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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-18
(45)【発行日】2025-07-29
(54)【発明の名称】ストーブ
(51)【国際特許分類】
   F24B 1/02 20060101AFI20250722BHJP
   F24B 5/02 20060101ALI20250722BHJP
   F23B 60/00 20060101ALI20250722BHJP
   F23L 15/00 20060101ALI20250722BHJP
【FI】
F24B1/02 C
F24B5/02 F
F23B60/00
F23L15/00 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023191991
(22)【出願日】2023-11-10
(65)【公開番号】P2025079390
(43)【公開日】2025-05-22
【審査請求日】2025-06-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518036740
【氏名又は名称】田山 祐智
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田山 祐智
【審査官】柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0196637(US,A1)
【文献】国際公開第2011/082936(WO,A1)
【文献】特開2014-020573(JP,A)
【文献】特開2019-138575(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第708298(EP,A2)
【文献】米国特許第10041682(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24B 1/02
F24B 5/02
F23B 60/00
F23L 15/00 - 17/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体燃料を燃焼させるための燃焼室を有した本体を備え、該本体の燃焼室に燃焼用空気を供給して固体燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成し煙突から排気するとともに、上記燃焼用空気と上記燃焼ガスとの熱交換を行って該燃焼用空気を加温する熱交換部を備えたストーブにおいて、
上記熱交換部を、上記燃焼室内に収容される収容部位を有し上記本体の外部から燃焼用空気を流入させる流入口及び上記燃焼室側に燃焼用空気を流出させる流出口を有した金属製の外筒と、該外筒の流入口側に位置する一端開口及び上記外筒の流出口側に位置する他端開口を有し外面が上記外筒の内面と離間して該外筒内に挿通される金属製の内筒とを備えて構成し、上記外筒の収容部位を構成する壁部とこれに対応した上記内筒を構成する壁部との間に所要の間隔を隔てて複数の金属製の管体を架設し、上記外筒の外面に上記管体内に連通し上記燃焼室に開口する外開口を形成し、上記内筒の内面に上記管体内に連通し該内筒の内部に開口する内開口を形成し、上記内筒の一端開口及び/または他端開口を上記煙突に接続し、上記内筒の一端開口及び他端開口の何れか一方を上記煙突に接続するときは該煙突に接続されない該一端開口及び他端開口の何れか他方を閉塞し、上記外開口から内開口を経て上記煙突に至る空間を燃焼ガスが通過可能なガス通過空間として構成し、上記外筒の内面と上記内筒の外面との間であって上記流入口から流出口に至る空間を燃焼用空気が通過可能な空気通過空間として構成したことを特徴とするストーブ。
【請求項2】
上記本体を、上記燃焼室を囲繞して形成する金属製の底壁部,天井壁部及び側壁部を備えて構成し、上記側壁部及び/または天井壁部に上記燃焼室に固体燃料を入れるための開閉体で開閉可能な開口部を設け、
