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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-18
(45)【発行日】2025-07-29
(54)【発明の名称】防汚塗料組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 133/14 20060101AFI20250722BHJP
   C09D 5/16 20060101ALI20250722BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20250722BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20250722BHJP
【FI】
C09D133/14
C09D5/16
C09D7/63
C09D7/40
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023503829
(86)(22)【出願日】2022-02-28
(86)【国際出願番号】 JP2022008313
(87)【国際公開番号】W WO2022186143
(87)【国際公開日】2022-09-09
【審査請求日】2024-06-04
(31)【優先権主張番号】P 2021035686
(32)【優先日】2021-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227342
【氏名又は名称】日東化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】岡 永都
(72)【発明者】
【氏名】松木 崇
(72)【発明者】
【氏名】北村 同
(72)【発明者】
【氏名】和久 英典
(72)【発明者】
【氏名】安井 拓也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 基道
【審査官】河島 拓未
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/045211(WO,A1)
【文献】特開2020-189896(JP,A)
【文献】特開2003-119419(JP,A)
【文献】特開昭58-047066(JP,A)
【文献】国際公開第2011/046086(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
C09K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共重合体A、エステル化合物C、および防汚薬剤Dを含有する防汚塗料組成物であって、
前記共重合体Aは、一般式(1)で表される単量体(a)と、前記単量体(a)以外のエチレン性不飽和単量体(b)の共重合体であり、前記単量体(a)は、前記一般式(1)中のnが2以上である化合物を含み、
前記エステル化合物Cは、化学式(3)~(8)で表される少なくとも1つのエステル化合物を含有する、防汚塗料組成物。
【化1】
(式中、Rは水素又はメチル基を示し、Rは、水素、メチル基、フェニル基を示し、Rは、炭素数1~8のアルコキシ基又はフェニル基で置換されていてもよい炭素数1~8のアルキル基であるか、又はフェニル基を示し、nは、1~10の整数を示す。)
【化3】
(式中、R~Rは、それぞれ、ヘテロ原子を含んでもよい炭素数1~25の炭化水素基であり、この炭化水素基は、脂肪族又は芳香族であり、直鎖状又は分岐鎖状であるか、又は環状構造を有する。)
【化4】
(式中、Xはヘテロ原子を含んでもよい炭素数1~25の炭化水素基であり、R~R10は、それぞれ、ヘテロ原子を含んでもよい炭素数1~25の炭化水素基であり、X及びR~R10の炭化水素基は、それぞれ、脂肪族又は芳香族であり、直鎖状又は分岐鎖状であるか、又は環状構造を有する。)
【化5】
(式中、Xはヘテロ原子を含んでもよい炭素数1~25の炭化水素基であり、R11~R13は、それぞれ、ヘテロ原子を含んでもよい炭素数1~25の炭化水素基であり、X及びR11~R13の炭化水素基は、それぞれ、脂肪族又は芳香族であり、直鎖状又は分岐鎖状であるか、又は環状構造を有する。)
【化6】
(式中、Xはヘテロ原子を含んでもよい炭素数1~25の炭化水素基であり、R14~R17は、それぞれ、ヘテロ原子を含んでもよい炭素数1~25の炭化水素基であり、X及びR14~R17の炭化水素基は、それぞれ、脂肪族又は芳香族であり、直鎖状又は分岐鎖状であるか、又は環状構造を有する。)
【化7】
(式中、Xはヘテロ原子を含んでもよい炭素数1~25の炭化水素基であり、R18~R19は、それぞれ、ヘテロ原子を含んでもよい炭素数1~25の炭化水素基であり、X及びR18~R19の炭化水素基は、それぞれ、脂肪族又は芳香族であり、直鎖状又は分岐鎖状であるか、又は環状構造を有する。)
【化8】
(式中、Xはヘテロ原子を含んでもよい炭素数1~25の炭化水素基であり、R20~R22は、それぞれ、ヘテロ原子を含んでもよい炭素数1~25の炭化水素基であり、X及びR20~R22の炭化水素基は、それぞれ、脂肪族又は芳香族であり、直鎖状又は分岐鎖状であるか、又は環状構造を有する。)
【請求項2】
前記エステル化合物Cは、前記化学式(4)~(6)で表されるエステル化合物を含有する、請求項1に記載の防汚塗料組成物。
【請求項3】
前記化学式(4)~(6)のXの炭化水素基は、環状構造を有する、請求項2に記載の防汚塗料組成物。
【請求項4】
前記化学式(4)~(6)のXの炭化水素基の環状構造は、芳香環構造を有する、請求項3に記載の防汚塗料組成物。
【請求項5】
前記化学式(4)~(6)のXの炭化水素基の環状構造は、脂肪族の六員環構造を有する、請求項3又は請求項4に記載の防汚塗料組成物。
【請求項6】
前記化学式(4)~(6)のXの炭化水素基の環状構造は、ヘテロ原子含有環状構造を有する、請求項3~請求項5の何れか1つに記載の防汚塗料組成物。
【請求項7】
前記化学式(4)~(6)のXの炭化水素基は、直鎖状又は分岐鎖状である、請求項2に記載の防汚塗料組成物。
【請求項8】
前記エステル化合物Cは、前記化学式(7)~(8)で表されるエステル化合物を含有する、請求項1に記載の防汚塗料組成物。
【請求項9】
前記化学式(7)~(8)のXの炭化水素基は、環状構造を有する、請求項8に記載の防汚塗料組成物。
【請求項10】
前記化学式(7)~(8)のXの炭化水素基の環状構造は、芳香環構造、脂肪族の六員環構造、ヘテロ原子含有環状構造の少なくとも1つを有する、請求項9に記載の防汚塗料組成物。
【請求項11】
前記化学式(7)~(8)のXの炭化水素基は、直鎖状又は分岐鎖状である、請求項8に記載の防汚塗料組成物。
【請求項12】
前記化学式(7)~(8)のXの炭化水素基は、ヘテロ原子を有する、請求項8~請求項11の何れか1つに記載の防汚塗料組成物。
【請求項13】
請求項1~請求項12の何れか1つに記載の防汚塗料組成物を用いて形成される防汚塗膜を表面に有する塗装物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防汚塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フジツボ、セルプラ、ムラサキイガイ、フサコケムシ、ホヤ、アオノリ、アオサ、スライム等の水棲汚損生物が、船舶(特に船底部分)や漁網類、漁網付属具等の漁業具や発電所導水管等の水中構造物に付着することにより、それら船舶等の機能が害される、外観が損なわれる等の問題がある。
このような問題を防ぐために、船舶等に防汚塗料組成物を塗布して防汚塗膜を形成し、防汚塗膜から防汚薬剤を徐放させることによって、長期間に渡って防汚性能を発揮させる技術が知られている(特許文献1~4)。
しかし、特許文献1~4に記載されている(メタ)アクリル酸アルコシキカルボニルメチルエステル基含有ポリマーからなる防汚塗膜は、塗膜溶解性が著しく低いため長期間に亘って防汚性を発揮することは困難であった。これらの問題を解決するべく、長期間に渡って塗膜溶解し防汚性能を発揮させる技術が提案されている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特公昭63-61989号公報
【文献】特開2003-119420号公報
【文献】特開2003-119419号公報
【文献】特開2002-3776号公報
【文献】WO2020/045211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献5に記載されている防汚塗料組成物からなる防汚塗膜は、塗膜溶解性など改善されているものの、海水浸漬後長期間経過してくると塗膜溶解が過度に大きくなったり、クラック等の塗膜異常を起ってしまったりする場合があり、さらなる改善が求められている。また、塗料製造時から塗装までの期間が長期間に及ぶと本来の塗料組成物の性能が発揮されない場合もあり、貯蔵安定性の高い塗料組成物が求められている。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、海水中において長期間に亘り、安定した塗膜溶解速度を維持し、クラック等の塗膜異常を起こすことなく、安定した防汚性能を維持できる貯蔵安定性の高い防汚塗料組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、共重合体A、エステル化合物C、および防汚薬剤Dを含有する防汚塗料組成物であって、前記共重合体Aは、一般式(1)で表される単量体(a)と、前記単量体(a)以外のエチレン性不飽和単量体(b)の共重合体であり、前記単量体(a)は、前記一般式(1)中のnが2以上である化合物を含み、前記エステル化合物Cは、化学式(3)~(8)で表される少なくとも1つのエステル化合物を含有する、防汚塗料組成物が提供される。
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、共重合体A、エステル化合物Cおよび防汚薬剤Dを含む組成物が、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳細を説明する。
1.防汚塗料組成物
本発明の防汚塗料組成物は、共重合体A、エステル化合物Cおよび防汚薬剤Dを含有する。
【0009】
1-1.共重合体A
共重合体Aは、単量体(a)と、単量体(a)以外のエチレン性不飽和単量体単量体(b)の共重合体であり、単量体(a)及び単量体(b)に由来する単量体単位を含む。単量体(a)と単量体(b)の合計に対する単量体(a)の含有量は、10~90質量%が好ましく、20~70質量%が更に好ましい。具体的には例えば、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。この場合に、塗膜溶解性が特に良好となる。
【0010】
1-1-1.単量体(a)
単量体(a)は、一般式(1)で表される。
【0011】
【化1】
