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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-15
(45)【発行日】2025-07-24
(54)【発明の名称】癌の治療のための投薬レジメン
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4745 20060101AFI20250716BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250716BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20250716BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20250716BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20250716BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20250716BHJP
   A61K 31/439 20060101ALI20250716BHJP
【FI】
A61K31/4745
A61P35/00
A61P15/00
A61K45/00
A61K31/519
A61K31/506
A61K31/439
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022564300
(86)(22)【出願日】2021-04-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-30
(86)【国際出願番号】 EP2021060589
(87)【国際公開番号】W WO2021214253
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2024-04-16
(31)【優先権主張番号】63/014,914
(32)【優先日】2020-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391008951
【氏名又は名称】アストラゼネカ・アクチエボラーグ
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】モレンティン グティエレス,パブロ
(72)【発明者】
【氏名】ガングル,エリック トッド
(72)【発明者】
【氏名】ジ アウメイダ,カミラ
【審査官】田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-537570(JP,A)
【文献】特表2019-508428(JP,A)
【文献】特表2015-522069(JP,A)
【文献】特表2018-514549(JP,A)
【文献】特表2018-518529(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
45/00
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌を治療するための医薬であって、N-(1-(3-フルオロプロピル)アゼチジン-3-イル)-6-((6S,8R)-8-メチル-7-(2,2,2-トリフルオロエチル)-6,7,8,9-テトラヒドロ-3H-ピラゾロ[4,3-f]イソキノリン-6-イル)ピリジン-3-アミン(AZD9833):
【化1】
を含み、前記AZD9833が、75mgまたは150mgの用量で1日1回経口投与される、医薬。
【請求項2】
前記AZD9833が、単回用量単位又は複数回用量単位として投与される、請求項1に記載の医薬。
【請求項3】
前記AZD9833が、単一錠剤として投与される、請求項2に記載の医薬。
【請求項4】
前記AZD9833が、CDK阻害剤と組み合わせて投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項5】
前記CDK阻害剤が、パルボシクリブ、リボシクリブ、アベマシクリブ、レロシクリブ、又はトリラシクリブである、請求項4に記載の医薬。
【請求項6】
前記AZD9833が、パルボシクリブと組み合わせて投与される、請求項1~のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項7】
前記AZD9833が、mTOR阻害剤と組み合わせて投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項8】
前記mTOR阻害剤がエベロリムスである、請求項7に記載の医薬。
【請求項9】
前記癌が、乳癌及び婦人科癌から選択される、請求項1~のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項10】
前記癌が、ER陽性HER2陰性進行性乳癌である、請求項に記載の医薬。
【請求項11】
前記AZD9833が、閉経前又は閉経後の女性に投与される、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項12】
前記癌が、これまでにER陽性HER2陰性進行性乳癌に対する1種以上の内分泌療法と、2種以下の化学療法とによって治療されている、請求項1~11のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項13】
前記AZD9833が、癌が非ステロイド性アロマターゼ阻害剤に対して抵抗性である患者に投与される、請求項1~12のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項14】
AZD9833の前記用量が、i)癌患者において10~1000ng/mLの平均最高血漿中濃度に達する;および/またはii)癌患者において8時間~14時間の終末相半減期の中央値に達する;および/またはiii)癌患者において12時間の終末相半減期の中央値に達する、請求項1~13のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項15】
AZD9833の前記用量が、少なくとも10%の客観的奏効率を達成する、請求項1~14のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項16】
AZD9833の前記用量が、癌患者に重篤な副作用を引き起こさない、請求項1~15のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項17】
75mgまたは150mgのN-(1-(3-フルオロプロピル)アゼチジン-3-イル)-6-((6S,8R)-8-メチル-7-(2,2,2-トリフルオロエチル)-6,7,8,9-テトラヒドロ-3H-ピラゾロ[4,3-f]イソキノリン-6-イル)ピリジン-3-アミン(AZD9833):
【化2】
と、薬学的に許容される賦形剤と、を含む、1日1回の経口投与のための医薬組成物。
【請求項18】
単一錠剤の形態である、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
N-(1-(3-フルオロプロピル)アゼチジン-3-イル)-6-((6S,8R)-8-メチル-7-(2,2,2-トリフルオロエチル)-6,7,8,9-テトラヒドロ-3H-ピラゾロ[4,3-f]イソキノリン-6-イル)ピリジン-3-アミン(AZD9833):
【化3】
と少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物と、癌の治療における前記医薬組成物の使用のための説明書と、を含むキットであって、前記AZD9833が、75mgまたは150mgの用量で1日1回投与するためのものである、キット。
【請求項20】
AZD9833と組み合わせて投与するための追加の抗癌剤を更に含む、請求項19に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、癌の治療に使用するための、N-(1-(3-フルオロプロピル)アゼチジン-3-イル)-6-((6S,8R)-8-メチル-7-(2,2,2-トリフルオロエチル)-6,7,8,9-テトラヒドロ-3H-ピラゾロ[4,3-f]イソキノリン-6-イル)ピリジン-3-アミン(AZD9833、下記の化合物(I))に関し、本化合物は、規定用量で1日1回経口投与するためのものであることを特徴とする。本明細書はまた、AZD9833を規定用量で1日1回、それを必要とする患者へ経口投与することを含む治療方法、規定用量で1日1回経口投与するためのものである薬剤を製造するためのAZD9833の使用、ある特定の量のAZD9833を含む医薬組成物、及びかかる医薬組成物のキットに関する。
【化1】
【背景技術】
【0002】
エストロゲン受容体アルファ(ERα、ESR1、NR3A)及びエストロゲン受容体ベータ(ERβ、ESR2、NR3b)は、大きな核内受容体ファミリーのメンバーであるステロイドホルモン受容体である。全ての核内受容体と構造的に類似して、ERαは、6つの機能ドメイン(A~Fと名付けられている)から構成され(非特許文献1)、また、特異的なリガンド(女性性ステロイドホルモン17bエストラジオール(E2))との会合後に、複合体が、エストロゲン受容体エレメント(ERE)と名付けられたゲノム配列に結合し、共調節因子と相互作用して標的遺伝子の転写を調節することから、リガンド依存性転写因子に分類される。ERα遺伝子は、6q25.1に位置し、595AAのタンパク質をコードし、選択的スプライシング及び翻訳開始部位に起因して複数のアイソフォームが産生され得る。この受容体は、DNA結合ドメイン(ドメインC)及びリガンド結合ドメイン(ドメインE)に加えて、N末端(A/B)ドメイン、CドメインとEドメインとを連結させるヒンジ(D)ドメイン及びC末端伸長部(Fドメイン)を含有する。ERα及びERβのC及びEドメインは、完全に保存されているが(それぞれ96%及び55%のアミノ酸同一性)、一方、A/B、D及びFドメインは、良好に保存されていない(30%未満のアミノ酸同一性)。どちらの受容体も、女性生殖器官の調節及び発達に関与し、更に、中枢神経系、心血管系、及び骨代謝において役割を果たす。ERのゲノム作用は、この受容体がEREと、直接的に(直接的活性化又は古典的経路)、又は間接的に(間接的活性化又は非古典的経路)結合したときに、細胞の核内で生じる。ERは、リガンドの非存在下では、熱ショックタンパク質であるHsp90及びHsp70と会合し、会合されたシャペロン機構は、リガンド結合ドメイン(LBD)を安定化し、リガンドと接触できるようにする。リガンド結合したERは、熱ショックタンパク質から解離し、受容体の立体構造変化がもたらされ、二量体形成、DNA結合、コアクチベーター又はコリプレッサーとの相互作用、及び標的遺伝子発現の調節が可能になる。非古典的経路では、AP-1及びSp-1は、遺伝子発現を調節するために受容体の両方のアイソフォームによって使用される代替の調節DNA配列である。この例では、ERは、DNAと直接的にではなく、他のDNA結合転写因子、例えばc-Jun又はc-Fosとの会合を介して相互作用する(非特許文献2)。ERが遺伝子転写に作用する正確な機構は、十分には解明されていないが、DNA結合受容体によって動員される多数の核内因子によって媒介されると思われる。共調節因子の動員は、主として、それぞれEドメイン及びA/Bドメインに位置する、2つのタンパク質表面であるAF2及びAF1によって媒介される。AF1は、増殖因子によって調節され、その活性は、細胞環境及びプロモーター環境に依存するが、他方AF2の活性は、リガンド結合に完全に依存する。これら2つのドメインは、独立して作用し得るが、最大のER転写活性は、これら2つのドメインを介した相乗的な相互作用を通して達成される(非特許文献3)。ERは、転写因子と見なされているが、E2投与後の組織における、ゲノム作用にしては早すぎると考えられる時間尺度での迅速なER効果から明らかなように、非ゲノム機構を通して作用することもできる。エストロゲンの迅速な作用の原因である受容体が、同じ核内ERか、別のG-タンパク質共役型ステロイド受容体かどうかは不明確である(非特許文献4)が、E2によって誘導される経路、例えば、MAPK/ERK経路の数の増加、並びに内皮の一酸化窒素合成酵素及びPI3K/Akt経路の活性化が確認されている。リガンド依存性経路に加えて、ERαは、増殖因子シグナル伝達、例えば、インスリン様増殖因子1(IGF-1)及び上皮増殖因子(EGF)を介したMAPKの刺激と関連する、AF-1を介したリガンド非依存性活性を有することが示されている。AF-1の活性は、Ser118のリン酸化に依存しており、ERと増殖因子シグナル伝達とのクロストークの例は、IGF-1及びEGFなどの増殖因子に応答するMAPKによるSer118のリン酸化である(非特許文献5)。
