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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-22
(45)【発行日】2025-07-30
(54)【発明の名称】X線画像取得方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/046 20180101AFI20250723BHJP
   G01N 23/083 20180101ALI20250723BHJP
【FI】
G01N23/046
G01N23/083
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022107497
(22)【出願日】2022-07-04
(65)【公開番号】P2024006515
(43)【公開日】2024-01-17
【審査請求日】2024-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊田 哲弘
【審査官】大野 倫太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-189517(JP,A)
【文献】特開2006-084483(JP,A)
【文献】特開2009-139314(JP,A)
【文献】特開2015-123316(JP,A)
【文献】特開2007-147313(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0372952(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00-G01N 23/2276
G01B 15/00-G01B 15/08
A61B 6/00-A61B 6/58
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線撮影装置と、回転対称の3次元形状を有しかつ対称軸に直交する径方向の寸法が異なる複数の部分を有する較正用被写体とを対向させて配置し、モータを含む回転装置によって前記較正用被写体と前記X線撮影装置とを前記較正用被写体の前記対称軸に一致させた回転中心軸を中心として相対的に回転させ、角度ずれが生じない場合に前記較正用被写体の2次元形状が同一となる複数の撮影位置から、前記X線撮影装置によって前記較正用被写体の複数の較正用画像を撮影する工程と、
前記X線撮影装置と前記較正用被写体の3次元直交座標系を一致させた基準状態で前記X線撮影装置によって撮影される前記較正用被写体の基準画像の特徴量と、各々の前記較正用画像の特徴量とを比較して、各々の前記較正用画像を前記基準画像に一致させるための画像補正量を算出して記録する工程と、
前記較正用被写体と同様に被写体と前記X線撮影装置とを対向させて配置し、前記回転装置によって、前記回転中心軸を中心として前記X線撮影装置と前記被写体とを相対的に回転させ、前記複数の撮影位置から前記X線撮影装置によって前記被写体の複数のX線画像を撮影する工程と、
前記画像補正量に基いて前記被写体の前記複数のX線画像の各々を補正した複数の補正画像を取得する工程と、
を有することを特徴とするX線画像取得方法。
【請求項2】
前記複数の補正画像を用いて前記被写体の3次元CT画像を構成する工程を有することを特徴とする請求項1に記載のX線画像取得方法。
【請求項3】
前記回転装置は、前記較正用被写体または前記被写体を支持した状態で前記回転中心軸を中心として回転する回転支持台と、前記X線撮影装置を前記較正用被写体または前記被写体に対向させて配置する産業用ロボットと、を備えることを特徴とする請求項1に記載のX線画像取得方法。
【請求項4】
前記回転装置は、前記較正用被写体または前記被写体を前記回転中心軸の上に配置するための載置台と、前記X線撮影装置を前記載置台の上に配置された前記較正用被写体または前記被写体に対向させて前記較正用被写体または前記被写体の周囲で前記回転中心軸を中心として回転させる産業用ロボットと、を備えることを特徴とする請求項1に記載のX線画像取得方法。
【請求項5】
前記回転装置は、前記較正用被写体または前記被写体を保持して前記回転中心軸の上に配置するための第1の産業用ロボットと、前記X線撮影装置を保持して前記較正用被写体または前記被写体に対向させる第2の産業用ロボットと、を備え、
