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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-18
(45)【発行日】2025-07-29
(54)【発明の名称】電力制御システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 13/00 20060101AFI20250722BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20250722BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20250722BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20250722BHJP
【FI】
H02J13/00 311R
H02J3/32
H02J7/34 B
H02J7/35 K
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021054114
(22)【出願日】2021-03-26
(65)【公開番号】P2022151173
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2024-03-12
(73)【特許権者】
【識別番号】312002347
【氏名又は名称】株式会社エナリス
(74)【代理人】
【識別番号】100117514
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 敦朗
(72)【発明者】
【氏名】平尾 宏明
(72)【発明者】
【氏名】小林 輝夫
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0158727(US,A1)
【文献】国際公開第2018/147218(WO,A1)
【文献】特開2012-196123(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 13/00
H02J 3/32
H02J 7/34
H02J 7/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受変電設備に接続された電力系統を通じて電力を各需要単位に対して供給するとともに、各需要単位における発電、放電又は送受電を制御する電力制御システムであって、
前記電力系統に接続され、電力の需要単位毎に設置された複数の蓄電装置と、
前記需要単位毎に設けられ、前記各蓄電装置の充電又は前記蓄電装置から各需要単位における負荷への放電の制御を行う複数の制御装置と、
前記複数の制御装置に関する情報を、各需要単位における発電及び放電の制御パターンに従い各制御装置を地域毎のグループに分類して蓄積する管理データベースと、
前記グループ単位における需要に対する蓄放電の割合を設定する制御パターンを設定するモード設定部と、
前記モード設定部が選択した制御パターンに従って前記管理データベースを参照し、前記所定のグループ単位で前記蓄電装置の充電又は放電のスケジュールを作成し、前記スケジュールに従って制御を行うグループ管理部と
を備えることを特徴とする電力制御システム。
【請求項2】
前記制御装置は、各需要単位に備えられた各蓄電装置の充電及び放電の状況を実績情報として前記グループ管理部に通知する機能をさらに有し、
前記グループ管理部は、前記制御装置からの実績情報を前記管理データベースに蓄積し、集計された実績情報に基づいて前記所定のグループ単位での制御を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の電力制御システム。
【請求項3】
前記管理データベースでは、発電及び放電の制御パターンについて、前記グループ毎に、特定の街区単位の網内での完結、他の系統に対する売電、若しくは各需要単位内での完結、のいずれを優先させるかについての優先度が付与されており、
前記グループ管理部は、実績情報に基づいて前記集計を再実行して前記グループ単位での制御を行う再計算機能を有している
ことを特徴とする請求項2に記載の電力制御システム。
【請求項4】
受変電設備に接続された電力系統を通じて電力を各需要単位に対して供給するとともに、各需要単位における発電、放電又は送受電を制御する電力制御方法であって、
電力の需要単位毎に設置された複数の蓄電装置を前記電力系統に接続するとともに、前記需要単位毎に、前記各蓄電装置の充電又は前記蓄電装置から各需要単位における負荷への放電の制御を行う制御装置を設置する工程と、
前記複数の制御装置に関する情報を、各需要単位における発電及び放電の制御パターンに従い各制御装置を所定のグループに分類して管理データベースに蓄積する工程と、
モード設定部が、前記グループ単位における需要に対する蓄放電の割合を設定する制御パターンを選択するモード選択ステップと
グループ管理部が、前記モード選択ステップにおいて選択された前記制御パターンに従って前記管理データベースを参照し、前記所定のグループ単位で前記蓄電装置の充電又は放電のスケジュールを作成し、前記スケジュールに従って制御を行う工程と
を含むことを特徴とする電力制御方法。
【請求項5】
前記制御装置は、各需要単位に備えられた各蓄電装置の充電及び放電の状況を実績情報として前記グループ管理部に通知する機能をさらに有し、
前記グループ管理部は、前記制御装置からの実績情報を前記管理データベースに蓄積し、集計された実績情報に基づいて前記所定のグループ単位での制御を行う
ことを特徴とする請求項4に記載の電力制御方法。
【請求項6】
前記管理データベースでは、発電及び放電の制御パターンについて、前記グループ毎に、特定の街区単位の網内での完結、他の系統に対する売電、若しくは各需要単位内での完結、のいずれを優先させるかについての優先度が付与されており、
前記グループ管理部は、実績情報に基づいて前記集計を再実行して前記グループ単位での制御を行う再計算機能を有している
