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  • 特許-簡易トイレ用のし尿吸収材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-15
(45)【発行日】2025-07-24
(54)【発明の名称】簡易トイレ用のし尿吸収材
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/24 20060101AFI20250716BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20250716BHJP
【FI】
B01J20/24 B
B01J20/26 D
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2024137647
(22)【出願日】2024-08-19
【審査請求日】2024-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】593045341
【氏名又は名称】明和製紙原料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】駒津 慎
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特許第7192442(JP,B2)
【文献】特許第4940155(JP,B2)
【文献】特開2007-222864(JP,A)
【文献】特開2006-782(JP,A)
【文献】特許第6549841(JP,B2)
【文献】特許第6331265(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/24
B01J 20/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
破砕された古紙を由来とする古紙破砕物と、
前記古紙破砕物と混合されている高吸水性樹脂と、を備え、
前記高吸水性樹脂を10重量部としたとき、前記古紙破砕物が35~40重量部で混合されるとともに、
前記古紙破砕物は、複数の辺のうち少なくとも一つの辺の長さが10mm以上である第一破砕物を、前記古紙破砕物の総重量の85%以上含んでいる、
簡易トイレ用のし尿吸収材。
【請求項2】
前記古紙破砕物は、前記第一破砕物よりも小さく、複数の辺のうち最小となる辺の長さが1mm~10mmの第二破砕物をさらに含み、
前記第二破砕物は、前記古紙破砕物の総重量の0~10%である、
請求項1記載の簡易トイレ用のし尿吸収材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、簡易トイレ用のし尿吸収材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば災害や交通渋滞などの非常時に、簡易的に使用される簡易トイレが普及しつつある。このような簡易トイレは、し尿を吸収し、保持するための吸収材が必要である。従来、このようなし尿吸収材として、例えば特許文献1に示すような吸収材が提案されている。
特許文献1に開示されている吸収材は、植物繊維質および吸収性樹脂成分を含んでいる。この吸収材は、植物繊維質として、古紙の破砕物およびバージンパルプを含んでいる。これにより、特許文献1の場合、吸収材の原料として古紙をリサイクルし、環境負荷の低減を図っている。
【0003】
しかしながら、特許文献1の場合、吸収材は、使用する際の使用感についての考慮がなされていない。簡易トイレに用いるし尿吸収材は、その名の通り、し尿を吸収する。し尿は、使用者の体質など条件によるものの、一般に着色している。そのため、吸収材が白色または白色に近い淡色系の材料であると、簡易トイレを使用する際にし尿によって吸収材が着色される。その結果、使用者は、簡易トイレを使用するとき、他人に着色した吸収材を視覚的に認識されるおそれがあり、使用感が高くないという問題がある。
【0004】