前記第1の産業用ロボットと前記第2の産業用ロボットの少なくとも一方によって前記回転中心軸を中心として前記X線撮影装置と前記較正用被写体または前記被写体とを相対的に回転させることを特徴とする請求項1に記載のX線画像取得方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、X線画像取得方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からX線源とこのX線源に対向して設置される2次元検出器とを同一回転中心の円軌道面上で回転移動させながら被検体のX線透視画像を撮影するX線断層撮影装置に関する発明が知られている(下記特許文献1を参照)。特許文献1に記載されたX線断層撮影装置は、X線源と、2次元X線撮影手段と、回転手段と、補正テーブルと、変換手段と、補正テーブル作成手段とを具備する(第0031段落、請求項1、要約、および図1)。
【0003】
上記X線源は、円錐状にX線を照射する。上記2次元X線撮影手段は、X線源に対向して配置され、被検体を透過するX線を撮影する。上記回転手段は、X線源と2次元X線撮影手段とを同一回転中心の円軌道上で回転移動させる。上記補正テーブルは、前記2次元X線撮影手段に起因する前記画像の歪みを補正するための補正定数を格納する。上記変換手段は、上記補正テーブルに格納される補正定数に基づき、上記2次元X線撮影手段が撮影した画像を前記2次元検出手段に予め定めた直交座標に変換する。
【0004】
上記補正テーブル作成手段は、予め定められた手順に基づき上記補正テーブルを作成する。この補正テーブル作成手段は、直交座標が回転中心軸と平行および垂直となる変換定数を作成する座標軸補正テーブル作成手段を具備する。この従来のX線断層撮影装置によれば、2次元X線検出手段で撮影した画像を回転中心軸に平行かつ、ミッドプレーンに垂直な画像に補正することができる(特許文献1、第0125段落)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平9-173330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来のX線断層撮影装置は、上記回転手段として、一般に医療用のCT装置で使用される円環状の高精度な走査駆動手段を使用することを前提としている(特許文献1、第0052段落、第0056段落、図1)。そのため、この従来の装置は、産業用ロボットに使用されるような一般的なモータを使用することができず、装置全体のコストが増加する。また、この従来の装置は、被検体とX線源および2次元X線撮影手段との間に回転中心軸に平行な方向の位置ずれが発生した場合に、画像の補正が困難になる。
【0007】
本開示は、一般的なモータでX線撮影装置と被写体とを相対的に移動させて2次元X線画像を撮影したときに、X線撮影装置と被写体との相対的な位置と姿勢の関係が基準状態からずれても、そのずれを補正したX線画像を取得可能なX線画像取得方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、X線撮影装置と、回転対称の3次元形状を有しかつ対称軸に直交する径方向の寸法が異なる複数の部分を有する較正用被写体とを対向させて配置し、モータを含む回転装置によって前記較正用被写体と前記X線撮影装置とを前記較正用被写体の前記対称軸に一致させた回転中心軸を中心として相対的に回転させ、前記較正用被写体の2次元形状が同一となる複数の撮影位置から、前記X線撮影装置によって前記較正用被写体の複数の較正用画像を撮影する工程と、前記X線撮影装置と前記較正用被写体の3次元直交座標系を一致させた基準状態で前記X線撮影装置によって撮影される前記較正用被写体の基準画像の特徴量と、各々の前記較正用画像の特徴量とを比較して、各々の前記較正用画像を前記基準画像に一致させるための画像補正量を算出して記録する工程と、前記較正用被写体と同様に被写体と前記X線撮影装置とを対向させて配置し、前記回転装置によって、前記回転中心軸を中心として前記X線撮影装置と前記被写体とを相対的に回転させ、前記複数の撮影位置から前記X線撮影装置によって前記被写体の複数のX線画像を撮影する工程と、前記画像補正量に基いて前記被写体の前記複数のX線画像の各々を補正した複数の補正画像を取得する工程と、を有することを特徴とするX線画像取得方法である。
【0009】
上記一態様に係るX線画像取得方法は、前記複数の補正画像を用いて前記被写体の3次元CT画像を構成する工程を有してもよい。
【0010】
上記一態様に係るX線画像取得方法において、前記回転装置は、前記較正用被写体または前記被写体を支持した状態で前記回転中心軸を中心として回転する回転支持台と、前記X線撮影装置を前記較正用被写体または前記被写体に対向させて配置する産業用ロボットと、を備えていてもよい。
【0011】