ことを特徴とする請求項5に記載の電力制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受変電設備に接続された所定地域の電力系統を通じて電力を供給するとともに、その地域内の需要家に対する電力管理を群制御により行う電力制御システム及び電力制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
東日本大震災や昨今の大型台風の激甚災害を契機にエネルギー供給の制約や集中型エネルギーシステムの脆弱性が顕在化され、こうした状況に対して、地域の特徴も踏まえた多様な供給力(再生可能エネルギー、コージェネレーション等)を組み合わせて最適に活用することで、エネルギー供給のリスク分散やCO2の排出削減を図ろうとする機運が高まってきている。
【0003】
このような「分散型エネルギー社会の実現」は、災害時のライフラインの安定的な確保という視点だけでなく、エネルギーの効率的活用や、地域活性化等の意義があり、その実現に向けた推進の一つとして自治体とエネルギー会社等の共同出資による「自治体新電力」が各地で設立されている。
【0004】
そして、これまでエネルギーの利用主体でしかなかった需要家が、再生可能エネルギーから生まれた電力の供給に参加できるようになることは、エネルギー需給構造に柔軟性を与えることにもつながると考えられているだけでなく、売電先の選択肢として自治体新電力を選ぶことで、自分の住む地域の活性化に参加・貢献していく「電力の地産地消」という新たな視点で注目をされている。
【0005】
一方、従来型の送電網を有効活用する、スマートシティやスマートコミュニティと呼ばれる電力の流れを供給側・需要側の両方から無駄なく計画的に制御し、最適化できるしくみが普及しつつある。従来、このようなスマートシティやスマートコミュニティを通じて各需要家における余剰電力を、複数のユーザー間において融通し合うことが可能な電力取引システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような、スマートシティやスマートコミュニティでは、各需要家において消費電力や発電量を計測するスマートメーターを通じて、毎月の検針業務の自動化やHEMS(Home Energy Management System:住宅用エネルギー管理システム)等における電気使用状況が管理される。
【0006】
上記従来型の送電システムやスマートシティやスマートコミュニティでは、住宅や業務設備などで消費される将来の電力量を予測し、予測した消費電力をモニターに表示して可視化することより、需要者の節電行動に結びつけることができるようにしたり、家電などの電気機器を自動制御して使用状態の最適化を行ったりするシステムの開発が進められている。
【0007】
ところが、このスマートシティやスマートコミュニティでは、再生可能電源を分散電源となることから、例えば、短い時間での天候の変動によって出力変動が生じるため、この出力変動に起因する電力需給バランスの変動を補償するための電力需給調整技術の一つとして、電力系統の配電網下に連系する“蓄電池”などの分散エネルギーストレージを活用する技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2018-130021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した特許文献1に開示されたシステムでは、各需要家における電力系統の状態変化を収集して解析して各需要家における運転スケジュール(制御情報)を出力するものであることから、地域単位で完結した電力融通を行うことが難しく、各住戸の太陽光発電を街区全体で有効活用が十分にできず、電力の地産地消を実現することができないという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、上記のような問題を解決するものであり、特定の街区単位に属する住戸に搭載された太陽光発電や蓄電池をネットワークに接続し街区全体のエネルギー利用の面的制御を行い、各住戸の太陽光発電を街区全体で地産地消して有効活用を図れることはもちろん消費予測を基に計画的な需要計画が可能となりきめ細かなで無駄のない発電計画を可能とする電力制御システム及び電力制御方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、従来の電力系統にある受変電設備を通じて電力を特定の街区単位に供給するとともに、発電及び各需要単位における充電、放電又は送受電を特定の街区単位で面的制御する電力制御システムであって、電力系統に接続され、電力の需要単位毎に設置された複数の蓄電装置と、需要単位毎に設けられ、各蓄電装置の充電又は蓄電装置から各需要単位における負荷への放電の制御を行う複数の制御装置と、複数の制御装置に関する情報を、各需要単位における発電及び放電の制御パターンに従い各制御装置を地域毎のグループに分類して蓄積する管理データベースと、グループ単位における需要に対する蓄放電の割合を設定する制御パターンを設定するモード設定部と、モード設定部が選択した制御パターンに従って管理データベースを参照し、所定のグループ単位で蓄電装置の充電又は放電のスケジュールを作成し、スケジュールに従って制御を行うグループ管理部とを備える。
【0012】
また、本発明は、従来の電力系統にある受変電設備を通じて電力を特定の街区単位に供給するとともに、発電及び各需要単位における充電、放電又は送受電を特定の街区単位で面的制御する電力制御方法であって、
(1)電力の需要単位毎に設置された複数の蓄電装置を電力系統に接続するとともに、需要単位毎に、各蓄電装置の充電又は蓄電装置から各需要単位における負荷への放電の制御を行う制御装置を設置する工程と、
(2)複数の制御装置に関する情報を、各需要単位における発電及び放電の制御パターンに従い各制御装置を所定のグループに分類して管理データベースに蓄積する工程と、
