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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-14
(45)【発行日】2025-07-23
(54)【発明の名称】流体噴射ヘッド及び流体噴射装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/00 20060101AFI20250715BHJP
   B23Q 11/10 20060101ALI20250715BHJP
   B23B 25/00 20060101ALI20250715BHJP
【FI】
B23Q11/00 L
B23Q11/10 A
B23B25/00 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023563441
(86)(22)【出願日】2021-11-26
(86)【国際出願番号】 JP2021043360
(87)【国際公開番号】W WO2023095280
(87)【国際公開日】2023-06-01
【審査請求日】2024-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002103
【氏名又は名称】弁理士法人にじいろ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】越智 伊
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-061510(JP,U)
【文献】実開昭64-052637(JP,U)
【文献】特開2016-159404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/00,11/10;
B23B 1/00-51/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの内径加工時に発生する切粉を流体により排出するための流体噴射ヘッドにおいて、
前記流体の流路を内部に備えた軸部と、
前記軸部の一端に設けられ、前記軸部から供給される前記流体を、前記軸部の中心線に傾斜し且つ前記軸部の他端に向かう方向に噴射する円盤形状のヘッド部と、を具備し、
前記ヘッド部は、
前記軸部の一端に接続される円盤形状の底板と、
前記底板と対峙する位置に配置される円盤形状の拡散板と、を有し、
前記底板と前記拡散板との間に円環状の吐出口が形成され、
前記拡散板は、半径方向に沿って波形に起伏する表面を有する、
流体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記波形は、前記拡散板の外縁が前記波形の山となるように形成されている、請求項1記載の流体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記拡散板は、前記流体が放射状に拡散するのを補助するために円周方向に等間隔に配置された複数の仕切板を有する、請求項1又は2に記載の流体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記仕切板は、前記拡散板の外周縁まで設けられている、請求項3記載の流体噴射ヘッド。
【請求項5】
前記仕切板は、前記拡散板の外周縁よりも内側の位置まで設けられている、請求項3記載の流体噴射ヘッド。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のうちいずれか一項に記載の流体噴射ヘッドと、
前記流体を圧縮して前記流体噴射ヘッドに供給する流体供給装置と、
前記流体供給装置から前記流体噴射ヘッドに供給される前記流体の流量及び流速のうち少なくとも一方を変化させるために、前記流体供給装置を制御する制御装置と、
を具備する、流体噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体噴射ヘッド及び流体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、加工技術の向上に伴って、ワーク(被削材)に対する精密な切削加工が可能となっている。例えば、ワークの内径加工は、主軸のチャックにワークを固定し、刃物台に設置されたバイトの刃先をワークの内面に当て、主軸が回転することによって行われる。ワークの内径加工では、加工の際に発生する切粉がワークの内部に侵入してしまう。そのため、ワーク内径加工時に発生する切粉がワークの内部に侵入するのを防止したいといった要求がある。従来、このようなケースでは、図12に示すように、NC旋盤加工機の主軸11のチャック12に固定されたワーク200の内部、バイト19の刃先よりも深い位置に、ゴム板、紙材などの汎用的な部材をシール部材300として配置し、紙テープ400で仮止めしながら目止めを行う必要がある。このような目止め作業は、細かく洗練された技術が必要であるため、自動化が難しく、ワークの内径加工の完全自動化を困難にさせている一因となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
