の範囲を含む)同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)を含む。さらに、あるいは、一部の実施形態では、抗CD38抗体は、配列番号8または配列番号9と少なくとも90%(例えば、91%、92%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の少なくともいずれか1つ、これらの値の間の任意の範囲を含む)同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。一部の実施形態では、抗CD38抗体は、配列番号7を含むVHおよび配列番号8または配列番号9を含むVLを含む。
QVQLVQSGAE VAKPGTSVKL SCKASGYTFT DYWMQWVKQR PGQGLEWIGT IYPGDGDTGY AQKFQGKATL TADKSSKTVY MHLSSLASED SAVYYCARGD YYGSNSLDYW GQGTSVTVSS(配列番号:7)
DIVMTQSHLS MSTSLGDPVS ITCKASQDVS TVVAWYQQKP GQSPRRLIYS ASYRYIGVPD RFTGSGAGTD FTFTISSVQA EDLAVYYCQQ HYSPPYTFGG GTKLEIKR(配列番号:8)
DIVMAQSHLS MSTSLGDPVS ITCKASQDVS TVVAWYQQKP GQSPRRLIYS ASYRYIGVPD RFTGSGAGTD FTFTISSVQA EDLAVYYCQQ HYSPPYTFGG GTKLEIKR(配列番号:9)
【0045】
一部の実施形態では、抗CD38抗体はイサツキシマブ(CAS登録番号:1461640-62-9)である。hu38SB19およびSAR650984としても知られるイサツキシマブは、その両方の内容は参照によって完全に本明細書に組み入れられる、WO2008/047242および米国特許第8,153,765号に記載される抗CD38抗体である。
【0046】
イサツキシマブの重鎖は、以下のアミノ酸配列を含み:
QVQLVQSGAE VAKPGTSVKL SCKASGYTFT DYWMQWVKQR PGQGLEWIGT IYPGDGDTGY
AQKFQGKATL TADKSSKTVY MHLSSLASED SAVYYCARGD YYGSNSLDYW GQGTSVTVSS
ASTKGPSVFP LAPSSKSTSG GTAALGCLVK DYFPEPVTVS WNSGALTSGV HTFPAVLQSS
GLYSLSSVVT VPSSSLGTQT YICNVNHKPS NTKVDKKVEP KSCDKTHTCP PCPAPELLGG
PSVFLFPPKP KDTLMISRTP EVTCVVVDVS HEDPEVKFNW YVDGVEVHNA KTKPREEQYN
STYRVVSVLT VLHQDWLNGK EYKCKVSNKA LPAPIEKTIS KAKGQPREPQ VYTLPPSRDE
LTKNQVSLTC LVKGFYPSDI AVEWESNGQP ENNYKTTPPV LDSDGSFFLY SKLTVDKSRW
QQGNVFSCSV MHEALHNHYT QKSLSLSPG(配列番号:10)
イサツキシマブの軽鎖は、以下のアミノ酸配列を含む:
DIVMTQSHLS MSTSLGDPVS ITCKASQDVS TVVAWYQQKP GQSPRRLIYS ASYRYIGVPD
RFTGSGAGTD FTFTISSVQA EDLAVYYCQQ HYSPPYTFGG GTKLEIKRTV AAPSVFIFPP
SDEQLKSGTA SVVCLLNNFY PREAKVQWKV DNALQSGNSQ ESVTEQDSKD STYSLSSTLT
LSKADYEKHK VYACEVTHQG LSSPVTKSFN RGEC(配列番号:11)
【0047】
抗CD38抗体は、組換え方法を使用して生成することができる。抗抗原抗体の組換え生成のために、抗体をコードする核酸を単離し、さらなるクローニング(DNAの増幅)または発現のために複製可能なベクターに挿入する。抗体をコードするDNAは、従来の手法を使用して(例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することが可能であるオリゴヌクレオチドプローブを使用して)、容易に単離し、配列決定をすることができる。多くのベクターが利用可能である。ベクター構成要素には、以下のものの1つまたはそれ以上が限定されずに一般的に含まれる:シグナル配列、複製起点、1つまたはそれ以上のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーターおよび転写終結配列。ベクターは、核酸の発現のために好適な宿主細胞の中に一般的に形質転換される。一部の実施形態では、宿主細胞は真核細胞または原核細胞である。一部の実施形態では、真核生物の宿主細胞は、哺乳動物細胞である。有益な哺乳動物宿主細胞系の例は、SV40によって形質転換したサル腎臓CV1系(COS-7、ATCC CRL1651);ヒト胚性腎臓系(懸濁培養での増殖のためにサブクローニングした293または293細胞、Graham等、J.Gen Virol.36:59頁(1977));ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL10);マウスセルトリ細胞(TM4、Mather、Biol.Reprod.23:243~251頁(1980));サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76、ATCC CRL-1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL34);バッファローラット肝細胞(BRL 3A、ATCC CRL1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL75);ヒト肝細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳房腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Mather等、Annals N.Y.Acad.Sci.383:44~68頁(1982));MRC 5細胞;FS4細胞;およびヒト肝癌系(Hep G2)である。他の有益な哺乳動物宿主細胞系には、DHFR-CHO細胞を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(Urlaub等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216頁(1980));ならびにNS0およびSp2/0などの骨髄腫細胞系が含まれる。抗体産生のために適するある特定の哺乳動物宿主細胞系のレビューについては、例えば、YazakiおよびWu、Methods in Molecular Biology、第248巻(B.K.C.Lo編、Humana Press、Totowa、N.J.、2003)、255~268頁を参照されたい。細胞から製造される抗CD38抗体は、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析および親和性クロマトグラフィーを使用して精製することができ、親和性クロマトグラフィーが一般的に好ましい精製工程の1つである。一般に、研究、試験および臨床適用に使用するための抗体を製造するための様々な方法は当技術分野で確立されており、上記の方法と一貫しており、および/または当業者によって適当であると考えられている。
【0048】
ポマリドミド
ポマリドミドの化学名は4-アミノ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)イソインドリン-1,3-ジオンであり、ポマリドミドは以下の化学構造を有する
【化1】
【0049】
ポマリドミドはC13H11N3O4の分子式および273.24g/molの分子量を有する。ポマリドミドは、POMALYST、POMALID、IMNOVIDおよび他として市販されている。
【0050】
デキサメタゾン
デキサメタゾンの化学名は1-デヒドロ-16アルファ-メチル-9アルファ-フルオロヒドロコルチゾンであり、デキサメタゾンは以下の化学構造を有する:
【化2】
【0051】
デキサメタゾンはC22H29FO5の分子式および392.461g/molの分子量を有する。デキサメタゾンは、経口および静脈内投与のための製剤として市販されている。デキサメタゾンの例示的な商品名には、例えば、DECADRON、MAXIDEX、HEXADROL、DEXACORT、DEXASONE、ORADEXON、SUPERPREDNOL、DEXALONAおよび他が含まれる。
【0052】
医薬組成物および製剤
本明細書では、例えば多発性骨髄腫(難治性多発性骨髄腫または再発難治性多発性骨髄腫など)の処置のための、抗CD38抗体(イサツキシマブなど)、ポマリドミドまたはデキサメタゾンを含む医薬組成物および製剤も提供される。一部の実施形態では、抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)、ポマリドミドおよびデキサメタゾンの各々は、別々の医薬組成物として提供される。一部の実施形態では、医薬組成物および製剤は、薬学的に許容される担体および/または薬学的に許容される賦形剤をさらに含む。PS80などの非イオン性界面活性剤を含む好適な賦形剤は、USおよびEPからの薬局方(それぞれ、USPおよびPhEu)ならびに2015年の中国薬局方(ChP、それは、例えば注射用のポリソルベート80を記載する)に記載される。
【0053】
一部の実施形態では、本明細書で提供される医薬製剤は、5~20mg/mlの濃度のイサツキシマブ、ヒスチジン、酢酸塩およびリン酸塩からなる群から選択される緩衝剤、ならびにスクロースおよびマンニトールからなる群から選択される賦形剤、ならびに0.001%~0.03%の非イオン性界面活性剤(PS20、PS80またはポロキサマー188など)を含み、ここで、医薬製剤のpHは約5.5~約7.4である。一部の実施形態では、医薬製剤は、5mg/mlイサツキシマブ、10mMヒスチジンまたは10mM酢酸塩、10%(w/v)スクロースまたは5%マンニトール、および0.001、0.005%、または0.01%(w/v)非イオン性界面活性剤を含み、ここで、医薬製剤のpHは約6.0または約6.5である。一部の実施形態では、医薬製剤は、5mg/mlイサツキシマブ、10mMヒスチジン、10%(w/v)スクロース、および0.005%(w/v)PS80を含み、医薬製剤のpHは約6.0または約6.5である。一部の実施形態では、非イオン性界面活性剤はPS80である。
【0054】
一部の実施形態では、本明細書に記載される抗CD38抗体(イサツキシマブなど)は、約20mg/mL抗体、約20mMヒスチジン、約10%(w/v)スクロースおよび約0.02%(w/v)非イオン性界面活性剤(PS20、PS80またはポロキサマー188など)を含む医薬製剤中にあり、ここで、医薬製剤のpHは約6.0である。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗CD38抗体(イサツキシマブなど)は、約20mg/mL抗体、約100mg/mLスクロース、2.22mg/mL塩酸ヒスチジン一水和物、約1.46mg/mlヒスチジンおよび約0.2mg/ml非イオン性界面活性剤を含む医薬製剤中にある。一部の実施形態では、非イオン性界面活性剤はPS80である。
【0055】
一部の実施形態では、医薬製剤は注射用滅菌水(SWFI)などの注射用水(WFI)を含む。一部の実施形態では、医薬製剤は無菌である。一部の実施形態では、製剤の単回使用は、医薬製剤5ml(すなわち、抗CD38抗体100mg)を含む。一部の実施形態では、単回使用の医薬製剤5mlは、例えば、エラストマー締め具を取り付けたI型6mL無色透明ガラスバイアルの中で提供される。一部の実施形態では、バイアルの充填量は、5mLの取出しを確実にするように確立されている。一部の実施形態では、充填量は5.4mLである。一部の実施形態では、製剤の単回使用は、医薬製剤25ml(すなわち、抗CD38抗体500mg)を含む。一部の実施形態では、単回使用の医薬製剤25mlは、例えば、エラストマー締め具を取り付けた30mL無色透明ガラスバイアルの中で提供される。一部の実施形態では、バイアルの充填量は、25mLの取出しを確実にするように確立されている。一部の実施形態では、医薬製剤は、光から保護された約2℃から約8℃の間の温度で、それらの値の間の任意の範囲を含む少なくとも約6、12、18、24、30または36カ月間安定している。一部の実施形態では、医薬製剤は、注入のために0.9%塩化ナトリウムまたは5%ブドウ糖に希釈される。一部の実施形態では、希釈された注入溶液は、約2℃から約8℃の間で、それらの値の間の任意の範囲を含む最大約6、12、18、24、30、36、42または48時間の間安定している。一部の実施形態では、希釈された注入用溶液は、約2℃から約8℃の間での保存後に、室温でさらに8時間の間(例えば、注入時間を含む)安定している。一部の実施形態では、希釈された注入用溶液は、光の存在下で安定している。一部の実施形態では、希釈される注入用溶液が希釈されるバッグは、ポリオレフィン(PO)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)とジ(エチルヘキシル)フタレート(DEHP)またはエチレン-酢酸ビニル(EVA)から製作される。一部の実施形態では、注入のために使用されるチュービングは、PE、PVC(DEHPの有無にかかわらず)、ポリブチルジエン(PBD)またはポリウレタン(PU)とインラインフィルター(ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスルホンまたはナイロン)から製作される。
【0056】
ポマリドミドおよびデキサメタゾンの医薬製剤は、市販されている。例えば、ポマリドミドは、POMALYST(登録商標)を含む様々な商品名(本明細書の他の場所に記載される)で知られている。デキサメタゾンは、DECADRON、MAXIDEXおよびHEXADROLを含む様々な商品名(本明細書の他の場所に記載される)で知られている。一部の実施形態では、ポマリドミドおよび/またはデキサメタゾンは、別々の容器で提供される。一部の実施形態では、ポマリドミドおよび/またはデキサメタゾンは、各々、市販製品で利用可能な処方情報に記載の通りに、個体への投与のために使用され、および/または調製される。
【0057】
処置方法および処置に使用するための抗体
本明細書では、個体(例えば、ヒト個体)の多発性骨髄腫(例えば、再発多発性骨髄腫または再発難治性多発性骨髄腫)の処置またはその進行の遅延における使用のための方法および抗体であって、個体に抗CD38抗体(例えば、(a)アミノ酸配列DYWMQ(配列番号1)を含むCDR-H1、アミノ酸配列TIYPGDGDTGYAQKFQG(配列番号2)を含むCDR-H2およびアミノ酸配列GDYYGSNSLDY(配列番号3)を含むCDR-H3を含む重鎖可変ドメイン(VH)、ならびに(b)アミノ酸配列KASQDVSTVVA(配列番号4)を含むCDR-L1、アミノ酸配列SASYRYI(配列番号5)を含むCDR-L2およびアミノ酸配列QQHYSPPYT(配列番号6)を含むCDR-L3を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗CD38抗体)、ポマリドミドおよびデキサメタゾンの有効量を投与することを含む方法および抗体が提供され、ここで、個体は多発性骨髄腫のための少なくとも2つの前治療(例えば、レナリドマイドおよびプロテアソーム阻害剤)を受けている。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンの投与は、個体において持続的奏功をもたらす。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンの投与は、個体の無増悪生存期間(PFS)を延長する。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンの投与は、個体の全生存期間(OS)を延長する。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンの投与は、より低い最小残存疾病(MRD)をもたらす。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンの投与の後に個体はMRD陰性である。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンの投与の前に、個体は腎機能障害を示す。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンの投与は、個体において腎臓機能を向上させる。一部の実施形態では、個体は成体、例えば少なくとも18歳である。
【0058】
本明細書では、多発性骨髄腫の個体(例えば、ヒト個体)の腎臓障害の向上における使用のための方法または抗体であって、個体に、(a)アミノ酸配列DYWMQ(配列番号1)を含むCDR-H1、アミノ酸配列TIYPGDGDTGYAQKFQG(配列番号2)を含むCDR-H2およびアミノ酸配列GDYYGSNSLDY(配列番号3)を含むCDR-H3を含む重鎖可変ドメイン(VH)、ならびに(b)アミノ酸配列KASQDVSTVVA(配列番号4)を含むCDR-L1、アミノ酸配列SASYRYI(配列番号5)を含むCDR-L2およびアミノ酸配列QQHYSPPYT(配列番号6)を含むCDR-L3を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンの有効量を投与することを含む方法または抗体が提供される。一部の実施形態では、多発性骨髄腫の個体は、腎臓障害を有することに基づいて、抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンによる投与のために選択される。一部の実施形態では、多発性骨髄腫および腎臓障害の個体は、劣った予後を有する。一部の実施形態では、個体は成体、例えば少なくとも18歳である。一部の実施形態では、個体が処置の開始前に約90mL/分/1.73m2未満の推定された糸球体濾過率(eGFR)を有する場合、その個体は腎臓障害を有する。一部の実施形態では、個体が処置の開始前に約60mL/分/1.73m2から約90mL/分/1.73m2未満の推定された糸球体濾過率(eGFR)を有する場合、その個体は腎臓障害を有する。一部の実施形態では、処置の開始前に約60mL/分/1.73m2から約90mL/分/1.73m2未満のeGFRを有する個体は、軽度の腎臓障害を有する。一部の実施形態では、個体が処置の開始前に約30mL/分/1.73m2から約60mL/分/1.73m2未満の推定された糸球体濾過率(eGFR)を有する場合、その個体は腎臓障害を有する。一部の実施形態では、処置の開始前に約30mL/分/1.73m2から約60mL/分/1.73m2未満の(例えば、約30未満、約50未満または約60mL/分/1.73m2未満の)eGFRを有する個体は、中等度の腎臓障害を有する。一部の実施形態では、個体が処置の開始前に約30mL/分/1.73m2未満の推定された糸球体濾過率(eGFR)を有する場合、その個体は腎臓障害を有する。一部の実施形態では、処置の開始前に約30mL/分/1.73m2未満のeGFRを有する個体は、重度の腎臓障害を有する。一部の実施形態では、個体が処置の開始前に約90mL/分/1.73m2未満のクレアチニンクリアランスを有する場合、その個体は腎臓障害を有する。一部の実施形態では、個体が処置の開始前に約60mL/分/1.73m2から約90mL/分/1.73m2未満のクレアチニンクリアランスを有する場合、その個体は腎臓障害を有する。一部の実施形態では、処置の開始前に約60mL/分/1.73m2から約90mL/分/1.73m2未満のクレアチニンクリアランスを有する個体は、軽度の腎臓障害を有する。一部の実施形態では、個体が処置の開始前に約30mL/分/1.73m2から約60mL/分/1.73m2未満のクレアチニンクリアランスを有する場合、その個体は腎臓障害を有する。一部の実施形態では、処置の開始前に約30mL/分/1.73m2から約60mL/分/1.73m2未満の(例えば、約50未満または約60mL/分/1.73m2未満の)クレアチニンクリアランスを有する個体は、中等度の腎臓障害を有する。一部の実施形態では、個体が処置の開始前に約30mL/分/1.73m2未満のクレアチニンクリアランスを有する場合、その個体は腎臓障害を有する。一部の実施形態では、処置の開始前に約30mL/分/1.73m2未満のクレアチニンクリアランスを有する個体は、重度の腎臓障害を有する。一部の実施形態では、抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンによる処置の開始の後に、個体は腎奏功を達成する。一部の実施形態では、抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンによる処置の開始の後に、個体は腎完全奏功を達成する。一部の実施形態では、腎完全奏功は、処置の開始前の<50mL/分/1.73m2から処置の間の少なくとも1つの調査からの≧60mL/分/1.73m2へのベースラインeGFRまたはクレアチニンクリアランスの改善として特徴付けられる。一部の実施形態では、処置の開始の後に、個体は持続的な腎完全奏功を達成する。持続的な腎完全奏功は、「永続的な腎完全奏功」としても知られる。一部の実施形態では、持続的な腎完全奏功(または「永続的な腎完全奏功」)は、処置の開始前の<50mL/分/1.73m2から≧60mL/分/1.73m2への、少なくとも約60日間持続するベースラインeGFRまたはクレアチニンクリアランスの改善として特徴付けられる。一部の実施形態では、抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンによる処置を受ける個体における最初の腎奏功までの時間は、ポマリドミドおよびデキサメタゾンによる処置を受ける個体における最初の腎奏功までの時間より短い。一部の実施形態では、「最初の腎奏功までの時間」は、抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンによる処置の最初の投与日と、腎奏功の最初の徴候の日の間の時間を指す。一部の実施形態では、抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンによる処置を受ける個体における腎完全奏功までの時間は、処置の開始から約8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、15.5または16週のいずれか1つであり、これらの値の間の任意の範囲も含まれる。一部の実施形態では、抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンによる処置を受ける個体における腎完全奏功までの時間は、抗CD38抗体なしでポマリドミドおよびデキサメタゾンによる処置を受ける個体における腎完全奏功までの時間より、約1、1.5、2、2.5、3、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9または4週のいずれか1つの分だけ短く、これらの値の間の任意の範囲も含まれる。一部の実施形態では、抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンによる処置を受ける個体における持続的な腎完全奏功(「永続的な腎完全奏功」としても知られる)までの時間は、処置の開始から約1、1.5、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9または3週のいずれか1つであり、これらの値の間の任意の範囲も含まれる。一部の実施形態では、抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンによる処置を受ける個体における腎完全奏功までの時間は、抗CD38抗体なしでポマリドミドおよびデキサメタゾンによる処置を受ける個体における腎完全奏功までの時間より、約1、1.5、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9または3週の分だけ短く、これらの値の間の任意の範囲も含まれる。
