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特許7712962フッ素化アリールボランルイス酸によって触媒されるシリルヒドリド反応のための組成物及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-15
(45)【発行日】2025-07-24
(54)【発明の名称】フッ素化アリールボランルイス酸によって触媒されるシリルヒドリド反応のための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 5/02 20060101AFI20250716BHJP
   C07F 7/18 20060101ALI20250716BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20250716BHJP
【FI】
C07F5/02 A
C07F5/02 C
C07F7/18 X
C07B61/00 300
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022577259
(86)(22)【出願日】2021-06-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-21
(86)【国際出願番号】 US2021037538
(87)【国際公開番号】W WO2021262492
(87)【国際公開日】2021-12-30
【審査請求日】2024-06-03
(31)【優先権主張番号】63/043,149
(32)【優先日】2020-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クルトマンシュ、マーク-アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】ベダール、アンヌ-カトリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】スピニー、ヘザー
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン、デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ラグラマン、アルジュン
(72)【発明者】
【氏名】マコーパディヤイ、スクリット
(72)【発明者】
【氏名】シャー、アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】デヴォア、デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】レイター、デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】リデル、ジョーダン
(72)【発明者】
【氏名】ライ、シューチー
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-538070(JP,A)
【文献】国際公開第2005/118682(WO,A1)
【文献】特表2003-531925(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0129287(US,A1)
【文献】国際公開第02/012386(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/023008(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/055742(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/055731(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/068494(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
C07B 61/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
A)フッ素化トリアリールボランルイス酸であって、
A1)トリス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボランTHF付加物、
A2)ビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)(4-トリフルオロメチルフェニル)ボランTHF付加物
4)ビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)(2,6-ジフルオロフェニル)ボランTHF付加物、
A5)ビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)(2,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボラン、
A6)(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ビス(2,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボラン、及
A8)A1)、A2)及びA4)~A)のうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される、フッ素化トリアリールボランルイス酸と、
B)1分子当たり少なくとも1つのケイ素結合水素原子を有するシリルヒドリドと、を含む、組成物。
【請求項2】
)は、
A4)ビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)(2,6-ジフルオロフェニル)ボランTHF付加物、
A5)ビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)(2,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボラン、及び
A6)(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ビス(2,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボランからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
B)前記シリルヒドリドは、
B1)式HSiR (4-k)[式中、各Rは、一価炭化水素基及び一価ハロゲン化炭化水素基からなる群から独立して選択され、下付き文字kは、1~3である]のシラン、
B2)HR SiO1/2、R SiO1/2、HRSiO2/2、R SiO2/2、RSiO3/2、HSiO3/2、及びSiO4/2[式中、各Rは、脂肪族不飽和を含まない、独立して選択された一価炭化水素基である]からなる群から選択される2つ以上のシロキサン単位を含む、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン、及び
B3)式(B3-1):
【化1】
[式中、各Rは、独立して選択された一価炭化水素基であり、各下付き文字aは、独立して、1又は2である]のケイ素結合水素官能基を有するポリオレフィン、からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
1)は、式HSiR [式中、各Rは、炭素原子1~6つのアルキル基である]のシランであり、
2)は、単位式:(HR SiO1/2(R SiO1/2(R SiO2/2(HRSiO2/2[式中、Rは、上述のとおりであり、下付き文字g、h、i、及びjは、g≧0、h≧0、数量(g+h)が2の平均値を有し、i≧0、j≧0、及び数量(g+j)≧1であるような値を有し、数量(i+j)は、0~1000の範囲である]のポリジオルガノハイドロジェンシロキサンであり、
3)は、単位式(B3-2):
【化2】
[式中、R及び下付き文字aは、上述のとおりであり、各Dは、独立して、炭素原子2~50個の二価炭化水素基であり、各R25は、独立してH、炭素原子1~18個の一価炭化水素基又は炭素原子1~18個の一価ハロゲン化炭化水素基であり、下付き文字M及びNは、1≦M≦10、及び10≦N≦20,000になるような値を有する]、
単位式(B3-3):
【化3】
[式中、下付き文字a及びRは、上述のとおりであり、下付き文字fは、0又は1であり、下付き文字t及びuは、0<t≦1、0≦u≦1であるような相対値を有する比であり、下付き文字gは、1以上であり、各Retは、エチレン単位を表し、各Rは、エチレン以外のオレフィン単位を表す]、及び
単位式(B3-4):
【化4】
[式中、下付き文字a、f、g、t、及びu、並びにRは、上述のとおりであり、各Rは、独立して、炭素原子1~20個の一価炭化水素基である]からなる群から選択される、SiH官能性ポリオレフィンである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
シロキサン結合を有する生成物を形成するための方法であって、前記方法は、
1)
A)フッ素化トリアリールボランルイス酸であって、
A1)トリス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボランTHF付加物、
A2)ビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)(4-トリフルオロメチルフェニル)ボランTHF付加物
4)ビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)(2,6-ジフルオロフェニル)ボランTHF付加物、
A5)ビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)(2,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボラン、
A6)(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ビス(2,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボラン、及
A8)A1)、A2)及びA4)~A)のうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される、フッ素化トリアリールボランルイス酸と、
B)1分子当たり少なくとも1つのケイ素結合水素原子を有するシリルヒドリドと、
C)水と、を含む出発物質を組み合わせることで、
前記ケイ素結合水素原子を反応させて、前記シロキサン結合及び水素を含む副生成物を形成する工程を含む、方法。
【請求項6】
出発物質A)は、
A4)ビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)(2,6-ジフルオロフェニル)ボランTHF付加物、
A5)ビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)(2,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボラン、及び
A6)(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ビス(2,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボランからなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
B)前記シリルヒドリドは、
B1)式HSiR (4-k)
[式中、各Rは、一価炭化水素基及び一価ハロゲン化炭化水素基からなる群から独立して選択され、下付き文字kは、1~3である]のシラン、
B2)HR SiO1/2、R SiO1/2、HRSiO2/2、R SiO2/2、RSiO3/2、HSiO3/2、及びSiO4/2
[式中、各Rは、脂肪族不飽和を含まない、独立して選択された一価炭化水素基である]からなる群から選択される2つ以上のシロキサン単位を含む、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン、及び
B3)式(B3-1):
【化5】
[式中、各Rは、独立して選択された一価炭化水素基であり、各下付き文字aは、独立して、1又は2である]のケイ素結合水素官能基を有するポリオレフィンからなる群から選択される、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
出発物質B1)は、式HSiR [式中、各Rは、炭素原子1~6つのアルキル基である]のシランであり、
出発物質B2)は、単位式:(HR SiO1/2(R SiO1/2(R SiO2/2(HRSiO2/2[式中、Rは、上述のとおりであり、下付き文字g、h、i、及びjは、g≧0、h≧0、数量(g+h)が2の平均値を有し、i≧0、j≧0、及び数量(g+j)≧1であるような値を有し、数量(i+j)は、0~1000の範囲である]のポリジオルガノハイドロジェンシロキサンであり、
出発物質B3)は、
単位式(B3-2):
【化6】
[式中、各D は、独立して、炭素原子が2~50個の二価炭化水素基であり、及び下付き文字aは、上述のとおりであり、各R25は、独立してH、炭素原子1~18個の一価炭化水素基又は炭素原子1~18個の一価ハロゲン化炭化水素基であり、1≦M≦10、10≦N≦20,000である]、
単位式(B3-3):
【化7】
[式中、下付き文字a及びRは、上述のとおりであり、下付き文字fは、0~1であり、下付き文字t及びuは、0<t≦1、0≦u≦1であるような相対値を有し、下付き文字gは、1以上であり、各Retは、エチレン単位を表し、各Rは、エチレン以外のオレフィン単位を表す]、及び
単位式(B3-4):
【化8】
[式中、下付き文字a、f、g、t、及びu、並びにRは、上述のとおりであり、各Rは、独立して、炭素原子1~20個の一価炭化水素基である]からなる群から選択されるSiH官能性ポリオレフィンコポリマーである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
工程1)における組み合わせは、出発物質A)、B)、及びC)を任意の順序で混合及び加熱する工程を含む、請求項5~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
出発物質A)は、工程1)の前に溶媒中に溶解される、請求項5~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
出発物質A)及びB)は、工程1)の前に組み合わされる、請求項5~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記生成物中の残留フッ素化トリアリールボランルイス酸を中和する工程を更に含む、請求項5~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程1)中及び/又は工程1)の後、Hを含む前記副生成物を除去する工程を更に含む、請求項5~12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2020年6月24日出願の米国仮特許出願第63/043,149号の利益を主張するものである。米国仮特許出願第63/043,149号は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
組成物は、シリルヒドリド(1分子当たり少なくとも1つのケイ素結合水素原子を有する)及びフッ素化トリアリールボランルイス酸を含む。本方法では、ルイス酸は、シリルヒドリドからのケイ素結合水素原子と水との反応を触媒し、それにより、得られる生成物中にシロキサン結合を形成する。本組成物及び方法は、シロキサン中間体及び硬化ネットワークを形成するために使用することができる。
【背景技術】
【0003】
Si-H官能性シラン及びシロキサンからのシロキサン中間体及びシロキサン硬化ネットワークの両方の調製において主に使用される触媒は、白金系触媒である。白金(platinum、Pt)のコストがますます高くなり、硬化シロキサン組成物の黄変又は経時的な黒色沈殿物の形成などの他の欠点のために、Pt系触媒の代替法が業界で必要とされている。更に、Pt系触媒は有効であるが、それらはまた、シロキサン結合の形成を触媒するのに十分な反応性を達成するために高温(80℃~110℃)を必要とするという欠点に見舞われ得る。
【発明の概要】
【0004】
組成物は、A)フッ素化トリアリールボランルイス酸及びB)シリルヒドリドを含む。組成物は、A)フッ素化トリアリールボランルイス酸、B)シリルヒドリド、及びC)水を組み合わせることを含む方法において使用されてもよく、それにより、生成物を形成する。生成物は、シリルヒドリドからのSiH部分と水との反応によって形成されたシロキサン結合を有する。
