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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-18
(45)【発行日】2025-07-29
(54)【発明の名称】ペリクル及びペリクルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/62 20120101AFI20250722BHJP
【FI】
G03F1/62
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2024557669
(86)(22)【出願日】2024-03-25
(86)【国際出願番号】 JP2024011773
(87)【国際公開番号】W WO2024204107
(87)【国際公開日】2024-10-03
【審査請求日】2024-11-18
(31)【優先権主張番号】P 2023051838
(32)【優先日】2023-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】河原 準
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2021/0132490(US,A1)
【文献】国際公開第2022/210731(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0141986(KR,A)
【文献】特表2022-534476(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0126265(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0127218(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0141913(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2023-0011836(KR,A)
【文献】特開2019-028462(JP,A)
【文献】特表2020-523622(JP,A)
【文献】特開2020-134870(JP,A)
【文献】特開2019-091001(JP,A)
【文献】特開2022-029394(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペリクル膜と、
枠部と前記枠部に囲まれた開口部とを有し、前記ペリクル膜を支持する支持体と、
第1補強層と、
前記ペリクル膜を補強する第2補強層と、を備え、
前記枠部は、前記ペリクル膜と対向する支持面を有し、
前記ペリクル膜は、前記支持体に対向する第1ペリクル膜面と、前記第1ペリクル膜面とは反対側の第2ペリクル膜面と、を有し、
前記第2補強層は、前記支持体に支持された前記ペリクル膜を平面視した際に、前記ペリクル膜と前記支持体とが重なる領域であり、かつ、前記第2ペリクル膜面側に配置され、
前記第2補強層は、前記支持体の前記開口部側に張り出さず、前記第2補強層の内側端部が、前記枠部の内側端面に揃えて形成されているか、もしくは前記枠部の内側端面よりも内側に位置するように形成され、
前記第2補強層は、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト、ダイヤモンドライクカーボン、及びアモルファスカーボンからなる群から選択される1種以上の材料を含有し、
前記第1補強層は、前記第1ペリクル膜面側であって、前記ペリクル膜と前記支持体との間に配置され、
前記第1補強層は、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト、ダイヤモンドライクカーボン、アモルファスカーボン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、及び窒化ホウ素からなる群から選択される1種以上の材料を含有し、
前記ペリクル膜は、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト、ダイヤモンドライクカーボン、アモルファスカーボン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、及び窒化ホウ素からなる群から選択される1種以上の材料を含有する、ペリクル。
【請求項2】
請求項1に記載のペリクルにおいて、
前記第1補強層は、前記支持面に直接接して配置されている、ペリクル。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のペリクルにおいて、
前記第2補強層は、カーボンナノチューブを含み、
前記第2補強層中のカーボンナノチューブは、前記枠部の前記支持面に対して平行方向に配向している、ペリクル。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のペリクルにおいて、
前記ペリクル膜は、カーボンナノチューブを含有する、ペリクル。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載のペリクルにおいて、
前記ペリクル膜の材料と前記第2補強層の材料とが同じである、ペリクル。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載のペリクルにおいて、
前記第1補強層は、カーボンナノチューブを含み、
前記第1補強層中のカーボンナノチューブは、前記枠部の前記支持面に対して平行方向に配向している、ペリクル。
【請求項7】
請求項2に記載のペリクルにおいて、
前記第2補強層は、カーボンナノチューブを含有し、
前記ペリクル膜は、カーボンナノチューブを含有し、
前記第1補強層は、カーボンナノチューブを含有する、ペリクル。
【請求項8】
請求項7に記載のペリクルにおいて、
前記第2補強層中のカーボンナノチューブは、前記枠部の前記支持面に対して平行方向に配向し、
前記第1補強層中のカーボンナノチューブは、前記枠部の前記支持面に対して平行方向に配向している、ペリクル。
【請求項9】
請求項7又は請求項8に記載のペリクルにおいて、
前記第2補強層における膜の単位面積当たりのカーボンナノチューブの質量は、前記ペリクル膜と比べて、増量されている、ペリクル。
【請求項10】
請求項7又は請求項8に記載のペリクルにおいて、
前記第1補強層における膜の単位面積当たりのカーボンナノチューブの質量は、前記ペリクル膜と比べて、増量されている、ペリクル。
【請求項11】
請求項9に記載のペリクルにおいて、
前記第1補強層における膜の単位面積当たりのカーボンナノチューブの質量は、前記ペリクル膜と比べて、増量されている、ペリクル。
【請求項12】
請求項1又は請求項2に記載のペリクルにおいて、
前記第2補強層は、前記支持面の前記ペリクル膜が張り付けられていない領域まで張り出して、前記ペリクル膜の側部を覆っている、ペリクル。
【請求項13】
請求項12に記載のペリクルにおいて、
前記第1補強層は、前記支持面の前記ペリクル膜が張り付けられていない領域まで張り出して、前記支持面の前記ペリクル膜が張り付けられていない領域まで張り出した前記第2補強層と接している、ペリクル。
【請求項14】
ペリクルを製造するペリクルの製造方法であって、
開口部と前記開口部を囲う枠部とを有する支持体に対して、前記開口部を覆うと共に、前記枠部の支持面で支持されるようにペリクル膜を張り付ける工程と、
前記ペリクル膜の前記支持体に対向する第1ペリクル膜面とは反対側の第2ペリクル膜面における領域であって、前記ペリクル膜を平面視した際に、前記ペリクル膜と前記支持体とが重なる領域に第2補強層を配置する工程と、を含む、ペリクルの製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載のペリクルの製造方法であって、
前記第2補強層は、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト、ダイヤモンドライクカーボン、アモルファスカーボン、シリコン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、及び窒化ホウ素からなる群から選択される1種以上の材料を含有する、ペリクルの製造方法。
【請求項16】
請求項14に記載のペリクルの製造方法であって、
前記第2補強層を配置する工程において、前記第2補強層は、前記支持体の前記開口部側に張り出さず、前記第2補強層の内側端部が、前記枠部の内側端面に揃えて形成されるか、もしくは前記枠部の内側端面よりも内側に位置するように形成される、ペリクルの製造方法。
【請求項17】
請求項14に記載のペリクルの製造方法であって、
前記ペリクル膜を張り付ける工程の前に、前記開口部の外周側であり、かつ、前記枠部の前記支持面に第1補強層を配置する工程をさらに含み、
前記第1補強層は、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト、ダイヤモンドライクカーボン、アモルファスカーボン、シリコン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、及び窒化ホウ素からなる群から選択される1種以上の材料を含有し、
前記ペリクル膜を張り付ける工程において、前記開口部を覆うと共に、前記第1補強層で支持されるように前記ペリクル膜を張り付ける、ペリクルの製造方法。
【請求項18】
請求項17に記載のペリクルの製造方法であって、
前記第1補強層は、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト、ダイヤモンドライクカーボン、アモルファスカーボン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、及び窒化ホウ素からなる群から選択される1種以上の材料を含有する、ペリクルの製造方法。
【請求項19】
ペリクルを製造するペリクルの製造方法であって、
ペリクル膜に第2補強層を配置する工程と、
前記第2補強層が配置された前記ペリクル膜を、開口部と前記開口部を囲う枠部とを有する支持体に対して、前記開口部を覆うと共に、前記枠部の支持面で支持されるように張り付ける工程と、を含み、
前記ペリクル膜を張り付ける工程の前に、前記開口部の外周側であり、かつ、前記枠部の前記支持面に第1補強層を配置する工程をさらに含み、