【0059】
一部の実施形態では、本明細書で提供される方法または使用のための抗体による抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンによる処置は、個体において末期腎疾患(ESRD)を予防するかまたは遅らせる。一部の実施形態では、抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンによる処置を受ける個体は、抗CD38抗体なしでポマリドミドおよびデキサメタゾンによる処置を受ける個体よりESRDを起こす確率が低い。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法または使用のための抗体による抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンによる処置を受ける個体におけるESRDは、抗CD38抗体なしでポマリドミドおよびデキサメタゾンによる処置を受ける個体と比較して、少なくとも約1、2、3もしくは4週のいずれか1つ分だけ;少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、18、24、30、36、42もしくは48カ月のいずれか1つ分だけ;または48カ月より長く(例えば、約4.5、5、5.5もしくは6年のいずれか1つ分)遅延され、これらの値の間の任意の範囲も含まれる。
【0060】
一部の実施形態では、本明細書で提供される方法または使用のための抗体は、個体の無増悪生存期間(PFS)を延長する。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法または使用のための抗体は、個体の全生存期間(OS)を延長する。一部の実施形態では、個体は処置(例えば、抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンによる処置)の後に最小残存疾病(MRD)に陰性である。一部の実施形態では、個体は多発性骨髄腫のための少なくとも2つの前治療(または、前治療ライン)を受けている(例えば、レナリドマイドおよびプロテアソーム阻害剤など)。
【0061】
一部の実施形態では、個体は最も近い前治療(または治療ライン)、例えば、抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンによる処置の開始の直前の治療(または治療ライン)の間、進行性疾患を示していた。一部の実施形態では、個体は多発性骨髄腫のための最も近い前治療(または治療ライン)、例えば、抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンによる処置の開始の直前の治療(または、治療ライン)の終了から60日以内に、進行(PD)を示していた。一部の実施形態では、進行(PD)は、国際骨髄腫作業部会判定基準によって規定される(例えば、Kumar等(2016)「International Myeloma Working Group consensus criteria for response and minimal residual disease assessment in multiple myeloma」。Lancet Oncol.17(8):e328~e346頁;Durie等(2006)「International uniform response criteria for multiple myeloma」。Leukemia.20:1467~1473頁;ならびに本明細書の表Aおよび表Bを参照されたい)。一部の実施形態では、治療ラインは、単一の薬剤もしくは2つ以上の薬剤の組合せの≧1の完全サイクル、または幹細胞移植を含む計画的逐次治療である。一部の実施形態では、前治療ラインの中止の後に新規の治療ラインが開始される場合、所与の処置は新規の治療ラインとみなされる。一部の実施形態では、何らかの理由のために処置レジメンが中止され、異なる処置レジメンが開始される場合、処置は新規の治療ラインとみなされる。一部の実施形態では、その所与のレジメンの中の全ての薬物が停止された場合、処置レジメンは中止されたとみなされる。一部の実施形態では、レジメンの薬物の全部でなく一部が中止された場合、レジメンは中止されたとみなされない。一部の実施形態では、中止、追加、置換またはSCT(幹細胞移植)の理由は、ラインがどのように数えられるかに影響を与えない。一部の実施形態では、既存のレジメンに1つまたはそれ以上の薬物の計画外の追加または置換があった場合、所与の処置は新規の治療ラインとみなされる。一部の実施形態では、1回を超えるSCTを受ける個体では、所定の間隔(3カ月など)の計画的タンデム型SCTの場合を除いて、各SCT(自家または同種異系の)は、使用される前処置レジメンが同じであるかまたは異なるかどうかに関係なく、新規の治療ラインとみなすことができる。一部の実施形態では、計画的タンデム型SCTは、1ラインとみなされる。一部の実施形態では、任意のSCT(第一線、再発、自家または同種異系)による計画的な誘導および/または統合、維持は、1ラインの治療とみなされる。
【0062】
一部の実施形態では、多発性骨髄腫は処置が困難である。一部の実施形態では、個体は難治性多発性骨髄腫を有する。一部の実施形態では、難治性多発性骨髄腫の個体は、全ての前治療(または、前治療ライン)に抵抗性であったが、1つの前治療(または、治療ライン)に対して少なくとも最小奏功(MR)を達成した個体である。一部の実施形態では、最小奏功(MR)は、国際骨髄腫作業部会判定基準(例えば、Kumar等(2016)「International Myeloma Working Group consensus criteria for response and minimal residual disease assessment in multiple myeloma」。Lancet Oncol.17(8):e328~e346頁;Durie等(2006)「International uniform response criteria for multiple myeloma」。Leukemia。20:1467~1473頁;ならびに本明細書の表Aおよび表Bを参照されたい)により規定される。一部の実施形態では、難治性多発性骨髄腫の個体は、前治療(または、前治療ライン)に非応答性だった個体である。一部の実施形態では、多発性骨髄腫のための治療(または治療ライン)に「非応答性である」とは、個体が多発性骨髄腫のための治療(または治療ライン)に対して少なくとも最小奏功(MR)を達成することができなかったことを意味する。一部の実施形態では、多発性骨髄腫のための治療または治療ライン)に「非応答性である」とは、個体が多発性骨髄腫のための治療(または治療ライン)の間に進行性の疾患を示したことを意味する。一部の実施形態では、難治性多発性骨髄腫の個体は、多発性骨髄腫のための最後の治療の終了から60日以内に進行を示した個体である。
【0063】
一部の実施形態では、個体は多発性骨髄腫のための前の処置(例えば、レナリドマイドおよび/またはプロテアソーム阻害剤による処置)に失敗した。一部の実施形態では、前の処置に「失敗する」とは、処置(例えば、レナリドマイドおよび/またはプロテアソーム阻害剤による処置)の間に、または処置(例えば、レナリドマイドおよび/またはプロテアソーム阻害剤による処置)の終了から60日以内に、個体が疾患進行(例えば、表Aおよび表Bの判定基準による)を示したことを意味する。一部の実施形態では、多発性骨髄腫のための前の処置に「失敗する」とは、処置(例えば、レナリドマイドおよび/またはプロテアソーム阻害剤による処置)に対して個体が部分奏功(PR)またはより優れた奏功(例えば、表Aおよび表Bの判定基準による)を示していたが、処置(例えば、レナリドマイドおよび/またはプロテアソーム阻害剤による処置)の中止から6カ月以内に疾患進行を示したことを意味する。一部の実施形態では、多発性骨髄腫のための前の処置に「失敗する」ことは、連続する最低2サイクルの処置レジメン(例えば、レナリドマイドおよび/またはプロテアソーム阻害剤(ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、イキサゾミブ、マリゾミブ、オプロゾミブ等)を含有する処置レジメン)の後に、個体が毒性/不耐性を起こすことを意味する。一部の実施形態では、プロテアソーム含有レジメンへの不耐性は、個体(例えば、レジメンの開始前に末梢神経障害を有していなかった個体)が、例えば、プロテアソーム含有レジメンによる処置の間かまたはその後に末梢神経障害または神経障害性疼痛を起こすことを意味する。一部の実施形態では、レナリドマイド含有レジメンへの不耐性は、個体がレナリドマイド含有レジメンによる処置の間かまたはその後に重度の発疹を起こしたことを意味する。
【0064】
一部の実施形態では、個体は再発難治性多発性骨髄腫を有する。一部の実施形態では、個体は以下の判定基準の1つまたはそれ以上による測定可能な疾患を有する:血清タンパク質免疫電気泳動を使用して測定した≧0.5g/dLの血清Mタンパク質、および/または尿タンパク質免疫電気泳動を使用して測定した≧200mg/24時間の尿Mタンパク質、および/または血清遊離軽鎖(FLC)(すなわち、FLCアッセイ≧10mg/dl(≧100mg/L)、および異常な血清FLC比(<0.26または>1.65)。一部の実施形態では、再発難治性多発性骨髄腫の個体は、多発性骨髄腫のための少なくとも1つの前治療(または治療ライン)から再発し、多発性骨髄腫のための最も近い治療(または治療ライン)に抵抗性であった個体である。一部の実施形態では、再発難治性多発性骨髄腫の個体は、多発性骨髄腫のための少なくとも1つの前治療(または治療ライン)から再発し、多発性骨髄腫のための最も近い治療(または治療ライン)に抵抗性であって、多発性骨髄腫のための最も近い治療(または治療ライン)の前の1つまたはそれ以上の治療(または治療ライン)に抵抗性であった個体である。一部の実施形態では、再発または難治性多発性骨髄腫の個体は、最も近い治療(または治療ライン)の終了から60日以内に進行を示した個体である。
【0065】
一部の実施形態では、個体は最も近い前治療(または治療ライン)に抵抗性であった。
【0066】
一部の実施形態では、個体は、測定可能な疾患(例えば、血清タンパク質免疫電気泳動を使用して測定した≧0.5g/dLの血清Mタンパク質、および/または尿タンパク質免疫電気泳動を使用して測定した≧200mg/24時間の尿Mタンパク質)のある再発/難治性多発性骨髄腫(RRMM)を有し、レナリドマイドおよびプロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、イキサゾミブ、マリゾミブ、オプロゾミブ等)を含む少なくとも2つの前治療を受けており、最後の治療ライン(すなわち、最も近い治療ライン)に抵抗性であった。一部の実施形態では、個体は、十分な腎臓、肝臓および骨髄機能を有する。
【0067】
一部の実施形態では、個体は劣った予後を有する。本明細書で提供される方法または使用のための抗体の一部の実施形態では、個体は、多発性骨髄腫のための少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つの前治療(または前治療ライン)または4つより多い前治療(または前治療ライン)、例えば、少なくとも5、6、7、8、9、10または11のいずれか1つの前治療(または前治療ライン)を受けている。
【0068】
一部の実施形態では、個体はレナリドマイドによる少なくとも1つの前治療(または前治療ライン)を受けている。一部の実施形態では、レナリドマイド前治療(またはレナリドマイド前治療ライン)は、連続した少なくとも2サイクルのレナリドマイドを含んでいた。一部の実施形態では、個体は、レナリドマイド前治療(または、レナリドマイド前治療ライン)に失敗した(例えば、非応答性であった)。一部の実施形態では、レナリドマイド前治療(またはレナリドマイド前治療ライン)に失敗した個体は、レナリドマイドによる治療(または治療ライン)の間に少なくとも最小奏功(MR)を達成しなかった。一部の実施形態では、レナリドマイド前治療(またはレナリドマイド前治療ライン)に失敗した個体は、レナリドマイドによる治療(または治療ライン)の間に進行(PD)を示した。本明細書の他の場所で言及されるように、一部の実施形態では、「最小奏功」および「進行」は、Kumar等(2016)「International Myeloma Working Group consensus criteria for response and minimal residual disease assessment in multiple myeloma」。Lancet Oncol.17(8):e328~e346頁およびDurie等(2006)「International uniform response criteria for multiple myeloma」。Leukemia.20:1467~1473頁の判定基準によって調査される(本明細書の表Aおよび表Bも参照されたい)。一部の実施形態では、前のレナリドマイドは、多発性骨髄腫のための第1、第2、第3、第4、第5、第6および/またはそれ以降の治療(または治療ライン)の間に投与された(すなわち、本明細書で提供される方法または使用のための抗体による抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンによる処置の前に)。一部の実施形態では、個体はレナリドマイドに抵抗性であった。一部の実施形態では、前のレナリドマイドは単一の薬剤として個体に投与された。一部の実施形態では、前のレナリドマイドは、少なくとも1つの追加の薬剤と併用して個体に投与された。
【0069】
一部の実施形態では、個体はプロテアソーム阻害剤(PI)による少なくとも1つの前治療(または少なくとも1つの前治療ライン)を受けている。一部の実施形態では、プロテアソーム阻害剤は、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、イキサゾミブ、マリゾミブおよびオプロゾミブからなる群から選択される。一部の実施形態では、プロテアソーム阻害剤による前治療(または前治療ライン)は、連続した少なくとも2サイクルのプロテアソーム阻害剤を含んでいた。一部の実施形態では、個体は、プロテアソーム阻害剤前治療(またはプロテアソーム阻害剤前治療ライン)に失敗した(例えば、非応答性であった)。一部の実施形態では、プロテアソーム阻害剤による前治療(または治療ライン)に失敗した個体は、プロテアソーム阻害剤による治療(または治療ライン)の間に少なくとも最小奏功(MR)を達成しなかった。一部の実施形態では、プロテアソーム阻害剤による前治療(または前治療ライン)に失敗した個体は、プロテアソーム阻害剤による治療(または前治療ライン)の間に進行(PD)を示した。一部の実施形態では、プロテアソーム阻害剤前治療は、多発性骨髄腫のための第1、第2、第3、第4、第5、第6および/またはそれ以降の治療(または治療ライン)の間に投与された(すなわち、本明細書で提供される方法または使用のための抗体による抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンによる処置の前に)。一部の実施形態では、個体はプロテアソーム阻害剤(例えば、1つまたはそれ以上のプロテアソーム阻害剤)に抵抗性であった。一部の実施形態では、プロテアソーム阻害剤前治療(またはプロテアソーム阻害剤前治療ライン)は、単一の薬剤として個体に投与された。一部の実施形態では、プロテアソーム阻害剤前治療(または、プロテアソーム阻害剤前治療ライン)は、少なくとも1つの追加の薬剤と併用して個体に投与された。
【0070】
一部の実施形態では、レナリドマイドおよびプロテアソーム阻害剤は、個体に併用投与された。一部の実施形態では、個体は、レナリドマイドおよび/またはプロテアソーム阻害剤(例えば、単独でまたは併用で与えられる)に部分奏功(PR)またはそれ以上を以前に達成していたが、レナリドマイドおよび/またはプロテアソーム阻害剤による治療の終了(または治療ラインの終了)から6カ月以内に進行(PD)を示した。
【0071】
一部の実施形態では、個体は東アジア人である。一部の実施形態では、東アジア人の個体は、日本の個人、韓国の個人または台湾の個人である。
【0072】
一部の実施形態では、個体は慢性閉塞性肺障害(COPD)を有する。一部の実施形態では、抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンによる処置の開始の前に、個体はCOPDと診断される。一部の実施形態では、抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンによる処置の開始後に、個体はCOPDを発症し、および/または診断される。
【0073】
一部の実施形態では、個体は喘息を有する。一部の実施形態では、抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンによる処置の開始の前に、個体は喘息と診断される。一部の実施形態では、抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンによる処置の開始後に、個体は喘息を発症し、および/または診断される。
【0074】
一部の実施形態では、個体は気管支けいれんを有する(例えば、経験する)。一部の実施形態では、抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンによる処置の開始の前に、個体は気管支けいれんを経験している。一部の実施形態では、抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンによる処置の開始の後に、個体は気管支けいれんを発症する。
【0075】
一部の実施形態では、本明細書で提供される方法または使用のための抗体による処置を受ける個体の骨髄形質細胞は、約13000から約340000の受容体/がん細胞のCD38受容体密度を有する。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法または使用のための抗体による処置を受ける個体は、FCGR3A遺伝子におけるF158V単一ヌクレオチド多型に関して異種接合である。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法または使用のための抗体による処置を受ける個体は、FCGR3A遺伝子におけるF158V単一ヌクレオチド多型に関してホモ接合である。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法または使用のための抗体による処置を受ける個体は、FCGR3A遺伝子におけるF158V単一ヌクレオチド多型を有しない。
【0076】
