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  • 特許-電源装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-22
(45)【発行日】2025-07-30
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 1/00 20060101AFI20250723BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20250723BHJP
【FI】
H02J1/00 307
H02J1/00 306G
H02J7/00 302A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022578292
(86)(22)【出願日】2022-01-20
(86)【国際出願番号】 JP2022001888
(87)【国際公開番号】W WO2022163474
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2024-11-26
(31)【優先権主張番号】P 2021011502
(32)【優先日】2021-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】322003798
【氏名又は名称】パナソニックエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003225
【氏名又は名称】弁理士法人豊栖特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大橋 修
【審査官】村上 優斗
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-065478(JP,A)
【文献】特開2013-029968(JP,A)
【文献】特開2012-048521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 1/00-1/16
7/00-7/12
7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の充電できる電池セルを有する電池モジュールと、
前記電池モジュールに接続されてなる低消費電力モードの切換機能を有する電池接続回路と、
前記電池接続回路を起動する起動回路と、
前記起動回路に接続されて起動信号を出力する起動スイッチとを備え、
前記起動回路が、
前記起動スイッチをベースとエミッタ間に接続して、前記起動スイッチのオン信号で、オフ状態に切り換えられる入力トランジスタと、
前記入力トランジスタの出力側に接続されて、前記入力トランジスタがオンからオフに切り換えられて、低消費電力状態にある前記電池接続回路に起動信号を出力するFET出力回路とを備える電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電源装置であって、
前記電池接続回路が、
前記電池モジュールの電池セルの電圧と、温度と、電流の少なくともひとつを検出して、検出するアナログ信号をデジタル信号に変換して出力する検出回路と、
前記検出回路から入力されるデジタル信号を演算処理するマイコンとを備える電源装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電源装置であって、
前記FET出力回路が、
前記入力トランジスタにゲートを接続して、前記入力トランジスタがオンからオフに切り換えられて、オフからオンに切り換えられる第1のFETと、
前記第1のFETにゲートを接続して、前記第1のFETがオフからオンに切り換えられて、オフからオンに切り換えられる第2のFETとを備え、
前記第2のFETがオフからオンに切り換えられて、前記電池接続回路に起動信号を出力して、前記電池接続回路を起動する電源装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の電源装置であって、
前記起動スイッチは、ノーマルオフの手動スイッチである電源装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電源装置であって、
前記起動スイッチが、押圧状態でオン状態の起動信号を出力する押ボタンスイッチである電源装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の電源装置であって、
前記起動回路が、前記入力トランジスタのベースと電源ラインとに接続されて、前記入力トランジスタをオン状態とするベース電流を流すベース抵抗を備え、
