(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-22
(45)【発行日】2025-07-30
(54)【発明の名称】バッテリ貸出システム
(51)【国際特許分類】
B60K 1/04 20190101AFI20250723BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20250723BHJP
B60L 58/18 20190101ALI20250723BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20250723BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20250723BHJP
B60L 53/80 20190101ALI20250723BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20250723BHJP
G01C 21/36 20060101ALI20250723BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20250723BHJP
【FI】
B60K1/04 A
B60L15/20 J ZHV
B60L58/18
B60L50/16
B60L50/60
B60L53/80
B60L58/12
G01C21/36
H02J7/00 P
(21)【出願番号】P 2022107862
(22)【出願日】2022-07-04
【審査請求日】2024-05-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】花輪 篤
(72)【発明者】
【氏名】堀田 信
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 啓太
(72)【発明者】
【氏名】久下 智司
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-190480(JP,A)
【文献】特開2019-202559(JP,A)
【文献】特開2022-72124(JP,A)
【文献】特許第5113950(JP,B1)
【文献】国際公開第2018/061415(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102019217818(DE,A1)
【文献】特開2008-29071(JP,A)
【文献】特開平11-341608(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0253463(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0060160(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/04,
B60L 15/20,58/18,50/16,
B60L 50/60,53/80,58/12,
G01C 21/36,
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動車両に電力を供給する複数のバッテリのうち少なくとも1つを前記電動車両に貸し出すバッテリ貸出システムであって、
前記電動車両の目的地に関する情報を取得する取得部と、
前記電動車両が前記目的地に到着するのに必要な電力量を推定する推定部と、
選択部と、を備え
、
前記複数のバッテリの各々は、前記電動車両のトランクルームに積載可能であって、前記トランクルームに積載された状態で、前記電動車両に搭載されている車両バッテリと電気的に接続され、
前記選択部は、推定された前記必要な電力量に基づいて、前記複数のバッテリのうち前記電動車両に貸し出すバッテリを選択する、バッテリ貸出システム。
【請求項2】
前記複数のバッテリは、第1バッテリと、第2バッテリとを含み、
前記電動車両の残りの充電量と前記第1バッテリの充電量との合計は、前記必要な電力量以上であり、
前記第2バッテリは、前記第1バッテリよりも大きい充電量を有し、
前記選択部は、前記第1バッテリおよび前記第2バッテリが貸し出し可能な場合に、前記第1バッテリを前記電動車両に貸し出すバッテリとして選択する、請求項1に記載のバッテリ貸出システム。
【請求項3】
