(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-22
(45)【発行日】2025-07-30
(54)【発明の名称】情報処理装置、及び情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/22 20240101AFI20250723BHJP
【FI】
G06Q50/22
(21)【出願番号】P 2022165850
(22)【出願日】2022-10-14
【審査請求日】2024-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 真潮
【審査官】松尾 真人
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-016348(JP,A)
【文献】特開2022-112897(JP,A)
【文献】特開2021-174467(JP,A)
【文献】山下 晃弘 ,UHF帯RFIDを用いた視覚障がい者向け歩行者ナビゲーションシステムの開発と展示会への適用,情報処理学会 論文誌(トランザクション) コンシューマ・デバイス&システム(CDS) Vol.7 No.1 [online] ,情報処理学会,2017年01月26日,第7巻, 第1号,pp.34~43,[取得日 2017年3月17日], 取得先 <https://ipsj.ixsq.nii.ac.jp/ej/?action=repository_uri&item_id=177065&file_id=1&file_no=1>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 50/22
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
白杖を用いたユーザが移動している移動経路、及び前記移動経路における前記ユーザの位置を取得する取得部と、
取得した前記移動経路、及び前記ユーザの位置を用いて前記移動経路に対する逸脱量、及び逸脱角度の少なくとも一方が設定された移動情報から前記ユーザの白杖の習熟度を推定する推定部と、
前記習熟度に応じた第1通知を前記ユーザに対して通知する通知部と、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記取得部は、前記ユーザに関するユーザ情報をさらに取得し、
前記推定部は、取得した前記ユーザ情報、及び前記移動情報を用いて、習熟度を推定する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記取得部は、前記白杖を操作する操作状況をさらに取得し、
前記通知部は、前記習熟度、及び前記操作状況に応じた第2通知を、外部の装置に対して通知する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記推定部は、過去に取得した移動情報に対する習熟度を統計に基づいて学習した学習済みモデルを含み、
前記学習済みモデルは、前記取得部が新たに取得した前記移動情報に基づいて推定された前記習熟度を出力する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
白杖を用いたユーザが移動している移動経路、及び前記移動経路における前記ユーザの位置を取得し、
取得した前記移動経路、及び前記ユーザの位置を用いて前記移動経路に対する逸脱量、及び逸脱角度の少なくとも一方が設定された移動情報から前記ユーザの白杖の習熟度を推定し、
前記習熟度に応じた第1通知を前記ユーザに対して通知する、
処理をコンピュータに実行させるための情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白杖を用いた移動訓練を支援する情報処理装置、及び情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、予め記憶されたコンテンツのうち、取得したユーザ情報に基づいて表される習熟度に応じて当該ユーザが利用可能なコンテンツを特定し、特定されたコンテンツから選択されたコンテンツを当該ユーザに送信するサーバについて開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、目が不自由なユーザに対して、白杖を用いた移動訓練を支援する情報処理装置が提案されている。当該情報処理装置は、例えば、取得したユーザ情報から習熟度を判定して、習熟度に応じた利用可能なコンテンツを特定し、特定したコンテンツから選択されたコンテンツを通知することによって移動訓練の支援を行う。
【0005】
