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  • 特許-インビボ分析物信号劣化の媒介 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-14
(45)【発行日】2025-07-23
(54)【発明の名称】インビボ分析物信号劣化の媒介
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/1468 20060101AFI20250715BHJP
   A61B 5/1455 20060101ALI20250715BHJP
【FI】
A61B5/1468
A61B5/1455
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2024513041
(86)(22)【出願日】2022-08-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(86)【国際出願番号】 US2022075489
(87)【国際公開番号】W WO2023028572
(87)【国際公開日】2023-03-02
【審査請求日】2024-04-23
(31)【優先権主張番号】63/237,396
(32)【優先日】2021-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501078166
【氏名又は名称】センセオニクス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】チャテジー,ジュン
(72)【発明者】
【氏名】モハンティー,サナート
(72)【発明者】
【氏名】ハフステトラー,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ベルバダプ,ベンカタ
(72)【発明者】
【氏名】トレス,ジュニア,レオポルド
【審査官】遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-091357(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0054251(US,A1)
【文献】国際公開第2020/172540(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/026044(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06-5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生きている動物内の媒体中の分析物を測定するためのセンサーであって、センサーが、
センサーハウジング、
センサーハウジングの少なくとも一部を覆う分析物指示薬、および
分析物指示薬の分解を低減するボロネートまたはボロン酸部分を含む1種以上の化合物を含み、ボロン酸含有部分を含む1種以上の化合物が、式I:
【化1】
(式中、R=メチレンまたはアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、環式基、多環式基、ポリアルキレングリコール基、ポリエチレングリコール(PEG)基、直鎖または置換ポリアルキレングリコールもしくはPEG基、またはそれらの組合せである)の化合物、またはボロン酸が、式II:
【化2】
(式中、XおよびY=アルキルである)のボロネート基で置換されている式Iの化合物である、センサー。
【請求項2】
生きている動物内に埋め込み可能である、請求項1に記載のセンサー。
【請求項3】
ボロネートまたはボロン酸部分を含む1種以上の化合物が、分析物指示薬とのコモノマーである、請求項1に記載のセンサー。
【請求項4】
ボロネートまたはボロン酸部分を含む1種以上の化合物が、ヒドロゲル中の分析物指示薬とのコモノマーである、請求項1に記載のセンサー。
【請求項5】
ボロネートまたはボロン酸部分を含む1種以上の化合物が、センサーハウジングの少なくとも一部を覆うヒドロゲルに封入されている、請求項1に記載のセンサー。
【請求項6】
ボロネートまたはボロン酸部分を含む化合物が、
【化3】
から選択される、請求項1~のいずれか一項に記載のセンサー。
【請求項7】
センサーハウジングの少なくとも一部を覆う分析物指示薬が、式II:A[式II]による4つのモノマーのコモノマーを含むポリマーを含み、
Aが分析物指示薬モノマーであり、Bがメタクリレートモノマーであり、Cがポリエチレングリコールモノマーであり、Dがボロネートまたはボロン酸部分を含む化合物またはモノマーであり、Aが全ポリマーの0.01~10重量%であり、Bが1~99重量%であり、Cが1~99重量%であり、Dが0.01~99重量%である、請求項1~のいずれか一項に記載のセンサー。
【請求項8】
ボロネートまたはボロン酸部分を含む1種以上の化合物が、分析物指示薬モノマーに対して0.1~100のモル比で提供される、請求項に記載のセンサー。
【請求項9】
センサーハウジングの一部を覆う少なくとも1つの薬物溶出ポリマーマトリックスを含む、請求項1に記載のセンサー。
【請求項10】
生きている動物内の媒体中の分析物を測定するためのセンサーを製作する方法であって、方法が、
適用された分析物指示薬がセンサーハウジングの少なくとも一部を覆うように、センサーのセンサーハウジングに分析物指示薬を適用するステップを含み、分析物指示薬が、分析物指示薬の分解を低減するボロネートまたはボロン酸部分を含む1種以上の化合物を含み、ボロン酸含有部分を含む1種以上の化合物が、式I:
【化4】
(式中、R=メチレンまたはアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、環式基、多環式基、ポリアルキレングリコール基、ポリエチレングリコール(PEG)基、直鎖または置換ポリアルキレングリコールもしくはPEG基、またはそれらの組合せである)の化合物、またはボロン酸が、式II:
【化5】
(式中、XおよびY=アルキルである)のボロネート基で置換されている式Iの化合物である、方法。
【請求項11】
ボロネートまたはボロン酸部分を含む1種以上の化合物が、分析物指示薬とのコモノマーである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ボロネートまたはボロン酸部分を含む1種以上の化合物が、ヒドロゲル中の分析物指示薬とのコモノマーである、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
ボロネートまたはボロン酸部分を含む1種以上の化合物が、センサーハウジングの少なくとも一部を覆うヒドロゲルに封入される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