特に、特許文献1のように、微細な古紙の破砕物や解繊物を用いる場合、バージンパルプと混合することにより、吸収材は淡い灰色から白色に近い色彩を呈する。そのため、視覚的な理由により、使用時の抵抗がより大きくなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-222864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、古紙のリサイクルによる環境負荷の低減を図りつつ、し尿による視覚的な着色が抑えられ、使用時の抵抗が低減される簡易トイレ用のし尿吸収材を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態の古紙破砕物は、寸法が大きく、原料となる古紙に由来する色彩に着色している。そのため、吸収材を簡易トイレ用として適用するとき、使用者によるし尿の色は、この古紙破砕物の本来の着色により視覚への訴求力が緩和される。また、本実施形態の吸収材は、第一破砕物のように寸法が大きな古紙破砕物を主として含んでいる。そのため、使用者のし尿が吸収材に接触すると、まず大きな古紙破砕物がすみやかにし尿を吸収する。このとき、古紙破砕物は、破砕によって表面積が拡大していることから、数秒程度の短時間でし尿を吸収する。そして、古紙破砕物が吸収したし尿は、ゆっくりと高吸水性樹脂へ移行する。高吸水性樹脂は、し尿を吸収することにより、膨張およびし尿を由来として着色する。このとき、高吸水性樹脂と古紙破砕物とが混合されているため、着色した高吸水性樹脂は古紙破砕物に紛れて視覚的な訴求力が小さくなる。したがって、古紙のリサイクルによる環境負荷の低減を図りつつ、し尿による視覚的な着色が抑えられ、使用時の抵抗を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態によるし尿吸収材に用いる古紙破砕物のうち第一破砕物の写真を示す図
図2】一実施形態によるし尿吸収材に用いる古紙破砕物のうち第二破砕物の写真を示す図
図3】一実施形態によるし尿吸収材の実施例および比較例の検証結果を示す概略図
図4】一実施形態によるし尿吸収材の実施例の検証結果を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、し尿吸収材(以下、「吸収材」と省略する。)の実施形態を図面に基づいて説明する。
吸収材は、簡易トイレ用のし尿吸収材として用いられる。簡易トイレは、例えば携帯用途として、または避難所などの仮設された設備などに用いられる。本実施形態の吸収材は、古紙破砕物および高吸水性樹脂を備えている。古紙破砕物は、例えば新聞、雑紙、包装紙、牛乳パック、段ボールなど、その他の各種の紙製品を由来とする。古紙破砕物は、これらの紙製品を破砕することにより、原料となる紙製品の印刷や基材の着色を保持したままの破片として生成される。古紙破砕物は、特に規格化された寸法の定義がないものの、各種の寸法に破砕される。古紙破砕物は、例えば紙製品を破砕する機器の種類によって、一辺が数10cm以上のブロック状に大型の機器で簡易的に破砕された状態から、一辺が数μm程度の綿状に微細に破砕された状態まで各種の寸法で生成される。この古紙破砕物は、微細に破砕するほど、加工工数が増加し、加工費用が増大する。
【0010】
本実施形態では、古紙破砕物は、第一破砕物および第二破砕物が用いている。第一破砕物は、例えば新聞や雑誌などを由来とする紙製品を簡易的に破砕したものであり、図1に示すように破片における複数の辺のうち少なくとも1つの辺の長さが10mm以上と大きくなっている。
【0011】
古紙破砕物は、破砕のための機器によって不規則に破断される。そのため、古紙破砕物の破片は、特定の形状を有していない。機器によって破断された古紙破砕物は、例えば短冊状、帯状、チップ状、多角形の板状など、その他の任意の形状の破片となる。そのため、古紙破砕物の破片は、複数の短辺、長辺およびその他の長さの辺を有する不規則な形状を有している。本実施形態では、この複数の辺うち、少なくとも1つの辺の長さが10mm以上の破砕物は、第一破砕物と定義している。この第一破砕物は、図1に示すように十分な大きさを有している。なお、図1からも明らかなように、第一破砕物は、複数の辺のうち少なくとも1つの辺の長さが30mm以上であることがより好ましい。また、第一破砕物は、複数の辺のうち少なくとも2つ以上の辺の長さが10mm以上であることが好ましい。さらに、第一破砕物は、複数の辺のうち長い方から2つの辺の長さの平均が10mm以上であることが好ましい。
【0012】
第二破砕物は、第一破砕物よりも小さな破砕物である。第二破砕物は、破断のための切断刃の間隔が第一破砕物の切断刃よりも小さな機器へ投入することにより生成される。そのため、第二破砕物は、第一破砕物に比較して寸法が小さく、図2に示すように複数の辺のうち最小となる辺の長さが1mm~10mmとなっている。この第二破砕物も、第一破砕物と同様に、不規則に破断されるため、破片が特定の形状を有していない。本実施形態では、破砕物の複数の辺のうち、最も寸法が小さくなる辺の長さが1mm~10mmの破砕物は、第二破砕物と定義している。この第二破砕物は、図2に示すように辺の長さが1mm~10mmとなっており、第一破砕物と比較して細かくなっている。なお、当然ながら古紙破砕物は、破断の工程において、複数の辺のうち最小となる辺の長さが1mm未満の微細な破片である微細片も混入する。この辺の長さが1mm未満の微細片は、第一破砕物および第二破砕物のいずれにも該当しない。