上記本体の底壁部及び/または側壁部を壁板を2重にして該2重の壁板間に燃焼用空気が流通可能な空気流通空間を形成し、
上記外筒を一方開口と他方開口を有した筒状に形成し、該外筒を、その一方開口が上記本体の外方に臨み、その他方開口が上記空気流通空間に臨むように設け、上記流入口を一方開口で構成し、上記流出口を他方開口で構成し、
上記空気流通空間を構成する本体の底壁部及び/または側壁部に、上記空気流通空間からの燃焼用空気を上記燃焼室に吹き出す吹出口を形成したことを特徴とする請求項1記載のストーブ。
【請求項3】
上記底壁部を、下壁板と該下壁板の上に所定間隔を隔てて設けられる上壁板とを備えて2重に形成し、該下壁板と上壁板との間に上記空気流通空間を形成し、上記上壁板に上記外筒の他方開口側を接合して該上壁板に該外筒を立設し、上記天井壁部に上記外筒の一方開口が上記本体の外方に臨む上側貫通口を形成し、上記底壁部の上壁板に上記外筒の他方開口が上記空気流通空間に臨む下側貫通口を形成し、上記吹出口を上記上壁板の上記側壁部側の端縁と該側壁部との間に形成したことを特徴とする請求項2記載のストーブ。
【請求項4】
上記本体を、正面と背面を有して構成し、上記開口部を上記本体の正面の側壁部に設け、上記外筒及び内筒を背面の側壁部に接触若しくは近接して設け、上記吹出口を、上記正面側の上壁板の端縁と正面側の側壁部との間に形成したことを特徴とする請求項3記載のストーブ。
【請求項5】
上記吹出口を形成する上壁板の端縁のある端部を側面から見て正面側に凸になるように湾曲させて立ち上げ形成したことを特徴とする請求項4記載のストーブ。
【請求項6】
上記上壁板に、固体燃料を支持可能で、面方向が垂直方向に沿う支持板を所定間隔で複数設けたことを特徴とする請求項5記載のストーブ。
【請求項7】
上記外筒及び内筒を円筒状に形成し、該外筒及び内筒の中心線が同軸になるように配置し、上記複数の管体を、夫々、その軸線が上記外筒及び内筒の中心線に交差且つ直交するように設けたことを特徴とする請求項1乃至6何れかに記載のストーブ。
【請求項8】
上記管体を、上記外筒及び内筒の中心線方向に沿って等間隔に複数設けて、該管体の管体列を構成し、該管体列を、上記外筒及び内筒の周方向に沿って所要間隔で複数列設けたことを特徴とする請求項7記載のストーブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薪等の固体燃料を燃焼させて主に暖房用に用いるストーブに係り、特に、固体燃料を燃焼させるに必要な燃焼用空気を予熱して供給するストーブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のストーブとして、例えば、特開2010-133697号公報(特許文献1)に掲載されたものが知られている。
このストーブは、薪やペレット等の固体燃料を燃焼させるための燃焼室を有した本体を備え、この本体の燃焼室に燃焼用空気を供給して固体燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成し煙突から排気する。本体には、燃焼用空気と燃焼ガスとの熱交換を行って燃焼用空気を加温して予熱する熱交換部が備えられている。
【0003】
この熱交換部は、燃焼室内に収容される収容部位を有し本体の外部から燃焼用空気を流入させる流入口及び燃焼室側に燃焼用空気を流出させる流出口を有した金属製の外筒と、この外筒の流入口側に位置する一端開口及び外筒の流出口側に位置する他端開口を有し外面が外筒の内面と離間して外筒内に挿通される金属製の内筒とを備え、この外筒と内筒とで2重筒部を形成して構成されている。そして、内筒の一端開口を煙突に接続し、外筒を通して燃焼用空気を燃焼室に供給し、この燃焼室において、固体燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成し、その後、内筒を通して煙突から排気するようにしている。