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特許7712300半導体レーザ装置、及び、半導体レーザ装置の制御方法
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  • 特許-半導体レーザ装置、及び、半導体レーザ装置の制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-14
(45)【発行日】2025-07-23
(54)【発明の名称】半導体レーザ装置、及び、半導体レーザ装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/14 20060101AFI20250715BHJP
   H01S 5/40 20060101ALI20250715BHJP
   H01S 5/022 20210101ALI20250715BHJP
   G02B 26/00 20060101ALN20250715BHJP
【FI】
H01S5/14
H01S5/40
H01S5/022
G02B26/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022575124
(86)(22)【出願日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 JP2021044364
(87)【国際公開番号】W WO2022153707
(87)【国際公開日】2022-07-21
【審査請求日】2024-09-10
(31)【優先権主張番号】P 2021003074
(32)【優先日】2021-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 「高輝度・高効率次世代レーザー技術開発/次々世代加工に向けた新規光源・要素技術開発/高効率加工用GaN系高出力・高ビーム品質半導体レーザーの開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】山口 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】深草 雅春
【審査官】佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-224376(JP,A)
【文献】特開2012-89776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御器によって制御される半導体レーザ装置であって、
各々が光を出射する複数の光増幅部と、
前記複数の光増幅部の各々からの前記光が入射する回折格子と、
前記複数の光増幅部と前記回折格子との間の光路上に配置される回動可能な回動ミラーとを備え、
前記制御器は、前記複数の光増幅部への印加電流に応じて前記回動ミラーを回動し、
前記回折格子に対する前記光の入射角度は、前記印加電流に応じて変化する
半導体レーザ装置。
【請求項2】
前記回折格子に対する前記入射角度は、前記印加電流が大きくなるにしたがって、増大する
請求項1に記載の半導体レーザ装置。
【請求項3】
前記回動ミラーは、前記回折格子に対する前記光の回折角度が維持されるように前記入射角度を変化させる
請求項1又は2に記載の半導体レーザ装置。
【請求項4】
前記制御器は、前記回動ミラーの位置を移動し、
前記複数の光増幅部の各々から出射された前記光が前記回折格子において重畳される位置は、前記回動ミラーの位置の移動に伴って移動される
請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体レーザ装置。
【請求項5】
前記複数の光増幅部の各々から出射された前記光を前記回折格子で重畳させる結合光学系を備え、
前記結合光学系は、前記複数の光増幅部と前記回折格子との間の光路上に配置される
請求項1~4のいずれか1項に記載の半導体レーザ装置。
【請求項6】
前記半導体レーザ装置は、1以上の半導体レーザアレイを備え、
前記1以上の半導体レーザアレイは、前記複数の光増幅部を有する
請求項1~5のいずれか1項に記載の半導体レーザ装置。
【請求項7】
前記複数の光増幅部の各々から出射された前記光をコリメートするコリメータレンズを備える
請求項1~6のいずれか1項に記載の半導体レーザ装置。
【請求項8】
前記コリメータレンズと前記回折格子との間の光路上に配置され、前記光の速軸方向と遅軸方向とを入れ替える90°像回転光学系を備える
請求項7に記載の半導体レーザ装置。
【請求項9】
前記回折格子から出射された前記光の一部を透過し、かつ、他の一部を反射する部分反射ミラーを備える
請求項1~8のいずれか1項に記載の半導体レーザ装置。
【請求項10】
半導体レーザ装置の制御方法であって、
前記半導体レーザ装置は、各々が光を出射する複数の光増幅部と、
前記複数の光増幅部の各々からの前記光が入射する回折格子と、
前記複数の光増幅部と前記回折格子との間の光路上に配置される回動可能な回動ミラーとを備え、
前記半導体レーザ装置の制御方法は、
前記複数の光増幅部への印加電流を決定する決定ステップと、
前記印加電流に応じて前記回動ミラーを回動する回動ステップとを含み、
前記回折格子に対する前記光の入射角度は、前記印加電流に応じて変化する
半導体レーザ装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体レーザ装置、及び、半導体レーザ装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体レーザ装置から出射されるレーザ光を用いて、様々な製品の加工が行われている。この種の半導体レーザ装置では、加工品質を高めるために、出射光の高出力化が求められている。
【0003】
特許文献1に記載された半導体レーザ装置においては、互いに出射波長が異なる複数の半導体レーザ素子の各々から出射された光を、回折格子で合成することで出射光の高出力化を実現しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-54295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された半導体レーザ装置においては、回折格子における複数の光の合成効率を最適化すべく、回折格子に対する光の入射角度が光の波長に応じて設定されている。しかしながら、半導体レーザ素子が出射する光の波長は、半導体レーザ素子への印加電流に応じて変化する。このため、半導体レーザ素子への印加電流を変化させると、回折格子に対する光の最適な入射角度が変化する。このため、半導体レーザ素子への印加電流を変化させる場合に、回折格子における複数の光の合成効率が低下する。
