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特許7714541照射により架橋された成形誘電体部品及びその作製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-18
(45)【発行日】2025-07-29
(54)【発明の名称】照射により架橋された成形誘電体部品及びその作製方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/24 20060101AFI20250722BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20250722BHJP
   C08L 57/00 20060101ALI20250722BHJP
   C08L 23/04 20060101ALI20250722BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20250722BHJP
   C08J 3/28 20060101ALI20250722BHJP
   H01P 3/16 20060101ALI20250722BHJP
   H01Q 15/02 20060101ALI20250722BHJP
   H01Q 9/04 20060101ALI20250722BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20250722BHJP
【FI】
C08J3/24 Z CER
C08L101/00
C08L57/00
C08L23/04
C08K3/013
C08J3/28 CEZ
H01P3/16
H01Q15/02
H01Q9/04
H05K1/03 610H
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2022529660
(86)(22)【出願日】2020-11-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-27
(86)【国際出願番号】 US2020061000
(87)【国際公開番号】W WO2021101958
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2023-10-23
(31)【優先権主張番号】62/938,983
(32)【優先日】2019-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521138305
【氏名又は名称】ロジャーズ・コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・ブラシウス
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン・オコナー
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0177527(US,A1)
【文献】特開平11-060645(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0291364(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/24
C08L 101/00
C08L 57/00
C08L 23/04
C08K 3/013
C08J 3/28
H01P 3/16
H01Q 15/02
H01Q 9/04
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリマーと
橋助剤と
化開始剤と
加剤組成物と、
セラミックフィラー組成物と
を含む複合材料の架橋物を含む、硬化成形誘電体部品であって、
架橋前の前記複合材料が、それぞれ、架橋前の前記複合材料の総質量に基づいて、
10から99質量%の前記熱可塑性ポリマーと、
0.25から10質量%の前記架橋助剤と、
0.01から5質量%の前記硬化開始剤と、
0.0001から2質量%の前記添加剤組成物と、
1から90質量%の前記セラミックフィラー組成物と
を含み、
合計が100質量%であり、
前記硬化成形誘電体部品が、10GHzにおける誘電率が6超から20であり、
ASTM D1238-20に従って、190℃、2.16kgで試験した場合に、メルトフローインデックスを有しない、
硬化成形誘電体部品。
【請求項2】
前記熱可塑性ポリマーの加工温度が、160℃から280℃である、請求項1に記載の硬化成形誘電体部品。
【請求項3】
前記熱可塑性ポリマーの溶融温度が、250℃以下、又は90℃から250℃である、請求項1又は2に記載の硬化成形誘電体部品。
【請求項4】
前記熱可塑性ポリマーの、ASTM D1238-20に従って、190℃、2.16kgで測定したメルトフローインデックスが、10分間当たり5グラム未満である、請求項1から3のいずれか一項に記載の硬化成形誘電体部品。
【請求項5】
前記熱可塑性ポリマーが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、フッ素化エチレンプロピレンコポリマー、ポリノルボルネン、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロックコポリマー、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の硬化成形誘電体部品。
【請求項6】
前記熱可塑性ポリマーが、低密度ポリエチレン又は直鎖状低密度ポリエチレンを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の硬化成形誘電体部品。
【請求項7】
前記架橋物が、架橋助剤の残留物を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の硬化成形誘電体部品。
【請求項8】
前記架橋物が、架橋助剤の残留物を含まず、前記熱可塑性ポリマーが、ポリエチレン等の照射により自己架橋する熱可塑性ポリマーを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の硬化成形誘電体部品。
【請求項9】
前記硬化開始剤が存在し、前記熱可塑性ポリマーの加工温度よりも高い、好ましくは前記熱可塑性ポリマーの加工温度よりも少なくとも10℃、少なくとも20℃、又は少なくとも30℃高い開始温度を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の硬化成形誘電体部品。
【請求項10】
前記架橋助剤が存在し、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、ポリブタジエン、ジアクリル酸亜鉛、ジメタクリル酸亜鉛、ジビニルベンゼン、ビニル末端ポリフェニレンエーテルオリゴマー、m-フェニレンジマレイミド、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、三官能アクリル酸エステル、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の硬化成形誘電体部品。
【請求項11】
前記添加剤組成物が存在し、酸化防止剤、金属不活性化剤、加工助剤、接着促進剤、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の硬化成形誘電体部品。
【請求項12】
前記セラミックフィラーが、ヒュームドシリカ、二酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、コランダム、ウォラストナイト、Ba2Ti9O20、中空セラミック球、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、ベリリア、アルミナ、アルミナ三水和物、マグネシア、マイカ、タルク、ナノクレイ、水酸化マグネシウム、固体ガラス球、中空ガラス球、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の硬化成形誘電体部品。
【請求項13】
前記セラミックフィラーが、多峰性の粒径分布を有し、前記多峰性の粒径分布の第1峰のピークが、前記多峰性の粒径分布の第2峰のピークの少なくとも7倍である、請求項1から12のいずれか一項に記載の硬化成形誘電体部品。
【請求項14】
架橋前の前記複合材料が、それぞれ、架橋前の前記複合材料の総質量に基づいて、
50から95質量%の前記熱可塑性ポリマーと
0.25から10質量%の前記架橋助剤と
0.01から5質量%の前記硬化開始剤と
0.001から2質量%の前記添加剤組成物と、
5から50質量%の前記セラミックフィラー組成物と
を含み、
合計が100質量%である、請求項1から13のいずれか一項に記載の硬化成形誘電体部品。
【請求項15】
架橋前の前記複合材料が、それぞれ、架橋前の前記複合材料の総質量に基づいて、
10から50質量%の前記熱可塑性ポリマーと
0.25から10質量%の前記架橋助剤と
0.01から5質量%の前記硬化開始剤と
0.001から2質量%の前記添加剤組成物と、
50から90質量%の前記セラミックフィラー組成物と
を含み、
合計が100質量%である、請求項1から13のいずれか一項に記載の硬化成形誘電体部品。
【請求項16】
架橋前の前記複合材料が、それぞれ、架橋前の前記複合材料の総質量に基づいて、
10から25質量%の前記熱可塑性ポリマーと