上記一態様に係るX線画像取得方法において、前記回転装置は、前記較正用被写体または前記被写体を前記回転中心軸の上に配置するための載置台と、前記X線撮影装置を前記載置台の上に配置された前記較正用被写体または前記被写体に対向させて前記較正用被写体または前記被写体の周囲で前記回転中心軸を中心として回転させる産業用ロボットと、を備えていてもよい。
【0012】
上記一態様に係るX線画像取得方法において、前記回転装置は、前記較正用被写体または前記被写体を保持して前記回転中心軸の上に配置するための第1の産業用ロボットと、前記X線撮影装置を保持して前記較正用被写体または前記被写体に対向させる第2の産業用ロボットと、を備え、前記第1の産業用ロボットと前記第2の産業用ロボットの少なくとも一方によって前記回転中心軸を中心として前記X線撮影装置と前記較正用被写体または前記被写体とを相対的に回転させてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本開示の上記各態様によれば、一般的なモータでX線撮影装置と被写体とを相対的に移動させて2次元X線画像を撮影したときに、X線撮影装置と被写体との相対的な位置と姿勢の関係が基準状態からずれても、そのずれを補正したX線画像を取得可能なX線画像取得方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示のX線画像取得方法の一実施形態に係る装置構成を示す概略構成図。
図2図1に示すX線画像取得装置を構成する制御装置の機能ブロック図。
図3】本開示に係るX線画像取得方法の一実施形態を示すフロー図。
図4A図1のX線撮影装置と較正用被写体の基準状態を示す斜視図。
図4B図4AのX線撮影装置によって撮影された基準画像。
図5A図1のX線撮影装置と較正用被写体の基準状態からのずれを示す斜視図。
図5B図5AのX線撮影装置によって撮影された較正用画像。
図6A図1のX線撮影装置と較正用被写体の基準状態からのずれを示す斜視図。
図6B図6AのX線撮影装置によって撮影された較正用画像。
図7図1のX線画像取得装置の変形例を示す概略構成図。
図8図1のX線画像取得装置の変形例を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本開示に係るX線画像取得方法の実施形態を説明する。
【0016】
図1は、本開示のX線画像取得方法の一実施形態に係る装置構成の一例を示す概略構成図である。図2は、図1に示すX線画像取得装置1を構成する制御装置4の機能ブロック図である。図3は、本開示に係るX線画像取得方法の一実施形態を示すフロー図である。
【0017】
図3に示す本実施形態のX線画像取得方法Pは、たとえば、図1に示すようなX線画像取得装置1によって実施することができる。X線画像取得装置1は、たとえば、X線撮影装置2と、回転装置3と、制御装置4と、表示装置5と、を備えている。
【0018】
X線撮影装置2は、たとえば、X線発生器21とX線検出器22とを含む。X線発生器21は、たとえば、制御装置4から入力される制御信号CS21によって制御され、X線検出器22との間に配置される被写体Oに円錐状のX線ビーム(コーンビーム)を照射する。X線検出器22は、たとえば、制御装置4から入力される制御信号CS22によって制御され、被写体Oを透過したX線を検出し、検出したX線に応じた被写体OのX線画像RIを制御装置4へ出力する。
【0019】
X線検出器22は、たとえば、フラットパネルディテクター、イメージインテンシファイアとCMOSセンサなどの可視光センサとの組み合わせ、または、X線ラインセンサなどによって構成することができる。X線発生器21およびX線検出器22は、たとえば、X線発生器21およびX線検出器22のそれぞれの動作状態AS21,AS22を制御装置4へ出力する。
【0020】
回転装置3は、たとえば、回転支持台31と産業用ロボット32とのうち、少なくとも一方を含む。図1に示す例において、回転装置3は、一つの回転支持台31と二台の産業用ロボット32によって構成されている。回転支持台31および各々の産業用ロボット32は、医療用のCT装置で使用されるような高精度な走査駆動装置ではなく、一般的な産業用モータMによって駆動される。
【0021】
回転支持台31は、たとえば、被写体Oを支持する支持台311を、回転駆動部312に内蔵されたモータMにより、支持台311に直交する回転中心軸Aを中心として回転させる。回転駆動部312は、たとえば、制御装置4から制御信号CS31が入力されて支持台311を回転させ、角度センサによって検出した支持台311の回転角度θ31を制御装置4へ出力する。
【0022】