前記起動スイッチが、前記入力トランジスタのベースとアースラインとの間に接続されて、前記起動スイッチのオン信号で前記入力トランジスタがオフからオンに切り換えられる電源装置。
【請求項7】
請求項に記載の電源装置であって、
前記起動回路が、前記入力トランジスタの出力側に接続してなる第1の負荷抵抗を備え、
前記第1の負荷抵抗と前記入力トランジスタとの接続点が前記第1のFETのゲートに接続されて、前記入力トランジスタがオフからオンに切り換えられて、前記第1のFETがオフからオンに切り換えられる電源装置。
【請求項8】
請求項7に記載の電源装置であって、
前記第1の負荷抵抗が、前記入力トランジスタのコレクターに接続されてなる電源装置。
【請求項9】
請求項に記載の電源装置であって、
前記起動回路が、前記第1のFETの出力側に接続してなる第2の負荷抵抗を備え、
前記第2のFETのゲートが前記第2の負荷抵抗に接続されて、前記第1のFETがオフからオンに切り換えられて、前記第2のFETがオフからオンに切り換えられる電源装置。
【請求項10】
請求項9に記載の電源装置であって、
前記第2の負荷抵抗が、前記第1のFETのドレインに接続されてなる電源装置。
【請求項11】
請求項に記載の電源装置であって、
前記起動回路が、前記第2のFETの出力側に接続してなる第3の負荷抵抗を備え、
前記第2のFETがオフからオンに切り換えられて、前記第3の負荷抵抗が起動信号を前記電池接続回路に出力する電源装置。
【請求項12】
請求項11に記載の電源装置であって、
前記第3の負荷抵抗が、前記第2のFETのソースに接続されてなる電源装置。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれか一項に記載の電源装置であって、
前記電池接続回路が、前記起動回路から入力されるトリガー信号で、シャットダウン状態から起動される電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電池セルからなる電池モジュールを備える電源装置に関し、とくに電池モジュールに低消費電力モードに切り換えできる電池接続回路を接続している電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の電池セルを直列や並列に接続している電源装置は、各々の電池セルの状態を検出して充電電流や放電電流をコントロールして電池セルを保護している。この電源装置は、電池モジュールを構成する電池セルの電圧、温度、電流を検出し、検出する信号を演算処理して電池モジュールの充放電をコントロールする電池接続回路を備えている。この電源装置は、電池の過放電を防止するために、装置が使用されない状態で電池接続回路の電力消費をできる限り少なくする低消費電力モード、例えばシャットダウン状態に切り換えている。この電源装置は、低消費電力モードにある電池接続回路を再起動して動作モードに切り換える起動回路を必要とする。
【0003】
起動回路は、例えば特許文献1に開示されるように、手動操作スイッチの押ボタンを押して起動信号を出力する回路構成とすることができる。この起動回路は、電源回路とグランドラインとの間に電流制限抵抗を介してスイッチを接続して、スイッチからのオン信号で起動信号を出力している。しかしながら、この回路構成の起動回路は、スイッチをオフからオンに切り換えて、負荷抵抗とスイッチとの接続点から起動信号を出力するので、オン状態ではスイッチに負荷抵抗を介して接点電流が流れ、オフ状態では接点間の電圧が電源電圧に上昇する弊害が発生する。この弊害は、スイッチをFETのゲートに接続し、スイッチのオンオフでFETのゲート電圧を制御し、スイッチでFETをオンオフに切り換える回路構成として解消できる。
【0004】
具体的には、図2に示すように、起動スイッチ94を入力FET95のゲートとグランドライン99との間に接続して、起動スイッチ94で入力FET95をオンオフに切り換える回路構成として実現できる。起動スイッチ94には、主として押ボタンを押す状態でオン、押さない状態ではオフ状態となるノーマルオフの手動スイッチが使用される。起動スイッチ94は、低消費電力モードにある電池接続回路92を起動するタイミングでユーザーが押ボタンを押してオン状態となる。ノーマルオフのスイッチは、押ボタンを押してオン状態となると、入力FET95をオンからオフに切り換え、押ボタンが押されない状態で入力FET95はオン状態に保持される。オン状態の入力FET95は、負荷抵抗96を介して電源ライン98に接続されて、ドレイン-ソース間には、矢印Aで示すようにドレイン電流が流れる。さらに、入力FET95をオン状態に保持するために、ゲート電圧を所定の電圧に保持するためにゲートに接続しているバイアス抵抗97によっても矢印Bで示すバイアス電流が流れる。ドレイン電流やバイアス電流は、負荷抵抗96やバイアス抵抗97の電気抵抗を大きくして少なくできるが、電気抵抗を大きくすることは動作の安定性を阻害する要因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】再表2006/059511
