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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-22
(45)【発行日】2025-07-30
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   B60K 11/04 20060101AFI20250723BHJP
   B60R 19/52 20060101ALI20250723BHJP
   B62D 37/02 20060101ALI20250723BHJP
【FI】
B60K11/04 J
B60R19/52 M
B62D37/02 A
B62D37/02 C
B62D37/02 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023038433
(22)【出願日】2023-03-13
(65)【公開番号】P2024129312
(43)【公開日】2024-09-27
【審査請求日】2024-10-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】楢崎 昭尋
【審査官】近藤 利充
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-182496(JP,A)
【文献】特開平6-305452(JP,A)
【文献】特開平4-237686(JP,A)
【文献】特開2017-13525(JP,A)
【文献】実開昭57-170381(JP,U)
【文献】特開2019-155999(JP,A)
【文献】国際公開第2011/138910(WO,A1)
【文献】特開平6-298132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/04
B62D 37/02
B60R 19/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却対象物に風を送るために車両前端に形成されたグリル開口と、
前記グリル開口を開閉可能なように構成されたグリルシャッタと、
車両の前部かつ下部に配置され、格納姿勢と前記格納姿勢に比べて前記車両の下方に飛び出す展開姿勢とに変更可能なように構成されたフロントスポイラと、
コントローラと、
を備え、前記コントローラは、車速が第一閾値未満の場合、または、前記冷却対象物の温度の評価指標が基準値以上の場合、前記グリルシャッタを開放するように構成され、
前記コントローラは、前記車速が前記第一閾値より高い第二閾値以上の場合に前記フロントスポイラを前記展開姿勢にさせるとともに、前記車速が前記第一閾値以上かつ第二閾値未満の場合に前記グリルシャッタの開放と同期して前記フロントスポイラを前記展開姿勢にさせるように構成されている、
ことを特徴とする車両。
【請求項2】
請求項1に記載の車両であって、
前記冷却対象物は、エンジンであり、
前記評価指標は、前記エンジンを冷却する冷却水の温度である、
ことを特徴とする車両。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両であって、
前記冷却対象物は、空調用冷媒を外気と熱交換させる熱交換器であり、
前記評価指標は、前記空調用冷媒の圧力である、
ことを特徴とする車両。
【請求項4】
請求項1に記載の車両であって、
さらに、第一姿勢と、前記第一姿勢に比べて空力抵抗を低減できる第二姿勢とに変更可能な他の空力デバイスを備え、
前記他の空力デバイスは、リアスポイラ、スパッツ、および、サイドステップの少なくとも一つを含み、
前記コントローラは、前記フロントスポイラの前記展開姿勢への変更と同期して前記他の空力デバイスを前記第二姿勢にさせるように構成されている、
ことを特徴とする車両。




【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、グリルシャッタおよび可動式のフロントスポイラを有する車両を開示する。
【背景技術】
【0002】
従来から、グリル開口を開閉するグリルシャッタと、可動式のフロントスポイラと、を有する車両が知られている。例えば、特許文献1には、グリルシャッタと、可動式のフロントスポイラと、を有する車両が開示されている。
【0003】