一部の実施形態では、個体は原発性の難治性多発性骨髄腫を有しない。一部の実施形態では、原発性難治性多発性骨髄腫の個体は、疾患の経過中にいかなる治療(または治療ライン)によっても少なくとも最小奏功(MR)を達成しなかった個体である。一部の実施形態では、個体は、遊離軽鎖(FLC)測定可能な疾患だけを有しない。一部の実施形態では、個体は抗CD38抗体による前の処置を受けていない。一部の実施形態では、個体は抗CD38抗体、例えば、ダラツムマブによる前の処置を受けている。一部の実施形態では、個体はイサツキシマブによる前治療(または前治療ライン)を受けていない。一部の実施形態では、個体は抗CD38抗体による前治療(または前治療ライン)の間に進行(PD)を示していない。一部の実施形態では、個体は抗CD38抗体による治療(または治療ライン)の終了から60日以内にPDを示していない。一部の実施形態では、個体はポマリドミドによる前治療(または前治療ライン)を受けていない。一部の実施形態では、個体はポマリドミドによる前治療(または前治療ライン)を受けている。一部の実施形態では、個体は前の同種異系造血幹細胞移植を受けていない。
【0077】
一部の実施形態では、処置は、10mg/kgの用量の抗CD38抗体、4mgの用量のポマリドミド、および40mgの用量(すなわち、個体が75歳未満の場合)、または20mgの用量(すなわち、個体が75歳以上の場合)のデキサメタゾンを投与することを含む。一部の実施形態では、抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)は静脈内投与される。一部の実施形態では、ポマリドミドは経口投与される。一部の実施形態では、デキサメタゾンは静脈内または経口投与される。
【0078】
一部の実施形態では、処置は、抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンを28日周期で個体に投与することを含む。一部の実施形態では、抗CD38抗体は、第1の28日周期(すなわち、第1周期)の1、8、15および22日目に10mg/kgの用量で投与され、ポマリドミドは、第1の28日周期(すなわち、第1周期)の1~21日目に毎日4mgの用量で投与され、デキサメタゾンは、個体が75歳未満の場合は第1の28日周期(すなわち、第1周期)の1、8、15および22日目に40mgの用量で、または個体が75歳以上の場合は第1の28日周期(すなわち、第1周期)の1、8、15および22日目に20mgの用量で投与される。一部の実施形態では、抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンは、第1の28日周期(すなわち、第1周期)の1、8および15日目に逐次的に投与される。一部の実施形態では、ポマリドミドおよびデキサメタゾンは、第1の28日周期(すなわち、第1周期)の1日目の抗CD38抗体の前に投与される。一部の実施形態では、デキサメタゾンは抗CD38抗体の前に投与され、抗CD38抗体は第1の28日周期(すなわち、第1周期)の8日目および15日目のポマリドミドの前に投与される。
【0079】
一部の実施形態では、処置は、抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンを、第1の28日周期(すなわち、第1周期)の後の1つまたはそれ以上の28日周期に投与することを含む。一部の実施形態では、抗CD38抗体は、第1周期の後の各周期(例えば、第2、3、4周期等)の1および15日目に10mg/kgの用量で投与され、ポマリドミドは、第1周期の後の各周期(例えば、第2、3、4周期等)の1~21日目に毎日4mgの用量で投与され、デキサメタゾンは、個体が75歳未満の場合、第1周期の後の各周期(例えば、第2、3、4周期等)の1、8、15および22日目に40mgの用量で、または個体が75歳以上の場合、第1周期の後の各周期(例えば、第2、3、4周期等)の1、8、15および22日目に20mgの用量で投与される。一部の実施形態では、抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンは、第1周期の後の各周期(例えば、第2、3、4周期等)の1および15日目に逐次的に投与される。一部の実施形態では、ポマリドミドおよびデキサメタゾンは、第1周期の後の各28日周期(例えば、第2、3、4周期等)の1日目の抗CD38抗体の前に投与される。一部の実施形態では、デキサメタゾンは抗CD38抗体の前に投与され、抗CD38抗体は第1周期の後の各28日周期(例えば、第2、3、4周期等)の15日目のポマリドミドの前に投与される。
【0080】
一部の実施形態では、処置は、抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンを28日周期で個体に投与することを含む。一部の実施形態では、抗CD38抗体は、第1の28日周期(すなわち、第1周期)の毎週1回10mg/kgの用量で投与され、ポマリドミドは、第1の28日周期(すなわち、第1周期)の21日間、4mgの用量で投与され、デキサメタゾンは、個体が75歳未満の場合は第1の28日周期(すなわち、第1周期)の毎週1回、40mgの用量で、または個体が75歳以上の場合は第1の28日周期(すなわち、第1周期)の毎週1回、20mgの用量で投与される。一部の実施形態では、抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンは、第1の28日周期(すなわち、第1周期)に逐次的に投与される。一部の実施形態では、ポマリドミドおよびデキサメタゾンは、第1の28日周期(すなわち、第1周期)の抗CD38抗体の前に投与される。一部の実施形態では、デキサメタゾンは抗CD38抗体の前に投与され、抗CD38抗体は第1の28日周期(すなわち、第1周期)の8および15日目のポマリドミドの前に投与される。
【0081】
一部の実施形態では、処置は抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンを、第1の28日周期(すなわち、第1周期)の後の1つまたはそれ以上の28日周期に投与することを含む。一部の実施形態では、抗CD38抗体は、第1周期の後の各28日周期(例えば、第2、3、4周期等)の隔週に1回、10mg/kgの用量で投与され、ポマリドミドは、第1周期の後の各28日周期(例えば、第2、3、4周期等)に21日間投与され、デキサメタゾンは、個体が75歳未満の場合、第1周期の後の各28日周期(例えば、第2、3、4周期等)の毎週1回、40mgの用量で、または個体が75歳以上の場合、第1周期の後の各28日周期(例えば、第2、3、4周期等)の毎週1回、20mgの用量で投与される。一部の実施形態では、抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンは、第1周期の後の各周期(例えば、第2、3、4周期等)に逐次的に投与される。一部の実施形態では、ポマリドミドおよびデキサメタゾンは、第1周期の後の各28日周期(例えば、第2、3、4周期等)の抗CD38抗体の前に投与される。一部の実施形態では、デキサメタゾンは抗CD38抗体の前に投与され、抗CD38抗体は第1周期の後の各28日周期(例えば、第2、3、4周期等)のポマリドミドの前に投与される。
【0082】
一部の実施形態では、個体のPFSは、処置の開始から進行(PD)の最初の発生までの時間として測定される。一部の実施形態では、PDは、Kumar等(2016)「International Myeloma Working Group consensus criteria for response and minimal residual disease assessment in multiple myeloma」。Lancet Oncol.17(8):e328~e346頁およびDurie等(2006)「International uniform response criteria for multiple myeloma」。Leukemia.20:1467~1473頁の判定基準によって調査される。(表Aおよび表Bも参照されたい)。一部の実施形態では、PFSは、処置の開始から死亡時間までの時間として測定される。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法および使用は、個体の無増悪生存期間(PFS)の少なくとも約8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15カ月または15カ月を超える向上(例えば、延長)をもたらす(これらの値の間の任意の範囲も含まれる)。一部の実施形態では、処置は個体の無増悪生存期間(PFS)を少なくとも約11.53カ月増加させる。一部の実施形態では、処置は個体の無増悪生存期間(PFS)を少なくとも約11.14カ月増加(例えば、延長)させる。一部の実施形態では、処置は、抗CD38抗体なしでポマリドミドおよびデキサメタゾンを含む処置を受けた多発性骨髄腫(例えば、難治性多発性骨髄腫または再発難治性多発性骨髄腫)を有する個体と比較して、個体のPFSを少なくとも約4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5カ月のいずれか1つまたは11.5カ月を超えて増加(例えば、延長)させる(これらの値の間の任意の範囲も含まれる)。一部の実施形態では、処置は、抗CD38抗体なしでポマリドミドおよびデキサメタゾンを含む処置を受けた多発性骨髄腫(例えば、難治性多発性骨髄腫または再発難治性多発性骨髄腫)を有する個体と比較して、個体のPFSを少なくとも約5カ月増加(例えば、延長)させる。一部の実施形態では、処置は、抗CD38抗体なしでポマリドミドおよびデキサメタゾンを含む処置を受けた多発性骨髄腫(例えば、難治性多発性骨髄腫または再発難治性多発性骨髄腫)を有する個体と比較して、個体のPFSを少なくとも約4.5カ月増加(例えば、延長)させる。
【0083】
一部の実施形態では、全生存期間(OS)は、処置の開始から死亡までの時間として測定される。一部の実施形態では、処置は、抗CD38抗体なしでポマリドミドおよびデキサメタゾンを含む処置を受けた多発性骨髄腫(例えば、難治性多発性骨髄腫または再発難治性多発性骨髄腫)を有する個体と比較して、個体のOSを増加(例えば、延長)させる。
【0084】
一部の実施形態では、本明細書で提供される方法または使用のための抗体による、抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンによる処置を受ける個体における最初の奏功までの期間は、ポマリドミドおよびデキサメタゾンによる処置を受ける個体における最初の奏功までの期間より短い。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法または使用のための抗体による、抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンによる処置は、ポマリドミドおよびデキサメタゾンによる処置を受ける個体の最初の奏功までの期間と比較して、個体における最初の奏功までの期間を減少させる。一部の実施形態では、「最初の奏功までの期間」は、最初の投与日と、奏功、例えば、Kumar等(2016)「International Myeloma Working Group consensus criteria for response and minimal residual disease assessment in multiple myeloma」。Lancet Oncol.17(8):e328~e346頁およびDurie等(2006)「International uniform response criteria for multiple myeloma」。Leukemia.20:1467~1473頁に記載される判定基準(表Aおよび表Bも参照されたい)による奏功の最初の徴候の日の間の時間を指す。
【0085】
一部の実施形態では、個体は、抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンによる処置の後に最小残存疾病(MRD)に陰性または「MRD陰性」である。一部の実施形態では、MRD状態は次世代フローサイトメトリー(NGF)によって測定される。一部の実施形態では、NGFによって測定されるMRD陰性(または、「フローMRD陰性」)は、(例えば、多発性骨髄腫におけるMRD検出のためのEUROFLOW(商標)ハイスループットフローサイトメトリー標準操作手順(Flores-Montero等(2017)Leukemia.31:2094~2103頁を参照されたい)、または同等の方法を使用した)骨髄吸引液中の表現型が異常なクローン形質細胞(例えば、多発性骨髄腫細胞)の不在を指し、最低感度は、例えば、104有核細胞中1つ(10-4)、105有核細胞中1つ(10-5)、106有核細胞中1つ(10-6)、または107有核細胞中1つ(10-7)である。一部の実施形態では、個体は、抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンによる処置の後に、10-4、10-5または10-6の閾値でNGFによりMRD陰性である。
【0086】
一部の実施形態では、MRD状態は次世代シークエンシング(NGS)によって測定される。一部の実施形態では、NGSによって測定されるMRD陰性(または、「シークエンシングMRD陰性」)は、骨髄吸引液中のクローン形質細胞(例えば、多発性骨髄腫細胞)の不在を指す;クローンの存在は、(例えば、LYMPHOSIGHT(登録商標)ハイスループットシークエンシングプラットホームまたは同等の方法を使用した)骨髄吸引液のDNAシークエンシングの後に得られる少なくとも2つの同一のシークエンシング読取データと規定され、最低感度は、例えば、104有核細胞中1つ(10-4)、105有核細胞中1つ(10-5)、106有核細胞中1つ(10-6)またはそれより高い。一部の実施形態では、最低感度は、106有核細胞中1つ(または、10-6)の細胞である。一部の実施形態では、個体は、抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンによる処置の後に、10-4、10-5または10-6の閾値でNGSによりMRD陰性である。
【0087】
一部の実施形態では、個体は画像化およびMRDの両方で陰性(または、「画像化+MRD陰性」)である。一部の実施形態では、画像化+MRD陰性は、(a)NGFによって検出したときMRD陰性であるかまたはNGSによって検出したときMRD陰性であること、および(b)ベースライン時もしくは前の陽電子放射断層撮影(PET)/コンピュータ断層撮影法(Ct)で見出されたトレーサ取り込みが増加したあらゆる領域の消失、または縦隔血液プール最大標準化取り込み値未満への低下、または周囲の正常組織のそれ未満への低下を指す。一部の実施形態では、個体は「持続的MRD陰性」である。一部の実施形態では、持続的MRD陰性は、処置の開始後の2時点で画像化+MRD陰性であると確認された個体を指し、ここで、時点は1年以上離れている。一部の実施形態では、本明細書で記載されるように、最小残存疾病(MRD)は、イサツキシマブ、ポマリドミドおよびデキサメタゾンによる処置を受けた個体から収集される骨髄試料を使用して、NGFまたはNGSを通して調査される。一部の実施形態では、本明細書に記載されるように、MRDについて調査される個体は、イサツキシマブ、ポマリドミドおよびデキサメタゾンによる処置の後に完全奏功を達成している。一部の実施形態では、個体は、抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンによる処置の後に、10-4、10-5または10-6の閾値でNGSまたはNGFにより画像化およびMRDの両方で陰性である。
【0088】
一部の実施形態では、個体は65歳未満である。一部の実施形態では、抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンによる処置を受ける65歳未満の個体の1年全生存率は、少なくとも約60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、67.1%、67.2%、67.3%、67.4%、67.5%、67.6%、67.7%、67.8%、67.9%または68%のいずれか1つであり、これらの値の間の任意の範囲も含まれる。一部の実施形態では、抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンによる処置を受ける65歳未満の個体のPFSは、少なくとも約9、9.5、10、10.5、11、11.1、11.2、11.3、11.4、11.5、11.53、11.6 11.7、11.8、11.9または12カ月のいずれか1つであり、これらの値の間の任意の範囲も含まれる。一部の実施形態では、抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンによる処置を受ける65歳未満の個体のPFSは、抗CD38抗体なしでポマリドミドおよびデキサメタゾンによる処置を受ける65歳未満の個体のPFSより、少なくとも約3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5または7カ月のいずれか1つ長く、これらの値の間の任意の範囲も含まれる。一部の実施形態では、PFSは、本明細書の他の場所で記載される通りに計算される。
【0089】
一部の実施形態では、個体は少なくとも65歳かつ75歳未満である。一部の実施形態では、抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンによる処置を受けている少なくとも65歳かつ75歳未満である個体の1年全生存率は、少なくとも約65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、74.1%、74.2%、74.3%、74.4%、74.5%、74.6%、74.7%、74.8%、74.9%または75%のいずれか1つであり、これらの値の間の任意の範囲も含まれる。一部の実施形態では、抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンによる処置を受けている少なくとも65歳かつ75歳未満である個体のPFSは、少なくとも約9.5、10、10.5、11、11.1、11.2、11.3、11.4、11.5、11.57、11.6、11.7、11.8、11.9または12カ月のいずれか1つであり、これらの値の間の任意の範囲も含まれる。一部の実施形態では、抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンによる処置を受けている少なくとも65歳かつ75歳未満である個体のPFSは、抗CD38抗体なしでポマリドミドおよびデキサメタゾンによる処置を受けている少なくとも65歳かつ75歳未満の個体のPFSより少なくとも約1、1.5、2、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、2.99または3カ月のいずれか1つ長く、これらの値の間の任意の範囲も含まれる。一部の実施形態では、PFSは、本明細書の他の場所で記載される通りに計算される。
【0090】
一部の実施形態では、個体は75歳以上である。一部の実施形態では、抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンによる処置を受ける75歳以上の個体の1年全生存率は、少なくとも約65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、73.1%、73.2%、73.3%、73.4%、73.5%、73.6%、73.7%、73.8%、73.9%または74%のいずれか1つであり、これらの値の間の任意の範囲も含まれる。一部の実施形態では、抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンによる処置を受ける75歳以上の個体の1年全生存率は、抗CD38抗体なしでポマリドミドおよびデキサメタゾンによる処置を受ける75歳以上の個体の1年全生存率より高い。一部の実施形態では、抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンによる処置を受ける75歳以上の個体の1年全生存率は、抗CD38抗体なしでポマリドミドおよびデキサメタゾンによる処置を受ける75歳以上の個体の1年全生存率より、少なくとも約21、22、23、24、25、26、26.1、26.2、26.3、26.4、26.5、26.6、26.7、26.8、26.9または27パーセントポイントのいずれか1つ高い。一部の実施形態では、抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンによる処置を受ける75歳以上の個体のPFSは、少なくとも約9.5、10、10.5、11、11.1、11.2、11.3、11.4、11.5、11.6、11.7、11.8、11.9または12カ月のいずれか1つであり、これらの値の間の任意の範囲も含まれる。一部の実施形態では、抗CD38抗体、ポマリドミドおよびデキサメタゾンによる処置を受ける75歳以上の個体のPFSは、抗CD38抗体なしでポマリドミドおよびデキサメタゾンによる処置を受ける75歳以上の個体のPFSより、少なくとも約3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9または7カ月のいずれか1つ長く、これらの値の間の任意の範囲も含まれる。一部の実施形態では、PFSは、本明細書の他の場所で記載される通りに計算される。
【0091】
