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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-22
(45)【発行日】2025-07-30
(54)【発明の名称】ウェハー処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20250723BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20250723BHJP
【FI】
H01L21/66 J
G03F7/20 521
G03F7/20 501
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022546996
(86)(22)【出願日】2021-09-06
(86)【国際出願番号】 JP2021032640
(87)【国際公開番号】W WO2022050405
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2024-06-19
(31)【優先権主張番号】P 2020149793
(32)【優先日】2020-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】大橋 智也
(72)【発明者】
【氏名】佐々 卓
(72)【発明者】
【氏名】藤谷 徳昌
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/244696(WO,A1)
【文献】特開2014-020961(JP,A)
【文献】国際公開第2019/163834(WO,A1)
【文献】特開平11-191524(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
G03F 7/20
G01N 21/956
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェハー表面の不純物が除去された半導体製造用ウェハーの製造方法であって、
100℃~500℃に粗半導体製造用ウェハー(I)を加熱する工程及び/又は超純水で洗浄する工程(A)と、
前記工程(A)を経た半導体製造用ウェハー(II)に膜形成組成物を塗布し、焼成して、膜を形成する工程、次いでウェハー検査装置にて不純物を検出する工程を含む、半導体製造用ウェハー表面の不純物検出方法で検査する工程(B)と、
前記工程(B)を経た半導体製造用ウェハー(III)の中から、その表面上に存在する欠陥個数が、粗半導体製造用ウェハー(I)に比較し、80%以上低減された半導体製造用ウェハー(IV)を選択する工程(C)と
を含む、ウェハー表面の不純物が除去された半導体製造用ウェハーの製造方法。
【請求項2】
前記不純物が、フッ素原子を含む、請求項1に記載の半導体製造用ウェハーの製造方法。
【請求項3】
前記膜形成組成物が、樹脂を含む、請求項1又は2に記載の半導体製造用ウェハーの製造方法。
【請求項4】
前記膜形成組成物が、リソグラフィー用塗布膜形成組成物である、請求項1~3何れか1項に記載の半導体製造用ウェハーの製造方法。
【請求項5】
前記膜形成組成物が、レジスト下層膜形成組成物である、請求項1~4何れか1項に記載の半導体製造用ウェハーの製造方法。
【請求項6】
半導体製造用ウェハーの選別方法であって、
100℃~500℃に粗半導体製造用ウェハー(I)を加熱する工程及び/又は超純水で洗浄する工程(A)と、
前記工程(A)を経た半導体製造用ウェハーに膜形成組成物を塗布し、焼成して、膜を形成する工程、次いでウェハー検査装置にて不純物を検出する工程を含む、半導体製造用ウェハー表面の不純物検出方法で検査する工程(B)と、
前記工程(B)を経た半導体製造用ウェハー(III)の中から、その表面上に存在する欠陥個数が、粗半導体製造用ウェハーに比較し、80%以上低減された半導体製造用ウェハー(IV)を選択する工程(C)と
を含み、
前記工程(C)が、前記工程(B)を経た半導体製造用ウェハー(III)を、その表面上に存在する欠陥個数が、粗半導体製造用ウェハー(I)に比較し、80%以上低減された半導体製造用ウェハー(IV)と、粗半導体製造用ウェハー(I)に比較し、80%未満低減された半導体製造用ウェハー(V)とに分け、半導体製造用ウェハー(IV)を選択することを含む、
半導体製造用ウェハーの選別方法。
【請求項7】
前記不純物が、フッ素原子を含む、請求項6に記載の半導体製造用ウェハーの選別方法。
【請求項8】
前記膜形成組成物が、樹脂を含む、請求項6又は7に記載の半導体製造用ウェハーの選別方法。
【請求項9】
前記膜形成組成物が、リソグラフィー用塗布膜形成組成物である、請求項6~8何れか1項に記載の半導体製造用ウェハーの選別方法。
【請求項10】
前記膜形成組成物が、レジスト下層膜形成組成物である、請求項6~9何れか1項に記載の半導体製造用ウェハーの選別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、半導体製造用シリコンウェハー表面の不純物検出方法、該ウェハー表面の不純物が除去された半導体製造用ウェハーの製造方法及び半導体製造用ウェハーの選別方法等のウェハー処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造に使用されるシリコン等の材料で作られるウェハーは、限りなく表面異物等の不純物低減が求められている。
【0003】
特許文献1にはシリコン基板などの半導体基板上にフォトレジスト塗膜を形成した反射型の被検体を用いて、このフォトレジスト塗膜の内部に埋まっている異物を高い信頼性で検出することができる異物検出方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-20961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の検査方法では検出することが不可能な半導体製造用シリコンウェハー表面の不純物検出方法、該ウェハー表面の不純物が除去された半導体製造用ウェハーの製造方法及び半導体製造用ウェハーの選別方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下を包含する。
【0007】
[1] 半導体製造用ウェハー表面の不純物検出方法であって、
該ウェハー表面に膜形成組成物を塗布し、焼成して、膜を形成する工程、次いでウェハー検査装置にて不純物を検出する工程を含む、半導体製造用ウェハー表面の不純物検出方法。
【0008】
[2] 前記不純物が、フッ素原子を含む、[1]に記載の不純物検出方法。
【0009】
[3] 前記膜形成組成物が、樹脂を含む、[1]又は[2]に記載の不純物検出方法。
【0010】
[4] 前記膜形成組成物が、リソグラフィー用塗布膜形成組成物である、[1]~[3]何れか1項に記載の不純物検出方法。
【0011】
[5] 前記膜形成組成物が、レジスト下層膜形成組成物である、[1]~[4]何れか1項に記載の不純物検出方法。
【0012】
[6] ウェハー表面の不純物が除去された半導体製造用ウェハーの製造方法であって、
100℃~500℃に粗半導体製造用ウェハー(I)を加熱する工程及び/又は超純水で洗浄する工程(A)と、
前記工程(A)を経た半導体製造用ウェハー(II)を[1]~[5]何れか1項に記載の不純物検出方法で検査する工程(B)と、
前記工程(B)を経た半導体製造用ウェハー(III)の中から、その表面上に存在する欠陥個数が、粗半導体製造用ウェハー(I)に比較し、80%以上低減された半導体製造用ウェハー(IV)を選択する工程(C)と
を含む、ウェハー表面の不純物が除去された半導体製造用ウェハーの製造方法。
【0013】
[7] 半導体製造用ウェハーの選別方法であって、
100℃~500℃に粗半導体製造用ウェハー(I)を加熱する工程及び/又は超純水で洗浄する工程(A)と、
前記工程(A)を経た半導体製造用ウェハーを[1]~[5]何れか1項に記載の不純物検出方法で検査する工程(B)と、
前記工程(B)を経た半導体製造用ウェハー(III)の中から、その表面上に存在する欠陥個数が、粗半導体製造用ウェハーに比較し、80%以上低減された半導体製造用ウェハー(IV)を選択する工程(C)と