前記第2補強層を配置する工程において、前記第2補強層を、前記ペリクル膜の前記支持体に対向する第1ペリクル膜面とは反対側の第2ペリクル膜面における領域であって、前記支持体に張り付けられた後の前記ペリクル膜を平面視した際に、前記ペリクル膜と前記支持体とが重なる領域に予め配置し、
さらに、前記第2補強層を配置する工程において、前記第2補強層は、前記支持体の前記開口部側に張り出さず、前記第2補強層の内側端部が、前記枠部の内側端面に揃えて形成されるか、もしくは前記枠部の内側端面よりも内側に位置するように形成され、
前記ペリクル膜を張り付ける工程において、前記開口部を覆うと共に、前記第1補強層で支持されるように前記ペリクル膜を張り付け、
前記第1補強層は、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト、ダイヤモンドライクカーボン、アモルファスカーボン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、及び窒化ホウ素からなる群から選択される1種以上の材料を含有し、
前記第2補強層は、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト、ダイヤモンドライクカーボン、及びアモルファスカーボンからなる群から選択される1種以上の材料を含有し、
前記ペリクル膜は、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト、ダイヤモンドライクカーボン、アモルファスカーボン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、及び窒化ホウ素からなる群から選択される1種以上の材料を含有する、ペリクルの製造方法。
【請求項20】
請求項17又は請求項19に記載のペリクルの製造方法であって、
前記第1補強層は、前記支持面に直接接して配置される、ペリクルの製造方法。
【請求項21】
請求項15又は請求項19に記載のペリクルの製造方法であって、
前記第2補強層は、カーボンナノチューブを含み、
前記第2補強層中のカーボンナノチューブが、前記ペリクル膜の膜面に対して平行方向に配向するように前記第2補強層を形成する、ペリクルの製造方法。
【請求項22】
請求項17又は請求項19に記載のペリクルの製造方法であって、
前記第1補強層は、カーボンナノチューブを含有する、ペリクルの製造方法。
【請求項23】
請求項17又は請求項19に記載のペリクルの製造方法において、
前記第1補強層は、カーボンナノチューブを含み、
前記第1補強層中のカーボンナノチューブが、前記枠部の前記支持面に対して平行方向に配向するように前記第1補強層を形成する、ペリクルの製造方法。
【請求項24】
請求項14又は請求項19に記載のペリクルの製造方法において、
前記ペリクル膜は、カーボンナノチューブを含有する、ペリクルの製造方法。
【請求項25】
請求項14又は請求項19に記載のペリクルの製造方法において、
前記ペリクル膜の材料と前記第2補強層の材料とが同じである、ペリクルの製造方法。
【請求項26】
請求項20に記載のペリクルの製造方法であって、
前記第2補強層は、カーボンナノチューブを含有し、
前記ペリクル膜は、カーボンナノチューブを含有し、
前記第1補強層は、カーボンナノチューブを含有する、ペリクルの製造方法。
【請求項27】
請求項20に記載のペリクルにおいて、
前記第2補強層における膜の単位面積当たりのカーボンナノチューブの質量は、前記ペリクル膜と比べて、増量されている、ペリクルの製造方法。
【請求項28】
請求項20に記載のペリクルにおいて、
前記第1補強層における膜の単位面積当たりのカーボンナノチューブの質量は、前記ペリクル膜と比べて、増量されている、ペリクルの製造方法。
【請求項29】
請求項27に記載のペリクルにおいて、
前記第1補強層における膜の単位面積当たりのカーボンナノチューブの質量は、前記ペリクル膜と比べて、増量されている、ペリクルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペリクル及びペリクルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス等の製造工程では、例えば、半導体ウエハ等の基板にフォトレジストを塗布し、フォトレジストを塗布した基板上に、フォトマスクを用いて光を照射し、フォトレジストを除去することにより、基板上に目的とする回路パターンが形成される。
【0003】
フォトマスク上に異物が付着した状態で光が照射されると、付着した異物によって、基板上に形成された回路パターンに支障を来す場合がある。このため、フォトマスク上への異物の付着を抑制するために、異物を捕捉させるペリクル膜を備えたペリクルが使用される場合がある。ペリクルは、フォトマスクの上方に、ペリクル膜がフォトマスクに接しない距離で配置される。
【0004】
近年、より微細な回路パターンを形成するために、極端紫外線(EUV:Extreme Ultra Violet)の使用が検討されている。EUVは、波長1nm以上、100nm以下の光を指す。EUVとしては、例えば、具体的には、13.5nm±0.3nm程度の光線が使用されつつある。EUVがペリクル膜に照射された場合、EUVはペリクル膜を透過するものの、照射されたEUVの一部はペリクル膜に吸収される。吸収されたEUVの光エネルギーは熱エネルギーに変換されることにより、ペリクル膜の温度が上昇する。このため、ペリクル膜には、EUVの透過性、耐熱性及び耐久性等が求められる。
【0005】
例えば、特許文献1には、ペリクル膜を加熱処理(アニール処理)することにより、ペリクル膜の強度を向上させることができると記載されている。
また、特許文献2には、ペリクル膜とペリクルフレームとから構成され、ペリクル膜が接着剤又は粘着剤を介してペリクルフレームの上端面に設けられるフォトリソグラフィ用ペリクルが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2020-91314号公報
【文献】特開2020-98227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1には、ペリクル膜の強度を向上させ得る方法が記載されているものの、ペリクルの耐衝撃性をさらに向上させる技術が求められている。
また、特許文献2のペリクルは、ペリクル膜が接着剤又は粘着剤を介して支持体(ペリクルフレーム)に固定されている。接着剤及び粘着剤は、耐熱性に優れた素材ではないため、EUVのような高エネルギーの光照射を受けると分解して異物となる可能性がある。
【0008】
本発明の目的は、耐衝撃性を向上させることができると共に、異物発生を抑制することができるペリクルを提供すること、並びに当該ペリクルを製造するためのペリクルの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[1].
ペリクル膜と、
枠部と前記枠部に囲まれた開口部とを有し、前記ペリクル膜を支持する支持体と、
前記ペリクル膜を補強する第2補強層と、を備え、
前記枠部は、前記ペリクル膜と対向する支持面を有し、
前記ペリクル膜は、前記支持体に対向する第1ペリクル膜面と、前記第1ペリクル膜面とは反対側の第2ペリクル膜面と、を有し、
前記第2補強層は、前記支持体に支持された前記ペリクル膜を平面視した際に、前記ペリクル膜と前記支持体とが重なる領域であり、かつ、前記第2ペリクル膜面側に配置されている、ペリクル。
【0010】
[2].
[1]に記載のペリクルにおいて、
前記第2補強層は、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト、ダイヤモンドライクカーボン、アモルファスカーボン、シリコン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、及び窒化ホウ素からなる群から選択される1種以上の材料を含有する、ペリクル。
【0011】
[3].
[2]に記載のペリクルにおいて、
前記第2補強層は、カーボンナノチューブを含み、
前記第2補強層中のカーボンナノチューブは、前記枠部の前記支持面に対して平行方向に配向している、ペリクル。
【0012】
[4].
[1]から[3]のいずれか一項に記載のペリクルにおいて、
前記ペリクル膜は、無機薄膜又は有機薄膜である、ペリクル。
【0013】
[5].
[1]から[4]のいずれか一項に記載のペリクルにおいて、
前記ペリクル膜は、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト、ダイヤモンドライクカーボン、アモルファスカーボン、シリコン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、及び窒化ホウ素からなる群から選択される1種以上の材料を含有する、ペリクル。
【0014】
[6].
[1]から[5]のいずれか一項に記載のペリクルにおいて、
前記ペリクル膜は、カーボンナノチューブを含有する、ペリクル。
【0015】
[7].
[1]から[6]のいずれか一項に記載のペリクルにおいて、
前記ペリクル膜の材料と前記第2補強層の材料とが同じである、ペリクル。
【0016】
[8].
[1]から[7]のいずれか一項に記載のペリクルにおいて、
前記第1ペリクル膜面側であって、前記ペリクル膜と前記支持体との間に配置されている第1補強層をさらに備える、ペリクル。
【0017】
[9].
[8]に記載のペリクルにおいて、
前記第1補強層は、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト、ダイヤモンドライクカーボン、アモルファスカーボン、シリコン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、及び窒化ホウ素からなる群から選択される1種以上の材料を含有する、ペリクル。
【0018】
[10].
[8]又は[9]に記載のペリクルにおいて、
前記第1補強層は、カーボンナノチューブを含み、
前記第1補強層中のカーボンナノチューブは、前記枠部の前記支持面に対して平行方向に配向している、ペリクル。
【0019】
[11].
ペリクルを製造するペリクルの製造方法であって、
開口部と前記開口部を囲う枠部とを有する支持体に対して、前記開口部を覆うと共に、前記枠部の支持面で支持されるようにペリクル膜を張り付ける工程と、
前記ペリクル膜の前記支持体に対向する第1ペリクル膜面とは反対側の第2ペリクル膜面における領域であって、前記ペリクル膜を平面視した際に、前記ペリクル膜と前記支持体とが重なる領域に第2補強層を配置する工程と、を含む、ペリクルの製造方法。
【0020】
[12].