一部の実施形態では、個体は雌(例えば妊娠年齢の妊娠可能な雌)である。一部の実施形態では、患者が雌であり、妊娠することができる場合、患者は、抗CD38抗体による処置の間、および抗CD38抗体の最後の投与から5カ月の間、避妊の有効な方法を使用することができる。一部の実施形態では、個体は、軽度の肝障害などの肝障害を有する。一部の実施形態では、個体の総ビリルビンが正常な上限(ULN)の約1倍から約1.5倍の間にある場合、個体は軽度の肝障害を有する。一部の実施形態では、個体のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)レベルが正常な上限(ULN)より高い場合、個体は軽度の肝障害を有する。一部の実施形態では、個体は多発性骨髄腫のための少なくとも3つ(例えば、4、5、6、7、8つ等)の前治療(または前治療ライン)を受けている。一部の実施形態では、個体は、処置の開始前に約60未満、約50未満、または約30ml/分/1.73m2未満の糸球体濾過率(クレアチニンクリアランス)を有する。一部の実施形態では、個体は、多発性骨髄腫国際病期分類(ISS)による第II期または第III期である。一部の実施形態では、多発性骨髄腫ISSによる第II期は、約3.5から約5.5mg/Lの間またはそれより高い血清ベータ-2ミクログロブリンレベルと規定される。一部の実施形態では、多発性骨髄腫ISSによる第II期は、約3.5g/dL未満の血清アルブミンレベルと規定される。一部の実施形態では、多発性骨髄腫ISSによる第III期は、約5.5mg/Lより高い血清ベータ-2ミクログロブリンレベルと規定される。一部の実施形態では、個体は、多発性骨髄腫改訂国際病期分類(R-ISS)による第III期である。一部の実施形態では、多発性骨髄腫R-ISSによる第III期は、(a)約5.5mg/Lより高い血清ベータ-2ミクログロブリンレベル、および(b)中間相蛍光in situハイブリダイゼーション(iFISH)によって検出される高リスク細胞遺伝学的異常、または(c)正常の上限より高い血清乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)レベルと規定される。一部の実施形態では、個体は高リスク細胞遺伝学的異常(CA)を有する。一部の実施形態では、高リスク細胞遺伝学的異常は、del(17p)、t(4;14)および/またはt(14;16)の1つまたはそれ以上である。
【0092】
製造品またはキット
本発明の別の実施形態では、抗CD38抗体(イサツキシマブなど)を含む製造品またはキットが提供される。一部の実施形態では、製造品またはキットは、ポマリドミドおよび/またはデキサメタゾンをさらに含む。一部の実施形態では、製造品またはキットは、多発性骨髄腫のための少なくとも2つの前治療を受けた個体において、多発性骨髄腫(例えば、難治性多発性骨髄腫または再発難治性多発性骨髄腫)を処置するかまたはその進行を遅らせるために、ポマリドミドおよびデキサメタゾンと併用して抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)を使用するための説明書を含む添付文書をさらに含む。一部の実施形態では、キットはイサツキシマブ、ポマリドミドおよびデキサメタゾンを含む。
【0093】
本明細書は、当業者が本発明を実施することを可能にするのに十分であると考えられる。本明細書に示され、記載されるものに加えて、本発明の様々な改変形は、前述の記載から当業者に明らかになり、添付の請求項の範囲内である。本明細書で引用される全ての刊行物、特許および特許出願は、全ての目的のために参照によって完全に本明細書に組み入れられる。
【実施例】
【0094】
本開示は、以下の例を参照することによって、より完全に理解される。しかし、それらは、本発明の範囲を制限するものと解釈するべきではない。本明細書に記載の例および実施形態は、説明に供することのみを目的としていること、ならびに当業者には、それに関する様々な修飾または変更が示唆されると考えられ、それらも、本願の趣旨および範囲ならびに添付の特許請求の範囲に含まれると理解されている。
【0095】
実施例1:難治性または再発難治性多発性骨髄腫を有する患者で、イサツキシマブ(SAR650984)とポマリドミドおよび低用量デキサメタゾンと併用と、ポマリドミドおよび低用量デキサメタゾンを比較する第III相無作為化オープンラベル多施設共同研究
この実施例は、単独投与または併用投与のレナリドマイドおよびプロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、またはイキサゾミブ)を含む、多発性骨髄腫のための少なくとも2ラインの前治療(例えば、2ライン以上の前治療)を受けており、最後の治療が完了した60日以内に増悪を示した(例えば、最後の治療に対して抵抗性であった)難治性または再発難治性多発性骨髄腫を有する患者の処置のための、ポマリドミドおよび低用量デキサメタゾンとの比較における、イサツキシマブとポマリドミドおよび低用量デキサメタゾンとの併用の有効性を評価した第III相多施設共同多国籍無作為化オープンラベル並行群間2群研究について記載している。
【0096】
I.研究目的
A.主要目的
この研究の主要目的(すなわち、主要エンドポイント)は、難治性または再発難治性多発性骨髄腫を有する患者で、ポマリドミドおよび低用量デキサメタゾン(すなわち、「Pd群」)と比較した、イサツキシマブとポマリドミドおよび低用量デキサメタゾンの併用(すなわち、「IPd群」)の、PFSの延長における利益を示すことであった。PFSは、無作為化の日から、独立効果判定委員会(IRC)によって決定された進行(PD)が最初に記録された日または何らかの原因による死亡の日のいずれか早い方の日までの時間と定義された。
【0097】
PD(IMWG診断基準、Kumar et al. (2016) ”International Myeloma Working Group consensus criteria for response and minimal residual disease assessment in multiple myeloma.” Lancet Oncol. 17(8): e328-e346およびKumar et al. (2006) ”International uniform response criteria for multiple myeloma. Leukemia. 20: 1467-1473に記載されている)は、測定可能な量の血清および/または尿中Mタンパクを有する患者について、以下のいずれか1つに該当するものとして定義された(表Aおよび表Bも参照):
・2回の連続したアセスメントで血清M成分が最下点から≧25%増加していること(絶対増加量は、≧0.5g/dLでなければならない);M成分の開始濃度が≧5g/dLである場合、2つの連続したアセスメントで血清M成分が≧1g/dL増加していることは、再発の定義として十分である、および/または
・2回の連続したアセスメントで尿中M成分が最下点から≧25%増加していること(絶対増加量は、≧200mg/24hでなければならない)、および/または
・新しい骨病変または軟部組織髄外疾患の明確な発症があるか、>1の病変がある場合に既存の軟部組織髄外疾患病変の直交する径の合計が最下点から≧50%増加しているか、短軸が1cm超である前の軟部組織髄外疾患障害の最も長い径が≧50%増加していること。(病理学的骨折または骨の崩壊は、必ずしも進行の証拠ではなかった。)
【0098】
B.主な副次目的
この研究の主な副次目的(すなわち、主な副次評価項目または有効性の主な副次評価項目)は、(1)国際骨髄腫作業部会(IMWG)判定基準(Kumar et al.(2016) ”International Myeloma Working Group consensus criteria for response and minimal residual disease assessment in multiple myeloma.” Lancet Oncol. 17(8): e328-e346およびDurie et al. (2006) ”International uniform response criteria for multiple myeloma. Leukemia. 20: 1467-1473に記載されている)による全奏効率(ORR)を各群で評価すること;および(2)IPd群とPd群の間で全生存期間(OS)を比較することであった。
【0099】
ORRは、IMWG効果判定基準を用いた独立効果判定委員会のアセスメントによる厳密な完全奏効(sCR)、完全奏効(CR)、最良部分奏効(VGPR)、および部分奏効(PR)の患者の割合と定義した。下記表Aおよび表Bを参照されたい。放射線照射された形質細胞腫は、反応アセスメントには適していなかった;しかし、それは、進行のアセスメントのためにモニターしなければならなかった。患者が他の判断基準で最良部分奏効を達成するには、軟部組織形質細胞腫は、最大直交径の和(SPD)がベースラインと比較して90%超減少しなければならなかった。
【0100】
【0101】
患者は、進行またはより高い反応ステータスへの改善が確認されるまで、確認されている最後の反応カテゴリーに留まった;患者は、より低い反応カテゴリーに移ることはありえなかった。反応を計算するための低減の百分率は、ベースラインの値(周期1、1日目)に対するものであった。進行を計算するための増大の百分率は、最も低い反応値またはベースライン値のいずれか数値の低い方の値に対するものであった。最も低い値を確認する必要はなかった。進行の疑いの前に確認された最も低い値を、進行を計算するためのベースラインとして用いた;血清および/または尿スパイクが、定量化するには低すぎると考えられる場合、後続の進行を記録するためのベースラインとして、この値をゼロに指定することができた。患者は、ベースラインでは測定可能とされなかった変数によって進行の判定基準を満たす場合に、進行を有するとみなされた;しかし、ベースラインで測定可能な血清または尿M-スパイクを有した患者については、血清FLCの増大のみによって進行を定義することができなかった。
【0102】
周期1の1日目に行われた有効性検査の適格性レベルより低い血清および尿中Mタンパク質を有する患者(例えば、IMWGによりFLC測定可能な疾患のみを有する患者またはいかなる生物学的に測定可能な疾患も有しない患者)については、2つの可能な全奏功のうちの1つ:非PDまたはPDのみを有することしかできなかった。そのような場合、以下のパラメータに基づいて、PDを診断することができた:
・FLC測定可能なもののみを有する患者について:上の表に記載のIMWG判定基準によるMタンパクおよび形質細胞腫、
・測定可能でない疾患を有する患者について:Mタンパク質および形質細胞腫、または骨髄形質細胞関与の百分率の≧10%超の増大。
【0103】
全生存期間(OS)は、無作為化の日から何らかの原因による死亡までの時間と定義した。
【0104】
C.他の副次目的
この研究の他の副次目的(「副次評価項目」)は、以下の通りであった:(1)各群における無増悪期間(TTP)を評価すること;(2)各群でdel(17p)、t(4;14)、t(14;16)を有する患者として定義される高リスク細胞遺伝学的集団でPFSを評価すること;(3)各群で奏功期間(DOR)を評価すること;(4)両処置群で安全を評価すること;(5)イサツキシマブとポマリドミドの併用の薬物動態プロファイルを決定すること;(6)イサツキシマブの免疫原性を評価すること;(7)疾患特異的かつ一般的な健康に関連する生活の質(HRQL)、疾患および処置関連の症状、健康状態効用、および健康状態効用のアセスメントを行うこと。
【0105】
無増悪期間(TTP)は、無作為化の日から、(独立効果判定委員会によって決定される)進行が最初に記録された日までの時間と定義された。PFS評価項目(上記参照)に関する進行の定義と同じ定義を用いた。
【0106】
高リスク細胞遺伝学的集団におけるPFSは、蛍光インサイツハイブリダイゼーション(FISH)によってアセスメントされるdel(17p)、t(4;14)またはt(14;16)を含む高リスク細胞遺伝学的変化を有する患者のサブグループにおける、無作為化の日から(独立効果判定委員会によって決定される)PDが最初に記録された日または何らかの原因による死亡の日のいずれか早い方の日までの時間と定義した。
【0107】
奏功期間(DOR)は、独立効果判定委員会(IRC)によって判定される最初の反応の日からIRC決定の最初のPDまたは死の日のいずれか早い方の日までの時間と定義した。DORは、PR以上の反応を達成した患者についてのみ判定した。
【0108】
治療下で発現した有害事象(TEAE)/重篤有害事象(SAE)、検査パラメータ、バイタルサイン(血圧、心拍数、および体温)、体重、ECOGパフォーマンスステータス、および身体検査の点における安全性のアセスメントは、研究を通して行った。TEAEは、TEAE期間中に発症もしくは悪化(治験責任医師の所見による)したか、重篤となった有害事象と定義した(すなわち、研究処置の最初の投与から研究処置の最終投与の最長30日後までの時間)。有害事象および検査パラメータは、ctep.cancer.gov/reporting/ctc.htmlで利用可能であるNCI-CTCAE v4.03を用いて等級分けした。
【0109】
血液試料は、母集団薬物動態アプローチを用いたイサツキシマブの薬物動態プロファイルのアセスメントを行うために処置されたすべての患者から採取した。
【0110】
IPd群の患者における抗薬物抗体(ADA、すなわち、抗イサツキシマブ抗体)の存在のアセスメントは、研究を通して行った。
【0111】
欧州がん研究治療機関の30の質問を有する生活の質質問票(EORTC QLQ-C30)、EORTCの20項目を有する骨髄腫モジュール(MY20)、ならびに欧州生活の質グループの5項目と1項目当たり5レベルを有する尺度(EQ-5D-5L)アセスメントをすべての患者(IPD群およびPd群)による自己記入用に指定した。すべての患者報告アウトカム(PRO)は、患者らの健康/疾患ステータスを論ずる前、および研究処置の投与または処置中の他の研究関連手順の前、処置訪問の終了時(EOT;最終研究処置投与の30[±5]日後)、ならびに最終研究処置投与の60日(±5日)後に、施設で患者によって報告された。
【0112】
D.探索的目的
この研究の探索的目的は:(1)免疫遺伝的決定因子と有効性評価項目の関係を探索すること;(2)薬物動態学的(PK)および薬力学的(PD)関係を探索すること;(3)両処置群における微小残存病変(MRD)率を探索することだった。
【0113】
同意した患者については、周期1の1日目に血液試料を採取した。この試料を、遺伝マーカーと(a)イサツキシマブによる処置の関係が存在するかどうか、(b)体がイサツキシマブをどのように処理するか、および/または(c)イサツキシマブの副作用の可能性を判定するのに用いた。試料は、別の場所へ移した。DNAを、各試料から抽出し、さらに分析するときまで保存した。
【0114】
周期1の1日目に血液サンプルを採取するか、または探索的バイオマーカー分析(それは、研究の必須部分であり、別の遺伝薬理学的同意の下に行われたものではなかった)を行った。白血球DNAを、各血液サンプルから抽出し、免疫遺伝的決定因子(例えばFcγR多形性、ヒト白血球抗原(HLA)、およびキラー細胞抑制受容体(KIR)遺伝子型)について分析し、例えば、ORR、DOR、PFS、およびOSを含めた、臨床反応のパラメータと相関させた。
【0115】
免疫電気泳動法および免疫固定分析における、Mタンパク質アセスメントに対するイサツキシマブの潜在的干渉を評価するために、さらなる血清試料を採取した。これらの試料は、Mタンパク質の分析を行ったすべての時点に、IPd群の患者から採取した。
【0116】
可能な場合には、安全性および有効性評価項目を含めた臨床アウトカムについての予後因子として、薬物動態学的および薬力学的推定を調査した。
【0117】
微小残存病変(MRD)のアセスメントは、CRを達成した患者のみから得た骨髄試料で、CLONOSEQ(登録商標)NGSプラットフォームを用いた次世代シークエンシング(NGS)によって行った。MRDステータスは、下記表Bに概説する通りに分類した。骨髄穿刺液は、ベースライン/スクリーニング時およびCR確認時に採取した。患者がCRを示したが、MRD陽性と判定された場合、後の陰性を確認するために3ヵ月(3周期)後に別の骨髄試料を採取した。特定の場合、患者がMRD陽性のままであり、依然として処置されていたときには、さらに3ヵ月後に第3の試料を採取した。各患者当たり3回を超える処置中骨髄サンプルを取得することはなかった。
【0118】
【0119】
上述の有効性アセスメントの各々は、この研究で使用するために選ばれたものであり、血液腫瘍学状況で十分に確立され、関連していると考えられている。
【0120】
II.研究デザイン
適格基準(さらなる詳細は下に記載)を確認した後、双方向自動応答技術(IRT)システムを用いて、患者を、下記表Cに示す2群のうちの1つに無作為に1:1の比率で割付けた。
【0121】
【0122】
無作為化は、年齢(<75歳対≧75歳)および前治療歴のライン数(2もしくは3ラインと3ライン超)によって層別化した。完全な移植手順(導入、動員、前処置、移植、地固め、および維持)は、1ラインとみなされた。中止の理由が何であれ(増悪、有害事象、または患者の要請)、さらなるレジメンもそれぞれ1ラインとみなされた。患者の処置は、増悪、容認できない有害事象(例えば、容認できない毒性)、または患者の要望のいずれか早い方まで続けた。研究デザインの概要を
図1に示す。
【0123】
A.患者当たりの研究参加の期間
各患者は、インフォームドコンセントの署名から死亡、コンセントの撤回、またはカットオフ日のいずれか早い方の日まで研究に参加しているものとみなされた。患者の研究期間は、最長3週間までのスクリーニングのための期間を含んでいだ。各処置周期の期間は、28日であった。患者の研究処置は、疾患進行、容認できないAE、患者の要望、または他の何らかの理由まで継続した。経過観察中、進行(PD)のために研究処置を中止した患者については、死亡またはカットオフの日のいずれか早い方の日まで、生存しているかどうか3ヵ月(12週)毎に経過観察を行った。進行(PD)の記録の前に研究処置を中止した患者は、疾患進行まで4週毎に(PDなしでさらなる抗骨髄腫療法を開始した患者についても)、その後、死亡またはカットオフの日のいずれか早い方の日まで、生存しているかどうか3ヵ月(12週間)毎に経過観察を行った。
【0124】
OSについてのカットオフ日の時点で、患者がまだ処置を受けており、研究処置から利益を得ていた場合、患者は、疾患進行、容認できないAE、患者の要望、または他の何らかの理由が生じるまで研究処置を続けることができた。カットオフ日の後に完了した周期については、すべての新たな関連AE(重篤なものも、そうでないものも)、すべての進行中のSAE(関連があるものも、ないものも)、およびすべての進行中の関連する非重篤AE、ならびに処置終了(EOT)の理由の収集を継続した。
【0125】
B.臨床試験終了の決定(すべての患者)
PFS分析(主要評価項目の分析)は、イベント主導であり、PFS分析のカットオフ日は、162例のPFSイベント(増悪または死亡のいずれか早い方)が起こった時だった。OS分析はイベント主導であり、最終カットオフ日は、220例の死亡があった時だった。
【0126】
III.患者の選択
A.選択基準
適格患者は、以下の判定基準の全て満たす場合に、組み入れを考慮した:
・年齢:≧18歳または法定年齢が>18歳である場合における、その国の成人年齢
・患者は、測定可能疾患のエビデンスを伴った多発性骨髄腫の診断書を有していなければならない。
・血清タンパク質免疫電気泳動法を用いて測定した血清Mタンパク質≧0.5g/dL、および/または
・尿タンパク質免疫電気泳動法を用いて測定した尿中Mタンパク質≧200mg/24時間。
・患者は、少なくとも2ラインの前治療の抗骨髄腫療法を受けていなければならなく、この抗骨髄腫療法には、単独または併用投与された、連続した少なくとも2周期のレナリドマイドおよびプロテアソーム阻害剤(ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、またはイキサゾミブ)が含まれていなければならない。
(注:導入処置ならびにそれに続くASCTおよび地固め/維持は、1ラインの処置とみなされた。)
・患者は、以下のいずれかによって定義される、単独または併用のレナリドマイドおよびプロテアソーム阻害剤(ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、またはイキサゾミブ)による処置の失敗を経ていなければならない(レナリドマイドおよびプロテアソーム阻害剤に対する失敗は、いずれのラインの療法でも起こり得た):
-レナリドマイドおよび/またはプロテアソーム阻害剤による処置を受けている間または処置終了から60日以内に生じた増悪。
-レナリドマイドおよび/またはプロテアソーム阻害に対する前の反応が≧PRである場合、患者は、処置の中止後6ヵ月以内に増悪がなければならなかった。
-連続した少なくとも2周期の、単独または併用のレナリドマイドおよびプロテアソーム阻害剤(ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、またはイキサゾミブ)を含むレジメンの後に忍容不能な毒性が発現した患者。非忍容性は、下記のように定義される:
*プロテアソーム阻害剤を含むレジメンの場合:グレード≧2の末梢神経障害またはグレード≧2の神経障害性疼痛など、プロテアソーム阻害剤の中止に至る任意の毒性。末梢神経障害は、研究参加の前にはグレード≦1でなければならない(ctep.cancer.gov/reporting/ctc.htmlで利用可能な米国国立癌研究所の有害事象共通用語規準(NCI-CTCAE)v4.03による)。
*レナリドマイドを含むレジメンの場合、グレード3の発疹など、レナリドマイドの中止に至る任意の毒性、発疹は、グレード4であってはならなかった。また、他の非血液学的な毒性もグレード4であってはならなかった。研究参加の前には、すべての非血液学的な毒性が≦G1でなければならなかった。