産業用ロボット32は、たとえば、4軸から7軸の垂直多関節ロボットであり、各関節にモータMおよびエンコーダが内蔵されている。図1に示す例において、第1の産業用ロボット32Aの先端のアタッチメントにX線撮影装置2のX線検出器22が取り付けられ、第2の産業用ロボット32Bの先端のアタッチメントにX線撮影装置2のX線発生器21が取り付けられている。各々の産業用ロボット32A,32Bは、制御装置4から制御信号CS32A,CS32Bが入力され、制御装置4へ各関節の回転角度θ32A,θ32Bを出力する。
【0023】
制御装置4は、たとえば、図示を省略する中央処理装置(CPU)と、メモリと、タイマと、入出力部を含む一つ以上のマイクロコントローラによって構成されている。制御装置4は、たとえば、ハードディスクなどの記憶装置を含んでもよい。制御装置4は、たとえば、図2に示すように、X線撮影装置制御部41と、回転装置制御部42と、画像処理部43と、を有している。図2に示す制御装置4の各部は、たとえば、メモリや記憶装置に記憶されたプログラムをCPUによって実行することによって実現される制御装置4の各機能を表している。
【0024】
X線撮影装置制御部41は、X線撮影装置2の動作を制御する。X線撮影装置制御部41は、たとえば、X線発生器制御部411と、X線検出器制御部412とを含む。X線発生器制御部411は、たとえば、X線発生器21から入力された動作状態AS21に基いて、X線発生器21へ制御信号CS21を出力して、X線発生器21によるX線の照射開始と停止および出力などを制御する。X線検出器制御部412は、X線検出器22から入力された動作状態AS22に基いて、X線検出器22へ制御信号CS22を出力して、X線検出器22によるX線の検出条件などを制御する。
【0025】
回転装置制御部42は、たとえば、回転支持台制御部421と、第1ロボット制御部422Aと、第2ロボット制御部422Bと、を有している。回転支持台制御部421は、回転支持台31から入力された支持台311の回転角度θ31に基いて、回転駆動部312へ制御信号CS31を出力し、支持台311の回転を制御する。第1および第2ロボット制御部422A,422Bは、それぞれ、第1および第2の産業用ロボット32A,32Bから入力された各関節の角度θ32A,θ32Bなどの情報に基いて、これらのロボットへ制御信号CS32A,CS32Bを出力し、これらのロボットの動作を制御する。
【0026】
画像処理部43は、たとえば、X線検出器22から出力されたX線画像RIを入力とし、X線画像RIを補正した補正画像CRIを取得する。また、画像処理部43は、たとえば、取得した補正画像CRIに基いて3次元CT画像3DRIを構成し、表示装置5へ出力する。画像処理部43は、たとえば、X線画像収集部431と、X線画像処理部432と、補正量算出部433と、補正量記憶部434と、X線画像補正部435と、3次元画像構成部436とを有している。これら画像処理部43の各部の動作については後述する。
【0027】
次に、前述のX線画像取得装置1を用いた本実施形態のX線画像取得方法Pを説明する。図3に示すように、本実施形態のX線画像取得方法Pが開始されると、較正用画像を撮影する工程P1が実施される。この工程P1では、たとえば、X線撮影装置2と較正用被写体CO(図4A参照)とを対向させて配置し、X線撮影装置2によって較正用被写体COのX線画像を撮影して較正用画像CIを取得する。
【0028】
図4Aは、図1のX線撮影装置2と較正用被写体COの基準状態を示す斜視図である。図4Bは、図4AのX線撮影装置2によって撮影された基準画像SIの一例を示す画像図である。工程P1では、まず、X線撮影装置2と較正用被写体COとを対向させて配置する。より具体的には、たとえば、X線画像取得装置1の回転支持台31の支持台311の上に、較正用被写体COを載置して固定する。
【0029】
ここで、較正用被写体COは、たとえば、X線画像を取得可能な所定のX線透過率またはX線吸収係数を有する金属などの素材によって形成され、回転対称の3次元形状を有している。また、較正用被写体COは、対称軸に直交する径方向の寸法が異なる複数の部分を有している。図4Aおよび図4Bに示す例において、較正用被写体COは、一方の端部と他方の端部の直径が異なり、対称軸方向の中央部に径方向の段差を有する円柱状の形状を有している。較正用被写体COの3次元形状および寸法などの情報は、たとえば、あらかじめ、画像処理部43を構成するメモリや記憶装置に記憶されている。
【0030】
なお、較正用被写体COの形状は、回転対称の3次元形状を有しかつ対称軸に直交する径方向の寸法が異なる複数の部分を有するものであれば、特に限定されない。較正用被写体COの形状は、直径が異なる複数の部分を有する円柱以外にも、たとえば、円筒状、多角形の柱状または筒状、一つまたは複数の中実または中空の球状、もしくは複数の凹部と凸部を有する形状などを採用することが可能である。
