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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-18
(45)【発行日】2025-07-29
(54)【発明の名称】土壌採集具
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/08 20060101AFI20250722BHJP
   E02D 1/04 20060101ALI20250722BHJP
【FI】
G01N1/08 B
E02D1/04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021212825
(22)【出願日】2021-12-27
(65)【公開番号】P2023096814
(43)【公開日】2023-07-07
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐野 愛樹
(72)【発明者】
【氏名】志摩 秀和
(72)【発明者】
【氏名】和栗 創一
(72)【発明者】
【氏名】大西 健司
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108195614(CN,A)
【文献】中国実用新案第210953440(CN,U)
【文献】中国実用新案第214040807(CN,U)
【文献】中国実用新案第212903965(CN,U)
【文献】特開2021-004519(JP,A)
【文献】特開平02-108788(JP,A)
【文献】特開平01-161129(JP,A)
【文献】特開2014-043717(JP,A)
【文献】米国特許第06016713(US,A)
【文献】米国特許第05076372(US,A)
【文献】中国特許出願公開第111795851(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/08
E02D 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1板と、前記第1板から水平方向に距離をあけて配備される第2板とを含み、前記第1板及び前記第2板を回転させながら地中に押し込んだ際に前記第1板と前記第2板との間に採取される土壌が入る採取部と、
前記採取部に設けられ且つ前記第1板及び前記第2板を回転させる回転力を付与する回転体と、前記第1板の下端と前記第2板の下端が当接または近接する第1状態と、前記第1板の下端と前記第2板の下端が離反する第2状態とに変更する変更機構と、
を備え、
前記第1板は、前記回転体の軸心から外側に距離をあけて上下方向に延びており、
前記第2板は、前記回転体の軸心に沿うように下方に延びると共に下方に延びた先で前記第1板の下端に向かって傾斜状に形成されており、
前記第2板は、前記回転体の回転方向に対して迎え角を有するように配置されている土壌採集具。
【請求項2】
第1板と、前記第1板から水平方向に距離をあけて配備される第2板とを含み、前記第1板及び前記第2板を回転させながら地中に押し込んだ際に前記第1板と前記第2板との間に採取される土壌が入る採取部と、
前記採取部に設けられ且つ前記第1板及び前記第2板を回転させる回転力を付与する回転体と、前記第1板の下端と前記第2板の下端が当接または近接する第1状態と、前記第1板の下端と前記第2板の下端が離反する第2状態とに変更する変更機構と、
を備え、
前記第1板と前記第2板との間には、前記採取部が前記第1状態にあるときに下方に移動することで、前記第1板と前記第2板との間に挟み込まれた土壌を押す押板が設けられており、
前記回転体には、前記押板を下方に押し下げるレバーが設けられている
土壌採集具。
【請求項3】
第1板と、前記第1板から水平方向に距離をあけて配備される第2板とを含み、前記第1板及び前記第2板を回転させながら地中に押し込んだ際に前記第1板と前記第2板との間に採取される土壌が入る採取部と、
前記採取部に設けられ且つ前記第1板及び前記第2板を回転させる回転力を付与する回転体と、前記第1板の下端と前記第2板の下端が当接または近接する第1状態と、前記第1板の下端と前記第2板の下端が離反する第2状態とに変更する変更機構と、
を備え、
前記第1板の上端には、前記第1板を揺動自在に支持するヒンジ部が設けられており、前記ヒンジ部より下方の前記第1板と前記第2板との間には、前記第1板が前記第2板に近接する方向に付勢力を付与する付勢部材が設けられており、
前記変更機構は、前記第1板の上部に設けられると共に、前記付勢部材の付勢力に抗して前記第2板に対して前記第1板を離反させる開放レバーから構成されている
土壌採集具。
【請求項4】
前記第1板及び前記第2板を回転しながら地中に押し込んだ際に、前記地中にて前記土壌を前記第1板と前記第2板の間に留め、前記第1状態で前記地中より引き上げられることで土壌を採集する請求項1~3のいずれか1項に記載の土壌採集具。
【請求項5】
前記変更機構によって前記第1板及び前記第2板を前記第1状態から前記第2状態に変更することにより、前記第1板と前記第2板との間に挟み込んだ土壌を取り出す請求項4に記載の土壌採集具。
【請求項6】
前記回転体と前記採取部との間には、地表面に接触することで前記採取部の地中への挿し込みを抑制する押さえ板が形成されている
請求項1~5のいずれか1項に記載の土壌採集具。
【請求項7】
前記押さえ板の前記回転体に対する上下方向の位置を調整可能な調整機構を備えている請求項6に記載の土壌採集具。
【請求項8】
前記調整機構は、周壁を貫通する第1貫通孔が形成されると共に前記回転体の内側に挿入された内筒体と、前記内筒体を前記回転体に対して位置決めするピンと、を有し、
前記内筒体は、前記押さえ板の上側に配置されると共に、前記回転体に沿って前記押さえ板と一体に上下方向に移動可能であり、
前記回転体には、複数の第2貫通孔が前記回転体の軸心の方向に並んで形成され、
前記内筒体を前記回転体に沿って移動させたときに複数の前記第2貫通孔のいずれかが前記第1貫通孔と連通し、
前記ピンは、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔が連通した状態で、前記第1貫通孔及び前記第2貫通孔に挿入される請求項7に記載の土壌採集具。
【請求項9】
前記採取された土壌を収容するサンプル袋を引っ掛けるフックを備える
請求項1~8のいずれか1項に記載の土壌採集具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌分析に供される土壌を圃場より採集する土壌採集具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、土壌を採集する技術としては、特許文献1~特許文献3に開示された土壌採集具が知られている。
特許文献1に開示された土壌採集具は、一般にオーガスクリューと言われるものである。特許文献1のオーガスクリューは、螺旋羽根のピッチが下から上まで略同じである。地表面から土中に適宜の駆動源を用いて回転させることにより、一回転で螺旋羽根の一ピッチ分だけ土中に推進される。土中の所望の深さに当該オーガスクリューを推進させた後、当該オーガスクリューを回転させずに土中から引き抜く。そして、このオーガスクリューに付着した土を採取する。
【0003】
特許文献2に開示された土壌採集具は、所定深度の土壌を確実に採取することが可能な採土器である。採土器は、円筒形の筒と、筒の下端に設けられた複数の刃と、を備える。複数の刃の間には平坦部がある。採土器は、円筒形の筒と、筒の上端に設けられたハンドル取付穴と、ハンドル取付穴に着脱可能に取り付けられるハンドルと、を備える。採土器は、筒の上端に取付可能なガイドピースと、ガイドピースの穴に挿入されるガイドロッドと、ガイドロッドに沿って上下動可能な円筒形の打ち込みウエイトと、を備える。
【0004】
特許文献3に開示された土壌採集具は、穴掘り用ヘッド及び穴掘り装置である。穴掘り装置は、ドリルのチャックに保持されるロッドと、前記ロッドの先端に配置され当該ロッドを軸として回転する螺旋刃と、前記ロッドに支持され当該ロッドを軸として当該螺旋刃と共にその周囲を旋回する撹拌刃を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平6-346430号公報
【文献】特開2020-159002号公報
【文献】特開2020-176435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1~特許文献3に開示の土壌採集具は、先端に螺旋状にねじれたスクリューを備えるか、あるいは円筒体の先端に刃を備える。これらの土壌採集具は、スクリューや刃で地面を削って土壌を掘削する。