ペリクルを製造するペリクルの製造方法であって、
ペリクル膜に第2補強層を配置する工程と、
前記第2補強層が配置された前記ペリクル膜を、開口部と前記開口部を囲う枠部とを有する支持体に対して、前記開口部を覆うと共に、前記枠部の支持面で支持されるように張り付ける工程と、を含み、
前記第2補強層を配置する工程において、前記第2補強層を、前記ペリクル膜の前記支持体に対向する第1ペリクル膜面とは反対側の第2ペリクル膜面における領域であって、前記支持体に張り付けられた後の前記ペリクル膜を平面視した際に、前記ペリクル膜と前記支持体とが重なる領域に予め配置する、ペリクルの製造方法。
【0021】
[13].
[11]又は[12]に記載のペリクルの製造方法であって、
前記第2補強層は、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト、ダイヤモンドライクカーボン、アモルファスカーボン、シリコン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、及び窒化ホウ素からなる群から選択される1種以上の材料を含有する、ペリクルの製造方法。
【0022】
[14].
[13]に記載のペリクルの製造方法であって、
前記第2補強層は、カーボンナノチューブを含み、
前記第2補強層中のカーボンナノチューブが、前記ペリクル膜の膜面に対して平行方向に配向するように前記第2補強層を形成する、ペリクルの製造方法。
【0023】
[15].
[11]から[14]のいずれか一項に記載のペリクルの製造方法であって、
前記ペリクル膜を張り付ける工程の前に、前記開口部の外周側であり、かつ、前記枠部の前記支持面に第1補強層を配置する工程をさらに含み、
前記第1補強層は、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト、ダイヤモンドライクカーボン、アモルファスカーボン、シリコン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、及び窒化ホウ素からなる群から選択される1種以上の材料を含有し、
前記ペリクル膜を張り付ける工程において、前記開口部を覆うと共に、前記第1補強層で支持されるように前記ペリクル膜を張り付ける、ペリクルの製造方法。
【0024】
[16].
[15]に記載のペリクルの製造方法において、
前記第1補強層は、カーボンナノチューブを含み、
前記第1補強層中のカーボンナノチューブが、前記枠部の前記支持面に対して平行方向に配向するように前記第1補強層を形成する、ペリクルの製造方法。
【0025】
本発明の一態様によれば、耐衝撃性を向上させることができると共に、異物発生を抑制することができるペリクルを提供すること、並びに当該ペリクルを製造するための製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】第1実施形態に係るペリクルの一例を模式的に表す平面図である。
図2図1のII-II断面を表す断面図である。
図3】第2実施形態に係るペリクルの一例を模式的に表す平面図である。
図4図3のIV-IV断面を表す断面図である。
図5A】ペリクル膜の強度評価用ペリクルを模式的に表す平面図である。
図5B】ペリクル膜の強度評価用ペリクルを模式的に表す側面図である。
図6】ペリクル膜の強度評価を模式的に表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
〔第1実施形態〕
(ペリクル)
第1実施形態に係るペリクルは、ペリクル膜と、ペリクル膜を支持する支持体と、ペリクル膜を補強する第2補強層と、を備える。
なお、本明細書において、「第1」及び「第2」等の序数は、構成等を区別することを目的として文言に付されているのであって、順序を特定することを目的として文言に付されていない。本明細書において、順序を特定することを目的として序数を付す場合には、別途、その旨が明記される。したがって、例えば、第1補強層(第2実施形態参照)及び第2補強層における「第1」及び「第2」は、ペリクルに互いに異なる補強層が複数設けられることに鑑みて、複数の補強層を区別することを目的として「補強層」という文言に付されている。
なお、本明細書において、第2補強層がペリクル膜よりも表側に配置されていることから、第2補強層を表側補強層と称することもでき、第1補強層が、ペリクル膜よりも内側に配置されていることから、第1補強層を内側補強層と称することもできる。
【0028】
以下、図面を参照して、第1実施形態に係るペリクルの一例について説明する。本発明は、図示されたペリクルに限定されない。なお、本明細書で図面を参照して説明する場合の図面においては、説明を容易にするために拡大又は縮小をして図示した部分がある。
【0029】
図1及び図2には、第1実施形態の一例として、ペリクル120が示されている。図1には、ペリクル膜10が張り付けられている面側から平面視したペリクル120の平面図が示されており、図2には、図1に示されるペリクル120の断面図が示されている。
【0030】
ペリクル120は、ペリクル膜10と、ペリクル膜10を支持する支持体30と、ペリクル膜10を補強する第2補強層50と、を備える。
【0031】
(支持体)
支持体30は、枠部31と、枠部31に囲まれた開口部32と、を有する。
枠部31は、ペリクル膜10と対向する支持面34を有する。具体的には、支持面34は、ペリクル膜10を支持する際にペリクル膜10の第1ペリクル膜面11と対向する。開口部32は、支持体30における一方の面から他方の面に向かって貫通している。枠部31及び開口部32は、いずれも矩形に形成されている。本実施形態において、枠部31の外形における四隅の角は、いずれも丸みを帯びているが、枠部31の形状は、このような形状に限定されない。
支持体30の材料としては、公知の材料を用いることができ、例えば、樹脂材料(ポリエチレン等)、金属材料(アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム合金、ステンレス、チタン、チタン合金、及びインバー等)、セラミックス材料(SiC、及びSiN等)、石英、及び繊維強化プラスチック材料(炭素繊維強化プラスチック、及びガラス繊維強化プラスチック等)などが用いられる。
【0032】
(ペリクル膜)
ペリクル膜10は、支持体30に対向する第1ペリクル膜面11と、第1ペリクル膜面11とは反対側の第2ペリクル膜面12と、を有する。ペリクル膜10は、ペリクル膜10の周縁部13が枠部31の支持面34の一部において固定されており、支持体30の開口部32を覆っている。ペリクル120において、ペリクル膜10と支持面34とが直接接していることが好ましい。
【0033】
ペリクル膜10は、無機薄膜又は有機薄膜であることが好ましい。
ペリクル膜10は、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト、ダイヤモンドライクカーボン、アモルファスカーボン、シリコン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、及び窒化ホウ素からなる群から選択される1種以上の材料を含有することが好ましい。
【0034】
ペリクル膜10は、カーボンナノチューブを含有することが好ましく、実質的にカーボンナノチューブのみからなることも好ましい。ここで、「実質的にカーボンナノチューブのみからなる」とは、カーボンナノチューブ製造時に用いられる金属触媒を除き、ペリクル膜中の98質量%以上がカーボンナノチューブであることを意味する。すなわち、「実質的にカーボンナノチューブのみからなる」とは、カーボンナノチューブ製造時に用いられる金属触媒であってペリクル膜10に含有される金属触媒の質量を減じた後のペリクル膜10の全質量に対するカーボンナノチューブの質量の百分率が98質量%以上であることを意味する。ペリクル膜10が実質的にカーボンナノチューブのみからなる場合において、ペリクル膜10に意図的に添加しない物質であって、原料又は製造工程で混入する不可避不純物は、ペリクル膜10に含有されていてもよいし、含有されていなくてもよい。
【0035】
ペリクル膜10に含まれるカーボンナノチューブは、特に限定されず、多層カーボンナノチューブ(MWCNT:Multi-Walled Carbon Nanotubes)、数層カーボンナノチューブ(FWCNT:Few-Walled Carbon Nanotubes)、二層カーボンナノチューブ(DWCNT:Double-Walled Carbon Nanotubes)、及び単層カーボンナノチューブ(SWCNT:Single-Walled Carbon Nanotube)からなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0036】
本実施形態において、多層カーボンナノチューブは、例えば、4以上、20以下の同心層を有し直径4nm以上、100nm以下であるカーボンナノチューブである。数層カーボンナノチューブは、例えば、2又は3の同心層を有し直径2nm以上、8nm以下であるカーボンナノチューブである。単層カーボンナノチューブは、例えば、1層であり管径が0.2nm以上、5nm以下である。