通常、グリル開口は、車両の前部に配置された冷却対象物に風を送るための開口である。なお、冷却対象物は、例えば、車両の動力源(例えばエンジン等)、または、熱交換器(例えばラジエータやコンデンサ等)、または、その両方である。そして、グリルシャッタは、例えば、車速が小さい場合、または、冷却対象物の温度が高い場合に、開放される。これは、冷却対象物の冷却効率向上と、空気抵抗の低減と、を両立させるためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-013525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、グリルシャッタを開放した際に、フロントスポイラも展開すると、グリル開口に流入する風量を増加させることができる。そのため、グリルシャッタを開放するととともに、フロントスポイラを展開することで、冷却対象物をより効率的に冷却できる。
【0006】
しかし、従来、フロントスポイラの駆動制御は、グリルシャッタの駆動制御と独立して行われていた。その結果、従来、冷却対象物の冷却が必要な場合でも、フロントスポイラが展開されないことが多かった。結果として、従来の車両の場合、冷却対象物を効率的に冷却できなかった。
【0007】
そこで、本明細書では、冷却対象物の冷却効率をより向上できる車両を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書で開示する車両は、冷却対象物に風を送るために車両前端に形成されたグリル開口と、前記グリル開口を開閉可能なように構成されたグリルシャッタと、車両の前部かつ下部に配置され、格納姿勢と前記格納姿勢に比べて前記車両の下方に飛び出す展開姿勢とに変更可能なように構成されたフロントスポイラと、コントローラと、を備え、前記コントローラは、車速が第一閾値未満の場合、または、前記冷却対象物の温度の評価指標が基準値以上の場合、前記グリルシャッタを開放するように構成され、前記コントローラは、前記車速が前記第一閾値より高い第二閾値以上の場合に前記フロントスポイラを前記展開姿勢にさせるとともに、前記車速が前記第一閾値以上かつ第二閾値未満の場合に前記グリルシャッタの開放と同期して前記フロントスポイラを前記展開姿勢にさせるように構成されている、ことを特徴とする。
【0009】
この場合、前記冷却対象物は、エンジンであり、前記評価指標は、前記エンジンを冷却する冷却水の温度でもよい。
【0010】
また、前記冷却対象物は、空調用冷媒を外気と熱交換させる熱交換器であり、前記評価指標は、前記空調用冷媒の圧力でもよい。
【0011】
また、さらに、第一姿勢と、前記第一姿勢に比べて空力抵抗を低減できる第二姿勢とに変更可能な他の空力デバイスを備え、前記他の空力デバイスは、リアスポイラ、スパッツ、および、サイドステップの少なくとも一つを含み、前記コントローラは、前記フロントスポイラの前記展開姿勢への変更と同期して前記他の空力デバイスを前記第二姿勢にさせるように構成されてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本明細書で開示する技術によれば、冷却対象物の冷却効率をより向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】車両の構成を示すブロック図である。
図2】Frスポイラが格納姿勢である場合の車両前部の断面図である。
図3】Frスポイラが展開姿勢である場合の車両前部の断面図である。
図4】グリルシャッタの駆動制御の流れを示すフローチャートである。
図5】Frスポイラの駆動制御の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照してグリルシャッタ12およびフロントスポイラ(以下「Frスポイラ」と呼ぶ)20を有する車両の構成について説明する。図1は、車両の構成を示すブロック図である。また、図2および図3は、車両前部の概略断面図である。
【0015】
車両の前部には、パワーユニット室26が形成されている。このパワーユニット室26には、熱交換器30および動力源40が配置されている。熱交換器30は、冷媒を外気と熱交換させる。かかる熱交換器30は、例えば、エンジン42の冷却水を外気と熱交換させるラジエータ32と、空調用冷媒を外気と熱交換させるコンデンサ34と、を含む。
【0016】