しかし、掘削した土壌を引き上げる場合は、スクリューに掘削した土壌を載せたり、円筒体の内周面に掘削した土壌を押し固めたりすることで、土壌の引き上げが行われる。その際、スクリューや円筒体が掘削で形成された孔の口に引っ掛かるなどして衝撃が加わったり、掘削体が揺れるなどして振動が加わったりする場合がある。そうすると、土壌はスクリューの上に載せられただけであるので、せっかく採集した土壌が土壌採集具から落下してしまう可能性がある。また、円筒体の場合は土壌が垂直に延びる内周面に押し付けられただけであるため、せっかく採集した土壌が土壌採集具から落下してしまう可能性がある。つまり、特許文献1~特許文献3の土壌採集具は、土壌を確実に回収できるものとはなっていなかった。
【0007】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、地中より採集した土壌を挟み込んだ状態で確実に引き上げて回収することができる土壌採集具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この技術的課題を解決するための本発明の技術的手段は、以下に示す点を特徴とする。
土壌採集具は、第1板と、前記第1板から水平方向に距離をあけて配備される第2板とを含み、前記第1板及び前記第2板を回転させながら地中に押し込んだ際に前記第1板と前記第2板との間に採取される土壌が入る採取部と、前記採取部に設けられ且つ前記第1板及び前記第2板を回転させる回転力を付与する回転体と、前記第1板の下端と前記第2板の下端が当接または近接する第1状態と、前記第1板の下端と前記第2板の下端が離反する第2状態とに変更する変更機構と、を備え、前記第1板は、前記回転体の軸心から外側に距離をあけて上下方向に延びており、前記第2板は、前記回転体の軸心に沿うように下方に延びると共に下方に延びた先で前記第1板の下端に向かって傾斜状に形成されており、前記第2板は、前記回転体の回転方向に対して迎え角を有するように配置されている
土壌採集具は、第1板と、前記第1板から水平方向に距離をあけて配備される第2板とを含み、前記第1板及び前記第2板を回転させながら地中に押し込んだ際に前記第1板と前記第2板との間に採取される土壌が入る採取部と、前記採取部に設けられ且つ前記第1板及び前記第2板を回転させる回転力を付与する回転体と、前記第1板の下端と前記第2板の下端が当接または近接する第1状態と、前記第1板の下端と前記第2板の下端が離反する第2状態とに変更する変更機構と、を備え、前記第1板と前記第2板との間には、前記採取部が前記第1状態にあるときに下方に移動することで、前記第1板と前記第2板との間に挟み込まれた土壌を押す押板が設けられており、前記回転体には、前記押板を下方に押し下げるレバーが設けられている
土壌採集具は、第1板と、前記第1板から水平方向に距離をあけて配備される第2板とを含み、前記第1板及び前記第2板を回転させながら地中に押し込んだ際に前記第1板と前記第2板との間に採取される土壌が入る採取部と、前記採取部に設けられ且つ前記第1板及び前記第2板を回転させる回転力を付与する回転体と、前記第1板の下端と前記第2板の下端が当接または近接する第1状態と、前記第1板の下端と前記第2板の下端が離反する第2状態とに変更する変更機構と、を備え、前記第1板の上端には、前記第1板を揺動自在に支持するヒンジ部が設けられており、前記ヒンジ部より下方の前記第1板と前記第2板との間には、前記第1板が前記第2板に近接する方向に付勢力を付与する付勢部材が設けられており、前記変更機構は、前記第1板の上部に設けられると共に、前記付勢部材の付勢力に抗して前記第2板に対して前記第1板を離反させる開放レバーから構成されている
【0009】
土壌採集具は、前記第1板及び前記第2板を回転しながら地中に押し込んだ際に、前記地中にて前記土壌を前記第1板と前記第2板の間に留め、第1状態で前記地中より引き上げられることで土壌を採集する。
土壌採集具は、前記変更機構によって前記第1板及び前記第2板を前記第1状態から前記第2状態に変更することにより、前記第1板と前記第2板との間に挟み込んだ土壌を取り出す。
【0011】
土壌採集具は、前記回転体と前記採取部との間には、地表面に接触することで前記採取部の地中への挿し込みを抑制する押さえ板が形成されている。
土壌採集具は、前記押さえ板の前記回転体に対する上下方向の位置を調整可能な調整機構を備えている。
土壌採集具は、前記調整機構は、周壁を貫通する第1貫通孔が形成されると共に前記回転体の内側に挿入された内筒体と、前記内筒体を前記回転体に対して位置決めするピンと、を有し、前記内筒体は、前記押さえ板の上側に配置されると共に、前記回転体に沿って前記押さえ板と一体に上下方向に移動可能であり、前記回転体には、複数の第2貫通孔が前記回転体の軸心の方向に並んで形成され、前記内筒体を前記回転体に沿って移動させたときに複数の前記第2貫通孔のいずれかが前記第1貫通孔と連通し、前記ピンは、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔が連通した状態で、前記第1貫通孔及び前記第2貫通孔に挿入される。
【0012】
土壌採集具は、前記採取された土壌を収容するサンプル袋を引っ掛けるフックを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、地中より採集した土壌を挟み込んだ状態で確実に引き上げて回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】土壌採集具の斜視図である。
図2】土壌採集具の正面図である。
図3】土壌採集具の側面図である。
図4】土壌採集具の採取部を拡大して示した図である。
図5A】土壌採集具の採取部を下方より見た場合の図である。
図5B図5AのA部分の拡大図である。
図6】土壌採集具を地中に押し込んで土壌を採集し、押板で圧縮するまでの手順を模式的に示した図である。
図7】押板で圧縮した土壌を第1板および第2板で挟持しつつ引き上げ、回収容器に回収するまでの手順を模式的に示した図である。
図8】調整機構による土壌採集具の押し込み深さの調整手順を示した図である。
図9】土壌採集具に設けられる情報管理部を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。
土壌採集具1は、土壌に対して第1板2及び第2板3を押し込んだ後で回転させて、土壌を採集し、採集した土壌を挟み込んだ状態で引き上げて回収するものである。第1板2及び第2板3の回転は、人力(手作業)でもモータなどで発生した回転駆動力を用いてもできる。本実施形態では、人力で第1板2及び第2板3を回転させるものを例に挙げて、本発明の土壌採集具1を説明する。
【0016】
図1は、本実施形態に係る土壌採集具1の全体構成を示す斜視図である。図2は、本実施形態に係る土壌採集具1の正面図である。図3は、本実施形態に係る土壌採集具1の側面図である。
図1図3に示すように、土壌採集具1は、第1板2と、第1板2から水平方向に距離をあけて配備される第2板3と、を含んでいる。土壌採集具1は、第1板2及び第2板3を地中に押し込んで所定の方向に回転させた際に、第1板2と第2板3との間に採取される土壌が入る採取部4を有している。土壌採集具1は、採取部4に設けられ且つ第1板2及び第2板3を回転させる回転力を付与する回転体5を備えている。
【0017】
また、土壌採集具1は、第1板2及び第2板3の位置関係を変更する変更機構6を備えている。変更機構6により、第1板2及び第2板3の位置関係は、第1状態と第2状態とのいずれかに変更される。第1状態は、第1板2の下端と第2板3の下端が当接または近接する位置関係である(図1図4参照)。第2状態は、第1板2の下端と第2板3の下端が離反する位置関係である(図7の右端の図参照)。つまり、土壌採集具1は、第1板2の下端と第2板3の下端が当接または近接する第1状態と、第1板2の下端と第2板3の下端が離反する第2状態とを変更する変更機構6を備えている。
【0018】
土壌採集具1は、変更機構6により第2状態から第1状態に変更することで土壌を挟み込む。また、土壌採集具1は、変更機構6により第1状態から第2状態に変更することで挟み込んだ土壌を開放する。土壌採集具1は、第1状態と第2状態とを切り替えることで、土壌を挟み込んで確実に採集することを可能としている。
具体的には、本実施形態の土壌採集具1では、第2板3が揺動しないように固定され、第1板2が揺動可能とされている。なお、本発明の土壌採集具1は、2つの板部材のうち、第1板2が固定され第2板3が揺動可能とされていても良い。また、第1板2と第2板3との双方が揺動可能とされていても良い。