ところで、例えば、ユーザに対して既定の経路に誘導するために「右に移動してください」等の通知を行った場合において、難なく既定の経路に移動する場合と、大きく迂回して既定の経路に移動する場合と、ユーザによって通知に対する応答が異なることがある。また、ユーザは、訓練を繰り返し行うことによって、白杖の操作が上達し、難なく既定の経路に移動することができるようになることがある。すなわち、通知に対するユーザの応答は、ユーザ及び訓練の度合に応じて異なることがある。
【0006】
しかしながら、従来技術では、ユーザに対応した通知を行うことに留まり、白杖を用いたユーザに対して、各々のユーザ及び白杖の訓練の度合に対応した習熟度を推定して、移動訓練の際にユーザに適した支援を提供できるとは限らなかった。
【0007】
本発明は、白杖を用いたユーザに対して、移動訓練の際にユーザに適した支援を提供できる情報処理装置、及び情報処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の情報処理装置は、白杖を用いたユーザが移動している移動経路、及び前記移動経路における前記ユーザの位置を取得する取得部と、取得した前記移動経路、及び前記ユーザの位置を用いて前記移動経路に対する逸脱量、及び逸脱角度の少なくとも一方が設定された移動情報から前記ユーザの白杖の習熟度を推定する推定部と、前記習熟度に応じた第1通知を前記ユーザに対して通知する通知部と、を備えている。
【0009】
請求項1に記載の情報処理装置は、ユーザが移動している移動経路、及び移動経路上におけるユーザの位置を取得し、取得した移動経路、及びユーザの位置に基づいて、移動経路に対する逸脱量、及び逸脱角度の少なくとも一方を含む移動情報を用いて、ユーザの白杖の習熟度を推定し、習熟度に応じた通知を行う。これにより、白杖を用いたユーザに対して、移動訓練の際にユーザに適した支援を提供できる。
【0010】
請求項2に記載の情報処理装置は、請求項1に記載の情報処理装置において、前記取得部は、前記ユーザに関するユーザ情報をさらに取得し、前記推定部は、取得した前記ユーザ情報、及び前記移動情報を用いて、習熟度を推定する。
【0011】
請求項2に記載の情報処理装置によれば、各々のユーザの情報を考慮して、さらに詳細にユーザに対応した通知を行うことができる。
【0012】
請求項3に記載の情報処理装置は、請求項1、又は請求項2に記載の情報処理装置において、前記取得部は、前記白杖を操作する操作状況をさらに取得し、前記通知部は、前記習熟度、及び前記操作状況に応じた第2通知を、外部の装置に対して通知する。
【0013】
請求項3に記載の情報処理装置によれば、支援者がユーザによる白杖の操作状況が把握可能となり、各々のユーザに応じた白杖の訓練を支援できる。
【0014】
請求項4に記載の情報処理装置は、請求項1から請求項3の何れか1項に記載の情報処理装置において、 前記推定部は、過去に取得した移動情報に対する習熟度を統計に基づいて学習した学習済みモデルを含み、前記学習済みモデルは、前記取得部が新たに取得した前記移動情報に基づいて推定された前記習熟度を出力する。
【0015】
請求項4に記載の情報処理装置によれば、ユーザにおける過去の行動に基づいて、習熟度を推定できる。
【0016】
請求項5に記載の情報処理プログラムは、白杖を用いたユーザが移動している移動経路、及び前記移動経路における前記ユーザの位置を取得し、取得した前記移動経路、及び前記ユーザの位置を用いて前記移動経路に対する逸脱量、及び逸脱角度の少なくとも一方が設定された移動情報から前記ユーザの白杖の習熟度を推定し、前記習熟度に応じた第1通知を前記ユーザに対して通知する、処理をコンピュータに実行させる。
【0017】
請求項5に記載の情報処理プログラムが実行されるコンピュータは、ユーザが移動している移動経路、及び移動経路上におけるユーザの位置を取得し、取得した移動経路、及びユーザの位置に基づいて、移動経路に対する逸脱量、及び逸脱角度の少なくとも一方を含む移動情報を用いて、ユーザの白杖の習熟度を推定し、習熟度に応じた通知を行う。当該情報処理プログラムによれば、白杖を用いたユーザに対して、移動訓練の際にユーザに適した支援を提供できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、白杖を用いたユーザに対して、移動訓練の際にユーザに適した支援を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態の情報処理システムの構成を示す概略図である。
【
図2】本実施形態の情報処理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】本実施形態の情報処理装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図4】本実施形態に係る移動情報の説明に供する移動経路の一例を示す概略図である。
【
図5】本実施形態の支援者端末への通知の説明に供する時間経過と歩行軌跡の関係の一例を示すグラフである。