【0003】
構造的に異なる多くの化合物が、ERに結合することが示されている。内因性リガンドE2などの、受容体アゴニストとして作用する化合物もあれば、E2結合を競合的に阻害し、受容体アンタゴニストとして作用する化合物もある。これらの化合物は、それらの機能的効果に応じて2つのクラスに分けることができる。タモキシフェンなどの選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)は、細胞状況及びプロモーター状況並びに標的とされるERアイソフォームに応じて、受容体アゴニストとアンタゴニストとの両方として作用する能力を有する。例えば、タモキシフェンは、乳房ではアンタゴニストとして作用するが、骨、心血管系、及び子宮では部分アゴニストとして作用する。全てのSERMは、AF2アンタゴニストとして作用し、AF1を介してそれらの部分アゴニスト特性を導出するように思われる。フルベストラントが一例である第2の群は、完全アンタゴニストに分類され、化合物結合上のリガンド結合ドメイン(LBD)の特有の立体構造変化(これは、ヘリックス12とLBDの残部との間の相互作用を完全に阻止し、補助因子動員を遮断する)の誘導を介して、AF1及びAF2ドメインを完全に阻害することによってエストロゲン活性を遮断することが可能である(非特許文献6;非特許文献7)。
【0004】
ERαの細胞内レベルは、E2の存在下でユビキチン/プロテアソーム(Ub/26S)経路を介してダウンレギュレートされる。リガンド結合したERαのポリユビキチン化は、少なくとも3種の酵素によって触媒される。ユビキチン活性化酵素E1によって活性化されたユビキチンは、E3ユビキチンリガーゼによるイソペプチド結合を通してE2によってリジン残基とコンジュゲートされ、次いで、ポリユビキチン化されたERαは、分解のためにプロテアソームに誘導される。ER依存性転写調節及びプロテアソーム媒介性ER分解は連動しているが(非特許文献8)、それ自体における転写は、ERα分解には必要とされず、ERαを核内プロテアソーム分解の標的とするには転写開始複合体のアセンブリで十分である。このE2誘導性分解プロセスは、細胞の増殖、分化、及び代謝に関する要求に応答して、転写を迅速に活性化させるその能力に必要であると考えられる(非特許文献9)。フルベストラントは、26Sプロテアソーム経路を介したERαの迅速なダウンレギュレーションを誘導することもできるアンタゴニストのサブセットである、選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)にも分類される。対照的に、タモキシフェンなどのSERMは、ERαレベルを増大させることができるが、転写に対する効果は、SERDで見られる効果と同様である。
【0005】
およそ70%の乳癌が、ER及び/又はプロゲステロン受容体を発現するが、これは、これらの腫瘍細胞の増殖がホルモン依存性であることを示唆している。卵巣及び子宮内膜などの他の癌も、増殖がERαシグナル伝達に依存していると考えられる。このような患者のための治療法は、ERに結合するリガンドに拮抗すること、例えば閉経前及び閉経後の両方の状況における初期及び進行性のER陽性乳癌を治療するために使用されるタモキシフェン;ERαと拮抗し、それをダウンレギュレートすること、例えばタモキシフェン若しくはアロマターゼ阻害剤による治療法を行ったにもかかわらず進行した女性の乳癌を治療するために使用されるフルベストラント;又はエストロゲン合成を遮断すること、例えば初期及び進行性のER陽性乳癌を治療するために使用されるアロマターゼ阻害剤、のいずれかにより、ERシグナル伝達を阻害することができる。これらの治療法は、乳癌治療に非常に良い影響を与えてきたが、腫瘍がERを発現している相当数の患者が、既存のER療法に対する新規の抵抗性を示すか、又はこれらの治療法に対する抵抗性を時間とともに発現する。初回タモキシフェン療法に対する抵抗性を説明するために、いくつかの異なる機構が記載されている。これには主に、タモキシフェン-ERα複合体への、特定の補助因子結合のより低い親和性(これらの補助因子の過剰発現によって相殺される)による、又は、タモキシフェン-ERα複合体と、通常はこの複合体には結合しない補助因子との相互作用を促進する二次的部位の形成による、タモキシフェンのアンタゴニストとしての作用からアゴニストとしての作用への切り替えが含まれる。したがって、タモキシフェン-ERα活性を推進する特異的な補助因子を発現している細胞の増殖の結果として、抵抗性が生じる可能性がある。他の増殖因子シグナル伝達経路が、ER受容体又はコアクチベーターを直接的に活性化させて、リガンドシグナル伝達とは無関係に細胞増殖を推進する可能性も存在する。
【0006】
より最近では、ESR1の変異が、転移性ER陽性患者由来の腫瘍試料及び患者由来異種移植片モデル(PDX)において、17~25%の変動する頻度で起こり得る抵抗性機構であると確認されている。これらの変異は、リガンド結合ドメインにおいて、優勢であるが、独占的ではなく、変異した機能性タンパク質をもたらす。アミノ酸変化の例としては、Ser463Pro、Val543Glu、Leu536Arg、Tyr537Ser、Tyr537Asn、及びAsp538Glyが挙げられ、アミノ酸537及び538での変化は、現在説明されている変化のうちの大多数を構成する。これらの変異は、Cancer Genome Atlasデータベースで特徴付けられた原発性乳癌試料由来のゲノムにおいて、これまで検出されていなかった。ER発現陽性である390個の原発性乳癌試料のうち、ESR1には1つの変異も検出されなかった(非特許文献10)。リガンド結合ドメインの変異は、これらの変異受容体がエストラジオールの非存在下で基礎転写活性を示すことから、アロマターゼ阻害剤内分泌療法に対する抵抗性の応答として発現していると考えられる。アミノ酸537及び538で変異したERの結晶構造は、どちらの変異も、ヘリックス12の位置をシフトさせ、コアクチベーター動員を可能にし、それによりアゴニストによって活性化された野生型ERを模倣することによってERのアゴニスト立体構造に有利に働くことを示した。公表データは、内分泌療法、例えばタモキシフェン及びフルベストラントが、ER変異体に依然として結合することができ、転写活性化をある程度阻害できること、また、フルベストラントは、Try537Serを分解することができるが、完全な受容体阻害には、より高い用量が必要である可能性があることを示している(非特許文献11;非特許文献12;非特許文献13)。したがって、この段階では、ESR1変異が臨床転帰の変化と関係しているか否かは不明であるが、化合物(I)又はその薬学的に許容される塩(後述)が、変異ERをダウンレギュレートさせることができ、変異ERと拮抗することができるという可能性がある。
【0007】
どの抵抗性機構又は機構の組み合わせが起こるかにかかわらず、多くは、やはりER依存性活性に依拠しており、SERD機構を介して受容体を除去することで、細胞からERα受容体を除去する最良の方法が得られる。フルベストラントは、現在、臨床的使用が承認されている唯一のSERDであるが、その機構的特性にもかかわらず、現状では1ヶ月の用量が500mgと制限されており、これにより、インビトロの乳房細胞株実験において見られる受容体の完全なダウンレギュレーションと比較して、患者試料中での受容体の代謝回転が50%未満となることによって、この薬物の薬理学的特性は、その効力が制限されてきた(非特許文献14)。
【0008】
AZD9833、即ちN-(1-(3-フルオロプロピル)アゼチジン-3-イル)-6-((6S,8R)-8-メチル-7-(2,2,2-トリフルオロエチル)-6,7,8,9-テトラヒドロ-3H-ピラゾロ[4,3-f]イソキノリン-6-イル)ピリジン-3-アミン(任意選択でその薬学的に許容される塩として提供される)は、選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)として作用する能力を有する化合物として同定されている。AZD9833は、特許文献1の実施例17として記載されており、化合物の合成方法並びにインビトロ及びインビボ実験でのその生物学的活性が開示されている。更に、筋肉内注射により投与される、臨床的使用が現在承認されている唯一のSERDであるフルベストラントとは対照的に、AZD9833は、経口投与に適合する物理化学的プロファイルを有することが前臨床試験で示された。
【0009】
その有利な特性を考慮すると、連日経口投与されるAZD9833は、フルベストラントによってなされるものよりも優れたエストロゲン受容体分解を実現する可能性があることが想定された。本明細書に初めて記載されるように、AZD9833の連日経口投与に関する臨床試験の予備的結果は、重度の前治療を受けた患者において、RECIST基準に従って(例えば、RECIST 1.1基準に従って(https://recist.eortc.org/;非特許文献15を参照されたい))立証された部分奏効を導いた用量範囲を見出すことにつながった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】国際公開第2018/077630A1号パンフレット
【非特許文献】
【0011】
【文献】Dahlman-Wright,et al.,Pharmacol.Rev.,2006,58:773-781
【文献】Kushner et al.,Pure Applied Chemistry 2003,75:1757-1769
【文献】Tzukerman,et al.,Mol.Endocrinology,1994,8:21-30
【文献】Warner,et al.,Steroids 2006 71:91-95
【文献】Kato,et al.,Science,1995,270:1491-1494
【文献】Wakeling,et al.,Cancer Res.,1991,51:3867-3873
【文献】Pike,et al.,Structure,2001,9:145-153
【文献】Lonard,et al.,Mol.Cell,2000 5:939-948
【文献】Stenoien,et al.,Mol.Cell Biol.,2001,21:4404-4412
【文献】Cancer Genome Atlas Network,2012 Nature 490:61-70
【文献】Toy et al.,Nat.Genetics 2013,45:1439-1445
【文献】Robinson et al.,Nat.Genetics 2013,45:144601451
【文献】Li,S.et al.Cell Rep.4,1116-1130(2013)
【文献】Wardell,et al.,Biochem.Pharm.,2011,82:122-130
【文献】Eur.J.Cancer 2016,62,Pages 132-137
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本明細書の目的は、癌の治療におけるAZD9833の使用のための、例えば乳癌の治療における使用のための適切な用量及び投与レジメンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本明細書の第1の態様では、癌の治療に使用するためのAZD9833が提供され、AZD9833は、25mg~450mgの用量で1日1回経口投与される。
【0014】
本明細書の第2の態様では、AZD9833を25mg~450mgの用量でそれを必要とする患者に1日1回投与することを含む、癌の治療方法が提供される。