(3)モード設定部が、グループ単位における需要に対する蓄放電の割合を設定する制御パターンを選択するモード選択ステップとグループ管理部が、モード選択ステップにおいて選択された制御パターンに従って管理データベースを参照し、所定のグループ単位で蓄電装置の充電又は放電のスケジュールを作成し、スケジュールに従って制御を行う工程とを含む。
【0013】
上記発明において、制御装置は、各需要単位に備えられた各蓄電装置の充電及び放電の状況を実績情報としてグループ管理部に通知する機能をさらに有し、グループ管理部は、制御装置からの実績情報を管理データベースに蓄積し、集計された実績情報に基づいて所定のグループ単位での制御を行うことが好ましい。
【0014】
上記発明において、管理データベースでは、発電及び放電の制御パターンについて、前記グループ毎に、特定の街区単位の網内での完結、他の系統に対する売電、若しくは各需要単位内での完結、のいずれを優先させるかについての優先度が付与されており、グループ管理部は、実績情報に基づいて集計を再実行してグループ単位での制御を行う再計算機能を有していることが好ましい。
【0015】
上記発明において、属性には各蓄電装置の充放電速度の能力に応じたカテゴリーが含まれ、グループ管理部は、各蓄電装置の単位時間あたりの充放電量に基づいて、制御を行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
以上述べたように、これらの発明によれば、単に個宅間の融通を行うのではなく、特定の街区単位で、その街区に属する各個宅のデータを集約し、全体の制御計画を作成し群制御指示をクラウドから行う。詳述すると、本発明では、単に個宅間の融通を行うのではなく、特定の街区単位で、その街区に属する各個宅のデータを集約し、全体の制御計画を作成し群制御指示を、例えばクラウドサーバーのような電力制御サーバーから行う。
【0017】
この制御には、需要実績、発電/需要予測、蓄電池の残量及び直前の稼働状況を組み合わせて制御スケジュールを作成する。この制御スケジュールには、複数の制御パターンがあり、必要に応じて選択が可能となっている。この結果、特定の街区単位に属する住戸に搭載された太陽光発電や蓄電池をネットワークに接続し、街区全体におけるエネルギー利用の制御パターンを選択したうえで、面的制御・電力融通を行い、各住戸の太陽光発電を街区全体で地産地消を優先させたり、売電を優先させたりなど、街区全体での方針に基づいて、その地域の電力の有効活用を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係る電力制御システムの全体構成を示す概念図である。
図2】実施形態に係る電力制御システムの全体構成を示す概念図である。
図3】実施形態に係るユーザーシステムの機器構成を示すブロック図である。
図4】実施形態に係る電力制御端末の内部構成を示すブロック図である。
図5】実施形態に係る電力制御端末内に構築される電力管理に関するモジュールを示すブロック図である。
図6】実施形態に係る管理サーバーの内部構成を示すブロック図である。
図7】実施形態に係る電力制御システムの動作を示すフロー図である。
図8】実施形態に係る電力制御システムにおける群制御を示す説明図である。
図9】実施形態に係る電力制御システムにおける群制御を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る電力制御システムの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0020】
(電力制御システムの概要)
図1及び図2に本実施形態に係る電力制御システムの全体構成を示す。図1及び図2に示すように、本実施形態に係る電力制御システムは、高圧受電地点5の受変電設備50に接続された電力系統を通じて各需要単位に電力を供給する電力制御システムである。また、本実施形態では、需要単位として住宅用の太陽光発電及び蓄電システムを備えた一般住宅等の需要単位H1~H3が含まれている。
【0021】
また、本実施形態では、発電事業者によって運用されている受変電設備50が高圧受電地点5に配置されており、高圧受電地点5では、発電所を運用する電力会社によって、各需要単位H1~H3に電力が供給されている。なお、電力会社には電力サーバーが備えられており、この電力サーバーによって発電事業者による発電が管理されている。
【0022】
そして、本実施形態では各需要単位H1~H3を統合的に管理するエネルギーマネジメント業務が電力制御サーバー2によって提供されている。この電力制御サーバー2によるエネルギーマネジメント業務によって街区Z1内に属する各需要単位H1~H3に対する制御計画、需要予測、発電予測及び管理・設定が実行され、気象データ等の外因要素を参照しつつ実績データベースを用いて、将来(例えば翌日)の電力消費量を予測して制御スケジュールを生成する。電力制御サーバー2は生成されたスケジュールの内容に応じて、翌日の太陽光による発電量を吸収できる分を、街区Z1内の各蓄電池を予め放電させて確保するように制御する。
【0023】
電力制御サーバー2には通信ネットワーク3を通じて需要単位H1~H3の各制御装置(HEMS)に接続されている。そして、高圧受電地点5から電力系統に各需要単位H1~H3が接続され、発電事業者から各需要単位H1~H3に対して電力が供給される。また、制御に関するデータは、電力制御サーバー2から各需要単位H1~H3のHEMS0に送信されるとともに、需要単位H1~H3側のユーザーシステム4からの実績データ(太陽光、蓄電池、電力データ)が電力制御サーバー2に集積されるようになっている。
【0024】
詳述すると、電力制御システム1は、電力制御サーバー2と、電力の需要単位H1~H3毎に電力を制御及び管理する複数のユーザーシステム4,4…における発電、放電又は送受電を管理し制御するシステムであり、図3図5に示すように、各ユーザーシステム4,4…等に設置された実績データ生成部であるスマートメーター41と、インターネットや電話回線、専用回線等を介してスマートメーター41と接続された電力制御サーバー2とから概略構成される。