ボロネートまたはボロン酸部分を含む1種以上の化合物が、センサーデバイスの信号の完全性または性能を損なうことなく分解種と相互作用または反応し、分解種が、過酸化水素、活性酸素種、活性窒素種、酵素、フリーラジカルまたは金属イオンである、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
化合物ボロネートまたはボロン酸部分が、
【化6】
から選択される、請求項10~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
センサーハウジングの少なくとも一部を覆う分析物指示薬が、式III:ABCD[式III]による4つのモノマーのコモノマーを含むポリマーを含み、
Aが分析物指示薬モノマーであり、Bがメタクリレートモノマーであり、Cがポリエチレングリコールモノマーであり、Dがボロネートまたはボロン酸部分を含む化合物またはモノマーであり、Aが全ポリマーの0.01~10重量%であり、Bが1~99重量%であり、Cが1~99重量%であり、Dが0.01~99重量%である、請求項10~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
ボロネートまたはボロン酸部分を含む1種以上の化合物が、分析物指示薬モノマーに対して0.1~100のモル比で提供される、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2021年8月26日出願の米国仮出願第63/237,396号の優先権の利益を主張する。
【0002】
[0002]発明の分野
[0003]本発明は、一般に、生きている動物に埋め込まれた(部分的もしくは完全に)または挿入されたセンサーを含むシステムを使用して生きている動物の媒体中の分析物を測定する際の、分析物センサー部分のインビボ分解の継続的な低減に関する。具体的には、本発明は、分析物指示薬内に組み込まれてもよい1種以上の添加剤、および/または分析物指示薬の少なくとも一部を覆う材料を利用するセンサーに関する。
【背景技術】
【0003】
[0004]背景の考察
[0005]センサーは、生きている動物(例えば、ヒト)内に埋め込まれ(部分的または完全に)、生きている動物内の媒体(例えば、間質液(ISF)、血液、または腹腔内液)中の分析物(例えば、グルコース、酸素、心臓マーカー、低比重リポタンパク質(LDL)、高比重リポタンパク質(HDL)、またはトリグリセリド)を測定するために使用され得る。センサーは、光源(例えば、発光ダイオード(LED)または他の発光素子)、指示薬分子、および光検出器(例えば、フォトダイオード、フォトトランジスタ、フォトレジスタまたは他の感光素子)を含んでもよい。分析物を測定するために指示薬分子を利用する埋め込み型センサーの例は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,517,313号および第5,512,246号に記載されている。
【0004】
[0006]センサーは、グラフト(すなわち、層またはマトリックス)に包埋された指示薬分子の形態であり得る分析物指示薬を含んでもよい。例えば、埋め込み可能蛍光系グルコースセンサーでは、蛍光指示薬分子はグルコースと可逆的に結合し、励起光(例えば、約378nmの波長を有する光)が照射されると、グルコースが指示薬分子に結合しているかどうかに依存する量の光(例えば、400~500nmの範囲の光)を放出してもよい。
【0005】
[0007]センサーが生きている動物の体内に埋め込まれた場合、動物の免疫系がセンサーを攻撃し始める場合がある。例えば、センサーがヒトに埋め込まれた場合、白血球がセンサーを異物として攻撃する場合があり、最初の免疫系の猛攻撃では、好中球がセンサーを攻撃する主要な白血球である可能性がある。好中球の防御機構には、活性酸素種として公知の高度に腐食性の物質の放出が含まれる。活性酸素種には、例えば、過酸化水素が含まれる。
【0006】
[0008]過酸化水素ならびに活性酸素および窒素種などの他の反応性種は、分析物指示薬の指示薬分子を分解する可能性がある。例えば、ボロネート基を有する指示薬分子では、過酸化水素がボロネート基を酸化することによって指示薬分子を分解し、したがって指示薬分子がグルコースに結合する能力を損なわせる可能性がある。
【0007】
[0009]現在、当技術分野では、分析物指示薬の分解の低減の改善が必要とされている。また、当技術分野では、寿命が延長した継続的分析物センサーが必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
[0010]本発明は、数ある利点の中でも、分析物指示薬の分解の低減をもたらすことによって先行システムの欠点を克服する。
【0009】
[0011]本発明の一態様は、生きている動物内に埋め込まれるかまたは挿入され、生きている動物内の媒体中の分析物を測定するためのセンサーを提供する。センサーは、センサーハウジング、センサーハウジングの少なくとも一部を覆う分析物指示薬、および分析物指示薬の分解を低減する1種以上の添加剤を含んでもよい。
【0010】
[0012]いくつかの実施形態では、センサーは、少なくとも1種の添加剤含有ポリマーグラフトを含んでもよく、1種以上の添加剤は、添加剤含有ポリマーグラフトと共重合されてもよいか、またはその中に分散されてもよい。いくつかの実施形態では、添加剤含有ポリマーグラフトは、センサーハウジングの少なくとも一部を覆ってもよい。いくつかの実施形態では、添加剤含有ポリマーグラフトは、センサーハウジング内に存在してもよい。
【0011】
[0013]いくつかの実施形態では、1種以上の添加剤は、例えば、コモノマーとして分析物指示薬と共に組み込まれてもよい。いくつかの実施形態では、センサーは、分析物指示薬の少なくとも一部を覆う材料、例えば膜を含んでもよく、1種以上の添加剤は材料内に組み込まれる。
【0012】
[0014]本発明の別の態様は、生きている動物内の媒体中の分析物を測定するためのセンサーを提供する。センサーは、センサーハウジング、センサーハウジングの少なくとも一部を覆う分析物指示薬、および分析物指示薬の分解を低減するボロネートまたはボロン酸部分を含む1種以上の化合物を含んでもよい。ボロン酸含有部分を含む1種以上の化合物は、式I:
【0013】
【化1】
【0014】
(式中、R=メチレンまたはアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、環式基、多環式基、ポリアルキレングリコール基、ポリエチレングリコール(PEG)基、直鎖または置換ポリアルキレングリコールもしくはPEG基、またはそれらの組合せである)の化合物、またはボロン酸が、式II:
【0015】
【化2】
【0016】
(式中、XおよびY=アルキルである)のボロネート基で置換されている式Iの化合物であってもよい。
【0017】
