(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-14
(45)【発行日】2025-07-23
(54)【発明の名称】新規な癌抗原及び方法
(51)【国際特許分類】
A61K 38/02 20060101AFI20250715BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20250715BHJP
A61K 38/08 20190101ALI20250715BHJP
A61K 38/10 20060101ALI20250715BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20250715BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20250715BHJP
A61K 35/761 20150101ALI20250715BHJP
A61K 35/763 20150101ALI20250715BHJP
A61K 35/766 20150101ALI20250715BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20250715BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20250715BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20250715BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250715BHJP
A61K 35/17 20250101ALI20250715BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20250715BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20250715BHJP
A61K 35/15 20250101ALI20250715BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20250715BHJP
【FI】
A61K38/02
A61K38/17 ZNA
A61K38/08
A61K38/10
A61K48/00
A61K35/76
A61K35/761
A61K35/763
A61K35/766
A61K39/00 H
A61P37/04
A61K39/39
A61P35/00
A61K35/17
A61P17/00
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K35/15
A61K35/12
(21)【出願番号】P 2021546487
(86)(22)【出願日】2019-10-18
(86)【国際出願番号】 GB2019052980
(87)【国際公開番号】W WO2020079448
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-10-17
(32)【優先日】2018-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518151434
【氏名又は名称】ザ フランシス クリック インスティチュート リミティッド
(73)【特許権者】
【識別番号】521165426
【氏名又は名称】エナラ バイオ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ カシオティス
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ ヤング
(72)【発明者】
【氏名】ジャン アッティグ
(72)【発明者】
【氏名】ブラム スナイダース
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド パーキンス
(72)【発明者】
【氏名】ファビオ マリノ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ ターネット
【審査官】斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0083334(US,A1)
【文献】国際公開第2007/109583(WO,A2)
【文献】SCHIAVETTI, F. et al.,A human endogenous retroviral sequence encoding an antigen recognized on melanoma by cytolytic T lymphocytes,Cancer Research,2002年10月01日,Vol. 62, No. 19,P. 5510-5516
【文献】HUMER, J. et al.,Identification of a melanoma marker derived from melanoma-associated endogenous retroviruses,Cancer Research,2006年02月01日,Vol. 66, No. 3,P. 1658-1663
【文献】MULLINS, C. S. et al.,Endogenous retrovirus sequences as a novel class of tumor-specific antigens: an example of HERV-H env encoding strong CTL epitopes,Cancer Immunology, Immunotherapy,2011年12月21日,Vol. 61, No. 7,P. 1093-1100
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C07K
A61K
A61P
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)下記から選ばれた配列を含む単離ポリペプチド:
(a)配列番号1の配列;及び
(b)配列番号1と少なくとも90%同一であり、かつ、配列番号1に対する特異的な免疫応答を惹起する、(a)の配列の免疫原性変異体;及び
(c)配列番号1の少なくとも9個の連続アミノ酸を含み、かつ、配列番号1に対する特異的な免疫応答を惹起する、(a)の配列の免疫原性断片
であって、該少なくとも9個の連続アミノ酸が、配列番号11~14、55~57及び73~74のいずれか一つから選ばれた配列を含む、前記免疫原性断片、
(ii)(a)(x)配列番号2~10の配列を有するポリペプチド、並びにそれと少なくとも80%同一である(x)のポリペプチドの免疫原性変異体、並びに該ポリペプチドの配列の少なくとも9個の連続アミノ酸を含む(x)のポリペプチドの免疫原性断片、並びに(y)配列番号15~32、51~54、58~72及び75~78の配列を有するポリペプチドから選ばれた1つ以上の他のポリペプチド、
(b)悪性黒色腫関連抗原である他のポリペプチド、
(c)免疫応答を増強できるポリペプチド配列(即ち、免疫賦活配列)、並びに
(d)抗原エピトープへのCD8+T細胞応答を増加させる強力なCD4+補助を提供することのできるポリペプチド配列
から選ばれた第二の若しくは更なるポリペプチドへ融合されている(i)記載の単離ポリペプチドを含む、融合ポリペプチド、
(iii)(i)の単離ポリペプチド又は(ii)の融合ポリペプチドをコードする単離された核酸、
(iv)(i)
のポリペプチド
若しくは(ii)の融合ポリペプチドをコードする単離された核酸を含むか、又は(iii)の核酸を含む、ベクター、
(v)(i)のポリペプチドを用いて、生体外でT細胞集団を刺激及び増幅することを含む方法によって得ることのできる、T細胞集団、
(vi)(i)のポリペプチドを用いて刺激された、T細胞、
(vii)(i)
のポリペプチド、
(ii)の融合ポリペプチド、(iii)の核酸、又は(iv)のベクターを生体外でロードして改変された、又は、(i)
のポリペプチド
又は(ii)の融合ポリペプチドを発現するように遺伝子操作された、抗原提示細胞、
(viii)(i)のポリペプチドでロードされたエクソソーム、
(ix)(i)のポリペプチドに対して免疫特異的である、単離された抗原結合ポリペプチド、
(x)(i)
の配列
又は(ii)の融合ポリペプチドの配列を有するHLA結合ポリペプチドに対して免疫特異的である、単離された抗原結合ポリペプチド、又は
(xi)その表面上に(x)の抗原結合ポリペプチドを発現するように操作された細胞傷害性細胞
を含む、ヒトの癌の治療又は予防のための免疫原性医薬組成物であって、該癌の細胞が、配列番号1、配列番号1と少なくとも90%同一である配列番号1の免疫原性変異体、及び配列番号1の少なくとも9個の連続アミノ酸を含む配列番号1の免疫原性断片から選ばれた対応する配列を発現する、前記免疫原性医薬組成物。
【請求項2】
(i)の単離ポリペプチドを含み、該単離ポリペプチドが、配列番号1、11~14、55~57、73及び74のいずれか一つから選ばれた配列を含むか、又は該配列からなる、請求項1記載の免疫原性医薬組成物。
【請求項3】
(iii)又は(iv)の核酸又はベクターを含み、該核酸がDNAである、請求項1記載の免疫原性医薬組成物。
【請求項4】
(iii)又は(iv)の核酸又はベクターを含み、該核酸が、配列番号33及び41のいずれか一つから選ばれた配列を含む、請求項1記載の免疫原性医薬組成物。
【請求項5】
(iv)のベクターを含み、該ベクターが、ヒト宿主細胞において翻訳的に活性なRNA分子の転写を可能にするのに適した調節エレメントをコードするDNAを含む、請求項1、3及び4のいずれか一項記載の免疫原性医薬組成物。
【請求項6】
(iv)のベクターを含み、該ベクターがウイルスベクターである、請求項1及び3~5のいずれか一項記載の免疫原性医薬組成物。
【請求項7】
前記ベクターが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アルファウイルス、ヘルペスウイルス、アレナウイルス、麻疹ウイルス、ポックスウイルス、パラミクソウイルス、レンチウイルス又はラブドウイルスベクターである、請求項6記載の免疫原性医薬組成物。
【請求項8】
前記組成物が、1以上の免疫賦活剤をさらに含む、請求項1記載の免疫原性医薬組成物。
【請求項9】
(vii)の抗原提示細胞を含み、該抗原提示細胞が樹状細胞である、請求項1記載の免疫原性医薬組成物。
【請求項10】
(ix)の抗原結合ポリペプチドを含み、該抗原結合ポリペプチドが、モノクローナル抗体又はその
抗原結合断片である、請求項1記載の免疫原性医薬組成物。
【請求項11】
(ix)の抗原結合ポリペプチドを含み、該抗原結合ポリペプチドが細胞傷害性成分と結合している、請求項1又は10記載の免疫原性医薬組成物。
【請求項12】
(x)の抗原結合ポリペプチドを含み、該抗原結合ポリペプチドが、T細胞受容体又はその断片である、請求項1記載の免疫原性医薬組成物。
【請求項13】
(x)の抗原結合ポリペプチドを含み、該抗原結合ポリペプチドが、対象内の細胞傷害性細胞又は他の免疫コンポーネントへ結合可能な第二のポリペプチドへ結合している、請求項1又は12記載の免疫原性医薬組成物。
【請求項14】
(xi)の細胞傷害性細胞を含み、該細胞傷害性細胞がT細胞である、請求項1記載の免疫原性医薬組成物。
【請求項15】
(ii)の融合ポリペプチドを含み、該融合ポリペプチドが、
(x)下記から選ばれた配列を含むポリペプチド:
(a)配列番号1の配列;及び
(b)配列番号1と少なくとも
90%同一である(a)の配列の免疫原性変異体;及び
(c)配列番号1の少なくとも9個の連続アミノ酸を含む(a)の配列の免疫原性断片、並びに
(y)配列番号2、3及び4の配列から選ばれた1以上の配列;又は、前記配列番号2、3及び4の配列の各々について、該配列と少なくとも90%同一である該配列の変異体、若しくは該配列の少なくとも9個の連続アミノ酸を含む免疫原性断片
を含む、請求項1記載の免疫原性医薬組成物。
【請求項16】
前記癌が悪性黒色腫である、請求項1~15のいずれか一項記載の免疫原性医薬組成物。
【請求項17】
前記悪性黒色腫が皮膚悪性黒色腫である、請求項16記載の免疫原性医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、癌の治療又は予防に使用され、特に悪性黒色腫の治療又は予防(例えば、皮膚悪性黒色腫又はブドウ膜悪性黒色腫)で使用される抗原性ポリペプチド及び対応するポリヌクレオチドに関する。本発明は更に、中でもとりわけ、前記核酸及びポリペプチド、それらポリペプチド及びポリヌクレオチドをロードされ、及び/又はそれらにより刺激された免疫細胞、それらポリペプチドに特異的な抗体、並びにそのポリペプチドを認識する分子で遺伝子操作された、(自己又はそれ以外から由来する)細胞を含む医薬及び免疫原性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
病原性微生物に対する通常の免疫監視の一環として、全ての細胞は、細胞内タンパク質を分解して、全細胞の表面上に発現される主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスI分子上にロードされるペプチドを産生する。宿主細胞から由来するこれらのペプチドのほとんどは、自己として認識され、適応免疫系で認識されないままである。一方、外来(非自己)ペプチドは、MHC I-ペプチド複合体にしっかりと結合するT細胞受容体(TCR)をコードするナイーブCD8+T細胞の増殖を刺激することができる。この増殖されたT細胞集団は、外来抗原タグ付き細胞を排除できるエフェクターCD8+T細胞(細胞傷害性Tリンパ球、CTLを含む)を産生でき、更に、外来抗原タグ付き細胞がその動物の一生において後に現れる場合に、再増幅されることができるメモリーCD8+T細胞も産生できる。
【0003】
MHCクラスII分子の発現は、通常、樹状細胞(DC)等のプロフェッショナル抗原提示細胞(APC)に制限されており、MHCクラスII分子は通常、外因性環境から内部に取り込まれたペプチドと共にロードされる。T細胞接着分子(CD54、CD48)及び共刺激分子(CD40、CD80、CD86)を含む様々な因子の存在下で、ナイーブCD4+T細胞からの相補的TCRがMHCII-ペプチド複合体へ結合すると、CD4+T細胞のエフェクター細胞(例えば、TH1、TH2、TH17、TFH、Treg細胞)への成熟が誘導される。これらのエフェクターCD4+T細胞は、B細胞の抗体分泌型形質細胞への分化を促進するだけでなく、抗原特異的なCD8+CTLの分化を促進し、それによって短期間のエフェクター機能及び長期間の免疫記憶の両方を含む、外来抗原に対する適応免疫応答の誘導を助ける。DCは、外因的由来の抗原(病原体又は腫瘍細胞から放出されたペプチド又はタンパク質等)をそれらのMHC I分子上に送達することができ、それによりペプチド抗原のクロスプレゼンテーションプロセスを実行して、ナイーブCD8+T細胞の増殖を刺激するための代替的な経路を提供することにより、免疫記憶の生成に貢献する。
【0004】
免疫記憶(特に抗原特異的B細胞/抗体及び抗原特異的CTL)は、微生物感染を制御する上で重要な役割を果たし、免疫記憶は重要な病原性微生物によって引き起こされる疾患を予防する多数のワクチンを開発するために利用されてきた。免疫記憶は又、腫瘍形成の制御に重要な役割を果たすことが知られているが、有効な癌ワクチンはほとんど開発されていない。
【0005】
癌は罹患率で2番目に多い原因であり、世界の全死亡原因の6分の1近くを占めている。2015年での880万人の癌による死亡のうち、最も多くの命を奪った癌は、肺癌(169万人)、肝臓癌(788,000人)、結腸直腸癌(774,000人)、胃癌(754,000人)及び乳癌(571,000人)であった。2010年での癌の経済的影響は、1兆1,600億米ドルと推定され、新しい症例数は今後20年間で約70%増加すると予想されている(世界保健機関、癌のファクト、2017年)。
【0006】
現在の皮膚悪性黒色腫の療法は多様であり、腫瘍の位置及び疾患の病期に大きく依存している。非転移性悪性黒色腫の主な治療法は、腫瘍及び周辺組織を切除する手術である。後期悪性黒色腫には、リンパ節郭清、放射線療法、又は化学療法を含む治療が必要な場合がある。免疫チェックポイント阻害戦略はPD-1/PD-L1及びCTLA4等の負の免疫調節因子を標的とする抗体の使用を含むものであり、最近、悪性黒色腫を含む様々な悪性腫瘍の治療に革命をもたらした(Ribas、A.及びWolchok,J. D.の文献、(2018)Science, 359:1350-1355)。チェックポイント阻害療法の並外れた価値、及び、その臨床的利益と患者自身の癌抗原に対する患者の適応免疫応答(特にT細胞ベースの免疫応答)とのよく知られた関連性は、効果的な癌ワクチン、ワクチンモダリティ及び癌ワクチン抗原の探索を活性化した。
【0007】
ヒト内在性レトロウイルス(HERV)は、外因性感染性レトロウイルスが先祖代々の生殖系列へ組み込まれてきた遺物である。HERVは、ウイルスゲノムに隣接する長い末端反復(LTR)の存在を特徴とする内因性レトロエレメントのグループに属する。このグループは又、哺乳類の見かけのLTRレトロトランスポゾン(MaLR)も含むため、まとめてLTRエレメントとして知られる(本明細書では、全てのLTRエレメントを意味するためにまとめてERVと呼ぶ)。ERVは哺乳類ゲノムのかなりの割合(8%)を構成し、配列相同性に基づいて約100のファミリーにグループ分けできる。多くのERV配列は欠陥のあるプロウイルスをコードし、それらは、LTRに隣接するgag、pro、pol及びenv遺伝子からなるプロトタイプ型レトロウイルスゲノム構造を共有する。いくつかの無傷なERV ORFは、HIV-1等の外因性感染性レトロウイルスによってコードされるタンパク質と特徴を共有する、レトロウイルスタンパク質を産生する。このようなタンパク質は、強力な免疫応答を誘導する抗原として作用する可能性があり(Hurst及びMagiorkinisの文献、2015, J. Gen. Virol 96:1207-1218)、それは、ERVによってコードされたポリペプチドは、T細胞及びB細胞受容体の選択プロセス並びに中枢性及び末梢性トレランス(免疫寛容)を回避できることを示唆する。ERV生成物に対する免疫反応性は、感染症や癌で自然発生する可能性があり、ERV生成物はいくつかの自己免疫性疾患の原因として関係づけられている(Kassiotis及びStoyeの文献、2016, Nat. Rev. Immunol. 16:207-219)。
【0008】
進化における突然変異及び組換え事象の蓄積により、ほとんどのERV由来配列は、それらの遺伝子の一部又は全ての機能的なオープンリーディングフレームを失い、その結果、感染性ウイルスを産生するその能力を失っている。しかし、これらのERVエレメントは、他の遺伝子と同様に生殖系列DNA内に維持されており、少なくともそれらの遺伝子のいくつかからタンパク質を生成する潜在的能力を持っている。実際、HERVがコードするタンパク質が、様々なヒト癌で検出されている。例えば、HERV-K env遺伝子のスプライス変異体であるRec及びNp9は、悪性精巣生殖細胞内にのみ見られ、健康細胞内では発見されない (Ruprechtらの文献、2008, Cell Mol Life Sci 65:3366-3382)。前立腺癌等の癌内でも、健康組織と比較してHERV転写産物のレベル上昇が観察されている(Wang-Johanningの文献、2003, Cancer 98:187-197; Anderssonらの文献、1998、Int. J. Oncol、12:309-313)。更に、HERV-E及びHERV-Hの過剰発現は免疫抑制的であることが示されており、これらも又、癌の進行に寄与することができるだろう(Mangeneyらの文献、2001、J. Gen. Virol. 82:2515-2518)。しかし、HERVが癌の進行又は病原性に寄与することのできる実際のメカニズムは未だ不明である。
【0009】
周囲の隣接する宿主遺伝子の発現を調節解除することに加えて、ERV調節エレメントの活性及び新しいゲノム部位への転位は、新規な転写産物の生成につながる可能性があり、それらのいくつかは発癌性を有する可能性がある(Babaian及びMagerの文献、Mob. DNA,2016、Lockらの文献、PNAS、2014、111:3534-3543)。
【0010】
幅広いワクチンモダリティが公知である。よく説明されているアプローチの1つは、免疫応答(B細胞及びT細胞応答を含む)を高め、免疫記憶を刺激するために、対象へ抗原性ポリペプチドを直接送達することを含む。或いは、ポリヌクレオチドを、そのポリヌクレオチドにコードされた免疫原性ポリペプチドがインビボで発現するように、ベクターによって対象へ投与してもよい。ウイルスベクター、例えばアデノウイルスベクターの使用は、癌に対する予防的ワクチン接種戦略及び治療的処置戦略の両方において、抗原の送達のためによく探究されてきた(Woldらの文献, Current Gene Therapy, 2013, Adenovirus Vectors for Gene Therapy、Vaccination and Cancer Gene Therapy, 13:421-433)。免疫原性ペプチド、ポリペプチド、又はそれらをコードするポリヌクレオチドも又、患者由来の抗原提示細胞(APC)をロードするために使用でき、次にそれらを治療的又は予防的免疫応答を惹起するワクチンとしてその対象に注入することもできる。このアプローチの例は、Provengeであり、FDAが承認した現在唯一の抗癌ワクチンである。
【0011】
癌抗原は又、それらを使用して様々な非ワクチン治療のモダリティを作成することにより、癌の治療及び予防に利用され得る。これらの療法は、1)抗原結合型生物製剤、2)養子細胞療法の2つの異なるクラスに分類される。
【0012】
抗原結合型生物製剤は、通常、抗原で修飾された癌細胞を認識し、それらの破壊を促進するように操作された多価のポリペプチドで構成される。これらの生物製剤の抗原結合コンポーネントは、TCRベースの生物製剤からなるものでもよく、それはTCR、高親和性TCR及び様々な技術によって作製されたTCR模倣物(モノクローナル抗体技術に基づくものを含む)を含むがこれらに限定されない。これらの種類の多価の生物製剤の細胞溶解性成分は、細胞傷害性化学物質、生物毒素、免疫細胞の標的化及び活性化を促進する、標的化モチーフ及び/又は免疫賦活性モチーフからなるものでもよく、いずれも腫瘍細胞の治療的破壊を促進するものである。
【0013】
養子細胞療法は、患者自身のT細胞をベースにしてもよく、それは、取りだされてワクチン抗原調製物により生体外で刺激される(細胞及び無細胞コンポーネントを含む他の因子の存在下又は非存在下に、T細胞と共に培養される)(JCI Insight. 2018年10月、4;3(19). pii:122467. doi:10.1172/jci.insight.122467)。或いは、養子細胞療法は、癌抗原を認識する抗原結合ポリペプチドを発現するよう計画的に操作された細胞(患者由来又は非患者由来の細胞を含む)をベースにすることもできる。これらの抗原結合ポリペプチドは、抗原結合型生物製剤について前記記載したものと同じクラスに分類される。従って、癌抗原結合ポリペプチドを発現するように遺伝子操作された(自己由来又は非自己由来)リンパ球は、それらの癌を治療するための養子細胞療法として患者に投与することもできる。
【0014】
癌に対する効果的な免疫応答を上昇させるためのERV由来抗原の使用は、癌のネズミモデルにおいて腫瘍の退縮を促進し、より好ましい予後診断をもたらす有望な結果を示した(Kershawらの文献、2001, Cancer Res. 61:7920-7924;Slanskyらの文献、2000, Immunity 13:529-538)。従って、特定された腫瘍特異的ERV抗原の厳しい制限のために、ある程度研究の進展が制限されているにもかかわらず、HERV抗原を中枢とした免疫治療トライアルがヒトにおいて検討されている(Sachaらの文献、2012, J.Immunol 189:1467-1479)。
【0015】
WO 2005/099750は、感染性病原体に対する既存のワクチンのアンカー配列を特定しており、これらは共通して、HERV-K Mel腫瘍抗原に対する交差反応性の免疫応答を高め、悪性黒色腫への保護を与えるものである。
WO 00/06598は、悪性黒色腫で優先的に発現されるHERV-AVL3-B腫瘍関連遺伝子の特定、並びにその遺伝子の発現を特徴とする症状を診断して治療するための方法及び生成物に関する。
WO 2006/119527は、悪性黒色腫関連の内因性レトロウイルス(MERV)に由来する抗原性ポリペプチド、並びに、悪性黒色腫の検出及び診断、及びこの疾患の予後診断のためのそれらの使用を提供する。抗癌ワクチンとしての抗原性ポリペプチドの使用も又開示されている。
【0016】
WO 2007/137279は、例えば、癌細胞増殖を予防又は阻害するためのHERV-K+結合抗体を使用して、HERV-K+癌を検出、予防及び治療するための方法及び組成物を開示している。
WO 2006/103562は、その中でHERV-Kのenv遺伝子からの免疫抑制的Np9タンパク質が発現される癌を、治療又は予防するための方法を開示している。この発明は又、そのタンパク質の活性を阻害できる核酸若しくは抗体を含む医薬組成物、又はそのタンパク質に対する免疫応答を誘導できる免疫原又はワクチン組成物に関する。
WO 2007/109583は、腫瘍細胞上のHERV-E抗原に反応する、富化された免疫細胞集団を含む組成物を提供することにより、哺乳類対象の新生物性疾患を予防又は治療するための組成物及び方法を提供する。
【0017】
Humer Jらの文献、2006, Canc. Res., 66:1658-63は、悪性黒色腫に関連する内因性レトロウイルス由来の悪性黒色腫マーカーを特定している。
癌、特に悪性黒色腫、更に特に皮膚悪性黒色腫及びブドウ膜悪性黒色腫の免疫療法に使用できる、更なるHERV関連の抗原配列を特定することが求められている。
【発明の概要】
【0018】
(発明の概要)
本発明者らは、驚くべきことに、LTRエレメントを含むか、又はLTRエレメントに隣接するゲノム配列に由来し、皮膚悪性黒色腫細胞では高レベルで見られるが、正常で健康な組織では検出不能か、又は非常に低レベルで見られる、ある種のRNA転写産物を発見した(実施例1を参照)。本明細書ではそのような転写産物を、癌特異的LTR-エレメントスパニング転写産物(CLT)と称する。更に、本発明者らは、これらのCLTによりコードされている潜在的なポリペプチド配列のサブセット(即ち、オープンリーディングフレーム(ORF))が、癌細胞内で翻訳され、抗原プロセッシング装置のコンポーネントによりプロセッシングされ、更に、クラスI及びクラスII主要組織適合性複合体(MHCクラスI及びMHCクラスII)並びにクラスI及びクラスIIヒト白血球抗原(HLAクラスI、HLAクラスII)分子と一緒に、腫瘍組織内で確認される細胞表面上に提示されることを示した(実施例2を参照)。これらの所見は、これらのポリペプチド(本明細書ではCLT抗原と称する)が事実上、抗原性であることを示す。従って、CLT抗原の癌細胞提示は、これらの細胞が、このCLT抗原に対する同族T細胞受容体(TCR)を有するT細胞による排除を受けやすくすることが期待され、更に、これら同族TCRを有するT細胞を増幅するCLT抗原ベースのワクチン接種方法/レジメンは、癌細胞(及びそれを含む腫瘍)、特に悪性黒色腫、更に特に皮膚悪性黒色腫の腫瘍に対する免疫応答を惹起することが期待される。実際に、悪性黒色腫対象からのT細胞は本明細書に開示されるCLT抗原由来ペプチドに反応し、T細胞を増幅し、T細胞受容体配列を増幅する(実施例3を参照)。本発明者らは、CLT抗原に特異的なT細胞が中枢性トレランスによって正常な対象のT細胞レパートリーから削除されないことを確認した(実施例4を参照)。健康なドナーT細胞の生体外培養物内のCLT抗原特異的T細胞の存在及び殺傷活性が決定された(実施例5を参照)。最後に、qRT-PCR研究により、CLTは、非悪性黒色腫細胞株と比較して、悪性黒色腫細胞株から抽出されたRNA内に特異的に発現されたことが確認された(実施例7を参照)。
【0019】
本発明者らは又、驚くべきことに、ある種のCLT抗原をコードするCLTが、皮膚悪性黒色腫で過剰発現されるだけでなく、ブドウ膜悪性黒色腫でも又過剰発現されることを発見した。これらのCLTによってコードされるCLT抗原ポリペプチド配列は、ブドウ膜悪性黒色腫細胞及びそれを含む腫瘍に対する免疫応答を惹起することが期待される。
【0020】
本発明の対象であるCLT及びCLT抗原は、癌ゲノムアトラスに見られる公知の腫瘍ゲノム配列から容易に由来できるカノニカル配列ではない。このCLTは、ERV起源の転写制御配列によって駆動される、複合体-転写及びスプライシング事象から生じる転写産物である。CLTは高レベルで発現されるため、かつCLT抗原ポリペプチド配列は正常なヒトタンパク質の配列ではないため、強力で特異的な免疫応答を(実際に確立されているように、実施例3~5参照)惹起できるだろうし、従って癌免疫治療状況での治療的使用に適していることが期待される。