【0019】
図5Aは、土壌採集具1を下方より見た図、つまり土壌採集具1の底面図である。また、図5Bは、図5Aにおいて図中に「A」で示される部分を拡大した図である。なお、図5Bは、第2板3と、回転体5と、後述する押さえ板7との位置関係だけを図示している。
図4図5A、及び図5Bに示すように、第1板2は、上下方向に沿って延びる板片を3枚組み合わせて構成されている。3枚の板片2a,2b,2cは、回転体5の軸心RAから外側に距離をあけて配備されている。3枚の板片2a,2b,2cは、いずれも回転体5の軸心RA側に法線が向くように配備されており、土壌を採集するときの回転方向Rに沿うように押さえ板7に取り付けられている。3枚の板片2a,2b,2cは、回転体5の周囲の一部を取り囲むように隣り合って配備されている。このように3枚の板片2a,2b,2cを回転体5の周囲の一部を取り囲むように隣り合って配備すれば、3枚の板片2a,2b,2cはいずれも回転方向Rに沿うように取り付けられるので、土中に差し込まれた状態で容易に回転できる。
【0020】
第1板2を構成する3枚の板片のうち、土壌を採集するときの回転方向Rの最も先頭側に位置する板材が第1片2aである。なお、本実施形態の土壌採集具1は、把持部9を把持して回転体5を回転させる方向(回転方向R)が予め定められている。回転体5の回転方向Rは、下方から見た場合に、回転体5を軸心RA回りに反時計方向に回転させる方向である。この回転方向Rについては、図5A図5Bに図示している。第1片2aは、3枚の板片の中で上下方向に最も長い長方形に形成されている(図4参照)。3枚の板片のうち、第1片2aよりも回転方向Rの後側に位置する板片が第2片2bである。第2片2bは、下端が第1片2aに近づくにつれて下方に移行する傾斜状に切断された帯板である。第2片2bの上下方向に沿った長さは、第1片2aよりも短く形成されている。3枚の板片のうち、回転方向Rの最も後側に位置する板片が第3片2cである。第3片2cは、3枚の板片の中で上下方向に最も短い長方形に形成されている。
【0021】
図4に示すように、上述した3枚の板片2a,2b,2cは、上端が同じ高さになるように揃えた状態で、隣り合うもの同士が接合されている。3枚の板片2a,2b,2cが接合された第1板2は、下方から見た場合に3枚の板片が130°~180°の角度で折れ曲がってつながった形状(亀甲括弧状)とされている。このように3枚の板片を接合させた第1板2には、回転方向Rの後側の下部に、板片が存在していない切り欠き2dが形成されている。この切り欠き2dは、上述した回転体5を所定の回転方向Rに回転させた場合には、土壌との接触抵抗を低減し、土中に差し込まれた状態でも第1板2が回転しやすいように形成されている。
【0022】
図2に示すように、第1板2は、回転体5の軸心RAから外側に距離をあけて上下方向に延びている。そのため、回転体5を軸心回りに回転させると、第1板2が回転体5の軸心の外側に距離をあけた状態で回転し、回転体5の軸心回りに円筒面状に土壌が削られる。
一方、第2板3は、後述する押さえ板7の下面から回転体5の軸心RAに沿って下方に延びる板部材である。第2板3は、第1板2に対面するように配備されている。図4に示すように、第2板3は、上下方向の中途側で折れ曲がっており、上部3Uと下部3Dとで配向方向が異なっている。第2板3の上部3Uは、上下方向に延びる長方形の板部材である。また、第2板3の下部3Dは、当該第2板3の上部3Uの下端から第1板2の下端に近接する方向に向かって傾斜している。第2板3の下部3Dは、下方に向かうにつれて板幅が狭くなるような先端先細り状に形成されている。このように第2板3の下部3Dを傾斜状に形成すれば、回転体5の軸心回りに回転させることで土壌をせん断して突き崩すことが可能になる。
【0023】
上述したように、第1板2は、回転体5の軸心から外側に距離をあけて上下方向に延びている。そして、第2板3は、(押さえ板7の下面から)回転体5の軸心に沿うように下方に延びると共に下方に延びた先で第1板2の下端に向かって傾斜状に形成されている。
第2板3は、回転体5の回転方向Rに対して迎え角を有するように配置されている。そのため、上下方向を向く軸心回りに回転体5を回転させると、第2板3の下部は土壌をせん断するだけでなく上方に押し上げる。押し上げられた土壌は後述する採取部4に押し込まれる。そして、土壌を押し上げた分だけ土壌採集具1自体は下方に進むので、スクリュー状のドリルなどを用いた場合と同様に土壌を掘削しながら下方に進出する。
【0024】
図4は、土壌採集具1の採取部4を拡大して示した図である。
図4に示すように、採取部4は、第1板2と、第1板2に対面する第2板3との間に形成される空間である。採取部4は、第2板3で押し上げられた土壌が採取された土壌として収容される部分である。詳しくは、互いに対面し合う第1板2の上部と第2板3の上部3Uとの間に、採取部4の上部が形成される。また、切り欠き部が形成された第1板2の下部と、迎え角を有するように傾斜した第2板3の下部3Dとの間に、採取部4の下部が形成される。採取部4の下部は土壌を掘削する部分であり、採取部4の下部は掘削した土壌を収容する部分である。本実施形態の土壌採集具1に設けられる採取部4は、土壌の掘削を行う上部と、土壌の収容を行う下部と、を合わせた部分である。
【0025】
上述したように、本実施形態の土壌採集具1は、第1板2と第2板3との位置関係を変更する変更機構6を備えている。変更機構6は、2つの板部材間の位置関係(第1板2と第2板3との位置関係)を、第1状態と第2状態との相互間で変更する。
第1状態は、第1板2の下端と第2板3の下端とが当接または近接する状態である(図1図4参照)。第1状態では、2つの板部材間に土壌が挟み込まれて、土壌は水平方向に強く押された状態となる。つまり、第1状態では、採取部4の土壌に水平方向に圧縮力が加わっている。そのため、第1板2及び第2板3と土壌との間の摩擦力が大きくなる。摩擦力が大きいので、土壌を落下しないように持ち上げたり移動させたりすることが可能となる。
【0026】
第2状態は、第1板2の下端と第2板3の下端とが離反する状態である(図7の右端の図参照)。言い換えれば、第2状態では、第1板2と第2板3とはほぼ平行な状態であり、近接も当接もしていない。第2状態では、2つの板部2、3から土壌に水平方向に作用する力(土壌を挟む力)は小さい。そのため、第2状態では、採取部4の土壌に水平方向に加わる圧縮力も弱い。これにより、第1板2及び第2板3と土壌との間の摩擦力が小さくなる。摩擦力が小さいので、土壌を解放して落下させることが可能となる。
【0027】
つまり、後ほど図6図7を用いて説明するが、本実施形態の土壌採集具1では、変更機構6によって第2状態から第1状態に変更することにより、地中にて土壌を第1板2と第2板3の間の採取部4に留めることができる。そして、採取部4に留めた土壌を第1状態のまま地中より引き上げることにより、土壌を採集することができる。次に、変更機構6によって第1状態から第2状態に変更することにより、採取部4に留めた土壌を落下させることが可能となり、採集した土壌を回収容器8などに回収することができる。
【0028】
本実施形態の土壌採集具1では、第1板2及び第2板3を回転しながら地中に押し込んだ際に、地中にて土壌を第1板2と第2板3の間に留め、第1状態で地中より引き上げられることで土壌を採集する。また、土壌採集具1は、変更機構6によって第1板2及び第2板3を第1状態から第2状態に変更することにより、第1板2と第2板3との間に挟み込んだ土壌を取り出す。
【0029】
図4及び図5に示すように、本実施形態の土壌採集具1は、押さえ板7を備えている。押さえ板7には、上述した第1板2及び第2板3が取り付けられている。
押さえ板7は、回転体5と採取部4との間に設けられて、地表面に接触することで採取部4の地中への挿し込みを抑制するものである。押さえ板7は、水平方向に沿うように配備される板である。押さえ板7の平面視形状は、本実施形態の場合、略正方形であるが、円形等の他の形状であってもよい。押さえ板7の上側には、上下方向に長い筒状の内筒体10が配備されている。内筒体10は押さえ板7に固定されており、押さえ板7と一体に上下方向に移動可能である。
【0030】
押さえ板7の下面には、上述した第2板3が配備されている。第2板3の上端は押さえ板7の下面に固定されており、第2板3は押さえ板7と一体に上下方向に移動したり水平方向に回転したりする。第2板3は、押さえ板7の下面中央に配備されている。第2板3は、回転体5の軸心RAを下方に延設したときに延設された軸心が当該第2板3の上部を上下に貫通する位置に配備されている。
【0031】