内径加工が必要なワークの無人生産を実現するために、ワークの内径加工時にワーク内部に切粉が浸入するのを防ぐことが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の一態様に係る流体噴射装置は、流体噴射ヘッドを有する。流体噴射ヘッドは、ワークの内径加工時に発生する切粉を流体により排出するために、流体の流路を内部に備えた軸部と、軸部の一端に設けられ、軸部から供給される流体を、軸部の中心線に傾斜し且つ軸部の他端に向かう方向に噴射する円盤形状のヘッド部と、を具備する。
【発明の効果】
【0005】
本開示の一態様によれば、ワークの内径加工時にワーク内部に切粉が浸入するのを防ぐことができ、内径加工が必要なワークの無人生産を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、本実施形態に係る流体噴射装置を備えるNC旋盤加工機の一例を示す図である。
図2図2は、本実施形態に係る流体噴射装置の流体噴射ヘッドを示す側面図である。
図3図3は、図2の流体噴射ヘッドを斜め後方から見た斜視図である。
図4図4は、図2の流体噴射ヘッドの分解斜視図である。
図5図5は、図4の拡散板を示す平面図である。
図6図6は、図5のA―A´の切断端面図である。
図7図7は、図2の流体噴射ヘッドの内部に流れる流体の向きを示す流体噴射ヘッド先端部の拡大縦断面図である。
図8図8は、本実施形態に係る流体噴射装置を使用した状態を示す側面図である。
図9図9は、図4の拡散板の第1変形例を示す平面図である。
図10図10は、図4の拡散板の第2変形例を示す平面図である。
図11図11は、図5図9及び図10の拡散板をそれぞれ使用したときの、ヘッド部の外周縁から噴射される流体の流量の位置変化、特定の位置における時間変化を示す図である。
図12図12は、従来例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係る流体噴射装置を説明する。以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0008】
図1に示すように、本実施形態に係る流体噴射装置20は、ワークの内径加工時に発生する切粉を流体により排出するための流体噴射ヘッド21と、外部から供給された流体を圧縮して流体噴射ヘッド21に供給する圧縮機23と、圧縮機23から流体噴射ヘッド21に供給される流体の流量又は流速を変化させるために圧縮機23を制御する制御装置25と、を備える。典型的には、流体として空気又は切削液を使用することができる。
【0009】
流体噴射装置20は、ワークの内径加工を行うことができる、例えばNC旋盤加工機1に装備される。具体的には、図1に示すように、ワークを固定するチャック12を備えるNC旋盤加工機1の主軸11に対峙する位置に所定の間隔を隔ててZ方向に移動可能なステージ16が設けられ、このステージ16に流体噴射ヘッド21が設置される。流体噴射ヘッド21は、先端に外向きフランジを備える円管体のような外観を有し、その円管の中心線がZ軸と平行になるようにステージ16に固定される。NC旋盤加工機1には、ワークを切削するための複数のバイト19が刃物台14,15に収容されている。刃物台14,15はX方向及びZ方向の直交2軸もしくは直交3軸に沿って移動可能である。
【0010】
図2図3に示すように、流体噴射ヘッド21は、流体の流路を内部に備える軸部30と、軸部30の一端(先端)に設けられ、軸部30から供給される流体を、外周縁から軸部30の中心線CLに傾斜し且つ軸部30の他端(後端)に向かう方向に噴射する円盤形状のヘッド部40とを備える。本実施形態では、軸部30の一端側(先端側)に向かう方向を前方、軸部30の他端側(後端側)に向かう方向を後方として適宜用いる。
【0011】
図4に示すように、典型的には、軸部30は円筒形状の軸本体31を有する。軸本体31の内部中空は軸部30における流体の流路に対応する。軸本体31の後端には、流体を内部に導入する導入口33が設けられる。
【0012】
