(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-22
(45)【発行日】2025-07-30
(54)【発明の名称】段ボール製シート材、段ボール製スペーサ及び段ボール製パレット
(51)【国際特許分類】
B65D 19/34 20060101AFI20250723BHJP
【FI】
B65D19/34 Z
(21)【出願番号】P 2024001903
(22)【出願日】2024-01-10
【審査請求日】2024-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】301080493
【氏名又は名称】日段株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118393
【氏名又は名称】中西 康裕
(72)【発明者】
【氏名】安達 雅博
(72)【発明者】
【氏名】若槻 理恵
【審査官】▲高▼木 直史
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-262978(JP,A)
【文献】特開2018-047952(JP,A)
【文献】特開2012-153411(JP,A)
【文献】特開2009-249022(JP,A)
【文献】特開2006-016030(JP,A)
【文献】特開2000-355369(JP,A)
【文献】特開平09-104438(JP,A)
【文献】特開平08-034477(JP,A)
【文献】特開平07-125113(JP,A)
【文献】実開平06-080634(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 19/34
B65D 5/50
B65D 81/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の構造体を形成する段ボール製の内部構造シート部と、
前記内部構造シート部から続くと共に前記構造
体を包む段ボール製の外装シート部と、
からなり、
前記内部構造シート部の側から前記外装シート部の側へと巻くことにより角筒状となる段ボール製シート材であり、
前記内部構造シート部は、
巻き方向と直交する方向に伸びる第1~4の4つの折目を有しており、前記第1~4の4つの折目は、巻き始め側となる上流側から第1折目、第2折目、第3折目、第4折目となると共に、前記第1折目と前記第2折目との間には巻き方向に沿った切目が複数箇所設けられており、
前記切目を境目として、前記第1折目の位置と前記第2折目の位置が、前記第1折目と前記第2折目との間において、下流側へとずれており、
前記第1折目と前記第4折目が、前記第2折目と前記第3折目との中間点を結ぶ直線に対して線対称に設けられており、
前記第2折目と前記第3折目が、前記第2折目と前記第3折目との中間点を結ぶ直線に対して線対称に設けられており、
前記外装シート部は、
前記内部構造シート部からなる前記構造体を包むため、巻き方向と直交する方向に伸びる複数の包装折目を有していることを特徴とする段ボール製シート材。
【請求項2】
巻き方向に沿った複数の前記切目は、
巻き方向に対して、右方向に傾斜する右傾切目と、左方向に傾斜する左傾切目と、が交互に設けられており、
交互に設けられた前記右傾切目と前記左傾切目とにより、前記切目を境目としてずれている前記第1折目と前記第2折目とは、
上流に位置する前記第1折目と前記第2折目とでは、前記第1折目が前記第2折目より長くなっており、
下流に位置する前記第1折目と前記第2折目とでは、前記第1折目が前記第2折目より短くなっていることを特徴とする請求項1に記載の段ボール製シート材。
【請求項3】
前記外装シート部は、
前記第1折目と前記第2折目との間を覆う第1外装面と、
前記第2折目と前記第3折目との間を覆う第2外装面と、
前記第3折目と前記第4折目との間を覆う第3外装面と、
前記第4折目と前記第1折目との間を覆う第4外装面と、
からなることを特徴とする請求項1に記載の段ボール製シート材。
【請求項4】
請求項1に記載の段ボール製シート材からなることを特徴とする段ボール製スペーサ。
【請求項5】
積載面となる段ボール製デッキボードと、前記段ボール製デッキボードを支持する複数の段ボール製桁体と、からなる段ボール製パレットであって、
請求項1に記載の段ボール製シート材を前記段ボール製桁体として用いることを特徴とする段ボール製パレット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状の段ボールを巻くことにより角筒状となる段ボール製シート材、またこの段ボール製シート材からなる段ボール製スペーサ、またこの段ボール製シート材を桁体として用いる段ボール製パレットに関する。