【0015】
本明細書の第3の態様では、癌の治療用の薬剤を製造する際のAZD9833の使用が提供され、AZD9833は、25mg~450mgの用量で1日1回経口投与される。
【0016】
本明細書の第4の態様では、25mg~450mgのAZD9833と薬学的に許容される賦形剤とを含む、1日1回の経口投与のための医薬組成物が提供される。
【0017】
本明細書の第5の態様では、癌の治療に使用するための25mg~450mgのAZD9833と薬学的に許容される賦形剤とを含む、1日1回の経口投与のための医薬組成物が提供される。
【0018】
本明細書の第6の態様では、AZD9833と少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物と、癌の治療における医薬組成物の使用のための説明書と、を含むキットが提供され、ここで、AZD9833は、25mg~450mgの用量で1日1回投与するためのものである。
【0019】
本明細書がより良く理解され得るように、以下の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】用量範囲間でAZD9833治療の利益を実証するのに適した、重度の前治療を受けた患者、乳癌患者における第I相臨床試験の用量漸増相の模式図。
図2】AZD9833の漸増用量による治療後の患者応答に関するスイマープロット。
図3】様々な用量のAZD9833で治療された患者の、ベースラインからの腫瘍サイズの最良の変化を示す複合ウォーターフォールプロット。
図4】様々な用量でAZD9833を投与した後の平均血漿中濃度の経時的プロット。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書で詳述される本発明は、列挙された実施形態又は実施例のいずれかに限定されると解釈されるべきではない。当業者である読者には、他の実施形態が容易に明らかになるであろう。
【0022】
「a」又は「an」は、「少なくとも1つ」を意味する。「a」又は「an」が所与の要素を示すために使用される任意の実施形態では、「a」又は「an」は、1つを意味し得る。「a」又は「an」が所与の要素を示すために使用される任意の実施形態では、「a」又は「an」は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個を意味し得る。
【0023】
「いくつかの実施形態では~」と言及されている場合、特定の特徴が存在している場合があり、その特徴は、本明細書の同じセクション又は本文領域の適切な実施形態のみならず、本明細書の任意の部分における適切な実施形態に存在していてもよい。
【0024】
特許請求の範囲は、実施形態である。
【0025】
療的使用
一実施形態では、癌の治療に使用するためのAZD9833が提供され、AZD9833は、25mg~450mgの用量で1日1回経口投与される。
【0026】
一実施形態では、抗増殖効果を生じさせるのに使用するためのAZD9833が提供され、AZD9833は、25mg~450mgの用量で1日1回経口投与される。
【0027】
一実施形態では、ERαを選択的に阻害するためのAZD9833が提供され、AZD9833は、25mg~450mgの用量で1日1回経口投与される。
【0028】
一実施形態では、癌の治療用の薬剤を製造する際のAZD9833の使用が提供され、AZD9833は、25mg~450mgの用量で1日1回経口投与される。
【0029】
一実施形態では、抗増殖効果を生じさせるための薬剤を製造する際のAZD9833の使用が提供され、AZD9833は、25mg~450mgの用量で1日1回経口投与される。
【0030】
一実施形態では、ERαを選択的に阻害するための薬剤を製造する際のAZD9833の使用が提供され、AZD9833は、25mg~450mgの用量で1日1回経口投与される。
【0031】
一実施形態では、癌の治療を必要とするヒト又は動物患者の癌を治療する方法であって、AZD9833を25mg~450mgの用量で患者に1日1回経口投与することを含む、方法が提供される。
【0032】
一実施形態では、抗増殖効果を必要とするヒト又は動物患者においてかかる効果を生じさせる方法であって、AZD9833を25mg~450mgの用量で患者に1日1回経口投与することを含む、方法が提供される。
【0033】
一実施形態では、かかる効果を必要とするヒト又は動物患者においてERαを選択的に阻害する方法であって、AZD9833を25mg~450mgの用量で患者に1日1回経口投与することを含む、方法が提供される。
【0034】
化合物
いくつかの実施形態では、AZD9833は、N-(1-(3-フルオロプロピル)アゼチジン-3-イル)-6-((6S,8R)-8-メチル-7-(2,2,2-トリフルオロエチル)-6,7,8,9-テトラヒドロ-3H-ピラゾロ[4,3-f]イソキノリン-6-イル)ピリジン-3-アミン又はその薬学的に許容される塩であり得る。N-(1-(3-フルオロプロピル)アゼチジン-3-イル)-6-((6S,8R)-8-メチル-7-(2,2,2-トリフルオロエチル)-6,7,8,9-テトラヒドロ-3H-ピラゾロ[4,3-f]イソキノリン-6-イル)ピリジン-3-アミンは、上述の化合物(I)の構造を有する。
【0035】
いくつかの実施形態では、AZD9833は、塩遊離形態の(例えば、中性形態若しくは双性イオン形態の、又は例えば遊離塩基形態の)N-(1-(3-フルオロプロピル)アゼチジン-3-イル)-6-((6S,8R)-8-メチル-7-(2,2,2-トリフルオロエチル)-6,7,8,9-テトラヒドロ-3H-ピラゾロ[4,3-f]イソキノリン-6-イル)ピリジン-3-アミンであり得る。
【0036】
いくつかの実施形態では、AZD9833は、N-(1-(3-フルオロプロピル)アゼチジン-3-イル)-6-((6S,8R)-8-メチル-7-(2,2,2-トリフルオロエチル)-6,7,8,9-テトラヒドロ-3H-ピラゾロ[4,3-f]イソキノリン-6-イル)ピリジン-3-アミンの薬学的に許容される塩であり得る。
【0037】
「薬学的に許容される」という用語は、対象(例えば、塩、剤形、又は賦形剤)が、患者に使用する上で好適であることを明示するために使用される。薬学的に許容される塩の例示的なリストは、“Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection and Use“,P.H.Stahl and C.G.Wermuth,editors,Weinheim/Zurich:Wiley-VCH/VFiCA,2002又は後続版に見ることができる。
【0038】
N-(1-(3-フルオロプロピル)アゼチジン-3-イル)-6-((6S,8R)-8-メチル-7-(2,2,2-トリフルオロエチル)-6,7,8,9-テトラヒドロ-3H-ピラゾロ[4,3-f]イソキノリン-6-イル)ピリジン-3-アミンの好適な薬学的に許容される塩は、例えば、酸付加塩である。N-(1-(3-フルオロプロピル)アゼチジン-3-イル)-6-((6S,8R)-8-メチル-7-(2,2,2-トリフルオロエチル)-6,7,8,9-テトラヒドロ-3H-ピラゾロ[4,3-f]イソキノリン-6-イル)ピリジン-3-アミンの酸付加塩は、当業者に公知の条件下で、化合物を好適な無機酸又は有機酸と接触させることによって形成され得る。
【0039】
酸付加塩は、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、及びリン酸から選択される無機酸を用いて形成され得る。酸付加塩はまた、酢酸、アジピン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ケイ皮酸、クエン酸、D,L-乳酸、エタンジスルホン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、塩酸、L-酒石酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、メタンスルホン酸、ナパジシル酸(napadisylic acid)、リン酸、サッカリン、コハク酸、硫酸、p-トルエンスルホン酸、トルエンスルホン酸、及びトリフルオロ酢酸から選択される有機酸を用いて形成され得る。
【0040】
N-(1-(3-フルオロプロピル)アゼチジン-3-イル)-6-((6S,8R)-8-メチル-7-(2,2,2-トリフルオロエチル)-6,7,8,9-テトラヒドロ-3H-ピラゾロ[4,3-f]イソキノリン-6-イル)ピリジン-3-アミンの更なる好適な薬学的に許容される塩は、例えば、N-(1-(3-フルオロプロピル)アゼチジン-3-イル)-6-((6S,8R)-8-メチル-7-(2,2,2-トリフルオロエチル)-6,7,8,9-テトラヒドロ-3H-ピラゾロ[4,3-f]イソキノリン-6-イル)ピリジン-3-アミンをヒト又は動物の体内に投与した後に、上記ヒト又は動物の体内で形成される塩である。
【0041】
用量レベル
いくつかの実施形態では、AZD9833の用量は、25mg、75mg、150mg、300mg、及び450mgから選択され得る。
【0042】
いくつかの実施形態では、AZD9833の用量は、25mgであり得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、AZD9833の用量は、75mgであり得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、AZD9833の用量は、150mgであり得る。
【0045】
いくつかの実施形態では、AZD9833の用量は、300mgであり得る。
【0046】
いくつかの実施形態では、AZD9833の用量は、450mgであり得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、AZD9833の用量は、経口1日用量であり得る。
【0048】
「経口1日用量」は、24時間で経口投与されるAZD9833の量である。
【0049】
いくつかの実施形態では、AZD9833は、単回用量として投与され得る。
【0050】
いくつかの実施形態では、AZD9833は、分割用量として投与され得る。
【0051】
「分割用量」は、総用量(例えば、経口1日用量)が複数回(例えば、1、2、3、4又は5回)に分けて投与される用量である。
【0052】
いくつかの実施形態では、AZD9833は、単回用量単位又は複数回用量単位として投与され得る。
【0053】
「投与単位」は、個々の剤形、例えば、特定数(例えば、1、2、3、4又は5つ)の錠剤又はカプセル剤である。
【0054】
いくつかの実施形態では、AZD9833は、単一錠剤として投与され得る。
【0055】
いくつかの実施形態では、AZD9833は、1日1回、単一錠剤として投与され得る。
【0056】
いくつかの実施形態では、AZD9833は、1日1回、単一錠剤として経口投与され得る。
【0057】
疑義を回避するために述べると、AZD9833の用量範囲が本明細書に示されている場合、例えば25mg~450mgの用量では、その範囲には、範囲の端点の用量、及びそれらの端点の間にある用量、即ち、25mg及び450mg並びにその間の量が含まれる。
【0058】

「癌」は、本明細書中では、腫瘍及び病変と同義に使用される。癌には、原発癌のみならず、二次癌及び転移も含まれる場合がある。
【0059】
「癌の治療」、「癌を治療すること」及び類似の用語は、現存する癌を治療すること及び/又は癌を予防することを包含する。
【0060】
いくつかの実施形態では、癌の治療又は癌を治療することは、癌を治療すること及び予防することを意味し得る。
【0061】
いくつかの実施形態では、癌の治療又は癌を治療することは、癌を治療することを意味し得る。
【0062】
いくつかの実施形態では、癌の治療又は癌を治療することは、癌を予防することを意味し得る。
【0063】
いくつかの実施形態では、癌は、乳癌及び婦人科癌から選択され得る。
【0064】
「婦人科癌」には、子宮癌、卵巣癌、子宮頸癌、外陰癌、及び膣癌が含まれる。
【0065】
いくつかの実施形態では、癌は、乳癌、子宮癌、卵巣癌、子宮頸癌、外陰癌、及び膣癌から選択され得る。