【0021】
腫瘍細胞を特徴付ける高度に発現された転写産物中に発見されたこのCLT抗原は、本発明以前には、ヒト体内に存在してタンパク質産物を産生することも、免疫応答を刺激することも知られていなかったし、いくつかの形式で使用できる。第一に、本発明のCLT抗原ポリペプチドは、腫瘍細胞に対する治療的又は予防的免疫応答を惹起するワクチンとして、対象に直接送達することもできる。第二に、本発明の核酸は、それらによりコードされたCLT抗原の発現を増強するためにコドンを最適化することができ、直接投与可能であり、又、コードされたタンパク質産物を対象内で産生させるワクチンとしてベクターに挿入してインビボ送達することも可能であり、腫瘍細胞に対する治療的若しくは予防的な免疫応答を惹起する。第三に、本発明のポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドは、患者由来の抗原提示細胞(APC)をロードするために使用でき、次にそれをワクチンとして対象体内に注入することができ、腫瘍細胞に対する治療的若しくは予防的な免疫応答を惹起する。第四に、本発明のポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドは、対象のT細胞を生体外で刺激するために使用可能であり、刺激されたT細胞調製物を作製し、それを癌の治療療法として対象へ投与できる。第五に、T細胞受容体(TCR)又はTCR模倣物等の生物学的分子は、MHC I分子と複合体を形成しているCLT抗原を認識し、かつ、癌細胞を死滅(又は死滅を促進)させるように更に改変され、癌の治療療法として対象へ投与してもよい。第六に、MHC細胞と複合体を形成しているCLT抗原を認識する生物学的分子のキメラバージョンは、(自己由来、又は非自己由来)T細胞へ導入してもよく、導入後の細胞は、癌の治療療法として対象へ投与してもよい。これら及びその他の応用について、下記でより詳細に説明する。
【0022】
以上より、本発明は特に、下記から選ばれた配列を含む単離ポリペプチド:
(a)配列番号1~10のいずれか1つの配列;並びに、
(b)(a)の配列の変異体;及び
(c)(a)の配列の免疫原性断片、
(これ以降、「本発明のポリペプチド」と称する)を提供する。
本発明は又、本発明のポリペプチドをコードする核酸分子(これ以降、「本発明の核酸」と称する)を提供する。
【0023】
本発明のポリペプチド及び本発明の核酸、並びに本発明の関連する態様は、より詳細に下記で説明されるとおり、癌の免疫治療及び予防、特に悪性黒色腫の免疫治療及び予防での実施態様の分野で有用であると期待される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
(図面の説明)
図1~15のそれぞれについて、上のパネルは患者の腫瘍サンプルから単離されたペプチドの抽出MS/MSスペクトルを(割り当てられた断片イオンと共に)示し、下のパネルはスペクトルのレンダリングを示すものであり、断片イオンにマッピングされた直鎖(linear)ペプチド配列の位置を表示する。
【
図1】
図1.患者Mel-3の腫瘍サンプルから単離された配列番号11のペプチドのスペクトル。
【
図2】
図2.患者Mel-3の腫瘍サンプルから単離された配列番号12のペプチドのスペクトル。
【
図3】
図3.患者Mel-5の腫瘍サンプルから単離された配列番号13のペプチドのスペクトル。
【
図4】
図4.患者Mel-16の腫瘍サンプルから単離された配列番号13のペプチドのスペクトル。
【
図5】
図5.患者Mel-26の腫瘍サンプルから単離された配列番号15のペプチドのスペクトル。
【
図6】
図6.患者Mel-20の腫瘍サンプルから単離された配列番号16のペプチドのスペクトル。
【
図7】
図7.患者Mel-35の腫瘍サンプルから単離された配列番号17のペプチドのスペクトル。
【
図8】
図8.患者Mel-3の腫瘍サンプルから単離された配列番号19のペプチドのスペクトル。
【
図9】
図9.患者Mel-27の腫瘍サンプルから単離された配列番号21のペプチドのスペクトル。
【
図10】
図10.患者Mel-27の腫瘍サンプルから単離された配列番号20のペプチドのスペクトル。
【
図11】
図11.患者Mel-27の腫瘍サンプルから単離された配列番号22のペプチドのスペクトル。
【
図12】
図12.患者Mel-27の腫瘍サンプルから単離された配列番号23のペプチドのスペクトル。
【
図13】
図13.患者Mel-27の腫瘍サンプルから単離された配列番号24のペプチドのスペクトル。
【
図14】
図14.患者Mel-16の腫瘍サンプルから単離された配列番号25のペプチドのスペクトル。
【
図15】
図15.患者Mel-41の腫瘍サンプルから単離された配列番号26のペプチドのスペクトル。
【0025】
【
図16】
図16は、患者Mel-15の免疫ペプチドーム分析で得られたペプチド断片の質量分析スペクトルを示し、その断片は配列番号27とされた。
【
図17】
図17は、患者Mel-10の免疫ペプチドーム分析で得られたペプチド断片の質量分析スペクトルを示し、その断片は配列番号29とされた。
【
図18】
図18は、患者Mel-5の免疫ペプチドーム分析で得られたペプチド断片の質量分析スペクトルを示し、その断片は配列番号14とされた。
【
図19】
図19は、患者Mel-4の免疫ペプチドーム分析で得られたペプチド断片の質量分析スペクトルを示し、その断片は配列番号21とされた。
【
図20】
図20は、患者Mel-18の免疫ペプチドーム分析で得られたペプチド断片の質量分析スペクトルを示し、その断片は配列番号31とされた。
【
図21】
図21は、患者Mel-16の免疫ペプチドーム分析で得られたペプチド断片の質量分析スペクトルを示し、その断片は配列番号13とされた。
【
図22】
図22は、患者Mel-3の免疫ペプチドーム分析で得られたペプチド断片の質量分析スペクトルを示し、その断片は配列番号19とされた。
【
図23】
図23は、患者Mel-6の免疫ペプチドーム分析で得られたペプチド断片の質量分析スペクトルを示し、その断片は配列番号28とされた。
【
図24】
図24は、患者Mel-18の免疫ペプチドーム分析で得られたペプチド断片の質量分析スペクトルを示し、その断片は配列番号18とされた。
【
図25】
図25は、患者Mel-4の免疫ペプチドーム分析で得られたペプチド断片の質量分析スペクトルを示し、その断片は配列番号30とされた。
【
図26】
図26は、患者Mel-4の免疫ペプチドーム分析で得られたペプチド断片の質量分析スペクトルを示し、その断片は配列番号20とされた。
【
図27】
図27は、患者Mel-20の免疫ペプチドーム分析で得られたペプチド断片の質量分析スペクトルを示し、その断片は配列番号16とされた。
【
図28】
図28は、患者Mel-3の免疫ペプチドーム分析で得られたペプチド断片の質量分析スペクトルを示し、その断片は配列番号12とされた。
【0026】
図29~42のそれぞれについて、上のパネルは患者の腫瘍サンプルから単離されたペプチドの抽出MS/MSスペクトルを(割り当てられた断片イオンと共に)示し、下のパネルはスペクトルのレンダリングを示すものであり、断片イオンにマッピングされた直鎖ペプチド配列の位置を表示する。
【
図29】
図29.患者Mel-40の腫瘍サンプルから単離された配列番号51のペプチドのスペクトル。
【
図30】
図30.患者Mel-41の腫瘍サンプルから単離された配列番号51のペプチドのスペクトル。
【
図31】
図31.患者Mel-27の腫瘍サンプルから単離された配列番号52のペプチドのスペクトル。
【
図32】
図32.患者Mel-39の腫瘍サンプルから単離された配列番号52のペプチドのスペクトル。
【
図33】
図33.患者2MT3の腫瘍サンプルから単離された配列番号13のペプチドのスペクトル。
【
図34】
図34.患者2MT10の腫瘍サンプルから単離された配列番号13のペプチドのスペクトル。
【
図35】
図35.患者2MT3の腫瘍サンプルから単離された配列番号12のペプチドのスペクトル。
【
図36】
図36.患者2MT4の腫瘍サンプルから単離された配列番号16のペプチドのスペクトル。
【
図37】
図37.患者2MT3の腫瘍サンプルから単離された配列番号17のペプチドのスペクトル。
【
図38】
図38.患者1MT1の腫瘍サンプルから単離された配列番号53のペプチドのスペクトル。
【
図39】
図39.患者2MT3の腫瘍サンプルから単離された配列番号51のペプチドのスペクトル。
【
図40】
図40.患者2MT3の腫瘍サンプルから単離された配列番号19のペプチドのスペクトル。
【
図41】
図41.患者2MT1の腫瘍サンプルから単離された配列番号19のペプチドのスペクトル。
【
図42】
図42.患者2MT12の腫瘍サンプルから単離された配列番号54のペプチドのスペクトル。
【0027】
図43~50のそれぞれについて、患者の腫瘍サンプルから単離されたペプチドのネイティブMS/MSスペクトル(上部)と、同じ配列に対応する合成ペプチドのネイティブスペクトル(下部)とを揃えたアラインメントを示す。
【
図43】
図43は、患者2MT3の免疫ペプチドーム分析で得られたペプチド断片の質量分析スペクトルを示し、その断片は配列番号13とされた。
【
図44】
図44は、患者2MT3の免疫ペプチドーム分析で得られたペプチド断片の質量分析スペクトルを示し、その断片は配列番号12とされた。
【
図45】
図45は、患者2MT4の免疫ペプチドーム分析で得られたペプチド断片の質量分析スペクトルを示し、その断片は配列番号16とされた。
【
図46】
図46は、患者2MT3の免疫ペプチドーム分析で得られたペプチド断片の質量分析スペクトルを示し、その断片は配列番号17とされた。
【
図47】
図47は、患者1MT1の免疫ペプチドーム分析で得られたペプチド断片の質量分析スペクトルを示し、その断片は配列番号53とされた。
【
図48】
図48は、患者2MT3の免疫ペプチドーム分析で得られたペプチド断片の質量分析スペクトルを示し、その断片は配列番号51とされた。
【
図49】
図49は、患者2MT3の免疫ペプチドーム分析で得られたペプチド断片の質量分析スペクトルを示し、その断片は配列番号19とされた。
【
図50】
図50は、患者2MT12の免疫ペプチドーム分析で得られたペプチド断片の質量分析スペクトルを示し、その断片は配列番号54とされた。
【0028】
【
図51】
図51のパネルA~Cは、特定の腫瘍抗原由来ペプチドでの培養に応じて得られた、患者のPBMC培養物からの腫瘍抗原特異的T細胞の増幅を示す。
【
図52】
図52のパネルA~Dは、悪性黒色腫患者のPBMCからの特異的TCRを有するT細胞を増幅することができた、CLT抗原由来ペプチド(配列番号55~配列番号72)のまとめを示す。
【
図53】
図53は、CLT抗原1からのHLA-A
*0201-拘束ペプチド(配列番号73)に対する、正常な献血者からのCD8 T細胞の応答を示す。
【
図54】
図54は、CLT抗原2からのHLA-A
*0201-拘束ペプチド(配列番号75)に対する、正常な献血者からのCD8 T細胞の応答を示す。
【
図55】
図55は、CLT抗原4からのHLA-A
*0201-拘束ペプチド(配列番号76)に対する、正常な献血者からのCD8 T細胞の応答を示す。
【0029】
【
図56】
図56のパネルA~Dは、CLT抗原1及びCLT抗原4それぞれからのHLA-B
*0702 拘束ペプチド(配列番号74及び77)に対する、メモリーCD45RO-陽性CD8 T細胞における応答性を、同じ献血者からのナイーブCD45RO-陰性CD8 T細胞におけるものと比較して示す。
【
図57】
図57は、CLT抗原1由来ペプチド(配列番号73)、CLT抗原2由来のペプチド(配列番号78)及びCLT抗原4由来ペプチド(配列番号77)に特異的な、正常なCD8 T細胞のHLAペンタマー染色を示す。
【
図58】
図58は、増殖し、ペンタマーで選別したCD8 T細胞は、CLT抗原4由来ペプチド(配列番号77)でパルスされたC1RB7標的細胞を殺傷することを示す。
【
図59】
図59のパネルA~Cは、悪性黒色腫癌細胞株内での、CLT抗原1をコードするCLT(配列番号33)、CLT抗原2をコードするCLT(配列番号34)、並びにCLT抗原3及び4をコードするCLT(配列番号35)の転写を評価するqRT-PCRアッセイ結果を示す。
【0030】
(配列の説明)
配列番号1は、CLT抗原1のポリペプチド配列である。
配列番号2は、CLT抗原2のポリペプチド配列である。
配列番号3は、CLT抗原3のポリペプチド配列である。
配列番号4は、CLT抗原4のポリペプチド配列である。
配列番号5は、CLT抗原5のポリペプチド配列である。
配列番号6は、CLT抗原6のポリペプチド配列である。
配列番号7は、CLT抗原7のポリペプチド配列である。
配列番号8は、CLT抗原8のポリペプチド配列である。
配列番号9は、CLT抗原9のポリペプチド配列である。
配列番号10は、CLT抗原10のポリペプチド配列である。
【0031】
配列番号11~14は、CLT抗原1由来ペプチド配列である。
配列番号15及び16は、CLT抗原2由来ペプチド配列である。
配列番号17及び18は、CLT抗原3由来ペプチド配列である。
配列番号19は、CLT抗原4由来ペプチド配列である。
配列番号20~22は、CLT抗原5由来ペプチド配列である。
配列番号23及び24は、CLT抗原6由来ペプチド配列である。
配列番号25は、CLT抗原7由来ペプチド配列である。
配列番号26は、CLT抗原8由来ペプチド配列である。
配列番号27~29は、CLT抗原9由来ペプチド配列である。
配列番号30~32は、CLT抗原10由来ペプチド配列である。
【0032】
配列番号33は、CLT抗原1をコードするCLTのcDNA配列である。
配列番号34は、CLT抗原2をコードするCLTのcDNA配列である。
配列番号35は、CLT抗原3及び4をコードするCLTのcDNA配列である。
配列番号36は、CLT抗原5をコードするCLTのcDNA配列である。
配列番号37は、CLT抗原6をコードするCLTのcDNA配列である。
配列番号38は、CLT抗原7及び8をコードするCLTのcDNA配列である。
配列番号39は、CLT抗原9をコードするCLTのcDNA配列である。
配列番号40は、CLT抗原10をコードするCLTのcDNA配列である。
【0033】
配列番号41は、CLT抗原1をコードするcDNA配列である。
配列番号42は、CLT抗原2をコードするcDNA配列である。
配列番号43は、CLT抗原3をコードするcDNA配列である。
配列番号44は、CLT抗原4をコードするcDNA配列である。
配列番号45は、CLT抗原5をコードするcDNA配列である。
配列番号46は、CLT抗原6をコードするcDNA配列である。
配列番号47は、CLT抗原7をコードするcDNA配列である。
配列番号48は、CLT抗原8をコードするcDNA配列である。
配列番号49は、CLT抗原9をコードするcDNA配列である。
配列番号50は、CLT抗原10をコードするcDNA配列である。
【0034】
配列番号51~52は、CLT抗原4由来ペプチド配列である。
配列番号53は、CLT抗原3由来ペプチド配列である。
配列番号54は、CLT抗原4由来ペプチド配列である。
配列番号55~57は、CLT抗原1由来ペプチド配列である。
配列番号58~66は、CLT抗原2由来ペプチド配列である。
配列番号67~69は、CLT抗原3由来ペプチド配列である。
配列番号70~72は、CLT抗原4由来ペプチド配列である。
配列番号73~74は、CLT抗原1由来ペプチド配列である。
配列番号75は、CLT抗原2由来ペプチド配列である。
配列番号76~77は、CLT抗原4由来ペプチド配列である。
配列番号78は、CLT抗原2由来ペプチド配列である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(発明の詳細な説明)
(ポリペプチド)
用語「タンパク質」、「ポリペプチド」及び「ペプチド」は、本明細書では互換的に使用され、長さ、同時翻訳又は翻訳後の修飾に関係なく、ペプチド結合したアミノ酸鎖のいずれかを指す。
【0036】
用語「アミノ酸」は、天然起源のアミノ酸、並びに、天然起源のアミノ酸に類似する様式で機能するアミノ酸類似体及びアミノ酸模倣物のいずれか一つを指す。天然起源のアミノ酸は、遺伝的コードによってコードされる20個のL-アミノ酸、及び、それらアミノ酸が後に修飾されたもの、例えばヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸及びO-ホスホセリン、である。用語「アミノ酸類似体」は、天然起源のアミノ酸と同じ基本的な化学構造、即ち、水素、カルボキシル基、アミノ基、及びR基に結合しているα炭素、を有する化合物であるが、天然アミノ酸と比較して、修飾されたR基又は修飾されたペプチド骨格を有するものを指す。その例には、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウム及びノルロイシンが含まれる。アミノ酸模倣物は、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を持っているが、天然起源のアミノ酸に類似する様式で機能する化学的化合物を指す。好適には、アミノ酸は、天然起源のアミノ酸又はアミノ酸類似体であり、特に天然起源のアミノ酸であり、更に特に遺伝的コードによってコードされるそれら20個のL-アミノ酸のうちの1つである。
【0037】
本明細書ではアミノ酸は、一般的に公知の三文字記号、又はIUPAC-IUB生化学命名委員会(Biochemical Nomenclature Commission)が推奨する一文字記号のいずれかによって表されることがある。ヌクレオチドも同様に、一般的に認められた一文字コードによって表されることがある。
【0038】
従って、本発明は、下記から選ばれた配列を含む単離ポリペプチド:
(a)配列番号1~10のいずれか1つの配列;並びに、
(b)(a)の配列の変異体;及び
(c)(a)の配列の免疫原性断片、を提供する。
【0039】
本発明は又、下記から選ばれた配列を含む単離ポリペプチド:
(a)配列番号1~10のいずれか1つの配列から最初のメチオニン残基を除いたもの;並びに、
(b)(a)の配列の変異体;及び
(c)(a)の配列の免疫原性断片、を提供する。
【0040】
一般的に、本発明のポリペプチド配列の変異体は、それに対して高度の配列同一性を有する配列を含む。例えば、変異体は、関係する参照配列の全長に対して、好ましくは少なくとも約80%同一性、より好ましくは少なくとも約85%同一性、及び最も好ましくは少なくとも約90%同一性(少なくとも約95%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%等)を有する。
【0041】
好適には、変異体は免疫原性変異体である。一の変異体は、参照配列(即ち、その変異体が一の変異体である配列)の活性の、少なくとも20%、好ましくは少なくとも50%、特に少なくとも75%(少なくとも90%等)である応答を惹起する、一の免疫原性変異体であると考えられ、この応答は、例えば、抗原としてポリペプチドを用いたPBMC又は全血のインビトロ再刺激アッセイ(例えば、数時間から最大1年の期間をかけた再刺激、6ヶ月以下、1日から1ヶ月、又は1~2週間等)において、リンパ球増殖(例えば、T細胞増殖)を介した細胞の賦活化、培養上清中のサイトカイン(例えば、IFN-γ)の産生(ELISA等で測定)、又は、T細胞応答の特性評価を、細胞内及び細胞外染色(例えば、CD3、CD4、CD8、IL2、TNF-α、IFNg、1型IFN、CD40L、CD69等の免疫マーカーに特異的な抗体を使用)及び、それに続くフローサイトメーターでの分析によって測定する。
【0042】
変異体は例えば、保存的に修飾された変異体でも良い。「保存的に修飾された変異体」は、その改変が、機能的に類似するアミノ酸でのアミノ酸の置換、又は、変異体の生物学的機能に実質的に影響を及ぼさない、残基の置換/欠失/付加を生じるものである。通常、そのような変異体の生物学的機能は、悪性黒色腫、例えば皮膚悪性黒色腫の癌抗原に対する免疫応答を誘導するだろう。
機能的に類似するアミノ酸を提供する保存的置換表は、当分野で周知である。変異体は、他の種で見られるポリペプチドのホモログを含むこともできる。
【0043】
本発明のポリペプチドの変異体は、多数の置換、例えば、参照配列と比較して保存的な置換(例えば1~25、1~10等、特に1~5、更に特に1個のアミノ酸残基を変更してもよい)を含む場合もある。置換の数、例えば、保存的な置換の数は、参照配列の残基数の最大で20%、例えば最大で10%、例えば最大で5%、例えば最大1%でもよい。一般的に、保存的な置換は、下記で特定されるアミノ酸グループ分けの1つに含まれるだろうが、場合によっては、抗原の免疫原性特性に実質的な影響を与えない限り、他の置換も可能な場合もある。次の8個のグループは、それぞれ通常は相互に保存的な置換物であるアミノ酸を含む。
【0044】
1)アラニン(A)、グリシン(G);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(R)、リシン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);
7)セリン(S)、トレオニン(T);及び
8)システイン(C)、メチオニン(M)
(例えば、Creightonの文献、Proteins 1984を参照)。
【0045】
好適には、そのような置換は、エピトープの免疫学的構造を変化させず(例えば、それら置換は一次配列にマッピングされるエピトープ領域内では起こらない)、そのため、抗原の免疫原性特性に有意な影響を及ぼさない。
【0046】
ポリペプチド変異体は又、参照配列と比較して追加的なアミノ酸が挿入されるものを含み、例えば、そのような挿入は、1~10の位置(例えば1~5位、好適には1又は2位、特に1の位置)で発生してもよく、その挿入は例えば、各位置に50個以下(例えば20個以下、特に10個以下、更に特に5個以下)のアミノ酸付加を含むこともできる。好適には、そのような挿入は、エピトープ領域では発生しないので、抗原の免疫原性特性に有意な影響を及ぼさない。挿入物の一例には、目的の抗原の発現及び/又は精製を補助するためのヒスチジン残基の短いストレッチ(例えば、2~6残基)が含まれる。
【0047】
ポリペプチド変異体は、参照配列と比較していくつかのアミノ酸が削除されたものを含み、例えば、そのような欠失は、1~10位(例えば、1~5位、好適には1又は2位、特に1の位置)で発生してもよく、その欠失は例えば、各位置に50個以下(例えば20個以下、特に10個以下、更に特に5個以下)のアミノ酸欠失を含むこともできる。好適には、そのような欠失は、エピトープ領域では発生しないので、抗原の免疫原性特性に有意な影響を及ぼさない。
【0048】
当業者は、特別なタンパク質変異体は、置換、欠失及び付加(又はそれらの任意の組み合わせ)を含み得ることを認識するであろう。例えば、置換/欠失/付加は、所望の患者のHLA分子への結合を増強し(又はニュートラル効果を与え)、免疫原性を高める(又は免疫原性は変更されないまま残す)可能性がある。
【0049】
本発明の免疫原性断片は、CLT抗原の長さに応じて全長ポリペプチド配列からの、通常は少なくとも9個(例えば、少なくとも9又は10)の連続アミノ酸、例えば少なくとも12個の連続アミノ酸(例えば、少なくとも15個又は少なくとも20個の連続アミノ酸)等、特に少なくとも50個の連続アミノ酸、例えば少なくとも100個の連続アミノ酸(例えば、少なくとも200個の連続アミノ酸)等、を含む。好適には、この免疫原性断片は、全長ポリペプチド配列の長さの少なくとも10%、例えば少なくとも20%、例えば少なくとも50%、例えば少なくとも70%、又は少なくとも80%等であろう。
【0050】
免疫原性断片は、通常、少なくとも1つのエピトープを含む。エピトープは、B細胞及びT細胞エピトープを含み、好適には、免疫原性断片は、CD4+又はCD8+T細胞エピトープ等の少なくとも1つのT細胞エピトープを含む。
【0051】
T細胞エピトープは、HLA分子に結合したときにT細胞(CD4+又はCD8+T細胞等)によって認識される、アミノ酸の短い連続するストレッチである。T細胞エピトープの特定は、当業者に周知のエピトープマッピング実験により達成してもよい (例えば、Paulの文献、Fundamental Immunology, 第3版、243-247(1993);Beiβbarthらの文献、2005、Bioinformatics,21(Suppl. 1):i29-i37を参照)。
【0052】
癌におけるT細胞応答の決定的な関与の結果として、少なくとも1つのT細胞エピトープを含む配列番号1~10の全長ポリペプチドの断片は、免疫原性である可能性があり、かつ免疫保護に寄与する可能性があることが非常に明白である。
【0053】
ヒト等の、多様な非近交系集団では、異なるHLAタイプとは、特定のエピトープが集団の全てのメンバーによって認識されない可能性を意味することが理解されるであろう。その結果、あるポリペプチドに対する免疫応答の認識及び規模のレベルを最大化するために、一般的には、免疫原性断片が全長配列からの複数のエピトープ(好適には、CLT抗原内の全てのエピトープ)を含むことが望ましい。
【0054】
有用であり得る配列番号1~10のポリペプチドの特別な断片は、少なくとも1つのCD8+T細胞エピトープ、好適には少なくとも2つのCD8+T細胞エピトープ、更に特に全てのCD8+T細胞エピトープを含むもの、特に複数のHLA対立遺伝子と関連するもの、例えば、2、3、4、5以上の対立遺伝子と関連するもの)を含む。有用であり得る配列番号1~10のポリペプチドの特別な断片は、少なくとも1つのCD4+T細胞エピトープ、好適には少なくとも2つのCD4+T細胞エピトープ、更に特に全てのCD4+T細胞エピトープを含むもの、(特に複数のHLA対立遺伝子と関連するもの、例えば、2、3、4、5以上の対立遺伝子と関連するもの)を含む。しかし、ワクチン設計分野の当業者は、外因性のCD4+T細胞エピトープを本発明のCD8+T細胞エピトープと組み合わせて、本発明のCD8+T細胞エピトープに対する所望の応答を達成できるだろう。
【0055】
全長ポリペプチドの個々の断片が使用される場合、そのような一の断片は、参照配列(即ち、その断片が一の断片である配列)の活性の、少なくとも20%、好ましくは少なくとも50%、特に少なくとも75%(少なくとも90%等)である応答を惹起する場合、免疫原性であるであると考えられ、この応答は、例えば、抗原としてポリペプチドを用いたPBMC又は全血のインビトロ再刺激アッセイ(例えば、数時間から最大1年の期間をかけた再刺激、6ヶ月以下、1日から1ヶ月、又は1~2週間等)における活性を、リンパ球増殖(例えば、T細胞増殖)を介した細胞の賦活化、培養上清中のサイトカイン(例えば、IFN-γ)の産生(ELISA等で測定)、又は、T細胞応答の特性評価を、細胞内及び細胞外染色(例えば、CD3、CD4、CD8、IL2、TNF-α、IFN-γ、1型IFN、CD40L、CD69等の免疫マーカーに特異的な抗体を使用)及び、それに続くフローサイトメーターでの分析によって測定する。
【0056】
場合によっては、全長ポリペプチドの複数の断片(重複する場合もしない場合もあり、全長配列全体にわたる場合もそうでない場合もある)を使用して、全長配列自体に対するのと同等な生物学的応答を得ることもできる。例えば、前記の少なくとも2個(3、4、又は5等)の免疫原性断片が組み合わされて、PBMC又は全血のインビトロ再刺激アッセイ(例えば、T細胞増殖及び/又はIFN-γ産生アッセイ)において、参照配列の少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%、更に特に少なくとも90%の活性を提供する。
【0057】
配列番号1~10のポリペプチドの免疫原性断片の例、従って本発明のペプチドの例は、配列番号11~32の配列を含むか、又はその配列からなるポリペプチドを含む。更に、配列番号1~4のポリペプチドの免疫原性断片の例、従って本発明のペプチドの例は、配列番号51~78の配列を含むか、又はその配列からなるポリペプチドを含む。配列番号11~17、19~28、30~31及び51~54の配列は、免疫ペプチドーム分析でHLAクラスI分子に結合していることが確認された(実施例2及び2.1を参照)。配列番号18、29及び32の配列は、免疫ペプチドーム分析でHLAクラスII分子に結合していることが確認された(実施例2を参照)。配列番号55~78の配列は、NetMHCソフトウェアによりHLAクラスI分子へ結合していると予測され、免疫学的検証アッセイで使用された(実施例3、4及び5を参照)。
【0058】
(核酸)