0.25から10質量%の前記架橋助剤と
0.01から5質量%の前記硬化開始剤と
0.001から2質量%の前記添加剤組成物と、
75から90質量%の前記セラミックフィラー組成物と
を含み、
合計が100質量%である、請求項15に記載の硬化成形誘電体部品。
【請求項17】
前記複合材料が、前記複合材料の総体積に基づいて、20体積パーセント超、好ましくは40体積パーセント超の前記セラミックフィラーを含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の硬化成形誘電体部品。
【請求項18】
10GHzにおいて測定した誘電率が10以上、好ましくは12以上である、請求項1から17のいずれか一項に記載の硬化成形誘電体部品。
【請求項19】
硬化後と比較した硬化前の前記部品における長さ寸法の変化が、任意の又はすべての長さ寸法において、2%未満、好ましくは1%未満である、請求項1から18のいずれか一項に記載の硬化成形誘電体部品。
【請求項20】
前記部品が、誘電体共振器アンテナ、誘電体共振器アンテナの誘電体部分、電磁導波路、誘電体電磁レンズ、無線周波部品、マイクロ波部品、ミリ波部品、テラヘルツ部品、又は光学部品である、請求項1から19のいずれか一項に記載の硬化成形誘電体部品。
【請求項21】
前記部品が、誘電体電磁レンズであり、好ましくは5GHz超300GHz未満の周波数において動作するように構成された誘電体電磁レンズである、請求項1から20のいずれか一項に記載の硬化成形誘電体部品。
【請求項22】
請求項1から21のいずれか一項に記載の硬化成形誘電体部品を含む回路材料又は回路基板。
【請求項23】
請求項1から19のいずれか一項に記載の硬化成形誘電体部品を作製する方法であって、
前記熱可塑性ポリマー、前記任意の架橋助剤、前記任意の硬化開始剤、前記任意の添加剤組成物、及び前記セラミックフィラー組成物を含む複合材料を配合する工程と、
前記配合された複合材料を溶融して、溶融物を形成する工程と、
前記溶融物を成形して、成形物品を形成する工程と、
前記成形物品を放射線に曝露して、前記熱可塑性ポリマーにおいて十分なフリーラジカルを発生させ、前記熱可塑性ポリマーの少なくとも一部を架橋させて、前記硬化成形誘電体部品を形成する工程と
を含む、方法。
【請求項24】
前記成形物品を基板上に形成する工程と、
前記成形物品の少なくとも一部を、照射に対してマスキングする工程と、
前記成形物品のマスキングされていない部分を照射に曝露して、前記硬化成形誘電体部品を形成する工程と
を更に含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記成形が、成型又は層の形成、好ましくは成型を含む、請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年11月22日に出願された米国仮特許出願第62/938,983号による利益を主張する。この関連出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
多くの高周波用途において、低誘電損失の高分子部品が必要とされている。そのような用途のための部品における誘電体は、容易且つ迅速な加工をもたらす熱可塑性材料の恩恵を受けているが、はんだリフロー試験に合格する十分な熱安定性を有するためには、それらの材料は摂氏300度(℃)を上回る軟化温度を有する必要がある。そのような材料は、特に、例えば携帯電話の基地局アンテナや、高いデータ転送速度が必要とされるデジタルアプリケーションなど、あらゆる伝送システム又は無線通信インフラにおいて重要な部品であるアンテナに関連する可能性がある。
【0003】
誘電体部品においては、熱可塑性材料及び熱硬化性材料の両方が使用されることが記載されている。一般に、誘電体部品の形成において使用するのに十分なはんだリフロー耐熱性(例えば、240から280℃の温度)を有する熱可塑性材料は、粘度が高くなってしまい、極端な加工温度が必要となり、多くの場合、特別なバレル、スクリュー、ヒーター材が必要となる。一方、熱硬化性材料は、架橋された後であれば、より高い加工温度に耐えることができるが、押出、射出成型、ブロー成型、熱成型、及び回転成型などの大量のプラスチックを加工する方法には適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第4,756,971号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のことから、成形誘電体部品として使用するための改良された複合材料に対するニーズが依然として存在する。具体的には、はんだリフロー温度に対する曝露に耐えることができ、低い誘電損失を有し得る、汎用プラスチックの条件で成形誘電体部品へと容易に形成される材料に対するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書において開示されるのは、硬化成形誘電体部品、それを作製する方法、及びそれを含む物品である。
【0007】
本明細書において開示されるのは、熱可塑性ポリマーと、任意の架橋助剤と、任意の硬化開始剤と、任意の添加剤組成物と、セラミックフィラー組成物とを含む複合材料の架橋物を含む、硬化成形誘電体部品であって、10GHzにおける誘電率(permittivity)が1.1から20であり、ASTM D1238-20に従って、190℃、2.16kgで試験した場合に、メルトフローインデックスを有しない、硬化成形誘電体部品である。
【0008】
硬化成形誘電体部品を作製する方法は、熱可塑性ポリマー、任意の架橋助剤、任意の硬化開始剤、任意の添加剤組成物、及びセラミックフィラー組成物を含む複合材料を配合する工程と、配合された複合材料を溶融して、溶融物を形成する工程と、溶融物を成形して、成形物品を形成する工程と、成形物品を放射線に曝露して、熱可塑性ポリマーにおいて十分なフリーラジカルを発生させて、熱可塑性ポリマーの少なくとも一部を架橋させて、硬化成形誘電体部品を形成する工程とを含む。
【0009】
更に開示されるのは、硬化成形誘電体部品を含む物品である。
【0010】
上記の特色及び他の特色について、以下の発明を実施するための形態及び特許請求の範囲によって例示する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において記載されるのは、放射線を用いて架橋された成形誘電体部品及びその部品を作製する方法である。驚くべきことに、熱可塑性ポリマーから製造された、硬化成形部品の電気的特性は、照射後も維持され、熱抵抗は、熱硬化性材料のものにまで増加することが発見された。硬化成形部品は、誘電損失が低く、はんだリフローに耐えることができる。とりわけ、硬化成形部品は、熱可塑性ポリマーを含む複合材料を形成することによって、容易に製造することができる。複合材料は、成形、例えば成型され、その後、成形された複合材料は、熱可塑性ポリマーを架橋させるために照射される。結果として得られる硬化成形部品は熱的に安定であり、寸法変化が小さい。
【0012】
したがって、硬化成形誘電体部品は、加工温度が低い熱可塑性ポリマー、任意の架橋助剤、任意の硬化開始剤、任意の添加剤組成物、及びセラミックフィラー組成物を含む複合材料の架橋物を含む。硬化成形誘電体部品は、500メガヘルツ(MHz)から10ギガヘルツ(GHz)において1.1から20の誘電率、最高で摂氏280度(℃)の熱抵抗、又はその両方を有し、硬化成形部品を形成するのに使用される低い加工温度では流動しない。
【0013】
硬化部品は、熱可塑性ポリマーの架橋(硬化)によって得られる。好ましくは、熱可塑性ポリマーは、室温で固体であり、架橋することなく(照射を行わない場合)、溶融と固化のサイクルを複数回繰り返すことができる。使用可能な熱可塑性ポリマーは、280℃以下又は220℃以下、更には150℃程度の低い温度で加工、すなわちペレットへと配合し、成形体へと形成することが可能(すなわち、射出成型、異形押出、ブロー成型、回転成型、押出、溶融キャスト、又は三次元印刷によって)である。例えば、熱可塑性ポリマーは、150℃から280℃、又は160℃から280℃、又は160℃から220℃、又は170℃から200℃、又は170℃から190℃の低い加工温度で加工することができる。熱可塑性ポリマーは、150℃から235℃で加工することができる。
【0014】
例えば、熱可塑性ポリマーは、250℃以下又は90℃から250℃の、溶融温度(Tm)又はガラス転移温度(Tg)を有してもよい。Tgは、示差走査熱量計(DSC)により、例えば窒素ガスブランケット下、-120℃から300℃まで10℃/分の傾斜率で求めることができる。或いは、又は加えて、熱可塑性ポリマーは、ASTM D1238-20に従って、190℃、2.16キログラム(kg)で測定したメルトフローインデックス(MFI)が、少なくとも10分間当たり5グラム(g/10分)であってもよく、好ましくはASTM D1238-20に従って、190℃、2.16kgで測定したMFIが、少なくとも10g/10分である。
【0015】