【発明を実施するための形態】
【0005】
この組成物は、A)フッ素化トリアリールボランルイス酸及びB)シリルヒドリドを含む。組成物は、水を含んでいなくてもよい。あるいは、組成物は、A)フッ素化トリアリールボランルイス酸及びB)シリルヒドリドから本質的になってもよい。あるいは、組成物は、A)フッ素化トリアリールボランルイス酸及びB)シリルヒドリドからなってもよい。組成物は、使用前に、シリルヒドリドからのケイ素結合水素原子の反応を防止する条件下、例えば、無水条件下で保存されてもよい。
【0006】
本明細書に記載の方法は、1)上述のA)及びB)を含む(あるいは、これらから本質的になる、あるいはこれらからなる)出発物質と、C)水とを組み合わせる工程を含む。組み合わせる工程は、シロキサン結合、及び水素を含む副生成物を形成するために出発物質B)のケイ素結合水素原子を反応させる条件下で実施される。
【0007】
これらの条件は、例えば、任意の簡便な手段による混合を含んでもよい。混合は、撹拌バッチケトルなどの従来の混合装置を使用して実施されてもよい。混合は、任意の簡便な温度、例えば、室温で実施されてもよい。あるいは、出発物質B)のために選択されたシリルヒドリドが粘性であるとき、剪断下での混合は、例えば、押出機を用いて実施され得る。組成物は、例えば、上述の出発物質A)及びB)を混合することによって形成され得る。出発物質A)及びB)は、混合中に50℃~150℃、あるいは100℃~125℃の温度で加熱され得る。任意選択で、出発物質D)である溶媒を使用して、出発物質A)とB)との組み合わせを容易にしてもよい。例えば、出発物質A)を、出発物質D)と混合する前に溶媒中に溶解させてもよい。理論に拘束されることを望むものではないが、Pt系触媒又はFABなどの他の触媒の代わりに、本明細書に記載のフッ素化トリアリールボランルイス酸を使用することにより、出発物質A)及びB)が本明細書に記載の方法の工程1)の前に一緒に存在するとき、出発物質A)及びB)が加熱されながら組み合わされるときであっても、組成物の安定性の利点を提供することができると考えられる。
【0008】
本方法の工程1)において、出発物質A)及びB)を含む組成物をC)水に曝露すると、ケイ素結合水素原子と水との反応が始まり、シロキサン結合が形成される。水は、上述の手段を使用して出発物質A)及びB)と混合されてもよく、出発物質A)、B)、及びC)は、工程1)において同時に組み合わされてもよい。あるいは、出発物質A)及びB)を含む組成物は、工程1)の前に調製されてもよく、その後、工程1)において、組成物は、例えば、湿り空気への曝露によって水に曝露されてもよい。水への曝露は、5℃~150℃、あるいは室温~150℃、あるいは5℃~125℃、あるいは室温℃~125℃で実施されてもよい。理論に拘束されることを望むものではないが、水への曝露のための温度は、選択されるシリルヒドリドに依存すると考えられる。例えば、出発物質B)が、例えば、シリル官能性ポリオレフィンを含むとき、より高い温度(例えば、50℃~150℃)が使用されてもよい。出発物質B)が、例えば、シランであるとき、より低い温度で十分であり得る。例えば、温度は、代替的に室温~70℃、5℃~70℃、あるいは5℃~65℃、あるいは10℃~60℃、あるいは15℃~50℃、あるいは20℃~35℃、あるいは5℃~30℃、あるいは30℃であってもよい。
【0009】
本方法は、任意選択で、1つ以上の追加の工程を更に含んでもよい。本方法は、工程2)工程1)中及び/又はその後、生成物の形成中に生成されたHを除去する工程、及び/又は工程3)生成物中の残留フッ素化トリアリールボランルイス酸を除去及び/又は中和する工程を更に含んでもよい。副生成物Hは、任意の簡便な手段、例えばストリッピング及び/又は燃焼によって除去することができる。除去及び/又は中和する工程は、E)中和剤を生成物に添加するか、又はそうでなければ、E)中和剤を生成物に添加し、任意選択でその後、生成物を濾過することによって実施されてもよい。工程2)及び3)は、任意の順序で実施されてもよい。例えば、中和の結果として粒子状副生成物が存在する場合、本方法は、4)中和後、任意の簡便な手段、例えば濾過によってアルミナなどの微粒子を除去する工程を更に含んでもよい。
【0010】
出発物質A)触媒
本明細書に記載の組成物及び方法における出発物質A)は、フッ素化トリアリールボランルイス酸である。フッ素化トリアリールボランルイス酸は、式:
【0011】
【化1】
を有し、式中、各Rは、オルト置換基であり、各Rは、メタ置換基であり、各Rは、パラ置換基であり、Rは、任意選択であり、官能基又は官能性ポリマー基を含み、下付き文字xは、0又は1である。上記の式において、Ro1-6の各々、Rm1-6の各々、及びRp1-3の各々は、H、F、又はCFから独立して選択され、但し、Ro1-6、Rm1-6、及びRp1-3の全てが同時にFであり得るわけではなく、Ro1-6、Rm1-6、及びRp1-3の全てが同時にHであり得るわけではなく、Ro1-4の2つ以上がCFであるとき、Ro5及びRo6は各々、H又はFから独立して選択される。Rは、任意選択であり、すなわち、Rは、下付き文字x=1のときには存在し、Rは、下付き文字x=0のときには存在しない。Rは、フッ素化トリアリールボランルイス酸と錯体を形成するルイス塩基、及び/又はルイス酸との配位結合を形成するために利用可能な少なくとも1つの電子対を含有する分子若しくは部分であってもよく、国際公開第2019/055740号の段落[0024]~[0025]でRについて記載されたとおりであってもよい。Rの例としては、テトラヒドロフラン又はテトラヒドロピランなどの環状エーテルが挙げられる。あるいは、Rは、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran、THF)であってもよい。
【0012】
あるいは、Ro1、Ro2、Ro3、Ro4、Ro5、及びRo6の各々は、Hであってもよい。あるいは、Ro1、Ro2、Ro3、及びRo4の各々は、Hであってもよい。あるいは、Ro5及びRo6の各々は、Fであってもよい。
【0013】
あるいは、Rm1、Rm2、Rm3、Rm4、Rm5、及びRm6の各々は、CFであってもよい。あるいは、Rm1、Rm2、Rm3、及びRm4の各々は、CFであってもよい。あるいは、Rm5及びRm6の各々は、Fであってもよい。あるいは、Rm5及びRm6の各々は、Hであってもよい。
【0014】
あるいは、Rp1、Rp2、及びRp3の各々はHであってもよい。あるいは、Rp1及びRp2は、Hであってもよい。あるいは、Rp3は、Fであってもよい。あるいは、Rp3は、CFであってもよい。
【0015】
あるいは、Ro1、Ro2、Ro3、Ro4、Ro5、Ro6、Rp1、Rp2、及びRp3の各々は、Hであってもよく、Rm1、Rm2、Rm3、Rm4、Rm5、及びRm6の各々は、CFであってもよい。下付き文字xは、1であってもよい。あるいは、出発物質A)は、トリス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボランTHF付加物を含んでもよい。
【0016】
あるいは、Ro1、Ro2、Ro3、Ro4、Ro5、Ro6、Rm5、Rm6、Rp1、及びRp2の各々は、Hであってもよく、Rm1、Rm2、Rm3、Rm4、及びRp3の各々は、CFであってもよい。下付き文字xは、1であってもよい。あるいは、出発物質A)は、ビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)(4-トリフルオロメチルフェニル)ボランTHF付加物を含んでもよい。
【0017】
あるいは、Ro1、Ro2、Ro3、Ro4、Rm5、Rm6、Rp1、及びRp2の各々は、Hであってもよく、Ro5、Ro6、及びRp3の各々は、Fであってもよく、Rm1、Rm2、Rm3、Rm4の各々は、CFであってもよい。下付き文字xは、1であってもよい。あるいは、出発物質A)は、ビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)(2,4,6-トリフルオロフェニル)ボランTHF付加物を含んでもよい。
【0018】
あるいは、Ro1、Ro2、Ro3、Ro4、Rm5、Rm6、Rp1、Rp2、及びRp3の各々は、Hであってもよく、Ro5及びRo6は、Fであってもよく、Rm1、Rm2、Rm3、及びRm4の各々は、CFであってもよい。下付き文字xは、1であってもよい。あるいは、出発物質A)は、ビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)(2,6-ジフルオロフェニル)ボランTHF付加物を含んでもよい。
【0019】
あるいは、Ro1、Ro2、Ro3、Ro4、Ro5、Rm6、Rp1、Rp2、及びRp3の各々は、Hであってもよく、Rm1、Rm2、Rm3、Rm4、Rm5、及びRo6の各々は、CFであってもよい。下付き文字xは、0であってもよい。あるいは、出発物質A)は、ビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)(2,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボランを含んでもよい。
【0020】
あるいは、Rm1、Rp1、Ro2、Ro3、Ro4、Rp2、Rp3、Ro5、及びRm6の各々は、Hであってもよく、Ro1、Rm2、Rm3、Rm4、Ro6、及びRm5の各々は、CFであってもよい。下付き文字xは、0であってもよい。あるいは、出発物質A)は、(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ビス(2,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボランを含んでもよい。
【0021】
あるいはRo1、Ro2、Ro3、Ro4、Rp1、及びRp2の各々は、Hであってもよく、Ro5、Ro6、Rm5、及びRm6の各々は、Fであってもよく、Rm1、Rm2、Rm3、Rm4、及びRp3の各々は、CFであってもよい。下付き文字xは、1であってもよい。あるいは、出発物質A)は、ビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)(2,3,5,6-テトラフルオロ-4-トリフルオロメチルフェニル)ボランTHF付加物を含んでもよい。
【0022】
あるいは、フッ素化トリアリールボランルイス酸は、A1)トリス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボランTHF付加物、A2)ビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)(4-トリフルオロメチルフェニル)ボランTHF付加物、A3)ビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)(2,4,6-トリフルオロフェニル)ボランTHF付加物、A4)ビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)(2,6-ジフルオロフェニル)ボランTHF付加物、A5)ビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)(2,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボラン、A6)(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ビス(2,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボラン、A7)ビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)(2,3,5,6-テトラフルオロ-4-トリフルオロメチルフェニル)ボランTHF付加物、及びA8)A1)~A7)のうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択されてもよい。あるいは、フッ素化トリアリールボランルイス酸は、A2)、A3)、A4)、A5)、A6)、A7)、及びA2)~A7)のうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択されてもよい。あるいは、フッ素化トリアリールボランルイス酸は、A4)、A5)、A6)、並びにA4)、A5)、及びA6)のうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択されてもよい。あるいは、フッ素化トリアリールボランルイス酸は、A4)、A5)、及びA6)からなる群から選択されてもよい。あるいは、フッ素化トリアリールボランルイス酸は、A4)及びA6)からなる群から選択されてもよい。
【0023】
フッ素化トリアリールボランルイス酸は、当該技術分野において既知であり、既知の方法、例えば、国際公開第2019/055740号に、特に段落[0052]~[0096]で開示されている方法によって、出発物質を適宜変化させることによって調製され得る。
【0024】
出発物質A)の量は、使用される他の出発物質の種類及び量に応じて異なるが、出発物質A)は、組成物中の出発物質A)及びB)の合計重量に基づいて、0.5ppm~5mol%、あるいは5ppm~6000ppmの量で存在してもよい。あるいは、量は、同じ基準で、5ppm~600ppm、あるいは5ppm~500ppm、あるいは5ppm~100ppmであってもよい。
【0025】
B)シリルヒドリド
本明細書に記載の組成物及び方法における出発物質B)は、シリルヒドリドである。「シリルヒドリド」という用語は、1分子当たり少なくとも1つのケイ素結合水素原子(SiH)を含有する分子を意味する。あるいは、シリルヒドリドは、1分子当たり2つ以上のSiHを有してもよい。本明細書で使用されるシリルヒドリドは、A)フッ素化トリアリールボランルイス酸及びC)水の存在下でシロキサン結合を形成することができる。複数のSi-H結合を含有するシリルヒドリドは、A)フッ素化トリアリールボランルイス酸及びC)水の存在下で自己架橋することができてもよい。出発物質B)は、B1)シラン、B2)ポリオルガノハイドロジェンシロキサン、B3)シリル官能性ポリオレフィン、並びにB4)B1)、B2)、及びB3)のうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択することができる。
【0026】
シリルヒドリドは、B1)シラン(例えば、1分子当たり1つのケイ素原子を有する)とすることができる。あるいは、シリルヒドリドは、オリゴマー又はポリマーであってもよい。ポリマー性シリルヒドリドは、直鎖状、分岐状、又は樹脂状とすることができる。例えば、シリルヒドリドは、B2)ポリオルガノハイドロジェンシロキサンであってもよい。あるいは、シリルヒドリドは、B3)SiHを含む部分で官能化された有機ポリマーであってもよい。
【0027】
B1)シラン
出発物質B1)は、式HSiR (4-k)のシランであり、式中、各Rは、一価炭化水素基及び一価ハロゲン化炭化水素基からなる群から独立して選択され、下付き文字kは、1~3、あるいは1又は2、あるいは1である。Rの好適な一価炭化水素基の例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、ドデシル、ウンデシル、並びにオクタデシル(及びその分岐異性体)などのアルキル、シクロペンチル及びシクロヘキシルなどのシクロアルキル、ビニル、アリル、ブテニル、及びヘキセニルなどのアルケニル、並びにフェニル、トリル、キシリル、ナフチル、ベンジル、1-フェニルエチル、及び2-フェニルエチルなどのアリールが挙げられるが、これらに限定されない。Rの一価ハロゲン化炭化水素基の例としては、クロロメチル及びクロロプロピル基などの塩素化アルキル基、フルオロメチル、2-フルオロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、4,4,4-トリフルオロブチル、4,4,4,3,3-ペンタフルオロブチル、5,5,5,4,4,3,3-ヘプタフルオロペンチル、6,6,6,5,5,4,4,3,3-ノナフルオロヘキシル及び8,8,8,7,7-ペンタフルオロオクチルなどのフッ素化アルキル基、2,2ジクロロシクロプロピル、2,3-ジクロロシクロペンチル等の塩素化シクロアルキル基、並びに2,2-ジフルオロシクロプロピル、2,3-ジフルオロシクロブチル、3,4-ジフルオロシクロヘキシル及び3,4-ジフルオロ-5-メチルシクロヘプチルなどのフッ素化シクロアルキル基が挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、各Rは、一価炭化水素基、あるいはアルキル基、又はアリール基であってもよい。あるいは、各Rは、炭素原子1~6つのアルキル基のような、アルキル基であってもよい。あるいは、各Rは、メチル又はエチルであってもよい。あるいは、出発物質B1)は、式HSiR のシランであってもよく、式中、各Rは、炭素原子1~6つのアルキル基である。