【0025】
電力制御システム1では、各スマートメーター41が、各ユーザーシステムにおいて各電力使用期間中に発電又は消費した電力量を需要家毎に測定して実績データD1を生成し、電力制御サーバー2側で実績データD1に基づいてユーザーシステム4,4…内における電力消費を管理する。本実施形態では、各ユーザーシステム4,4…における電力管理実績及び予測結果を電力制御サーバー2側で利用できるようにしている。電力制御システム1では、電力制御サーバー2と、需要単位H1~H3の電力制御装置であるHEMS40とが通信ネットワーク3で相互に接続されている。各需要家H1~H3において外部電力系統には各ユーザーシステム4のスマートメーター41が接続されている。
【0026】
HEMS40は、「Home Energy Management System(ホーム エネルギー マネジメント システム)」と呼ばれる家庭(需要家)で使うエネルギーを管理する電力制御端末であり、需要家内の家電や電気設備とWifi等の通信によって相互に接続され電気やガスなどの使用量をモニター画面などで「見える化」したり、家電機器を「自動制御」したりすることができる。具体的にHEMS40は、例えば、CPUや通信機能を備えた情報処理端末で構成されており、各需要家の他、発電所、PPS、電力プロシューマ、アグリゲーター等の各施設の電力設備を統括的に制御することができるとともに、ユーザーシステム内においてスマートメーター41や分電盤45などにも通信可能に接続されている。このHEMS40が制御する対象設備としては、需要家や電力プロシューマ等の施設内に配備されたユーザーシステム4に含まれるスマートメーター41、蓄電池42、PV(Photovoltaics:太陽光発電)43など、発電や蓄電、電力消費を管理する装置が含まれる。
【0027】
なお、このHEMS40が制御対象とする各種装置は、必要に応じて省略することができる。例えば、ユーザーシステム4,4…ではその電力消費がスマートメーター41により測定されるが、需要家によっては発電設備及び蓄電設備を有するものもあれば、発電設備又は蓄電設備のいずれかの設備を有するもの、或いは発電・蓄電設備のいずれも備えずスマートメーター41だけが設けられ電力消費のみを行うものもある。また、電力プロシューマも電力消費をする立場にあるが、太陽光発電や蓄電池を備えて電力を供給する側にも位置することができる。
【0028】
通信ネットワーク3は、インターネットなど通信プロトコルTCP/IPを用いたIP網であって、種々の通信回線(電話回線やISDN回線、ADSL回線、光回線などの公衆回線、専用回線、WCDMA(登録商標)及びCDMA2000などの第3世代(3G)の通信方式、LTEなどの第4世代(4G)の通信方式、及び第5世代(5G)以降の通信方式等の他、Wifi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)などの無線通信ネットワーク)を相互に接続して構築される分散型の通信ネットワークである。このIP網には、10BASE-Tや100BASE-TX等によるイントラネット(企業内ネットワーク)や家庭内ネットワークなどのLANなども含まれる。
【0029】
(各装置の構成)
次いで、各装置の構成について説明する。なお、説明中で用いられる「モジュール」とは、装置や機器等のハードウェア、或いはその機能を持ったソフトウェア、又はこれらの組合せなどによって構成され、所定の動作を達成するための機能単位を示す。
【0030】
(1)ユーザーシステム4
ユーザーシステム4は、需要家や電力プロシューマが有する電力設備全般であり、電力を消費する単位でもある。需要家とは、電力の供給を受けて使用している電力設備に関する契約単位であり、契約電力が500kW以上の高圧大口需要家、50kW以上500kW未満の高圧小口需要家、一般家庭などの50kW未満の低圧需要家が含まれる。また、ユーザーシステム4は、発電や蓄電の設備を備える場合がある。発電の設備としては、例えば太陽光発電や風力発電等が挙げられる。このユーザーシステム4には、HEMS40と、実績データ生成部としてのスマートメーター41とが含まれる。また、電力を消費する設備としては、各種家電製品や工場設備、オフィス機器のみならず、電力制御装置(IoT機器)等の制御装置全般が含まれる。
【0031】
各需要家に設置されるHEMS40は、分電盤45に接続されてユーザーシステム4内で流通される電力に関する電力の電流、電圧、電力波形、周波数等が取得可能となっているとともに、各電気器、ユーザーシステム4(需要家)内に配置されたPV43や蓄電池42の発電や充放電を実際に制御する装置である。具体的にHEMS40は、通信機能やCPUを備えた情報処理端末であり、OS或いはファームウェア、各種アプリケーションソフトをインストールすることにより様々な機能が実装可能であり、本実施形態では、アプリケーションをインストールして実行することによって電力管理部として機能する。この情報処理端末としては、パーソナルコンピューターの他、例えば、スマートフォンや、機能を特化させた専用装置により実現することができ、タブレットPCやモバイルコンピューター、携帯電話機が含まれる。
【0032】
スマートメーター41は、需要単位であるユーザーシステム内における発電・蓄電・電力消費を統括的に管理する実績データ生成部であり、需要家のユーザーシステム4内において、各需要家での電力消費を計測する他、ユーザーシステム内の他の設備、例えば蓄電池や太陽光発電による蓄電や発電も制御・管理し、需要家において各電力使用期間中に発電、蓄電又は消費した電力量を測定して実績データD1を生成し、定期的にHEMS40及びゲートウェイ端末46を経由して電力制御サーバー2に送出する。この実績データD1の送信は、通信ネットワーク3や電話回線、専用回線等を通じて電力制御サーバー2に対して行われる。
【0033】