照射によって架橋することができる例示的な熱可塑性ポリマーとしては、熱可塑性ポリオレフィン及びそれらのコポリマーが挙げられる。例示的なポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)及び直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等のポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、並びにポリメチルペンテン(PMP)が挙げられる。追加的な低温加工熱可塑性プラスチックには、フッ素化エチレンプロピレンコポリマー(EFEP)等のフルオロポリマー、ポリノルボルネン及びノルボルネニル単位とエチレン又はプロピレン等の非環状オレフィンとを含有するコポリマー等の環状オレフィンポリマー、並びにスチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロックコポリマー(SEPS)等のスチレン系ブロックコポリマーが含まれる。また、熱可塑性ポリマーを組み合わせて使用することも可能である。
【0016】
架橋性複合材料中の各成分の量は、以下において更に詳しく説明するように、所望される熱的性質及び電気的性質を得るために調整することができる。最も広義には、ポリエチレン等の自己架橋性ポリマーを使用する場合、架橋性複合材料は、最大100質量パーセント(質量%)の熱可塑性ポリマーを有してもよい。しかしながら、一般的に、架橋助剤、硬化開始剤、セラミックフィラー組成物、又は他の任意の添加剤のうち1つ以上が、少なくとも1質量%、追加的に存在する。ある態様においては、成形部品用の複合材料は、それぞれ、複合材料の総質量に基づいて、10から99質量%、又は10から95質量%、又は50から99質量%、又は50から95質量%、又は60から90質量%、又は10から50質量%、又は10から30質量%、又は10から25質量%、又は10から20質量%の熱可塑性ポリマーを含む。
【0017】
熱可塑性ポリマーが、ポリエチレン、例えばLDPE又はLLDPEを含む場合、照射による架橋は架橋助剤を必要としないが、架橋助剤を含むことで、架橋の密度を高めることができる。複合材料中に架橋助剤が存在しない場合、架橋物(硬化成形誘電体部品)は、架橋助剤の残留物を含まない。熱可塑性ポリマーが、架橋助剤の非存在下では架橋しなかったり、切断されたりする場合、照射により熱可塑性ポリマーが架橋するように、複合材料中に架橋助剤を存在させる。例えば、熱可塑性ポリマーがポリエチレン以外のポリマー、例えばポリプロピレンを含む場合、架橋助剤を存在させてもよい。架橋助剤が存在する場合、一般に、架橋物は架橋助剤の残留物を含む。
【0018】
例示的な架橋助剤としては、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、官能性ホスファゼン、トリアリルホスフェート、ポリブタジエン、ジアクリル酸亜鉛及びジメタクリル酸亜鉛等のカルボン酸亜鉛塩、ジビニルベンゼン及びビニル末端ポリフェニレンエーテルオリゴマー等のビニル末端化合物、m-フェニレンジマレイミド、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、三官能アクリル酸エステル、ジペンタエリスリトールペンタクリレート等の多官能(メタ)アクリレート、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。官能性ホスファゼン等の架橋助剤を組み込むと、それが難燃剤としても機能することができるため、有益であり得る。例えば、大塚化学株式会社から市販されている、SPV-100等のトリビニル官能性ホスファゼンが挙げられる。トリアリルトリメリテート等の架橋助剤を組み込むことで、煙の発生を低減することができる。
【0019】
ある態様においては、成形部品用の架橋性複合材料は、それぞれ、複合材料の総質量に基づいて、0から10質量%、又は0.25から10質量%、又は0.5から8質量%、又は1から3質量%の架橋助剤を含む。
【0020】
架橋性複合材料は、更に任意に、硬化開始剤を含むことができる。好適な硬化開始剤は、放射線の吸収により開始種、好ましくはフリーラジカルを形成する。光開始剤系を使用することができ、照射により、通常共開始剤と呼ばれる第2の化合物から水素又は電子を奪取してフリーラジカルを形成し、開始フリーラジカルを提供する光開始剤が含まれる。硬化(架橋)は、波長の異なる2種以上の放射線によって実現可能である。一部の場合において、2種以上の硬化開始剤をともに使用することが好ましい場合もある。
【0021】
具体的な硬化開始剤の例としては、キノン類、ベンゾフェノン及び置換ベンゾフェノン類、ヒドロキシアルキルフェニルアセトフェノン、ジアルコキシアセトフェノン、α-ハロ-アセトフェノン、アリールケトン(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン等)、チオキサントン類(イソプロピルチオキサントン等)、ベンジルジメチルケタール、ビス(2,6-ジメチルベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、トリメチルベンゾイルホスフィンオキシド誘導体(2,4,6トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド等)、メチルチオフェニルモルホリンケトン(2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン等)、モルホリノフェニルアミノケトン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、5,7-ジヨード-3-ブトキシ-6-フルオロン、ジフェニルヨードニウムフルオリド、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンゾインエーテル、ペルオキシド、ビ-イミダゾール類、アミノケトン、ベンゾイルオキシムエステル、カンファーキノン類、ケトクマリン、ミヒラーケトン、ポリ(1,4-ジイソプロピルベンゼン)(United Initiators社のCUROX(登録商標)CC-P3)、並びに2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタンが挙げられ、これらは、フィラーがすべてのUV照射を遮断した場合でも使用可能である。好適な硬化開始剤は、例えば、IRGACURE(登録商標)(BASF社)、LUCERIN(登録商標)TPO(BASF AG社)、PERKADOX(登録商標)(Nouryon社)、及びESACURE(登録商標)(LAMBERTI社)の商品名で市販されている。ある態様においては、硬化開始剤は、熱可塑性ポリマーの加工温度よりも高い、例えば、熱可塑性ポリマーの加工温度よりも少なくとも10℃、少なくとも20℃、又は少なくとも30℃高い開始温度又は分解温度を有する。例えば、配合を180℃で実施し、成型を190℃で実施する場合、これらのプロセス中に硬化開始剤が分解しないことが好ましい。例えば、PERKADOX(登録商標)30の半減期温度は、0.1時間で284℃、1時間で259℃、及び10時間で237℃である。硬化開始剤は、284℃の温度で0.05から1時間の半減期、又は259℃の温度で0.5から5時間若しくは0.5から2時間の半減期、又は237℃の温度で5から15時間の半減期を有してもよい。配合や成型は、一般に2から10分間の滞留時間で行われるため、硬化剤の分解は最小限である。
【0022】
硬化開始剤は、それぞれ、複合材料の総質量に基づいて、0から5質量%、又は0.01から5質量%、又は0.1から3質量%、又は1から2質量%の量で存在してもよい。
【0023】
本明細書において記載される複合材料は、成形された硬化部品の誘電体としての性質又は他の性質を調整するため、セラミックフィラー組成物を含むこともできる。好ましくは、セラミックフィラー組成物は存在する。セラミックフィラー組成物は、ヒュームドシリカ、二酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、コランダム、ウォラストナイト、Ba2Ti9O20、中空セラミック球、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、ベリリア、アルミナ、アルミナ三水和物、マグネシア、マイカ、タルク、ナノクレイ、水酸化マグネシウム、固体ガラス球、中空ガラス球、又はそれらの組み合わせのうち少なくとも1つを含んでもよい。セラミックフィラー組成物は、シリカ、二酸化チタン、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。二酸化チタン粒子は、複数の平坦な面を有する、不規則な形状であってもよい。セラミックフィラーは、0.1から10マイクロメートル又は0.5から5マイクロメートルの、質量基準のD90粒径を有してもよい。セラミックフィラーは、2マイクロメートル以下又は0.1から2マイクロメートルの、質量基準のD90粒径を有してもよい。
【0024】
ある態様においては、セラミックフィラー組成物は、多峰性の粒径分布を有し、多峰性の粒径分布の第1峰のピークは、多峰性の粒径分布の第2峰のピークの少なくとも7倍である。多峰性の粒径分布は、より低粘度の複合材料をもたらすことができる。多峰性の粒径分布は、例えば、二峰性、三峰性、又は四峰性であってもよい。換言すれば、セラミックフィラーは、第1の平均粒径を有する第1の複数の粒子と、第2の平均粒径を有する第2の複数の粒子とを含んでもよく、第1の平均粒径は、第2の平均粒径の7倍以上、若しくは10倍以上、若しくは7から60倍、又は第2の平均粒径の7から20倍である。本明細書において使用される場合、粒径という用語は、粒子と同じ体積を有する球体の直径を指し、平均粒径は、複数の粒子の粒径の数平均を指す。第1峰のピーク(第1の平均粒径)は、2マイクロメートル以上、又は2から20マイクロメートルであってもよい。第2峰のピーク(第2の平均粒径)は、0.2マイクロメートル以上、又は2マイクロメートル以下、又は0.2から1.5マイクロメートルであってもよい。