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、さらに以上の課題を解決することを目的に開発されたもので、本発明の大切な目的は、低消費電力モードにおける起動回路の電力消費を低減してこの状態における電力消費をさらに少なくできる電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様に係る電源装置は、複数の充電できる電池セルを有する電池モジュールと、電池モジュールに接続されてなる低消費電力モードの切換機能を有する電池接続回路と、電池接続回路を起動する起動回路と、起動回路に接続されて起動信号を出力する起動スイッチとを備えている。起動回路は、起動スイッチをベースとエミッタ間に接続して、起動スイッチのオン信号でオフ状態に切り換えられる入力トランジスタと、入力トランジスタの出力側に接続されて、入力トランジスタがオンからオフに切り換えられて、低消費電力状態にある電池接続回路に起動信号を出力するFET出力回路とを備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電源装置は、起動回路の電力消費を小さくして省電力化できる特長がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る電源装置の回路図である。
図2】従来の電源装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のある実施形態の電源装置は、複数の充電できる電池セルを有する電池モジュールと、電池モジュールに接続され、かつ低消費電力モードの切換機能を有する電池接続回路と、低消費電力モードにある電池接続回路を起動する起動回路と、起動回路に接続されて起動信号を出力する起動スイッチとを備える。起動回路は、起動スイッチをベースとエミッタ間に接続して、起動スイッチのオン信号で、オフ状態に切り換えられる入力トランジスタと、入力トランジスタの出力側に接続されて、入力トランジスタがオンからオフに切り換えられて、低消費電力状態にある電池接続回路に起動信号を出力するFET出力回路とを備える。
【0011】
以上の電源装置の起動回路は、起動スイッチでオンオフに切り換えられる半導体スイッチング素子に、バイポーラトランジスタである入力トランジスタを使用する。トランジスタは、ベースに電流を流してオン状態に切り換えるので、ゲートに電流を流すことなくオン状態に切り換えできるFETに比較して、入力側の電力消費がFETよりも大きくなる。この特性から、省電力化の目的からは、オン状態においてベース電流を流して電力消費するトランジスタよりも、ゲートに電流を流すことなくオン状態となるFETが使用される。
【0012】
図2は、起動スイッチ94でオンオフに切り換えられる半導体スイッチング素子をFETとする起動回路93を示している。この起動回路93は、入力FET95のゲートとグランドライン99の間に起動スイッチ94を接続して、起動スイッチ94の押ボタンを押してオン状態として、入力FET95をオンからオフに切り換えて起動信号を出力する。この起動回路93は、起動スイッチ94のオン状態で入力FET95をオフ状態に切り換えるので、起動スイッチ94が押されない通常の状態では入力FET95はオン状態を保持する。オン状態の入力FET95は、矢印Aで示すように、ドレインからソースに向かってドレイン電流が流れ、さらに矢印Bで示すように、電源ライン98からグランドライン99に向かってバイアス抵抗97にバイアス電流が流れる。ドレイン電流は負荷抵抗96の電気抵抗を大きくして減少でき、バイアス抵抗97のバイアス電流はバイアス抵抗97の電気抵抗を大きくして減少できるが、負荷抵抗96やバイアス抵抗97の電気抵抗が大きすぎるとノイズの影響を受け易くなり安定な動作が保証できない。
【0013】
本発明の第1の実施形態にかかる電源装置の図1に示す起動回路3は、起動スイッチ4を接続する半導体スイッチング素子を、ベースに電流を流してオン状態とする入力トランジスタ5とする。この回路構成の起動回路3は、FETに代わって入力トランジスタ5を使用して、バイアス電流を減少して無駄な消費電力を削減できる。
【0014】
