(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-17
(45)【発行日】2025-07-28
(54)【発明の名称】ヘッドレスト及び車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/879 20180101AFI20250718BHJP
A47C 7/38 20060101ALI20250718BHJP
【FI】
B60N2/879
A47C7/38
(21)【出願番号】P 2021209613
(22)【出願日】2021-12-23
【審査請求日】2024-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 広志
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 哲樹
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-030711(JP,A)
【文献】特開2009-207614(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/879
A47C 7/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートのシートバックの上方側に設けられ、発泡材で形成されシートクッションに着座した乗員の頭部を支持するヘッドレストパッドと、
前記ヘッドレストパッドの骨格部材とされて当該ヘッドレストパッドと一体に成形され、前記ヘッドレストパッドから露出しシート幅方向に沿って配置された一対の脚部が前記シートバックの上端部に取り付けられたヘッドレストステーと、
複数の表皮片が縫製されて形成され、前記ヘッドレストパッドを被覆するヘッドレスト表皮と、
前記ヘッドレストパッドと一体に設けられ、ヘッドレスト本体の製品情報が記録され
シート本体の内部に収容されたまま外部から読み取りが可能な製品情報タグと、
を有
し、
前記製品情報タグは、RFIDタグとされ、前記RFIDタグは、前記ヘッドレスト表皮と共に前記ヘッドレストパッドと一体に成形され、前記ヘッドレストパッドを形成する材料を注入する注入口の少なくとも一部を形成する前記表皮片に対して、ヘッドレストパッドを形成する材料の流動方向に沿って配置されるように縫製されているヘッドレスト。
【請求項2】
前記RFIDタグは、前記ヘッドレスト表皮の底マチ部において設けられている請求項1に記載のヘッドレスト。
【請求項3】
前記底マチ部に前記ヘッドレストパッドを形成する材料を注入する注入口が設けられている請求項2に記載のヘッドレスト。
【請求項4】
前記RFIDタグは、
シート上下方向に沿って設けられている請求項
1~請求項3
の何れか1項に記載のヘッドレスト。
【請求項5】
シートクッションに着座した乗員の上体を支持するシートバックと、
前記シートバックの上方側に配設され、請求項1~請求項4の何れか1項に記載のヘッドレストと、
を備えた車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドレスト及び車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、材質等の仕様が異なる複数の種類を有する車両用シートのヘッドレストに関する技術が開示されている。具体的に説明すると、この先行技術では、ヘッドレストの底面に凹部が形成されており、凹部の寸法、形状、数、形成位置等によってヘッドレストの材質、表面処理等の種類の識別を可能とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の先行技術では、種類の識別に応じて寸法、形状、数、形成位置を変えた凹部をヘッドレストの底面に形成する必要があり、ヘッドレストの美観を損なう可能性が生じる。