【0006】
本開示は、このような課題を解決するものであり、回折格子における複数の光の合成効率の低下を抑制できる半導体レーザ装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係る半導体レーザ装置の一態様は、制御器によって制御される半導体レーザ装置であって、各々が光を出射する複数の光増幅部と、前記複数の光増幅部の各々からの前記光が入射する回折格子と、前記複数の光増幅部と前記回折格子との間の光路上に配置される回動可能な回動ミラーとを備え、前記制御器は、前記複数の光増幅部への印加電流に応じて前記回動ミラーを回動し、前記回折格子に対する前記光の入射角度は、前記印加電流に応じて変化する。
【0008】
また、上記課題を解決するために、本開示に係る半導体レーザ装置の制御方法の一態様は、前記半導体レーザ装置は、各々が光を出射する複数の光増幅部と、前記複数の光増幅部の各々からの前記光が入射する回折格子と、前記複数の光増幅部と前記回折格子との間の光路上に配置される回動可能な回動ミラーとを備え、前記半導体レーザ装置の制御方法は、前記複数の光増幅部への印加電流を決定する決定ステップと、前記印加電流に応じて前記回動ミラーを回動する回動ステップとを含み、前記回折格子に対する前記光の入射角度は、前記印加電流に応じて変化する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、回折格子における複数の光の合成効率の低下を抑制できる半導体レーザ装置等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施の形態1に係る半導体レーザ装置の全体構成を示す模式図である。
図2図2は、実施の形態1に係る半導体レーザ素子の構成の一例を示す模式的な斜視図である。
図3図3は、実施の形態1に係る半導体レーザ素子が出射する光の速軸方向及び遅軸方向を示す模式図である。
図4図4は、実施の形態1に係る第二ミラーの構成を示す模式図である。
図5図5は、実施の形態1に係る半導体レーザ装置の第四ミラーの回動角度と、光出力との関係を示すグラフである。
図6図6は、実施の形態1に係る半導体レーザ装置の複数の光増幅部への印加電流と、光出力との関係を示すグラフである。
図7図7は、実施の形態1に係る半導体レーザ装置の制御方法を示すフローチャートである。
図8図8は、実施の形態2に係る半導体レーザ装置の全体構成を示す模式図である。
図9図9は、実施の形態3に係る半導体レーザ装置の全体構成を示す模式図である。
図10図10は、実施の形態4に係る半導体レーザ装置の全体構成を示す模式図である。
図11図11は、実施の形態4に係るレーザユニットの構成を示す模式図である。
図12図12は、実施の形態4に係る半導体レーザアレイの構成の一例を示す模式的な斜視図である。
図13図13は、実施の形態5に係る半導体レーザ装置の全体構成を示す模式図である。
図14図14は、実施の形態6に係る半導体レーザ装置の全体構成を示す模式図である。
図15図15は、実施の形態7に係る半導体レーザ装置の全体構成を示す模式図である。
図16図16は、実施の形態8に係る半導体レーザ装置の全体構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される、数値、形状、材料、構成要素、及び、構成要素の配置位置や接続形態などは、一例であって本開示を限定する主旨ではない。
【0012】
また、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、各図において縮尺等は必ずしも一致していない。なお、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0013】
また、本明細書において、「上方」及び「下方」という用語は、絶対的な空間認識における上方向(鉛直上方)及び下方向(鉛直下方)を指すものではなく、積層構成における積層順を基に相対的な位置関係により規定される用語として用いる。また、「上方」及び「下方」という用語は、2つの構成要素が互いに間隔をあけて配置されて2つの構成要素の間に別の構成要素が存在する場合のみならず、2つの構成要素が互いに接する状態で配置される場合にも適用される。
【0014】
(実施の形態1)
実施の形態1に係る半導体レーザ装置及びその制御方法について説明する。
【0015】
[1-1.全体構成]
まず、本実施の形態に係る半導体レーザ装置の全体構成について図1を用いて説明する。図1は、本実施の形態に係る半導体レーザ装置1の全体構成を示す模式図である。なお、図1及び以下に示す各図には、互いに直交するX軸、Y軸、及びZ軸が示されている。
【0016】
本実施の形態に係る半導体レーザ装置1は、複数の光を回折格子50によって合成し、合成された光を出射する装置である。図1に示されるように、半導体レーザ装置1は、複数のレーザモジュールCP1~CP8と、第一ミラーMR11~MR18と、第二ミラーMR2と、第三ミラーMR3と、第四ミラーMR4と、回折格子50とを備える。本実施の形態では、半導体レーザ装置1は、制御器80と、電源82と、駆動装置ST3及びST4と、速軸コリメータレンズFAC1~FAC8と、ヒートシンクHS1及びHS2とをさらに備える。
【0017】
レーザモジュールCP1~CP8の各々は、半導体レーザ素子を含むモジュールである。本実施の形態では、レーザモジュールCP1~CP8の各々は、CANパッケージと、半導体レーザ素子とを含む。レーザモジュールCP1~CP4は、ヒートシンクHS1に配置され、レーザモジュールCP5~CP8は、ヒートシンクHS2に配置される。これにより、レーザモジュールCP1~CP8において発生した熱をヒートシンクHS1及びHS2に放散することができる。ヒートシンクHS1及びHS2の構成は特に限定されないが、例えば、板状の金属部材などで形成された放熱プレートであってもよい。
【0018】