【背景技術】
【0002】
物流における荷物を載せるためのパレットは、木製パレットが主流となっているが、森林伐採等の環境問題もある。そこで、特許文献1、2や非特許文献1、2にあるように、リサイクル品である段ボールを使い、軽量、廃棄が容易、というようなことから段ボール製パレットの使用も増えている。この段ボール製パレットの基本的な構成としては、積載面となる段ボール製デッキボードと、段ボール製デッキボードを支持する段ボール製桁体と、からなるものである。そして、この段ボール製桁体には、荷重が集中することから強度や耐久性が要求される。
【0003】
従来の段ボール製桁体としては、非特許文献1や非特許文献2(TSパレット203)にあるような段ボールを積層させたようなものが知られている。しかしながら、このような桁体は、段ボールの使用量が多くなるため、重量が増え、また使用後の廃棄量も増えてしまう、という問題がある。
【0004】
そこで、非特許文献2(TSパレット202)のように、段ボール製シート材を左右両方から対象に折り曲げ、内部に空間を設けた筒状の構造物からなる桁体が知られている。また、特許文献1のように桁体の外形をなす外筒(3)の内部に複数の内筒(4)を有して形成された桁体も知られている。
【0005】
なお、非特許文献2(TSパレット202)のような桁体は、十分な強度を有することから特許文献3(非特許文献2に掲載されている文献)のような梱包時や郵送時のスペーサとして用いることもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実用新案登録第3118919号公報
【文献】特許第5016376号公報
【文献】実用新案登録第2574583号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】カミコー株式会社 製品紹介 ダンボールパレット 2023年12月24日検索〈https://kamiko.co.jp/product/%E3%83%80%E3%83%B3%E3%83%9C%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%91%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%88/〉
【文献】大幸紙幸株式会社 製品一覧 2023年12月24日検索〈https://www.ts-pallet.jp/evidence/〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、非特許文献2のような桁体は、段ボール製シート材を左右両側から巻いていく必要があることから、一方を折り曲げた後、今度は反対側から折り曲げていくことになるので、組立作業に時間を要するという問題がある。また、特許文献1、2のような桁体も、複数個の内筒を折り曲げる作業が必要となることから、こちらも組立作業に時間を要するという問題がある。
【0009】
また、特許文献3のような段ボール製のスペーサも、スペーサとして使用するには複数個必要となるが、段ボール製シート材を左右両側から巻いていくことから、同様に1個1個の作業に時間を要するという問題がある。
【0010】
また、段ボール製パレットを移動させる際にフォークリフトを使用する場合、フォーク部分を隣り合う段ボール製桁体の間に挿入し、フォーク部分全体で段ボール製デッキボードを支えて移動させればよい。しかしながら、段ボール製パレットは軽量なこともあって、人の手で移動させることも多々あり、この場合にフォークリフトのように段ボール製デッキボードを直接手で持ってしまうと、人の手はフォーク部分に比べデッキボードを支える面積が圧倒的に小さいことから、人の手の当たる部分に大きな力が加わることになる。そして、何度も人の手で持ち上げて移動させていると、段ボール製デッキボードのその箇所が傷んでしまうという問題がある。
【0011】