【0025】
第1の複数の粒子及び第2の複数の粒子は、同じセラミックフィラーを含んでもよい。例えば、第1の複数の粒子及び第2の複数の粒子は、二酸化チタンを含んでもよい。反対に、第1の複数の粒子及び第2の複数の粒子は、異なるセラミックフィラーを含むこともできる。例えば、第1の複数の粒子はシリカを含んでもよく、第2の複数の粒子は二酸化チタンを含んでもよい。
【0026】
第1の複数の粒子は、1から10マイクロメートル、又は2から5マイクロメートルの平均粒径を有してもよい。第2の複数の粒子は、0.01から1マイクロメートル、又は0.1から0.5マイクロメートルの平均粒径を有してもよい。セラミックフィラーは、1から10マイクロメートルの平均粒径を有する二酸化チタンを含む第1の複数の粒子、及び0.1から1マイクロメートルの平均粒径を有する第2の複数の粒子を含んでもよい。
【0027】
セラミックフィラー組成物は、それぞれ、複合材料の総質量に基づいて、1から90質量%、又は5から90質量%、又は1から50質量%、又は5から50質量%、又は10から40質量%、又は50から90質量%、又は70から90質量%、又は75から90質量%、又は80から90質量%の量で存在してもよい。
【0028】
別の態様においては、複合材料は、複合材料の総体積に基づいて、20体積パーセント(体積%)超のセラミックフィラーを含む。
【0029】
ある態様においては、複合材料は、複合材料の総体積に基づいて、40体積%超のセラミックフィラーを含む。
【0030】
セラミックフィラーは、処理済み二酸化チタンを含んでもよい。例えば、二酸化チタンを焼結して、所望される相の量を増加させることができる。理論によって束縛されることを意図するものではないが、焼結は、組成物がより低い誘電損失を達成するのを助ける場合があると考えられている。1から10マイクロメートル、又は2から5マイクロメートルの平均粒径を有する、第1の複数の二酸化チタン粒子を焼結してもよい。0.1から1マイクロメートル、又は0.1から0.5マイクロメートルの平均粒径を有する、第1の複数の二酸化チタン粒子を焼結してもよい。
【0031】
セラミックフィラーは、熱可塑性ポリマー中への分散を助けるために、例えば、界面活性剤、シラン、チタネート、ジルコネート、有機ポリマー、又は他の無機材料で表面処理することができる。例えば、粒子をオレイルアミンオレイン酸等の界面活性剤でコーティングすることができる。シランは、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピル-メトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、フェニルシラン、トリクロロ(フェニル)シラン、3-(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物、トリス(トリメチルシロキシ)フェニルシラン、ビニルベンジルアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ビニル-トリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(ベータメトキシエトキシ)シラン、又はそれらの組み合わせを含むことができる。シランは、フェニルシランを含むことができる。シランは、置換フェニルシラン、例えば米国特許第4,756,971号に記載されているものを含むことができる。チタネートコーティングは、チタン酸イソステアリル[トリス(イソオクタデカノアト-O)(プロパン-2-オラト)チタン]、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリネオデカノニルチタネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリ(ドデシル)ベンゼン-スルホニルチタネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリ(ジオクチル)ホスファトチタネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリ(ジオクチル)ピロ-ホスファトチタネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリ(N-エチレンジアミノ)エチルチタネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリ(m-アミノ)フェニルチタネート、及びネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリヒドロキシ
カプロイルチタネート、又はそれらの組み合わせから形成することができる。ある態様においては、チタネートコーティングは、TYTAN(登録商標)CP-317(Borica社)等のチタン酸イソステアリル[トリス(イソオクタデカノアト-O)(プロパン-2-オラト)チタン]である。ジルコネートコーティングは、ネオペンチル(ジアリルオキシ)トリ(ジオクチル)ピロ-ホスフェートジルコネート、ネオペンチル(ジアリルオキシ)トリ(N-エチレンジアミノ)エチルジルコネート、又はそれらの組み合わせから形成することができる。
【0032】
コーティングは、コーティングされたセラミックフィラーの総質量に基づいて、0.01から2質量%又は0.1から1質量%で存在することができる。セラミックフィラーは、SiO2、Al2O3、MgO、又はそれらの組み合わせでコーティングすることができる。セラミックフィラーは、塩基触媒ゾルゲル法、ポリエーテルイミド(PEI)ウェット及びドライコーティング法、又はポリ(エーテルケトン)(PEEK)ウェット及びドライコーティング法でコーティングすることができる。
【0033】
ある態様においては、複合材料は、硬化成形部品の所望される性質を調整するため、添加剤組成物を含む。添加剤組成物は、酸化防止剤、金属不活性化剤、加工助剤(例えば、ポリエチレンワックス若しくはステアリン酸誘導体)、接着促進剤、又はそれらの組み合わせを含むことができる。酸化防止剤の非限定的な例は、BASF社からCHIMASSORB(登録商標)944の商品名で市販されているポリ[[6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-s-トリアジン-2,4-ジイル][(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル-)イミノ]]、又は同じくBASF社から市販されているIRGANOX(登録商標)1010(ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート))である。金属不活性化剤の非限定的な例は、ADDIVANT(登録商標)社からNAUGARD(登録商標)XL-1の商品名で市販されている2,2-オキサリルジアミドビス[エチル3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]である。好ましい金属不活性化剤は、Songwon社から市販されているSONGNOX(登録商標)1024、1,2-ビス(3,5-ジ-tert-ブチルヒドロキシヒドロシンナモイル)ヒドラジンである。例示的な加工助剤としては、Honeywell A-C(登録商標)6A LDPEワックスが挙げられる。例示的な接着促進剤としては、BYK Chemie社から市販されているSCONA(登録商標)TSPE 1112 GALL等の無水マレイン酸グラフト化ポリオレフィンが挙げられる。
【0034】
各添加剤は、存在する場合、それぞれ、複合材料の総質量に基づいて、0から2質量%、又は0.0001から2質量%、又は0.0005から1.6質量%の量で使用してもよい。一般的に、添加剤組成物は、それぞれ、複合材料の総質量に基づいて、0.0001から5質量%又は0.001から3質量%の総量で存在してもよい。
【0035】
したがって、硬化成形誘電体部品を作製する方法は、加工温度が低い熱可塑性ポリマー、任意の架橋助剤、任意の硬化開始剤、任意の添加剤組成物、及びセラミックフィラー組成物を含む複合材料を配合することを含んでもよい。配合された複合材料は、溶融して溶融物を形成してもよく、その溶融物を成形して成形物品が形成される。その後、成形物品を放射線に曝露して、熱可塑性ポリマーにおいて十分なフリーラジカルを発生させて、熱可塑性ポリマーの少なくとも一部を架橋させて、硬化成形誘電体部品を形成してもよい。
【0036】
硬化成形誘電体部品を作製する方法において、配合は、単軸若しくは二軸押出機、Bussコニーダー、Farrel連続ミキサー、Banburyミキサー、又は二本ロールミル等の、熱可塑性ポリマーの溶融及びブレンドに好適な既知の装置で行うことができる。様々な成分を直接混合してもよいし、又は順次供給してもよい。ある態様においては、配合物はストランドとして押出され、円筒形のペレットへと切断される。配合又は他の加工は、150℃から250℃、又は160℃から220℃、又は170℃から200℃、又は170℃から190℃の温度で行うことができる。
【0037】
配合の後、架橋性複合材料は、ASTM D1238-20に従って、190℃、2.16kgで測定したMFIが、少なくとも5g/10分であってもよく、好ましくはASTM D1238-20に従って、190℃、2.16kgで測定したMFIが、少なくとも10g/10分である。
【0038】
