(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-22
(45)【発行日】2025-07-30
(54)【発明の名称】衝撃吸収装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/08 20060101AFI20250723BHJP
F16F 7/00 20060101ALI20250723BHJP
【FI】
B60R21/08 M
F16F7/00 J
(21)【出願番号】P 2021200920
(22)【出願日】2021-12-10
【審査請求日】2024-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 征幸
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-167950(JP,A)
【文献】特開2008-221923(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0030296(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/08
F16F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動時に衝撃を緩和させる衝撃吸収装置であって、
ベース部の設置面の側に退避した収納状態と、前記設置面から突出した突出状態とを可逆的に切り替え可能に該ベース部に取り付けられた可撓性を有する衝撃吸収メンバーと、
前記衝撃吸収メンバーの前記収納状態と前記突出状態に同調して、前記設置面の側に退避した収納状態と、該設置面から突出した突出状態とを可逆的に切り替え可能に前記ベース部に取り付けられた可撓性を有する補助メンバーと、
前記衝撃吸収メンバーおよび前記補助メンバーを作動させる際に、該衝撃吸収メンバーを直接的または間接的に駆動することで、該衝撃吸収メンバーを少なくとも前記収納状態から前記突出状態に切り替える駆動部と、
を備え、
前記衝撃吸収メンバーは、前記ベース部の設置面に対して第1方向に延伸する第1回動軸周りに回動自在に取り付けられ、該第1回動軸を中心として回動駆動されることで前記収納状態と前記突出状態とに可逆的に切り替えられ、
前記補助メンバーは、前記設置面に対して前記
第1方向と交差する第2方向に延伸する第2回動軸周りに回動自在に取り付けられ、該第2回動軸を中心として回動駆動されることで前記収納状態と前記突出状態とに可逆的に切り替えられ、
前記突出状態における前記ベース部からの高さは、前記補助メンバーより前記衝撃吸収メンバーの方が高く、
前記突出状態において、前記衝撃吸収メンバーと前記補助メンバーの少なくとも一部同士が互いに対向し、該衝撃吸収メンバーは前記ベース部の前記設置面の側とは反対方向の成分を有する荷重を受けた場合に変形することで該補助メンバーに対して篏合する、
衝撃吸収装置。
【請求項2】
前記補助メンバーは、前記突出状態において前記衝撃吸収メンバーが前記荷重を受けた場合に、該衝撃吸収メンバーが前記第1回動軸周りに回動して前記収納状態に切り替わることを規制する、
請求項1に記載の衝撃吸収装置。
【請求項3】
前記衝撃吸収メンバーは、前記突出状態において前記補助メンバーに対向する位置に形成され、該補助メンバーの一部と篏合可能な第1溝を有し、
前記衝撃吸収メンバーが前記荷重を受けた場合に該衝撃吸収メンバーの少なくとも一部が前記補助メンバーに向かって変形することで、前記第1溝が該補助メンバーの一部と篏合する、
請求項1または2に記載の衝撃吸収装置。
【請求項4】
前記補助メンバーは、前記突出状態において前記第1溝に対向する位置に形成され、前記第2方向に突出する突出部を有し、
前記補助メンバーが前記荷重を受けた場合に該補助メンバーが前記第1方向に向かって変形することで、前記突出部が前記第1溝と篏合する、
請求項3に記載の衝撃吸収装置。
【請求項5】
前記衝撃吸収メンバーは、前記荷重を受けた場合にその一部が所定の前記第2方向に凸状に変形し、
前記補助メンバーは、前記荷重を受けた場合に前記衝撃吸収メンバーの前記凸状に変形した部分を挟み込むように変形することで該衝撃吸収メンバーと篏合可能な第2溝を有する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の衝撃吸収装置。
【請求項6】
前記衝撃吸収メンバーは、前記荷重を受けた場合に前記第2方向に優先的に変形するように、前記第1方向に沿って形成された変形支援部を有する、
請求項1から5いずれか1項に記載の衝撃吸収装置。
【請求項7】
前記衝撃吸収メンバーは、前記補助メンバーよりも可撓性が高い、
請求項1から6のいずれか一項に記載の衝撃吸収装置。
【請求項8】
前記衝撃吸収メンバーは、前記第1方向と直交する方向に間隔を設けて複数列に配置されており、
複数列の衝撃吸収メンバーの各々は、
前記収納状態において前記設置面に沿った倒伏姿勢に維持され、
前記収納状態から前記突出状態に切り替えられる際には、前記第1回動軸を中心とした所定の起動方向に回動駆動されることで前記設置面から起立した起立姿勢に前記倒伏姿勢から切り替えられ、
前記突出状態から前記収納状態に切り替えられる際には、前記第1回動軸を中心とした前記起動方向とは反対の倒伏方向に回動駆動されることで前記起立姿勢から前記倒伏姿勢に切り替えられる、
請求項1から7のいずれか一項に記載の衝撃吸収装置。
【請求項9】
前記補助メンバーは、
複数列の前記衝撃吸収メンバーの各列の間に配置されており、
前記収納状態において、隣接する列の前記衝撃吸収メンバーの一部が前記補助メンバーの少なくとも一部に上方から覆い被さるように前記設置面に沿った倒伏姿勢に維持され、
前記収納状態から前記突出状態に切り替えられる際には、前記第2回動軸を中心とした所定の起動方向に回動駆動されることで前記倒伏姿勢から起立姿勢に切り替えられ、
前記突出状態から前記収納状態に切り替えられる際には、前記第2回動軸を中心とした前記起動方向とは反対の前記倒伏方向に回動駆動されることで前記起立姿勢から前記倒伏姿勢に切り替えられる、
請求項8に記載の衝撃吸収装置。
【請求項10】
前記補助メンバーは、前記突出状態において、隣接する両側の列の前記衝撃吸収メンバ
ーに対して対向する、
請求項9に記載の衝撃吸収装置。
【請求項11】
前記補助メンバーに連結されると共に少なくとも一部に可撓性を有し、前記駆動部によって駆動される一又は複数の駆動力伝達メンバーを更に備え、
前記駆動部が前記衝撃吸収メンバーを作動させる際に、前記駆動力伝達メンバーが駆動されることで前記補助メンバーが前記倒伏姿勢から前記起立姿勢に切り替えられると共に、該補助メンバーに付随して前記衝撃吸収メンバーが前記倒伏姿勢から前記起立姿勢に切り替えられる、
請求項8から10のいずれか一項に記載の衝撃吸収装置。
【請求項12】