本発明は、本発明のポリペプチドをコードする単離された核酸(本発明の核酸と称する)を提供する。例えば、本発明の核酸は、配列番号33~40又は41~50から選ばれた配列を含むか、又はその配列からなる。
【0059】
用語「核酸」及び「ポリヌクレオチド」は、本明細書においては互換的に使用され、ヌクレオチドモノマー、特にデオキシリボヌクレオチドモノマー又はリボヌクレオチドモノマーからつくられるポリマー性高分子を指す。この用語は、公知のヌクレオチド類似体又は修飾された骨格残基若しくは結合を含む核酸を含むものであり、それらは天然起源のもの及び非天然起源のものであり、参照核酸と類似の性質を有し、参照ヌクレオチドと類似の様式で代謝されることを意図されるか、又は体内での半減期を延長することを意図されている核酸までをも含む。そのような類似体の例は、これらに限定されるものではないが、ホスホロチオエート、ホスホロアミデート、メチルホスホネート、キラル-メチルホスホネート、2-O-メチルリボヌクレオチド、ペプチド-核酸(PNA)が含まれる。好適には、用語「核酸」は、デオキシリボヌクレオチドモノマー又はリボヌクレオチドモノマーの天然起源のポリマーを指す。好適には、本発明の核酸分子は組換え体である。組換え体とは、核酸分子が、クローニング、制限処理若しくはライゲーションステップ、又は自然界に見られる核酸分子からは区別される核酸分子(例えば、cDNAの場合)を生じる他の操作、の少なくとも1つの産物であることを意味する。1の実施態様では、本発明の核酸は、人工核酸配列(例えば、非天然コドン利用を含むcDNA配列又は核酸配列)である。1の実施態様では、本発明の核酸はDNAである。或いは、本発明の核酸はRNAである。
【0060】
DNA(デオキシリボ核酸)及びRNA(リボ核酸)は、それぞれデオキシリボシル及びリボシル成分である糖成分骨格を有する核酸分子を指す。この糖成分は、4つの天然塩基(DNA中のアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)、及び、RNA中のアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)及びウラシル(U))である塩基に結合していてもよい。本明細書で使用される場合、「対応するRNA」は、参照DNAと同じ配列であるが、DNAのチミン(T)がRNAではウラシル(U)で置換されている配列を有するRNAである。糖成分は又、イノシン、キサントシン、7-メチルグアノシン、ジヒドロウリジン及び5-メチルシチジン等の非天然塩基に連結されてもよい。糖(デオキシリボシル/リボシル)成分間の天然のリン酸ジエステル結合は、任意でホスホロチオエート結合で置換してもよい。好適には、本発明の核酸は、糖成分間のリン酸ジエステル結合を有するデオキシリボシル又はリボシル糖骨格へ結合した天然塩基からなる。
【0061】
1の実施態様では、本発明の核酸はDNAである。例えば、この核酸は、配列番号33~40又は41~50から選ばれた配列を含むか、又はその配列からなる。同様に提供されるのは、配列番号33~40又は41~50から選ばれた配列の変異体を含むか、又はそれからなる核酸であって、その変異体は同じアミノ酸配列をコードするが、遺伝コードの縮重に基づいた異なる核酸を有するものである。
【0062】
従って、遺伝的コードの縮重のために、非常に数多くの異なるが機能的に同一の核酸が、任意の所与のポリペプチドをコードできる。例えば、コドンGCA、GCC、GCG及びGCUは全て、アミノ酸であるアラニンをコードする。そのため、アラニンが1のコドンによって特定されている全ての位置において、そのコドンは、そのコードされたポリペプチドを変更することなく、その対応する前記コドンのいずれかへ変更できる。そのような核酸変異は、「サイレント」(「縮重型」又は「同義的」と称されることもある)変異体をもたらし、それは、保存的に修飾された変異体の1種である。1のポリペプチドをコードしている、本明細書に開示された全ての核酸配列では又、その核酸の全てのサイレント変異が可能である。当業者は、核酸内の各コドン(通常はメチオニンに対する唯一のコドンであるAUG、及び通常はトリプトファンに対する唯一のコドンであるUGGを除く)を改変して、機能的に同一な分子を作製できることを認識するだろう。従って、1のポリペプチドをコードする核酸のサイレント変異のそれぞれは、記載された各配列中に黙示されており、本発明の1の態様として提供されている。
【0063】
縮重コドン置換は又、1以上の(又は全ての)選ばれたコドンの第3位が、混合された塩基及び/又はデオキシイノシン残基で置換された配列を生成することによっても達成できるだろう(Batzerらの文献、1991、Nucleic Acid Res. 19:5081;Ohtsukaらの文献、1985, J. Biol. Chem. 260:2605-2608;Rossoliniらの文献、1994、Mol. Cell. Probes 8:91~98)。
【0064】
配列番号33~40又は41~50から選ばれた配列を含むか、又はその配列からなる本発明の核酸は、参照配列と比較して多くのサイレント変異体(例えば1~50、1~25等、特に1~5、更に特に1個、のコドンが変異してもよい)を含むこともできる。
【0065】
1の実施態様では、本発明の核酸はRNAである。提供されるRNA配列は、本明細書のDNA配列に対応し、デオキシリボヌクレオチド骨格の代わりにリボヌクレオチド骨格を有し、かつチミン(T)の代わりに側鎖塩基ウラシル(U)を有するものである。
【0066】
従って、本発明の核酸は、配列番号33~40又は41~50から選ばれたcDNA配列のRNA等価物を含むか、又はそれらからなり、かつ、参照配列と比較して多くのサイレント変異体(例えば1~50、1~25等、特に1~5、更に特に1個、のコドンが変異してもよい)を含むこともできる。「RNA等価物」とは、参照cDNA配列と同じ遺伝情報を含む(即ち、デオキシリボヌクレオチド骨格の代わりにリボヌクレオチド骨格を有し、かつチミン(T)の代わりに側鎖塩基ウラシル(U)を有する同一のコドンを含む)RNA配列を意味する。
【0067】
本発明は又、前記cDNA及びRNA配列に相補的な配列を含む。
1の実施態様では、本発明の核酸は、ヒト宿主細胞内での発現のために最適化されたコドンである。
本発明の核酸は、DNA核酸の場合には転写されて本発明のポリペプチドに翻訳されることができ、RNA核酸の場合には本発明のポリペプチドに翻訳されることもできる。
【0068】
(ポリペプチド及び核酸)
好適には、本発明で使用されるポリペプチド及び核酸は、単離されている。「単離された」ポリペプチド又は核酸は、その元の環境から取り出されたものである。例えば、天然起源のポリペプチド又は核酸は、それが自然系で共存する物質のいくつか又は全てから分離された場合に、単離される。核酸は、例えば、それがその天然の環境の一部ではないベクター内へクローン化された場合、単離されたと考えられる。
【0069】
「天然起源の」とは、ポリペプチド又は核酸配列に関して使用される場合、自然界に見出され、合成的に修飾されていない配列を意味する。
「人工の」とは、ポリペプチド又は核酸配列に関して使用される場合、例えば、天然の配列の合成修飾であるか、又は非天然配列を含む、自然界には見られない配列を意味する。
【0070】
用語「異種の」とは、1の核酸又はポリペプチドと別の核酸又はポリペプチドとの関係に関して使用される場合、2以上の配列が、自然界では(in nature)互いに同じ関係では見出されないことを示す。「異種の」配列は又、宿主有機体内に見出される天然起源の核酸又はポリペプチド配列から、単離されず、由来せず、又はそれらをベースにしていない配列を意味することもできる。
【0071】
前記の通り、ポリペプチド変異体は、関係する参照配列の全長に対して、好ましくは少なくとも約80%同一性、より好ましくは少なくとも約85%同一性、及び最も好ましくは少なくとも約90%同一性(少なくとも約95%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%等)を有する。
【0072】
2つの密接に関連するポリペプチド又はポリヌクレオチド配列を比較する目的で、第一の配列と第二の配列との間の「配列同一性%」を算出してもよい。その全長にわたって100%の配列同一性を共有する場合、そのポリペプチド配列は、他のポリペプチド配列と同一又は等しいと言える。配列中の残基は、左から右に、即ち、ポリペプチドのN末端からC末端へ番号が付けられる。用語「同一」又はパーセント「同一性」は、2以上のポリペプチド配列の文脈において、比較ウィンドウ上で最大限一致するように、比較されてアラインメントされた場合に、同一であるか、又は同一であるアミノ酸残基を特定のパーセント有する(即ち、特定された領域内で70%同一性、任意で75%、80%、85%、90%、95%、98%又は99%同一性)2以上の配列又はサブ配列を指す。好適には、この比較は参照配列の全長に対応するウィンドウ上で実行される。
【0073】
配列比較では、1の配列が、試験配列が比較される参照配列として働く。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列及び参照配列をコンピューターに入力し、必要に応じてサブ配列座標を指定し、更に配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。デフォルトのプログラムパラメータを使用しても、代替的パラメータを指定してもよい。すると、配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメータに基づいて、参照配列に関して試験配列の配列同一性パーセンテージを算出する。
【0074】
本明細書で使用される「比較ウィンドウ」は、その中で、1の配列及び、同じ数の連続する位置の参照配列を最適にアラインした後に、これら配列を比較してもよいセグメントを指す。比較のための配列アラインメント法は、当分野で周知である。比較のための最適な配列アラインメントは、例えば、Smith及びWatermanのローカル相同性アルゴリズム、1981、Adv. Appl. Math. 2:482により、Needleman及びWunschの相同性アラインメントアルゴリズム、1970, J. Mol. Biol. 48:443により、Pearson及びLipmanの類似性検索法、1988、Proc. Nat’l. Acad. Sci. USA 85:2444により、これら(Wisconsin Genetics Software Package中のGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA、Genetics Computer Group、 575 Science、 Madison博士、WI)のアルゴリズムのコンピューター化実装により、又は手動アラインメント及び目視検査(例えば、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubelら編、1995年増補)を参照)により、実施できる。
【0075】
有用なアルゴリズムの一例は、PILEUPである。PILEUPは、プログレッシブなペアワイズアラインメントを使用して、関連配列群から多重配列アラインメントを作成し、それらの関係及び配列同一性パーセントを示す。これは又、アラインメントを作成するために使用されるクラスター化関係を示すツリー又は樹状図(dendogram)をプロットする。PILEUPは、Feng及びDoolittleのプログレッシブアラインメント法(1987, J. Mol. Evol. 35:351-360)の単純化を使用する。使用される方法は、Higgins及びSharp、1989, CABIOS 5:151-153に記載された方法と類似する。このプログラムは、それぞれの最大長が5,000ヌクレオチド又はアミノ酸であれば、最大300個の配列を整列させることもできる。この多重配列アラインメント手順は、初めに2つの最も類似する配列のペアワイズアラインメントを行い、2つのアラインされた配列のクラスターを作成する。次に、このクラスターを、最も関連性の高い、配列又はアラインされた配列のクラスターの隣にアラインする。2つの配列クラスターを、2つの個々の配列のペアワイズアラインメントの単純な伸長によってアラインさせる。最終アラインメントは、一連のプログレッシブなペアワイズアラインメントにより達成される。このプログラムは、特定の配列、及び、配列比較領域のためのそれらのアミノ酸座標を指定することにより、更にプログラムパラメータを指定することにより実行される。PILEUPを使用することにより、参照配列を他の試験配列と比較して、下記パラメータ: デフォルトのギャップ重み(3.00)、デフォルトのギャップ長重み(0.10)、および重み付きエンドギャップ、を用いて配列同一性関係のパーセントを決定する。PILEUPは、GCG配列分析ソフトウェアパッケージ、例えば、バージョン7.0(Devereauxらの文献、1984、Nuc. Acids Res. 12:387-395)から入手することもできる。
【0076】
配列同一性パーセント及び配列類似性パーセントを決定するために好適なアルゴリズムの別の例は、BLAST及びBLAST 2.0アルゴリズムであり、それぞれ、Altschulらの文献、1977、Nuc. Acids Res. 25:3389-3402、及びAltschulらの文献、1990, J. Mol. Biol. 215:403-410に記載されている。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(www.ncbi.nlm.nih.gov/のウェブサイト)を介して公衆利用が可能である。このアルゴリズムは、データベース配列中の同じ長さのワードにアラインさせた場合、いくつかの正の値の閾値スコアTと一致するか、又はそれを満たす、クエリー配列中の短いワード長Wを特定することによって、高スコアリング配列対(HSP)を最初に特定することを伴う。Tは、近傍(neighbourhood)ワードスコア閾値と称される(Altschulらの文献、上掲)。これらの最初の近傍ワードヒットは、それらを含むより長いHSPを発見する検索を開始するための種として働く。ワードヒットは、累積アラインメントスコアを増大し得る限り、それぞれの配列に沿って両方向に伸長される。ヌクレオチド配列における累積スコアは、パラメータM(一致する残基対のためのリワードスコア;常に>0)及びN(不一致の残基のためのペナルティスコア;常に<0)を用いて算出する。アミノ酸配列のためには、累積スコアはスコアリングマトリックスを用いて算出する。それぞれの方向でのワードヒットの伸長が停止するのは:累積アラインメントスコアが、その最大達成値からX量下落した;累積スコアが、1以上の負のスコアリング残基アラインメント累積のために0以下になった;又は、いずれかの配列の末端に達した、場合である。アミノ酸配列のために、BLASTPプログラムでは、デフォルトとして3のワード長及び50の期待値(E)、並びに50のBLOSUM62スコアリングマトリックス(Henikoff及びHenikoffの文献、1989、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915を参照)アラインメント(B)、10の期待値(E)、M=5、N=-4、並びに両鎖の比較を用いる。
【0077】
BLASTアルゴリズムは又、2つの配列間の類似性の統計分析も行う(例えば、Karlin及びAltschulの文献、1993、Proc. Nat’l. Acad. Sci. USA 90:5873-5787を参照)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの尺度は、最小合計確率(P(N))であり、これは2つのヌクレオチド配列又はアミノ酸配列間の一致が偶然に生じる確率の指標を提供する。
【0078】
配列間の「違い」は、第一の配列と比較した第二の配列の一つの位置での1の残基の挿入、欠失又は置換を指す。2つの配列は、一つ、二つ又はそれ以上のこのような違いを含むこともできる。それ以外は第一の配列と同一な(100%配列同一性)第二の配列中の挿入、欠失又は置換は、配列同一性%の減少をもたらす。例えば、同一配列が9残基長の場合は、第二の配列中の1の置換は、88.9%の配列同一性をもたらす。同一配列が17アミノ酸残基長の場合は、第二の配列中の2つの置換は、88.2%の配列同一性をもたらす。
【0079】
或いは、第一の参照配列を第二の比較配列と比較する目的で、第二の配列を生成するために第一の配列に対して行われた付加、置換及び/又は欠失の数を確認してもよい。付加とは、第一の配列への1つの残基の付加である(第一の配列のどちらかの末端への付加を含む)。置換とは、第一の配列中の1つの残基を、異なる1つの残基で置換することである。欠失とは、第一の配列から1つの残基を欠失させることである(第一の配列のどちらかの末端での欠失を含む)。
【0080】
(本発明のポリペプチドの生成)
本発明のポリペプチドは、例えば、Green及び Sambrookの文献、2012 Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第4版、Cold Spring Harbour Laboratory Pressに開示されている技術を使用して取得及び操作することもできる。特に、ポリヌクレオチドを生成するために人工的な遺伝子合成技術を使用することもでき(Nambiarらの文献、1984, Science, 223:1299-1301、Sakamar及びKhoranaの文献、1988, Nucl. Acids Res., 14:6361-6372、Wellsらの文献、1985, Gene, 34:315-323、及びGrundstromらの文献、1985, Nucl. Acids Res., 13:3305-3316)、その後に好適な生物内で発現させてポリヌクレオチドを産生してもよい。本発明のポリペプチドをコードする遺伝子は、例えば、固相DNA合成法によって合成的に生成できる。遺伝子全体は、前駆体テンプレートDNAを必要とせずに、デノボで合成してもよい。所望のオリゴヌクレオチドを得るために、ビルディングブロックを、生成物の配列によって必要とされる順序に、成長オリゴヌクレオチド鎖へ逐次的に結合する。鎖アセンブリが完了すると、生成物を固相から溶液に放出し、脱保護して収集する。生成物を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で単離して、所望のオリゴヌクレオチドを高純度で得ることもできる(Verma及びEcksteinの文献、1998, Annu. Rev. Biochem. 67:99-134)。これらの比較的短いセグメントは、様々な遺伝子増幅法(Methods Mol Biol., 2012;834:93-109)を使用して、より長いDNA分子へと容易に組み立てられ、それらは数えきれない数の組換えDNAベース発現系での使用に好適である。本発明の文脈において、当業者は、本発明に記載のポリペプチド抗原をコードするポリヌクレオチド配列が、例えば、ウイルスベクターを含む様々なワクチン生産体制において容易に使用できることを理解するであろう。
【0081】
微生物宿主(例えば、細菌性又は真菌性)内での本発明のポリペプチドを生産する目的のために、本発明の核酸は、好適な調節配列及び制御配列(プロモーター、終結シグナル等を含む)、並びに宿主内でのタンパク質産生に好適なポリペプチド分泌を促進するための配列を含むだろう。同様に、本発明のポリペプチドは、真核細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞又はショウジョウバエ属S2細胞)の培養物を、本発明の核酸であって、好適な調節配列及び制御配列(プロモーター、終結シグナル等を含む)並びにこれら細胞内でタンパク質産生に適したポリペプチド分泌を促進するための配列と組み合わせたもので、形質導入することによって生成できるだろう。
【0082】
組換え手法によって生成された本発明のポリペプチドの改善された単離は、任意で、ポリペプチドの一端に向かってヒスチジン残基のストレッチ(一般的にHisタグとして知られる)を付加することによって促進できるだろう。
ポリペプチドは又、合成的に調製してもよい。
【0083】
(ベクター)
追加的な実施態様において、本発明の1以上の核酸を含む遺伝子構築物は、インビボで細胞に導入され、本発明のポリペプチドがインビボ産生されて免疫応答を惹起する。核酸(例えば、DNA)は、核酸発現系、細菌、及びいくつかのウイルス発現系を含む、当業者に公知の任意の様々な送達系内に存在し得る。多数の遺伝子送達技術が当分野で周知であり、例えばRollandの文献、1998, Crit. Rev. Therap. Drug Carrier Systems 15:143-198、及びそれに引用された参考文献によって説明されたもの等がある。これらのアプローチのいくつかを、例示を目的として下記に概説する。
【0084】
上記に従って、本発明の核酸分子を含むベクター(本明細書では又「DNA発現構築物」若しくは「構築物」とも称する)が提供される。
好適には、このベクターは、ヒト宿主細胞において翻訳的に活性なRNA分子の転写を可能にするのに適した調節エレメント(好適なプロモーター及び終結シグナル等)をコードする核酸を含む。「翻訳的に活性なRNA分子」とは、ヒト細胞の翻訳装置によってタンパク質へと翻訳可能なRNA分子である。
【0085】
上記に従って、本発明の核酸を含むベクター(本明細書ではこれ以降、「本発明のベクター」と称する)が提供される。
特に、このベクターはウイルスベクターでもよい。ウイルスベクターは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)(例えば、AAV5型及び2型)、アルファウイルス(例えば、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)、シンドビスウイルス(SIN)、セムリキ森林ウイルス(SFV))、ヘルペスウイルス、アレナウイルス(例えば、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV))、麻疹ウイルス、ポックスウイルス(改変ワクシニアンカラ(MVA)等)、パラミクソウイルス、レンチウイルス、又はラブドウイルス(水疱性口内炎ウイルス(VSV)等)ベクターでもよく、即ち、このベクターは、前記ウイルスのいずれかに由来することもできる。アデノウイルスは、その、中型ゲノムサイズ、操作の容易さ、高力価、広い標的細胞範囲、及び高い感染力のために、遺伝子導入ベクターとしての使用に特に好適である。ウイルスゲノムの両端には、100~200塩基対の逆方向反復(ITR)が含まれ、それらはウイルスDNAの複製及びパッケージングに必要なcisエレメントである。ゲノムの初期(E)領域及び後期(L)領域には、ウイルスDNA複製の開始によって分割される異なる転写ユニットが含まれる。E1領域(E1A及びE1B)は、ウイルスゲノム及びいくつかの細胞遺伝子の転写の調節に関与するタンパク質をコードする。E2領域(E2A及びE2B)の発現は、ウイルスDNA複製用のタンパク質の合成を生じる。これらのタンパク質は、DNA複製、後期遺伝子の発現、及び宿主細胞遮断に関与している(Renanの文献、1990年)。ウイルスカプシドタンパク質の大部分を含む後期遺伝子の産物は、主要な後期プロモーター(MLP)によって生じる単一の一次転写産物の重要なプロセシング後にのみ発現される。MLPは感染後期では特に効率が高く、このプロモーターから転写された全てのmRNAは3個に分割された(tripartite)5'-リーダー(TPL)配列を保有するため、翻訳に好ましいmRNAとなる。初期遺伝子の1以上が削除されたウイルスゲノムから作製される、複製欠失アデノウイルスは特に有用であり、その理由は、それらは複製が制限されており、かつワクチン接種された宿主内での病原性拡散の可能性、及びワクチン接種された宿主との接触の可能性が少ないためである。
【0086】
(他のポリヌクレオチド送達)
本発明のある種の実施態様では、1以上のポリヌクレオチド配列を含む発現構築物は、単純にネイキッド組換えDNAプラスミドのみからなることもある。Ulmerらの文献、1993、Science 259:1745-1749及びそれをレビューしているCohenの文献、1993、Science 259:1691-1692を参照されたい。これら構築物の導入は、例えば、細胞膜を物理的又は化学的に透過するいずれかの方法によって実施することもできる。これは特にインビトロでの導入に適用してもよいが、インビボでの使用にも同様に適用できる。目的の遺伝子をコードするDNAも又、同様の様式でインビボで導入されて、遺伝子産物を発現し得ることが想定される。DNA分子を動物モデルやヒトへ送達するために、複数の送達システムが使用されてきた。この技術に基づくいくつかの製品は動物での使用が認可されており、ヒトにおいて第II相及び第III相臨床試験中の他のものもある。
【0087】
(RNA送達)
本発明の他の実施態様では、1以上のポリヌクレオチド配列を含む発現構築物は、ネイキッド組換えDNA由来RNA分子からなるものでもよい(Ulmerらの文献、2012、Vaccine 30:4414-4418)。DNAベースの発現構築物のために、様々な方法が、RNA分子をインビトロ又はインビボで細胞内へ導入するために使用できる。RNAベースの構築物は、単純なメッセンジャーRNA(mRNA)分子を模倣して、導入された生物学的分子が宿主細胞の翻訳機構によって直接翻訳され、それが導入された細胞内でそれがコードするポリペプチドが産生されるように設計できる。或いは、RNA分子は、ウイルス性RNA依存性RNAポリメラーゼのためにその構造遺伝子中に組み込むことにより、それらが導入された細胞内でそれらが自己増幅するように設計してもよい。このように、自己増幅型mRNA(SAM(商標))分子(Geallらの文献、2012、PNAS、109:14604-14609)として公知のこの種のRNA分子は、いくつかのRNAベースのウイルスベクターと特性を共有する。mRNAベースRNA又はSAM(商標)RNAのいずれかを更に改変して(例えば、それらの配列の改変によって、又は修飾ヌクレオチドの使用によって)、安定性及び翻訳を増強することができ(Schlakeらの文献、RNA Biology、9:1319-1330)、そして、両方の種類のRNAは製剤化(例えば、エマルジョン中(Britoらの文献、Molecular Therapy、2014 22:2118-2129)又は脂質ナノ粒子中(Kranzらの文献、2006、Nature、534:396-401))して、インビトロ若しくはインビボでの安定性及び/又は細胞への侵入を促進してもよい。改変された(及び非改変の)RNAのMyriad製剤は、動物モデル及びヒトでワクチンとして試験されてきており、複数のRNAベースのワクチンが進行中の臨床試験で使用されている。
【0088】
(医薬組成物)
本発明のポリペプチド、核酸及びベクターは、免疫原性組成物及びワクチン組成物等の医薬組成物(これ以降は全て「本発明の組成物」)内で送達するために製剤化されてもよい。本発明の組成物は、好適には、本発明のポリペプチド、核酸又はベクターを、医薬として許容し得るキャリアと共に含む。
従って、1の実施態様では、本発明のポリペプチド、核酸又はベクターを、医薬として許容し得るキャリアと共に含む免疫原性医薬組成物が提供される。
【0089】
別の実施態様では、本発明のポリペプチド、核酸又はベクターを、医薬として許容し得るキャリアと共に含む、ワクチン組成物が提供される。医薬組成物の調製は一般的には、例えばPowell及びNewman編、Vaccine Design(the subunit and adjuvant approach)、1995に記載されている。本発明の組成物は又、生物学的に活性でも不活性でもよい他の化合物を含むこともできる。好適には、本発明の組成物は、非経口投与に適した無菌組成物である。
【0090】
本発明のある種の好ましい実施態様では、本発明の医薬組成物は、医薬として許容し得るキャリアと組み合わせた1以上の(例えば1つの)本発明のポリペプチドを含むものとして提供される。
本発明のある種の好ましい実施態様では、本発明の組成物は、医薬として許容し得るキャリアと組み合わせた、1以上の(例えば1つの)本発明の核酸又は1以上の(例えば1つの)本発明のベクターを含むものとして提供される。
【0091】
1の実施態様では、本発明の組成物は、1以上の(例えば1つの)ポリヌクレオチド及び1以上の(例えば1つの)ポリペプチドコンポーネントを含むこともできる。或いは、この組成物は、1以上の(例えば1つの)ベクター及び1以上の(例えば1つの)ポリペプチドコンポーネントを含むこともできる。或いは、この組成物は、1以上の(例えば1つの)ベクター及び1以上の(例えば1つの)ポリヌクレオチドコンポーネントを含むこともできる。このような組成物は、免疫応答を増強するために提供されてもよい。
【0092】
(医薬として許容し得る塩)