を含み、
前記工程(C)が、前記工程(B)を経た半導体製造用ウェハー(III)を、その表面上に存在する欠陥個数が、粗半導体製造用ウェハー(I)に比較し、80%以上低減された半導体製造用ウェハー(IV)と、粗半導体製造用ウェハー(I)に比較し、80%未満低減された半導体製造用ウェハー(V)とに分け、半導体製造用ウェハー(IV)を選択することを含む、
半導体製造用ウェハーの選別方法。
【発明の効果】
【0014】
本願の方法により、半導体製造用ウェハー表面に存在する、加熱及び/又は超純水洗浄処理を行うことで除去されてしまう不純物の存在が検出可能となる。この不純物はフッ素原子を含む場合がある。この検出方法を利用しないと検出できないような不純物を除去した、半導体製造用ウェハー(いわゆるベアウェハー)の製造及び選別が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1及び2、参考例1~5で得られたシリコンウェハー内の欠陥分布の模式図である。
図2】実施例1の欠陥形状を示すSEM写真及び組成分析の結果を示すグラフである。
図3】実施例2の欠陥形状を示すSEM写真及び組成分析の結果を示すグラフである。
図4】実施例3~5、比較例1及び2で得られたシリコンウェハー内の欠陥分布の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<半導体製造用ウェハー表面の不純物検出方法>
本願の半導体製造用ウェハー表面の不純物検出方法は、
該ウェハー表面に膜形成組成物を塗布し、焼成して、膜を形成する工程、次いでウェハー検査装置にて不純物を検出する工程を含む。
【0017】
前記不純物が、フッ素原子を含むことがある。
【0018】
半導体製造用ウェハーは、半導体素子等の製造のために使用されるウェハーであり、一般的に用いられるシリコンウェハー、ゲルマニウムウェハーの他、ヒ化ガリウム、リン化インジウム、窒化ガリウム、窒化インジウム、窒化アルミニウム等の2種類以上の元素が結合してできる化合物半導体ウェハーが挙げられる。通常円盤状であり、大きさは例えば4、6、8、12インチ等である。市販品を使用してよい。
【0019】
前記半導体製造用ウェハー上に、スピナー、コーター等の適当な塗布方法により、下記で説明する膜形成組成物(有機膜形成組成物、無機膜形成組成物)を塗布する。その後、ホットプレート等の加熱手段を用いてベークすることにより膜(有機膜、無機膜)を形成する。ベーク条件としては、ベーク温度100℃~400℃、ベーク時間0.3分~60分間の中から適宜、選択される。好ましくは、ベーク温度120℃~400℃、ベーク温度120℃~350℃、ベーク時間0.5分~30分間、より好ましくは、ベーク温度150℃~300℃、ベーク時間0.8分~10分間である。形成される膜の膜厚としては、0.01μm(10nm)~2μm(2,000nm)、0.02μm(20nm)~1μm(1,000nm)、0.025μm(25nm)~1μm(1,000nm)、0.02μm(20nm)~0.9μm(900nm)、0.025μm(25nm)~0.9μm(900nm)、0.02μm(20nm)~0.8μm(800nm)、又は0.025μm(25nm)~0.8μm(800nm)である。この膜厚はウェハー面内で均一(例えば膜厚中間値±20%以内、±10%以内、±5%以内、±3%以内、±1%以内である)であることが好ましい。
【0020】
ウェハー検査装置は、市販品を用いてよい。具体例としてはケーエルエー・テンコール株式会社製のウェハー検査システムSurfscanシリーズが挙げられる。
【0021】
<膜形成組成物>
本願で使用される膜形成組成物は、前記膜厚を均一に形成できる組成物であれば特に限定されない。有機膜形成組成物、無機膜形成組成物何れであってもよいが、本願の不純物検出方法、半導体製造用ウェハーの製造方法及び半導体製造用ウェハーの選別方法が可能な程度に膜が含有する不純物が少なく、ウェハー面内で一定膜厚での膜形成が可能である、半導体装置製造時におけるリソグラフィー工程で使用されるリソグラフィー用塗布膜形成組成物を使用することが好ましい。
【0022】
前記膜形成組成物が、樹脂を含むことが好ましい。前記樹脂はポリマー、重合体、共重合体、高分子化合物等とも称する。本願の樹脂は有機樹脂、無機樹脂(例えばシラン化合物の加水分解縮合物、ポリシロキサン等)何れでもよい。
【0023】
本願で使用されるリソグラフィー用塗布膜形成組成物は、例えば下記に記載される公知のフォトレジスト組成物、公知のレジスト下層膜形成組成物(有機化合物及び/又は無機化合物含有)、半導体基板加工時に基板をエッチング薬液から保護するための公知の保護膜形成組成物、公知の自己組織化膜のための下層膜形成組成物、公知の自己組織化膜のための上層膜形成組成物及び公知のレジスト上層膜形成組成物等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
前記リソグラフィー工程における露光波長としては、i線、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、EUV(極端紫外線)またはEB(電子線)であってよい。これらの露光波長に対応するリソグラフィー用塗布膜形成組成物であることが好ましい。
【0025】
リソグラフィー用塗布膜形成組成物の具体例としては、国際公開第2014/115843号公報、国際公開第2015/129486号公報等に記載のレジスト上層膜用のレジスト上層膜形成組成物、国際公開第2013/146600号公報、国際公開第2014/097993号公報等に記載のブロックコポリマーの自己組織化(DSA、Direct Self Assembly)技術を利用した自己組織化膜用の下層膜形成組成物、例えば国際公開第2018/051907号公報に記載された前記自己組織化膜用の上層膜形成組成物、例えば国際公開第2016/031563号公報、国際公開第2017/145809号公報に記載のパターン反転のための被覆用組成物であってよい。
【0026】
リソグラフィー用塗布膜形成組成物のその他の具体例としては、国際公開第2009/096340号公報、特開2009-053704号公報、国際公開第2010/147155号公報、国際公開第2011/102470号公報、国際公開第2011/021555号公報、国際公開第2013/047516号公報、国際公開第2015/030060号公報、国際公開第2018/052130号公報、国際公開第2019/124474号公報、国際公開第2019/124475号公報、国際公開第2019/151471号公報、国際公開第2019/163834号公報、PCT/JP2019/042708、PCT/JP2020/001627、PCT/JP2020/018436等に記載された保護膜形成用組成物、レジスト下層形成用組成物及びシリコン含有レジスト下層膜形成組成物等であってよい。
【0027】
本発明に係るリソグラフィー用塗布膜形成組成物の固形分は通常0.1~70質量%、好ましくは0.1~60質量%、好ましくは0.1~40質量%とする。固形分はリソグラフィー用塗布膜形成組成物から溶媒を除いた全成分の含有割合である。固形分中におけるポリマーの割合は例えば、30~100質量%、50~100質量%、60~100質量%、70~100質量%、80~100質量%、60~99.9質量%、60~99質量%、60~98質量%、60~97質量%、60~96質量%、60~95質量%、70~99.9質量%、70~99質量%、70~98質量%、70~97質量%、70~96質量%、又は70~95質量%である。
【0028】
これらの中でも、レジスト下層膜形成組成物が好ましく、好適な具体例としては、国際公開第2019/163834号公報に記載の芳香族ビニル化合物が付加したトリアリールジアミン含有ノボラック樹脂を含むレジスト下層膜形成組成物が好ましい。このレジスト下層膜形成組成物は、少なくとも2つのアミノ基と3つの炭素原子数6~40の芳香族環とを含む芳香族化合物(A)の芳香族環と、芳香族ビニル化合物(B)のビニル基との反応により形成される構造基(C)を含むノボラック樹脂を含む。
【0029】
前記構造基(C)が下記式(1):
【化1】