レーザモジュールCP1~CP8の各々に含まれる半導体レーザ素子について、図2及び図3を用いて説明する。図2は、本実施の形態に係る半導体レーザ素子11の構成の一例を示す模式的な斜視図である。図3は、本実施の形態に係る半導体レーザ素子11が出射する光の速軸方向及び遅軸方向を示す模式図である。
【0019】
半導体レーザ素子11は、光を出射する光増幅部の一例であり、図2に示されるように、基板114と、N型クラッド層112と、活性層111と、P型クラッド層113と、コンタクト層115と、電極116P及び116Nと、絶縁層120とを有する。
【0020】
基板114は、一方の主面に半導体層が積層され、他方の主面に電極116Nが配置される板状の基材である。本実施の形態では、基板114は、N型の半導体基板である。N型クラッド層112は、基板114の上方に配置され、活性層111より屈折率が低いN型の半導体層である。活性層111は、N型クラッド層112の上方に配置される発光層である。P型クラッド層113は、活性層111の上方に配置され、活性層111より屈折率が低いP型の半導体層である。コンタクト層115は、電極116PとオーミックコンタクトするP型の半導体層である。
【0021】
絶縁層120は、電極116Pとコンタクト層115とを電気的に絶縁する誘電体層である。絶縁層120の中央にはY軸方向に延びるスリットが形成されている。絶縁層120のスリット内において、コンタクト層115と電極116Pとがコンタクトする。これにより、電極116Pからコンタクト層115に電流が注入される電流注入領域が形成される。本実施の形態では、Y軸方向に延びる電流注入領域が形成される。絶縁層120のスリットの下方に配置される活性層111に電流が注入される。活性層111のうち電流が注入される領域が発光領域117を形成する。
【0022】
発光領域117のZ軸方向(つまり、活性層111の主面に平行で、かつ、電流注入領域の長手方向に対して垂直な方向)における寸法W1は、発光領域117のX軸方向(つまり、活性層111の積層方向)における寸法W2より長い。半導体レーザ素子11において、Z軸方向は、遅軸(スロー軸)方向と称され、X軸方向は、速軸(ファスト軸)方向と称される。図3において、軸118aは速軸を示し、軸118bは遅軸を示す。図3に示されるように、発光領域117から出射された光の速軸方向における広がり角は、遅軸方向における広がり角より大きい。このため、図3に示されるように発光領域117から出射される光B20の断面形状は、楕円となる。
【0023】
半導体レーザ素子11のY軸方向の一方の端面がフロント側端面11Fであり、他方の端面がリア側端面11Rである。フロント側端面11Fは、光の反射率が低い端面であり、フロント側端面11Fの発光領域117から光が出射される。フロント側端面11Fの反射率は例えば10%以下である。フロント側端面11Fには、発光領域117から出射される光に対する反射率を低減するための誘電体多層膜などが形成されていてもよい。リア側端面11Rは、フロント側端面11Fより光の反射率が高い端面である。リア側端面11Rの反射率は例えば90%以上である。リア側端面11Rには、発光領域117から出射される光に対する反射率を高めるための誘電体多層膜などが形成されていてもよい。
【0024】
図1に示されるレーザモジュールCP1~CP8の各々が含む半導体レーザ素子11は、互いに異なる波長の光を出射する。レーザモジュールCP1~CP8に含まれる隣り合う二つの半導体レーザ素子11の波長は、例えば、数nm程度互いに異なっている。半導体レーザ素子11が出射する光の波長は、例えば、390nm以上450nm以下程度に設定される。
【0025】
半導体レーザ素子11の各半導体層を形成する半導体材料は特に限定されない。各半導体材料として、例えば、窒化物系半導体などを用いることができる。
【0026】
図1に戻り、レーザモジュールCP1~CP8は、X軸方向に直線状に並んで配置される。第一ミラーMR11~MR18は、それぞれ、レーザモジュールCP1~CP8からY軸方向に離隔して配置される。第一ミラーMR11~MR18の各々は、レーザモジュールCP1~CP8の各々に含まれる半導体レーザ素子11のフロント側端面11Fと対向する位置に配置される。つまり、第一ミラーMR11~MR18の各々は、レーザモジュールCP1~CP8の各々に含まれる半導体レーザ素子11から出射される光の光軸上に配置される。
【0027】
レーザモジュールCP1~CP8と、第一ミラーMR11~MR18との間の光軸上には、それぞれ速軸コリメータレンズFAC1~FAC8が配置される。速軸コリメータレンズFAC1~FAC8の各々は、複数の光増幅部の各々から出射された光をコリメートするコリメータレンズの一例であり、光の速軸方向における発散を抑制する。これにより、第一ミラーMR11~MR18には、それぞれ、レーザモジュールCP1~CP8から出射され、速軸コリメータレンズFAC1~FAC8を透過した光が入射する。具体的には、速軸コリメータレンズFAC1~FAC8は、それぞれ、レーザモジュールCP1~CP8の近傍に配置される。これにより、レーザモジュールCP1~CP8から出射された光の速軸方向における寸法を抑制できる。速軸コリメータレンズFAC1~FAC8として例えば、シリンドリカルレンズを用いることができる。
【0028】
なお、速軸コリメータレンズFAC1~FAC8と第一ミラーMR11~MR18との間の光軸上などに、複数の光増幅部の各々から出射された光をコリメートするコリメータレンズの他の例である遅軸コリメータレンズが配置されてもよい。遅軸コリメータレンズは、光の遅軸方向における発散を抑制する。
【0029】
第一ミラーMR11~MR18の反射面は、平面であり、光軸に対して傾斜して配置されている。これにより、第一ミラーMR11~MR18は、それぞれ、レーザモジュールCP1~CP8からの光を第二ミラーMR2に向けて反射する。第一ミラーMR11~MR14は、互いに他の第一ミラーで反射した光を遮ることを抑制するために、互いにY軸方向にシフトして配置される。第一ミラーMR15~MR18も、第一ミラーMR11~MR14と同様に、互いにY軸方向にシフトして配置される。
【0030】