この固体燃料の燃焼においては、熱交換部の外筒と内筒とで形成される2重筒部で、燃焼用空気と燃焼ガスとの熱交換を行い、燃焼用空気を加温して予熱し、固体燃料の燃焼効率を良くするようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-133697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来のストーブにあっては、熱交換部の外筒と内筒とで形成される2重筒部で、燃焼用空気と燃焼ガスとの熱交換を行い、燃焼用空気を加温して予熱し、固体燃料の燃焼効率を良くするようにしているが、燃焼用空気が外筒の内面と内筒の外面に接触するだけなので、必ずしも、熱交換効率が良いとはいえないという問題があった。
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、燃焼用空気と燃焼ガスとの熱交換効率の向上を図り、固体燃料の燃焼効率の向上を図ったストーブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するため、本発明のストーブは、固体燃料を燃焼させるための燃焼室を有した本体を備え、該本体の燃焼室に燃焼用空気を供給して固体燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成し煙突から排気するとともに、上記燃焼用空気と上記燃焼ガスとの熱交換を行って該燃焼用空気を加温する熱交換部を備えたストーブにおいて、
上記熱交換部を、上記燃焼室内に収容される収容部位を有し上記本体の外部から燃焼用空気を流入させる流入口及び上記燃焼室側に燃焼用空気を流出させる流出口を有した金属製の外筒と、該外筒の流入口側に位置する一端開口及び上記外筒の流出口側に位置する他端開口を有し外面が上記外筒の内面と離間して該外筒内に挿通される金属製の内筒とを備えて構成し、上記外筒の収容部位を構成する壁部とこれに対応した上記内筒を構成する壁部との間に所要の間隔を隔てて複数の金属製の管体を架設し、上記外筒の外面に上記管体内に連通し上記燃焼室に開口する外開口を形成し、上記内筒の内面に上記管体内に連通し該内筒の内部に開口する内開口を形成し、上記内筒の一端開口及び/または他端開口を上記煙突に接続し、上記内筒の一端開口及び他端開口の何れか一方を上記煙突に接続するときは該煙突に接続されない該一端開口及び他端開口の何れか他方を閉塞し、上記外開口から内開口を経て上記煙突に至る空間を燃焼ガスが通過可能なガス通過空間として構成し、上記外筒の内面と上記内筒の外面との間であって上記流入口から流出口に至る空間を燃焼用空気が通過可能な空気通過空間として構成している。
【0007】
ここで、管体は、所要の間隔を隔てて複数設けられるが、所要の間隔やその数は、適宜に定めてよい。また、内筒と煙突との接続の態様は、図6(a)に示すように、内筒の一端開口及び他端開口を夫々煙突に接続し、あるいは、図6(b)に示すように、内筒の一端開口に煙突を接続するとともに他端開口を閉塞し、あるいはまた、図6(c)に示すように、内筒の一端開口を閉塞するとともに他端開口に煙突を接続する何れかの態様を採用することができ、適宜変更して差支えない。
【0008】
これにより、固体燃料の燃焼の際には、燃焼用空気が熱交換部の外筒の流入口から流入して流出口から流出して燃焼室内に供給され、固体燃料が燃焼させられる。この固体燃料の燃焼により生じる燃焼ガスは、外筒に形成された外開口から管体を通って内開口を経て内筒内に入り、内筒を通って煙突から排気されていく。即ち、燃焼ガスは熱交換部のガス通過空間を通過して煙突から排気され、燃焼用空気は熱交換部の空気通過空間を通過して燃焼室に供給され、この熱交換部において、燃焼用空気と燃焼ガスとの熱交換が行われる。そのため、燃焼用空気が加温して予熱される。この場合、燃焼用空気は、空気通過空間において、外筒の内面及び内筒の内面に接触するのみならず、管体の表面にも接触するので、従来に比較して燃焼ガスにより加熱された部位への接触面積が大きくなり、そのため、熱交換効率を向上させることができ、それだけ、固体燃料の燃焼効率を向上させることができる。また、燃焼ガスは複数の管体を通って内筒内に入るので、それだけ滞留時間が長くなり、ガス通過空間での二次燃焼を確実に行わせることができ、この点でも燃焼効率を向上させることができる。