【0037】
カーボンナノチューブは、例えば、化学気相成長法、レーザーアブレーション法、又はアーク放電法によって得られる。
【0038】
本実施形態において、カーボンナノチューブの長さは、例えば、0.1μm以上、1000μm以下であることが好ましい。
本実施形態において、カーボンナノチューブの長さは、0.5μm以上であることがより好ましく、1μm以上であることがさらに好ましい。
本実施形態において、カーボンナノチューブの長さは、600μm以下であることがより好ましく、400μm以下であることがさらに好ましい。
【0039】
本実施形態において、カーボンナノチューブの断面直径は、0.2nm以上、50nm以下であることが好ましい。
本実施形態において、カーボンナノチューブの断面直径は、0.5nm以上であることがより好ましく、1nm以上であることがさらに好ましい。
本実施形態において、カーボンナノチューブの断面直径は、30nm以下であることがより好ましく、20nm以下であることがさらに好ましい。
【0040】
本実施形態に係るペリクル膜は、露光光に対する透明性を向上させる観点で、自立性を有することが好ましい。ペリクル膜が自立性を有するとは、ペリクル膜自体で自立した状態である膜を表し、ペリクル膜が自立保持性を有する膜(自立膜とも称する)であることを表す。つまり、自立性を有するペリクル膜は、基材等が存在しなくても、ペリクル膜自体で形状を保持することが可能な膜である。
【0041】
ペリクル120において、ペリクル膜10の材料と第2補強層50の材料とが同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、ペリクル膜10の材料及び第2補強層50の材料がどちらもカーボンナノチューブであることも好ましい。ペリクル膜10及び第2補強層50が同じ材料で形成されていることにより、ペリクル膜10と第2補強層50との密着性を向上させることができる。
【0042】
本実施形態に係るペリクル膜の厚さは、特に限定されず、3nm以上、1000nm以下であることが好ましい。ペリクル膜の厚さは、10nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましく、30nm以上であることがさらに好ましい。ペリクル膜の厚さは、600nm以下であることが好ましく、300nm以下であることがより好ましい。ペリクル膜の厚さが、例えば、3nm以上、1000nm以下であれば、ペリクル膜の強度がより向上すると共に、EUV透過性を確保しやすくなる。
【0043】
(第2補強層)
第2補強層50は、支持体30に支持されたペリクル膜10を平面視した際に、ペリクル膜10と支持体30とが重なる領域であり、かつ、第2ペリクル膜面12側に配置されている。第2補強層50は、ペリクル膜10の周縁部13に沿って配置されている。ペリクル120において、ペリクル膜10と第2補強層50とが直接接していることが好ましい。
【0044】
第2補強層50の厚さは、ペリクル膜10の厚さよりも大きいことが好ましく、耐衝撃性を得やすくする観点から、0.05μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましい。また、第2補強層50の厚さは、生産性の観点及び加熱による異物発生の抑止の観点から、1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましい。
【0045】
第2補強層50は、現像に支障ない範囲(現像に必要な露光光を遮らない範囲)で、ペリクル120の平面視において、支持体30の開口部32側に張り出していてもよい。また、第2補強層50の内側端部は、図2に示すように、枠部31の内側端面に揃えて形成されていてもよい。また、第2補強層50の内側端部は、ペリクル膜10の補強に支障ない範囲で、枠部31の内側端面よりも内側に位置するように形成されていてもよい。
【0046】
第2補強層50は、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト、ダイヤモンドライクカーボン、アモルファスカーボン、シリコン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、及び窒化ホウ素からなる群から選択される1種以上の材料(補強材)を含有することが好ましい。第2補強層50がこれら材料を含有することで、ペリクル120は、露光時の熱に対しても安定的に機能すると共に、耐久性にも優れ、さらには、第2補強層50からのパーティクル(数百nm~数十nmのサイズの微粒子)が発生し難い。第2補強層50中のこれら材料(補強材)の含有量は、60質量%以上であるか、70質量%以上であるか、80質量%以上であるか、90質量%以上であるか、95質量%以上であるか、又は98質量%以上であることが好ましい。第2補強層50は、カーボンナノチューブ、グラフェン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、及び窒化ホウ素からなる群から選択される1種以上の材料を含有することがより好ましい。第2補強層50は、カーボンナノチューブ又はグラフェンで形成されていることがさらに好ましい。カーボンナノチューブ及びグラフェンのようなナノカーボン素材は、耐熱性に優れる。第2補強層50中のナノカーボン素材の含有量は、60質量%以上であるか、70質量%以上であるか、80質量%以上であるか、90質量%以上であるか、95質量%以上であるか、98質量%以上であることが好ましい。
【0047】
第2補強層50は、カーボンナノチューブを含有することがより好ましく、実質的にカーボンナノチューブのみからなることがさらに好ましい。ここで、「実質的にカーボンナノチューブのみからなる」とは、カーボンナノチューブ製造時に用いられる金属触媒を除き、第2補強層50中の98質量%以上がカーボンナノチューブであることを意味する。すなわち、第2補強層50が「実質的にカーボンナノチューブのみからなる」とは、カーボンナノチューブ製造時に用いられる金属触媒であって第2補強層50に含有される金属触媒の質量を減じた後の第2補強層50の全質量に対するカーボンナノチューブの質量の百分率が98質量%以上であることを意味する。第2補強層50が実質的にカーボンナノチューブのみからなる場合において、第2補強層50に意図的に添加しない物質であって、原料又は製造工程で混入する不可避不純物は、第2補強層50に含有されていてもよいし、含有されていなくてもよい。
【0048】
第2補強層50は、現像に支障ない範囲(現像に必要な露光光を遮らない範囲)に形成されるので、第2補強層50中のカーボンナノチューブの含有量(例えば、膜の単位面積当たりのカーボンナノチューブの質量)をペリクル膜10よりも増やすことができる。その結果、第2補強層50の強度が向上し、ペリクル膜10の耐衝撃性も向上する。
【0049】
第2補強層50がカーボンナノチューブを含有する場合、第2補強層50に含まれるカーボンナノチューブは、特に限定されず、多層カーボンナノチューブ、数層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、及び単層カーボンナノチューブからなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0050】
第2補強層50がカーボンナノチューブを含む場合、第2補強層50中のカーボンナノチューブは、枠部31の支持面34に対して平行方向に配向していることが好ましい。すなわち、各カーボンナノチューブの長軸方向が、枠部31の支持面34に沿った方向であることが好ましい。
【0051】
第2補強層50がカーボンナノチューブを含む場合、第2補強層50中のカーボンナノチューブは、枠部31の支持面34に対して垂直方向に配向していてもよい。第2補強層50は、カーボンナノチューブフォレストであることも好ましい。カーボンナノチューブフォレストは、カーボンナノチューブを、支持体又は基板の面に対して垂直方向に配向するよう、支持体又は基板の上に複数成長させた成長体のことであり、「アレイ」と称される場合もある。同質量のカーボンナノチューブを用いた補強層同士で比較すると、カーボンナノチューブが垂直方向に配向したCNT層は、カーボンナノチューブが水平方向に配向したCNT層に比べて、耐衝撃性がさらに向上する。そのため、第2補強層50中のカーボンナノチューブが垂直方向に配向していることにより、第2補強層50の衝撃吸収性が向上する。
【0052】
本明細書において、「垂直方向に配向している」とは、支持体又は基板の面に対して略垂直に配向していることを意味しており、「略垂直」とは、支持体又は基板の面に対する第2補強層50中の材料(カーボンナノチューブ等)の配向方向の角度が、90度±20度(70度以上、110度以下)であることを意味している。
【0053】
(ペリクルの製造方法)
