(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-14
(45)【発行日】2025-07-23
(54)【発明の名称】車両の車外騒音低減構造
(51)【国際特許分類】
B60R 13/08 20060101AFI20250715BHJP
B62D 25/18 20060101ALI20250715BHJP
B62D 25/20 20060101ALI20250715BHJP
B62D 25/08 20060101ALI20250715BHJP
G10K 11/16 20060101ALI20250715BHJP
G10K 11/28 20060101ALI20250715BHJP
【FI】
B60R13/08
B62D25/18 F
B62D25/20 F
B62D25/08 C
B62D25/08 K
G10K11/16 140
G10K11/28
(21)【出願番号】P 2024168115
(22)【出願日】2024-09-27
【審査請求日】2025-02-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000229069
【氏名又は名称】株式会社セキソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(74)【代理人】
【識別番号】100121843
【氏名又は名称】村井 賢郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142918
【氏名又は名称】中島 貴志
(72)【発明者】
【氏名】谷本 隆一
(72)【発明者】
【氏名】宗 虎太郎
(72)【発明者】
【氏名】安松 拓真
(72)【発明者】
【氏名】稗田 康平
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-212442(JP,A)
【文献】特開2016-197183(JP,A)
【文献】特開2018-069813(JP,A)
【文献】特開2021-160677(JP,A)
【文献】特開平06-106903(JP,A)
【文献】特開2017-039453(JP,A)
【文献】特開2000-229585(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/08
B62D 25/18
B62D 25/20
B62D 25/08
G10K 11/16
G10K 11/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前輪に対して車両後方向に対向して設けられ、前記前輪のタイヤの接地面から発生する放射音を反射する前輪用反射部材と、
前記放射音、及び前記前輪用反射部材で反射された反射音の少なくとも一方を吸音する第1吸音部材と、を備え
、
前記第1吸音部材は、車両前方向において前記車両の前輪に対向して設けられ、前記前輪用反射部材で反射された反射音を吸音する
車両の車外騒音低減構造。
【請求項2】
前記第1吸音部材は、前記前輪用反射部材で反射された反射音が前記車両前方向に向かって拡散されるように構成された前輪用整流構造を有する
請求項1に記載の車両の車外騒音低減構造。
【請求項3】
車両の前輪に対して車両後方向に対向して設けられ、前記前輪のタイヤの接地面から発生する放射音を反射する前輪用反射部材と、
前記放射音、及び前記前輪用反射部材で反射された反射音の少なくとも一方を吸音する第1吸音部材と、
前記車両の先端部の中央の下方に設けられ、前記前輪用反射部材で反射された反射音を吸音する第2吸音部材
と、を備える
車両の車外騒音低減構造。
【請求項4】
前記第2吸音部材は、車両左右方向に延びるように形成され、且つ前記車両の車体中心線上の部分に前記車両後方向に向かって開口する開口部を有する筒状の部材である
請求項
3に記載の車両の車外騒音低減構造。
【請求項5】
前記第2吸音部材は、車両左右方向に延びるように形成され、且つ前記車両の前輪に向かって開口する開口部を有する筒状の部材である
請求項
3に記載の車両の車外騒音低減構造。
【請求項6】
前記前輪用反射部材は、
前記車両後方向において前記車両の前輪に対向して設けられる第1対向部と、
前記第1対向部から前記前輪の側面に沿って前記車両前方向に延びるように形成される第1垂れ壁部と、を備える
請求項1~5のいずれか一項に記載の車両の車外騒音低減構造。
【請求項7】
前記放射音のうち、車両本体の底面と地面との間を通過する音を前記第1吸音部材に導く第1誘導部材を更に備える
請求項1~5のいずれか一項に記載の車両の車外騒音低減構造。
【請求項8】
車両の後輪に対して車両前方向に対向して設けられ、前記後輪のタイヤの接地面から発生する放射音を反射する後輪用反射部材と、
前記放射音、及び前記後輪用反射部材で反射された反射音の少なくとも一方を吸音する第3吸音部材と、を備え
、
前記第3吸音部材は、車両後方向において前記車両の後輪に対向して設けられ、前記後輪用反射部材で反射された反射音を吸音する
車両の車外騒音低減構造。
【請求項9】
前記第3吸音部材は、前記後輪用反射部材で反射された反射音が前記車両後方向に向かって拡散されるように構成された後輪用整流構造を有する
請求項8に記載の車両の車外騒音低減構造。
【請求項10】
車両の後輪に対して車両前方向に対向して設けられ、前記後輪のタイヤの接地面から発生する放射音を反射する後輪用反射部材と、
前記放射音、及び前記後輪用反射部材で反射された反射音の少なくとも一方を吸音する第3吸音部材と、
前記車両の後端部の中央の下方に設けられ、前記後輪用反射部材で反射された反射音を吸音する第4吸音部材
と、を備える
車両の車外騒音低減構造。
【請求項11】
前記第4吸音部材は、車両左右方向に延びるように形成され、且つ前記車両の車体中心線上の部分に前記車両前方向に向かって開口する開口部を有する筒状の部材である
請求項
10に記載の車両の車外騒音低減構造。
【請求項12】
前記第4吸音部材は、車両左右方向に延びるように形成され、且つ前記車両の後輪に向かって開口する開口部を有する筒状の部材である
請求項
10に記載の車両の車外騒音低減構造。
【請求項13】
前記後輪用反射部材は、
前記車両前方向において前記車両の後輪に対向して設けられる第2対向部と、