【0009】
そして、必要に応じ、上記本体を、上記燃焼室を囲繞して形成する金属製の底壁部,天井壁部及び側壁部を備えて構成し、上記側壁部及び/または天井壁部に上記燃焼室に固体燃料を入れるための開閉体で開閉可能な開口部を設け、
上記本体の底壁部及び/または側壁部を壁板を2重にして該2重の壁板間に燃焼用空気が流通可能な空気流通空間を形成し、
上記外筒を一方開口と他方開口を有した筒状に形成し、該外筒を、その一方開口が上記本体の外方に臨み、その他方開口が上記空気流通空間に臨むように設け、上記流入口を一方開口で構成し、上記流出口を他方開口で構成し、
上記空気流通空間を構成する本体の底壁部及び/または側壁部に、上記空気流通空間からの燃焼用空気を上記燃焼室に吹き出す吹出口を形成した構成としている。
【0010】
これにより、燃焼用空気の流入口を外筒の一方開口で構成し、流出口を他方開口で構成したので、構造を簡単にすることができる。また、燃焼用空気は熱交換部において加温されて空気通過空間を構成する外筒の流出口から空気流通空間内に流出し、吹出口から燃焼室内に供給される。この場合、空気流通空間を燃焼室で加熱される本体の底壁部及び/または側壁部に形成したので、燃焼用空気が通過する際にここでもさらに加温され、また、本体の底壁部及び/または側壁部に吹出口を設けたので、吹出口を単に外筒の他方開口で構成する場合に比較して、吹出口を固体燃料の燃焼しやすいところに形成できることから、それだけ燃焼効率を向上させることができる。
【0011】
この構成においては、必要に応じ、上記底壁部を、下壁板と該下壁板の上に所定間隔を隔てて設けられる上壁板とを備えて2重に形成し、該下壁板と上壁板との間に上記空気流通空間を形成し、上記上壁板に上記外筒の他方開口側を接合して該上壁板に該外筒を立設し、上記天井壁部に上記外筒の一方開口が上記本体の外方に臨む上側貫通口を形成し、上記底壁部の上壁板に上記外筒の他方開口が上記空気流通空間に臨む下側貫通口を形成し、上記吹出口を上記上壁板の上記側壁部側の端縁と該側壁部との間に形成したことが有効である。吹出口が側壁部に沿って形成されるとともに、燃焼用空気が下から上に吹出すので、固体燃料の底壁部に対する支持を安定にして、より一層燃焼しやすくすることができ、この点でも燃焼効率を向上させることができる。
【0012】
また、必要に応じ、上記本体を、正面と背面を有して構成し、上記開口部を上記本体の正面の側壁部に設け、上記外筒及び内筒を背面の側壁部に接触若しくは近接して設け、上記吹出口を、上記正面側の上壁板の端縁と正面側の側壁部との間に形成した構成としている。正面側から背面側に燃焼用空気が供給されるので、固体燃料の燃焼を確実に行わせることができる。
【0013】
更に、必要に応じ、上記吹出口を形成する上壁板の端縁のある端部を側面から見て正面側に凸になるように湾曲させて立ち上げ形成した構成としている。吹出口からの燃焼用空気が湾曲した上壁板の端部と側壁部との間にガイドされて燃焼室内に供給されるので、吹出口が固体燃料によって塞がれにくくなり、固体燃料の燃焼をより一層確実に行わせることができる。
【0014】
更にまた、必要に応じ、上記上壁板に、固体燃料を支持可能で、面方向が垂直方向に沿う支持板を所定間隔で複数設けた構成としている。固体燃料が櫛歯状の支持板の上端縁に載置されるので、下から燃焼用空気が供給されやすくなり、この点でも、固体燃料の燃焼をより一層確実に行わせることができる。
【0015】
そしてまた、必要に応じ、上記外筒及び内筒を円筒状に形成し、該外筒及び内筒の中心線が同軸になるように配置し、上記複数の管体を、夫々、その軸線が上記外筒及び内筒の中心線に交差且つ直交するように設けた構成としている。これにより、各管体内を通った燃焼ガスは、内筒の中央部に合流・集中するため、燃焼温度が効果的に高まり、より一層、燃焼効率を向上させることができる。