【0028】
出発物質(B1)に好適なシランの例は、当該技術分野において既知であり、市販されている。好適なシランとしては、St.Louis Missouri、USAのSigma-Aldrich Inc.又はMorrisville、Pennsylvania、USAのGelest Inc.,から入手可能な、トリエチルシラン、ジメチルエチルシラン、ジエチルメチルシラン、ジメチルイソプロピルシラン、ジメチル-tert-ブチルシラン、トリイソプロピルシラン、クロロメチルジメチルシラン、トリプロピプルシラン、トリブチルシラン、トリイソブチルシラン、トリヘキシルシラン、トリオクチルシラン、シクロヘキシルジメチルシラン、ジメチルフェニルシラン、ジフェニルメチルシラン、トリフェニルシラン、フェニルシラン、ブロモウンデシルシラン、2-クロロエチルシラン、ドデシルシラン、n-オクタデシルシラン、及び(トリデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロオクチル)シランが挙げられる。
【0029】
B2)ポリオルガノハイドロジェンシロキサン
出発物質B2)であるポリオルガノハイドロジェンシロキサンを使用するとき、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、ホモポリマー又はコポリマーであってもよい。ポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、直鎖状、分枝状、又は樹脂状であってもよい。ポリオルガノハイドロジェンシロキサン中のケイ素結合水素原子は、終端、ペンダント、又は終端とペンダント位置の両方に位置することができる。
【0030】
ポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、HR SiO1/2、R SiO1/2、HRSiO2/2、R SiO2/2、RSiO3/2、HSiO3/2、及びSiO4/2単位から選択される2つ以上のシロキサン単位を含んでもよい。上記の式中、各Rは、脂肪族不飽和を含まない、独立して選択される一価炭化水素基である。Rの好適な一価炭化水素基の例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、ドデシル、ウンデシル、並びにオクタデシル(及びその分岐異性体)などのアルキル、シクロペンチル及びシクロヘキシルなどのシクロアルキル、並びにフェニル、トリル、キシリル、ナフチル、ベンジル、1-フェニルエチル、及び2-フェニルエチルなどのアリールが挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、各Rは、アルキル基又はシクロアルキル基であってもよい。あるいは、各Rは、メチルなどのアルキル基であってもよい。
【0031】
ポリオルガノハイドロジェンシロキサンが直鎖状であるとき、すなわち、ポリジオルガノハイドロジェンシロキサンであるとき、ポリジオルガノハイドロジェンシロキサンは、単位式(HR SiO1/2(R SiO1/2(R SiO2/2(HRSiO2/2を有してもよく、式中、Rは、上述のとおりであり、下付き文字g、h、i、及びjは、g≧0、h≧0、数量(g+h)が2の平均値を有し、i≧0、j≧0、数量(g+j)≧1であるような値を有し、数量(i+j)は、0~1000の範囲である。
【0032】
あるいは、ポリジオルガノハイドロジェンシロキサンは、式
【0033】
【化2】
を有してもよく、式中、下付き文字mは、0又は1であり、各Rは、H及びRからなる群から独立して選択され、但し、少なくとも1つのRは、水素原子である。
【0034】
好適なポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、
i)ペンタメチルジシロキサン、ii)ビス(トリメチルシロキシ)メチル-シラン、iii)テトラメチルジシロキサン、iv)ビス-ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、v)ビス-ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルハイドロジェンシロキサン)、vi)ビス-ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ポリメチルハイドロジェンシロキサン、vii)ビス-トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルハイドロジェンシロキサン)、
viii)ビス-トリメチルシロキシ末端ポリメチルハイドロジェンシロキサン、ix)H(CHSiO1/2単位及びSiO4/2単位から本質的になる樹脂、並びにi)~ix)のうちの2つ以上の組み合わせによって例示される。
【0035】
オルガノハロシランの加水分解及び縮合のような出発物質B2)としての使用に適した直鎖、及び分岐ポリオルガノハイドロジェンシロキサンの調製方法は、米国特許第5,310,843号、同第4,370,358号、同第4,707,531号、及び同第4,329,273号に例示されるように、当該技術分野においてよく知られている。ポリオルガノハイドロジェンシロキサンはまた、DMS-HM15、DMS-H03、DMS-H25、DMS-H31、及びDMS-H41の商品名でGelestから入手可能なものなど市販されている。
【0036】
B3)シリル官能性ポリオレフィン
出発物質B3)は、ケイ素結合水素官能基式(B3-1):
【0037】
【化3】
を有するポリオレフィンであり、式中、各Rは、独立して選択された一価炭化水素基であり、各下付き文字aは、独立して、1又は2である。Rに好適な一価炭化水素基は、炭素原子1~20個、あるいは炭素原子1~12個、あるいは炭素原子1~8つ、あるいは炭素原子1~4つ、あるいは炭素原子1~2つを有し得る。あるいは、Rの一価炭化水素基は、アルキル基、アルケニル基、及びアリール基、あるいは、アルキル及びアリール、あるいはアルキルからなる群から選択されてもよい。アルキル基は、メチル、エチル、プロピル(例えば、イソプロピル及び/又はn-プロピル)、ブチル(例えば、イソブチル、n-ブチル、tert-ブチル、及び/又はsec-ブチル)、ペンチル(例えば、イソペンチル、ネオペンチル、及び/又はtert-ペンチル)、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、及びデシル、並びにシクロペンチル及びシクロヘキシルなどのシクロアルキル基を含む、炭素原子6つ以上の分岐飽和一価炭化水素基によって例示される。アルケニル基は、ビニル、アリル、ブテニル(n-ブテニル、iso-ブテニル、及び/又はt-ブテニルを含む)、並びにヘキセニル(その直鎖及び分枝異性体を含む)によって例示されるが、これらに限定されない。アリール基は、シクロペンタジエニル、フェニル、トリル、キシリル、アントラセニル、ベンジル、1-フェニルエチル、2-フェニルエチル、及びナフチルによって例示される。単環式アリール基は、炭素原子5~9つ、あるいは炭素原子6~7つ、あるいは炭素原子5~6つを有し得る。多環式アリール基は、炭素原子10~17個、あるいは炭素原子10~14個、あるいは炭素原子12~14個を有し得る。あるいは、各Rは、アルキル及びアリール、あるいはメチル及びフェニルからなる群から独立して選択され得る。あるいは、各Rは、メチルであり得る。
【0038】
出発物質B3)シリル官能性ポリオレフィンは、ペンダント位置において式(B3-1)のシリル基を有し得る。例えば、ペンダントシリル基を有するシリル官能性ポリオレフィンは、単位式(B3-2):
【0039】
【化4】
を含むSiH官能性ポリオレフィンコポリマーであってもよく、式中、R及び下付き文字aは、上述のとおりである。
【0040】
単位式(B3-2)中の各Dは、独立して、炭素原子が2~50個の二価炭化水素基である。Dに好適な二価炭化水素基は、エチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキシレン、又はオクチレンなどのアルキレン基、フェニレンなどのアリーレン基、又は
【0041】
【化5】
などのアルキルアリーレン基が例示される。あるいは、各Dは、エチレン、プロピレン、又はオクチレンなどのアルキレン基である。
【0042】
単位式(B3-2)において、各R25は、独立してH、炭素原子1~18個の一価炭化水素基、又は炭素原子1~18個の一価ハロゲン化炭化水素基である。R25に好適な一価炭化水素基は、1~18個の炭素原子を有するRについて本明細書に記載されるものによって例示される。好適な一価ハロゲン化炭化水素基としては、ハロアルキル基、ハロゲン化炭素環式基、及びハロアルケニル基が挙げられる。ハロアルキル基としては、トリフルオロメチル(CF)、フルオロメチル、トリフルオロエチル、2-フルオロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、4,4,4-トリフルオロブチル、4,4,4,3,3-ペンタフルオロブチル、5,5,5,4,4,3,3-ヘプタフルオロペンチル、6,6,6,5,5,4,4,3,3-ノナフルオロヘキシル、8,8,8,7,7-ペンタフルオロオクチル、2,2-ジフルオロシクロプロピル、2,3-ジフルオロシクロブチル、3,4-ジフルオロシクロヘキシル、及び3,4-ジフルオロ-5-メチルシクロヘプチル、並びに塩素化アルキル基、例えば、クロロメチル、3-クロロプロピル、2,2-ジクロロシクロプロピル、2,3-ジクロロシクロペンチルなどのフッ素化アルキル基が挙げられる。ハロアルケニル基としては、クロロアリル基が挙げられる。あるいは、各R25は、H又は炭素原子1~6つのアルキル基であり得る。あるいは、各R25は、Hであり得る。
【0043】
単位式(B3-2)において、下付き文字Mは、少なくとも1である。下付き文字Nは、少なくとも1である。あるいは、1≦M≦10である。あるいは、10≦N≦20,000である。あるいは、下付き文字M及びNは、数量M/(M+N)が0.01モル%≦M/(M+N)≦10モル%となるような値を有するような、値を有してもよい。あるいは、下付き文字M及びNは、コポリマーを1,000~500,000のMnとするのに十分な値を有してもよい。
【0044】
このSiH官能性ポリオレフィンは、R21の末端封鎖基を各末端に更に含んでもよい。各R21は、独立して、アルキル基(例えば、メチル)などの飽和一価炭化水素基、又は1つ以上の二重結合を有する不飽和一価炭化水素基(例えば、ビニル官能基、ビニリン官能基、又はビニリデン官能基を含む一価炭化水素基)であってもよい。このようなSiH官能性ポリオレフィン(シリル官能性オレフィンインターポリマー)の例及びそれらの調製方法は、例えば、Arriolaらの米国特許第6,624,254号に開示されている。
【0045】
あるいは、B3)シリル官能性ポリオレフィンは、1分子当たり1~2つの式(B3-1)の末端シリル基を有するシリル末端ポリオレフィンを含み得る。シリル末端ポリオレフィンは、単位式(B3-3):
【0046】
【化6】
を有してもよく、式中、下付き文字a及びRは、上述のとおりであり、下付き文字fは、0~1であり、下付き文字t及びuは、0<t≦1、0≦u≦1であるような相対値を有し、下付き文字gは、1以上であり、各Retは、エチレン単位を表し、各Rは、エチレン以外のオレフィン単位を表す。Rは、α-オレフィン又は環状オレフィンであってもよい。α-オレフィンの例は、下記のとおりであり、エチレン、プロピレン、及びオクテンが挙げられる。環状オレフィンの例は、下記のとおりであり、エチリデンノルボルネン、ノルボルネン、ビニルノルボルネン、ビニルシクロヘキセン、シクロヘキセン、及びシクロペンテンが挙げられる。あるいは、下付き文字gは、1~500、あるいは10~400、あるいは18~360であってもよい。あるいは、下付き文字gは、シリル末端ポリオレフィンに500~50,000g/mol、あるいは500~10,000g/molのMnを与えるのに十分な値を有してもよい。
【0047】
あるいは、シリル末端ポリオレフィンは、単位式(B3-4):
【0048】
【化7】
を有してもよく、式中、下付き文字a、f、g、t、及びu、並びにRは、上述のとおりである。各Rは、独立して、1~20個の炭素原子を有する一価炭化水素基である。Rの一価炭化水素基は、アルキル、アルケニル、又はアリール、あるいはアルキルである。あるいは、Rは、2~12個の炭素原子、あるいは2~6つの炭素原子を有するアルキル基であり得る。あるいは、各Rは、ヘキシル基である。
【0049】
シリル末端ポリオレフィンは、1分子当たり1つの末端シリル基を有し得る(すなわち、下付き文字f=1である)。ポリマー鎖の一端にシリル基を有するこのシリル末端ポリオレフィンの例としては、ジメチル,ハイドロジェンシリル末端ポリエチレン、ジメチルハイドロジェンシリル末端ポリ(エチレン/オクテン)コポリマー、メチルジハイドロジェンシリル末端ポリエチレン、メチルジハイドロジェンシリル末端ポリ(エチレン/オクテン)コポリマー、ジフェニルハイドロジェンシリル末端ポリエチレン、ジフェニルハイドロジェンシリル末端ポリ(エチレン/オクテン)コポリマー、フェニルジハイドロジェンシリル末端ポリエチレン、フェニルジハイドロジェンシリル末端ポリ(エチレン/オクテン)コポリマー、クロロフェニルハイドロジェンシリル末端ポリエチレン、又はクロロフェニルハイドロジェンシリル末端ポリ(エチレン/オクテン)コポリマーが挙げられる。このシリル末端ポリオレフィンは、2018年3月19日に出願された米国特許出願第62/644635号に対応する国際公開第2019/082992号、及び2018年3月19日に出願された米国特許出願第62/644624号に対応する国際公開第2019/182986号に記載されているプロセスによって調製することができ、これらは両方とも参照により本明細書に組み込まれる。
【0050】
あるいは、出発物質B3)であるシリル末端ポリオレフィンは、1分子当たり2つのシリル末端基を有し得る(すなわち、式(B3-3)及び(B3-4)において、式中、下付き文字f=0であり、シリル末端ポリオレフィンはテレケリックである)。このようなテレケリックシリル末端ポリオレフィンは、2018年3月19日に出願された米国特許出願第62/644808号に対応する国際公開第2019/182993号に開示されているものなどの方法によって調製されてもよく、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0051】
出発物質B3)は、1つのシリルヒドリドであってもよいし、又は少なくとも1つの特性が異なる2つ以上のシリルヒドリドを含んでいてもよい。例えば、出発物質B3)は、シリル官能性ポリオレフィンであってもよいし、又は以下の特性、すなわち構造、粘度、平均分子量、オレフィンブロック、及び配列のうちの少なくとも1つが異なる2つ以上のシリル官能性ポリオレフィンを含んでもよい。
【0052】
(C)水
出発物質C)である水は、一般に限定されず、未希釈(すなわち、溶媒が全く存在しない)及び/又は純粋(すなわち、ミネラル及び/又は他の不純物を含まないか、又は実質的に含まない)で使用されてもよい。例えば、水(C)は、上述の方法の使用前に処理されてもよいし、未処理であってもよい。水を精製するために使用され得るプロセスの例としては、蒸留、濾過、脱イオン化、及びそれらの2つ以上の組み合わせが挙げられ、これによって、水に対して脱イオン化、蒸留、及び/又は濾過を行い得る。あるいは、水は、未処理であってもよい(例えば、更に精製することなく使用される、都市用水システムによって提供される水道水又は井戸水であってもよい)。
【0053】
水は、様々な要因、例えば、出発物質A)のために選択される特定の触媒、使用される反応パラメータ、及び反応のスケール(例えば、出発物質B)の総量及びSiH含有量)に応じて当業者が選択する任意の量で使用され得る。
【0054】
D)溶媒
出発物質D)は、出発物質の組み合わせを容易にするために使用され得る任意の溶媒である。本明細書で使用される溶媒は、出発物質の流動化に役立つがこれらの出発物質のいずれとも本質的に反応しないものである。溶媒は、出発物質の溶解性及び溶媒の揮発性に基づいて選択されてもよい。「溶解性」とは、溶媒が出発物質を溶解及び/又は分散させるのに十分であることを指す。「揮発性」とは、溶媒の蒸気圧を指す。例えば、出発物質A)であるフッ素化トリアリールボランルイス酸は、工程1)の前に溶媒中に溶解されてもよい。あるいは、出発物質B)は、例えば、出発物質B)が粘性、エラストマー性、又は樹脂性であるとき、溶媒中に溶解されてもよい。溶媒は、出発物質B)の選択及びその中への出発物質A)の溶解性などの様々な要因に応じて当業者が選択する任意の量で使用され得る。
【0055】