次に、第1実施形態に係るペリクルの製造方法(以下、第1実施形態の製造方法と称する場合がある。)について説明する。第1実施形態の製造方法は、下記工程(P1)及び(P2)を含む態様でもよいし、下記工程(P3)及び(P4)を含む態様でもよい。
【0054】
工程(P1)は、開口部32と開口部32を囲う枠部31とを有する支持体30に対してペリクル膜10を張り付ける工程である。より具体的には、工程(P1)は、枠部31の支持面34側において、開口部32を覆うと共に、枠部31の支持面34で支持されるようにペリクル膜10を張り付ける工程である。
【0055】
工程(P2)は、ペリクル膜10の支持体30に対向する第1ペリクル膜面11とは反対側の第2ペリクル膜面12における領域であって、ペリクル膜10を平面視した際に、ペリクル膜10と支持体30とが重なる領域に第2補強層50を配置する工程である。
すなわち、工程(P1)及び(P2)の順に実施される製造方法においては、先に支持体30にペリクル膜10を張り付け、その後、ペリクル膜10の第2ペリクル膜面12に第2補強層50を配置する。
【0056】
工程(P3)は、ペリクル膜10に第2補強層50を配置する工程であり、具体的には、ペリクル膜10の第1ペリクル膜面11とは反対側の第2ペリクル膜面12における領域に第2補強層50を配置する工程である。この工程(P3)(第2補強層を配置する工程)においては、支持体30に張り付けられた後のペリクル膜10を平面視した際に、ペリクル膜10と支持体30とが重なる領域又は位置に予め第2補強層50を配置する。すなわち、工程(P3)においては、予めペリクル膜10に第2補強層50を配置し、この第2補強層50付きのペリクル膜10を製造する。
【0057】
工程(P4)は、枠部31の支持面34側において、開口部32を覆うと共に、枠部31の支持面34で支持されるように第2補強層50付きのペリクル膜10を張り付ける工程である。
すなわち、工程(P3)及び(P4)の順に実施される製造方法においては、先にペリクル膜10に第2補強層50を配置し、その後、第2補強層50付きのペリクル膜10の第1ペリクル膜面11側を支持体30に張り付ける。
【0058】
ペリクル膜10に第2補強層50を配置する方法としては、ペリクル膜10の所定位置に第2補強層50を形成する方法が挙げられる。
【0059】
第2補強層50は、ペリクル膜10の材料、及びペリクル膜10に配置する面積等に応じて適宜選択した材料を用いて形成すればよい。第2補強層50の形成方法は、用いる材料に応じて適宜選択すればよい。
【0060】
例えば、第2補強層50に含有させる材料(補強材)を溶媒中に分散させて補強材分散液を調製し、この補強材分散液をペリクル膜10に塗布し、溶媒を蒸発させて補強材からなる膜を第2補強層50として形成することもできる。
【0061】
第2補強層50がカーボンナノチューブを含有する層(CNT層)である場合、第2補強層50中のカーボンナノチューブが、ペリクル膜10の膜面に対して平行方向に配向するように第2補強層50を形成することが好ましい。第2補強層50中のカーボンナノチューブがこのように配向していることにより、同じく平行方向にカーボンナノチューブが配向しているペリクル膜との絡み合いが生じ、補強効果の向上を見込むことができる。
【0062】
第2補強層50がCNT層である場合、例えば、化学気相成長(Chemical Vapor Deposition;CVD)法、レーザーアブレーション法、又はアーク放電法でCNT層を形成することができる。ペリクル膜10の上に、直接、CVD法によってCNT層を形成してもよいし、基板上にCNT層を形成した後に基板上のCNT層をペリクル膜10の上に転写してもよい。例えば、ペリクル膜10へ配置する予定の第2補強層50の位置及び形状に対応した基板を準備し、当該基板の上にCNT層を形成し、当該CNT層をペリクル膜10に転写すれば、第2補強層50を良好な精度でペリクル膜10に配置することができる。CNT層が形成された基板をペリクル膜10に固定してもよい。
【0063】
第2補強層50がカーボンナノチューブフォレストである場合、カーボンナノチューブを、直接、ペリクル膜10に複数成長させることで、カーボンナノチューブフォレストを形成してもよい。または、基板上にカーボンナノチューブフォレストを形成し、当該基板をペリクル膜10に固定してもよいし、当該カーボンナノチューブフォレストをペリクル膜10に転写してもよい。
【0064】
基板の上にCNT層を形成する場合、基板としては、適宜公知の基板を使用でき、例えば、プラスチック基板、ガラス基板、シリコン基板、及び金属基板(鉄、及び銅等の金属又はこれらの合金(例えば、ステンレス)を含む基板)等からなる群から選択される少なくともいずれかの基板を使用できる。これらの基板の表面には、二酸化ケイ素膜が積層されていてもよい。第2補強層50としてのCNT層が形成された基板は、接着部材(例えば、両面テープ)により、ペリクル膜10の周縁部13に固定されていてもよい。
基板上に化学気相成長させるカーボンナノチューブは、多層カーボンナノチューブ、数層カーボンナノチューブ、及び単層カーボンナノチューブからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、複数種のカーボンナノチューブからなる混合物でもよい。
【0065】
第2補強層50がグラフェンを含有する層(グラフェン層)である場合、CVD法によって第2補強層50としてのグラフェン層を形成することもできる。例えば、ペリクル膜10の上に、直接、CVD法によってグラフェン層を形成してもよいし、金属箔(例えば、Ni箔又はCu箔等)の基材上にCVD法によってグラフェン層を形成した後に基材上のグラフェン層をペリクル膜10の上に転写してもよい。第2補強層50としてのグラフェン層は、1層からなる単層構造でもよいが、ペリクル膜を補強する効果を高める観点から、2層以上からなる多層構造でもよい。第2補強層50は、現像に支障ない範囲に形成されるので、グラフェン層が多層構造であっても現像に支障が生じない。グラフェン層が多層構造の場合は、予めグラフェン層を多層に形成しておき、ペリクル膜10の上に転写してもよい。
【0066】
第1実施形態の製造方法は、工程(P1)又は工程(P3)の前に、支持体を準備する工程(P5)及びペリクル膜を準備する工程(P6)を含んでいてもよい。
【0067】
支持体を準備する工程(P5)は、前述の支持体を構成する材料を用い、公知の方法によって、目的とする形状に形成された支持体を準備すればよい。
【0068】
ペリクル膜を準備する工程(P6)は、第1実施形態に係るペリクル膜を準備すればよい。例えば、第1実施形態に係るペリクル膜は、次に説明するペリクル膜の製造方法によって製造することもできる。
【0069】
(ペリクル膜の製造方法)
ペリクル膜の製造方法は、特に限定されず、用いる材料に応じて適宜選択すればよい。
【0070】
カーボンナノチューブを含有するペリクル膜の好ましい製造方法の一例は、例えば、カーボンナノチューブを分散させる工程(PE1)と、分散させたカーボンナノチューブを通気性部材上に沈降及び堆積させて、通気性部材上にマット状に形成したカーボンナノチューブの膜化物を得る工程(PE2)と、カーボンナノチューブの膜化物から通気性部材を取り除き、ペリクル膜を得る工程(PE3)とを備える。
【0071】
まず、工程(PE1)において、カーボンナノチューブを液体中に分散させ、カーボンナノチューブが液体中に分散されたカーボンナノチューブ分散液を調製する。液体は、水を含む液体であることが好ましい。カーボンナノチューブ分散液は、カーボンナノチューブのみを含んでいてもよく、カーボンナノチューブの他に、カーボンナノチューブを分散させる分散剤等の各種の添加剤を含んでいてもよい。
【0072】
次いで、工程(PE2)において、分散させたカーボンナノチューブを通気性部材の上に、沈降及び堆積させる。例えば、工程(PE1)で調製したカーボンナノチューブ分散液を通気性部材としてのろ過膜によってろ過することで、カーボンナノチューブを沈降及び堆積させて、ろ過膜上に、マット状に形成したカーボンナノチューブの膜化物を形成させる。ろ過膜は、例えば、メンブレンフィルタなどを用いることが好ましい。
【0073】
次いで、工程(PE3)において、マット状に形成したカーボンナノチューブの膜化物からろ過膜を取り除くことで、カーボンナノチューブを含むペリクル膜が得られる。マット状に形成した繊維の膜化物からろ過膜を取り除く前、又はマット状に形成した繊維の膜化物からろ過膜を取り除いた後に、必要に応じて、乾燥工程を設けてもよい。得られたペリクル膜は、自立膜である。
【0074】
第1実施形態の製造方法は、必要に応じて、枠部31の支持面34の少なくとも一部に接着層を設ける工程(P7)を含んでいてもよい。枠部31の支持面34の少なくとも一部に接着層が設けられる場合は、前記接着層を介して、枠部31の支持面34で支持されるようにペリクル膜10が架設される。接着層に各種接着剤を使用する場合、接着層を設ける工程は、支持面34に接着剤を塗布することで、接着剤を含む接着層が設けられる。
【0075】