前記第2対向部から前記後輪の側面に沿って前記車両後方向に延びるように形成される第2垂れ壁部と、を備える
請求項8~12のいずれか一項に記載の車両の車外騒音低減構造。
【請求項14】
前記放射音のうち、車両本体の底面と地面との間を通過する音を前記第3吸音部材に導く第2誘導部材を更に備える
請求項8~12のいずれか一項に記載の車両の車外騒音低減構造。
【請求項15】
前記車両の側部に設けられた乗降口の下側の辺を補強するロッカー部の下面に隣接して設けられ、前記放射音を吸音する第5吸音部材を更に備える
請求項1
,3,8,10のいずれか一項に記載の車両の車外騒音低減構造。
【請求項16】
前記車両の前輪又は後輪のホイール
の内側に設けられる第6吸音部材を更に備える
請求項1
,3,8,10のいずれか一項に記載の車両の車外騒音低減構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車外騒音低減構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記の特許文献1に記載の車両の車外騒音低減構造がある。特許文献1に記載の車外騒音低減構造は、車両の前後方向に延設された側壁部を有する溝形部と、車両幅方向の内側に位置する側壁部とを備えている。側壁部は、吸音部材で構成された吸音部を含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の車両の車外騒音低減構造では、タイヤが路面上を転動することに起因して発生する車外騒音を低減する効果に関して改善の余地がある。
【0005】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、車外騒音を低減することが可能な車両の車外騒音低減構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する車両の車外騒音低減構造は、前輪用反射部材と、第1吸音部材と、を備える。前輪用反射部材は、車両の前輪に対して車両後方向に対向して設けられ、前輪のタイヤの接地面から発生する放射音を反射する。第1吸音部材は、放射音、及び前輪用反射部材で反射された反射音の少なくとも一方を吸音する。
【0007】
上記課題を解決する他の車外騒音低減構造は、後輪用反射部材と、第3吸音部材と、を備える。後輪用反射部材は、車両の後輪に対して車両前方向に対向して設けられ、後輪のタイヤの接地面から発生する放射音を反射する。第3吸音部材は、放射音、及び後輪用反射部材で反射された反射音の少なくとも一方を吸音する。
【0008】
この構成によれば、タイヤの接地面から発生する放射音を前輪用反射部材又は後輪用反射部材により車両の前方向又は後方向に反射することができる。また、放射音又は反射音が第1吸音部材又は第3吸音部材により吸音される。そのため、車外騒音を低減することが可能である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の車両の車外騒音低減構造によれば、車外騒音を低減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】車両の車外騒音を測定するための構成の一例を模式的に示す図。
【
図2】車両の位置と車外騒音レベルとの関係を示すグラフ。
【
図3】第1実施形態の車両の側面構造を示す側面図。
【
図4】第1実施形態の車両の平面構造を示す平面図。
【
図5】
図4のV-V線に沿った断面構造を示す断面図。
【
図6】
図4のVI-VI線に沿った断面構造を示す断面図。
【
図7】車両のタイヤ周辺の拡大構造を模式的に示す図。
【
図8】第1実施形態の車両の位置と車外騒音レベルとの関係を示すグラフ。
【
図9】第1実施形態の変形例の車両の側面構造を示す側面図。
【
図10】第1実施形態の変形例の車両の平面構造を示す平面図。
【
図11】第2実施形態の車両の側面構造を示す側面図。
【
図12】第2実施形態の車両の平面構造を示す平面図。
【
図13】第3実施形態の車両の側面構造を示す側面図。
【
図14】第3実施形態の車両の平面構造を示す平面図。
【
図15】
図14のXV-XV線に沿った断面構造を示す断面図。
【
図16】第4実施形態の車両の側面構造を示す側面図。
【
図17】第4実施形態の車両の平面構造を示す平面図。
【
図18】第4実施形態の吸音ボックスの斜視構造を示す斜視図。
【
図19】第4実施形態の変形例の吸音ボックスの斜視構造を示す斜視図。
【
図20】第4実施形態の変形例の車両の平面構造を示す平面図。
【
図21】第5実施形態の車両の側面構造を示す側面図。
【
図22】第5実施形態の車両の平面構造を示す平面図。
【
図23】第5実施形態の変形例の車両の側面構造を示す側面図。
【
図24】第5実施形態の変形例の車両の平面構造を示す平面図。
【
図25】第6実施形態の車両の側面構造を示す側面図。
【
図26】第6実施形態の車両の平面構造を示す平面図。
【
図27】第6実施形態の第1変形例の車両の側面構造を示す側面図。
【
図28】第6実施形態の第1変形例の車両の平面構造を示す平面図。
【
図29】第6実施形態の第2変形例の車両の側面構造を示す側面図。
【
図30】第6実施形態の第2変形例の車両の平面構造を示す平面図。
【
図31】第7実施形態の車両の側面構造を示す側面図。
【
図32】第7実施形態の変形例の車両の側面構造を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、車両の車外騒音低減構造の第1~第7実施形態について図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0012】
<第1実施形態>
第1実施形態の車両の車外騒音低減構造について説明するのに先立ち、当該実施形態の車外騒音低減構造の原理について説明する。
【0013】
(原理の説明)
本願の発明者らは、車両の通過騒音を屋内で測定する、いわゆるインドアパスバイ試験を利用することにより、車両の前輪及び後輪のそれぞれのタイヤから放射される騒音を実験的に測定した。
図1及び
図2は、発明者らにより行われた実験結果を示したものである。
【0014】
図1は、車両10の右前輪31、左前輪32、右後輪33、及び左後輪34のそれぞれのタイヤをシャーシダイナモ装置上で回転させた際に各タイヤから放射される車外騒音の大きさをマイクロフォン装置M
1~M