なお、本実施形態では、実績データ生成部としてスマートメーター41を用いるが、本発明はこれに限定されず、例えば、HEMS40や、需要家内に配置された各種家電製品、工場設備、オフィス機器など、電力制御装置(IoT機器)等の制御装置を備えて自機の状態を実績データとして通信ネットワークに送信する機能を有する電子機器全般が含まれる。
【0034】
(2)電力制御サーバー2の構成
電力制御サーバー2は、電力管理サービスの提供業者が管理運用するサーバー装置であり、図6に示すように、通信インターフェース23と、認証部22と、グループ管理部25と、外部情報データベース21aと、ユーザーデータベース21bと、実績管理データベース21cと、制御スケジュールデータベース21dと、外部情報管理部24、データ管理部26とを備えている。
【0035】
通信インターフェース23は、通信ネットワーク3を通じて、他の通信機器とデータの送受信を行うモジュールであり、本実施形態では、本サービスを提供するために各HEMS40及びスマートメーター41、及び外部情報源に接続されている。
【0036】
認証部22は、電力管理に係るアクセス者の正当性を検証するコンピューター或いはその機能を持ったソフトウェアであり、ユーザーを特定するユーザーIDに基づいて認証処理を実行する。本実施形態では、通信ネットワーク3を通じてアクセス者の端末装置からユーザーID及びパスワードを取得し、ユーザーデータベース21bを照合することによって、アクセス者にその権利があるか否かや、そのアクセス者が契約者であるか否かなどを確認する。
【0037】
グループ管理部25は、所定のグループ単位で蓄電池の充電又は放電の制御スケジュールを作成し、この制御スケジュールに従って制御を行うモジュールである。具体的にグループ管理部25は、スケジュール生成部25aと、制御計画部25bとを備えている。スケジュール生成部25aは、制御計画部25bが選択した制御パターンに従って実績管理データベース21cを参照して制御スケジュールを生成するモジュールである。
【0038】
また、制御計画部25bは、グループ単位における需要に対する蓄放電の割合を設定する制御パターンを制御計画に従って制御モードを選択するモジュールである。詳述すると、本実施形態では、単に個宅間の融通を行うのではなく、特定の街区単位で、その街区に属する各個宅のデータを集約し、街区全体の制御計画に応じた制御パターン選択する。スケジュール生成部25aは、この制御計画に基づいた制御パターンに従った群制御指示である制御スケジュールを
生成する。
【0039】
この制御スケジュールは、需要実績、発電/需要予測、蓄電池の残量及び直前の稼働状況を組み合わせた制御指示であり、複数の制御パターンがあり、必要に応じて選択が可能となっている。
【0040】
この制御パターンとしては、以下の3パターンが挙げられる。なお、制御パターンは必要に応じて追加・改修することが可能である。
(a)「地産地消」パターン
特定の街区単位の網内での発電及び放電を完結させることを優先させ、なるべく他の系統との売買をしないことを目指す制御パターンである。
(b)「売電優先」パターン
PV発電電力をなるべく他の系統に対して売電することを目指す制御パターンである。
(c)「自家消費優先」パターン
各個宅内で発電及び放電を完結させることを優先させる制御パターンである。
【0041】
なお、この制御指示としては図8及び図9に示すように、地域に属する個宅毎に「Discharge」、「Auto(c):Charge in Auto」或いは「Auto(d):Discharge in Auto」といったモードが設定され、地域全体では使用電力(Forward Flow)が1.3kW や0.6kW に設定され、地域内で発電された電力を地域内で使用する「地産地消」が実現されるように制御計画がなされ、それに基づく制御パターンが選択されている。
【0042】
なお、本実施形態に係るグループ管理部25はシステム連携部25cを備えている。このシステム連携部25cは、各ユーザーシステム4側のHEMS40と、協働して制御スケジュールの実行処理を進めるモジュールである。
【0043】
外部情報管理部24は、通信ネットワーク3上に分散配置された各外部情報源から情報を収集するモジュールである。具体的に外部情報管理部24は、情報収集部24aと、相関抽出部24bと、相関情報提供部24cとを備えている。
【0044】
外部情報データベース21aは、収集された外部情報を分類して蓄積する記憶装置であり、各外部情報と、その種別や時間情報、キーワード等の付加情報とを紐付けて蓄積する。ユーザーデータベース21bは、各需要家のユーザーや、アグリゲーター等の業者に関する情報を蓄積する記憶装置である。
【0045】
実績管理データベース21cは、発電所や需要家、アグリゲーター等の電力の授受に関係する者による実績データを収集し蓄積して管理する記憶装置である。各スマートメーターから受信した各実績データは、この実績管理データベースに蓄積され、グループ管理部25のスケジュール生成部25aにおけるスケジュール生成処理に供される。制御スケジュールデータベース21dは、各需要家に対する制御スケジュール及びその実行実績を記録する記憶装置である。
【0046】
データ管理部26は、各需要家から実績データD1及び推定履歴D2を収集し解析することによって、学習用の教師データを生成するモジュールであり、このデータ管理部26による解析結果は、外部情報管理部24が解析した相関情報とともに、グループ管理部25に入力され、制御スケジュール生成に供される。具体的に、データ管理部26は、実績データ収集部26aと推定履歴収集部26bとを備えている。
【0047】
(3)HEMS40
具体的にHEMS40は、図4及び図5に示すように、CPU402と、メモリ403と、入力インターフェース404と、ストレージ401と、出力インターフェース405と、通信インターフェース406とを備えている。なお、本実施形態では、これらの各デバイスは、CPUバス400を介して接続されており、相互にデータの受渡しが可能となっている。
【0048】