【
図6】本実施形態の支援者端末への通知の説明に供する時間経過と加速度の関係の一例を示すグラフである。
【
図7】本実施形態の情報処理装置において実行される習熟度を推定する処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本開示を実施するための形態例を詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る情報処理システム1の構成の一例を示す概略図である。
【0021】
一例として
図1に示すように、情報処理システム1は、情報処理装置10、支援者端末100、及びサーバ200を含んで構成されている。情報処理装置10、支援者端末100、及びサーバ200は、ネットワークNを介して互いに接続されている。
【0022】
情報処理装置10は、目が不自由なユーザが白杖を用いて、安全に移動するようになるための訓練を支援する装置である。情報処理装置10は、ユーザが把持する白杖に搭載され、ユーザの現在地、及び歩道等の移動経路に応じて、ユーザに通知を行い、白杖を用いた移動の訓練を支援する。
【0023】
また、情報処理装置10は、ユーザの移動に関する情報(以下、「移動情報」という。)、及びユーザに関する情報(以下、「ユーザ情報」という。)を収集して、支援者端末100、及びサーバ200に送信する。また、情報処理装置10は、取得した移動情報に応じて支援者端末100に通知を送信する。
【0024】
支援者端末100は、ユーザの移動訓練を支援する支援者が所有するパーソナルコンピュータ、タブレット、及び携帯端末等の端末である。支援者端末100は、情報処理装置10から移動情報、及びユーザ情報を受信し、図示しないモニタに表示する。また、支援者端末100は、情報処理装置10から受信した通知に応じて、支援者への通知を行う。
【0025】
サーバ200は、パーソナルコンピュータ等の端末である。サーバ200は、情報処理装置10から移動情報、及びユーザ情報を受信して記憶する。また、サーバ200は、記憶した過去の移動情報、及びユーザ情報を用いて、ユーザ毎の白杖の習熟の度合(以下、「習熟度」という。)を推定するための機械学習を行った学習済みモデルを生成する。サーバ200は、生成した学習済みモデルを情報処理装置10に送信する。サーバ200は、過去の移動情報、及びユーザ情報を学習データとし、過去の移動情報、及びユーザ情報に対応する習熟度を教師データとして機械学習を実行して学習済みモデルを生成する。学習済みモデルは、例えば、単回帰、及び重回帰等の統計を用いて、移動情報、及びユーザ情報から習熟度を推定する。なお、本実施形態に係る学習済みモデルは、回帰を用いて習熟度を推定する形態について説明する。しかし、これに限定されない。学習済みモデルは、分類を用いて、習熟度を推定してもよいし、クラスタリングを用いて習熟度を推定してもよい。
【0026】
情報処理装置10は、サーバ200から学習済みモデルを受信して、当該学習済みモデルを用いて、ユーザ毎の習熟度を推定し、習熟度に応じて移動を支援するための通知を行う。
【0027】
次に、
図2を参照して、情報処理装置10のハードウェア構成について説明する。
【0028】
一例として
図2に示すように、本実施形態に係る情報処理装置10は、CPU(Central Processing Unit)10A、ROM(Read Only Memory)10B、RAM(Random Access Memory)10C、ストレージ10D、入出力インターフェース(入出力I/F)10E、及び通信インターフェース(通信I/F)10Fを含んで構成されている。CPU10A、ROM10B、RAM10C、ストレージ10D、入出力I/F10E、及び通信I/F10Fの各々は、バス10Gにより相互に接続されている。また、情報処理装置10は、入出力I/F10Eを介して、GPS(Global Positioning System)装置12A、カメラ12B、センサ12C、及びスピーカ12Dと接続されている。
【0029】
CPU10Aは、情報処理装置10の全体を統括し、制御する。ROM10Bは、各種プログラム及びデータ等を記憶している。RAM10Cは、各種プログラムの実行時のワークエリアとして用いられるメモリである。CPU10Aは、ROM10Bに記憶されたプログラムをRAM10Cに展開して実行することにより、ユーザ毎の習熟度を推定し、習熟度に応じて通知する処理を行う。
【0030】
ストレージ10Dは、一例としてHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はフラッシュメモリ等である。ストレージは、地図情報、ユーザ情報、学習済みモデル、及び各種プログラム等が記憶されている。
【0031】