好適な溶媒は、炭化水素であってもよい。好適な炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、若しくはキシレンなどの芳香族炭化水素、及び/又はヘプタン、ヘキサン、若しくはオクタンなどの脂肪族炭化水素が挙げられる。あるいは、溶媒は、ジクロロメタン、1,1,1-トリクロロエタン、又は塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素であってもよい。1つの溶媒、又は2つ以上の溶媒を含む組み合わせを本明細書で使用してもよい。
【0056】
溶媒の量は、選択される溶媒の種類、並びに選択される他の出発物質の量及び種類など、様々な要因に応じて異なってもよい。しかしながら、溶媒の量は、出発物質A)及びB)の合計重量に基づいて、0.1%~99%、あるいは2%~50%の範囲であってもよい。
【0057】
出発物質E)中和剤
出発物質E)は中和剤であり、生成物が形成された後に、任意選択で使用されて出発物質A)を中和してもよい。アルミナ、トリフェニルアミン、トリエチルアミン、トリフェニルホスフィン、及びフェニルアセチレンは、好適な中和剤である。中和剤は、当該技術分野において既知であり、例えば、St.Louis、Missouri、USAのMillipore Sigmaから市販されている。中和剤の量は、出発物質A)の量を含む様々な要因に依存するが、出発物質E)は、中和剤対フッ素化トリアリールボランルイス酸の重量比(E:A比)で100:1~1:1000、あるいは1:1~1000:1、あるいは100:1~1:1を提供するのに十分な量で存在してもよい。あるいは、中和剤がトリフェニルホスフィン又はフェニルアセチレンである場合、E:A比は、1:1~20:1であってもよい。あるいは、中和剤がアルミナである場合、E:A比は、100:1~1000:1であってもよい。
【0058】
使用方法
本明細書に記載の組成物及び方法は、シロキサン、シロキサン有機ハイブリッドコポリマー、中間体、及び/又は分岐シロキサンネットワークの調製に使用することができる。理論に拘束されることを望むものではないが、本明細書に記載の組成物及び方法は、様々な配合物及び用途のための硬化系として使用され得ると考えられる。組成物は、出発物質A)及びB)が使用前に組み合わされて保存されるとき、保存安定性の利点を提供する。
【実施例
【0059】
これらの実施例は、本発明を例示することを目的とするものであり、請求項に記載の本発明の範囲を制限するものとして解釈するべきではない。表1並びに参考例1及び2に記載されている出発物質を、本明細書の実施例で使用した。
【0060】
【表1】
【0061】
参考例1-一般的な手順
特に明記されない限り、化学物質の全ての実験手順及び操作は、窒素パージしたグローブボックス内又はシュレンクライン上で実行した。全てのバルク反応溶媒(トルエン、ジエチルエーテル、ヘキサン、テトラヒドロフラン(THF))は、アルミナ及びQ5反応性捕捉剤のカラムを通過させることによって乾燥させた。他の全ての溶媒を、Aldrichの無水グレードから購入し、使用前に活性化された3Å分子ふるいの上で保存した。Cambridge Isotope Laboratories,Inc.から得たNMR溶媒(CDCl、CDCl、及びC)は、活性3Å分子ふるいで乾燥させるか、又はCの場合、Na/K合金を使用して乾燥させた。1-ブロモ-3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1-ブロモ-2,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1-ブロモ-2,6-ジフルオロベンゼン、1-ブロモ-2,4,6-トリフルオロベンゼン、及び1-ブロモ-4-トリフルオロメチルベンゼンは、Oakwood Chemicalから購入した。1-ブロモ-2,3,5,6-テトラフルオロ-4-トリフルオロメチルベンゼンはAlfa Aesarから購入した。FABはTCI から購入した。他の全ての試薬を、Sigma-Aldrichから購入し、受け取ったままの状態で使用した。指示薬として1,10-フェナントロリンを有するトルエン中1.00Mのデカノールを使用して、n-ブチルリチウム(ヘキサン中の溶液)を使用前に滴定した。
【0062】
多核NMRスペクトル(H、13C、19F、29Si、11B)は、次のVarian MR-400又はVarian VNMRS-500のうちの1つの機器で収集した。11B NMRスペクトルは、VarianVNMRS-500のみで収集した。H及び13C NMR化学シフトは、残留溶媒ピークに対する百万分率で参照された。H-CDClでは5.32ppm、Cでは7.15ppm、CDClでは7.25ppm、13C-CDClでは54.00ppm、Cでは128.00ppm、CDClでは77.00ppm。11B NMR化学シフトは、BF(EtO)(0ppm)に対して外部参照され、19F NMR化学シフトは、CFCl(0ppm)に対して外部参照された。ドライアイス又は氷が唯一の冷却手段である場合を除いて、亜周囲反応温度を、微細なJKEMセンサーPTFEワイヤーK 36INJを備えた、Extech Instruments EasyView(商標)10 Dual KモデルEA 10温度計を使用して測定した。
【0063】
参考例2-合成手順-出発物質の調製
リチウム(ジエチルエーテラート)(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)トリイソプロポキシボレートの調製は、以下のように行った。
__________________
Watson,S.C.;Eastham,J.F.「Colored indicators for simple direct titration of magnesium and lithium reagents」,J.Organomet.Chem.,1967,9,165-168.

【0064】
【化8】
【0065】
1-ブロモ-3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(18.52g、63.19mmol)のジエチルエーテル(200mL)冷(-78℃、CO(s)浴)溶液に、n-ブチルリチウム(23.0mL、ヘキサン中2.61M、60.03mmol)を撹拌しながら添加した。反応混合物を-78℃で3時間撹拌し、沈殿物を形成した。エーテル(20mL)中トリイソプロピルボレート(11.86g、63.06mmol)を緩徐に添加した。反応混合物を-78℃で1時間撹拌し、次いで周囲温度まで温め、1時間撹拌してわずかに濁った溶液を得た。反応混合物を濾過し、揮発物を減圧下で除去して、固体を得た。得られた固体をヘキサンで粉砕し、濾過し、揮発物を減圧下で除去して、生成物を無色粉末として得た。収率:23.16g、94.53%。化合物は、最初にそのエーテル付加物として単離された。
H NMR(500MHz、THF-d)δ8.15(s、2H)、7.57(s、1H)、3.79(p、J=6.1Hz、3H)、0.95(d、J=6.1Hz、18H)。13C NMR(126MHz、THF-d)δ159.12、134.71、128.90(q、J=31.3Hz)、125.91(q、J=271.8Hz)、118.70、67.41(dtd、J=44.2、22.2、2.9Hz)、61.67、26.53(d、J=17.7Hz)、25.28(dtd、J=40.4、20.1、3.0Hz)。19F NMR(470MHz、THF-d)δ-63.02。11B NMR(160MHz、THF-d)δ3.84。
【0066】
(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ジイソプロポキシボランの調製は、以下のように行った。
【0067】
【化9】
【0068】
ジエチルエーテル(100mL)中のリチウム(ジエチルエーテラート)(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)トリイソプロポキシボレート(8.00g、19.6mmol)の溶液に、塩化水素溶液(12.3mL、エーテル中2M、24.6mmol)を添加すると、沈殿物がただちに形成された。反応混合物を2時間撹拌し、濾過して、揮発物を減圧下で除去した。生じた残留物をヘキサンで抽出し、濾過し、揮発物を減圧下で除去して、生成物を油として得た。収率:5.10g、76.1%。
H NMR(500MHz、クロロホルム-d)δ8.01(d、J=1.9Hz、2H)、7.89(dt、J=2.0、1.0Hz、1H)、4.59(hept、J=6.1Hz、1H)、1.27(d、J=6.2Hz、6H)。13C NMR(126MHz、クロロホルム-d)δ134.19、132.85(td、J=3.7、1.9Hz)、130.85(q、J=32.9Hz)、123.67(d、J=272.6Hz)、123.04(hept、J=3.9Hz)、67.00、24.58。19F NMR(470MHz、クロロホルム-d)δ-63.34。11B NMR(160MHz、クロロホルム-d)δ26.66。
【0069】
リチウム(ジエチルエーテラート)ビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ジイソプロポキシボランの調製は、以下のように行った。
【0070】
【化10】
【0071】
1-ブロモ-3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(4.26g、14.5mmol)のジエチルエーテル(200mL)冷(-78℃、CO(s)浴)溶液に、n-ブチルリチウム(5.30mL、ヘキサン中2.61M、60.0mmol)を撹拌しながら添加した。反応混合物を-78℃で1時間撹拌し、沈殿物を形成した。エーテル(15mL)中(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ジイソプロキシボラン(4.82g、14.1mmol)を、緩徐に添加した。反応混合物を-78℃で1時間撹拌し(いくつかの固体を視認)、次いで周囲温度まで温め、一晩撹拌して、透明な溶液を得た。揮発物を減圧下で除去して、結晶のように見える固体を得た。固体をヘキサン中に溶解させ、溶液を濾過し、週末にかけて冷凍庫内に入れた。大量の結晶性物質が形成された。上清をデカントし、揮発物を減圧下で除去して、無色の結晶性物質を得た。収率:8.23g、93.5%。
H NMR(400MHz、クロロホルム-d)δ7.99(d、J=1.9Hz、2H)、7.74(dt、J=1.8、1.0Hz、1H)、3.81(q、J=7.1Hz、2H)、3.35(hept、J=6.1Hz、1H)、1.45(t、J=7.1Hz、3H)、0.78(d、J=6.1Hz、6H)。13C NMR(101MHz、クロロホルム-d)δ153.43、134.19-133.42(m)、129.51(q、J=31.9Hz)、124.42(q、J=272.4Hz)、119.68(hept、J=4.0Hz)、66.83、63.03、25.48、14.66。19F NMR(376MHz、クロロホルム-d)δ-63.05。11B NMR(160MHz、クロロホルム-d)δ5.12。
【0072】
ビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)イソプロポキシボランの調製を、以下のように行った。
【0073】
【化11】
【0074】
ジエチルエーテル(100mL)中のリチウム(ジエチルエーテラート)ビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ジイソプロポキシボレート(5.00g、7.86mmol)の溶液に、塩化水素溶液(5.5mL、エーテル中2M、11mmol)を添加すると、沈殿物がただちに形成された。反応混合物を1時間撹拌し、揮発物を減圧下で除去した。残留物をヘキサンで抽出し、濾過し、揮発物を減圧下で除去して、生成物を無色粉末として得た。収率:3.98g、102%(いくつかの残留溶媒が存在)。
H NMR(400MHz、クロロホルム-d)δ8.00(ddd、J=2.2、1.4、0.7Hz、2H)、7.98(dq、J=1.9、0.6Hz、4H)、4.54(hept、J=6.1Hz、1H)、1.37(d、J=6.1Hz、6H)。13C NMR(101MHz、クロロホルム-d)δ138.42、133.32、131.36(q、J=33.2Hz)、124.39(p、J=3.8Hz)、123.39(d、J=272.8Hz)、71.74、24.62。19F NMR(376MHz、クロロホルム-d)δ-63.33。11B NMR(160MHz、クロロホルム-d)δ41.80。
【0075】
合成手順-触媒の調製
触媒試料C1、トリス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボランTHF付加物を以下のように調製した。
【0076】
リチウムイソプロポキシトリス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレートの調製
【0077】
【化12】
1-ブロモ-3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(3.76g、12.8mmol)のジエチルエーテル(150mL)冷(-78℃、CO(s)浴)溶液に、n-ブチルリチウム(5.00mL、ヘキサン中2.5M、12.7mmol)を緩徐に滴加した。反応混合物を-78℃で1時間撹拌した。エーテル(10mL)中イソプロポキシビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボラン(6.29g、12.7mmol)を緩徐に添加した。反応混合物を周囲温度まで温めながら一晩撹拌して、透明な非常に淡い黄色の溶液を得た。揮発物を減圧下で除去して、結晶性固体を得た。固体を最小の沸騰エーテル中に溶解させ、溶液を冷凍庫内に置いた。一晩冷却した後、形成された結晶から上清をデカントし、結晶を減圧下で乾燥させて6.74gを得た。上清溶液を濃縮し、冷凍庫で一晩冷却して、結晶性物質の第2の収穫物(1.54g)を得た。総収率:8.28g、75.6%。
H NMR(400MHz,ベンゼン-d)δ8.09(s、6H)、7.74(s、3H)、3.71(p、J=6.1Hz、1H)、2.97(q、J=7.0Hz、10H)、0.70(t、J=7.1Hz、15H)、0.67(d、J=6.2Hz、6H)。13C NMR(101MHz、ベンゼン-d)δ157.09、133.79、130.75(q、J=32.0Hz)、124.71(q、J=272.8Hz)、119.91(p、J=4.2Hz)、65.91、65.00、25.47、14.11。19F NMR(376MHz、ベンゼン-d)δ-62.76。11B NMR(160MHz、ベンゼン-d)δ1.56。
【0078】
トリス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボランTHF付加物の調製
【0079】
【化13】
エーテル(100mL)中のリチウムイソプロポキシトリス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート(6.700g、7.75mmol)の溶液に、クロロトリメチルシラン(2.0mL、1.71g、15.8mmol)を添加した。反応混合物を週末にかけて撹拌した。反応混合物を濾過し、揮発物を減圧下で除去して、生成物を無色の固体、4.80g、95.2%として得た。
【0080】
固体の一部(4.041g)をエーテル(100mL)に溶解し、THF(5mL)を添加した。揮発物を減圧下で反応混合物から除去した。残留物をベンゼンで抽出し、濾過し、揮発物を減圧下で反応混合物から除去して、THF-付加物生成物を無色の固体、4.10g、91.3%として得た。
THF付加物:H NMR(400MHz、ベンゼン-d)δ7.80-7.78(m、6H)、7.72(dq、J=1.8、0.9Hz、3H)、2.90-2.83(m、4H)、0.57-0.49(m、4H)。13C NMR(101MHz、ベンゼン-d)δ148.11、133.40、131.38(q、J=32.5Hz)、124.21(q、J=272.8Hz)、121.37(p、J=4.1Hz)、74.14、23.94(d、J=2.7Hz)。19F NMR(376MHz、ベンゼン-d)δ-62.95。11B NMR(160MHz、ベンゼン-d)δ11.84。
【0081】
触媒試料C2、ビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)(4-トリフルオロメチルフェニル)ボランTHF付加物を以下のように調製した。
【0082】
ビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)(4-トリフルオロメチルフェニル)ボランの調製
【0083】
【化14】