[0015]いくつかの実施形態では、センサーは、生きている動物内に埋め込み可能であってもよい。いくつかの実施形態では、ボロネートまたはボロン酸部分を含む1種以上の化合物は、分析物指示薬とのコモノマーであってもよい。いくつかの実施形態では、ボロネートまたはボロン酸部分を含む1種以上の化合物は、ヒドロゲル中の分析物指示薬とのコモノマーであってもよい。いくつかの実施形態では、ボロネートまたはボロン酸部分を含む1種以上の化合物は、センサーハウジングの少なくとも一部を覆うヒドロゲルに封入されてもよい。
【0018】
[0016]いくつかの実施形態では、ボロネートまたはボロン酸部分を含む1種以上の化合物は、分析物指示薬の化学的分解および/または酸化を低減し得る。いくつかの実施形態では、ボロネートまたはボロン酸部分を含む1種以上の化合物は、分析物指示薬の分解速度を低減し得る。いくつかの実施形態では、ボロネートまたはボロン酸部分を含む1種以上の化合物は、分解種に結合し得る。いくつかの実施形態では、ボロン酸含有部分を含む1種以上の化合物は、分解種による分析物指示薬の分解を低減するおよび/または防止するように、分解種を封鎖し得る。
【0019】
[0017]いくつかの実施形態では、ボロネートまたはボロン酸部分を含む化合物は、
【0020】
【化3】
【0021】
から選択されてもよい。
【0022】
[0018]いくつかの実施形態では、センサーハウジングの少なくとも一部を覆う分析物指示薬は、式II:AxByCzDw[式II]による4つのモノマーのコモノマーを含むポリマーを含んでもよく、Aは分析物指示薬モノマーであってもよく、Bはメタクリレートモノマーであってもよく、Cはポリエチレングリコールモノマーであってもよく、Dはボロネートまたはボロン酸部分を含む化合物またはモノマーであってもよく、Aは全ポリマーの0.01~10重量%であってもよく、Bは1~99重量%であってもよく、Cは1~99重量%であってもよく、Dは0.01~99重量%であってもよい。いくつかの実施形態では、ボロネートまたはボロン酸部分を含む1種以上の化合物は、分析物指示薬モノマーに対して0.1~100のモル比で提供され得る。
【0023】
[0019]いくつかの実施形態では、センサーは、センサーハウジングの一部を覆う少なくとも1つの薬物溶出ポリマーマトリックスを含み得る。
【0024】
[0020]本発明のさらに別の態様は、生きている動物内の媒体中の分析物を測定するためのセンサーを製作する方法を提供する。方法は、適用された分析物指示薬がセンサーハウジングの少なくとも一部を覆うように、センサーのセンサーハウジングに分析物指示薬を適用するステップを含んでもよく、分析物指示薬は、分析物指示薬の分解を低減するボロネートまたはボロン酸部分を含む1種以上の化合物を含んでもよい。ボロン酸含有部分を含む1種以上の化合物は、式I:
【0025】
【化4】
【0026】
(式中、R=メチレンまたはアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、環式基、多環式基、ポリアルキレングリコール基、ポリエチレングリコール(PEG)基、直鎖または置換ポリアルキレングリコールもしくはPEG基、またはそれらの組合せである)の化合物、またはボロン酸が、式II:
【0027】
【化5】
【0028】
(式中、XおよびY=アルキルである)のボロネート基で置換されている式Iの化合物から選択されてもよい。
【0029】
[0021]いくつかの実施形態では、ボロネートまたはボロン酸部分を含む1種以上の化合物は、分析物指示薬とのコモノマーであってもよい。いくつかの実施形態では、ボロネートまたはボロン酸部分を含む1種以上の化合物は、ヒドロゲル中の分析物指示薬とのコモノマーであってもよい。いくつかの実施形態では、ボロネートまたはボロン酸部分を含む1種以上の化合物は、センサーハウジングの少なくとも一部を覆うヒドロゲルに封入されてもよい。
【0030】
[0022]いくつかの実施形態では、ボロネートまたはボロン酸部分を含む1種以上の化合物は、分析物指示薬の化学的分解および/または酸化を低減し得る。いくつかの実施形態では、ボロネートまたはボロン酸部分を含む1種以上の化合物は、分析物指示薬の分解速度を低減し得る。
【0031】
[0023]いくつかの実施形態では、ボロネートまたはボロン酸部分を含む1種以上の化合物は、センサーデバイスの信号完全性または性能を損なうことなく分解種と相互作用または反応することができ、分解種は、過酸化水素、活性酸素種、活性窒素種、酵素、フリーラジカル、または金属イオンであってもよい。いくつかの実施形態では、ボロネートまたはボロン酸部分を含む1種以上の化合物は、分解種に結合し得る。いくつかの実施形態では、ボロネートまたはボロン酸部分を含む1種以上の化合物は、分解種による分析物指示薬の分解を低減するおよび/または防止するように、分解種を封鎖し得る。
【0032】
[0024]いくつかの実施形態では、化合物ボロネートまたはボロン酸部分は、
【0033】
【化6】
【0034】
から選択されてもよい。
【0035】
[0025]いくつかの実施形態では、センサーハウジングの少なくとも一部を覆う分析物指示薬は、式III:ABCD[式III]による4つのモノマーのコモノマーを含むポリマーを含んでもよく、Aは分析物指示薬モノマーであってもよく、Bはメタクリレートモノマーであってもよく、Cはポリエチレングリコールモノマーであってもよく、Dはボロネートまたはボロン酸部分を含む化合物またはモノマーであってもよく、Aは全ポリマーの0.01~10重量%であってもよく、Bは1~99重量%であってもよく、Cは1~99重量%であってもよく、Dは0.01~99重量%であってもよい。
【0036】
[0026]いくつかの実施形態では、ボロネートまたはボロン酸部分を含む1種以上の化合物は、分析物指示薬モノマーに対して0.1~100のモル比で提供されてもよい。
【0037】
[0027]システムおよび方法に包含されるさらなる変形は、以下の発明の詳細な説明に記載されている。
【0038】
[0028]本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、本発明の様々な非限定的な実施形態を示す。図面において、同様の参照番号は、同一または機能的に同様の要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】[0029]本発明の態様を具現化するセンサーシステムを示す概略図である。
図2】[0030]本発明の態様を具現化するセンサーの透視図を示す図である。
図3】[0031]本発明の態様を具現化するセンサーの分解図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
[0032]図1は、本発明の態様を具現化するセンサーシステムの概略図である。いくつかの非限定的な実施形態では、図1に示されるように、システムは、センサー100および外部トランシーバ101を含むことができる。いくつかの実施形態では、センサー100は、生きている動物(例えば、生きているヒト)に完全にまたは部分的に埋め込まれるように構成された埋め込み可能センサーであってもよい。センサー100は、例えば、生きている動物の腕、手首、脚、腹部、腹膜、またはセンサーの埋め込みに好適な生きている動物の他の領域に埋め込まれてもよい。例えば、いくつかの非限定的な実施形態では、センサー100は、皮膚の下(すなわち、皮下または腹膜組織内)に埋め込まれてもよい。しかし、これは必須ではなく、いくつかの代替的な実施形態では、センサー100は経皮センサーであってもよい。