つまり、この先行技術では、外観上の観点からさらなる改善の余地がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、美観を損なうことなく、簡単な作業でヘッドレスト本体の仕様の識別が可能なヘッドレスト及び車両用シートを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明に係るヘッドレストは、車両用シートのシートバックの上方側に設けられ、発泡材で形成されシートクッションに着座した乗員の頭部を支持するヘッドレストパッドと、前記ヘッドレストパッドの骨格部材とされて当該ヘッドレストパッドと一体に成形され、前記ヘッドレストパッドから露出しシート幅方向に沿って配置された一対の脚部が前記シートバックの上端部に取り付けられたヘッドレストステーと、複数の表皮片が縫製されて形成され、前記ヘッドレストパッドを被覆するヘッドレスト表皮と、前記ヘッドレストパッドと一体に設けられ、ヘッドレスト本体の製品情報が記録され外部から読み取りが可能な製品情報タグと、を有し、前記製品情報タグは、RFIDタグとされ、前記RFIDタグは、前記ヘッドレスト表皮と共に前記ヘッドレストパッドと一体に成形され、前記ヘッドレストパッドを形成する材料を注入する注入口の少なくとも一部を形成する前記表皮片に対して、ヘッドレストパッドを形成する材料の流動方向に沿って配置されるように縫製されている。
【0007】
請求項1に記載の発明に係るヘッドレストは、ヘッドレストパッド、ヘッドレストステー、ヘッドレスト表皮及び製品情報タグを備えている。
【0008】
当該ヘッドレストパッドは、車両用シートのシートバックの上方側に設けられており、発泡材で形成されシートクッションに着座した乗員の頭部を支持する。当該ヘッドレストステーは、ヘッドレストパッドの骨格部材とされており、当該ヘッドレストパッドと一体に成形されている。また、ヘッドレストステーは、シート幅方向に沿って配置された一対の脚部がヘッドレストパッドから露出しており、当該一対の脚部がシートバックの上端部に取り付けられている。当該ヘッドレスト表皮は、複数の表皮片が縫製されて形成されており、当該ヘッドレスト表皮によってヘッドレストパッドが被覆されている。
【0009】
ここで、本発明では、ヘッドレスト本体の製品情報が記録され外部から読み取りが可能な製品情報タグがヘッドレストパッドと一体(一体成形、接着等)に設けられている。ヘッドレスト本体の製品情報とは、例えば、ヘッドレスト本体の仕様(適用車種等)に対応した情報のことであり、使用された部品の番号(部品番号)、製造ロット等が記録される。
【0010】
当該製品情報タグは、外部からの読み取りが可能なため、製品情報タグがヘッドレスト本体の内部に収容された状態でも、当該製品情報タグに書き込まれた製品情報を読み取ることができる。
【0011】
このように、本発明では、ヘッドレスト本体の製品情報を読み取るために外部からの読み取りが可能な製品情報タグを用いることによって、当該製品情報タグをヘッドレスト表皮の裏面側やヘッドレストパッドの内部に設けることができる。これにより、本発明では、ヘッドレスト本体の製品情報を読み取るためにヘッドレスト表皮を外す必要はない。
【0012】
以上のように、本発明では、簡単な作業でヘッドレスト本体の製品情報の識別を行うことができる。このため、ヘッドレスト本体の製品情報の識別に伴う作業効率が向上する。また、ヘッドレスト本体の製品情報をヘッドレスト本体自体の形状等に依存することはないため、作業者による識別ミスを抑制することが可能となる。
【0013】
したがって、本発明では、ヘッドレスト本体の製品情報の識別に伴う作業工数を削減することができ、結果的に、ヘッドレスト本体のコストの増大を抑制することが可能となる。
【0014】
また、本発明では、前記製品情報タグは、RFIDタグとされている。
【0015】
RFIDは、「Radio Frequency Identification」の略であり、RFIDタグはRFタグとも称され、当該RFIDタグに記録された電子情報は、読み書き可能な装置であるRFIDリーダーによってRFIDリーダーの電波の届く範囲で読み書き可能とされる。
【0016】
このため、RFIDタグを付けることで、RFIDリーダーの電波の届く範囲では、当該RFIDタグがヘッドレスト本体の内部に収容された状態でもRFIDタグに書き込まれた製品情報を読み取ることができる。また、RFIDタグに製品情報を書き込むことも可能であり、製品情報を追加、更新することも可能である。
