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特許7715458単一光子検出器及びその製造方法、単一光子検出器マトリックス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-22
(45)【発行日】2025-07-30
(54)【発明の名称】単一光子検出器及びその製造方法、単一光子検出器マトリックス
(51)【国際特許分類】
   H10F 30/225 20250101AFI20250723BHJP
   H10F 77/124 20250101ALI20250723BHJP
【FI】
H10F30/225
H10F77/124
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023538995
(86)(22)【出願日】2022-09-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-20
(86)【国際出願番号】 CN2022118649
(87)【国際公開番号】W WO2023051242
(87)【国際公開日】2023-04-06
【審査請求日】2023-08-16
(31)【優先権主張番号】202111159738.9
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】523458656
【氏名又は名称】泉州市三安光通訊科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】▲孫▼ 維忠
(72)【発明者】
【氏名】▲趙▼ 彦立
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 振▲鋒▼
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 思▲遠▼
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 超
(72)【発明者】
【氏名】邱 ▲しゅ▼穎
(72)【発明者】
【氏名】▲孫▼ 久国
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 文欣
【審査官】原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-135360(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109346552(CN,A)
【文献】特開2015-177167(JP,A)
【文献】特開2012-054477(JP,A)
【文献】特開2014-099467(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112289888(CN,A)
【文献】特開2018-088494(JP,A)
【文献】特開2007-311720(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0315073(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10F 30/00-39/95
H10F 71/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一光子検出器の製造方法であって、提供される基板の一側にエピタキシャル技術を用いて上方へ順番にエピタキシャル成長されるバッファ層と吸収層と過渡層と荷電層と増倍層と反転層と遷移層とウィンドウ層とオーミック接触層とを含む多層エピタキシャル層を形成しオーミック接触層とウィンドウ層との中に底面と前記底面の周縁から上へ延伸する側周面とを有し、且つ、前記側周面の幅が下から上へと広くなる構成により、断面がカーブ状になるカーブ状拡散エリアを形成し、前記基板の上の一部のエピタキシャル層の周縁に対してエッチングすることによりプラットフォーム構造を形成し、前記基板の背面に入射光の入射に供する光ウィンドウを形成し、前記オーミック接触層にPタイプ電極を形成すると共に、前記基板の背面にNタイプ電極を形成しており、前記過渡層はInGaAsP材料により作成されており、前記反転層は前記遷移層の電場の強度を低くしてエッジ破壊効果を抑えることができ、かつ、前記荷電層の調整コントロールに基づいて電場分布に対して二次調整コントロールを行うことに用いられることを特徴とする単一光子検出器の製造方法。
【請求項2】
前記反転層はInP、InGaAs、InAlAs、InAlGaAs、InGaAsPの中の1つもしくは複数の組合せにより構成されることを特徴とする請求項1に記載の単一光子検出器の製造方法。
【請求項3】
前記反転層の積分電荷密度は2.0*e12/cm~4.0*e12/cmの範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載の単一光子検出器の製造方法。
【請求項4】
前記荷電層の厚さは150nm~300nmの範囲内にあり、前記増倍層の厚さは400nm~800nmの範囲内にあり、前記反転層の厚さは150nm~300nmの範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載の単一光子検出器の製造方法。
【請求項5】
ーミック接触層とウィンドウ層との中にカーブ状拡散エリアを形成するステップは、前記オーミック接触層にエッチング層を形成する工程と、前記エッチング層にエッチングエリアを定義すると共に、前記エッチングエリアに基づいて前記エッチング層に対してエッチングを行いエッチング開口を形成して前記エッチング開口から一部のオーミック接触層を露出させる工程とを含み、前記エッチング開口により拡散技術を採用して前記オーミック接触層及びウィンドウ層に対してPタイプ拡散を行うことでPタイプドーピングのカーブ状拡散エリアを形成することを特徴とする請求項1に記載の単一光子検出器の製造方法。
【請求項6】
前記基板における少なくとも一部のエピタキシャル層の周縁に対してエッチングを行うことにより、プラットフォーム構造を形成するステップは、前記オーミック接触層とウィンドウ層と遷移層と反転層と増倍層と荷電層と過渡層と吸収層とバッファ層と一部の基板の周縁に対してエッチングを行うことにより、前記基板の上方エリアに第1のプラットフォームを形成し、前記オーミック接触層とウィンドウ層と遷移層と反転層の周縁に対してエッチングを行うことにより、前記増倍層の上方エリアに第2のプラットフォームを形成することを含むことを特徴とする請求項1に記載の単一光子検出器の製造方法。
【請求項7】