そこで、段ボール製スペーサや段ボール製桁体として用いるのに適した作業性のよい段ボール製シート材を提供することを目的とする。また、この段ボール製シート材を用いた段ボール製スペーサを提供することを目的とする。また、この段ボール製シート材を用いた段ボール製桁体からなる段ボール製パレットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明の段ボール製シート材は、筒状の構造体を形成する段ボール製の内部構造シート部と、前記内部構造シート部から続くと共に前記構造物を包む段ボール製の外装シート部と、からなり、前記内部構造シート部の側から前記外装シート部の側へと巻くことにより角筒状となる段ボール製シート材であり、前記内部構造シート部は、巻き方向と直交する方向に伸びる第1~4の4つの折目を有しており、前記第1~4の4つの折目は、巻き始め側となる上流側から第1折目、第2折目、第3折目、第4折目となると共に、前記第1折目と前記第2折目との間には巻き方向に沿った切目が複数箇所設けられており、前記切目を境目として、前記第1折目の位置と前記第2折目の位置が、前記第1折目と前記第2折目との間において、下流側へとずれており、前記第3折目と前記第4折目は、前記第2折目と前記第3折目との中間点を結ぶ直線に対して線対称に設けられており、前記外装シート部は、前記内部構造シート部からなる前記構造体を包むため、巻き方向と直交する方向に伸びる複数の包装折目を有していることを特徴とする。
【0013】
本発明の段ボール製シート材は、内部構造シート部から外装シート部へ向かって折り曲げながら巻き進めると角筒状の部材となるので、十分な強度を有すると共に、作業性が良く、組み立てに要する時間が短くなるため、段ボール製スペーサや段ボール製桁体としての使用に適するものとなる。
【0014】
また、本発明の段ボール製シート材は、巻き方向に沿った複数の前記切目が、巻き方向に対して、右方向に傾斜する右傾切目と、左方向に傾斜する左傾切目と、が交互に設けられており、交互に設けられた前記右傾切目と前記左傾切目とにより、前記切目を境目としてずれている前記第1折目と前記第2折目とは、上流に位置する前記第1折目と前記第2折目とでは、前記第1折目が前記第2折目より長くなっており、下流に位置する前記第1折目と前記第2折目とでは、前記第1折目が前記第2折目より短くなっていることが好ましい。
【0015】
本発明の段ボール製シート材は、内部構造シート部から外装シート部へ向かって巻き進める際、内部構造シート部での巻き作業中に、巻き方向に対して反発する力を抑えることができので、より作業性がよいものとなる。
【0016】
また、本発明の段ボール製シート材は、前記外装シート部が、前記第1折目と前記第2折目との間を覆う第1外装面と、前記第2折目と前記第3折目との間を覆う第2外装面と、前記第3折目と前記第4折目との間を覆う第3外装面と、前記第4折目と前記第1折目との間を覆う第4外装面と、からなることが好ましい。
【0017】
本発明の段ボール製シート材は、角筒状部材において4面を外装面で覆うことができるので、強度や耐久性が要求される段ボール製スペーサや段ボール製桁体としての使用に非常に適する。
【0018】
また、本発明の段ボール製スペーサは、本発明の段ボール製シート材からなることを特徴とする。段ボール製シート材を段ボール製スペーサとして用いることで、強度や数が必要とされるスペーサとして非常に適する。また、特許文献1~3や非特許文献1、2あるような段ボール製桁体や段ボール製スペーサについては、構造的に小型化が難しいが、一方向に巻き進めるだけで組み立てられる本発明の段ボール製スペーサは、小型化し易く、小型のスペーサが要求されるような場合においても最適である。
【0019】
また、本発明の段ボール製パレットは、積載面となる段ボール製デッキボードと、前記段ボール製デッキボードを支持する複数の段ボール製桁体と、からなる段ボール製パレットであって、本発明の段ボール製シート材を前記段ボール製桁体として用いることが好ましい。
【0020】
本発明の段ボール製パレットは、段ボール製桁体として、本発明の段ボール製シート材を用いているので、桁体の組み立て作業性が良く、また十分な強度を備えたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】Aは本実施形態の段ボール製シート材の平面図であり、Bは段ボール製シート材を巻き進めてできあがる角筒状部材の斜視図である。
【
図2】本実施形態の段ボール製シート材を巻き進める工程の一部を示す図である。
【
図3】Aは本実施形態における内部構造シート部の平面図と参考の撮像であり、Bは比較のための内部構造シート部の平面図である。
【
図4】Aは本実施形態の段ボール製シート材を段ボール製スペーサとして使用できることを示すための撮像であり、BはAと異なる使用例を示すための撮像であり、CはA、Bと異なる使用例を示すための撮像である。
【