【0012】
式中、Rは水素又はメチル基を示し、Rは、水素、メチル基、フェニル基を示し、Rは、炭素数1~8のアルコキシ基又はフェニル基で置換されていてもよい炭素数1~8のアルキル基であるか、又はフェニル基を示し、nは、1~10の整数を示す。
【0013】
は、好ましくは、水素、又はメチル基である。
【0014】
のアルコキシ基又はアルキル基の炭素数は、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。Rは、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、2-エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、フェニル基、2-メトキシエチル基、4-メトキシブチル基、ビニル基、又はアリル基であり、好ましくは、メチル基、エチル基、イソプロピル基、又はn-ブチル基である。
【0015】
nは、1~10の整数を示し、nは、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0016】
単量体(a)は、一般式(1)中のnが2以上である化合物を含む。単量体(a)としてnが2以上である化合物が含まれると、塗膜溶解性が高くなる。単量体(a)は、nが2以上である化合物のみで構成されていてもよく、nが1である化合物とnが2以上である化合物の混合物であってもよい。
【0017】
単量体(a)は、好ましくは、単量体(a1)と単量体(a2)で構成される。単量体(a)中の単量体(a1)の含有量は、50~80質量%が好ましく、55~75質量%が更に好ましく、60~70質量%が特に好ましい。単量体(a1)は、単量体(a2)に比べて、塗膜強度を高め、塗膜溶解性を低下させる性質を有する。このため、単量体(a1)の含有量が少なすぎると、塗膜強度が低くなる傾向があり、長期間経過後に塗膜表面状態が悪くなりやすくなる場合がある。一方、単量体(a1)の含有量が多すぎると、塗膜溶解性が低くなり、防汚性能が低下してしまう場合がある。
【0018】
<単量体(a1)>
単量体(a1)は、一般式(1)のnが1である化合物である。
【0019】
単量体(a1)としては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸エトキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸イソプロポキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸n-プロポキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸n-ブトキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸t-ブトキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルオキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルオキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸ベンジルオキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸フェノキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエトキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸4-メトキシブトキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸アリロキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸ビニロキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸1-(メトキシカルボニル)エチル、(メタ)アクリル酸1-(エトキシカルボニル)エチル、(メタ)アクリル酸1-(n-プロポキシカルボニル)エチル、(メタ)アクリル酸1-(イソプロポキシカルボニル)エチル、(メタ)アクリル酸1-(n-ブトキシカルボニル)エチル、(メタ)アクリル酸1-(t-ブトキシカルボニル)エチル、(メタ)アクリル酸α-(メトキシカルボニル)ベンジル、(メタ)アクリル酸α-(エトキシカルボニル)ベンジルが挙げられ、好ましくは、(メタ)アクリル酸メトキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸エトキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸イソプロポキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸n-プロポキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸n-ブトキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸1-(メトキシカルボニル)エチル、(メタ)アクリル酸1-(エトキシカルボニル)エチルが挙げられる。
【0020】
<単量体(a2)>
単量体(a2)は、一般式(1)のnが2以上である化合物である。一般式(1)のnは、長期防汚性の観点から2~6が好ましい。
【0021】
単量体(a2)としては、nが2である化合物と、nが3以上である化合物の両方を含むことが好ましい。具体的には例えば、固形分換算で、質量比(n(2)/n(2~10))が0.4~0.8が好ましく、0.5~0.7が更に好ましい。この場合、安定した塗膜溶解が持続する傾向が見られている。この値は、具体的には例えば、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0022】
単量体(a2)としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチルジ(オキシカルボニルメチル)、(メタ)アクリル酸エチルジ(オキシカルボニルメチル)、(メタ)アクリル酸イソプロピルジ(オキシカルボニルメチル)、(メタ)アクリル酸n-プロピルジ(オキシカルボニルメチル)、(メタ)アクリル酸n-ブチルジ(オキシカルボニルメチル)、(メタ)アクリル酸t-ブチルジ(オキシカルボニルメチル)、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルジ(オキシカルボニルメチル)、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルジ(オキシカルボニルメチル)、(メタ)アクリル酸ベンジルジ(オキシカルボニルメチル)、(メタ)アクリル酸フェニルジ(オキシカルボニルメチル)、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチルジ(オキシカルボニルメチル)、(メタ)アクリル酸4-メトキシブチルジ(オキシカルボニルメチル)、(メタ)アクリル酸アリルジ(オキシカルボニルメチル)、(メタ)アクリル酸ビニルジ(オキシカルボニルメチル)、(メタ)アクリル酸メチルジ〔1-(オキシポリカルボニル)エチル〕、(メタ)アクリル酸エチルジ〔1-(オキシポリカルボニル)エチル〕、(メタ)アクリル酸n-プロピルジ〔1-(オキシポリカルボニル)エチル〕、(メタ)アクリル酸イソプロピルジ〔1-(オキシポリカルボニル)エチル〕、(メタ)アクリル酸n-ブチルジ〔1-(オキシポリカルボニル)エチル〕、(メタ)アクリル酸t-ブチルジ〔1-(オキシポリカルボニル)エチル〕、(メタ)アクリル酸メチルジ〔α-(オキシカルボニル)ベンジル〕、(メタ)アクリル酸エチルジ〔α-(オキシカルボニル)ベンジル〕が挙げられ、好ましくは、(メタ)アクリル酸メチルジ(オキシカルボニルメチル)、(メタ)アクリル酸エチルジ(オキシカルボニルメチル)、(メタ)アクリル酸イソプロピルジ(オキシカルボニルメチル)、(メタ)アクリル酸n-プロピルジ(オキシカルボニルメチル)、(メタ)アクリル酸n-ブチルジ(オキシカルボニルメチル)、(メタ)アクリル酸メチルジ〔1-(オキシポリカルボニルエチル)〕、(メタ)アクリル酸エチルジ〔1-(オキシポリカルボニルエチル)〕、(メタ)アクリル酸メチルポリ(オキシカルボニルメチル)、(メタ)アクリル酸エチルポリ(オキシカルボニルメチル)、(メタ)アクリル酸イソプロピルポリ(オキシカルボニルメチル)、(メタ)アクリル酸n-プロピルポリ(オキシカルボニルメチル)、(メタ)アクリル酸n-ブチルポリ(オキシカルボニルメチル)、(メタ)アクリル酸t-ブチルポリ(オキシカルボニルメチル)、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルポリ(オキシカルボニルメチル)、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルポリ(オキシカルボニルメチル)、(メタ)アクリル酸ベンジルポリオキシカルボニルメチル)、(メタ)アクリル酸フェニルポリ(オキシカルボニルメチル)、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチルポリ(オキシカルボニルメチル)、(メタ)アクリル酸4-メトキシブチルポリ(オキシカルボニルメチル)、(メタ)アクリル酸アリルポリ(オキシカルボニルメチル)、(メタ)アクリル酸ビニルポリ(オキシカルボニルメチル)、(メタ)アクリル酸メチルポリ〔1-(オキシポリカルボニル)エチル〕、(メタ)アクリル酸エチルポリ〔1-(オキシポリカルボニル)エチル〕、(メタ)アクリル酸n-プロピルポリ〔1-(オキシポリカルボニル)エチル〕、(メタ)アクリル酸イソプロピルポリ〔1-(オキシポリカルボニル)エチル〕、(メタ)アクリル酸n-ブチルポリ〔1-(オキシポリカルボニル)エチル〕、(メタ)アクリル酸t-ブチルポリ〔1-(オキシポリカルボニル)エチル〕、(メタ)アクリル酸メチルポリ〔α-(オキシカルボニル)ベンジル〕、(メタ)アクリル酸エチルポリ〔α-(オキシカルボニル)ベンジル〕が挙げられ、好ましくは、(メタ)アクリル酸メチルポリ(オキシカルボニルメチル)、(メタ)アクリル酸エチルポリ(オキシカルボニルメチル)、(メタ)アクリル酸イソプロピルポリ(オキシカルボニルメチル)、(メタ)アクリル酸n-プロピルポリ(オキシカルボニルメチル)、(メタ)アクリル酸n-ブチルポリ(オキシカルボニルメチル)、(メタ)アクリル酸メチルポリ〔1-(オキシポリカルボニルエチル)〕、(メタ)アクリル酸エチルポリ〔1-(オキシポリカルボニルエチル)〕等が挙げられる。
【0023】
1-1-2.単量体(b)
単量体(b)は、単量体(a)以外のエチレン性不飽和単量体である。単量体(b)は、単量体(b1)と単量体(b2)に分類することができ、共重合体Aの重合に用いる単量体(b)には、単量体(b1)と単量体(b2)の一方又は両方が含まれる。