-患者は、研究参加前の前治療の終了時または終了後60日以内に増悪していた、すなわち、最終ラインの処置に対して抵抗性でなければならなかった。この患者集団は、以下の2つのカテゴリーを含む:
*難治性疾患:すべての前治療に対して抵抗性だったが、少なくとも1ラインの前治療で最小奏功(MR)を達成しているべきだった患者。
*再発難治性疾患:少なくとも1ラインの前治療からの再発を有し、最終ラインの処置に抵抗性だった患者。患者は、他の1または複数ラインの前治療に対して抵抗性でありえた。
注:患者は、少なくとも1ラインの前治療に対してMR以上を達成しなければならなかった(すなわち、原発性難治性疾患は不適格である)。
【0127】
B.除外基準
上記の選択基準全てを満たした患者のスクリーニングを、以下の除外基準について行った:
・疾患経過中、いかなる処置にも、少なくともMRを達成しなかった患者として定義される原発性難治性多発性骨髄腫。
・遊離軽鎖測定可能疾患のみ。
・抗CD38モノクローナル抗体による前治療を受けた患者(抗CD38モノクローナル抗体治療の終了時または終了後の60日以内の進行、例えば、抗CD38モノクローナル抗体処置による前治療に対して抵抗性がある)。
・ポマリドミドによる前治療。
・無作為化前14日以内における、デキサメタゾンを含めた任意の抗骨髄腫薬物処置。
・活動性の移植片対宿主病(GvHD)を伴った同種HSC移植の経験(GvHDは任意のグレードのものであり、かつ/または直近2ヵ月以内は免疫抑制処置下にある)。
・研究処置の開始前14日以内の任意の大きな術式:プラスマフェレーシス、大手術(椎骨形成は、大きな処置と考えられなかった)、放射線療法。
・無作為化から28日または5半減期のいずれか長い方の期間以内に、任意の他の治験薬またはこの研究にとっての禁止療法を受けた患者。
・東海岸がん臨床試験グループ(ECOG)パフォーマンスステータス>2(ecog-acrin.org/resources/ecog-performance-statusおよび/またはOken et al. (1982) ”Toxicity and response criteria of the Eastern Cooperative Oncology Group.” Am J. Clin Oncol. 5: 649-655に記載されている)。
・血小板が、骨髄(BM)有核細胞の<50%が形質細胞であった場合に<75000細胞/μL、BM有核細胞の≧50%が形質細胞であった場合に<30000細胞/μL。スクリーニング来診前に3日以内の血小板輸血は、容認されなかった。
・ANC(好中球絶対数)<1000/μL(1×109/L)。このレベルに達するG-CSFの使用は容認されなかった。
・クレアチニンクリアランス<30mL/分(腎臓病における食事改善(MDRD)方程式:GFR(mL/min/1.73m2)=175×(Scr)-1.154×(年齢)-0.203×(女性の場合は0.742)×(アフリカ系アメリカ人の場合1.212))。
・総ビリルビン>2×ULN。
・補正血清カルシウム値>14mg/dL(>3.5mmol/L)
・ASTおよび/またはALT >3×ULN
・ctep.cancer.gov/reporting/ctc.htmlで閲覧可能なNCI-CTCAE v4.03に概説されている、前治療の抗骨髄腫療法による進行中の毒性(脱毛症および適格基準に記載のものは除外)>グレード1。
・最初の2周期以内のIMiDs中止に至る任意の過敏性反応または非忍容性の定義を満たす反応(上記選択基準に示した)と定義される、IMiDs(登録商標)(サリドマイドまたはレナリドマイド)に対する過敏症。
・ステロイドの前投薬に適していない、デキサメタゾン、スクロース、ヒスチジン(塩基および塩酸塩として)、およびポリソルベート80、もしくは研究療法の構成成分のいずれか、またはこれらの薬剤によるさらなる処置を禁止することになるH2ブロッカーに対する過敏症。
・有意な心機能不全;12ヵ月以内の心筋梗塞;不安定で十分に管理されていない狭心症。
・基底細胞癌もしくは皮膚の有棘細胞癌の完全切除、インサイツ悪性腫瘍、または根治療法の後の低リスク前立腺がんを除く、別の悪性腫瘍の診断または処置を無作為化前3年以内に受けている。
・HIV+であるか、A、B、またはC型肝炎の活動性感染を有することが知られている。
・吸収不良症候群またはポマリドミドの吸収に有意に影響を与える可能性のある任意の状態。
・活動性原発アミロイド軽鎖(AL)アミロイドーシス(終末器官損傷のエビデンスがあるか、アミロイドーシスの処置を受けること)。
・随伴性形質細胞白血病
・血栓予防を実施できないか、実施する意思がない。
・7日以上の間、コルチコステロイド(10mg/日のプレドニゾンに相当)の連日投与が必要である(吸入コルチコステロイドを除く)。
【0128】
IV.研究治療
A.治験薬(IMP)
i.イサツキシマブ(IV)
イサツキシマブは、20mMヒスチジン、10%(w/v)スクロース、0.02%(w/v)ポリソルベート80、pH 6.0緩衝液中の20mg/ml(500mg/25ml)イサツキシマブを含有する、濃縮輸液としてバイアル中に製剤化した。イサツキシマブは、白色からオフホワイトの微粒子を含むことのある、輸液用の無菌、非発熱性、注射用、無色の20mg/ml濃縮液として非経口投与用に提供され、エラストマー栓をはめた30mlガラスバイアル中に詰めた。各バイアルは、名目含有量500mgのイサツキシマブを含有した。25mlを確実に取り出せるように充填体積を定めた。患者に投与するために、適切な体積のイサツキシマブを0.9%塩化ナトリウム溶液の輸液バッグ中に希釈した。投与される用量に依存し、1時間当たりに投与されるタンパク質量に基づいた時間にわたって、イサツキシマブの用量に相当する最終輸液体積を投与した。
【0129】
イサツキシマブは、IPd群の患者に10mg/kgの用量で静脈内注入によって、最初の28日周期では1、8、15、および22日目に、次いで、それに続く各28日周期では1および15日目に投与した。(すべての周期は、期間が28日であった。)毒性があった場合には、用量調節(より詳細に後述する)を行った。
【0130】
ii.ポマリドミド(経口投与)
ポマリドミドは、1mg、2mg、3mg、および4mgのカプセルで提供した。ポマリドミドは、IPd群およびPd群の両方の患者に4mgの用量で、各28日周期の1~21日目に経口(口から、すなわち「PO」)投与した。(すべての周期は、期間が28日であった。)毒性があった場合には、用量調節(より詳細に後述する)を行った。
【0131】
iii.デキサメタゾン(経口または静注投与)
デキサメタゾンは、経口投与用に4mgおよび8mgの錠剤として、静脈内注射用に4mg/mlの液剤として製剤化した。デキサメタゾンは、各28日周期の1、8、15、および22日目に、<75歳の患者には40mgの用量で、または≧75歳の患者には20mgの用量で投与した。(すべての周期は、期間が28日であった。)毒性があった場合には、用量調節(より詳細に後述する)を行った。
【0132】
IPd群では、デキサメタゾンは、モノクローナル抗体の投与で一般に観察される注入に伴う反応の防止のための前投薬として、非治験薬(NIMP、後述)で投与した。
【0133】
B.非治験薬(NIMP)-輸注反応(IR)の防止のための前投薬
モノクローナル抗体の投与で一般に観察されるIARのリスクおよび重症度を低減するため、IPd群に割り当てられたすべての患者は、イサツキシマブ注入の前に前投薬を受けた。推薦された前投薬用薬剤は:イサツキシマブ注入前15~30分(ただし、60分を超えない)における、ジフェンヒドラミン25~50mgのIV(または等価物:例えば、セチリジン、プロメタジン、デクスクロルフェニラミン。ただし、地域の認可および利用可能性による。少なくとも最初の4回の注入には、静脈内経路が好ましかった)、デキサメタゾン経口/IV(用量は下に示されている)、ラニチジン50mgのIV(または等価物:他の認可されたH2アンタゴニスト(例えば、シメチジン)、経口プロトンポンプ阻害剤(例えば、オメプラゾール、エゾメプラゾール))、およびアセトアミノフェン650~1000mgの経口だった。前投薬レジメンが完了したならば、直ちにイサツキシマブ注入を開始した。
【0134】
イサツキシマブ注入の日に、イサツキシマブおよびポマリドミドの前の前投薬一部およびバックボーン処置の一部として、合計40mgのデキサメタゾン(すなわち、ポマリドミドと併用するときのデキサメタゾンの常用量)、または≧75歳の患者では20mgを投与した。
【0135】
デキサメタゾンを経口投与した際には、以下の順序で前投薬を行った:
・デキサメタゾン40mgの経口(または≧75歳の患者には20mgのPO);次いで
・アセトアミノフェン650mgから1000mgの経口;次いで
・ラニチジン50mgのIV(または同等のもの);次いで
・ジフェンヒドラミン25mgから50mgのIV(または同等のもの)。
【0136】
デキサメタゾンが静脈内投与された際には、以下の順序で前投薬を行った:
・アセトアミノフェン650mgから1000mgの経口;次いで
・ラニチジン50mgのIV(または同等のもの);次いで
・ジフェンヒドラミン25mgから50mgのIV(または同等のもの);次いで
・デキサメタゾン40mgのIV(または≧75歳の患者には20mgのIV)。
【0137】
投与経路が何であれ(IVまたはPO)、デキサメタゾンは1回のみ投与された(すなわち、前投薬および研究処置の両方に単回投与を用いた)。
【0138】
注入後のコルチコステロイドまたは気管支拡張薬予防は必要でなかった。
【0139】
すべての患者は、アスピリンまたは低分子量ヘパリンによる強制的血栓予防を受けた。
【0140】
C.投薬量および投与スケジュール
i.IPd群(実験群)
IPd群に割り当てられた患者は、モノクローナル抗体で一般に観察される輸注反応(IR)のリスクおよび重症度を低減するために、イサツキシマブ注入前に前投薬を受けた(上記参照)。
【0141】
IPd群の患者のための薬物投与は、以下の通りに行った:
・デキサメタゾンは、1、8、15、および22日目、イサツキシマブ注入の約15~30分(ただし、60分を超えない)前に、40mg(または患者が≧75歳である場合は20mg)の用量で、経口(好ましい経路)または静脈内(経口経路が使用できなかった場合)に投与した。
・イサツキシマブは、周期1の1、8、15、および22日目に10mg/kgの用量で、次いで後続の周期の1および15日目に10mg/kgの用量で投与した。
・ポマリドミドは、各28日周期の1~21日目の各日に、4mgの用量で投与した。各周期の1日目には、イサツキシマブの1h~30分前にポマリドミドの服用が行われた。周期1の8日目、15日目、および22日目、ならびに後続の周期の15日目には、イサツキシマブ注入の後、患者にとって最も好都合なときに(好ましくは各投与について同時に)ポマリドミドの服用が行われた。
【0142】
ii.Pd群(対照群)
ポマリドミド+デキサメタゾンで処置された患者への薬物投与は、以下の通りに行った:
・デキサメタゾンは、1、8、15、および22日目に、40mg(または患者が≧75歳である場合は20mg)の用量で、経口または静脈内に投与した。
・ポマリドミドは、各28日周期の1~21日目の各日に、4mgの用量で投与した。
【0143】
主要な毒性、疾患進行、または他の何らかの理由(例えば、処置の同意の取下げ、不十分なコンプライアンス、研究処置のさらなる投与を妨げる併発性疾患など)がない限り、患者に投与される周期数に制限はなかった。進行(PD)の場合、検査基準でなされた診断は、処置中止の前に、2回の連続した測定によって確かめる必要があった。PDの確認が得られるまで、処置を継続した。
【0144】
イサツキシマブ用量の計算ができるように、各周期の前に各患者の体重を測定した。
【0145】
後続の処置周期では、個々の患者の耐容性に基づく用量調整(投与延期、投薬欠落、および用量の減量)(ポマリドミドおよび/またはデキサメタゾンについてのみ)が許された。ポマリドミドおよびデキサメタゾンの用量減量ステップをそれぞれ、下記の表D1およびD2に示す。1または複数回のポマリドミド投与の欠落が可能だった。1または複数回のデキサメタゾン投与の欠落または1週おき(すなわち、28日周期当たり2回)までのデキサメタゾンの投与の削減が可能だった。
【0146】
【0147】
【0148】
イサツキシマブ注入については、用量の減量が許されなかった。
【0149】
V.疾患アセスメント
対象が処置を継続するのを許すべきか否かについて治験責任医師が行う決定は、研究を通して実行された有効性データ(実施施設の検査室または中央検査機関から得られたもの)、放射線学アセスメント、および骨髄アセスメントに基づくか、示されている場合は、IMWG判定基準に従って行われた。処置反応のアセスメントを行うための基準値は、周期1の1日目に、処置の前に各患者から採取された試料で測定された値であった。
・血清Mタンパク質レベルのアセスメントは、免疫電気泳動法によって、免疫電気泳動法によってMタンパク質が検出不能であった場合には、免疫固定によって行った。
・尿中Mタンパク質レベルのアセスメントは、免疫電気泳動法によって、免疫電気泳動法によってMタンパク質が検出不能であった場合には、免疫固定によって行った。
・遊離軽鎖(FLC)レベルは、完全奏効(CR)(すなわち、血清タンパク質電気泳動/尿タンパク質電気泳動でMタンパク質が検出不能であり、かつ免疫固定陰性)の場合にのみ、中央で分析した。
・免疫グロブリン:IgG、IgA、IgM、IgD、およびIgE(疾患の重鎖成分がEまたはDであることが知られている場合にのみIgDまたはE)。
・骨髄形質細胞浸潤のアセスメントを、CRを確認するために、または生化学的進行がないが、疾患進行が疑われ、臨床的に必要である場合に行った。
・CRの場合における微小残存病変(MRD)のアセスメントのための骨髄穿刺液(または臨床的に必要であれば生検)。患者がMRD陽性である場合、後のMRD陰性を確認するために、3ヵ月(3周期)後に別の骨髄試料を採取した。患者がMRD陽性のままであり、依然として処置を受けていた場合、さらに3ヵ月(3周期)後に第3の試料を採取することがあった。(どの患者からも、3回を超える処置中骨髄サンプルを取得することはなかった。)
・全骨格検査または低線量全身CTスキャンをベースライン時に、次いで年に1回、そして、臨床的に必要であれば研究中いつでも行った。各患者には、研究を通して、同じモダリティ(すなわち、全骨格検査または低線量全身CT)を用いた。
・髄外疾患(骨形質細胞腫を含めた形質細胞腫)について:
-ベースライン時に髄外疾患が存在した場合、CTスキャンまたはMRIをベースライン時に行い、12週間(±1週間)毎に繰り返した。(臨床的に必要であれば、さらなるCTスキャンまたはMRIを行った。)
-ベースライン時に髄外疾患が疑われた場合、髄外疾患を確認するために、CTスキャンまたはMRIをベースライン時に行った。確認が得られた場合は、CTまたはMRIを12週間(±1週間)毎に繰り返した。(臨床的に必要であれば、さらなるCTスキャンまたはMRIを行った。)
各患者には、研究を通して同じモダリティ(CTまたはMRI)を用いた。
【0150】
VI.結果
A.患者特性
307人の患者を無作為化し、治療企図(ITT)集団(Pd群が153人、IPd群が154人)に含めた。全体として、ベースライン時の患者の人口統計および特性は、RRMM集団を代表するものであり、2つの処置群で概して同様だった。下記の表Eを参照。
【0151】
【0152】
多発性骨髄腫国際病期分類(ISS)による病期および初期診断時の多発性骨髄腫サブタイプは、処置群間でバランスがとれていた(表Fを参照)。全体として、患者の28%は、初期診断時にISS病期IIIを有した(Pd群では28.8%、IPd群では27.3%)。
【0153】
【0154】
研究参加時に、ISS判定基準で、病期IおよびIIと分類されたのは患者の73.0%であり、病期IIIと分類されたのは患者の25.1%であった(表Gを参照)。選択基準に従って、すべての患者は、研究参加時に再発難治性だった。疾患特性は、重度の処置を受けたRRMM集団で予想された通りであり、処置群間では概して類似していた。
【0155】
【0156】
全体として、2つの処置群は、前治療の抗骨髄腫療法に関して同様であった(下記表H1およびH2参照)。プロトコルに従って、すべての患者は、前治療のレナリドマイドおよびプロテアソーム阻害剤(PI)を含む少なくとも2ラインの前治療を受けていた。全体として、前治療のライン数の中央値は、3であり(2~11ラインの範囲)、107人(34.9%)の患者が4ライン以上の前治療を受けていた。1人の患者は、ダラツムマブの前治療を受けていた。92パーセントの患者がレナリドマイドに抵抗性であり、75.9%の患者がPIに抵抗性であり、72.6%の患者がレナリドマイドおよびPIに抵抗性だった。ほとんど全ての患者(98.0%)が、研究参加前最後のレジメンに抵抗性だった。
【0157】
【0158】
【0159】
研究集団の3分の1超(すなわち、36.2%)が、腎機能障害(GFR<60ml/分/1.73m2と定義される)を有する状態で研究に参加した。障害のある腎機能を有する患者は、Pd群(33.8%)より多く、IPd群(38.7%)に参加する傾向があった。
【0160】
del(17p)、t(4;14)転座、および/またはt(14;16)転座など、少なくとも1つの高リスク染色体異常(CA)を有する多発性骨髄腫患者は、高リスクCAの無い患者と比較して予後が悪いことは詳細に報告されている。そのため、一部の患者では、ベースライン時に高リスク染色体異常のアセスメントが行われた。患者の21パーセントについては、CAが評価不能であった。これは、MM研究でのアセスメントについて通常報告されているものの範囲内である。高リスクCAを有する患者の百分率は、Pd群よりIPd群の方が低かった(23.5%に対して15.6%)。8人(2.6%)の患者(Pd群の5人とIPd群の3人)が、2つの高リスクな細胞遺伝学的異常を有した(表Iを参照)。そのような患者集団は、予後が非常に悪い。
【0161】
【0162】
B.研究処置への曝露の投薬量および期間
IPd群では、Pd群と比較して、曝露の期間がほぼ2倍の長さだった。曝露期間の中央値は、IPd群では41週間(1.3から76.7の範囲)であり、Pd群では24週間(1から73.7の範囲)であった。IPd群における55人の患者(36.2%)およびPd群における38人の患者(25.5%)が≧12周期を受けた。IPd群では、イサツキシマブの周期数の中央値が10(1から19の範囲)であり、イサツキシマブ曝露期間の中央値が40.9週間(1.0から75.1週間の範囲)であり、患者の35.5%が≧12周期のイサツキシマブ処置を受けた。表Jを参照。イサツキシマブの相対用量強度(RDI)の中央値は、92.3%(範囲=19.7%~111.1%)であった。ポマリドミドおよびデキサメタゾンのRDIの中央値は、IPd群では、85.1%(ポマリドミド)および87.8%(デキサメタゾン)であり、Pd群では93.3%(ポマリドミド)および96.3%(デキサメタゾン)だった。
【0163】
イサツキシマブの投薬欠落および投与延期は、それぞれ患者の52%および10.5%で報告された。イサツキシマブ注入の中断は、輸注反応管理の一部として、患者の34.9%およびイサツキシマブ注入の2.1%で生じた。投与中断が生じたのは、概して1回だけであり、例外は6人の患者だった。注入中断のほぼ全ては、最初の注入で生じた。ポマリドミドのRDIの中央値は、IPd群では、Pd群でよりわずかに低かった(IPd群では85.1%(範囲=22.9%~103.7%)、Pd群では93.3%(範囲=37.2%~118.5%))。デキサメタゾンのRDIの中央値は、IPd群では、Pd群でよりわずかに低かった(IPd群では87.8%(範囲=15.9%~130%)、Pd群では96.3%(範囲=30.3%~300%))。ポマリドミドおよびデキサメタゾンのRDIは、好中球減少とおよび感染症の管理のための用量の減量および投薬欠落によって主導された。
【0164】
【0165】
C.有効性
i.無増悪生存期間(PFS)
イサツキシマブ+ポマリドミド+デキサメタゾン(IPd)による処置を受けた患者は、独立効果判定委員会(IRC)によるアセスメントで、ポマリドミド+デキサメタゾン(Pd)による処置を受けた患者と比較して、有意に延長した無増悪生存期間(PFS)を示した。
図2を参照。2群間のPFS比較の結果による層別ログランク検定は、p値が0.001となり、統計的に有意だった。Pd群およびIPd群でそれぞれ、89例(58.2%)および73例(47.4%)のPFSイベントが報告された。PFSの中央値は、それぞれ、Pd群(6.47ヵ月、95%CI:4.468から8.279)よりIPd群(11.53ヵ月、95%CI:8.936から13.897)で長かった。層別ハザード比は、0.596(95%CI:0.436から0.814、p=0.0010)だった。これは、IPdではPdと比較して疾患進行または死亡のリスクが40%低減していることを特徴付けている。進行および反応のIRCアセスメントは、Mタンパク質の中央検査機関アセスメントおよび中央検査機関によるイメージングの放射線医学レビューに基づき、国際骨髄腫作業部会(IMWG)判定基準を適用するものだった(表Aおよび表B参照)。
【0166】
様々な有効性アセスメント方法(治験責任医師)または様々な打ち切り規則を用いた主要評価項目分析のロバストネスのアセスメントを行うために、感度分析を行った。すべてのPFS感度分析の結果は、主要なPFS分析の結果と高度に一致しており、IPd群を支持する統計学的有意性があった。特に、治験責任医師アセスメント(
図3参照)に基づくPFSは、IRCアセスメントに基づくPFSと一致していた。進行の治験責任医師アセスメントは、実施機関検査室のMタンパク質分析と、形質細胞腫/骨病変が存在する場合はその実施機関放射線学評価とに基づいた。治験責任医師のアセスメントによるPFSの中央値は、Pd群の6.54ヵ月(95%CI:4.468から7.885)と比較して、IPd群では11.14ヵ月(95%CI:7.491から14.784)であった。層別ハザード比は、0.602(95%CI:0.444から0.816;p=0.0009)であった。