図4に示すように、本実施形態の土壌採集具1は、第1板2の上端には、第1板2を揺動自在に支持するヒンジ部11が設けられている。ヒンジ部11は、押さえ板7の側部に設けられている。具体的には、ヒンジ部11は、前後方向を向く揺動軸回りに、揺動自在とされた2つの揺動片11a、11bを有している。一方の揺動片11aは、押さえ板7に締結具21などを用いて固定されている。また、もう一方の揺動片11bは、第1板2の上部の左面(外面)に固定されている。
【0032】
図4に示すように、本実施形態の土壌採集具1は、付勢部材12を備えている。付勢部材12は、第1板2を第2板3に近接する方向に付勢力を付与する部材である。付勢部材12は、ヒンジ部11より下方の第1板2と第2板3との間に配備されている。本実施形態では、付勢部材12には金属製の弦巻バネが用いられている。付勢部材12を設けることで、第1板2には、第2板3に近接する方向の付勢力が常時加えられる。言い換えれば、付勢部材12の付勢力は、第1板2と第2板3との位置関係を第2状態から第1状態に変更する方向に常に作用している。
【0033】
本実施形態の土壌採集具1に設けられる変更機構6は、開放レバー13から構成されている。開放レバー13は、付勢部材12の付勢力に抗して第2板3に対して第1板2を離反させる。言い換えれば、開放レバー13は、付勢部材12の付勢力に抗して、第1板2と第2板3との位置関係を第1状態から第2状態に変更する。
具体的には、開放レバー13は、付勢部材12の付勢力に抗して第2板3から第1板2を離反させる棒状の部材である。開放レバー13は、第1板2の上部に設けられている。具体的には、開放レバー13は、第1板2の左側面から左上方に延び、延びた先で上方に屈曲している。また、開放レバー13は、上方に屈曲した上で、さらに回転体5の下部近傍まで上方に延びている。開放レバー13の下端はヒンジ部11により揺動可能とされた第1板2に固定されているため、開放レバー13を左右に揺動させると、第1板2も開放レバー13と一緒に左右方向に揺動する。
【0034】
例えば、開放レバー13の上部を右方向に揺動する。そうすると、開放レバー13の上部は回転体5に近接する方向に移動する。ヒンジ部11を挟んで開放レバー13の上部とは反対側に位置する第1板2は、開放レバー13の上部とは反対の左方向に揺動する。そうすると、第1板2が第2板3から距離をあけるようになり、第1板2と第2板3との位置関係が第1状態から第2状態に変化する。
【0035】
一方、開放レバー13の上部を左方向に揺動する。そうすると、開放レバー13の上部は回転体5から離れる方向に移動する。ヒンジ部11を挟んで開放レバー13の上部とは反対側に位置する第1板2は、開放レバー13の上部とは反対の右方向に揺動する。そうすると、第1板2が第2板3に近接または当接するようになり、第1板2と第2板3との位置関係が第2状態から第1状態に変化する。
【0036】
次に、調整機構14について説明する。
図8に示すように、土壌採集具1は、押さえ板7の回転体5に対する上下方向の位置を調整可能な調整機構14を備えている。調整機構14は、上述した内筒体10とピン15とを有している。内筒体10は、押さえ板7の上面に配置(固定)される。内筒体10は、回転体5に沿って押さえ板7と一体に上下方向に移動可能である。具体的には、内筒体10は、回転体5の内側に挿入される円管状の部材であり、回転体5の内側を上下方向に移動可能となっている。ピン15は、内筒体10を回転体5に対して位置決めする。具体的には、調整機構14は、回転体5に対する内筒体10の位置を、ピン15を用いて位置決めすることで、押さえ板7の上下方向の位置を調整している。
【0037】
具体的には、内筒体10は、回転体5の内径、詳しくは、後述する回転体5の下部体5Dの内径と同じ外径か、下部体5Dの内径より小さい外径を備えた円管状の部材である。図3及び図4に示すように、内筒体10は、当該内筒体10の下端が下部体5Dの下端と同じ上下方向の位置にある場合に、当該内筒体10の上端が後述するレバー16のやや上方に位置するような寸法に形成されている。
【0038】
図8に示すように、内筒体10の上下方向の中途部には、第1貫通孔17が形成されている。第1貫通孔17は、内筒体10の周壁を内外に貫通する孔である。本実施形態の場合、第1貫通孔17は、内筒体10の周壁を前後方向に水平に貫通している。つまり、第1貫通孔17は、内筒体10の前側の外周面に開口を有している。そして、第1貫通孔17は、前側の開口から内筒体10の内部を前後方向に貫通し、内筒体10の後側の外周面に形成された後側の開口に達している。
【0039】
なお、本実施形態の調整機構14には、単数の第1貫通孔17しか設けられていないが、第1貫通孔17を内筒体10の上下方向の中途側に、上下方向の位置を変えて複数形成することもできる。このように複数の第1貫通孔17を形成すれば、押さえ板7の回転体5に対する上下方向の位置を多段階に変更することが可能となる。
図1図3、及び図8に示すように、回転体5には、複数の第2貫通孔18が回転体5の軸心RAの方向に並んで形成されている。第2貫通孔18は、回転体5の周壁、回転体5の下部体5Dの周壁を内外に貫通する孔である。第2貫通孔18は、回転体5の周壁を前後方向に水平に貫通している。つまり、第2貫通孔18は、回転体5の前側の外周面と後側の外周面とに開口を有している。そして、第2貫通孔18は、前側の開口から回転体5の内部を前後方向に貫通し、回転体5の後側の外周面に形成された後側の開口に達している。
【0040】
本実施形態の場合、第2貫通孔18は、回転体5の周壁に、上下方向の位置を変えて複数形成されている。それゆえ、内筒体10を回転体5の内部で上下方向に沿って移動させると、複数の第2貫通孔18のいずれかが第1貫通孔17と連通する。複数の第2貫通孔18のいずれかと第1貫通孔17とが連通した状態で、第1貫通孔17と第2貫通孔18との双方にピン15を連通状態で挿入することができる。
【0041】
ピン15は、第1貫通孔17の前側の開口から後側の開口までの寸法(内筒体10の外径寸法)よりも長く形成されている。
図8に示すように、本実施形態の調整機構14の場合、第2貫通孔18は、回転体5の周壁に、上下方向の位置を変えて2つ形成されている。図8の左側では、内筒体10の第1貫通孔17は、回転体5の上側の第2貫通孔18Uと連通している。そして、ピン15は、第1貫通孔17と上側の第2貫通孔18Uとを連通した状態で、回転体5の下部体5Dを内筒体10に位置決めしている。
【0042】
ここで、ピン15を第1貫通孔17と第2貫通孔18とから抜き取り、回転体5に対して内筒体10を下方に移動させる。そうすると、内筒体10の第1貫通孔17が、回転体5の下側の第2貫通孔18Dと連通するようになる。第1貫通孔17と下側の第2貫通孔18Dとが連通したら、ピン15を第1貫通孔17と下側の第2貫通孔18Dとの双方に挿通させ、図8の右側に示すように回転体5の下部体5Dを内筒体10に位置決めする。
【0043】
図8の右側では、図8の左側に比べて、内筒体10がより下方に突出した状態で位置決めされている。そのため、内筒体10の下端に設けられた押さえ板7もより下方に位置するようになる。以上の手順を行えば、調整機構14を用いて、押さえ板7の回転体5に対する上下方向の位置を下方に変更調整することができる。
なお、調整機構14を用いて、押さえ板7の回転体5に対する上下方向の位置を上方に変更調整する場合には、上述した手順と逆の手順を行えば、押さえ板7の回転体5に対する上下方向の位置を上方に変更調整することができる。
【0044】
次に、押さえ板7を回転させる回転体5、及び回転体5を回転させる把持部9について説明する。
図1図3等に示すように、本実施形態の土壌採集具1の上側には、手で握って回転させることで、回転体5に上下方向軸回りに回転駆動力を発生させる把持部9が設けられている。把持部9は、水平方向(図例では左右方向)に延びる長尺棒状の部材である。把持部9の左端部には左手用の把持カバー19Lが被覆されており、右端部には右手用の把持カバー19Rが被覆されている。
【0045】
回転体5は、円管材を略T字状に組み合わせて形成された上部体5Uと、上部体5Uの下側に内挿される直管状の下部体5Dと、を組み合わせている。
回転体5の上部体5Uを構成する管材の内径は、把持部9を内挿可能な大きさに設定されている。上部体5Uにおける、水平に延びる管材と、上下に延びる管材とが交差する部分には、上部体5Uと把持部9とを互いに挿通させた状態で固定する連結具20が設けられている。上部体5Uにおける上下に延びる管材の内側には、回転体5の下部体5Dが下側より挿入可能となっている。
【0046】