13により測定した際の車外騒音をマップ化したものである。
図1では、車両10の前方に設定された位置Oを原点(0,0)として、車両10の前後方向に平行な軸線がx軸で示され、車両10の左右方向に平行な軸線がy軸で示されている。x軸の正の方向は車両10の後方向に設定され、x軸の負の方向は車両10の前方向に設定されている。y軸の正の方向は車両10の右方向に設定され、y軸の負の方向は車両10の左方向に設定されている。
【0015】
図1に示されるように、マイクロフォン装置M
1~M
13は軸線m10上に並べて配置されている。軸線m10は、車両10の中心からy軸方向に所定の距離Lだけ離間し、且つx軸に平行な線である。なお、距離Lは法規で7.5mに設定されている。また、マイクロフォン装置M
1~M
13は、
図1に示される位置にそれぞれ配置されている。また、車両10の車輪31~34のそれぞれの中心位置Pt
1~Pt
4は、
図1に示される通りである。
【0016】
図1では、右前輪31のタイヤからマイクロフォン装置M
1~M
13方向に放射されているマイクロフォン位置での騒音の強さがベクトルVa
1~Va
13で示されている。各ベクトルVa
1~Va
13の矢印の方向は、右前輪31のタイヤから放射された騒音の方向を示している。各ベクトルVa
1~Va
13の矢印の長さは、右前輪31のタイヤから放射されたマイクロフォン位置での騒音の強さを示している。
図1では、同様に、左前輪32のタイヤから放射される騒音の強さがベクトルVb
1~Vb
13で示され、右後輪33のタイヤから放射される騒音の強さがベクトルVc
1~Vc
13で示され、左後輪34のタイヤから放射される騒音の強さがベクトルVd
1~Vd
13で示されている。なお、騒音の強さの単位は[W/m
2]である。
【0017】
図2は、
図1に示される実験により得られた車外騒音をグラフ化したものである。
図2では、横軸に軸線m10上の位置[m]をとり、縦軸に各車輪31~34のタイヤの騒音レベル[dB]をとって、それらの関係がグラフで示されている。なお、
図2において、実線L1は車輪31~34のそれぞれのタイヤの全てを回転させた際の騒音レベルを示し、一点鎖線L2は右前輪31のタイヤのみを回転させた際の騒音レベルを示し、二点鎖線L3は左前輪32のタイヤのみを回転させた際の騒音レベルを示す。また、短い破線L4は右後輪33のタイヤのみを回転させた際の騒音レベルを示し、長い破線L5は左後輪34のタイヤのみを回転させた際の騒音レベルを示す。なお、以下では、
図2の実線L1で示される車輪31~34のそれぞれのタイヤの全てを回転させた際の騒音を「全タイヤ走行時の車外騒音」と称する。
【0018】
図1、及び
図2に示されるように、車輪31~34のそれぞれのタイヤから放射されるマイクロフォン位置での騒音の強さ[W/m
2]と、騒音レベル[dB]とは車両10の横に設置したマイクロフォン装置の前後方向に分布している。例えば、
図2の一点鎖線L2で示されるように、前輪31のタイヤの騒音レベルは「+1.3m」の位置で最大値となる。また、
図2の短い破線L4で示されるように、後輪33のタイヤの騒音レベルは「+6.0m」の位置で最大値となる。また、
図2の実線L1で示されるように、全タイヤ走行時の車外騒音の騒音レベルは「+3~5m」の位置で最大となる。
【0019】
図1及び
図2に示されるように、前輪31,32のタイヤから放射される騒音の強さが最大になるマイク位置と、後輪33,34のタイヤから放射される騒音の強さが最大になるマイク位置とが近接する場合、それら4つの騒音が互いに強め合う可能性があり、これが全タイヤ走行時の車外騒音レベルを増大させる要因であると考えられる。したがって、前輪31,32のタイヤから放射される騒音と、後輪33,34のタイヤから放射される騒音とを距離的に分離させることができれば、全タイヤ走行時の車外騒音を低減することができる。
【0020】
以下、この原理のもとに構成される第1実施形態の車外騒音低減構造について説明する。
【0021】
(車両及び車外騒音低減構造の構成)
図3は、第1実施形態の車両10の左側面構造を示す側面図である。また、
図4は、第1実施形態の車両10の平面構造を示す平面図である。なお、以下では、車両前方向を符号FRで示し、車両後方向を符号BAで示し、車両右方向を符号RHで示し、車両左方向を符号LHで示す。また、車両前後方向を符号FBで示し、車両左右方向を符号RLで示す。
【0022】
図3及び
図4に示されるように、車両10は、車両本体20、及び車輪31~34を備えている。車輪31~34は、図示しない車軸に連結されており、当該車軸を介して車両本体20に対して回転可能に支持されている。
【0023】
本実施形態の車両10の車外騒音低減構造100は、前輪用反射部材110,120と、後輪用反射部材130,140とを備えている。
【0024】
前輪用反射部材110は、車両本体20の底面において右前輪31の車両後方向BAにあたる部分に設けられている。
図5は、
図4のV-V線に沿った断面構造を示したものである。
図6は、
図4のVI-VI線に沿った断面構造を示したものである。
図3~
図6に示されるように、前輪用反射部材110は、本体部材111と、吸音部材112とを備えている。
【0025】
本体部材111は、右前輪31のタイヤから発生する騒音を反射することが可能な素材、例えば樹脂により形成されている。また、前輪用反射部材110は、音の反射機能だけでなく、吸音機能を有する素材により形成されていた方がより効果が大きく出る。反射機能及び吸音機能を有する素材としては、例えばガラス繊維不織布を用いることができる。ガラス繊維不織布としては、例えばガラス繊維にバインダとしてオレフィン系繊維を混紡した吸音板材であるセキソー社製の商品名「セキソーアコースティックボード(SAB)」を用いることができる。
図3及び
図4に示されるように、本体部材111は、対向部111aと、さらに効果を高めるための垂れ壁部111bとを備えている場合もある。
【0026】
対向部111aは、本体部材111のうち、車両後方向BAにおいて右前輪31のタイヤに対向するように配置される部分である。対向部111aは車両左右方向RLに平行に延びるように形成されている。
図5に示されるように、車両左右方向RLに直交する対向部111aの断面形状はV字状である。対向部111aは、右前輪31のタイヤの接地面の方向に向かって開口する開口部を有している。