複数の前記補助メンバーと、
単一の前記駆動力伝達メンバーと、
を備え、
前記駆動力伝達メンバーに複数の前記補助メンバーが連結されている、
請求項11に記載の衝撃吸収装置。
【請求項13】
前記駆動力伝達メンバーは、板状部を有し、該板状部が前記設置面と平行な状態を維持しつつ前記駆動部に駆動される、
請求項11または請求項12に記載の衝撃吸収装置。
【請求項14】
前記第1方向と前記第2方向とは、互いに直交する、
請求項1から13のいずれか一項に記載の衝撃吸収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作動時に衝撃を緩和させる衝撃吸収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に使用され、事故等によって生じる衝撃を緩和させる技術が知られている。例えば、特許文献1には、車両のバンパーに生じる衝撃を緩和させることでバンパーに衝突した歩行者等を保護するエネルギー吸収装置が記載されている。このエネルギー吸収装置では、ベースに接続され衝撃を吸収する複数のフィンの間に間隙が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
衝撃吸収装置では、衝撃を吸収する部材が撓むことが可能な領域を形成する必要がある。例えば、特許文献1に記載されたエネルギー吸収装置では、複数のフィンの間の間隙が当該領域に相当する。衝撃吸収装置は、当該領域を形成すると全体として嵩張った構造となるため、車両においては取り付けられる位置が限られてしまい、配置位置の自由度が低下してしまう。
【0005】
本開示では、上記した問題に鑑み、配置位置の自由度を向上可能な衝撃吸収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示では、以下の構成を採用する。
作動時に衝撃を緩和させる衝撃吸収装置であって、
ベース部の設置面の側に退避した収納状態と、前記設置面から突出した突出状態とを可逆的に切り替え可能に該ベース部に取り付けられた可撓性を有する衝撃吸収メンバーと、
前記衝撃吸収メンバーの前記収納状態と前記突出状態に同調して、前記設置面の側に退避した収納状態と、該設置面から突出した突出状態とを可逆的に切り替え可能に前記ベース部に取り付けられた可撓性を有する補助メンバーと、
前記衝撃吸収メンバーおよび前記補助メンバーを作動させる際に、該衝撃吸収メンバーを直接的または間接的に駆動することで、該衝撃吸収メンバーを少なくとも前記収納状態から前記突出状態に切り替える駆動部と、
を備え、
前記衝撃吸収メンバーは、前記ベース部の設置面に対して第1方向に延伸する第1回動軸周りに回動自在に取り付けられ、該第1回動軸を中心として回動駆動されることで前記収納状態と前記突出状態とに可逆的に切り替えられ、
前記補助メンバーは、前記設置面に対して前記第1方向と交差する第2方向に延伸する第2回動軸周りに回動自在に取り付けられ、該第2回動軸を中心として回動駆動されることで前記収納状態と前記突出状態とに可逆的に切り替えられ、
前記突出状態における前記ベース部からの高さは、前記補助メンバーより前記衝撃吸収メンバーの方が高く、
前記突出状態において、前記衝撃吸収メンバーと前記補助メンバーの少なくとも一部同
士が互いに対向し、該衝撃吸収メンバーは前記ベース部の前記設置面の側とは反対方向の成分を有する荷重を受けた場合に変形することで該補助メンバーに対して篏合する、
衝撃吸収装置。
【0007】
上記の衝撃吸収装置では、
前記補助メンバーは、前記突出状態において前記衝撃吸収メンバーが前記荷重を受けた場合に、該衝撃吸収メンバーが前記第1回動軸周りに回動して前記収納状態に切り替わることを規制してもよい。
【0008】
上記の衝撃吸収装置では、
前記衝撃吸収メンバーは、前記突出状態において前記補助メンバーに対向する位置に形成され、該補助メンバーの一部と篏合可能な第1溝を有し、
前記衝撃吸収メンバーが前記荷重を受けた場合に該衝撃吸収メンバーの少なくとも一部が前記補助メンバーに向かって変形することで、前記第1溝が該補助メンバーの一部と篏合してもよい。
【0009】
上記の衝撃吸収装置では、
前記補助メンバーは、前記突出状態において前記第1溝に対向する位置に形成され、前記第2方向に突出する突出部を有し、
前記補助メンバーが前記荷重を受けた場合に該補助メンバーが前記第1方向に向かって変形することで、前記突出部が前記第1溝と篏合してもよい。
【0010】
上記の衝撃吸収装置では、
前記衝撃吸収メンバーは、前記荷重を受けた場合にその一部が所定の前記第2方向に凸状に変形し、
前記補助メンバーは、前記荷重を受けた場合に前記衝撃吸収メンバーの前記凸状に変形した部分を挟み込むように変形することで該衝撃吸収メンバーと篏合可能な第2溝を有していてもよい。
【0011】
上記の衝撃吸収装置では、
前記衝撃吸収メンバーは、前記荷重を受けた場合に前記第2方向に優先的に変形するように、前記第1方向に沿って形成された変形支援部を有していてもよい。
【0012】
上記の衝撃吸収装置では、
前記衝撃吸収メンバーは、前記補助メンバーよりも可撓性が高くてもよい。
【0013】
上記の衝撃吸収装置では、
前記衝撃吸収メンバーは、前記第1方向と直交する方向に間隔を設けて複数列に配置されており、
複数列の衝撃吸収メンバーの各々は、
前記収納状態において前記設置面に沿った倒伏姿勢に維持され、
前記収納状態から前記突出状態に切り替えられる際には、前記第1回動軸を中心とした所定の起動方向に回動駆動されることで前記設置面から起立した起立姿勢に前記倒伏姿勢から切り替えられ、
前記突出状態から前記収納状態に切り替えられる際には、前記第1回動軸を中心とした前記起動方向とは反対の倒伏方向に回動駆動されることで前記起立姿勢から前記倒伏姿勢に切り替えられてもよい。
【0014】
上記の衝撃吸収装置では、
前記補助メンバーは、
複数列の前記衝撃吸収メンバーの各列の間に配置されており、
前記収納状態において、隣接する列の前記衝撃吸収メンバーの一部が前記補助メンバ
ーの少なくとも一部に上方から覆い被さるように前記設置面に沿った倒伏姿勢に維持され、
前記収納状態から前記突出状態に切り替えられる際には、前記第2回動軸を中心とした所定の起動方向に回動駆動されることで前記倒伏姿勢から起立姿勢に切り替えられ、
前記突出状態から前記収納状態に切り替えられる際には、前記第2回動軸を中心とした前記起動方向とは反対の前記倒伏方向に回動駆動されることで前記起立姿勢から前記倒伏姿勢に切り替えられてもよい。
【0015】
上記の衝撃吸収装置では、
前記補助メンバーは、前記突出状態において、隣接する両側の列の前記衝撃吸収メンバーに対して対向していてもよい。
【0016】
上記の衝撃吸収装置は、
前記補助メンバーに連結されると共に少なくとも一部に可撓性を有し、前記駆動部によって駆動される一又は複数の駆動力伝達メンバーを更に備え、