【0017】
さらに、本発明では、前記RFIDタグは、前記ヘッドレスト表皮と共に前記ヘッドレストパッドと一体に発泡成形されている。
【0018】
前述のように、RFIDリーダーの電波の届く範囲では当該RFIDタグがヘッドレスト本体の内部に収容された状態でもRFIDタグに書き込まれた製品情報を読み取ることができる。
【0019】
本発明では、ヘッドレスト表皮と共にヘッドレストパッドと一体にRFIDタグを発泡成形することで、ヘッドレストパッドにヘッドレスト表皮を被せる工程を削減することができ、作業工数を低減することができる。
また、本発明では、RFIDタグは、ヘッドレストパッドを形成する材料を注入する注入口の少なくとも一部を形成する前記表皮片に対して、ヘッドレストパッドを形成する材料の流動方向に沿って配置されるように縫製されている。これにより、本発明では、ヘッドレストパッドの成形時においてヘッドレストパッドを成形する材料の流動方向に沿ってより確実にRFIDタグの向きを設定することができ、より効果的にRFIDタグの捩れ又は折れ等を抑制することができる。
【0020】
請求項2に記載の発明に係るヘッドレストは、請求項1に記載の発明に係るヘッドレストにおいて、前記RFIDタグは、前記ヘッドレスト表皮の底マチ部に設けられている。
【0021】
請求項2に記載の発明に係るヘッドレストでは、人や物が直接当たらない部位であるヘ
ッドレスト表皮の底マチ部にRFIDタグが設けられることによって、RFIDタグに対して人や物が衝突することを防ぎ、RFIDタグの破損リスクを低減することが可能となる。
【0022】
請求項3に記載の発明に係るヘッドレストは、請求項2に記載のヘッドレストにおいて、前記底マチ部に前記ヘッドレストパッドを形成する材料を注入する注入口が設けられている。
【0023】
請求項3に記載の発明に係るヘッドレストでは、ヘッドレスト表皮の底マチ部にヘッドレストパッドを形成する材料を注入する注入口が設けられているため、ヘッドレストパッドの成形時には、当該注入口を介してヘッドレストパッドを成形する材料が注入される。
【0024】
したがって、本発明では、ヘッドレストパッドを成形する材料は、ヘッドレストパッドの底面側からヘッドレストパッドの上端側へ向かって、シート上下方向に沿って流動することになる。
【0025】
請求項4に記載の発明に係るヘッドレストは、請求項1~請求項3の何れか1項に記載のヘッドレストにおいて、前記RFIDタグは、シート上下方向に沿って設けられている。
【0026】
前述のように、RFIDタグは、ヘッドレストパッドと一体に成形されている。ヘッドレストパッドを成形する金型において、発泡材の材料を注入するゲート部は、一般にヘッドレストパッドの底面側に設けられる。このため、当該ゲート部を通じて金型内に注入された材料は、ヘッドレストパッドの底面側(ヘッドレスト表皮の底マチ部に設けられた注入口)からヘッドレストパッドの上端側へ向かって、シート上下方向に沿って流動することになる。
【0027】
請求項4に記載の発明に係るヘッドレストでは、RFIDタグが、シート上下方向に沿って設けられているため、RFIDタグは、ヘッドレストパッドを成形する金型内を流動する材料の流動方向に沿って設けられていることになる。このため、ヘッドレストパッドの成形時において、RFIDタグが捩れたり折れたりしないようにすることができ、RFIDタグの破損を抑制することが可能となる。
【0030】
請求項5に記載の発明に係る車両用シートは、シートクッションに着座した乗員の上体を支持するシートバックと、前記シートバックの上方側に配設され、請求項1~請求項4の何れか1項に記載のヘッドレストと、を備えている。
【0031】
請求項5に記載の発明に係る車両用シートでは、シートクッションに着座した乗員の上体を支持するシートバックの上方側に配設されたヘッドレスト内には、RFIDタグが設けられており、ヘッドレストの外部から当該ヘッドレストの製品情報を得ることが可能と
なる。
【発明の効果】
【0032】