この場合、上記管体を、上記外筒及び内筒の中心線方向に沿って等間隔に複数設けて、該管体の管体列を構成し、該管体列を、上記外筒及び内筒の周方向に沿って所要間隔で複数列設けた構成としたことが有効である。これにより、管体が、内筒の周囲に行列状に配置されるので、空気通過空間を通る燃焼用空気が満遍なく外管に接することになり、それだけ、燃焼ガスとの熱交換効率を向上させることができる。また、管体に連通する外開口が、外筒の外面に行列状に形成されるので、燃焼ガスが、外筒の周囲からムラなく内筒内に導かれることになり、燃焼ガスの流れが安定するので、この点でも、固体燃料の燃焼をより一層確実に行わせることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、熱交換部において、燃焼用空気と燃焼ガスとの熱交換が行われるが、この場合、燃焼用空気は、空気通過空間において、外筒の内面及び内筒の内面に接触するのみならず、管体の表面にも接触するので、従来に比較して燃焼ガスにより加熱された部位への接触面積が大きくなり、そのため、熱交換効率を向上させることができ、それだけ、固体燃料の燃焼効率を向上させることができる。また、燃焼ガスは複数の管体を通って内筒内に入るので、それだけ滞留時間が長くなり、ガス通過空間での二次燃焼を確実に行わせることができ、この点でも燃焼効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態に係るストーブを示す斜視図である。
図2】本発明の実施の形態に係るストーブを示す正面断面図である。
図3】本発明の実施の形態に係るストーブを示す側面断面図である。
図4】本発明の実施の形態に係るストーブを示す平面断面図である。
図5】本発明の実施の形態に係るストーブの熱交換部を示す一部切欠き斜視図である。
図6】本発明の実施の形態に係るストーブにおいて、熱交換部と煙突との接続態様を示し、(a)は内筒の一端開口及び他端開口を煙突に接続した図、(b)は内筒の一端開口を煙突に接続し他端開口を閉塞した図、(c)は内筒の他端開口を煙突に接続し一端開口を閉塞した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施の形態に係るストーブについて詳細に説明する。
図1乃至図5に示すように、本発明の実施の形態に係るストーブSは、薪などの固体燃料Wを燃焼させるための燃焼室Eを有した本体1を備え、この本体1の燃焼室Eに燃焼用空気を供給して固体燃料Wを燃焼させて燃焼ガスを生成し煙突2から排気するものである。本体1にはこれを支持する脚体3が設けられている。
【0019】
詳しくは、本体1は、燃焼室Eを囲繞して形成する鉄などの金属製の底壁部4,天井壁部5及び側壁部6を備え、正面と背面を有して構成されている。底壁部4及び天井壁部5は、上から見て半円形状に形成されており、背面側が湾曲形成されている。煙突2は、天井壁部5の上側であって、背面の中央に立設される。側壁部6は、底壁部4及び天井壁部5間に設けられ、背面側の側壁部6は底壁部4及び天井壁部5の湾曲形状に倣って湾曲形成されており、正面側の側壁部6は平板状に形成されている。側壁部6及び/または天井壁部5(実施の形態では正面側の側壁部6)には、燃焼室Eに固体燃料Wを入れるための開閉体7で開閉可能な開口部8が形成されている。開閉体7は、ヒンジにより開閉可能な扉で構成されている。
【0020】
実施の形態に係るストーブSには、燃焼用空気と燃焼ガスとの熱交換を行って燃焼用空気を加温する熱交換部Kが備えられている。熱交換部Kは、燃焼室E内に収容される収容部位Kaを有し本体1の外部から燃焼用空気を流入させる流入口11及び燃焼室E側に燃焼用空気を流出させる流出口12を有した鉄などの金属製の外筒10と、この外筒10の流入口11側に位置する一端開口21及び外筒10の流出口12側に位置する他端開口22を有し外面が外筒10の内面と離間して外筒10内に挿通される鉄などの金属製の内筒20とを備えて構成されている。外筒10及び内筒20は、円筒状に形成され、外筒10及び内筒20の中心線Pが同軸になるように配置されている。