第一ミラーMR11~MR14は、反射面がXY平面に平行な平面上において、放物線上に並ぶように配置される。また、第一ミラーMR15~MR18は、反射面がXY平面に平行な平面上において、放物線上に並ぶように配置される。なお、ここで、放物線上とは、数学的に厳密な放物線上に限定されず、放物線上からわずかにずれた位置も含まれる。例えば、数学的に厳密な放物線から、各第一ミラーの反射面の寸法程度ずれた位置も放物線上に含まれる。
【0031】
第一ミラーMR11~MR14の反射面の傾き角は、互いに異なり、第一ミラーMR15~MR18の反射面の傾き角は、互いに異なる。
【0032】
第二ミラーMR2は、第一ミラーMR11~MR18で反射した光が入射され、第三ミラーMR3に向けて反射するミラーである。本実施の形態では、第二ミラーMR2のX軸方向の位置は、レーザモジュールCP4のX軸方向の位置とレーザモジュールCP5のX軸方向の位置との間である。以下、第二ミラーMR2の構成について、図4を用いて説明する。図4は、本実施の形態に係る第二ミラーMR2の構成を示す模式図である。図4に示されるように、第二ミラーMR2は、レーザモジュールCP1~CP8と同数のミラーMR21~MR28を有する。図1に示される第一ミラーMR11~MR18で反射した光は、それぞれ、図4に示される第二ミラーMR2のミラーMR21~MR28に入射される。第二ミラーMR2のミラーMR21~MR28は、それぞれ、平面ミラーであり、入射された光を第三ミラーMR3に向けて反射する。第二ミラーMR2のミラーMR21~MR24の反射面の傾き角は、互いに異なり、第二ミラーMR2のミラーMR25~MR28の反射面の傾き角は、互いに異なる。
【0033】
図1に戻り、第三ミラーMR3は、第二ミラーMR2のミラーMR21~MR28で反射した光が入射され、第四ミラーMR4に向けて反射するミラーである。第三ミラーMR3は、例えば、平面ミラーである。第三ミラーMR3は、駆動装置ST3に保持されている。駆動装置ST3は、制御器80によって制御され、第三ミラーMR3を回動させる。第三ミラーMR3が回動することにより、第三ミラーMR3の反射面における光の入射角及び反射角が変化する。これに伴い、第四ミラーMR4への光の入射角も変化する。
【0034】
第四ミラーMR4は、第三ミラーMR3で反射した光が入射され、回折格子50に向けて反射するミラーである。第四ミラーMR4で反射された複数の光は、互いに異なる入射角度で回折格子50に入射する。第四ミラーMR4は、例えば、平面ミラーである。第四ミラーMR4は、駆動装置ST4に保持されている。駆動装置ST4は、制御器80によって制御され、第四ミラーMR4を回動させる。第四ミラーMR4が回動することにより、第四ミラーMR4の反射面における光の入射角及び反射角が変化する。これに伴い、回折格子50への光の入射角が変化する。
【0035】
以上のように、第三ミラーMR3は、複数の光増幅部である複数の半導体レーザ素子11と回折格子50との間の光路上に配置される回動可能な第一回動ミラーの一例である。第四ミラーMR4は、複数の光増幅部である複数の半導体レーザ素子11と回折格子50との間の光路上に配置される回動可能な第二回動ミラーの一例である。
【0036】
回折格子50は、複数の光増幅部の各々からの光が入射する光学素子である。複数の光増幅部の各々からの光は、回折格子50のほぼ同一の位置に入射し、回折される。回折格子50は、入射した各光を波長に応じて回折する。このため、各光の波長に応じて入射角度を適切に定めることで、各光の回折格子50に対する出射角度(つまり、回折角度)をほぼ同一にすることができる。つまり、回折格子50によって、複数の互いに波長の異なる光を合成することができる。すなわち、回折格子50から出射された各光は、互いに光軸が整合される。これにより、出射光L10が生成される。本実施の形態では、回折格子50における格子の配列方向と、複数の光の速軸方向とが一致するように、複数の光が回折格子50に入射される。また、複数の光は、速軸方向に配列される。これにより、回折格子50において、格子の配列方向における合成される複数の光のビーム径を小さくすることができる。ここで、回折格子50において、格子の配列方向における光の径を小さくするほど合成効率を高めることができる。したがって、回折格子50における格子の配列方向と、光の径を小さくできる速軸方向とを一致させることで、複数の光の合成効率を高めることができる。
【0037】
本実施の形態では、回折格子50に入射する光の一部が回折されて出射光L10となる。また、回折格子50に入射する光の他の一部は、反射されて、第四ミラーMR4、第三ミラーMR3、第二ミラーMR2、及び第一ミラーMR11~MR18を介して半導体レーザ素子11に戻る。つまり、回折格子50と、半導体レーザ素子11のリア側端面11Rとが外部共振器を形成し、当該外部共振器内で光が発振することでレーザ光が生成される。各半導体レーザ素子11で増幅される光の波長は、回折格子50に対する光の入射角度と、各半導体レーザ素子11での波長に対する増幅利得特性とによって定まる。したがって、各半導体レーザ素子11では、互いに異なる波長のレーザ光が生成される。このように、各半導体レーザ素子11で生成された光が回折格子50で合成されて複数の波長のレーザ光を含む出射光L10として出力される。
【0038】
電源82は、レーザモジュールCP1~CP8の各々に電力を供給する直流電源である。具体的には、電源82は、レーザモジュールCP1~CP8の各々に含まれる半導体レーザ素子11に直流電流を印加する。レーザモジュールCP1~CP8に含まれる8個の半導体レーザ素子11は、例えば、電気的に直列に接続されて、8個の半導体レーザ素子11に同一の電流が印加される。電源82から半導体レーザ素子11への印加電流は、制御器80によって制御される。
【0039】
制御器80は、半導体レーザ装置1を制御する機器である。制御器80は、電源82と、駆動装置ST3及びST4を制御する。具体的には、制御器80は、電源82を制御することで、光増幅部である半導体レーザ素子11への印加電流を制御する。また、制御器80は、駆動装置ST3及びST4を制御することで、回動ミラーである第三ミラーMR3及び第四ミラーMR4の回動角度(つまり、光軸に対する角度)を制御する。なお、制御器80が、駆動装置ST3及びST4を制御することによって、第三ミラーMR3及び第四ミラーMR4を回動することを、制御器80が、第三ミラーMR3及び第四ミラーMR4を回動するとも表現する。制御器80は、複数の光増幅部である複数の半導体レーザ素子11への印加電流に応じて回動ミラーである第三ミラーMR3及び第四ミラーMR4を回動する。制御器80による半導体レーザ装置1の制御の詳細については後述する。制御器80は、例えば、マイコンによって実現できる。マイコンは、プログラムが格納されたROM、RAMなどのメモリと、プログラムを実行するプロセッサ(CPU)と、タイマと、A/D変換器、D/A変換器などを含む入出力回路とを有する1チップの半導体集積回路である。なお、制御器80は、マイコン以外のパーソナルコンピュータ、電気回路などを用いて実現されてもよい。