入出力I/F10Eは、機器と接続するためのインターフェースである。通信I/F10Fは、支援者端末100、及びサーバ200等と通信するための通信モジュールである。当該無線通信モジュールは、例えば、5G、LTE、Wi-Fi(登録商標)等の通信規格が用いられる。
【0032】
GPS装置12Aは、複数のGPS衛星によって測位された情報処理装置10の現在地を表す位置情報を受信する装置である。GPS装置12Aは、GPS衛星からの位置情報を受信する図示しないアンテナを含んでいる。なお、本実施形態では、GPS装置12Aを用いて位置情報を取得する形態について説明する。しかし、これに限定されない。GNSS(Global Navigation Satellite System)装置を用いて、位置情報を取得してもよいし、カメラによって撮影された画像、Wi-Fi、及びBlueTooth(登録商標)等を用いて、ユーザの位置を測位してもよい。
【0033】
カメラ12Bは、ユーザが把持する白杖の先端を含む、ユーザの周辺状況を撮像する装置である。センサ12Cは、情報処理装置10における振動、情報処理装置10が搭載されている白杖の加速度、及び角速度等を検出する加速度センサ、及びジャイロセンサである。スピーカ12Dは、ユーザへの通知に係る音声を出力する。なお、本実施形態では、カメラ12Bによって撮影された画像データ、及びセンサ12Cによって検出された検出データをユーザの状況を示す情報(以下、「状況情報」という。)として説明する。
【0034】
次に、
図3を参照して、情報処理装置10の機能構成について説明する。
図3は、本実施形態に係る情報処理装置10の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【0035】
一例として
図3に示すように、情報処理装置10は、取得部21、設定部22、推定部23、判定部24、記憶部25、通知部26、及び送信部27を備えている。CPU10Aが情報処理プログラムを実行することで、取得部21、設定部22、推定部23、判定部24、記憶部25、通知部26、及び送信部27として機能する。
【0036】
取得部21は、GPS装置12Aを用いて、情報処理装置10の位置情報、及び位置情報に対応する地図情報を取得する。また、取得部21は、カメラ12B、及びセンサ12Cを用いてユーザの状況情報を取得する。
【0037】
設定部22は、位置情報、及び地図情報を用いて、ユーザが移動経路から外れた距離、及びユーザが移動経路から外れた角度を導出し、移動情報として設定する。一例として
図4に示すように、設定部22は、地図情報を用いて歩道に沿った移動経路を導出し、位置情報を用いてユーザの現在地から移動経路までの距離(以下、「逸脱量」という。)d
rを導出する。設定部22は、逸脱量d
rが予め定められた距離より大きい場合、移動経路上に目標地点を設定し、現在地におけるユーザの進行方向と、目標地点に向かう方向と、のなす角(以下、「逸脱角度」という。)θを導出する。設定部22は、導出した逸脱量d
r、及び逸脱角度θを移動情報として設定する。ここで、ユーザが移動経路に沿って進行している(逸脱量d
rが予め定められた距離以下である)場合、逸脱量は0として設定してもよい。また、ユーザの進行方向は、位置情報の差分によって導出してもよいし、カメラ12Bによって撮影された画像から導出してもよいし、センサ12Cによって得られた加速度、及び角速度を用いて導出してもよい。
【0038】
推定部23は、導出した移動情報、及び予め受け付けたユーザ情報を用いて、ユーザの白杖の習熟度を推定する。具体的には、推定部23は、習熟度を推定するための機械学習を行った学習済みモデルを用いて、移動情報、及びユーザ情報を入力として、ユーザの習熟度を出力する。なお、習熟度は、以下の数式によって表される。
【0039】
【0040】
ここで、Scoreは、習熟度を示すスコアであり、aは、ユーザの性格であり、bは、ユーザの性別であり、cは、ユーザの身長であり、dは、ユーザの体重であり、eは、ユーザの障害の程度であり、fは、ユーザの居住地であり、gは、ユーザの移動場所であり、hは、ユーザの外出頻度であり、iは、ユーザの生活環境であり、jは、ユーザのリスクリテラシーであり、kは、天候であり、lは、移動する時間帯であり、zは、ユーザに係る他の情報である。また、Aは、補正係数であり、支援者の判断によって設定される。なお、習熟度は、歩行している際の所定期間毎に推定されて更新されてもよいし、訓練モード等のユーザによって指定された期間において推定されて更新されてもよい。
【0041】
判定部24は、位置情報、地図情報、移動情報、及び状況情報を用いて、ユーザの状況を判定する。具体的には、判定部24は、状況情報を用いて、ユーザが適切に白杖を操作して安全に移動できているかを判定する。例えば、判定部24は、曲がり角等に差し掛かった状況、移動経路から逸れた状況、転倒した状況、ユーザが白杖を適切に操作できていない状況(例えば、白杖の先端が壁に接触できていない等)を検出して判定を行う。