メモリ403及びストレージ401は、データを記録媒体に蓄積するとともに、これら蓄積されたデータを各デバイスの要求に応じて読み出す記憶装置であり、例えば、ハードディスクドライブ(HDD)やソリッドステートドライブ(SSD)、メモリカード等により構成することができる。特に、本実施形態においてストレージ401は個別機器推定部である稼働電気機器特定部402dによる推定結果に基づいて個別機器の電源の状態を時系列で記録した推定履歴情報D2を記録するデータ記録部としての機能を果たすとともに、需要家内において実際に消費された電力に関する実消費電力情報D5を需要家内側で蓄積する実消費電力蓄積部としての機能も果たしている。
【0049】
入力インターフェース404は、ユーザーシステム内に設置された各設備から制御信号を受信するモジュールであり、受信された制御信号はCPU402に伝えられ、OSや各アプリケーションによって処理される。他方、出力インターフェース405は、ユーザーシステム内に設置された各設備へ制御信号を出力するモジュールである。かかるユーザーシステム内に設置される各設備は、その需要家やプロシューマなどの形態によって異なり、例えば、需要家では、電力消費についてはスマートメーター41により測定され、発電・蓄電については、太陽光発電及び蓄電設備の両方を有するものもあれば、太陽光発電又は蓄電池のいずれかの設備を有するもの、発電・蓄電設備のいずれも備えないものもある。また、プロシューマでは、電力消費をスマートメーター41により計測し、太陽光発電(PV)42や蓄電池42に対する制御信号が入出力される。
【0050】
通信インターフェース406は、他の通信機器とデータの送受信を行うモジュールであり、通信方式としては、例えば、電話回線やISDN回線、ADSL回線、光回線などの公衆回線、専用回線、WCDMA(登録商標)及びCDMA2000などの第3世代(3G)の通信方式、LTEなどの第4世代(4G)の通信方式、及び第5世代(5G)以降の通信方式等の他、Wifi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)などの無線通信ネットワークが含まれる。
【0051】
CPU402は、各部を制御する際に必要な種々の演算処理を行う装置であり、各種プログラムを実行することにより、CPU11上に仮想的に各種モジュールを構築する。このCPU402上では、OS(Operating System)が起動・実行されており、このOSによって各HEMS40の基本的な機能が管理・制御されている。また、このOS上では種々のアプリケーションが実行可能になっており、CPU402でOSプログラムが実行されることによって、種々の機能モジュールがCPU上に仮想的に構築される。
【0052】
本実施形態では、CPU402上でブラウザソフトを実行することによって、このブラウザソフトを通じて、システム上の情報を閲覧したり、情報を入力したりできるようになっている。詳述すると、このブラウザソフトは、Webページを閲覧するためのモジュールであり、通信ネットワーク3を通じて電力制御サーバー2からHTML(HyperText Markup Language)ファイルや画像ファイル、音楽ファイルなどをダウンロードし、レイアウトを解析して表示・再生する。このブラウザソフトにより、フォームを使用してユーザーがデータをWebサーバーに送信したり、JavaScriptやFlash、及びJava(登録商標)などで記述されたアプリケーションソフトを動作させたりすることも可能であり、このブラウザソフトを通じて、各ユーザーは、電力制御サーバー2が提供する電力管理サービスを利用することができる。
【0053】
図5に示すように、CPU402上には、入力インターフェース404を通じて需要家内の負荷441~44nの稼動状況を検出するための実消費電力管理モジュールとして、総電力使用量取得部402aと、電力波形情報取得部402bと、時間変動算出部402cとを備えている。また、需要家内で稼動中の電気機器を特定して、消費電力の予測を行うためのモジュールとして、稼動電気機器特定部402dと、尤度推定部402eと、電力予測部402fとを備えている。また、電力予測部402fに対して機械学習を行わせるためのモジュールとして、モード設定部402gを有している。そして、需要家に配置されたPV43や蓄電池42の発電や充放電を実際に制御するモジュールとして充放電制御部402hを備えている。
【0054】
総電力使用量取得部402aは、入力インターフェース404を介し、分電盤45に接続されてユーザーシステム4内で流通される電力に関する電力の電流、電圧等を計測し取得するモジュールであり、電力波形情報取得部402bは、分電盤45を通じてユーザーシステム4内で流通される電力に関する電力の波形や周波数を計測し取得するモジュールである。時間変動算出部402cは、総電力使用量取得部402aで計測された総消費電力の時間的変動を算出するモジュールである。総電力使用量取得部402a,電力波形情報取得部402b及び時間変動算出部402cによって、実消費電力蓄積部である実消費電力管理モジュールが構成され、総電力使用量取得部402a,電力波形情報取得部402b及び時間変動算出部402cによって得られた各種情報は、実際に消費された電力に関する実消費電力情報D5としてストレージ401に蓄積される。この実消費電力情報D5は、推定履歴情報D2とともに電力予測部402fの人工知能を学習させる教師データとして用いられる。
【0055】
稼動電気機器特定部402dは、需要家内において実績データ生成部であるスマートメーター41よりも電気機器(負荷)側に設置され、スマートメーター41によって需要家単位で測定され、時間変動算出部402cで算出された総消費電力の時間的変動を分析して、需要家内で稼動している個別機器とその消費電力である個別消費電力とを推定する個別機器推定部としての機能を果たすモジュールである。また、稼動電気機器特定部402dは、生成した推定結果の履歴である推定履歴D2を、特定の期間を表す情報と関連付けてストレージ401に記憶する。この稼働電気機器特定部402dによる推定の尤度については、尤度推定部402eによって検証される。
【0056】