[式(1)中、
は少なくとも2つのアミノ基と少なくとも3つの炭素原子数6~40の芳香族環とを含む2価の基であり、
及びRはそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数6~40のアリール基、複素環基、又はそれらの組み合わせであり、かつ、該アルキル基、該アリール基及び該複素環基は、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数6~40のアリール基、ホルミル基、カルボキシル基、アルコキシ基、又はヒドロキシ基で置換されていても良い有機基であり、そしてRとRはそれらが結合する炭素原子と一緒になって環を形成していても良く、
は炭素原子数6~40のアリーレン基であり、
は炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素原子数2~10のアルキニル基、炭素原子数6~40のアリール基、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、カルボキシル基、アセチル基、ヒドロキシメチル基、ハロゲノメチル基、-Y-Z基、ハロゲン原子、またはそれらの組み合わせを示す。Yは酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、又はエステル基を示し、Zは炭素原子数1~10のアルキル基を示す。
【0030】
は水素原子、メチル基、又はフェニル基を示す。
【0031】
mは0~(5+2n)の整数であり、
nはTの定義であるアリーレン基を構成する芳香環の縮合度を示し、
m1は2~3600の整数である。]であることが好ましい。
【0032】
前記Rが下記式(2):
【化2】

[式(2)中、
Ar、Ar、及びArはそれぞれ独立して、ベンゼン環、又はナフタレン環を示し、
、R、及びRはそれぞれ独立して、これら環上の置換基であり、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素原子数6~40のアリール基、及びそれらの組み合わせからなる群より選択され、かつ、該アルキル基、該アルケニル基及び該アリール基は、エーテル結合、ケトン結合、若しくはエステル結合を含んでいても良い有機基を表し、
及びRはそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素原子数6~40のアリール基、及びそれらの組み合わせからなる群より選択され、かつ、該アルキル基、該アルケニル基及び該アリール基は、エーテル結合、ケトン結合、若しくはエステル結合を含んでいても良い有機基を表し、
n1、n2、n3はそれぞれ0以上であり、かつR、R、及びRが置換可能な最大数までの整数である。]で示される化合物の芳香族環から2個の水素原子を取り除いた2価の有機基であることが好ましい。
【0033】
前記構造基(C)が下記式(1-1):
【化3】