本発明の組成物が、本明細書で提供される核酸又はポリペプチドの医薬として許容し得る塩を含むこともできることは、明らかであろう。そのような塩は、医薬として許容し得る非中毒性塩基から調製することができ、その塩基には有機塩基(例えば、一級、二級及び第三級アミン及び塩基性アミノ酸の塩)及び無機塩基(例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム及びマグネシウムの塩)を含む。
【0093】
(医薬として許容し得るキャリア)
当業者に公知の多くの医薬として許容し得るキャリアを本発明の組成物に使用することもできるが、使用されるキャリアの最適なタイプは、投与様式に応じて変化するだろう。本発明の組成物は、任意の好適な投与様式のために製剤化されてもよく、それは例えば、非経口、局所的、経口、経鼻、静脈内、頭蓋内、腹腔内、皮下又は筋肉内経由での投与、好ましくは非経口、例えば筋肉内、皮下又は静脈内投与を含む。非経口投与のために、キャリアは好ましくは水を含み、かつpH調製用バッファ、安定剤(例えば、界面活性剤及びアミノ酸)、並びに等張性調節剤(例えば、塩及び糖類)を含むこともできる。組成物を、使用時に希釈される凍結乾燥形態で提供しようとする場合、製剤は、凍結乾燥保護剤、例えばトレハロース等の糖類を含むこともできる。経口投与のために、前記キャリア類又は固体キャリアのいずれか、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルカム、セルロース、グルコース、スクロース、及び炭酸マグネシウム等、を使用することもできる。
【0094】
従って、本発明の組成物は、バッファ(例えば、中性緩衝生理食塩水若しくはリン酸塩緩衝生理食塩水)、炭水化物(例えば、グルコース、マンノース、スクロース若しくはデキストラン)、マンニトール、タンパク質、ポリペプチド、若しくはグリシン等のアミノ酸、抗酸化剤、静菌剤、EDTA若しくはグルタチオン等のキレート剤、製剤をレシピエントの血液と等張、低張若しくは弱高張にする溶質、懸濁剤、増粘剤、及び/又は防腐剤を含むこともできる。或いは、本発明の組成物は、凍結乾燥物として製剤化してもよい。
【0095】
(免疫賦活剤)
本発明の組成物は又、1以上の免疫賦活剤を含むこともできる。免疫賦活剤は、外因性抗原に対する免疫応答(抗体介在性及び/又は細胞介在性)を増強又は強化させるいずれの物質でもよい。免疫賦活剤は、ワクチン製剤の文脈ではよくアジュバントと呼ばれ、その例には、水酸化アルミニウムゲル(ミョウバン)又はリン酸アルミニウム等のアルミニウム塩、QS21等のサポニン、CPG等の免疫賦活性オリゴヌクレオチド、水中油型エマルジョン(例えば、油がスクアレンの場合)、アミノアルキルグルコサミニド4-リン酸、リポ多糖類若しくはその誘導体(例えば3-脱-O-アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MPL(登録商標))及び他のTLR4リガンド、TLR7リガンド、TLR8リガンド、TLR9リガンド、IL-12、並びにインターフェロンが含まれる。上記より、本発明の組成物の1以上の免疫賦活剤は好適には、アルミニウム塩、サポニン、免疫賦活性オリゴヌクレオチド、水中油型エマルジョン、アミノアルキルグルコサミニド4-リン酸、リポ多糖類及びそれらの誘導体及び他のTLR4リガンド、TLR7リガンド、TLR8リガンド、並びにTLR9リガンドから選ばれる。免疫賦活剤は又、他の免疫コンポーネントと特異的に相互作用するモノクローナル抗体、例えばPD-1及びCTLA4を含む免疫チェックポイント受容体の相互作用を遮断するモノクローナル抗体を含むこともできる。
【0096】
組換え核酸での送達方法(例えば、DNA、RNA、ウイルスベクター)の場合は、タンパク質ベースの免疫賦活剤をコードする遺伝子を、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子と一緒に容易に送達してもよい。
【0097】
(持続的放出)
本明細書に記載された組成物は、投与に続いて化合物の徐放的/持続的放出を生じる徐放製剤(即ち、(例えば多糖類からなる)カプセル、スポンジ、パッチ又はゲル等の製剤)の一部として投与してもよい。
【0098】
(貯蔵及び梱包)
本発明の組成物は、密封されたアンプル又はバイアル等の単位用量又は複数用量の容器で提供されてもよい。そのような容器は、使用するまで製剤の無菌性を維持するために、好ましくは密閉して封印される。製剤は一般的に、油性又は水性ビヒクル中に、懸濁液、溶液又はエマルションとして保存してもよい。或いは、本発明の組成物は、無菌液体キャリア(注射用の水又は生理食塩水等)の添加が使用直前にのみ必要とされる、凍結乾燥状態で保存することもできる。
【0099】
(投薬用量)
本発明の各組成物中の核酸、ポリペプチド又はベクターの量は、治療的又は予防的使用のための好適な投薬量が得られるような方法で調剤してもよい。溶解性、バイオアベイラビリティ、生物学的半減期、投与経路、製品貯蔵寿命等の要因、並びに他の薬理学的考慮事項が、そのような組成物を調剤する当業者によって考慮されるだろうから、そのために、様々な投薬量及び治療レジメンが望ましいものとなるだろう。
【0100】
通常、治療的又は予防的な有効量を含む組成物は、投与あたり約0.1ug~約1000ugの本発明のポリペプチド、より典型的には、投与あたり約2.5ug~約100ugのポリペプチドを送達する。短い合成長鎖ペプチドの形で送達する場合、投薬量は1~200ug/ペプチド/用量の範囲でもよい。ポリヌクレオチド組成物に関しては、これらは通常、投与あたり約10ug~約20mgの本発明の核酸、より典型的には投与あたり約0.1mg~約10mgの本発明の核酸を送達する。
【0101】
(治療又は予防する疾患)
明細書のどこにでも記載されているように、配列番号1~10は、皮膚悪性黒色腫で過剰発現しているCLT抗原に対応するポリペプチド配列である。
1の実施態様では、本発明は、医薬で使用するための、本発明のポリペプチド、核酸、ベクター又は組成物を提供する。
【0102】
本発明の更なる態様は、ヒトにおける免疫応答を上昇させる方法であり、そのヒトへ本発明のポリペプチド、核酸、ベクター又は組成物を投与することを含む、方法に関する。
本発明は又、ヒトにおける免疫応答の上昇に使用するための本発明のポリペプチド、核酸、ベクター又は組成物を提供する。
ヒトにおける免疫応答の上昇に使用する医薬品の製造のための、本発明のポリペプチド、核酸、ベクター又は組成物の使用も又、提供される。
【0103】
好適には、その免疫応答は、配列番号1~10並びにそのいずれか1つの変異体及び免疫原性断片から選ばれた対応する配列を発現する癌性腫瘍に対して、上昇するものである。本文脈においての「対応する」は、腫瘍が、例えば、配列番号A(Aは配列番号1~10の1つである)又はその変異体若しくは免疫原性断片を発現する場合、本発明のポリペプチド、核酸、ベクター又は組成物及びそれらを含む医薬品は、配列番号A又はその変異体若しくは免疫原性断片に基づくだろうことを意味する。
【0104】
好適には、免疫応答は、CD8+T細胞、CD4+T細胞及び/又は抗体応答、特にCD8+細胞溶解性T細胞応答及びCD4+ヘルパーT細胞応答を含む。
好適には、免疫応答は、腫瘍、特に配列番号1~10、及びその変異体、並びにその免疫原性断片から選ばれた配列を発現するものに対して引き起こされる。
適切な実施態様では、腫瘍は悪性黒色腫腫瘍、例えば、皮膚悪性黒色腫腫瘍である。
この腫瘍は、原発性腫瘍又は転移性腫瘍であることもできる。
【0105】
本発明の更なる態様は、ヒト癌患者の治療方法であって、その癌細胞が配列番号1~10並びにそのいずれか1つの免疫原性断片及び変異体から選ばれた配列を発現する治療方法、又は、ヒトを癌罹患から予防する方法であって、その癌は配列番号1~10並びにそのいずれか1つの免疫原性断片及び変異体から選ばれた配列を発現するであろう予防方法であり、対応する本発明のポリペプチド、核酸、ベクター又は組成物をそのヒトへ投与することを含む方法に関する。
【0106】
本発明は又、ヒト癌の治療又は予防に使用するための本発明のポリペプチド、核酸、ベクター又は組成物であって、その癌細胞が配列番号1~10及びそのいずれか1つの免疫原性断片から選ばれた対応する配列を発現するものであるポリペプチド、核酸、ベクター又は組成物を提供する。
【0107】
配列番号33、35、36及び40に対応する転写産物は又、ブドウ膜悪性黒色腫で過剰発現されていた。その結果、別の実施態様では、腫瘍は、ブドウ膜悪性黒色腫腫瘍及び/又は配列番号1、3、4、5及び10から選ばれた配列を発現する腫瘍である。
【0108】
従って、本発明は、本発明の方法、又は、使用のためのポリペプチド、核酸、ベクター若しくは組成物であって、そのポリペプチドが下記から選ばれた配列を含み:
(a)配列番号1、3、4、5及び10のいずれか1つの配列;並びに
(b)(a)の配列の変異体;及び
(c)(a)の配列の免疫原性断片、
かつ例えば、そのポリペプチドは、配列番号11~14、17~18、19、20~22、30~32、51~57、67~74及び76~77のいずれか一つから選ばれた配列を含むか、又はその配列からなり、かつ例えば、その核酸は、配列番号33、35、36若しくは40のいずれか一つから選ばれた、又は配列番号41、43、44、45及び50のいずれか一つから選ばれた配列を含むか、又はその配列からなり;かつ
その癌はブドウ膜悪性黒色腫であるもの、を提供する。
用語「防止」及び「予防」は、本明細書においては互換的に使用される。
【0109】
(治療及びワクチン接種レジメン)
治療的レジメンは、(i)本発明のポリペプチド、核酸若しくはベクターを、(ii)1以上の更なる本発明のポリペプチド、核酸若しくはベクター及び/又は(iii)任意でアジュバントと同時に投与される抗原性タンパク質等の、様々な他の治療的に有用な化合物又は分子のような更なるコンポーネント、と同じ時に(同時投与等)又は逐次的に(プライムブースト等)送達することのいずれかを含むこともできる。同時投与の例は、同じ外側部位への同時投与、及び反対側部位への同時投与が含まれる。「同じ時」での投与は、好適には、同じ治療回中に送達される全ての成分に関する。好適には、全ての成分は同時に投与される(DNA及びタンパク質の両方の同時投与等)が、1の成分が数分以内(例えば、同じ診察予約又は医師の往診時に)又は数時間以内に投与されてもよい。
【0110】
いくつかの実施態様では、本発明のポリペプチド、核酸又はベクターの「プライミング」又は第一の投与に続いて、本発明のポリペプチド、核酸又はベクターの1以上の「ブースト」又は追加免疫が行われる(「プライム及びブースト」法)。1の実施態様では、本発明のポリペプチド、核酸又はベクターが、1つのプライムブーストワクチン接種レジメンで使用される。1の実施態様では、プライム及びブーストの両方が本発明のポリペプチドであり、それぞれの場合に同じ本発明のポリペプチドである。1の実施態様では、プライム及びブーストの両方が、本発明の核酸又はベクターであり、それぞれの場合に同じ本発明の核酸又はベクターである。或いは、プライムを本発明の核酸又はベクターを使用して実施して、ブーストを本発明のポリペプチドを使用して実施してもよく、プライムを本発明のポリペプチドを使用して実施して、ブーストを本発明の核酸又はベクターを使用して実施してもよい。通常は、第一の又は「プライミング」投与と、第二の又は「ブースト」投与は、約1~12週、又は最大で4~6か月の間をあけた後に行う。その次の「ブースター」投与は、1~6週毎の頻度で行ってもよく、又はそれよりも後に(最大で数年後に)行ってもよい。
【0111】
(抗原の組み合わせ)
本発明のポリペプチド、核酸又はベクターは、1以上の本発明の他のポリペプチド又は核酸、ベクターと組み合わせて使用でき、及び/又は、悪性黒色腫、例えば皮膚性又はブドウ膜悪性黒色腫に対する免疫応答の増強を引きおこす他の抗原性ポリペプチド(又はそれをコードするポリヌクレオチド又はベクター)と組み合わせて使用できる。これら他の抗原性ポリペプチドは、多様な供給源に由来してもよく、その供給源はGPR143、PRAME、MAGE-A3又はpMel(gp100)等の詳しく記述されている悪性黒色腫関連抗原を含むこともできるだろう。或いは、それらは他の種の悪性黒色腫抗原を含むことができ、それらには、患者特異的な新抗原(Laussらの文献、(2017). Nature Communications, 8(1), 1738. http://doi.org/10.1038/s41467-017-01460-0)、保持されたイントロン新抗原(Smartらの文献、(2018). Nature Biotechnology. http://doi.org/10.1038/nbt.4239)、スプライス変異体新抗原(Hoyosらの文献、Cancer Cell, 34(2), 181-183. http://doi.org/10.1016/j.ccell.2018.07.008;Kahlesらの文献、(2018), Cancer Cell, 34(2),211-224.e6. http://doi.org/10.1016/j.ccell.2018.07.001)、損傷したペプチドプロセシングと関連するT細胞エピトープをコードする抗原として知られているカテゴリーに属する悪性黒色腫抗原(TIEPPs;Gigoux, M.及びWolchokの文献、J.(2018), JEM、215、2233、Marijtらの文献、(2018), JEM 215、2325)、又は発見されるであろう新抗原(CLT抗原を含む)が含まれる。更に、これら様々な供給源に由来する抗原性ペプチドは又、(i)非特異的免疫賦活剤/アジュバント種、及び/又は、(ii)例えば、ユニバーサルなCD4ヘルパーエピトープを含み、強力なCD4ヘルパーT細胞を惹起することが公知の、抗原(ポリペプチドとして、又はこれらCD4抗原をコードするポリヌクレオチド若しくはベクターとして送達される)と組み合わせて、同時投与された抗原により惹起される抗悪性黒色腫特異的応答を増幅することもできるだろう。
【0112】
異なるポリペプチド、核酸又はベクターは、同一製剤又は別々の製剤として製剤化してもよい。或いは、ポリペプチドは、その中で本発明のポリペプチドが第二の又は更なるポリペプチドへ融合されている融合タンパク質として提供してもよい(下記を参照)。
核酸は、前記融合タンパク質をコードするものとして提供してもよい。
【0113】
更に一般的に、2以上のコンポーネントを組み合わて使用する場合、そのコンポーネントは、例えば:
(1)2以上の個々の抗原性ポリペプチドコンポーネントとして;
(2)両方の(又は更なる)ポリペプチドコンポーネントを含む融合タンパク質として;
(3)1以上のポリペプチド及び1以上のポリヌクレオチドコンポーネントとして;
(4)2以上の個々のポリヌクレオチドコンポーネントとして;
(5)2以上の個々のポリペプチドコンポーネントをコードする単一ポリヌクレオチドとして;又は
(6)両方の(又は更なる)ポリペプチドコンポーネントを含む融合タンパク質をコードする単一ポリヌクレオチドとして、提供されてもよいだろう。
【0114】
便宜上、多くのコンポーネントが存在する場合、それらが単一の融合タンパク質又は単一の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド内に含まれることが、多くの場合に望ましい(下記を参照)。本発明の1の実施態様では、全てのコンポーネントはポリペプチドとして(例えば、単一の融合タンパク質内で)提供される。本発明の別の実施態様では、全てのコンポーネントはポリヌクレオチド(例えば、単一の融合タンパク質をコードするもの等の単一のポリヌクレオチド)として提供される。
【0115】
(融合タンパク質(融合ポリペプチド))
抗原組み合わせに関する前記議論の実施態様として、本発明は又、個々の抗原をコードする配列を一緒に融合する核酸構築物を作製することにより、第二の又は更なる本発明のポリペプチドへ融合された本発明の単離ポリペプチド(これ以降、「本発明の組み合わせポリペプチド」と称する)を提供する。本発明の組み合わせポリペプチドは、本発明のポリペプチドのために本明細書に記載された有用性を有することが予測され、かつ優れた免疫原性若しくはワクチン活性、又は、予防若しくは治療効果(応答の幅及び深さの増大を含む)の利点を有する可能性があり、そして非近交系集団で特に有用性が高いだろう。本発明のポリペプチドの融合は又、ワクチン抗原及び/又はベクター化ワクチン(核酸ワクチンを含む)の構築及び製造効率を高める利点も提供するだろう。
【0116】
前記「抗原の組み合わせ」項目に記載のように、本発明のポリペプチド並びに本発明の組み合わせポリペプチドは又、本発明のポリペプチドではないポリペプチド配列であって、1以上の下記を含むものへ融合されてもよい:
(a)悪性黒色腫関連抗原である他のポリペプチドであって、そのためワクチン内で免疫原性の配列として有用な可能性のあるもの(例えば、上記言及されたGPR143、PRAME、MAGE-A3及びpMel(gp100));及び
(b)免疫応答を増強できるポリペプチド配列(即ち、免疫賦活配列)。
(c)例えば、ユニバーサルなCD4ヘルパーエピトープを含み、強力なCD4補助を提供して、CLT抗原エピトープに対するCD8+T細胞応答を増大させることのできるポリペプチド配列。
【0117】
例示的な融合ポリペプチドは、配列番号1、2、3及び4の配列から選ばれた2以上(例えば、2、3若しくは4)の配列;又は、その各配列に関して、その配列の変異体、若しくはその配列の免疫原性断片を含む。
【0118】
1の例示的な融合ポリペプチドは、下記を含む:
(i)下記から選ばれた配列:
(a)配列番号1の配列;並びに
(b)(a)の配列の変異体;及び
(c)例えば配列番号11~14、55~57及び73~74から選ばれた、(a)の配列の免疫原性断片;
(ii)下記から選ばれた配列:
(a)配列番号2の配列;並びに
(b)(a)の配列の変異体;及び
(c)例えば配列番号15~16、58~66、75及び78から選ばれた、(a)の配列の免疫原性断片;
(iii)下記から選ばれた配列:
(a)配列番号3の配列;並びに
(b)(a)の配列の変異体;及び
(c)例えば配列番号17~18、53及び67~69から選ばれた、(a)の配列の免疫原性断片;並びに
(iv)下記から選ばれた配列:
(a)配列番号4の配列;並びに
(b)(a)の配列の変異体;及び
(c)例えば配列番号19、51~52、54、70~72及び76~77から選ばれた、(a)の配列の免疫原性断片。
例えば、この融合ポリペプチドは、配列番号1、2、3及び4の配列を含む。
【0119】
別の例示的な融合ポリペプチドは、下記を含む:
(i)下記から選ばれた配列:
(a)配列番号1の配列;並びに
(b)(a)の配列の変異体;及び
(c)例えば配列番号11~14、55~57及び73~74から選ばれた、(a)の配列の免疫原性断片;
(ii)下記から選ばれた配列:
(a)配列番号2の配列;並びに
(b)(a)の配列の変異体;及び
(c)例えば配列番号15~16、58~66、75及び78から選ばれた、(a)の配列の免疫原性断片;並びに
(iii)下記から選ばれた配列:
(a)配列番号4の配列;並びに
(b)(a)の配列の変異体;及び
(c)例えば配列番号19、51~52、54、70~72及び76~77から選ばれた、(a)の配列の免疫原性断片。
例えば、この融合ポリペプチドは、配列番号1、2及び4の配列を含む。
【0120】
本発明は又、本発明のポリペプチドと同様に必要な変更を加えて、前記融合ポリペプチドをコードする核酸、及び本発明の他の態様(ベクター,組成物、細胞等)を提供する。
【0121】
(CLT抗原結合ポリペプチド)
腫瘍発現性抗原に対して免疫特異的である抗原結合ポリペプチド(本発明のポリペプチド)は、細胞溶解性細胞を、抗原修飾された腫瘍細胞へ動員してその破壊を媒介するように設計できるだろう。そのような抗原結合ポリペプチドによる細胞溶解性細胞の動員のメカニズムの1つは、抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)として公知である。従って、本発明は、本発明のポリペプチドに対して免疫特異的な抗原結合ポリペプチドを提供する。モノクローナル抗体及びその断片、例えばドメイン抗体、Fab断片、Fv断片及びVHH断片等の抗体を含む抗原結合ポリペプチドは、非ヒト動物種(例えば、げっ歯類又はラクダ類)内で産生されてヒト化されてもよく、又は、非ヒト種(例えば、ヒトの免疫系を持つように遺伝子改変されたげっ歯類)内で産生されてもよい。
【0122】
抗原結合ポリペプチドは、当業者に周知の方法によって作製できる。例えば、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ技術を使用して、特異的抗体産生B細胞を、組織培養での増殖能力のためと抗体鎖合成の欠如のために選択された骨髄腫(B細胞癌)細胞と融合することによって産生できる(Kohler及びMilsteinの文献、1975, Nature 256(5517):495-497及びNelsonらの文献、2000年(6月)、Mol Pathol. 53(3):111-7は、引用によりそれら全体が本明細書に組み込まれている)。
【0123】
所望の抗原に対するモノクローナル抗体は、例えば:
a)その所望の抗原で予め免疫化/曝露された動物(ヒトを含む)の末梢血から得られたリンパ球を、不死細胞、好ましくは骨髄腫細胞で不死化して、ハイブリドーマを形成し、
b)形成された不死化細胞(ハイブリドーマ)を培養し、所望の特異性を有する抗体を産生する細胞を回収すること、
によって得ることもできる。
【0124】
モノクローナル抗体は、以下のステップを含む製造プロセスによって得ることもできる:
a)ベクター、特にファージ、更に特別に繊維状バクテリオファージへの、(好適には、予め所望の抗原で免疫化した)動物のリンパ球、特に末梢血リンパ球から得られたDNA又はcDNA配列のクローニングステップ
b)原核細胞を、そのベクターで、抗体産生を可能にする条件下で形質転換するステップ、
c)抗原親和性選択にかけることにより、抗体を選択するステップ、
d)所望の特異性を有する抗体を回収するステップ、
e)抗原に曝露された患者、又は抗原免疫化実験を行った動物のB細胞から得られた、抗体コード化核酸分子を発現するステップ。
選択された抗体は、次に、従来の組換えタンパク質生産技術を使用して(例えば、遺伝子操作されたCHO細胞から)生産されてもよい。
【0125】
本発明は、本発明のポリペプチドに対して免疫特異的な、単離された抗原結合ポリペプチドを提供する。好適には、抗原結合ポリペプチドは、モノクローナル抗体又はその断片である。
ある種の実施態様では、抗原結合ポリペプチドは、細胞傷害性成分と結合している。細胞傷害性成分の例は、抗体のFcドメインを含み、それはADCCを促進するFc受容体保有細胞を動員するだろう。或いは、抗原結合ポリペプチドは、生物毒素、又は細胞傷害性化学物質と連結されてもよい。
【0126】
抗原結合ポリペプチドの別の重要なクラスは、本発明の抗原のHLA表示断片に結合するT細胞受容体(TCR)由来分子を含む。この実施態様では、腫瘍細胞表面上のCLT抗原(又はその誘導体)を認識するTCRベースの生物製剤(患者から直接由来するTCR、又は特異的に操作された高親和性TCRを含む)も又、これらの免疫細胞を腫瘍に引き付け、治療的効果を提供するT細胞(又は、別のクラスの免疫細胞)上のコンポーネントを認識する標的化成分を含み得る。いくつかの実施態様では、標的化成分は又、リダイレクトされた免疫細胞の有益な活性(細胞溶解活性を含む)を刺激することもある。
【0127】
従って、1の実施態様では、抗原結合ポリペプチドは本発明のポリペプチドであるか、又はその一部であるHLA結合ポリペプチドに対して免疫特異的である。例えば、抗原結合ポリペプチドはT細胞受容体である。
1の実施態様では、本発明の抗原結合ポリペプチドは、対象内の細胞傷害性細胞又は他の免疫コンポーネントへ結合可能な、別のポリペプチドへ結合することもできる。
【0128】
1の実施態様では、抗原結合ポリペプチドは、医薬で使用するためのものである。
1の実施態様では、本発明の抗原結合ポリペプチドを、医薬として許容し得るキャリアと共に含む、医薬組成物が提供される。そのような組成物は、非経口投与に適した無菌組成物でもよい。例えば、上掲の医薬組成物の開示を参照されたい。
【0129】
本発明により、癌罹患ヒトの治療方法であって、その癌細胞が配列番号1~10並びにそのいずれか1つの免疫原性断片及び変異体から選ばれた配列を発現する治療方法、又は、ヒトを癌罹患から予防する方法であって、その癌細胞が配列番号1~10並びにそのいずれか1つの免疫原性断片及び変異体から選ばれた配列を発現するであろう予防方法であり、本発明の抗原結合ポリペプチド又はその抗原結合ポリペプチドを含む組成物をそのヒトへ投与することを含む方法が提供される。
【0130】
1の実施態様では、ヒト癌の治療又は予防に使用するための、細胞傷害性成分と結合していてもよい本発明の抗原結合ポリペプチド、又はその抗原結合ポリペプチドを含む本発明の組成物であって、その癌細胞が配列番号1~10及びそのいずれか1つの免疫原性断片から選ばれた対応する配列を発現するものである、前記抗原結合ポリペプチド又は組成物が提供される。
好適には、前記実施態様のいずれかでは、癌は、悪性黒色腫、特に皮膚悪性黒色腫である。
【0131】
1の実施態様では、本発明の方法又は本発明の使用のための抗原結合ポリペプチド若しくは組成物であって、そのポリペプチドは、下記から選ばれた配列を含み:
(a)配列番号1、3、4、5及び10のいずれか1つの配列;並びに
(b)(a)の配列の変異体;及び、
(c)(a)の配列の免疫原性断片、
かつ例えば、そのポリペプチドは、配列番号11~14、17~18、19、20~22、30~32、51~57、67~74及び76~77のいずれか一つから選ばれた配列を含むか、又はその配列からなり、かつ例えば、その核酸は、配列番号33、35、36若しくは40のいずれか一つから選ばれた、又は配列番号41、43、44、45及び50のいずれか一つから選ばれた配列を含むか、又はその配列からなり;かつ
その癌はブドウ膜悪性黒色腫である、前記方法又は使用のための抗原結合ポリペプチド若しくは組成物が提供される。
【0132】
抗原結合ポリペプチド(抗体又はその断片等)は、例えば5~1000 mg、例えば25~500 mg、例えば100~300 mg、例えば、約200 mgの用量で投与してもよい。
【0133】
(インビボでの抗原提示を促進する細胞療法)
抗原特異的免疫応答の発生を促進するために、様々な細胞送達ビヒクルのいずれかを医薬組成物内で使用してもよい。従って、本発明は、本発明のポリペプチドで生体外ロードすることによって改変された、又は本発明のポリペプチドを発現するように遺伝子操作された、単離された抗原提示細胞である細胞(これ以降、「本発明のAPC」と称する)を提供する。抗原提示細胞(APC)、例えば樹状細胞、マクロファージ、B細胞、単球、及び、効率的なAPCになるように操作されていてもよいその他の細胞等。そのような細胞は、抗原提示能力を高めるため、T細胞応答の活性化及び/若しくは維持を改善するため、並びに/又は受容体と免疫学適合性のある(即ち、HLAハプロタイプが一致する)ように、遺伝子改変されてもよいが、必ずしもそうする必要はない。APCは、一般的に、様々な体液及び器官のいずれかから単離でき、かつ自己、同種異系、同系又は異種の細胞でもよい。
【0134】
ある種の好ましい本発明の実施態様では、樹状細胞又はその前駆体をAPCとして使用する。従って、1の実施態様では、本発明のAPCは樹状細胞である。樹状細胞は非常に強力なAPCであり(Banchereau及びSteinmanの文献、1998, Nature、392:245-251)、予防的又は治療的免疫を惹起するための生理学的アジュバントとして有効であることが示されている(Timmerman及びLevyの文献、1999, Ann. Rev. Med. 50:507-529を参照)。一般的に、樹状細胞は、その典型的な形状(in situで星状であり、インビトロで視認可能な顕著な細胞質突起(樹状突起)を有する)、高効率で抗原を取り込み、プロセシングし、提示する能力、及びナイーブT細胞の応答を活性化する能力に基づいて特定してもよい。樹状細胞は、もちろん、インビボ又は生体外で通常は樹状細胞上に見られない、特定の(specific)細胞表面受容体又はリガンドを発現するように操作されてもよく、そのような改変された樹状細胞も、本発明により意図される。樹状細胞とは別に、抗原でロードされた分泌小胞(エクソソームと呼ばれる)を免疫原性組成物内で使用してもよい(Zitvogelらの文献、1998, Nature Med. 4:594-600を参照)。従って、1の実施態様では、本発明のポリペプチドでロードされたエクソソームが提供される。
【0135】
樹状細胞及び前駆細胞は、末梢血、骨髄、リンパ節、脾臓、皮膚、臍帯血又はその他の適切な組織又は体液から得てもよい。例えば、樹状細胞は、末梢血から採取した単球の培養物へ、GM-CSF、IL-4、IL-13、及び/又はTNFα等のサイトカインの組み合わせを加えることにより、生体外で分化させてもよい。或いは、末梢血、臍帯血又は骨髄から採取したCD34陽性細胞を、GM-CSF、IL-3、TNFα、CD40リガンド、LPS、flt3リガンド、並びに/又は、樹状細胞の分化、成熟及び増殖を誘導する他の化合物、の組み合わせ培養液へ加えることにより、樹状細胞へ分化させてもよい。