前記駆動部が前記衝撃吸収メンバーを作動させる際に、前記駆動力伝達メンバーが駆動されることで前記補助メンバーが前記倒伏姿勢から前記起立姿勢に切り替えられると共に、該補助メンバーに付随して前記衝撃吸収メンバーが前記倒伏姿勢から前記起立姿勢に切り替えられてもよい。
【0017】
上記の衝撃吸収装置は、
複数の前記補助メンバーと、
単一の前記駆動力伝達メンバーと、
を備え、
前記駆動力伝達メンバーに複数の前記補助メンバーが連結されていてもよい。
【0018】
上記の衝撃吸収装置では、
前記駆動力伝達メンバーは、板状部を有し、該板状部が前記設置面と平行な状態を維持しつつ前記駆動部に駆動されてもよい。
【0019】
上記の衝撃吸収装置では、
前記第1方向と前記第2方向とは、互いに直交していてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本開示の技術によれば、衝撃吸収装置の配置位置の自由度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1A】実施形態1に係る衝撃吸収装置を模式的に示す外観斜視図(その1)である。
【
図1B】実施形態1に係る衝撃吸収装置を模式的に示す外観斜視図(その2)である。
【
図2A】実施形態1に係る衝撃吸収装置を模式的に示す平面図(その1)である。
【
図2B】実施形態1に係る衝撃吸収装置を模式的に示す平面図(その2)である。
【
図3A】実施形態1に係る衝撃吸収装置を模式的に示す外観斜視図(その3)である。
【
図3B】実施形態1に係る衝撃吸収装置を模式的に示す外観斜視図(その4)である。
【
図4A】実施形態1に係る衝撃吸収装置を模式的に示す平面図(その3)である。
【
図4B】実施形態1に係る衝撃吸収装置を模式的に示す平面図(その4)である。
【
図5A】実施形態1に係る衝撃吸収装置を模式的に示す外観斜視図(その5)である。
【
図5B】実施形態1に係る衝撃吸収装置を模式的に示す外観斜視図(その6)である。
【
図6A】実施形態1に係る衝撃吸収装置を模式的に示す平面図(その5)である。
【
図6B】実施形態1に係る衝撃吸収装置を模式的に示す平面図(その6)である。
【
図7】実施形態1の変形例に係る衝撃吸収装置の衝撃吸収メンバーおよびフィンの一例を示す概略図(その1)である。
【
図8】実施形態1の変形例に係る衝撃吸収装置の衝撃吸収メンバーおよびフィンの一例を示す概略図(その2)である。
【
図9】実施形態1の変形例に係る衝撃吸収装置の衝撃吸収メンバーおよびフィンの一例を示す概略図(その3)である。
【
図10】実施形態1の変形例に係る衝撃吸収装置の衝撃吸収メンバーおよびフィンの一例を示す概略図(その4)である。
【
図11】実施形態1の変形例に係る衝撃吸収装置の衝撃吸収メンバーおよびフィンの一例を示す概略図(その5)である。
【
図12】実施形態1の変形例に係る衝撃吸収装置の衝撃吸収メンバーおよびフィンの一例を示す概略図(その6)である。
【
図13】実施形態1の変形例に係る衝撃吸収装置の衝撃吸収メンバーおよびフィンの一例を示す概略図(その7)である。
【
図14】実施形態1の変形例に係る衝撃吸収装置の衝撃吸収メンバーおよびフィンの一例を示す概略図(その8)である。
【
図15】実施形態1に係る衝撃吸収装置のブロック図である。
【
図16】実施形態1に係る衝撃吸収装置の制御部が実行する処理に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、図面を参照して本開示の実施形態に係る衝撃吸収装置について説明する。なお、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本開示は、実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0023】
<実施形態1>
実施形態1に係る衝撃吸収装置について説明する。本実施形態に係る衝撃吸収装置は、自動車等の車両に搭載され、当該車両に搭乗している乗員を保護する装置として例示される。衝撃吸収装置は、車両を構成する被取付対象に取り付けられ、作動時に乗員を保護する。なお、車両を構成する被取付対象としては、例えば、ピラーや天井等の車体を構成する構造物や、ダッシュボートやハンドル等の車体を構成する構造物に固定されるものが挙げられる。衝撃吸収装置は、このような被取付対象に取り付けられることによって車両に対して固定される。なお、ベース部自体がこれらの被取付対象自体であってもよく、後述する衝撃吸収部12等が被取付対象に直接的に設けられていてもよい。
【0024】
次に、
図1A~
図2Bに基づいて、本実施形態に係る衝撃吸収装置10について詳細に説明する。
図1A、
図1Bは、本実施形態に係る衝撃吸収装置10の外観を模式的に示す斜視図である。
図2A、
図2Bは、本実施形態に係る衝撃吸収装置10の外観を模式的に示す平面図である。衝撃吸収装置10は、車両の被取付対象に取り付けられるベース部11と、ベース部11の表面(「設置面」の一例)側に取り付けられた衝撃吸収部12を備える。ベース部11は、長方形の板状形状を有し、表面側に衝撃吸収部12が配置されており、裏面側が被取付対象に取り付けられている。以降では、
図1A~
図2Bに示すように、ベース部11の長辺に沿った方向をX軸とし、ベース部11の短辺に沿った方向をY
軸とし、X軸およびY軸のいずれにも直交する方向(ベース部の表面および裏面に直交する方向)をZ軸とする。衝撃吸収装置10は、Z軸方向に位置する保護対象である乗員を保護するための装置である。なお、X軸に沿った方向を行列の「行」とし、Y軸に沿った方向を行列の「列」とする。
【0025】
衝撃吸収部12は、全体的に可撓性を有しており、車両に事故等が生じて乗員に慣性力が生じて当該乗員が衝突した場合に変形することで、当該乗員に対してかかる力(荷重)を吸収する。これにより、衝撃吸収部12は、乗員に対する衝撃を緩和し、当該乗員を保護する。衝撃吸収部12は、乗員が搭乗する車室側に突出可能に構成されている。より具体的には、衝撃吸収部12は、車室からベース部11の側に退避した収納状態と、ベース部11から車室の側に突出した突出状態とを可逆的に切り替え可能に構成されている。
図1A~
図2Bに示す状態では、衝撃吸収部12は収納状態である。
【0026】
衝撃吸収部12は、衝撃吸収メンバー20と、フィン21(「補助メンバー」の一例)と、天板部22(「駆動力伝達メンバー」の一例)とを含んでいる。なお、
図1Aおよび
図2Aでは、説明のために天板部22の図示は省略している。
【0027】
衝撃吸収メンバー20は、ゴム等で形成され、伸び縮みなど変形可能な可撓性を有している。衝撃吸収メンバー20は、X軸方向に沿った方向が長手方向となる形状(X軸方向に一体になって延在する形状)を有し、Y軸方向に3列で3個配置されている。衝撃吸収メンバー20は、ベース部11の表面に対してX軸に沿った方向(「第1方向」の一例)に延伸する回動軸20A(「第1回動軸」の一例)に対して回動自在となるようにベース部11の表面側に取り付けられている。