【0027】
垂れ壁部111bは、本体部材111のうち、対向部111aの車両左方向LHの端部から車両前方向FRに向かって折り曲げられるように形成された部分である。
図6に示されるように、垂れ壁部111bの断面構造は対向部111aと同様にV字状である。垂れ壁部111bは、右前輪31のタイヤの左側方の部分に向かって開口する開口部を有している。
【0028】
なお、後輪用反射部材130は、右後輪33のタイヤに流れ込む空気の抵抗を減らすことが可能なスパッツとしての機能を有していてもよい。
【0029】
図5及び
図6に示されるように、吸音部材112は、本体部材111の対向部111a及び垂れ壁部111bの内部に設けられている。吸音部材112は、右前輪31のタイヤ接地面から発生する騒音を吸音することが可能な素材、例えばポリエステル繊維からなる素材を用いることができる。ポリエステル繊維としては、セキソー社製の商品名「セキソーアコースティックファイバー(SAF) 」を用いることができる。
【0030】
図3及び
図4に示されるように、前輪用反射部材120は、車両本体20の底面において左前輪32の車両後方向BAにあたる部分に設けられている。前輪用反射部材120は、本体部材121と、吸音部材122とを備えている。本体部材121は、車両後方向BAにおいて左前輪32のタイヤ接地面に対向するように配置される対向部121aと、対向部121aの車両右方向RHの端部から車両前方向FRに折り曲げられるように形成された垂れ壁部121bとを備えている。本体部材121及び吸音部材122のそれぞれの構成は、前輪用反射部材110の本体部材111及び吸音部材112のそれぞれの構成と同一又は類似であるため、それらの構成の説明は割愛する。
【0031】
後輪用反射部材130は、車両本体20の底面において右後輪33の車両前方向FRにあたる部分に設けられている。後輪用反射部材130は、本体部材131と、吸音部材132とを備えている。本体部材131は、車両前方向FRにおいて右後輪33のタイヤに対向するように配置される対向部131aと、対向部131aの車両左方向LHの端部から車両後方向BAに折り曲げられるように形成された垂れ壁部131bとを備えている。本体部材131及び吸音部材132のそれぞれの構成は、前輪用反射部材110の本体部材111及び吸音部材112のそれぞれの構成と同一又は類似であるため、それらの構成の説明は割愛する。
【0032】
車両本体20の底面において左後輪34の車両前方向FRにあたる部分には後輪用反射部材140が設けられている。後輪用反射部材140は、本体部材141と、吸音部材142とを備えている。本体部材141は、車両前方向FRにおいて左後輪34のタイヤに対向するように配置される対向部141aと、対向部141aの車両右方向RHの端部から車両後方向BAに折り曲げられるように形成された垂れ壁部141bとを備えている。本体部材141及び吸音部材142のそれぞれの構成は、前輪用反射部材110の本体部材111及び吸音部材112のそれぞれの構成と同一又は類似であるため、それらの構成の説明は割愛する。
【0033】
(第1実施形態の車外騒音低減構造の作用及び効果)
図7に示されるように、タイヤ200が転動するとき、タイヤ200と地面210との接触部230の前後から1kHz~2kHzのパターンノイズが発生して、それが車外騒音を形成する。タイヤ単体の場合、タイヤ騒音は、接触部230から車両前後方向FBに広がった後、接地面から離れるにつれて車両左右方向RLにも広がる。タイヤ200が車輪とともに車両に装着された場合、タイヤ騒音は、基本的には単体と同様に、最初は前後に、途中から斜め45°方向のひょうたん形の広がりを形成する。ただし、タイヤ騒音は、車両のボディーや付帯物により異なった広がりを形成することもある。
【0034】
そこで、本実施形態の車両10の車外騒音低減構造100は、上述の通り、反射部材110,120,130,140と、吸音部材112,122,132,142とを備えている。反射部材110,120,130,140は、車輪31~34に対して車両前方向FR及び車両後方向BAのいずれか一方に対向するように設けられ、車輪31~34のタイヤから放射される放射音を反射する。吸音部材112,122,132,142は、反射部材110,120,130,140の内部に設けられ、放射音を吸音する。本実施形態では、吸音部材112,122が第1吸音部材の一例であり、吸音部材132,142が第3吸音部材の一例である。
【0035】
本実施形態の車外騒音低減構造100では、
図4に一点鎖線の矢印n11で示されるように、右前輪31のタイヤから発生する騒音が、右前輪31の車両後方向BAに配置された前輪用反射部材110において反射して車両前方向FRに集約される。また、右前輪31のタイヤから発生する騒音の一部は、前輪用反射部材110に設けられた吸音部材112により吸音される。同様に、左前輪32のタイヤから発生する騒音に関しても、
図3及び
図4に一点鎖線の矢印n12に示されるように、前輪用反射部材120により車両前方向FRに集約させつつ、吸音部材122により吸音することができる。
【0036】
また、右後輪33のタイヤから発生する騒音は、
図4に一点鎖線の矢印n13で示されるように、右後輪33の車両前方向FRに配置された後輪用反射部材130において反射して車両後方向BAに集約される。また、右後輪33のタイヤから発生する騒音の一部は、後輪用反射部材130に設けられた吸音部材132により吸音される。同様に、左後輪34のタイヤから発生する騒音に関しても、後輪用反射部材130により車両後方向BAに集約させつつ、吸音部材142により吸音することができる。
【0037】
以上のように、前輪31,32のタイヤ騒音が車両前方向FRに拡散することにより、また後輪33,34のタイヤ騒音が車両後方向BAに拡散することにより、前輪31,32のタイヤ騒音が最大となる位置が車両前方向FRにずれるとともに、後輪33,34のタイヤ騒音が最大となる位置が車両後方向BAにずれる。すなわち、前輪31,32のタイヤ騒音が最大となる位置と、後輪33,34のタイヤ騒音が最大となる位置とを離間させることができるため、結果的に4輪走行時の車外騒音を低減させることができる。
【0038】
図8は、本実施形態の車外騒音低減構造100を備える車両10の車外騒音を実験的に測定した結果を示したものである。なお、