ペリクル120は、例えば、半導体デバイス、ICパッケージ、プリント基板、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等を製造する際の防塵カバーとして使用される。ペリクル120は、例えば、第1ペリクル膜面11がフォトマスクと対向するように、フォトマスクの上方に、フォトマスクと離間して配置されて使用される。ペリクル120が使用されることによって、フォトマスクへの異物の付着が抑制される。
【0076】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態に係るペリクルによれば、ペリクル膜10の第2ペリクル膜面12側に第2補強層50が配置されているので、ペリクル膜10が破損し難くなり、ペリクル120の耐衝撃性が向上する。
【0077】
第1実施形態に係るペリクルにおいて、第2補強層50が配置される領域は、ペリクル120の平面視でペリクル膜10と支持体30とが重なる領域であるため、第2補強層50の透明性は、低くてもよい。そのため、第2補強層50に用いることができる材料の選択肢が広がると共に、第2補強層50中の補強材の含有量(例えば、膜の単位面積当たりの補強材の質量)をペリクル膜10よりも増やすことができる。その結果、第2補強層50の強度が向上し、ペリクル120の耐衝撃性も向上する。第2補強層50が配置される領域は、ペリクル膜10の周縁部13であるため、ペリクル膜10の周縁部13をより効果的に保護することができる。
【0078】
第1実施形態に係るペリクルにおいて、第2補強層50は、接着剤層又は粘着剤層ではなく、耐熱性に優れた材料で形成されているため、EUVのような高エネルギーの光照射を受けても分解し難い。そのため、第1実施形態に係るペリクルのように第2補強層50が設けられていても、異物発生を抑制できる。
【0079】
第1実施形態の製造方法によれば、耐衝撃性がさらに向上したペリクルを製造することができる。
【0080】
〔第2実施形態〕
(ペリクル)
次に、第2実施形態に係るペリクルの構成について説明する。第2実施形態の説明において第1実施形態と同一の構成要素は、同一符号や名称を付す等して説明を省略もしくは簡略化する。また、第2実施形態では、特に言及されない構造及び材料等については、第1実施形態で説明した構造及び材料等と同様の構造及び材料等を採用することができる。
【0081】
第2実施形態に係るペリクルは、第1ペリクル膜面側であって、ペリクル膜と支持体との間に配置されている第1補強層をさらに備える点で、第1実施形態に係るペリクルと異なる。その他の点については第1実施形態と同様である。
すなわち、第2実施形態において、ペリクル膜は、その周縁部が第1補強層と第2補強層との間に挟まれた状態で補強されると共に、支持体に支持されている。
【0082】
以下、図面を参照して、第2実施形態に係るペリクルの一例について説明する。本発明は、図示されたペリクルに限定されない。
【0083】
図3及び図4には、第2実施形態の一例として、ペリクル110が示されている。図3には、ペリクル膜10が架設されている面側から平面視したペリクル110の平面図が示されており、図4には、図3に示されるペリクル110の断面図が示されている。
【0084】
ペリクル110は、ペリクル膜10、ペリクル膜10を支持する支持体30、ペリクル膜10を補強する第1補強層40及び第2補強層50を備える。
【0085】
(第1補強層)
第1補強層40は、支持体30に支持されたペリクル膜10を平面視した際に、ペリクル膜10と支持体30とが重なる領域であり、かつ、第1ペリクル膜面11側でペリクル膜10と支持体30との間に配置されている。第1補強層40は、ペリクル膜10の周縁部13に沿って配置されている。第1補強層40は、支持面34に直接接して配置されていることも好ましい。支持面34に第1補強層40が配置されている支持体30を、ペリクル支持体30Aと称する場合がある。
【0086】
第1補強層40は、現像に支障ない範囲(現像に必要な露光光を遮らない範囲)で、ペリクル110の平面視において、支持体30の開口部32側に張り出していてもよい。また、第1補強層40の内側端部(開口部32側の端部)は、図4に示すように、枠部31の内側端面(開口部32側の端面)に揃えて形成されていてもよい。また、第1補強層40の内側端部は、ペリクル膜10の支持及び補強に支障ない範囲で、枠部31の内側端面よりも内側に位置するように形成されていてもよい。
【0087】
第1補強層40の厚さは、ペリクル膜10の厚さよりも大きいことが好ましく、耐衝撃性を得やすくする観点から、0.05μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましい。また、第1補強層40の厚さは、生産性の観点及び加熱による異物発生の抑止の観点から、1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましい。
【0088】
第1補強層40は、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト、ダイヤモンドライクカーボン、アモルファスカーボン、シリコン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、及び窒化ホウ素からなる群から選択される1種以上の材料(補強材)を含有することが好ましい。第1補強層40がこれら材料を含有することで、ペリクル110は、露光時の熱に対しても安定的に機能すると共に、耐久性にも優れ、さらには、第1補強層40からのパーティクル(数百nm~数十nmのサイズの微粒子)が発生し難い。第1補強層40中のこれら材料(補強材)の含有量は、60質量%以上であるか、70質量%以上であるか、80質量%以上であるか、90質量%以上であるか、95質量%以上であるか、又は98質量%以上であることが好ましい。第1補強層40は、カーボンナノチューブ、グラフェン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、及び窒化ホウ素からなる群から選択される1種以上の材料を含有することがより好ましい。第1補強層40は、カーボンナノチューブ又はグラフェンで形成されていることがさらに好ましい。カーボンナノチューブ及びグラフェンのようなナノカーボン素材は、耐熱性に優れるため、ナノカーボン素材を含有する第1補強層40は、耐熱性が向上する。第1補強層40中のナノカーボン素材の含有量は、60質量%以上であるか、70質量%以上であるか、80質量%以上であるか、90質量%以上であるか、95質量%以上であるか、98質量%以上であることが好ましい。
【0089】
第1補強層40がカーボンナノチューブを含む場合、第1補強層40中のカーボンナノチューブは、枠部31の支持面34に対して平行方向に配向していることが好ましい。すなわち、各カーボンナノチューブの長軸方向が、枠部31の支持面34に沿った方向であることが好ましい。
【0090】
第1補強層40がカーボンナノチューブを含む場合、第1補強層40中のカーボンナノチューブは、枠部31の支持面34に対して垂直方向に配向していてもよい。第1補強層40は、カーボンナノチューブフォレストであることも好ましい。第1補強層40中のカーボンナノチューブが垂直方向に配向していることにより、第1補強層40の衝撃吸収性が向上する。
【0091】
第1補強層40は、カーボンナノチューブを含有することがより好ましく、実質的にカーボンナノチューブのみからなることがさらに好ましい。ここで、「実質的にカーボンナノチューブのみからなる」とは、カーボンナノチューブ製造時に用いられる金属触媒を除き、第1補強層40中の98質量%以上がカーボンナノチューブであることを意味する。すなわち、第1補強層40が「実質的にカーボンナノチューブのみからなる」とは、カーボンナノチューブ製造時に用いられる金属触媒であって第1補強層40に含有される金属触媒の質量を減じた後の第1補強層40の全質量に対するカーボンナノチューブの質量の百分率が98質量%以上であることを意味する。第1補強層40が実質的にカーボンナノチューブのみからなる場合において、第1補強層40に意図的に添加しない物質であって、原料又は製造工程で混入する不可避不純物は、第1補強層40に含有されていてもよいし、含有されていなくてもよい。
【0092】
第1補強層40がカーボンナノチューブを含有する場合、第1補強層40に含まれるカーボンナノチューブは、特に限定されず、多層カーボンナノチューブ、数層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、及び単層カーボンナノチューブからなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0093】
ペリクル110において、第1補強層40の材料と第2補強層50の材料とが同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0094】
(第2補強層)
第2実施形態における第2補強層50は、第1実施形態と同様である。
【0095】
(ペリクル膜)
第2実施形態におけるペリクル膜10は、第1実施形態と同様である。