【0013】
高吸水性樹脂は、いわゆるSAP(Super Absorbent Polymer)と称される高い水分吸収および水分保持の性能を有する機能性の高分子である。高吸水性樹脂は、自身の高い吸水性により、し尿などの水分を吸収し、保持することができる。本実施形態の吸収材は、上述の古紙破砕物と、この高吸水性樹脂とを含むことを特徴としている。
【0014】
本実施形態の吸収材は、高吸水性樹脂を10重量部としたとき、古紙破砕物が35~40重量部で混合されている。これとともに、本実施形態の吸収材は、古紙破砕物の総重量の85%以上が第一破砕物である。本実施形態の吸収材は、第二破砕物を含んでいてもよい。この場合、第二破砕物は、古紙破砕物の総重量の0~15%である。
【0015】
このように、本実施形態の吸収材は、第一破砕物を主成分とする古紙破砕物と、高吸水性樹脂とが混合されている。古紙破砕物は、上述のように各種の紙製品を由来としている。そのため、古紙破砕物は、破砕前の使用時の表面状態つまりインクによる印刷が保持された状態となっている。すなわち、古紙破砕物は、インクの除去および漂白などの脱色処理が施されていない単純に破砕された状態のままである。そのため、古紙破砕物は、使用時の印刷が保持された不規則な着色状態である。また、古紙破砕物は、インクなどによる印刷に限らず、例えば新聞紙などのように原紙そのものが着色されていることもある。これらの結果、本実施形態の古紙破砕物は、白色ではない着色状態で高吸水性樹脂と混合されている。本実施形態の古紙破砕物は、例えば新聞紙を由来とする灰色系の着色、段ボールを由来とする黄色系の着色、および雑紙やチラシなどの各種印刷物を由来とする各色が混合された濃色の着色など、白色ではない色を有している。この古紙破砕物の色は、原料となる古紙の種類や混合割合などによって変化するものの、白色を呈することはない。
【0016】
このように、本実施形態の古紙破砕物は、着色されている。そのため、吸収材を簡易トイレ用として適用するとき、使用者によるし尿の色は、この古紙破砕物の本来の着色により視覚への訴求力が緩和される。例えば従来の吸収材のようにバージンパルプを含む場合、吸収材は白色に近い淡い色となり、使用者によるし尿の色は視覚的に目立ちやすくなる。これに対し、本実施形態の吸収材は、古紙破砕物が着色しているため、使用者によるし尿の視覚的な訴求力が緩和される。
【0017】
また、本実施形態の吸収材は、第一破砕物のように寸法が大きな古紙破砕物を主として含んでいる。そのため、使用者のし尿が吸収材に接触すると、まず大きな古紙破砕物がすみやかにし尿を吸収する。このとき、古紙破砕物は、破砕によって表面積が拡大していることから、数秒程度の短時間でし尿を吸収する。そして、古紙破砕物が吸収したし尿は、ゆっくりと高吸水性樹脂へ移行する。高吸水性樹脂は、し尿を吸収することにより、膨張およびし尿を由来として着色する。しかし、高吸水性樹脂と古紙破砕物とが混合されているため、着色した高吸水性樹脂は古紙破砕物に紛れて視覚的な訴求力が小さくなる。
【0018】
このように、本実施形態の吸収材は、古紙破砕物で迅速にし尿を吸収するとともに、古紙破砕物に吸収されたし尿が高吸水性樹脂に移行する。そのため、吸収材の全体としての吸水性能は、高吸水性樹脂によって確保される。すなわち、本実施形態の吸収材は、古紙破砕物による迅速なし尿の吸収と、高吸水性樹脂による大量のし尿の保持とを両立することができる。そして、本実施形態の吸収材は、本来的に着色されている大きな古紙破砕物を由来とすることから、使用者によるし尿の色が古紙破砕物によって紛らわされ、使用時の抵抗を低減することができる。
【0019】
(実施例)
以下、図3および図4に基づいて本実施形態の実施例について説明する。
図3は、吸収材に含まれる第一破砕物および高吸水性樹脂の混合割合と、試験結果との関係を示している。図3に示す実施例1および比較例1~比較例5の吸収材は、いずれも古紙破砕物として第一破砕物を含むとともに、高吸水性樹脂を含んでいる。古紙破砕物は、上述のように例えば新聞、雑紙、包装紙、牛乳パック、段ボールなどの各種の紙製品を由来とする広く用いられる古紙破砕物を用いた。高吸水性樹脂は、日本触媒株式会社製の商品名「アクアリックCA(登録商標)」を用いた。この高吸水性樹脂は、カタログ値における理論吸水量として、1gあたり30g~60gのし尿に相当する生理食塩水を吸収することができる。
【0020】