1-ブロモ-4-トリフルオロメチルベンゼン(2.750g、12.22mmol)のジエチルエーテル(200mL)冷(-78℃、CO(s)/アセトン浴)溶液に、n-ブチルリチウム(4.70mL、ヘキサン中2.535M、11.9mmol)を緩徐に滴加した。反応混合物を-78℃で3時間撹拌した。ジエチルエーテル(15mL)中イソプロポキシビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボラン(5.910g、11.91mmol)を緩徐に添加した。反応混合物を周囲温度まで撹拌しながら一晩加温して、微量の沈殿物を有する黄色の透明な溶液を得た。溶媒を減圧下で除去して、濃厚黄色油を得た。油をヘキサン(100mL)と共に高速で一晩撹拌した(多少の曇りが生じる)。ヘキサン層をデカントで除去し、濾過して、揮発物を減圧下で除去した。油層をヘキサンで再び抽出し、プロセスを数回繰り返した。溶解しなかった少量の油を廃棄した。揮発物を濾液から減圧下で除去して、黄色油を得た。油をジエチルエーテル(100mL)に溶解し、トリメチルシリルクロリド(TMSCl、1.5g、13.8mmol)を添加した。30分以内に多量の沈殿物が形成された。反応混合物を一晩撹拌した。反応混合物を濾過し、揮発物を減圧下で除去して、ペースト状のベージュ色スラッジを得た。NMRスペクトルはほぼ完全な反応を示した。生成物をエーテルに溶解し、更なるTMSClを添加した(0.4mL)。数時間撹拌した後、揮発物を減圧下で除去した。残留物をベンゼンで抽出し、濾過し、揮発物を減圧下で除去してペースト状固体を得た。H NMR分光法は、いくつかのイソプロピル基及び多少のエーテルをなお示した。残留物をエーテルに溶解し、少量のTMSCl(0.2mL)を添加し、反応混合物を数時間撹拌した。数ミリリットルのTHFを添加し、揮発物を減圧下で除去した。生成物をベンゼンで抽出し、濾過し、揮発物を減圧下で除去して、生成物を白色固体(5.370g、68.90%)として得た。
ボラン-THF錯体のNMRスペクトル:H NMR(400MHz、ベンゼン-d)δ7.83(s、4H)、7.78(tq、J=1.7、0.8Hz、2H)、7.41(dq、J=7.4、0.8Hz、2H)、7.07(dq、J=7.5、0.9Hz、2H)、3.04-2.96(m、4H)、0.70-0.62(m、4H)。13C NMR(126MHz、ベンゼン-d)δ149.08、148.88、134.18、133.62(d、J=3.8Hz)、131.11(q、J=32.4Hz)、129.94(q、J=32.1Hz)、125.06(d、J=272.1Hz)、124.92(q、J=3.8Hz)、124.34(q、J=272.7Hz)、121.22(dt、J=8.0、4.0Hz)、73.53、24.10。19F NMR(376MHz、ベンゼン-d)δ-62.56(s、3F)、-62.78(s、12F)。11B NMR(160MHz、ベンゼン-d)δ18.54。
【0084】
触媒試料C3、ビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)(2,4,6-トリフルオロフェニル)ボランTHF付加物を以下のように調製した。
【0085】
リチウムビス(ジエチルエーテラート)ビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)(2,4,6-トリフルオロフェニル)-イソプロポキシボレートの調製
【0086】
【化15】
パージされたグローブボックス内で、2.06g(9.78mmol)の1-ブロモ-2,4,6-トリフルオロベンゼンを、250mLのシュレンクフラスコ内の80mLのジエチルエーテルと混合した。テフロンでコーティングされた撹拌棒を無色の溶液に追加し、グローブボックスから取り出す前にフラスコをゴム製セプタムで密閉した。ドラフト内で、フラスコを窒素ラインに接続し、ドライアイス/アセトン浴(-78℃)に20分間置いて、冷却した。ヘキサン中n-ブチルリチウムの2.5Mの溶液(4.3mL、10.8mmol)を、シリンジを介して冷溶液に添加した。反応混合物を-78℃で1時間撹拌した。20mLのジエチルエーテル中4.85gのビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)イソプロポキシボランの溶液をグローブボックス内で調製し、シリンジ内に吸い上げた。-78℃で冷アリールリチウム溶液を含有するフラスコに溶液を注入し、混合物をこの温度で30分間撹拌した。ドライアイス/アセトン浴を除去し、反応混合物を一晩撹拌しながら室温まで緩徐に温めた。翌朝、全ての揮発物を真空下で除去して、粘着性の黄色固体を得た。フラスコをグローブボックスに戻し、粘着性の黄色物質を1)80mLのペンタン、2)80mLのヘキサン、及び3)60mLの50/50エーテル/ヘキサン混合物で抽出した。3つ全ての溶液をグローブボックス冷凍庫に一晩(-40℃)置き、白色の結晶性物質を溶液から沈殿させた。結晶性物質を濾過によって収集し、冷ペンタン(-40℃)で洗浄し、真空下で1時間乾燥させた。総収率:5.29g(不純、約5.5mmolの所望のリチウム塩、56%)。純粋な物質が得られなかったことに留意されたい。リチウム塩がイソプロポキシボラン出発物質(回収された固体物質のバッチに応じて12%~22%汚染)で汚染されていた。単離された物質を更に精製せずに、反応の次の工程に進むことが決定された。
H NMR(400MHz、ベンゼン-d)δ8.26(s、4H、ortho-ArCH)、7.80(s、2H、para-ArCH)、6.22-6.07(m、2H、ortho-ArCH)、3.68(hept、J=5.8Hz、1H、CH(CH)、3.07(q、J=7.1Hz、8H、OCH)、0.81(t、J=7.1Hz、12H、OCHCH)、0.67(d、J=6.2Hz、6H、CH(CH)。13C NMR(101MHz、ベンゼン-d)δ166.2(ddd、J=231.3、22.4、14.0Hz、ArC)、162.3(dt、J=247.1、20.2Hz、ArC)、159.5(br s、ArC)、157.3(br s、ArC)、133.8(s、ortho-ArCH)、130.7(q、J=31.9Hz、ArC-CF)、125.5(q、J=272.4Hz、CF)、119.9(p、J=4.0Hz、para-ArCH)、101.0(ddd、J=36.6、24.0、3.7Hz、meta-ArCH)、65.9(s、OCH(CH)、65.8(s、OCHCH)、25.7(s、OCH(CH)、14.7(s、OCHCH)。19F NMR(376MHz、ベンゼン-d)δ-62.7(s、12F、CF)、-104.4(br s、2F、ortho-ArF)、-112.3(m、1F、para-ArF)。
【0087】
ビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)(2,4,6-トリフルオロボラン)の調製
【0088】
【化16】
パージされたグローブボックス内で、3.30g(78%純度、3.29mmol)のホウ酸リチウム塩を60mLのジエチルエーテルに溶解して無色の溶液を形成した(注:ホウ酸リチウム塩は22%ビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)イソプロポキシボランで汚染された)。トリメチルシリルクロリド(1.0mL、7.9mmol)を、室温の溶液に撹拌しながら添加した。反応の即時の徴候はなかった。混合物を室温で一晩撹拌した。翌朝、多量のLiCl沈殿物がフラスコ内で形成された。反応混合物のアリコートを取り出し、19F NMR分光法によって分析して、反応が完了したことを確認した。反応混合物をセライトで濾過して、LiClを除去し、濾液を圧送して乾燥させた。得られた粘着性の白色固体を80~90mLのヘキサンで抽出し、再度濾過した。ヘキサン溶液をグローブボックス冷凍庫に一晩(-40℃)置き、その時間中に白色微結晶性固体が沈殿した。固体を濾過によって収集し、5~10mLの冷ペンタン(-40℃)で洗浄し、真空下で1時間乾燥させた。多核NMR分光法によって、純粋な形態の所望の物質の形成を確認した。収率:0.992g、1.75mmol、53.2%。
H NMR(400MHz、ベンゼン-d)δ7.88(s、6H、ArCH on CF-置換環)、6.03(m、2H、ArCH on 2,4,6-トリフルオロフェニル環)。13C NMR(101MHz、ベンゼン-d)δ167.4(dt、J=257.6、16.2Hz、para-ArCF)、166.2(dt、J=253.5、15.2Hz、ortho-ArCF)、142.8(br s、ArC)、137.5(d、J=3.0Hz、ortho-ArCH)、132.1(q、J=33.4Hz、ArC-CF)、126.9(pent、J=4.0Hz、para-ArCH)、124.1(q、J=273.0Hz、CF)、112.6(br s、ArC)、101.6(ddd、J=29.0、24.9、3.7Hz、meta-ArCH)。19F NMR(376MHz、ベンゼン-d)δ-63.1(s、12F、CF)、-92.4(m、2F、ortho-ArCF)、-98.5(s、1F、para-ArCF)。11B NMR(160MHz、ベンゼン-d)δ62.9(broad s)。
【0089】
ビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)(2,4,6-トリフルオロボラン)のTHF付加物の調製
【0090】
【化17】
パージしたグローブボックス内で、0.992g(1.75mmol)のビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)(2,4,6-トリフルオロフェニル)ボランを、110mLのガラス瓶内に秤量し、50mLのTHF中に溶解させた。THFを撹拌しながら真空下で除去して、白色固体を得た。固体を40mLのペンタンで粉砕して、任意の非配位THFの除去を補助した。白色の固体は、多核NMR分光法によってビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)(2,4,6-トリフルオロフェニル)ボランのモノTHF付加物として特徴付けられた。収率:0.969g、1.51mmol、86.3%。
H NMR(400MHz、ベンゼン-d)δ7.96(s、4H、ortho-ArCH)、7.79(s、2H、para-ArCH)、6.16(t、J=8.0Hz、2H、meta-ArCH)、3.10(m、4H、OCH)、0.79(m、4H、CH)。13C NMR(101MHz、ベンゼン-d)δ165.3(ddd、J=245.4、17.7、14.3Hz、ortho-ArCF)、163.9(dd、J=249.5、16.2Hz、para-ArCF)、148.4(br s、ArC)、134.0(s、ortho-ArCH)、131.4(q、J=32.4Hz、ArC-CF)、121.8(m、para-ArCH)、124.8(q、J=272.7Hz、CF)、101.3(ddd、J=32.8、24.2、3.2Hz、meta-ArCH)、72.6(s、OCH)、24.8(s、CH)。19F NMR(376MHz、ベンゼン-d)δ-62.8(s、12F、CF)、-96.9(s、2F、ortho-ArCF)、-108.5(s、1F、para-ArCF)。11B NMR(160MHz、ベンゼン-d)δ13.2(broad s)。
【0091】
触媒試料C4、ビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)(2,6-ジフルオロフェニル)THF付加物を以下のように調製した。
【0092】
リチウムビス(ジエチルエーテラート)ビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)(2,6-ジフルオロフェニル)イソプロポキシボレートの調製
【0093】
【化18】
ジエチルエーテル(100mL)中1-ブロモ-2,6-ジフルオロベンゼン(1.46g、7.56mmol)の冷(-78℃、CO(s)浴)溶液に、n-ブチルリチウム(3.00mL、ヘキサン中2.48M、7.44mmol)を緩徐に滴加した。反応混合物を-78℃で1時間撹拌し、次いで、エーテル(10mL)中のビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)イソプロポキシボラン(3.69g、7.44mmol)の溶液を緩徐に添加した。反応混合物を周囲温度まで温める間に、沈殿物が形成された。反応混合物が室温に達するまでには、沈殿物は溶解して、透明な溶液が得られ、これを数時間撹拌した。溶液を濾過し、揮発物を減圧下で除去して、結晶のように見える固体を得た。固体を最小の沸騰エーテル中に溶解させ、溶液をグローブボックス冷凍庫(-33℃)内に置いた。一晩冷却した後、形成された結晶から上清をデカントした。結晶を減圧下で乾燥させた。収率:6.85g、88.4%。
H NMR(400MHz、ベンゼン-d)δ8.31(s、4H)、7.77(tt、J=2.0、0.9Hz、2H)、6.60(dq、J=8.8、7.5Hz、1H)、6.47-6.41(m、2H)、3.71(hept、J=6.2Hz、1H)、3.05(qd、J=7.1、0.7Hz、8H)、0.82(td、J=7.1、0.6Hz、12H)、0.68(d、J=6.2Hz、6H)。13C NMR(126MHz、ベンゼン-d)δ164.45(dd、J=249.6、11.3Hz)、142.11、137.21、136.78(t、J=3.8Hz)、135.51(t、J=10.8Hz)、131.28(q、J=33.3Hz)、126.10(p、J=3.8Hz)、123.30(q、J=273.1Hz)、111.72-111.40(m)、73.82、65.57、15.11、2.57。19F NMR(376MHz、ベンゼン-d)δ-62.64、-106.66。11B NMR(160MHz、ベンゼン-d)δ0.68(s)。
【0094】
ビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)(2,6-ジフルオロフェニル)ボランのTHF付加物の調製
【0095】
【化19】
リチウムビス(ジエチルエーテラート)ビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)(2,6-ジフルオロフェニル)イソプロポキシボレート(5.85g、10.6mmol)をエーテル(150mL)に溶解し、クロロトリメチルシラン(3.00mL、23.6mmol)を周囲温度で溶液に添加した。15分以内に沈殿物が形成され始めた。反応混合物を週末にわたって撹拌した。月曜日までには、揮発物が蒸発した(非密閉容器)。無色の固体をエーテルで抽出し、濾過した。揮発物を減圧下で除去して、生成物を無色の固体4.98gとして得た。NMRスペクトルは純粋なボランを示したが、モノエーテラート錯体に必要なエーテルの約86%のみであった。生成物をエーテル中に溶解させて、濁った溶液を得た。THF(6mL)を添加すると、溶液は透明になった。揮発物を減圧下で除去して、ガラス状の固体を得た。残留物をベンゼンで抽出し、濾過し、揮発物を減圧下で除去して白色の固体を得た。収率:4.63g、69.9%。
H NMR(400MHz、ベンゼン-d)δ8.02(d、J=1.8Hz、2H)、7.77(dq、J=1.9、0.9Hz、1H)、6.71-6.60(m、0H)、6.48(t、J=8.4Hz、1H)、3.17-3.09(m、2H)、0.77-0.68(m、2H)。13C NMR(101MHz、ベンゼン-d)δ164.82(dd、J=243.3、14.1Hz)、147.95、133.82、133.30、130.91(d、J=32.4Hz)、124.41(q、J=272.8Hz)、121.40(q、J=3.9Hz)、112.57-111.60(m)、73.58、24.03(d、J=3.3Hz)。19F NMR(376MHz、ベンゼン-d)δ-62.80、-99.69(t、J=7.5Hz)。11B NMR(160MHz、ベンゼン-d)δ12.2(s)。
【0096】
触媒試料C5、ビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)(2,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボランを以下のように調製した。
【0097】
リチウムイソプロポキシビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)(2,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレートの調製
【0098】
【化20】