図1Aおよび
図2Aにおいて、回動軸20Aを一点鎖線で表している。3個の衝撃吸収メンバー20の各回動軸20Aは、各衝撃吸収メンバー20が互いに干渉することなく動作可能なようにY軸に沿った方向(「第2方向」の一例)に間隔をおいて設定されている。なお、以降では、3個が3列に配置された衝撃吸収メンバーを複数列の衝撃吸収メンバー20と称する場合がある。このように、衝撃吸収部12は、複数列の衝撃吸収メンバー20を含む。
【0028】
複数列の衝撃吸収メンバー20の各々は、
図1Aに示すように、収納状態においてベース部11の表面に沿った倒伏姿勢に維持されている。複数列の衝撃吸収メンバー20の各々は、収納状態から突出状態に切り替えられる際には、回動軸20Aを中心とした起動方向に回動駆動されることでベース部11の表面から起立した起立姿勢に倒伏姿勢から切り替えられる。衝撃吸収メンバー20の起動方向は、X軸の正の方向に向かって見た場合に右回りである。また、複数列の衝撃吸収メンバー20の各々は突出状態から収納状態に切り替えられる際には、回動軸20Aを中心とした起動方向とは反対の倒伏方向に回動駆動されることで起立姿勢から倒伏姿勢に切り替えられる。衝撃吸収メンバー20の倒伏方向は、X軸の正の方向に向かって見た場合に左回りである。このように、複数列の衝撃吸収メンバー20の各々は、収納状態と突出状態とに可逆的に切り替え可能に構成されている。
【0029】
フィン21は、ゴム等で形成され、伸び縮みなど変形可能な可撓性を有している。フィン21は、駆動部からの動力を衝撃吸収メンバー20に伝えることで衝撃吸収メンバー20を起立させる。駆動部は、フィン21を駆動することで間接的に衝撃吸収メンバー20を駆動することができる。本実施形態では、1個の衝撃吸収メンバー20に対して4個のフィン21が配置されている。すなわち、フィン21は、X軸に沿った方向に4行、Y軸に沿った方向に3列の合計12個配置されている。複数のフィン21は、回動軸20Aに交差する回動軸21A(「第2回動軸」の一例)周りにベース部11の表面に取り付けられている。
図2Aにおいて、2行1列目のフィン21の回動軸21Aを一点鎖線で表している。なお、各フィン
21の回動軸21Aは、互いに平行である。複数のフィン21は、回動軸21A周りに回動自在である。
【0030】
複数のフィン21の各々は、収納状態において、起立させる対象となる衝撃吸収メンバー20の一部がフィン21の少なくとも一部に上方から覆い被さるようにベース部11の表面に沿った倒伏姿勢に維持されている。なお、複数のフィン21の各々は、同じ列に配置されている衝撃吸収メンバー20を起立させる。複数のフィン21の各々は、収納状態から突出状態に切り替えられる際には、回動軸21Aを中心とした起動方向に回動駆動されることで倒伏姿勢から起立姿勢に切り替えられる。フィン21の起動方向は、Y軸の正の方向に向かって見た場合に左回りである。また、複数のフィン21の各々は、突出状態から収納状態に切り替えられる際には、回動軸21Aを中心とした起動方向とは反対の倒伏方向に回動駆動されることで起立姿勢から倒伏姿勢に切り替えられる。フィン21の倒伏方向は、Y軸の正の方向に向かって見た場合に右回りである。フィン21が倒伏姿勢から起立姿勢に切り替えられる際に、起立させる対象となる衝撃吸収メンバー20を押し上げることで、衝撃吸収メンバー20を回動軸20Aの起動方向へと回動させることができる。なお、衝撃吸収メンバー20の回動軸20Aとフィン21の回動軸21Aとがなす角度は、直角ではなく、鋭角であることが好ましい。なお、フィン21は、衝撃吸収メンバー20の収納状態と突出状態に同調して、収納状態と突出状態とを可逆的に切り替え可能である。
【0031】
図1B及び
図2Bに示す天板部22は、ゴム等で形成され、可撓性を有している。天板部22は、駆動部によって駆動されることで当該駆動部からの動力を各フィン21に伝えるために設けられている。天板部22は、同じ
行のフィン21同士、すなわち、起立させる対象となる衝撃吸収メンバー20が同じである各フィン21に連結される連結部22A~22Cを有する。各連結部22A~22Cは、X軸に沿った方向が長手方向となる形状を有している。連結部22Aは、第1列目の各フィン21に連結される。連結部22Bは、第2列目の各フィン21に連結される。連結部22Cは、第3列目の各フィン21に連結される。これにより、天板部22は、全てのフィン21に連結される。
【0032】
また、天板部22は、各連結部22A~22Cを接続して一体的とする一対の接続部22Dを有する。各接続部22Dは、X軸に沿った方向の両端部で各連結部22A~22Cを接続する。これによって、天板部22は、駆動部の動力を全てのフィン21に伝えることができる。このように、本実施形態においては、衝撃吸収部12は、連結部22A、22B、22Cと接続部22Dが一体的に形成された単一の天板部22を含んでいる。
【0033】
衝撃吸収装置10の駆動部が衝撃吸収部12を作動させる際に、天板部22が駆動されることで各フィン21が倒伏姿勢から起立姿勢に切り替えられると共に、各フィン21に付随して衝撃吸収メンバー20が倒伏姿勢から起立姿勢に切り替えられる。これによって、本実施形態に係る衝撃吸収装置10は、駆動部によって、衝撃吸収部12を作動させる際に衝撃吸収部12を収納状態から突出状態に切り替えることができる。
【0034】
次に、
図3A~
図6Bに基づいて、本実施形態に係る衝撃吸収装置10の動作について説明する。
図3A~
図4Bは、衝撃吸収部12が収納状態から突出状態に切り替わっている途中の状態を示している。
図3Aおよび
図3Bは、衝撃吸収装置10の外観を模式的に示す斜視図であり、
図4Aおよび
図4Bは、衝撃吸収装置10の外観を模式的に示す平面図である。また、
図5A~
図6Bは、衝撃吸収部12が収納状態から突出状態への切り替えが完了した状態を示している。
図5Aおよび
図5Bは、衝撃吸収装置10の外観を模式的に示す斜視図であり、
図6Aおよび
図6Bは、衝撃吸収装置10の外観を模式的に示す平面図である。なお、
図3A、
図4A、
図5A、および
図6Aでは、説明のために天板部22の図示は省略している。
【0035】
図3B、
図4Bに示すように、天板部22が収納状態からX軸の負の方向に移動している。この天板部22の移動動作は、駆動部によって天板部22がX軸の負の方向に駆動されることにより生じる。例えば、駆動部にはソレノイドやモータや電磁石等が用いられており、駆動部は紐やロッドを介して天板部22のX軸の負側の接続部22Dに接続されている。駆動部がこの紐やロッドをX軸の負の方向に引っ張ることによって天板部22がX時期に負の方向に移動する。また、天板部22の移動によって各フィン21が起動方向に回動駆動される。フィン21の起動方向への回動駆動によって、起立させる対象となる衝撃吸収メンバー20を押し上げることで、衝撃吸収メンバー20が回動軸20Aの起動方向へ回動する。