熱交換器30の近傍には、温度センサ36と、圧力センサ38と、が設けられている。温度センサ36は、エンジン42の冷却水の温度(以下「エンジン水温Te」と呼ぶ)を検知する。圧力センサ38は、空調用冷媒の圧力を検知する。すなわち、空調用冷媒は、要求される空調能力に応じて圧縮される。圧力センサ38は、圧縮後における空調用冷媒の圧力を、冷媒圧力Pcとして検知する。検知されたエンジン水温Teおよび冷媒圧力Pcは、いずれも、コントローラ50に送信される。
【0017】
動力源40は、車両を走行させるための動力を出力する。動力源40は、例えば、エンジン42、および、モータの少なくとも一つを含む。図2に示す例において、動力源40は、エンジン42である。
【0018】
車両の前端面には、グリル開口10が形成されている。グリル開口10は、走行風をパワーユニット室26に導くための開口である。パワーユニット室26に配置された熱交換器30および動力源40は、走行風により直接、または、間接的に冷却される冷却対象物28である。そして、エンジン水温Teおよび冷媒圧力Pcは、冷却対象物28の温度を表す評価指標となる。
【0019】
グリル開口10の背後には、グリルシャッタ12が配置されている。グリルシャッタ12は、グリル開口10を開放または閉鎖する。図2および図3において、グリルシャッタ12は、開放されている。グリルシャッタ12を開閉するためのアクチュエータ14は、コントローラ50により制御される。アクチュエータ14は、例えば、モータまたは電磁シリンダを含む電動アクチュエータである。
【0020】
車両の下部には、Frスポイラ20が配置されている。Frスポイラ20は、格納姿勢と展開姿勢とに変更可能な可動式の空力デバイスである。Frスポイラ20は、格納姿勢の場合、図2に示すように、車両の底面に概ね沿う。一方、Frスポイラ20は、展開姿勢の場合、図3に示すように、格納姿勢の場合に比べて車両の下方に突出する。
【0021】
Frスポイラ20の姿勢を変更するためのアクチュエータ22は、コントローラ50により制御される。アクチュエータ22は、例えば、モータまたは電磁シリンダを含む電動アクチュエータである。このアクチュエータ22は、アクチュエータ14と独立して制御される。
【0022】
図1の例の場合、車両は、さらに、リアスポイラ(以下「Rrスポイラ」という)60と、スパッツ62と、サイドステップ64と、を有する。Rrスポイラ60と、スパッツ62と、サイドステップ64とは、いずれも、可動式の空力デバイスである。これら可動式空力デバイス60,62,64は、図示しないアクチュエータにより、第一姿勢と第一姿勢よりも空力抵抗を低減できる第二姿勢とに変更可能である。
【0023】
コントローラ50は、アクチュエータ14,22の駆動、ひいては、グリルシャッタ12およびFrスポイラ20の駆動を制御する。かかるコントローラ50は、物理的には、プロセッサ52とメモリ54とを含むコンピュータである。なお、図1では、コントローラ50を、単一のコンピュータとして図示しているが、コントローラ50は、物理的に離れた複数のコンピュータを組み合わせて構成されてもよい。
【0024】
コントローラ50は、エンジン水温Teと、冷媒圧力Pcと、車速Vvと、に基づいてグリルシャッタ12およびFrスポイラ20の駆動を制御する。以下、このコントローラ50による制御について説明する。
【0025】
通常、グリルシャッタ12を開放した場合、閉鎖した場合に比べて、多量の走行風が、冷却対象物28に送られる。したがって、グリルシャッタ12を開放した場合、閉鎖した場合に比べて、冷却対象物28の冷却効率が向上する。一方、グリルシャッタ12を開放した場合、閉鎖した場合に比べて、空気抵抗が増加する。この冷却効率の向上量および空気抵抗の増加量は、車速Vvによって変化する。
【0026】
そして、車両が低速で走行している場合は、グリルシャッタ12を開放したとしても、空気抵抗は、小さい。換言すれば、車両が低速で走行している場合、グリルシャッタ12を開放することによるデメリットは、殆どない。そこで、コントローラ50は、車速Vvが、予め規定された第一閾値V1未満の場合には、グリルシャッタ12を開放する。なお、第一閾値V1は、空気抵抗が小さいと推測される値である。第一閾値V1は、例えば、時速15km以上かつ50Km未満を満たす任意の値である。
【0027】
また、車両が非常に高速で走行している場合、動力源40(例えばエンジン42)の負担が大きい。この場合には、空力抵抗の増加に伴い消費エネルギが増加するとしても、動力源40を効率的に冷却することが求められる。そこで、コントローラ50は、車速Vvが予め規定された第三閾値V3以上の場合にも、グリルシャッタ12を開放する。なお、第三閾値V3は、動力源40への負担が大きいと推測される値である。第三閾値V3は、例えば、時速120Km以上の条件を満たす任意の値である。