前記オーミック接触層とウィンドウ層と遷移層と反転層の周縁に対してエッチングを行うことによって前記増倍層の上方エリアに第2のプラットフォームを形成するステップの後、前記製造方法は、前記第1のプラットフォームと第2のプラットフォームとの上に高抵抗重合体材料により構成され、もしくはSiO、SiN、Alの中の1つもしくは複数種類により構成されたパッシベーション層を形成することを更に含むことを特徴とする請求項6に記載の単一光子検出器の製造方法。
【請求項8】
前記基板の背面に光ウィンドウを形成するステップは、前記基板の背面に対して腐食処理の厚さが前記基板の厚さより小さい腐食処理を行うことと、前記基板の腐食エリアに増倍透過膜を成長させることで光ウィンドウを形成することとを含むことを特徴とする請求項1に記載の単一光子検出器の製造方法。
【請求項9】
基板と、エピタキシャル技術を用いて前記基板に上方へ順番にエピタキシャル成長されるバッファ層と吸収層と過渡層と荷電層と増倍層と反転層と遷移層とウィンドウ層とオーミック接触層とを含み前記オーミック接触層とウィンドウ層の中にカーブ状拡散エリアが形成され前記基板の一部のエピタキシャル層の周縁がエッチングされてプラットフォーム構造が形成される多層エピタキシャル層と、前記基板の背面に形成されて入射光の入射に供する光ウィンドウと、前記オーミック接触層に形成されるPタイプ電極と、前記基板背面に形成されるNタイプ電極と、を含み、その中で、前記過渡層はInGaAsP材料により作成されており、前記反転層は前記遷移層の電場の強度を低くしてエッジ破壊効果を抑えることができ、かつ、前記荷電層の調整コントロールに基づいて電場分布に対して二次調整コントロールを行うことに用いられることを特徴とする単一光子検出器。
【請求項10】
前記プラットフォーム構造は、前記オーミック接触層とウィンドウ層と遷移層と反転層と増倍層と荷電層と過渡層と吸収層とバッファ層と一部の基板の周縁に対してエッチングを行うことによって前記基板の上方エリアに形成された第1のプラットフォームと、前記オーミック接触層とウィンドウ層と遷移層と反転層の周縁に対してエッチングを行うことによって前記増倍層の上方エリアに形成された第2のプラットフォームとを含むことを特徴とする請求項9に記載の単一光子検出器。
【請求項11】
前記単一光子検出器は前記第1のプラットフォームと第2のプラットフォームに成長されたパッシベーション層を更に含み、前記パッシベーション層は高抵抗重合体材料により構成され、もしくはSiO、SiN、Alの中の1つもしくは複数種類により構成されることを特徴とする請求項10に記載の単一光子検出器。
【請求項12】
前記反転層は、InP、InGaAs、InAlAs、InAlGaAs、InGaAsPの中の1つもしくは複数種類により構成されることを特徴とする請求項9に記載の単一光子検出器。
【請求項13】
前記反転層の積分電荷密度は2.0*e12/cm~4.0*e12/cmの範囲内にあることを特徴とする請求項9に記載の単一光子検出器。
【請求項14】
前記荷電層の厚さは150nm~300nmであり、前記増倍層の厚さは400nm~800nmであり、前記反転層の厚さは150nm~300nmであることを特徴とする請求項9に記載の単一光子検出器。
【請求項15】
請求項9に記載の単一光子検出器を複数含み、複数の前記単一光子検出器はマトリックスを呈するように配列され、複数の前記単一光子検出器はフリップチップ溶接技術により読み出し回路に集積され、各前記単一光子検出器のPタイプ電極の間は互いに離間し、複数の前記単一光子検出器はNタイプ電極を共有することを特徴とする単一光子検出器マトリックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体デバイスの技術分野に関し、具体的に言うと、単一光子検出器及びその製造方法、単一光子検出器マトリックスに関する。
【背景技術】
【0002】
光は一個一個の小さなエネルギーユニットにより構成され、すなわち、光子(フォトン)は光の最も小さい構成単位である。一つの光子のエネルギーは可視光もしくは近赤外線波長域において10~19ジュールであり、従来の光電子検出器では1つのフォトンに対する効果的検出を実現することは不可能である。単一光子検出器は敏感度が高く、シグナルノイズ比が高くて時間に対するジッターが低いなどのアドバンテージを有する。このため、単一光子検出器がタイムリーに現れた。単一光子検出技術は、量子鍵配送、レーザ距離計測、生物発光検出、DNA反応などの弱光検出分野に広く応用される。
【0003】
現在、単一光子検出器は主に、光電子増倍管(PMT)、超伝導単一光子検出器、単一光子アバランシェダイオード(SPAD)などを含む。この中で、光電子増倍管は主に電子増倍メカニズムを利用し、ゲインが大きく、敏感度が高いなどの利点を有し、そのゲインは104~108まで到達するが、欠点としては1200nm以上のスペクトルに対するレスポンスは非常に悪く、そしてサイズが大きく、暗計数が比較的に大きい点があり、現段階の単一光子検出の需要を満たすことができない。超伝導単一光子検出器は主に超伝導相変化メカニズムを利用し、高敏感度と低ノイズの特徴を兼ね備え、比較的に高い検出率を有するが、稼働環境は超低温環境にあるため、日常の生産及び生活における応用が大いに限定される。SPADは主に衝突電離メカニズムに基づき、雪崩効果を利用して比較的に大きいマクロ観測可能電流を形成する。実用性から考えると、SPADは可視光もしくは近赤外線波長域において稼働可能で、高ゲインと高シグナルノイズ比を有し、消耗電力が低くて体積が小さいなどの利点を有し、現在用途が最も広く、そして応用ポテンシャルが最も大きい単一光子検出器である。比較的に大きなゲインを得るため、SPADは通常ガイガーモードにおいて稼働し、すなわち、稼働電圧がブレークダウン電圧より大きく、エッジ破壊などの問題が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、例えば、単一光子検出器及びその製造方法、単一光子検出器マトリックスを提供し、エッジ破壊の問題を効果的に抑え、且つ、製造技術の複雑性を下げることを含む。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施例は以下のように実現できる:第一の方面において、本発明は単一光子検出器の製造方法を提供し、上記方法は、提供される基板の一側に、バッファ層と吸収層と過渡層と荷電層と増倍層と反転層と遷移層とウィンドウ層とオーミック接触層とを含む多層エピタキシャル層を順次形成し、拡散技術によりオーミック接触層とウィンドウ層との中にカーブ状拡散エリアを形成し、前記基板の上の一部のエピタキシャル層の周縁に対してエッチングすることによりプラットフォーム構造を形成し、前記基板の背面に入射光の入射に供する光ウィンドウを形成し、前記オーミック接触層にPタイプ電極を形成すると共に、前記基板の背面にNタイプ電極を形成し、この中で、前記反転層は前記荷電層の調整コントロールに基いて電場分布に対して二次調整コントロールを行うことに用いられる。