これら古紙破砕物および高吸水性樹脂を混合した吸収材は、その性能を「吸水試験」、「視覚試験30秒」および「視覚試験3分」で検証した。「吸水試験」、「視覚試験30秒」および「視覚試験3分」で用いたし尿に相当する試験水は、生理食塩水(食塩濃度1%)を、100ppmのメチレンブルーで着色して用いた。し尿は、淡黄色から黄色に着色しているものの、試験のために視認性をより高めるために青系に着色するメチレンブルーを用いた。
【0021】
(吸水試験)
「吸水試験」は、古紙破砕物および高吸水性樹脂を混合した吸収材に、1回の排泄分のし尿を想定した試験水を500g(500ml)投入し、全ての試験水を、吸収可能か否かを検証した。実施例1および比較例1~比較例5は、吸収材の総量を50gとし、古紙破砕物と高吸水性樹脂との混合割合を変更している。検証結果は、すべての試験水を吸収可能な例を「△」とし、余裕をもってすべての試験水を吸収可能な例を「○」とし、試験水の一部を吸収できない例を「×」とした。さらに、検証結果は、試験水の吸収に十分な余力がある例を「◎」とした。
【0022】
(視覚試験30秒)
「視覚試験30秒」は、吸収材に試験水を500g(500ml)投入した後、30秒を経過した後の吸収材の外観を検証した。実施例1および比較例1~比較例5は、吸収材の総量を50gとし、古紙破砕物と高吸水性樹脂との混合割合を変更している。検証結果は、30秒経過後に吸収材の表面に試験水が液体のまま存在するか否かを視覚的に判断している。この検証結果は、30秒経過後に吸収材の表面に試験水が残存する状態を「×」とし、30秒経過後に吸収材の表面に試験水がほとんど視認されない状態を「○」とした。さらに、検証結果は、30秒経過後に、吸収材の表面が十分に清浄な状態を「◎」とした。使用者は、吸収材の表面に試験水が残存していることを視認すると、吸収材が汚いと感じる。そのため、「視覚試験30秒」は、この吸収材の汚さを客観的に判断する指標として検証結果を用いている。
【0023】
(視覚試験3分)
「視覚試験3分」は、上述の「視覚試験30秒」と同様に、吸収材に試験水を500g(500ml)投入した後、3分経過した後の吸収材の外観を検証した。実施例1および比較例1~比較例5は、吸収材の総量を50gとし、古紙破砕物と高吸水性樹脂との混合割合を変更している。検証結果は、3分経過後に吸収材が固形化するとともに、吸収材の表面に試験水が液体のまま存在するか否かを視覚的に判断している。この検証結果は、3分経過後に吸収材の固形化が不十分または吸収材の表面に試験水が残存する状態を「×」とし、3分経過後に吸収材が十分に固形化して吸収材の表面に試験水がほとんど視認されない状態を「○」とした。さらに、検証結果は、3分経過後に、吸収材の表面が十分に清浄な状態を「◎」とした。使用者は、吸収材が十分に固形化せず、吸収材の表面に試験水が残存していることを視認すると、吸収材が汚いと感じる。そのため、「視覚試験3分」は、この吸収材の汚さを客観的に判断する指標として検証結果を用いている。
【0024】
(吸水試験の検証結果)
吸収材に占める高吸水性樹脂の重量割合が増加するほど、吸収材は多くの試験水を吸収する。そのため、試験水は、高吸水性樹脂の重量割合が高いほど、検証結果が「△」または「○」となる。すなわち、図3に示すように、吸収材の総量を50gとしたとき、古紙破砕物の重量が40g、および高吸水性樹脂の重量が10gとなる実施例1は、すべての試験水を吸収可能である。同様に、吸収材の総量を50gとして、高吸水性樹脂の重量10g以上となる比較例3~比較例5は、余裕をもってすべての試験水を吸収可能となる結果となった。一方、吸収材の総量を50gとして、高吸水性樹脂の重量が10g未満となる比較例1および比較例2は、試験水の一部を吸収できない結果となった。
【0025】
(視覚試験の検証結果)
視覚試験については、30秒および3分のいずれも、吸収材における古紙破砕物と高吸水性樹脂との混合割合が影響する。実施例1のように、高吸水性樹脂を10重量部としたとき、40重量部の古紙破砕物を含む吸収材は、視覚試験30秒の結果および視覚試験3分のいずれも評価が「○」となった。
【0026】
これに対し、比較例3~比較例5は、いずれも吸収材に含まれる高吸水性樹脂が実施例1と比較して多くなる。そのため、比較例3~比較例5は、試験水を投入した後に迅速に試験水を吸収する古紙破砕物が不足する。その結果、比較例3~比較例5は、試験水の投入から30秒が経過しても、吸収材の表面に試験水が残存してしまう。さらに、比較例3~比較例5は、試験水の投入から3分が経過しても、古紙破砕物の不足に起因して、吸収材の固形化が不十分となるとともに、吸収材の表面に試験水が残存する結果となった。
【0027】