図8では、前輪用反射部材110,120及び後輪用反射部材130,140の全てを車両10に設けた場合の実験結果が実線L10で示され、前輪用反射部材110,120のみを車両10に設けた場合の実験結果が一点鎖線L11で示され、後輪用反射部材130,140のみを車両10に設けた場合の実験結果が二点鎖線L12で示されている。
【0039】
図8に実線L10で示されるように、本実施形態の車外騒音低減構造100のように前輪用反射部材110,120及び後輪用反射部材130,140の全てを車両10に設けた場合、車外の騒音レベルを69dB以下に抑えることができるため、
図2に示される参考例の車両10と比較すると、車外騒音を約2dB程度低減することが可能である。
【0040】
なお、
図8に一点鎖線L11及び二点鎖線L12で示されるように、前輪用反射部材110,120のみを車両10に設けた場合、あるいは後輪用反射部材130,140のみを車両10に設けた場合であっても、車外の騒音レベルを70dB以下に抑えることができ、車外騒音を1dB程度低減することが可能である。これは、例えば前輪用反射部材110,120のみを車両10に設けた場合であっても、前輪31,32のタイヤ騒音が最大となる位置を車両前方向FRにずらすことができるため、前輪31,32のタイヤ騒音が最大となる位置と、後輪33,34のタイヤ騒音が最大となる位置とを離間させることができるからである。後輪用反射部材130,140のみを車両10に設けた場合も同様である。
【0041】
また、前輪用反射部材110,120は、車両後方向BAにおいて前輪31,32に対向して設けられる対向部111a,121aと、対向部111a,121aから前輪31,32のそれぞれの側面に沿って車両前方向FRに延びるように形成される垂れ壁部111b,121bとを備えている。本実施形態では、対向部111a,121aが第1対向部の一例であり、垂れ壁部111b,121bが第1垂れ壁部の一例である。また、後輪用反射部材130,140は、車両前方向FRにおいて後輪33,34に対向して設けられる対向部131a,141aと、対向部131a,141aから後輪33,34のそれぞれの側面に沿って車両後方向BAに延びるように形成される垂れ壁部131b,141bとを備えている。本実施形態では、対向部131a,141aが第2対向部の一例であり、垂れ壁部131b,141bが第2垂れ壁部の一例である。
【0042】
この構成によれば、前輪31,32のそれぞれのタイヤから放射される放射音を前輪用反射部材110,120により車両前方向FRに、より効果的に反射させることができるとともに、後輪33,34のそれぞれのタイヤから放射される放射音を後輪用反射部材130,140により車両後方向BAに、より効果的に反射させることができる。よって、より的確に車外の騒音レベルを低減することが可能である。ここで、反射部材(110等)単独では、タイヤ騒音を単に反射させるため反射される側の騒音が高くなる。反射部材の中に吸音材(112等)を入れると、騒音を柔らかく押し返すことができ、反対側の音を増加させることなく反転させる効果がある。
【0043】
(変形例)
次に、第1実施形態の車外騒音低減構造100の変形例について説明する。
【0044】
本変形例の車外騒音低減構造100は、
図9及び
図10に示されるように、前輪用反射部材110,120のみを備えており、後輪用反射部材130,140を備えていない点で上記実施形態の車外騒音低減構造100と異なる。前輪用反射部材110は、車両10の右フロントフェンダライナにおいて右前輪31のタイヤの車両後方向BAにあたる部分のフェンダライナ下部に固定されている。前輪用反射部材120は、左フロントフェンダライナにおいて左前輪32のタイヤの車両後方向BAにあたる部分のフェンダライナ下部に固定されている。前輪用反射部材110,120は、例えばマッドガードであり、前輪31,32のタイヤから放射される放射音を反射及び吸音することが可能な板状の素材により形成されている。このような素材としては、例えばSAB等のガラス繊維不織布とSAF等のポリエステル繊維とを組み合わせたものを用いることが可能である。
【0045】
このような構成であっても、前輪31,32のタイヤ騒音が最大となる位置を車両前方向FRにずらすことができるため、車外の騒音レベルを低減することが可能である。
【0046】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態の車両10の車外騒音低減構造100について説明する。以下、上記実施形態の車外騒音低減構造100との相違点を中心に説明する。
【0047】
(車外騒音低減構造の構成)
図11及び
図12に示されるように、本実施形態の車外騒音低減構造100は、フェンダライナ41~44にそれぞれ設けられている。
【0048】
左フロントフェンダライナ42は反射部材420及び吸音部材421により構成されている。
【0049】
反射部材420は、フェンダライナ42において左前輪32の車両後方向BAにあたる部分に設けられている。反射部材420は、左前輪32のタイヤ接地面から放射される放射音を吸音しつつソフトに反射させることが可能な素材、例えばSAB等のガラス繊維不織布により形成されている。
【0050】
吸音部材421は、フェンダライナ42において左前輪32の上方及び車両前方向FRにあたる部分に設けられている。吸音部材421は、反射部材420において反射された反射音を吸音することが可能な素材、例えばSAF等のポリエステル繊維により形成されている。
【0051】
右フロントフェンダライナ41も、同様に、反射部材410及び吸音部材411により構成されている。反射部材410及び吸音部材411のそれぞれの構成は、左フロントフェンダライナ42の反射部材420及び吸音部材421のそれぞれの構成と同一又は類似であるため、それらの詳細な説明は割愛する。
【0052】
左リアフェンダライナ44は反射部材440及び吸音部材441により構成されている。反射部材440は、フェンダライナ44において左後輪34の車両前方向FRにあたる部分に設けられている。吸音部材441は、フェンダライナ44において左後輪34の上方及び車両後方向BAにあたる部分に設けられている。反射部材440及び吸音部材441のそれぞれの素材としては、左フロントフェンダライナ42の反射部材420及び吸音部材421のそれぞれの素材と同一又は類似のものを用いることができる。