【0031】
較正用被写体COは、たとえば、回転対称の3次元形状の対称軸を、回転支持台31の支持台311の回転中心軸Aと一致させるように、回転支持台31の支持台311に支持および固定される。なお、X線撮影装置2による較正用画像CIの撮影時に回転支持台31を回転させない場合や回転しない支持台を用いる場合には、較正用被写体COの対称軸と、較正用被写体COの周囲を回転するX線撮影装置2の回転中心軸Aとを一致させる。
【0032】
次に、図4Aに示すように、X線撮影装置2のX線発生器21およびX線検出器22と較正用被写体COとを対向させる。より具体的には、制御装置4の第1ロボット制御部422Aにより第1の産業用ロボット32Aの動作を制御し、X線発生器21を移動させて較正用被写体COに対向させる。また、制御装置4の第2ロボット制御部422Bにより第2の産業用ロボット32Bの動作を制御し、X線発生器21を移動させて間に較正用被写体COを介してX線発生器21に対向させる。
【0033】
ここで、図4Aは、X線撮影装置2の3次元直交座標系と、較正用被写体COの3次元直交座標系とを一致させた基準状態を示している。また、図4Bは、図4Aに示す基準状態でX線撮影装置2によって撮影される較正用被写体COのX線画像である基準画像SIを示している。すなわち、基準状態は、X線撮影装置2における幅方向(X軸方向)、奥行方向(Y軸方向)、および高さ方向(Z軸方向)と、較正用被写体COにおける幅方向(X軸方向)、奥行方向(Y軸方向)、および高さ方向(Z軸方向)とが平行であり、各々の座標原点が一致した状態である。
【0034】
このような基準状態で、制御装置4のX線発生器制御部411およびX線検出器制御部412によってX線撮影装置2のX線発生器21およびX線検出器22の動作を制御して、較正用被写体COのX線画像である基準画像SIを撮影する。なお、較正用被写体COの基準画像SIは、較正用被写体COの3次元形状情報と、基準状態のX線撮影装置2と較正用被写体COの位置関係とに基いて、演算により取得することも可能である。較正用被写体COの基準画像SIは、たとえば、制御装置4のX線画像収集部431へ入力され、画像処理部43を構成するメモリや記憶装置に記憶される。
【0035】
次に、モータMを含む回転装置3によって、較正用被写体COとX線撮影装置2とを回転中心軸Aを中心として相対的に回転させる。より具体的には、制御装置4の回転支持台制御部421によって回転支持台31の支持台311を回転させ、較正用被写体COを較正用被写体COの対称軸に一致させた回転支持台31の回転中心軸Aを中心に回転させる。または、回転支持台31の支持台311を回転させず、制御装置4の第1ロボット制御部422Aおよび第2ロボット制御部422Bによって第1および第2の産業用ロボット32A,32Bの動作を制御して、X線撮影装置2を較正用被写体COの周囲で回転中心軸Aを中心に回転させる。
【0036】
そして、較正用被写体COの2次元形状が同一となる複数の撮影位置から、X線撮影装置2によって較正用被写体COの複数の較正用画像CIを撮影する。X線撮影装置2のX線検出器22は、撮影した複数の較正用画像CIを制御装置4の画像処理部43へ出力する。画像処理部43は、たとえば、X線検出器22からX線画像収集部431へ入力された複数の較正用画像CIを、画像処理部43を構成するメモリや記憶装置に記憶させる。以上により、図3に示す工程P1が終了する。
【0037】
その後、図3に示すように、画像補正量を算出して記録する工程P2が実施される。この工程P2では、前述の基準画像SIの特徴量と、複数の較正用画像CIの特徴量とを比較して、各々の較正用画像CIを基準画像SIに一致させるための画像補正量を算出して記録する。より具体的には、画像処理部43は、たとえば、X線画像収集部431により、基準画像SIの特徴量と、各々の較正用画像CIの特徴量とを算出する。
【0038】
ここで、基準画像SIは、前述のように、X線撮影装置2と較正用被写体COの3次元直交座標系を一致させた図4Aに示すような基準状態において、X線撮影装置2によって撮影される、較正用被写体COの図4Bに示すようなX線画像である。X線画像収集部431は、基準画像SIおよび各々の較正用画像CIの特徴量として、較正用被写体COの画像の外形の輪郭、中空の較正用被写体COの内壁の輪郭、または凹凸や段差などの形状、寸法、および位置を算出する。
【0039】
図5Aおよび図5Bならびに図6Aおよび図6Bは、それぞれ、X線撮影装置2と較正用被写体COとの位置関係に基準状態からのずれが生じたときの斜視図および較正用画像CIを示している。