【0006】
選択できる実施形態において、前記反転層はInP、InGaAs、InAlAs、InAlGaAs、InGaAsPの中の1つもしくは複数の組合せにより構成される。
【0007】
選択できる実施形態において、前記反転層の積分電荷密度は2.0*e12/cm~4.0*e12/cmの範囲内にある。
【0008】
選択できる実施形態において、前記荷電層的の厚さは150nm~300nmの範囲内にあり、前記増倍層の厚さは400nm~800nmの範囲内にあり、前記反転層の厚さは150nm~300nmの範囲内にある。
【0009】
選択できる実施形態において、前記拡散技術によりオーミック接触層とウィンドウ層との中にカーブ状拡散エリアを形成するステップは、前記オーミック接触層にエッチング層を形成する工程と、前記エッチング層にエッチングエリアを定義すると共に、前記エッチングエリアに基づいて前記エッチング層に対してエッチングを行いエッチング開口を形成して前記エッチング開口から一部のオーミック接触層を露出させる工程とを含み、前記エッチング開口により拡散技術を採用して前記オーミック接触層及びウィンドウ層に対してPタイプ拡散を行うことでPタイプドーピングのカーブ状拡散エリアを形成する。
【0010】
選択できる実施形態において、前記基板における少なくとも一部のエピタキシャル層の周縁に対してエッチングを行うことにより、プラットフォーム構造を形成するステップは、前記オーミック接触層とウィンドウ層と遷移層と反転層と増倍層と荷電層と過渡層と吸収層とバッファ層と一部の基板の周縁に対してエッチングを行うことにより、前記基板の上方エリアに第1のプラットフォームを形成し、前記オーミック接触層とウィンドウ層と遷移層と反転層の周縁に対してエッチングを行うことにより、前記増倍層の上方エリアに第2のプラットフォームを形成することを含む。
【0011】
選択できる実施形態において、前記オーミック接触層とウィンドウ層と遷移層と反転層の周縁に対してエッチングを行うことによって前記増倍層の上方エリアに第2のプラットフォームを形成した前記ステップの後、前記方法は、前記第1のプラットフォームと第2のプラットフォームとの上に高抵抗重合体材料により構成され、もしくはSiO、SiN、Alの中の1つもしくは複数種類により構成されたパッシベーション層を形成することを更に含む。
【0012】
選択できる実施形態において、前記基板の背面に光ウィンドウを形成するステップは、前記基板の背面に対して腐食処理の厚さが前記基板の厚さより小さい腐食処理を行うことを含む。
【0013】
第二の方面において、本発明は単一光子検出器を提供し、基板と、前記基板に順番に形成されるバッファ層と吸収層と過渡層と荷電層と増倍層と反転層と遷移層とウィンドウ層とオーミック接触層とを含み前記オーミック接触層とウィンドウ層の中にカーブ状拡散エリアが形成され前記基板の一部のエピタキシャル層の周縁がエッチングされてプラットフォーム構造が形成される多層エピタキシャル層と、前記基板の背面に形成されて入射光の入射に供する光ウィンドウと、前記オーミック接触層に形成されるPタイプ電極と、前記基板背面に形成されるNタイプ電極と、を含み、その中で、前記反転層は前記荷電層の調整コントロールに基づいて、電場分布に対して二次調整コントロールを行うことに用いられる。
【0014】
選択できる実施形態において、前記プラットフォーム構造は、前記オーミック接触層とウィンドウ層と遷移層と反転層と増倍層と荷電層と過渡層と吸収層とバッファ層と一部の基板の周縁に対してエッチングを行うことによって前記基板の上方エリアに形成された第1のプラットフォームと、前記オーミック接触層とウィンドウ層と遷移層と反転層の周縁に対してエッチングを行うことによって前記増倍層の上方エリアに形成された第2のプラットフォームとを含む。
【0015】
選択できる実施形態において、前記単一光子検出器は前記第1のプラットフォームと第2のプラットフォームに成長されたパッシベーション層を更に含み、前記パッシベーション層は高抵抗重合体材料により構成され、もしくはSiO、SiN、Alの中の1つもしくは複数種類により構成される。
【0016】
選択できる実施形態において、前記反転層は、InP、InGaAs、InAlAs、InAlGaAs、InGaAsPの中の1つもしくは複数種類により構成される。
【0017】
選択できる実施形態において、前記反転層の積分電荷密度は2.0*e12/cm~4.0*e12/cmの範囲内にある。
【0018】
選択できる実施形態において、前記荷電層の厚さは150nm~300nmであり、前記増倍層の厚さは400nm~800nmであり、前記反転層の厚さは150nm~300nmである。
【0019】
第三の方面において、本発明は単一光子検出器マトリックスを提供し、複数の前記実施形態の前記単一光子検出器を含み、複数の前記単一光子検出器はマトリックスを呈するように配列され、複数の前記単一光子検出器はフリップチップ溶接技術により読み出し回路に集積され、各前記単一光子検出器のPタイプ電極の間は互いに離間し、複数の前記単一光子検出器はNタイプ電極を共有する。
【本発明の効果】
【0020】
本出願は単一光子検出器及びその製造方法と単一光子検出器マトリックスとを提供し、提供された基板の一側に、バッファ層と吸収層と過渡層と荷電層と増倍層と反転層と遷移層とウィンドウ層とオーミック接触層とを含む多層エピタキシャル層を順番に成長し、且つ、拡散技術によりオーミック接触層とウィンドウ層の中にカーブ状拡散エリアを形成することで、基板の一部のエピタキシャル層の周縁にエッチングを行ってプラットフォーム構造を形成し、基板の背面に光ウィンドウを形成し、且つ、オーミック接触層にPタイプ電極を形成し、基板の背面にNタイプ電極を形成する。本発明は、一次拡散処理のみにより反転層を合わせることで、拡散エリアの周縁の電場を効果的に低下させ、そしてエッジ破壊問題を効果的に抑え、且つ、二次拡散処理もしくは二次成長を必要とする従来の方法と比べ、製造技術の複雑さを効果的に低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明の実施例の技術をより詳しく説明するためには、以下は実施例に対して使用する必要がある添付図面を簡単に紹介し、理解すべきは、以下の添付図面には本発明の一部の実施例のみ示され、範囲に対する限定として見られるべきではなく、本技術分野における普通の技術者にとって、創造的労働をしない前提では、更にこれらの添付図面に基づいて他の関連する図面を得ることができる。