【0024】
<単量体(b1)>
単量体(b1)は、一般式(2)で表される。
【0025】
【化2】
【0026】
式中、Rは水素又はメチル基、3つのRは、それぞれ同一又は異なって炭素数3~8の分岐アルキル基又はフェニル基を示す。
【0027】
分岐アルキル基の炭素数は、例えば、3、4、5、6、7、8であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。分岐アルキル基としては、例えば、イソプロピル基、イソプロペニル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、1-エチルプロピル基、1-メチルブチル基、1-メチルペンチル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,1-ジメチルブチル基、テキシル基、シクロヘキシル基、1,1-ジメチルペンチル基、1-メチルヘキシル基、1,1-ジメチルヘキシル基、1-メチルヘプチル基、2-メチルブチル基、2-エチルブチル基、2,2-ジメチルプロピル基、シクロヘキシルメチル基、2-エチルヘキシル基、2-プロピルペンチル基、3-メチルペンチル基等が挙げられる。Rとして好ましいものは、それぞれ同一又は異なって、イソプロピル基、イソプロペニル基、s-ブチル基、t-ブチル基、フェニル基、及び2-エチルヘキシル基であり、特に好ましいものは、イソプロピル基、及び2-エチルヘキシル基である。
【0028】
単量体(b1)としては、例えば、(メタ)アクリル酸トリイソプロピルシリル、(メタ)アクリル酸トリイソブチルシリル、(メタ)アクリル酸トリs-ブチルシリル、(メタ)アクリル酸トリイソペンチルシリル、メタ(メタ)アクリル酸トリフェニルシリル、(メタ)アクリル酸ジイソプロピルフェニルシリル、(メタ)アクリル酸ジイソプロピルイソブチルシリル、(メタ)アクリル酸ジイソプロピルs-ブチルシリル、(メタ)アクリル酸ジイソプロピルイソペンチルシリル、(メタ)アクリル酸イソプロピルジイソブチルシリル、(メタ)アクリル酸イソプロピルジs-ブチルシリル、(メタ)アクリル酸t-ブチルジイソプチルシリル、(メタ)アクリル酸t-ブチルジイソペンチルシリル、(メタ)アクリル酸t-ブチルジフェニルシリル、(メタ)アクリル酸ジイソプロピルテキシルシリル、(メタ)アクリル酸ジイソプロピルシクロヘキシルシリル、(メタ)アクリル酸トリシクロヘキシルシリル、(メタ)アクリル酸トリ1,1-ジメチルペンチルシリル、(メタ)アクリル酸トリ2,2-ジメチルプロピルシリル、(メタ)アクリル酸トリシクロヘキシルメチルシリル、(メタ)アクリル酸ジイソプロピルシクロヘキシルメチルシリル、(メタ)アクリル酸トリ2-エチルヘキシルシリル、(メタ)アクリル酸トリ2-プロピルペンチルシリル等の(メタ)アクリル酸シリルエステル類、等が挙げられる。等が挙げられる。これらの単量体(b1)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0029】
<単量体(b2)>
単量体(b2)は、単量体(b)から単量体(b1)を除いたものである。言い換えると、単量体(b2)は、一般式(1)と(2)の何れでも表されない単量体である。単量体(b2)としては、一般式(1)と(2)の何れでも表されない(メタ)アクリル酸エステル、ビニル化合物、芳香族化合物、二塩基酸のジアルキルエステル化合物等が挙げられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸エステルは、アクリル酸エステル、又はメタアクリル酸エステルを意味する。
【0030】
一般式(1)と(2)の何れでも表されない(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-メトキシブチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸プロピレングリコールモノメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸フルフリル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸2-[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エトキシ]エチル、こはく酸モノ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)、N-(3-ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]エチル、N,N'-ジメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリル酸エステル類等が挙げられる。
【0031】
ビニル化合物としては、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、安息香酸ビニル、ビニルブチレート、ブチルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、N-ビニルピロリドン等の官能基を有するビニル化合物が挙げられる。
【0032】
芳香族化合物としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン等が挙げられる。
【0033】
二塩基酸のジアルキルエステル化合物としては、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジメチル等が挙げられる。
【0034】
共重合体Aにおいては、これら単量体(b)を単独又は二種以上で用いることができる。塗膜溶解性および塗膜物性の観点から、単量体(b)は、単量体(b1)又は単量体(b2)の(メタ)アクリル酸エステルを含むことが好ましい。耐クラック性の観点から、単量体(b)は、単量体(b2)の(メタ)アクリル酸エステルを含むことが好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸フルフリル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル等を含むことがより好ましい。塗膜溶解性の観点から、単量体(b)は、単量体(b1)を含むことが好ましく、(メタ)アクリル酸トリイソプロピルシリル、(メタ)アクリル酸t-ブチルジフェニルシリル、(メタ)アクリル酸トリ2-エチルヘキシルシリル等を含むことがより好ましい。
【0035】
1-1-3.共重合体Aの物性・製造方法
共重合体Aの重量平均分子量(Mw)は5000~300000であることが望ましい。分子量が5000未満であれば、防汚塗料の塗膜が脆弱となり、剥離やクラックを起こし易く、また、300000を超えると、重合体溶液の粘度が上昇し、取扱いが困難となるからである。このMwは、具体的には例えば、5000、10000、20000、30000、40000、50000、60000、70000、80000、90000、100000、200000、300000であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0036】
Mwの測定方法としては、例えばゲル浸透クロマトグラフィー(GPC法)が挙げられる。
【0037】
共重合体Aは、単量体(a1)、単量体(a2)と単量体(b)とのランダム共重合体、交互共重合体、周期的共重合体、又はブロック共重合体のいずれの共重合体であってもよい。
【0038】
共重合体Aは、例えば、重合開始剤の存在下、単量体(a1)、単量体(a2)、及び単量体(b)を重合させることにより得ることができる。
【0039】
前記重合開始剤としては、例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル-2,2'-アゾビスイソブチレート、ジメチル2,2'-アゾビスイソブチレート、2,2'-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド等のアゾ化合物;ベンゾイルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ-t-ヘキシルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカルボネート、ジ-t-ブチルパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、t-アミルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-アミルパーオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート等の過酸化物等が挙げられる。これら重合開始剤は、単独又は2種以上を組み合わせて使用できる。前記重合開始剤としては、特に、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2'-アゾビスイソブチレート及び1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートが好ましい。重合開始剤の使用量を適宜設定することにより、共重合体Aの分子量を調整することができる。また、得られるポリマーの分子量の調整のために、連鎖移動剤を使用することができる。連鎖移動剤としては、例えば、n-ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類;チオグリコール酸オクチル等のチオグリコール酸エステル類;α-メチルスチレンダイマー、ターピノーレンが挙げられる。
【0040】
重合方法としては、例えば、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合、非水分散重合等が挙げられる。この中でも特に、簡便に、且つ、精度良く、共重合体Aを得ることができる点で、溶液重合、又は非水分散重合が好ましい。
【0041】
前記重合反応においては、必要に応じて有機溶媒を用いてもよい。有機溶剤としては、特に限定されないが、例えば、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶剤;脂肪族炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸メトキシプロピル、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート等のエステル系溶剤;イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶剤;ジオキサン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤等が挙げられる。