【0040】
[1-2.印加電流と出射光との関係]
次に、本実施の形態に係る複数の半導体レーザ素子11への印加電流と、出射光L10との関係について、図5を用いて説明する。図5は、本実施の形態に係る半導体レーザ装置1の第四ミラーMR4の回動角度と、光出力との関係を示すグラフである。図5には、半導体レーザ素子11への印加電流が20A、30A、40A、及び60Aである場合の各グラフが示されている。図5のグラフの横軸が第四ミラーMR4の回動角度を示し、縦軸が光出力を示す。なお、横軸の第四ミラーMR4の回動角度は、印加電流が60Aの場合に、光出力が最大となる角度がゼロと設定されている。
【0041】
図5に示されるように、印加電流に応じて、光出力が最大となる第四ミラーMR4の回動角度が変化する。これは、印加電流が増大するほど、半導体レーザ素子11の温度が上昇することで、半導体レーザ素子11から出射される光、つまり、ASE(Amplified Spontaneous Emission)の波長が長波長側にシフトするためである。つまり、複数の半導体レーザ素子11からの複数の光の波長に応じて、回折格子50に対する複数の光の入射角度の最適値は変化する。ここで、入射角度の最適値とは、回折格子50における複数の光の合成効率を最大とする入射角度である。図5に示される例では、複数の光の波長が長くなるほど、光出力が最大となる第四ミラーMR4の回動角度が小さくなる(図5の横軸の下方に示される波長軸を参照されたい)。
【0042】
本実施の形態に係る制御器80は、印加電流に応じて回動ミラーである第三ミラーMR3及び第四ミラーMR4を回動する。例えば、制御器80は、印加電流と、光出力を最大とする各回動ミラーの角度との関係を示すテーブルと有し、当該テーブルに基づいて、印加電流に応じて各回動ミラーの角度を制御する。
【0043】
これにより、回折格子50に対する光の入射角度は、印加電流に応じて変化する。したがって、印加電流が変化する場合にも、回折格子50における複数の光の合成効率の低下を抑制することが可能となる。より具体的には、回折格子50に対する光の入射角度は、印加電流が大きくなるにしたがって、増大する。このように、本実施の形態では、印加電流が大きくなることに伴う半導体レーザ素子11からの光の波長の増大に合わせて、回折格子50への光の入射角度が増大する。このため、光の波長の増大に伴う回折格子50における複数の光の合成効率の低下を抑制できる。
【0044】
また、本実施の形態では、回動ミラーである第三ミラーMR3及び第四ミラーMR4は、回折格子50に対する光の回折角度が維持されるように、光の入射角度を変化させる。これにより、印加電流が変化することで光の波長が変化しても、回折角度が一定に維持されるため、回折格子50における複数の光の合成効率の低下を抑制できる。
【0045】
本実施の形態に係る半導体レーザ装置1のこのような効果について、図6を用いて説明する。図6は、本実施の形態に係る半導体レーザ装置1の複数の光増幅部への印加電流と、光出力との関係を示すグラフである。図6には、比較例の半導体レーザ装置の印加電流と、光出力との関係も併せて示されている。比較例の半導体レーザ装置は、第三ミラーMR3及び第四ミラーMR4の回動角度が、印加電流60Aの場合に光出力が最大となる角度に固定されている点以外は、本実施の形態に係る半導体レーザ装置1と同様の構成を有する半導体レーザ装置である。
【0046】
比較例の半導体レーザ装置では、第四ミラーMR4の角度が固定されているため、印加電流が60A以外の場合においては、回折格子50における複数の光の合成効率が低下し、図5に示される最大の光出力を得られない。一方、本実施の形態に係る半導体レーザ装置1においては、印加電流に応じて第四ミラーMR4を回動することで、回折格子50における複数の光の合成効率の低下を抑制できる。このため、図6に示されるように、すべての印加電流において、図5に示される最大の光出力を得ることができる。
【0047】
また、図6に示されるように、本実施の形態に係る半導体レーザ装置1では、例えば、6W程度の光出力を20A程度の印加電流で得られるが、比較例の半導体レーザ装置では、6W程度の光出力を得るために30A程度の印加電流が必要となる。このように、本実施の形態では、回折格子50における合成効率の低下を抑制できるため、消費電力を抑制することができる。
【0048】
[1-3.制御方法]
次に、本実施の形態に係る半導体レーザ装置1の制御方法について、図7を用いて説明する。図7は、本実施の形態に係る半導体レーザ装置1の制御方法を示すフローチャートである。
【0049】
図7に示されるように、まず、制御器80は、複数の増幅部である半導体レーザ素子11への印加電流を決定する(S10)。制御器80は、例えば、ユーザなどによって外部から入力された信号に基づいて印加電流を決定する。
【0050】
続いて、制御器80は、ステップS10で決定された印加電流に基づいて、各回動ミラーの角度を決定する(S20)。より具体的には、制御器80は、印加電流と、光出力を最大とする各回動ミラーの角度との関係に基づいて、ステップS10で決定された印加電流において、光出力が最大となるように、各回動ミラー(第三ミラーMR3、第四ミラーMR4)の角度を決定する。
【0051】
続いて、制御器80は、ステップS20で決定された各回動ミラーの角度と、各回動ミラーの角度が一致するように各回動ミラーを回動する(S30)。より具体的には、制御器80は、駆動装置ST3を制御することで、第三ミラーMR3の角度がステップS20で決定された第三ミラーMR3の角度と一致するように、第三ミラーMR3を回動する。また、制御器80は、駆動装置ST4を制御することで、第四ミラーMR4の角度がステップS20で決定された第四ミラーMR4の角度と一致するように、第四ミラーMR4を回動する。これにより、回折格子50に対する光の入射角度は、印加電流に応じて変化する。