回転体5の下部体5Dは、上部体5Uの内側に挿入可能な管材で形成されている。つまり、下部体5Dを構成する管材の外径は、上部体5Uを構成する管材の内径よりも小さくされており、下部体5Dは上部体5Uの内側に挿入可能とされている。
下部体5Dの上側における、上部体5Uと内外に重なり合った部分に、上部体5Uの周壁と下部体5Dの周壁とを連通して固定する締結具21が設けられている。この締結具21を設けることで、下部体5Dは、上部体5Uに対して上下方向に移動が規制された状態で連結されている。
【0047】
下部体5Dにおける上下方向の中途側には、後述する調整機構14の第1貫通孔17が形成されている。第1貫通孔17は、下部体5Dの周壁を貫通するように形成されており、上下方向に高さを変えて複数形成されている。すなわち、回転体5の下部体5Dは、上述した調整機構14の内筒体10として機能している。
図2図3に示すように、土壌採集具1は、第1板2と第2板3との間に押板22が設けられている。押板22は、採取部4が第1状態にあるときに下方に移動することで、第1板2と第2板3との間に挟み込まれた土壌を押す。そして、回転体5には、押板22を下方に押し下げるレバー16が設けられている。
【0048】
押板22は、第1状態にある第1板2と第2板3との間に差し込み可能な板部材である。押板22は、水平方向に沿うように配備されており、前後方向に長い長方形の板状に形成されている。押板22の前後方向に沿った長さは、第1板2及び第2板3のいずれの前後方向の長さよりも長く形成されており、採取部4に採取された土壌を確実に圧縮できるようになっている。
【0049】
押板22の前端には、上下方向に延びる連結板23が設けられている。また、連結板23の上端には、前後方向に延びる昇降板24が設けられている。昇降板24は、押板22と略平行になるように、水平方向に沿うように配備されている。図3に示すように、これら押板22、連結板23、及び昇降板24は、左方から見た場合に、「U」字を時計回り方向に90°回転させたような配置で並んでおり、互いに連結されている。
【0050】
レバー16は、押板22を押し下げる部材である。レバー16は、回転体5から右方に向かって水平に延びている。レバー16の左端は、回転体5の下部体5Dに外挿された筒状の基部26に連結されている。基部26は、回転体5の下部体5Dの外径よりもやや大きな内径を備えた筒状に形成されており、回転体5の下部体5Dに外挿された状態で上下方向に移動可能となっている。そして、基部26の左側の外周面には、上述した昇降板24に連結されることで、レバー16の押し下げ動作を押板22に伝達する伝達板25が設けられている。
【0051】
つまり、レバー16を下方に向かって押し下げると、筒状の基部26が回転体5の下部体5Dに外挿された状態で下方に移動する。そうすると、基部26の外周面に固定された伝達板25が下方に移動し、伝達板25に連結された昇降板24も下方に移動する。この昇降板24には連結板23を介して押板22が取り付けられているので、押板22が第1板2と第2板3との間で下降して採取部4に採取された土壌を下方に押し込み、土壌が圧縮される。
【0052】
図1図2に示すように、本実施形態の土壌採集具1は、採取された土壌を収容するサンプル袋を引っ掛けるフック27を備える。
フック27は、押さえ板7の後端に設けられている。フック27は、押さえ板7の後端から上方に向かって突出している。このようなフック27を設ければ、土壌のサンプルを収容した袋を1つ又は複数吊り下げることができる。
【0053】
例えば、広大な圃場で土壌採集を複数回に亘って行う場合、従来の土壌採集では採集された土壌のサンプルを持ち運ぶ作業者が、土壌を採集する作業者に加えて必ず必要であった。土壌のサンプルを圃場に一時的に放置することも可能であるが、放置された袋を回収するのに別途多大な労力が必要となる。
しかし、本実施形態の土壌採集具1では、フック27に土壌のサンプルを収容した袋を掛けたまま、土壌採集を行う作業者がサンプルの持ち運びを兼業することができる。つまり、従来複数人で作業することが必要であった土壌採集作業を一人で行うことができるため、土壌採集の省力化及び効率化が可能となる。
【0054】
次に、本実施形態の土壌採集具1を用いた土壌採集の手順について説明する。
先ず、図6の左側に示すように、本実施形態の土壌採集具1を、地表面から所定の高さまで持ち上げる。このとき、付勢部材12の付勢力により第1板2は右方(第2板3側)に付勢されており、第1板2と第2板3との位置関係は第1状態となっている。
次に、土壌採集具1を、地面に突き立てる。そして、把持カバー19を両手で把持しつつ把持部9を所定の回転方向Rに回転させる。本実施形態の場合、把持部9(回転体5)の回転方向Rは、上方から見た場合に、時計回りとなる方向となっている。
【0055】
把持部9を所定の回転方向Rに回転させると、把持部9の回転駆動力が回転体5に加わり、回転体5が軸心回りに所定の回転方向R(図5A図5B参照)に回転する。回転体5には上部体5Uと下部体5Dとがあるが、上部体5Uの回転は連結具20を介して連結された下部体5Dにも伝達される。この回転体5の回転はピン15によって位置決めされた内筒体10、内筒体10の下側に固定された押さえ板7にも伝達する。そして、押さえ板7が回転体5の軸心回りに回転すると、押さえ板7の下側に固定された第2板3も回転体5の軸心回りに回転する。
【0056】
第2板3は、上下方向の中途部で折れ曲がっており、第2板3の下部は上部の下端から第1板2の下端に近接する方向に向かって傾斜している。このように第2板3の下部を傾斜状に形成すれば、回転体5の軸心回りに回転させることで土壌をせん断して突き崩すことが可能になる。
また、第2板3の下部は、回転体5の回転方向Rに対して迎え角を有するように配置されている。そのため、上下方向を向く軸心回りに回転体5を回転させると、第2板3の下部は土壌をせん断するだけでなく上方に押し上げる。押し上げられた土壌は後述する採取部4に押し込まれる。そして、土壌を押し上げた分だけ土壌採集具1自体は下方に進むので、スクリュー状のドリルなどを用いた場合と同様に土壌を掘削しながら下方に進出する(図6の左から2番目の図を参照)。
【0057】
このようにして土壌採集具1が地中に進出していくと、やがて押さえ板7が地表面に接触するようになる(図6の左から3番目の図を参照)。押さえ板7が地表面に接触すると、土壌採集具1は地中に侵入しなくなる。これにより、採取部4の地表面からの深さが決定され、採取される土壌の地表面からの深さが決定する。このとき、採取部4には、第2板3によってせん断され崩された土壌が収容されている。この採取部4に収容された土壌には、掘削に伴う空気などが含まれている可能性がある。そこで、押板22を用いて土壌を下方に押し下げ、圧縮することによって収容された土壌に含まれる空気を押し出す。
【0058】
図6の右端の図に示すように、押板22で土壌を押す場合には、回転体5から右方に向かって水平に延びるレバー16を下方に押し下げる。図1等に示すように、レバー16の左端は筒状の基部26に連結されており、基部26の左側の外周面には伝達板25が設けられている。それゆえ、レバー16を下方に向かって押し下げると、筒状の基部26が回転体5の下部体5Dに外挿された状態で下方に移動する。そうすると、基部26の外周面に固定された伝達板25が下方に移動し、伝達板25に連結された昇降板24も下方に移動する。この昇降板24には連結板23を介して押板22が取り付けられているので、押板22が下降し採取された土壌を下方に押し込み、土壌が圧縮される。
【0059】
土壌を押すと、圧縮された土壌が第1板2及び第2板3に圧着されるため、採取部4に採取された土壌を落下させること無く引き上げることが可能となる。
次いで、図7の左端と左から2番目の図に示すように、採取部4に土壌が採取された土壌採集具1の採取部4を地中より(矢印に示すように)上方に向かって引き上げる。このとき、付勢部材12の付勢力により第1板2は右方(第2板3側)に付勢されており、第1板2と第2板3との位置関係は図6の場合と同様に第1状態となっている。
【0060】
本実施形態の土壌採集具1が地上に引き上げられたら、図7の右端の図に示すように、開放レバー13の上部を右方向(把持部9側)に揺動する。そうすると、開放レバー13の上部は回転体5に近接する方向に移動する。ヒンジ部11を挟んで開放レバー13の上部とは反対側に位置する第1板2は、開放レバー13の上部とは反対の左方向に揺動する。そうすると、第1板2が第2板3から距離をあけるように移動し、第1板2と第2板3との位置関係が第2状態に変化する。
【0061】