【0053】
右リアフェンダライナ43も、同様に、反射部材430及び吸音部材431により構成されている。反射部材430及び吸音部材431のそれぞれの構成は、左リアフェンダライナ44の反射部材440及び吸音部材441のそれぞれの構成と同一又は類似であるため、それらの詳細な説明は割愛する。
【0054】
(第2実施形態の車外騒音低減構造の作用及び効果)
本実施形態の車両10の車外騒音低減構造100は、上述の通り、反射部材410,420,430,440と、吸音部材411,421,431,441とを備えている。反射部材410,420は、前車輪31,32に対向するように車両後方向BAに設けられ、反射部材430,440は、後車輪33,34に対向するように車両前方向FRに設けられ、車輪31~34のタイヤから放射される放射音をそれぞれ前後に反射する。吸音部材411,421,431,441は、反射部材410,420,430,440の反対側に設けられ、反射音を吸音する。吸音部材411,421が第1吸音部材の一例であり、吸音部材431,441が第3吸音部材の一例である。
【0055】
この構成であっても、第1実施形態の車外騒音低減構造100と同一又は類似の作用及び効果を奏することが可能である。
【0056】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態の車両10の車外騒音低減構造100について説明する。以下、上記各実施形態の車外騒音低減構造100との相違点を中心に説明する。
【0057】
(車外騒音低減構造の構成)
図13及び
図14に示されるように、車両本体20の右側面部及び左側面部には、乗降口としての開口部OR、OLがそれぞれ設けられている。車両本体20は、開口部OR、OLのそれぞれの下側の辺に沿って車両前後方向FBに延びるように形成される左右一対のロッカー部21,22を備えている。ロッカー部21はフロアーパネルと接合しながら開口部ORの下部を補強しており、ロッカー部22はフローパネルと接合しながら開口部OLの下部を補強している。
【0058】
図15は、
図14のXV-XV線に沿った断面構造を示す断面図である。
図15に示されるように、本実施形態の車外騒音低減構造100は、ロッカー部21の下面に隣接して配置される吸音部材150を備えている。吸音部材150の、車両前後方向FBに直交する断面形状は凹状に近い形状である。
図13及び
図14に示されるように、吸音部材150は、ロッカー部21の下面に沿って車両前後方向FBに延びるように形成されている。吸音部材150は、車輪31~34のそれぞれのタイヤから放射される騒音を吸音することが可能な素材、例えばSAB+SAF等の吸音板材+ポリエステル繊維により形成されている。
【0059】
車外騒音低減構造100は、ロッカー部22の下面に隣接して配置される吸音部材160を更に備えている。吸音部材160の構造は吸音部材150と同一又は類似であるため、その説明は割愛する。
【0060】
(第3実施形態の車外騒音低減構造の作用及び効果)
本実施形態の車両10の車外騒音低減構造100は、上述の通り、車両のロッカー部21,22の下面に隣接して設けられる吸音部材150,160を備える。吸音部材150は、右前輪31から車両後方向BAに放射される放射音、及び右後輪33から車両前方向FRに放射される放射音を吸音する。吸音部材160は、左前輪32から車両後方向BAに放射される放射音、及び左後輪34から車両前方向FRに放射される放射音を吸音する。本実施形態では、吸音部材150,160が第5吸音部材の一例である。
【0061】
この構成によれば、車輪31~34から放射される放射音を吸音部材150,160により吸音することができ、前輪の後方、後輪の前方の騒音が低減し、前輪・後輪の騒音の主方向が前後に分離することにより、車外騒音レベルを更に低減することが可能である。
【0062】
<第4実施形態>
次に、第4実施形態の車両10の車外騒音低減構造100について説明する。以下、上記各実施形態の車外騒音低減構造100との相違点を中心に説明する。
【0063】
(車外騒音低減構造の構成)
図16及び
図17に示されるように、本実施形態の車外騒音低減構造100は、吸音ボックス170,180を備えている。本実施形態では、吸音ボックス170が第2吸音部材の一例であり、吸音ボックス180が第4吸音部材の一例である。
【0064】
吸音ボックス170は、前輪タイヤ前方の、車両10の先端部の中央の下方にあたる部分に設けられている。
図18に示されるように、吸音ボックス170は、車両左右方向RLに延びるように形成される筒状体である。吸音ボックス170は、その中央に開口部171を有している。
図17に示されるように、開口部171は車体中心線m20上に位置している。開口部171は、車両後方向BAの前輪方向に向けて開口するように形成されている。
【0065】
図16及び
図17に示されるように、吸音ボックス180は、後輪タイヤ後方の、車両10の後端部の中央の下方にあたる部分に設けられている。吸音ボックス180は、吸音ボックス170と同一又は類似の構造を有している。ただし、吸音ボックス180の開口部181は、車両前方向FRの後輪方向に向けて開口するように形成されている。
【0066】
なお、吸音ボックス170,180のそれぞれの内部には、騒音を吸音することが可能なSAF等の内部吸音部材が詰め込まれていてもよい。
【0067】
(第4実施形態の車外騒音低減構造の作用及び効果)
本実施形態の車両10の車外騒音低減構造100では、
図17に矢印n21,n22で示されるように、前輪31,32の車両後方向BAの部分で反射した反射音が開口部171を通じて吸音ボックス170の内部に集められることにより吸音又は消音される。同様に、
図17に矢印n23,n24で示されるように、後輪33,34の車両前方向FRの部分で反射した反射音が開口部181を通じて吸音ボックス180の内部に集められることにより吸音又は消音される。これにより、反射音が車外に拡散することを抑制できるため、より的確に車外騒音レベルを低減することが可能である。
【0068】
(変形例)
次に、第4実施形態の車両10の車外騒音低減構造100の変形例について説明する。
【0069】
本変形例では、
図19に示されるように、吸音ボックス170に開口部172,173が形成されている。