図1図1は従来技術の単一光子検出器の構成説明図である。
図2図2は従来技術の単一光子検出器の電場分布の説明図である。
図3図3は従来技術の単一光子検出器のもう1つの構成説明図である。
図4図4は本出願の実施例が提供する単一光子検出器の製造方法のフローチャートである。
図5図5は本出願の実施例が提供する単一光子検出器の製造方法における各ステップによって形成されたデバイスの構造説明図である。
図6図6は本出願の実施例が提供する単一光子検出器の製造方法における各ステップによって形成されたデバイスの構造説明図である。
図7図7は本出願の実施例が提供する単一光子検出器の製造方法における各ステップによって形成されたデバイスの構造説明図である。
図8図8は本出願の実施例が提供する単一光子検出器の製造方法における各ステップによって形成されたデバイスの構造説明図である。
図9図9は本出願の実施例が提供する単一光子検出器の製造方法における各ステップによって形成されたデバイスの構造説明図である。
図10図10は本出願の実施例が提供する単一光子検出器の製造方法における各ステップによって形成されたデバイスの構造説明図である。
図11図11は本出願の実施例が提供する単一光子検出器の電場分布の説明図である。
図12図12は本出願の実施例が提供する単一光子検出器のマトリックスの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
従来の技術において多く見られる単一光子検出器は、主に2種類のタイプが含まれ、その内の1種の主な製造技術は、基板にバッファ層と吸収層と過渡層と荷電層と増倍層と真性層とを順番に形成することを含む。それから二次拡散技術を採用して真性層と増倍層と荷電層に拡散エリアを形成し、形成された構造は図1に示される。このような方法により形成された構造の電場の分布図は図2に示される通りであり、図2に示されるように、荷電層の作用により、電場は増倍層において最も強く、吸収層においては比較的に弱く、増倍層が衝突電離を生成することが保証され、吸収層はイオン化しない代わりに、電荷担体が飽和スピードで遷移することを保証することができ、APDの応答速度を向上させる。この方法により形成される単一光子検出器はエッジ破壊効果を効果的に抑えることができるが、二次拡散技術を用いてpn接合を形成するため、技術が制御しにくく、歩留まりが低いなどの問題が存在する上、大面積のマトリックス構造を作成することが困難である。
【0023】
この他、第2種類の方法は基板にバッファ層と吸収層と過渡層と荷電層と増倍層と真性層とを順番に形成した後、拡散技術を用いて真性層と増倍層との中に拡散エリアを形成し、且つ、荷電層に対してエッチングしてプラットフォームを形成し、更に二次エキタピシャル技術を用いてエッチングしたプラットフォームにリン化インジウム層を形成し、形成した構造は図3に示される通りである。この方法により形成される単一光子検出器は、エッジ破壊効果を効果的に抑えることができるが、この方法では一次拡散を採用する上、エッチング技術と二次エキタピシャル技術をも利用するため、二次エキタピシャルの境界面は高電場条件では非常に制御しにくく、製造技術が複雑で歩留まり率が低いなどの問題が存在する。
【0024】
上記研究発見に基づいて、本出願は単一光子検出器の製造方法を提供し、一次エキタピシャルの時に荷電層に反転層を形成し、反転層の荷電層における調整コントロールの基に、電場の分布に対して二次調整コントロールを行う。一次拡散処理のみによって反転層と合わせることで拡散エリアのエッジ電場を効果的に抑える上、エッジ破壊問題を効果的に抑えることができ、且つ、二次拡散処理もしくは二次エキタピシャルを必要とする従来の方法と比較して、製造技術の複雑さを効果的に抑えることができる。
【0025】
本発明の実施例の目的、技術的手段及び利点をより明白にすべく、以下は本発明の実施例における添付図面と合わせて、本発明の実施例における技術的手段に対してより明確で完全な説明を行う。無論、説明する実施例は本発明の一部の実施例であり、全部の実施例ではない。通常、この添付の図面に説明及び示される本発明の実施例の構成要素は、各種の配置で配置及び設計することができる。
【0026】
従って、以下では添付の図面に提供される本発明の実施例に対して詳しく説明するが、これは本発明が保護されようとする範囲を制限するためでなく、本発明において選ばれた実施例を示すために過ぎない。本発明の実施例に基づいて、当業者が創造的労働をしないことを前提として得られたあらゆる他の実施例は、本発明の保護範囲に属する。
【0027】
注意すべきは、類似する符号及びアルファベットが下の添付図面において類似する項目を表示し、よって、とある項目が添付図面に定義されると、その後の添付図面ではそれに対して更なる定義及び説明をする必要はない。
【0028】
本発明の詳細において、説明すべきは、「上」「下」「内」「外」などの方向もしくは位置関係を示す用語が出現する場合は、添付の図面において示される方向もしくは位置関係、あるいは当該発明製品を使用する際において慣例的に置かれる方向もしくは位置関係に基づき、これは本発明に対して説明する都合及び説明の簡素化のために用いられるのであり、説明される装置もしくは部材に特定の方向を備え、あるいは特定の方向や構造で制御することを明示もしくは示唆するためでなく、従って本発明に対する制限として理解すべきではない。
【0029】
この他、「第1の」「第2の」などの用語が出現する場合、これは説明を区分するためにのみ用いられるものであり、相対的重要性を明示や示唆するものとして理解すべきではない。
【0030】
説明すべきは、矛盾が生じないのであれば、本発明の実施例における特徴は互いに結合することが可能である。
【0031】
図4を参照されたい。本出願の実施例は単一光子検出器製造方法を提供し、この製造方法は単一光子検出器の製造に用いられることが可能であり、以下はこの製造方法に対して詳しく説明する。
【0032】
図5図10を合わせて参照されたい。ステップS110では、提供される基板00の一側に多層エピタキシャル層を順次に成長する。多層エピタキシャル層には、バッファ層10と吸収層20と過渡層30と荷電層40と増倍層50と反転層60と遷移層70とウィンドウ層80とオーミック接触層90とが含まれる。
【0033】
ステップS120では、拡散技術によりオーミック接触層90とウィンドウ層80の中にカーブ状拡散エリアを形成する。
【0034】
ステップS130では、基板00における一部のエピタキシャル層の周縁に対してエッチングを行うことで、プラットフォーム構造を形成する。
【0035】
ステップS140では、入射光が入射するための光ウィンドウを基板00の背面に形成する。
【0036】
ステップS150では、オーミック接触層90にPタイプ電極93を形成すると共に、基板00の背面にNタイプ電極94を形成する。