【0136】
樹状細胞は「未成熟」細胞と「成熟」細胞に便利にカテゴリー分類され、2つのよく特徴付けられたフェノタイプ間を簡単に区別することができる。しかし、この命名法は、分化で可能な中間体段階を全て排除するものと解釈するべきではない。未成熟な樹状細胞は、抗原の取り込み能及びプロセシング能が高いAPCとして特徴付けられ、それはFcγ受容体及びマンノース受容体の高発現と相関する。成熟したフェノタイプは通常、これらマーカーの発現は低いが、クラスI及びクラスII MHC等のT細胞活性化に関与する細胞表面分子、接着分子(例えば、CD54及びCD11)、並びに共刺激分子(例えば、CD40、CD80、CD86及び4-1BB)の高発現を特徴とする。
【0137】
APCは又、例えば、タンパク質(又はその一部若しくは他の変異体)をコードするポリヌクレオチドでトランスフェクトして、そのポリペプチドが細胞表面に発現するように遺伝子操作してもよい。そのようなトランスフェクションは、生体外で起こしてもよく、次にそのトランスフェクトした細胞を含む医薬組成物を、本明細書に記載されるように、使用してもよい。或いは、樹状細胞又は他の抗原提示細胞を標的とする遺伝子導入ビヒクルを患者に投与して、インビボで生じるトランスフェクションをもたらしてもよい。樹状細胞のインビボ及び生体外でのトランスフェクションは、例えば、WO97/24447に記載されている方法、又はMahviらの文献、1997、Immunology and Cell Biology 75:456-460に記載されている遺伝子銃アプローチ等の、一般的に当分野で公知の任意の方法を使用して実施してもよい。樹状細胞への抗原ローディングは、樹状細胞又は前駆細胞をポリペプチド、DNA(例えば、プラスミドベクター)又はRNAと共に;又は、抗原を発現する組換え細菌又はウイルス(例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)(例えば、AAV5型及び2型)、アルファウイルス(例えば、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)、シンドビスウイルス(SIN)、セムリキ森林ウイルス(SFV)、ヘルペスウイルス、アレナウイルス(例えば、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV))、麻疹ウイルス、ポックスウイルス(改変ワクシニアンカラ(MVA)若しくは鶏痘等)、パラミクソウイルス、レンチウイルス、又はラブドウイルス(水疱性口内炎ウイルス(VSV)等)と共に、インキュベートすることにより達成してもよい。ポリペプチドをロードする前に、そのポリペプチドを免疫学的パートナー(例えば、キャリア分子)へ共有結合させてT細胞ヘルプを提供してもよい。或いは、樹状細胞を、非コンジュゲート型の免疫学的パートナーで、個別に、又はポリペプチド若しくはベクターの存在下で、パルスしてもよい。
【0138】
本発明は、ポリペプチド抗原の、特異的に設計された短く化学合成されたエピトープコード化断片を、抗原提示細胞へ送達するために提供される。当業者は、この種の分子が、合成長鎖ペプチド(SLP)として知られており、本発明の抗原性ポリペプチドを使用してインビトロで細胞を刺激(又は細胞にロード)する治療用プラットフォーム(Gornatiらの文献、2018, Front. Imm、9:1484)を、又はインビボでポリペプチド抗原を抗原提示細胞内に導入する方法として(Melief及びvan der Burgらの文献、2008, Nat Rev Cancer, 8:351-60)提供することを理解するであろう。
【0139】
1の実施態様では、本発明の抗原提示細胞、好適には樹状細胞を、医薬として許容し得るキャリアと共に含む医薬組成物が提供される。そのような組成物は、非経口投与に適した無菌組成物でもよい。例えば、上掲の医薬組成物の開示を参照されたい。
1の実施態様では、医薬で使用するための、本発明の抗原提示細胞、好適には樹状細胞が提供される。
【0140】
同様に、癌罹患ヒトの治療方法であって、その癌細胞が配列番号1~10並びにそのいずれか1つの免疫原性断片及び変異体から選ばれた配列を発現する治療方法、又は、ヒトを癌罹患から予防する方法であって、その癌細胞が配列番号1~10並びにそのいずれか1つの免疫原性断片及び変異体から選ばれた配列を発現するであろう予防方法であり、本発明の抗原提示細胞、好適には樹状細胞、又はその本発明の抗原提示細胞を含む組成物をそのヒトへ投与することを含む方法が提供される。
【0141】
1の実施態様では、ヒト癌の治療又は予防に使用するための本発明の抗原提示細胞、好適には樹状細胞、又はその本発明の抗原提示細胞を含む組成物であって、その癌細胞が配列番号1~10及びそのいずれか1つの免疫原性断片から選ばれた対応する配列を発現するものである、前記抗原提示細胞又はその組成物が提供される。
【0142】
1の実施態様では、本発明のエクソソームを、医薬として許容し得るキャリアと共に含む医薬組成物が提供される。そのような組成物は、非経口投与に適した無菌組成物でもよい。例えば、上掲の医薬組成物の開示を参照されたい。組成物は、任意で免疫賦活剤を含むこともできる。上掲の免疫賦活剤の開示を参照されたい。
1の実施態様では、医薬で使用するための本発明のエクソソームが提供される。
【0143】
同様に、癌罹患ヒトの治療方法であって、その癌細胞が配列番号1~10並びにそのいずれか1つの免疫原性断片及び変異体から選ばれた配列を発現する治療方法、又は、ヒトを癌罹患から予防する方法であって、その癌細胞が配列番号1~10並びにそのいずれか1つの免疫原性断片及び変異体から選ばれた配列を発現するであろう予防方法であり、本発明のエクソソーム又は本発明のエクソソームを含む組成物をそのヒトへ投与することを含む方法が提供される。
【0144】
1の実施態様では、ヒト癌の治療又は予防に使用するための本発明のエクソソーム又はそのエクソソームを含む本発明の組成物であって、その癌細胞が配列番号1~10及びそのいずれか1つの免疫原性断片から選ばれた対応する配列を発現するものである、前記エクソソーム又は組成物が提供される。
前記実施態様のいずれか一つでは、適切には、癌は、悪性黒色腫、特に皮膚悪性黒色腫である。
【0145】
(刺激したT細胞による療法)
本発明のポリペプチドに免疫特異的なT細胞の、インビボ又は生体外でのAPC介在性生成に加え、自己由来又は非自己由来T細胞も、対象から、例えば、末梢血、臍帯血から及び/又はアフェレーシスにより単離し、APC細胞のMHC分子(シグナル1)上にロードされた腫瘍関連抗原の存在下で刺激し、この抗原に免疫特異的なTCRを有するT細胞の増殖を誘導してもよい。
【0146】
T細胞活性化を成功させるには、共刺激性表面分子B7及びCD28が、それぞれ抗原提示細胞及びT細胞上に結合する必要がある(シグナル2)。最適なT細胞活性化を達成するには、シグナル1及び2の両方が必要である。それに対して、共刺激(シグナル2)がない場合の抗原性ペプチド刺激(シグナル1)は、完全なT細胞活性化を誘導できず、T細胞トレランスを生じるかもしれない。共刺激分子に加えて、CTLA-4及びPD-1等の阻害的分子も存在し、T細胞の活性化を防止するためのシグナルを誘導する。
【0147】
従って、自己由来又は非自己由来T細胞を、本発明のポリペプチドの存在下で刺激し、増殖し、そして、その癌細胞が対応する本発明のポリペプチドを発現するような癌罹患のリスクのある患者又は癌罹患患者へ再導入してもよいが、それは、その抗原特異的TCRが、患者のMHCにより提示された抗原を認識し、その対応するポリペプチドを発現する癌細胞を標的とし、その細胞の死滅を誘導するであろう場合に限られる。
【0148】
1の実施態様では、癌罹患ヒト由来T細胞を生体外で刺激及び/又は増幅するために使用し、次に、その刺激及び/又は増幅したT細胞を、そのヒトの癌を治療するためにそのヒトへ再導入するための、本発明のポリペプチド、核酸、ベクター又は組成物が提供される。
【0149】
本発明は、ヒト癌の治療方法であって、その癌細胞が配列番号1~10並びにそのいずれか1つの免疫原性断片及び変異体から選ばれた配列を発現するものであり、その方法は、そのヒトから、任意で抗原提示細胞と共に、少なくともT細胞を含む白血球集団を取り出すこと、そのT細胞を、対応する本発明のポリペプチド、核酸、ベクター又は組成物の存在下で、刺激及び/又は増幅すること、並びに、少なくとも刺激及び/又は増幅されたT細胞を含むその白血球の一部又は全てを、そのヒトへ再導入すること、を含む方法を提供する。
前記実施態様のいずれか一つでは、適切には、癌は、悪性黒色腫、特に皮膚悪性黒色腫である。
【0150】
1の実施態様では、配列番号1~10並びにそのいずれか1つの免疫原性断片及び変異体から選ばれた配列を発現する癌細胞に対して細胞傷害性であるT細胞集団の調製方法であって、(a)T細胞及び抗原提示細胞を癌患者から得ること、並びに、(ii)生体外でそのT細胞集団を、本発明の対応するポリペプチド、核酸、ベクター又は組成物で刺激及び増幅すること、を含む方法が提供される。
この文脈においての「対応する」とは、癌細胞が、例えば、配列番号A(Aは配列番号1~10の1つである)若しくは変異体又はその免疫原性断片を発現する場合、T細胞集団が、ポリペプチド、核酸若しくはベクター、又は前記の一つを含む組成物の形の配列番号A若しくは変異体又はその免疫原性断片により、生体外で刺激及び増幅されることを意味する。
【0151】
例えば、そのような調製方法プロセスでは、培養及び増殖は樹状細胞の存在下で行われる。その樹状細胞は、本発明の核酸分子又はベクターでトランスフェクトされて、本発明のポリペプチドを発現するだろう。
本発明は、前記調製方法のいずれかによって得られるであろうT細胞集団(これ以降、本発明のT細胞集団と称する)を提供する。
【0152】
1の実施態様では、本発明のポリペプチド、核酸、ベクター又は組成物で刺激されたT細胞である細胞(これ以降、本発明のT細胞と称する)が提供される。
1の実施態様では、本発明のT細胞集団又はT細胞を、医薬として許容し得るキャリアと共に含む、医薬組成物が提供される。そのような組成物は、例えば、非経口投与に適した無菌組成物でもよい。
1の実施態様では、医薬で使用するための本発明のT細胞集団又はT細胞が提供される。
【0153】
同様に、癌罹患ヒトの治療方法であって、その癌細胞が配列番号1~10並びにそのいずれか1つの免疫原性断片及び変異体から選ばれた配列を発現する治療方法、又は、ヒトを癌罹患から予防する方法であって、その癌細胞が配列番号1~10並びにそのいずれか1つの免疫原性断片及び変異体から選ばれた配列を発現するであろう予防方法であり、本発明のT細胞集団若しくはT細胞又は本発明のT細胞集団若しくはT細胞を含む組成物をそのヒトへ投与することを含む方法が提供される。
【0154】
1の実施態様では、ヒト癌の治療又は予防に使用するための本発明のT細胞集団、本発明のT細胞、又は本発明のT細胞集団若しくはT細胞を含む組成物であって、その癌細胞が配列番号1~10及びそのいずれか1つの免疫原性断片から選ばれた対応する配列を発現するものである、本発明のT細胞集団、本発明のT細胞又は本発明のT細胞集団若しくはT細胞を含む組成物が提供される。前記実施態様のいずれか一つでは、適切には、癌は、悪性黒色腫、特に皮膚悪性黒色腫である。
【0155】
1の実施態様では、本発明の使用のための調製方法、方法、又はT細胞集団、T細胞、抗原提示細胞、エクソソーム若しくは組成物であって、そのポリペプチドが下記から選ばれた配列を含み:
(a)配列番号1、3、4、5及び10のいずれか1つの配列;並びに
(b)(a)の配列の変異体;及び、
(c)(a)の配列の免疫原性断片、
かつ例えば、そのポリペプチドは、配列番号11~14、17~18、19、20~22、30~32、51~57、67~74及び76~77のいずれか一つから選ばれた配列を含むか、又はその配列からなり、かつ例えば、その核酸は、配列番号33、35、36又は40のいずれか一つから選ばれた、又は配列番号41、43、44、45及び50のいずれか一つから選ばれた配列を含むか、又はその配列からなり;かつ
その癌はブドウ膜悪性黒色腫である、前記調製方法、方法、又はT細胞集団、T細胞、抗原提示細胞、エクソソーム若しくは組成物が提供される。
【0156】
(遺伝子操作した免疫細胞による療法)
前記の全ての種類のCLT抗原結合ポリペプチドの誘導体は、ヒトHLA分子と複合体を形成したCLT抗原由来ペプチドを認識するTCR又はTCR模倣物(Dubrovskyらの文献、2016, Oncoimmunologyを参照)を含み、(自己由来又は非自己由来)T細胞の表面上に発現させるように操作されてもよく、それは次に癌治療のための養子T細胞療法として投与できる。
【0157】
これらの誘導体は、「キメラ抗原受容体(CAR)」カテゴリーに入り、本明細書で使用される場合、例えば、人工T細胞受容体、キメラT細胞受容体、又はキメラ免疫受容体を指すこともあり、更に、人工的な特異性を特別な免疫エフェクター細胞へ与えるよう操作された受容体をも含むだろう。CARは、例えば、養子細胞療法での使用のために、T細胞へモノクローナル抗体の特異性を付与するために使用してもよく、それにより、多数の特異的T細胞を生成することができる。CARは、細胞を、HLAと結合している本発明のポリペプチドである腫瘍関連抗原に対して特異的なものにするだろう。
【0158】
患者の癌を治療するための別のアプローチは、腫瘍細胞上に発現される抗原を標的とするようにT細胞を遺伝子的に改変することであり、キメラ抗原受容体(CAR)の発現を介する。この技術は、Wendell及びJuneの文献、2017, Cell, 168:724-740(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)でレビューされている。
【0159】
このようなCAR T細胞は、T細胞又はT細胞前駆体を含む細胞サンプルを、対象から、例えば、末梢血、臍帯血から及び/又はアフェレーシスにより得て、その細胞を、HLAと結合している本発明のポリペプチドに免疫特異的であるキメラT細胞受容体(CAR)をコードする核酸で、トランスフェクトする方法により作製してもよい。そのような核酸は、細胞のゲノム内に組み込むことができるだろうし、その細胞の有効量をその対象へ投与して、本発明のポリペプチドを発現する細胞に対してT細胞応答を提供してもよい。例えば、その対象から細胞サンプルを採取してもよい。
【0160】
前記CAR発現T細胞を作製するために使用される細胞は、自己由来でも非自己由来でもよいことが理解される。
遺伝子導入CAR発現T細胞は、内因性T細胞受容体及び/又は内因性HLAの不活性化発現を示してもよい。例えば、細胞を、内因性α/βT細胞受容体(TCR)の発現を排除するように操作してもよい。
【0161】
細胞のトランスフェクション方法は当分野で周知であるが、エレクトロポレーション等の非常に効率的なトランスフェクション法も使用することもできる。例えば、CAR構築物を発現する本発明の核酸又はベクターは、「ヌクレオフェクション(nucleofection)」装置を使用して細胞に導入してもよい。
【0162】
CAR発現T細胞のための細胞集団は、細胞のトランスフェクション後に富化してもよい。例えば、CAR発現細胞を、CARによって結合された抗原又はCAR結合抗体の使用により、発現しない細胞から(例えば、FACSにより)選別できる。それとは別な富化ステップには、非T細胞を枯渇させることや、CAR発現しない細胞を枯渇させることも含まれる。例えば、CD56+細胞を、培養集団から枯渇させることができる。
【0163】
遺伝子導入CAR発現細胞の集団は、CAR発現T細胞の増殖を選択的に増強する培地内で、生体外培養してもよい。従って、CAR発現T細胞を生体外増殖してもよい。
CAR細胞のサンプルは、保存(又は培養物で維持)されてもよい。例えば、サンプルは、後の増殖又は分析のために凍結保存してもよい。
CAR発現T細胞は、他の治療法、例えばPD-L1アンタゴニストを含むチェックポイント阻害剤と組み合わせて使用してもよい。
【0164】
1の実施態様では、その表面上に前記抗原結合ポリペプチドのいずれかを発現するように操作された細胞傷害性細胞が提供される。適切には、細胞傷害性細胞はT細胞である。
1の実施態様では、医薬で使用するための、その表面上に前記抗原結合ポリペプチドのいずれかを発現するように操作された、好適にはT細胞である細胞傷害性細胞が提供される。
本発明は、好適にはT細胞である、本発明の細胞傷害性細胞を含む医薬組成物を提供する。
【0165】
ヒト癌患者の治療方法であって、その癌細胞が配列番号1~10並びにそのいずれか1つの免疫原性断片及び変異体から選ばれた配列を発現する治療方法、又は、ヒトを癌罹患から予防する方法であって、その癌は配列番号1~10並びにそのいずれか1つの免疫原性断片及び変異体から選ばれた配列を発現するであろう予防方法であり、
本発明の細胞傷害性細胞、好適にはT細胞をそのヒトへ投与することを含む方法が提供される。
【0166】
1の実施態様では、本発明の細胞傷害性細胞、好適にはT細胞は、ヒト癌の治療又は予防に使用するためであり、その癌細胞が配列番号1~10及びそのいずれか1つの免疫原性断片から選ばれた対応する配列を発現するものである。
【0167】
(併用療法)
本発明の癌の治療方法は、他の療法、特にチェックポイント阻害剤及びインターフェロンと組み合わせて行ってもよい。
ポリペプチド、核酸、ベクター、抗原結合ポリペプチド、及び(APC及びT細胞ベースの)養子細胞療法は、それらの免疫原性を高める(例えば惹起する免疫応答の大きさ及び/又は範囲を改善する)ように、又は他の活性(例えば、先天性免疫応答若しくは適応免疫応答又は腫瘍細胞の破壊等の、他の態様の活性化)を提供するように設計された他のコンポーネントと組み合わせて使用できる。
【0168】
従って、本発明は、本発明の組成物(即ち、免疫原性の、ワクチン若しくは医薬組成物)、又は、本発明のポリペプチド、核酸、又はベクターを、医薬として許容し得るキャリア、並びに;(i)1以上の更なる免疫原性若しくは免疫賦活ポリペプチド(例えば、インターフェロン、IL-12、チェックポイント阻害分子若しくはそれをコードする核酸、若しくはその核酸を含むベクター)、(ii)小分子(例えば、HDAC阻害剤又は、癌細胞の後生的なプロファイルを改変する他の薬剤)又は生物製剤(ポリペプチド若しくはそれをコードする核酸、若しくはその核酸を含むベクターとして送達される)であって、本発明の対象であるポリペプチド産物の翻訳及び/又は提示を増強するもの、と共に含むいくつかの組成物のキット、を提供する。
【0169】
チェックポイント阻害剤は、癌細胞上の正常なタンパク質、又は、それらに応答するT細胞上のタンパク質をブロックするものであり、それら阻害剤が免疫系の攻撃に対する癌の主要な防御の1つを克服しようとするために、CLT抗原ベースの療法と組み合わせる特に重要な種類の薬剤であってもよい。
【0170】
従って、本発明の1の態様は、本発明のポリペプチド、核酸、ベクター、抗原結合ポリペプチド、組成物、T細胞、T細胞集団、又は抗原提示細胞を、チェックポイント阻害剤と組み合わせて投与することを含む。チェックポイント阻害剤の例は、ペンブロリズマブ、(キイトルーダ)及びニボルマブ(オプジーボ)等のPD-1阻害剤、アテゾリズマブ(テセントリク)、アベルマブ(バベンシオ)及びデュルバルマブ(イミフィンジ)等のPD-L1阻害剤、並びにイピリムマブ(ヤーボイ)等のCTLA-4阻害剤から選ばれる。
【0171】
インターフェロン(α、β及びγ等)は、身体がごく少量産生するタンパク質ファミリーである。インターフェロンは、癌細胞分裂を遅延又は停止させ、癌細胞が免疫系から自分自身を守る能力を低下させ、及び/又は、適応免疫系の複数の態様を強化することもある。インターフェロンは、通常、例えば大腿部又は腹部に皮下注射として投与される。
【0172】
従って、本発明の1の態様は、本発明のポリペプチド、核酸、ベクター、抗原結合ポリペプチド又は組成物の、インターフェロン、例えばインターフェロンαと組み合わせた投与を含む。
【0173】
又、本発明の異なる様式を組み合わせてもよく、例えば、本発明のポリペプチド、核酸及びベクターを、本発明のAPC、T細胞又はT細胞集団と組み合わせてもよい(下記に記載されている)。
本発明の1以上の様式は又、従来の抗癌化学療法及び/又は放射線療法と組み合わせてもよい。
【0174】
(診断)
別の態様では、本発明は、癌、特に悪性黒色腫、例えば皮膚悪性黒色腫を診断するために、又は、本発明のポリペプチド、核酸、ベクター、抗原結合ポリペプチド、養子細胞療法、若しくは組成物によって治療するのに適したヒト対象を診断するために、1以上の本発明のポリペプチド又は核酸を使用する方法を提供する。
【0175】
従って、本発明は、ヒトが癌に罹患しているかを診断する方法であって:その癌細胞が配列番号1~10及びそのいずれか1つの免疫原性断片若しくは変異体から選ばれたポリペプチド配列(例えば、配列番号11~32及び51~78の配列から選ばれる);又はそのポリペプチド配列をコードする核酸(例えば、配列番号33~40及び配列番号41~50の配列から選ばれる)を発現するかを決定するステップ、並びに、そのポリペプチド又は対応する核酸がその癌細胞内で過剰発現している場合に、そのヒトは癌に罹患していると診断するステップを含む方法、を提供する。
【0176】
本発明は、皮膚悪性黒色腫である癌罹患ヒトを診断する方法であって、その癌細胞が配列番号2、6、7、8及び9並びにその免疫原性断片若しくは変異体から選ばれたポリペプチド配列、又はそのポリペプチド配列をコードする核酸を発現するかを決定するステップ、並びに、そのポリペプチド又は対応する核酸がその癌細胞内で過剰発現している場合に、そのヒトは皮膚悪性黒色腫である癌に罹患していると診断するステップ、を含む方法、を提供する。
本明細書で使用される、癌細胞内で「過剰発現している」とは、癌細胞内の発現レベルが正常細胞内より高いことを意味する。
【0177】
本発明は、皮膚悪性黒色腫又はブドウ膜悪性黒色腫である、癌罹患ヒトを診断する方法であって、その癌細胞が配列番号1、3、4、5及び10並びにそのいずれか1つの免疫原性断片若しくは変異体から選ばれたポリペプチド配列、又はそのポリペプチド配列をコードする核酸を発現するかを決定するステップ;並びに、そのポリペプチド又は対応する核酸がその癌細胞内で過剰発現している場合に、そのヒトは皮膚悪性黒色腫又はブドウ膜悪性黒色腫である癌に罹患していると診断するステップ、を含む方法を提供する。
【0178】
過剰発現は、癌を有さないことがわかっているコントロールヒト対象内の、本発明の核酸又はポリペプチドのレベルを参照することによって決定できる。従って、過剰発現は、本発明の核酸又はポリペプチドが、コントロール対象よりも試験対象において有意に高いレベル(例えば、30%、50%、100%又は500%高いレベル)で検出されることを示す。コントロールヒト対象が本発明の核酸又はポリペプチドを検出不能なほど低いレベルで有する場合、本発明の核酸又はポリペプチドを検出することで診断に達する。
【0179】
本発明は又、癌罹患ヒトの治療方法であって:
(a) その癌細胞が配列番号1~10及びそのいずれか1つの免疫原性断片若しくは変異体から選ばれたポリペプチド配列(例えば、配列番号11~32及び51~78の配列から選ばれる)、又はそのポリペプチドをコードする核酸(例えば、配列番号33~40及び41~50の配列から選ばれるもの)を発現するかを決定するステップ;並びに、もし発現するならば、
(b)そのヒトへ、本発明の対応するポリペプチド、核酸、ベクター、組成物、T細胞集団、T細胞、抗原提示細胞、抗原結合ポリペプチド又は細胞傷害性細胞を投与するステップ、を含む方法を提供する。
【0180】
同様に、癌罹患ヒトの腫瘍から単離された、下記から選ばれた配列を含むポリペプチドの使用:
(a)配列番号1~10のいずれか1つの配列;若しくは
(b)(a)の配列の変異体;及び、
(c)(a)の配列の免疫原性断片、
又は、そのポリペプチドをコードする核酸の使用であって、そのヒトが、本発明の対応するポリペプチド、核酸、ベクター、組成物、T細胞集団、T細胞、抗原提示細胞、抗原結合ポリペプチド若しくは細胞傷害性細胞、を含むワクチンによる治療に適しているであろうかを決定するためのバイオマーカーとしての使用、が提供される。
適切には、癌は、悪性黒色腫、特に皮膚悪性黒色腫である。
【0181】
本発明は又、
ポリペプチドが下記から選ばれた配列を含み:
(a)配列番号1、3、4、5及び10のいずれか1つの配列;並びに
(b)(a)の配列の変異体;及び
(c)(a)の配列の免疫原性断片、
かつ例えば、そのポリペプチドは、配列番号11~14、17~18、19、20~22、30~32、51~57、67~74及び76~77のいずれか一つから選ばれた配列を含むか、又はその配列からなり、かつ例えば、その核酸は、配列番号33、35、36若しくは40のいずれか一つから選ばれた、又は配列番号41、43、44、45及び50のいずれか一つから選ばれた配列を含むか、又はその配列からなり;かつ
その癌はブドウ膜悪性黒色腫である、本発明の方法又は使用を提供する。
【0182】
好適には、本発明のポリペプチドは、配列番号1~10、又はその免疫原性断片等の断片(例えば、配列番号11~32及び51~78の配列から選ばれる)から選ばれた配列を有する。
好適には、本発明の核酸は、配列番号33~40若しくは41~50、又はその免疫原性断片等の断片のいずれか一つから選ばれた配列を有するか含む。
【0183】
核酸の存在を検出するためのキットは周知である。例えば1つのポリヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも2つのオリゴヌクレオチドを含むキットを、リアルタイムPCR(RT-PCR)反応で使用してもよく、特定の核酸の検出及び半定量化が可能になる。このようなキットは、フェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)の結果としての蛍光シグナルの発生(例えば、TaqMan(登録商標)キット)、又は二本鎖DNAの結合によって(例えば、SYBR(登録商標)Greenキット)、PCR産物の検出を可能にするだろう。いくつかのキット(例えば、標的DNAの複数のエクソンをスパンするTaqMan(登録商標)プローブを含むもの)は、mRNA、例えば本発明の核酸をコードする転写産物の検出及び定量化を可能にする。ある種のキットを使用するアッセイは、マルチプレックス形式で設定して、1つの反応で同時に複数の核酸を検出できるだろう。活性なDNA(即ち、発現を示す特別な後成的特徴を有するDNA)を検出するためのキットも又、使用してもよい。そのようなキット内に存在し得る追加的コンポーネントには、本発明の核酸の検出を容易にする診断用試薬又はレポーターが含まれる。
【0184】
本発明の核酸は又、患者からの血液サンプルを使用して、液体生検で検出してもよい。このような手順は、外科的生検に代わる非侵襲的生検を提供する。そのような血液サンプルからの血漿を単離して、本発明の核酸の存在について分析することもできる。
【0185】
本発明のポリペプチドは、患者の腫瘍サンプルをホモジェナイズした調製物中の本発明のポリペプチドを検出する、ELISA型アッセイにおいて抗原特異的抗体を使用して検出してもよい。或いは、本発明のポリペプチドは、免疫組織化学的分析によって検出してもよく、それは、適切に標識した抗体調製物を使用して染色した患者腫瘍サンプルの切片を、光学顕微鏡を使用して検査して、ポリペプチド抗原の存在を同定するものである。更なる代替としては、本発明のポリペプチドは、免疫組織化学的分析によって検出してもよく、それは、適切に標識した抗体調製物を使用して染色した患者腫瘍サンプルの切片を、光学顕微鏡を使用して検査して、ポリペプチド抗原の存在を同定するものである。
【0186】
本発明のポリペプチドは又、それらがT細胞を刺激してそのポリペプチドに対する反応性を上昇できるかどうかを決定することによって検出してもよい。
癌又は腫瘍、例えば悪性黒色腫、例えば皮膚悪性黒色腫の細胞は、一例として、癌、例えば悪性黒色腫、例えば皮膚悪性黒色腫の生検から得られるかもしれない。
【0187】
ヒトの癌、特に悪性黒色腫、例えば皮膚悪性黒色腫の治療方法は、(i)本発明の核酸又はポリペプチドの存在を検出すること、及び(ii)その対象へ、本発明の核酸、ポリペプチド、ベクター、細胞、T細胞若しくはT細胞集団又は組成物を投与すること、(そして、好ましくは、検出されたものと同じ核酸若しくはポリペプチド又はその断片を投与すること)を含む。
【0188】
ヒトの癌、特に悪性黒色腫、例えば皮膚悪性黒色腫の治療方法は又、その対象へ、本発明の核酸、ポリペプチド、ベクター、細胞、T細胞若しくはT細胞集団又は組成物を投与することを含み、その対象では、(そして、好ましくは同じ)本発明の核酸又はポリペプチドの存在が検出されている。
【0189】
特に、診断され、かつ可能であれば、治療される癌は、悪性黒色腫、例えば皮膚悪性黒色腫である。