この第2状態は、第1板2の下端と第2板3の下端とが離反する状態である。第2状態では、2つの板部から土壌に水平方向に作用する力は小さい。そのため、第2状態では、採取部4の土壌に水平方向に加わる圧縮力も摩擦力も弱い。摩擦力が小さいので、土壌を解放して落下させることが可能となる。なお、第1板2と第2板3との間に残った土壌(残存土壌)がある場合は、第1板2の下端と第2板3の下端とが離反した状態でレバー16を下方に向かって押し下げると、残存土壌を落下させることも可能である。つまり、この場合には、押板22をスクレーバとして使用することができる。
【0062】
このようにして本実施形態の土壌採集具1では、第1板2と第2板3との位置関係を第1状態として地中に押し込むことにより、地中にて土壌を第1板2と第2板3の間の採取部4に留める。そして、採取部4に留めた土壌を第1状態のまま地中より引き上げる。次に、変更機構6によって第1状態から第2状態に変更することにより、採取部4に留めた土壌を落下させることが可能となり、採集した土壌を確実に回収容器8などに回収することが可能となる。
【0063】
図9に示すように、本実施形態の土壌採集具1は、土壌の採集が行われた際の時間、場所、あるいは条件などの情報を管理する情報管理部50を備えていても良い。情報管理部50による情報の管理には、例えば、情報の記録、保存、通信、印字が含まれる。情報管理部50で管理される管理情報には、次のようなものがある。
管理情報には、土壌採集が行われた日時が含まれる。この土壌採集が行われた日時は、年、月、日、時刻、曜日、午前・午後などで示される。
【0064】
管理情報には、土壌採集が行われた位置の情報(位置情報)が含まれる。位置情報は、測位衛星から受信される測位情報である。
管理情報には、土壌採集を行った作業者の情報が含まれる。作業者の情報には、作業者の氏名のほか、所属する団体や法人名、住所、IDなどが含まれる。
管理情報には、土壌採集が行われた圃場に関する情報が含まれる。圃場に関する情報には、土壌分析された結果を判断するのに役立つ情報が含まれる。圃場に関する情報には、例えば土壌採集前に作付けされていた作物や、次期に作付けしようとする作物の種類などの情報が含まれる。土壌採集前に作付けされていた作物の情報がわかれば、土壌中の栄養分のうち、土壌採集前の作付けで消費された可能性が高い栄養分を判断することができる。また、次期に作付けしようとする作物の種類がわかれば、水稲におけるケイ素のように次期の作付けで大きな消費が見込まれる栄養分を判断することができる。
【0065】
管理情報には、土壌分析を依頼しようとする依頼先などの情報が含まれる。
上述した管理情報は、後述する通信装置30などを介して取得されるか、あるいは後述する携帯端末機器37などから予め入力されて、土壌採取が行われたという情報と一緒に記録される。また、記録された管理情報は、通信装置30を介して外部の記憶部35に送られ、記憶部35に保存される。たり、土壌採集具1と一緒に携帯されるラベルプリンタ36を用いてラベルなどに印字されたりする。
【0066】
次に、情報管理部50で情報管理ができるように土壌採集具1に設けられる採取検知部28、通信装置30、記憶部35、携帯端末機器37、ラベルプリンタ36について説明する。
採取検知部28は、土壌が採集されたことを検知する部分である。採取検知部28は、第1板2と第2板3との位置関係が変化したこと、言い換えれば土壌の回収動作が行われたことを検知する。このような採取検知部28には、リミットスイッチなどのセンサを用いることができる。
【0067】
例えば、リミットスイッチを用いた採取検知部28を例に挙げると、リミットスイッチ(採取検知部28)は回転体5の下部体5Dまたは開放レバー13に設けられる。採集した土壌を回収容器8に落下させる場合は、第1板2と第2板3との位置関係が第1状態から第2状態に変化する。第1状態から第2状態に変化すると、第1板2の下端が第2板3の下端から離間し、開放レバー13が回転体5の下部体5Dに近接する。そこで、上述したリミットスイッチで、回転体5の下部体5Dに対する開放レバー13の近接を検知する。
【0068】
開放レバー13の近接を検知すると、リミットスイッチ(採取検知部28)はOFF信号からON信号に切り替わる。そして、採取検知部28から通信装置30に向けて、リミットスイッチのON信号が「土壌の回収が行われた」ことを示す信号として、出力される。
なお、上述したリミットスイッチは一例であって、採取検知部28にはリミットスイッチ以外のセンサを用いることもできる。例えば、回転体5の下部体5Dまたは開放レバー13に感圧センサなどを設けておき、開放レバー13が回転体5の下部体5Dに接触したことを検知しても良い。また、誘導型、静電容量型、あるいは磁気型などの近接センサ、あるいは光電スイッチなどのようなセンサを回転体5の下部体5Dまたは開放レバー13に設けておき、回転体5の下部体5Dに対する開放レバー13の近接を検知しても良い。
【0069】
さらに、採取検知部28は、使用者が土壌採取したことを手動で記録する記録スイッチ29を備えていても良い。記録スイッチ29は、土壌を回収容器8に回収する際に使用者が自ら押圧する。このような記録スイッチ29は、使用者が押圧しやすいように、例えば把持部9の近傍などに設けられる。記録スイッチ29は、上述したリミットスイッチ(センサ)に代えて、あるいは上述したリミットスイッチ(センサ)に加えて、設けることができる。
【0070】
通信装置30は、採取検知部28から出力された「土壌の回収が行われた」ことを示す信号を、携帯端末機器37に外部ネットワークを通じて通信する。また、通信装置30は、外部ネットワークを通じて日時、位置、圃場などに関する管理情報を受信する。通信装置30の通信規格には、例えばIEEE802.11シリーズのWi-Fi(Wireless Fidelity、登録商標)、BLE(Bluetooth(登録商標)Low Energy)、LPWA(Low Power, Wide Area)、LPWAN(Low-Power Wide-Area Network)等を用いることができる。また、通信装置30としては、例えば、携帯電話通信網又はデータ通信網などを用いることができる。上述した通信規格はいずれも無線通信の規格であるが、通信装置30は有線であっても良い。
【0071】
通信装置30が通信する情報に、土壌採集が行われた日時を示す時間情報が含まれる場合、土壌採集具1には時間記録部34が配備される。時間記録部34は例えばGNSS衛星の第1衛星信号などを受信するアンテナを備えており、アンテナはL1信号及びL2信号を受信する。アンテナは、みちびき等の準天頂衛星(QZSS(Quasi-Zenith Satellite System)衛星)の衛星信号(第2衛星信号)を受信可能である。アンテナは、第2衛星信号として、少なくともQZSS衛星から送信されたL6信号(中心周波数1278.75MHz)を受信する。L6信号には、補正情報(センチメータ級測位補強情報)が含まれている。補正情報には、衛星時計誤差情報、衛星信号バイアス誤差情報、衛星軌道誤差情報、対流圏伝播誤差情報、電離層伝播誤差情報等が含まれている。なお、アンテナは、第2衛星信号として、GNSS衛星から送信されたL1信号及びL2信号を受信してもよい。時間記録部34は、アンテナを用いて衛星からの補正情報を受信しており、補正情報に基づいて土壌の回収動作が行われた時刻を正確に記録可能となっている。
【0072】
採取検知部28から「土壌の回収が行われた」ことを示す信号が出力されると、時間記録部34で土壌の回収動作が行われた日付や時刻などの管理情報が正確に記録される。そして、記録された時間に関する管理情報は通信装置30に送られ、「土壌の回収が行われた」ことを示す情報と一緒に携帯端末機器37に日時に関する管理情報が送られる。
なお、土壌採集具1に時間記録部34を配備するのに代えて、外部ネットワークを通じて時間情報を取得することもできる。この場合、時間記録部34を備えていない土壌採集具1を用いることもできる。
【0073】
通信装置30が通信する情報に、土壌の回収動作が行われたときの測位情報(位置情報)が含まれる場合、土壌採集具1には測位装置31が配備される。
測位装置31は、D-GPS、GPS、GLONASS、北斗、ガリレオ、みちびき等の衛星測位システム(測位衛星)により、自己の位置(緯度、経度を含む測位情報)を検出可能である。即ち、測位装置31は、測位衛星から送信された衛星信号(測位衛星の位置、送信時刻、補正情報等)を受信し、衛星信号に基づいて、土壌採集具1の位置(例えば、緯度、経度)、即ち、機体位置VP1を検出する。測位装置31は、受信装置32と、慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)33とを有している。受信装置32は、アンテナ等を有していて測位衛星から送信された衛星信号を受信する装置である。慣性計測装置33は、加速度を検出する加速度センサ、角速度を検出するジャイロセンサ等を有している。慣性計測装置33は、土壌採集具1に設けられて、例えば土壌採集具1の傾斜角度や変位を計測することができる。測位装置31は、受信装置32で受信された位置情報及び慣性計測装置33で計測された土壌採集具1の傾斜角度や変位などの情報を通信装置30に送っている。そして、通信装置30では、「土壌の回収が行われた」ことを示す情報と一緒に、測位装置31で測位された測位情報が携帯端末機器37に送られる。