図5A~
図6Bに示すように、衝撃吸収メンバー20およびフィン21が起立姿勢になることによって、衝撃吸収部12が突出状態に切り替えられる。なお、突出状態におけるベース部11からの高さ(Z軸方向の長さ)は、フィン21より衝撃吸収メンバー20の方が高くなるように衝撃吸収部12が形成されている。
【0036】
また、
図5Aに示すように、本実施形態に係る衝撃吸収装置10は、衝撃吸収メンバー20が倒伏姿勢から起立姿勢に切り替えられた際、回動軸20A周りの起動方向への回動を規制する規制部13を備える。本実施形態では、1個の衝撃吸収メンバー20は、5本の回動軸心(不図示)を有しており、規制部13は、その回動軸心の配置位置毎に設けられている。規制部13は、起立姿勢の衝撃吸収メンバー20が更に起動方向へ回動するのを阻害する。
【0037】
また、
図6Aに示すように、フィン21は、起立姿勢に切り替えられた際に、起立させる対象となる衝撃吸収メンバー20と当接する当接部21B(「第1当接部」の一例)を有する。
図6Aでは、1行2列目のフィン21の当接部21Bに符号が付されているが、全てのフィン21が当接部21Bを有している。当接部21Bは、起立姿勢である衝撃吸収メンバー20が倒伏方向に回動することを規制する。
【0038】
また、
図4Aおよび
図6Aに示すように、フィン21は、起立姿勢に切り替えられた際に、起立させる対象となる衝撃吸収メンバー20に隣接する他列の衝撃吸収メンバー20と当接する当接部21Cを有する。
図6Aでは、1行2列目のフィン21の当接部21Cに符号が付されているが、少なくとも2列目と3列目のフィン21が当接部21Cを有している。
【0039】
また、
図4Aおよび
図6Aに示すように、衝撃吸収メンバー20は、フィン21が倒伏姿勢から起立姿勢に切り替えられるまでの過程で、フィン21の当接部21Cと干渉することを抑制する溝部20Bを有する。溝部20Bは、各当接部21Cに対応して衝撃吸収メンバー20の側面に形成されている。溝部20Bは、フィン21の移動時の当接部21Cの移動軌跡に沿って形成されている。これにより、フィン21の当接部21Cによって当該フィン21が起立させる対象の衝撃吸収メンバー20に隣接する他列の衝撃吸収メンバー20が当該当接部21Cによって回動阻害されるのを防ぐことができる。
【0040】
また、
図6Aに示すように、2列目、3列目のフィン21は、起立対象の衝撃吸収メンバー20と、当該衝撃吸収メンバー20に隣接する他列の衝撃吸収メンバー20の間に配置された中間フィン210である。中間フィン210が起立姿勢の状態で、起立対象の衝撃吸収メンバー20と当該中間フィン210の当接部21Bが当接し、且つ、他列の衝撃吸収メンバー20と中間フィン210の第2当接部21Cが当接する。これによって、中間フィン210は、起立姿勢において、起立対象の衝撃吸収メンバー20と当該衝撃吸収メンバー20に隣接する他列の衝撃吸収メンバー20とを支えることができる。
【0041】
また、
図2B、
図4B、
図6Bに示すように、天板部22は、略平坦に形成された板状部22Eを有する。板状部22Eは、天板部22の表面側であって乗員に対向して配置さ
れる部位である。天板部22は、板状部22Eがベース部11と平行な状態を維持しつつ駆動部に駆動される。板状部22Eは、乗員の体を受け止める面として機能する。板状部22Eを有することによって、乗員が負傷する可能性を低減することができる。なお、天板部22は、乗員が負傷する可能性を低減するために少なくとも板状部22Eが可撓性を有していればよい。
【0042】
このように、本実施形態に係る衝撃吸収装置10は、衝撃吸収部12が収納状態と突出状態に切り替え可能であるので、非作動時では衝撃吸収部12が収納状態を維持することで、嵩張ることを防ぎ、車室等に配置することができる。このため、本実施形態に係る衝撃吸収装置10は、配置の自由度が向上する。また、衝撃吸収装置10は、衝撃吸収部12が可撓性を有しているため、天板部22が乗員を受け止めた後ももとの形状に戻ることができ、更に、突出状態と収納状態に切り替え可能であるので繰り返し使用可能である。なお、衝撃吸収装置10において、駆動部が衝撃吸収部12を作動させる際に衝撃吸収部12を収納状態から突出状態に切り替え、衝撃吸収部12を突出状態から収納状態に切り替える駆動は乗員により手動で行われてもよい。また、これとは別に、駆動部が衝撃吸収部12を突出状態から収納状態に切り替える駆動を行ってもよい。例えば、駆動部は、天板部22をX軸の正方向に付勢する弾性部材を含んで構成されており、突出状態から収納状態に切り替える際には天板部22に取り付けられた不図示の紐の伸張状態を解除することで、天板部22をX軸の正方向に移動させ、衝撃吸収部12を収納状態に切り替えてもよい。さらには衝撃吸収メンバー20とフィン21を別々に駆動させる駆動部を使用してもよいし、一つの駆動部で衝撃吸収メンバー20とフィン21を一緒に駆動させてもよい。
【0043】
<変形例>
次に、本実施形態の変形例に係る衝撃吸収装置10について説明する。本変形例に係る衝撃吸収装置10は、突出状態である衝撃吸収メンバー20に対して荷重がかかった場合に、衝撃吸収メンバー20が収納状態に向けて倒れるの防ぐための構成(構造)を備えている。
【0044】
図7は、本変形例に係る衝撃吸収装置10をX軸の負側から正側に向かって見た場合の概略図である。衝撃吸収部12の突出状態において、衝撃吸収メンバー20とフィン21同士が互いに対向し、衝撃吸収メンバー20はベース部11の表面の側とは反対方向(Z軸の負の方向)の成分を有する荷重を受けた場合に変形することでフィン21に対して篏合する。フィン21は、突出状態において衝撃吸収メンバー20に対向する位置に形成され、Y軸の正または負のいずれかの方向に突出する突出部211を有する。
図7に示す例では、突出部211は、フィン21の両側に形成されている。例えば、フィン21が
図6に示す中間フィン210である場合には、フィン21は突出状態において隣接する両側の列の衝撃吸収メンバー20に対して対向し、両側に形成された一対の突出部211の各々は、隣接する両側の列の衝撃吸収メンバー20に対して対向する。なお、フィン21は、Y軸の負側に突出部211を少なくとも有していればよい。また、衝撃吸収メンバー20およびフィン21は、突出状態時にはベース部11に対して各々直角およびそれに近い角度に設定することができる。また、本変形例においては、衝撃吸収メンバー20の回同軸が延伸する方向(第1方向)とフィンの回動軸が延伸する方向(第2方向)とは、互いに直交していることが好ましい。また、衝撃を受けたときには最初に衝撃吸収メンバー20が変形することを考慮すると、衝撃吸収メンバー20との接触時の衝撃緩和の点から衝撃吸収メンバー20は、フィン21よりも可撓性が高くてもよい。