【0028】
また、冷却対象物28(例えば動力源40または熱交換器30)の温度が高い場合、冷却対象物28を早急に冷却することが求められる。そこで、コントローラ50は、冷却対象物28の温度を示す評価指標が基準値以上の場合にも、グリルシャッタ12を開放する。具体的には、コントローラ50は、エンジン水温Teが規定の温度基準値Tst以上の場合、または、冷媒圧力Pcが規定の圧力基準値Pst以上の場合に、グリルシャッタ12を開放する。
【0029】
一方、コントローラ50は、上記の条件を満たさない場合、グリルシャッタ12を閉鎖する。すなわち、V1≦Vv<V3、かつ、Te<Tst、かつ、Pc<Pstの場合、コントローラ50は、グリルシャッタ12を閉鎖する。なお、上述した各種閾値V1,V3,Tst,Pstは、いずれも、不変の固定値でもよいし、状況により変化する可変値でもよい。また、各種閾値V1,V3,Tst,Pstは、ヒステリシスを持つ値でもよい。例えば、第一閾値V1は、下側第一閾値V1_Lと、下側第一閾値V1_Lよりも高い上側第一閾値V1_Uと、を含んでもよい。そして、コントローラ50は、車速Vvが減少する過程で下側第一閾値V1_Lを跨いだときに、グリルシャッタ12を開放し、車速Vvが上昇する過程で上側第一閾値V1_Uを跨いだときに、グリルシャッタ12を閉鎖してもよい。他の閾値V2,Tst,Pstについても同様である。
【0030】
次に、Frスポイラ20の姿勢の変更制御について説明する。上述した通り、Frスポイラ20は、車両の底面に沿った格納姿勢と、車両の下方に向かって突出した展開姿勢と、に変更可能である。Frスポイラ20が展開姿勢の場合、格納姿勢の場合に比べて、車両の空力抵抗が低減する。ただし、車両が低速走行している場合、空力抵抗は小さいため、Frスポイラ20の展開によるメリットは少ない。そこで、コントローラ50は、原則として、車速Vvが第二閾値V2以上の場合に、Frスポイラ20を展開させる。ここで、第二閾値V2は、第一閾値V1よりも大きく、第三閾値V3よりも小さい速度であり、ある程度の空力抵抗が発生すると予測される速度である。第二閾値V2は、例えば、時速30km~60kmの条件を満たす任意の値である。
【0031】
また、Frスポイラ20が展開姿勢の場合、格納姿勢の場合に比べて、冷却対象物28の冷却効率が向上する。すなわち、グリルシャッタ12が開放されている場合、走行風が、グリル開口10から冷却対象物28に向かって流れる。そして、この走行風により、冷却対象物28が冷却される。しかし、Frスポイラ20が格納されている場合、図2に示すように、走行風の一部は、グリル開口10に向かわず、車両の下側空間を流れる。一方、Frスポイラ20が展開されている場合、図3に示すように、走行風の一部は、車両の下側空間を通過できないため、グリル開口10に向かう。その結果、Frスポイラ20が展開されている場合、格納されている場合に比べて、冷却対象物28に向かう風量が増加する。結果として、展開姿勢の場合、格納姿勢の場合に比べて、冷却対象物28の冷却効率が向上する。
【0032】
そこで、コントローラ50は、冷却対象物28を効率的に冷却させたい場合、すなわち、グリルシャッタ12が開放されている場合には、車速Vvが第二閾値V2未満であっても、Frスポイラ20を展開させる。これにより、冷却対象物28がより効率的に冷却される。ただし、車速Vvが徐行走行している場合、車両は、駐車場等、障害物の多い路面を走行している可能性が高い。そして、障害物が多い路面を走行している際にFrスポイラ20を展開させた場合、Frスポイラ20が路面の障害物に干渉するおそれがある。そこで、コントローラ50は、グリルシャッタ12が開放している場合であっても、車速Vvが第一閾値V1未満の場合は、Frスポイラ20を展開させない。そして、車速Vvが第一閾値V1以上かつ第二閾値V2未満の場合、コントローラ50は、グリルシャッタ12の開放と同期して、Frスポイラ20を展開姿勢にさせる。これにより、冷却対象物28がより効率的に冷却される。
【0033】
次に、グリルシャッタ12およびFrスポイラ20の駆動制御の流れを図4図5を参照して説明する。図4に示すように、コントローラ50は、車速Vvが第一閾値V1未満、または、第三閾値V3以上の場合(S10でYes)、グリルシャッタ12を開放する(S20)。一方、V1≦Vv<V3の場合(S10でNo)、コントローラ50は、エンジン水温Teを温度基準値Tstと比較する(S12)。比較の結果、Te≧Tstの場合(S12でYes)、コントローラ50は、Frスポイラ20を展開させる指示を出力するとともに、グリルシャッタ12を開放させる(S18,S20)。