1-ブロモ-2,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(3.00g、10.24mmol)のジエチルエーテル(200mL)冷(-78℃、CO(s)浴)溶液に、n-ブチルリチウム(4.00mL、ヘキサン中2.535M、10.14mmol)を緩徐に滴加した。反応混合物を-78℃で1時間撹拌した。エーテル(18mL)中イソプロポキシビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボラン(5.036g、10.15mmol)を緩徐に添加した。反応混合物を-78℃で数時間撹拌した。溶液を一晩撹拌しながら周囲温度まで温めて、淡黄色の透明の溶液を得た。反応混合物から揮発物を除去して、黄色の油を得た。油をベンゼンで抽出した。不溶物はなかった。反応混合物から揮発物を除去して、黄色の油を得た。収率は、7.88g、98.3%であった。
H NMR(400MHz、ベンゼン-d)δ8.06(s、1H)、8.00(s、4H)、7.70(dt、J=1.8、0.9Hz、2H)、7.40(d、J=8.3Hz、1H)、7.19(d、J=8.4Hz、1H)、3.79(hept、J=6.1Hz、1H)、2.78(q、J=7.1Hz、4H)、0.73(d、J=6.1Hz、6H)、0.54(t、J=7.1Hz、6H)。13C NMR(101MHz、ベンゼン-d)δ158.31、153.97、135.44(q、J=3.7Hz)、135.23、133.55(t、J=4.1Hz)、133.25、133.18、132.37(d、J=97.8Hz)、130.92(q、J=32.0Hz)、127.80(q、J=273.9Hz)、124.92(q、J=272.5Hz)、124.66(q、J=272.8Hz)、123.86(q、J=3.8Hz)、119.86(p、J=3.9Hz)、66.24、66.17、25.60、13.94。19F NMR(376MHz、ベンゼン-d)δ-55.30--55.51(m)、-62.82、-63.61。11B NMR(160MHz、ベンゼン-d)δ2.16。
【0099】
ビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)(2,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボランの調製
【0100】
【化21】
リチウム(ジエチルエーテラート)イソプロポキシ-ビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)(2,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-ボレート(7.88g、9.97mmol)をエーテル(150mL)に溶解した。クロロトリメチルシラン(2.6mL、20.5mmol)を添加した。反応混合物を一晩撹拌して、無色の沈殿物を有する黄色の溶液を得た。揮発物を減圧下で除去した。残留物をヘキサン(100mL)で抽出した。混合物を濾過し、揮発物を減圧下で濃縮した。溶液を冷凍庫(-33℃)内で一晩冷却した。反応混合物を濾過し、沈殿物を減圧下で乾燥させ、白色の粉末を得た。収率:6.0182g、92.84%。
THFを含まない化合物:H NMR(400MHz、ベンゼン-d)δ7.87(s、2H)、7.85(s、4H)、7.29(s、1H)、7.11(d、J=1.2Hz、2H)。13C NMR(126MHz、ベンゼン-d)δ140.87、140.75、137.49(d、J=3.8Hz)、135.11(q、J=31.7Hz)、133.26(q、J=33.0Hz)、132.03(q、J=33.6Hz)、128.29、127.34(q、J=3.8Hz)、127.11(q、J=4.0Hz)、127.01(q、J=4.0Hz)、124.46(q、J=274.3Hz)、123.70(q、J=273.2Hz)、123.49(q、J=272.9Hz)。19F NMR(376MHz、ベンゼン-d)δ-56.98、-63.43、-63.47。11B NMR(160MHz、ベンゼン-d)δ64.37。
【0101】
触媒試料C6、(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ビス(2,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボランを以下のように調製した。
【0102】
リチウムジイソプロポキシ(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)(2,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレートの調製
【0103】
【化22】
n-ブチルリチウム(4.00mL、ヘキサン中2.535M、10.14mmol)を、1-ブロモ-2,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(3.000g、10.24mmol)のジエチルエーテル(150mL)冷(-101℃~-99℃、CO(s)、次いでN(l)、メタノール浴)溶液に撹拌しながら添加した。反応混合物を約-100℃で2時間撹拌し、次いで-78℃まで温めた。エーテル(10mL)中ビス(イソプロポキシ)(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボラン(3.510g、10.26mmol)を緩徐に添加した。反応混合物を周囲温度まで撹拌しながら一晩温めた。淡黄色のほぼ透明な溶液から揮発物を減圧下で除去して、結晶のように見える固体を得た。固体をエーテル(10mL)に溶解し、冷凍庫に入れた。何も沈殿しなかった。エーテルを蒸発させ、黄色の固体をヘキサンに溶解し、濾過し、窒素流下で濃縮して結晶性固体を得た。上清を除去し、固体を減圧下で乾燥させた。第1の収穫物からの無色結晶の収率:3.318g。結晶のNMR分析は、純粋な所望の化合物を示した。上清を冷凍庫に一晩置いた。結晶性物質が形成された。上清をピペットで取り出し、廃棄した。結晶性残留物を減圧下で乾燥させた:2.017g。合計収率:5.335g、82.79%。
H NMR(400MHz、ベンゼン-d)δ8.39(s、2H)、8.26(s、1H)、7.90(dq、J=1.8、0.9Hz、1H)、7.56(d、J=8.2Hz、1H)、7.27(ddt、J=7.9、1.7、0.8Hz、1H)、3.18(hept、J=6.0Hz、2H)、2.92(q、J=7.1Hz、4H)、0.89(t、J=7.1Hz、6H)、0.78(d、J=6.1Hz、6H)、0.68(d、J=6.0Hz、6H)。13C NMR(101MHz、ベンゼン-d)δ153.10、136.65(q、J=29.6Hz)、134.81(dd、J=2.7Hz、1.9Hz)、133.93(q、J=3.6Hz)、131.93(q、J=31.6Hz)、131.35、129.76(q、J=31.9Hz)、127.26(q、J=274.6Hz)、125.17(d、J=272.4Hz)、124.89(q、J=272.8Hz)、123.25(q、J=3.9Hz)、119.89(p、J=3.9Hz)、66.42、64.08、25.49、24.57、14.36。19F NMR(376MHz、ベンゼン-d)δ-55.79、-62.66、-63.30。11B NMR(160MHz、ベンゼン-d)δ5.32。
【0104】
イソプロポキシ(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)(2,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボランの調製
【0105】
【化23】
エーテル(10mL)中のリチウム(ジエチルエーテラート)ジイソプロポキシ-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)(2,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート(3.318g、5.21mmol)の溶液にクロロトリメチルシラン(2.0mL)を添加して、沈殿物を迅速に形成した。反応混合物を一晩撹拌した。反応混合物を濾過し、揮発物を減圧下で除去した。NMR分析は、反応が完了したことを示した。多少の推定TMS-O-iPrエーテルも存在した。上記のように調製したリチウムジイソプロポキシ(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)(2,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレートの第2の収穫物を同様に処理し(リチウム塩2.017g、3.17mmol、0.2mLのTMSCl)、3時間撹拌した。合せた試薬の総量:5.335g、8.39mmol、TMSCl:4.0mL、31.6mmol。第2の反応混合物を濾過し、第1の反応生成物と合わせた。揮発物を減圧下で除去した。残留物をヘキサンで抽出し、濾過し、揮発物を減圧下40℃で一晩除去して、生成物を黄色の油3.4703g、83.42%として得た。
H NMR(400MHz、ベンゼン-d)δ8.05(d、J=1.8Hz、2H)、7.80(d、J=2.3Hz、1H)、7.34(d、J=1.9Hz、1H)、7.12(d、J=6.5Hz、1H)、7.10(d、J=6.7Hz、1H)、3.78(hept、J=6.1Hz、1H)、0.85(d、J=6.1Hz、6H)。13C NMR(101MHz、ベンゼン-d)δ139.07、136.28、135.37(q、J=31.8Hz)、134.93(d、J=3.9Hz)、133.49(q、J=32.7Hz)、131.50(q、J=33.0Hz)、127.87、126.95(dq、J=7.5、3.7Hz)、126.46(q、J=3.7Hz)、125.41(hex、J=3.8Hz)、124.57(q、J=273.9Hz)、123.98(q、J=272.8Hz)、123.90(q、J=273.0Hz)、72.49、23.71。19F NMR(376MHz、ベンゼン-d)δ-60.31、-63.27(d、J=3.3Hz)、-63.47(d、J=3.3Hz)。11B NMR(160MHz、ベンゼン-d)δ41.28。
【0106】
リチウムイソプロポキシビス(2,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレートの調製
【0107】
【化24】
1-ブロモ-2,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(1.800g、6.14mmol)のジエチルエーテル(150mL)冷(-78℃、CO(s)浴)溶液に、n-ブチルリチウム(2.40mL、ヘキサン中2.535M、6.08mmol)を緩徐に滴加した。反応混合物を-78℃で1時間撹拌した。エーテル(18mL)中イソプロポキシ(2,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボラン(3.022g、6.09mmol)を緩徐に添加する。反応混合物を-78℃で数時間撹拌した。溶液を周囲温度まで撹拌しながら一晩温めて、淡黄色の透明な溶液を得た。反応混合物から揮発物を除去して、黄色の油を得た。油をベンゼンで抽出した。不溶物はなかった。反応混合物から揮発物を除去して、黄色の油を得た。収率は、4.21g、87.6%であった。
H NMR(400MHz、ベンゼン-d)δ8.30(s、2H)、8.12(s、2H)、7.65(dt、J=1.7、0.9Hz、1H)、7.27(d、J=8.2Hz、2H)、7.08(d、J=8.2Hz、2H)、3.87(hept、J=6.2Hz、1H)、2.91(q、J=7.1Hz、4H)、0.65(d、J=6.2Hz、6H)、0.63(t、J=7.1Hz、6H)。13C NMR(101MHz、ベンゼン-d)δ157.17、156.73、134.42、133.88(q、J=3.6Hz)、133.04(d、J=28.4Hz)、132.88(q、J=32.1Hz)、129.95(q、J=31.9Hz)、127.74(q、J=273.6Hz)、127.33(q、J=6.9Hz)、124.97(q、J=272.4Hz)、124.50(q、J=273.0Hz)、122.72(q、J=3.8Hz)、118.78(p、J=4.1Hz)、65.88、65.34、25.11、13.91。19F NMR(376MHz、ベンゼン-d)δ-56.31、-62.89、-63.76。11B NMR(160MHz、ベンゼン-d)δ2.98。
【0108】
ビス(2,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボランの調製
【0109】
【化25】
ジエチルエーテル(150mL)中、リチウム(ジエチルエーテラート)イソプロポキシ-ビス(2,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート(3.915g、4.95mmol)の溶液に、クロロトリメチルシラン(1.10mL、10.1mmol)を撹拌しながら添加した。15分以内に沈殿物が溶液中に形成された。反応混合物を一晩撹拌した。混合物を濾過し、揮発物を減圧下で除去して、3.260gの無色の固体を得た。生成物をヘキサンで抽出し、濾過し、揮発物を減圧下で除去して、生成物を3.109g、96.53%の淡色の固体として得た。
H NMR(500MHz、ベンゼン-d)δ7.90(s、1H)、7.83(s、1H)、7.66(s、3H)、7.09(s、5H)、7.09(s、5H)。13C NMR(126MHz、ベンゼン-d)δ141.54、140.05、138.35(q、J=3.8Hz)、135.84(q、J=32.0Hz)、133.02(q、J=33.0Hz)、132.02(q、J=33.7Hz)、129.98(q、J=3.5Hz)、128.29、127.91(d、J=2.4Hz)、127.13(q、J=4.2Hz)、124.15(q、J=274.2Hz)、123.70(q、J=273.2Hz)、123.37(q、J=273.2Hz)。19F NMR(470MHz、ベンゼン-d)δ-56.40、-63.31、-63.58。11B NMR(160MHz、ベンゼン-d)δ67.58。
【0110】
触媒試料C7を以下のように調製した。
【0111】
トリス(2,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボランの調製
【0112】
【化26】
この反応は、以前に報告された手順と同様に行った。
イソプロピルマグネシウムクロリド-リチウムクロリド(46.0mL、58.0mmol、THF中1.26 M溶液)を、ドライアイス(-76℃)で冷却したアセトン浴中にあるTHF(250mL)中1-ブロモ-2,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(17.05g、58.2mmol)の溶液に添加した。添加が完了した後、反応フラスコを氷浴(0℃)に移し、反応混合物を2時間撹拌した。反応混合物を-78℃に冷却し、エーテル15mL中の三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート(2.43mL、2.74g、19.3mmol)を添加した。反応混合物を週末にかけて撹拌しながら室温まで温めた。揮発物を溶液から除去して、12.77gの赤みがかった固体を得た。残留物をトルエンで抽出し、濾過した。揮発物を減圧下で除去して、10.75gのピンク色の粉末を得た。固体を塩化メチレンで抽出して、明紫色の溶液を得た。溶液を冷凍庫に一晩入れた。形成された非常に明るいピンクがかった結晶性物質から上清をデカントした。物質を減圧下で乾燥させた。収率:7.0003g、55.73%。
THを含まない生成物:H NMR(400MHz、ベンゼン-d)δ7.57(s、1H)、7.13(s、3H)、7.08(dd、J=8.3、1.8Hz、3H)。13C NMR(101MHz、ベンゼン-d)δ141.10、136.50(q、J=32.2Hz)、132.81(q、J=33.1Hz)、131.59(q、J=3.8Hz)、128.85(q、J=3.7Hz)、127.45(q、J=3.4、2.1Hz)、123.93(q、J=274.6Hz)、123.59(q、J=273.1Hz)。19F NMR(376MHz、ベンゼン-d)δ-56.48、-63.77。11B NMR(160MHz、ベンゼン-d)δ68.81。
【0113】
触媒試料C8、ビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)(2,3,5,6-テトラフルオロ-4-トリフルオロメチルフェニル)ボランTHF付加物を以下のように調製した。
【0114】
リチウム(テトラヒドロフラネート)ビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)(2,3,5,6-テトラフルオロ-4-トリフルオロメチルフェニル)イソプロポキシボレートの調製
__________________
Herrington,T.J.;Thom,A.J.W.;White,A.J.P.;Ashley,A.E.Dalton Trans.2012,41,9019.