【0037】
この実施例において、エキタピシャル成長の中に導入される反転層60は荷電層40の調整コントロールに基づき、電場の分布に対して更に二次調整コントロールを行うことができ、最終的に得られるデバイス構造は図10に示される通りである。
【0038】
SPAD(Single
Photon Avalanche Photo Diode)は逆方向バイアス電圧において稼働し、すなわち、SPADの背面の電極が高電位に接続され、上の電極が低電位に接続される。入射光は背面の電極が位置する側から上の電極に向かって入射し、吸収層20において吸収されると共に正孔ペアを生成し、光によって生まれた正孔は増倍層50を通過し、雪崩効果により更に多くの正孔ペアを生成する。この中で、吸収層20と荷電層40との間には比較的に大きなエネルギー準位差を有し、そして増倍層50と吸収層20との間のエネルギー準位差が比較的に小さいため、従って吸収層20と荷電層40との間のバンド構造の不連続によって引き起こされる電荷担体渋滞を増倍層50により緩和することができる。この実施例において、反転層60を導入することにより、遷移層70の電場を低くして遷移層70とウィンドウ層80との境界面が比較的に低い電場の作用において稼働することを保証し、エッジ破壊効果を効果的に抑えることができる。荷電層40と反転層60との電場強度を通じてSPADの内部の電場に対して調整を行うことでSPADが稼働状態において空乏状態となる各層に適切な電場強度を持たせ、電荷担体の高速移動を実現することができると共に、高すぎる電場によって過大な暗電流が生成されることや、有害な雪崩増倍効果が生成されることを防ぐことができる。
【0039】
例えば、図11を参照し、図11は本出願の実施例が提供する単一光子検出器の電場の分布の説明図であり、増倍層50の電場強度は5*10V/cmより大であり、吸収層20の電場強度は1*10V/cmより小であり、遷移層70の電場強度は1*10V/cmより小であることが見てとれる。
【0040】
本実施例が提供する単一光子検出器の製造方法は、一次拡散処理のみ採用し、且つ、反転層60を合わせることによりエッジ破壊問題を効果的に抑えることを実現し、二次成長を必要とせず、技術が簡単で信頼性が高く、歩止まり率が高いなどの利点を有する。従来技術における二次拡散を必要とする方法や、一次拡散にエッチング及び二次エキタピシャルを合わせる方法に比べて、技術の複雑さを下げることができるので、この製造方法は単一光子検出器マトリックスの製作に非常に適している。
【0041】
図5を参照されたい。この実施例において、上記ステップS110では、多層エピタキシャル層はバッファ層10と吸収層20と過渡層30と荷電層40と増倍層50と反転層60と遷移層70とウィンドウ層80とオーミック接触層90とを含み、一次エキタピシャルにより順次に形成することができる。
【0042】
この中で、反転層60は、InP、InGaAs、InAlAs、InAlGaAs、InGaAsPの中の1つもしくは複数の材料の組合せにより構成されることができ、反転層60はPタイプのドープ層であることができる。例えば、pタイプInAlAsであることができ、具体的にはIn0.52Al0.48Asであることができる。反転層60の積分電荷密度は2.0*e12/cm~4.0*e12/cmであり、例えば3.2*e12/cmであることができる。反転層60の厚さは150nm~300nmであることができ、電場調整コントロールや、エッジ破壊を抑える効果が得られる。
【0043】
この実施例において、基板00は高ドーピングnタイプInP基板00であることができ、基板00にバッファ層10を形成する上記ステップにおいては、MOCVD技術を用いて基板00にnタイプバッファ層10を形成することができる。ここで、バッファ層10の格子係数は基板00の格子係数に近く、例えば、バッファ層10はInP層であることができ、厚さは50nm~2000nmの間にあることができる。バッファ層10のドープ濃度の範囲は、nタイプ1*e15/cm~1*e19/cmであることができる。
【0044】
例えば、バッファ層10の厚さは1000nmであることができ、ドーピング濃度は1*e18/cmであることができる。
【0045】
この実施例において、バッファ層10に形成される吸収層20はnタイプInGaAs材料により作成されることができ、厚さの範囲は2000nm~2800nmであることができる。例えば、厚さは2000nmであることができ、ドーピングは真性nタイプドーピングである。過渡層30は真性層であることができ、3段階の遷移(過渡)を有し、InGaAsP材料により作成されることができ、その厚さ範囲は10nm~300nmであることができる。この実施例において、過渡層30はデバイスのレスポンスを効果的に向上させることができる。
【0046】
荷電層40の厚さは150nm~300nmであることができ、荷電層40はnタイプInP材料により作成されることができ、荷電層40の積分電荷密度は2.4*e12/cm~4.8*e12/cmであることができ、例えば2.4*e12/cmであることができ、電場調整コントロールや、エッジ破壊を抑える効果が得られる。
【0047】
増倍層50はデバイスの中で電荷担体が格子と衝突電離を生成する場所であり、増倍層50はInP、AlGaAsSb、SiCなどの正孔タイプのAPD衝突電離材料を含むが、これらに限られない。前記正孔タイプAPD衝突電離材料の特徴は、当該材料の正孔衝突電離係数が電子イオン化係数より高いことである。
【0048】
増倍層50の厚さ範囲は400nm~800nmであることができ、例えば、前記増倍層50は真性InP材料により生成可能であり、厚さは500nmであることができる。
【0049】
遷移層70は、InP、InGaAs、InAlAs、InAlGaAs、InGaAsPなどの中の1つもしくは複数の材料の組合せを含むが、これらに限られない。遷移層70の厚さ範囲は500nm~700nmであり、例えば、500nmであることができる。ドーピングとしては真性nタイプもしくはnタイプ軽ドーピングであり、ドーピング範囲はnタイプ1*e15/cm~1*e17/cmであることができる。
【0050】
ウィンドウ層80とオーミック接触層90は一次拡散技術により完成できる。拡散濃度の範囲は1*e17/cm~5*e19/cmである。この中で、ウィンドウ層80とオーミック接触層90はMOCVDにより成長完了することもできる。ドーピング濃度の範囲は1*e17/cm~5*e19/cmである。ウィンドウ層80の厚さは1000nm~1500nmである。オーミック接触層90の厚さは100nm~200nmであり、例えば100nmであることができる。オーミック接触層90は主にPタイプオーミック接触に用いられ、そのドーピング濃度が高ければ高いほど、オーミック接触は実現しやすくなり、厚さは重要なパラメータではないが、厚すぎるとPタイプドーピングの拡散速度に影響する。