【0041】
[0033]いくつかの実施形態では、トランシーバ101は、センサー100に電力を供給し、センサー100にコマンドおよび/もしくはデータを提供し、ならびに/またはセンサー100からデータを受信するためにセンサー100と通信する電子デバイスであってもよい。いくつかの実施形態では、受信されたデータは、1つ以上のセンサー測定値を含んでもよい。いくつかの実施形態では、センサー測定値は、例えば、限定するものではないが、センサー100の1つ以上の光検出器からの1つ以上の光測定値、および/またはセンサー100の1つ以上の温度センサーからの1つ以上の温度測定値を含んでもよい。いくつかの実施形態では、トランシーバ101は、センサー100から受信した測定情報から分析物(例えば、グルコース)濃度を計算することができる。
【0042】
[0034]いくつかの非限定的な実施形態では、トランシーバ101は、ハンドヘルドデバイスまたはオンボディ/ウェアラブルデバイスであってもよい。例えば、トランシーバ101がオンボディ/ウェアラブルデバイスであるいくつかの実施形態では、トランシーバ101は、バンド(例えば、アームバンドもしくはリストバンド)および/または接着剤によって所定の位置に保持されてもよく、トランシーバ101は、測定コマンド(すなわち、測定情報の要求)をセンサー100に伝達することができる(例えば、2分ごとなど定期的に、および/または使用者起動時に)。トランシーバ101がハンドヘルドデバイスであるいくつかの実施形態では、センサー埋め込み部位上の範囲内(すなわち、センサー100の近接範囲内)にトランシーバ101を位置決めする(すなわち、浮遊させるまたは振る/揺り動かす/通過させる)ことにより、トランシーバ101がセンサー100に測定コマンドを自動的に伝達し、センサー100からデータを受信することができる。
【0043】
[0035]いくつかの実施形態では、図1に示されるように、トランシーバ101は、例えばコイルなどの誘導素子103を含んでもよい。いくつかの実施形態では、トランシーバ101は、電磁波または電気力学的場を生成して(例えば、コイルを使用して)センサー100の誘導素子114に電流を誘導してもよい。いくつかの非限定的な実施形態では、センサー100は、誘導素子114に誘導された電流を使用してセンサー100に電力を供給することができる。しかし、これは必須ではなく、いくつかの代替的な実施形態では、センサー100は、内部電源(例えば、電池)によって電力供給されてもよい。
【0044】
[0036]いくつかの実施形態では、トランシーバ101は、データ(例えば、コマンド)をセンサー100に伝達してもよい。例えば、いくつかの非限定的な実施形態では、トランシーバ101は、誘導素子103によって生成される電磁波を変調することによって(例えば、トランシーバ101の誘導素子103を流れる電流を変調することによって)データを伝達してもよい。いくつかの実施形態では、センサー100は、トランシーバ101によって生成された電磁波における変調を検出/抽出してもよい。さらに、トランシーバ101は、センサー100からデータ(例えば、1つ以上のセンサー測定値)を受信してもよい。例えば、いくつかの非限定的な実施形態では、トランシーバ101は、センサー100によって生成された電磁波における変調を検出することによって、例えば、トランシーバ101の誘導素子103を流れる電流における変調を検出することによってデータを受信してもよい。
【0045】
[0037]いくつかの実施形態では、図1に示されるように、センサー100は、剛性かつ生体適合性であり得るセンサーハウジング102(すなわち、本体、シェル、カプセル、または容器)を含んでもよい。例示的な実施形態では、センサーハウジング102は、例えば、アクリルポリマー(例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA))などの好適な光透過性ポリマー材料から形成されてもよい。
【0046】
[0038]いくつかの実施形態では、図1に示されるように、センサー100は、分析物指示薬106を含んでもよい。いくつかの非限定的な実施形態では、分析物指示薬106は、センサーハウジング102の外表面の少なくとも一部にコーティング、拡散、接着または包埋されたポリマーグラフトであってもよい。分析物指示薬106(例えば、ポリマーグラフト)は、センサーハウジング102の表面全体またはハウジング102の表面の1つ以上の部分のみを覆ってもよい。センサーハウジング102の外面に分析物指示薬106をコーティングする代わりに、分析物指示薬106は、堆積または接着などの他の方法でセンサーハウジング102の外面に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、分析物指示薬106は、蛍光グルコース指示ポリマーであってもよい。非限定的な一実施形態では、ポリマーは生体適合性かつ安定であり、センサーハウジング102の表面にグラフトされ、センサー100の埋め込み後に間質液(ISF)、血液、または腹腔内液中のグルコースを直接測定できるように設計される。いくつかの実施形態では、分析物指示薬106はヒドロゲルであってもよい。
【0047】
[0039]いくつかの実施形態では、センサー100の分析物指示薬106(例えば、ポリマーグラフト)は、指示薬分子104を含んでもよい。指示薬分子104は、分析物指示薬106全体にわたって、または分析物指示薬106の1つ以上の部分にわたってのみ分布していてもよい。指示薬分子104は、ボロネート基を有してもよい。指示薬分子104は、蛍光指示薬分子(例えば、化学名9-[N-[6-(4,4,5,5,-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラノ)-3-(トリフルオロメチル)ベンジル]-N-[3-(メタクリルアミド)プロピルアミノ]メチル]-10-[N-[6-(4,4,5,5,-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラノ)-3-(トリフルオロメチル)ベンジル]-N-[2-(カルボキシエチル)アミノ]メチル]アントラセンナトリウム塩)、または光吸収性非蛍光指示薬分子であってもよい。いくつかの実施形態では、指示薬分子104は、分析物(例えば、グルコース、酸素、心臓マーカー、低比重リポタンパク質(LDL)、高比重リポタンパク質(HDL)、またはトリグリセリド)と可逆的に結合し得る。指示薬分子104が分析物に結合すると、指示薬分子は蛍光性になる可能性があり、この場合、指示薬分子104は励起光329を吸収し(またはそれによって励起され)、光331を放出することができる。非限定的な一実施形態では、励起光329は約378nmの波長を有してもよく、放出光331は400~500nmの範囲の波長を有してもよい。分析物が結合していない場合、指示薬分子104は単に弱蛍光性であってもよい。