ここで、仮想した個別機器とは、住宅内に実際に存在する電気機器の1つ1つであってもよく、推定分解電力の大きさに対応した仮想上の電気機器であってもよい。例えば、総電力測定装置300により測定された総消費電力がある周期において50W上昇している場合、50Wの消費電力を有する電気機器(具体的な機器を特定する必要はない)が稼動したと分析する。また、スマートメーター41により測定された総消費電力がある周期において100W下降している場合、100Wの消費電力を有する電気機器が停止したと分析する。すなわち、この場合における仮想した個別機器とは、推定分解電力50Wの電気機器、推定分解電力100Wの電気機器をいう(以下、これらを個別機器[50W]、個別機器[100W]などと表記する)。
【0057】
また、分析の対象とする特定の期間とは、個別住宅での電気機器の使用パターン(1日の使用パターン、週間の使用パターンなど)をカバーする期間であり、例えば、季節毎に3~7日周期とするなどが挙げられる。また、電源状態パラメータを算出する所定の時間単位とは、1日を複数の時間帯に分けたものであり、例えば、家庭内の1日の電力使用パターンを考慮して、朝、昼、夕方、夜の4個の時間帯とすることが可能である。なお、これは一例に過ぎない。例えば、所定の時間単位を1時間としてもよいし、それより短い時間単位としてもよい。或いは、所定の時間単位を1日よりも長い単位、例えば数日としてもよい。要は、どのくらいの粒度で将来の総消費電力を予測したいかに応じて、所定の時間単位を決めればよい。
【0058】
さらに稼動電気機器特定部402dは、総電力使用量取得部402aにより取得され総消費電力に対し、ストレージ401に記憶された機器リストT1を利用して、各個別機器の電源オン状態を推定する。また、稼動電気機器特定部402dは、総電力使用量取得部402aにより取得された総消費電力に対して機器リストT1を適用することによって、実時間の総消費電力から予測開始時点での個別機器の稼動台数を推定する。
【0059】
電力予測部402fは、モード設定部402gにより設定された制御モードに応じた制御パターンを用いて、将来の予測したい期間(予測期間)における個別機器の消費電力(以下、個別消費電力という)を予測するモジュールである。詳述すると、電力予測部402fは、制御モードに応じた制御パターンを参照して、仮想した個別機器とその消費電力である個別消費電力とを推定することによって機器リストT1を得るとともに、この機器リストT1を用いて個別機器の稼動台数を推定し、この推定結果に基づいて個別機器の電源の状態を表す電源状態パラメータを所定の時間単位で算出することにより、個別機器の消費電力に関する予測データを生成する。
【0060】
また、電力予測部402fは、制御モードに応じた制御パターンを参照しつつ、ストレージ401に記録された推定履歴情報D2を用いて、実時間で測定された総消費電力について実時間の総消費電力から予測開始時点での個別機器の稼動台数を推定するとともに、予測期間に対応する期間の電源状態パラメータを用いて、予測開始時点からの予測期間における個別消費電力の推移を予測する個別電力予測部としての機能も果たす。
【0061】
さらに、電力予測部402fは、総電力使用量取得部402a及び電力波形情報取得部402bにより実時間で測定された総消費電力及び電力波形等に対して、時間変動算出部402cによりこれらの時間変動を算出させる。そして、制御モードに応じた制御パターンに従って、予測期間に対応する期間に関してストレージ401に記憶された機器リスト(仮想した個別機器とその個別消費電力)を適用することによって、実時間の総消費電力から予測開始時点での個別機器の稼動台数を推定する。そして、電力予測部402fは、予測期間に対応する期間について電源状態パラメータを用い、上記予測開始時点からの予測期間における個別消費電力の推移を予測する。
【0062】
また、本実施形態において電力予測部402fは、稼動電気機器特定部402dにより予測された予測期間における個別消費電力の推移をもとに、制御モードに応じた制御パターンを参照しつつ、当該予測期間における総消費電力の推移を予測する。具体的には、電力予測部402fは、稼動電気機器特定部402dにより予測された予測期間の各時刻における個別消費電力をそれぞれの時刻毎に合計することにより、当該予測期間における総消費電力の推移を予測する。
【0063】
充放電制御部402hは、出力インターフェース405を通じてPV43や蓄電池42に対して発電や充放電を制御する他、例えば、電力予測部402fにより予測された総消費電力をユーザーに通知する機能も備えている。又は、電力予測部402fにより予測された総消費電力がしきい値を超える場合に、どの時間帯にどの程度しきい値を超えるかの情報を含めて、警告メッセージを通知するようにしてもよい。
【0064】
(電力制御システムの動作)
以上説明した電力制御システムを動作させることによって、本発明の電力管理方法を実施することができる。図7は電力制御システムの動作を示すフロー図である。なお、以下で説明する処理手順は一例に過ぎず、各処理は可能な限り変更されてもよい。また、以下で説明する処理手順について、実施の形態に応じて、適宜、ステップの省略、置換及び追加が可能である。
【0065】
図8に示すように、需要家側のユーザーシステム4内では、常時、システム内で発電、蓄電又は消費されている電力を計測している(S101)。この電力の計測では、電力波形の時間的変動も計測され、随時記録されている。一方、管理サーバー側では、この需要家側での消費電力計測に併せて、外部情報の収集及び分類を常時行っている(S201)。そして、周期的に、或いは所定量の情報が蓄積され次第、収集・分類された外部情報を各需要家側のHEMS40に提供する(S202)。この外部情報の提供を受けて、需要家側では、総消費電力の分析と個別消費電力との推定が行われる(S102)。
【0066】