その中でも、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、ブチルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート、トルエン、キシレンが好ましい。これら溶媒については、単独あるいは2種以上を組み合わせて使用できる。

重合反応における反応温度は、重合開始剤の種類等に応じて適宜設定すればよく、通常50~160℃であり、好ましくは60~150℃である。
【0042】
重合反応は、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。
【0043】
1-2.エステル化合物C
本発明のエステル化合物Cは、化学式(3)~(8)で表される少なくとも1つのエステル化合物(3)~(8)を含有する。なお、本明細書において、エステル化合物は、カルボン酸とアルコールから成るカルボン酸エステルを意味し、前述のカルボン酸は、乳酸やクエン酸などのヒドロキシカルボン酸やそれらのO-アセチルヒドロキシカルボン酸なども含む。エステル化合物Cは、世界保健機関(WHO)により定義される高揮発性有機化合物(VVOC)や揮発性有機化合物(VOC)以外の化合物であることが好ましい。具体的には、エステル化合物Cは、塗料組成物をASTM D2369-07に準拠して揮発性成分の含有量測定を行った場合に非揮発成分として残存することが好ましい。
【0044】
<エステル化合物(3)>
エステル化合物(3)は、化学式(3)で表される構造を有する。エステル化合物(3)は、例えば、脂肪族エステル又は芳香族エステルであり、例えば、モノカルボン酸とモノアルコールが脱水縮合によりエステル結合したエステル化合物である。エステル化合物(3)が脂肪族エステルである場合、R、Rのいずれか一方、または両方に分岐構造、又は環状構造、又はヘテロ原子の少なくとも一つを含むことが好ましい。エステル化合物(3)が芳香族エステルである場合、R、Rのいずれか一方、または両方に芳香環を有していればよく、Rに芳香環を含む場合、カルボニル基の炭素原子に直接芳香環が結合していることが好ましい。
【0045】
【化3】
(式中、R~Rは、それぞれ、ヘテロ原子を含んでもよい炭素数1~25の炭化水素基であり、この炭化水素基は、脂肪族又は芳香族であり、直鎖状又は分岐鎖状であるか、又は環状構造を有する。)
【0046】
、Rの炭化水素基の炭素数は、好ましくは、2~20であり、具体的には例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18,19,20,21,22, 23、24、25であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。RとRの合計炭素数は6以上が好ましい。R、Rのヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子などが挙げられ、この中でも酸素原子を含む構造が好ましい。
【0047】
エステル化合物(3)の具体例としては、脂肪族エステルでは、デカン酸デシル、酢酸ゲラニル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸セチル、エポキシステアリン酸オクチル、3,7-ジメチル-6-オクテン-1-オールアセタート、テルピニルアセテート、4-tert-ブチルシクロヘキシルアセテート、メンチルアセテート、イソボルニルアセテート、イソボルニルエチレート、イソボルニルステアレート、ジヒドロジャスモン酸メチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸2-エチルヘキシル、ヘキサン酸シクロヘキシル、シクロヘキサンカルボン酸シクロヘキシル、ヘキシルアセト酢酸エチル、リシノール酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル、乳酸イソペンチル、乳酸メンチル、乳酸ヘキサデシル、イソ酪酸3-ヒドロキシ-2,2,4-トリメチルペンチル、モノオレイン酸グリセロール、モノイソステアリン酸グリセロール、テトラヒドロフルフリルアセテート、3-フェニルグリシド酸エチル、3-メチル-3-フェニルグリシド酸エチル、3',4'-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、エポキシ化脂肪酸イソブチル、エポキシ化脂肪酸2-エチルヘキシル、などが挙げられる。
【0048】
エステル化合物(3)の具体例としては、芳香族エステルでは、フェニル酢酸イソアミル、イソ吉草酸ベンジル、アセト酢酸ベンジル、n-オクタン酸 p-トリル、ステアリン酸ベンジル、エポキシステアリン酸ベンジル、フェニル酢酸イソアミル、2-エチルヘキシルベンゾエート、ヒドロキシ安息香酸ヘキシル、安息香酸ベンジル、安息香酸2-イソプロポキシエチル、ヒドロキシ安息香酸ベンジル、4-ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、フルフリルアセテート、エチル2-フランカルボキシレート、プロピオン酸テトラヒドロフルフリル、n-オクチル2-フランカルボキシレート、イソアミル2-フランカルボキシレートなどが挙げられる。
【0049】
<エステル化合物(4)>
エステル化合物(4)は、化学式(4)で表される構造を有する。エステル化合物(4)は、例えば、脂肪族エステル又は芳香族エステルであり、例えば、1つのジカルボン酸と2つのモノアルコールからなるエステル化合物である。エステル化合物(4)が脂肪族エステルである場合、R、R10、若しくはXのいずれか、または全ての部分に、分岐構造、又は環状構造、又はヘテロ原子の少なくとも一方を含むことが好ましく、この中でもR、R10には、分岐構造を含むことがより好ましく、Xには環状構造を含むことがより好ましい。エステル化合物(4)が芳香族エステルである場合、R、R10、Xのいずれかに最低一つの芳香環を有していればよく、この中でもXに芳香環を含む構造が好ましく、Xに芳香環を含む場合は、カルボニル基の炭素原子に直接芳香環が結合していることが、より好ましい。
【0050】
【化4】
(式中、Xはヘテロ原子を含んでもよい炭素数1~25の炭化水素基であり、R~R10は、それぞれ、ヘテロ原子を含んでもよい炭素数1~25の炭化水素基であり、X及びR~R10の炭化水素基は、それぞれ、脂肪族又は芳香族であり、直鎖状又は分岐鎖状であるか、又は環状構造を有する。)
【0051】
X及びR、R10の炭化水素基の炭素数は、好ましくは、2~20であり、具体的には例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。X及びR、R10のヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子などが挙げられ、この中でも酸素原子を含む構造が好ましい。
【0052】
Xの炭化水素基が環状構造を有する場合、この環状構造は、芳香環構造、脂肪族の六員環構造、ヘテロ原子含有環状構造の少なくとも1つを有することが好ましい。
【0053】
エステル化合物(4)の具体例として脂肪族エステルでは、コハク酸ジ2-エチルヘキシル、コハク酸ジイソノニル、マレイン酸ジ2-エチルヘキシル、マレイン酸ジイソノニル、マレイン酸ジイソデシル、フマル酸ジ2-エチルヘキシル、フマル酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジ2-エチルヘキシル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジ2-ブトキシエチル、アジピン酸ヘプチルノニル、アジピン酸1-ベンジル6-「2-(2-メトキシエトキシ)エチル」アゼライン酸ジイソプロピル、アゼライン酸ジ2-エチルヘキシル、アゼライン酸ジイソノニル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジ2-エチルヘキシル、セバシン酸ジイソノニル、セバシン酸ジイソデシル、ドデカン酸ジイソプロピル、ドデカン酸ジ2-エチルヘキシル、ドデカン酸ジイソノニル、ドデカン酸ジイソデシルが挙げられ、Xに環状構造を含む具体例としては、1,1-シクロヘキサンジカルボン酸ジエチル、4-オキソシクロヘキサン-1,1,-ジカルボン酸ジエチル、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジエチル、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソプロピル、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジル、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジブチル、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジ2-エチルヘキシル、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソデシル、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸ジエチル、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソプロピル、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸ジ2-エチルヘキシル、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル、2-オキソシクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸ジメチル、2-オキソシクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸ジメチル、5-ヒドロキシシクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸ジメチル、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジエチル、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジアリル、1,4-シクロヘキサンジオン-2,5-ジカルボン酸ジメチル、1,4-シクロヘキサンジオン-2,5-ジカルボン酸ジエチル、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジ2-エチルヘキシル、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸ジエチル、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸ジ2-エチルヘキシル、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸ジイソノニル、4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸ジエチル、4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸ジ2-エチルヘキシル、4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸ジイソノニル、4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸ジステアリル、4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸ジエポキシステアリル、1,3-アダマンタンジカルボン酸ジメチル、3,4-テトラヒドロフランカルボン酸ジ2-エチルヘキシル、2,5-テトラヒドロフランカルボン酸ジエチル、2,5-テトラヒドロフランカルボン酸ジイソノニル、2,5-テトラヒドロフランカルボン酸ジイソデシル、などが挙げられる。