以上説明したように、本発明に係るヘッドレスト及び車両用シートでは、美観を損なうことなく、簡単な作業でヘッドレスト本体の製品情報の識別を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本実施形態に係るヘッドレストの正面図である。
【
図2】
図1で示すA-A線に沿って切断したときの断面図である。
【
図3】
図2の要部を拡大して示す要部拡大断面図である。
【
図4】本実施形態に係るヘッドレストに設けられたRFIDタグによって管理される情報例である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を用いて本発明の実施形態に係るヘッドレストについて説明する。なお、各図中に適宜示される矢印FR、UP、RHは、ヘッドレストの前方、上方、右方をそれぞれ示している。以下、単に前後左右上下の方向を用いて説明する場合、特に断りのない限り、ヘッドレストに対する方向を示すものとする。また、各図においては、図面を見易くする関係から、一部の符号を省略している場合がある。
【0035】
(ヘッドレストの構成)
まず、本発明の実施形態に係るヘッドレストの構成について説明する。
【0036】
図1に示されるように、本実施形態に係るヘッドレスト10は、骨格部材であるヘッドレストステー12と、パッド材であるヘッドレストパッド14と、ヘッドレスト表皮16とを備えている。
【0037】
ヘッドレストステー12は、例えば金属製のパイプ材が略逆U字状に曲げられたものであり、ヘッドレスト上下方向に延びる左右一対の脚部12L、12Rと、左右一対の脚部12L、12Rの上端部をヘッドレスト左右方向に繋いだ連結部12U(
図2参照)と、備えている。
【0038】
ヘッドレストパッド14は、例えばウレタンフォーム等の発泡材によって形成されている。このヘッドレストパッド14には、ヘッドレストステー12の上部側が埋設されている。左右の脚部12L、12Rの下部側は、ヘッドレストパッド14からヘッドレスト10の下方側へ延びており、車両用シート11のシートバック18の上端部18Aに連結される。このヘッドレストステー12によってヘッドレストパッド14が支持される。
【0039】
図2に示されるように、ヘッドレスト表皮16は、ヘッドレストパッド14と一体に発泡成形(成形)されており、例えば、表層20と、中間層22と、裏層(図示省略)と、を含んで構成されている。
【0040】
表層20は、ヘッドレスト表皮16の意匠面16A側に設けられており、布系又はレザー系が用いられる。中間層22には、ワディング材が用いられる。裏層には、ウレタン系、オレフィン系等のフィルムが用いられており、裏層を設けることによって、パッド材としてのウレタンを発泡させる際に、ウレタンを表層側に含浸させないようにすることができる。これにより、ウレタンの含浸によるヘッドレスト表皮16の硬化を防ぐことができる。
【0041】
また、ヘッドレスト表皮16は、複数の表皮片(後述する前面表皮片16B、背面表皮片16C等)が縫製されて形成されており、当該ヘッドレスト表皮16によってヘッドレストパッド14は被覆されている。
【0042】
ヘッドレスト表皮16について具体的に説明すると、例えば、ヘッドレストパッド14の前面14A側には前面表皮片16Bが設けられており、ヘッドレストパッド14の後面14B側には背面表皮片16Cが設けられている。前面表皮片16Bの上端部16B1と背面表皮片16Cの上端部16C1は縫製部24によって縫製されており、当該縫製部24を介して前面表皮片16Bと背面表皮片16Cが繋がっている。
【0043】
前面表皮片16Bの下端部16B2には、縫製部26を介して前側底面表皮片(底マチ部)16Dの前端部16D1が繋がっている。一方、背面表皮片16Cの下端部16C2には、縫製部28を介して後側底面表皮片(底マチ部)16Eの後端部16E1が繋がっている。
【0044】
そして、前側底面表皮片16Dの後端部16D2と後側底面表皮片16Eの前端部16E2とが図示しない縫製部を介して繋がっている。但し、ヘッドレスト表皮16の前側底面表皮片16Dの後端部16D2及び後側底面表皮片16Eの前端部16E2によってヘッドレストステー12の脚部12Lと脚部12R(