【0051】
図6を合わせて参照されたい。この実施例において、上記ステップS120では、以下の方法でオーミック接触層90とウィンドウ層80の中にカーブ状拡散エリアを形成することができる。前記オーミック接触層90にエッチング層を形成し、前記エッチング層にエッチングエリアを定義すると共に、前記エッチングエリアに基づいて前記エッチング層に対してエッチングを実行してエッチング開口を形成して、前記エッチング開口により一部のオーミック接触層90を露出させ、前記エッチング開口に基づいて拡散技術を採用してオーミック接触層90及びウィンドウ層80に対してPタイプ拡散を実行することでPタイプドーピングのカーブ状拡散エリアを形成する。
【0052】
この実施例においては、プラズマ励起化学気相成膜(plasma CVD, plasma-enhanced chemical vapor deposition, PECVD)方法でオーミック接触層90にエッチング層を形成することができ、このエッチング層は二酸化ケイ素(SiO)もしくはSiN薄膜を採用することができ、形成されたエッチング層の厚さは400nmであることができる。
【0053】
エッチング層にエッチングエリアを定義し、このエッチングエリアはエッチング層の中心位置であることができ、例えば中心位置における円形エリアである。グレースケール露光技術及びエッチング技術を採用してエッチングエリアに基づいてエッチング層に対してエッチングを行うことによってエッチング層を貫通するエッチング開口を形成することができる。
【0054】
前記エッチング開口に基づいてオーミック接触層90及び下方のウィンドウ層80に対してPタイプ拡散を行うことによりPタイプドーピングのカーブ状拡散エリアを形成する。
【0055】
拡散終了後に、残ったエッチング層を剥離させてデバイスに対して洗浄を行うことができる。
【0056】
この実施例において、上記ステップS130では、オーミック接触層90とウィンドウ層80と遷移層70と反転層60と増倍層50と荷電層40と過渡層30と吸収層20とバッファ層10と一部の基板00の周縁に対してエッチングを行うことによって、基板00の上方エリアに第1のプラットフォームを形成し、オーミック接触層90とウィンドウ層80と遷移層70と反転層60の周縁に対してエッチングを行うことによって、増倍層50の上方エリアに第2のプラットフォームを形成するという方法で前記プラットフォーム構造を形成することができる。
【0057】
この実施例においては、基板00の上方のオーミック接触層90とウィンドウ層80と遷移層70と反転層60と増倍層50と荷電層40と過渡層30と吸収層20とバッファ層10及び一部の基板00の周縁に対してエッチングを行うことができる。ドライエッチング、ウェットエッチング、もしくはこの両者を組み合わせた方法でエッチング処理を行うことで、基板00に第1のプラットフォームを形成することができる。ドライエッチングとウェットエッチングを組み合わせた方法でエッチング処理を行う際は、硫酸系の溶液でオーミック接触層90を腐食することができる。この実施例において、ウィンドウ層80はInP層であるので、塩酸系の溶液を採用した方がウィンドウ層80を腐食しやすくなる。
【0058】
基板00に第1のプラットフォームを形成することにより、その後に複数の単一光子検出器に基づいてマトリックスを形成する際、単一光子検出器は互いに離間しやすくなる。エッチングの幅は1μm~100μmの間であることができ、例えば5μmであることができる。すなわち、その後のマトリックスにおいて単一光子検出器の間の距離は1μm~100μmの間である。
【0059】
上記の基礎の上、オーミック接触層90とウィンドウ層80と遷移層70と反転層60の周縁に対して更にエッチングを行うことで増倍層50の上方エリアに第2のプラットフォームを形成して図7に示されるデバイス構造を形成する。
【0060】
この実施例においては、ドライエッチング、ウェットエッチング、もしくはこの両者を組み合わせた方法でオーミック接触層90とウィンドウ層80と遷移層70と反転層60の周縁に対してエッチングを行うことができる。エッチングは増倍層50の表面で留め、これにより増倍層50の上方エリアに第2のプラットフォームを形成し、大面積の吸収と、小さいサイズの増倍を実現することができ、そして光検出の効率を向上させ、暗計数を下げる有利な効果を達成することができる。
【0061】
この実施例において、ドライエッチングとウェットエッチングを組み合わせた方法を採用する場合、硫酸系の溶液でオーミック接触層90を腐食することで、塩酸系の溶液を採用した場合にInPのウィンドウ層80を腐食しやすい問題を回避し、増倍層50の上方エリアにプラットフォームが形成されるのを保証する。
【0062】
図8を合わせて参照されたい。上記基礎の上、本実施例が提供する製造方法は第1のプラットフォームと第2のプラットフォームにパッシベーション層91を形成するステップを更に含む。
【0063】
この実施例においては、PECVD技術を採用して第1のプラットフォームと第2のプラットフォームにパッシベーション層91を形成することができ、パッシベーション層91は高抵抗重合体材料により構成され、あるいはSiO、SiN、Alの中の1つもしくは複数により構成されることができる。パッシベーション層91は第1のプラットフォームと第2のプラットフォームの側壁及び水平平面上に形成される。
【0064】
パッシベーション層91の厚さは5nm~3000nmであることができ、これによりプラットフォームに対してパッシベーションを行う。例えば、PECVD技術を用いてSiN薄膜を作成し、薄膜の厚さは500
nmである。この実施例において、形成されるパッシベーション層91はプラットフォームに対して不活性化を行うことで暗電流を下げる効果を達成することができる。
【0065】
図9を合わせて参照されたい。この実施例において、上記ステップS140では、基板00の背面に対して腐食処理の厚さが基板00の厚さより小さい腐食処理を行い、基板00の腐食エリアに増倍透過膜92を成長させることで光ウィンドウを形成する方法で基板00の背面に光ウィンドウを形成することができる。
【0066】
この実施例において、成長させる増倍透過膜92は二酸化ケイ素(SiO)、SiN、もしくは他の類似する光学薄膜であることができる。例えば、PECVDでSiN薄膜を作成することが可能であり、薄膜の厚さは1600nmである。増倍透過膜92により形成された光ウィンドウは、入射光の入射に供することができる。上方エリアの中で光ウィンドウに対応する通路エリアはデバイスのソース区である。