ヘッド部40は、円盤形状を有する底板50と、円盤形状を有する拡散板60と、拡散板60を覆う円皿形状のカバー90と、を有する。底板50、拡散板60、カバー90は後方から順に、それらの中心位置が軸部30の中心線CLに一致するように配置される。底板50は、軸本体31の先端に一体的に形成されている。拡散板60は、底板50に対して所定の間隔を隔てて配置される。それにより生じた拡散板60と底板50との間の隙間はヘッド部40における流体の流路に対応する。拡散板60は、底板50よりも若干大きくなるように構成されている。それにより生じた拡散板60の外周縁と底板50の外周縁との間の円環状の隙間はヘッド部40に設けられた吐出口45を構成する。吐出口45は、後方に向かって開口されている。実際には、後述するように、拡散板60の表面には外周縁まで到達する複数の仕切板61が放射状に配置されているため、円環状の吐出口45は仕切り板61により放射状に仕切られている。
【0013】
底板50の中央には、軸部30の流路とヘッド部40の流路とを連通するための複数の孔55(吹出口55)があけられている。複数の吹出口55は、円周方向に沿って等間隔に配置される。底板50の中央には、前方に向かって突出する円柱形状の仕切ブロック54が一体的に形成されている。仕切ブロック54の外周面は、吹出口55を塞がないように横断面が半円形状の溝が前後方向に沿って形成されている。仕切ブロック54の先端面の中央には仕切ブロック54よりも径が短い円柱形状のネジ穴ブロック51が一体的に形成されている。ネジ穴ブロック51の外周面には、円周方向に沿って図示しない溝が切り欠かれ、その溝にOリング52が嵌め込まれている。Oリング52により、ネジ穴ブロック51の外周面とカバー90の内周面とを密着させることができ、流体がネジ穴ブロック51の外周面とカバー90の内周面との間の隙間から漏れるのを防止することができる。ネジ穴ブロック51の先端面には、ボルト110を受けるためのネジ穴53が形成されている。ボルト110とネジ穴53とにより、拡散板60はカバー90とともに、底板50(つまりは底板50が一体的に形成された軸部30)に対して固定される。ボルト110とカバー90との間には、ワッシャ100が介在される。円盤形状を有する拡散板60の中心位置には、底板50に設けられた仕切ブロック54を通すための孔63があけられ、円皿形状のカバー90の中心位置には、ネジ穴ブロック51を挿通するための孔があけられている。拡散板60及びカバー90にあけられた孔は締結構造上必要なものであって、例えば、ヘッド部40の全体を一体的に構成するのであれば不要なものである。本実施形態において、拡散板60は円環形状に構成されるが、組み立てられた状態では仕切ブロック54とともに円盤形状をなす。
【0014】
拡散板60は、軸部30から供給され、底板50の吹出口55から中心線CLに沿って前方に向かって吹き出された流体を中心線CLに直交する向きに流す機能だけではなく、流体を放射状に均一に拡散する機能と、外周縁に到達した流体を後方に向かって流す機能と、を有するように構成されている。
【0015】
具体的には、図4図5に示すように、拡散板60の表面には複数の仕切板61が設けられる。拡散板60の表面とは、底板50に対峙する面をいう。複数の仕切板61は、円周方向に沿って等間隔に配置される。つまり、複数の仕切板61は放射状に配置される。仕切板61は、拡散板60の表面から底板50の表面までの距離と同一の高さに構成される。仕切板61は、内周縁(ネジ穴ブロック51の外周面)から外周縁に到達する長さを有する。外周縁付近の仕切板61の厚みは中央部分の部分の厚みよりも薄くなるように形成される。それにより、外周縁に形成される吐出口45の円周方向の開口面積を出来るだけ確保することができ、外周縁の全周にわたって流体を均一に噴射させることができる。
【0016】
底板50の表面中央に設けた仕切ブロック54と、拡散板60の表面に放射状に設けた複数の仕切板61とにより、拡散板60と底板50との間の空間が放射状に仕切られる。つまり、複数の仕切板61と仕切ブロック54とによって、放射方向に沿ってテーパー状に広がる複数の流路を形成することができる。各流路には1つの吹出口55が設けられる。複数の吹出口55は軸部30の中心線CLを中心とした円上の等間隔に配置されるため、吹出口55から吹き出される流体の流量はほぼ同量であり、吹出口55から吹き出された流体は放射方向にのみ流れ、円周方向に沿って流れないため、拡散板60により、軸部30から供給された流体を放射状に均一に拡散することができる。
【0017】
また、図6に示すように、拡散板60は、半径方向に沿って波形に起伏する表面を有する。拡散板60の表面の起伏の山の位置と谷の位置とは、同心円状に配置される。拡散板60により放射状に拡散された流体は、拡散板60と底板50との間の隙間が狭くなる波形の山の位置において加圧され、拡散板60と底板50との間の隙間が広くなる波形の谷の位置において減圧される。このように、拡散板60の表面を放射方向(半径方向)に沿って波形に起伏させることで、拡散板60により放射状に拡散された流体は、拡散板60の表面に沿って加圧と減圧とを繰り返しながら、整流され、外周縁に到達する。拡散板60の表面の形状も流体を放射状に均一に拡散することに寄与する。