[式(1-1)中、
及びRはそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数6~40のアリール基、複素環基、又はそれらの組み合わせであり、かつ、該アルキル基、該アリール基及び該複素環基は、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数6~40のアリール基、ホルミル基、カルボキシル基、アルコキシ基、又はヒドロキシ基で置換されていても良い有機基であり、そしてRとRはそれらが結合する炭素原子と一緒になって環を形成していても良い。
【0034】
は水素原子、メチル基、又はフェニル基を示し、
m1は2~3600の整数である。]であることが好ましい。
【0035】
その他、国際公開第2019/163834号公報の全開示は本願に援用される。
【0036】
また、前記レジスト下層膜形成組成物としては、国際公開第2011/021555号公報に記載の脂肪族環と芳香族環を含有する樹脂を含むリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物であることが好ましい。このリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物は、脂環式エポキシポリマー(A’)と、縮合環式芳香族カルボン酸及び単環式芳香族カルボン酸(B’)との反応生成物(C’)を含むレジスト下層膜形成組成物、である。
【0037】
上記(A’)が式(11):
【化4】

(式(11)中、Tはポリマーの主鎖に脂肪族環を有する繰り返し単位構造を示し、Eはエポキシ基又はエポキシ基を有する有機基である。)で示される繰り返し単位構造を有するものであるレジスト下層膜形成組成物であることが好ましい。
【0038】
上記(C’)が式(12):
【化5】

(式(12)中、Tはポリマーの主鎖に脂肪族環を有する繰り返し単位構造を示し、QはTと芳香族縮合環及び芳香族単環との連結基であり、Arは芳香族縮合環及び芳香族単環である。)で示されるポリマーであることが好ましい。
【0039】
上記反応生成物(C’)は、下記式(13)、式(14)、及び式(15):
【化6】

の繰り返し単位構造が、反応生成物(C’)に含まれる単位構造の総数を1.0とした時に、式(13)の繰り返し単位構造の数a、式(14)の繰り返し単位構造の数b、式(15)の繰り返し単位構造の数cについて、0≦a≦0.2、0.3≦b≦0.7、0.3≦c≦0.7、0.5≦b+c≦1.0を満たすポリマーであることが好ましい。
【0040】
その他、国際公開第2011/021555号公報の全開示は本願に援用される。
【0041】
好適な樹脂(ポリマー)の具体的構造の一例としては、下記式(21):
【0042】
【化7】

〔上記式(21)中、Xは下記式(22)、式(23)又は式(24):
【化8】

(上記式(22)、式(23)、式(24)中、R~Rはそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数2~6のアルケニル基、ベンジル基又はフェニル基を表し、前記フェニル基は、炭素原子数1~6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素原子数1~6のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基及び炭素原子数1~6のアルキルチオ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基で置換されていてもよく、またRとR、RとRは互いに結合して炭素原子数3~6の環を形成していてもよい。)で表される基を表し、
~Aはそれぞれ独立に、水素原子、メチル基又はエチル基を表し、
はジスルフィド結合を含む2価の基を表し、好ましくはジスルフィド結合の両端に各々炭素原子数1~6のアルキレン基を含む2価の基を表し、
nは繰り返し単位構造の数であって、5ないし100の整数を表す。〕
で表される単位構造を有することが好ましい。
【0043】
本願の樹脂(ポリマー)は、例えば国際公開第2009/096340号公報に記載のポリマーや、国際公開第2019/151471号公報に記載のジスルフィド結合を少なくとも1つ以上有する2官能以上の化合物と、3官能以上の化合物との反応生成物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
前記ポリマーが、ジスルフィド結合を少なくとも1つ以上有する2官能の化合物(A”)と、上記化合物(A”)と異なる2官能の化合物(B”)との反応生成物である場合、前記ポリマー中の主鎖にジスルフィド結合が存在する。
【0045】
前記ポリマーは、下記式(31)で表される繰り返し単位構造を有してもよい:
【化9】

(上記式(31)中、Rは炭素原子数0~1のアルキル基、nは繰り返し単位構造の数であって、0ないし1の整数を表し、mは0又は1の整数を表し、
は下記式(32)、式(33)又は式(34)で表される基を表し:
【化10】

上記式(33)中、Xは下記式(44)、式(45)又は式(46)で表される基を表し:
【化11】

上記式(44)、式(45)、式(46)中、R~R61(R、R、R、R51及びR61)はそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数3~6のアルケニル基、ベンジル基又はフェニル基を表し、前記フェニル基は、炭素原子数1~6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素原子数1~6のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基及び炭素原子数1~6のアルキルチオ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基で置換されていてもよく、またRとR、RとRは互いに結合して炭素原子数3~6の環を形成していてもよい。
【0046】
~Aはそれぞれ独立に、水素原子、メチル基又はエチル基を表し、
はジスルフィド結合で中断されている炭素原子数1~10のアルキレン基を表し、
lは繰り返し単位構造の数であって、5ないし100の整数を表す。)
はジスルフィド結合で中断されている炭素原子数2から6のアルキレン基であることが好ましい。
【0047】
上記「炭素原子数3~6の環」としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンタジエン及びシクロヘキサンが挙げられる。
【0048】
前記式(31)は下記式(55):
【化12】

〔上記式(55)中、Xは前記式(44)、式(45)又は式(46)で表される基を表し、R及びRはそれぞれ独立に炭素原子数1~3のアルキレン基又は直接結合を表し、
pは繰り返し単位構造の数であって、5ないし100の整数を表す。〕
で表されてもよい。
【0049】
上記ポリマーは下記(式P-6)~(式P-8)で表されることが好ましい。
【0050】
【化13】