【0052】
続いて、制御器80は、複数の光増幅部である複数の半導体レーザ素子11に電流を印加する(S40)。より具体的には、制御器80は、電源82を制御することで、ステップS10で決定された印加電流を複数の半導体レーザ素子11に印加する。
【0053】
以上のように、本実施の形態に係る半導体レーザ装置1を、印加電流に応じて回折格子50における合成効率が低下することを抑制するように制御することができる。
【0054】
(実施の形態2)
実施の形態2に係る半導体レーザ装置及びその制御方法について説明する。本実施の形態に係る半導体レーザ装置は、出力カプラとして機能する部分反射ミラーを備える点において、実施の形態1に係る半導体レーザ装置1と相違する。以下、本実施の形態に係る半導体レーザ装置及びその制御方法について、実施の形態1との相違点を中心に図8を用いて説明する。
【0055】
図8は、本実施の形態に係る半導体レーザ装置101の全体構成を示す模式図である。図8に示されるように、本実施の形態に係る半導体レーザ装置101は、実施の形態1に係る半導体レーザ装置1と同様の構成要素と、部分反射ミラー60とを備える。
【0056】
部分反射ミラー60は、回折格子50から出射された光の一部を透過し、かつ、他の一部を反射するミラーである。部分反射ミラー60は、半導体レーザ装置101のレーザモジュールCP1~CP8の各々に含まれる半導体レーザ素子11のリア側端面11Rとの間で外部共振器を構成し、出力カプラとして機能する。部分反射ミラー60は、例えば、平面ミラーである。なお、部分反射ミラー60は、凹面ミラーであってもよい。
【0057】
本実施の形態に係る半導体レーザ装置101においても実施の形態1に係る半導体レーザ装置と同様の効果が奏される。また、本実施の形態では、出力カプラとして機能する部分反射ミラー60を備えるため、回折格子50を出力カプラとして用いる場合と比べて、出力カプラの反射率、曲率などの設計の自由度を高めることができる。
【0058】
(実施の形態3)
実施の形態3に係る半導体レーザ装置及びその制御方法について説明する。本実施の形態に係る半導体レーザ装置は、結合光学系を備える点において、実施の形態2に係る半導体レーザ装置101と相違する。以下、本実施の形態に係る半導体レーザ装置及びその制御方法について、実施の形態2との相違点を中心に図9を用いて説明する。
【0059】
図9は、本実施の形態に係る半導体レーザ装置201の全体構成を示す模式図である。図9に示されるように、本実施の形態に係る半導体レーザ装置201は、実施の形態2に係る半導体レーザ装置101と同様の構成要素と、結合光学系70とを備える。
【0060】
結合光学系70は、複数の光増幅部である複数の半導体レーザ素子11の各々から出射された光を回折格子50で重畳させる光学系である。結合光学系70は、複数の光増幅部と回折格子50との間の光路上に配置される。本実施の形態では、結合光学系70は、シリンドリカルレンズであり、第四ミラーMR4と回折格子50との間の光路上に配置される。
【0061】
本実施の形態に係る半導体レーザ装置201においても実施の形態2に係る半導体レーザ装置101と同様の効果が奏される。また、本実施の形態では、結合光学系70を備えることで、各ミラーの構成、回折格子50と半導体レーザ素子11との間の光路長などの設計の自由度を高めることができる。
【0062】
(実施の形態4)
実施の形態4に係る半導体レーザ装置及びその制御方法について説明する。本実施の形態に係る半導体レーザ装置は、光増幅部として、半導体レーザアレイを備える点において、実施の形態1に係る半導体レーザ装置1と相違する。以下、本実施の形態に係る半導体レーザ装置301及びその制御方法について、実施の形態1との相違点を中心に図10を用いて説明する。
【0063】
図10は、本実施の形態に係る半導体レーザ装置301の全体構成を示す模式図である。図10に示されるように、本実施の形態に係る半導体レーザ装置301は、レーザユニットLU1~LU8と、第一ミラーMR11~MR18と、第二ミラーMR2と、第三ミラーMR3と、第四ミラーMR4と、回折格子50とを備える。本実施の形態では、半導体レーザ装置301は、制御器80と、電源82と、駆動装置ST3及びST4と、ヒートシンクHS1及びHS2とをさらに備える。
【0064】
本実施の形態に係るレーザユニットLU1~LU8について、図11を用いて説明する。図11は、本実施の形態に係るレーザユニットLU1の構成を示す模式図である。図11に示されるように、レーザユニットLU1は、半導体レーザアレイ311と、速軸コリメータレンズFACと、90°像回転光学系BTと、放熱ブロックBLと、遅軸コリメータレンズSACとを有する。
【0065】
半導体レーザアレイ311は、複数の光増幅部を有する半導体発光素子である。半導体レーザアレイ311の構成について図12を用いて説明する。図12は、本実施の形態に係る半導体レーザアレイ311の構成の一例を示す模式的な斜視図である。図12に示されるように、半導体レーザアレイ311は、複数の半導体レーザ素子11がアレイ状に配列された素子である。複数の半導体レーザ素子11の各々は、実施の形態1に係る半導体レーザ素子11と同様の構成を有する。半導体レーザアレイ311は、遅軸方向に配列された複数の発光領域117を有する。本実施の形態では、複数の半導体レーザ素子11は、共通基板320上に配置される。なお、図12においては、半導体レーザアレイ311が4個の半導体レーザ素子11を有する例が示されているが、半導体レーザアレイ311が有する半導体レーザ素子11の個数は4個に限定されない。半導体レーザアレイ311が有する半導体レーザ素子11の個数は、2個以上であればよい。また、半導体レーザアレイ311は、複数の半導体レーザ素子11が一体的に形成されていてもよいし、互いに分離されていてもよい。
【0066】
図11に戻り、速軸コリメータレンズFACは、光増幅部から出射された光をコリメートするレンズの一例であり、光の速軸方向における発散を抑制する。本実施の形態では、光増幅部である半導体レーザ素子11から出射された光の速軸方向の発散を抑制する。速軸コリメータレンズFACとして、例えばシリンドリカルレンズを用いることができる。
【0067】