【0048】
[0040]いくつかの実施形態では、センサー100は、例えば、発光ダイオード(LED)、または指示薬分子104と相互作用する波長範囲にわたる放射線を含む、放射線を放出する他の光源であってもよい光源108を含むことができる。換言すれば、光源108は、マトリックス層/ポリマー中の指示薬分子104によって吸収される励起光329を放出することができる。上述のように、非限定的な一実施形態では、光源108は、約378nmの波長で励起光329を放出してもよい。
【0049】
[0041]いくつかの実施形態では、センサー100はまた、1つ以上の光検出器(例えば、フォトダイオード、フォトトランジスタ、フォトレジスタまたは他の感光素子)を含むことができる。例えば、図1に示される実施形態では、センサー100は、第1の光検出器224および第2の光検出器226を有する。しかし、これは必須ではなく、いくつかの代替的な実施形態では、センサー100は第1の光検出器224のみを含んでもよい。蛍光系センサーの場合、1つ以上の光検出器は、指示薬分子104によって放出される蛍光光に感受性であってもよく、それによりそれに応答した光検出器(例えば、光検出器224)によって、指示薬分子の蛍光のレベル、ひいては対象の分析物(例えば、グルコース)の量を示す信号が生成される。
【0050】
[0042]光源108によって放出された励起光329の一部は、分析物指示薬106から反射され、反射光333としてセンサー100に戻ってもよく、吸収された励起光の一部は、放出(蛍光)光331として放出されてもよい。非限定的な一実施形態では、放出光331は励起光329の波長とは異なる波長を有してもよい。反射光333および放出(蛍光)光331は、センサー100の本体内の1つ以上の光検出器(例えば、第1および第2の光検出器224および226)によって吸収されてもよい。
【0051】
[0043]1つ以上の光検出器のそれぞれは、特定のサブセットの波長の光のみを通過させるフィルタ112(図3参照)によって覆われてもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上のフィルタ112は、薄いガラスフィルタであってもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上のフィルタ112は、ガラス上に堆積された薄膜(例えば、ダイクロイック)フィルタであってもよく、狭い波長帯域のみを通過させ、そうでなければ受容した光の大部分を反射してもよい。いくつかの実施形態では、フィルタは、光検出器上に直接堆積された薄膜(ダイクロイック)フィルタであってよく、狭い波長帯域のみを通過させ、そうでなければそれにより受容された光の大部分を反射してもよい。フィルタ112は、同一であってもよく(例えば、両方のフィルタ112が信号を通過させてもよい)、異なっていてもよい(例えば、一方のフィルタ112が基準フィルタであってもよく、他方のフィルタ112が信号フィルタであってもよい)。
【0052】
[0044]非限定的な一実施形態では、第2の(基準)光検出器226は、光源108から放出されるのと同じ波長(例えば、378nm)の光を通過させる基準フォトダイオードフィルタによって覆われてもよい。第1の(信号)光検出器224は、分析物指示薬106中の分子104から放出される蛍光光331の量を検出することができる。非限定的な一実施形態では、指示薬分子104のピーク放出は約435nmで発生してもよく、第1の光検出器224は、約400nm~500nmの範囲の光を通過させる信号フィルタによって覆われてもよい。一部の実施形態では、より高いグルコースレベル/濃度は、分析物指示薬106中の分子104のより多い蛍光量、したがって第1の光検出器224に衝突する光子のより多い数に対応する。
【0053】
[0045]いくつかの実施形態では、図1に示されるように、センサー100は基板116を含んでもよい。いくつかの実施形態では、基板116は、回路構成要素(例えば、アナログおよび/またはデジタル回路構成要素)を実装するまたは他の方法で取り付けることができる回路板(例えば、プリント回路板(PCB)またはフレキシブルPCB)であってもよい。しかし、いくつかの代替的な実施形態では、基板116は、そこに製作された回路を有する半導体基板であってもよい。回路は、アナログおよび/またはデジタル回路を含んでもよい。また、いくつかの半導体基板の実施形態では、半導体基板に製作された回路に加え、半導体基板116に回路を実装または他の方法で取り付けることができる。換言すれば、いくつかの半導体基板の実施形態では、ディスクリート回路素子、集積回路(例えば、特定用途向け集積回路(ASIC))および/または他の電子構成要素を含み得る回路の一部または全部が半導体基板116に製作されてもよく、回路の残部が半導体基板116に固定され、これにより固定された様々な構成要素間の通信経路が提供されてもよい。
【0054】
[0046]いくつかの実施形態では、センサー100のセンサーハウジング102、分析物指示薬106、指示薬分子104、光源108、光検出器224、226、温度変換器670、基板116、および誘導素子114のうちの1つ以上は、2013年2月7日出願の米国出願第13/761,839号、2013年7月9日出願の米国出願第13/937,871号、および2012年10月11日出願の米国出願第13/650,016号のうちの1つ以上に記載された特徴の一部または全部を含むことができ、これらはいずれも、その全体が参照により組み込まれる。同様に、センサー100および/またはトランシーバ101の構造および/または機能は、米国出願第13/761,839号、第13/937,871号、および第13/650,016号のうちの1つ以上に記載される通りであってもよい。
【0055】
[0047]いくつかの実施形態では、センサー100はトランシーバインターフェースデバイスを含んでもよく、トランシーバ101はセンサーインターフェースデバイスを含んでもよい。センサー100およびトランシーバ101が1または複数のアンテナ(例えば、誘導素子103および114)を含むいくつかの実施形態では、トランシーバインターフェースデバイスはセンサー100の誘導素子114を含んでもよく、センサーインターフェースデバイスはトランシーバ101の誘導素子103を含んでもよい。センサー100とトランシーバ101との間に有線接続が存在する経皮の実施形態のいくつかでは、トランシーバインターフェースデバイスおよびセンサーインターフェースデバイスは、有線接続を含んでもよい。
【0056】
[0048]図2および3は、図1に示されるセンサーシステムで使用され得る、本発明の態様を具現化するセンサー100の非限定的な実施形態を示す。図2および3は、センサー100の非限定的な実施形態の透視図および分解図をそれぞれ示す。