【化14】

【化15】

前記樹脂(ポリマー)が、ジスルフィド結合を少なくとも1つ以上有する2官能以上の化合物(A”)と、2官能以上の化合物(B”)とを、自体公知の方法で反応させて合成した、反応生成物であることが好ましい。
【0051】
国際公開第2009/096340号公報と国際公開第2019/151471号公報の全開示は、本願に援用される。
【0052】
<架橋剤>
本発明の膜形成組成物に任意成分として含まれる架橋剤としては、例えば、ヘキサメトキシメチルメラミン、テトラメトキシメチルベンゾグアナミン、1,3,4,6-テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル(テトラメトキシメチルグリコールウリル)(POWDERLINK〔登録商標〕1174)、1,3,4,6-テトラキス(ブトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(ヒドロキシメチル)グリコールウリル、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)尿素、1,1,3,3-テトラキス(ブトキシメチル)尿素、1,1,3,3-テトラキス(メトキシメチル)尿素及び2,4,6-トリス[ビス(メトキシメチル)アミノ]-1,3,5-トリアジン((商品名)Cymel〔登録商標〕-303,ニカラック〔登録商標〕MW-390)が挙げられる。
【0053】
また、上記架橋剤は、国際公開第2014/208542号公報に記載の、下記式(71)又は式(72):
【0054】
【化16】
【0055】
(式(71)及び式(72)中、Qは単結合又はm1価の有機基を示し、R及びRはそれぞれ炭素原子数2~10のアルキル基、又は炭素原子数1~10のアルコキシ基を有する炭素原子数2~10のアルキル基を示し、R及びRはそれぞれ水素原子又はメチル基を示し、R及びRはそれぞれ炭素原子数1~10のアルキル基、又は炭素原子数6~40のアリール基を示す。
n1は1≦n1≦3の整数、n2は2≦n2≦5の整数、n3は0≦n3≦3の整数、n4は0≦n4≦3の整数、3≦(n1+n2+n3+n4)≦6の整数を示す。
n5は1≦n5≦3の整数、n6は1≦n6≦4の整数、n7は0≦n7≦3の整数、n8は0≦n8≦3の整数、2≦(n5+n6+n7+n8)≦5の整数を示す。m1は2~10の整数を示す。)で示される架橋性化合物を含んでよい。
上記式(71)又は式(72)で示される架橋性化合物が、下記式(73)又は式(74)で示される化合物と、ヒドロキシル基含有エーテル化合物又は炭素原子数2~10のアルコールとの反応によって得られるものであってよい。
【0056】
【化17】
【0057】
(式(73)及び式(74)中、Qは単結合又はm2価の有機基を示す。R、R、R11及びR12はそれぞれ水素原子又はメチル基を示し、R及びR10はそれぞれ炭素原子数1~10のアルキル基、又は炭素原子数6~40のアリール基を示す。
n9は1≦n9≦3の整数、n10は2≦n10≦5の整数、n11は0≦n11≦3の整数、n12は0≦n12≦3の整数、3≦(n9+n10+n11+n12)≦6の整数を示す。
n13は1≦n13≦3の整数、n14は1≦n14≦4の整数、n15は0≦n15≦3の整数、n16は0≦n16≦3の整数、2≦(n13+n14+n15+n16)≦5の整数を示す。m2は2~10の整数を示す。)
下記式(73)又は式(74)で示される化合物と、ヒドロキシル基含有エーテル化合物又は炭素原子数2~10のアルコールとの反応が酸触媒の存在下で行われてよい。
本発明に用いられる式(71)及び式(72)で示される架橋性化合物は例えば以下に例示することができる。
【0058】
【化18】
【0059】
【化19】
【0060】
【化20】
【0061】
【化21】
【0062】
【化22】
【0063】
また、本発明に用いられる式(73)及び式(74)で示される化合物は例えば以下に例示することができる。
【0064】
【化23】
【0065】
【化24】
【0066】
国際公開第2014/208542号公報の全開示が本願に援用される。
【0067】
また、上記架橋剤は、国際公開第2017/187969号公報に記載の、窒素原子と結合する下記式(61)で表される置換基を1分子中に2~6つ有する含窒素化合物であってもよい。
【0068】
【化25】

(式(61)中、Rはメチル基又はエチル基を表す。)
前記式(61)で表される置換基を1分子中に2~6つ有する含窒素化合物は下記式(1A)で表されるグリコールウリル誘導体であってよい。
【0069】
【化26】

(式(1A)中、4つのRはそれぞれ独立にメチル基又はエチル基を表し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基、又はフェニル基を表す。)
前記式(1A)で表されるグリコールウリル誘導体として、例えば、下記式(1A-1)~式(1A-6)で表される化合物が挙げられる。
【0070】
【化27】

前記式(1A)で表される化合物は、窒素原子と結合する下記式(62)で表される置換基を1分子中に2~6つ有する含窒素化合物と下記式(63)で表される少なくとも1種の化合物とを反応させて前記式(61)で表される置換基を1分子中に2~6つ有する含窒素化合物を製造することで得られる。
【化28】

(式(62)、式(63)中、Rはメチル基又はエチル基を表し、Rは炭素原子数1~4のアルキル基を表す。)
前記式(1A)で表されるグリコールウリル誘導体は、下記式(2A)で表されるグリコールウリル誘導体と前記式(63)で表される少なくとも1種の化合物とを反応させることにより得られる。
【0071】
前記式(62)で表される置換基を1分子中に2~6つ有する含窒素化合物は、例えば、下記式(2A)で表されるグリコールウリル誘導体である。
【化29】