【0066】
いくつかの実施形態では、癌は、ER陽性HER2陰性乳癌であり得る。
【0067】
「ER陽性HER2陰性乳癌」は、高レベルのHER2遺伝子又はHER2タンパク質を有さない(HER2陰性である)エストロゲン受容体を有する(ER陽性である)腫瘍を含む。ER陽性且つHER2陰性の状態は、市販キットの使用を含む、当該技術分野において公知の方法によって測定することができる。
【0068】
いくつかの実施形態では、乳癌は、ER陽性乳癌であり得る。
【0069】
いくつかの実施形態では、乳癌は、HER2陰性乳癌であり得る。
【0070】
いくつかの実施形態では、癌は、ER陽性HER2陰性の進行性乳癌であり得る。
【0071】
いくつかの実施形態では、乳癌は、ER陽性進行性乳癌であり得る。
【0072】
いくつかの実施形態では、乳癌は、HER2陰性進行性乳癌であり得る。
【0073】
患者の選択
いくつかの実施形態では、AZD9833は、閉経前又は閉経後の女性に投与され得る。
【0074】
いくつかの実施形態では、AZD9833は、閉経前の女性に投与され得る。
【0075】
いくつかの実施形態では、AZD9833は、閉経後の女性に投与され得る。
【0076】
いくつかの実施形態では、AZD9833は、癌がER陽性である閉経前又は閉経後の女性に投与され得る。
【0077】
いくつかの実施形態では、AZD9833は、癌がHER2陰性である閉経前又は閉経後の女性に投与され得る。
【0078】
いくつかの実施形態では、AZD9833は、癌がER陽性且つHER2陰性である閉経前又は閉経後の女性に投与され得る。
【0079】
いくつかの実施形態では、AZD9833は、癌がESR1変異を有する閉経前又は閉経後の女性に投与され得る。
【0080】
いくつかの実施形態では、AZD9833は、癌がESR1変異を有していない閉経前又は閉経後の女性に投与され得る。
【0081】
いくつかの実施形態では、AZD9833は、癌がこれまでに1~15種の抗癌療法によって治療されている患者に投与され得る。
【0082】
いくつかの実施形態では、AZD9833は、癌がこれまでに1~10種の抗癌療法によって治療されている患者に投与され得る。
【0083】
いくつかの実施形態では、AZD9833は、癌がこれまでに1~5種の抗癌療法によって治療されている患者に投与され得る。
【0084】
いくつかの実施形態では、AZD9833は、癌がこれまでに5~10種の抗癌療法によって治療されている患者に投与され得る。
【0085】
患者が「これまでに治療されている」場合、これは、AZD9833の投与前に患者に施された任意の治療を指す。これまでの治療とは、当該治療法が成功したこと又は治癒的であったことを意味するものではなく、単に、患者がその治療法による治療を受けたことを意味する(例えば、適切な資格を有する医療従事者によって治療法が処方された結果として)。
【0086】
「抗癌療法」には、癌の治療を目的とした薬剤、薬物、化合物、又は他の医学的手法(例えば、患者自身の免疫作用物質を使用した治療)が含まれる。抗癌療法の例は、内分泌療法及び化学療法である。
【0087】
「内分泌療法」は、患者のホルモン経路を調節することによって作用するものである。例としては、エストロゲン阻害剤(タモキシフェン又はフルベストラントなど)、アロマターゼ阻害剤(レトロゾール、アナストロゾール、ボラゾール(vorazole)、又はエキセメスタンなど)、プロゲストゲン(酢酸メゲストロールなど)、及び黄体形成ホルモン遮断薬(ロイプロリド又はゴセレリンなど)が挙げられる。
【0088】
「化学療法」は、内分泌療法ではない癌療法である。化学療法には、例えば、以下が含まれる:
i.従来の抗増殖/抗悪性腫瘍薬及びその組み合わせ、例えば、アルキル化剤(例えば、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン、シクロホスファミド、ナイトロジェンマスタード、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、テモゾロミド、及びニトロソウレア);代謝拮抗剤(例えば、ゲムシタビン並びに葉酸代謝拮抗剤、例えば、フルオロピリミジン(5-フルオロウラシル及びテガフールなど)、ラルチトレキセド、メトトレキサート、シトシンアラビノシド、並びにヒドロキシウレア);抗腫瘍抗生物質(例えば、アントラサイクリン(アドリアマイシン、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダウノマイシン、エピルビシン、イダルビシン、マイトマイシン-C、ダクチノマイシン、及びミトラマイシンなど));有糸分裂阻害剤(例えば、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、及びビノレルビンなど)、並びにタキソイド(タキソール及びタキソテールなど)、並びにポロキナーゼ阻害剤);並びにトポイソメラーゼ阻害剤(例えば、エピポドフィロトキシン(エトポシド及びテノポシド(tenoposide)など)、アムサクリン、トポテカン、及びカンプトテシン);
ii.増殖因子機能及びその下流のシグナル伝達経路の阻害剤、例えば、Stern et al.Critical Reviews in Oncology/Haematology,2005,54,pp11-29によって概説されているものなどの任意の増殖因子又は増殖因子受容体標的のAbモジュレーター;かかる標的の低分子阻害剤、例えば、キナーゼ阻害剤。具体例としては、抗erbB2抗体トラスツズマブ[Herceptin(商標)]及びペルツズマブ[Perjeta(商標)]、HER-2を標的とする抗体-薬物コンジュゲートであるトラスツズマブデルクステカン[Enhertu(商標)]及びトラスツズマブエムタンシン[Kadcyla(商標)]、抗EGFR抗体パニツムマブ、抗EGFR抗体セツキシマブ[Erbitux、C225]、並びにチロシンキナーゼ阻害剤(erbB受容体ファミリー、例えば、上皮増殖因子ファミリー受容体(EGFR/erbB1)の阻害剤、ゲフィチニブ、オシメルチニブ、又はエルロチニブなどのチロシンキナーゼ阻害剤、ラパチニブなどのerbB2チロシンキナーゼ阻害剤、及びアファチニブなどのerb1/2の混合阻害剤を含む)が挙げられる。他の例示的なクラスの増殖因子及びそれらの受容体モジュレーターとしては、例えば、肝細胞増殖因子ファミリー又はそれらの受容体(c-met及びronを含む)の阻害剤;インスリン及びインスリン増殖因子ファミリー又はそれらの受容体(IGFR、IR)の阻害剤、血小板由来増殖因子(PDGFR)ファミリー又はそれらの受容体の阻害剤、並びに他の受容体チロシンキナーゼ、例えば、c-kit、AnLK、及びCSF-1Rによって媒介されるシグナル伝達の阻害剤;PI3-キナーゼシグナル伝達経路のシグナル伝達タンパク質を標的とするモジュレーター、例えば、PI3-キナーゼアイソフォーム(例えば、PI3K-α、PI3K-β)の阻害剤が挙げられる。PI3K-γ及びPI3K-δ、並びにser/thrキナーゼ、例えば、AKT(例えば、カピバセルチブ、アフレセルチブ、ミランセルチブ(miransertib)、ARQ751、イパタセリブ(ipataserib)、MK-2206、又はペリフォシン)、mTOR(例えば、AZD2014若しくはエベロリムス)、PDK、SGK、PI4K、又はPIP5K;上に列挙されていないセリン/トレオニンキナーゼの阻害剤、例えば、ベムラフェニブなどのraf阻害剤、セルメチニブ(AZD6244)などのMEK阻害剤、イマチニブ又はニロチニブなどのAbl阻害剤、イブルチニブ、アカラブルチニブ、及びザヌブルチニブなどのBtk阻害剤、フォスタマチニブなどのSyk阻害剤、オーロラキナーゼ阻害剤(例えば、AZD1152)、他のser/thrキナーゼ(例えば、JAK、STAT、及びIRAK4)の阻害剤、並びにサイクリン依存性キナーゼ、例えば、CDK1、CDK4、CDK6、CDK7、CDK9、及びCDK4/6の阻害剤(例えば、パルボシクリブ、リボシクリブ、アベマシクリブ、レロシクリブ、及びトリラクリシブ);
iii.DNA損傷シグナル伝達経路のモジュレーター、例えば、PARP阻害剤(例えば、オラパリブ、ルカパリブ、ニラパリブ、及びタラゾパリブ)、ATR阻害剤(例えば、AZD6738)、又はATM阻害剤;
iv.アポトーシス経路及び細胞死経路のモジュレーター、例えば、Bclファミリーモジュレーター(例えば、ABT-263/Navitoclax、ABT-199);
v.抗血管新生剤、例えば、血管内皮増殖因子の効果を抑制するもの、例えば、抗血管内皮細胞増殖因子抗体ベバシズマブ(Avastin(商標))、又はVEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、ソラフェニブ、アキシチニブ、パゾパニブ、スニチニブ、若しくはバンデタニブ(及び他の機構によって作用する化合物(例えば、リノミド、インテグリン機能の阻害剤、及びアンジオスタチン);
vi.血管損傷剤、例えば、コンブレタスタチンA4;
vii.抗浸潤剤、例えば、c-Srcキナーゼファミリー阻害剤様(ダサチニブ、J.Med.Chem.,2004,47,6658-6661)及びボスチニブ(SKI-606)、並びにメタロプロテアーゼ阻害剤(マリマスタットなど)、ウロキナーゼプラスミノーゲンアクチベーター受容体機能の阻害剤、又はヘパラナーゼに対する抗体);
viii.免疫療法(例えば、サイトカイン(例えば、インターロイキン2、インターロイキン4、又は顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)のトランスフェクションなどの、患者腫瘍細胞の免疫原性を増加させるためのエクスビボ及びインビボ手法、T細胞アネルギーを減少させるための手法、サイトカインをトランスフェクトされた樹状細胞などのトランスフェクトされた免疫細胞を使用する手法、サイトカインをトランスフェクトされた腫瘍細胞株を使用する手法、及び抗イディオタイプ抗体を使用する手法が含まれる)。具体例としては、PD-1を標的とするモノクローナル抗体(例えば、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ)、PD-L1を標的とするモノクローナル抗体(例えば、デュルバルマブ、アテゾリズマブ、若しくはアベルマブ)、又はCTLA4を標的とするモノクローナル抗体(例えば、イピリムマブ及びトレメリムマブ)が挙げられる;
ix.アンチセンス又はRNAiをベースとする治療法、例えば、本明細書に列挙されている標的を対象とするもの;並びに
x.遺伝子療法手法(例えば、異常なp53又は異常なBRCA1若しくはBRCA2などの異常な遺伝子を置き換えるための手法、GDEPT(遺伝子指向性酵素プロドラッグ療法)、例えば、シトシンデアミナーゼ、チミジンキナーゼ、又は細菌のニトロレダクターゼ酵素を使用する手法、及び化学療法又は放射線療法に対する患者の耐性を増大させるための手法、例えば多剤耐性遺伝子療法が含まれる)。
【0089】
いくつかの実施形態では、AZD9833は、癌がこれまでに1種以上の内分泌療法と、2種以下の化学療法とによって治療されている患者に投与され得る。
【0090】
いくつかの実施形態では、AZD9833は、癌がこれまでにER陽性HER2陰性乳癌に対する1種以上の内分泌療法と、2種以下の化学療法とによって治療されている患者に投与され得る。
【0091】
「ER陽性HER2陰性乳癌に対する化学療法」は、21日以上投与される少なくとも1種の細胞毒性剤を含む任意の抗癌レジメンを含み得る。
【0092】
いくつかの実施形態では、AZD9833は、癌がこれまでにER陽性HER2陰性進行性乳癌に対する1種以上の内分泌療法と、2種以下の化学療法とによって治療されている患者に投与され得る。
【0093】
いくつかの実施形態では、1種以上の内分泌療法は、エストロゲン阻害剤、アロマターゼ阻害剤、プロゲストゲン、及び黄体形成ホルモン遮断薬から選択され得る。
【0094】
いくつかの実施形態では、1種以上の内分泌療法は、タモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、イドキシフェン、フルベストラント、レトロゾール、アナストロゾール、ボラゾール、エキセメスタン、酢酸メゲストロール、ロイプロリド、及びゴセレリンから選択され得る。