【0054】
エステル化合物(4)の具体例として芳香族エステルでは、アジピン酸ベンジルオクチル、フタル酸イソプロピル、フタル酸イソブチル、フタル酸シクロヘキシル、フタル酸ジ2-エチルヘキシル、フタル酸ジ2-エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ブチルシクロヘキシル、フタル酸ブチルノニル、エチルフタリルエチルグリコラート、ブチルフタリルブチルグリコラート、ブチルフタリルエチルグリコラート、フタル酸ジフェニル、フタル酸ジベンジル、フタル酸ベンジルブチル、フタル酸オクチルベンジル、フタル酸ベンジル2-エチルヘキシル、フタル酸ベンジルイソノニル、フタル酸ベンジルイソデシル、フタル酸ヒドロキシエチル2-エチルヘキシル、イソフタル酸ジエチル、イソフタル酸ジイソプロピル、イソフタル酸シクロヘキシル、イソフタル酸ジn-オクチル、イソフタル酸ジ2-エチルヘキシル、イソフタル酸ジイソノニル、イソフタル酸ジイソデシル、テレフタル酸ジエチル、テレフタル酸イソプロピル、テレフタル酸シクロヘキシル、テレフタル酸ジn-オクチル、テレフタル酸ジ2-エチルヘキシル、テレフタル酸ジイソノニル、テレフタル酸ジイソデシル、2,5-フランジカルボン酸ジエチル、2,5-フランジカルボン酸ジイソプロピル、2,5-フランジカルボン酸ジ2-エチルヘキシル、2,5-フランジカルボン酸ジイソノニル、3,4-フランジカルボン酸ジ2-エチルヘキシル、3,4-フランジカルボン酸ジn-デシル、などが挙げられる。
【0055】
<エステル化合物(5)>
エステル化合物(5)は、化学式(5)で表される構造を有する。エステル化合物(5)は、例えば、脂肪族エステル又は芳香族エステルであり、例えば、1つのトリカルボン酸と3つのモノアルコールからなるエステル化合物である。エステル化合物(5)が脂肪族エステルである場合、R11~R13、若しくはXのいずれか、または全ての部分に、分岐構造、又は環状構造、又はヘテロ原子の少なくとも一方を含む方が好ましい。エステル化合物(5)が芳香族エステルである場合、R11~R13、Xのいずれかに最低一つの芳香環を有していればよく、この中でもXに芳香環を含む構造が好ましく、Xに芳香環を含む場合は、カルボニル基の炭素原子に直接芳香環が結合していることが、より好ましい。
【0056】
【化5】
(式中、Xはヘテロ原子を含んでもよい炭素数1~25の炭化水素基であり、R11~R13は、それぞれ、ヘテロ原子を含んでもよい炭素数1~25の炭化水素基であり、X及びR11~R13の炭化水素基は、それぞれ、脂肪族又は芳香族であり、直鎖状又は分岐鎖状であるか、又は環状構造を有する。)
【0057】
X及びR11~R13の炭化水素基の炭素数は、好ましくは、2~18であり、具体的には例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。X及びR11~R13のヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子などが挙げられ、この中でも酸素原子を含む事が好ましい。
【0058】
Xの炭化水素基が環状構造を有する場合、この環状構造は、芳香環構造、脂肪族の六員環構造、ヘテロ原子含有環状構造の少なくとも1つを有することが好ましい。
【0059】
エステル化合物(5)の具体例として脂肪族エステルでは、トリエチルメタントリカルボキシラート、クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリブチル、ブチリルクエン酸トリヘキシル、アセチルクエン酸トリヘキシル、クエン酸2-エチルヘキシル、アセチルクエン酸2-エチルヘキシル、1,3,4-シクロペンタントリカルボン酸トリ2-エチルヘキシル、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸トリエチル、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸トリ2-エチルヘキシル、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸トリイソノニル、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸トリス(2,2,4-トリメチルペンチル)、などが挙げられる。
【0060】
エステル化合物(5)の具体例として芳香族エステルでは、トリメリット酸トリブチル、トリメリット酸トリ2-エチルヘキシル、トリメリット酸トリn-オクチル、トリメリット酸トリイソノニル、1,3,5―ベンゼントリカルボン酸トリ2-エチルヘキシル、1,3,5―ベンゼントリカルボン酸トリイソノニルなどが挙げられる。
【0061】
<エステル化合物(6)>
エステル化合物(6)は、化学式(6)で表される構造を有する。エステル化合物(6)は、例えば、脂肪族エステル又は芳香族エステルであり、例えば、1つのテトラカルボン酸と4つのモノアルコールからなるエステル化合物である。エステル化合物(6)が脂肪族エステルである場合、R14~R17、若しくはXのいずれか、または全ての部分に、分岐構造、又は環状構造、又はヘテロ原子の少なくとも一方を含むことが好ましく、この中でもR14~R17には、分岐構造を含むことがより好ましい。エステル化合物(6)が芳香族エステルである場合、R14~R17、Xのいずれかに最低一つの芳香環を有していればよく、この中でもXに芳香環を含む構造が好ましく、Xに芳香環を含む場合は、カルボニル基の炭素原子に直接芳香環が結合していることが、より好ましい。
【0062】
【化6】
(式中、Xはヘテロ原子を含んでもよい炭素数1~25の炭化水素基であり、R14~R17は、それぞれ、ヘテロ原子を含んでもよい炭素数1~25の炭化水素基であり、X及びR14~R17の炭化水素基は、それぞれ、脂肪族又は芳香族であり、直鎖状又は分岐鎖状であるか、又は環状構造を有する。)
【0063】
X及びR14~R17の炭化水素基の炭素数は、好ましくは、2~18であり、具体的には例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。X及びR14~R17のヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子などが挙げられ、この中でも酸素原子を含む事が好ましい。
【0064】
Xの炭化水素基が環状構造を有する場合、この環状構造は、芳香環構造、脂肪族の六員環構造、ヘテロ原子含有環状構造の少なくとも1つを有することが好ましい。
【0065】
エステル化合物(6)の具体例として脂肪族エステルでは、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸テトラエチル、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸テトライソプロピル、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸テトラ2-エチルヘキシル、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸テトラn-オクチル、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸イソノニル、テトラヒドロフラン-2,3,4,5―テトラカルボン酸トリエチル、テトラヒドロフラン-2,3,4,5-テトラカルボン酸2-エチルヘキシルなどが挙げられる。
【0066】
エステル化合物(6)の具体例として芳香族エステルでは、ピロメリット酸テトラエチル、ピロメリット酸テトライソプロピル、ピロメリット酸テトラ2-エチルヘキシル、ピロメリット酸テトラn-オクチル、ピロメリット酸イソノニルなどが挙げられる。
【0067】
<エステル化合物(7)>
エステル化合物(7)は、化学式(7)で表される構造を有する。エステル化合物(7)は、例えば、脂肪族エステル又は芳香族エステルであり、例えば、1つのジオールと2つのモノカルボン酸からなるエステル化合物である。エステル化合物(7)が脂肪族エステルである場合、R18~R19、若しくはXのいずれか、または全ての部分に、分岐構造、又は環状構造、又はヘテロ原子の少なくとも一方を含むことが好ましく、この中でもX部分に、分岐構造、又は環状構造、又はヘテロ原子を含むことがより好ましい。エステル化合物(7)が芳香族エステルである場合、R18~R19、Xのいずれかに最低一つの芳香環を有していればよく、この中でもR18~R19に芳香環を含む構造が好ましく、R18~R19に芳香環を含む場合は、カルボニル基の炭素原子に直接芳香環が結合していることが、より好ましい。
【0068】
【化7】
(式中、Xはヘテロ原子を含んでもよい炭素数1~25の炭化水素基であり、R18~R19は、それぞれ、ヘテロ原子を含んでもよい炭素数1~25の炭化水素基であり、X及びR18~R19の炭化水素基は、それぞれ、脂肪族又は芳香族であり、直鎖状又は分岐鎖状であるか、又は環状構造を有する。)
【0069】
Xの炭化水素基が環状構造を有する場合、この環状構造は、芳香環構造、脂肪族の六員環構造、ヘテロ原子含有環状構造の少なくとも1つを有することが好ましい。
【0070】
エステル化合物(7)の具体例として脂肪族エステルでは、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、1,3-ブチレングリコールジアセテート、1,2-ペンタンジオールジアセテート、1,6-ヘキサンジオールジアセテート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジアセテート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジ2-メチルブチラート、1,4-シクロヘキサンジメタノールジイソバレラート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジ2-エチルヘキサノエート、1,4-シクロヘキサンジメタノールビス(2-エチルヘキサノエート) 、トリエチレングリコールジ(2-エチルヘキサノエート)、プロピレングリコールジラウレート、ジ2-エチルヘキサノアートイソソルビド、などが挙げられる。