入力トランジスタは電流増幅する素子で、ベース電流と電流増幅率の積がコレクター電流となる。したがって、オン状態の入力トランジスタのコレクター電流を入力FETのドレイン電流と同じに設定して、ベース電流はドレイン電流/電流増幅率となって極めて小さくできる。たとえば、図2の起動回路93は、オン状態の入力FET95のドレイン電流を30μA程度として起動信号を出力できるが、入力FETを入力トランジスタ5とする図1の起動回路3は、入力トランジスタ5のコレクター電流を、図2の起動回路93の入力FET95のドレイン電流と同じ30μAとして起動信号を出力しながら、この状態で入力トランジスタ5のベース電流はコレクター電流/電流増幅率に減少できるので、入力トランジスタ5に電流増幅率を100倍とするバイポーラトランジスタを使用して、ベース電流を30/100μA、すなわち0.3μAと著しく減少できる。バイポーラトランジスタの電流増幅率は、一般的に100~500程度であるので、図1の起動回路3は、FETに代わってトランジスタを使用することで、ベース電流をほとんど無視できるまで減少できる。したがって、図1の起動回路3は、入力トランジスタ5のコレクター電流を、図2の起動回路93の入力FET95のドレイン電流と同じ電流値として、消費電流を約50%も低減できる。
【0015】
さらに、以上の電源装置は、入力トランジスタのベースとエミッタ間に起動スイッチを接続しているので、起動スイッチの耐圧を低くできる特長もある。それは、トランジスタが、ベース電圧を低くして、コレクター電流/電流増幅率で特定される極めて小さいベース電流を流してオン状態に保持できるからである。このため、起動スイッチには低耐圧の小型スイッチを使用でき、小型の起動スイッチを狭隘なスペースに配置できる特長も実現する。
【0016】
本発明の第2の実施形態にかかる電源装置は、電池接続回路が、電池モジュールの電池セルの電圧と、温度と、電流の少なくともひとつを検出して、検出するアナログ信号をデジタル信号に変換して出力する検出回路と、検出回路から入力されるデジタル信号を演算処理するマイコンとを備えている。
【0017】
この電源装置は、電池接続回路が電池モジュールを構成する電池セルの電圧や電流、さらに温度などを検出して、電池セルの過充電や過放電を防止し、さらに電池温度を検出して安全な状態で充放電できる特長がある。
【0018】
本発明の第3の実施形態にかかる電源装置は、FET出力回路の回路構成を、入力トランジスタにゲートを接続して、入力トランジスタがオンからオフに切り換えられて、オフからオンに切り換えられる第1のFETと、第1のFETにゲートを接続して、第1のFETがオフからオンに切り換えられて、オフからオンに切り換えられる第2のFETとを備え、第2のFETがオフからオンに切り換えられて、電池接続回路に起動信号を出力する回路とすることができる。
【0019】
本発明の第4の実施形態にかかる電源装置は、起動スイッチをノーマルオフの手動スイッチとしている。また、本発明の第5の実施形態にかかる電源装置は、起動スイッチを押圧状態でオン状態の起動信号を出力する押ボタンスイッチとしている。
【0020】
本発明の第6の実施形態にかかる電源装置は、入力トランジスタのベースと電源ラインとに接続されて、入力トランジスタをオン状態とするベース電流を流すベース抵抗を備える起動回路とし、起動スイッチを入力トランジスタのベースとアースラインとの間に接続して、起動スイッチのオン信号で、入力トランジスタをオンからオフに切り換える回路構成としている。
【0021】
本発明の第7の実施形態にかかる電源装置は、入力トランジスタの出力側に接続してなる第1の負荷抵抗を備える起動回路とし、第1の負荷抵抗と入力トランジスタとの接続点を第1のFETのゲートに接続して、入力トランジスタがオンからオフに切り換えられて、第1のFETがオフからオンに切り換えられる回路構成としている。
【0022】
本発明の第8の実施形態にかかる電源装置は、第1の負荷抵抗を入力トランジスタのコレクターに接続する回路構成とすることができる。
【0023】
本発明の第9の実施形態にかかる電源装置は、第1のFETの出力側に接続してなる第2の負荷抵抗を備える起動回路として、第2のFETのゲートを第2の負荷抵抗に接続して、第1のFETがオフからオンに切り換えられて、第2のFETがオフからオンに切り換えられる回路構成とすることができる。
【0024】
本発明の第10の実施形態にかかる電源装置は、第2の負荷抵抗を第1のFETのドレインに接続する回路構成とすることができる。
【0025】
本発明の第11の実施形態にかかる電源装置は、起動回路に第2のFETの出力側に接続してなる第3の負荷抵抗を設け、第2のFETがオフからオンに切り換えられて、第3の負荷抵抗が起動信号を電池接続回路に出力する回路構成とすることができる。