【0095】
いくつかの実施形態では、2種以下の化学療法は、CDK阻害剤(例えば、CD4阻害剤、CDK6阻害剤、又はCDK4/CDK6二重阻害剤)、及びmTOR阻害剤から選択され得る。
【0096】
いくつかの実施形態では、2種以下の化学療法は、パルボシクリブ、リボシクリブ、アベマシクリブ、トリラシクリブ、レロシクリブ、及びエベロリムスから選択され得る。
【0097】
いくつかの実施形態では、AZD9833は、癌がアロマターゼ阻害剤に対して抵抗性である患者に投与され得る。
【0098】
いくつかの実施形態では、AZD9833は、癌が非ステロイド性アロマターゼ阻害剤に対して抵抗性である患者に投与され得る。
【0099】
いくつかの実施形態では、AZD9833は、癌がレトロゾール及びアナストロゾールから選択されるアロマターゼ阻害剤に対して抵抗性である患者に投与され得る。
【0100】
患者の癌が特定の薬物又は治療法に対して「抵抗性」(又は難治性)である場合、その癌がもはや治療に十分に応答せず、その治療はそれ以降、適切な医療選択肢と見なされなくなるため、主治医は別の治療手法を推奨する。
【0101】
いくつかの実施形態では、AZD9833は、癌がタモキシフェンに対して抵抗性である患者に投与され得る。
【0102】
いくつかの実施形態では、AZD9833は、癌がフルベストラントに対して抵抗性である患者に投与され得る。
【0103】
いくつかの実施形態では、AZD9833は、癌がCDK阻害剤に対して抵抗性である患者に投与され得る。
【0104】
薬物動態特性及び薬力学的特性
一実施形態では、癌の治療に使用するためのAZD9833が提供され、AZD9833は、25mg~450mgの用量で1日1回経口投与され、癌患者において10~1000ng/mLの平均最高血漿中濃度に達する。
【0105】
「最高平均血漿中濃度」とは、治療後に患者の血漿中で達するAZD9833の最大量を指す。
【0106】
一実施形態では、癌の治療に使用するためのAZD9833が提供され、AZD9833は、25mg~450mgの用量で1日1回経口投与され、癌患者において8時間~14時間の終末相半減期の中央値に達する。
【0107】
一実施形態では、癌の治療に使用するためのAZD9833が提供され、AZD9833は、25mg~450mgの用量で1日1回経口投与され、癌患者において12時間の終末相半減期の中央値に達する。
【0108】
「終末相半減期の中央値」は、疑似平衡に達した後、患者の薬物血漿中濃度が半減するまでの時間の中央値である。
【0109】
臨床特性
一実施形態では、癌の治療に使用するためのAZD9833が提供され、AZD9833は、25mg~450mgの用量で1日1回経口投与され、10%~20%の客観的奏効率を達成する。
【0110】
「客観的奏効率」とは、ベースライン時に測定可能な疾患を有しており、初回投与日から17週間以上、又は治療後のスキャン日から15週間以上でRECIST基準で測定した奏効が確認されたことを示す患者の割合である。
【0111】
一実施形態では、癌の治療に使用するためのAZD9833が提供され、AZD9833は、25mg~450mgの用量で1日1回経口投与され、25%~100%の臨床的有用率を達成する。
【0112】
「臨床的有用率」とは、初回投与日から25週間以上、又は治療後のスキャン日から23週間以上で、治療後23週間超に関するRECIST基準で測定した奏効の確認又は安定を示す患者の割合である。
【0113】
一実施形態では、癌の治療に使用するためのAZD9833が提供され、AZD9833は、25mg~450mgの用量で1日1回経口投与され、25%を超える臨床的有用率を達成する。
【0114】
一実施形態では、癌の治療に使用するためのAZD9833が提供され、AZD9833は、25mg~450mgの用量で1日1回経口投与され、25%~90%の臨床的有用率を達成する。
【0115】
一実施形態では、癌の治療に使用するためのAZD9833が提供され、AZD9833は、25mg~450mgの用量で1日1回経口投与され、25%~80%の臨床的有用率を達成する。
【0116】
一実施形態では、癌の治療に使用するためのAZD9833が提供され、AZD9833は、25mg~450mgの用量で1日1回経口投与され、25%~75%の臨床的有用率を達成する。
【0117】
一実施形態では、癌の治療に使用するためのAZD9833が提供され、AZD9833は、25mg~450mgの用量で1日1回経口投与され、癌患者にいかなる重篤な副作用も引き起こさない。
【0118】
いくつかの実施形態では、重篤な副作用は、グレード4又は5の有害事象と定義され得る。
【0119】
「グレード4又は5の有害事象」は、有害事象共通用語規準(CTCAE)に従って分類することができる。
【0120】
併用治療
一実施形態では、癌の治療に使用するためのAZD9833が提供され、AZD9833は、更なる抗癌療法と組み合わせて、25mg~450mgの用量で1日1回経口投与される。
【0121】
薬物がAZD9833と「組み合わせて」投与される場合、その組み合わせは、薬物の別個の、逐次的な、又は同時の投与を含み得る。治療が別個及び/又は逐次的である場合、AZD9833の用量と更なる抗癌療法の用量との間の間隔は、併用治療効果が確実に生じるように選択され得る。
【0122】
いくつかの実施形態では、AZD9833の投与と更なる抗癌療法の投与は、別個である。
【0123】
いくつかの実施形態では、AZD9833の投与と更なる抗癌療法の投与は、逐次的である。
【0124】
いくつかの実施形態では、AZD9833の投与と更なる抗癌療法の投与は、別個且つ逐次的である。
【0125】
いくつかの実施形態では、更なる抗癌療法は、CDK阻害剤であり得る。
【0126】
いくつかの実施形態では、更なる抗癌療法は、CDK4阻害剤であり得る。
【0127】
いくつかの実施形態では、更なる抗癌療法は、CDK6阻害剤であり得る。
【0128】
いくつかの実施形態では、更なる抗癌療法は、CDK4/CDK6二重阻害剤であり得る。
【0129】
いくつかの実施形態では、更なる抗癌療法は、パルボシクリブ、リボシクリブ、アベマシクリブ、レロシクリブ、又はトリラシクリブから選択されるCDK阻害剤であり得る。
【0130】
いくつかの実施形態では、更なる抗癌療法は、パルボシクリブであり得る。
【0131】
いくつかの実施形態では、更なる抗癌療法は、mTOR阻害剤であり得る。
【0132】
いくつかの実施形態では、更なる抗癌療法は、シロリムス、デフォロリムス、エベロリムス、及びテムシロリムスから選択されるmTOR阻害剤であり得る。
【0133】
いくつかの実施形態では、更なる抗癌療法は、エベロリムスであり得る。
【0134】
いくつかの実施形態では、更なる抗癌療法は、最大10mgの用量で1日1回経口投与されるエベロリムスであり得る。
【0135】
いくつかの実施形態では、更なる抗癌療法は、パルボシクリブ、リボシクリブ、アベマシクリブ、レロシクリブ、トリラシクリブ、及びエベロリムスから選択され得る。
【0136】
いくつかの実施形態では、更なる抗癌療法は、パルボシクリブ、リボシクリブ、アベマシクリブ、レロシクリブ、及びトリラシクリブから選択され得る。
【0137】
いくつかの実施形態では、更なる抗癌療法は、AKT阻害剤であり得る。
【0138】
いくつかの実施形態では、更なる抗癌療法は、カピバセルチブ、アフレセルチブ、ミランセルチブ、ARQ751、イパタセリブ、MK-2206、又はペリフォシンから選択され得る。
【0139】
組成物
一実施形態では、25mg~450mgのAZD9833と薬学的に許容される賦形剤とを含む、1日1回の経口投与のための組成物が提供される。
【0140】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容される賦形剤は、不活性希釈剤(例えば、微結晶セルロース又はリン酸二カルシウム無水物)、造粒剤、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム)、結合剤、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム)、保存剤、抗酸化剤、及びキレート剤から選択され得る。
【0141】
いくつかの実施形態では、1日1回の経口投与のための組成物は、25mg~450mgのAZD9833、例えば、25mg、75mg、又は100mgのAZD9833と、微結晶セルロース(MCC)、リン酸二カルシウム無水物(DCPA)、マンニトール、ラクトース、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム二水和物、三塩基性リン酸カルシウム、二塩基性リン酸カルシウム二水和物、ケイ化微結晶セルロース、それらの共処理された組み合わせ、ポリデキストロース、トレハロース、スクロース、グルコース、シクロデキストリン、及びヒドロキシプロピルセルロースから選択される少なくとも1つの希釈剤とを含む。
【0142】
1日1回の経口投与のための組成物は、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、デンプングリコール酸ナトリウム(SSG)、及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)から選択される少なくとも1つの崩壊剤を更に含み得る。
【0143】
1日1回の経口投与のための組成物は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、フマル酸ステアリルナトリウム、ベヘン酸グリセリル、及びステアリン酸から選択される少なくとも1つの滑沢剤を更に含み得る。
【0144】
剤形
一実施形態では、1日1回の経口投与用の錠剤又はカプセル剤の形態である、25mg~450mgのAZD9833と薬学的に許容される賦形剤とを含む、医薬組成物が提供される。
【0145】
錠剤製剤は、コーティングされていなくてもよく、又はその崩壊及びその後の有効成分の胃腸管内での吸収を調整するために、若しくはその安定性及び/若しくは外観を改善するためにコーティングされていてもよく、いずれの場合であっても、当該技術分野において公知の従来のコーティング剤及び手順が用いられる。例えば、錠剤製剤は、有効成分を即時に放出するように処理され得る。
【0146】
一実施形態では、25mg~450mgのAZD9833、例えば、25~100mgのAZD9833と、薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物が提供され、この組成物は、即時放出組成物である。
【0147】
一実施形態では、1日1回の経口投与用の単一錠剤の形態である、25mg~450mgのAZD9833、例えば、25~100mgのAZD9833と、薬学的に許容される賦形剤とを含む、医薬組成物が提供される。
【0148】
錠剤に加えて、経口使用のための組成物は、代わりに、有効成分が不活性固体希釈剤と混合されている硬ゼラチンカプセル剤の形態であってもよく、又は有効成分が水若しくは油と混合されている軟ゼラチンカプセル剤としてであってもよい。
【0149】
一実施形態では、1日1回の経口投与用の単一カプセル剤の形態である、25mg~450mgのAZD9833、例えば、25~100mgのAZD9833と、薬学的に許容される賦形剤とを含む、医薬組成物が提供される。
【0150】
一実施形態では、癌の治療における、25mg~450mgのAZD9833、例えば、25~100mgのAZD9833と、薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物の使用が提供され、この医薬組成物は1日1回投与される。
【0151】
キット
一実施形態では、AZD9833と少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物と、癌の治療における医薬組成物の使用のための説明書と、を含むキットが提供され、ここで、AZD9833は、25mg~450mgの用量で1日1回投与するためのものである。
【0152】
一実施形態では、