図5】段ボール製パレットに用いる段ボール製桁体として本実施形態の段ボール製シート材を用いた斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、実施形態及び図面を参照にして本発明を実施するための形態を説明するが、以下に示す実施形態は、本発明をここに記載したものに限定することを意図するものではなく、本発明は特許請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなく種々の変更を行ったものにも均しく適用し得るものである。なお、この明細書における説明のために用いられた各図面においては、各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせて表示しており、必ずしも実際の寸法に比例して表示されているものではない。
【0023】
[実施形態]
本実施形態の段ボール製シート材1について図を用いて説明する。
図1Aは本実施形態の段ボール製シート材1の平面図であり、
図1Bは段ボール製シート材1を巻くことでできた角筒状部材100の斜視図である。
【0024】
段ボール製シート材1は、段ボールからなる矩形のシート状のものである。使用する段ボールの種類は問わないが、本実施形態においては表ライナと裏ライナとで中芯を貼り合わせた両面段ボールを用いている。なお、
図1Aは、裏ライナ側から見た平面図となっている。また、
図1Aに示す段ボール製シート材1は、紙面の上下方向が所謂紙巾方向であり、左右方向が所謂流れ方向となる。
【0025】
そして、段ボール製シート材1は、
図1Aの紙面上方から下方に向かう紙巾方向を巻き方向Rとして、折り曲げながら巻き進めていくことで
図1Bに示す角筒状部材100となる、
【0026】
このような段ボール製シート材1は、
図1Aに示すように巻き方向Rに長い矩形状であり、その前半半分を内部構造シート部10とし、後半残り半分を外装シート部50としている。
【0027】
この内部構造シート部10は、折り曲げながら巻き進めていくことで、角筒状部材100の内部に位置する角筒状の構造体30(後述する
図2のS2に示す)を形成するものである。
【0028】
より具体的には、内部構造シート部10は、巻き方向Rと直交する方向(流れ方向)に伸びる第1折目11、第2折目12、第3折目13、第4折目14の4つの折目を有している。この4つの折目11~14は、巻き方向Rにおいて巻き始め側となる上流側から、第1折目11、第2折目12、第3折目13、第4折目14となっている。なお、4つの折目11~14等、本実施形態で説明する折目は、裏ライナの表面に折目加工を施して形成されたものであり、
図1等では破線で示している。
【0029】
そして、第1折目11と第2折目12との間には、巻き方向Rに沿った切目が複数箇所(
図1Aでは4つ)設けられている。この切目は、具体的には、巻き方向Rに対して、右方向に傾斜する右傾切目20と、左方向に傾斜する左傾切目21と、からなり、この右傾切目20と左傾切目21とが交互に設けられている。なお、右傾切目20や左傾切目21等、本実施形態で説明する切目は、段ボールを貫通するように切断して形成されたものである。
【0030】
そして、この右傾切目20、或いは左傾切目21を境目として、
図1Aに示すように第1折目11と第2折目12の位置が、第1折目11と第2折目12との間において、下流側へとずれて設けられている。このずれにより、第1折目11と第2折目12は、
図1Aに示すように、上流側に位置する第1折目11u、第2折目12u、下流側に位置する第1折目11d、第2折目12dに交互に分かれた構成となっている。
【0031】
一方、第3折目13と第4折目14は、第2折目12と第3折目13との中間点を結ぶ流れ方向と平行な仮想の直線Vに対して線対称となっている。
従って、
図1Aに示すように、第3折目13と第4折目14にある右傾切目20と左傾切目21の形成順は、第1折目11と第2折目12にある右傾切目20と左傾切目21の形成順とは逆になっている。そして、第3折目13と第4折目14の位置が、第3折目13と第4折目14との間において、上流側へとずれ、このずれにより、第3折目13と第4折目14は、
図1Aに示すように、上流側に位置する第3折目13u、第4折目14u、下流側に位置する第3折目13d、第4折目14dに交互に分かれた構成となっている。
【0032】
なお、第3折目13と第4折目14は、第2折目12と第3折目13との中間点を結ぶ仮想の直線Vに対して線対称となっているが、ここでいう線対称とは、形状が全く同じという厳密な意味ではない。段ボール製シート材1は、巻き進めることになるので、段ボールの厚みも考慮する必要があるので、例えば、第1折目11と第2折目との間は、第3折目13と第4折目14との間に比べ若干短く設計する必要があり、厳密な意味での線対称とはなっていない。