【0026】
本発明の第12の実施形態にかかる電源装置は、第3の負荷抵抗を第2のFETのソースに接続することができる。
【0027】
以下、図面に基づいて本発明を詳細に説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、及びそれらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一もしくは同等の部分又は部材を示す。
さらに以下に示す実施形態は、本発明の技術思想の具体例を示すものであって、本発明を以下に限定するものではない。また、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また、一の実施の形態、実施例において説明する内容は、他の実施の形態、実施例にも適用可能である。また、図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張していることがある。
【0028】
(電源装置100)
図1の電源装置100は、複数の充電できる電池セル1を直列や並列に接続している電池モジュール10と、電池モジュール10に接続している電池接続回路2と、電池接続回路2の起動回路3と、起動回路3に接続している起動スイッチ4とを備える。
【0029】
(電池モジュール10)
電池モジュール10は、複数の電池セル1を直列又は並列に接続して充放電容量を大きくしている。電池モジュール10は、電池セル1の個数と直列又は並列に接続する数で、電源装置100の用途に最適な電圧と充放電容量に設定される。電源装置100は、種々の用途に使用され、例えば、蓄電装置や車両走行用の電源装置に使用される。蓄電装置に使用される電源装置は、電池モジュール10の出力電圧を例えば40V~100Vとし、車両走行用の電源装置は、電池モジュール10の出力電圧を200V~400Vとする。電池セル1は、好ましくはリチウムイオン二次電池又はリチウムポリマー二次電池等の非水系電解液二次電池として、重量と容量に対する充放電容量を大きくできるが、電池セル1をリチウムイオン二次電池やリチウムポリマー二次電池に特定するものでなく、現在使用され、あるいはこれから開発される充電できる他の全ての二次電池、たとえばニッケル水素電池や個体電池なども使用できる。
【0030】
(電池接続回路2)
電池接続回路2は、電池モジュール10の状態、すなわち電池情報を検出する検出回路21と、検出回路21から出力されるデジタル信号を演算処理するマイコン22とを備える。検出回路21が検出する電池情報は、例えば電池モジュール10を構成している電池セル1の電圧や温度、電池モジュール10の電流などで、検出回路21はこれらの電池情報をアナログ信号として検出する。検出回路21は検出するアナログ信号をデジタル信号に変換して外部の制御回路(図示せず)に出力する。電池接続回路2が電池セル1の電圧と温度を検出し、さらに電池モジュール10の電流を検出する電源装置100は、外部の制御回路に電池情報を出力し、外部の制御回路が電池モジュール10の充放電をコントロールする。この電源装置100は、電池セル1の過充電や過放電を防止しながら、電池モジュール10を充放電できる。また、電池セル1の温度を検出する検出回路21を備える電源装置100は、電池セル1の温度を設定温度に保持して、安全に充放電できる特長がある。ただ、以上の電源装置100は、電池接続回路2が検出する電池情報を電圧、温度、電流に特定するものでなく、たとえば、各々の電池セル1の残容量を電池情報として検出して外部に出力することもできる。
【0031】
電圧や電流を検出する検出回路21は、図示しないが、電池モジュール10を構成している電池セル1の電圧を検出る電圧検出回路、特定の電池セル1の温度を検出する温度検出回路、電池モジュール10の充放電電流を検出する電流検出回路と、これらの検出回路で検出するアナログ信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバーターを備える。ただし、本発明の電源装置100は、電池接続回路2の検出回路21の回路構成を特定するものでなく、例えば、電池モジュール10の他のパラメータを検出する検出回路とすることもできる。
【0032】
マイコン22は、検出回路21から入力されるデジタル信号を演算処理する。マイコン22の演算処理は、入力される電池セル1の検出電圧を最低電圧と最大電圧に比較して、電池モジュール10の最大充放電電流を特定する信号をメインの制御回路(図示せず)に出力し、あるいは電池モジュール10や電池セル1の電圧と電流から、電池モジュール10や電池セル1の残容量を演算して、残容量を外部の制御回路に出力し、あるいはまた、電池の残容量をLEDを点灯して表示することもできる。