ペリクル110において、ペリクル膜10の材料と第1補強層40の材料とが同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、ペリクル膜10の材料及び第1補強層40の材料がどちらも同じカーボンナノチューブであることも好ましい。ペリクル膜10及び第1補強層40が同じ材料で形成されていることにより、ペリクル膜10と第1補強層40との密着性を向上させることができる。
また、ペリクル膜10の材料と第1補強層40の材料と第2補強層50の材料とが同じであってもよいし、異なっていてもよい。ペリクル膜10の材料と第1補強層40の材料と第2補強層50の材料とが同じである場合、これらの密着性が向上する。ペリクル膜10の材料と第1補強層40の材料と第2補強層50の材料とがカーボンナノチューブであることが好ましい。
【0096】
(ペリクルの製造方法)
次に、第2実施形態に係るペリクルの製造方法(以下、第2実施形態の製造方法と称する場合がある。)について説明する。
第2実施形態の製造方法は、ペリクル膜10を支持体30に張り付ける工程の前に、開口部32の外周側であり、かつ、枠部31の支持面34に第1補強層40を配置する工程(PS1)をさらに含む。第1実施形態において説明した支持体を準備する工程(P5)は、本実施形態においてはペリクル支持体30Aを製造する工程(PS1)に相当する。
【0097】
(ペリクル支持体の製造方法)
工程(PS1)は、支持体30の支持面34に第1補強層40を形成してペリクル支持体30Aを製造する工程である。
【0098】
第1補強層40は、ペリクル膜10の材料、及びペリクル膜10を支持する面積等に応じて適宜選択した材料を用いて形成すればよい。第1補強層40の形成方法は、用いる材料に応じて適宜選択すればよい。
【0099】
例えば、第1補強層40に含有させる材料(補強材)を溶媒中に分散させて補強材分散液を調製し、この補強材分散液を支持体30の支持面34に塗布し、溶媒を蒸発させて補強材からなる膜を第1補強層40として形成することもできる。
【0100】
第1補強層40がカーボンナノチューブを含有する層(CNT層)である場合、第1補強層40中のカーボンナノチューブが、枠部31の支持面34に対して平行方向に配向するように第1補強層40を形成することが好ましい。
【0101】
第1補強層40がCNT層である場合、例えば、化学気相成長(CVD)法、レーザーアブレーション法、又はアーク放電法でCNT層を形成することができる。支持体30の支持面34の上に、直接、CVD法によってCNT層を形成してもよいし、基板上にCNT層を形成した後に基板上のCNT層を支持面34の上に転写してもよいし、CNT層が形成された基板を支持面34に固定してもよい。
【0102】
第1補強層40がカーボンナノチューブフォレストである場合、支持体30の支持面34に対して垂直方向に配向するようにカーボンナノチューブを、直接、複数成長させることで、カーボンナノチューブフォレストを形成することができる。または、基板上にカーボンナノチューブフォレストを形成し、当該基板上のCNT層を支持面34の上に転写するか、又は当該基板を支持面34に固定することもできる。
【0103】
基板の上にCNT層を形成する場合、基板としては、適宜公知の基板を使用でき、例えば、プラスチック基板、ガラス基板、シリコン基板、及び金属基板(鉄、及び銅等の金属又はこれらの合金(例えば、ステンレス)を含む基板)等からなる群から選択される少なくともいずれかの基板を使用できる。これらの基板の表面には、二酸化ケイ素膜が積層されていてもよい。第1補強層40としてのCNT層が形成された基板は、接着部材(例えば、両面テープ)により、支持面34に固定されていてもよい。
基板上に化学気相成長させるカーボンナノチューブは、多層カーボンナノチューブ、数層カーボンナノチューブ、及び単層カーボンナノチューブからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、複数種のカーボンナノチューブからなる混合物でもよい。
【0104】
第1補強層40は、現像に支障ない範囲(現像に必要な露光光を遮らない範囲)に形成されるので、第1補強層40中のカーボンナノチューブの含有量(例えば、膜の単位面積当たりのカーボンナノチューブの質量)をペリクル膜10よりも増やすことができる。その結果、第1補強層40の強度が向上し、ペリクル膜10の耐衝撃性も向上する。
【0105】
第1補強層40がグラフェンを含有する層(グラフェン層)である場合、CVD法によって第1補強層40としてのグラフェン層を形成することもできる。例えば、支持体30の支持面34の上に、直接、CVD法によってグラフェン層を形成してもよいし、金属箔(例えば、Ni箔又はCu箔等)の基材上にCVD法によってグラフェン層を形成した後に基材上のグラフェン層を支持面34の上に転写してもよい。第1補強層40としてのグラフェン層は、1層からなる単層構造でもよいが、ペリクル膜を補強する効果を高める観点から、2層以上からなる多層構造でもよい。第1補強層40は、現像に支障ない範囲に形成されるので、グラフェン層が多層構造であっても現像に支障が生じない。グラフェン層が多層構造の場合は、予めグラフェン層を多層に形成しておき、支持面34の上に転写してもよい。
【0106】
第2実施形態の製造方法は、ペリクル支持体30Aを製造する工程(PS1)の後に、下記工程(PX1)及び(PX2)を含むか、もしくは下記工程(PX3)及び(PX4)を含む。
【0107】
工程(PX1)は、ペリクル支持体30Aに対してペリクル膜10を張り付ける工程である。より具体的には、工程(PX1)は、枠部31の支持面34側において、開口部32を覆うと共に、第1補強層40で支持されるようにペリクル膜10を張り付ける工程である。工程(PX1)は、ペリクル膜10が張り付けられる対象が、第1補強層40を配置済みのペリクル支持体30Aである点以外は、第1実施形態の工程(P1)と同様である。
【0108】
工程(PX2)は、ペリクル膜10の第2ペリクル膜面12における領域であって、ペリクル膜10を平面視した際に、ペリクル膜10と支持体30とが重なる領域に第2補強層50を配置する工程である。すなわち、工程(PX2)においては、先にペリクル支持体30Aにペリクル膜10を張り付け、その後、ペリクル膜10の第2ペリクル膜面12に第2補強層50を配置する。工程(PX2)は、第2補強層50が配置される対象が、ペリクル支持体30Aで支持されたペリクル膜10である点以外は、第1実施形態の工程(P2)と同様である。
【0109】
工程(PX3)は、ペリクル膜10に第2補強層50を配置する工程であり、具体的には、ペリクル膜10の第2ペリクル膜面12における領域に第2補強層50を配置する工程である。工程(PX3)は、第1実施形態の工程(P3)と同じである。
【0110】
工程(PX4)は、ペリクル支持体30Aに対して、第2補強層50付きのペリクル膜10を張り付ける工程である。より具体的には、工程(PX4)は、枠部31の支持面34側において、開口部32を覆うと共に、第1補強層40で支持されるように第2補強層50付きのペリクル膜10を張り付ける工程である。工程(PX4)は、第2補強層50付きのペリクル膜10が張り付けられる対象が、第1補強層40を配置済みのペリクル支持体30Aである点以外は、第1実施形態の工程(P4)と同様である。
【0111】
第2実施形態の製造方法も、工程(PX1)の前に、第1実施形態において説明したペリクル膜を製造する工程を含んでいてもよい。
【0112】
ペリクル110は、第1実施形態のペリクル120と同様、防塵カバーとして使用される。
【0113】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態に係るペリクルによれば、第1実施形態に係るペリクルと同様の効果を奏する。さらに、第2実施形態に係るペリクルは、第1ペリクル膜面11側に第1補強層40を有するので、ペリクル膜10がさらに補強され、ペリクル110の耐衝撃性がさらに向上する。
【0114】
第2実施形態に係るペリクル及びペリクル支持体において、第1補強層40は、接着剤層及び粘着剤層ではなく、耐熱性に優れた材料で形成されているため、EUVのような高エネルギーの光照射を受けても分解し難い。そのため、第2実施形態に係るペリクル及びペリクル支持体によれば、ペリクル膜が接着剤層又は粘着剤層を介して支持体に固定されたペリクルと比べて、異物発生を抑制できる。
【0115】
第2実施形態に係るペリクル及びペリクル支持体において、第1補強層40が、カーボンナノチューブが垂直方向に配向したCNT層(例えば、カーボンナノチューブフォレスト)である場合、同質量のカーボンナノチューブを用いた補強層同士で比較すると、カーボンナノチューブが垂直方向に配向したCNT層は、カーボンナノチューブが水平方向に配向したCNT層に比べて、耐衝撃性がさらに向上する。
【0116】