【0167】
ii.PFSについてのサブグループ分析
あらかじめ定めた人口統計、ベースライン特性、および予後因子に関して、PFSに対する処置の効果の一貫性を評価した。事前設定されたサブグループ分析は、処置群と層別因子の間でも、処置群と人口統計特性の間でも、処置群と患者のベースライン特性の間でも、10%レベルの有意な相互作用を示さなかった。これは、それらのサブグループ全体で全体的処置効果が一貫していたことを示している。表Kに示すように、PFSについてのサブグループ分析は、全体的処置効果と一貫して、すべてのサブグループで、正の処置効果を示した(予後不良のサブグループを含む、例えば、年齢>75;HR=0.479;>3ラインの前治療:HR=0.59;腎機能障害:HR=0.51;ISS病期III:HR=0.635;R-ISS病期III:HR=0.605;高リスクの細胞遺伝学HR=0.655)。
【0168】
【0169】
イサツキシマブによるPFSにおける利点は、予後不良の患者を含めた、すべてのサブグループで見られた。PFSの利点は、レナリドマイドに抵抗性の患者(PFSの中央値は、Pd対照群が5.6ヵ月であったのに対して、IPd群では11.4ヵ月であった)、プロテアソーム阻害剤に抵抗性の患者(PFSの中央値は、Pd群で5.6ヵ月であったのに対して、IPd群では11.4ヵ月であった)、レナリドマイドおよびプロテアソーム阻害剤に抵抗性の患者(PFSの中央値は、Pd群で4.8ヵ月であったのに対して、IPd群では11.2ヵ月であった)、および研究参加前の最終ラインのレナリドマイドに抵抗性の患者(PFSの中央値は、Pd群で5.7ヵ月であったのに対して、IPd群では11.6ヵ月であった)で見られた。IPdで処置された高リスクの細胞遺伝を有する患者も、Pd群における高リスクの細胞遺伝を有する患者と比較して、PFSの利点を示した。(高リスクな細胞遺伝は、FISHによるdel(17p)、t(4;14)、またはt(14;16)と定義された;中央検査機関による細胞遺伝-del17のカットオフは50%、t(4,14)およびt(14,16)のカットオフは30%。)高リスクの細胞遺伝を有する患者では、PFSの中央値が、IPd群では7.5(95%CI:2.628からNC)であり、Pd群では3.745(95%CI:2.793から7.885)であった。
図5も参照。
図5は、IPd群対Pd群の、様々なベースライン特性(例えば、年齢、eGFR、前治療歴、前治療のASCTなど)を有する患者におけるPFSのサブグループ分析を示すフォレストプロットを提供する。IPd群のPFS利点改善は、>75歳、研究参加時にISS病期IIIであり、ベースラインクレアチニンクリアランス(eGFR)が<60ml/分/1.73m
2であり、>3ラインの前治療を受けた患者、レナリドマイドまたはプロテアソーム阻害剤による前治療に抵抗性の患者、および研究参加前の最終ラインのレナリドマイドに抵抗性の患者でも観察された。
【0170】
iii.全奏効率(ORR)
治験責任医師アセスメントに基づく分析では、ORR(すなわち、部分奏効(PR)またはそれよりも良い反応)が、Pd群より、IPd群で有意に高かった(それぞれ35.3%および60.4%)。層別コクラン-マンテル-ヘンツェル(CMH)のp値は、<0.0001であった。これは、0.025レベルでIPdを支持する2群間でORRに有意差があることを示している。IPd群では、奏功の深さが改善されていた。VGPRまたはそれより良い反応は、IPd群およびPd群でそれぞれ31.8%および8.5%達成され(P < 0.0001)、IPd群では、Pd群より多くの患者が完全奏効またはそれより良い反応を有した(2.0%に対して4.5%)。表L1を参照。表L1は、IPd群およびPd群におけるORRのさらなる分析の結果を示す。
【0171】
【0172】
医師アセスメントに基づく奏効率(全奏効率:Pd群では32.0%なのに対してIPd群では63.0%、少なくともVGPRである率は、Pd群では7.2%なのに対してIPd群では33.8%)は、IRCアセスメントと一致していた。
【0173】
表L2に示すように、ORRについてのサブグループ分析は、全体的処置効果と一致して、試験されたすべてのサブグループで、IPd群では処置効果が陽性となる傾向を示した(予後不良、例えば、年齢が>75;>3ラインの前治療歴;腎機能障害;ISS病期III;R-ISS病期III;および高リスクの細胞遺伝学のサブグループを含む)。VGPRまたはそれより良い反応を達成した腎機能障害のある(すなわち、クレアチニンクリアランス<60ml/分/1.73m2)患者の数は、Pd群よりIPd群の方が多かった(Pd群では4.1%であったのに対してIPd群では32.7%だった)。
【0174】
【0175】
iv.腎障害に対する処置の影響
腎機能低下を有する患者は、臨床試験から除外されるか、実際より少なく示されることが多い。さらに、モノクローナル抗体療法を受けている患者における腎機能低下を調査したデータがほとんど存在しない。腎機能低下は、RRMMを有する患者における予後不良の独立予測因子であり、腎機能も改善する抗骨髄腫療法が決定的に必要である。
【0176】
この研究において、ベースライン(すなわち、ベースラインクレアチニンクリアランス(MDRD))で腎機能障害がある患者の数は、2群間で互角だった(IPd群では55だったのに対し、Pd群では49だった)。表L3を参照。表L3は、研究開始時に腎機能低下を有した患者のベースライン人口統計および臨床的特徴を示す。
【0177】
【0178】
処置開始後に腎機能の改善を示した患者の数は、Pd群よりIPd群の方が有意に高かった。IPd群における23人の患者(16.4%)が腎完全奏功を達成し、一方、Pd群では、8人の患者(5.7%)が腎完全奏功を達成した。IPd群では、腎微小奏効、すなわち、<15mL/分から15~<30mL/分まで、または15~<30mL/分から30~<60mL/分まで、>50%のeGFR増加を達成した患者(0.7)がさらにいた。IPd群では、Pd群より少数の患者が、重度または末期までの腎機能の悪化を経験した(Pd群では35%だったのに対して、IPd群では23%だった)。
【0179】
【0180】
表M1に示すように、ベースライン時にクレアチニンクリアランス<50ml/分/1.73m2であった、IPd群の32人の患者のうち、23人(71.9%)は、腎完全奏功を示し、10人(31.3%)は、持続的な腎完全奏功を示した。対照的に、ベースライン時にクレアチニンクリアランス<50ml/分/1.73m2であった、Pd群の21人の患者のうち、8人(38.1%)が腎完全奏功を示し、4人(19%)が持続的な腎完全奏功を示した。腎完全奏功(CRenal)は、ベースライン時の<50ml/分/1.73m2から、≧1回のベースライン後アセスメントにおける≧60 mL/分/1.73m2までのクレアチニンクリアランスの改善と特徴づけられる。耐久性(持続的)CRenalは、≧60日間持続する反応であるCrenal反応と特徴づけられる(Dimopoulos, et al., Blood, 2013; 122: 3176参照)。初回腎完全奏功(CRenal)までの時間の中央値は、IPd群では4.1週間であり、Pd群では7.3週であった。CRenalは、IPd群では、中央値で57.0日間続き、Pd群では59.5日間続いた。
【0181】
ベースライン時に腎機能障害がある患者の場合、IPD群の患者のPFSの中央値は、9.5ヵ月であり、一方、Pd群の患者のPFSの中央値は、3.7ヵ月であった(0.50のHR;95%CI 0.30~0.85)。eGFR<45 mL/分/1.73m2である患者の場合、IPD群の患者のPFSの中央値は、7.5ヵ月であり、一方、Pd群の患者のPFSの中央値は、Pdについて2.8ヵ月であった(0.50のHR;95%CI 0.22~1.13)。ベースライン時に腎機能障害がない患者では、IPD群の患者(n=87)のPFSの中央値は12.7ヵ月であり、一方、Pd群の患者(n=96)のPFSの中央値は7.9ヵ月であった(0.58のHR;95%CI 0.38~0.88)。
【0182】
全奏効率(ORR)は、ベースライン時の腎機能に関係なく、Pdで処置された患者より、IPdで処置された患者の方が高かった。ベースライン時に腎機能低下がなかった患者の場合、ORRは、IPd群(n=87)では67.8%(4.6%がCR、29.9%がVGPR、33.3%がPR)であり、Pd群(n=96)では42.7%(1%がsCR、1%がCR、9.4%がVGPR、31.3%がPR)であった。ベースライン時に腎機能低下があった(eGFR<60ml/分/1.73m2)患者の場合、ORRは、IPd群(n=55)では56.4%(5.5%がCR、27.3%がVGPR、23.6%がPR)であり、Pd群(n=49)では24.5%(2%がCR、2%がVGPR、20.4%がPR)であった(オッズ比[OR]3.98;95%CI 1.60~10.17)。ベースライン時にeGFR>45~<60ml/分/1.73m2であった患者の場合、ORRは、IPd群(n=35)では68.6%(5.7%がCR、31.4%がVGPR、31.4%がPR)であり、Pd群(n=32)では25%(3.1%がCR、3.1%がVGPR、18.8%がPR)であった。ベースライン時にeGFR<45mL/分/1.73m2であった患者の場合、ORRは、IPd群(n=20)では35.0%(5%がCR、20%がVGPR、10%がPR)であり、Pd群(n=17)では23.5%(23.5%がPR)であった(OR1.75;95%CI 0.34~10.11)。ベースライン時にeGFR<45mL/分/1.73m2であった患者のうち、各群当たり1人の患者がeGFR<30ml/分/1.73m2を有し、IPd群の方の患者はSD(安定)を有し、一方、Pd群の方の患者はPD(進行)を有した。
【0183】
IPd群における、腎機能低下がある3人の患者は、微小残存病変陰性(MRD陰性)を得た(感度レベルは105あたり1)。
【0184】
IPd群では、ベースライン時に腎機能低下があった患者のOSの中央値が未到達であり、一方、Pd群では、OSの中央値が11.6ヵ月であった(HR 0.53;95%CI 0.30~0.96)。eGFR<45mL/分/1.73m2であった患者の場合、OSの中央値は、Pd群では6.6ヵ月であったのに対して、IPd群では10.7ヵ月であった(HR 0.62;95%CI 0.26~1.45)。ベースライン時に腎機能低下がなかった患者の場合、OSの中央値は、どちらの群でも未到達であった(HR 0.62;95%CI 0.33~1.19)。
【0185】
処置中に末期腎臓病(ESRD;eGFR<15mL/分/1.73m2)を発症した患者の数は、Pd群(7.9%)より、IPd群(2.9%)の方が少なかった。ベースライン時に中等度のRIがあった患者のうち、Isa-Pd群の患者の22.6%(12/53)およびPd群の患者の34.8%(16/46)で、腎機能が重度のRIまたはESRDに悪化した[OR 0.55;95%CI(0.20~1.45)])。
【0186】
IPdによる処置は、eGFR<45mL/分/1.73m2であった患者に含む、ベースライン時に腎機能低下があった患者で、PFSおよび疾患反応率を、Pdによる処置と比較して、改善した。これらの結果は、研究集団全体で観察された利益と一致している。Pdによる処置と比較して、IPdによる処置は、腎機能低下が覆り、耐久性腎奏功があった患者の数の増加とも関連していた。薬物動態学的パラメータは、腎機能低下があった患者と無い患者の間で同等であった。これは、腎機能低下のある患者で用量調整をする必要が無いことを示唆している。これらのデータに基づいて、ポマリドミド+デキサメタゾンへのイサツキシマブの追加は、RRMMおよび腎機能低下がある患者に恩恵を与えることが予測される。
【0187】
v.高リスクの細胞遺伝学的異常を有する患者に対する処置の影響
Pd群に対して、IPd群で観察された全奏効率(ORR)の利益は、ベースライン時に少なくとも1つの高リスクな細胞遺伝学的異常(すなわち、del(17p)、t(4;14)、およびt(14;16)のうちの1つまたはそれ以上)があった患者の間で維持された。ベースライン時に標準的なリスク細胞遺伝学がある患者のうち、IPd群(n=103)では、ORRが65%(3.9%がCR、28.2%がVGPR、33%がPR)であり、一方、Pd群(n=78)では、ORRが42.3%(1.3%がCR、7.7%がVGPR、33.3%がPR)であった。ベースライン時に少なくとも1つの高リスクの細胞遺伝学的異常があった患者のうち、IPd群(n=24)では、ORRが50.0%(29.2%がVGPR、20.8%がPR)であり、一方、Pd群(n=36)では、ORRが16.7%(2.8%がVGPR、13.9%がPR)であった。ベースライン時にdel(17p)および4(4;14)細胞遺伝学的異常があった患者のうち、IPd群(n=3)の1人の患者はVGPRを達成し、Pd群(n=4)の1人の患者はPRを達成した。奏効率のオッズ比に関するデータは、下記表M2に示されている:
【0188】
【0189】
ベースライン時に少なくとも1つの高リスクの細胞遺伝学的異常があった患者における、Pdに対する、IPdによる処置のORR利益は、用いられた高リスク細胞遺伝学的のカットオフの定義に関係なく、維持されている。Pdに対するIPdによる処置のORR利点は、以下のカットオフの定義のいずれか1つによりdel(17p)と分類された患者で観察された:形質細胞の少なくとも5%、形質細胞の少なくとも20%、形質細胞の少なくとも40%、形質細胞の少なくとも50%、または形質細胞の少なくとも60%。Pdに対するIPdによる処置のORR利益は、以下のカットオフの定義のいずれか1つによりt(4;14)と分類された患者で観察された:形質細胞の少なくとも3%、形質細胞の少なくとも20%、形質細胞の少なくとも30%、形質細胞の少なくとも40%、または形質細胞の少なくとも60%。
【0190】
Pd群に対してIPd群で観察されたPFSの利点は、ベースライン時に少なくとも1つの高リスクの細胞遺伝学的異常(すなわち、del(17p)、t(4;14)、およびt(14;16)のうちの1つまたはそれ以上)があった患者の間で維持されていた。IPd群では、ベースライン時に標準的なリスクの細胞遺伝学を有した患者のPFSの中央値が11.6ヵ月であり、一方、Pd群では、ベースライン時に標準的なリスクの細胞遺伝学を有した患者のPFSの中央値が7.4ヵ月であった。IPd群では、ベースライン時に高リスクの細胞遺伝学を有した患者のためのPFSの中央値は、7.5ヵ月であり、一方、Pd群では、ベースライン時に高リスクの細胞遺伝学を有した患者のPFSの中央値が3.7ヵ月であった。ベースライン時にdel(17p)があった患者では、PFSの中央値が、Pd群では7.4ヵ月であったのに対して、IPd群では9.1ヵ月であった。ベースライン時にt(4;14)があった患者では、PFSの中央値が、Pd群では2.8ヵ月であったのに対して、IPd群では7.5ヵ月であった。Pdに対するIPdによる処置のPFS利益は、以下のカットオフの定義のいずれか1つによりdel(17p)と分類された患者で観察された:形質細胞の少なくとも5%、形質細胞の少なくとも20%、形質細胞の少なくとも40%、形質細胞の少なくとも50%、または形質細胞の少なくとも60%。Pdに対するIPdによる処置のPFS利益は、以下のカットオフの定義のいずれか1つによりt(4;14)と分類された患者で観察された:形質細胞の少なくとも3%、形質細胞の少なくとも20%、形質細胞の少なくとも30%、形質細胞の少なくとも40%、または形質細胞の少なくとも60%。
【0191】
vi.細胞遺伝学的なサブグループにおける安全性
IPdまたはPdのいずれかで処置された高リスクまたは標準的なリスクの患者が経験したTEAEの数が表M3に示されている。
【0192】
【0193】
高リスク患者ではグレード≧3のTEAE多かったのにもかかわらず、PdへのIsaの追加は、処置の中止に至るイベントを増やさなかった。処置関連の死亡は、いずれのサブグループでも増加しなかった。
【0194】
IPdまたはPdのいずれかで処置された高リスクの患者および標準的なリスク患者が経験した、示されている検査異常およびTEAEについての>5%の患者におけるグレード≧3のイベントの数が表M4に示さている。
【0195】
【0196】
イサツキシマブ+ポマリドミド+デキサメタゾンは、ベースライン時に少なくとも1つの高リスクの細胞遺伝学的異常があった患者で、管理しやすい安全性プロファイルを有した。Pdに対するIsa-PdによるORRの利点は、高リスクの細胞遺伝学を有した患者の間で維持されており、利益は、用いられた細胞遺伝学的なカットオフの定義から独立していた。Pdに対するIsa-Pdによる類似のPFSの利点が、高リスク(del[17p]、t[4;14]、および/またはt[14;16])および標準的なリスク患者について、観察された。Isa-Pdは、高リスクの細胞遺伝学を有する患者の処置が難しいサブグループにおいて、Pdに対して、一貫した利益を提供し、RRMMの新しい治療選択肢である可能性がある。
【0197】
vii.全生存期間(OS)
プロトコルで定めた通り、OSの有効性境界線は、オブライエンとフレミングのα支出関数に基づき、OSの中間解析の際に観察された実際の死亡数に従って導くことになっていた。OSの中間解析時に、Pd処置にイサツキシマブを追加することで、OSが長くなり、生存曲線が開始時から明らかに分離する傾向が観察された。いずれの処置群でも、OSの中央値は、未到達のままだった。分析時において、12ヵ月生存の可能性は、Pd群では0.633(95%CI:0.545~0.709)であり、IPd群では0.720(95%CI:0.636~0.787)であった。Pdへのイサツキシマブの追加は、PFS(IRCによる)の主評価項目の統計的に有意(片側、p=0.001)で臨床的に意味のある改善へと導いた。
図4を参照。
【0198】
viii.後続治療までの時間
この分析の時点で、Pd群の患者の54%およびIPd群の患者の39%が、後続治療を開始していた。後続治療までの時間の中央値は、Pd群では9.1ヵ月であり、IPd群では未到達だった(HR:0.538;95%CI:0.382~0.758)。
【0199】
ix.他の評価項目
処置に対する反応は、Pd群と比較して、IPd群の方が速く起こり、耐久性があった。
【0200】
奏功期間(DOR):奏功期間の中央値は、Pd群より、IPd群の方が長かった(それぞれ、11.07ヵ月[8.542からNC(すなわち、計算されていない)]に対して、13.27ヵ月[10.612からNC])。下記表Nを参照。
【0201】
初回奏功までの時間:奏功を達成した患者において、初回奏功までの時間の中央値は、Pd群(1.9ヵ月/58日)より、IPd群(1.1ヵ月/35日)の方が短かった。ITT分析では、初回奏功までの時間の中央値は、Pd群より、IPd群の方がわずかに短かった(それぞれ、3.02ヵ月[2.825~5.060]に対して1.94ヵ月[1.314~2.004])。表Nを参照。
【0202】
【0203】
奏効率の改善は、すべてのサブグループで観察された。2または3ラインの多発性骨髄腫の前治療を受けた患者において、奏効率は、Pd群では38.6%であったのに対して、IPd群では56.9%であった。>3ラインの多発性骨髄腫の前治療を受けた患者において、奏効率は、Pd群では28.8%であったのに対して、IPd群では67.3%であった。
【0204】
干渉アッセイ評価:IRCは、VGPRのカテゴリーの中で、残留免疫固定陽性を除いてCRの判定基準を満たす患者(歴史的なほぼCRカテゴリー、Mタンパク質検出不能、および免疫固定陽性)を同定した。IPd群(15.6%)の24人の患者およびPd群の5人の患者(3.3%)が、その最良奏功としてほぼCRを有した。IPd群におけるこれらの患者のうちの22人からの血清試料を、骨髄腫M-タンパク質シグナルからイサツキシマブシグナルを分離した後、質量分析で試験した。22人の患者(50%)のうちの11人において、この研究の中央検査機関で行われる免疫固定試験(25mg/dL、Hydragel、Sebia)の感度レベルで検出可能な残留骨髄腫Mタンパク質はもはやなかった。これは、免疫固定がイサツキシマブの存在によるものだったことを意味する。奏功の深さ、特に完全奏効は、免疫固定によるMタンパク質のアセスメントに対するイサツキシマブの潜在的干渉により過小評価されている可能性がある。
【0205】
微小残存病変(MRD):微小残存病変(MRD)のアセスメントは、スクリーニング時に採取された骨髄穿刺液試料(ID較正試料)を用いて、完全奏効または厳密な完全奏効の確認時、およびMRD陽性の場合には3ヵ月後に、Adaptive clonoSEQ(登録商標)アッセイ(バージョン2.0;Adaptive Biotechnologies、米国ワシントン州シアトル)で行った。患者が陽性MRDのままであった場合には、さらに1つの試料を採取することができた。最多で3個までの処置後試料を得た。
【0206】
clonoSEQアッセイは、再構成されたIgH(VDJ)、IgH(DJ)、IgK、およびIgL受容体遺伝子配列ならびに転座したBCL1/IgH(J)およびBCL2/IgH(J)配列を同定する次世代シークエンシング(NG)ベースのアッセイである。このアッセイは、通常のゲノムDNA(gDNA)において二倍体コピーとして存在する特定のゲノム領域を増幅するプライマーを含んでおり、それにより、総有核細胞含量の測定が可能となっている。
【0207】