前記推定部は、前記電動車両の走行状態および走行環境と走行に要した電力との関係に関する複数のデータが蓄積されているビッグデータを用いて、少なくとも前記目的地までの走行経路に基づいて前記必要な電力量を推定する、請求項1または2に記載のバッテリ貸出システム。
【請求項4】
前記推定部は、前記ビッグデータに基づいて、電力消費が抑制される前記目的地までの走行経路を算出するとともに、前記電力
消費が抑制される走行経路を前記電動車両が走行した場合の前記必要な電力量を推定する、請求項3に記載のバッテリ貸出システム。
【請求項5】
前記電動車両は、エンジンを備えるハイブリッド車両を含み、
前記目的地は、排気ガス量が規制される規制区域の出口を含み、
前記推定部は、前記規制区域の入口から前記出口までの走行経路を前記電動車両が走行するのに必要な電力量を推定し、
前記選択部は、推定された前記必要な電力量に基づいて、前記入口において貸し出し可能な前記複数のバッテリのうち前記電動車両に貸し出すバッテリを選択する、請求項1または2に記載のバッテリ貸出システム。
【請求項6】
前記選択部は、推定された前記必要な電力量に基づいて、自走または牽引による走行が可能な複数のバッテリトレーラのうち少なくとも1つを選択する、請求項1または2に記載のバッテリ貸出システム。
【請求項7】
前記電動車両は、走行時に回生エネルギーを発生させるように構成されており、
前記目的地は、峠路の第1麓を含み、
前記推定部は、前記峠路のうち前記第1麓とは反対側の第2麓から前記第1麓までの走行経路を前記電動車両が走行するのに必要な電力量を推定し、
前記選択部は、推定された前記必要な電力量に基づいて、前記第2麓において貸し出し可能な前記複数のバッテリのうち前記電動車両に貸し出すバッテリを選択する、請求項1または2に記載のバッテリ貸出システム。
【請求項8】
前記電動車両は、走行時に回生エネルギーを発生させるように構成されており、
前記目的地は、高地と低地とを繋ぐ坂路の前記低地を含み、
前記推定部は、前記高地から前記低地までの走行経路を前記電動車両が走行するのに必要な電力量を推定し、
前記選択部は、推定された前記必要な電力量に基づいて、前記高地において貸し出し可能な前記複数のバッテリのうち前記電動車両に貸し出すバッテリを選択する、請求項1または2に記載のバッテリ貸出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バッテリ貸出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許第5113950号公報(特許文献1)には、電動車両に離脱可能に接続されるバッテリトレーラの貸し出しを行うバッテリトレーラシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、電動車両が必要としている電力量に見合っていないバッテリトレーラが貸し出される場合がある。具体的には、電動車両が必要としている電力量に対して充電量が過剰に大きいバッテリトレーラが貸し出される場合などがある。したがって、電動車両が必要とする電力量に見合った充電量を有するバッテリトレーラ(バッテリ)を貸し出すことが望まれている。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、電動車両が必要とする電力量に見合った充電量を有するバッテリを貸し出すことが可能なバッテリ貸出システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一の局面に係るバッテリ貸出システムは、電動車両に電力を供給する複数のバッテリのうち少なくとも1つを電動車両に貸し出すバッテリ貸出システムであって、電動車両の目的地に関する情報を取得する取得部と、電動車両が目的地に到着するのに必要な電力量を推定する推定部と、推定された上記必要な電力量に基づいて、複数のバッテリのうち電動車両に貸し出すバッテリを選択する選択部と、を備える。
【0007】
本開示の一の局面に係るバッテリ貸出システムでは、上記のように、目的地に到着するのに必要な電力量の推定値に基づいて電動車両に貸し出すバッテリが選択される。これにより、推定された上記必要な電力量よりも過剰に大きい充電量のバッテリが選択されるのを抑制することができる。その結果、電動車両が必要とする電力量に見合った充電量を有するバッテリを貸し出すことができる。
【0008】