【0018】
図6に示すように、拡散板60の表面に半径方向に沿って起伏する波形は、拡散板60の外周縁において山になるように形成されている。それにより、図8に示すように、拡散板60の外周縁に到達した流体を、後方に向かって開口した吐出口45から、後方に向かって中心線に傾斜した向きに吐出させることができる。しかも、拡散板60の表面に形成された波形によって、拡散板60の外周縁付近の流路(底板50と拡散板60との間の隙間)を拡散板60の中央付近の流路(底板50と拡散板60との間の隙間)に比べて狭くすることができる。それにより、吐出口45から噴射される流体の圧力を高くすることができ、ワーク内径加工時に生じる切粉を勢いよく、排出することができる。
【0019】
このように、拡散板60に様々な機能を持たせることで、ヘッド部40を底板50,拡散板60及びカバー90の大きく3つの板状の部品によって構成することができ、ヘッド部40を薄型化することができる。それにより、ワークの内径加工時において、ヘッド部40がバイトの刃先に干渉するのを防ぎ、様々なワークの内径加工に使用することができる。
【0020】
以上説明した流体噴射ヘッド21によれば、流体を以下の様に噴射することができる。すなわち、図7に示すように、軸部30に導入された流体は、軸部30の内部を前方に流れ、底板50にあけられた吹出口55から中心線CLに沿って前方に吹き出される。底板50の吹出口55から中心線CLに沿って前方に吹き出された流体は、拡散板60により中心線CLに直交する向きに放射状に拡散される。拡散板60により拡散された流体は、拡散板60と底板50との間の隙間を通ってヘッド部40の外周縁に後方に向かって開口した吐出口45から、後方に向かって中心線CLに傾斜した向きに吐出させることができる。すなわち、軸部30の後方から内部に導入された流体は、軸部30の内部を前方に向かって流れ、ヘッド部40において折り返され、ヘッド部40の外周縁から後方に噴射される。
【0021】
流体噴射ヘッド21は、棒状の軸部30の先端に円盤形状のヘッド部40を設けた形状に構成することで、工具等の移動を阻害することなく、ワーク200の穴に対して簡単に流体噴射ヘッド21を挿し込むことができる。図8に示すように、ワーク200の内径加工時には、流体噴射ヘッド21は、その先端の円盤形のヘッド部40がワーク200の中空に挿し込まれ、さらに内径加工用のバイト19の刃先よりも深い位置に配置されるように、ステージ16によって移動される。そして、ワーク200の内径加工の開始にあわせて、流体噴射ヘッド21への圧縮された流体の供給が開始され、圧縮された流体は流体噴射ヘッド21の先端のヘッド部40の外周縁から後方に向かって、中心線CLに傾斜する向きに噴射される。それにより、ワーク200の内径加工時に発生する切粉201を流体により後方に向かって、ワーク200の内部から外側に排出することができる。このように、本実施形態に係る流体噴射装置20は、エアシール装置として機能し、ワーク200の内径加工時に生じる切粉201がワーク200の内部に浸入するのを防ぐことができる。また、流体噴射装置は、圧縮された流体を吹き出す非接触装置であるため、人手による目止め作業や官能検査が不要となり、内径加工が必要なワークの無人生産を実現することができる。
【0022】
本実施形態では、図5に示すように、拡散板60の表面を半径方向に沿って起伏する波形に形成し、さらに拡散板60の表面に放射状に複数の仕切板61を設けた。それにより、図11(a)に示すように、ヘッド部40の外周縁から噴射される流体の流量を全周にわたって均一に、且つ特定の角度位置における流量の時間変化を小さくすることができ、ワークの内径加工時に発生する切粉をワークの内径の全周にわたって安定的に排出することができる。
【0023】
しかしながら、拡散板60の構成は本実施形態に限定されない。例えば、図9に示すように、拡散板70の表面に放射状に設けられた複数の仕切板71は拡散板70の外周縁まで設けられていなくてもよい。図9に示す拡散板70を使用した場合、例えば、図11(b)に示すように、ヘッド部40の外周縁から噴射される流体の流量の位置変化が、図5に示す拡散板60を使用した場合に比べて大きく、外周縁の特定の角度位置における流体の流量の時間変化も大きくなる。しかしながら、このような拡散板70の使用は完全に否定されない。同様に、図10に示すように、拡散板80は仕切板を有さなくてもよい。図10に示す拡散板80を使用した場合、例えば、図11(c)に示すように、ヘッド部40の外周縁から噴射される流体の流量の位置変化と、外周縁の特定の角度位置における流体の流量の時間変化とが、図5及び図10に示す拡散板60、70を使用した場合に比べて大きく、ランダムである。しかしながら、このような拡散板80の使用は完全に否定されない。特に、図10に示す拡散板80は形状が単純であるため、ヘッド部40を薄型にするという観点や製造コストという観点においては、図5に示す拡散板60よりも優位かもしれない。