(式(2A)中、Rは及びRはそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基、又はフェニル基を表し、Rはそれぞれ独立に炭素原子数1~4のアルキル基を表す。)
前記式(2A)で表されるグリコールウリル誘導体として、例えば、下記式(2A-1)~式(2A-4)で表される化合物が挙げられる。さらに前記式(63)で表される化合物として、例えば下記式(2A-5)及び式(2A-6)で表される化合物が挙げられる。
【化30】

【化31】

上記窒素原子と結合する上記式(61)で表される置換基を1分子中に2~6つ有する含窒素化合物に係る内容は、国際公開第2017/187969号公報の全開示が本願に援用される。
【0072】
上記架橋剤が使用される場合、当該架橋剤の含有割合は、前記有機樹脂に対し、例えば1質量%~50質量%であり、好ましくは、5質量%~30質量%である。
【0073】
<半導体製造用ウェハーの製造方法>
本願のウェハー表面の不純物が除去された半導体製造用ウェハーの製造方法は、100℃~500℃に粗半導体製造用ウェハー(I)を加熱する工程及び/又は超純水で洗浄する工程(A)と、前記工程(A)を経た半導体製造用ウェハー(II)を前記不純物検出方法で検査する工程(B)と、前記工程(B)を経た半導体製造用ウェハー(III)の中から、その表面上に存在する欠陥個数が、粗半導体製造用ウェハーに比較し、80%以上低減された半導体製造用ウェハー(IV)を選択する工程(C)を含む。
【0074】
前記粗半導体製造用ウェハー(I)とは、該半導体製造用ウェハーへの加熱する工程及び/又は超純水で洗浄する工程を行う前の、未処理の半導体製造用ウェハーのことをいう。
【0075】
工程(A)において、該ウェハーを加熱する工程は、100℃~500℃の範囲で行われるが、120℃~500℃、120℃~400℃、150~400℃、200~400℃、200℃~500℃、300℃~500℃であることが好ましい。加熱時間は、通常0.5分~30分である。加熱は通常大気下であるが、窒素雰囲気等の不活性ガス下で行ってもよい。超純水でウェハーを洗浄する方法は特に制限は無いが、バッチ洗浄や枚葉洗浄が挙げられる。超純水の温度は例えば5℃~50℃、洗浄時間は例えば1分~1時間である。超音波による洗浄と組み合わせて行ってもよい。上記加熱工程と超純水洗浄工程を組み合わせて行ってもよい。順序はどちらが先でもよい。
【0076】
<半導体製造用ウェハーの選別方法>
本願の半導体製造用ウェハーの選別方法は、100℃~500℃に粗半導体製造用ウェハー(I)を加熱する工程及び/又は超純水で洗浄する工程(A)と、前記工程(A)を経た半導体製造用ウェハー(II)を前記不純物検出方法で検査する工程(B)と、前記工程(B)を経た半導体製造用ウェハー(III)の中から、その表面上に存在する欠陥個数が、粗半導体製造用ウェハー(I)に比較し、80%以上低減された半導体製造用ウェハー(IV)を選択する工程(C)とを含む。
【0077】
工程(C)は、例えば、前記工程(B)を経た半導体製造用ウェハー(III)を、その表面上に存在する欠陥個数が、粗半導体製造用ウェハー(I)に比較し、80%以上低減された半導体製造用ウェハー(IV)と、粗半導体製造用ウェハー(I)に比較し、80%未満低減された半導体製造用ウェハー(V)とに分け、半導体製造用ウェハー(IV)を選択することを含むことができる。
【0078】
本項に係る、用語の説明は、前記<半導体製造用ウェハーの製造方法>の説明内容に準ずる。
【実施例
【0079】
次に実施例を挙げ本発明の内容を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0080】
<合成例1>
300mL四口フラスコにN,N’-ジフェニル-1,4-フェニレンジアミン(41.98g、0.161mol、東京化成工業(株)製)、4-アミルオキシベンズアルデヒド(31.02g、0.161mol、東京化成工業(株)製)、4-(tert-ブトキシ)スチレン(94.75g、0.537mol、和光純薬工業(株)製)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(172.37g、関東化学(株)製)を仕込みメタンスルホン酸(4.65g、0.048mol、東京化成工業(株)製)を加えて撹拌し、135℃まで昇温し溶解させ重合を開始した。18時間後室温まで放冷後、メタノール(1000g、関東化学(株)製)、超純水1000gおよび30%アンモニア水(100g、関東化学(株)製)の混合溶媒を用いて再沈殿させた。得られた沈殿物をろ過し、減圧乾燥機で80℃、24時間乾燥し、式(a)で表される目的とするポリマー136.68gを得た。ポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは1400であり、多分散度Mw/Mnは1.29であった。
【0081】
【化32】
【0082】
<合成例2>
式(b-1)の化合物(ダイセル化学工業(株)製、商品名:EHPE3150)40.0gと9-アントラセンカルボン酸20.3gと安息香酸13.7gをプロピレングリコールモノメチルエーテル302.0gに溶解させた後、ベンジルトリエチルアンモニウム1.5gを加え、24時間還流し反応させた。反応後溶液をイオン交換法を用いて精製し、式(b-2)のポリマー溶液を得た。得られたポリマーのGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は4100であった。
【0083】
【化33】