【0045】
図8(A)および
図8(B)は、一つのフィン21に対して対向する衝撃吸収メンバー20の一部を抜き出して示す概略図である。
図8(A)は、荷重がかかっていない状態の衝撃吸収メンバー20の一部を抜き出して示している。衝撃吸収メンバー20は、突出状
態においてフィン21に対向する位置に形成され、フィン21の一部と篏合可能な溝200(「第1溝」の一例)を有する。溝200は、例えば、長手方向がZ軸に沿った方向となる長方形状に形成されており、衝撃吸収メンバー20を貫通して形成されている。
図8(A)に示す例では、溝200は、衝撃吸収メンバー20のZ軸方向にその中心が配置されるように形成されている。なお、溝200は、フィン21と篏合可能であれば衝撃吸収メンバー20に非貫通で形成されていてもよい。
【0046】
図8(B)は、衝撃吸収メンバー20に荷重がかかった場合に衝撃吸収メンバー20がフィン21の突出部211に篏合している状態を示す概略図である。
図8(B)においては、フィン21から突出部211のみを抜きだし、突出部211を長方形の板状形状で概略的に示している。ベース部11の設置面からの高さは、フィン21よりも衝撃吸収メンバー20の方が高いので、衝撃吸収部12にZ軸の負の方向の荷重がかかった場合には、まず衝撃吸収メンバー20が荷重を受けて変形する。
図8(B)に示すように、衝撃吸収メンバー20がZ軸の負の方向の荷重を受けた場合に衝撃吸収メンバー20の溝200を含む部分がフィン21に向かって変形することで、溝200がフィン21の突出部211と篏合する。これにより、突出状態において衝撃吸収メンバー20が荷重を受けた場合に、フィン21が回同軸21A(
図2A等参照)周りに回動して収納状態に切り替わることを規制する。そのため荷重がかかっても衝撃吸収メンバー20の起立姿勢が維持される。なお、溝200がフィン21の一部と篏合すればよく、フィン21に突出部211が設けられていなくてもよい。
【0047】
図9(A)および
図9(B)は、溝200の別の例を示す概略図である。
図9(A)および
図9(B)は、
図8(A)および
図8(B)と同様に、一つのフィン21に対して対向する衝撃吸収メンバー20の一部を抜き出して示している。
図9(A)は、荷重がかかっていない状態の衝撃吸収メンバー20の一部を抜き出して示している。本例において、溝200は、衝撃吸収メンバー20の下部まで到達する長さで形成されている。溝200は、長手方向がZ軸に沿った方向となる長方形状に形成されており、衝撃吸収メンバー20を貫通して衝撃吸収メンバー20の下部まで形成されている。
【0048】
図9(B)は、衝撃吸収メンバー20に荷重がかかった場合の衝撃吸収メンバー20がフィン21の突出部211に篏合している状態を示す概略図である。
図9(B)においては、フィン21から突出部211のみを抜きだし、突出部211を長方形の板状形状で概略的に示している。
図9(B)に示すように、衝撃吸収メンバー20がZ軸の負の方向の荷重を受けた場合に衝撃吸収メンバー20の溝200を含む部分がフィン21に向かって変形することで、溝200がフィン21の突出部211と篏合する。このように、溝200はフィン21の一部と篏合可能であれば、いずれの位置に形成されていてもよい。なお、溝200は、長方形状に限られず、フィン21の一部と篏合可能であれば長円形状(トラック形状)や楕円形状やその他の形状であってもよい。
【0049】
このように、フィン21は、突出状態において衝撃吸収メンバー20が荷重を受けた場合に、フィン21が回同軸21A(
図2A等参照)周りに回動して収納状態に切り替わることを規制する。それによって荷重がかかっても衝撃吸収メンバー20の起立姿勢が維持される。本変形例に係る衝撃吸収装置10は、衝撃吸収メンバー20に対して荷重がかかった場合に、衝撃吸収メンバー20が収納状態に向けて倒れるの防ぐことができる。なお、衝撃吸収部12の突出状態において、衝撃吸収メンバー20は、フィン21と必ずしも接触していなくてもよく、衝撃吸収メンバー20が荷重を受けて変形した後に、衝撃吸収メンバー20がフィン21と篏合可能であればよい。このため、衝撃吸収部12の突出状態において、衝撃吸収メンバー20の表面とフィン21の側面とが対向していればよい。この場合において、例えば、衝撃吸収メンバー20とフィン21とが別々の駆動部によって駆動されてもよい。なお、フィン21は、衝撃吸収メンバー20と同調して駆動される
。
【0050】
図10は、一つのフィン21と、当該フィン21に対して対向する衝撃吸収メンバー20の一部を抜き出して示す概略図である。
図10は、衝撃吸収メンバー20およびフィン21にZ軸の負の方向の荷重がかかっている状態を示している。
図11は、
図10に示す状態を上から見た場合の概略図である。
図11では衝撃吸収メンバー20の溝200に加えてフィン21にも溝212(「第2溝」の一例)が形成されている。衝撃吸収メンバー20およびフィン21がZ軸の負の方向の荷重を受けたときに、本例では、衝撃吸収メンバー20は、Y軸の正の方向(「所定の第2方向」の一例)に変形し、さらにフィン21もX軸の正の方向に変形する。
図11では、変形前の衝撃吸収メンバー20およびフィン21は実線で示され、変形後の衝撃吸収メンバー20およびフィン21は、破線で示され、変形した分がハッチングで塗りつぶされている。
【0051】
図11に示すように、フィン21は、Z軸の負の方向の荷重を受けた場合に衝撃吸収メンバー20の凸状に変形した部分を挟み込むように変形することで衝撃吸収メンバー20と篏合可能な溝212を有する。衝撃吸収メンバー20は、荷重を受けた場合にその一部がフィン21を挟むようにY軸の正の方向に凸状に変形する。さらにフィン21も変形するとフィン21の溝212で衝撃吸収メンバー20を挟み込む。溝212は、突出部211内に形成されており、変形前では衝撃吸収メンバー20の溝200内で溝200の側面と対向している。衝撃吸収メンバー20およびフィン21が変形した場合に、溝212が衝撃吸収メンバー20内の溝200の側面と篏合することで、衝撃吸収メンバー20とフィン21とが互いに支持し合う。これにより、衝撃吸収メンバー20が荷重を受けた場合に衝撃吸収メンバー20が収納状態に切り替わるのが規制される。衝撃吸収装置10は、衝撃吸収メンバー20で受けた衝撃を効率的に吸収することができる。
【0052】
図12(A)および
図12(B)は、一つのフィン21と、当該フィン21に対して対向する衝撃吸収メンバー20の一部を抜き出して示す概略図である。
図12(A)および
図12(B)は、X軸の正側から負側に向かって衝撃吸収装置10を見た状態を示している。
図12(A)は、荷重がかかっていない状態の衝撃吸収メンバー20を示している。
図12(B)は、