上記一の局面に係るバッテリ貸出システムにおいて、好ましくは、複数のバッテリは、第1バッテリと、第2バッテリとを含み、電動車両の残りの充電量と第1バッテリの充電量との合計は、上記必要な電力量以上であり、第2バッテリは、第1バッテリよりも大きい充電量を有する。選択部は、第1バッテリおよび第2バッテリが貸し出し可能な場合に、第1バッテリを電動車両に貸し出すバッテリとして選択する。このように構成すれば、第1バッテリよりも充電量が大きい第2バッテリが選択されるのを防止することができるので、第2バッテリを必要とするユーザに第2バッテリを貸し出すことができる。
【0009】
上記一の局面に係るバッテリ貸出システムにおいて、好ましくは、推定部は、電動車両の走行状態および走行環境と走行に要した電力との関係に関する複数のデータが蓄積されているビッグデータを用いて、少なくとも目的地までの走行経路に基づいて必要な電力量を推定する。このように構成すれば、ビッグデータを用いることにより、目的地までの走行経路を走行するのに必要な電力量をより正確に推定することができる。
【0010】
この場合、好ましくは、推定部は、ビッグデータに基づいて、電力消費が抑制される目的地までの走行経路を算出するとともに、上記電力制御が抑制される走行経路を電動車両が走行した場合の必要な電力量を推定する。このように構成すれば、ビッグデータを用いることにより電力消費が抑制される目的地までの走行経路をより正確に算出することができる。その結果、推定される上記必要な電力量をより低減することができる。
【0011】
上記一の局面に係るバッテリ貸出システムにおいて、好ましくは、電動車両は、エンジンを備えるハイブリッド車両を含む。目的地は、排気ガス量が規制される規制区域の出口を含む。推定部は、規制区域の入口から出口までの走行経路を電動車両が走行するのに必要な電力量を推定する。選択部は、推定された上記必要な電力量に基づいて、入口において貸し出し可能な複数のバッテリのうち電動車両に貸し出すバッテリを選択する。ここで、規制区域では、排気ガス量が規制されていることにより電動車両の走行に電力が使用される頻度が高くなるので、電動車両の電力の消費量が比較的大きくなる。そこで、規制区域の入口において、規制区域の走行経路を走行するのに必要な電力量に基づいたバッテリが選択されることにより、規制区域内において電動車両のバッテリ切れが生じるのを抑制することができる。
【0012】
上記一の局面に係るバッテリ貸出システムにおいて、好ましくは、選択部は、推定された上記必要な電力量に基づいて、自走または牽引による走行が可能な複数のバッテリトレーラのうち少なくとも1つを選択する。このように構成すれば、電動車両が必要とする電力量に見合った充電量を有するバッテリトレーラを貸し出すことができる。
【0013】
上記一の局面に係るバッテリ貸出システムにおいて、好ましくは、選択部は、推定された上記必要な電力量に基づいて、電動車両に積載可能な複数のバッテリ装置のうち少なくとも1つを選択する。このように構成すれば、電動車両が必要とする電力量に見合った充電量を有するバッテリ装置を貸し出すことができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、電動車両が必要とする電力量に見合った充電量を有するバッテリを貸し出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一実施形態によるバッテリ貸出システムの構成を示す図である。
【
図2】一実施形態による電動車両とバッテリトレーラとを示す図である。
【
図3】一実施形態による電動車両とバッテリトレーラとの間の電力授受に関するシステムの詳細な構成を示す図である。
【
図4】一実施形態によるバッテリ貸出システムの詳細を示す図である。
【
図5】一実施形態による制御装置の機能的特徴を示すブロック図である。
【
図6】一実施形態による制御装置の推定部の制御を示す図である。
【
図7】一実施形態によるバッテリ貸出システムにおける処理を示すフロー図である。
【
図8】貸出店舗の設置場所の第1変形例を示す図である。
【
図9】貸出店舗の設置場所の第2変形例を示す図である。
【
図10】一実施形態の変形例によるバッテリ装置が積載された電動車両を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図中、同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0017】
図1は、本実施形態に係るバッテリ貸出システム100を示す図である。バッテリ貸出システム100は、サーバ10と、貸出店舗20と、電動車両40とを備える。