試験は、骨髄穿刺液から抽出されたゲノムDNA(gDNA)から開始した。抽出されたgDNAの品質アセスメントを行い、マルチプレックスPCRを用いて、再構成された免疫受容体を増幅した。PCRで増幅した受容体配列に、試料識別用の反応特異的インデックスバーコード配列を付加した。シークエンシングライブラリーを、バーコードを付けた増幅DNAから調製し、次いで、NGSを用いた合成によってシークエンシングした。生の配列データを、シークエンシング機器からAdaptive分析パイプラインにアップロードした。これらの配列データを多段階プロセスで分析した:最初に、試料インデックス配列を用いて、試料の配列データを確認した。次に、増幅の偏りを取り除くため、インラインコントロールのある独自のアルゴリズムを用いてデータのプロセシングを行った。
【0208】
clonoSEQクローナリティ(ID)アセスメントを行った際、リンパ系腫瘍の存在と整合する、「優性」クローンに特異的なDNA配列が存在しているかどうか、試料の免疫レパートリーをチェックした。クローン配列がID配列(後続の追跡に用いるためのもの)として適しているかについて、まず、高度に類似しており、その配列の頻度が、その遺伝子座のすべての配列の百分率で少なくとも3%であったことを要求する配列を集合させることによって、クローン配列のアセスメントを行った。クローンは、十分な存在量および多クローン性バックグラウンドからの分化と共に、試料中のすべての有核細胞の少なくとも0.2%という頻度を有していなければならなかった。MRD追跡用に考慮されていた各配列をB細胞レパートリーデータベースと比較し、他の配列に対するその相対的存在量と共に、患者報告に報告される検出限界および定量化限界の評価に用いられる感度ビンに配列を割り当てるのに用いられるユニークネス値を割り当てた。
【0209】
clonoSEQトラッキング(MRD)アセスメント中に、完全な免疫グロブリン受容体レパートリーのアセスメントを再度行い、前に同定された優性クローン型配列の検出および定量化を行って、試料のMRDレベルを決定した。
【0210】
MRD陰性率は、最初の投与の後における任意の時の骨髄穿刺液によるMRD陰性の患者の割合と定義された。分析を目的として、MRDアセスメント無しの治療意図集団の患者は、MRD陽性とみなされた。
【0211】
MRDアセスメント用の骨髄試料は、治験責任医師アセスメントによる完全奏効の患者について、または臨床的に必要であれば、治験責任医師によって採取された。IRCの審査によってCRまたはsCRが確認されたすべての患者(イサツキシマブ群における7人の患者および対照群における3人の患者)を含めた16人の患者について分析を行った。治験責任医師のアセスメントが、施設内でのMタンパク質検査結果に基づいたものであったが、IRCアセスメントは、中央検査機関のMタンパク質結果に基づいたものであったので、CRとは異なる反応は、IRCによって割り当てられた可能性があることに留意すべきである。
【0212】
ITT集団内のMRD陰性は、IPd群では、10人(6.5%)の患者が10-4の感度(すなわち、有核細胞104個あたり1個の多発性骨髄腫細胞);8人(5.2%)の患者が10-5の感度(すなわち、有核細胞105個あたり1個の多発性骨髄腫細胞);2人(1.3%)の患者が10-6の感度(すなわち、有核細胞106個あたり1個の多発性骨髄腫細胞)で観察された。Pd(対照)群の患者ではMRD陰性が観察されなかった。
【0213】
生活の質:全体的な生活の質(QLQ-C30の全般的健康得点によって測定されたもの)は、経時的に維持され、両処置群で同様であった。Pom+Dexへのイサツキシマブの追加は、患者の生活の質に負に影響を与えなかった。さらなる分析は、Pom+Dexへのイサツキシマブの追加は、患者の健康関連の生活の質を維持したことを示した。
【0214】
前処置のラインおよび難治性状態による有効性分析:Pdと比較したIPdのPFS利益は、前治療のライン数または難治性状態に関係なく、分析されたすべてのサブグループにわたって維持されていた(下記表Oを参照)。これには、4ラインの前治療を受けた患者(3.29ヵ月に対して8.54ヵ月;HR 0.498;95%CI 0.258~0.962)、LenおよびPIに抵抗性の患者(4.76ヵ月に対して11.20ヵ月;HR 0.579;95%CI 0.401~0.835)、および最終ラインのLenに抵抗性のもの(5.7ヵ月に対して11.6カ月;HR 0.50;95%CI 0.34~0.76)が含まれる。後の分析では、治療最終ラインのレナリドマイドに抵抗性であった、IPd群の患者の数は、93人と決定され、治療最終ラインのレナリドマイドに抵抗性であった、Pd群の患者の数は、88人と決定された。
【0215】
【0216】
さらに、前治療のライン数にかかわりなく、Pdに対して、より多くの患者が、IPdによる処置に反応した。2~3、>3、および4ラインの前治療を受けた患者において、全奏効率(ORR)は、Pd群より、IPd群の方が高かった。2~3ラインの前治療を受けた患者では、ORRが、Pd群(n=101)では38.6%(10.9%がVGPRまたはそれより良い反応を達成した)であったのと比較して、IPd群(n=102)では56.9%(32.4%がVGPRまたはそれより良い反応を達成した)であった。>3ラインの前治療を受けた患者では、ORRが、Pd群(n=52)では28.8%(3.8%がVGPRまたはそれより良い反応を達成した)であったのと比較して、IPd群(n=52)では67.3%(30.8%がVGPRまたはそれより良い反応を達成した)であった。4ラインの前治療を受けた患者では、ORRが、Pd群(n=28)では28.6%(7.1%がVGPRまたはそれより良い反応を達成した)であったのと比較して、IPd群(n=32)では56.3%(31.3%がVGPRまたはそれより良い反応を達成した)であった。
【0217】
レナリドマイド(Len)に抵抗性であった患者、プロテアソーム阻害剤(PI)に抵抗性であった患者、LenおよびPIに抵抗性であった患者、および処置の最終ラインのLenに抵抗性であった患者において、ORRは、Pd群に対して、IPd群の方が高かった。Len抵抗性患者では、IPd群(n=144)でORRが59.0%(30.6%がVGPRまたはそれより良い反応を達成した)であり、一方、Pd群(n=140)でORRが31.4%(7.1%がVGPRまたはそれより良い反応を達成した)であった。PI抵抗性患者では、IPd群(n=118)でORRが60.2%(30.5%がVGPRまたはそれより良い反応を達成した)であり、一方、Pd群(n=115)でORRが32.2%(7.8%がVGPRまたはそれより良い反応を達成した)であった。LenおよびPIに抵抗性であった患者では、IPd群(n=111)でORRが58.6%(29.7%がVGPRまたはそれより良い反応を達成した)であり、一方、Pd群(n=107)でORRが29.9(8.4%がVGPRまたはそれより良い反応を達成した)であった。処置の最終ラインでLenに抵抗性であった患者では、IPD群(n=93)でORRが55.9%(32.3%がVGPRまたはそれより良い反応を達成した)であり、一方、IPd群(n=88)でORRが29.5%(4.5%がVGPRまたはそれより良い反応を達成した)であった。
【0218】
Pdに対するIPdのPFS利益は、前治療のライン数または難治性状態に関係なく、全集団のものと整合していた。ポマリドミド+デキサメタゾンへのイサツキシマブの追加は、前治療別に分析した全ての部分集団で、処置奏効率を改善した。とりわけ、Pdに対するIPdの利益は、処置の最終ラインのLenに抵抗性の患者で維持された。
【0219】
D.安全性
安全性のアセスメントは、治療下で発現した有害事象(TEAE)、重篤有害事象(SAE)、処置中止に至ったTEAE、他の重大なAE(例えば、輸注反応、第2の原発悪性腫瘍、呼吸AE、好中球減少症および好中球減少性合併症、感染症、血小板減少症および出血、腫瘍崩壊症候群、溶血性障害および血球輸血、自己免疫障害)の発生率、標準的な血液学および血液化学を介して行った。安全性解析対象集団は、実際に、研究処置の少なくとも1用量または1用量の一部を投与されたITT集団の患者を含んでいた。この集団を用いたすべての分析は、実際に投与された処置に基づいた。IPdの全体的安全性プロファイルは、よく特徴づけられていた。また、管理しやすく、処置の期間および持続的な臨床的利益に悪影響を与えないものであった。Pdへのイサツキシマブの追加は、大部分はグレードの低い輸注反応ならびに好中球減少症および感染症の増加と関連していた。陽性ADA(すなわち、抗薬物抗体、特に抗体イサツキシマブ抗体)は同定されなかった。
【0220】
重度の処置を受けた再発難治性多発性骨髄腫患者において、ポマリドミドおよびデキサメタゾンへのイサツキシマブの追加は、統計的に有意であり臨床的に意味があるPFSの利益を示した。カプラン・マイヤー曲線(
図2および3)は、イサツキシマブ群患者の死亡または増悪のリスクの41%減に移行する初期から持続的な分離を示した。PFSの利益は、高リスクの細胞遺伝学(HR 0.66)を患者、75歳より高齢の患者、腎機能障害を有する患者、および2~3ラインの前治療を受けた患者、>3ラインの前治療を受けた患者、レナリドマイドおよびプロテアソーム阻害剤に抵抗性であった患者、最終ラインのレナリドマイドに抵抗性であった患者を含めた、すべてのサブグループで見られた。イサツキシマブ、ポマリドミド、およびデキサメタゾンによるPFSは、この患者集団の中で、これまで観察されたもののうち最も長い。高リスクの細胞遺伝学は、国際的に認められている閾値を用いた中央検査機関のFISH分析で、陽性と決定された。加えて、全奏功の利益は、すべてのサブグループで見られた。サブグループ分析の結果は、RRMMを有する患者における、CD38を標的にした療法による腎機能の改善の最初のエビデンスを提供する。
【0221】
IPd(すなわち、イサツキシマブとポマリドミドおよびデキサメタゾンの併用)は、Pd(すなわち、ポマリドミドおよびデキサメタゾン)と比較して、奏効率および奏功の深さを大幅に改善した。IPd処置は、腎機能低下も覆した。10-5レベルの微小残存病変陰性状態が、イサツキシマブ群の患者の5.2%および対照群(ITT)の0%で得られた。
【0222】
実施例2:難治性または再発難治性多発性骨髄腫を有する患者で、イサツキシマブ(SAR650984)とポマリドミドおよび低用量デキサメタゾンの併用をポマリドミドおよび低用量デキサメタゾンと比較する第III相無作為化オープンラベル多施設共同研究における東アジア人患者のサブグループ分析
この実施例は、実施例1に記載の第III相多施設共同多国籍無作為化オープンラベル並行群間2群研究における東アジア人患者のサブグループ分析について記載している。このサブグループ分析は、レナリドマイドおよびプロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、またはイキサゾミブ)を含む、単独または併用の、少なくとも2ラインの多発性骨髄腫の前治療(例えば、2ライン以上の前治療)を受け、かつ最後の治療に抵抗性であった難治性または再発難治性多発性骨髄腫(RRMM)を有する東アジア人患者を処置するためのイサツキシマブとポマリドミドおよび低用量デキサメタゾンの併用の安全性および有効性を、ポマリドミドおよび低用量デキサメタゾンと比較して、評価した。
【0223】
実施例1で詳述したように、東アジア人患者をIsa-Pd(IPd)実験群またはPd対照群に無作為化した。IPd群の患者は、周期1の1、8、15、および22日目に10mg/kgの用量で、次いで後続の28日周期の1および15日目に10mg/kgの用量で、イサツキシマブを投与された。IPd群およびPd群の患者は、各28日周期の1~21日目の各日に4mgの用量でポマリドミドを投与され、1、8、15、および22日目に、40mg(または患者が≧75歳であった場合は20mg)の用量で、デキサメタゾンを経口または静脈内に投与された。
【0224】
結果
A.患者特性
このサブグループ分析には、36人の東アジア人患者(13人の日本人患者、9人の韓国人、および14人の台湾人患者)が含まれていた。IPd実験処置群には、東アジア人サブグループの21人患者が割り当てられ、Pd対照処置群には15人の患者が割り当てられた。このサブグループの13人の日本人患者のうち、9人の患者がIPd実験処置群に割り当てられ、4人の患者がPd対照処置群に割り当てられた。
【0225】
東アジア人サブグループの患者の特徴は、実施例1に記載した第III相研究の全ての集団と類似していた。年齢の中央値は、65(範囲:41~85)であった。前治療のライン数の中央値は、3(範囲:2~7)であった。このサブグループの患者の91.7%は、レナリドマイドによる前処置に抵抗性であり、このサブグループの患者の69.4%は、PIによる前処置に抵抗性であった。東アジア人患者の13.9%は、高リスクの細胞遺伝学を有した。
【0226】
B.有効性
i.無増悪生存期間(PFS)
IPd群の場合、中央値11.6ヵ月の経過観察の後、PFSの中央値は未到達であった。Pd群の場合、PFSの中央値は7.9ヵ月であった(HR 0.517[95%CI 0.19~1.39])。
【0227】
ii.全奏効率(ORR)
ORR(≧PR)は、IPd群では71.4%であり、Pd群では60%であった。
【0228】
VGRPまたはそれよりよい反応の率は、IPd群では61.9%であり、Pd群では13.3%であった。
【0229】
初回奏功までの時間の中央値は、IPd群では32日間であり、Pd群では59日間であった。
【0230】
C.安全性
IPdおよびPd群において、それぞれ、患者の90.5%および93.3%でグレード≧3のAEが観察された。IPd群における患者の9.5%で、グレード≧3のAEにより処置が中止された。
【0231】
IPdを投与された患者の57.1%で輸注反応が報告された。グレード3~4の輸注反応はなかった。
【0232】
結論
実施例1に記載の第III相研究における、36人の東アジア人患者のサブグループ分析は、日本人患者を含む東アジア人集団におけるIsa-Pdの有効性および安全性が、実施例1の研究の全ての集団と同等であったことを示している。Isa-Pdは、RRMMを有する東アジア人患者にとっての新規の治療選択肢である。
【0233】
実施例3:再発/難治性多発性骨髄腫患者のイサツキシマブ+ポマリドミド+デキサメタゾンの研究における奏功の深さおよび反応動態
多発性骨髄腫(MM)において、深い奏功は、無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)の改善と関連していた。腎反応時間を含む反応動態データは、腎機能低下(RI)有す患者にとって極めて重要であるが、まれにしか報告されない。微小残存病変(MRD)陰性を含む奏功の深さ+反応動態と長期的アウトカムの関係を、実施例1に記載の無作為化オープンラベル実対照第3相研究からのデータを用いて分析した。
【0234】
方法
実施例1に記載のように、すべての患者に標準用量のポマリドミド+デキサメタゾン(「Pd」)を投与し、Isa-Pd群に無作為化された患者には、1、8、15、および22日目(周期1)ならびに後続の28日周期の1および15日目に、増悪するまで、10mg/kgのイサツキシマブIVに加えて、Pdを投与した。奏功の深さおよび動態を治療群ごとに分析した。微小残存病変(「MRD」)のアセスメントは、10-5で行った(完全奏効[CR]/厳格なCR[sCR]を有する患者における次世代シークエンシングによって試験した)。生化学的奏功までの時間、腎奏功までの時間(CRenal;MDRD GFR式(www.kidney.org/content/mdrd-study-equation参照)を用いた、ベースライン時の<50mL/分/1.73m2から≧1回のベースライン後アセスメントにおける≧60mL/分/1.73m2までの推定糸球体濾過量(eGFR)の改善)、および持続的CRenal(≧60日間持続するCRenal)までの時間を記録した。IgGカッパクローン性の患者には、中性化アッセイを用いなかった。
【0235】
結果
全体として、307人の患者が、Isa-Pd(n=154)またはPd(n=153)に無作為化され、そのうち、33/142(23.2%)および24/145(16.6%)の患者が、ベースライン時の測定でeGFR<50mL/分/1.73m
2を有した。患者は、中央値で3ラインの前治療(範囲2~11)を受けており、Isa-Pd群およびPd群の患者のそれぞれ73.4%および71.9%が二重抵抗性(すなわち、IMiD(登録商標)およびプロテアソーム阻害剤に抵抗性)であった。PFSの中央値は、Isa-Pdでは11.53ヵ月であり、Pdでは6.47ヵ月であった(ハザード比[HR]0.596[95%信頼区間(CI)0.436~0.814])。生化学的奏功は、Pdよりも、Isa-Pdの方が高頻度であり、深かった。全奏効率(ORR)は、35.3%に対して60.4%であった(オッズ比[OR]2.80;95%信頼区間[CI]1.72~4.56;p<0.0001);≧最良部分奏効率(VGPR)は、8.5%に対して31.8%であった(OR 5.03;95%CI 2.51~10.59;p<0.0001)。イサツキシマブ干渉アッセイは行われなかったので、ほぼ完全奏効率(免疫固定は陽性のままであった)が報告された:Pd群では3.3%であったのに対して、Isa-Pd群では15.6%であった(OR 5.47;95%CI 1.96~18.78;p=0.0002)。ITT集団のMRD陰性率(10
-5の感度における陰性率)は、Pd群では0%であったのに対して、Isa-Pd群では5.2%であった。奏功の深さは、両群で、長期的アウトカムの改善と相関していた。Isa-Pd群における中央値で11.6ヵ月の経過観察期間の後では、MRD陰性患者(MRDneg)の100%が無増悪であり、生存していた。Isa-Pd群の方が、PFSの中央値が長くなっており、奏功の深さが増大していた。Isa-Pd群(n=8)のMRDneg患者では、PFSの中央値が未到達(NR)であった。MRD±(n=42)であった、Isa-Pd群の≧VGPR患者では、PFSの中央値が15.21ヵ月であった。PR(n=44)を達成したIsa-Pd群の患者では、PFSの中央値が11.53ヵ月であった。PR未満(n=57)の達成であった、Isa-Pd群の患者では、PFSの中央値が3.29ヵ月であった(
図6A参照)。Pd群では、≧PRの奏功を達成した患者におけるPFSの中央値が計算できず、一方、<PRの患者におけるPFSの中央値が2.86ヵ月(範囲:2.6~3.81ヵ月)であった。
【0236】
Isa-Pd群では、1年OS率が、MRD-患者で最も高く、奏功の深さと相関していた。Isa-Pd群のMRDneg患者では、1年OS率が100%であった。MRD±であった、Isa-Pd群の≧VGPR患者では、1年OS率が92.9%であった。PRを達成した、Isa-Pd群の患者では、1年OS率が82.4%であった。PR未満の達成であった、Isa-Pd群の患者では、1年OS率が46.4%であった(
図6B参照)。1年OS率は、Pd群における奏功の深さとも相関していた。MRD±であった、Pd群の≧VGPR患者では、1年OS率が88.9%であった。PRを達成した、Pd群の患者では、1年OS率が90.6%であった。PR未満の達成であった、Pd群の患者では、1年OS率が54.3%であった
【0237】
生化学的奏功は、Pdより、Isa-Pdの方が速く起こった。≧PRの奏功を達成した患者(Isa-Pd群では93人、Pd群では54人)では、初回奏功までの時間の中央値が、Pd(1.9ヵ月)よりIsa-Pd(1.1ヵ月)の方が短かった。≧VGPRの奏功を達成した患者(Isa-Pd群およびPd群でそれぞれ49人および13人)では、初回のVGPRまたはそれより良い反応までの時間が同様、すなわち、Isa-Pdでは2.9ヵ月。Pdでは3.0ヵ月であった。≧CRの奏功を達成した患者(Isa-Pd群では7人の患者、Pd群では3人)では、初回のCRまたはそれよりよい反応までの時間の中央値が、Pd(7.9ヵ月)より、Isa-Pd(5.7ヵ月)の方が短かった。最良奏功までの時間は、Pd群では2.8ヵ月であったのと比較して、Isa-Pd群では2.5ヵ月であった。
【0238】
腎奏功は、Pdより、Isa-Pdの患者の方で速く起こった。腎完全奏功(CRenal)は、Isa-Pd群では、23/32(71.9%)の患者で観察され(初回腎完全奏功までの時間の中央値が4.1週間であった)、Pd群では、8/21(38.1%)の患者で観察された(初回奏功までの時間の中央値が7.3週間)。持続的CRenal(すなわち、CRenal≧60日、別名「耐久性CRenal」)は、Isa-Pd群では、10/32(31.3%)の患者で観察され(初回奏功までの時間の中央値が2.4週間)、Pd群では4/21(19.0%)の患者で観察された(初回奏功までの時間の中央値が4.8週間)。加えて、腎奏功は、Pd群より、Isa-Pd群の患者方が速く起こった。
図7を参照。上記の通り、CRenalまでの時間の中央値は、Pd群では7.3週であったのに対して、Isa-Pd群では4.1週間であった。持続的CRenal(すなわち、CRenal≧60日間)までの時間の中央値は、Pd群では4.8週間であったのに対して、Isa-Pd群では2.4週であった。初回腎奏功(軽度奏効および部分奏効を含む)までの時間の中央値は、IPd群では7.3週間であったのに対して、IPd群では3.1週間であった。
【0239】
結論
実施例1で研究された重度の前処置を受けた集団では、Isa-Pdは、Pdよりも高頻度かつ速く生化学的奏功(すなわち、抗腫瘍効果)および腎奏功を誘導した。MRD陰性を含む、奏功の深さは、Isa-Pdにより改善し、より良い長期的生存アウトカム(すなわち、PFSおよびOS)と関連していた。サブグループ分析の結果は、RRMMを有する患者における、CD38を標的にした療法による腎機能の改善の最初のエビデンスを提供する。
【0240】
実施例4:再発/難治性多発性骨髄腫を有する高齢患者におけるイサツキシマブとポマリドミドおよびデキサメタゾンの併用の有効性