- AZD9833と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤と、を含む医薬組成物と;
- AZD9833と組み合わせて投与するための追加の抗癌剤と;
- 癌の治療における医薬組成物の使用のための説明書と、を含むキットが提供され、ここで、AZD9833は、25mg~450mgの用量で1日1回投与するためのものである。
【0153】
一実施形態では、
- AZD9833と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤と、を含む医薬組成物と;
- AZD9833と組み合わせて投与するための追加の抗癌剤と;
- 癌の治療における医薬組成物の使用のための説明書と、を含むキットが提供され、ここで、AZD9833は、25mg~450mgの用量で1日1回投与するためのものである。
【0154】
一実施形態では、
- AZD9833と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤と、を含む医薬組成物と;
- AZD9833と組み合わせて投与するための、パルボシクリブ、リボシクリブ、アベマシクリブ、又はトリラシクリブから選択される追加の抗癌剤と;
- 癌の治療における医薬組成物の使用のための説明書と、を含むキットが提供され、ここで、AZD9833は、25mg~450mgの用量で1日1回投与するためのものである。
【実施例
【0155】
臨床試験プロトコル
概要:AZD9833の最適な投与レジメンを決定するために、ER陽性、HER2陰性の進行性乳癌患者において以下の基本プロトコルに従って第1相用量漸増及び用量拡大を実施した。
【0156】
論拠:AZD9833は、エストロゲン受容体陽性(ER+)乳癌患者における、(筋肉内投与されるフルベストラントと比較した)バイオアベイラビリティの向上並びに標的(エストロゲン受容体)結合及び調節の向上を通じて、既存の内分泌療法に優れた臨床的利益をもたらす可能性がある。本試験の主要目的は、ER+ヒト上皮増殖因子受容体2陰性(HER2-)進行性乳癌を有する女性におけるAZD9833の安全性及び忍容性を判定することである。更に、AZD9833の薬物動態及び予備的な抗腫瘍活性を調査する。
【0157】
主要目的及び評価項目:
【0158】
【表1】
【0159】
副次的目的及び評価項目:
【0160】
【表2】
【0161】
探索的目的及び評価項目:
【0162】
【表3】
【0163】
全般的デザイン:本試験は、治癒目的の治療に不適な内分泌抵抗性ER+HER2-乳癌を有する女性におけるAZD9833単独の安全性及び忍容性を評価するために設計された、初めてヒトを対象とした多施設用量漸増及び用量拡大試験(パートA及びB)である。
【0164】
試験のパートAでは、AZD9833単独の用量漸増が可能である。これらのパートについて、「コホート」は、図1に示す用量漸増スキームで、その特定の用量レベルで投与された全ての患者を構成する。試験のパートB(拡大)では、パートAでの調査結果に基づいて、AZD9833の選択された用量が投与されるように適格被験者をランダム化する。
【0165】
試験全体を通じて、閉経前の被験者は、LHRHアゴニストの基礎治療と共にAZD9833を服用する(基礎治療薬を参照されたい)。
【0166】
パートA:閉経前及び閉経後の適格被験者に、AZD9833を投与する。初回投与では、各コホートの最初の患者を8日目まで追跡調査し、その後、更なる患者をその用量レベルのコホートに割り付ける。セクション6.1.5.5を参照されたい。用量漸増に関する決定に十分な評価可能な被験者(被験者3~6名)が存在する場合、任意選択で、コホートを追加の被験者を含むように拡張させることができ(1つのコホートに最大12名の評価可能な被験者まで)、及び/又はコホートを次の用量レベルで開設することができる。試験のパートAでは、最大8つの用量レベルのコホートが予想される。MTD/MFDで漸増を停止する。パートAには、各用量レベルに、対にした腫瘍生検材料を有する少なくとも2名の被験者が含まれる。
【0167】
試験の用量漸増相では、連日投与の最初の28日間に収集した安全性、忍容性、及びPKデータの評価に基づいて、AZD9833のMTD又はMFDを決定する。AZD9833を評価するための用量漸増及び漸減計画は、用量-毒性関係に関する事前予想を組み合わせ、各コホートの終了時にデータを適用し次のコホートの用量を推奨する、ベイズ流アダプティブデザインスキーム(Neuenschwander et al.,Stat Med.2008,15:2420)に従う。各用量レベルコホートの最初の被験者を少なくとも7日間治療した後に安全性及び忍容性を確立したら、最大3名の追加の被験者を組み入れ、28日間で少なくとも3名の評価可能な被験者を確保する。
【0168】
用量漸増中の任意選択での拡大がAZD9833の用量で含まれ、これらの用量は、ERに対する前臨床で予測された薬力学的効果が、この疾患状況の適切な標準治療であるフルベストラント以上である。これにより、被験者は、治療的であり得る用量で薬物を投与される機会、並びにAZD9833の安全性、忍容性、並びに薬理学的及び生物学的活性プロファイルを更に調査することができる機会が早期に得られる。拡大される用量レベルは、新たに得られるデータに基づいており、安全性審査委員会(SRC)によって承認される。
【0169】
試験のパートAの拡大は、パートBにおいて検討するものよりも広い範囲の用量にわたる腫瘍薬力学的作用の予備的評価を可能にするために、対にした試験中腫瘍生検に適した少なくとも2名の被験者の募集も行う。
【0170】
パートB:閉経前の適格被験者(n=12)に、AZD9833 300mg(パートAの選択した3つの用量レベルのうちで最高)を投与し、閉経後の被験者(n=36)は、AZD9833 300mg、AZD9833 150mg、又はAZD9833 75mgのいずれかが投与されるように1:1:1でランダム化する。パートBには、4つの治療群(閉経前で用量300mg、閉経後で用量300mg、閉経後で用量150mg、閉経後で用量75mg)のそれぞれに、対にした生検材料が評価可能な少なくとも5名の被験者が含まれる。
【0171】
パートBでは、閉経後の被験者のより大きな群において、3つの異なる用量レベルでAZD9833の安全性プロファイルを更に評価することが可能になる。3つの用量レベルを検討することの目的は、今後のAZD9833試験において、進行性乳癌の状況と、場合によっては早期疾患/補助療法の状況との両方で、更なる臨床調査に推奨される用量を確実に選択できるようにすることである。パートAの3つの耐用量レベルのうちの1つへの被験者36名の割り付けにランダム化デザインを適用し、割り付けバイアス又は生じ得るあらゆる他の実験バイアスを回避することにより、安全性プロファイルの確実な比較を容易にする。パートBでは、最大12名の閉経前被験者を、パートAの安全且つ忍容性が良好であると見なされた3つの用量の最高用量(300mg)に割り付けることもできる。
【0172】
パートBには、腫瘍薬力学的作用の更なる評価が可能となるように、対にした試験中腫瘍生検に適した被験者のサブセット(閉経後がn=15(即ち各用量レベルに5名)、及び閉経前が300mgの用量レベルでn=5)を募集することも含まれる。
【0173】
試験集団:プロトコルの放棄又は免除としても知られる、募集基準及び組み入れ基準に対するプロトコルからの逸脱の将来的な承認は許可されない。AZD9833に割り当てる/ランダム化するには、各被験者は、全ての選択基準を満たし、除外基準のいずれも満たさないことが必要である。いかなる状況においても、この規則に例外を設けることはできない。登録要件を満たしていない被験者は、スクリーニング不合格である。
【0174】
組み入れた被験者を、インフォームドコンセントに署名した者と定義する。治療された被験者は、AZD9833を少なくとも1用量投与された被験者である。パートB及びDでは、組み入れた被験者を治療群にランダム化する。ランダム化した被験者を、ランダム化され、ランダム化番号を受領する者と定義する。
【0175】
選択基準:患者は、以下の選択基準の全てに合致し、且つ除外基準のいずれにも合致しない場合にのみ、本試験へ含めるのに適格である。
1.何らかの必須の試験特有の手順、試料採取、及び分析の前に、署名及び日付入りの書面によるインフォームドコンセントを提供すること。被験者が、随意の探索的研究及び/又は試験の遺伝に関する構成部分への参加を拒否した場合、被験者に対する罰則又は利益の損失はなく、試験の他の側面から除外されることもない。
2.18歳以上であること。
3.以下の閉経状態であること。
(a)閉経前の女性は、AZD9833を開始する少なくとも4週間前にLHRHアゴニストによる治療を開始している必要があり、試験期間中、LHRHアゴニスト療法を継続する意思がなければならない。
(b)以下の基準の少なくとも1つを満たすと定義される閉経後:
(i)両側卵巣摘出術を受けたことがある。
(ii)60歳以上である。
(iii)50歳以上であり、規則的な月経が12ヶ月以上停止しており、子宮は健全であり、乳癌の診断前に経口避妊又はホルモン補充療法を受けていない。
(iv)60歳未満であり、規則的な月経が12ヶ月以上停止しており、卵胞刺激ホルモン(FSH)及びエストラジオールのレベルが閉経後の範囲にある(現地の臨床検査施設による範囲を使用)。
(c)閉経後の定義を満たさない者は、閉経前と見なされる。
4.乳房腺癌の組織学的又は細胞学的確認。
5.現地の臨床検査パラメータに従う、文書で記録された原発性又は転移性腫瘍組織のエストロゲン受容体陽性状態(それらの臨床検査パラメータが、許容される診断ガイドライン、例えば、American Society of Clinical Oncology/College of American Pathologists Guideline Recommendations for Immunohistochemical Testing of Estrogen and Progesterone Receptors in Breast Cancer(Hammond et.al.2010)に準拠していること)。免疫組織化学(IHC)スコアが0若しくは1+、又はin situハイブリダイゼーション(ISH;FISH/CISH/SISH)が陰性として定義されるHER2-。IHC2+の場合、ISHは陰性でなければならない。ER及びHER2の状態の評価は、入手可能である場合、最新の腫瘍生検試料に基づくものであることとする。
6.臨床的利益をもたらすことが知られている既存の治療法に対して難治性又は不耐容である、転移性疾患又は局所領域再発性疾患。
7.以下の通りの、過去の化学療法、内分泌療法、及び他の治療法。
(a)進行性疾患に対する2ライン以下の化学療法。
(b)進行性/転移性疾患の状況における、内分泌療法の少なくとも1つのラインでの再発又は進行。
(c)過去の内分泌療法のライン数に制限はない。
(d)CDK4/6阻害剤による過去の治療は許可される。
進行性疾患の化学療法ラインは、少なくとも1つの細胞傷害性化学療法剤を含み、21日以上投与される抗癌レジメンである。細胞傷害性化学療法レジメンが疾患進行以外の理由で中止され、継続が21日未満であった場合、このレジメンは化学療法の過去のラインとしてカウントしない。
離れた時期での同じ抗癌レジメンの反復投与は、化学療法の新たなラインとしてカウントしない。
8.臨床的利益をもたらすことが知られている既存の療法に対して難治性又は不耐容である、転移性疾患又は局所領域再発性疾患。
9.妊娠可能な女性は、スクリーニング時からAZD9833の中止の4週間後まで、1つの極めて有効な避妊法(セクション5.3.1の避妊法で定義した通り)の使用に同意しなければならず、授乳中であってはならず、投与開始前に妊娠検査で陰性でなければならない。
10.少なくとも1つの病変(固形癌の治療効果判定基準第1.1版[RECIST 1.1]に従って測定可能及び/又は測定不可能であり、ベースライン時に正確に評価することができ、コンピュータ断層撮影(CT)、磁気共鳴イメージング(MRI)、若しくは単純X線;又は臨床検査による反復評価に適しているもの)。骨内の芽細胞のみの病変(Blastic-only lesion)は、評価可能であると見なされない。