図1に示す例では、貸出店舗20が2つ図示されているが、貸出店舗20の個数はこれに限られない。
【0018】
貸出店舗20は、電動車両40にバッテリトレーラ30(
図2参照)の貸し出しを行っている。電動車両40は、貸出店舗20において、バッテリトレーラ30のレンタルおよび返却が可能である。
【0019】
貸出店舗20は、ジオフェンシング領域200の入口201(ジオフェンシング領域200に繋がる連絡幹線路201a)および出口202(ジオフェンシング領域200に繋がる連絡幹線路201b)の各々に設けられている。なお、ジオフェンシング領域200とは、排気ガス量が規制される規制区域を意味する。また、電動車両40は、エンジン45(
図2参照)を備えるハイブリッド車両である。なお、ジオフェンシング領域200は、本開示の「規制領域」の一例である。
【0020】
サーバ10は、制御装置11と、記憶装置12と、通信部13とを含む。サーバ10は、貸出店舗20におけるバッテリトレーラ30の貸し出しを管理するサーバである。なお、通信部13は、本開示の「取得部」の一例である。
【0021】
図2に示すように、バッテリトレーラ30は、内部に所定の充電量を有するトレーラバッテリ31を備える。また、バッテリトレーラ30は、接続部50により電動車両40と接続された状態で、電動車両40により牽引されて走行可能である。なお、バッテリトレーラ30(トレーラバッテリ31)は、本開示の「バッテリ」の一例である。
【0022】
トレーラバッテリ31の電力は、接続部50を介して、電動車両40の車両バッテリ41に送電される。これにより、電動車両40は、自身の車両バッテリ41の充電量とトレーラバッテリ31の充電量との合計を使用して走行することが可能である。
【0023】
図3に具体例を示す。バッテリトレーラ30は、BMS(Battery Management System)32を備える。BMS32は、BMU(Battery Management Unit)32aと、複数のBSU(Battery Support Unit)32bと、複数の電池モジュール32cと、蓄電量検知部32dとを含む。なお、複数の電池モジュール32cにより、トレーラバッテリ31(
図2参照)が構成されている。
【0024】
BMU32aは、BMS32内の電流値をモニタリングし、上位コントローラとの通信制御やログ記憶等を行う。BMU32bは、電池モジュール32cの状態(電圧および温度等)のモニタリングをするとともに、BMU32aへの給電を行っている。蓄電量検知部32dは、電池モジュール32c(トレーラバッテリ31)の蓄電量を検知し、検知された蓄電量の情報をサーバ10の通信部13(
図1参照)に送信している。
【0025】
一方、電動車両40は、BMS42を備える。BMS42は、BMU42aと、複数のBSU42bと、複数の電池モジュール42cと、蓄電量検知部42dとを含む。なお、複数の電池モジュール42cにより、車両バッテリ41(
図2参照)が構成されている。また、BMS42はBMS32と同様の構成を有するので、BMS42の各機能の詳細な説明は繰り返さない。
【0026】
また、電動車両40は、ジャンクションボックス43を備える。バッテリトレーラ30からの電力は、ジャンクションボックス43を介して、BMS42に供給される。ジャンクションボックス43は、バッテリトレーラ30(BMS32)からの電力を適切な電力(電圧)に変換する電力変換装置(インバータ)を含む。
【0027】
なお、
図3のバッテリトレーラ30および電動車両40の各々の構成はあくまで一例であり、他の構成であってもよい。たとえば、BMSがバッテリトレーラ30および電動車両40の一方のみに設けられていてもよい。この場合、バッテリトレーラ30および電動車両40の他方には、電池モジュールが設けられている一方、BMU、BMS、および蓄電量検知部等が設けられていなくてもよい。
【0028】
再び
図1を参照して、記憶装置12には、制御装置11に実行されるプログラムのほか、プログラムで使用される情報(たとえば、マップ、数式、および各種パラメータ)が記憶されている。通信部13は、各種通信I/Fを含む。制御装置11は、通信部13を制御する。
【0029】
図1に示すように、サーバ10(通信部13)は、複数の電動車両40の各々と通信可能に構成されている。また、通信部13は、各貸出店舗20(の図示しないサーバ等)と通信可能に構成されている。
【0030】