図12(A)に示す状態から衝撃吸収メンバー20に荷重がかかった場合に衝撃吸収メンバー20がフィン21の突出部211に篏合している状態を示している。衝撃吸収メンバー20は、Z軸の負の方向の荷重を受けた場合にY軸の正の方向に優先的に変形するように衝撃吸収メンバー20のY軸の負側に形成された変形支援部201を有する。変形支援部201は、X軸方向に沿って衝撃吸収メンバー20の全体に形成されている。
【0053】
本例において、変形支援部201は、衝撃吸収メンバー20の側面にX軸方向に沿って延在するように形成された薄肉部である。変形支援部201が形成された衝撃吸収メンバー20は、荷重がかかった時に薄肉部である変形支援部201では入力荷重に対して支持できないため、変形支援部201が形成された側とは反対側であるY軸の正の方向に衝撃吸収メンバー20が変形しやすくなる。衝撃吸収メンバー20のY軸の正の方向には、当該衝撃吸収メンバー20と篏合するフィン21が配置されている。このため、衝撃吸収メンバー20は荷重を受けて常に同じ方向に変形し、フィン21に対して篏合しやすくなる。
【0054】
また、変形支援部は、衝撃吸収メンバー20を予め変形させることによって形成されていてもよい。
図13(A)および
図13(B)は、一つのフィン21と、当該フィン21に対して対向する衝撃吸収メンバー20の一部を抜き出して示す概略図である。
図13(A)および
図13(B)は、X軸の正側から負側に向かって衝撃吸収装置10を見た状態を示している。
図13(A)は、荷重がかかっていない状態の衝撃吸収メンバー20を示
している。
図13(B)は、
図13(A)に示す状態から衝撃吸収メンバー20に荷重がかかった場合に衝撃吸収メンバー20がフィン21の突出部211に篏合している状態を示している。衝撃吸収メンバー20は、Z軸の負の方向の荷重を受けた場合にY軸の正の方向に優先的に変形するように衝撃吸収メンバー20のY軸の正側に向かって予め変形された変形支援部202を有する。変形支援部202は、X軸方向に沿って衝撃吸収メンバー20の全体に形成されている。
【0055】
本例において、変形支援部202は、衝撃吸収メンバー20の側面にX軸方向に沿って延在し、Y軸の正側に向かって予め変形された部位である。このような変形支援部202を衝撃吸収メンバー20に形成することで、衝撃吸収メンバー20に荷重がかかった時に常にY軸の正の方向に衝撃吸収メンバー
20を変形させることができる。なお、変形支援部は、フィン21に形成されていてもよい。例えば、
図10、
図11に示す例のように、フィン21をX軸の正の方向に変形させたい場合に、フィン21が当該方向に変形するように変形支援部を形成することができる。
【0056】
次に、
図14を用いて、衝撃吸収メンバー20の別の例について説明する。
図14(A)および
図14(B)は、変形前の衝撃吸収メンバー20の一部を抜き出して示している。
図14(A)は、衝撃吸収メンバー20の斜視図であり、
図14(B)は、衝撃吸収メンバー20と当該衝撃吸収メンバー20と対向するフィン21とを上面から視た概略図である。
【0057】
本例では、衝撃吸収メンバー20のフィン21と対向する側の面に半球状の一対の突起203が形成されている。一対の突起203は、その間にフィン21が篏合可能な程度に間を設けて配置されている。突起203の衝撃吸収メンバー20の面からの突出量は、フィン21が当該突起の間に挟まった時に衝撃吸収メンバー20との嵌合が外れない程度に設定されている。不必要に突起203を突出させると衝撃吸収メンバー20の収納状態時に嵩張るので、突起203の突出量は嵌合状態と収納状態を考慮して設定する。
【0058】
また、
図14(B)に示すように、衝撃吸収メンバー20とフィン21が突出状態である場合に、フィン21の端部が2つの突起203の間に位置している。衝撃吸収メンバー20のZ軸の負の方向の荷重がかかった時に衝撃吸収メンバー20が変形する変形代を確保するため、突出状態の時にはフィン21と衝撃吸収メンバー20を接触させないことが好ましい。この場合において、例えば、衝撃吸収メンバー20とフィン21とが別々の駆動部によって駆動される。
【0059】
図14(C)および
図14(D)は、変形後の衝撃吸収メンバー20の一部を抜き出して示している。
図14(C)は、衝撃吸収メンバー20の斜視図であり、
図14(D)は、衝撃吸収メンバー20と当該衝撃吸収メンバー20と対向するフィン21とを上面から視た概略図である。
【0060】
図14(C)、
図14(D)は、衝撃吸収メンバー20にZ軸の負の方向の荷重がかかり、衝撃吸収メンバー20が変形している状態を示す。この状態になると離れていた衝撃吸収メンバー20がフィン21に当接するようになり、2つの突起203がフィン21を挟むよう変形する。なお、
図14(C)、
図14(D)に示す状態では、2つの突起に挟まった状態でフィン21も変形を開始している。なお、2つの突起203は、衝撃吸収メンバー20が変形したときに最も変形量の大きいところに形成されるのが好ましく、さらには衝撃吸収メンバー20の変形を阻害しないように半球状の突起であることが好ましい。例えば、突起203をZ軸方向に長い形状に形成すると、衝撃吸収メンバー20のZ軸方向における剛性が高くなり、衝撃吸収メンバー20がZ軸方向に変形し難くなるので好ましくない。
【0061】
また、
図14(D)に示すように、衝撃吸収メンバー20の一部が変形し、フィン21側に接近するようにして当接する。2つの突起203がフィン21を挟むことで衝撃吸収メンバー20とフィン21が篏合する。なお、フィン21は、変形が進むにつれて、2つの突起203で挟まれた部位以外が変形してもよいし、この部位以外が縮んでもよい。
【0062】
このように、衝撃吸収メンバー20に溝ではなく突起203を設けることで、衝撃吸収メンバー20とフィン21が篏合可能に構成されていてもよい。本例においても、フィン21は、突出状態において衝撃吸収メンバー20が荷重を受けた場合に、フィン21の起立状態を維持し、衝撃吸収メンバー20が収納状態に切り替わることを規制する。
【0063】
次に、
図15および
図16に基づいて、衝撃吸収装置10の駆動制御について説明する。例えば、衝撃吸収装置10は、車両の急減速又は乗員に慣性力が作用して乗員が動いたことを示す信号がセンサ等によって検出された場合に、衝撃吸収メンバー20が収納状態から突出状態に切り替えられるように駆動される。
図15は、衝撃吸収装置10が配置された車両100を含むブロック図である。本実施形態において、衝撃吸収装置10は車両内の複数箇所に搭載されている。例えば、衝撃吸収装置10は、車両100の最大搭乗人数分だけ配置され、各乗員一人に対して1台ずつ配置されていてもよい。
図15には4台の衝撃吸収装置10が示されており、そのうちの1台の衝撃吸収装置10について代表的にその機能部を示している。衝撃吸収装置10は、制御部101を有する。制御部101は、例えば、マイクロコンピュータによって構成されており、記憶手段(ROM(Read Only Memory)等であり不図示)に記憶されたプログラムをCPU(Central Processing Unit)(不図示)によって実行させることで各処理を実行する。