【0071】
エステル化合物(7)の具体例として芳香族エステルでは、2,5-ジアセトキシトルエン、2,5-ジブトキシトルエン、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジベンゾエート、ジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、などが挙げられる。
【0072】
<エステル化合物(8)>
エステル化合物(8)は、化学式(8)で表される構造を有する。エステル化合物(8)は、例えば、脂肪族エステル又は芳香族エステルであり、例えば、1つのトリオールと3つのモノカルボン酸からなるエステル化合物である。エステル化合物(8)が脂肪族エステルである場合、R20~R22、若しくはXのいずれか、または全ての部分に、分岐構造、又は環状構造、又はヘテロ原子の少なくとも一方を含むことが好ましく、この中でもX部分に、分岐構造、又は環状構造、又はヘテロ原子を含むことがより好ましい。エステル化合物(8)が芳香族エステルである場合、R20~R22、Xのいずれかに最低一つの芳香環を有していればよく、この中でもR20~R22に芳香環を含む構造が好ましく、R20~R22に芳香環を含む場合は、カルボニル基の炭素原子に直接芳香環が結合していることがより好ましい。
【0073】
【化8】
(式中、Xはヘテロ原子を含んでもよい炭素数1~25の炭化水素基であり、R20~R22は、それぞれ、ヘテロ原子を含んでもよい炭素数1~25の炭化水素基であり、X及びR20~R22の炭化水素基は、それぞれ、脂肪族又は芳香族であり、直鎖状又は分岐鎖状であるか、又は環状構造を有する。)
【0074】
Xの炭化水素基が環状構造を有する場合、この環状構造は、芳香環構造、脂肪族の六員環構造、ヘテロ原子含有環状構造の少なくとも1つを有することが好ましい。
【0075】
エステル化合物(8)の具体例として脂肪族エステルでは、三酢酸グリセロール、三酪酸グリセロール、トリス(2-エチルヘキサン酸)グリセロール、トリオクタン酸グリセロール、トリラウリン酸グリセロール、トリステアリン酸グリセロール、トリオレイン酸グリセロール、ジアセチルラウロイルグリセロール、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油などが挙げられる。
【0076】
エステル化合物(8)の具体例として芳香族エステルでは、1,2,4-トリアセトキシベンゼン、1,2,4-イソプロパノキシシベンゼン、2-ベンジルグリセロールジアセタート、などが挙げられる。
【0077】
<エステル化合物Cの入手又は製造方法、配合方法、配合量>
エステル化合物Cは、特に制限なく、公知の方法で製造したものや、市販品、試薬等で入手できるもの等が使用できる。
【0078】
公知の製造法としては、例えば、カルボン酸類とアルコール類による脱水縮合反応、エステル類とアルコール類によるエステル交換反応、及び、カルボン酸クロライドとアルコール類のエステル合成反応等が挙げられる。また、一部のエステル化合物は、市販品として入手できる類似化合物の不飽和部分をエポキシ化、又は水素化する方法、あるいは、市販のエステル化合物の置換反応、カップリング反応など、市販品の部分変換により製造できる。
【0079】
1-3.防汚薬剤D
防汚薬剤としては、例えば無機薬剤及び有機薬剤が挙げられる。
無機薬剤としては、例えば、亜酸化銅、チオシアン酸銅(一般名:ロダン銅)、銅粉等が挙げられる。この中でも特に、亜酸化銅とロダン銅が好ましく、亜酸化銅はグリセリン、ショ糖、ステアリン酸、ラウリン酸、リシチン、鉱物油などで表面処理されているものが、貯蔵時の長期安定性の点でより好ましい。
有機薬剤としては、例えば、2-メルカプトピリジン-N-オキシド銅(一般名:カッパーピリチオン)、2-メルカプトピリジン-N-オキシド亜鉛(一般名:ジンクピリチオン)、ジンクエチレンビスジチオカーバメート(一般名:ジネブ)、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-3-イソチアゾロン(一般名:シーナイン211)、3,4-ジクロロフェニル-N-N-ジメチルウレア(一般名:ジウロン)、2-メチルチオ-4-t-ブチルアミノ-6-シクロプロピルアミノ-s-トリアジン(一般名:イルガロール1051)、2-(p-クロロフェニル)-3-シアノ-4-ブロモ-5-トリフルオロメチルピロール(一般名:Econea28)、4-[1-(2,3-ジメチルフェニル)エチル]-1H-イミダゾール(一般名:メデトミジン)等が挙げられる。
これらの防汚薬剤は1種又は2種以上併用して使用できる。
【0080】
本発明の組成物中における防汚薬剤の含有量は特に制限されないが、固形分換算で、通常0.1~60.0質量%である。防汚薬剤の含有量は、例えば、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0081】
1-4.他の添加剤
さらに本発明の防汚塗料用樹脂には、必要に応じて、共重合体A以外の樹脂成分、溶出調整剤、可塑剤、顔料、染料、消泡剤、脱水剤、揺変剤、有機溶剤等を添加して防汚塗料とすることができる。
【0082】
他の樹脂成分としては、例えば、共重合体B、重合体Pなどが挙げられる。
共重合体Bは、単量体(b1)と単量体(b2)の共重合体であり、単量体(b1)と単量体(b2)に由来する単量体単位を含む。単量体(b1)と単量体(b2)の合計に対する単量体(b1)の含有量は、10~90質量%が好ましく、20~70質量%が更に好ましい。具体的には例えば、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。この場合に、塗膜溶解性が特に良好となる。
【0083】
重合方法、開始剤、溶媒、温度、その他の条件、Mwの測定方法等は、共重合体Aで既記の手法が適用できる。
本発明の組成物中における共重合体Bの含有量は特に制限されないが、共重合体Aとの含有割合が、固形分換算で、質量比(共重合体B/共重合体A)は、通常0.1~0.9であり、好ましくは0.3~0.7である。この質量比は、例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0084】
重合体Pは、前記単量体(b2)を重合することにより得られる重合体である。
本発明においては、単量体(b2)を単独又は二種以上で用いることができ、特に、共重合体Aとの相溶性の観点から、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸フルフリル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸ベンジル等が好ましい。
重合方法、開始剤、溶媒、温度、その他の条件、Mwの測定方法等は、共重合体Aで既記の手法が適用できる。
本発明の組成物中における重合体Pの含有量は特に制限されないが、共重合体Aとの含有割合が、固形分換算で、質量比(重合体P/共重合体A)は、通常0.1~0.5であり、好ましくは0.1~0.3である。この質量比は、例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0085】
溶出調整剤としては、例えば、ロジン、ロジン誘導体、ナフテン酸、シクロアルケニルカルボン酸、ビシクロアルケニルカルボン酸、バーサチック酸、トリメチルイソブテニルシクロヘキセンカルボン酸、及びこれらの金属塩等の、モノカルボン酸及びその塩、又は前記脂環式炭化水素樹脂が挙げられる。これらは単独又は2種以上で使用できる。
前記ロジン誘導体としては、水添ロジン、不均化ロジン、マレイン化ロジン、ホルミル化ロジン、重合ロジン等を例示できる。
前記脂環式炭化水素樹脂としては、市販品として、例えば、クイントン1500、1525L、1700(商品名、日本ゼオン社製)等が挙げられる。
この中でもロジン、ロジン誘導体、ナフテン酸、バーサチック酸、トリメチルイソブテニルシクロヘキセンカルボン酸、又はこれらの金属塩が好ましい。
【0086】
脱水剤としては、例えば、硫酸カルシウム、合成ゼオライト系吸着剤、オルソエステル類、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のシリケート類やイソシアネート類、カルボジイミド類、カルボジイミダゾール類等が挙げられる。これらは単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0087】
2.防汚塗料組成物の製造方法
本発明の防汚塗料組成物は、例えば、共重合体及び防汚薬剤、他の添加剤等を含有する混合液を、分散機を用いて混合分散することにより製造できる。
前記混合液としては、共重合体及び防汚薬剤等の各種材料を溶媒に溶解または分散させたものであることが好ましい。
前記分散機としては、例えば、微粉砕機として使用できるものを好適に用いることができる。例えば、市販のホモミキサー、サンドミル、ビーズミル、ディスパー等を使用することができる。また、撹拌機を備えた容器に混合分散用のガラスビーズ等を加えたものを用い、前記混合液を混合分散してもよい。
【0088】
3.防汚処理方法、防汚塗膜、および塗装物
本発明の防汚処理方法は、上記防汚塗料組成物を用いて被塗膜形成物の表面に防汚塗膜を形成する。本発明の防汚処理方法によれば、前記防汚塗膜が表面から徐々に溶解し塗膜表面が常に更新されることにより、水棲汚損生物の付着防止を図ることができる。
被塗膜形成物としては、例えば、船舶(特に船底)、漁業具、水中構造物等が挙げられる。
防汚塗膜の厚みは、被塗膜形成物の種類、船舶の航行速度、海水温度等に応じて適宜設定すればよい。例えば、被塗膜形成物が船舶の船底の場合、防汚塗膜の厚みは通常50~700μm、好ましくは100~600μmである。
【実施例
【0089】
以下に、実施例等を示し本発明の特徴とするところをより一層明確にする。ただし、本発明は実施例等に限定されるものではない。
各製造例、実施例及び比較例中の%は質量%を示す。重量平均分子量(Mw)は、GPCにより求めた値(ポリスチレン換算値)である。GPCの条件は下記の通りである。
装置・・・ 東ソー株式会社製 HLC-8220GPC
カラム・・・ TSKgel SuperHZM-M 2本
流量・・・ 0.35 mL/min
検出器・・・ RI
カラム恒温槽温度・・・ 40℃
溶離液・・・ THF
加熱残分は、JIS K 5601-1-2:1999(ISO 3251:1993)「塗料成分試験方法-加熱残分」に準拠して測定した値である。
【0090】
1.製造例
1-1.単量体(a1)の製造例
<製造例1(単量体a1-1の製造)>