【0115】
【化27】
n-ブチルリチウム(3.00mL、ヘキサン中2.54M、7.61mmol)を、1-ブロモ-2,3,5,6-テトラフルオロ-4-トリフルオロメチルベンゼン(2.26g、7.61mmol)のジエチルエーテル(100mL)冷(-101℃~-99℃、CO(s)、次いでN(l)、メタノール浴)溶液に撹拌しながら添加した。反応混合物を-100℃で2時間撹拌し、次いで-76℃まで温めた。エーテル(10mL)中ビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)イソプロポキシボラン(3.78g、7.61mmol)を、反応混合物に緩徐に添加した。反応混合物を周囲温度まで撹拌しながら一晩緩徐に温めた。翌日、淡黄色のほぼ透明の溶液を濾過し、濾液から揮発物を減圧下で除去して、結晶のように見える固体を得た。固体をヘキサンで洗浄し、濾過し、減圧下で乾燥させた。NMR分析のために固体のアリコートを除去した。固体のアリコートはベンゼンへの溶解度が限定されていた。アリコートをTHFに溶解し、揮発物を減圧下で除去し、次いでベンゼン中のNMRによって再度分析した。収率:6.16g、93.2%。
H NMR(500MHz、ベンゼン-d)δ8.32(s、4H)、7.85(s、2H)、3.47(h、J=6.2Hz、1H)、3.26-3.17(m、4H)、1.24-1.16(m、4H)、0.55(d、J=6.2Hz、6H)。13C NMR(126MHz、ベンゼン-d)δ144.07(d、J=259.4Hz)、134.41、133.82、133.48(d、J=187.5Hz)、130.59(q、J=32.2Hz)、130.45(q、J=31.8Hz)、126.40-123.43(m)、125.84、124.97(q、J=272.4Hz)、119.94(p、J=4.0Hz)、118.92(d、J=190.9Hz)、109.57(d、J=22.7Hz)、68.38、65.30、25.64、25.13。19F NMR(470MHz、ベンゼン-d)δ-56.26(t、J=20.7Hz)、-62.59、-137.04、-141.73。11B NMR(160MHz、ベンゼン-d)δ1.20。
【0116】
ビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)(2,3,5,6-テトラフルオロ-4-トリフルオロメチルフェニル)ボランテトラヒドロフラネート、THF付加物の調製
【0117】
【化28】
リチウム(テトラヒドロフラネート)ビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)(2,3,5,6-テトラフルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル)イソプロポキシボレート(6.16g、7.10mmol)のジエチルエーテル(100mL)溶液に、クロロトリメチルシラン(2.00mL、18.4mmol)を撹拌しながら添加した。反応混合物を一晩撹拌した。翌日、19F NMR分光法による反応混合物のアリコートの分析によって、反応が起こらなかったことが明らかになった。エーテル中の塩化水素溶液(7.00mL、2.0M、14.0mmol)を添加し、反応混合物を一晩撹拌した。翌日、19F NMR分光法による反応混合物のアリコートの分析によって、反応が完了したことが明らかになった。混合物を濾過し、濾液から揮発物を減圧下で除去した。結果として得られる残留物をトルエン中に溶解させ、濾過し、濾液から揮発物を減圧下で除去して、4.50gの粗生成物を得た。無色のペースト状の固体をヘキサンで洗浄し、濾過して無色の粉末を得て、これを減圧下で乾燥させた。粉末のNMR分析により、1分子のイソプロパノールがボランの配位球に残存していることが明らかになった。ボランのイソプロパノール付加物としての収率:2.45g、52.8%。
【0118】
ボランイソプロパノール付加物(1.811g)の一部をエーテル(40mL)に溶解し、THF(10mL)を溶液に添加した。溶液を緩徐に蒸発させて、大きな結晶を得た。上清を除去し、非常に淡い黄色の結晶をヘキサンで洗浄した。結晶を減圧下で乾燥させた(1.08g)。結晶をX線結晶構造解析法によって分析し、ボランイソプロパノール付加物であることが判明した。THFは配位アルコールを置換しなかった。結晶からの上清溶液及びヘキサン洗浄液を合わせ、真空下で濃縮して、結晶の第2の収穫物(0.422g)を得た。結晶の第2の収穫物を、第1の収穫物と同じ様式で洗浄し、乾燥させた。NMR分析によって、配位したイソプロパノールの存在が示されたが、THFの存在はほとんど又は全く示されなかった。THFを添加し、次いで揮発物を減圧下で除去した。NMR分析によって、THFの存在が示されたが、なお多少のイソプロパノールの存在が示された。固体をTHFに溶解し、次いで圧送除去した。これを更に5回繰り返し、生成物のTHF付加物を白色粉末として得た。収率:0.413g、22.4%。
【0119】
THF付加物:
H NMR(400MHz、ベンゼン-d)δ7.87(s、4H)、7.80(s、4H)、3.02-2.93(m、4H)、0.78-0.72(m、4H)。13C NMR(126MHz、ベンゼン-d)δ147.98(td、J=16.5、3.6Hz)、146.05(tt、J=11.8、4.1Hz)、145.58(d、J=20.9Hz)、143.50(d、J=20.1Hz)、133.44、131.39(q、J=32.6Hz)、124.24(q、J=272.7Hz)、121.78(t、J=4.0Hz)、121.45(q、J=274.4Hz)、109.38-108.10(m)、73.75、23.90。19F NMR(376MHz、ベンゼン-d)δ-56.57(t、J=21.0Hz)、-62.95、-130.60(dd、J=22.5、13.2Hz)、-140.71(qt、J=19.7、8.6Hz)。11B NMR(160MHz、ベンゼン-d)δ7.22。
【0120】
参考例2において上述したように調製した触媒試料を以下に示す。
【0121】
【化29】
【0122】
フッ素化アリールボランルイス酸触媒試料C1~C8、及び市販のFABの構造を上に示す。構造C1は、トリス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボランTHF付加物(請求項の出発物質A1)に相当)である。構造C2は、ビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)(4-トリフルオロメチルフェニル)ボランTHF付加物(請求項の出発物質A2)に相当)である。構造C3は、ビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)(2,4,6-トリフルオロフェニル)ボランTHF付加物(請求項の出発物質A3)に相当)である。構造C4は、ビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)(2,6-ジフルオロフェニル)ボランTHF付加物(請求項の出発物質A4)に相当)である。構造C5は、ビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)(2,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボラン(請求項の出発物質A5)に相当)である。構造C6は、(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ビス(2,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボラン(請求項の出発物質A6)に対応)である。比較のための構造C7は、トリス(2,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボランである。構造C8は、ビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)(2,3,5,6-テトラフルオロ-4-トリフルオロメチルフェニル)ボランTHF付加物(請求項の出発物質A7)に相当)である。
【0123】
参考例3-スクリーニング研究
上述のように調製されたフッ素化トリアリールボランルイス酸を、水の存在下でのSiHカップリングについて以下のように評価した。窒素パージしたグローブボックス内で、上に示したフッ素化トリアリールボランルイス酸試料の溶液を、10mLのガラスバイアル中で調製した(例えば、FAB、30.7mgを5mLのトルエン中に溶解した)。シラン(例えば、TES、38.4μL、2当量)、内部標準(IS、メシチレン、16.8μL、1当量)をNMR管に入れた。触媒(0.5mL、5mol%)を、ピペットを介してトルエン原液として送達した。管に蓋をし、H NMRスペクトルを一定の時間間隔で測定した。変換率は、2時間及び24時間後に、内部標準と比較して確立された(Si-H結合対IS、又は生成物対IS(可能な場合))。
【0124】
【化30】
【0125】
【表2】
【0126】
理論に拘束されることを望むものではないが、C7は、試験された条件下でSiHカップリング反応を触媒するには立体的にかさ高すぎたと考えられ、これは、全てのフッ素化アリールボランがこの反応を触媒するわけではないことを実証している。
【0127】
参考例4-SiH含有ポリオレフィンコポリマー(エチレン、オクテン、及び5-ヘキセニルジメチルシラン(hexenyldimethylsilane、HDMS)又は7-オクテニルジメチルシラン(octenyldimethylsilane、ODMS)のコポリマー)の調製のための一般的な手順
バッチ反応器重合は、2LのParrバッチ反応器内で行われた。反応器を電気加熱マントルによって加熱し、冷却水が入っている内部蛇行冷却コイルによって冷却した。CAMILE TGプロセスコンピュータによって、反応器及び加熱/冷却システムの両方を制御し監視した。反応器の底部に、反応器の内容物をステンレス鋼のダンプポットに移すダンプ弁を取り付けた。ダンプポットを30ガロンのブローダウンタンクに通気し、ポット及びタンクの両方を窒素でパージした。使用前に、重合又は触媒の補給に使用するための全ての溶媒を溶媒精製カラムに通して、重合に影響を与え得る不純物を全て除去した。1-オクテン及びISOPAR-Eは、A2アルミナを含有する第1のカラム、Q5反応物を含有する第2のカラムの2つのカラムを通過させた。(ISOPAR-Eは、ExxonMobil Chemical Companyから市販されている、典型的には1ppm未満のベンゼン及び1ppm未満の硫黄を含有するイソパラフィン流体である。)エチレンは、A204アルミナ及び4Å分子ふるいを含有する第1のカラム、Q5反応物を含有する第2のカラムの2つのカラムを通過させた。移動に使用したNは、A204アルミナ、4Å分子ふるい、及びQ5反応物を含有する単一のカラムを通過させた。
【0128】
所望の量の5-ヘキセニルジメチルシランモノマー又は7-オクテニルジメチルシランモノマーをショットタンクを介して充填カラムに添加し、続いて所望の反応器充填量に応じてISOPAR-E溶媒及び/又は1-オクテンを添加した。充填カラムが取り付けられたラボスケールを使用して、充填カラムを充填量設定点まで充填した。液体供給添加後、反応器を重合温度設定点まで加熱した。エチレンを使用した場合、反応器が反応温度にあるときにエチレンを反応器に添加して、反応圧力設定点を維持した。エチレン添加量をマイクロモーション流量計で監視した。
【0129】
捕捉剤MMAO-3Aは、不活性雰囲気グローブボックス内で処理し、シリンジ内に引き込み、触媒ショットタンクに圧力で移した。これに続いて、トルエン5mLを各々3回すすいだ後、反応器に注入した。プロ触媒及び活性化剤を適切な量の精製トルエンと混合して、所望のモル濃度溶液を得た。触媒及び活性化剤を、不活性雰囲気グローブボックス内で処理し、シリンジ内に引き込み、触媒ショットタンクに圧力で移した。これに続いて、各5mLのトルエンで3回すすいだ。触媒添加直後に実験タイマーを開始する。エチレンを使用した場合、CAMILEによってエチレンを添加して、反応器内の反応圧力設定点を維持した。これらの重合を10分間行い、次いで撹拌機を停止し、底部ダンプ弁を開放して反応器内容物をダンプポットに移した。ダンプポット内容物を実験室のフードに入れたトレイに注ぎ込み、そこで溶媒を一晩蒸発させた。次いで、残りのポリマーを含有するトレイを真空オーブンに移し、そこでそれらを真空下で140℃に加熱して、あらゆる残りの溶媒を除去した。トレイを周囲温度まで冷却した後、ポリマーを収率/効率について秤量し、ポリマー試験に供した。
【0130】
コポリマー試料は、以下の条件を用い、バッチ反応器プロセスに従って調製された:表3の第1のコポリマーについては、120℃、12gのエチレン充填、3.5mLの5-ヘキセニルジメチルシラン、52gの1-オクテン、588gのISOPAR E、20μmolのMMAO-3A、1.0当量のプロ触媒に対して1.2当量のビス(水素化タローアルキル)メチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート;表3の第2のコポリマーについては、120℃、12gのエチレン充填、4mLの7-オクテニルジメチルシラン、58gの1-オクテン、596gのISOPAR-E、20μmolのMMAO-3A、1.0当量のプロ触媒に対して1.2当量のビス(水素化タローアルキル)メチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート;及び表3の第3のコポリマーについては、120℃、12gのエチレン充填、4mLの7-オクテニルジメチルシラン、58gの1-オクテン、592gのISOPAR-E、20μmolのMMAO-3A、1.0当量のプロ触媒に対して1.2当量のビス(水素化タローアルキル)メチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート。使用されるプロ触媒の量を、所望の効率に達するように調整した。重合中にエチレンを供給し、必要に応じて反応器を冷却することによって、反応器の圧力及び温度を一定に保った。重合は、23gのエチレン取り込みまで行った。全ての重合は、活性化剤としてビス(水素化タローアルキル)メチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを用い、捕捉剤としてMMAOを用いて実施された。シリコーン-ポリオレフィンコポリマー(エラストマー)の特性を表3に示す。