配列番号1、3、4、5若しくは10又はその断片である本発明のポリペプチドが検出された場合、その癌は皮膚悪性黒色腫又はブドウ膜悪性黒色腫だろう。
【0190】
(特別な実施態様)
1の実施態様では、CLT抗原ポリペプチドは配列番号1を含むか、又はそれからなる。例示的な断片は、配列番号11~14のいずれか一つを含むか、又はそれからなる。更に例示的な断片は、配列番号11~14の2つ、3つ、又は4つを含む。更に例示的な断片は、配列番号55~57若しくは73~74のいずれか一つを含むか、又はそれからなる。更に例示的な断片は、配列番号11~14、55~57及び73~74の全てを含む(重複配列が複数回存在することのないように、可能な配列重複が考慮される)。そのポリペプチド配列をコードする核酸の例示は、配列番号33若しくは配列番号41を含むか、又はそれからなる。上掲の、対応する核酸(例えば、DNA又はRNA)、T細胞、T細胞集団、細胞傷害性(cytocotic)細胞、抗原結合ポリペプチド、抗原提示細胞及びエクソソームが提供される。この核酸(例えば、DNA又はRNA)、T細胞、T細胞集団、細胞傷害性細胞、抗原結合ポリペプチド、抗原提示細胞及びエクソソームは、癌、特に悪性黒色腫、例えば皮膚悪性黒色腫又はブドウ膜悪性黒色腫の治療に使用されてもよい。関連する診断方法も又、提供される。
【0191】
1の実施態様では、CLT抗原ポリペプチドは配列番号2を含むか、又はそれからなる。例示的な断片は、配列番号15若しくは配列番号16を含むか、又はそれからなる。更に例示的な断片は、配列番号15及び配列番号16を含む。更に例示的な断片は、配列番号58~66、75及び78のいずれか一つを含むか、又はそれからなる。更に例示的な断片は、配列番号15~16、58~66、75及び78の全てを含む(重複配列が複数回存在することのないように、可能な配列重複が考慮される)。そのポリペプチド配列をコードする核酸の例示は、配列番号34若しくは配列番号42を含むか、又はそれからなる。上掲の、対応する核酸(例えば、DNA又はRNA)、T細胞、T細胞集団、細胞傷害性(cytocotic)細胞、抗原結合ポリペプチド、抗原提示細胞及びエクソソームが提供される。この核酸(例えば、DNA又はRNA)、T細胞、T細胞集団、細胞傷害性細胞、抗原結合ポリペプチド、抗原提示細胞及びエクソソームは、癌、特に悪性黒色腫、例えば皮膚悪性黒色腫の治療に使用されてもよい。関連する診断方法も又、提供される。
【0192】
1の実施態様では、CLT抗原ポリペプチドは配列番号3を含むか、又はそれからなる。例示的な断片は、配列番号17若しくは配列番号18を含むか、又はそれからなる。更に例示的な断片は、配列番号17及び配列番号18を含む。更に例示的な断片は、配列番号53及び67~69のいずれか一つを含むか、又はそれからなる。更に例示的な断片は、配列番号17、配列番号18及び配列番号53を含む。更に例示的な断片は、配列番号17~18、53及び67~69の全てを含む(重複配列が複数回存在することのないように、可能な配列重複が考慮される)。そのポリペプチド配列をコードする核酸の例示は、配列番号35若しくは配列番号43を含むか、又はそれからなる。上掲の、対応する核酸(例えば、DNA又はRNA)、T細胞、T細胞集団、細胞傷害性(cytocotic)細胞、抗原結合ポリペプチド、抗原提示細胞及びエクソソームが提供される。この核酸(例えば、DNA又はRNA)、T細胞、T細胞集団、細胞傷害性細胞、抗原結合ポリペプチド、抗原提示細胞及びエクソソームは、癌、特に悪性黒色腫、例えば皮膚悪性黒色腫又はブドウ膜悪性黒色腫の治療に使用されてもよい。関連する診断方法も又、提供される。
【0193】
1の実施態様では、CLT抗原ポリペプチドは配列番号4を含むか、又はそれからなる。例示的な断片は、配列番号19を含むか、又はそれからなる。更に例示的な断片は、配列番号51若しくは配列番号52を含むか、又はそれからなる。更に例示的な断片は、配列番号54を含むか、又はそれからなる。更に例示的な断片は、配列番号70~72及び76~77のいずれか一つを含むか、又はそれからなる。更に例示的な断片は、配列番号19及び、配列番号51又は配列番号52のいずれかを含む。更に例示的な断片は、配列番号54及び、配列番号51又は配列番号52のいずれかを含む。更に例示的な断片は、配列番号19、51~52、54、70~72及び76~77の全てを含む(重複配列が複数回存在することのないように、可能な配列重複が考慮される)。そのポリペプチド配列をコードする核酸の例示は、配列番号35若しくは配列番号44を含むか、又はそれからなる。上掲の、対応する核酸(例えば、DNA又はRNA)、T細胞、T細胞集団、細胞傷害性(cytocotic)細胞、抗原結合ポリペプチド、抗原提示細胞及びエクソソームが提供される。この核酸(例えば、DNA又はRNA)、T細胞、T細胞集団、細胞傷害性細胞、抗原結合ポリペプチド、抗原提示細胞及びエクソソームは、癌、特に悪性黒色腫、例えば皮膚悪性黒色腫又はブドウ膜悪性黒色腫の治療に使用されてもよい。関連する診断方法も又、提供される。
【0194】
1の実施態様では、CLT抗原ポリペプチドは配列番号5を含むか、又はそれからなる。例示的な断片は、配列番号20~22のいずれか一つを含むか、又はそれからなる。そのポリペプチド配列をコードする核酸の例示は、配列番号36若しくは配列番号45を含むか、又はそれからなる。上掲の、対応する核酸(例えば、DNA又はRNA)、T細胞、T細胞集団、細胞傷害性(cytocotic)細胞、抗原結合ポリペプチド、抗原提示細胞及びエクソソームが提供される。この核酸(例えば、DNA又はRNA)、T細胞、T細胞集団、細胞傷害性細胞、抗原結合ポリペプチド、抗原提示細胞及びエクソソームは、癌、特に悪性黒色腫、例えば皮膚悪性黒色腫又はブドウ膜悪性黒色腫の治療に使用されてもよい。関連する診断方法も又、提供される。
【0195】
1の実施態様では、CLT抗原ポリペプチドは配列番号6を含むか、又はそれからなる。例示的な断片は、配列番号23若しくは配列番号24を含むか、又はそれからなる。そのポリペプチド配列をコードする核酸の例示は、配列番号37若しくは配列番号46を含むか、又はそれからなる。上掲の、対応する核酸(例えば、DNA又はRNA)、T細胞、T細胞集団、細胞傷害性(cytocotic)細胞、抗原結合ポリペプチド、抗原提示細胞及びエクソソームが提供される。この核酸(例えば、DNA又はRNA)、T細胞、T細胞集団、細胞傷害性細胞、抗原結合ポリペプチド、抗原提示細胞及びエクソソームは、癌、特に悪性黒色腫、例えば皮膚悪性黒色腫の治療に使用されてもよい。関連する診断方法も又、提供される。
【0196】
1の実施態様では、CLT抗原ポリペプチドは配列番号7を含むか、又はそれからなる。例示的な断片は、配列番号25を含むか、又はそれからなる。そのポリペプチド配列をコードする核酸の例示は、配列番号38若しくは配列番号47を含むか、又はそれからなる。上掲の、対応する核酸(例えば、DNA又はRNA)、T細胞、T細胞集団、細胞傷害性(cytocotic)細胞、抗原結合ポリペプチド、抗原提示細胞及びエクソソームが提供される。この核酸(例えば、DNA又はRNA)、T細胞、T細胞集団、細胞傷害性細胞、抗原結合ポリペプチド、抗原提示細胞及びエクソソームは、癌、特に悪性黒色腫、例えば皮膚悪性黒色腫の治療に使用されてもよい。関連する診断方法も又、提供される。
【0197】
1の実施態様では、CLT抗原ポリペプチドは配列番号8を含むか、又はそれからなる。例示的な断片は、配列番号26を含むか、又はそれからなる。そのポリペプチド配列をコードする核酸の例示は、配列番号38若しくは配列番号48を含むか、又はそれからなる。上掲の、対応する核酸(例えば、DNA又はRNA)、T細胞、T細胞集団、細胞傷害性(cytocotic)細胞、抗原結合ポリペプチド、抗原提示細胞及びエクソソームが提供される。この核酸(例えば、DNA又はRNA)、T細胞、T細胞集団、細胞傷害性細胞、抗原結合ポリペプチド、抗原提示細胞及びエクソソームは、癌、特に悪性黒色腫、例えば皮膚悪性黒色腫の治療に使用されてもよい。関連する診断方法も又、提供される。
【0198】
1の実施態様では、CLT抗原ポリペプチドは配列番号9を含むか、又はそれからなる。例示的な断片は、配列番号27~29のいずれか一つを含むか、又はそれからなる。そのポリペプチド配列をコードする核酸の例示は、配列番号39若しくは配列番号49を含むか、又はそれからなる。上掲の、対応する核酸(例えば、DNA又はRNA)、T細胞、T細胞集団、細胞傷害性細胞、抗原結合ポリペプチド、抗原提示細胞及びエクソソームが提供される。この核酸(例えば、DNA又はRNA)、T細胞、T細胞集団、細胞傷害性細胞、抗原結合ポリペプチド、抗原提示細胞及びエクソソームは、癌、特に悪性黒色腫、例えば皮膚悪性黒色腫の治療に使用されてもよい。関連する診断方法も又、提供される。
【0199】
1の実施態様では、CLT抗原ポリペプチドは配列番号10を含むか、又はそれからなる。例示的な断片は、配列番号30~32のいずれか一つを含むか、又はそれからなる。そのポリペプチド配列をコードする核酸の例示は、配列番号40若しくは配列番号50を含むか、又はそれからなる。上掲の、対応する核酸(例えば、DNA又はRNA)、T細胞、T細胞集団、細胞傷害性(cytocotic)細胞、抗原結合ポリペプチド、抗原提示細胞及びエクソソームが提供される。この核酸(例えば、DNA又はRNA)、T細胞、T細胞集団、細胞傷害性細胞、抗原結合ポリペプチド、抗原提示細胞及びエクソソームは、癌、特に悪性黒色腫、例えば皮膚悪性黒色腫又はブドウ膜悪性黒色腫の治療に使用されてもよい。関連する診断方法も又、提供される。
【実施例】
【0200】
(実施例)
(実施例1-CLT特定)
この目的は、完全に又は部分的にLTRエレメントからなる癌特異的転写産物を特定することであった。
第一ステップとして、包括的な癌種横断的トランスクリプトームをデノボアセンブリ解析した。これを達成するために、癌ゲノムアトラス(TCGA)コンソーシアムから入手し、そして多種多様な癌種(それぞれ32の癌種(31の原発性及び1の転移性悪性黒色腫)に由来する、性別バランスの取れた24個のサンプル;表S1)を代表する、768個の患者サンプルからのRNAシーケンシングリードを、ゲノムガイドアセンブリに使用した。この性別バランスの取れた(性固有組織を除く)サンプルは、cutadapt(v1.13)(Marcel Mの文献、2011, EMBnet J., 17:3)の使用におけるアダプターであり、品質(Q20)トリムして、長さフィルタ処理し(35以上のヌクレオチド対の両方のリード)、更にkhmer(v2.0)(Crusoeらの文献、2015, F1000Res., 4:900)を使用して、最大及び最小深度がそれぞれ200及び3であるkmer正規化(k=20)を行った。リードを、TCGA全体で使用されるものと同じ設定でSTAR(2.5.2b)を使用してGRCh38にマッピングし、Trinity(v2.2.0)(Trinity、Grabherr, M.G.,らの文献、2011, Nat. Biotechnol., 29:644-52)にかけて、組み込まれているインシリコ深度正規化を無効化してゲノムガイドアセンブリを行った。アセンブリプロセスの大部分は、32コアHPCノード上の256GB RAM内で完了し、失敗したプロセスは1.5TB RAMノードを使用して再実行した。得られたコンティグを、ポリ(A)トリムし(SeqClean v110222のtrimpoly使用)、エントロピーフィルター処理(≧0.7)して、低品質で人工的なコンティグ(BBMap v36.2内のbbduk)を除去した。癌種ごとに、元の24のサンプルをSalmon(v0.8.2又はv0.9.2)(Patro,R.,らの文献、2017, Nat. Methods, 14:417-419)を使用してクリーンにしたアセンブリへ、準マッピングし、100万あたりの転写産物(TPM)<0.1の発現が見られたコンティグを削除した。残りのものを、GMAP(v161107)(Wuらの文献、2005, Bioinf., 21:1859-1875)を使用してGRCh38にマッピングし、その長さの85%以上にわたって85%以上の同一性を有することに一致しないコンティグをアセンブリから削除した。最後に、全ての癌種を一緒にしたアセンブリを平坦化し、gffread (Cufflinks v2.2.1)(Trapnellらの文献、2010, Nat. Biotech., 28:511-515)を使用して、最長の連続転写産物へとマージした。このアセンブリプロセスは反復エレメントの評価を可能にするように特別に設計したため、モノエクソン性転写産物が保持されたが、フラグを付けた。転写産物アセンブリの完全性と品質を、GENCODE v24basic及びMiTranscriptome1(Iyerらの文献、2015、Nat. Genet., 47:199-208)の比較によって評価した。GENCODEで示された固有のスプライス部位のリストをコンパイルし、そのスプライス部位が2ヌクレオチドの猶予ウィンドウ内にある、トランスクリプトームアセンブリ内に存在するかどうかを試験した。このプロセスにより、1,001,931個の転写産物を特定し、そのうち771,006個がスプライシングされ、230,925個がモノエクソン性である結果を得た。
【0201】
これとは別に、アセンブリしたコンティグをゲノム反復配列アノテーションで重ねて、LTRエレメントを含む転写産物を特定した。LTR及び非LTRエレメントを、前記のようにアノテーションした(Attigらの文献、2017, Front. In Microbiol., 8:2489)。簡略に説明すると、公知のヒト反復ファミリーを表す隠れマルコフモデル(HMM)を使用し(Dfam 2.0ライブラリv150923)、RepeatMasker Open-3.0(Smit, A.,R. Hubley及びP. Greenの文献、http://www.repeatmasker.org,1996-2010)を使用してGRCh38をアノテーションし、それはnhmmerで構成した(Wheelerらの文献、2013, Bioinform., 29:2487-2489)。HMMベースのスキャンは、BLASTベースの方法(Hubleyらの文献、2016, Nuc. Acid. Res., 44:81-89)と比較してアノテーション精度が向上する。RepeatMaskerは、LTR及び内部領域を別々にアノテーションするため、表形式の出力を解析して、同じエレメントのための隣接するアノテーションをマージした。この処理は、1以上の完全な又は部分的なLTRエレメントを含む181,967個の転写産物を産出した。
【0202】
Salmonを使用して全ての転写産物の100万あたりの転写産物(TPM)量を推定し、各癌種内の発現を、811個の健康な組織サンプル(利用可能な場合はTCGAから、それ以外はGTEx (The Genotype-Tissue Expression Consortium, 2015, Science, 348:648-60)から入手した、全ての癌種用の健康な組織適合コントロール)における発現と比較した。転写産物は、いずれかのサンプル内で1 TPMを超えて検出された場合は癌内で特異的に発現されると見なし、かつ下記基準が満たされる場合は癌特異的であると見なした:(i)各癌種の24サンプル中、6以上で発現される;(ii) 90%以上の全ての健康な組織サンプルでは、10TPM未満で発現される;(iii)標的の癌種では、任意のコントロール組織種での発現中央値の3倍以上で発現される;及び、(iv)標的の癌種では、(入手可能な)それぞれの健康な組織の第90パーセンタイルの3倍以上で発現される。これら発現しきい値基準に加えて、転写産物の選択は、手動検査に基づき、潜在的なミスアセンブリされたコンティグ又はその3’非翻訳領域(UTR)内のLTRエレメントを有する転写産物を排除した。転写の方向を明確に割り当てることができなかった場合、両方の鎖に対応する転写産物を考慮した。
【0203】
次に、癌特異的転写産物のリストを、完全な又は部分的なLTRエレメントを含む転写産物のリストと交差させて、両方の基準を満たす5,923個の転写産物のリストを作成した(癌特異的LTRエレメント-スパニング転写産物のためのCLTと称する)。
【0204】
タンパク質をコード化する可能性を有するCLTを特定するために、ジコドン(ヘキサマー)スコアの長さ及び適合性に基づいて、ORF予測アルゴリズムを実行する。HMMをEnsembl CDS配列由来のヘキサマーでトレーニングし、300以上ヌクレオチドのORFについて行ったが、そのセンスヘキサマースコアはアンチセンススコアを上回った。このフィルターは、少なくとも99アミノ酸長のタンパク質をコードする可能性のある、885個のCLTを特定した。
【0205】
CLTによってコードされる可能性のある固有なタンパク質配列を特定するために、選択したCLTの最大のORFから翻訳された配列を、tblastn(BLAST+v2.3.0)を使用してソフトマスキング(soft-maskin)なしに、転写産物アセンブリ全体からの全ての210以上ヌクレオチドのORFから翻訳されたものに対してクエリ検索した。ヒットなし又はE値>10-5のヒットありのCLTのみを維持した。
【0206】
CLTによってコードされる癌特異的抗原の特異性を更に確実にするために、健康な組織内で発現される可能性のある他のタンパク質との潜在的な交差反応性を検査した。この目的のために、他の予測されたタンパク質のいずれかと(そのタンパク質全長にわたって)<85%のアミノ酸配列同一性を有する翻訳されたORFを維持した。1以上の予測されたタンパク質と>85%の配列同一性を示す、CLTによってコードされるタンパク質について、類似のタンパク質をコードする転写産物の発現パターンを照合した。又、これら追加的な転写産物が、癌特異的様式(前記基準に基づく)で発現される場合、それぞれのCLTは選ばれた候補リスト上に残した。又、追加的な転写産物が健康な組織内で発現される場合は、それぞれのCLTは削除した。これらの選択基準の組み合わせにより、充分にユニークなアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする可能性のある139個のCLTの最終リストを作成した。
【0207】
これらの139個のCLT中、14個は皮膚悪性黒色腫に特異的であり(即ち、前記手法に従い、TGCAの皮膚悪性黒色腫サンプル内で特異的にアップレギュレートされることが確認された)、7個は皮膚悪性黒色腫及びブドウ膜悪性黒色腫に特異的であった(即ち、前記手法に従い、TGCAの皮膚悪性黒色腫サンプル及びブドウ膜悪性黒色腫サンプル内で特異的にアップレギュレートされることが確認された)。これら皮膚悪性黒色腫に特異的なCLTの4個は、本明細書において、配列番号34、37、38及び39を有するものとして特定されている。これら皮膚悪性黒色腫及びブドウ膜悪性黒色腫に特異的なCLTの4個は、本明細書において、配列番号33、35、36及び40を有するものとして特定されている。
【0208】
(実施例2-免疫ペプチドーム分析)
免疫ペプチドーム分析は、細胞又は組織内のHLA分子に関連する特定の(specific)ペプチドの直接的検出を可能にする強力な技術である。この技術は、生物学的サンプルからのHLA分子のアフィニティー精製、次にそのHLA分子からの結合ペプチドの溶出、及びナノ超高速液体クロマトグラフィー質量分析(nUPLC-MS2)によるペプチド評価で構成される(Freudenmannらの文献、2018, Immunology 154(3):331-345)。この方法により生成された質量分析(MS)スペクトルは、HLAクラスI及びHLAクラスII分子に結合している短鎖ペプチドを、正確に特定するために使用できる。スペクトル解釈及び配列特定に使用されるソフトウェアは、スペクトルマッチングのためのタンパク質配列の定義済リストの入手可能性に依存する。公知のトランスクリプトーム、それどころかゲノム全体に由来する全てのオープンリーディングフレーム(ORF)に対応する、既に定義されたリストを使用してMSデータを検索することは可能であるが(Nesvizhskiiらの文献、2014, Nat. Methods 11:1114-1125)、これらの超巨大な配列データベースの照合は、提示されたペプチドの特定を制限する非常に高い誤検出率につながる。更なる技術的問題(例えば、ロイシン質量=イソロイシン質量)、及び理論的問題(例えば、ペプチドスプライシング(Liepeらの文献、2016, Science 354(6310):354-358))により、公知のトランスクリプトーム又はゲノム全体から作成されたデータベース等の、超巨大データベースの使用に関連する制限が増加する。従って、実際上は、潜在的なポリペプチド配列の明確に定義されたセットを参照せずに、免疫ペプチドーム分析を実行して新規な抗原を特定することは非常に困難である。
【0209】
Bassani-Sternbergらは、25人の皮膚悪性黒色腫患者から由来するHLA結合ペプチドサンプルから収集されたMSデータを、ヒトプロテオーム全体について報告されたポリペプチドに対して照合した(Bassani-Sternbergらの文献、2016, Nature Commun., 7:13404)。これらの分析により、公知のヒトタンパク質にマッチする数十万のペプチドが明らかになった。予測された通り、これらのペプチドは、PRAME、MAGEA3、TRPM1(メラスタチン)を含む、複数の腫瘍関連抗原(TAA)内で発見されるペプチドを含むものだった。更に、これら患者の中でも5人のMSデータを、これら5人の患者のゲノム分析によって検出された患者特異的な変異タンパク質配列から作成されたポリペプチドリストと照合したところ、これら患者のHLAクラスI及びHLAクラスII分子上に提示された患者特異的な新抗原が明らかになった。
【0210】
実施例1に記載された139個のCLTから由来する予測されたポリペプチド配列(ORF)の多くは、ヒトプロテオーム内に含まれていない。免疫ペプチドーム評価の詳細な知識を適用することにより、本発明者らは、Bassani-SternbergらのRAWデータファイル(データベースリンク:https://www.ebi.ac.uk/pride/archive/projects/PXD004894)を、この一連の新規な潜在的CLT抗原配列と照合した。
【0211】
この分析を行うために、各CLTによってコードされている全ての可能なORFからのペプチド配列を、各CLTの単一のペプチドファイルへ連結し、又は連結せず、これら連結ファイル(分析A)又は単一のペプチドファイル(分析B)を、PXD004894データセット内の生スペクトルを照合するために使用し、その照合は、ヒトプロテオーム(UniProt(分析A)又はUniProt及びmasDB(分析B))内に見られる全てのポリペプチドと並べて行い、Peaks(商標)ソフトウェア(分析A)又はMascotソフトウェア(分析B)を利用して行った。
【0212】
分析Aでは、これらの研究の結果は、Bassani-Sternbergらによって検査された25人の患者の腫瘍サンプルから免疫沈降されたHLAクラスI分子に関連する14個のペプチドを特定し、それらは、報告されたプロテオーム内には見つからなかった8個のORFに帰することができた(表1を参照)。分析Bでは、これらの研究の結果は、Bassani-Sternbergらによって検査された25人の患者の腫瘍サンプルから免疫沈降されたHLAクラスI分子又はHLAクラスII分子に関連する14個のペプチドを特定し、それらは、報告されたプロテオーム内には見つからなかった7個のORFに帰することができた(表2を参照)。引用された患者からのHLAクラスI及びHLAクラスII分子に関連するこれらのペプチドの検出により、それらが由来する10個のORF(表1及び2、配列番号1~10)が悪性黒色腫組織内で翻訳され、HLAクラスI又はHLAクラスII分子と複合体を形成した免疫系に提示されることが確認できる。この結果に基づいて、これらのORFによってコードされるポリペプチドはCLT抗原として定義された。表1及び2は、UniProtデータベースには存在していなかったCLT抗原中に発見されるペプチドの特性を示す。
図1~32は、表1及び表2に示される各ペプチドの、代表的な質量分析スペクトルを示す。これらの図は、表示されたペプチド配列の断片スペクトルを示し、それはnUPLC-MS
2により個々のSKCM腫瘍患者内で検出されたものである(Bassani-Sternbergらの文献;PEAKSソフトウェアによってPRIDEデータセットから抽出された画像)。検出された全ての断片は、スペクトル上のペプチド配列に示され、最も豊富な断片イオンが各スペクトルに割り当てられる。
図1~15、29~32(分析A)では、図の下のパネルは予測されたスペクトルへの配列アノテーションを示す一方、同様のデータが、
図16~28(分析B)の右側に表形式で示される。断片イオンは下記のようにアノテーションされる:b:N末端断片イオン;y:C末端断片イオン;-H
2O:水損失;-NH
3:アンモニア損失;[2+]:二価帯電ペプチドイオン;pre:断片化されていない前駆体ペプチドイオン。
【0213】
表1及び2から、HLAクラスIに関連して検出されたペプチドの数を評価して、HLAクラスIスーパータイプへの結合の予測強度を決定した。具体的には、表3で引用されている、9アミノ酸以上の長さの全てのHLAクラスI関連ペプチドを、NetMHC 4.0予測ソフトウェア(http://www.cbs.dtu.dk/services/NetMHC/)を使用して照合し、HLAクラスIタイプA及びBスーパータイプへのそれらの結合を予測した。これら予測研究の結果は、11個のペプチド全て(又はそれらに由来する9-mer)が、試験したスーパータイプの少なくとも1つに結合すると予測されたことを示した(表3を参照)。これらの内、多くの配列は、検査したHLAクラスIスーパータイプ内の特定のタイプへ高い信頼性(低いランクスコア%)で結合すると予測された。
【0214】
以上をまとめると、表1~3及び
図1~32に示されるデータは、悪性黒色腫患者内では、この対応するCLT抗原が提示されていることの非常に強力なサポートを提供する。
要約すると、予測されたORFに由来する免疫ペプチドームペプチドの特定は、これらのCLTが腫瘍組織内でポリペプチド(配列番号1~10;CLT抗原とも称する)に翻訳されることを示している。これらは次に、細胞の免疫監視装置によってプロセッシングされ、HLAクラスI又はHLAクラスII分子上にロードされ、その結果生じるペプチド/HLAクラスI複合体又はペプチド/HLAクラスII複合体を認識するT細胞によって、その細胞を細胞溶解の標的とすることが可能となる。従って、これらCLT抗原及びその断片は、その腫瘍がこれら抗原を発現する患者内の悪性黒色腫の治療のための、様々な治療的モダリティにおいて有用であることが予測される。
【0215】
(表1:SKCM腫瘍サンプルの免疫ペプチドーム分析(分析A)によって特定されたペプチドのリスト、並びに、CLT抗原名及び相互参照される配列番号)
【表1】
1:質量分析により特定されたペプチド。全てのペプチドはHLAクラスIペプチドである。
2:Bassani-Sternbergらの文献、2016, Nature Comm., 7:13404。
3:算出ペプチド質量。
4:質量スペクトルのPeaks(商標)プログラムエリア;複数のスペクトルが得られたペプチドについて、選択したエリア値を示す。
5:ペプチドが検出されたスペクトルの数。
6:観測質量及び算出質量の間の偏差;複数のスペクトルが得られたペプチドについて、選択したppm値を示す。
【0216】
(表2:SKCM腫瘍サンプルの免疫ペプチドーム分析(分析B)によって特定されたペプチドのリスト、並びに、CLT抗原名及び相互参照される配列番号)
【表2】
1:質量分析により特定されたペプチド。*を表示されているもの(HLAクラスIIであるもの)以外の全てのペプチドは、HLAクラスIペプチドである。
2:Bassani-Sternbergらの文献、2016, Nature Comm., 7:13404。
3:算出ペプチド質量。
4:ペプチドが検出されたスペクトルの数。
5:観測質量及び算出質量の間の差分;複数のスペクトルが得られたペプチドについて、選択したデルタ質量値を示す。
*は、HLAクラスIIペプチドを示す。
【0217】
(表3:質量分析で特定されたペプチド(長さ≧9残基)の、12個のHLAクラスIスーパータイプ対立遺伝子(HLA-A0101、HLA-A0201、HLA-A0301、HLA-A2402、HLA-A2601、HLA-B0702、HLA-B0801、HLA-B1501、HLA-B2705、HLA-B3901、HLA-B4001、HLA-B5801)への予測されたNetMHC 4.0結合、並びに、CLT抗原名及び相互参照される配列番号)
【表3】
1:照合したHLAクラスIスーパータイプへの、いずれかのランクスコアでの予測される結合。
2:<5.1%(弱い結合)のランクスコアで結合すると予測されたHLAクラスIスーパータイプの画分。
3:<2.1%(より強い結合)のランクスコアで結合すると予測されたHLAクラスIスーパータイプの画分。