【0040】
図5Aに示すように、X線撮影装置2と較正用被写体COとをモータMを含む回転装置3によって回転中心軸Aを中心として相対的に回転させた結果、較正用被写体COがY軸を中心に回転する角度ずれが生じたとする。この場合、図5Bに示すように、較正用画像CIにおいて、較正用被写体COの画像は、画像面に垂直なY軸を中心として所定の角度だけ、基準画像SIにおける較正用被写体COの画像からずれた状態になる。
【0041】
また図6Aに示すように、X線撮影装置2と較正用被写体COとをモータMを含む回転装置3によって回転中心軸Aを中心として相対的に回転させた結果、較正用被写体COがX軸を中心に回転する角度ずれが生じたとする。この場合、図5Bに示すように、較正用画像CIにおいて、較正用被写体COの画像は、Z軸に平行な上下方向において、X軸に平行な左右方向の寸法が、画像の上方側ほど縮小された状態になる。
【0042】
X線画像処理部432は、たとえば、図4Bに示すような基準画像SIにおける較正用被写体COの特徴量と、回転中心軸Aを中心とする円軌道上の複数の撮影位置で撮影された図5Bおよび図6Bのような複数の較正用画像CIの各々の特徴量とを算出する。そして、補正量算出部433は、たとえば、X線画像処理部432によって算出された基準画像SIの特徴量と、各々の較正用画像CIの特徴量とを比較し、各々の較正用画像CIを基準画像SIに一致させるための画像補正量を算出する。
【0043】
なお、X線画像処理部432および補正量算出部433は、較正用画像CIにおける3次元直交座標系の各軸方向の較正用被写体COのずれについても、同様に特徴量を算出して画像補正量を算出することが可能である。さらに、補正量記憶部434は、補正量算出部433によって算出された各々の較正用画像CIの画像補正量を、画像処理部43を構成するメモリや記憶装置に記憶させる。以上により、図3に示す工程P2が終了する。その後、図1および図3に示すように、被写体OのX線画像RIを撮影する工程P3が実施される。
【0044】
この工程P3では、まず、較正用被写体COと同様に、たとえば、自動車部品などの被写体OとX線撮影装置2とを対向させて配置する。より具体的には、較正用被写体COに替えて、被写体Oを回転支持台31の支持台311の上に載置する。そして、制御装置4の回転装置制御部42により第1および第2の産業用ロボット32A,32Bの動作を制御して、図4Aに示す較正用被写体COと同様に、被写体OとX線撮影装置2とを対向させて配置する。
【0045】
その後、回転装置3によって、回転中心軸Aを中心としてX線撮影装置2と被写体Oとを相対的に回転させ、X線撮影装置2によって被写体Oの複数のX線画像RIを撮影する。より詳細には、たとえば、制御装置4の回転装置制御部42により回転支持台31の回転駆動部312の回転または第1および第2の産業用ロボット32A,32Bの回転動作を制御して、回転中心軸Aを中心としてX線撮影装置2と被写体Oとを相対的に回転させる。
【0046】
さらに、制御装置4のX線撮影装置制御部41によってX線撮影装置2を制御して、各々の較正用画像CIを取得した各々の撮影位置から、X線撮影装置2によって被写体OのX線画像RIを撮影する。X線検出器22は、撮影された複数のX線画像RIを、画像処理部43のX線画像収集部431へ出力する。以上により、図3に示す工程P3が終了する。その後、図3に示す補正画像を取得する工程P4が実施される。
【0047】
この工程P4では、たとえば、画像処理部43のX線画像補正部435により、前述の工程P2で補正量記憶部434に記録された画像補正量に基いて、被写体Oの複数のX線画像RIの各々を補正した複数の補正画像CRIを取得する。より具体的には、X線画像補正部435は、たとえば、図5Bに示す較正用画像CIを撮影した撮影位置では、較正用被写体COの較正用画像CIを回転させて基準画像SIに一致させる画像補正量を用い、被写体OのX線画像RIを補正して補正画像CRIを取得する。
【0048】
また、X線画像補正部435は、たとえば、図6Bに示す較正用画像CIを撮影した撮影位置では、較正用被写体COの較正用画像CIの縮小された部分を拡大させて基準画像SIに一致させる画像補正量を用い、被写体OのX線画像RIを補正して補正画像CRIを取得する。X線画像補正部435は、被写体Oの各々の撮影位置に対応する画像補正量によって各々のX線画像RIを補正することによって取得した複数の補正画像CRIを、たとえば、3次元画像構成部436へ出力する。
【0049】