【0131】
【表3】
【0132】
参考例5-SiH官能性ポリオレフィンコポリマーを用いた架橋研究
上述のように調製されたフッ素化トリアリールボランルイス酸C4、C5、C6、及びC7の試料を選択して、参考例4に記載のように調製されたエチレン、1-オクテン、及びHDMS又はODMSのいずれかのコポリマー中のケイ素結合水素原子の反応を触媒するそれらの実行可能性を決定した。市販のトリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(FAB)を対照として使用した。
【0133】
これらのフッ素化トリアリールボランルイス酸(ボラン)の溶液は、最初に、窒素雰囲気下でグローブボックス内の固体ボランを秤量することによって作製された。次いで、ボランをグローブボックスから取り出し、既知質量のトルエンと混合して、溶融コポリマーにブレンドすることができる溶液を作製した。溶液作製前に空気への曝露時間を制限するように注意し、分子ふるいで乾燥させたトルエンを溶媒として使用した。触媒含有エラストマー試料の全ての試験は、空気又は水分汚染を制限するために、窒素雰囲気から触媒試料を取り出して48時間以内に開始された。C4、C5、C6、及びC7の溶液を、各ボランの充填量が100ppmとなるように溶融ブレンドプロセスに添加した。溶融ブレンドは、20gのボウルを有するHaakeブレンダーを使用して、温度を80℃に設定し、60rpmのブレンド速度を使用して行った。表3に記載の10gのエラストマーを、十分に溶融するまで3分間ブレンドし、その後、100μLのボラン溶液を添加した。この系を、十分に均質化されるまで更に3分間ブレンドし、その後、得られた触媒含有エラストマーを取り出し、冷却した。C4、C5、C6、及びC7溶液との溶融ブレンド中にエラストマーの早期架橋の視覚的証拠はなかった。同じプロセスでFAB溶液を使用したとき、早期架橋が視覚的に観察された。
【0134】
次いで、得られた触媒含有エラストマーを、90℃で4分間、20,000lbsの力で圧縮成形することによってトーションバー(厚さ2mm)に圧縮成形した。次いで、これらのトーションバーを、85℃、相対湿度85%、又は25℃、相対湿度85%に制御された湿潤環境に曝露することによって水分硬化させた。1日又は5日後にバーを湿潤環境から取り出して、水分硬化反応の動態学についていくらかの考えを与えた。バーを湿潤環境から取り出し、試験した後、それを廃棄し、更なる試験には使用しなかった。
【0135】
参考例6-試料の分析
トーションバーを、ARESレオメーターを使用して動的機械分析(dynamic mechanical analysis、DMA)を介して試験した。試料を機器に固定し、25℃~250℃の温度掃引、2℃/分の温度勾配、1%の歪みに曝露した。水分硬化架橋は、温度非感受性貯蔵弾性率プラトーの証拠によって監視された。
【0136】
85℃で1日の水分曝露を伴うC4ボランを含有する試料のDMA剪断貯蔵弾性率は、温度と共に単調に減少し、250℃でおよそ10Paに低下し、曝露中に最小限の架橋が起こったことを示した。5日間の水分曝露後の試料のDMA剪断貯蔵弾性率は、試料がおよそ160℃に達するまで温度と共に減少した。次いで、試料は、およそ10Paの剪断貯蔵弾性率プラトーを示し、架橋ネットワークが形成されたことを示し、温度上昇に伴う試料の更なる溶融を防止した。この試験は、ポリマー系における潜在性(latent)縮合触媒として使用するためのC4ボランの有効性を実証した。
【0137】
85℃で1日の水分曝露を伴うC5ボランを含有する試料のDMA剪断貯蔵弾性率は、温度と共に単調に減少し、250℃でおよそ10Paに低下し、曝露中に最小限の架橋が起こったことを示した。5日間の水分曝露後の試料のDMA剪断貯蔵弾性率は、試料が170℃に達するまで温度と共に減少した。
【0138】
次いで、試料は、およそ10Paの剪断貯蔵弾性率プラトーを示し、いくらかの架橋が起こったことを示し、温度上昇に伴う試料の更なる溶融を防止した。この試験は、ポリマー系における潜在性縮合触媒として使用するためのC5ボランの有効性を実証した。
【0139】
85℃で1日の水分曝露を伴うC6ボランを含有する試料のDMA剪断貯蔵弾性率は、温度と共に単調に減少し、250℃でおよそ10Paに低下し、曝露中に最小限の架橋が起こったことを示した。5日間の水分曝露後の試料のDMA剪断貯蔵弾性率は、試料がおよそ160℃に達するまで温度と共に減少した。次いで、試料は、およそ10Paの剪断貯蔵弾性率プラトーを示し、架橋ネットワークが形成され、温度上昇に伴う試料の更なる溶融を防止したことを示した。この試験は、ポリマー系における潜在性縮合触媒として使用するためのC6ボランの有効性を実証した。
【0140】
25℃で1日及び5日間の水分曝露を伴うC5ボランを含有する試料のDMA剪断貯蔵弾性率は、温度と共に単調に減少し、減少の程度は、水分処理を伴わない試料のものと同じであり、25℃における水分曝露中に最小限の架橋が起こったことを示した。85℃における水分曝露によるC5含有試料の試験と比較することにより、この試験は、ポリマー系を効果的に硬化させるための潜在性縮合触媒としてのC5には加熱が必要であることを実証した。
【0141】
25℃及び85℃の両方で1日及び5日間の水分曝露を伴うC7を含有する試料のDMA剪断貯蔵弾性率は、温度と共に単調に減少し、減少の程度は、水分処理を伴わない試料のものと同じであり、25℃及び85℃における水分曝露中に最小限の架橋が起こったことを示した。これらの2つの試験は、C7が、試験された条件下でポリマー系の融点より下及び上の両方で触媒として十分に作用しないことを実証した。
【0142】
トーションバーは、Si-0-Si結合の形成及びSi-H結合の喪失を監視するために、対象の時点でATR FT-IR分光法を使用して分析された。この研究のために監視された特徴的な振動周波数を表4に要約する。
【0143】
【表4】
【0144】
分析されたボラン(C4及びC5)のスペクトルは、時間の関数としてシロキサンピーク領域(1000~1130cm-1)の漸増を示した。Si-H振動に関連する2つのピーク(890cm-1及び2080~2280cm-1)もまた、より長い時間で減少し、これは、Si-H結合の喪失を示した。これらの観察の組み合わせは、Si-H基の少なくとも一部が反応してシロキサン結合(Si-0-Si結合)を与えるという結論を導いた。約1710cm-1での両方の場合における予期せぬピークの出現によって証明されるように、更なる副反応が生じた可能性がある。また、この系中に相当量の未反応Si-H含有量が依然として存在し、これは、より長い期間にわたって反応し続けるか、又は他の未反応Si-H基との架橋反応を完了するための移動性を有するには部分的に架橋されたマトリックス中であまりにも不動であるかのいずれかであり得ることも観察された。これらのボランの更なる充填は試験されなかったが、より高い充填は、コポリマーのSi-H含有量のより完全な利用及びより大きな対応する架橋密度をもたらすと仮定される。
【0145】
これらのボランは、Si-H含有コポリマーの水分硬化を可能にする実用的な制御可能な経路を提示する。FTIRスペクトルは、経時的なC7試料中のSiHピークの変化がほとんどないことを明らかにし、これは、試験された条件下でC7がSiHのいかなる変換も触媒しなかったモデル系研究と一致した。
【0146】
産業上の利用可能性
上に示した実施例において実証されるように、出発物質B)がシリルヒドリド官能性ポリオレフィンを含むとき、出発物質A)及びB)は、組み合わせられ得る、例えば、混合され得、それらが水に曝露されない限り、及び曝露されるまで硬化しない。使用/硬化前に、シリルヒドリド(SiH官能性材料)及び触媒を組み合わせ、保存することができることは、本明細書に記載の組成物及び方法の予想外の利点である。
【0147】
発明が解決しようとする課題
Si-H官能性シラン及びシロキサンからのシロキサン中間体及びシロキサン硬化ネットワークの両方の調製において主に使用される触媒は、白金系触媒であり、これは上述の特定の欠点を有する。Pt系触媒に対する新たな代替法は、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(B(C)の使用であり、本明細書ではFABと呼ばれる。FABは、比較的低コストであり、重金属を含有せず、触媒作用に必要なレベルが低い。触媒としてのFABの使用は、Si-H官能基と硬化性シロキサン組成物において有用な別の官能基との間の反応において、又は中間体として報告されている。これらの官能基としては、アルコキシシリル官能基(≡Si-OR)及びシラノール(≡Si-OH)が挙げられる。
【0148】
≡Si-Hと≡Si-ORとの間、又は≡Si-Hと≡Si-OHとの間のFAB触媒カップリング反応の場合、商業的用途に対する1つの主要な制限は、反応が高度に発熱性であり、室温で非常に急速に起こることである。シロキサンの大規模製造という観点から、これは、1)可燃性ガスの急速な発生及び2)反応混合物の急速な加熱のために問題である。これらの要因が組み合わさると、商業規模での実施を制御することが困難になり、適切な反応供給/混合及び監視が困難になり、再現性が乏しくなる可能性がある。
【0149】
FABよりも制御された様式で、水の存在下で2つのSi-H部分間の反応を促進することができる代替触媒が、業界で必要とされている。触媒の選択に基づいてその速度を制御する能力を有することが特に望ましい。
【0150】
溶液
本明細書に記載の組成物及び方法は、フッ素化トリアリールボランルイス酸を触媒として使用する。これらのフッ素化トリアリールボランルイス酸は、FABよりも良好な反応速度制御を提供する。
【0151】
用語の定義及び使用
本明細書で使用される略語は、以下の表5の定義を有する。
【0152】
【表5】
【0153】
全ての量、比及び百分率は、特に指示しない限り、重量に基づく。組成物中の全ての出発物質の量は、総計100重量%である。「発明の概要」及び「要約書」は、参照により本明細書に組み込まれる。冠詞「a」、「an」、及び「the」は各々、明細書の文脈によって特に指示されない限り、1つ以上を指す。単数形は、別途記載のない限り、複数形を含む。範囲の開示は、その範囲自体及び範囲内に包含される任意のもの、並びに端点を含む。例えば、2.0~4.0の範囲の開示は、2.0~4.0の範囲だけでなく、2.1、2.3、3.4、3.5、及び4.0も個別に含み、並びに範囲内に包含される任意の他の数も含む。更に、例えば、2.0~4.0の範囲の開示は、例えば、2.1~3.5、2.3~3.4、2.6~3.7、及び3.8~4.0の部分集合、並びにその範囲内に包含される任意の他の部分集合も含む。同様に、マーカッシュ群の開示は、その群全体を含み、そこに包含される任意の個別の要素及び下位群も含む。例えば、マーカッシュ群「水素原子、アルキル基、アルケニル基又はアリール基」の開示には、その要素である個々のアルキル、下位群であるアルキル及びアリールを含み、かつマーカッシュ群に包含される任意の他の個々の要素及び下位群を含んでいる。
【0154】
用語「含むこと(comprising)」及びその派生語、例えば「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」は、本明細書において、それらの最も広い意味で、「含むこと(including)」、「含む(include)」、「から本質的になる(consist(ing)essentially of)」、及び「からなる(consist(ing)of)」)という見解を意味し、包含するように使用されている。実例を列記する「例えば(for example)」「例えば(e.g.,)」、「例えば(such as)」及び「が挙げられる(including)」の使用は、列記されている例のみに限定しない。したがって、「例えば(for example)」又は「例えば/など(such as)」は、「例えば、それらに限定されないが(for example, but not limited to)」又は「例えば、それらに限定されないが(such as, but not limited to)」を意味し、他の類似した、又は同等の例を包含する。
【0155】
全般的に、本明細書で使用されている、ある範囲の値におけるハイフン「-」又は波線「~」は、「まで(to)」又は「から(through)」であり、「>」は「~を上回る(above)」又は「超(greater-than)」であり、「≧」は「少なくとも(at least)」又は「以上(greater-than or equal to)」であり、「<」は「~を下回る(below)」又は「未満(less-than)」であり、「≦」は「多くとも(at most)」又は「以下(less-than or equal to)」である。前述の特許出願、特許、及び/又は特許公開の各々は、個別の基準で、1つ以上の非限定的な実施形態における参照により明示的にその全体が本明細書に組み込まれる。
【0156】
添付の特許請求の範囲は、「発明を実施するための形態」を表現するために、かつそこに記載される特定の化合物、組成物、又は方法に限定されず、添付の特許請求の範囲の範疇の特定の実施形態間で異なり得ることを理解されたい。