【0057】
[0049]いくつかの実施形態では、図3に示されるように、センサーハウジング102は、エンドキャップ113を含んでもよい。いくつかの実施形態では、センサー100は、1つ以上のコンデンサ118を含んでもよい。1つ以上のコンデンサ118は、例えば、1つ以上の同調コンデンサおよび/または1つ以上の調整コンデンサであってもよい。1つ以上のコンデンサ118は、半導体基板116での製作には大きすぎて実用的でない場合がある。さらに、1つ以上のコンデンサ118は、半導体基板116に製作された1つ以上のコンデンサに追加されてもよい。
【0058】
[0050]いくつかの実施形態では、図3に示されるように、センサー100は反射器119(すなわち、ミラー)を含んでもよい。反射器119は、その端部で半導体基板116に取り付けられてもよい。非限定的な実施形態では、反射器119は、反射器119の面部121が半導体基板116の上側(すなわち、光源108および1つ以上の光検出器110がその上または中に実装または製作される半導体基板116の側面)に対して概ね垂直であり、光源108に面するように半導体基板116に取り付けられてもよい。反射器119の面121は、光源108によって放出された放射線を反射することができる。換言すれば、反射器119は、光源108によって放射された放射線がセンサー100の軸方向端部から出るのを遮断することができる。
【0059】
[0051]本発明の一態様によれば、センサー100が開発された用途は(それが適している唯一の用途では決してないが)、動物(ヒトを含む)の生体の様々な生物学的分析物の測定である。例えば、センサー100は、例えば人体におけるグルコース、酸素、毒素、医薬または他の薬物、ホルモン、および他の代謝分析物の測定に使用することができる。
【0060】
[0052]いくつかの実施形態では、分析物指示薬106および指示薬分子104の特定の組成は、センサーが検出するために使用される特定の分析物、および/またはセンサーが分析物を検出するために使用される場所(例えば、皮下組織、血液、または腹膜内)に応じて変化し得る。いくつかの実施形態では、分析物指示薬106は、指示薬分子104の分析物への曝露を促進する。いくつかの実施形態では、指示薬分子104は、指示薬分子104が曝露される特定の分析物の濃度の関数である特性を示す(例えば、一定量の蛍光光を放出する)ことができる。
【0061】
[0053]いくつかの実施形態では、センサー100は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,931,068号(Huffstetler et al.)に記載されるように、分析物指示薬またはセンサーハウジングに提供されるか、組み込まれるか、またはその中に分散され得る少なくとも1つの薬物溶出ポリマーマトリックスおよび/または触媒の層および/または1種以上の治療剤を含み得る。いくつかの実施形態では、1種以上の治療剤は、分析物指示薬106に組み込まれてもよい。いくつかの実施形態では、センサー100は、分析物指示薬106の少なくとも一部を覆う膜を含んでもよく、1種以上の治療剤は、膜内に組み込まれてもよい。いくつかの実施形態では、1種以上の治療剤は、デキサメタゾン、トリアムシノロン、ベタメタゾン、メチルプレドニゾロン、ベクロメタゾン、フルドロコルチゾン、それらの誘導体、およびそれらの類似体、グルココルチコイド、抗炎症薬、例えばアセチルサリチル酸、イソブチルフェニルプロパン酸を含むがこれらに限定されない非ステロイド性抗炎症薬を含む。
【0062】
[0054]バイオセンサーなどの医療デバイスを使用者/患者の体内に埋め込むかまたは挿入すると、身体がデバイスの機能に有害な不利な生理的反応を示す場合がある。反応は、埋め込み手術による感染から、体内に埋め込まれた異物の免疫学的応答まで様々であり得る。すなわち、埋め込み可能バイオセンサーの性能は、感染症またはデバイス自体に対する免疫学的応答によってインビボで妨げられるか、または永久的に損傷される可能性がある。特に、分析物指示薬106の性能は、センサー100が埋め込まれる身体の免疫学的応答によって悪化する可能性がある。例えば、上記で説明したように、好中球を含む白血球は、埋め込まれたセンサー100を攻撃する可能性がある。好中球は、特に過酸化水素を放出し、過酸化水素は指示薬分子104を分解する可能性がある(例えば、指示薬分子104のボロネート基を酸化し、指示薬分子104がグルコースに結合する能力を損なわせることによって)。
【0063】
[0055]いくつかの実施形態では、分析物指示薬106は、センサーデバイスの信号の完全性または性能を損なうことなく、1種以上の分解種と相互作用または反応する1種以上の添加剤を含んでもよい。いくつかの実施形態では、添加剤は、センサーハウジング102の少なくとも一部を覆うことができる分析物指示薬106に組み込まれてもよい。分解種は、過酸化水素、活性酸素種、活性窒素種、フリーラジカル、酵素、および金属イオンのうちの1つ以上を含み得る。いくつかの実施形態では、添加剤は、指示薬分子104と共重合されてもよい。いくつかの実施形態では、1種以上の添加剤は、分析物指示薬106(例えば、ポリマーグラフト)中に提供されてもよい。いくつかの実施形態では、1種以上の添加剤は、分解種と相互作用および/または反応してもよい。いくつかの実施形態では、1種以上の添加剤は、分解種を中和してもよい。いくつかの実施形態では、1種以上の添加剤は、分解種に結合してもよい。いくつかの実施形態では、1種以上の添加剤は、分解種による分析物指示薬の分解を阻害、低減および/または防止するように分解種を封鎖してもよい。したがって、いくつかの実施形態では、1種以上の添加剤は、分析物指示薬106の分解を低減する。
【0064】
[0056]いくつかの非限定的な実施形態では、1種以上の添加剤は、センサーの信号の完全性または性能を損なうことなく分解種と相互作用するボロネートおよびボロン酸含有部分化合物であってもよい。
【0065】
[0057]いくつかの非限定的な実施形態では、生きている動物(例えば、ヒト)内の媒体(例えば、間質液)中の分析物(例えば、グルコース)を測定するためのセンサー100は、以下の構成要素の1つ以上を含む:センサーハウジング102、励起光329を放出するように構成されたセンサーハウジング102内の光源108、センサーハウジング102の一部を覆う分析物指示薬106、分析物指示薬106の一部であり、分析物に可逆的に結合し、励起光によって照射されるように位置決めされ、生きている動物内の媒体中の分析物の量を示す光331を放出するように構成された1つ以上の指示薬分子104;1つ以上の指示薬分子104によって放出された光331に感受性であり、生きている動物内の媒体中の分析物の量を示す信号を生成するように構成されたセンサーハウジング102内の光検出器224;およびセンサー100の信号の完全性または性能を損なうことなく分解種と相互作用するボロネートおよびボロン酸含有部分を有する1種以上の化合物。いくつかの非限定的な実施形態では、センサー100は、分析物指示薬106に提供されるかまたは組み込まれる薬物溶出マトリックスおよび/または触媒の層を含んでもよい。