【0042】
一例として
図5に示すように、判定部24は、位置情報、地図情報、移動情報、及び状況情報を用いて、時系列毎のユーザの歩行軌跡を示すグラフを生成して、ユーザが移動経路から大きく逸れているか否かを判定する。判定部24は、歩行軌跡が予め定められた範囲から外れた(逸脱量d
rが予め定められた距離より大きくなった場合)場合、ユーザが安全に移動できていないと判定する。ここで、予め定められた範囲は、一例として
図5に示す破線に対応している。
【0043】
また、一例として
図6に示すように、判定部24は、状況情報を用いて、時系列毎の加速度を示すグラフを生成し、加速度のピークを示す時間に対応する画像データを用いて、白杖の先端が壁に接触しているか否かを判定する。判定部24は、加速度のピークを示す時間に、白杖の先端が壁に接触していない場合、ユーザが白杖を適切に操作できていないと判定する。
【0044】
記憶部25は、時系列毎に、位置情報、地図情報、移動情報、ユーザ情報、習熟度、状況情報、及び判定結果を記憶する。
【0045】
通知部26は、習熟度、移動情報、及び判定結果に応じて、ユーザに対して通知を行う。例えば、通知部26は、逸脱量が0を超えた場合、ユーザに対して移動経路から逸れている旨の通知、及び移動すべき(移動経路に戻るための)方向を通知する。通知部26は、判定結果として、ユーザが曲がり角等に差し掛かったと判定された場合、移動すべき方向を通知する旨を通知する。
【0046】
また、通知部26は、支援者端末100にユーザの状況を通知する。通知部26は、判定結果として、ユーザが適切に白杖を操作できていないと判定された場合、又は安全に移動できていないと判定された場合、支援者端末100に警告を通知する。
【0047】
ここで、通知部26は、高い習熟度であるほど、当該通知の回数が少なくなるように制御して通知を行う。換言すると、通知部26は、低い習熟度であるほど、通知の回数が多くなるように制御して通知する。なお、本実施形態では、習熟度に応じて通知の回数を制御する形態について説明した。しかし、これに限定されない。習熟度に応じて通知する期間の長さを制御してもよい。例えば、高い習熟度であるほど、通知する期間が長くなるように制御してもよい。
【0048】
送信部27は、記憶された位置情報、地図情報、移動情報、ユーザ情報、習熟度、状況情報、及び判定結果を支援者端末100に送信する。ここで、支援者端末100が位置情報、地図情報、移動情報、ユーザ情報、習熟度、状況情報、及び判定結果を提示することによって、ユーザの支援者は、ユーザの白杖の操作状況が確認可能となる。ここで、支援者端末による提示は、位置情報、地図情報、移動情報、ユーザ情報、習熟度、状況情報、及び判定結果を表示してもよいし、音声による通知、及び警告であってもよい。
【0049】
次に、
図7を参照して、本実施形態に係る情報処理装置10の作用について説明する。
図7は、本実施形態に係る情報処理のフローの一例を示すフローチャートである。CPU10AがROM10B又はストレージ10Dから情報処理プログラムを読み出し、実行することによって、
図7に示す情報処理が実行される。
図7に示す情報処理は、例えば、情報処理を実行する指示が入力された場合、実行される。
【0050】
ステップS101において、CPU10Aは、位置情報、及び状況情報を取得する。
【0051】
ステップS102において、CPU10Aは、位置情報に対応する地図情報を取得する。
【0052】
ステップS103において、CPU10Aは、位置情報、及び地図情報を用いて移動経路を導出し、移動情報として逸脱量dr、及び逸脱角度θを導出して設定する。
【0053】
ステップS104において、CPU10Aは、ユーザの習熟度を推定するか否かの判定を行う。ユーザの習熟度を推定する場合(ステップS104:YES)、CPU10Aは、ステップS105に移行する。一方、ユーザの習熟度を推定しない場合(ステップS104:NO)、CPU10Aは、ステップS108に移行する。
【0054】
ステップS105において、CPU10Aは、予め受け付けたユーザ情報を取得する。
【0055】
ステップS106において、CPU10Aは、ユーザ情報、及び移動情報を用いて、習熟度を推定する。
【0056】
ステップS107において、CPU10Aは、推定した習熟度を記憶する。
【0057】
ステップS108において、CPU10Aは、記憶された習熟度を取得し、ユーザの習熟度として設定する。
【0058】
ステップS109において、CPU10Aは、位置情報、地図情報、移動情報、及び状況情報を用いて、ユーザの状況を判定する。
【0059】
ステップS110において、CPU10Aは、判定結果、及び習熟度に応じて、ユーザに対して通知する。
【0060】