【0033】
電池接続回路2は、設定時間充放電使用されない状態を検出して、あるいは外部からの信号を検出して、低消費電力モードとなって無駄な電力消費を抑制する。電池接続回路2は、低消費電力モードの状態において、起動回路3から起動信号が入力されると再起動して動作状態に復帰する。電池接続回路2は、例えば、起動回路3から入力されるトリガー信号でシャットダウン状態から起動される。電池接続回路2は、検出回路21とマイコン22の両方を低消費電力モードとして無駄な電力消費を削減する。ただ、電池接続回路2は、検出回路21とマイコン22の一方を低消費電力モードとして電力消費を低減することもできる。
【0034】
検出回路21は、低消費電力モードにおいては電池モジュール10からの電力供給を停止し、マイコン22は低消費電力モードにおいて、シャットダウン状態、休止状態、又はスリープ状態に切り換えられる。ただし、本明細書において「低消費電力モード」は通常の動作状態に比較して電力の消費を低下させる全ての状態を意味するものとし、必ずしもシャットダウン状態、休止状態、スリープ状態などに特定するものではない。検出回路21とマイコン22の両方を低消費電力モードとする電池接続回路2は、起動回路3から検出回路21に起動信号を出力して検出回路21を起動し、起動した検出回路21からマイコン22に起動信号を出力してマイコン22を起動する。ただ、電池接続回路2は、検出回路21とマイコン22の両方に起動回路3から起動信号を入力して、検出回路21とマイコン22の両方を再起動することもできる。
【0035】
(起動回路3)
起動回路3は、起動スイッチ4から入力されるオンオフ信号で、電池接続回路2を低消費電力モードから再起動して動作モードに切り換える。起動回路3は、起動スイッチ4を介してベースをグランドライン19に接続している入力トランジスタ5と、入力トランジスタ5から[High]又は[Low]信号が入力されて、起動信号を出力するFET出力回路6を備える。FET出力回路6は、入力トランジスタ5がオンからオフに切り換えられたタイミングで起動信号を出力する。
【0036】
(起動スイッチ4)
起動スイッチ4は、ノーマルオフの手動スイッチで、押ボタンを押した状態でオン状態となる押ボタンスイッチが使用できる。ただ、起動スイッチ4は押ボタンスイッチに代わって、ユーザーが操作してオンオフに切り換えできる他の全てのスイッチ、たとえば近接スイッチなども使用できる。
【0037】
(入力トランジスタ5)
入力トランジスタ5はバイポーラトランジスタで、起動スイッチ4が押された状態で”Low”信号を出力する。入力トランジスタ5は、ベースとエミッタとの間に起動スイッチ4を接続している。この入力トランジスタ5は、オン状態の起動スイッチ4がベースをエミッタに接続してベース電流の流れないオフ状態に切り換えられる。図1の起動回路3は、入力トランジスタ5のベースとコレクターとの間にベース抵抗14を接続している。ベース抵抗14は、起動スイッチ4のオフ状態において、コレクターからベースに電流を供給して入力トランジスタ5をオン状態に保持する。起動スイッチ4はノーマルオフのスイッチで、押ボタンが押されない状態ではオフ状態となって、入力トランジスタ5をオン状態に保持する。ベース抵抗14は、起動スイッチ4のオフ状態で入力トランジスタ5をオン状態とするベース電流を流す電気抵抗としている。
【0038】
入力トランジスタ5は、ベース電流でコレクター電流を制御する。ベース電流と電流増幅率の積はコレクター電流となる。一般的なトランジスタの電流増幅率は、100~500程度である。したがって、入力トランジスタ5は、ベース電流をコレクター電流の1/100~1/500に設定する。たとえば、コレクター電流を50μA~100μA、電流増幅率が100である入力トランジスタ5は、ベース電流を0.5μA~1μAに設定する。この入力トランジスタ5は、ベース電流を0.5μA~1μAとする電気抵抗として、入力トランジスタ5のコレクター電流を50μAに設定する。
【0039】
入力トランジスタ5が、ベース電流をコレクター電流の1/100~1/500に低減できることは、起動回路3の電力消費を著しく低減することに有効である。起動回路3は、電池接続回路2の低消費電力モードにおいて、入力トランジスタ5をオン状態に保持するので、オン状態の入力トランジスタ5の消費電力を低減して、電池接続回路2の低消費電力モードにおける、起動回路3の電力消費を低減することが要求される。電池接続回路2の低消費電力モードにおいて、電池モジュール10から起動回路3に動作電力を供給しているので、起動回路3が電池モジュール10の電力を消費しているからである。電池接続回路2の低消費電力モードにおいて、起動回路3は起動スイッチ4からの信号で電池接続回路2に起動信号を出力できる動作モードに保持されて電池モジュール10を放電するが、低消費電力モードは長時間使用されない状態で設定されるモードで、低消費電力モードの時間は相当に長くなることが多く、このタイミングでの起動回路3の電力消費は、仮に少なくとも積算されて電池モジュール10を放電するトータル電力が増加するからである。