【0021】
また、熱交換部Kにおいては、外筒10の収容部位Kaを構成する壁部とこれに対応した内筒20を構成する壁部との間に所要の間隔を隔てて複数の金属製の管体30が溶接等により架設されている。外筒10の外面には、管体30内に連通し燃焼室Eに開口する外開口31が形成され、内筒20の内面には、管体30内に連通し内筒20の内部に開口する内開口32が形成されている。これら複数の管体30は、夫々、その軸線Qが外筒10及び内筒20の中心線Pに交差且つ直交するように設けられている。また、管体30は、外筒10及び内筒20の中心線P方向に沿って等間隔に複数設けられ、管体30の管体列が構成され、この管体列は、外筒10及び内筒20の周方向に沿って所要間隔で複数列設けられている。実施の形態では、管体列(L1~L5)は、5つの管体30で構成され、全部で5列設けられている。隣接する管体列(L1~L5)の間隔は、図4に示すように、1つの管体列(L1:後述する外開口31が正面を向く管体列)に対して、左右にθ(60°)間隔で2列ずつ設けられている。
【0022】
そして、内筒20の一端開口21及び/または他端開口22は、煙突2に接続されており、内筒20の一端開口21及び他端開口22の何れか一方が煙突2に接続されるときは、煙突2に接続されない一端開口21及び他端開口22の何れか他方は、金属製の閉側板23で閉塞される。即ち、本発明においては、図6(a)に示すように、内筒20の一端開口21及び他端開口22の両方を煙突2に接続する態様、図6(b)に示すように、内筒20の一端開口21を煙突2に接続し他端開口22を閉側板23で閉塞する態様、図6(c)に示すように、内筒20の他端開口22を煙突2に接続し一端開口21を閉側板23で閉塞する態様を採用することができる。実施の形態においては、図1乃至図3に示すように、内筒20の一端開口21を接続管24を介して煙突2に接続し他端開口22を閉塞する態様(図6(b)の態様)を採用している。
【0023】
これにより、実施の形態では、外開口31から内開口32を経て煙突2に至る空間を燃焼ガスが通過可能なガス通過空間Gとして構成し、外筒10の内面と内筒20の外面との間であって流入口11から流出口12に至る空間を燃焼用空気が通過可能な空気通過空間Aaとして構成している。
【0024】
また、本体1の底壁部4及び/または側壁部6(実施の形態では底壁部4)は、壁板を2重にして形成されており、この2重の壁板間に燃焼用空気が流通可能な空気流通空間Abが形成されている。即ち、底壁部4は、下壁板4aとこの下壁板4aの上に所定間隔を隔てて設けられる上壁板4bとを備えて2重に形成されており、この下壁板4aと上壁板4bとの間に空気流通空間Abが形成されている。
【0025】
熱交換部Kにおいて、外筒10は、一方開口13と他方開口14を有した円筒状に形成されており、その一方開口13が本体1の外方に臨み、その他方開口14が空気流通空間Abに臨むように設けられ、流入口11が一方開口13で構成され、流出口12が他方開口14で構成されている。そして、外筒10及び内筒20は、本体1の背面の側壁部6に接触若しくは近接して設けられ、外筒10は、上壁板4bに外筒10の他方開口14側を接合して立設されている。天井壁部5には、外筒10の一方開口13が本体1の外方に臨む上側貫通口15が形成され、底壁部4の上壁板4bには、外筒10の他方開口14が空気流通空間Abに臨む下側貫通口16が形成されている。外筒10の一方開口13側は天井壁部5から僅かに突出しており、その外周部が天井壁部5の上側貫通口15に溶接固定されている一方、外筒10の他方開口14縁部は底壁部4の上壁板4bの下側貫通口16に溶接固定されている。また、外筒10は管体列L1の外開口31が正面を向くように設けられる。
【0026】
これにより、外筒10は底壁部4と天井壁部5に固定され、内筒20は管体30を介して外筒10に支持され、煙突2は接続管24を介して内筒20に支持されることになるので、内筒20及び煙突2を本体1に確実に支持することができる。