【0034】
また、Te<Tstの場合(S12でNo)、コントローラ50は、冷媒圧力Pcを圧力基準値Pstと比較する(S14)。比較の結果、Pc≧Pstの場合(S14でYes)、コントローラ50は、Frスポイラ20を展開させる指示を出力するとともに、グリルシャッタ12を開放させる(S18,S20)。一方、Te<TstかつPc<Pstの場合(S14でNo)、コントローラ50は、グリルシャッタ12を閉鎖する(S16)。
【0035】
次に、Frスポイラ20の駆動制御について図5を参照して説明する。コントローラ50は、図5のフローを、図4のフローと並行して実行する。図5に示すように、コントローラ50は、車速Vvが第二閾値V2以上の場合(S30でYes)、Frスポイラ20を展開姿勢にする。また、車速Vvが第二閾値V2未満の場合、コントローラ50は、展開指示の有無を確認する(S32)。また、車速Vvが第二閾値V2未満であっても(S30でNo)、ステップS18において、展開指示が出力されている場合(S32でYes)、コントローラ50は、Frスポイラ20を展開させる(S36)。一方、Vv<V2、かつ、展開指示もない場合(S30でNoかつS32でNo)、コントローラ50は、Frスポイラ20を格納する(S34)。
【0036】
以上の説明で明らかな通り、冷却対象物28の温度を示す評価指標Te,Pcが、基準値Tst,Pst以上の場合、ひいては、冷却対象物28の冷却が必要な場合、コントローラ50は、Frスポイラ20を展開させる。Frスポイラ20を展開させることで、より多量の走行風が冷却対象物28に向かうため、冷却対象物28をより効率的に冷却できる。そして、冷却対象物28を早期に冷却できれば、その分、グリルシャッタ12を早期に閉鎖できる。結果として、本例の技術によれば、グリルシャッタ12の閉鎖時間を増やすことができる。これにより、車両が受ける空力抵抗の総量を低減でき、エネルギ消費量、ひいては、CO2の排出量を低減できる。
【0037】
なお、上述の説明では、グリルシャッタ12の開放と同期して、Frスポイラ20のみを展開させている。しかし、車両が、他の可動式空力デバイスを有する場合もある。この場合、こうした他の可動式空力デバイスも、グリルシャッタ12の開放と同期して、姿勢変更されてもよい。例えば、車両が、他の可動式空力デバイスとして、Rrスポイラ60、スパッツ62、および、サイドステップ64の少なくとも一つを有する場合を考える。これら他の空力デバイス60,62,64は、第一姿勢と、第一姿勢よりも空力抵抗を低減できる第二姿勢と、に変更可能である。コントローラ50は、車速Vvが第一閾値V1以上、かつ、第二閾値V2未満の場合、グリルシャッタ12の開放と同期して、Rrスポイラ60、スパッツ62、および、サイドステップ64の少なくとも一つを、第二姿勢に変更してもよい。他の可動式空力デバイスが第二姿勢に変更されることで、動力源40の負荷が軽減され、冷却対象物28の温度が早期に低下する。そして、これにより、グリルシャッタ12をより早期に閉鎖できる。
【0038】
また、これまで説明した構成は、一例である。したがって、車両は、請求項1に記載の構成を具備するのであれば、車両の構成は、適宜、変更されてもよい。例えば、上述の説明では、動力源40としてエンジン42を有する車両を例に挙げて説明したが、本明細書で開示する技術は、動力源40としてモータを有する電動車両に適用されてもよい。また、上述の説明では、第三閾値V3以上の場合にグリルシャッタ12を開放している。しかし、グリルシャッタ12は、冷却対象物28の評価指標が、基準値以上の場合に開放されるのであれば、その他の開閉条件は、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0039】
10 グリル開口、12 グリルシャッタ、14 アクチュエータ、20 Frスポイラ、22 アクチュエータ、26 パワーユニット室、28 冷却対象物、30 熱交換器、32 ラジエータ、34 コンデンサ、36 温度センサ、38 圧力センサ、40 動力源、42 エンジン、50 コントローラ、52 プロセッサ、54 メモリ、60 Rrスポイラ、62 スパッツ、64 サイドステップ。


図1
図2
図3
図4
図5