11.米国東海岸癌臨床試験グループ(Eastern Cooperative Oncology Group)(ECOG)/世界保健機関(World Health Organization)(WHO)のパフォーマンスステータスが0~1であり、過去2週間にわたり悪化しておらず、最短余命が12週間である。
【0176】
除外基準:以下の除外基準のいずれかを充足する場合、患者は試験に参加してはならない。
1.以下のいずれかによる治療介入:
(a)AZD9833の初回投与の14日以内の過去の治療レジメン又は臨床試験による、進行性乳癌治療用のあらゆる細胞傷害性化学療法、被験薬、又は他の抗癌薬。
(b)シトクロムP450 3A4/5(CYP3A4/5)基質及び高感受性シトクロムP450 2B6(CYP2B6)基質の強力な阻害剤/誘導剤であることが知られている医薬品又はハーブ系サプリメント(一般的に処方される薬物は付録Bに列挙されている)、又はAZD9833の初回用量を投与される前に、付録Bで規定されているウォッシュアウト期間内に使用を中止することができない医薬品又はハーブサプリメント。
(c)QTを延長することが知られており、トルサード・ド・ポワントのリスクがあることが知られている薬物。
(d)AZD9833の初回投与の1週間以内である、緩和を目的とした限られた放射線照射野の放射線療法。但し、AZD9833の初回投与の4週間以内に骨髄の30%超への又は広い照射野への放射線照射を受ける患者を除く。
(e)AZD9833の初回投与の4週間以内の治験責任医師が判断した大手術処置若しくは著しい外傷、又は試験中に、大手術及び/若しくは全身麻酔を必要とする何らかの手術の必要性が予想されること。
2.AZD9833の開始時点での、有害事象共通用語規準(CTCAE)グレード1を超える、過去の治療法によるあらゆる未解決の毒性(脱毛症を除く)。
3.治験責任医師が判断した生命を脅かす転移性内臓疾患、コントロール不良の中枢神経系(CNS)転移性疾患の存在。脊髄圧迫及び/又は脳転移を有する患者は、根治的に治療され(例えば、手術又は放射線療法)、AZD9833の開始前の少なくとも4週間、ステロイドオフで安定している場合、組み入れることができる。
4.重度の又はコントロール不良の全身性疾患(コントロール不良の高血圧及び活動性出血性素因を含む)、又は例えば、静脈内抗生物質療法を必要とする感染症であって、治験責任医師の見解で、患者が試験に参加することが望ましくないもの、若しくはプロトコルの遵守を脅かすもの、又はB型肝炎、C型肝炎、及びヒト免疫不全ウイルス(HIV)を含む活動性感染症(抗ウイルス治療を必要とする)の任意のエビデンス。
5.以下の心臓基準のいずれか:
(a)3回の心電図(ECG)から得た、Fridericiaの式(QTcF)によって補正した安静時QT間隔の平均が470ミリ秒を超える。
(b)安静時ECGのリズム、伝導、又は形態におけるあらゆる臨床的に重要な異常(ego、完全左脚ブロック、第2度心ブロック、及び第3度心ブロック)、又は臨床的に重要な洞停止。心房細動がコントロールされている患者は組み入れることができる。
(c)QTc延長のリスク又は不整脈事象のリスクを高めるあらゆる要因、例えば、症候性心不全、低カリウム血症、先天性QT延長症候群、直接の家族歴(QT延長症候群又は40歳未満での原因不明の突然死の家族歴)。肥大型心筋症及び臨床的に重要な狭窄弁疾患。
(d)過去6ヶ月間における以下のいずれかの処置又は状態の経験:冠動脈バイパス移植、血管形成術、血管ステント、心筋梗塞、不安定狭心症、ニューヨーク心臓協会(NYHA)グレード2以上のうっ血性心不全、脳血管障害、又は一過性虚血性発作。
(e)コントロール不良の高血圧。高血圧患者は適格である場合があるが、ベースライン時に血圧が適切にコントロールされている必要がある。血圧要件に関して、患者を再スクリーニングする場合がある。
6.以下の臨床検査値のいずれかによって示される不十分な骨髄予備能又は臓器機能:
(a)絶対好中球数(ANC)が<1.5×10 9/L。
(b)血小板数が<100×10 9/L。
(c)ヘモグロビンが<90g/L。
(d)アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)が正常上限(ULN)の2.5倍超。
(e)アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)がULNの2.5倍超。
(f)総ビリルビン(TBL)がULNの1.5倍超、又は文書で記録されたジルベール症候群(非抱合型高ビリルビン血症)の存在下でULNの3倍超。
(g)糸球体濾過率(GFR)が<50mL/分。
7.本試験の計画及び実施への関与。
8.難治性の悪心及び嘔吐、コントロール不良の慢性胃腸(GI)疾患、処方された製品が嚥下不能であること、又はAZD9833の適切な吸収を妨げる過去の重大な腸切除術。AZD9833の活性若しくは不活性賦形剤、又はAZD9833と同様の化学構造若しくはクラスを有する薬物に対する過敏症の既往。
9.患者が試験の手順、制限、及び要件を遵守する可能性が低い場合、患者が試験に参加してはならないとする治験責任医師による判断。
10.男性被験者は本試験から除外する。
【0177】
試験治療:25mg及び100mgの錠剤として投与するAZD9833。AZD9833を、経口用量として、初めは1日1回で投与する。AZD9833は、食事の有無にかかわらず、朝のほぼ同じ時間帯に摂取することとする。SRCは、新たに得られる試験データに応じて、AZD9833の摂食下投与又は絶食下投与(即ち、各AZD9833投与の最低2時間前及び投与後1時間は絶食する)を要求することを決定する場合がある。新たに得られる安全性、忍容性、及びPKデータに応じたSRCの推奨に従って、AZD9833の別の投与頻度又は間欠的スケジュールを開始する場合がある。
【0178】
投与は、1日1回75mgから開始する。各用量レベルで、被験者1名を曝露させ、8日目までモニタリングする。詳細については。試験の用量漸増相中の各用量レベルの後、SRCは利用可能な全ての安全性情報を評価する。各コホートのデータを精査した後、SRCは、後続のコホートの用量又は募集を停止する決定に同意する。用量漸増及び漸減は、SRCが決定する。提案された用量漸増スキームでは、原則として各コホートで用量を倍増させること(例えば、75mg、150mg、300mgなど)が可能である。但し、SRCが安全性データを精査した後、別の又は中間の用量レベルを試験する場合がある。
【0179】
パートAの各用量レベルの少なくとも2名の被験者、及びパートBの各コホートの少なくとも5名の被験者を、被験者が治療前1つと治療中1つで対にした生検試料の提供に適しており、その提供に同意するように選択する。対にした生検材料の提供のために被験者を選択し、これら被験者の治療の過程でこれが臨床的に実行不可能となった場合、個々のコホートを、各コホートで必要な数の評価可能な生検対が収集されるまで、追加の生検適格被験者を募集することによって拡大してもよい。
【0180】
治療の最大期間はなく、被験者には、治験責任医師が判断した臨床的利益を示し続けている限り、AZD9833を投与し続けてもよい。疾患進行以外の理由でAZD9833を中止する場合、被験者は、疾患進行まで、又は更なるラインの抗癌療法が投与されるまで、腫瘍評価を継続する必要がある。
【0181】
用量制限毒性(DLT):DLTは、AZD9833の初回投与から28日目、サイクル1(DLT期間)までに発生するAE又は異常な臨床検査値として定義され、疾患進行、併発疾病、又は併用薬とは無関係であると評価され、最適な治療的介入にもかかわらず、以下の基準のいずれかを満たすものである:
(a)基礎疾患又は外因によることが明確ではないあらゆる死亡
(b)以下の血液毒性(CTCAE):
(i)グレード4以上の任意の血液毒性が4日を超えて連続して存在するか、又は輸血、G-CSF、又はエリスロポエチンを必要とする。
(ii)38.5℃以上の発熱及び/又は全身性感染症を伴う任意の持続期間のグレード3以上の好中球減少症。
(iii)出血を伴う任意の持続期間のグレード3以上の血小板減少症。
(iv)グレード4の血小板減少症(持続期間又は出血を問わない)
(c)CTCAEグレード3以上の任意の非血液毒性、但し以下の条件付き規定を満たす:
(i)最大限の制吐療法を施したにもかかわらず、3日を超えて連続するCTCAEグレード3以上の悪心。
(ii)最大限の制吐療法を施したにもかかわらず、3日を超えて連続するCTCAEグレード3以上の嘔吐。
(iii)CTCAEグレード4以上の嘔吐(持続期間を問わない)
(iv)最大限の止瀉療法を施したにもかかわらず、3日を超えて連続するCTCAEグレード3以上の下痢。
(v)CTCAEグレード4以上の下痢(持続期間を問わない)
(vi)4日を超えて持続するCTCAEグレード3以上の疲労。
(vii)CTCAEグレード3以上のクレアチニン上昇。
(d)他の毒性:
(i)少なくとも2回の別個のECGで確認された、500ミリ秒を超えるQTcF値、又はベースラインからのQTcF延長が60ミリ秒であり、480ミリ秒を超えるQTcF値。
(ii)CTCAEグレード4以上の心電図QT補正間隔延長。
(iii)血清/血漿ASTの増加、又はULNの3倍以上のALTと同時にTBLがULNの2倍以上。
(e)以下の他の任意の毒性:
(i)ベースライン時を上回り、最適な治療的介入にもかかわらず臨床的に重要である、且つ/若しくは許容できず、SRCがDLTと判断したもの、又は
(ii)最適な治療的介入にもかかわらず、14日を超えて投与スケジュールが中断するもの。
【0182】
基礎治療薬:閉経前の女性は、AZD9833を開始する少なくとも4週間前にLHRHアゴニストによる治療法を開始している必要があり、試験期間全体を通して、LHRHアゴニスト療法を継続する必要がある。
【0183】
有効性評価:抗腫瘍活性は、治験責任医師の評価によりRECIST 1.1を使用して評価する。ベースラインの腫瘍評価は、評価中の疾患における既知の全ての転移好発領域を包含する必要があり、個々の被験者の徴候及び症状に基づいて、影響を受ける可能性のある領域を更に調査する必要がある。ベースライン評価は、AZD9833の開始の28日以内前に、理想的にはAZD9833の開始に可能な限り近い時点で実施することとする。ベースラインで使用した評価方法を、試験の治療パート及び追跡調査パート中の、後続の各評価で使用することとする。新規疾患が疑われる任意の他の部位もまた、適切に画像化することとする。
【0184】
予定外の評価を実施して被験者が進行していない場合、被験者がAZD9833の服用を継続している間、又は被験者が進行するまで、予定来院時に後続の評価を実施するためのあらゆる試みを行うこととする。客観的腫瘍奏効評価の分類は、奏効に関するRECIST 1.1ガイドライン(完全奏効(CR)、部分奏効(PR)、安定(SD)、及び進行(PD))に基づく。ベースライン時に有しているのが測定不可能な疾患のみである被験者の場合、客観的腫瘍奏効評価の分類は、非標的病変(NTL)の奏効に関するRECIST 1.1ガイドライン(CR、PD、及び非CR/非PD)に基づく。治験責任医師が、進行が生じたか否かの確信が持てない場合(特にNTLに対する奏効又は新規病変の出現を伴う場合)は、AZD9833を継続し、予定されている次の評価時に、又は臨床的に必要とされる場合はそれよりも早く、被験者の状態を再評価することが推奨される。非標的疾患に基づく「明らかな増悪(unequivocal progression)」に到達するためには、標的疾患にSD又はPRが存在したとしても、治療中止に値するほどに全腫瘍量が十分に増加している程度に、非標的疾患における全体的レベルが実質的に悪化する必要がある。1つ以上のNTLのサイズが多少増加することは、通常、明らかな疾患進行の状態と見なすには十分ではない。
【0185】
安全性及び臨床評価:AZD9833の安全性及び忍容性は、本試験の主要目的である。関連する転帰指標は、DLT、AE/SAE、バイタルサイン、臨床化学/血液学、及びECGである。
【0186】
臨床安全性の臨床検査評価:臨床化学、血液学、尿検査、及び凝固は、治験責任医師の試験施設又はその近傍にある現地の臨床検査室で実施する。試料チューブ及び試料サイズは、使用される検査方法及び試験施設での日常的慣習によって異なる場合がある。