図4に示すように、通信部13は、複数の電動車両40の各々から、電動車両40の状態等に関する情報を取得する。たとえば、通信部13は、電動車両40のSOC(State Of Charge)の情報を取得する。また、通信部13は、電動車両40の目的地に関する情報(目的地までの距離等)を取得する。また、通信部13は、電動車両40の車両状態に関する情報(たとえば積載量に関する情報)を取得する。なお、目的地に関する情報や車両状態に関する情報は、たとえば、電動車両40の起動時に電動車両40から通信部13に送信されるか、または、電動車両40の走行前にユーザの携帯端末等から通信部13に送信される。
【0031】
また、通信部13は、交通状況、路面状態、天気、および気温等の情報を、インターネットを通じて取得する。
【0032】
また、通信部13は、貸出店舗20から、貸し出し可能なバッテリトレーラ30の情報を取得する。また、通信部13は、貸し出し可能なバッテリトレーラ30の充電量に関する情報を取得する。
図4に示す例では、通信部13は、バッテリトレーラ30A~30Cが貸し出し可能で、かつ、バッテリトレーラ30A~30Cの充電量がそれぞれ100kWh、200kWh、および300kWhであることを示す情報を取得する。
【0033】
また、
図5に示すように、サーバ10の制御装置11は、推定部11aと、選択部11bとを含む。なお、推定部11aおよび選択部11bの各々は、制御装置11の機能的特徴をブロック化したソフトウェアを示すものである。
【0034】
また、
図6に示すように、サーバ10の記憶装置12には、複数のデータが蓄積されているビッグデータ12aが格納されている。複数のデータは、電動車両40の走行状態および走行環境と、走行に要した電力との関係に関するデータである。上記の走行状態は、たとえば、車速、積載量、および車両状態(たとえばタイヤ圧等)等を含む。また、上記の走行環境は、道路状態、交通状況、および天候(気温)等を含む。複数の電動車両40の各々から送信された上記データがサーバ10(記憶装置12)に集約されることにより、ビッグデータ12aが形成されている。
【0035】
また、制御装置11(推定部11a)は、電動車両40が目的地に到着するのに必要な電力量を推定する。制御装置11(推定部11a)は、記憶装置12に格納されているビッグデータ12aを用いて、電動車両40が目的地に到着するのに必要な電力量を推定する。
【0036】
ここで、制御装置11(推定部11a)は、ビッグデータ12aに基づいて学習された人工知能(AI)を用いて、電動車両40が目的地に到着するのに必要な電力量を推定する。制御装置11(推定部11a)は、電動車両40の走行状態および走行環境と、走行に要した電力との関係に関する複数のデータを学習用のデータとして学習している。
【0037】
そして、制御装置11(推定部11a)は、目的地までの走行経路の情報(距離、道路状態(凹凸の多さや坂の多さ等)、および交通状態等)、走行環境の情報(気温および気候等)、および、車両状態の情報(積載量およびタイヤ圧等)を入力データとして、上記の学習結果に基づいて、必要な電力量の推定値を出力する。
【0038】
ここで、従来のバッテリ貸出システムでは、電動車両40が必要としている電力量に対して充電量が過剰に大きいバッテリトレーラ30が貸し出される場合がある。したがって、電動車両40が必要とする電力量に見合った充電量を有するバッテリトレーラ30を貸し出すことが望まれている。
【0039】
そこで、本実施形態では、制御装置11(選択部11b、
図5参照)は、推定部11aにより推定された上記必要な電力量に基づいて、複数のバッテリトレーラ30のうち電動車両40に貸し出すバッテリを選択する。
【0040】
図4を参照して具体的に説明する。推定部11aにより推定された上記必要な電力量が250kWhであったとする。そして、電動車両40の残りのSOCが70kWhであるとする。この場合、バッテリトレーラ30Bおよびバッテリトレーラ30Cのいずれが選択されても、電動車両40は目的地に到着することが可能である。この場合、制御装置11(選択部11b)は、充電量の小さいバッテリトレーラ30Bを選択する。言い換えると、制御装置11(選択部11b)は、電動車両40が目的地に到着することが可能になる複数のバッテリトレーラ30のうち、充電量が最小のバッテリトレーラ30を選択する。そして、通信部13は、貸出店舗20に、バッテリトレーラ30Bが選択された旨を通知する。なお、上記の例では、バッテリトレーラ30Bおよびバッテリトレーラ30Cは、それぞれ、本開示の「第1バッテリ」および「第2バッテリ」の一例を示している。