図1参照)の間には、ヘッドレストパッド14を形成する材料が注入される注入口32が形成されている。このため、当該縫製部は、注入口32よりもシート幅方向の外側において設けられることになる。
【0045】
なお、
図2、
図3において、前側底面表皮片16Dと後側底面表皮片16Eの間には注入口32を示す隙間が設けられているが、これは縫製部30の端末を分かりやすく示すためのものであり、実際にはこの隙間は略形成されない状態となっている。
【0046】
一方、
図3に示されるように、本実施形態では、注入口32の一部を構成する後側底面表皮片16Eに対してRFIDタグ(製品情報タグ)34が縫製部30を介して縫製されている。なお、当該RFIDタグ34は、注入口32の一部を構成する前側底面表皮片16D側に縫製されてもよく、さらには注入口32とは関係なく後側底面表皮片16E及び前側底面表皮片16D以外の表皮片に縫製されてもよい。
【0047】
ここで、RFIDタグ34は、「ICタグ」と「RFIDリーダー(読み取り装置)」の間で電磁波、電波を送受信し、非接触でICタグの中の情報を読んだり書き換えたりするシステムの総称であり、電磁波、電波を用いて、内蔵したメモリのデータを非接触で読み書きする情報媒体である。
【0048】
本実施形態では、例えば、
図4に示されるように、サイドエアバッグの製造番号(SAB番号)、着座センサの部品番号や製造ロット、ヘッドレスト10の仕様に合わせた検査結果、当該ヘッドレスト10が対応する車種の車両用シートの識別番号等がそれぞれ電子情報として記録されており、仕向先や製造会社の識別が可能とされている。なお、ヘッドレスト10の仕様に関する情報についてはこれに限るものではない。
【0049】
(ヘッドレストの作用及び効果)
次に、本発明の実施形態に係るヘッドレストの作用及び効果について説明する。
【0050】
図1、
図2に示されるように、本実施形態では、ヘッドレスト表皮16と共にヘッドレスト10の製品情報が記録されたRFIDタグ34がヘッドレストパッド14と一体に発泡成形されている。
【0051】
このように、ヘッドレスト10の製品情報を識別するためにRFIDタグ34を用いることによって、図示はしないがRFIDリーダーの電波の届く範囲では当該RFIDタグ34がヘッドレストの内部に収容された状態でもRFIDタグ34に書き込まれた製品情報を読み取ることができる。
【0052】
したがって、本実施形態では、ヘッドレスト10の製品情報を読み取るためにRFIDタグ34を用いることによって、当該RFIDタグ34をヘッドレスト表皮16の裏面側やヘッドレストパッド14の内部に設けることができる。
【0053】
これにより、本実施形態では、ヘッドレスト10の製品情報を読み取るためにヘッドレスト表皮16を外す必要はない。このように、本実施形態では、簡単な作業でヘッドレスト10の製品情報の識別を行うことができる。このため、ヘッドレスト10の製品情報の識別に伴う作業効率が向上する。
【0054】
また、本実施形態では、ヘッドレスト10の製品情報をヘッドレスト10自体の形状等に依存することはないため、作業者による識別ミスを抑制することが可能となる。
【0055】
したがって、本実施形態では、ヘッドレスト10の製品情報の識別に伴う作業工数を削減することができ、結果的に、ヘッドレスト10のコストの増大を抑制することが可能となる。
【0056】
また、ヘッドレスト10の製品情報を読み取るためにRFIDタグ34を用いることによって、図示はしないが、当該RFIDタグ34をヘッドレスト表皮16の背面表皮片16C側やヘッドレストパッド14の内部に設けることができる。
【0057】
したがって、本実施形態では、美観を損なうことなく、簡単な作業でヘッドレスト10の製品情報の識別を行うことができる。
【0058】
また、本実施形態では、製品情報を読み取るための製品情報タグとして、RFIDタグ34を用いることによって、記録された製品情報に対して、追加、更新することも可能であるため、汎用性が高い。
【0059】