【0027】
更に、空気流通空間Abを構成する本体1の底壁部4及び/または側壁部6(実施の形態では底壁部4)には、空気流通空間Abからの燃焼用空気を燃焼室Eに吹き出す吹出口40が形成されている。吹出口40は、上壁板4bの側壁部6側の端縁41と側壁部6との間に形成されている。実施の形態では、吹出口40は、正面側の上壁板4bの端縁41と正面側の側壁部6との間に形成されている。また、図3に示すように、吹出口40を形成する上壁板4bの端縁41のある端部42は、側面から見て正面側に凸になるように湾曲させて立ち上げ形成されている。
【0028】
更にまた、上壁板4bには、固体燃料Wを支持可能で、面方向が垂直方向に沿う支持板50が所定間隔で複数設けられている。
【0029】
従って、この実施の形態に係るストーブSにより、薪等の固体燃料Wを燃焼させるときは、図1乃至図4に示すように、開閉体7を開けて開口部8から固体燃料Wを燃焼室Eに投入して着火する。この固体燃料Wの燃焼の際には、燃焼用空気が熱交換部Kの外筒10の流入口11から流入して外筒10の流出口12から空気流通空間Ab内に流出し、吹出口40から燃焼室E内に供給される。この固体燃料Wの燃焼により生じる燃焼ガスは、外筒10に形成された外開口31から管体30を通って内開口32を経て内筒20内に入り、内筒20を通って煙突2から排気されていく。即ち、燃焼ガスは熱交換部Kのガス通過空間Gを通過して煙突2から排気され、燃焼用空気は熱交換部Kの空気通過空間Aa及び空気流通空間Abを通過して燃焼室Eに供給され、この熱交換部Kにおいて、燃焼用空気と燃焼ガスとの熱交換が行われる。そのため、燃焼用空気が加温して予熱される。この場合、燃焼用空気は、空気通過空間Aaにおいて、外筒10の内面及び内筒20の内面に接触するのみならず、管体30の表面にも接触するので、従来に比較して燃焼ガスにより加熱された部位への接触面積が大きくなり、そのため、熱交換効率を向上させることができ、それだけ、固体燃料Wの燃焼効率を向上させることができる。また、燃焼ガスは複数の管体30を通って内筒20内に入るので、それだけ滞留時間が長くなり、ガス通過空間Gでの二次燃焼を確実に行わせることができ、この点でも燃焼効率を向上させることができる。
【0030】
また、複数の管体30は、夫々、その軸線Qが外筒10及び内筒20の中心線Pに交差且つ直交するように設けられているので、各管体30内を通った燃焼ガスは、内筒20の中央部に合流・集中するため、燃焼温度が効果的に高まり、より一層、燃焼効率を向上させることができる。更に、管体30の管体列(L1~L5)が、外筒10及び内筒20の周方向に沿って所要間隔で複数列設けられているので、管体30が、内筒20の周囲に行列状に配置されることになり、そのため、空気通過空間Aaを通る燃焼用空気が満遍なく外管に接することになり、それだけ、燃焼ガスとの熱交換効率を向上させることができる。また、管体30に連通する外開口31が、外筒10の外面に行列状に形成されるので、燃焼ガスが、外筒10の周囲からムラなく内筒20内に導かれることになり、燃焼ガスの流れが安定するので、この点でも、固体燃料Wの燃焼をより一層確実に行わせることができる。
【0031】
更に、この場合、空気流通空間Abを燃焼室Eで加熱される本体1の底壁部4及び/または側壁部6(実施の形態では底壁部4)に形成したので、燃焼用空気が通過する際にここでもさらに加温され、また、本体1の底壁部4及び/または側壁部6(実施の形態では底壁部4)に吹出口40を設けたので、吹出口40を単に外筒10の他方開口14で構成する場合に比較して、吹出口40を固体燃料Wの燃焼しやすいところに形成できることから、それだけ燃焼効率を向上させることができる。実施の形態では、吹出口40を、正面側の上壁板4bの端縁41と正面側の側壁部6との間に形成したので、正面側から背面側に燃焼用空気が供給されることから、固体燃料Wの燃焼を確実に行わせることができる。また、吹出口40が側壁部6に沿って形成されるとともに、燃焼用空気が下から上に吹出すので、固体燃料Wの底壁部4に対する支持を安定にして、より一層燃焼しやすくすることができ、この点でも燃焼効率を向上させることができる。