【0033】
また、内部構造シート部10は、巻き方向Rの巻き始めとなる端部に2つの逃げ部15が設けられている。この逃げ部15は、段ボールの端部を切り欠いて形成されており、流れ方向の幅が下流側の第4折目14dの長さより少し長くなるように設けられている。
【0034】
このような内部構造シート部10を巻き方向Rに沿って折り曲げながら巻き進めることで、後述する筒状部材100の内部に位置する角筒状の構造体30を形成することになる。
【0035】
外装シート部50は、折り曲げながら巻き進めていくことで、角筒状部材100の内部に位置する角筒状の構造体30を包み込むものである。
より具体的には、外装シート部50は、内部構造シート部10からなる構造体30を包むため、巻き方向Rと直交する方向(流れ方向)に伸びる第1包装折目51、第2包装折目52、第3包装折目53、第4包装折目54の4つの包装折目を有している。この4つの包装折目51~54は、巻き方向Rにおいて上流側から、第1包装折目51、第2包装折目52、第3包装折目53、第4包装折目54となっている。
【0036】
そして、第1包装折目51と第2包装折目52との間が、構造体30における第1折目11と第2折目12との間を覆うことになる第1外装面61となる。また、第2包装折目52と第3包装折目53との間が、構造体30における第2折目12と第3折目13との間を覆うことになる第2外装面62となる。また、第3包装折目53と第4包装折目54との間が、構造体30における第3折目13と第4折目14との間を覆うことになる第3外装面63となる。そして、第4包装折目54から外装シート部50の端部までの間が、構造体30における第4折目14と第1折目11との間(内部構造シート部10の端部と第1折目11の間、第4折目14と第1包装折目51の間)を覆うことになる第4外装面64となる。
【0037】
また、外装シート部50は、第1包装折目51に沿って2箇所のロック凹部55が設けられており、巻き方向Rにおける最下流部である端部に2箇所のロック凸部56が設けられている。このロック凹部55は切断による切目が形成されたものであり、ロック凸部56の差込口となっている。
【0038】
このような外装シート部50を巻き方向Rに沿って折り曲げながら巻き進めることで、角筒状部材100の内部に位置する角筒状の構造体30の4面全体を包み込むことになる。
【0039】
次に、角筒状部材100が、段ボール製シート材1からできあがるまでの工程について図を用いて説明する。
図2は、段ボール製シート材1を巻き進める工程の一部を示した工程図である。
【0040】
まず、
図1Aに示す段ボール製シート材1について、巻き方向Rの上流側となる内部構造シート部10の第1折目11(11u、11d)と第2折目12(12u、12d)に沿って、折目が内側となる谷折りを行う。このように段ボール製シート材1を折り曲げることにより、表ライナ側が現れ
図2のS1に示す状態となる。つまり、上流側に位置する第1折目11u(第2折目12u)と下流側に位置する第1折目11d(第2折目11d)のずれにより、第1折目11uと第2折目12uとの間で形成される側面31と、第1折目11dと第2折目12dとの間で形成される側面32とで位置がずれ、互いの対向する辺が交差するようになる。
【0041】
このS1の状態から、次に、内部構造シート部10の第3折目13(13u、13d)と第4折目14(14u、14d)に沿って、折目が内側となる谷折りを行う。このように段ボール製シート材1を折り曲げることにより、
図2のS2に示す状態となる。つまり、上流側に位置する第3折目13u(第4折目14u)と下流側に位置する第3折目13d(第4折目14d)のずれにより、第3折目13uと第4折目14uとの間で形成される側面33と、第3折目13dと第4折目14dとの間で形成される側面34とで位置がずれ、互いの対向する辺が交差するようになる。そして、内部構造シート部10による角筒状の構造体30が完成する。このような構造体30は垂直方向からの力だけでなく、巻き方向Rや流れ方向の力に対しても十分な強度を有している。
なお、S2の工程において、逃げ部15が設けられていることで、内部構造シート部10の端部と側面34とが干渉しないようになっている。
【0042】
そして、このS2の状態から、次に、外装シート部50の第1包装折目51に沿って、折り目が内側となる谷折り行い、続けて第2包装折目52に沿って、谷折りを行うことにより、