【0024】
底板50にあけられた吹出口55から中心線CLに沿って前方に吹き出された流体を中心線に直交する向きに拡散するという観点だけであれば、拡散板60は、その表面に波形が施されていない、仕切板61を有さない、単純な円板であってもよい。
【0025】
本実施形態において、ヘッド部40の外周縁から噴射される流体が全周にわたって均一であり、時間変化がないことを設計思想として、拡散板60等を構成していた。しかしながら、ヘッド部40の外周縁から噴射される流体の流量を時間変化させることで、流体の噴射強度に強弱ができ、それによりワークの内径加工時に発生する切粉を効果的にワークの内部から外側に排出できる可能性がある。流体の流量の時間変化は、制御装置25による圧縮機23の制御により実現可能である。
【0026】
ヘッド部40の外周縁から噴射される流体の流量を外周縁の各位置において変化させることで、ヘッド部40の全体として渦状等に流体を噴射させることができ、ワークの内径加工時に発生する切粉を効果的にワークの内部から外側に排出できる可能性がある。このような場合では、図9図10に示すような、ヘッド部40の外周縁の位置によって流体の流量が変化する拡散板70,80を使用することも効果的である。
【0027】
本実施形態では、ヘッド部40はワークに対して回転しないが、ワークに対してヘッド部40が回転するように構成してもよい。例えば、ヘッド部40を軸部30に対してベアリング等で回転自在に設け、軸部30またはヘッド部40に内蔵されたモータによりヘッド部40の回転を駆動することで、ヘッド部40を軸部30に対して回転させることができる。もちろん、NC旋盤加工機1において流体噴射ヘッド21が設置されるステージ16又はステージ16の一部が軸部30の中心線CL(図1におけるZ軸)周りに回転できるように構成してもよい。このようにヘッド部40を回転させることで、図9図10に示すような、ヘッド部40の外周縁の角度位置によって流体の流量が変化する拡散板70,80を使用しても、その流体の流量が全周にわたって不均一であることのデメリットを解消することができる。また、あえて外周縁の角度位置によって流体の流量が異なる拡散板70,80を使用することで、前述したようにヘッド部40の全体として渦状等に流体を噴射できるようになり、また、流体の噴射の強度(速度)に緩急をつけることができるため、ワークの内径加工時に発生する切粉を効果的にワークの内部から外側に排出できる可能性がある。
【0028】
本実施形態では、ワークの中空の断面形状に整合するように、ヘッド部40を円盤形状に構成したが、ヘッド部40の形状は円盤形状に限定されない。例えば、ワークの中空の断面形状が四角形状であれば、ヘッド部40を四角形状としてもよい。この場合は、例えば、ヘッド部40又は流体噴射ヘッド21は、ワークの回転に同期して回転できるように構成される。
【0029】
本実施形態では、拡散板60が流体を放射状に均一に流すための構造を有していたが、底板50がその構造を有してもよい。この場合、底板50の表面が半径方向に沿って起伏する波形に形成され、底板50の表面に複数の仕切板61が放射状に設けられる。また、流体を放射状に均一に流すための構造を底板50と拡散板60とに分散させてもよい。この場合、拡散板60の表面が波形に形成され、底板50の表面に複数の仕切板61が放射状に設けられる。
【0030】
本実施形態では、拡散板60を底板50に比べてわずかに大きくすることで、底板50の外周縁と拡散板60の外周縁との間に隙間を生じさせ、この隙間を後方に向かって開口する吐出口45とすることができた。しかしながら、拡散板60によって中心線CLに直交する向きに放射状に拡散された流体を、外周縁から後方に向かって噴射できるのであれば、吐出口45の構成は本実施形態に限定されない。例えば、底板50と拡散板60とを箱体のように一体的に形成し、底板50の外周縁に近い位置に底板50の同心円状に沿って円環状のスリットをあけ、このスリットを吐出口45としてもよい。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0032】
21…流体噴射ヘッド、30…軸部、31…軸本体、33…導入口、40…ヘッド部、50…底板、60…拡散板、90…カバー、100…ワッシャ、110…ボルト。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12