90°像回転光学系BTは、速軸コリメータレンズFACと回折格子50との間の光路上に配置され、速軸コリメータレンズFACからの光の速軸方向と遅軸方向とを入れ替える光学系である。90°像回転光学系BTは、入射した光の像を光軸を中心に90°回転させることで光の速軸方向と遅軸方向とを入れ替える。本実施の形態に係る半導体レーザ装置301は、90°像回転光学系BTを備えることで、遅軸方向に配列された複数の光を速軸方向に配置された複数の光に変換することができる。これにより、複数の光を速軸方向に配列することができる。したがって、回折格子50の格子の配列方向と、複数の光の配列方向及び光の速軸方向とを一致させることができる。これにより、実施の形態1で述べたとおり、回折格子50における複数の光の合成効率を高めることができる。
【0068】
遅軸コリメータレンズSACは、光増幅部から出射された光をコリメートするレンズの一例であり、光の遅軸方向における発散を抑制する。本実施の形態では、90°像回転光学系BTから出射された光の遅軸方向の発散を抑制する。遅軸コリメータレンズSACとして、例えばシリンドリカルレンズを用いることができる。
【0069】
放熱ブロックBLは、半導体レーザアレイ311が配置される金属ブロックであり、半導体レーザアレイ311で発生する熱を放散する。放熱ブロックBLは、例えば銅などの熱伝導率が高い金属で形成される。
【0070】
図10に示されるレーザユニットLU2~LU8は、図11に示されるレーザユニットLU1と同様の構成を有する。また、レーザユニットLU1~LU4は、ヒートシンクHS1に配置され、レーザユニットLU5~LU8は、ヒートシンクHS2に配置される。
【0071】
レーザユニットLU1~LU8の各々に含まれる半導体レーザアレイ311には、実施の形態1に係るレーザモジュールCP1~CP8の各々に含まれる半導体レーザ素子11と同様に電源82から電流が印加される。
【0072】
本実施の形態に係る半導体レーザ装置301は、以上のような構成を有することで、実施の形態1に係る半導体レーザ装置1と同様の効果が奏される。また、本実施の形態に係る半導体レーザ装置301は、複数の半導体レーザアレイ311を備え、複数の光増幅部として、半導体レーザアレイ311が有する複数の半導体レーザ素子11が用いられる。このため、光増幅部を高密度で配置することができる。したがって、半導体レーザ装置301においては、小型化及び高出力化が可能となる。
【0073】
(実施の形態5)
実施の形態5に係る半導体レーザ装置及びその制御方法について説明する。本実施の形態に係る半導体レーザ装置は、出力カプラとして機能する部分反射ミラーを備える点において、実施の形態4に係る半導体レーザ装置301と相違する。以下、本実施の形態に係る半導体レーザ装置及びその制御方法について、実施の形態4との相違点を中心に図13を用いて説明する。
【0074】
図13は、本実施の形態に係る半導体レーザ装置401の全体構成を示す模式図である。図13に示されるように、本実施の形態に係る半導体レーザ装置401は、実施の形態4に係る半導体レーザ装置301と同様の構成要素と、部分反射ミラー60とを備える。
【0075】
部分反射ミラー60は、実施の形態2に係る部分反射ミラー60と同様に、回折格子50から出射された光の一部を透過し、かつ、他の一部を反射するミラーである。部分反射ミラー60は、半導体レーザ装置401のレーザユニットLU1~LU8の各々に含まれる半導体レーザ素子11のリア側端面11Rとの間で外部共振器を構成し、出力カプラとして機能する。
【0076】
本実施の形態に係る半導体レーザ装置401においても実施の形態4に係る半導体レーザ装置301と同様の効果が奏される。また、本実施の形態では、出力カプラとして機能する部分反射ミラー60を備えるため、回折格子50を出力カプラとして用いる場合と比べて、出力カプラの反射率、曲率などの設計の自由度を高めることができる。
【0077】
(実施の形態6)
実施の形態6に係る半導体レーザ装置及びその制御方法について説明する。本実施の形態に係る半導体レーザ装置は、結合光学系を備える点において、実施の形態5に係る半導体レーザ装置401と相違する。以下、本実施の形態に係る半導体レーザ装置及びその制御方法について、実施の形態5との相違点を中心に図14を用いて説明する。
【0078】
図14は、本実施の形態に係る半導体レーザ装置501の全体構成を示す模式図である。図14に示されるように、本実施の形態に係る半導体レーザ装置501は、実施の形態5に係る半導体レーザ装置401と同様の構成要素と、結合光学系70とを備える。
【0079】
結合光学系70は、実施の形態3に係る結合光学系70と同様に、複数の光増幅部である複数の半導体レーザ素子11の各々から出射された光を回折格子50で重畳させる光学系である。結合光学系70は、複数の光増幅部と回折格子50との間の光路上に配置される。本実施の形態では、結合光学系70は、シリンドリカルレンズであり、第四ミラーMR4と回折格子50との間の光路上に配置される。
【0080】
本実施の形態に係る半導体レーザ装置501においても実施の形態5に係る半導体レーザ装置401と同様の効果が奏される。また、本実施の形態では、結合光学系70を備えることで、各ミラーの構成、回折格子50と半導体レーザアレイ311との間の光路長などの設計の自由度を高めることができる。
【0081】
(実施の形態7)
実施の形態7に係る半導体レーザ装置及びその制御方法について説明する。本実施の形態に係る半導体レーザ装置は、主に、単一の半導体レーザアレイを備える点において、実施の形態6に係る半導体レーザ装置501と相違する。以下、本実施の形態に係る半導体レーザ装置及びその制御方法について、実施の形態6との相違点を中心に図15を用いて説明する。
【0082】
図15は、本実施の形態に係る半導体レーザ装置601の全体構成を示す模式図である。図15に示されるように、本実施の形態に係る半導体レーザ装置601は、単一のレーザユニットLU1と、ミラーMR5と、第三ミラーMR3と、第四ミラーMR4と、回折格子50とを備える。本実施の形態では、半導体レーザ装置601は、制御器80と、電源82と、駆動装置ST3及びST4と、部分反射ミラー60と、結合光学系70とを備える。
【0083】
レーザユニットLU1は、実施の形態4~6に係るレーザユニットLU1と同様の構成を有する。レーザユニットLU1には、電源82から電流が印加される。