【0041】
ここで、電動車両40の目的地がジオフェンシング領域200の出口202(
図1参照)である場合に、ジオフェンシング領域200の入口201(
図1参照)においてバッテリトレーラ30が貸し出される場合を例に具体的に説明する。この場合、制御装置11(推定部11a)は、ビッグデータ12aに基づいて、目的地(出口202)までの複数の走行経路のうち、電力消費が抑制される走行経路203を算出する。そして、制御装置11(推定部11a)は、走行経路203を電動車両40が走行した場合の上記必要な電力量を推定する。
【0042】
具体的には、制御装置11(推定部11a)は、ビッグデータ12aに基づいて学習された人工知能(AI)を用いて、上記複数の走行経路のうち消費電力が最小となる走行経路203を算出する。詳細には、制御装置11(推定部11a)は、各走行経路の距離、道路状態(凹凸の多さや坂の多さ等)、および、交通状態等を参照して各走行経路を走行した場合の消費電力を推定し、消費電力が最小となる走行経路203を算出する。そして、制御装置11(選択部11b)は、推定された上記必要な電力量に基づいて、入口201の貸出店舗20において貸し出し可能な複数のバッテリトレーラ30のうち電動車両40に貸し出すバッテリトレーラ30を選択する。
【0043】
なお、バッテリトレーラ30のレンタルにかかる費用は、バッテリトレーラ30が貸し出された時間、消費された電力量、および、バッテリトレーラ30の初期充電量等により決定されてもよい。
【0044】
(サーバの制御フロー)
次に、
図7を参照して、サーバ10によるバッテリトレーラ30の選択の制御フローを説明する。
【0045】
まず、ステップS1において、サーバ10(通信部13)は、電動車両40の目的地に関する情報および電動車両40のSOCに関する情報を取得する。さらに、ステップS1において、サーバ10(通信部13)は、電動車両40の車両状態、交通状況、路面状態、天気、および気温等の情報を取得する。
【0046】
次に、ステップS2では、サーバ10の制御装置11(推定部11a)は、ステップS1において取得された情報に基づいて、電動車両40が目的地に到着するのに必要な電力量を推定する。なお、ステップS2では、上記のように、記憶装置12に格納されているビッグデータ12aにより学習された人工知能(AI)が用いられることにより、上記必要な電力量が推定される。
【0047】
次に、ステップS3では、サーバ10(通信部13)は、貸出店舗20から、貸し出し可能なバッテリトレーラ30の情報を取得する。この際、サーバ10(通信部13)は、貸し出し可能なバッテリトレーラ30の充電量に関する情報も取得する。なお、ステップS3の処理はステップS1およびS2よりも前または同時に行われてもよい。
【0048】
次に、ステップS4では、制御装置11(選択部11b)は、ステップS3において取得された情報に基づいて、貸し出し可能なバッテリトレーラ30が複数あるか否かを判定する。貸し出し可能なバッテリトレーラ30が複数ある場合(S4においてYes)、処理はステップS5に進む。貸し出し可能なバッテリトレーラ30が複数ない場合(S4においてNo)、処理はステップS6に進む。
【0049】
ステップS5では、制御装置11(選択部11b)は、複数の貸し出し可能なバッテリトレーラ30のうち、充電量が最小のバッテリトレーラ30を、電動車両40に貸し出すバッテリトレーラ30として選択する。その後、処理はステップS8に進む。
【0050】
ステップS6では、制御装置11(選択部11b)は、貸し出し可能なバッテリトレーラ30が1台であるか否かを判定する。貸し出し可能なバッテリトレーラ30が1台である場合(S6においてYes)、処理はステップS7に進む。貸し出し可能なバッテリトレーラ30が1台ではない場合(0台である場合)(S7においてNo)、処理は終了する。
【0051】
ステップS7では、制御装置11(選択部11b)は、貸し出し可能な1台のバッテリトレーラ30を、貸し出すバッテリトレーラ30として選択する。その後、処理はステップS8に進む。
【0052】
ステップS8では、サーバ10(通信部13)は、電動車両40に貸し出すバッテリトレーラ30を貸出店舗20に通知する。そして、処理は終了する。
【0053】