図2のS3に示す状態となる。つまり、構造体30における第1折目11と第2折目12からなる側面31、32は、第1包装折目51と第2包装折目52からなる第1外装面61によって覆われ、第2折目12と第3折目13からなる面が、第2包装折目52と第3包装折目53からなる第2外装面62によって覆われる。
【0043】
このS3の状態から、更に外装シート部50の第3包装折目53に沿って、折り目が内側となる谷折り行い、続けて第4包装折目54に沿って、谷折りを行うことにより、
図1Bに示す角筒状部材100となる。つまり、構造体30における第3折目13と第4折目14からなる側面33、34は、第3包装折目53と第4包装折目54からなる第3外装面63によって覆われ、第4折目14と第1折目11からなる面が、第4包装折目54から外装シート部50の端部までの間からなる第4外装面64によって覆われる。そして、ロック凸部56を対応するロック凹部55に差し込むことで、内部構造シート部10によって形成される角筒状部材100が完成する。
【0044】
このような角筒状部材100は、強固な構造体30を更に4つの面で覆うことになるので、非常に強固なものとなる。また、角筒状部材100は、段ボール製シート材1を巻き方向Rに沿って一方向に折り曲げながら巻き進めるだけで完成される。従って、本実施形態の段ボール製シート材1は、二方向からの折り曲げ作業のような折り曲げ向きを変えるような作業は不要であり、非常に作業性のよいものとなっている。
【0045】
なお、本実施形態の段ボール製シート材は、その完成状態の角筒状部材100において、ロック凸部56をロック凹部55に差し込んで接合しているが、当然ながら、接着剤を用いてより強固に接合しても構わない。また、ロック凹部55とロック凸部56の構成ではなく接着剤により接合しても構わないし、段ボール用ステープルを用いて接合しても構わない。
【0046】
また、本実施形態の段ボール製シート材1は、交互に設けられた右傾切目20と左傾切目21とにより、これらの切目を境目として位置がずれている第1折目11と第2折目12とが、
図1Aに示すように、上流に位置する第1折目11uと第2折目uとでは、第1折目11uが第2折目12uより長くなっており、下流に位置する第1折目11dと第2折目12dとでは、第1折目11dが第2折目12dより短くなっている。
【0047】
このような構成により、段ボール製シート材1を折り曲げながら巻き進める際、内部構造シート部10での折り曲げ作業中において、巻き方向に対して反発する力(元のシート状の状態に復元しようとする力)を抑えることができるので、より作業性のよいものとなっている。
【0048】
この点について、
図3を用いて詳細に説明する。
図3のAは本実施形態における内部構造シート部10の平面図と参考画像であり、Bは比較のために示した内部構造シート部10Bの平面図となっている。なお、
図3Bの内部構造シート部10Bにおいては、
図3Aの内部構造シート部10と構成が同一の部分については同一の参照符号を付与しており、構成が異なる同一名の部分については参照符号に添え字「B」を付して図示している。
【0049】
ここで
図3Aの内部構造シート部10は、
図1に示すものと同じであり、交互に設けられた右傾切目20と左傾切目21とにより、これらの切目を境目として位置がずれている第1折目11と第2折目12とが、上流に位置する第1折目11uと第2折目uとでは、第1折目11uが第2折目12uより長くなっており、下流に位置する第1折目11dと第2折目12dとでは、第1折目11dが第2折目12dより短くなっている。
【0050】
そして、第3折目13と第4折目14は、第2折目12と第3折目13との中間点を結ぶ流れ方向と平行な仮想の直線Vに対して線対称となっている。つまり、上流に位置する第3折目13uと第4折目uとでは、第3折目13uが第4折目14uより長くなっており、下流に位置する第3折目13dと第24折目14dとでは、第3折目13dが第4折目14dより短くなっている。
【0051】
一方、
図3Bの内部構造シート部10Bは、交互に設けられた右傾切目20と左傾切目21とにより、これらの切目を境目として位置がずれている第1折目11Bと第2折目12Bとが、上流に位置する第1折目11uBと第2折目uBとでは、第1折目11uBが第2折目12uBより短くなっており、下流に位置する第1折目11dBと第2折目12dBとでは、第1折目11dBが第2折目12dBより長くなっている。
【0052】
そして、第3折目13Bと第4折目14Bは、第2折目12Bと第3折目13Bとの中間点を結ぶ流れ方向と平行な仮想の直線Vに対して線対称となっている。つまり、上流に位置する第3折目13uBと第4折目uBとでは、第3折目13uBが第4折目14uBより短くなっており、下流に位置する第3折目13dBと第24折目14dBとでは、第3折目13dBが第4折目14dBより長くなっている。