【0187】
薬物動態:AZD9833の単回用量及び複数回用量の薬物動態の特徴付けは、本試験の副次的目的である。PK分析を実施した後に残存する残余試料があれば、血漿中のAZD9833代謝産物及び薬物関連生成物の濃度を特定するため、特徴付けるため、及び確立するため、並びに/又は探索的バイオマーカー研究を行うために使用してもよい。血漿中及び尿中のAZD9833の分析は、適切な生物学的分析法を使用して実施する。使用する分析法に関する全詳細は、別の生物学的分析報告書に記載される。
【0188】
生物学的検査室が受領した時点で目的の分析物の既知の安定性内にある、全ての試料を分析する。更に、PK試料を更なる分析に供して、血漿中の代謝産物の濃度を特定すること、特徴付けること、及び確立することができる。かかる分析の結果は、治験総括報告書とは別個に報告される。投与後試料(incurred sample)の再現性分析がある場合は、試験試料の生物学的分析と共に実施する。評価の結果は、治験総括報告書には報告されないが、生物学的分析報告書に別途報告される。
【0189】
薬力学:薬力学的測定を、いくつかのバイオマーカー(例えば、任意選択の腫瘍生検材料、血漿中ctDNA、CTC、及び保管用腫瘍組織)について行う。生体試料(保管用腫瘍組織、該当する場合は必須の及び任意選択の生検材料)を、本試験の探索的目的として腫瘍DNAの分析用に収集する。本試験の遺伝分析に関する構成部分に参加することに同意した被験者から、AZD9833の初回用量を投与する前に、DNA単離用の血液試料2mLを収集する。何らかの理由で投与前に試料が採取されない場合は、最終試験来院までの任意の来院時に採取してもよい。試験中、遺伝子研究用の試料は、被験者1名につき1つのみ収集することとする。参加は任意である。遺伝子研究への参加を希望しない被験者は、なおも本試験に参加することができる。
【0190】
バイオマーカー:探索的バイオマーカー研究用の以下の試料は、示されているように任意選択であるか又は必須であり、適切な被験者から収集する。
【0191】
パートAでは、各用量レベルで少なくとも2名の被験者から対にした腫瘍生検試料を採取する。パートBでは、これらの生検材料を、AZD9833の用量レベル(300mg、150mg、及び75mg)ごとに少なくとも5名の閉経後の被験者から、並びに300mgの少なくとも5名の閉経前の被験者から採取する。被験者が本試験のこのパートに参加する意思がある場合、被験者は生検専用の書面によるインフォームドコンセントに署名する。対にした腫瘍生検材料は、生検に同意した入手可能な腫瘍を有する被験者から得る。入手可能な病変を、生検可能であり、生検を反復するのに適した腫瘍病変として定義する。
【0192】
治療前の生検材料は、治療開始に可能な限り近いスクリーニング中に採取する。治療中の試料は、サイクル2の1日目(±7日)に採取することとするが、AstraZenecaとの合意があれば、この時間枠以外でも採取することができる。疾患進行時又は治療終了時に、更なる(任意選択の)腫瘍生検材料も採取することとする。腫瘍試料を使用して調査するバイオマーカーには、ER、PgR、Ki67、ゲノム/遺伝子変化、及び他のER調節性遺伝子発現が含まれ得るが、必ずしもこれらに限定されない。実施可能であれば、疾患進行時に腫瘍生検材料を収集することが奨励される。この試料は、経路シグナル伝達の変化及び抵抗性の潜在的機構(即ち、遺伝子変化又は代替経路活性化のエビデンス)を調査するために使用する。
【0193】
利用可能な場合、パラフィンブロックに包埋した、保管用のホルマリン固定腫瘍組織を全ての被験者から回収する。ベースライン時の生検試料も収集することができる場合、腫瘍が診断からどのように発達したかに関するデータを提供するために、保管用の診断用腫瘍材料の回収がなおも必要である。保管用試料は、原発腫瘍及び/又は転移部位から得ることができ、可能な場合は、直近に入手した保管用試料が必要である。腫瘍ブロックを提出することができない場合は、保管用腫瘍ブロックから新たに調製した未染色のスライドが許容される。提出された保管用腫瘍ブロックからコアを除去して、後のバイオマーカー分析用の組織マイクロアレイを構築することができる。腫瘍ブロックの残部は施設に返却される場合がある。
【0194】
癌抗原CA15の評価用に、各時点につき2mLの血液試料を1つ採取する。
【0195】
各時点で血液試料を採取する。これらの試料は、薬力学的バイオマーカーの変化(ER、Ki67タンパク質、及びER調節性遺伝子の全数及び発現レベルが含まれ得るが、これらに限定されない)を評価することによって、腫瘍のAZD9833活性に関する予備的評価を得るために採取する。
【0196】
以下の時点で10mLの血液試料を1つ採取して、時点ごとに血漿試料2つ及び血清試料1つが得られるようにする。後向き探索的バイオマーカー分析が可能となるように試料を収集及び保存し、薬物応答と相関する可能性のある一連の腫瘍学バイオマーカーについて試料を分析する。
【0197】
RNA及びマイクロRNA/RNA試料の調製用に、2.5mLの全血試料2つをPAXgeneチューブに収集する。RNAの分析を行って、試験で評価した分子の作用機構に関連する仮説を立てることができ、また場合によっては、治療応答と相関する遺伝子発現の変化を特定することができる。
【0198】
スクリーニング時に20mLの血液試料を1つ採取し、他の全ての時点で10mLの血液試料を採取して血漿を得られるようにする。これを、予測バイオマーカー及び薬力学的バイオマーカーを分析し、遺伝子変化の変化及び抵抗性の潜在的機構を調べるために、ctDNAの抽出及び分析に使用する。
【0199】
臨床試験の結果
上述のプロトコルに従う臨床試験を、患者60名を用いて行った。次のように結果を要約することができる。
【0200】
患者60名(年齢中央値は61歳(範囲39~79歳))を5回の投与にわたり治療した(25mg QD n=12、75mg QD n=12、150mg QD n=13、300mg QD n=13、50mg QD n=10)。AZD9833への曝露は、複数回投与後の用量に比例し、終末相t1/2の中央値は12時間であった。
【0201】
患者の10%以上が経験した治療関連AEは、視覚障害(53%;G1が91%、G2が6%、G3が3%)、徐脈/洞徐脈(45%;G1が93%、G2が7%)、悪心(18%;G1が46%、G2が55%)、疲労(13%;G1が38%、G2が63%)、めまい(10%;G1が83%、G3が17%) 嘔吐(10%;G1が50%、G2が33%、G3が17%)、及び無力症(10%;G1が67%、G2が33%)であった。患者3名がDLTを経験し、G3のQTcF延長(300mg);G3の嘔吐(450mg);及びG2の視覚障害と、G2の頭痛と、G2の歩行障害との併発(450mg)であった。DLT症例は減量により対処した。G4又は5のAEの報告はなかった。観察されたAEのいずれも、臨床的に意義があるとは見なされなかった。
【0202】
有効性データ(24週時点の客観的奏効率(ORR)及び臨床的有用率(CBR))を以下の表に示す。
【0203】
【表4】
【0204】
ERシグナル伝達経路の調節が、全ての用量コホートで観察された。臨床奏効が生じ、対にした生検材料が得られた患者では、Ki67の98%の減少が測定された。
【0205】
これらのデータは、AZD9833が有望な有効性及び用量依存的な安全性プロファイルを有していることを示している。CDK4/6阻害剤及びフルベストラントで前治療された患者、並びにESR1変異を有する患者を含めた、ER+ABCの女性の全ての用量レベルで、臨床的利益及び標的結合に関するエビデンスが認められた。
本発明には、次の態様が含まれる。
[項1] 癌の治療に使用するためのAZD9833であって、25mg~450mgの用量で1日1回経口投与される、AZD9833。
[項2] AZD9833の前記用量が、25mg、75mg、150mg、300mg、及び450mgから選択される、項1に記載の使用のためのAZD9833。
[項3] 前記AZD9833が、単回用量単位又は複数回用量単位として投与される、項1又は2に記載の使用のためのAZD9833。
[項4] 前記AZD9833が、単一錠剤として投与される、項3に記載の使用のためのAZD9833。
[項5] 前記AZD9833が、更なる抗癌療法と組み合わせて投与される、項1~4のいずれか一項に記載の使用のためのAZD9833。
[項6] 前記AZD9833が、CDK阻害剤と組み合わせて投与される、項1~5のいずれか一項に記載の使用のためのAZD9833。
[項7] 前記AZD9833が、パルボシクリブ、リボシクリブ、アベマシクリブ、レロシクリブ、又はトリラシクリブと組み合わせて投与される、項6に記載の使用のためのAZD9833。
[項8] 前記AZD9833が、パルボシクリブと組み合わせて投与される、項1~7のいずれか一項に記載の使用のためのAZD9833。
[項9] 前記AZD9833が、mTOR阻害剤と組み合わせて投与される、項1~5のいずれか一項に記載の使用のためのAZD9833。
[項10] 前記AZD9833が、エベロリムスと組み合わせて投与される、項9に記載の使用のためのAZD9833。
[項11] 前記癌が、乳癌及び婦人科癌から選択される、項1~10のいずれか一項に記載の使用のためのAZD9833。
[項12] 前記癌が、ER陽性HER2陰性進行性乳癌である、項11に記載の使用のためのAZD9833。
[項13] 前記AZD9833が、閉経前又は閉経後の女性に投与される、項1~12のいずれか一項に記載の使用のためのAZD9833。
[項14] 前記癌が、これまでにER陽性HER2陰性進行性乳癌に対する1種以上の内分泌療法と、2種以下の化学療法とによって治療されている、項1~13のいずれか一項に記載の使用のためのAZD9833。
[項15] 前記AZD9833が、癌が非ステロイド性アロマターゼ阻害剤に対して抵抗性である患者に投与される、項1~14のいずれか一項に記載の使用のためのAZD9833。
[項16] AZD9833の前記用量が、癌患者において10~1000ng/mLの平均最高血漿中濃度に達する、項1~15のいずれか一項に記載の使用のためのAZD9833。
[項17] AZD9833の前記用量が、癌患者において8時間~14時間の終末相半減期の中央値に達する、項1~16のいずれか一項に記載の使用のためのAZD9833。
[項18] AZD9833の前記用量が、癌患者において12時間の終末相半減期の中央値に達する、項1~17のいずれか一項に記載の使用のためのAZD9833。
[項19] AZD9833の前記用量が、10%~20%の客観的奏効率を達成する、項1~18のいずれか一項に記載の使用のためのAZD9833。
[項20] AZD9833の前記用量が、癌患者に重篤な副作用を引き起こさない、項1~19のいずれか一項に記載の使用のためのAZD9833。
[項21] 癌の治療を必要とするヒト又は動物患者の前記癌を治療する方法であって、AZD9833を25mg~450mgの用量で前記患者に1日1回経口投与することを含む、方法。
[項22] 癌の治療用の薬剤を製造する際のAZD9833の使用であって、前記AZD9833が、25mg~450mgの用量で1日1回経口投与される、使用。
[項23] 25mg~450mgのAZD9833と、薬学的に許容される賦形剤と、を含む、1日1回の経口投与のための医薬組成物。
[項24] AZD9833の量が、25mg、75mg、150mg、300mg、及び450mgから選択される、項23に記載の医薬組成物。
[項25] 単一錠剤の形態である、項23又は項24に記載の医薬組成物。
[項26] 癌の治療に使用するための、項23~25のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[項27] AZD9833と少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物と、癌の治療における前記医薬組成物の使用のための説明書と、を含むキットであって、前記AZD9833が、25mg~450mgの用量で1日1回投与するためのものである、キット。
[項28] AZD9833と組み合わせて投与するための追加の抗癌剤を更に含む、項27に記載のキット。
図1
図2-1】
図2-2】
図3
図4