多発性骨髄腫(MM)は、65~74歳の人で最も多く診断され、患者の約3分の1が≧75歳である。高齢は、MMを有する患者の予後に負の影響を有する。実施例1は、抗CD38モノクローナル抗体イサツキシマブ(Isa)とポマリドミドおよびデキサメタゾン(Pd)の併用による処置を、Pdと比較した。患者は、レナリドマイドおよびプロテアソーム阻害剤を含む、2ライン以上の前治療の後、再発/難治性MM(RRMM)を有していた。このサブグループ分析は、高齢患者(≧75歳)における有効性および安全性を、より若い患者と比較して調査した。
【0241】
方法
患者は、Isa-PdまたはPdが投与されるように、無作為化された(1:1)。Isa(10mg/kgのIV)は、1、8、15、および22日目(周期1)および後続の28日周期の1および15日目に投与された。すべての患者に、各周期の1~21日目に4mgのポマリドミドを投与し、各周期の1、8、15、および22日目にデキサメタゾン40mg(≧75歳の患者のための20mg)を投与した。主要評価項目は、独立効果判定委員会のアセスメントによる無増悪生存期間(PFS)であった。年齢<65歳、65~74歳、および≧75歳の患者についてサブグループ分析を行った。
【0242】
結果
全体として、307人の患者をIsa-Pd(n=154)またはPd(n=153)に無作為化し、治療意図集団に含めた。患者の年齢の中央値は、Isa-Pd群では68.0歳であり、Pd群では66.0歳であった。Isa-Pd群およびPd群には、それぞれ、<65歳の患者が54人(35%)および70人(46%)、65~74歳の患者が68人(44%)および54人(35%)、≧75歳の患者が32人(21%)および29人(19%)いた。
【0243】
集団全体では、PFSの中央値が、Pdに対して、Isa-Pdで大幅に改善していた(6.47ヵ月に対して11.53ヵ月;ハザード比[HR]0.596[95%信頼区間(CI)0.436~0.814]、p=0.001))。これと整合して、≧75歳の患者は、PFSの中央値が、Pdでは4.47ヵ月であったのに対して、Isa-Pdでは11.40カ月であった(HR 0.479[95%CI、0.242~0.946])。同様に、それぞれ、Isa-Pd群およびPd群において、65~74歳の患者は、11.57カ月および8.58ヵ月のPFSを有し(HR 0.638[0.385~1.059])、<65歳の患者の場合、PFSが11.53ヵ月および5.03ヵ月であった(HR 0.656[95%CI、0.401~1.074])。表P参照。
【0244】
【0245】
全患者の全奏効率(ORR)は、Isa-Pdでは60.4%、Pdでは35.3%であり、オッズ比(OR)は2.80であった(95%CI、1.72~4.56)。Pdに対して、Isa-Pdを投与された患者の年齢層別のORRは:≧75歳層では53.1%および31.0%(OR 2.52[95%CI、0.79~8.26])であり;65~74歳層では64.7%および38.9%(OR 2.88[95%CI、1.29~6.46])であり;<65歳層では59.3%および34.3%(OR 2.79[95%CI、1.26~6.20])であった。
【0246】
Isa-Pdを投与された患者の31.8%およびPdを投与された患者の8.5%が少なくとも最良部分奏効(VGPR)を達成し、ORは5.03であった(95%CI、2.51~10.59)。Isa-Pd投与患者およびPd投与患者における年齢別の≧VGPRの比率は:≧75歳層では31.3%および0%(OR計算無し)であり;65~74歳層では32.4%および13.0%(OR 3.21[95%CI、1.17~9.70])であり;<65歳層では31.5%および8.6%(OR 4.90[95%CI、1.64~16.35])であった。
【0247】
全体的に、Isa-Pd群の8人の患者が、10-5で微小残存病変陰性を有した。2/8が≧75歳であり、2/8が65~74歳であった。残りの4人の患者は65歳未満であった。MRD陰性を達成したPd群の患者はいなかった。
【0248】
中間解析の時点では、全生存期間(OS)データが未熟であった。しかし、高齢者集団では、OSの中央値が未到達で、Isa-Pd群の8/32(25%)の患者が死亡し、Pd群では、15/29(51.7%)が死亡し、OSの中央値が10.25ヵ月であった(HR 0.404(95%CI 0.171~0.956)。
【0249】
65~74歳の患者における後続のOS分析では、Isa-Pd群では、OSの中央値が未到達であり、Pd群では、OSの中央値が14.5ヵ月であった(HR 0.75;95%CI 0.38~1.45)。<65歳の患者の場合、いずれの処置群についても、OSの中央値が未到達であった(Pdに対するIsa-PdのHRは0.85であった(95%CI 0.46~1.59))。
【0250】
Isa-Pd群において、≧75歳の患者、65~74歳の患者、および<65歳の患者の1年OS率は同様であった。下記表Qを参照。
【0251】
【0252】
Isa-Pd群において、全グレードの治療下で発現した有害事象(TEAE)の発現率は、どの年齢層でも類似していた:<65歳、98.1%;65~74歳(100%);および≧75歳、100%。TEAEの発現率は、両群で同等であった。
【0253】
Isa-Pd投与によるグレード≧3のTEAEは、<65歳の患者(85.2%)と比較して、≧75歳(93.8%)の患者方が多く、Pd群でも類似の傾向が観察された(それぞれ64.7%および75.0%)。TEAEによる処置中止も、Isa-Pd群(7.4%に対して15.6%)およびPd群(10.3%に対して14.3%)において、<65歳に対して、≧75歳の患者の方が多かった。重篤なTEAE(SAE)の発現率は、両群において、<65歳の患者より、≧75歳の患者の方が高かった(それぞれ、Isa-Pd、57.4%および68.8%;Pd、47.1%および57.1%)。致死的なアウトカムを伴うTEAEの発現率は、Isa-Pd群では、<65歳の患者(11.1%)より、≧75歳の患者(6.3%)の方が低く、一方、Pd群では逆の傾向(5.9%に対して14.3%)が観察された。
【0254】
結論
PdへのIsaの追加は、高齢患者における、PFS、ORR、≧VGPR、およびOSの度合いを改善した。これは、研究集団全体で観察された利益と整合する。Isa-Pd群において、PFSおよび1年OS率は、<65歳、65~74歳、および≧75歳の患者で類似していた。Isa-Pd群とPd群の両方において、≧75歳の患者では、より若い患者と比較して、SAEおよびTEAEによる中止の比率が高くなる一貫した傾向があった。ただし、Isa-Pd群では致死的AEの増加はなかった。
【0255】
実施例5:RRMMにおけるベースラインバイオマーカーと、イサツキシマブならびにポマリドミドおよびデキサメタゾンの併用の有効性の関係
2件の臨床研究(すなわち、再発/難治性多発性骨髄腫を有する患者におけるイサツキシマブとポマリドミドおよびデキサメタゾンの併用の安全性および最大耐用量を評価する第I相研究、ならびに実施例1に記載の第III相研究)から得られた試料について、ベースラインバイオマーカー分析を行った。Isa-Pdレジメンに対する反応について情報を与えるものであるかどうか、CD38受容体密度(RD)、FCGR3A(Fc免疫グロブリン受容体)遺伝子型、および骨髄または末梢血免疫表現型検査の評価を行った。
【0256】
方法
両研究とも、レナリドマイドおよびプロテアソーム阻害剤を含む、2ライン以上の前治療を受けた、RRMMを有する患者の類似の集団を登録した。両方の研究で、初回処置投与の前に、ベースライン血液試料が採取され;加えて、第I相研究におけるスクリーニング中に、骨髄試料が採取された。第I相研究では、骨髄形質細胞を、CD38 RDについて分析した。血液試料および骨髄穿刺液を用いて、免疫細胞集団(CD19+ B細胞、CD3+ T細胞、CD4+ T細胞、制御性T細胞(Treg)、およびナチュラルキラー(NK)細胞[CD56+ bright CD16+ lowサブセットおよびCD56+ dim CD16+ brightサブセット])を特徴づけた。FCGR3A遺伝子型判定(V158およびF158高親和性および低親和性対立遺伝子)のために、両研究から得られた血液試料を分析した。バイオマーカーの結果は、国際骨髄腫作業部会判定基準による少なくとも部分奏効と定義される反応と相関していた。
【0257】
結果
第I相研究は、45人の患者を登録し、Isa-Pdで処置した。実施例1で論じたように、第III相研究は、154人の患者をIsa-Pdに、153人の患者をPdに無作為化した。ベースライン患者人口統計は、両研究とも類似しており、前治療のライン数の中央値は、第I相研究では3(範囲:1~10)であり、第III相研究では3(2~11)であった。Isa-Pdによる全奏効率(ORR)は、第I相研究では62.2%(28/45)であり、第III相研究では60.4%(93/154)であった。第I相研究において、評価可能な結果を有する、処置された31人の患者のCD38 RDの中央値は、108172受容体/がん細胞(範囲:12950~337335)であった。Isa-Pd(n=21)に反応した患者において、CD38 RDの中央値価値は、120931(48770~337335)受容体/がん細胞であり;Isa-Pd(n=10)に反応しなかった患者において、CD38 RDの中央値価値は、85370(範囲:12950~309003)受容体/がん細胞であった。Isaによる5件の第I/II相臨床研究全体で、4/198の患者(2.0%)が、48770未満のCD38 RDレベルを有した。これは、レスポンダー患者では最も低い値であった。
【0258】
両研究とも、FCGR3A遺伝子型判定結果が利用可能であった。両研究にわたって、FCGR3A遺伝子のF158V一塩基多型の分布は、一般集団で見られるように、F/Fが42%、F/Vが42%、V/Vが16%であった。両研究において、3つの遺伝子型全てで奏功が観察された(表R)。第I相研究では、Isa-Pdレジメンにより観察された、3つの遺伝子型のORRは、50.0%から80.0%の範囲にあり、一方、より大きな第III相研究では、Isa-PdレジメンによるORRは、それらの遺伝子型全体で、さらに類似していた(範囲:56.9%~65.5%)。無増悪生存期間(PFS)は、8.97ヵ月から14.78ヵ月の範囲にあり、3つの遺伝子型全てについて、Pdに対して、Isa-Pdは、PFSの利益を示した(表R参照)。
【0259】
【0260】
第I相研究において、42人の患者が、少なくとも1つのベースライン末梢血免疫バイオマーカー値を有し、これらのうち、17人の患者がノンレスポンダーであり、25人の患者がレスポンダーであった。加えて、41人の患者が、少なくとも1つのベースライン骨髄免疫バイオマーカー測定値を有した(16人がノンレスポンダーであり、25人がレスポンダーであった)。スクリーニング中の骨髄で試験された免疫バイオマーカーについて、レスポンダーとノンレスポンダーの間で、有意差は観察されなかった。p値は、0.2817(CD19+ B細胞)、0.6446(CD3+ T細胞)、0.7780(CD4+ T細胞)、0.1620(Tregs)、0.9591(NK細胞)、0.8275(CD56+ bright/CD16+ low NK細胞)、および0.7389(CD56+ dim/CD16+ bright NK細胞)であった。同様に、血液中の免疫バイオマーカーについて、レスポンダーとノンレスポンダーの間で有意差はなかった
【0261】
結論
Isa-Pdで処置された患者から得た試料のバイオマーカー分析は、骨髄形質細胞または末梢血におけるベースライン骨髄形質細胞CD38 RD、FCGR3A遺伝子型、または免疫表現型に関係なく、Isa-Pd処置の利益が、すべての群で見られたことを示した。
【0262】
実施例6:静脈内投与用のイサツキシマブを含む医薬製剤の開発
製剤1(5mg/mlのイサツキシマブを含有する)の開発
望ましいpH、浸透圧、および安定性要件を達成するために、5mg/mlの濃度でイサツキシマブを含む製剤1を開発した。いくつかの異なる製剤を開発し、製造、輸送、保管、および取扱い中に遭遇する条件を模倣するように設計された様々なストレス条件下で試験した。各製剤が試験されたストレス条件には、以下が含まれた:
・振盪によるメカニカルストレス(15時間中350rpm)、
・40℃または45℃の熱ストレス、
・凍結融解サイクル(-20℃または-30℃から室温までを3~5サイクル)、
・光曝露(SUNTEST)、および
・輸液による希釈。
【0263】
以下のpH値の1つの以下の緩衝剤の1つを含む製剤も試験した:
・クエン酸塩10mM、pH=5.0、5.5、6.0、6.5、または7.0;
・ヒスチジン10mM、pH=5.5、6.0、または6.5;
・リン酸塩10mM、pH=6.5、7.0、または7.4
・10mMコハク酸塩、pH5.0、5.5、または6.0;および、
・酢酸塩10mM、pH=5.0または5.5。
【0264】
緩衝剤-pHシステムは、対象とするpH範囲におけるその緩衝能力に基づいて選んだ。緩衝剤-pHシステムは、それらがイサツキシマブの集合に及ぼす影響について、振盪および熱ストレス後における、可視および準可視粒子の形成および高分子量の分子種(HMWS、例えば、可溶性集合体)の形成という点で評価した。
【0265】
ヒスチジンまたは酢酸塩緩衝剤を含有する製剤は、クエン酸塩、リン酸塩、またはコハク酸塩緩衝剤を含有する製剤より高い安定性を提供することがわかった。さらに、クエン酸塩緩衝剤およびコハク酸緩衝剤は、これらの2つの緩衝剤の各々が含まれると、溶液が乳白色になったので、イサツキシマブの可溶性を低減することがわかった。動的光散乱(DLS)は、Z平均値の増大を示し、静的光散乱(SLS)は、ビリアル係数A22で、クエン酸ナトリウムまたはコハク酸ナトリウムを含む製剤中の分子引力およびヒスチジンを含む製剤中の分子斥力を示した。さらに、ヒスチジン緩衝剤は、限外濾過/透析濾過中における、イサツキシマブのHMWS(分子ふるい高性能液体クロマトグラフィー(SE-HPLC)によって測定される)生成が、クエン酸塩緩衝剤およびコハク酸緩衝剤より少なかった。
【0266】
ヒスチジン緩衝剤および酢酸塩緩衝剤を含む製剤を、熱ストレス下で、それらが電荷多様性に対する安定性に及ぼす影響について、さらに試験したところ、それらは同様な安定性を示した。研究結果に基づき、イサツキシマブを安定化するための以下の緩衝剤-pHシステムを、さらなる開発ステップ用に選択した:ヒスチジン10mM、pH=5.5からpH6.5;酢酸塩10mM、pH=5.0およびpH5.5。
【0267】
NaCl(0.8%w/v)、スクロース(5%w/v)、およびマンニトール(3%w/v)を、選択されたpH緩衝システムと組み合わせて、イサツキシマブの安定性を改善するそれらの能力(イサツキシマブの集合によって測定される)について試験した。振盪、熱ストレス、および/また凍結融解サイクルの後、可視および準可視粒子、可溶性集合体(HMWS)、および断片(低分子量の分子種(LMWS))の量を測定することによって、集合のアセスメントを行った。
【0268】
NaClを含む製剤で、熱、凍結融解、および振盪ストレス下におけるイサツキシマブのかなりの不安定化(準可視粒子濃度の増大によって示される)が見出された。
【0269】
スクロースまたはマンニトールを含む製剤は、イサツキシマブに対する安定化効果を有することがわかった。
【0270】
酢酸塩緩衝剤を含有する製剤は、熱ストレス下でヒスチジンを含む製剤より高度の翻訳後修飾(PTM)を示した。酢酸塩緩衝剤を含有する製剤中で、比較的高いアミド分解が見出された。
【0271】
pH値6.0から6.5の間のヒスチジンを含有する製剤と、スクロースまたはマンニトールを含有する製剤とでは、イサツキシマブの挙動に大きな違いが観察されなかった(例えば、上述のアッセイを用いて、上に論じた判定基準による)。したがって、pH6.5のヒスチジン緩衝剤を、さらなる開発試験用に選択した。製剤1における等浸透圧を標的にするため、マンニトールの濃度を5%(w/v)に増やし、スクロースの濃度を10%(w/v)に増やした。スクロース10%(w/v)は、292mOsm/kgの浸透圧に相当し、マンニトール5%(w/v)は、330mOsm/kgの浸透圧に相当する。
【0272】
次に、様々な濃度の種々の界面活性剤を評価した。ヒスチジン10mM pH6.5、5%マンニトールの存在下、0.001%から0.01%の濃度でポリソルベート80(PS80)を試験した。試験製剤は、震盪ストレス(350rpmで15h)に曝露するか、NaCl0.9%溶液またはブドウ糖5%溶液中に2mg/mlに希釈した。光遮蔽(LO)下の準可視粒子を推算した。PS80を含む製剤では、試験したすべての濃度で、0.001%PS80という最も低いレベルでさえ、同等の結果が得られた。これは、加えたストレスの下では、PS80によってイサツキシマブが効率的に安定化されたことを示している。製造ステップ(すなわち、処方された薬物物質の配合、濾過、および充填操作)中のPS80の吸着の可能性に備えて、0.005%というPS80濃度を選択した。
【0273】
製剤開発研究から、2種の製剤、すなわち、5%(w/v)のマンニトールまたは10%(w/v)のスクロースを含有するヒスチジン10mM、PS80 0.005%(w/v)、pH6.5を選択し、表Sに示す6ヵ月安定性について試験した。
【0274】
【0275】
様々な解析手順の可変性に基づき、いずれの製剤でも有意差は観察されなかった。ただし、例外として、Suntest曝露下では、マンニトールを含むプロトタイプの方が多くの酸性型を有した。さらに、マンニトールは、氷点下の温度で結晶化する可能性がある。したがって、スクロースを安定剤として選択した。
【0276】
結果として、以下を含有する医薬製剤1が開発された:
・5mg/mlイサツキシマブ
・10mMヒスチジン
・10%(w/v)スクロース
・0.005%(w/v)ポリソルベート80
・pH6.5。
【0277】
製剤1中に製剤化されるイサツキシマブは、+5℃±3℃で24ヵ月の有効期間を有することが示された。イサツキシマブの5mg/ml濃度は、推定最小薬理作用量(MABEL)投薬スケジュールを満たすイサツキシマブの非常に低用量に適合した;しかし、より高用量の投与を可能にするため、より高濃度のイサツキシマブを含有する製剤も必要であった。
【0278】
製剤2(20mg/mlのイサツキシマブを含有する)の開発
ヒスチジン緩衝剤のpHおよびモル濃度を、安定性改善および緩衝能力向上の可能性について試験した。以下の濃度およびpHの値で、ヒスチジンを試験した:10mM、pH=6.0;10mM、pH=6.5;20mM、pH=6.0;および20mM、pH6.5。ストレス熱条件下、すなわち、40℃で1ヵ月、各試験製剤中のイサツキシマブの安定性を、集合(SE-HPLCによるHMWSおよびLMWS)、準可視粒子数(フローセル顕微鏡検査(FCM)を用いる)、電荷多様性(弱陽イオン交換クロマトグラフィー(WCX)を用いる)、流体力学半径値(Z平均)、およびDLSによる多分散指数(PdI)を測定することによって評価した。驚いたことに、pH6.0の製剤(10mMまたは20mMヒスチジン)で、pH6.5の製剤より良い、イサツキシマブの安定化が観察された。したがって、イサツキシマブの安定性の増大および緩衝能力の向上により、pH6.0の20mMヒスチジンが、製剤2用に選択された。
【0279】
PS80界面活性剤含有量の影響
0.015%(w/v)から0.025%(w/v)の間のPS80を含有する製剤において、PS80含有量の影響のアセスメントを行った。ストレス条件として、輸液中での振盪と希釈は施した。
【0280】
0.015%(w/v)から0.025%(w/v)までの範囲のPS80含有量について、試験製剤に振盪を与えた後で、フローセル顕微鏡検査によって観察される準可視粒子の数に違いはなかった。
【0281】
PS80含有量が0.015%(w/v)から0.025%(w/v)の間である製剤を、NaCl 0.9%溶液中に希釈した後の安定性について試験した。製剤を、NaCl 0.9%輸液バッグ中に、2mg/mlイサツキシマブに希釈した。試料を、準可視粒子について測定した。製剤間で、違いは観察されなかった。したがって、PS80濃度が0.015%(w/v)から0.025%(w/v)の製剤は、20mg/mlのイサツキシマブについて、類似した安定性プロファイルを有することがわかった。
【0282】
長期保管中には、PS80が経時的に分解する可能性がある。長期保管の影響を模倣するため、撹拌、振盪、および凍結/融解ストレス条件を与えることによって、PS80濃度が0.0057%(w/v)である製剤を評価した。そのような条件は、初期濃度0.020%、すなわち200ppmのPS80を含有する試料を5℃で50ヵ月間保管することに相当する。
【0283】
撹拌ストレス(かき混ぜおよび震盪)に曝露した後にも、凍結/融解ストレの後にも、集合特性の変化は観察されなかった。これは、PS80含有量を57ppmという低下濃度まで減らすことによって、pH6.0で、20mMヒスチジン、10%(w/v)スクロースを含む20mg/mlイサツキシマブの製剤に製剤化した場合、撹拌または凍結融解ストレスに曝露した後でさえ、イサツキシマブの安定性が影響を受けないことを実証している。
【0284】
結果として、以下を含有する医薬製剤2が開発された:
・20mg/mlイサツキシマブ
・20mMヒスチジン
・10%(w/v)スクロース
・0.02%(w/v)ポリソルベート80
・pH6.0。
【0285】
明瞭な理解を目的として、図示および例示によってある程度詳細に本開示を記述したが、これらの記述および例は、本開示の範囲を制限するものと解釈するべきではない。本明細書に引用されたすべての特許および科学文献の開示は、参照により、その全体が本明細書に明示的に組み込まれている。
【配列表】