4:Bassani-Sternbergらの文献、2016, Nature Comm., 7:13404。
【0218】
(実施例2.1-追加的免疫ペプチドーム分析)
実施例2に記載された分析に加えて、本発明者らは又、新しい免疫ペプチドーム研究を通じて予測されたORFに由来するペプチドも特定した。下記に記載したこの追加的研究は更に、それらCLTが腫瘍組織内でCLT抗原ポリペプチドへ翻訳されることを示す。
【0219】
本発明者らは、悪性黒色腫と診断された10人の患者から凍結腫瘍組織を調達した。0.05~1 gのサンプルをホモジェナイズし、ライセートを高速で遠心分離し、清澄化したライセートを、抗ヒトHLAクラスIモノクローナル抗体(W6/32)に共有結合したプロテインA(ProA)ビーズと混合した。混合物を4℃で一晩インキュベートして、HLAクラスI分子の抗体への結合を改善した(Ternetteらの文献、2018, Proteomics 18, 1700465)。HLAクラスI結合ペプチドを、10%酢酸を使用して抗体から溶出し、次にそのペプチドを他の高分子量成分から逆相カラムクロマトグラフィーを使用して分離した(Ternetteらの文献、2018年)。精製した溶出ペプチドをnUPLC-MSにかけ、所定の電荷対質量比(m/z)の特定のペプチドを質量分光計で選択し、単離し、断片化し、MS/MSにかけて、得られた断片イオンのm/zを明らかにし(Ternetteらの文献、2018年)、これら腫瘍サンプルそれぞれの免疫ペプチドームに対応するMS/MSデータセットを作製した。
【0220】
免疫ペプチドーム評価の詳細な知識を適用することにより、本発明者らは、CLT抗原番号1、2、3及び4を用いて本発明者らが作成した10個の悪性黒色腫腫瘍についてのHLAクラスIデータセットのスペクトルを照合したが(表4;配列番号1~4)、それはPEAKS(商標)ソフトウェア(v8.5及びvX、Bioinformatics Solutions Inc)を使用して、ヒトプロテオーム(UniProt)内で見つかる全てのポリペプチド配列と並べて(各CLTごとに)検索するものであった。細胞内に見られるクラスI HLA結合ペプチドの大部分は、恒常的に発現されるタンパク質に由来するため、これらデータベースとUniProtプロテオームの同時的照合は、発明者らのCLT ORF配列のMS/MSスペクトルへの割り当てが正しいことを確認するのに役立つ。
【0221】
これらの研究の結果は8個の個々のペプチド(表4;配列番号1~4)を特定したが、それらは本発明者らが調達した10個の悪性黒色腫患者サンプルからの腫瘍サンプルから免疫沈降させたHLAクラスI分子に関連する。これらのペプチドは、CLT由来ORFのアミノ酸配列に対応し、公知のヒトプロテオーム(UniProt)内に存在するポリペプチド配列には対応しないものであった。本発明者らのデータセット内のCLT抗原配列番号1~4(表4)から特定された8個のペプチド中、2個はBassani-Sternbergらによって検査された患者達からの腫瘍サンプルから免疫沈降されたHLAクラスI分子と関連するものであった(実施例2及び表1及び2に概説されている、同じCLT抗原配列番号1~4からの)10個の個々のペプチドに追加されるものである。
【0222】
HLAクラスI分子に関連するこれらのペプチドの検出は、それらが由来する4個のORFが最初に悪性黒色腫組織内で翻訳され、HLAクラスI経路を通じてプロセッシングされ、最後にHLAクラスI分子との複合体内で免疫系へ提示されることを確認するものである。表4は、CLT抗原内に見られるペプチドの特性を示す。
図33~42は、表4に示すペプチドそれぞれの代表的なMS/MSスペクトルを示す。これら各図の上のパネルは、MS/MSペプチド断片プロファイルを、標準的MS/MSアノテーションと共に示しており(b:N末端断片イオン;y:C末端断片イオン;-H
2O:水損失;-NH
3:アンモニア損失;[2+]:二価帯電ペプチドイオン;pre:断片化されていない前駆体ペプチドイオン;a
n-n:内部断片イオン)、それは上記で示された、PEAKSソフトウェアによって発明者のデータセットから抽出された画像内で最も豊富な断片イオンピークである。各図の下のパネルは、断片イオンへマッピングされた線形ペプチド配列の位置を示すスペクトルのレンダリングを示す。表4のペプチドに割り当てられた高い-10lgPスコアと一致するので、これらスペクトルは、これら分析で発見されたペプチド配列(配列番号12、13、16、17、19、51、53及び54)と正確に合致する多数の断片を含む。
【0223】
少なくとも9AA(アミノ酸)長である表4のHLAクラスIに関連して検出されたペプチド全てを、NetMHCpan 4.0予測ソフトウェア(http://www.cbs.dtu.dk/services/NetMHCpan/)を使用して評価し、HLAクラスIタイプA及びBスーパータイプへのそれらの結合の予測強度を決定した。これらの予測研究の結果は、全てのペプチド(又は各完全配列内に含まれる9-mer)が、試験したスーパータイプの少なくとも1つに結合すると予測されたことを示した(表5を参照)。これらの内、多くの配列は、検査したHLAクラスIスーパータイプ内の特定のタイプへ高い信頼性(低いランクスコア%)で結合すると予測された。検出されたペプチドの全てが、患者集団内に存在すると予想されたHLAタイプへ結合すると予想された事実は、それらの検出結果と一致する。更に、発明者らのデータセットからの腫瘍サンプル内で発見された全てのペプチドは、NetMHCpan 4.0によって、患者サンプル内で検出されたHLAタイプの1つに結合すると予測された。
【0224】
腫瘍組織由来MSスペクトルの、実施例2.1で発見したペプチド配列への割り当ての更なる確実性を提供するために、これら発見した配列を有するペプチドを合成し、本発明者らのデータ中の腫瘍サンプルへ適用したのと同じ条件を使用してnUPLC-MS
2にかけた。選択したペプチドのスペクトル比較を
図43~50に示す。各図中、上のスペクトルは腫瘍サンプルに対応し(本発明者らの腫瘍組織データベースの中から-
図33~42)、下のスペクトルは同じ配列を有する合成的に調製したペプチドに対応する。検出されたイオン断片の選択したm/z値は、これらMS/MSスペクトルの上/下の各断片ピークに示される。これらの図は、断片の正確なアラインメントを明白にし(腫瘍由来及び合成ペプチド由来の断片イオン間の実験的に決定されたm/z値間のわずかな違いは、<0.05ダルトンのm/z許容範囲内に収まってる)、腫瘍組織由来の各スペクトルのCLTコード化されたペプチドに対する割り当ての信憑性を確認する。
【0225】
まとめると、表4、
図33~42及び
図43~50に示されるペプチドデータは、悪性黒色腫患者内の対応するCLT抗原の翻訳、プロセッシング及び提示の非常に強力なサポートを提供する。
【0226】
これらのCLTの癌特異性を更に確認するために、本発明者らは、37個の正常組織サンプル(10個の正常皮膚、9個の正常肺及び18個の正常乳房組織)を処理し、免疫ペプチドーム分析用に調製した。本発明者らは、これら正常組織サンプルからHLAクラスIデータセットのスペクトルを照合し、CLT抗原番号1、2、3及び4のポリペプチド配列に由来する、全ての可能なペプチド配列を検索した。CLT抗原番号1、2、3及び4由来のペプチドは、正常組織サンプルのセット内で検出されず(表6)、CLTが癌特異的発現を示すことの追加的な確認を提供した。
【0227】
要約すると、予測されたORFに由来する、この追加的免疫ペプチドーム特定は、これらのCLTが腫瘍組織内でポリペプチド(配列番号1~4;CLT抗原とも称する)へ翻訳されることを更に実証する。従って、これらCLT抗原及びそれらの断片は、その腫瘍がこれらの抗原を発現する患者の悪性黒色腫の治療のための、様々な治療的モダリティにおいて有用であることが予測される。
【0228】
(表4:悪性黒色腫腫瘍サンプルの追加的な免疫ペプチドーム分析によって特定されたペプチドのリスト、並びに、CLT抗原名及び相互参照される配列番号)
【表4】
ND-決定されなかった。
1:質量分析により特定されたHLAクラスIペプチド。
2:発明者らのデータセット(1MT1、1MT2、1MT3、2MT1、2MT2、2MT3、2MT4、2MT9、2MT10、2MT12)。
3:算出ペプチド質量。
4:質量スペクトルのPeaks(商標)プログラムエリア;複数のスペクトルが得られたペプチドについて、選択したエリア値を示す。
5:ペプチドが検出されたスペクトルの数。
6:観測質量及び算出質量の間の偏差;複数のスペクトルが得られたペプチドについて、選択したppm値を示す。
【0229】
(表5:質量分析で特定されたペプチド(長さ≧9残基)の、12個のHLAクラスIスーパータイプ対立遺伝子(HLA-A0101、HLA-A0201、HLA-A0301、HLA-A2402、HLA-A2601、HLA-B0702、HLA-B0801、HLA-B1501、HLA-B2705、HLA-B3901、HLA-B4001、HLA-B5801)への予測されたNetMHC 4.0結合、並びに、CLT抗原名及び相互参照される配列番号)
【表5】
1:照合したHLAクラスIスーパータイプへの、いずれかのランクスコアでの予測される結合。
2:<5.1%(弱い結合)のランクスコアで結合すると予測されたHLAクラスIスーパータイプの画分。
3:<2.1%(より強い結合)のランクスコアで結合すると予測されたHLAクラスIスーパータイプの画分。
4:発明者らのデータベース(1MT1、1MT2、1MT3、2MT1、2MT2、2MT3、2MT4、2MT9、2MT10、2MT12)。
【0230】
(表6:正常組織サンプルセット中の、CLT抗原1~4由来のペプチド数)
【表6】
【0231】
本明細書の実施例1、2及び2.1に示された結果は、全体又は一部が、癌ゲノムアトラス(TCGA)研究ネットワーク(http://cancergenome.nih.gov/)及び遺伝子型-組織発現(GTEx)プロジェクト(国立衛生研究所所長室の共通基金、並びにNCI、NHGRI、NHLBI、NIDA、NIMH及びNINDSによってサポートされている)によって生成されたデータに基づいている。
【0232】
(実施例3-HERVFEST)
特異的T細胞の機能拡充(FEST)技術は、MANAエピトープに反応する患者T細胞の検出に基づいて、癌患者の腫瘍細胞に見られる「突然変異関連新抗原」(MANA)レパートリー中に存在する治療関連腫瘍由来エピトープを特定するために使用されてきた(Anagnostouらの文献、Cancer Discovery 2017;Leらの文献、Science 2017;Fordeらの文献、NEJM 2018;Danilovaらの文献、CancerImmunol. Res. 2018)。実施例1、2、及び2.1(表1~6、
図1~50)で説明された方法を使用して発見されたCLT抗原への、FEST技術の適用は、癌患者中のCLT抗原に対する治療関連T細胞応答を特定するために使用できる。
【0233】
免疫曝露を受けた対象内のエピトープ特異的T細胞を特定するための他のアッセイ(例えば、ELISPOT)と同様に、「FEST」技術は、抗原提示細胞及び好適な抗原性ペプチドを含む生体外培養で、同族T細胞を活性化/増殖することによりその特異性を引き出す。この技術が他の免疫学的アッセイと異なるのは、これらの増幅された培養物(具体的には、TCR-VβCDR3領域を標的とするTCRseq)内に存在するT細胞受容体(TCR)DNA配列の次世代シーケンシングを利用して、1つの抗原(又は複数の抗原)に由来する標的ペプチドパネルからの個々のペプチドで培養された細胞内で増殖された、特異的なTCRを検出する点においてである。同じ患者の腫瘍組織へのTCRseq適用を同様に使用して、生体外で検出されたTCR/T細胞、ペプチド刺激された培養物も又、in situで癌組織内に見られる腫瘍浸潤リンパ球内にも存在するか、を示すことができる。従って、MANAFESTは、患者のT細胞によって認識されるMANAエピトープを特定するための強力な技術であり、癌患者からの正常組織及び腫瘍組織の全エクソームシーケンシングによって検出された多数の変異ペプチドの中から機能的に関連するMANAペプチドを特定できることが証明された(Leらの文献、Science 2017;Fordeらの文献、NEJM 2018;Danilovaらの文献、Cancer Immunol. Res. 2018;Smithらの文献、J Immunother Cancer 2019)。
【0234】
MANAFEST手法(Danilovaらの文献、Cancer Immunol. Res. 2018)のCLT抗原への適用は、下記のとおり実施した。本明細書ではHERVFESTと称するこの方法は、次のステップから構成される:ステップ1:選択したHLAクラスI対立遺伝子を効率的に結合するエピトープを含むと予測されるペプチドを、CLT抗原内で特定した。ステップ2:適切な悪性黒色腫患者からのPBMCを、HLAクラスIタイプによって、ステップ1で選択したペプチドライブラリとマッチさせた。ステップ3:これらの患者からのPBMCをT細胞画分及び非T細胞画分に分離した。非T細胞を患者のT細胞へ戻し、次に20~50ウェルに分割し(培養物あたり250,000 T細胞を含む)、様々なT細胞増殖因子及び個々のCLT抗原由来合成ペプチド(ステップ1/2で選択した)と共に10日間増殖させた。ステップ4:TCRseq(TCR-Vβ CDR3配列のシーケンシング)を全てのウェルについて実行し、個々のCLT抗原由来ペプチドの存在下で増幅させた(ただし、コントロールペプチドの存在下、又は、ペプチド刺激の非存在下では増幅しなかった)TCR-Vβ CDR3配列を特定した。従って、アッセイの個々のウェル内の増幅されたTCR-Vβ CDR3配列の存在が、悪性黒色腫患者内で免疫応答を惹起したCLT抗原由来ペプチドを特定する。ステップ5:同様に、TCRseqを腫瘍サンプルへ実行して、CLT抗原を有するT細胞が患者の腫瘍にホーミングするTCRを増幅するかどうかを決定してもよく、これらTCRを有するT細胞が、患者の腫瘍内のCLT抗原由来ペプチドを認識するという追加的証拠を提供する。
【0235】
HERVFESTアッセイを、CLT抗原1~4(配列番号1~4)由来のペプチドで実施した。これら研究に使用しペプチドパネル(前記ステップ1を参照)は、CLT抗原由来ペプチドのNetMHC予測をベースにし、それらペプチドは、発明者らの分析に利用可能な患者の腫瘍サンプル内で一般的に見られる8個のHLAクラスIタイプを強く結合すると予測された。これらのHERVFESTアッセイで1以上のTCRを増幅したCLT抗原由来ペプチドを表7に示す。表7は又、各患者のPBMC由来培養物で試験したCLT抗原ペプチドのHLAクラスIタイプも示す。そのPBMCがこの研究で試験されてアッセイで1以上のTCRが増幅された、患者のHLAクラスIタイプを表8に示す。
【0236】
図51パネルAは、NSCLC(非小細胞肺癌)患者に特異的なMANAペプチドでのTCR増幅を示す公開データを示す(Fordeらの文献、NEJM 2018)。縦軸は、横軸に挙げられているMANAペプチド又はコントロールペプチドの存在下で培養された細胞のウェルについてそれぞれ示された、TCR-Vβ CDR3配列の有病率を示す。MANA7を含むウェル内での増幅は、患者のT細胞レパートリーがこのペプチドへ反応するT細胞を含むことを示す。
図51のパネルB及びCは、表示されたCLT抗原ペプチド及びコントロールペプチドの存在下でインキュベートされた2人の悪性黒色腫患者由来のPBMCからの代表的なTCR増幅データを示す。パネルAと同様に、パネルB及びCで観察された特異的な増幅は、これら悪性黒色腫患者のT細胞レパートリーは特定のCLT抗原由来ペプチドと反応するT細胞を含むことを示す。パネルBは、CLT抗原1、2及び4由来の、15個のHLAクラスIA
*02ペプチドパネルで刺激した全てのウェルにおいて、悪性黒色腫患者222B由来のPBMCのLMSSFSTLASL刺激されたウェル内で検出されたTCRの頻度を示す。3個のTCR配列が増幅された。
【化1】
は、CLT抗原2由来のA
*02結合ペプチドである。パネルCは、CLT抗原1、2及び4由来の15個のHLAクラスIA
*02ペプチド、並びにCLT抗原1、2、3及び4由来の24個のHLAクラスIA
*03ペプチドパネルで刺激した全てのウェルにおいて、悪性黒色腫患者224B由来のPBMCのMVACRIKTFR刺激されたウェル内で検出されたTCRの頻度を示す。1個のTCR配列が増幅された。
【化2】
は、CLT抗原2由来のA
*03結合ペプチドである。
【0237】
これら実験で使用したコントロールペプチド/条件は下記のとおりである:CEF=CMV、EBV、及びインフルエンザペプチドの混合物;SL9、TV9及びQK1=HIV-1コントロールペプチド;ペプチドなし=ペプチドの非存在下で培養;ベースライン=培養前のT細胞。
【0238】
図52は、これらの患者で実施完了した研究中に1以上のTCRを増幅したCLT抗原1~4に対する全てのCLT抗原ペプチドのまとめを示す。各パネルは、免疫ペプチドーム分析によって検出されたペプチドを上部に置いたCLT抗原1~4のアミノ酸配列を示す(破線の下線、又は太文字で示す。実施例2及び2.1を参照)。これらの配列の下に、HERVFESTで検出したペプチド(
図51を参照)を、それらが検出された悪性黒色腫患者の番号(表8)及び標的としたHLAクラスIタイプとともに表示する。
【0239】
各HERVFEST検出の特徴は、下記のとおりに定義する。
・非装飾文字:単一のTCRの有意な増幅
・太文字:複数のTCRの有意な増幅
・下線付き斜体文字:他のウェル内でも検出された単一のTCRの有意な増幅
・下線付き太文字:複数のTCRの有意な増幅であり、そのうちの少なくとも1つは他のウェル内でも検出された。
【0240】
これらの結果は、CLT抗原1~4が悪性黒色腫患者内に存在すること、及び、これらCLT抗原に由来するペプチドがこれらの悪性黒色腫患者内で特異的にT細胞応答を惹起することの強力な証拠を提供し、悪性黒色腫治療のための治療的介入の標的としてのこれらCLT抗原の価値を確認するものである。
【0241】
(表7:HERVFESTアッセイにおいて1以上のTCRを増幅したCLT抗原由来ペプチド)
【表7】
【0242】
(表8:HERVFESTアッセイで使用された悪性黒色腫患者PBMCの特徴)
【表8】
【0243】
(実施例4-CLT抗原に特異的な高親和性T細胞は、正常対象のT細胞レパートリーから削除されていなかったことを示すためのアッセイ)
ELISPOTアッセイは、CLT抗原特異的CD8 T細胞が健康な個人の正常T細胞レパートリー内に存在することを示すために使用してもよいので、それがこれら患者のナイーブ及び胸腺組織内での癌特異的CLT抗原の発現による中枢性トレランスによって削除されていなかったことを示すためにも使用できる。この種のELISPOTアッセイは、複数のステップを含む。ステップ1:CD8 T細胞及びCD14単球を、正常な献血者の末梢血から単離し、これら細胞をHLA種類分けして、試験する特定のCLT抗原にマッチさせる。CD8 T細胞は、メモリーマーカーCD45ROに対する磁気標識抗体を使用して、ナイーブサブタイプ及びメモリーサブタイプに更に細分化できる。ステップ2:CD14単球を、個々の又はプールしたCLT抗原ペプチドで3時間パルス後、CD8 T細胞と14日間共培養する。ステップ3:増殖したCD8 T細胞をこれらの培養物から分離し、ペプチドでパルスした新鮮単球で一晩再刺激する。これらのペプチドには;個々のCLT抗原ペプチド、無関係なコントロールペプチド、又は感染性(例えば、CMV、EBV、インフルエンザ、HCV)若しくは自己(例えば、Mart-1)抗原に対して強力な応答を惹起することが公知のペプチド、が含まれてもよい。再刺激は、抗インターフェロンガンマ(IFNγ)抗体でコーティングされたプレート上で行われる。この抗体は、ペプチド刺激されたT細胞によって分泌されるIFNγを捕捉する。一晩活性化の後、細胞をプレートから洗い流し、プレートに捕捉されたIFNγを更なる抗IFNγ抗体及び標準的な発色色素で検出する。IFNγ産生細胞が初めからプレート上に存在した場所には、ダークスポットが残る。このアッセイから得られるデータには、スポット数、スポットサイズの中央値、及びスポット強度の中央値が含まれる。これらは、IFNγ産生T細胞の頻度及び細胞あたりのIFNγ量の測定である。そして更に、CLT抗原に対する応答の大きさの測定を、スポット数又はスポットサイズ中央値として測定された特異的応答を、特異的ペプチドを含まない単球に対するバックグラウンド応答で割ったものである、刺激指数(SI)から導き出すことができる。刺激強度の評価基準は、スポット数の刺激指数にスポット強度の刺激指数を掛けることによって導き出す。この方法による、CLT抗原に対する応答及びコントロール抗原に対する応答の比較を使用すると、ナイーブ対象がCLT抗原反応性T細胞の強力なレパートリーを含むことを示すことができ、それはCLT抗原ベースの免疫原性製剤でのワクチン接種によって拡大できる。表9は、HLAマッチした正常な献血者からの、有意なCD8T細胞応答を誘導したCLT抗原由来ペプチドのリストを提供する。結果は
図53~56に示す。横棒はデータの平均値を表す。統計的有意性は、クラスカル・ウォリス検定の一元配置分散分析法を使用して測定し、ダン補正で反復測定を補正した。
図53は、CLT抗原1(図中のCLT001)からのHLA-A
*0201拘束ペプチドに対する、正常な献血者からの有意なCD8T細胞応答を示す。
図54に示した例は、CLT抗原2(図中のCLT002)由来の、同様にHLA-A
*0201によって拘束されているペプチドに対する、正常なドナーからのCD8応答を示す。
図55は、CLT抗原4(図中のCLT004)からのHLA-A
*0201拘束ペプチドに対する、正常な献血者からの有意なCD8T細胞応答を示す。
図56は、CLT抗原1及び4(図中のCLT001及びCLT004)からのHLA-B
*0702拘束ペプチドに対する、メモリーCD45RO陽性CD8 T細胞(パネルA及びC)における応答の欠如を示す。対照的に、同じドナーからのナイーブCD45RO陰性CD8 T細胞は、CLT001及びCLT004(
図56、パネルB及びD)の両方からのペプチドに対して有意に応答した。
【0244】
(表9:HLAマッチした正常献血者からの有意なCD8 T細胞応答を誘導するCLT抗原由来ペプチド)
【表9】
【0245】
(実施例5-CLT抗原ペプチドペンタマーでの反応性T細胞の染色)
健康なドナー及び悪性黒色腫患者内のCLT抗原に特異的な循環性CD8T細胞の存在及び活性は、HLAクラスI/ペプチドペンタマー(「ペンタマー」)染色及び/又はインビトロ殺傷アッセイを使用して測定できる。従って、実施例1、2及び2.1(表1~6、
図1~50)で説明された方法を使用して発見されたCLT抗原へのこれらの手法の適用は、癌患者内のCLT抗原に対する治療関連T細胞応答の存在を示すために使用できる。
【0246】
これらの研究のために、健康なドナー又は患者の血液から単離したCD8 T細胞を、様々な培養方法、例えば抗CD3及び抗CD28でコーティングされた微小ビーズ並びにインターロイキン-2を使用して増殖する。増殖した細胞は次に、CLTペプチドペンタマーを使用して、そのT細胞受容体の特異的なCLT抗原反応性の有無を染色することができ、そのペンタマーは、HLA分子のペプチド結合溝内の関連CLT抗原ペプチドに結合する、HLAクラスI分子のペンタマーからなるものである。結合は、ペンタマー構造のコイルドコイル多量体化ドメインに特異的な、フィコエリトリン又はアロフィコシアニンがコンジュゲートした抗体断片を用いた検出によって測定する。このペンタマー染色に加えて更に、メモリーマーカーCD45RO及びリソソーム放出マーカーCD107a等の表面マーカーで、照合することもできる。ペンタマー陽性と特異的な表面マーカーとを連携させると、ペンタマー反応性T細胞集団の数及び状態(メモリーVSナイーブ/幹)の両方を推測するために使用できる。
【0247】
ペンタマー染色した細胞は又、蛍光活性化セルソーター(FACS)を使用して選別及び精製してもよい。選別した細胞は次に、インビトロ殺傷アッセイで、それらが標的細胞を殺傷する能力について更に試験することもできる。これらのアッセイは、CD8T細胞集団及び、蛍光標識された標的細胞集団を含む。この場合、CD8集団は、CLT抗原特異的であるもの、又は、ペンタマー選別されたCD8 T細胞であって、Mart-1等の強力な殺傷応答を誘導することが知られている陽性コントロール抗原に特異的なもの、のいずれかである。これらの研究の標的とする細胞には、ペプチドでパルスされ、HLA-A
*02を発現するT2細胞、ペプチドでパルスされ、HLA-A
*02,03若しくはB
*07でトランスフェクトされたC1R細胞、又は予めCLT/CLT抗原を発現することが示されている悪性黒色腫細胞株、又は、患者の腫瘍細胞が含まれてもよい。T2又はC1R細胞をパルスするために使用されるペプチドには、CLT抗原ペプチド又は陽性コントロールペプチドが含まれる。標的細胞は、カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE、細胞増殖色素)で蛍光標識してもよく、細胞死は7AADの取り込みによって示される。この手法においては、CD8 T細胞が介在するアポトーシスによって標的細胞が殺されると、それらは赤色蛍光を獲得し、赤/緑の二重陽性になる。従って、この殺傷アッセイを、ペンタマー選別したCLT抗原特異的CD8 T細胞へ適用することは、悪性黒色腫患者又は健康なドナーT細胞の、生体外培養内でのCLT抗原特異的T細胞の細胞傷害性活性を列挙するために使用できる。
図57は、CLT抗原1、2及び4(図中のCLT001、CLT002及びCLT004)由来のペプチドでの、健康なドナーCD8T細胞のHLAペンタマー染色を示す。
図58は、増殖されたCLT004ペンタマー選別された細胞がCLT004でパルスしたC1R-B7標的細胞を殺傷することを示す。ペプチドでパルスしたC1R-B7細胞の有意な殺傷は、エフェクターと標的細胞との比率が3:1及び1:1の場合に明らかである。
【0248】
(実施例6-マウス免疫原性の研究)
CLT抗原の免疫原性を示すために、マウスを1以上のCLT抗原を発現する複製欠損アデノウイルスベクターで接種し、これらのマウスから得たT細胞を、IFNγ ELISPOTアッセイ(Mennuniらの文献、Int.J. Cancer, 2005)を使用してCLT抗原特異的T細胞の存在について試験することができる。簡略に説明すると、マウスにCLT抗原を発現する組換えアデノウイルスを接種し、適切な時点で人道的に安楽死させ、脾臓細胞の調製物を、ネズミ科IFNγに対するモノクローナル抗体で誘導体化したマルチウェルディッシュのウェル内に、CLT抗原に対応する重複ペプチドの存在下(又は非存在下)でロードする。適切な時間経過後、固定化されたIFNγを異なるモノクローナル抗体で染色すると、細胞/スポットの数を数え、次にそれらをウェル内にロードした細胞総数と比較し、CLT抗原反応性T細胞の定量的読み取りが可能になる。
【0249】
(実施例7-悪性黒色腫細胞内でのCLT発現の検証アッセイ)
a)悪性黒色腫細胞株内でのCLT発現のqRT-PCR検証
定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)は、所与の生物学的サンプルから抽出されたRNA中に存在する特定の転写産物量を決定するための広く普及した技術である。特定の核酸プライマー配列を目的の転写産物に対して設計し、次に(subeqeuntly)プライマー間領域を一連のサーマルサイクリング反応を通して増幅し、インターカレーター色素(SYBR Green)を使用して蛍光的に定量化する。プライマーペアをCLTに対して操作し、悪性黒色腫細胞株から抽出したRNAに対してアッセイした。非悪性黒色腫細胞株を陰性コントロールとして利用した。具体的には、悪性黒色腫細胞株COLO 829(ATCC参照番号CRL-1974)、MeWo(ATCC参照番号HTB-65)、SH-4(ATCC参照番号CRL-7724)及びコントロール細胞株HepG2(肝細胞性癌種、ATCC参照番号HB-8065)、Jurkat(T細胞白血病、ATCC参照番号TIB152)及びMCF7(腺癌、ATCC参照番号HTB-22)をインビトロで増殖し、RNAを1×106個の瞬間凍結細胞から抽出し、cDNAに逆転写した。標準的技術に従いSYBR Green検出を伴うqRT-PCR分析を、各CLTの2つの領域に対して設計したプライマー及び参照遺伝子を使用して実施した。相対的定量値(RQ)を次のように算出した:
RQ=2[Ct(参照)-Ct(標的)]
。
【0250】
これらの実験結果を