第2実施形態に係るペリクル及びペリクル支持体において、第1補強層40が配置される領域は、ペリクル110の平面視でペリクル膜10と支持体30とが重なる領域であるため、第1補強層40の透明性は、低くてもよい。そのため、第1補強層40に用いることができる材料の選択肢が広がると共に、第1補強層40中の補強材の含有量(例えば、膜の単位面積当たりの補強材の質量)をペリクル膜10よりも増やすことができる。その結果、第1補強層40の強度が向上し、ペリクル110の耐衝撃性も向上する。
【0117】
第2実施形態に係るペリクル及びペリクル支持体によれば、耐衝撃性が向上しているため、ペリクルの交換回数が低減され、ペリクルを利用する製造プロセス(例えば、半導体デバイス等の製造プロセス)の生産性を向上させることができる。
【0118】
第2実施形態の製造方法によれば、耐衝撃性が向上したペリクルを製造することができる。
【0119】
〔実施形態の変形〕
なお、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
図1図4を参照して第1実施形態及び第2実施形態に係るペリクルの一例について説明したが、本発明に係るペリクルは、これらペリクルの一例に限定されない。
【0120】
本発明に係るペリクルは、前述の第1実施形態及び第2実施形態に係るペリクル膜を用いたペリクルの効果が得られるのであれば、種々の形態を採用し得る。第1実施形態及び第2実施形態に係るペリクルを構成する各部材の各部における形状及び寸法等は、例えば、第1実施形態及び第2実施形態に係るペリクルが使用されるときのフォトマスク(不図示)の寸法に応じて決定されればよい。
【0121】
また、例えば、図1図4に示されるペリクル110,120のペリクル膜10及び支持体30は、いずれも矩形に形成されている。本発明に係るペリクルは、これに限られず、円形、楕円形、及び多角形等の目的とする任意の形状に形成されていればよい。
【0122】
また、図1及び図2に示されるペリクル120では、第2補強層50がペリクル膜10の周縁部13に配置されているが、本発明に係るペリクルは、このような例に限定されない。例えば、第2補強層50は、ペリクル膜10の周縁部13に配置されているだけでなく、支持面34のペリクル膜10が張り付けられていない領域まで張り出していてもよい。第2補強層50が支持面34側まで張り出して、ペリクル膜10の側部も覆っていてもよい。第2補強層50でペリクル膜10の側部を覆うことにより、ペリクル膜10が支持体30から剥がれることを抑制できる。第2補強層50は、ペリクル膜10の周縁部13から張り出して、支持面34のうち第1補強層40が配置されておらず露出した部分の一部又は全面と接していてもよい。図3及び図4に示されるペリクル110においても、第2補強層50が支持面34側まで張り出していてもよい。
【0123】
また、例えば、図3及び図4に示されるペリクル110では、ペリクル膜10の周縁部13が支持体30の支持面34の一部に配置された第1補強層40によって固定されている。本発明に係るペリクルは、このような例に限定されず、ペリクル膜10の周縁部13が、支持体の支持面34の全面に配置された第1補強層40によって固定されてもよい。例えば、第1補強層40は、ペリクル膜10を支持する領域だけでなく、支持面34のペリクル膜10が張り付けられていない領域まで張り出していてもよい。このように張り出した第1補強層40と、前述のように張り出した第2補強層50とが接していてもよい。このように第1補強層40と第2補強層50とが互いに接するように配置されることで、ペリクル膜10の周縁部13が第1補強層40及び第2補強層50の間で挟持され、ペリクル膜10を補強する効果がさらに向上する。
【実施例
【0124】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、これらの実施例に何ら限定されない。
【0125】
[実施例1]
図5A及び図5Bを参照して実施例1に係るペリクルの作製について説明する。図5Aには、ペリクル膜10W側から平面視したペリクルWKの平面図が模式的に表されている。図5Bには、ペリクルWKを短手方向に沿って側面視した側面図が模式的に表されている。
支持体30Wとして、1cm×1cmのサイズの開口部32Wを有するアクリル板(2cm×5cm×2mm)を準備した。開口部32Wは、支持体30Wの第1端部E1側の中央付近に位置する。
次に、SWCNTを水に分散させて、第1SWCNT分散液を調製した。メンブレンフィルターを用いて、第1SWCNT分散液をろ過して、メンブレンフィルター上にSWCNTのみからなる膜をペリクル膜10Wとして形成した。メンブレンフィルター全体を水中に沈めて、SWCNTのみからなるペリクル膜10Wを水面上に単離した。
ペリクル膜10Wが単離されている水中に支持体30Wを沈め、当該支持体30Wを水中から引き上げ、開口部32Wを覆うようにペリクル膜10Wを自立膜としてピックアップした。このようにして、ペリクルWKを作製した。ペリクルWKにおいては、ペリクル膜10W(CNT自立膜)は、支持体30Wと一体化していた。
次に、第1SWCNT分散液に比べてSWCNTを高濃度で水に分散させて第2SWCNT分散液を調製した。
次に、支持体30Wに支持されたペリクル膜10Wを平面視した際に、ペリクル膜10Wと支持体30とが重なる領域であり、かつ、ペリクル膜10Wの周縁部に、第2SWCNT分散液を滴下して自然乾燥させ、水平方向に配向したSWCNTを含有する第2補強層50Wを形成した。このようにして、実施例1に係るペリクルWKを作製した。実施例1に係るペリクルWKにおいては、SWCNTの含有量をペリクル膜10Wよりも大幅に増量とした第2補強層50Wを形成することができた。
【0126】
[参考例1]
まず、MWCNTを水に分散させて、第1MWCNT分散液を調製した。支持体30Wの開口部32Wの外周に、第1MWCNT分散液を滴下して自然乾燥させ、水平方向に配向したMWCNTを含有する第1補強層を形成した。このようにして第1補強層付きの支持体30W(ペリクル支持体)を得た。
次に、実施例1と同様にしてSWCNTのみからなるペリクル膜10Wを水面上に単離した。ペリクル膜10Wが単離されている水中に第1補強層付きの支持体30W(ペリクル支持体)を沈め、当該支持体30Wを水中から引き上げ、開口部32Wを覆うと共に第1補強層の上で支持されるようにペリクル膜10Wを自立膜としてピックアップした。このようにして、参考例1に係るペリクルを作製した。参考例1に係るペリクルにおいては、ペリクル膜10W(CNT自立膜)は、支持体30Wと一体化すると共に第1補強層によって補強されていた。
【0127】
[比較例1]
比較例1に係るペリクルは、第2補強層50Wを設けなかったこと以外、実施例1と同様にして作製した。
【0128】
[耐衝撃性評価]
評価方法は、次のような手順で行った。図6は、ペリクルWKを用いてペリクル膜の強度を評価する方法を模式的に表しており、ペリクルWKを短手方向に沿って側面視した状態を表している。図6に示されるように、まず、ペリクルWKを水平な台Tの上に配置した。ペリクルWKの第2端部E2側に接するように、ストッパーSを配置した。次に、ペリクルWKの第2端部E2側を滑らないようにした状態で、第1端部E1側を持ち上げて、台TとペリクルWKとの間に、厚さ1mmの板状部材Bを挟み込んだ。次に、板状部材Bを水平方向Hに抜き取り、ペリクルWKを落下させた。ペリクルWKを落下させた後に、ペリクル膜10Wの破損の有無を目視にて確認した。破損が無かった場合は、厚さ1mmの板状部材Bを積み重ねて、2枚の板状部材Bを挟み込み、2枚の板状部材Bを水平方向Hに抜き取り、ペリクルWKを落下させた。この操作を、ペリクル膜10Wに破損が生じるまで繰り返し、ペリクル膜10Wに破損が生じなかった落下時の最大高さをペリクル膜10Wの耐衝撃性として評価した。なお、当該最大高さは、厚さ1mmの板状部材Bを積み重ねたときの板状部材Bの最大枚数に相当する。ペリクル膜10Wの耐衝撃性評価は、上記手順の試験を3回行い、3回の平均値とした。実施例1、参考例1、及び比較例1に係るペリクルの耐衝撃性評価の結果を表1に示す。
【0129】
【表1】
【0130】
表1に示すように、ペリクル膜の第2ペリクル膜面側に第2補強層を配置した実施例1に係るペリクルによれば、ペリクル膜が破損し難くなり、耐衝撃性が向上した。実施例1に係るペリクルは、MWCNTが水平方向に配向した第1補強層を有する参考例1に係るペリクルに比べて、さらに優れた耐衝撃性を示した。また、第2補強層は、カーボンナノチューブで形成されており耐熱性に優れるため、EUVのような高エネルギーの光を照射しても分解し難い。
【符号の説明】
【0131】
10…ペリクル膜、10W…ペリクル膜、11…第1ペリクル膜面、12…第2ペリクル膜面、13…周縁部、30…支持体、30A…ペリクル支持体、30W…支持体、31…枠部、32…開口部、32W…開口部、34…支持面、40…第1補強層、50…第2補強層、50W…第2補強層、110…ペリクル、120…ペリクル、B…板状部材、E1…第1端部、E2…第2端部、H…水平方向、S…ストッパー、T…台、WK…ペリクル。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6