【0074】
上述した通信装置30を経由して発信された情報は、携帯端末機器37で受信することができる。携帯端末機器37は、例えば、比較的演算能力の高いスマートフォン(多機能携帯電話)やタブレットPC等である。図9に示すように、携帯端末機器37は、土壌回収時に使用者が所持することとされていて、各使用者に割り当てられている。
携帯端末機器37は、第2通信部38と、記憶部35と、制御部39と、表示部40とを備えている。第2通信部38は、例えば、通信規格であるIEEE802.11シリーズのWi-Fi(Wireless Fidelity、登録商標)、或いは、第5世代通信システムなどによりサーバと通信を行う。制御部39は、CPU等で構成されていて、第2通信部38、記憶部35及び表示部40の制御を行う。表示部40は、タッチパネル等で構成されている。
【0075】
制御部39には、通信装置30が通信する情報に基づいて、採集した土壌の管理を行うアプリケーションプログラム(Applicationsoftware)が格納されている。
使用者が表示部40を操作することによってアプリケーションプログラムを起動すると、補足データを入力するための入力画面が表示される。この入力画面には、例えば、使用者の氏名、圃場の名称、土壌採取の後に栽培しようする作物の種類、施肥しようとする肥料の種類、あるいは施肥しようとする施肥量、土壌採取前に栽培していた作物の種類、施肥していた肥料の種類、あるいは施肥していた施肥量、土壌分析を依頼しようとする依頼先などに関する情報などが入力される。以降では、この入力画面に入力される情報を補足情報という。補足情報が入力画面に入力されると、アプリケーションプログラムは、入力された補足情報を記憶部35に保存する。このように記憶部35に補足情報を保存しておけば、保存された補足情報を土壌採集に関する作業記録として利用することができる。
【0076】
記憶部35は、携帯端末機器37に内蔵されたRAM(Random Access Memory)、第2通信部38を介してアクセス可能な外部のサーバのHDDなどである。
表示部40は、アプリケーションプログラムは、通信装置30を経由して送信されてきた時間情報及び位置情報、並びに入力された補足情報を、表示する部分である。表示部40では、アプリケーションプログラムにより表などの形式で情報が見やすく表示される。このように時間情報、位置情報、及び補足情報を見やすく表示部40で表示すれば、圃場において既に実施済の作業や未実施の作業を正確に確認でき、土壌採集の作業を確実に且つ間違いなく実施することができる。
【0077】
また、アプリケーションプログラムは、時間情報、位置情報、及び補足情報を、ラベルプリンタ36でラベルに印字することができる。ラベルプリンタ36は、土壌採集具1に配備されるか、使用者が携行されている。ラベルプリンタ36には、ネットワークを介して接続されたプリンタ(ネットワークプリンタ)を用いても良い。ラベルプリンタ36で印字が行われるラベルは、粘着剤などでサンプル袋に貼り付け可能とされているのが好ましい。ラベルは、色や模様を変えて複数用意することができる。
【0078】
時間情報、位置情報、及び補足情報が印字されたラベルをサンプル袋に貼り付ければ、サンプル袋の取り違えを防止することができる。土壌入りのサンプル袋は、外観が類似していることが多く、誤って別のサンプル袋と取り違えるといった混同ミスを起こしやすい。特に、上述したフック27に採集された土壌が収容されたサンプル袋を複数引っ掛ける場合は、外観の類似性が原因となって、混同ミスが頻発しやすい。しかし、管理情報が印字されたラベルがサンプル袋に貼付されていれば、このような混同ミスを避けることができる。そのため、サンプル袋をフック27に引っ掛けた状態で用いる場合には、特に上述した情報管理部を予め設けておく方が好ましい。
【0079】
なお、携帯端末機器37は、第2通信部38を用いて、近距離無線通信、データ通信網、あるいは携帯電話通信網などにより、サーバ41と無線通信を行うこともできる。サーバ41(例えば、クボタ スマート アグリ システムなどの営農サポートのサイト)には、圃場管理、肥培管理、作業管理、作業記録や作業進捗管理を行うソフトウェアが格納されており、携帯端末機器37を用いてサーバ41にアクセスすることでソフトウェアをダウンロードして利用することができる。このように外部のサーバ41にアクセスして各ソフトウェアを利用できれば、時間情報、位置情報、及び補足情報を、圃場管理、肥培管理、作業管理、作業記録や作業進捗管理のアプリケーションプログラムにおいて活用できる。
【0080】
例えば、時間情報、位置情報、及び補足情報のデータと、土壌分析後の各成分のデータとが取得できれば、圃場において不足する肥料成分が判断でき、不足分を補うための肥料の種類や施肥量が計算できるので、圃場管理や肥培管理をより正確に行うことが可能となる。また、肥料の種類や施肥量が計算できれば、作業計画をより正確に立てることができるようになるし、作業記録や作業進捗管理も行いやすくなる。
【0081】
上記した実施形態の土壌採集具1によれば、以下に説明する効果を奏することができる。
土壌採集具1は、第1板2と、第1板2から水平方向に距離をあけて配備される第2板3とを含み、第1板2及び第2板3を回転させながら地中に押し込んだ際に第1板2と第2板3との間に採取される土壌が入る採取部4と、採取部4に設けられ且つ第1板2及び第2板3部を回転させる回転力を付与する回転体5と、第1板2の下端と第2板3の下端が当接または近接する第1状態と、第1板2の下端と第2板3の下端が離反する第2状態とに変更する変更機構6と、を備えている。
【0082】
この構成によれば、本実施形態の土壌採集具1は、変更機構6によって第1板2及び第2板3の位置関係を第2状態から第1状態に変更することにより、採集した土壌を第1板2と第2板3の間の採取部4に留めることができる。また、採取部4に土壌を留めたまま(第1状態のまま)土壌採集具1を上方に移動させることで、採集した土壌を地上に引き上げることができる。また、本実施形態の土壌採集具1は、変更機構6によって第1板2及び第2板3の位置関係を第1状態から第2状態に変更することにより、採取部4に留めた土壌を落下させることが可能となり、採集した土壌を回収容器8などに回収することができる。
【0083】
つまり、本実施形態の土壌採集具1では、第1板2及び第2板3を回転しながら地中に押し込んだ際に、地中にて土壌を第1板2と第2板3の間に留め、第1状態で地中より引き上げられることで土壌を採集することができる。また、土壌採集具1は、変更機構6によって第1板2及び第2板3を第1状態から第2状態に変更することにより、第1板2と第2板3との間に挟み込んだ土壌を取り出すことができる。その結果、本実施形態の土壌採集具1は、地中で土壌を採集し、採集した土壌を挟み込んだ状態で確実に引き上げて、回収容器8やサンプル袋などに回収することができる。
【0084】
土壌採集具1は、第1板2及び第2板3を回転しながら地中に押し込んだ際に、地中にて土壌を第1板2と第2板3の間に留め、第1状態で地中より引き上げられる。
この構成によれば、本実施形態の土壌採集具1に形成される採取部4は、第1板2と第2板3とに挟まれるため土壌を安定して留めることができる。また、地中に押し込まれた第1板2及び第2板3を回転させることで、採取部4には土壌が確実に流入する。そのため、地中の土壌を採取部4に確実に採取して、採取した土壌を採取部4に安定して留めつつ土中より引き上げることが可能となる。
【0085】
土壌採集具1は、変更機構6によって第1板2及び第2板3を第1状態から第2状態に変更することにより、第1板2と第2板3との間に挟み込んだ土壌を取り出す。
この構成によれば、第2状態では第1板2及び第2板3が離間するため、採取部4に留められていた土壌を確実に落下させることが可能となる。その結果、土壌採集具1では、地中から引き上げられた土壌を回収容器8やサンプル袋などに確実に回収することが可能となる。
【0086】
また、第1板2は、回転体5の軸心から外側に距離をあけて上下方向に延びており、第2板3は、回転体5の軸心に沿うように下方に延びると共に下方に延びた先で第1板2の下端に向かって傾斜状に形成されている。