以上により、図3に示す工程P4が終了する。その後、たとえば、3次元コンピュータ断層撮影(computed tomography:CT)画像を構成する工程P5が実施される。この工程P5では、たとえば、画像処理部43の3次元画像構成部436により、複数の補正画像CRIを用いて被写体Oの3次元CT画像3DRIを構成する。3次元画像構成部436は、たとえば、構成した3次元CT画像3DRIを、表示装置5へ出力する。
【0050】
表示装置5は、たとえば、液晶表示装置または有機EL表示装置などによって構成され、3次元画像構成部436から入力された被写体Oの3次元CT画像3DRIを表示する。以上により、図3に示す工程P5が終了し、本実施形態のX線画像取得方法Pの全工程が終了する。
【0051】
以上のように、本実施形態のX線画像取得方法Pは、複数の較正用画像CIを撮影する工程P1と、画像補正量を算出して記録する工程P2と、被写体Oの複数のX線画像RIを撮影する工程P3と、複数の補正画像CRIを取得する工程P4と、を有している。工程P1では、X線撮影装置2と、回転対称の3次元形状を有しかつ対称軸に直交する径方向の寸法が異なる複数の部分を有する較正用被写体COとを対向させて配置する。そして、モータMを含む回転装置3によって較正用被写体COとX線撮影装置2とを較正用被写体COの対称軸に一致させた回転中心軸Aを中心として相対的に回転させる。そして、較正用被写体COの2次元形状が同一となる複数の撮影位置から、X線撮影装置2によって較正用被写体COの複数の較正用画像CIを撮影する。工程P2では、X線撮影装置2と較正用被写体COの3次元直交座標系を一致させた基準状態でX線撮影装置2によって撮影される較正用被写体COの基準画像SIの特徴量と、各々の較正用画像CIの特徴量とを比較する。そして、各々の較正用画像CIを基準画像SIに一致させるための画像補正量を算出して記録する。工程P3では、較正用被写体COと同様に被写体OとX線撮影装置2とを対向させて配置する。そして、回転装置3によって、回転中心軸Aを中心としてX線撮影装置2と被写体Oとを相対的に回転させ、上記複数の撮影位置からX線撮影装置2によって被写体Oの複数のX線画像RIを撮影する。工程P4では、上記画像補正量に基いて被写体Oの前記複数のX線画像RIの各々を補正した複数の補正画像CRIを取得する。
【0052】
本実施形態のX線画像取得方法Pでは、X線撮影装置2の回転支持台31や産業用ロボット32に用いられるような一般的なモータMを使用して、X線撮影装置2と被写体Oとを回転中心軸Aを中心として相対的に回転させて2次元X線画像を撮影する。そのため、医療用のCT装置で使用される高精度な走査駆動装置とは異なり、X線撮影装置2と被写体Oとの相対的な位置と姿勢の関係が基準状態からずれる場合がある。このような場合でも、本実施形態のX線画像取得方法Pでは、あらかじめ較正用被写体COを用いて撮影位置ごとに画像補正量を求めて記録しておくことができる。
【0053】
したがって、本実施形態のX線画像取得方法Pによれば、各々の撮影位置で撮影されてモータMに起因するずれを含む被写体OのX線画像RIを、画像補正量を用いてずれのない補正画像CRIに補正することができる。これにより、一般的な産業用のモータMを使用してX線画像取得装置1のコストを低減することができ、X線撮影装置2と被写体Oとの間に回転中心軸Aに平行な方向の位置ずれが発生した場合でも、X線画像RIを補正した補正画像CRIを取得することが可能になる。
【0054】
また、本実施形態のX線画像取得方法Pは、複数の補正画像CRIを用いて被写体Oの3次元CT画像3DRIを構成する工程P5を有している。これにより、一般的なモータMを使用して、X線撮影装置2と被写体Oとの相対的な位置と姿勢の関係が基準状態からずれても、そのずれによる影響が補正された補正画像CRIを使用して3次元CT画像3DRIを構成することが可能になる。
【0055】
また、本実施形態のX線画像取得方法Pにおいて、回転装置3は、回転支持台31と産業用ロボット32とを備えている。回転支持台31は、較正用被写体COまたは被写体Oを支持した状態で回転中心軸Aを中心として回転する。産業用ロボット32は、X線撮影装置2を較正用被写体COまたは被写体Oに対向させて配置する。これにより、医療用のCT装置で使用される高精度な走査駆動装置を使用する場合と比較して、X線撮影装置2を設置する位置の自由度が飛躍的に向上し、X線画像RIを撮影可能な被写体Oの大きさおよび形状の制約が大幅に緩和される。
【0056】
また、本実施形態のX線画像取得方法Pは、前述のように、必ずしも回転支持台31によって較正用被写体COまたは被写体OをX線撮影装置2に対して回転させなくてもよい。すなわち、回転装置3は、較正用被写体COまたは被写体Oを回転中心軸Aの上に配置するための載置台と、X線撮影装置2を載置台の上に配置された較正用被写体COまたは被写体Oに対向させる産業用ロボット32と、を備えることができる。この場合、産業用ロボット32は、X線撮影装置2を較正用被写体COまたは被写体Oの周囲で回転中心軸Aを中心として回転させる。これにより、回転支持台31で回転させることが困難な大型の被写体OのX線画像RIを撮影することが可能になる。