図59に示す。パネルAは、2個のプライマーセット(1+2及び3+4)を使用したqRT-PCRアッセイの結果であり、3個の悪性黒色腫細胞株及び4個の非悪性黒色腫細胞株から抽出されたRNA上のCLT抗原1をコードするCLT(配列番号33)の異なる領域を標的としたものを示す。パネルBは、2個のプライマーセット(5+6及び7+8)を使用したqRT-PCRアッセイの結果であり、3個の悪性黒色腫細胞株及び4個の非悪性黒色腫細胞株から抽出されたRNA上のCLT抗原2をコードするCLT(配列番号34)の異なる領域を標的としたものを示す。パネルCは、2個のプライマーセット(9+10及び11+12)を使用したqRT-PCRアッセイの結果であり、3個の悪性黒色腫細胞株及び4個の非悪性黒色腫細胞株から抽出されたRNA上のCLT抗原3/4をコードするCLT(配列番号35)の異なる領域を標的としたものを示す。これらの結果は、非悪性黒色腫細胞と比較して、悪性黒色腫細胞株から抽出したRNA中のCLTが特異的に発現することを確認した。このCLTは、試験した悪性黒色腫細胞株それぞれで検出された。
【0251】
b) in situ悪性黒色腫細胞内でのCLT発現のRNAScope検証
in situハイブリダイゼーション(ISH)法の転写産物の発現分析は、標本の病理組織学的状況下で所与の転写産物の存在及び発現レベルの視覚化を可能にする。従来のRNA ISHアッセイにも、所望のRNA配列の短鎖に特異的なオリゴヌクレオチドプローブを使用して、ネイティブRNA分子をin situで認識することが含まれており、それは、抗体又は酵素をベースにした比色反応の組み合わせによって生成されるシグナルによって視覚化されるものである。RNAScopeは、最近開発された、より高度なプローブケミストリーを備えたin situハイブリダイゼーションに基づく技術であり、生成されるシグナルの特異性を確保し、かつ標的転写産物の高感度で、単分子の視覚化(visulation)を可能にする(Wangらの文献、2012 J Mol Diagn. 14(1):22-29)。転写産物分子の陽性染色は、所与の細胞内に小さな赤点として現れ、複数の点は複数の転写物が存在することを示す。
【0252】
RNAScopeプローブを、CLTに対して設計し、12個のホルマリン固定パラフィン包埋した皮膚の悪性黒色腫腫瘍コアの切片をアッセイした。発現シグナルのスコアリングは、下記のとおりであり、各コアからの代表的画像上で行った:
・CLTプローブの陽性染色での細胞%の評価は、最も近い10に切り上げ
・所与の切片全体にわたる発現の細胞あたりの評価レベルは次の通り:
・0=染色なし
・1=細胞あたり1~2ドット
・2=細胞あたり2~6ドット
・3=細胞あたり6~10ドット
・4=細胞あたり10を超えるドット。
【0253】
各CLTのそれぞれの発現は、多数の異なる患者の腫瘍コアで検出され、分析した各患者のコアにおいて別々に、腫瘍由来RNAseqデータからのCLT発見を検証し、所定の複数サンプルにわたって腫瘍組織内の発現の均一性を確認し、更に、少なくとも1個のCLTの存在をハイライトした。
【0254】
(表10-悪性黒色腫患者の組織コア内でのRNAScopeのスコアリング)
【表10】
【0255】
本明細書及び下記特許請求の範囲を通じて、文脈上別段の定めがない限り、用語「含む」、並びに「含んだ」及び「含んでいる」等の変形は、記載された整数、ステップ、整数群又はステップ群を含むが、任意の他の整数、ステップ、整数群又はステップ群を除外するものではないことを意味すると理解されるだろう。
【0256】
本発明の明細書を通じて挙げられている全ての特許、特許出願及び参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている。
本発明は、好ましい及びより好ましいグループ、及び、好適及びより好適なグループ、並びに前記に列挙された実施態様のグループの全ての組み合わせを包含するものである。
本件出願は、以下の態様の発明を提供する。
(態様1)
下記から選ばれた配列を含む単離ポリペプチド:
(c)配列番号1~10のいずれか1つの配列;並びに、
(d)(a)の配列の変異体;及び
(c)(a)の配列の免疫原性断片。
(態様2)
配列番号11~32及び51~78のいずれか一つから選ばれた配列を含むか、又は該配列からなる態様1に記載の単離ペプチド。
(態様3)
態様1又は態様2に記載の単離ポリペプチドであって、第二のポリペプチド、又は、(i)態様1若しくは態様2に記載の、1以上の他のポリペプチド、(ii)悪性黒色腫関連抗原である他のポリペプチド、(iii)免疫応答を増強できるポリペプチド配列(即ち、免疫賦活配列)、及び、(iv)抗原エピトープへのCD8+T細胞応答を増加させる強力なCD4+補助を提供することのできる(例えばユニバーサルCD4ヘルパーエピトープを含む)ポリペプチド配列、から選ばれた更なるポリペプチド、へ融合されている、前記単離ポリペプチド。
(態様4)
態様1~3のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードする単離された核酸。
(態様5)
DNAである、態様4に記載の核酸。
(態様6)
配列番号33~40及び41~50のいずれか一つから選ばれた配列を含むか、又は該配列からなる態様5に記載の核酸。
(態様7)
ヒト宿主細胞内での発現のために最適化されたコドンである、態様6に記載の核酸。
(態様8)
RNAである、態様4に記載の核酸。
(態様9)
人工核酸配列である態様4、5、7又は8に記載の核酸。
(態様10)
態様4~9のいずれか1項に記載の核酸を含む、ベクター。
(態様11)
ヒト宿主細胞において翻訳的に活性なRNA分子の転写を可能にするのに適した調節エレメントをコードするDNAを含む、態様10に記載のベクター。
(態様12)
ウイルスベクターである、態様10又は態様11に記載のベクター。
(態様13)
アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アルファウイルス、ヘルペスウイルス、アレナウイルス、麻疹ウイルス、ポックスウイルス、パラミクソウイルス、レンチウイルス及びラブドウイルスベクターである、態様12に記載のベクター。
(態様14)
態様1~13のいずれか1項に記載のポリペプチド、核酸又はベクターを、医薬として許容し得るキャリアと共に含む、免疫原性医薬組成物。
(態様15)
態様1~13のいずれか1項に記載のポリペプチド、核酸又はベクターを、医薬として許容し得るキャリアと共に含む、ワクチン組成物。
(態様16)
1以上の免疫賦活剤を含む、態様14又は態様15に記載の組成物。
(態様17)
前記免疫賦活剤は、アルミニウム塩、サポニン、免疫賦活性オリゴヌクレオチド、水中油型エマルジョン、アミノアルキルグルコサミニド4-リン酸、リポ多糖類及びその誘導体及び他のTLR4リガンド、TLR7リガンド、TLR8リガンド、TLR9リガンド、IL-12、並びにインターフェロン、から選ばれる、態様16に記載の組成物。
(態様18)
非経口投与に適した無菌組成物である、態様14~17のいずれか1項に記載の組成物。
(態様19)
医薬で使用するための、態様1~18のいずれか1項に記載のポリペプチド、核酸、ベクター又は組成物。
(態様20)
ヒトにおける免疫応答を上昇させる方法であり、該ヒトへ態様1~18のいずれか1項に記載のポリペプチド、核酸、ベクター又は組成物を投与することを含む、前記方法。
(態様21)
前記免疫応答は、配列番号1~10並びにそのいずれか1つの変異体及び免疫原性断片から選ばれた配列を発現する癌性腫瘍に対して、上昇するものである、態様20に記載の方法。
(態様22)
ヒトにおける免疫応答の上昇に使用するための態様1~18のいずれか1項に記載のポリペプチド、核酸、ベクター又は組成物。
(態様23)
前記免疫応答は、配列番号1~10並びにそのいずれか1つの免疫原性断片又は変異体から選ばれた対応する配列を発現する癌性腫瘍に対して、上昇するものである、態様22に記載のポリペプチド、核酸、ベクター又は組成物。
(態様24)
ヒト癌患者の治療方法であって、該癌細胞が配列番号1~10並びにそのいずれか1つの免疫原性断片及び変異体から選ばれた配列を発現する治療方法、又は、ヒトを癌罹患から予防する方法であって、該癌は配列番号1~10並びにそのいずれか1つの免疫原性断片及び変異体から選ばれた配列を発現するであろう予防方法であり、態様1~18のいずれか1項に記載の、対応するポリペプチド、核酸、ベクター又は組成物を該ヒトへ投与することを含む、前記方法。
(態様25)
ヒト癌の治療又は予防に使用するための態様1~18のいずれか1項に記載のポリペプチド、核酸、ベクター又は組成物であって、該癌細胞が配列番号1~10及びそのいずれか1つの免疫原性断片から選ばれた対応する配列を発現するものである、前記ポリペプチド、核酸、ベクター又は組成物。
(態様26)
癌罹患ヒト由来のT細胞を生体外での刺激及び/又は増幅に使用するためのものであり、該刺激及び/又は増幅されたT細胞は、次に、該ヒトの癌を治療するために該ヒトへ再導入される、態様1~18のいずれか1項に記載のポリペプチド、核酸、ベクター又は組成物。
(態様27)
ヒト癌の治療方法であって、該癌細胞が配列番号1~10並びにそのいずれか1つの免疫原性断片及び変異体から選ばれた配列を発現するものであり、該方法は、該ヒトから、任意で抗原提示細胞と共に、少なくともT細胞を含む白血球集団を取り出すこと、該T細胞を、態様1~18のいずれか1項に記載の対応するポリペプチド、核酸、ベクター又は組成物の存在下で、刺激及び/又は増幅すること、並びに、該白血球の一部又は全てであって、少なくとも刺激及び/又は増幅されたT細胞を、該ヒトへ再導入すること、を含む前記方法。
(態様28)
前記癌は悪性黒色腫、例えば皮膚悪性黒色腫である、態様21及び23~27のいずれか1項に記載の方法、又は、使用のためのポリペプチド、核酸、ベクター若しくは組成物。
(態様29)
配列番号1~10並びにそのいずれか1つの免疫原性断片及び変異体から選ばれた配列を発現する癌細胞に対して細胞傷害性であるT細胞集団の調製方法であって、(a)T細胞を、任意で抗原提示細胞と共に、癌患者から得ること、並びに、(ii)生体外で該T細胞集団を、態様1~18のいずれか1項に記載の対応するポリペプチド、核酸、ベクター又は組成物で刺激及び増幅すること、を含む前記方法。
(態様30)
態様29の方法から得ることのできるT細胞集団。
(態様31)
態様1~18のいずれか1項に記載のポリペプチド、核酸、ベクター又は組成物で刺激された、T細胞。
(態様32)
態様1~18のいずれか1項に記載のポリペプチド、核酸、ベクター若しくは組成物を生体外でロードして改変された、又は態様1~3のいずれか1項に記載のポリペプチドを発現するように遺伝子操作された、抗原提示細胞。
(態様33)
樹状細胞である、態様32の抗原提示細胞。
(態様34)
態様1~18のいずれか1項に記載のポリペプチド、核酸、ベクター若しくは組成物をロードした又は態様1~3のいずれか1項に記載のポリペプチドを発現するように遺伝子操作された細胞から産生されたポリペプチドでロードされた、エクソソーム。
(態様35)
態様30~34のいずれか1項に記載のT細胞集団、T細胞、抗原提示細胞又はエクソソームを、医薬として許容し得るキャリアと共に含む医薬組成物。
(態様36)
医薬で使用するための、態様30~34のいずれか1項に記載のT細胞集団、T細胞、抗原提示細胞又はエクソソーム。
(態様37)
癌罹患ヒトの治療方法であって、該癌細胞が配列番号1~10並びにそのいずれか1つの免疫原性断片及び変異体から選ばれた配列を発現する治療方法、又は、ヒトを癌罹患から予防する方法であって、該癌細胞が配列番号1~10並びにそのいずれか1つの免疫原性断片及び変異体から選ばれた配列を発現するであろう予防方法であり、態様30~35のいずれか1項に記載のT細胞集団、T細胞、抗原提示細胞、エクソソーム又は組成物を該ヒトへ投与することを含む、前記方法。
(態様38)
ヒト癌の治療又は予防に使用するための態様30~35のいずれか1項に記載のT細胞集団、T細胞、抗原提示細胞、エクソソーム又は組成物であって、該癌細胞が配列番号1~10及びそのいずれか1つの免疫原性断片から選ばれた対応する配列を発現するものである、前記T細胞集団、T細胞、抗原提示細胞、エクソソーム又は組成物。
(態様39)
前記癌は悪性黒色腫、例えば皮膚悪性黒色腫である、態様29、37及び38のいずれか1項に記載の、調製方法、方法、又は、使用のためのT細胞集団、T細胞、抗原提示細胞、エクソソーム若しくは組成物。
(態様40)
態様1~3のいずれか1項に記載のポリペプチドに対して免疫特異的である、単離された抗原結合ポリペプチド。
(態様41)
モノクローナル抗体又はその断片である、態様40に記載の抗原結合ポリペプチド。
(態様42)
細胞傷害性成分と結合している、態様40又は態様41に記載の抗原結合ポリペプチド。
(態様43)
医薬で使用するための、態様40~42のいずれか1項に記載の抗原結合ポリペプチド。
(態様44)
態様40~42のいずれか1項に記載の抗原結合ポリペプチドを、医薬として許容し得るキャリアと共に含む医薬組成物。
(態様45)
癌罹患ヒトの治療方法であって、該癌細胞が配列番号1~10並びにそのいずれか1つの免疫原性断片及び変異体から選ばれた配列を発現する治療方法、又は、ヒトを癌罹患から予防する方法であって、該癌細胞が配列番号1~10並びにそのいずれか1つの免疫原性断片及び変異体から選ばれた配列を発現するであろう予防方法であり、態様40~42及び44のいずれか1項に記載の抗原結合ポリペプチド又は組成物を該ヒトへ投与することを含む、前記方法。
(態様46)
ヒト癌の治療又は予防に使用するための態様40~42及び44のいずれか1項に記載の抗原結合ポリペプチド又は組成物であって、該癌細胞が配列番号1~10及びそのいずれか1つの免疫原性断片から選ばれた対応する配列を発現するものである、前記抗原結合ポリペプチド又は組成物。
(態様47)
前記癌は悪性黒色腫、例えば皮膚悪性黒色腫である、態様45又は態様46に記載の方法、抗原結合ポリペプチド若しくは組成物。
(態様48)
態様1~3のいずれか1項に記載のポリペプチド又はその一部であるHLA結合ポリペプチドに免疫特異的な、単離された抗原結合ポリペプチド。
(態様49)
T細胞受容体又はその断片である、態様48に記載の抗原結合ポリペプチド。
(態様50)
対象内の細胞傷害性細胞又は他の免疫コンポーネントへ結合可能な別のポリペプチドへ結合している、態様48又は態様49に記載の抗原結合ポリペプチド。
(態様51)
その表面上に、態様48~50のいずれか1項に記載の抗原結合ポリペプチドを発現するように操作された、細胞傷害性細胞。
(態様52)
T細胞である、態様51に記載の細胞傷害性細胞。
(態様53)
医薬で使用するための、態様51又は態様52に記載の細胞傷害性細胞。
(態様54)
態様51又は態様52に記載の細胞を含む、医薬組成物。
(態様55)
ヒト癌患者の治療方法であって、該癌細胞が配列番号1~10並びにそのいずれか1つの免疫原性断片及び変異体から選ばれた配列を発現する治療方法、又は、ヒトを癌罹患から予防する方法であって、該癌は配列番号1~10並びにそのいずれか1つの免疫原性断片及び変異体から選ばれた配列を発現するであろう予防方法であり、態様51又は態様52に記載の細胞を該ヒトへ投与することを含む、前記方法。
(態様56)
ヒト癌の治療又は予防に使用するための態様51又は態様52に記載の細胞傷害性細胞であって、該癌細胞が配列番号1~10及びそのいずれか1つの免疫原性断片から選ばれた対応する配列を発現するものである、前記細胞傷害性細胞。
(態様57)
ヒトが癌に罹患しているかを診断する方法であって:
該癌細胞が配列番号1~10及びそのいずれか1つの免疫原性断片若しくは変異体から選ばれたポリペプチド配列、又は該ポリペプチド配列をコードする核酸を発現するかを決定するステップ、並びに、該ポリペプチド又は対応する核酸が該癌細胞内で過剰発現している場合に、該ヒトは癌に罹患していると診断するステップ、を含む前記方法。
(態様58)
皮膚悪性黒色腫である癌罹患ヒトを診断する方法であって、該癌細胞が配列番号2、6、7、8及び9並びにその免疫原性断片若しくは変異体のいずれか1つのポリペプチド配列、又は該ポリペプチド配列をコードする核酸を発現するかを決定するステップ、並びに、該ポリペプチド又は対応する核酸が該癌細胞内で過剰発現している場合に、該ヒトは皮膚悪性黒色腫である癌に罹患していると診断するステップ、を含む前記方法。
(態様59)
皮膚悪性黒色腫又はブドウ膜悪性黒色腫である、癌罹患ヒトを診断する方法であって、該癌細胞が配列番号1、3、4、5及び10並びにそのいずれか1つの免疫原性断片若しくは変異体から選ばれたポリペプチド配列、又は該ポリペプチド配列をコードする核酸を発現するかを決定するステップ;並びに、該ポリペプチド又は対応する核酸が該癌細胞内で過剰発現している場合に、該ヒトは皮膚悪性黒色腫又はブドウ膜悪性黒色腫である癌に罹患していると診断するステップ、を含む前記方法。
(態様60)
癌罹患ヒトの治療方法であって:
(a)該癌細胞が配列番号1~10及びそのいずれか1つの免疫原性断片若しくは変異体から選ばれたポリペプチド配列、又は該ポリペプチドをコードする核酸(例えば、配列番号33~40及び41~50の配列から選ばれるもの)を発現するかを決定するステップ;並びに、もし発現するならば、
(b)該ヒトへ、態様1~18、30~35、40~42、44、50、51及び53のいずれか1項に記載の、対応するポリペプチド、核酸、ベクター、組成物、T細胞集団、T細胞、抗原提示細胞、エクソソーム、抗原結合ポリペプチド又は細胞傷害性細胞を投与するステップ、
を含む前記方法。
(態様61)
癌罹患ヒトの腫瘍から単離された、下記から選ばれた配列を含むポリペプチドの使用:
(a)配列番号1~10のいずれか1つの配列;若しくは
(b)(a)の配列の変異体;及び、
(c)(a)の配列の免疫原性断片、
又は、該ポリペプチドをコードする核酸の使用であって、該ヒトが、態様1~18、30~35、40~42、44、51、52及び54のいずれか1項に記載の、対応するポリペプチド、核酸、ベクター、組成物、T細胞集団、T細胞、抗原提示細胞、エクソソーム、抗原結合ポリペプチド若しくは細胞傷害性細胞、を含むワクチンによる治療に適しているであろうかを決定するためのバイオマーカーとしての使用。
(態様62)
前記癌は悪性黒色腫、例えば皮膚悪性黒色腫である、態様60又は態様61に記載の方法又は使用。
(態様63)
態様21及び23~27のいずれか1項に記載の方法、又は、使用のためのポリペプチド、核酸、ベクター若しくは組成物であって、該ポリペプチドが下記から選ばれた配列を含み:
(a)配列番号1、3、4、5及び10のいずれか1つの配列;並びに
(b)(a)の配列の変異体;及び
(c)(a)の配列の免疫原性断片、
かつ例えば、該ポリペプチドは、配列番号11~14、17~18、19、20~22、30~32、51~57、67~74及び76~77のいずれか一つから選ばれた配列を含むか、又はその配列からなり、かつ例えば、該核酸は、配列番号33、35、36若しくは40のいずれか一つから選ばれた、又は配列番号41、43、44、45及び50のいずれか一つから選ばれた配列を含むか、又はその配列からなり;かつ
該癌はブドウ膜悪性黒色腫である、前記方法又は使用のためのポリペプチド、核酸、ベクター若しくは組成物。
(態様64)
態様45に記載の方法、又は態様46に記載の使用のための抗原結合ポリペプチド若しくは組成物であって、該ポリペプチドは、下記から選ばれた配列を含み:
(a)配列番号1、3、4、5及び10のいずれか1つの配列;並びに
(b)(a)の配列の変異体;及び、
(c)(a)の配列の免疫原性断片、
かつ例えば、該ポリペプチドは、配列番号11~14、17~18、19、20~22、30~32、51~57、67~74及び76~77のいずれか一つから選ばれた配列を含むか、又はその配列からなり、かつ例えば、該核酸は、配列番号33、35、36若しくは40のいずれか一つから選ばれた、又は配列番号41、43、44、45及び50のいずれか一つから選ばれた配列を含むか、又はその配列からなり;かつ
該癌はブドウ膜悪性黒色腫である、前記方法又は使用のための抗原結合ポリペプチド若しくは組成物。
(態様65)
態様29、37及び38のいずれか1項に記載の調製方法、方法、又は使用のためのT細胞集団、T細胞、抗原提示細胞、エクソソーム若しくは組成物であって、該ポリペプチドが下記から選ばれた配列を含み:
(a)配列番号1、3、4、5及び10のいずれか1つの配列;並びに
(b)(a)の配列の変異体;及び、
(c)(a)の配列の免疫原性断片、
かつ例えば、該ポリペプチドは、配列番号11~14、17~18、19、20~22、30~32、51~57、67~74及び76~77のいずれか一つから選ばれた配列を含むか、又はその配列からなり、かつ例えば、該核酸は、配列番号33、34、36若しくは40のいずれか一つから選ばれた、又は配列番号41、43、44、45及び50のいずれか一つから選ばれた配列を含むか、又はその配列からなり;かつ
該癌はブドウ膜悪性黒色腫である、前記調製方法、方法、又は使用のためのT細胞集団、T細胞、抗原提示細胞、エクソソーム若しくは組成物。
(態様66)
態様60又は態様61に記載の方法又は使用であって、該ポリペプチドが下記から選ばれた配列を含み:
(a)配列番号1、3、4、5及び10のいずれか1つの配列;並びに
(b)(a)の配列の変異体;及び、
(c)(a)の配列の免疫原性断片、
かつ例えば、該ポリペプチドは、配列番号11~14、17~18、19、20~22、30~32、51~57、67~74及び76~77のいずれか一つから選ばれた配列を含むか、又はその配列からなり、かつ例えば、該核酸は、配列番号33、35、36若しくは40のいずれか一つから選ばれた、又は配列番号41、43、44、45及び50のいずれか一つから選ばれた配列を含むか、又はその配列からなり;かつ
該癌はブドウ膜悪性黒色腫である、前記方法又は使用。
(態様67)
配列番号1、2、3及び4の配列から選ばれた2以上(例えば、2、3又は4)の配列;又は、該配列それぞれに関しての、該配列の変異体若しくは該配列の免疫原性断片、を含む態様3に記載の融合ポリペプチド。
(態様68)
下記を含む態様67に記載の融合ポリペプチド:
(i)下記から選ばれた配列:
(a)配列番号1の配列;並びに
(b)(a)の配列の変異体;及び
(c)(a)の配列の免疫原性断片;
(ii)下記から選ばれた配列:
(a)配列番号2の配列;並びに
(b)(a)の配列の変異体;及び
(c)(a)の配列の免疫原性断片;
(iii)下記から選ばれた配列:
(a)配列番号3の配列;並びに
(b)(a)の配列の変異体;及び
(c)(a)の配列の免疫原性断片;並びに
(iv)下記から選ばれた配列:
(a)配列番号4の配列;並びに
(b)(a)の配列の変異体;及び
(c)(a)の配列の免疫原性断片。
(態様69)
配列番号1、2、3及び4の配列を含む、態様68に記載の融合ポリペプチド。
(態様70)
下記を含む態様68に記載の融合ポリペプチド:
(i)下記から選ばれた配列:
(a)配列番号1の配列;並びに
(b)(a)の配列の変異体;及び
(c)(a)の配列の免疫原性断片;
(ii)下記から選ばれた配列:
(a)配列番号2の配列;並びに
(b)(a)の配列の変異体;及び
(c)(a)の配列の免疫原性断片;並びに
(iii)下記から選ばれた配列:
(a)配列番号4の配列;並びに
(b)(a)の配列の変異体;及び
(c)(a)の配列の免疫原性断片。
(態様71)
配列番号1、2及び4の配列を含む、態様70に記載の融合ポリペプチド。
(態様72)
態様67~71のいずれか1項に記載の融合ポリペプチドをコードする、単離された核酸。
(態様73)
DNAである、態様72に記載の核酸。
(態様74)
態様73に記載の核酸を含むベクター。
(態様75)
ヒト宿主細胞において翻訳的に活性なRNA分子の転写を可能にするのに適した調節エレメントをコードするDNAを含む、態様73に記載のベクター。
(態様76)
ウイルスベクターである態様74又は態様75に記載のベクター。
【0257】
(配列表)
配列番号1(CLT抗原1のポリペプチド配列)
【化3】
配列番号2(CLT抗原2のポリペプチド配列)
【化4】
配列番号3(CLT抗原3のポリペプチド配列)
【化5】
配列番号4(CLT抗原4のポリペプチド配列)
【化6】
配列番号5(CLT抗原5のポリペプチド配列)
【化7】
配列番号6(CLT抗原6のポリペプチド配列)
【化8】
配列番号7(CLT抗原7のポリペプチド配列)
【化9】
配列番号8(CLT抗原8のポリペプチド配列)
【化10】
配列番号9(CLT抗原9のポリペプチド配列)
【化11】
配列番号10(CLT抗原10のポリペプチド配列)
【化12】
配列番号11(CLT抗原1由来ペプチド配列)
【化13】
配列番号12(CLT抗原1由来ペプチド配列)
【化14】
配列番号13(CLT抗原1由来ペプチド配列)
【化15】
配列番号14(CLT抗原1由来ペプチド配列)
【化16】
配列番号15(CLT抗原2由来ペプチド配列)
【化17】
配列番号16(CLT抗原2由来ペプチド配列)
【化18】
配列番号17(CLT抗原3由来ペプチド配列)
【化19】
配列番号18(CLT抗原3由来ペプチド配列)
【化20】
配列番号19(CLT抗原4由来ペプチド配列)
【化21】
配列番号20(CLT抗原5由来ペプチド配列)
【化22】
配列番号21(CLT抗原5由来ペプチド配列)
【化23】
配列番号22(CLT抗原5由来ペプチド配列)
【化24】
配列番号23(CLT抗原6由来ペプチド配列)
【化25】
配列番号24(CLT抗原6由来ペプチド配列)
【化26】
配列番号25(CLT抗原7由来ペプチド配列)
【化27】
配列番号26(CLT抗原8由来ペプチド配列)
【化28】
配列番号27(CLT抗原9由来ペプチド配列)
【化29】
配列番号28(CLT抗原9由来ペプチド配列)
【化30】
配列番号29(CLT抗原9由来ペプチド配列)
【化31】
配列番号30(CLT抗原10由来ペプチド配列)
【化32】
配列番号31(CLT抗原10由来ペプチド配列)
【化33】
配列番号32(CLT抗原10由来ペプチド配列)
【化34】
配列番号33(CLT抗原1をコードするCLTのcDNA配列)
【化35】
配列番号34(CLT抗原2をコードするCLTのcDNA配列)
【化36】
配列番号35(CLT抗原3及び4をコードするCLTのcDNA配列)
【化37】
配列番号36(CLT抗原5をコードするCLTのcDNA配列)
【化38】
配列番号37(CLT抗原6をコードするCLTのcDNA配列)
【化39】
配列番号38(CLT抗原7及び8をコードするCLTのcDNA配列)
【化40】
配列番号39(CLT抗原9をコードするCLTのcDNA配列)
【化41】
配列番号40(CLT抗原10をコードするCLTのcDNA配列)
【化42】
配列番号41(CLT抗原1をコードするcDNA配列)
【化43】
配列番号42(CLT抗原2をコードするcDNA配列)
【化44】
配列番号43(CLT抗原3をコードするcDNA配列)
【化45】
配列番号44(CLT抗原4をコードするcDNA配列)
【化46】
配列番号45(CLT抗原5をコードするcDNA配列)
【化47】
配列番号46(CLT抗原6をコードするcDNA配列)
【化48】
配列番号47(CLT抗原7をコードするcDNA配列)
【化49】
配列番号48(CLT抗原8をコードするcDNA配列)
【化50】
配列番号49(CLT抗原9をコードするcDNA配列)
【化51】
配列番号50(CLT抗原10をコードするcDNA配列)
【化52】
配列番号51(CLT抗原4由来ペプチド配列)
【化53】
配列番号52(CLT抗原4由来ペプチド配列)
【化54】
配列番号53(CLT抗原3由来ペプチド配列)
【化55】
配列番号54(CLT抗原4由来ペプチド配列)
【化56】
配列番号55(CLT抗原1由来ペプチド配列)
【化57】
配列番号56(CLT抗原1由来ペプチド配列)
【化58】
配列番号57(CLT抗原1由来ペプチド配列)
【化59】
配列番号58(CLT抗原2由来ペプチド配列)
【化60】
配列番号59(CLT抗原2由来ペプチド配列)
【化61】
配列番号60(CLT抗原2由来ペプチド配列)
【化62】
配列番号61(CLT抗原2由来ペプチド配列)
【化63】
配列番号62(CLT抗原2由来ペプチド配列)
【化64】
配列番号63(CLT抗原2由来ペプチド配列)
【化65】
配列番号64(CLT抗原2由来ペプチド配列)
【化66】
配列番号65(CLT抗原2由来ペプチド配列)
【化67】
配列番号66(CLT抗原2由来ペプチド配列)
【化68】
配列番号67(CLT抗原3由来ペプチド配列)
【化69】
配列番号68(CLT抗原3由来ペプチド配列)
【化70】
配列番号69(CLT抗原3由来ペプチド配列)
【化71】
配列番号70(CLT抗原4由来ペプチド配列)
【化72】
配列番号71(CLT抗原4由来ペプチド配列)
【化73】
配列番号72(CLT抗原4由来ペプチド配列)
【化74】
配列番号73(CLT抗原1由来ペプチド配列)
【化75】
配列番号74(CLT抗原1由来ペプチド配列)
【化76】
配列番号75(CLT抗原2由来ペプチド配列)
【化77】
配列番号76(CLT抗原4由来ペプチド配列)
【化78】
配列番号77(CLT抗原4由来ペプチド配列)
【化79】
配列番号78(CLT抗原2由来ペプチド配列)
【化80】
【配列表】