さらに、本実施形態では、RFIDタグ34は、ヘッドレスト表皮16と共にヘッドレストパッド14と一体に発泡成形されている。このため、ヘッドレストパッド14にヘッドレスト表皮16を被せる工程を削減することができ、作業工数を低減することができる。
【0060】
また、本実施形態では、RFIDタグ34は、ヘッドレスト表皮16の前側底面表皮片16D及び後側底面表皮片16Eで構成された底マチ部16Fに設けられている。この底マチ部16Fは、人や物が直接当たらない部位である。
【0061】
このため、当該底マチ部16FにRFIDタグ34が設けられることによって、RFIDタグ34に対して人や物が衝突することを防ぎ、RFIDタグ34の破損リスクを低減することが可能となる。
【0062】
ここで、ヘッドレスト表皮16の底マチ部16Fにヘッドレストパッド14を形成する材料を注入する注入口32が設けられている。つまり、ヘッドレストパッド14の成形時には、当該注入口32を介してヘッドレストパッド14を成形する材料が注入される。
【0063】
したがって、ヘッドレストパッド14を成形する材料は、ヘッドレストパッド14の底面14C側からヘッドレストパッド14の上部14D側へ向かって、シート上下方向に沿って流動することになる。
【0064】
本実施形態では、RFIDタグ34は、ヘッドレストパッド14と一体に成形されている。図示はしないが、ヘッドレストパッド14を成形する金型において、発泡材の材料を注入するゲート部は、一般にヘッドレストパッド14の底面14C側に設けられる。このため、当該ゲート部を通じて金型内に注入された材料は、ヘッドレストパッド14の底面14C側からヘッドレストパッド14の上部14D側へ向かって、シート上下方向に沿って流動することになる。
【0065】
本実施形態では、RFIDタグ34が、シート上下方向に沿って設けられているため、当該RFIDタグ34は、ヘッドレストパッド14を成形する金型内を流動する材料の流動方向に沿って設けられている。
【0066】
このため、ヘッドレストパッド14の成形時において、RFIDタグ34が捩れたり折れたりしないようにすることができ、RFIDタグ34の破損を抑制することが可能となる。
【0067】
また、本実施形態では、RFIDタグ34は、注入口32の一部を構成する後側底面表皮片16Eに縫製されている。前述のように、ヘッドレストパッド14の成形時には、当該注入口32を介してヘッドレストパッド14を成形する材料が注入される。
【0068】
このため、注入口32の一部を構成する後側底面表皮片16EにRFIDタグ34が縫製されることによって、ヘッドレストパッドの成形時において材料の注入と略同時にヘッドレストパッドを成形する材料の流動方向に沿ってRFIDタグの向きを設定することができ、より効果的にRFIDタグの捩れ又は折れ等を抑制することができる。
【0069】
本実施形態では、RFIDタグ34が縫製されたヘッドレスト表皮16がヘッドレストパッド14と一体に発泡成形された例について説明したが、当該ヘッドレスト表皮16は、必ずしもヘッドレストパッド14と一体に発泡成形される必要はない。
【0070】
また、本実施形態では、RFIDタグ34は、ヘッドレスト表皮16に対して縫製されているが、RFIDタグ34がヘッドレストパッド14と一体に設けられていればよいため、ヘッドレスト表皮16に対して必ずしも縫製される必要はない。したがって、RFIDタグ34は、ヘッドレストパッド14に対して接着されてもよい。また、製品情報タグは、ヘッドレスト10の外部から読み取ることができればよいため、必ずしもRFIDタグ34である必要はない。
【0071】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことは勿論である。
【符号の説明】
【0072】
10 ヘッドレスト
11 車両用シート
12 ヘッドレストステー
12L 脚部
12R 脚部
14 ヘッドレストパッド
16 ヘッドレスト表皮
16D 前側底面表皮片(底マチ部)
16E 後側底面表皮片(底マチ部)
16F 底マチ部
18 シートバック
18A 上端部(シートバックの上端部)
30 縫製部
32 注入口
34 RFIDタグ(製品情報タグ)