【0066】
[0058]いくつかの非限定的な実施形態では、ボロネートまたはボロン酸含有部分を含む化合物の1種以上は、式I:
【0067】
【化7】
【0068】
(式中、R=メチレンまたはアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、環式基、多環式基、ポリアルキレングリコール基、ポリエチレングリコール(PEG)基、直鎖または置換ポリアルキレングリコールもしくはPEG基、またはそれらの組合せである)のボロン酸化合物であってもよい。本発明者らは、式IのR基が、化合物のヒドロゲルへの予想外に優れた組み込み、活性化の改善、およびセンサーの寿命の向上をもたらすことを見出した。
【0069】
いくつかの態様では、式Iのボロン酸部分は、式II:
【0070】
【化8】
【0071】
(式中、XおよびY=アルキルである)のボロネート基で置換されていてもよい。
【0072】
いくつかの非限定的な例では、1種以上のボロネートまたはボロン酸含有化合物は、以下の化合物:
【0073】
【化9】
【0074】
の1つ以上を含んでもよい。
【0075】
[0059]いくつかの非限定的な実施形態では、ボロネートまたはボロン酸含有部分を含む1種以上の化合物は、分析物センサー100の分析物指示薬106(例えば、ポリマーグラフト)中に提供されてもよい。いくつかの非限定的な実施形態では、ボロネートまたはボロン酸含有部分を含む1種以上の化合物は、ボロネートまたはボロン酸含有部分を含む1種以上の化合物を、指示薬モノマーおよび1つ以上のアクリレートモノマーとのコモノマーとして重合することにより、分析物指示薬106に組み込むことができる。いくつかの非限定的な実施形態では、ボロネートまたはボロン酸含有部分を含む1種以上の化合物は、式III:
ABCD[式III]による4つのモノマーのコモノマーとして提供されてもよく、Aは指示薬モノマーであり、Bはメタクリレートモノマーであり、Cはポリエチレングリコールモノマーであり、Dはボロネートまたはボロン酸含有部分化合物モノマーであり、Aは全ポリマーの0.001~10重量%であり、Bは1~99重量%であり、Cは1~99重量%であり、Dは0.001~99重量%である。いくつかの態様では、Aは全ポリマーの0.01~10重量%であり、Bは1~99重量%であり、Cは1~99重量%であり、Dは0.01~99重量%である。
【0076】
[0060]いくつかの非限定的な実施形態では、分析物指示薬106は、4つのモノマー:(i)TFM蛍光指示薬、(ii)メタクリレートであるヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、(iii)ポリエチレングリコール(PEG)、および(iv)式Iのボロネートまたはボロン酸含有部分を含んでもよい。いくつかの実施形態では、PEGは、ポリエチレングリコールメタクリレート(PEG-メタクリレート)またはポリエチレングリコールジアクリレート(PEG-ジアクリレートもしくはPEGDA)であってもよく、式Iのボロネートまたはボロン酸含有部分モノマーは、4-ビニルボロン酸含有部分であってもよい。いくつかの実施形態では、4つのモノマーは、特定のモル比であってもよい。例えば、分析物指示薬106が不透明であるいくつかの非限定的な実施形態では、分析物指示薬106は0.001~10モルパーセントを構成してもよく、HEMAは10~90モルパーセントを構成してもよく、PEGDAは10~90モルパーセントを構成してもよく、4-ビニルボロン酸含有部分は0.001~90モルパーセントを構成してもよい。この配合では、組み合わされた(すなわち、全)モノマーは、一例では重合反応に使用される重合溶液の30体積%であってもよく、重合溶液の残部は水である(すなわち、重合溶液は70体積%水であってもよい)。別の例として、非限定的な一実施形態では、分析物指示薬106は、50体積%が水であり、50体積%がモノマーであるポリマー溶液を使用して作製されてもよい。
【0077】
[0061]いくつかの実施形態では、ボロネートまたはボロン酸含有部分を含む化合物の相対モルパーセントは、特定の範囲内であってもよい。いくつかの実施形態では、ボロネートまたはボロン酸含有部分を含む化合物の相対モルパーセントは、0.1~100モルパーセントの範囲である。ボロネートまたはボロン酸含有部分を含む化合物の相対モルパーセントがこの範囲より大きい場合、ヒドロゲルが形成されない。ボロネートまたはボロン酸含有部分を含む化合物の相対モルパーセントがこの範囲より低い場合、本開示に記載される予想外の寿命および機能向上効果が得られない可能性がある。
【0078】
いくつかの実施形態では、PEGDAは架橋剤として作用し、スポンジ様マトリックス/ヒドロゲルを生成してもよい。いくつかの非限定的な実施形態では、PEG含有グラフト/ヒドロゲルは、十分な量の追加のPEGが混合物に添加されると(すなわち、より高濃度のPEGを用いて製作されると)透明になる可能性があり、透明なポリマーグラフト106がそのような配合物から作製されてもよい。例えば、非限定的な一実施形態では、ポリマーグラフト106は、50~60体積%が水であり、40~50体積%がモノマーであるポリマー溶液を使用して作製されてもよく、ここでTFM蛍光指示薬、HEMA、PEG-メタクリレート、およびボロネートまたはボロン酸含有部分を含む化合物は、溶液中のモノマーの0.01~10重量%、1~99重量%、1~99重量%、および0.01~99重量%を構成してもよい。いくつかの実施形態では、ポリマーグラフトは、従来のフリーラジカル重合を使用して合成されてもよい。
【0079】
[0062]添加剤含有分析物指示薬を含む埋め込まれたセンサーは、添加剤含有分析物指示薬を含まないセンサーよりも改善された性能を有してもよい。例えば、いくつかの非限定的な実施形態では、添加剤は、センサー100の寿命および機能を改善することができる。
【0080】
[0063]本発明の実施形態を、図面を参照しながら上記で十分に説明した。本発明は、これらの好ましい実施形態に基づいて説明されたが、本発明の精神および範囲内で、説明された実施形態に対して特定の修正、変形、および代替的な構築を行うことができることが当業者に明らかであろう。例えば、いくつかの実施形態では、分析物センサー100は光学センサーであってもよいが、これは必須ではなく、1つ以上の代替的な実施形態では、分析物センサーは、例えば電気化学センサー、拡散センサー、または圧力センサーなどの異なる種類の分析物センサーであってもよい。また、いくつかの実施形態では、分析物センサー100は埋め込み可能センサーであってもよいが、これは必須ではなく、いくつかの代替的な実施形態では、分析物センサーは、外部トランシーバへの有線接続を有する経皮センサーであってもよい。例えば、いくつかの代替的な実施形態では、分析物センサー100は、経皮針内または上(例えば、その先端)に位置してもよい。これらの実施形態では、アンテナ(例えば、誘導素子114)を使用した無線通信の代わりに、分析物センサーは、外部トランシーバと分析物センサーを含むトランシーバの経皮針との間に接続された1本以上のワイヤを使用して外部トランシーバと通信してもよい。別の例として、いくつかの代替的な実施形態では、分析物センサーは、カテーテル(例えば、静脈内血糖モニタリングのための)内に位置してもよく、外部トランシーバと(無線またはワイヤを使用して)通信してもよい。