【0067】
図10を合わせて参照されたい。この実施例では上記ステップS150において、電子ビーム蒸着もしくは類似する方法でチタニウム(Ti)、プラチナ(Pt)もしくは金(Au)材料のPタイプ電極93を作成することができ、Pタイプ電極93はデバイスのソース区の上方に位置する。マトリックスを形成する場合、単一光子検出器マトリックスの中の各検出器のPタイプ電極93は互いに離間する。この実施例において、Pタイプ電極93はデバイスのソース区全体を覆い、且つ、金属反射ミラーとして使用することができるので、基板00側から入射した光はここで反射されることにより、検出器の量子効率を高めることができる。
【0068】
この実施例においては、基板00に対して薄肉化処理を行い、且つ、薄肉化された基板00の背面に大面積的にNタイプ電極94を作成することができる。この後マトリックスを形成する場合、マトリックスの中のすべての単一光子検出器はNタイプ電極94を共用する。これにより単一光子検出器の優れたオーミック接触特性及び信頼性が保証される。
【0069】
この実施例において、エキタピシャル構造の中に反転層60を導入して荷電層40の調整コントロールに基づいて電場の分布に対して二次調整コントロールを実行し、拡散エリアの周縁の電場を下げる上、エッジ破壊などの問題を効果的に抑えることができる。
【0070】
本出願の実施例は図10に示されるように、上記製造方法により作成される単一光子検出器を更に提供する。この単一光子検出器は、基板00と、基板00に順番的に形成される多層エピタキシャル層とが含まれ、この多層エピタキシャル層には、バッファ層10と吸収層20と過渡層30と荷電層40と増倍層50と反転層60と遷移層70とウィンドウ層80とオーミック接触層90とが含まれる。この中で、オーミック接触層90とウィンドウ層80との中にカーブ状拡散エリアが形成される。基板00の上の一部のエピタキシャル層の周縁がエッチングされることでプラットフォーム構造を形成する。この他、単一光子検出器は基板00の背面に形成されて入射光の入射に供する光ウィンドウを更に含む。更に、オーミック接触層90に形成されるPタイプ電極93と、基板00の背面に形成されるNタイプ電極94とを含む。
【0071】
この実施例において、反転層60は荷電層40の調整コントロールに基づいて、電場の分布に対して二次調整コントロールを行うのに用いることができる。導入される反転層60は拡散エリアの周縁の電場を下げる上、エッジ破壊の問題を効果的に抑えることができる。更に、本実施例が提供する単一光子検出器は一次拡散及びエキタピシャル反転層60により得ることができるため、エッチングプラットフォーム及び二次エキタピシャルを必要とせず、技術が単純で信頼性が高く、歩止まりが高いなどの利点を有する。
【0072】
この実施例において、前記プラットフォーム構造には第1のプラットフォームと第2のプラットフォームが含まれ、この中で、第1のプラットフォームはオーミック接触層90とウィンドウ層80と遷移層70と反転層60と増倍層50と荷電層40と過渡層30と吸収層20とバッファ層10と基板00の一部の周縁に対してエッチングを行うことにより基板00の上方エリアに形成される第1のプラットフォームである。第2のプラットフォームはオーミック接触層90とウィンドウ層80と遷移層70と反転層60の周縁に対してエッチングを行うことにより、増倍層50の上方エリアに形成される第2のプラットフォームである。
【0073】
基板00に第1のプラットフォームを形成することにより、その後に複数の単一光子検出器に基づいてマトリックスを形成する際、単一光子検出器の間は互いに離間することができる。第1のプラットフォームのエッチング幅は1μm~100μmの間であることができ、例えば5μmであることができる。すなわち、その後のマトリックスにおいて、単一光子検出器の間のピッチは1μm~100μmの間であることができる。
【0074】
増倍層50の上方エリアに第2のプラットフォームを形成することにより、大面積の吸収と、小さいサイズの増倍を実現することができ、そして光検出の効率を向上させ、暗計数を下げる有益な効果を達成することができる。
【0075】
この実施例において、単一光子検出器は第1のプラットフォームと第2のプラットフォームに成長されるパッシベーション層91を更に含み、このパッシベーション層91は高抵抗重合体材料により構成され、あるいはSiO、SiN、Alの中の1つもしくは複数により構成されることができる。パッシベーション層91の厚さは5nm~3000nmであることができ、例えば、PECVD技術を用いてSiN薄膜を作成し、薄膜の厚さは500
nmである。この実施例において、形成されるパッシベーション層91はプラットフォームに対して不活性化を行うことで暗電流を下げる効果を達成することができる。
【0076】
この実施例において、基板00の背面にある光ウィンドウは、基板00の背面に形成される溝及び溝の中に位置する増倍透過膜92を含む。この凹槽は基板00の背面に対して腐食を行うことにより形成される。成長される増倍透過膜92は二酸化ケイ素(SiO)、SiN、もしくは他の類似する光学薄膜であることができる。例えば、PECVDでSiN薄膜を作成することが可能であり、薄膜の厚さは1600nmである。増倍透過膜92により形成された光ウィンドウは、入射光の入射に供することができる。上方エリアの中で光ウィンドウに対応する通路エリアはデバイスのソース区である。
【0077】
この実施例において、Pタイプ電極93はチタニウム(Ti)、プラチナ(Pt)、あるいは金(Au)材料により作成されることができ、Pタイプ電極93はデバイスのソース区全体を覆い、且つ、金属反射ミラーとして使用することができるので、基板00側から入射した光はここで反射されることにより、検出器の量子効率を高めることができる。
【0078】
この実施例において、反転層60は、InP、InGaAs、InAlAs、InAlGaAs、InGaAsPとの中の1つもしくは複数の材料の組合せにより構成されることができ、反転層60はPタイプのドープ層であることができる。例えば、pタイプInAlAsであることができ、具体的にはIn0.52Al0.48Asであることができる。反転層60の積分電荷密度は2.0*e12/cm~4.0*e12/cmであり、例えば3.2*e12/cmであることができる。反転層60の厚さは150nm~300nmであることができ、電場調整コントロールや、エッジ破壊を抑える効果が得られる。
【0079】
この実施例において、基板00は高ドーピングnタイプInP基板00であることができる。バッファ層10の格子係数は基板00の格子係数に近く、例えば、バッファ層10はInP層であることができ、厚さは50nm~2000nmの間にあることができる。バッファ層10のドープ濃度の範囲は、nタイプ1*e15/cm~1*e19/cmであることができる。例えば、バッファ層10の厚さは1000nmであることができ、ドーピング濃度は1*e18/cmであることができる。