【0040】
従来の図2に示す起動回路93は、低消費電力モードにおいてオン状態に保持される入力FET95が、ドレイン-ソース間に流れるドレイン電流に加えて、FETのゲートにオン電圧を入力するバイアス抵抗97にバイアス電流が流れる。バイアス抵抗97は、電池モジュール90の電圧を分圧してゲートにオン電圧を入力する、第1のバイアス抵抗97Aと第2のバイアス抵抗97Bとの直列抵抗からなる。このバイアス抵抗97は、第1のバイアス抵抗97Aと第2のバイアス抵抗97Bの抵抗比でゲート電圧を特定できるが、ゲートとグランドライン99との間に接続している第2のバイアス抵抗97Bの電気抵抗を大きくすると、外部ノイズなどの外的条件で入力FET95が誤動作する確率が高くなる。とくに、FETはゲートの入力インピーダンスが相当に高く、高抵抗のバイアス抵抗97では外部ノイズなどによる誤動作を確実に阻止することが難しくなる。バイアス抵抗97は、常に電池モジュール90のプラス側とマイナス側に接続されてバイアス電流を流して電池モジュール90を放電するので、低消費電力モードにおける無駄な消費電力を低減することから、バイアス電流をいかに低減できるかは極めて大切である。
【0041】
図1の起動回路3は、低消費電力モードにおいてオン状態となる入力トランジスタ5にコレクター電流とベース電流が流れる。入力トランジスタ5のコレクター電流は図2の起動回路93のドレイン電流に相当し、ベース電流は図2の起動回路93のバイアス電流に相当する。図Aの起動回路93は、ドレイン電流とバイアス電流をほぼ同一電流として安定な動作を実現できるので、低消費電力モードにおいて、ドレイン電流の2倍の電流が電池モジュール90を連続的に放電する。図1の起動回路3は、ベース電流をコレクター電流の1/100~1/500とほとんど無視できる電流値まで小さくできるので、低消費電力モードにおいて、電池モジュール10はコレクター電流のみとなって、図Aの起動回路93に比較して電池モジュール10の無駄な放電を50%も削減できる。以上のように、図1の起動回路3は、実質的にゲートに電流を流すことなくオン状態に切り換えできる省エネルギー素子のFETに代わって、ベース電流を流してオン状態とするバイポーラトランジスタを使用しながら、低消費電力モードにおける電池モジュール10の電力消費を50%も低減する極めて優れた特長を実現する。この特長は、入力インピーダンスの高いFETを安定に動作させるために、電気抵抗を低くすることが難しいFETのバイアス抵抗の無駄なバイアス電流を、電流増幅するバイポーラトランジスタの特有の特性を利用して削減することで実現する。
【0042】
以上の入力トランジスタ5は、オン状態で”Low”、オフ状態で”High”信号をFET出力回路6に出力するために、コレクターに第1の負荷抵抗11を接続し、コレクターと第1の負荷抵抗11との接続点15を第1のFET7のゲートに接続している。ただし、本明細書において、”Low””High”はグランドライン19を基準とする。第1の負荷抵抗11は、オン状態の入力トランジスタ5のコレクター電流を、例えば20μA~50μAとする電気抵抗に設定される。起動スイッチ4がオフからオンに切り換えられると、入力トランジスタ5は、オンからオフに切り換えられて第1の負荷抵抗11を介して”High”信号をFET出力回路6に出力する。第1の負荷抵抗11は、電池モジュール10のトータル電圧をオフ状態の入力トランジスタ5のベース抵抗14で分圧してFET出力回路6に出力する。
【0043】
(FET出力回路6)
入力トランジスタ5のコレクターから出力される”High”信号は、FET出力回路6を介して、電池接続回路2に安定な”High”の起動信号として出力される。FET出力回路6は、入力トランジスタ5から入力される”High”信号の”High””Low”を反転することなく、低い出力インピーダンスで”High”信号を電池接続回路2に出力する。FET出力回路6は、入力トランジスタ5の出力側に接続している第1のFET7と、第1のFET7の出力側に接続している第2のFET8とを備える。FET出力回路6は、起動スイッチ4が押されないノーマル状態で第1のFET7と第2のFET8の両方をオフ状態として電力消費を削減し、起動スイッチ4が押された状態では両方がオン状態となって、入力トランジスタ5から入力される”High”信号を電池接続回路2に出力する。第1のFET7はnチャンネルのFETでソースをグランドライン19に接続して、グランドライン19に対する”High”信号でオン状態となる。第2のFET8はpチャンネルのFETでソースを電池モジュール10のプラス側である電源ライン18に接続しているので、グランドライン19に対する”Low”信号でゲートにオン電圧が入力されてオン状態となる。