【0053】
この時、
図3Aに示す内部構造シート部10では、上底が長い第1折目11uと下底が短い第2折目12uからなる台形(側面31)は下方に凸の台形となり、上底が短い第1折目11dと下底が長い第2折目12dからなる台形(側面32)は上方に凸の台形となっている。従って、折り曲げていくと、参考画像にあるように上流側の下方に凸の台形(側面31)と下流側の上方に凸の台形(側面32)とが互いに上下方向に近づいていくことになり、上流側の台形(側面31)と下流側の台形(側面32)の対向する辺が接触することになる。つまり、上流側の台形(側面31)と下流側の台形(側面32)とが互いに対向する辺において密接し係合することとなる。
【0054】
従って、より一層、角筒状の構造体30の強度が高まり、その結果角筒状部材100が非常に強固なものとなる。また、この効果と共に、折り曲げによって
図2のS1に示す状態において、側面31と側面32とが互いに係合することになるので、内部構造シート部10での折り曲げ作業中において、巻き方向に対して反発する力(元のシート状の状態に復元しようとする力)をこの係合によって抑えることができるので、より作業性のよいものとなる。
【0055】
一方、
図3Bに示す内部構造シート部10Bでは、上底が短い第1折目11uBと下底が長い第2折目12uBからなる台形(側面31B)は上方に凸の台形となり、上底が長い第1折目11dBと下底が短い第2折目12dBからなる台形(側面32B)は下方に凸の台形となっている。従って、折り曲げていくと、上流側の上方に凸の台形(側面31B)と下流側の下方に凸の台形(側面32B)とが互いに上下方向に近づいていくことになるが、上流側の台形(側面31B)と下流側の台形(側面32B)との対向する辺が互いに離れていくことになってしまう。
【0056】
従って、側面31Bと側面32Bとが係合しないで離れているため、第1折目11や第2折目12での折り曲げによって生じる弾性による復元力を抑える力が働かなくなり、復元力が機能することになる。このため、折り曲げ作業中に手を休めたりすると、元の状態に復元してしまうことになる。
【0057】
以上のことから、本実施形態における右傾切目20と左傾切目21により、この切目を境目として位置がずれている第1折目11と第2折目12とが、上流に位置する第1折目11uと第2折目uとでは、第1折目11uが第2折目12uより長くなっており、下流に位置する第1折目11dと第2折目12dとでは、第1折目11dが第2折目12dより短くなっている構成は、段ボール製シート材1を折り曲げながら巻き進める際、内部構造シート部10での折り曲げ作業中において、巻き方向に対して反発する力を抑えることができるので、より作業性のよいものとなる。
【0058】
このような本実施形態の段ボール製シート材1は、組み立てた角筒状部材100が十分な強度を有すると共に、組み立ての作業性が良く、短時間に角筒状部材100へと組み立てることができる。従って段ボール製シート材1は、段ボール製スペーサや段ボール製パレットに用いる段ボール製桁体として非常に適する。この点について具体的に説明する。
【0059】
[段ボール製スペーサ]
図4は、本実施形態の段ボール製シート材1を組み立てた角筒状部材100を段ボール製スペーサ101として用いる場合の使用例を説明するための参考画像である。なお、
図4に写る段ボール製スペーサ101は、本実施形態の段ボール製シート材1を組み立てた角筒状部材100からなるものではない。
図4に写る段ボール製スペーサ101の代わりに角筒状部材100からなる段ボール製スペーサを用いることができることを示すための画像である。
【0060】
図4Aに示すように、矩形状の段ボールCの上に複数の段ボール製スペーサ101を配置して使用することができる。段ボールCの上の段ボール製スペーサ101は、段ボールCの表面に接着剤によって固定されている。このような段ボール製スペーサ101の使用は、例えば、段ボール製スペーサ101が積層コアからなる緩衝材となり、積層コア付きの段ボールCとして精密機械や重量機械の固定や下敷きとして使用できる。
【0061】
図4Bに示すように、箱状の段ボールCの側面に段ボール製スペーサ101を複数配置して使用することができる。段ボールCの側面の段ボール製スペーサ101は、段ボールCの側面に接着剤によって固定されている。このような段ボール製スペーサ101の使用は、例えば、箱状の段ボールCの中に物体を収納した際の物体の移動を規制するスペーサとして機能する。