【0032】
更にまた、吹出口40を形成する上壁板4bの端縁41のある端部42を側面から見て正面側に凸になるように湾曲させて立ち上げ形成したので、吹出口40からの燃焼用空気が湾曲した上壁板4bの端部42と側壁部6との間にガイドされて燃焼室E内に供給されることから、吹出口40が固体燃料Wによって塞がれにくくなり、固体燃料Wの燃焼をより一層確実に行わせることができる。更にまた、固体燃料Wが櫛歯状の支持板50の上端縁に載置されるので、下から燃焼用空気が供給されやすくなり、この点でも、固体燃料Wの燃焼をより一層確実に行わせることができる。
【0033】
尚、上記実施の形態において、熱交換部Kの管体30は、所要の間隔を隔てて複数設けられるが、所要の間隔やその数は、適宜に定めてよい。また、上記実施の形態において、内筒20と煙突2との接続の態様は、図1乃至図3図6(b)に示すように、内筒20の一端開口21に煙突2を接続するとともに他端開口22を閉塞したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、図6(a)に示すように、外筒10の一端開口21及び他端開口22を夫々煙突2に接続し、あるいは、図6(c)に示すように、内筒20の一端開口21を閉塞するとともに他端開口22に煙突2を接続しても良く、適宜変更して差支えない。更に、上記実施の形態においては、外筒10及び内筒20を底壁部4に立設したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば、側壁部6間に架設する等、適宜変更して差支えない。
【0034】
また、上記実施の形態においては、空気流通空間Ab及び吹出口40を、底壁部4に設けたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、底壁部4及び側壁部6の両方に設け、あるいは、側壁部6に設けても良く(図6参照)、適宜変更して差支えない。また、吹出口40の位置も、適宜に定めてよいことは勿論である。更に、本体1の形状も、上記の形状に限定されるものではなく、例えば、底壁部4,天井壁部5,側壁部6を連設して矩形状や円筒状に形成する等、どのような形状に形成しても良い。また、開閉体7で開閉する開口部8を側壁部6のみならず天井壁部5に設けても良い。
【0035】
更にまた、上記実施の形態では、底壁部4,天井壁部5,側壁部6を金属製にしたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、熱交換部Kを金属製にすれば、石製,セラミック製等、耐熱性があれば、どのような材質のもので形成しても良い。また、上記実施の形態では、固体燃料Wとしては、薪に限定されるものではなく、泥炭,石炭,褐炭,瀝青炭,無煙炭,コークス,練炭,木質ペレット,オガライト,オガ炭,木炭,蝋,各種固体燃料等どのようなものでも良いことは勿論である。要するに、当業者は、本発明の新規な教示及び効果から実質的に離れることなく、これら例示である実施の形態に多くの変更を加えることが容易であり、これらの多くの変更は本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0036】
S ストーブ
W 固体燃料
1 本体
E 燃焼室
K 熱交換部
Ka 収容部位
2 煙突
3 脚体
4 底壁部
4a 下壁板
4b 上壁板
5 天井壁部
6 側壁部
7 開閉体
8 開口部
10 外筒
11 流入口
12 流出口
13 一方開口
14 他方開口
15 上側貫通口
16 下側貫通口
20 内筒
21 一端開口
22 他端開口
23 閉塞板
24 接続管
30 管体
31 外開口
32 内開口
L1~L5 管体列
G ガス通過空間
Aa 空気通過空間
Ab 空気流通空間
40 吹出口
41 端縁
42 端部
50 支持板
図1
図2
図3
図4
図5
図6