【0084】
ミラーMR5は、実施の形態1~6に係る第一ミラーMR11~MR18の各々などと同様の構成を有するミラーである。ミラーMR5は、レーザユニットLU1から出射された複数の光が入射され、第三ミラーMR3に向けて反射する。ミラーMR5は、半導体レーザ装置601が配置されるスペースを低減するために用いられる。つまり、半導体レーザ装置601は、ミラーMR5を備えることで、スペースを有効に利用することができる。なお、半導体レーザ装置601は、ミラーMR5を備えなくてもよい。
【0085】
本実施の形態に係る半導体レーザ装置601のその他の構成要素については、実施の形態6に係る半導体レーザ装置501の構成要素と同様の構成を有する。
【0086】
本実施の形態に係る半導体レーザ装置601においても、実施の形態6に係る半導体レーザ装置501と同様の効果が奏される。
【0087】
(実施の形態8)
実施の形態8に係る半導体レーザ装置及びその制御方法について説明する。本実施の形態に係る半導体レーザ装置は、回折格子50における複数の光が重畳される位置を変えることができる点において、実施の形態6に係る半導体レーザ装置501と相違する。以下、本実施の形態に係る半導体レーザ装置及びその制御方法について、実施の形態6との相違点を中心に図16を用いて説明する。
【0088】
図16は、本実施の形態に係る半導体レーザ装置701の全体構成を示す模式図である。図16に示されるように、本実施の形態に係る半導体レーザ装置701は、駆動装置ST73及びST74の構成において、実施の形態6に係る半導体レーザ装置501と相違する。
【0089】
駆動装置ST73は、制御器80によって制御され、第三ミラーMR3を回動させ、かつ、第三ミラーMR3の位置を移動する。本実施の形態では、駆動装置ST73は、第三ミラーMR3の光軸方向における位置を移動する。
【0090】
駆動装置ST74は、制御器80によって制御され、第四ミラーMR4を回動させ、かつ、第四ミラーMR4の位置を移動する。本実施の形態では、駆動装置ST74は、第四ミラーMR4の光軸方向における位置を移動する。
【0091】
このように、本実施の形態に係る制御器80は、駆動装置ST73及びST74を制御することで、回動ミラーである第三ミラーMR3及び第四ミラーMR4の位置を移動する。なお、制御器80が、駆動装置ST73及びST74を制御することによって、第三ミラーMR3及び第四ミラーMR4の位置を移動することを、制御器80が、第三ミラーMR3及び第四ミラーMR4の位置を移動するとも表現する。
【0092】
本実施の形態では、第三ミラーMR3及び第四ミラーMR4の位置を移動することで、第四ミラーMR4で反射された複数の光が回折格子50において重畳される位置を移動することができる。なお、本実施の形態では、第三ミラーMR3及び第四ミラーMR4の両方の位置が移動可能であるが、いずれか一方のみの位置が移動可能であってもよい。
【0093】
以上のように、本実施の形態では、制御器80は、回動ミラーの位置を移動し、複数の光増幅部の各々から出射された光が回折格子50において重畳される位置は、回動ミラーの位置の移動に伴って移動される。本実施の形態に係る回折格子50の複数の光が重畳される位置には高い熱負荷が加わるため損傷が生じやすい。しかしながら、本実施の形態では、複数の光が重畳される位置を移動することができるため、回折格子50の特定の位置に高い熱負荷が加え続けられることを抑制できる。したがって、回折格子50の損傷を低減できる。
【0094】
(変形例など)
以上、本開示に係る半導体レーザ装置及びその制御方法について、各実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、上記各実施の形態に限定されるものではない。
【0095】
例えば、上記各実施の形態では、半導体レーザ装置は、制御器80を備えるが、半導体レーザ装置は、制御器80を備えなくてもよい。言い換えると、制御器80は、半導体レーザ装置の外部から半導体レーザ装置を制御してもよい。
【0096】
また、上記各実施の形態では、第三ミラーMR3及び第四ミラーMR4の両方が回動したが、いずれか一方だけが回動してもよい。また、第一ミラーMR11~MR18、第二ミラーMR2のミラーMR21~MR28、ミラーMR5などが回動してもよい。
【0097】
また、上記各実施の形態では、回折格子50として透過型の回折格子を用いたが、回折格子50として反射型の回折格子を用いてもよい。
【0098】
また、上記各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で上記各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本開示の半導体レーザ装置は、例えば、高出力かつ高効率な光源としてレーザ加工機などの光源に適用できる。
【符号の説明】
【0100】
1、101、201、301、401、501、601、701 半導体レーザ装置
11 半導体レーザ素子
11F フロント側端面
11R リア側端面
50 回折格子
60 部分反射ミラー
70 結合光学系
80 制御器
82 電源
111 活性層
112 N型クラッド層
113 P型クラッド層
114 基板
115 コンタクト層
116N、116P 電極
117 発光領域
118a、118b 軸
120 絶縁層
311 半導体レーザアレイ
320 共通基板
B20 光
BL 放熱ブロック
BT 90°像回転光学系
CP1、CP2、CP3、CP4、CP5、CP6、CP7、CP8 レーザモジュール
FAC、FAC1、FAC2、FAC3、FAC4、FAC5、FAC6、FAC7、FAC8 速軸コリメータレンズ
HS1、HS2 ヒートシンク
L10 出射光
LU1、LU2、LU3、LU4、LU5、LU6、LU7、LU8 レーザユニット
MR11、MR12、MR13、MR14、MR15、MR16、MR17、MR18 第一ミラー
MR2 第二ミラー
MR5、MR21、MR22、MR23、MR24、MR25、MR26、MR27、MR28 ミラー
MR3 第三ミラー
MR4 第四ミラー
SAC 遅軸コリメータレンズ
ST3、ST4、ST73、ST74 駆動装置
図1
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