温度計、冷却器、攪拌装置及び滴下ロートを備えた四ツ口フラスコに、クロロ酢酸メチル:109g(1.00mol)、アクリル酸:72g(1.00mol)、4-メトキシフェノール:0.1g、酢酸エチル:500gを仕込み、攪拌しながらトリエチルアミン:101g(1.00mol)を40℃以下に保ちながら滴下した。滴下終了後、70~80℃で6時間攪拌した。反応終了後、市水、塩酸水、重曹水の順に有機層を洗浄後、減圧濃縮により溶媒を留去することで単量体a1-1:129.7gを得た。
<製造例2~3(単量体a1-2~a1-3の製造)>
表1に示す原料を用いて、製造例1と同様の操作で反応を行うことにより単量体a1-2~a1-3を得た。製造例1~3の反応条件、収量を表1に示す。
【0091】
【表1】
【0092】
1-2.単量体(a2)の製造例
<製造例4(単量体a2-1の製造)>
(第1反応)
温度計、冷却器、攪拌装置を備えた四ツ口フラスコに、モノクロロ酢酸ナトリウム:215g(1.85mol)、クロロ酢酸メチル:201g(1.85mol)、N-メチル-2-ピロリドン:300gを仕込み、70~80℃で6時間攪拌した。反応終了後、反応液にトルエン:500mlを仕込み、市水、塩酸水、重曹水の順に有機層を洗浄後、減圧濃縮により溶媒を留去することでクロロ酢酸メトキシカルボニルメチル:262gを得た。
【0093】
(第2反応)
次いで、温度計、冷却器、攪拌装置及び滴下ロートを備えた四ツ口フラスコに、第1反応の生成物であるクロロ酢酸メトキシカルボニルメチル:200g(1.20mol)、アクリル酸:87g(1.20mol)、4-メトキシフェノール:0.1g、酢酸エチル:500gを仕込み、攪拌しながらトリエチルアミン:122g(1.20mol)を40℃以下に保ちながら滴下した。滴下終了後、70~80℃で6時間攪拌した。反応終了後、市水、塩酸水、重曹水の順に有機層を洗浄後、減圧濃縮により溶媒を留去することで単量体a2-1:230.6gを得た。
【0094】
<製造例5~18(単量体a2-2~a2-15の製造)>
表2に示す原料を用いて、製造例4と同様の操作で反応を行うことにより、表2に示す単量体a2-2~a2-15を得た。製造例4~18の反応条件、収量を表2に示す。
【0095】
【表2】
【0096】
表1~表2中の原料の詳細は、以下の通りである。
CAMe:クロロ酢酸メチル
CAEt:クロロ酢酸エチル
AA:アクリル酸
MAA:メタクリル酸
TEA:トリエチルアミン
MEHQ:4-メトキシフェノール
CANa:モノクロロ酢酸ナトリウム
NMP:N-メチル-2-ピロリドン
【0097】
1-3.共重合体溶液の製造例
<製造例P1(共重合体溶液A-1の製造)>
温度計、冷却器、攪拌装置及び滴下ロートを備えた四ツ口フラスコに、溶剤として、キシレン:80g、及び1-ブタノール:20gを仕込み、窒素ガスを導入し、攪拌しながら88℃を保持した。そこへ、表3に示す配合量(g)の単量体(a1)、単量体(a2)及び単量体(b)と、重合開始剤として、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート:2.0g(初期添加)の混合液を88℃で保持しながら3時間かけて滴下した。その後、88℃で1時間攪拌を行った後、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート:0.1gを1時間毎に3回添加し、さらに同温度で2時間攪拌を行った後、室温に冷却し、共重合体溶液A-1を得た。A-1の加熱残分、Mwを表3に示す。
【0098】
<製造例P2~P5(共重合体溶液A-2~5の製造)>
表3に示す単量体、重合開始剤及び溶剤を用いた以外は、製造例P1と同様の操作で重合反応を行うことにより共重合体溶液A-2~A-5を得た。各重合体の加熱残分、Mwを表3に示す。表中の原料の配合量の数値の単位は、gである。
【0099】
【表3】
【0100】
<製造例P6(共重合体溶液B-1の製造)>
温度計、還流冷却器、撹拌機及び滴下ロートを備えたフラスコに、キシレン200gを仕込み、窒素雰囲気下、85±5℃で攪拌しながら、アクリル酸トリイソプロピルシリル270g、メタクリル酸メチル200g、アクリル酸2-メトキシエチル25g、アクリル酸テトラヒドロフルフリル5g及び重合開始剤である1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート2.4gの混合液を2時間かけて滴下した。その後同温度で1時間攪拌を行った後、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート0.3gを1時間毎に5回添加して重合反応を完結した後、加熱残分が50%になるようにキシレンを添加し溶解させることにより、トリオルガノシリルエステル含有共重合体溶液B-1を得た。得られた共重合体溶液の粘度は300mPa・s(25℃)、加熱残分は49.5%、Mwは48,000であった。
【0101】
1-4.その他製造例
<製造例D1(ガムロジン溶液の製造)>
温度計、還流冷却器、及び攪拌機を備えたフラスコに、中国産ガムロジン(WW)300gとキシレン310gをフラスコに入れ、70~80℃で1時間、減圧下で還流脱水することにより、ガムロジンのキシレン溶液(褐色透明液体、固形分50%)を得た。得られた溶液の加熱残分は、50.3%であった。
【0102】
<製造例D2(水添ロジン溶液の製造)>
製造例D1の中国産ガムロジン(WW)を水添ロジンに変える以外は製造例D1と同じ方法で、水添ロジンのキシレン溶液(褐色透明液体、固形分50%)を得た。得られた溶液の加熱残分は、50.1%であった。
【0103】
<製造例D3(ガムロジン亜鉛塩溶液の製造)>
温度計、還流冷却器、及び攪拌機を備えたフラスコに、中国産ガムロジン(WW)240gとキシレン360gをフラスコに入れ、更に、前記ロジン中の樹脂酸が全て亜鉛塩を形成するように酸化亜鉛120gを加え、70~80℃で3時間、減圧下で還流脱水した。その後、冷却しろ過を行うことにより、ガムロジン亜鉛塩のキシレン溶液(濃褐色透明液体、固形分50%)を得た。得られた溶液の加熱残分は、50.2%であった。
【0104】
<製造例D4(水添ロジン亜鉛塩溶液の製造)>
製造例D3の中国産ガムロジン(WW)を水添ロジンに変える以外は製造例D3と同じ方法で、水添ロジン亜鉛塩のキシレン溶液(濃褐色透明液体、固形分50%)を得た。得られた溶液の加熱残分は、50.5%であった。
【0105】
2.実施例1~91及び比較例1~16(塗料組成物の製造)
表4~表13に示す成分を同表に示す割合(質量%)で配合し、直径1.5~2.5mmのガラスビーズと混合分散することにより塗料組成物を製造した。
【0106】
【表4】
【0107】
【表5】
【0108】
【表6】
【0109】
【表7】
【0110】
【表8】
【0111】
【表9】
【0112】
【表10】
【0113】
【表11】
【0114】
【表12】
【0115】
【表13】
【0116】
表中の成分の詳細は、以下の通りである。
【0117】
<エステル化合物C>
<<エステル化合物(3)>>
DAD:デカン酸デシル:商品名「Decyl Decanoate」(東京化成(株)製)
PAiPr:パルミチン酸イソプロピル:商品名「Isopropyl Palmitate」(東京化成(株)製)
MENTA:メンチルアセテート:商品名「(-)-Menthyl Acetate」(東京化成(株)製)
i-BoAc:イソボルニルアセテート:商品名「Isobornyl Acetate」(東京化成(株)製)
LAHD:乳酸ヘキサデシル:商品名「Hexadecyl Lactate」(東京化成(株)製)
MISAG:モノイソステアリン酸グリセロール:商品名「モノイソステアリン酸グリセロール」(和光純薬工業(株) 製)
ARAM:アセチルリシノール酸メチル:商品名「Methyl O-Acetylricinoleate」(東京化成(株)製)
DHJAM:ジヒドロジャスモン酸メチル:商品名「Methyl Dihydrojasmonate」(東京化成(株)製)
E-6000:エポキシ化脂肪酸2-エチルヘキシル:商品名「サンソサイザー E-6000」(新日本理化(株)製)
ECHECH:3,4-エポキシシクロヘキサンカルボン酸3,4-エポキシシクロヘキシルメチル:商品名「3',4'-エポキシシクロヘキサンカルボン酸3,4-エポキシシクロヘキシルメチル」(和光純薬工業(株) 製)
PATHF:プロピオン酸テトラヒドロフルフリル:商品名「Tetrahydrofurfuryl Propionate」(東京化成(株)製)
BAEH:2-エチルヘキシルベンゾエート:商品名「2-Ethylhexyl Benzoate」(東京化成(株)製)
n-OFA:n-オクチル2-フランカルボキシレート:商品名「n-Octyl 2-Furancarboxylate」(東京化成(株)製)
MPhGAE:3-メチル-3-フェニルグリシド酸エチル:商品名「Ethyl 3-Methyl-3-phenylglycidate」(東京化成(株)製)
【0118】
<<エステル化合物(4)>>
AADBE:アジピン酸ジ2-ブトキシエチル:商品名「Bis(2-butoxyethyl) Adipate」(東京化成(株)製)
AAEH:アジピン酸ジ2-エチルヘキシル:商品名「Bis(2-ethylhexyl) Adipate」(東京化成(株)製)
AADiN:アジピン酸ジイソノニル:商品名「アジピン酸ジイソノニル」(和光純薬工業(株)製)
AADiD:アジピン酸ジイソデシル:商品名「アジピン酸ジイソデシル」(和光純薬工業(株)製)
AzAEH:アゼライン酸ジ2-エチルヘキシル:商品名「Bis(2-ethylhexyl) Azelate」(東京化成(株)製)
DOS:セバシン酸ジ2-エチルヘキシル:商品名「サンソサイザー DOS」(新日本理化(株)製)

DECH:1,1-シクロヘキサンジカルボン酸ジエチル:商品名「Diethyl 1,1-Cyclohexanedicarboxylate」(東京化成(株)製)
DGCH:1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジル:商品名「Diglycidyl 1,2-Cyclohexanedicarboxylate」(東京化成(株)製)
DMCDO:1,4-シクロヘキサンジオン-2,5-ジカルボン酸ジメチル:商品名「Dimethyl 1,4-Cyclohexanedione-2,5-dicarboxylate」(東京化成(株)製)
DINCH:1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル:商品名「HEXAMOLL(登録商標) DINCH(登録商標)」(BASF社製)
DEHTH:4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸ジ2-エチルヘキシル:商品名「サンソサイザー DEHTH」(新日本理化(株)製)
E-PS:4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸ジ2-エチルヘキシル:商品名「サンソサイザー E-PS」(新日本理化(株)製)