その後、架橋性複合材料は、溶融及び成形されてもよい。溶融及び成形は、150℃から250℃、又は160℃から220℃、又は170℃から200℃、又は170℃から190℃の温度で行うことができる。成形は、例えば、成型(例えば、射出成型、回転成型、若しくはブロー成型)、押出(例えば、異形若しくは層の押出)、又は別様に層を形成して、固体形状、シート、層、ロッド、チューブ、又は中空物品を形成することによって達成することができる。例えば、成形には、導電性銅層等の銅基板上に層を形成することが含まれてもよい。好ましい態様においては、成形は、成型によって達成される。ある態様においては、低密度の形状、シート、ロッド、又はチューブを得るために、溶融及び成形中に発泡剤が添加されてもよい。ある態様においては、溶融された架橋性複合材料を金型に射出するか、又は基板上に重ね成型して、成形物品を得るとともに、二次的な取り扱いプロセス及び接合プロセスを最小にすることができる。
【0039】
成形物品は、照射してポリマー骨格又は側鎖にフリーラジカルを発生させることで、架橋を開始させ、硬化成形部品における三次元ネットワークを形成させてもよい。例示的な照射方法としては、電子線照射、ガンマ線照射、紫外線照射等が挙げられる。
【0040】
別の態様においては、配合物は、基板上で溶融及び成形され、基板上で照射される。照射から保護すべき基板の領域を覆うために、マスクを使用することができる。したがって、ある態様においては、成形物品は基板上に形成され、照射から保護すべき基板の放射線感受性領域を覆うためにマスクを使用し、成形物品のマスキングされていない領域を照射に曝露することで、基板の放射線感受性領域を保護しながら成形物品の架橋をもたらす。
【0041】
硬化成形部品は、複合材料の硬化物を含み、特に、熱可塑性ポリマーの架橋物と、使用されている場合には任意の残留する架橋助剤、硬化剤、及び添加剤と、セラミックフィラー組成物とを含む。無論、複合材料中に架橋助剤、硬化剤、又は添加剤が存在しない場合には、残留する架橋助剤、硬化剤、又は添加剤は存在しないことになる。
【0042】
重要なことに、硬化後、成形誘電体部品は、上記の加工温度、例えば、150℃から250℃、又は160℃から220℃、又は170℃から200℃、又は170℃から190℃において、溶融流動を有しない。本明細書において使用される場合、「溶融流動を有しない」という語句は、MFIが0g/10分に等しいことを意味し得る。この特色は、ASTM D1238-20に従って、190℃、2.16kgで試験した場合に、成形誘電体部品がMFIを有しない(すなわち、MFIが測定不能である)ことによって特徴付けることができる。
【0043】
硬化成形誘電体部品は、500MHzから10GHzにおいて、1.1から20の比誘電率(dielectric constant)(比誘電率(relative permittivity)、Dk)を有し得る。硬化成形誘電体部品は、少なくとも250℃までの熱抵抗を有し得る。硬化成形誘電体部品は、硬化成形誘電体部品の寸法の変化が、最高で280℃程度の高い温度まで5%未満、又は0から1%であるように、寸法的に安定であり得る。
【0044】
一態様においては、硬化成形誘電体部品は、それぞれ、10GHzで測定した場合、1.5から20、又は2.5から20、又は3から18、又は3から13等、1.1超の比誘電率を有し得る。ある態様においては、硬化成形誘電体部品は、10GHzで測定した比誘電率が6未満である。別の態様においては、硬化成形誘電体部品は、それぞれ、10GHzで測定した場合、1.6から6、又は1.5から6、又は2から6等、1.1超の比誘電率を有し得る。なおも別の態様においては、硬化成形誘電体部品は、それぞれ、10GHzで測定した場合、6超、又は10超、又は12超、例えば6から20、又は6から18、又は6から15、又は10から20、又は12から20の比誘電率を有し得る。
【0045】
硬化成形誘電体部品は、0.007以下、又は0.005以下の誘電損失(Df)を有し得る。誘電損失は、10GHzで測定した場合、0.001程度まで低くすることができる。例えば、硬化成形誘電体部品は、誘電損失が10GHzで0.001から0.005であり得る。
【0046】
誘電体としての性質は、「Stripline Test for Permittivity and Loss Tangent at X-Band」試験方法IPC-TM-650 2.5.5.5に従って、23から25℃の温度で測定することができる。
【0047】
硬化成形誘電体部品は、288℃における30秒間のはんだフロート試験に、部品の割れ、膨れ、又は反り無しで合格することができる。
【0048】
硬化後と比較した硬化前の部品における長さ寸法の変化は、直径、長さ、高さ、幅等の少なくとも1つ、2つ、3つ、又はすべての長さ寸法において、2%未満、好ましくは1%未満であり得る。ある態様においては、硬化後と比較した硬化前の部品における長さ寸法の変化は、2つ又は3つの長さ寸法において、2%未満、好ましくは1%未満であり得る。
【0049】
別の態様においては、硬化後と比較した硬化前の部品における体積寸法の変化は、2%未満、好ましくは1%未満であり得る。体積変化は、例えば、三次元画像処理によって測定することができる。
【0050】
有利なことに、熱可塑性ポリマーを使用することで、標準的な装置を使用して、硬化成形誘電体部品を製造することができる。加えて、成形誘電体部品を架橋するために照射を使用することで、硬化部品は、熱可塑性プラスチックの温度よりもはるかに高い温度で機能することができる。硬化成形誘電体部品は、240℃から280℃でのはんだリフロー処理に影響されない熱抵抗を有する。
【0051】
本明細書に記載の硬化成形誘電体部品を含む回路材料は、硬化成形誘電体部品を含む基板層と、その上に配置された導電層とを有する多層材料を形成することによって調製することができる。有用な導電層としては、例えば、ステンレス鋼、銅、金、銀、アルミニウム、亜鉛、スズ、鉛、遷移金属、及びそれらの合金が挙げられる。導電層の厚さについては特に限定は無く、また、導電層の形状、大きさ、又は表面の質感についても限定は無い。導電層は、3から200マイクロメートル又は9から180マイクロメートルの厚さを有してもよい。2つ以上の導電層が存在する場合、それら2つの層の厚さは、同じであっても異なっていてもよい。導電層は、銅層を含んでもよい。好適な導電層としては、導電性金属の薄層、例えば、回路の形成に現在使用されている銅箔、例えば、電着銅箔が挙げられる。銅箔は、2マイクロメートル以下又は0.7マイクロメートル以下の二乗平均平方根(RMS)粗さを有してもよく、ここで、粗さは、白色干渉法の方法を用いて、Veeco Instruments社のWYCO(登録商標)光学プロファイラーを使用して測定される。
【0052】
導電層は、基板上に導電層を積層することによって、レーザー直接構造化によって、又は接着剤層を介して導電層を基板に接着することによって、適用することができる。回路材料の特定の材料及び形態によって許容される場合には、当該技術分野において既知の他の方法、例えば、電着及び化学蒸着を使用して、導電層を適用することができる。
【0053】
積層は、基板、導電層、及び基板と導電層との間の任意の中間層を含む多層スタックを積層して、層状構造体を形成することを伴ってもよい。導電層は、中間層を伴わず、基板層と直接接触していてもよい。その後、層状構造体を、層同士を接着させ、積層体を形成するのに好適な圧力及び温度の下、一定時間プレス機、例えば真空プレス機に入れてもよい。積層及び任意の硬化は、例えば真空プレス機を用いる一段階プロセスによって行われてもよいし、多段階プロセスによって行われてもよい。一段階プロセスでは、層状構造体をプレス機に入れ、積層圧力(例えば、平方インチ当たり150から400ポンド(psi)(1から2.8メガパスカル))まで上げ、積層温度(例えば、260から390℃)に加熱してもよい。積層温度及び圧力を、所望されるソーク時間、例えば20分間維持し、その後(圧力をかけたまま)150℃以下まで冷却してもよい。
【0054】
存在する場合、中間層は、導電層と基板層との間に位置することができるポリフルオロカーボンフィルムを含んでもよく、任意のマイクロガラス強化フルオロカーボンポリマーの層が、ポリフルオロカーボンフィルムと導電層との間に位置してもよい。マイクロガラス強化フルオロカーボンポリマーの層は、導電層の基板への接着性を高めることができる。マイクロガラスは、層の総質量に基づいて、4から30質量パーセント(質量%)の量で存在してもよい。マイクロガラスは、900マイクロメートル以下又は500マイクロメートル以下の最長の長さスケールを有してもよい。マイクロガラスは、コロラド州デンバーのJohns Manville社から市販されているような種類のマイクロガラスであってもよい。ポリフルオロカーボンフィルムは、フルオロポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE))、フッ素化エチレン-プロピレンコポリマー(例えば、TEFLON(登録商標)FEP)、テトラフルオロエチレン骨格と、全フッ素化アルコキシ側鎖とを有するコポリマー(例えば、TEFLON(登録商標)PFA)を含む。
【0055】