ステップS111において、CPU10Aは、判定結果、及び習熟度に応じて、支援者端末100にユーザの状況を通知する。
【0061】
ステップS112において、CPU10Aは、位置情報、地図情報、移動情報、ユーザ情報、習熟度、状況情報、及び判定結果等の各々の情報を記憶する。
【0062】
ステップS113において、CPU10Aは、位置情報、地図情報、移動情報、ユーザ情報、習熟度、状況情報、及び判定結果等の各々の情報を送信する。
【0063】
ステップS114において、CPU10Aは、処理を終了するか否かの判定を行う。処理を終了する場合(ステップS114:YES)、CPU10Aは、処理を終了する。一方、処理を終了しない場合(ステップS114:NO)、CPU10Aは、ステップS115に移行する。
【0064】
ステップS115において、CPU10Aは、位置情報、及び状況情報を取得して、ステップS103に移行する。
【0065】
以上、本実施形態によれば、白杖を用いたユーザに対して、移動訓練の際にユーザに適した支援を提供できる。
【0066】
なお、上記実施形態では、ユーザが把持する白杖に情報処理装置10が搭載されている形態について説明した。しかし、これに限定されない。情報処理装置10は、ユーザが装着するウェアラブル装置であってもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、判定部24は、ユーザが移動経路から逸れたこと、及びユーザが適切に白杖を操作できていないことを判定する形態について説明した。しかし、これに限定されない。判定部24は、撮影された画像データを用いて、段差、及びでっぱり等のユーザにとって注意すべき箇所の有無を判定してもよい。例えば、判定部24は、過去に撮影された画像データからユーザにとって注視すべき箇所を学習した学習済みモデルであり、カメラ12Bによって撮影された画像データからユーザにとって注視すべき箇所を検出して、ユーザが注視する箇所の有無を判定してもよい。また、判定部24によって、ユーザが注意すべき箇所を検出された場合、通知部26は、ユーザに通知してもよいし、支援者端末100に通知してもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、移動訓練は支援者と共に実施され、支援者によって補正係数Aが設定される形態について説明した。しかし、これに限定されない。ユーザ単独で移動訓練を行ってもよい。ユーザが単独で移動訓練を行う場合、上述した式(1)における補正係数A=1を設定してもよいし、予め定められた値を補正係数として設定してもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、地図情報を用いて、移動経路を設定する形態について説明した。しかし、これに限定されない。訓練場等の予め定められた場所が設定されていてもよい。
【0070】
また、上記実施形態に係る情報処理装置10は、支援者端末100に各種情報を送信して、即座に提示する形態について説明した。しかし、これに限定されない。訓練が終了した際に、情報処理装置10から支援者端末100に各種情報を送信してもよい。これにより、ユーザによる白杖を用いた移動の傾向を把握した上で、支援者による助言が得られる。
【0071】
また、上記実施形態に係る対象は、目が不自由なユーザである形態について説明した。しかし、これに限定されない。幼児、及び児童が対象であってもよい。例えば、ウェアラブル装置としての情報処理装置10を装着し、幼児、及び児童の歩行訓練を行ってもよい。
【0072】
[備考]
なお、上記実施形態でCPU10Aがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した各種処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、上述した各処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0073】
また、上記実施形態において、各プログラムはコンピュータが読み取り可能な非一時的記録媒体に予め記憶(インストール)されている態様で説明した。例えば、情報処理装置10における情報処理プログラムはROM10Bに予め記憶されている。しかしこれに限らず、各プログラムは、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の非一時的記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0074】
上記実施形態で説明した処理の流れは、一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよい。
【符号の説明】
【0075】
10 情報処理装置
21 取得部
23 推定部
26 通知部