EP-18:4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸ジステアリル:商品名「リカフロー EP-18」(新日本理化(株)製)
E-PO:4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸ジエポキシステアリル:商品名「サンソサイザー E-PO」(新日本理化(株)製)
DEHP:ジ2-エチルヘキシルフタレート:商品名「フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)」(和光純薬工業(株)製)
DINP:ジイソノニルフタレート:商品名「フタル酸ジイソノニル」(和光純薬工業(株)製)
DIDP:ジイソデシルフタレート:商品名「フタル酸ジイソデシル」(和光純薬工業(株)製)
EPEG:エチルフタリルエチルグリコラート:商品名「Ethyl Phthalyl Ethyl Glycolate」(東京化成(株)製)
BPBG:ブチルフタリルブチルグリコラート:商品名「Butyl Phthalyl Butyl Glycolate」(東京化成(株)製)
m-PAEH:イソフタル酸ジ2-エチルヘキシル:商品名「Bis(2-ethylhexyl) Isophthalate」(東京化成(株)製)
p-PAEH:テレフタル酸ジ2-エチルヘキシル:商品名「Bis(2-ethylhexyl) terephthalate」(SIGMA-ALDRICH社製)
【0119】
<<エステル化合物(5)>>
TECA:クエン酸トリエチル:商品名「Triethyl Citrate」(東京化成(株)製)
TEACA:アセチルクエン酸トリエチル:商品名「Triethyl O-Acetylcitrate」(東京化成(株)製)
TBACA:アセチルクエン酸トリブチル:商品名「Tributyl O-Acetylcitrate」(東京化成(株)製)
TEHACA:アセチルクエン酸2-エチルヘキシル:商品名「CITROFOL(登録商標) AHII」(Jungbunzlauer製)
BTHC:ブチリルクエン酸トリヘキシル:商品名「Trihexyl O-Butyrylcitrate」(東京化成(株)製)
TEHTM:トリメリット酸トリ2-エチルヘキシル:商品名「Tris(2-ethylhexyl) Trimellitate」(東京化成(株)製)
TiNTM:トリメリット酸トリイソノニル:商品名「アデカサイザー C-9N」(ADEKA(株)製)
【0120】
<<エステル化合物(6)>>
UL-80:ピロメリット酸テトラ2-エチルヘキシル:商品名「アデカサイザー UL-80」(ADEKA(株)製)
UL-100:ピロメリット酸混合直鎖アルキルエステル:商品名「アデカサイザー L-100」(ADEKA(株)製)
【0121】
<<エステル化合物(7)>>
TMPIB:2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレート:商品名「2,2,4-Trimethyl-1,3-pentanediol Diisobutyrate」(東京化成(株)製)
CHMEH:1,4-シクロヘキサンジメタノールビス(2-エチルヘキサノエート)
HDOA:1,6-ヘキサンジオールジアセテート:商品名「1,6-Diacetoxyhexane」(東京化成(株)製)
P-1783:トリエチレングリコールジ(2-エチルヘキサノエート):商品名「Proviplast 1783」(三光(株)製)
DEGDB:ジエチレングリコールジベンゾアート:商品名「Diethylene Glycol Dibenzoate」(東京化成(株)製)
DPGDB:ジプロピレングリコールジベンゾアート:商品名「Di(propylene glycol) dibenzoate」(Sigma-Aldrich製)
【0122】
<<エステル化合物(8)>>
TAAG:三酢酸グリセロール:商品名「Triacetin」(東京化成(株)製)
TBAG:三酪酸グリセロール:商品名「トリブチリン」(和光純薬工業(株) 製)
TEHAG:トリス(2-エチルヘキサン酸)グリセロール:商品名「トリス(2-エチルヘキサン酸)グリセロール」(和光純薬工業(株) 製)
TOAG:トリオレイン酸グリセリル:商品名「Glyceryl trioleate」(Sigma-Aldrich製)
E-2000H:エポキシ化大豆油:商品名「サンソサイザー E-2000H」(新日本理化(株)製)
E-9000H:エポキシ化亜麻仁油:商品名「サンソサイザー E-9000H」(新日本理化(株)製)
【0123】
<防汚薬剤D>
亜酸化銅:商品名「NC-301」(日進ケムコ株式会社製)
銅ピリチオン:商品名「カッパーオマジン」(LONZA株式会社製)
Sea Nine:商品名「シーナイン211」、4,5-ジクロロ-2-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン(R&H社製)、有効成分30%キシレン溶液
Zineb:[エチレンビス(ジチオカーバメート)]亜鉛(大内振興化学工業株式会社製)
亜鉛ピリチオン:(LONZA株式会社製)
Econea 028:商品名「Econea 028」2-(p-クロロフェニル)-3-シアノ-4-ブロモ-5-トリフルオロメチルピロール(ヤンセンPMP製)
メデトミジン:(±)-4-[1-(2,3-ジメチルフェニル)エチル]-1H-イミダゾール(和光純薬工業株式会社製)
ロダン銅:チオシアン酸第一銅(日本化学産業株式会社製)
ジウロン:商品名「ジウロン」(東京化成工業社製)
【0124】
<溶出調整剤>
水添ロジン亜鉛溶液:製造例D4で製造したものを使用
ガムロジン亜鉛塩溶液:製造例D3で製造したものを使用
ガムロジン溶液:製造例D1で製造したものを使用
水添ロジン溶液:製造例D2で製造したものを使用
【0125】
<顔料>
ベンガラ:商品名「ベンガラキンギョク」(森下弁柄工業株式会社製)
タルク:商品名「タルクMS」(日本タルク株式会社製)
酸化亜鉛:商品名「酸化亜鉛2種」(正同化学工業株式会社製)
酸化チタン:商品名「FR-41」(古河機械金属株式会社製)
【0126】
<その他の添加剤>
ディスパロンA603-20X:アマイド系チクソトロピック剤:商品名「ディスパロンA603-20X」(楠本化成株式会社製)
トリクレジルフォスフェート:(大八化学化学工業株式会社製)
Lutonal A-25:アルキルビニルエーテル重合体:(BASF(社)製)
PEG400:ポリエチレングリコール:商品名「Polyethylene Glycol400」(東京化成(株)製)
ポリブテン:商品名「ポリブテン0N」(日本油脂(株)製)
流動パラフィン:モレスコホワイトP-100(MORESCO(株)製)
テトラエトキシシラン:商品名「エチルシリケート28」(コルコート株式会社製)
【0127】
<溶剤>
変性アルコール:商品名「クリンエース・ハイ」(今津薬品工業(株)製)
【0128】
3.試験
実施例・比較例の塗料組成物は、全て、製造後1時間以内に密閉した容器に入れ、50℃に設定した恒温装置の中で30日間静置(促進劣化処理)した後に、使用した。前述の処理を行った塗料について、以下に示す試験を行った。評価結果を表4~表12に示す。
全ての比較例では、実施例に比べて、ロータリー試験と防汚試験のいずれかにおいて結果が良好でなかった。
【0129】
<試験例1(ロータリー試験)>
水槽の中央に直径515mm及び高さ440mmの回転ドラムを取付け、これをモーターで回転できるようにした。また、海水の温度を一定に保つための冷却装置、及び海水のpHを一定に保つためのpH自動コントローラーを取付けた。
【0130】
試験板を下記の方法に従って作製した。
【0131】
まず、チタン板(71×100×0.5mm)上に、防錆塗料(エポキシビニル系A/C)を乾燥後の厚みが約100μmとなるよう塗布し乾燥させることにより防錆塗膜を形成した。その後、実施例及び比較例で得られた塗料組成物を、乾燥膜厚が約450μmとなるように塗布し、40℃で3日乾燥させることにより、試験板を用意した。
【0132】
作製した試験板を上記装置の回転装置の回転ドラムに海水と接触するように固定して、20ノットの速度で回転ドラムを回転させた。その間、海水の温度を25℃、pHを8.0~8.2に保ち、二週間毎に海水を入れ換えた。
【0133】
各試験板の初期と試験開始後24ヶ月後の残存膜厚を(株)キーエンス製の形状測定レーザーマイクロスコープVK-X100で測定し、その差から溶解した塗膜厚を計算することにより1ヶ月あたりの塗膜溶解量(μm/月)を得て、以下の基準により塗膜の溶解性を評価した。
【0134】
◎:1ヶ月当たりの平均溶解量(μm/月)が5μm以上、10μm未満、理想的な溶解量。
○:1ヶ月当たりの平均溶解量(μm/月)が2μm以上、5μm未満、やや溶解量が少ない。
△:1ヶ月当たりの平均溶解量(μm/月)が10μm以上、やや溶け過ぎ。
×:1ヶ月当たりの平均溶解量(μm/月)が2μm未満、まったく溶けていない。
××:24ヶ月以内に、すべての塗膜が溶解、もしくは剥離した、明らかに溶け過ぎ。
-:促進劣化処理後、塗料に増粘やゲル化など不具合が生じ、対象の試験が行えなかった。
【0135】
また、ロータリー試験24ヶ月後の残存膜厚の測定時、各塗膜表面を肉眼及びマイクロスコープで観察して塗膜の表面状態を評価した。
【0136】
塗膜表面状態の評価は以下の基準で行った。
◎:全く異常のない場合
○:塗膜表面全面積の1割未満に、ヘアークラックが見られるもの
△:塗膜表面全面積の1~3割に、ヘアークラックが見られるもの
×:塗膜表面全面積の3割以上に、ヘアークラックが見られるもの
××:大きなクラック、ブリスター又はハガレ(塗膜の表面のみや端の一部が剥がれる事)、剥離(塗膜全体が剥がれて、試験塗膜が残っていない状態)などの塗膜に異常が見られるもの
-:促進劣化処理後、塗料に増粘やゲル化など不具合が生じ、対象の試験が行えなかった。
【0137】
<試験例2(防汚試験)>
実施例及び比較例で得られた塗料組成物を、硬質塩ビ板(100×200×2mm)の両面に乾燥塗膜としての厚みが約300μmとなるよう塗布した。得られた塗布物を室温(25℃)で3日間乾燥させることにより、厚みが約300μmの乾燥塗膜を有する試験板を作製した。この試験板を三重県尾鷲市の海面下1.5mに浸漬して付着物による試験板の汚損を18ヶ月後、36ヶ月後に観察した。
【0138】
評価は、塗膜表面の状態を目視観察することにより行い、以下の基準で判断した。
◎:貝類や藻類などの汚損生物の付着がなく、かつ、スライムも殆どなし。
○:貝類や藻類などの汚損生物の付着がなく、かつ、スライムが薄く(塗膜面が見える程度)付着しているものの刷毛で軽く拭いて取れるレベル。
△:貝類や藻類などの汚損生物の付着はないが、塗膜面が見えない程スライムが厚く付着しており、刷毛で強く拭いても取れないレベル。
×:貝類や藻類などの汚損生物が付着しているレベル
-:促進劣化処理後、塗料に増粘やゲル化など不具合が生じ、対象の試験が行えなかった。