導電層は、レーザー直接構造化によって適用することができる。ここで、基板は、レーザー直接構造化添加剤を含んでもよく、レーザー直接構造化は、レーザーを使用して基板の表面を照射する工程、レーザー直接構造化添加剤のトラックを形成する工程、及びトラックに導電性金属を適用する工程を含んでもよい。レーザー直接構造化添加剤は、金属酸化物粒子(例えば、酸化チタン及び酸化銅クロム)を含んでもよい。レーザー直接構造化添加剤は、スピネル型の無機金属酸化物粒子、例えば、スピネル銅を含んでもよい。金属酸化物粒子は、例えば、スズ及びアンチモン(例えば、コーティングの総質量に基づいて、50から99質量%のスズ及び1から50質量%のアンチモン)を含む組成物でコーティングされてもよい。レーザー直接構造化添加剤は、それぞれの組成物100部に基づいて、2から20部の添加剤を含んでもよい。照射は、1,064ナノメートル(nm)の波長を有するYAGレーザーで、10ワット(W)の出力、80キロヘルツ(kHz)の周波数、及び秒当たり3メートル(m/s)の速度の下、行うことができる。導電性金属は、例えば銅を含む無電解めっき浴におけるめっきプロセスを使用して適用することができる。
【0056】
導電層は、導電層を接着適用することによって適用してもよい。導電層は、回路(別の回路のメタライズ層)、例えばフレックス回路であってもよい。接着層が、1つ以上の導電層と基板との間に配置されてもよい。適切な場合、接着層は、ポリ(アリーレンエーテル)、並びにブタジエン、イソプレン、又はブタジエン及びイソプレン単位と、0から50質量%の共硬化性モノマー単位とを含む、カルボキシ官能化ポリブタジエン又はポリイソプレンポリマーを含んでもよい。接着剤層は、平方メートル当たり2から15グラムの量で存在してもよい。ポリ(アリーレンエーテル)は、カルボキシ官能化ポリ(アリーレンエーテル)を含んでもよい。ポリ(アリーレンエーテル)は、ポリ(アリーレンエーテル)と環状無水物との反応生成物であってもよいし、ポリ(アリーレンエーテル)と無水マレイン酸との反応生成物であってもよい。カルボキシ官能化ポリブタジエン又はポリイソプレンポリマーは、カルボキシ官能化ブタジエン-スチレンコポリマーであってもよい。カルボキシ官能化ポリブタジエン又はポリイソプレンポリマーは、ポリブタジエン又はポリイソプレンポリマーと、環状無水物との反応生成物であってもよい。カルボキシ官能化ポリブタジエン又はポリイソプレンポリマーは、マレイン化ポリブタジエン-スチレン又はマレイン化ポリイソプレン-スチレンコポリマーであってもよい。
【0057】
硬化成形誘電体部品は、電子デバイス及び電磁部品、例えば、電子集積回路チップ上のインダクター、電子回路、電子パッケージ、モジュール、ハウジング、トランスデューサー、極超短波(UHF)アンテナ、超短波(VHF)アンテナ、様々な用途、例えば、電力用途、データストレージ、及びマイクロ波通信用のマイクロ波アンテナに使用することができる。硬化成形誘電体部品は、電子デバイス、例えば、モバイルインターネットデバイスにおいて使用することができる。硬化成形誘電体部品は、電子デバイス、例えば、携帯電話、タブレット、ノートパソコン、及びインターネット時計において使用することができる。硬化成形誘電体部品は、外部の直流磁界が印加される用途において使用することができる。加えて、硬化成形誘電体部品は、1から10GHzの周波数範囲にわたるすべてのアンテナ設計において、非常に良好な結果(サイズと帯域幅)で使用することができる。アンテナは、板状逆F型アンテナ、パッチアンテナ、ダイポールアンテナ、又はメアンダラインアンテナであってもよい。ある態様においては、硬化成形誘電体部品は、誘電体共振器アンテナの誘電体部分である。硬化成形誘電体部品は、共振器であってもよい。硬化成形誘電体部品は、誘電体共振器アンテナであってもよい。硬化成形誘電体部品は、電磁導波路であってもよく、限定されるものではないが、誘電体導波路又は伝送領域に誘電体を有する金属導波路が含まれる。硬化成形誘電体部品は、例えば5GHz超300GHz未満の周波数において動作するように構成された誘電体電磁レンズ等の誘電体電磁レンズであってもよい。硬化成形誘電体部品は、無線周波(RF)部品において使用することができる。硬化成形誘電体部品は、マイクロ波部品において使用することができる。硬化成形誘電体部品は、ミリ波部品において使用することができる。硬化成形誘電体部品は、テラヘルツ部品において使用することができる。硬化成形誘電体部品は、光学部品において使用することができる。
【0058】
硬化成形誘電体部品(部品ともいう)は、複合材料の架橋物を含んでもよい。複合材料は、熱可塑性ポリマーと、セラミックフィラー組成物とを含んでもよい。複合材料は、任意に、架橋助剤、硬化開始剤、又は添加剤組成物のうち少なくとも1つを含んでもよい。部品は、10GHzにおいて、1.1から20の誘電率を有し得る。部品は、ASTM D1238-20に従って、190℃、2.16kgで試験した場合に、メルトフローインデックスを有しなくてもよい。熱可塑性ポリマーの加工温度は、160℃から280℃であってもよい。熱可塑性ポリマーの溶融温度は、250℃以下、又は90℃から250℃であってもよい。熱可塑性ポリマーの、ASTM D1238-20に従って、190℃、2.16kgで測定したメルトフローインデックスは、10分間当たり5グラム未満であってもよい。熱可塑性ポリマーは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、フッ素化エチレンプロピレンコポリマー、ポリノルボルネン、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロックコポリマー、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。熱可塑性ポリマーは、低密度ポリエチレン又は直鎖状低密度ポリエチレンを含んでもよい。架橋物は、架橋助剤の残留物を含んでもよい。反対に、例えば、熱可塑性ポリマーが、ポリエチレン等の照射により自己架橋する熱可塑性ポリマーを含む場合、架橋物は、架橋助剤の残留物を含まなくてもよい。複合材料は、硬化開始剤を含んでもよく、その硬化開始剤は、熱可塑性ポリマーの加工温度よりも高い、好ましくは、熱可塑性ポリマーの加工温度よりも少なくとも10℃、少なくとも20℃、又は少なくとも30℃高い開始温度を有してもよい。複合材料は、架橋助剤、硬化開始剤、及び添加剤組成物の3つすべてを含んでもよい。架橋助剤が存在してもよく、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、ポリブタジエン、ジアクリル酸亜鉛、ジメタクリル酸亜鉛、ジビニルベンゼン、ビニル末端ポリフェニレンエーテルオリゴマー、m-フェニレンジマレイミド、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、三官能アクリル酸エステル、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。添加剤組成物が存在してもよく、酸化
防止剤、金属不活性化剤、加工助剤、接着促進剤、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。セラミックフィラーは、ヒュームドシリカ、二酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、コランダム、ウォラストナイト、Ba2Ti9O20、中空セラミック球、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、ベリリア、アルミナ、アルミナ三水和物、マグネシア、マイカ、タルク、ナノクレイ、水酸化マグネシウム、固体ガラス球、中空ガラス球、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。セラミックフィラーは、多峰性の粒径分布を有してもよく、多峰性の粒径分布の第1峰のピークは、多峰性の粒径分布の第2峰のピークの少なくとも7倍である。
【0059】
架橋前の複合材料は、それぞれ、架橋前の複合材料の総質量に基づいて、10から99質量%の熱可塑性ポリマーと、0から10質量%又は0.25から10質量%の架橋助剤と、0から5質量%又は0.01から5質量%の硬化開始剤と、0から2質量%又は0.0001から2質量%の添加剤組成物と、1から90質量%のセラミックフィラー組成物とを含んでもよく、合計は100質量%である。架橋前の複合材料は、それぞれ、架橋前の複合材料の総質量に基づいて、50から95質量%の熱可塑性ポリマーと、0から10質量%又は0.25から10質量%の架橋助剤と、0から5質量%又は0.01から5質量%の硬化開始剤と、0から2質量%又は0.001から2質量%の添加剤組成物と、5から50質量%のセラミックフィラー組成物とを含んでもよく、合計は100質量%である。架橋前の複合材料は、それぞれ、架橋前の複合材料の総質量に基づいて、10から50質量%の熱可塑性ポリマーと、0から10質量%又は0.25から10質量%の架橋助剤と、0から5質量%又は0.01から5質量%の硬化開始剤と、0から2質量%又は0.001から2質量%の添加剤組成物と、50から90質量%のセラミックフィラー組成物とを含んでもよく、合計は100質量%である。架橋前の複合材料は、それぞれ、架橋前の複合材料の総質量に基づいて、10から25質量%の熱可塑性ポリマーと、0から10質量%又は0.25から10質量%の架橋助剤と、0から5質量%又は0.01から5質量%の硬化開始剤と、0から2質量%又は0.001から2質量%の添加剤組成物と、75から90質量%のセラミックフィラー組成物とを含んでもよく、合計は100質量%である。複合材料は、複合材料の総体積に基づいて、20体積パーセント超、好ましくは40体積パーセント超のセラミックフィラーを含んでもよい。
【0060】