【0080】
この実施例において、バッファ層10に形成される吸収層20はnタイプInGaAs材料により作成されることができ、厚さの範囲は2000nm~2800nmであることができる。例えば、厚さは2000nmであることができ、ドーピングは真性nタイプドーピングである。過渡層30は真性層であることができ、3段階の過渡を有し、InGaAsP材料により作成されることができ、その厚さ範囲は10nm~300nmであることができる。この実施例において、過渡層30はデバイスのレスポンスを効果的に向上させることができる。
【0081】
荷電層40の厚さは150nm~300nmであることができ、荷電層40はnタイプInP材料により作成されることができ、荷電層40の積分電荷密度は2.4*e12/cm~4.8*e12/cmであることができ、例えば2.4*e12/cmであることができ、コントロール電場を調整してエッジ破壊を抑える効果が得られる。
【0082】
増倍層50はInP、AlGaAsSb、SiCなどの正孔タイプのAPD衝突電離材料を含むが、これらに限られない。前記正孔タイプAPD衝突電離材料の特徴は、当該材料の正孔衝突電離係数が電子イオン化係数より高いことである。
【0083】
増倍層50はデバイスの中で電荷担体が格子と衝突電離を生成する場所であり、増倍層50の厚さ範囲は400nm~800nmであることができ、例えば、前記増倍層50は真性InP材料により生成可能であり、厚さは500nmであることができる。
【0084】
遷移層70は、InP、InGaAs、InAlAs、InAlGaAs、InGaAsPなどの中の1つもしくは複数の材料の組合せを含むが、これらに限られない。遷移層70の厚さ範囲は500nm~700nmであり、例えば、500nmであることができる。ドーピングとしては真性nタイプもしくはnタイプ軽ドーピングであり、ドーピング範囲はドーピングnタイプ1*e15/cm~1*e17/cmであることができる。
【0085】
ウィンドウ層80とオーミック接触層90の中の拡散濃度の範囲は1*e17/cm~5*e19/cmである。ドーピング濃度の範囲は1*e17/cm~5*e19/cmである。ウィンドウ層80の厚さは1000nm~1500nmである。オーミック接触層90の厚さは100nm~200nmであり、例えば100nmであることができる。オーミック接触層90は主にPタイプオーミック接触に用いられ、そのドーピング濃度が高ければ高いほど、オーミック接触は実現しやすくなり、厚さは重要なパラメータではないが、厚すぎるとPタイプドーピングの拡散速度に影響する。
【0086】
本実施例が提供する単一光子検出器は、上記単一光子検出器製造方法により制作され、上記製造方法により作成される検出器と同じ特徴を有する。よって、この実施例において詳しく説明していないところは、上記実施例における関連の記載を参照できるので、この実施例では余計な説明を省く。
【0087】
図12を合わせて参照されたい。本出願の実施例は更に単一光子検出器マトリックスを提供し、この単一光子検出器マトリックスは上記いずれかの実施形態における単一光子検出器を含み、複数の単一光子検出器はマトリックス状に配列される。複数の単一光子検出器はフリップチップ溶接技術により読み出し回路に集積され、各単一光子検出器のPタイプ電極93の間は互いに離間し、複数の単一光子検出器はNタイプ電極94を共有する。
【0088】
この実施例において、マトリックスにおける各単一光子検出器はフリップチップ溶接技術を用い、Nタイプ電極94は高電位に接続され、Pタイプ電極93は低電位に接続される。各単一光子検出器の間は仕切り溝により互いに離間し、この仕切り溝は上記基板00の上方のエピタキシャル層及び基板00の一部に対してエッチングを行うことにより形成される第1のプラットフォームにより形成される。単一光子検出器マトリックスの表面はNタイプ電極94により覆われ、読み出し回路により駆動されて光はデバイスの背面から入射される。単一光子検出器マトリックスは信号処理により単一光子を検出する機能を実現する。
【0089】
本実施例が提供する単一光子検出器マトリックスは光敏感エリアが大きく、ゲインエリアが小さい特性を有し、大面積の吸収と、小さいサイズの増倍を実現することができ、そして光検出の効率を向上させる前提で、更に暗計数を下げることができる。
【0090】
本実施例が提供する単一光子検出器マトリックスは上記いずれかの実施形態における単一光子検出器により構成され、上記単一光子検出器と同じ特徴を有するので、この実施例において詳しく説明していないところは、上記実施例における関連の記載を参照できるので、この実施例では余計な説明を省く。
【0091】
以上をまとめると、本出願の実施例が提供する単一光子検出器およびその製造方法と単一光子検出器マトリックスは、提供される基板00の一側に多層エピタキシャル層を順次に形成し、多層エピタキシャル層は、バッファ層10と吸収層20と過渡層30と荷電層40と増倍層50と反転層60と遷移層70とウィンドウ層80とオーミック接触層90とを含み、且つ、拡散技術によりオーミック接触層90とウィンドウ層80との中にカーブ状拡散エリアを形成し、基板00の一部のエピタキシャル層の周縁に対してエッチングを行うことによりプラットフォーム構造を形成し、基板00の背面に光ウィンドウを形成し、且つ、オーミック接触層90にPタイプ電極93を形成し、基板00の背面にNタイプ電極94を形成する。この発明は、一次拡散処理のみ採用し、且つ、反転層60を合わせることにより拡散エリアの周縁の電場を効果的に下げる上、エッジ破壊の問題を効果的に抑えるので、従来技術における二次拡散を必要とする方法や、一次拡散にエッチング及び二次エキタピシャルを合わせる方法に比べて、技術の複雑さを下げることができる。
【0092】
以上では本発明の具体的実施形態を説明するが、本発明が保護する範囲はこれに限らず、本発明に開示された技術的範囲内で当業者が容易に想到できるあらゆる変更または置換は、本発明の保護範囲に含まれるものとする。したがって、本発明の保護範囲は特許請求の範囲の保護範囲に基づくべきである。
【符号の説明】
【0093】
00-基板;10-バッファ層;20-吸収層;30-過渡層;40-荷電層;50-増倍層;60-反転層;70-遷移層;80-ウィンドウ層;90-オーミック接触層;91-パッシベーション層;92-増倍透過膜;93-Pタイプ電極;94-Nタイプ電極。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12