【0064】
更に、
図15には、車両100に搭載されたセンサ103、位置情報取得部104、走行制御部105、走行駆動部106も示されている。先ず、これらの車両100に関連する構成について説明する。車両100は、その周囲をセンシングしながら自律走行として適切な方法で道路上を走行する自動運転が可能である。なお、車両100は、搭乗者による手動運転も勿論可能である。センサ103は、車両100の自律走行に必要な情報を取得するために車両100の周囲のセンシングを行う手段であり、典型的にはステレオカメラ、レーザスキャナ、LIDAR、各種レーダなどを含んで構成される。センサ103が取得した情報は、走行制御部105に送信され、車両100の周囲に存在する障害物や歩行者や走行レーンの認識等のために走行制御部105によって利用される。本実施形態では、センサ103は、監視を行うための可視光カメラや赤外線カメラを含んでもよい。また、位置情報取得部104は、車両100の現在位置を取得する手段であり、典型的にはGPS受信器などを含んで構成される。位置情報取得部104が取得した情報も走行制御部105に送信され、例えば、車両100の現在位置を利用して車両100が目的地に到達するためのルートの算出や、当該目的地への到達に要する所要時間の算出等の所定処理に利用される。
【0065】
走行制御部105は、センサ103や位置情報取得部104から取得した情報に基づいて、車両100の制御を行うコンピュータである。走行制御部105は、例えば、マイクロコンピュータによって構成されており、記憶手段(ROM(Read Only Memory)等であり不図示)に記憶されたプログラムをCPU(Central Processing Unit)(不図示)に
よって実行させることで上記した各種処理を行うための機能が実現される。
【0066】
走行制御部105による各種処理の具体例として、車両100の走行計画の生成処理、センサ103が取得したデータに基づいた、自律走行に必要な車両100の周囲の所定データの検出処理、走行計画、所定データ、位置情報取得部104が取得した車両100の位置情報に基づいた、自律的な走行を制御するための制御指令の生成処理等が例示できる
。走行計画の生成処理とは、出発地から目的地に到達するための走行経路を決定する処理である。また、所定データの検出処理は、例えば、車線の数や位置、車両100の周囲に存在する他の車両の数や位置、車両100の周囲に存在する障害物(例えば歩行者、自転車、構造物、建築物など)の数や位置、道路の構造、道路標識などを検出する処理である。また、上記制御指令は、後述の走行駆動部106へ送信される。車両100を自律走行させるための制御指令の生成方法については、公知の方法を採用することができる。
【0067】
走行駆動部106は、走行制御部105が生成した制御指令に基づいて、車両100を走行させる手段である。走行駆動部106は、例えば、車輪を駆動するためのモータ、エンジンやインバータ、ブレーキ、ステアリング機構等を含んで構成され、制御指令に従ってモータやブレーキ等が駆動されることで、車両100の自律走行が実現される。
【0068】
次いで、
図16に基づいて、駆動制御の詳細について説明する。
図16は、制御部101が行う処理に関するフローチャートである。なお、この処理は、制御部101により所定の間隔で繰り返し実行される。先ず、S101では、制御部101は、各種情報を取得する。各種情報は、走行制御部105から送信される。
【0069】
次に、S102では、制御部101は、駆動制御が必要であるか否かを判定する。制御部101は、S101で取得した各種情報に、車両100が急減速されたことを示す情報が含まれていると判定すると、駆動制御が必要であると判定する。
【0070】
制御部101は、S102で駆動制御が必要であると判定すると、S103の処理を実行する。S103では、制御部101は駆動制御を実行する。例えば、駆動部102は、ソレノイドやモータや電磁石等を含んで構成され、天板部22を駆動する。これによって、本実施形態に係る衝撃吸収装置10は衝撃吸収部12を収納状態から突出状態に切り替えることができる。なお、衝撃吸収メンバー20とフィン21は同調して別々に駆動されてもよい。
【0071】
<その他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について説明したが、上述した種々の実施形態は可能な限り組み合わせることができる。
【0072】
また、実施形態1において、天板部22は、連結部22A、22B、22Cが接続部22Dで互いに接続されることによって一体的に形成されているが、連結部22A、22B、22Cが互いに接続されておらず連結部22A、22B、22Cの各々が駆動部によって駆動されていてもよい。この場合、衝撃吸収装置10は、複数の駆動力伝達メンバーを備えることになる。なお、駆動力伝達メンバーを設けずに、駆動部がフィン21を駆動してもよい。
【0073】
また、実施形態1およびその変形例に係る衝撃吸収装置10は、車輌が衝突に至らない場合でも、車両の急制動による乗員と車両の構成物との衝突を回避するために作動させることができる。このため、衝撃吸収装置10は、車両の急制動の度に作動可能である。なお、衝撃吸収装置10のいずれも車両のあらゆる部位に取り付けて使用することができる。例えば、衝撃吸収装置10は、車内であれば、運転席に座った乗員を保護するためにステアリングコラムシャフトをカバーするダッシュボードロアパネル、後席に座った乗員を保護するために前席のシートバックの背面、あるいはシートに着座した乗員のサブマリン現象防止のためシートバックの内部等に取り付けられる。また、これらの衝撃吸収装置は、車両と道路上の障害物や他の車両との衝突時に当該車両の乗員を保護するために、車両の車外に取り付けて使用することもできる。
【0074】
また、衝撃吸収装置10は、車両以外に取り付けられてもよい。例えば、衝撃吸収装置10は、ロボットに取り付けられており、ロボットを保護してもよい。また、衝撃吸収装置10は、ジャケットに取り付けられており、当該ジャケットの着用者の転倒時に、当該着用者を保護してもよい。
【0075】
本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0076】
10・・衝撃吸収装置
11・・ベース部
12・・衝撃吸収部
13・・規制部
20・・衝撃吸収メンバー
20A、21A・・回動軸
20B・・溝部
21・・フィン
21B、21C・・当接部
22・・天板部
100・・車両
101・・制御部
102・・駆動部
103・・センサ
104・・位置情報取得部
105・・走行制御部
106・・走行駆動部
200・・溝
201、202・・変形支援部
203・・突起
210・・中間フィン
211・・突出部
212・・溝