部品の誘電率は、10GHzで測定した場合、1.1から20であってもよい。部品が、低減された量、例えば、架橋前の複合材料の総質量に基づいて5から50質量%のセラミックフィラー組成物を含む場合、部品は、10GHzで測定した場合、1.1から6のより低い誘電率を有してもよい。部品が、増加された量、例えば、架橋前の複合材料の総質量に基づいて50から90質量%以上のセラミックフィラー組成物を含む場合、部品は、10GHzで測定した場合、6超、好ましくは10超、好ましくは12超のより低い誘電率を有してもよい。硬化後と比較した硬化前の部品における長さ寸法の変化は、任意の又はすべての長さ寸法において、2%未満、好ましくは1%未満である。
【0061】
部品は、誘電体共振器アンテナ、誘電体共振器アンテナの誘電体部分、電磁導波路、誘電体電磁レンズ、無線周波部品、マイクロ波部品、ミリ波部品、テラヘルツ部品、又は光学部品であってもよい。部品は、誘電体電磁レンズであってもよく、好ましくは5GHz超300GHz未満の周波数において動作するように構成された誘電体電磁レンズであってもよい。回路材料又は回路基板が、硬化成形誘電体部品を含んでもよい。
【0062】
硬化成形誘電体部品を作製する方法は、熱可塑性ポリマー、任意の架橋助剤、任意の硬化開始剤、任意の添加剤組成物、及びセラミックフィラー組成物を含む複合材料を配合する工程と、配合された複合材料を溶融して、溶融物を形成する工程と、溶融物を成形して、成形物品を形成する工程と、成形物品を放射線に曝露して、熱可塑性ポリマーにおいて十分なフリーラジカルを発生させ、熱可塑性ポリマーの少なくとも一部を架橋させて、硬化成形誘電体部品を形成する工程とを含んでもよい。方法は、成形物品を基板上に形成する工程と、成形物品の少なくとも一部を、照射に対してマスキングする工程と、成形物品のマスキングされていない部分を照射に曝露して、硬化成形誘電体部品を形成する工程とを更に含んでもよい。成形は、成型又は層の形成、好ましくは成型を含んでもよい。
【0063】
以下の実施例は単なる例示であり、本明細書に明示され、作製される組成物、硬化成形部品、若しくはデバイス、又は本明細書に明示される工程、条件、若しくはプロセスパラメーターを限定することを意図するものではない。
【実施例
【0064】
実施例において、190℃/2.16kgでのメルトフローインデックス(MFI)は、Tinius Olsen(登録商標)の押出式可塑度計で測定した。
【0065】
熱機械分析(TMA)の融点は、TA Instruments社のTMA Q400で測定した。TMAはASTM E1545-11(2016)に従って決定し、試料を、すべて分当たり10℃の速度で、-50℃から300℃まで加熱し、冷却し、-50℃から300℃まで再加熱した。1回目の熱サイクルは、配向及び物理的な外的影響をアニールアウトするためのもので、2回目の加熱は、測定が再現可能であることを証明するために行った。
【0066】
ロングストリップライン誘電率(LSL)は、Hewlett Packard社のネットワークアナライザー8510を使用して測定し、10GHzにて報告している。
【0067】
287℃でのはんだフロートは、Ritehete社のはんだ溶融ユニットで求めた。
【0068】
実施例において使用した成分は、Table 1(表1)に提供されている。
【0069】
【表1】
【0070】
(実施例1~6)
Table 2(表2)の組成物を、二軸押出機によって配合した。配合した組成物を、Extrude to Fill社のE30V成型機を使用して180℃で射出成型することにより、成形体へと形成した。その後、電子線を使用して、形成した成形体を室温で架橋させた(0、8、16、及び32MRad)。架橋前の材料(0MRad)のMFI及びTMA、並びに架橋後の成形体の性質を決定し、Table 2(表2)に示す。
【0071】
【表2】
【0072】
(実施例7)
同じ測定条件で、TiO2で充填した液晶ポリマー(LCP)は、はんだフロート試験で5分後に割れが発生し、不合格となった。
【0073】
(実施例8~19)
Table 3(表3)に示す実施例8~10は、(8)架橋助剤及び硬化開始剤無し、(9)架橋助剤有り、硬化開始剤無し、(10)架橋助剤及び硬化開始剤どちらも有りで調製し、32MRadの電子線照射に曝露することによって硬化させた。硬化組成物の溶融ピーク温度及び溶融効果も、Table 3(表3)に示す。
【0074】
【表3】
【0075】
Table 3(表3)のデータから、実施例8のポリプロピレンは、架橋剤又は開始剤を伴わずに電子線に曝露されると、完全溶融によって示されるように、切断によって解重合されることが分かる。実施例9のように架橋助剤を添加することで大幅な改善がもたらされたが、TMAスキャンでは依然として融点において小さな特色を示しており、わずかではあるが未架橋のドメインが一部存在していることが示された。実施例10のように、架橋剤及び二次的な硬化開始剤(温度284℃、半減期0.1時間)の両方を、180℃の溶融混合温度よりもかなり低い温度で添加すると、TMAスキャンが溶融の特色を示さないことから証明されるように、未架橋ポリマーの最後の残留物が排除された。
【0076】
(実施例20)
寸法変化
以下の組成を含む成型部品、具体的にはアンテナを形成した。6.93質量%のLLDPE、6.93質量%のHDPE、78.95質量%の二酸化チタン、4.95質量%のヒュームドシリカ/シラン 2.02%のTAIC、0.198質量%のPERDADOX(登録商標)30硬化開始剤、及びそれぞれ0.0396質量%の金属不活性化剤及び酸化防止剤。室温で、硬化前及び硬化後の部品の直径及び高さを、ミリメートル(mm)単位で測定した。結果はTable 4(表4)に提供されており、ここで、サンプルAからEは、追跡目的でラベル付けした同一サンプルである。
【0077】
【表4】
【0078】
Table 4(表4)から分かるように、部品の直径及び高さは、照射前と比較して、照射後もほとんど変化しなかった。
【0079】
以下に明示されるのは、本開示の非限定的態様である。
【0080】
態様1:熱可塑性ポリマーと、任意の架橋助剤と、任意の硬化開始剤と、任意の添加剤組成物と、セラミックフィラー組成物とを含む複合材料の架橋物を含む、硬化成形誘電体部品であって、10GHzにおける誘電率が1.1から20であり、ASTM D1238-20に従って、190℃、2.16kgで試験した場合に、メルトフローインデックスを有しない、硬化成形誘電体部品。
【0081】
態様2.前記熱可塑性ポリマーの加工温度が、160℃から280℃である、態様1に記載の硬化成形誘電体部品。
【0082】
態様3.前記熱可塑性ポリマーの溶融温度が、250℃以下、又は90℃から250℃である、態様1又は2に記載の硬化成形誘電体部品。
【0083】
態様4.前記熱可塑性ポリマーの、ASTM D1238-20に従って、190℃、2.16kgで測定したメルトフローインデックスが、10分間当たり5グラム未満である、態様1から3のいずれか1つに記載の硬化成形誘電体部品。
【0084】
態様5.前記熱可塑性ポリマーが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、フッ素化エチレンプロピレンコポリマー、ポリノルボルネン、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロックコポリマー、又はそれらの組み合わせを含む、態様1から4のいずれか1つに記載の硬化成形誘電体部品。
【0085】
態様6.前記熱可塑性ポリマーが、LDPE又はLLDPEを含む、態様1から5のいずれか1つに記載の硬化成形誘電体部品。
【0086】
態様7.前記架橋物が、架橋助剤の残留物を含む、態様1から6のいずれか1つに記載の硬化成形誘電体部品。
【0087】
態様8.前記架橋物が、架橋助剤の残留物を含まず、前記熱可塑性ポリマーが、ポリエチレン等の照射により自己架橋する熱可塑性ポリマーを含む、態様1から6のいずれか1つに記載の硬化成形誘電体部品。
【0088】
態様9:前記硬化開始剤が存在し、前記熱可塑性ポリマーの加工温度よりも高い、好ましくは前記熱可塑性ポリマーの加工温度よりも少なくとも10℃、少なくとも20℃、又は少なくとも30℃高い開始温度を有する、態様1から8のいずれか1つに記載の硬化成形誘電体部品。
【0089】
態様10.前記架橋助剤、前記硬化開始剤、又は前記添加剤組成物のうち少なくとも1つ以上が存在し、好ましくは前記架橋助剤、前記硬化開始剤、前記添加剤組成物のうち3つすべてが存在する、態様1から9のいずれか1つに記載の硬化成形誘電体部品。
【0090】
態様11.前記架橋助剤が、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、ポリブタジエン、ジアクリル酸亜鉛、ジメタクリル酸亜鉛、ジビニルベンゼン、ビニル末端ポリフェニレンエーテルオリゴマー、m-フェニレンジマレイミド、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、三官能アクリル酸エステル、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、又はそれらの組み合わせを含む、態様1から10のいずれか1つに記載の硬化成形誘電体部品。
【0091】
態様12.前記添加剤組成物が、酸化防止剤、金属不活性化剤、加工助剤、接着促進剤、又はそれらの組み合わせを含む、態様1から11のいずれか1つに記載の硬化成形誘電体部品。
【0092】