以上のように、本実施形態においては、制御装置11は、電動車両40が目的地に到着するのに必要な電力量を推定する推定部11aと、推定された上記必要な電力量に基づいて、複数のバッテリトレーラ30のうち電動車両40に貸し出すバッテリトレーラ30を選択する選択部11bと、を備える。これにより、電動車両40が目的地に到着するのに必要な電力量を確保可能な複数のバッテリトレーラ30のうち、充電量が比較的大きいバッテリトレーラ30が選択されるのを抑制することができる。
【0054】
また、上記実施形態では、貸出店舗20がジオフェンシング領域200の入口201および出口202の各々に設けられている例を示したが、本開示はこれに限られない。
図8に示すように、貸出店舗20が、峠路300の麓301および麓301とは反対側の麓302の各々に設けられていてもよい。これにより、電動車両40が下り坂を走行することにより回生エネルギーが発生するので、麓301または麓302において充電の必要性を低減することが可能である。また、回生エネルギーが発生することによりエンジン45の負担を低減することができる。なお、バッテリトレーラ30が、回生エネルギーにより満充電になる程度の充電容量を有する場合、貸出店舗20において充電する必要性が低減される。これにより、貸出店舗20において充電設備を設置する必要性が低減される。
【0055】
また、
図9に示すように、貸出店舗20が、高地401と低地402とを繋ぐ坂路400の入口および出口の各々に設けられていてもよい。すなわち、貸出店舗20は、高地401および低地402の各々に設けられている。高地401の貸出店舗20においては、回生エネルギーにより充電されたバッテリトレーラ30を低地402の貸出店舗20に返却することを条件に、割安でバッテリトレーラ30を貸し出されていてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、制御装置11(選択部11b)は、電動車両40に接続されるバッテリトレーラ30を選択する例を示したが、本開示はこれに限られない。
図10に示すように、電動車両40に積載可能なバッテリ装置が選択されてもよい。
図10では、貸出店舗20において貸し出し可能なバッテリ装置130A~130Cのうち、バッテリ装置130Aが選択された例が示されている。バッテリ装置130A~130Cは、電動車両40のたとえばトランクルーム44に積載される。バッテリ装置130A~130Cは、トランクルーム44において接続部44aにより電動車両40(車両バッテリ41)に電気的に接続される。なお、バッテリ装置130A~130Cは、本開示の「バッテリ」の一例である。
【0057】
また、上記実施形態では、制御装置11は、目的地までに要する電力量の推定と、バッテリトレーラ30の選択とを行う例を示したが、本開示はこれに限られない。制御装置は、上記制御に加えて、バッテリトレーラ30を借りるべき貸出店舗20の候補をユーザに報知する制御などを行ってもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、貸出店舗20とは別個に設けられるサーバ10の制御装置11が、目的地までに要する電力量の推定と、バッテリトレーラ30の選択とを行う例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、各貸出店舗20に設けられるサーバが上記の制御を行ってもよい。
【0059】
また、電動車両40に設けられる制御装置が上記の制御を行ってもよい。この場合、貸出店舗20から貸し出し可能なバッテリトレーラ30の情報が電動車両40に送信され、送信された上記情報に基づいて、電動車両40がバッテリトレーラ30を選択する。また、上記ビッグデータ12aを使用するためのアプリが、電動車両40またはユーザの携帯端末等において利用可能であってもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、バッテリトレーラ30が電動車両40に牽引される例を示したが、本開示はこれに限られない。バッテリトレーラが自走してもよい。
【0061】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0062】
11a 推定部,11b 選択部,12a ビッグデータ,13 通信部(取得部),30 バッテリトレーラ(バッテリ),30B バッテリトレーラ(第1バッテリ),30C バッテリトレーラ(第2バッテリ),40 電動車両,45 エンジン,100 バッテリ貸出システム,130A~130C バッテリ装置(バッテリ),200 ジオフェンシング領域(規制領域),201 入口,202 出口,203 走行経路。