【0062】
図4Cに示すように、箱状の段ボールCの底面に段ボール製スペーサ101を配置すると共に、段ボール製スペーサ101の表面に開口穴102を設けて使用することができる。このような段ボール製スペーサ101の使用は、例えば、箱状の段ボールCの中に脚付きの物体を収納した際の物体の脚を開口穴102に挿入すると共に、段ボール製スペーサ101の表面で物体の底面を支持して、収納した物体移動を規制するスペーサとして機能する。
【0063】
こように、実施形態の段ボール製シート材1を組み立てた角筒状部材100は、十分な強度を有すると共に簡単に組み立てることができるので、
図4に示すような段ボール製スペーサ101のように使用することができる。また、
図4に示すような使用において、段ボール製スペーサ101は、例えば、流れ方向の長さが200mm程度のようなもの等、比較的小型なものが使用されることも多い。このようなサイズのスペーサを例えば特許文献1にあるような構造で作成するのは非常に難しいが、本実施形態の段ボール製シート材1からなるスペーサは小型化も容易である。
【0064】
[段ボール製桁体]
図5は、本実施形態の段ボール製シート材1組み立てた角柱状部材100を段ボール製桁体103として用いた段ボール製パレットPの斜視図である。この段ボール製パレットPは、積載面となる段ボール製デッキボードDと、この段ボール製デッキボードDを支持する複数の段ボール製桁体103と、からなる。この段ボール製デッキボードDは段ボールを複数枚積層したものである。
【0065】
なお、本実施形態において段ボール製桁体103のサイズは、高さ60mm、幅130mm、長さ1100mmとなっている。一般的な桁体のサイズは、高さ90mm、幅90mmのものが多いがこのようなサイズとすることもできる。
【0066】
そして、本実施形態のような段ボール製桁体103として用いると、開口部Oに手を入れることができるので、段ボール製パレットPを人の手で移動させるような場合には、例えば、段ボール製桁体103の開口部Oに指入れると共に段ボール製デッキボードDにも指を掛けて両方を持って移動させることができる。
【0067】
なお、本実施形態における段ボール製パレットPは、積載面となる段ボール製デッキボードDが上下にある両面二方差しのパレットとなっているが、片面二方差しのパレットであってもよい。また、短い段ボール製桁体103を用いることで、四方差しのパレットとしてもよい。
【0068】
このように本実施形態の段ボール製シート材1は、内部構造シート部10から外装シート部50へ向かって折り曲げながら巻き進めることで角筒状部材100となるので、十分な強度を有すると共に、作業性が良く、組み立てに要する時間が短いものとなる。
【0069】
なお、本実施形態の段ボール製シート材1は、第1折目11と第2折目12との間(第3折目13と第4折目14との間)も設けられている巻き方向Rに沿った切目が、右方向に傾斜する右傾切目20と、左方向に傾斜する左傾切目21であったが、切目は必ずしも傾斜していなければならないわけではなく、巻き方向に平行な切目を採用することもできる。
【0070】
また、本実施形態の段ボール製シート材1は、
図1Bに示すように筒の開口形状が長方形状となっているが、この開口形状は、第1折目11と第2折目12の位置が、第1折目11と第2折目12との間において、下流側へのずれの量によって変えることもできる。例えば、ずれの量が小さければ開口の高さが高くなる。また、これにより垂直方向からの荷重により強くなる。一方、ずれの量が大きくなれば開口の高さが低くなり、これにより水平方向からの荷重により強くなる。
【0071】
また、本実施形態の段ボール製シート材1の外装シート部50は、第1~第4の4つの外装面61~64を形成していた。しかしながら、4つの外装面61~64に限られるものではなく、包装折目の数を増やしてより多くの外装面を形成することや、包装折目の数を減らして少ない外装面とすることもできる。
【符号の説明】
【0072】
1:段ボール製シート材
100:角筒状部材
10:内部構造シート部
11、11u、11d:第1折目
12、12u、12d:第2折目
13、13u、13d:第3折目
14、14u、14d:第4折目
20:右傾切目
21:左傾切目
30:構造体
50:外装シート部
51:第1包装折目
52:第2包装折目
53:第3包装折目
54:第4包装折目
61:第1外装面
62:第2外装面
63:第3外装面
64:第4外装面
V:仮想の直線
R:巻き方向(紙巾方向)
C:段ボール
P:段ボール製パレット