図20に示されるように、開口部172,173は右前輪31及び左前輪32に向かってそれぞれ開口している。
【0070】
同様に、
図20に示されるように、吸音ボックス180には開口部182,183が形成されている。開口部182,183は右後輪33及び左後輪34に向かってそれぞれ開口している。
【0071】
この構成によれば、
図20に矢印n25,n26で示されるように前輪31,32のそれぞれのタイヤから車両前方向FRに向かって放射される放射音が開口部172,173を通じて吸音ボックス170の内部に集められることにより吸音又は消音される。同様に、
図20に矢印n27,n28で示されるように後輪33,34のそれぞれのタイヤから車両後方向BAに向かって放射される放射音が開口部182,183を通じて吸音ボックス180の内部に集められることにより吸音又は消音される。これにより、放射音が車外に拡散することを抑制できるため、より的確に車外騒音レベルを低減することが可能である。
【0072】
<第5実施形態>
次に、第5実施形態の車両10の車外騒音低減構造100について説明する。以下、上記各実施形態の車外騒音低減構造100との相違点を中心に説明する。
【0073】
(車外騒音低減構造の構成)
図21及び
図22に示されるように、本実施形態の車外騒音低減構造100は、前輪用整流構造310,320と、後輪用整流構造330,340とを備えている。
【0074】
前輪用整流構造320は、車両本体20の底面において左前輪32の前方にあたる部分に設けられている。前輪用整流構造320は、左前輪32のタイヤから車両前方向FRに放射される騒音を吸音することが可能な素材、例えばSAB+SAF等の吸音板材+ポリエステル繊維により形成されている。前輪用整流構造310及び後輪用整流構造330,340も前輪用整流構造320と同一又は類似の形状を有している。
【0075】
(第5実施形態の車外騒音低減構造の作用及び効果)
本実施形態の車外騒音低減構造100では、前輪用整流構造310,320が吸音可能な素材により形成されることにより、前輪用整流構造310,320が設けられていない場合と比較すると、音響的に、前輪31,32から放射された放射音が通過可能な通路を広げることが可能である。これにより、前輪31,32から放射された放射音が前輪用整流構造310,320を通じて車両前方向FRに拡散し易くなる。同様に、後輪用整流構造330,340が吸音可能な素材により形成されることにより、後輪33,34から放射された放射音が後輪用整流構造330,340を通じて車両後方向BAに拡散し易くなる。これにより、例えばホイールハウス内の音を低減することが可能であり、且つ前後輪のタイヤ騒音の広がりが前後に分離されるため、より的確に車外騒音を低減することが可能である。
【0076】
(変形例)
次に、第5実施形態の車両10の車外騒音低減構造100の変形例について説明する。
【0077】
本変形例の車外騒音低減構造100では、
図23及び
図24に示されるように、前輪用整流構造320が、左フロントフェンダライナの車両前方向FR側の部分及び車両本体20の底面において左前輪32の前方にあたる部分を網状又は格子状に形成したものとして構成されている。前輪用整流構造310も同一又は類似の形状を有している。
【0078】
後輪用整流構造340は、車両10のリアバンパ45において左後輪34の車両後方向BAにあたる部分を網状又は格子状に形成したものとして構成されている。後輪用整流構造330も同一又は類似の形状を有している。
【0079】
このような構成によれば、前輪31,32から放射された放射音が前輪用整流構造310,320から車両のフロントグリルを通過して車両前方向FRに拡散し易くなる。また、後輪33,34から放射された放射音が後輪用整流構造330,340を通じて車両後方向BAに拡散し易くなる。これにより、例えばホイールハウス内の音を低減することが可能であり、且つ前後輪のタイヤ騒音の広がりが前後に分離されるため、より的確に車外騒音を低減することが可能である。
【0080】
<第6実施形態>
次に、第6実施形態の車両10の車外騒音低減構造100について説明する。以下、上記各実施形態の車外騒音低減構造100との相違点を中心に説明する。
【0081】
(車外騒音低減構造の構成)
図25及び
図26に示されるように、本実施形態の車外騒音低減構造100は、車輪31~34にそれぞれ取り付けられる吸音部材710,720,730,740を備えている。
【0082】
吸音部材720は、左前輪32のホイールキャップとして用いられるものである。吸音部材720は、音を吸音することが可能な素材、例えばSAB等のガラス繊維含浸吸音板材、SAF等のポリエステル繊維、及びそれらの組み合わせ等により形成されている。吸音部材710,730,740は、吸音部材720と同一又は類似の素材により形成されており、右前輪31のホイールキャップ、右後輪33のホイールキャップ、及び左後輪34のホイールキャップとしてそれぞれ用いられている。本実施形態では、吸音部材710,720,730,740が第6吸音部材の一例である。
【0083】
(第6実施形態の車外騒音低減構造の作用及び効果)
本実施形態の車外騒音低減構造100では、例えば左前輪32のホイールハウス内の車両後方向BA側の部分で反射した反射音、及びホイールハウス内に流入したタイヤ放射音が吸音部材720により吸音されることにより、左前輪32のホイールハウス内の音圧を下げることができる。同様に、右前輪31のホイールハウス、右後輪33のホイールハウス、及び左後輪34のホイールハウスのそれぞれの音圧を下げることもできる、これにより、より的確に車外騒音を低減することが可能である。
【0084】
(第1変形例)
次に、第6実施形態の車両10の車外騒音低減構造100の第1変形例について説明する。
【0085】
本変形例の車外騒音低減構造100では、
図27及び
図28に示されるように、吸音部材720が、左前輪32のホイールハウスの車両右方向RH側のインナーパネル52のタイヤ側に設けられている。同様に、吸音部材710は、右前輪31のホイールハウスの車両左方向LH側のインナーパネル51のタイヤ側に設けられている。また、吸音部材730は、右後輪33のホイールハウスの車両左方向LH側のインナーパネル53のタイヤ側に設けられている。さらに、吸音部材740は、左後輪34のホイールハウスの車両右方向RH側のインナーパネル54のタイヤ側に設けられている。