具体的には、稼動電気機器特定部402dが、需要家単位で測定された総消費電力の時間的変動を分析して、ユーザーシステム4内で稼動している個別機器とその消費電力である個別消費電力とを推定する。この推定履歴情報を用いて、実時間で測定された総消費電力について、実時間の総消費電力から予測開始時点での個別機器の稼動台数を推定する。このとき、稼動電気機器特定部402dは、スマートメーター41で計測された電力波形及びその時間的な変化を分析し、周波数成分及び電力の変動パターンの特性を抽出することによって、稼動している個別機器とその消費電力である個別消費電力及びその継続時間を推定する。
【0067】
次いで、予測期間に対応する期間の電源状態パラメータを用いて、予測開始時点からの予測期間における個別消費電力の推移を予測するとともに、稼動電気機器特定部402dにより予測された予測期間における個別消費電力の推移に基づいて予測期間における総消費電力の推移を予測する(S103)。また、この稼動電気機器特定部402dによる推定結果に基づいて、個別機器の電源の状態を時系列で記録した推定履歴情報を記録する(S104)。
【0068】
このように予測された総消費電力の推移に基づいて、ユーザーシステム内の発電及び蓄電池の充放電を制御するDR制御を実行する(S105)。この電力制御では、推定された個別機器の特性や、過去の使用形態に基づいて、どの機器がどの程度の電力をその程度の時間だけ消費するかに基づいて、きめ細かな電力予測に基づいて蓄電池の充放電が制御される。また、この電力制御では、いわゆる契約電力量を瞬間的に超えてしまうの回避させる制御いわゆる「ピークカット」が行われており、推定された個別機器の種類に応じて、どの機器がどの程度の時間、どの程度の電力を継続して使用するかを予測し、ピークが生じるようであれば、その間の蓄電を停止したり、或いは蓄電されていた電力を放電したりなどして、瞬間的に使用電力量が高くなるのを回避する。
【0069】
また、この電力制御の一環として、例えば、推定された電気器が使用中である場合に、契約電力のピークが発生しそうなときには、その機器の使用を控えたり、使用開始時間を変更するように勧めるなどのレコメンドメッセージを出力させるようにしてもよい。このレコメンドメッセージの出力は、需要家内にあるディスプレイに表示させたり、スマートスピーカーから音声で出力したり等の方法が挙げられる。また、電力制御端末を使用して蓄電池を利用した自動制御を行うことでもピークカットを実現できる。
【0070】
この制御結果は実績データD1としてスマートメーター41で収集され、また、推定履歴情報はストレージ401に蓄積され(S106)、これらの実績データ及び推定履歴情報は、各ユーザーシステムからそれぞれ電力制御サーバー2へ送信され(S107)、電力制御サーバー2にて収集される(S203)。ここで収集された実績データと推定履歴情報について、外部情報と照合して、これらの相関関係を抽出して相関情報を生成する(S204)。
【0071】
そして、収集された実績データ、推定履歴情報、相関情報及び外部情報に基づいて、制御スケジュールが生成される(S206)。このときモード(制御パターン)が参照され(S205)、その制御パターンに従って、充放電の優先度が反映された制御スケジュールが生成され、この制御スケジュールによって、モードが設定される(S108)。
【0072】
(作用・効果)
以上説明した本実施形態によれば、特定の街区単位に属する住戸に搭載された太陽光発電や蓄電池をネットワークに接続し、街区全体のエネルギー利用の制御パターンを選択したうえで、面的制御・電力融通を行い、各住戸の太陽光発電を街区全体で地産地消して有効活用を図ることができる。
【0073】
また、本実施形態によれば、需要家のユーザーシステムなど、総消費電力の時間変動や、電力波形(周波数)を計測して分析し、ユーザーシステム内で稼動している個別機器とその消費電力を推定し、それぞれの個別機器の特性に基づいて、その後の総消費電力を予測する。このため、本実施形態によれば、スマートシティやスマートコミュニティを利用した電力制御や、個別住宅又は小規模ビルなどの小単位の施設で消費される将来の電力の予測を各需要家に個別的且つ短期的に生じる各需要家固有の状態変化をカバーできる。
【0074】
また、個別機器の推定履歴や、総消費電力の予測については、外部情報との相関も分析し、周波数成分及び電力の変動パターンの特性を抽出することによって、稼動している個別機器とその消費電力である個別消費電力とを推定し、機械学習を通じて次の予測処理に反映させることから、各需要家に固有の電力の消費パターンに応じて個別的な電力制御を実現することができ、さらに予測の精度を高めることができる。
【0075】
なお、本発明は、上記した各実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0076】
D1…実績データ
D2…推定履歴
D3…外部情報
D4…相関情報
D77…判定結果
1…電力制御システム
2…電力制御サーバー
3…通信ネットワーク
4…ユーザーシステム
5…外部情報源
11…CPU
21a…外部情報データベース
21b…ユーザーデータベース
21c…実績管理データベース
21d…制御スケジュールデータベース
22…認証部
23…通信インターフェース
24…外部情報管理部
24a…情報収集部
24b…相関抽出部
24c…相関情報提供部
25…群制御部
25a…スケジュール生成部
25b…制御計画部
25c…システム連携部
26…データ管理部
26a…実績データ収集部
26b…推定履歴収集部
40…HEMS
41…スマートメーター
42…蓄電池
43…PV
45…分電盤
46…ゲートウェイ端末
400…CPUバス
401…ストレージ
402…CPU
402a…総電力使用量取得部
402b…電力波形情報取得部
402c…時間変動算出部
402d…稼動電気機器特定部
402e…尤度推定部
402f…電力予測部
402g…モード設定部
402h…充放電制御部
403…メモリ
404…入力インターフェース
405…出力インターフェース
406…通信インターフェース
441~44n…負荷
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9