この構成によれば、回転体5を軸心回りに回転させると、第1板2が回転体5の軸心の外側に距離をあけた状態で回転し、回転体5の軸心回りに円筒面状に土壌が削られる。一方、第2板3の下部は第1板2の下端に向かって傾斜状に形成されているため、回転体5の軸心回りに回転させることで土壌をせん断して突き崩すことが可能になる。その結果、第1板2及び第2板3を回転体5の軸心回りに回転させると、スクリュー状のドリルなどを用いた場合と同様に土壌を掘削することができる。
【0087】
また、第2板3は、回転体5の回転方向Rに対して迎え角を有するように配置されている。
この構成によれば、上下方向を向く軸心回りに回転体5を回転させると、第2板3の下部は土壌をせん断するだけでなくせん断した土壌を上方に押し上げることができる。押し上げられた土壌は後述する採取部4に流入する。そして、土壌を押し上げた分だけ土壌採集具1自体は下方に進むので、土壌採集具1は、スクリュー状のドリルなどを用いた場合と同様に土壌を掘削しながら下方に進出することが可能となる。
【0088】
また、回転体5と採取部4との間には、地表面に接触することで採取部4の地中への挿し込みを抑制する押さえ板7が形成されている。
この構成によれば、押さえ板7が地表面に接触することで、採取部4が必要深さ以上に地中へ挿し込まれることが抑制される。
土壌採集具1は、押さえ板7の回転体5に対する上下方向の位置を調整可能な調整機構14を備えている。
【0089】
この構成によれば、調整機構14により、押さえ板7の回転体5に対する上下方向の位置が上方または下方に変更調整可能となる。押さえ板7は、地表面に接触することで、土壌採集具1の地中への侵入を抑制する。そのため、調整機構14によって押さえ板7の上下方向の位置を上方または下方に変更すると、採取部4の地表面からの深さが変更でき、採取される土壌の地表面からの深さを任意に変更することが可能となる。
【0090】
また、調整機構14は、周壁を貫通する第1貫通孔17が形成されると共に回転体5の内側に挿入された内筒体10と、内筒体10を回転体5に対して位置決めするピン15と、を有し、内筒体10は、押さえ板7の上側に配置されると共に、回転体5に沿って押さえ板7と一体に上下方向に移動可能であり、回転体5には、複数の第2貫通孔18が回転体5の軸心の方向に並んで形成され、内筒体10を回転体5に沿って移動させたときに複数の第2貫通孔18のいずれかが第1貫通孔17と連通し、ピン15は、第1貫通孔17と第2貫通孔18が連通した状態で、第1貫通孔17及び第2貫通孔18に挿入される。
【0091】
この構成によれば、回転体5に対する押さえ板7の上下方向の位置を上方や下方に変更調整することができる。具体的には、第2貫通孔18は、回転体5の周壁に、上下方向の位置を変えて2つ形成されている。内筒体10の第1貫通孔17が、回転体5の上側の第2貫通孔18Uと連通している場合、ピン15は、第1貫通孔17と上側の第2貫通孔18Uとを連通し、回転体5の下部体5Dを内筒体10に位置決めしている。ピン15を第1貫通孔17と第2貫通孔18とから抜き取り、回転体5に対して内筒体10を下方に移動させる。そうすると、内筒体10の第1貫通孔17が、回転体5の下側の第2貫通孔18Dと連通状態になる。第1貫通孔17と下側の第2貫通孔18Dとが連通したら、ピン15を第1貫通孔17と下側の第2貫通孔18Dとの双方に挿通させ、回転体5の下部体5Dを内筒体10に位置決めする。このようにすれば、調整機構14を用いて、回転体5に対する押さえ板7の上下方向の位置を下方に変更調整することができる。
【0092】
なお、調整機構14を用いて、押さえ板7の回転体5に対する上下方向の位置を上方に変更調整する場合には、上述した手順と逆の手順を行えば、押さえ板7の回転体5に対する上下方向の位置を上方に変更調整することができる。
また、第1板2と第2板3との間には、採取部4が第1状態にあるときに下方に移動することで、第1板2と第2板3との間に挟み込まれた土壌を押す押板22が設けられており、回転体5には、押板22を下方に押し下げるレバー16が設けられている。
【0093】
この構成によれば、採取部4に採集された土壌を押すことができ、採取部4からの土壌の落下をより確実に抑制することができる。
具体的には、レバー16の左端は筒状の基部26に連結されており、基部26の左側の外周面には伝達板25が設けられている。一方、伝達板25には昇降板24が連結されており、昇降板24には連結板23を介して押板22が取り付けられている。
【0094】
それゆえ、レバー16を下方に向かって押し下げると、筒状の基部26が回転体5の下部体5Dに外挿された状態で下方に移動する。そうすると、基部26の外周面に固定された伝達板25が下方に移動し、伝達板25に連結された昇降板24も下方に移動する。この昇降板24には連結板23を介して押板22が取り付けられているので、押板22が下降し採取された土壌を下方に押し込み、採取部4の土壌を圧縮することができる。
【0095】
また、第1板2の上端には、第1板2を揺動自在に支持するヒンジ部11が設けられており、ヒンジ部11より下方の第1板2と第2板3との間には、第1板2が第2板3に近接する方向に付勢力を付与する付勢部材12が設けられており、変更機構6は、第1板2の上部に設けられると共に、付勢部材12の付勢力に抗して第2板3に対して第1板2を離反させる開放レバー13から構成されている。
【0096】
この構成によれば、開放レバー13の下端はヒンジ部11により揺動可能とされた第1板2に固定されている。そのため、開放レバー13の上部を右方向に揺動すると、開放レバー13の上部が回転体5に近接する方向に移動する。また、ヒンジ部11を挟んで開放レバー13の上部とは反対側に位置する第1板2を、開放レバー13の上部とは反対の左方向に揺動すると、第1板2が第2板3から離反し、第1板2と第2板3との位置関係が第2状態に変化する。なお、ヒンジ部11より下方の第1板2と第2板3との間には、付勢部材12が設けられているので、第1板2には第2板3に近接する方向の付勢力が常時加えられる。それゆえ、開放レバー13の上部を右方向に揺動させる際には付勢部材12の付勢力に抗することが必要となる。しかし、開放レバー13の上部を左方向に揺動させる際には付勢力により開放レバー13は自動的に揺動し、右方向に揺動させる前の状態に復帰する。
【0097】
土壌採集具1は、前記採取された土壌を収容するサンプル袋を引っ掛けるフック27を備える。
この構成によれば、フック27に対して土壌のサンプルを収容した袋を複数吊り下げることができる。つまり、本実施形態の土壌採集具1では、フック27に土壌のサンプルを掛けたまま、土壌採集を行う作業者がサンプルの持ち運びを兼業することができ、土壌採集の省力化及び効率化が可能となる。
【0098】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
例えば、上述した実施形態では、時間記録装置34が土壌採集具1に取り付けられた例を挙げた。しかし、時間記録装置34に代えて、無線通信を経由して時間情報をネットワーク環境から取得することもできる。
【0099】
また、上述した実施形態では、ラベルプリンタ36を用いてラベルに時間情報、位置情報、及び補足情報を印字する例を挙げた。しかし、ラベルに代えてQRコード(登録商標)やバーコードなどを用い、ラベルプリンタ36に代えてQRコード(登録商標)プリンタやバーコードプリンタを用いて、時間情報、位置情報、及び補足情報をコード化した状態で印字しても良い。
【符号の説明】
【0100】
1 土壌採集具
2 第1板
2a 第1片
2b 第2片
2c 第3片
3 第2板
3U 第2板の上部
3D 第2板の下部
4 採取部
5 回転体
5U 上部体
5D 下部体
6 変更機構
7 押さえ板
8 回収容器
9 把持部
10 内筒体
11 ヒンジ部
11a ヒンジ部の揺動片
11b もう一方のヒンジ部の揺動片
12 付勢部材
13 開放レバー
14 調整機構
15 ピン
16 レバー
17 第1貫通孔
18 第2貫通孔
18U 上側の第2貫通孔
18D 下側の第2貫通孔
19L 左手用の把持カバー
19R 右手用の把持カバー
20 連結具
21 締結具
22 押板
23 連結板
24 昇降板
25 伝達板
26 基部
27 フック
28 採取検知部
29 記録スイッチ
30 通信装置
31 測位装置
32 受信装置
33 慣性計測装置
34 時間記録部
35 記憶部
36 ラベルプリンタ
37 携帯端末機器
38 第2通信部
39 制御部
40 表示部
41 サーバ
50 情報管理部
M 土壌
R 回転方向
RA 回転体の軸心
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9