【0057】
図7は、図1のX線画像取得装置1の変形例を示す概略構成図である。図1に示すX線画像取得装置1では、回転装置3が一台の回転支持台31と二台の産業用ロボット32とによって構成されている例を説明したが、回転装置3は、たとえば、一台の回転支持台31と一台の産業用ロボット32によって構成することも可能である。この場合、回転装置3は、X線撮影装置2のX線発生器21とX線検出器22とを対向させた状態で支持するブラケット33を備えることができる。
【0058】
ブラケット33は、たとえば、産業用ロボット32の先端のアタッチメントに取り付けられ、較正用被写体COまたは被写体Oの上方に支持される。この状態で、制御装置4によって回転支持台31を回転させるか、または、制御装置4によって産業用ロボット32の先端のアタッチメントを回転させて、較正用被写体COまたは被写体Oと産業用ロボット32とを回転中心軸Aを中心として相対的に回転させる。
【0059】
図7の変形例に係るX線画像取得装置1を用いることで、図1に示すX線画像取得装置1を使用する前述の実施形態に係るX線画像取得方法Pと比較して、較正用被写体COおよび被写体OとX線撮影装置2との相対位置の調整が容易になる。これにより、被写体Oの一部または複数個所のX線画像RIを撮影する場合に、撮像系の調整工数などの負担が軽減される。また、回転支持台31を回転しない載置台に置き換え、産業用ロボット32とブラケット33のみで回転装置3を構成することも可能になる。
【0060】
図8は、図1のX線画像取得装置1の他の変形例を示す概略構成図である。この変形例に係るX線画像取得装置1において、回転装置3は、第1の産業用ロボット32Aと第2の産業用ロボット32Bを備え、回転支持台31を有しない。第1の産業用ロボット32Aは、較正用被写体COまたは被写体Oを保持して回転中心軸Aの上に配置する。第2の産業用ロボット32Bは、図7に示す変形例と同様に、ブラケット33を介してX線撮影装置2を保持して較正用被写体COまたは被写体Oに対向させる。回転装置3は、第1の産業用ロボット32Aと第2の産業用ロボット32Bの少なくとも一方によって、回転中心軸Aを中心としてX線撮影装置2と較正用被写体COまたは被写体Oとを相対的に回転させる。
【0061】
本実施形態のX線画像取得方法Pは、図8に示す変形例に係るX線画像取得装置1を使用することで、制御装置4によって第1の産業用ロボット32Aを制御して、被写体Oのピッキング、X線画像RIの撮影、および撮影後の被写体Oの搬送を自動化することができる。したがって、被写体OのX線画像RIおよび補正画像CRIの取得効率を向上させることが可能になる。
【0062】
以上説明したように、本実施形態およびその変形例によれば、一般的なモータMでX線撮影装置2と被写体Oとを相対的に移動させて2次元のX線画像RIを撮影したときに、X線撮影装置2と被写体Oとの相対的な位置と姿勢の関係が基準状態からずれても、そのずれを補正した補正画像CRIを取得可能なX線画像取得方法Pを提供することができる。したがって、X線画像取得装置1のコストを低減しつつ、回転中心軸Aに平行な方向のずれを含むモータMに起因する被写体OのX線画像RIのずれを補正した補正画像CRIを取得することが可能になる。
【0063】
以上、図面を用いて本開示に係るX線画像取得方法の実施形態とその変形例を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態および変形例に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本開示に含まれるものである。
【符号の説明】
【0064】
2 X線撮影装置
3 回転装置
31 回転支持台(載置台)
32 産業用ロボット
32A 第1の産業用ロボット
32B 第2の産業用ロボット
3DRI 3次元CT画像
A 回転中心軸
CI 較正用画像
CO 較正用被写体
CRI 補正画像
M モータ
O 被写体
P X線画像取得方法
P1 較正用画像を撮影する工程
P2 画像補正量を算出して記録する工程
P3 被写体のX線画像を撮影する工程
P4 補正画像を取得する工程
P5 3次元CT画像を構成する工程
RI X線画像
SI 基準画像
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8