本発明は以下の態様を含む。
[1]
生きている動物内の媒体中の分析物を測定するためのセンサーであって、センサーが、
センサーハウジング、
センサーハウジングの少なくとも一部を覆う分析物指示薬、および
分析物指示薬の分解を低減するボロネートまたはボロン酸部分を含む1種以上の化合物を含み、ボロン酸含有部分を含む1種以上の化合物が、式I:
【化10】
(式中、R=メチレンまたはアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、環式基、多環式基、ポリアルキレングリコール基、ポリエチレングリコール(PEG)基、直鎖または置換ポリアルキレングリコールもしくはPEG基、またはそれらの組合せである)の化合物、またはボロン酸が、式II:
【化11】
(式中、XおよびY=アルキルである)のボロネート基で置換されている式Iの化合物である、センサー。
[2]
生きている動物内に埋め込み可能である、1に記載のセンサー。
[3]
ボロネートまたはボロン酸部分を含む1種以上の化合物が、分析物指示薬とのコモノマーである、1または2に記載のセンサー。
[4]
ボロネートまたはボロン酸部分を含む1種以上の化合物が、ヒドロゲル中の分析物指示薬とのコモノマーである、1~3のいずれか一項に記載のセンサー。
[5]
ボロネートまたはボロン酸部分を含む1種以上の化合物が、センサーハウジングの少なくとも一部を覆うヒドロゲルに封入されている、1~4のいずれか一項に記載のセンサー。
[6]
ボロネートまたはボロン酸部分を含む1種以上の化合物が、分析物指示薬の化学的分解および/または酸化を低減する、1~5のいずれか一項に記載のセンサー。
[7]
ボロネートまたはボロン酸部分を含む1種以上の化合物が分析物指示薬の分解速度を低減する、6に記載のセンサー。
[8]
ボロネートまたはボロン酸部分を含む1種以上の化合物が分解種に結合する、6または7に記載のセンサー。
[9]
ボロン酸含有部分を含む1種以上の化合物が、分解種による分析物指示薬の分解を低減するおよび/または防止するように分解種を封鎖する、6~8のいずれか一項に記載のセンサー。
[10]
ボロネートまたはボロン酸部分を含む化合物が、
【化12】
から選択される、1~9のいずれか一項に記載のセンサー。
[11]
センサーハウジングの少なくとも一部を覆う分析物指示薬が、式II:A [式II]による4つのモノマーのコモノマーを含むポリマーを含み、
Aが分析物指示薬モノマーであり、Bがメタクリレートモノマーであり、Cがポリエチレングリコールモノマーであり、Dがボロネートまたはボロン酸部分を含む化合物またはモノマーであり、Aが全ポリマーの0.01~10重量%であり、Bが1~99重量%であり、Cが1~99重量%であり、Dが0.01~99重量%である、1~10のいずれか一項に記載のセンサー。
[12]
ボロネートまたはボロン酸部分を含む1種以上の化合物が、分析物指示薬モノマーに対して0.1~100のモル比で提供される、11に記載のセンサー。
[13]
センサーハウジングの一部を覆う少なくとも1つの薬物溶出ポリマーマトリックスを含む、1~12のいずれか一項に記載のセンサー。
[14]
生きている動物内の媒体中の分析物を測定するためのセンサーを製作する方法であって、方法が、
適用された分析物指示薬がセンサーハウジングの少なくとも一部を覆うように、センサーのセンサーハウジングに分析物指示薬を適用するステップを含み、分析物指示薬が、分析物指示薬の分解を低減するボロネートまたはボロン酸部分を含む1種以上の化合物を含み、ボロン酸含有部分を含む1種以上の化合物が、式I:
【化13】
(式中、R=メチレンまたはアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、環式基、多環式基、ポリアルキレングリコール基、ポリエチレングリコール(PEG)基、直鎖または置換ポリアルキレングリコールもしくはPEG基、またはそれらの組合せである)の化合物、またはボロン酸が、式II:
【化14】
(式中、XおよびY=アルキルである)のボロネート基で置換されている式Iの化合物である、方法。
[15]
ボロネートまたはボロン酸部分を含む1種以上の化合物が、分析物指示薬とのコモノマーである、14に記載の方法。
[16]
ボロネートまたはボロン酸部分を含む1種以上の化合物が、ヒドロゲル中の分析物指示薬とのコモノマーである、14または15に記載の方法。
[17]
ボロネートまたはボロン酸部分を含む1種以上の化合物が、センサーハウジングの少なくとも一部を覆うヒドロゲルに封入される、14~16のいずれか一項に記載の方法。
[18]
ボロネートまたはボロン酸部分を含む1種以上の化合物が、分析物指示薬の化学的分解および/または酸化を低減する、14~17のいずれか一項に記載の方法。
[19]
ボロネートまたはボロン酸部分を含む1種以上の化合物が、分析物指示薬の分解速度を低減する、14~18のいずれか一項に記載の方法。
[20]
ボロネートまたはボロン酸部分を含む1種以上の化合物が、センサーデバイスの信号の完全性または性能を損なうことなく分解種と相互作用または反応し、分解種が、過酸化水素、活性酸素種、活性窒素種、酵素、フリーラジカルまたは金属イオンである、14~19のいずれか一項に記載の方法。
[21]
ボロネートまたはボロン酸部分を含む1種以上の化合物が分解種に結合する、19に記載の方法。
[22]
ボロネートまたはボロン酸部分を含む1種以上の化合物が、分解種による分析物指示薬の分解を低減するおよび/または防止するように分解種を封鎖する、20または21に記載の方法。
[23]
化合物ボロネートまたはボロン酸部分が、
【化15】
から選択される、14~22のいずれか一項に記載の方法。
[24]
センサーハウジングの少なくとも一部を覆う分析物指示薬が、式III:ABCD[式III]による4つのモノマーのコモノマーを含むポリマーを含み、
Aが分析物指示薬モノマーであり、Bがメタクリレートモノマーであり、Cがポリエチレングリコールモノマーであり、Dがボロネートまたはボロン酸部分を含む化合物またはモノマーであり、Aが全ポリマーの0.01~10重量%であり、Bが1~99重量%であり、Cが1~99重量%であり、Dが0.01~99重量%である、14~23のいずれか一項に記載の方法。
[25]
ボロネートまたはボロン酸部分を含む1種以上の化合物が、分析物指示薬モノマーに対して0.1~100のモル比で提供される、24に記載の方法。
図1
図2
図3