【0086】
このような構成であっても、第6実施形態の車外騒音低減構造100と同一又は類似の作用及び効果を得ることが可能である。
【0087】
(第2変形例)
次に、第6実施形態の車両10の車外騒音低減構造100の第2変形例について説明する。
【0088】
本変形例の車外騒音低減構造100では、
図29及び
図30に示されるように、吸音部材710,720,730,740が車輪31~34のタイヤホイールの内側にそれぞれ設けられている。
【0089】
このような構成であっても、第6実施形態の車外騒音低減構造100と同一又は類似の作用及び効果を得ることが可能である。
【0090】
<第7実施形態>
次に、第7実施形態の車両10の車外騒音低減構造100について説明する。以下、上記各実施形態の車外騒音低減構造100との相違点を中心に説明する。
【0091】
(車外騒音低減構造の構成)
図31に示されるように、本実施形態の車外騒音低減構造100は、すくいあげ部材520,540と、吸音箱620,640とを備えている。
【0092】
すくいあげ部材520は、左前輪32の車両後方向BAにおいて車両本体20の底面から地面210に向かって突出するように形成されている。すくいあげ部材520は、左前輪32のタイヤから車両後方向BAに向かって放射される放射音を吸音箱620に導くことが可能な素材、例えばSAB等のガラス繊維含浸吸音板材により形成されている。
【0093】
吸音箱620は、左フロントフェンダライナ42の車両後方向BAであって、且つすくいあげ部材520の車両上方にあたる部分に設けられている。左フロントフェンダライナ42には、左前輪32のホイールハウスと吸音箱620とを連通させるための孔空き構造42aが設けられている。吸音箱620は、すくいあげ部材520により導かれた放射音を吸音することが可能な素材、例えばSAF等のポリエステル繊維を内包する場合もある。
【0094】
なお、車両10の右前輪31にも同様にすくいあげ部材510及び吸音箱610が設けられている。
【0095】
すくいあげ部材540は、左後輪34の車両前方向FRにおいて車両本体20の底面から地面210に向かって突出するように形成されている。すくいあげ部材540も例えばSAB等のガラス繊維含浸吸音板材により形成されている。吸音箱640は、左リアフェンダライナ44の車両前方向FRであって、且つすくいあげ部材540の車両上方にあたる部分に設けられている。左リアフェンダライナ44には、左後輪34のホイールハウスと吸音箱640とを連通させるための図示しない孔空き構造が設けられている。
【0096】
なお、車両10の右後輪33にも同様にすくいあげ部材530及び吸音箱630が設けられている。
【0097】
(第7実施形態の車外騒音低減構造の作用及び効果)
本実施形態の車外騒音低減構造100では、例えば
図31に矢印n42で示されるように、左前輪32のタイヤから車両後方向BAに放射された放射音がすくいあげ部材520に沿って吸音箱620に集められて吸音箱620により吸音される。同様に左後輪34のタイヤから車両前方向FRに放射された放射音がすくいあげ部材540に沿って吸音箱640に集められて吸音箱640により吸音される。このように、本実施形態の車外騒音低減構造100では、各車輪31~34から放射される放射音を効率的に吸音することができるため、より的確に車外騒音レベルを低減することが可能である。
【0098】
(変形例)
次に、第7実施形態の車外騒音低減構造100の変形例について説明する。
【0099】
本実施形態では、
図32に示されるように、すくいあげ部材520は、左前輪32のタイヤに流れ込む空気の抵抗を減らすことが可能なスパッツと同一又は類似の形状を有していてもよい。なお、図示は省略するが、右前輪31、右後輪33、及び左後輪34に関しても同一又は類似の構造が設けられている。
【0100】
このような構成であっても、第7実施形態の車外騒音低減構造100と同一又は類似の作用及び効果を得ることができる。
【0101】
<他の実施形態>
本開示は上記の具体例に限定されるものではない。
【0102】
例えば、各実施形態及び変形例の車外騒音低減構造100の構成は、互いに組み合わせて用いることが可能である。
【0103】
車外騒音低減構造100を構成する各要素の形状や素材等は適宜変更可能である。
【0104】
各車輪31~34のタイヤから放射される放射音を更に低減するために、各車輪31~34にホイールスカートを設けてもよい。
【0105】
上記の具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素、及びその配置、条件、形状等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0106】
10:車両、20:車両本体、21,22:ロッカー部、31~34:車輪、100:車外騒音低減構造、110,120:前輪用反射部材、111a,121a:対向部(第1対向部)、111b,121b:垂れ壁部(第1垂れ壁部)、112,122,411,421:吸音部材(第1吸音部材)、132,142,431,441:吸音部材(第3吸音部材)、620,640:吸音箱、130,140:後輪用反射部材、131a,141a:第2対向部、131b,141b:第2垂れ壁部、150,160:第5吸音部材、170:吸音ボックス(第2吸音部材)、180:吸音ボックス(第4吸音部材)、410,420:反射部材(前輪用反射部材)、430,440:反射部材(後輪用反射部材)、520,540:すくいあげ部材、710,720,730,740:吸音部材(第6吸音部材)。
【要約】
【課題】車外騒音を低減することが可能な車両の車外騒音低減構造を提供する。
【解決手段】車両10の車外騒音低減構造100は、反射部材110,120,130,140と、吸音部材112,122,132,142と、を備える。反射部材110,120,130,140は、車両10の車輪31~34に対して車両前方向及び車両後方向のいずれか一方に対向するように設けられ、車輪31~34のタイヤから放射される放射音を、前輪は前側に、後輪は後ろ側に反射する。吸音部材112,122,132,142は、放射音、及び反射部材で反射された反射音の少なくとも一方を吸音する。そして、前輪、後輪から放射する音を前後に離間させることによって車外騒音を低減する手法。
【選択図】
図4