【化34】
【0084】
<合成例3>
モノアリルジグリシジルイソシアヌル酸(四国化成工業(株)製)800g、3,3’-ジチオジプロピオン酸(堺化学工業(株)製、商品名:DTDPA)608g、及び触媒として第4級ホスホニウム塩であるトリフェニルモノエチルホスホニウムブロミド53gを、プロピレングリコールモノメチルエーテル2191gに溶解させ、加熱後120℃に保ちながら窒素雰囲気下で4時間撹拌した。得られた反応生成物を、プロピレングリコールモノメチルエーテル3652gにて希釈したワニス溶液のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は約7800であった。この反応生成物は、下記式(c-1)で表される構造単位を有する高分子化合物を含む。
【0085】
【化35】
【0086】
<調製例1>
前記合成例1で合成したポリマー17.64gに架橋剤として式(d-1)で示す2,2-ビス[3,5-ビス[(2-メトキシ-1-メチルエトキシ)メチル]-4-ヒドロキシフェニル]プロパンの4個のメチロール基が、それぞれプロピレングリコールモノメチルエーテルと脱水縮合して得られた化合物であるPGME-BIP-Aと略される式(d-2)で示した化合物を3.53g、架橋触媒としてピリジニウム-p-フェノールスルホネートを0.58g、界面活性剤としてDIC(株)製のメガファック〔商品名〕R-30Nを0.02g、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルを23.47g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを54.76gを添加してレジスト下層膜形成組成物を調製した。
【0087】
【化36】

【化37】
【0088】
<調製例2>
前記合成例2で得られたポリマー溶液31.49g(ポリマーの固形分は16質量%)に、架橋剤として日本サイテックインダストリーズ(株)製のテトラメトキシメチルグリコールウリル(POWDERLINK(登録商標)1174)を1.26g、架橋触媒としてピリジニウム-p-トルエンスルホナートを0.04g、界面活性剤としてDIC(株)製のメガファック〔商品名〕R-30Nを0.004g、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルを57.63g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート9.58gを添加してレジスト下層膜形成組成物を調製した。
【0089】
<調製例3>
前記合成例2で得られたポリマー溶液3.58g(ポリマーの固形分は20質量%)に日本サイテックインダストリーズ(株)製のテトラメトキシメチルグリコールウリル(POWDERLINK(登録商標)1174)を0.18g、架橋触媒として4-ヒドロキシベンゼンスルホン酸(PSA)を0.02g、添加剤としてビスフェノールSを0.01g、界面活性剤としてDIC(株)製のメガファック〔商品名〕R-30Nを0.01g、プロピレングリコールモノメチルエーテル86.30g及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート9.91gを添加してレジスト下層膜形成組成物を調製した。
【0090】
<実施例1>
調製例1で得られたレジスト下層膜形成組成物を東京エレクトロン製の塗布装置CLEAN TRACK Lithius Pro APを用いて12インチシリコンウェハー上に塗布した。塗布後の膜を240℃、60秒で焼成した後さらに400℃、60秒で焼成することで膜厚が800nmの塗布膜が形成された12インチシリコンウェハーを得た。
【0091】
<実施例2>
調製例2で得られたレジスト下層膜形成組成物を東京エレクトロン製の塗布装置CLEAN TRACK Lithius Pro APを用いて12インチシリコンウェハー上に塗布した。塗布後の膜を205℃、60秒で焼成することで膜厚が200nmの塗布膜が形成された12インチシリコンウェハーを得た。
【0092】
<参考例1>
東京エレクトロン製の塗布装置CLEAN TRACK Lithius Pro APを用いて12インチシリコンウェハーを400℃、60秒で焼成することで加熱処理を実施した12インチシリコンウェハーを得た。
【0093】
<参考例2>
レジスト下層膜形成組成物に使用されている溶剤であるプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)を東京エレクトロン製の塗布装置CLEAN TRACK Lithius Pro APを用いて12インチシリコンウェハー上に塗布した。塗布後の膜を205℃、60秒で焼成することで塗布膜が形成された12インチシリコンウェハーを得た。
【0094】
<参考例3>
東京エレクトロン製の塗布装置CLEAN TRACK Lithius Pro APを用いて12インチシリコンウェハーを400℃、60秒で焼成した。前記焼成した12インチシリコンウェハーに調製例1で得られたレジスト下層膜形成組成物を塗布した。塗布後の膜を240℃、60秒で焼成した後さらに400℃、60秒で焼成することで膜厚が800nmの塗布膜が形成された12インチシリコンウェハーを得た。
【0095】
<参考例4>
東京エレクトロン製の塗布装置CLEAN TRACK Lithius Pro APを用いて12インチシリコンウェハーを205℃、60秒で焼成した。前記焼成した12インチシリコンウェハーに調製例2で得られたレジスト下層膜形成組成物を塗布した。塗布後の膜を25℃、60秒で焼成することで膜厚が200nmの塗布膜が形成された12インチシリコンウェハーを得た。
【0096】
<参考例5>
調製例3で得られたレジスト下層膜形成組成物を東京エレクトロン製の塗布装置CLEAN TRACK Lithius Pro APを用いて12インチシリコンウェハー上に塗布した。塗布後の膜を205℃、60秒で焼成することで膜厚が25nmの塗布膜が形成された12インチシリコンウェハーを得た。
【0097】
(ウェハー上の欠陥分布)
実施例1及び2で得られたシリコンウェハーをケーエルエー・テンコール株式会社製のウェハー検査システムSurfscan SP2XPで膜表面の欠陥を測定した。ウェハー内の欠陥分布を図1に、及び欠陥の個数を表1に示す。また、実施例1及び2で検出された欠陥の形状および元素分析を株式会社日立ハイテク製の欠陥レビューSEM RS6000で実施した結果を図2及び3に示す。
【0098】
【表1】