態様13.前記セラミックフィラーが、ヒュームドシリカ、二酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、コランダム、ウォラストナイト、Ba2Ti9O20、中空セラミック球、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、ベリリア、アルミナ、アルミナ三水和物、マグネシア、マイカ、タルク、ナノクレイ、水酸化マグネシウム、固体ガラス球、中空ガラス球、又はそれらの組み合わせを含む、態様1から12のいずれか1つに記載の硬化成形誘電体部品。
【0093】
態様14.前記セラミックフィラーが、多峰性の粒径分布を有し、前記多峰性の粒径分布の第1峰のピークが、前記多峰性の粒径分布の第2峰のピークの少なくとも7倍である、態様1から13のいずれか1つに記載の硬化成形誘電体部品。
【0094】
態様15.架橋前の前記複合材料が、それぞれ、架橋前の前記複合材料の総質量に基づいて、10から99質量%の前記熱可塑性ポリマーと、0から10質量%又は0.25から10質量%の前記架橋助剤と、0から5質量%又は0.01から5質量%の前記硬化開始剤と、0から2質量%又は0.0001から2質量%の前記添加剤組成物と、1から90質量%の前記セラミックフィラー組成物とを含み、合計が100質量%である、態様1から14のいずれか1つに記載の硬化成形誘電体部品。
【0095】
態様16.架橋前の前記複合材料が、それぞれ、架橋前の前記複合材料の総質量に基づいて、50から95質量%の前記熱可塑性ポリマーと、0から10質量%又は0.25から10質量%の前記架橋助剤と、0から5質量%又は0.01から5質量%の前記硬化開始剤と、0から2質量%又は0.0001から2質量%の前記添加剤組成物と、5から50質量%の前記セラミックフィラー組成物とを含み、合計が100質量%である、態様15に記載の硬化成形誘電体部品。
【0096】
態様17.10GHzにおいて測定した誘電率が6以下、6未満、又は1.1から6である、態様1から16のいずれか1つに記載の硬化成形誘電体部品。
【0097】
態様18.架橋前の前記複合材料が、それぞれ、架橋前の前記複合材料の総質量に基づいて、10から50質量%の前記熱可塑性ポリマーと、0から10質量%又は0.25から10質量%の前記架橋助剤と、0から5質量%又は0.01から5質量%の前記硬化開始剤と、0から2質量%又は0.0001から2質量%の前記添加剤組成物と、50から90質量%の前記セラミックフィラー組成物とを含み、合計が100質量%である、態様1から14のいずれか1つに記載の硬化成形誘電体部品。
【0098】
態様19.架橋前の前記複合材料が、それぞれ、架橋前の前記複合材料の総質量に基づいて、10から25質量%の前記熱可塑性ポリマーと、0から10質量%又は0.25から10質量%の前記架橋助剤と、0から5質量%又は0.01から5質量%の前記硬化開始剤と、0から2質量%又は0.0001から2質量%の前記添加剤組成物と、75から90質量%の前記セラミックフィラー組成物とを含み、合計が100質量%である、態様18に記載の硬化成形誘電体部品。
【0099】
態様20.前記複合材料が、前記複合材料の総体積に基づいて、20体積%超、好ましくは40体積%超の前記セラミックフィラーを含む、態様1から19、又は1から14、又は16から17のいずれか1つに記載の硬化成形誘電体部品。
【0100】
態様21.10GHzにおいて測定した比誘電率が6超、好ましくは10超、好ましくは12超である、態様1から20、又は1から14、又は18から20のいずれか1つに記載の硬化成形誘電体部品。
【0101】
態様22:硬化後と比較した硬化前の前記部品における長さ寸法の変化が、1つ、又は2つ、又はそれ以上の長さ寸法において、2%未満、好ましくは1%未満である、態様1から21のいずれか1つに記載の硬化成形誘電体部品。
【0102】
態様22a.硬化後と比較した硬化前の前記部品における体積寸法の変化が、2%未満、好ましくは1%未満である、態様1から21のいずれか1つに記載の硬化成形誘電体部品。
【0103】
態様23.前記部品が、誘電体共振器アンテナ、誘電体共振器アンテナの誘電体部分、電磁導波路、誘電体電磁レンズ、無線周波部品、マイクロ波部品、ミリ波部品、テラヘルツ部品、又は光学部品である、態様1から22のいずれか1つに記載の硬化成形誘電体部品。
【0104】
態様24.前記部品が、誘電体電磁レンズ、又は5GHz超300GHz未満の周波数において動作するように構成された誘電体電磁レンズである、態様1から23のいずれか1つに記載の硬化成形誘電体部品。
【0105】
態様25.態様1から24のいずれか1つに記載の硬化成形誘電体部品を含む回路材料又は回路基板。
【0106】
態様26.態様1から24のいずれか1つに記載の硬化成形誘電体部品を作製する方法であって、加工温度が低い熱可塑性ポリマー、任意の架橋助剤、任意の硬化開始剤、任意の添加剤組成物、及びセラミックフィラー組成物を含む複合材料を配合する工程と、前記配合された複合材料を溶融して、溶融物を形成する工程と、前記溶融物を成形して、成形物品を形成する工程と、前記成形物品を放射線に曝露して、前記熱可塑性ポリマーにおいて十分なフリーラジカルを発生させ、前記熱可塑性ポリマーの少なくとも一部を架橋させて、前記硬化成形誘電体部品を形成する工程とを含む、方法。
【0107】
態様27.前記成形物品を基板上に形成する工程と、前記成形物品の少なくとも一部を、照射に対してマスキングする工程と、前記成形物品のマスキングされていない部分を照射に曝露して、前記硬化成形誘電体部品を形成する工程とを更に含む、態様26に記載の方法。
【0108】
態様28:成形が、成型又は層の形成、好ましくは成型を含む、態様27に記載の方法。
【0109】
物品、組成物、及び方法は、代替的に、本明細書において開示される任意の適切な材料、工程、又は成分を含んでもよく、それらからなってもよく、又はそれらから本質的になってもよい。組成物、方法、及び物品は、追加的に又は代替的に、組成物、方法、及び物品の機能又は目的の達成に必要でない任意の材料(若しくは種)、工程、又は成分を欠くように、又は実質的に含まないように配合することができる。
【0110】
「ある1つの(a)」及び「ある1つの(an)」という用語は、数量の限定を意味するものではなく、むしろ、言及される項目のうち少なくとも1つが存在することを示すものである。「又は」という用語は、文脈上明確にそうでないことが示されている場合を除き、「及び/又は」を意味する。本明細書全体を通じて、「ある態様」、「別の態様」、「一部の態様」等への言及は、実施形態に関連して説明された特定の要素(例えば、特色、構造、工程、又は特性)が、本明細書に記載される少なくとも1つの実施形態に含まれており、他の実施形態においては存在する場合もあるし、しない場合もあることを意味する。加えて、説明された要素は、様々な実施形態において、任意の好適な様式で組み合わされてもよいことが理解されるべきである。本明細書において使用される「第1」、「第2」等の用語は、いかなる順序、量、又は重要性を示すものでもなく、むしろ、ある要素を別の要素から区別するために使用されるものである。「組み合わせ」という用語は、ブレンド、混合物、合金、反応生成物、及び同類のものを包括する。また、「のうち少なくとも1つ」又は「それらの組み合わせ」は非限定的であり、リストが各要素を個別に含むだけでなく、リストのうち2つ以上の要素の組み合わせや、リストのうち少なくとも1つの要素と、明示されていない同様の要素との組み合わせも含むことを意味する。別途定義されない限り、本明細書において使用される技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野における当業者が一般的に理解するものと同じ意味を有する。
【0111】
本明細書において別段の定めがない限り、すべての試験規格は、本出願の出願日時点、又は優先権が主張される場合には、試験規格が記載される最も早い優先権出願の出願日時点で有効な最新の規格である。同一の成分や性質を対象とするすべての範囲の端点は、端点を含み、独立して組み合わせることが可能であり、すべての中間点及び範囲を含む。例えば、「最大25質量%、又は5から20質量%」の範囲は、端点及び「5から25質量%」の範囲、例えば10から23質量%等のすべての中間値を含む。
【0112】
化合物は、標準的な命名法を使用して記載される。例えば、示されているいかなる基によっても置換されていない任意の位置は、示されているような結合又は水素原子によって、その原子価が満たされているものと理解される。2つの文字又は記号に挟まれていないダッシュ(「-」)は、置換基の結合点を示すために使用されている。例えば、-CHOは、カルボニル基の炭素を通じて結合する。本明細書において使用される場合、「(メタ)アクリル」という用語は、アクリル基及びメタクリル基の両方を包含する。本明細書において使用される場合、「(イソ)シアヌレート」という用語は、シアヌレート基及びイソシアヌレート基の両方を包含する。
【0113】
引用されたすべての特許、特許出願、及び他の参考文献は、それらの全体が参照により本明細書に援用される。しかしながら、本出願における用語が援用した文献における用語と矛盾又は対立する場合、本出願の用語が、援用した文献における対立する用語よりも優先される。
【0114】
特定の実施形態について説明してきたが、現在予見されていないか、又は予見され得ない代替形態、修正形態、変形形態、改良形態、及び実質的な均等物が、出願人又は当業者に想起され得る。したがって、出願時及び補正される場合にはその時点での添付の特許請求の範囲は、そのような代替形態、修正形態、変形形態、改良形態、及び実質的な均等物をすべて包含することが意図される。