なお、比較例1および比較例2は、そもそも吸水試験で検証結果が「×」となるように、高吸水性樹脂が不足して試験水を十分に吸収できない。そのため、吸収材としての機能が達成できず、視覚試験は実施していない。
【0028】
(古紙破砕物に含まれる第一破砕物および第二破砕物の重量割合の検証)
上述のように、吸収材は、高吸水性樹脂を10重量部としたとき、古紙破砕物を40重量部程度とすると、吸水性および視覚試験で良好な検証結果を得ることができた。そこで、図4では、吸収材に含まれる古紙破砕物において、第一破砕物と第二破砕物との重量割合と、吸水性および視覚試験の結果について検証した。
【0029】
実施例1では、図3および図4に示す通り、吸収材に含まれる古紙破砕物はすべてが第一破砕物である。実施例2~実施例6では、図4に示すように吸収材に含まれる高吸水性樹脂の重量を一定とし、吸収材に含まれる古紙破砕物は、第一破砕物と第二破砕物とを混合したものとした。具体的には、実施例2では、第一破砕物を39gとし、第二破砕物を1gとした。これにより、実施例2では、古紙破砕物の全体の重量に対する第二破砕物の重量割合は2.5%とした。同様に、実施例3では、第一破砕物を38gとし、第二破砕物を2gとし、第二破砕物の重量割合を5.0%とした。実施例4では、第一破砕物を37gとし、第二破砕物を3gとし、第二破砕物の重量割合を7.5%とした。実施例5では、第一破砕物を36gとし、第二破砕物を4gとし、第二破砕物の重量割合を10.0%とした。実施例6では、第一破砕物を35gとし、第二破砕物を5gとし、第二破砕物の重量割合を12.5%とした。
【0030】
吸水試験は、実施例5および実施例6は、他の実施例1~実施例4に比較して、良好な結果を示した。これは、実施例5および実施例6は、古紙破砕物として、より繊細に破砕された第二破砕物を多く含むことから、古紙破砕物の表面積が拡大し、試験水のより迅速な吸収が達成されるためと考えられる。同様に、第二破砕物の混合割合が中間的な実施例4は、実施例1~実施例3に比較して、吸水試験の結果が向上している。
【0031】
一方、視覚試験は、実施例1~実施例6のいずれも、良好な結果を示している。但し、実施例6は、視覚試験の結果がやや低下している。これは、実施例6の場合、吸水材に含まれる古紙破砕物として第二破砕物の割合が高まることにより、試験水が第二破砕物を含む古紙破砕物に残存しやすくなり、表面における汚れが目立ちやすくなるためと考えられる。
【0032】
以上、説明した通り、本実施形態の吸収材は、高吸水性樹脂を10重量部とするとき、古紙破砕物を35~40重量部で混合している。これにより、し尿を想定した試験水は、古紙破砕物に迅速に吸収され、古紙破砕物に吸収された試験水が時間とともに高吸水性樹脂へ移行する。そのため、本実施形態の吸収材は、表面にし尿を想定した試験水が残存することなくすみやかに試験水を吸収するとともに、高吸水性樹脂の高い吸水性および水分保持性によって十分な量の試験水を保持する。そして、本実施形態のように吸収材の古紙破砕物と高吸水性樹脂との混合割合を設定することにより、高吸水性樹脂の大部分は、比較的大きく破断された古紙破砕物に分散して紛れ込む。そのため、本実施形態では、高吸水性樹脂が古紙破砕物に隠れ、視認性が低下する。その結果、本実施形態では、し尿を吸収することによって着色した高吸水性樹脂は、古紙破砕物に隠されやすくなり、着色が視認しにくくなる。したがって、し尿による吸収材の全体的な着色が抑えられ、使用時の抵抗を低減することができる。
【0033】
また、本実施形態の吸収材は、古紙破砕物として、第一破砕物に加えて第二破砕物を含んでいる。第二破砕物は、第一破砕物よりも微細に破断されていることから、表面積が大きく、し尿を想定した試験水のより迅速な吸収が図られる。したがって、吸収材の着色を抑えつつ、迅速なし尿の吸収を促すことができる。
【0034】
以上説明した本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。
【要約】
【課題】古紙のリサイクルによる環境負荷の低減を図りつつ、し尿による視覚的な着色が抑えられ、使用時の抵抗が低減される簡易トイレ用のし尿吸収材を提供する。
【解決手段】本実施形態のし尿吸収材は、破砕された古紙を由来とする古紙破砕物と、
前記古紙破砕物と混合されている高吸水性樹脂と、を備える。前記高吸水性樹脂を10重量部としたとき、前記古紙破砕物は35~40重量部で混合される。これとともに、前記古紙破砕物は、複数の辺のうち少なくとも一つの辺の長さが10mm以上の第一破砕物を、前記古紙破砕物の総重量の85%以上含んでいる。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4