図1では、未処理の12インチシリコンウェハーにレジスト下層膜形成組成物を塗布した実施例1及び実施例2はウェハー外周部に特徴的な欠陥の分布を示した。
【0099】
12インチシリコンウェハーを事前に焼成処理した後にレジスト下層膜形成組成物を塗布した参考例3及び4ではウェハー外周部に特徴的な欠陥の分布は確認されず、欠陥の個数も少ない。加えて12インチシリコンウェハーを焼成した参考例1及び溶剤を塗布した参考例2も同様にウェハー外周部に特徴的な欠陥の分布は確認されない。
【0100】
このことから12インチシリコンウェハー表面に不純物が存在しており、前記不純物は焼成処理を行うことで除去される成分であること、12インチシリコンウェハーをそのまま焼成もしくは焼成後に揮発してウェハー上には残存しない溶剤を塗布する処理では前記不純物を検出することはできないことが示された。一方で参考例5より膜厚が25nmの塗布膜では前記不純物を検出することはできず、塗布膜の膜厚が25nm以上であることが必要であることが示された。
【0101】
図2より実施例1のウェハー外周部に検出される欠陥の形状はすべて類似の形状をしており、フッ素元素が特徴的に検出されることが確認された。
【0102】
加えて図3より実施例2のウェハー外周部に検出される欠陥の形状はすべて類似の形状をしており、フッ素元素が特徴的に検出されることが確認された。そのため前記不純物はフッ素を含有していることが示された。実施例1及び2の処理を行い、12インチシリコンウェハー上に存在する前記フッ素含有不純物をレジスト下層膜形成組成物により形成された有機膜とウェハー上に閉じ込めることで検出が可能となることが示された。
【0103】
<実施例3>
東京エレクトロン製の塗布装置CLEAN TRACK Lithius Pro APを用いて12インチシリコンウェハーを205℃、60秒で焼成した。前記焼成済みのウェハーに調製例2で得られたレジスト下層膜形成組成物を東京エレクトロン製の塗布装置CLEAN TRACK Lithius Pro APを用いて塗布した。塗布後の膜を大気下で205℃、60秒で焼成することで膜厚が200nmの塗布膜が形成された12インチシリコンウェハーを得た。
【0104】
<実施例4>
三益半導体工業製のスピンクリーナーMSC-5000NCを用いて12インチシリコンウェハーを回転させながらウェハー表面に23℃の超純水を1.5L/minで60秒吐出してウェハー表面の洗浄を行った。前記洗浄済みのウェハーに調製例2で得られたレジスト下層膜形成組成物を東京エレクトロン製の塗布装置CLEAN TRACK Lithius Pro APを用いて塗布した。塗布後の膜を大気下で205℃、60秒で焼成することで膜厚が200nmの塗布膜が形成された12インチシリコンウェハーを得た。
【0105】
<実施例5>
東京エレクトロン製の塗布装置CLEAN TRACK Lithius Pro APを用いて12インチシリコンウェハーを400℃、60秒で焼成した。前記焼成済みのウェハーに調製例1で得られたレジスト下層膜形成組成物を東京エレクトロン製の塗布装置CLEAN TRACK Lithius Pro APを用いて塗布した。塗布後の膜を大気下で240℃、60秒で焼成した後さらに大気下で400℃、60秒で焼成することで膜厚が800nmの塗布膜塗布膜が形成された12インチシリコンウェハーを得た。
【0106】
<比較例1>
調製例2で得られたレジスト下層膜形成組成物を東京エレクトロン製の塗布装置CLEAN TRACK Lithius Pro APを用いて12インチシリコンウェハー上に塗布した。塗布後の膜を大気下で205℃、60秒で焼成することで膜厚が200nmの塗布膜が形成された12インチシリコンウェハーを得た。
【0107】
<比較例2>
調製例1で得られたレジスト下層膜形成組成物を東京エレクトロン製の塗布装置CLEAN TRACK Lithius Pro APを用いて12インチシリコンウェハー上に塗布した。塗布後の膜を大気下で240℃、60秒で焼成した後さらに大気下で400℃、60秒で焼成することで膜厚が800nmの塗布膜が形成された12インチシリコンウェハーを得た。
【0108】
(ウェハー上の欠陥発生分布)
実施例3~5で得られたシリコンウェハーをケーエルエー・テンコール株式会社製のウェハー検査システムSurfscan SP2XPで膜表面の欠陥を測定した。ウェハー内の欠陥分布を図4に、及び欠陥の個数を表2に示す。
【0109】
【表2】

図4及び表2より超純水洗浄及び焼成処理を実施した12インチシリコンウェハーにレジスト下層膜形成組成物を塗布した実施例3~5は比較例1及び2で示されるようなウェハー外周部の特徴的な欠陥分布は確認されず、70nm以下の欠陥の個数が1/5となった。このことから12インチシリコンウェハー表面に不純物が存在しており、前記不純物は超純水洗浄もしくは焼成処理を行うことで除去される成分であることが示された。このことからウェハー上にレジスト下層膜を塗布する前に超純水洗浄及び焼成処理を実施することでウェハー表面の不純物の影響を受けることなく塗布膜を形成することが可能となることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本願の方法によれば、半導体製造用ウェハー表面に存在する、加熱及び/又は超純水洗浄処理を行うことで除去されてしまう不純物の存在が検出可能となる。この不純物はフッ素原子を含む場合がある。この検出方法を利用しないと検出できないような不純物を除去した、半導体製造用ウェハー(いわゆるベアウェハー)の製造方法及び選別方法を提供できる。
図1
図2
図3
図4