【0044】
(第1のFET7)
第1のFET7は入力トランジスタ5からゲートに”Low”信号が入力されてオフ、”High”信号が入力されてはオンとなる。第1のFET7は、オフ状態で”High”を出力し、オン状態で”Low”を出力する。入力トランジスタ5は起動スイッチ4が押されない状態では”Low”、起動スイッチ4が押された状態で”High”を出力するので、第1のFET7は、起動スイッチ4が押されない状態で”High”、起動スイッチ4が押された状態で”Low”を出力する。第1のFET7は、ゲートを入力トランジスタ5のコレクターに、ドレインを第2の負荷抵抗12を介して電池モジュール10の電源ライン18に、ソースをグランドライン19に接続している。第2の負荷抵抗12は、第1のFET7のオン状態で、電池モジュール10の電圧を分圧して第2のFET8のゲートにオン電圧を入力する。第2の負荷抵抗12は、第1のFET7のオフ状態で、第2のFET8のゲートを電池モジュール10のプラス側、すなわち第2のFET8のソースに接続してゲートにオフ電圧を入力する。
【0045】
(第2のFET8)
第2のFET8はpチャンネルのFETで、ソースを電池モジュール10のプラス側である電源ライン18に、ゲートを第2の負荷抵抗12の中間接続点16に、ドレインを第3の負荷抵抗13を介してグランドライン19に接続している。第2のFET8は、第1のFET7のオン状態でオン状態となる。この状態で、第2の負荷抵抗12が電源ライン18の電圧を分圧して第2のFET8のゲートにオン電圧を入力するからである。オン状態の第2のFET8は、グランドライン19との間に接続している第3の負荷抵抗13で電源ライン18の電圧を分圧して、”High”信号の起動信号を電池接続回路2に出力する。第2のFET8は、第1のFET7のオフ状態においてオフ状態となる。第1のFET7が、第2の負荷抵抗12をグランドライン19から切り離して、第2のFET8のゲートをソースに接続するからである。オフ状態にある第2のFET8は、第3の負荷抵抗13を電池モジュール10のプラス側から切り離して、第3の負荷抵抗13の中間接続点17の電圧を”Low”とする。
【0046】
第1のFET7のオン状態におけるドレイン電流は、第2の負荷抵抗12の電気抵抗で特定され、第2のFET8のオン状態におけるドレイン電流は、第3の負荷抵抗13の抵抗値で特定されるので、第2の負荷抵抗12と第3の負荷抵抗13の抵抗値は、各々のFETのオン状態におけるコレクター電流を設定値とする値に設定される。第2の負荷抵抗12の電気抵抗は、高すぎると”High”又は”Low”信号を安定して第2のFET8に出力することができず、低すぎると第1のFET7のコレクター電流が大きくなって電力消費が大きくなる。したがって、第2の負荷抵抗12は、安定してオンオフの信号を第2のFET8に出力しながら、消費電流をできる限り小さくする電気抵抗に設定される。第3の負荷抵抗13の電気抵抗は、FET出力回路6の出力インピーダンスに影響を与える。第3の負荷抵抗13は、FET出力回路6の出力インピーダンスを低くして、電池接続回路2に安定して起動信号を出力する電気抵抗に設定される。
【0047】
以上の電源装置100は、以下の動作で、低消費電力モードにある電池接続回路2を再起動する。
低消費電力モードは、長時間使用されない状態では、電池接続回路2を低消費電力モードに切り換えて電力消費を削減している。この状態において、起動スイッチ4はオフ、起動回路3の入力トランジスタ5はオン、第1のFET7はオフ、第2のFET8はオフ状態にある。オン状態の入力トランジスタ5は、コレクター電流が流れるが、ベース電流をほとんど無視できる電流となって電力消費は著しく削減される。第1のFET7と第2のFET8はオフ状態にあってドレイン電流は遮断される。
【0048】
電池接続回路2を再起動するタイミングで、ユーザーは起動スイッチ4を押して起動回路3にオン信号を出力する。起動スイッチ4のオン信号は、入力トランジスタ5のベースをグランドライン19、すなわちエミッタに接続して入力トランジスタ5をオフ状態に切り換える。オフ状態の入力トランジスタ5は、第1の負荷抵抗11を介して第1のFET7のゲートにオン電圧を入力して、第1のFET7をオン状態に切り換える。オン状態に切り換えられた第1のFET7は、第2の負荷抵抗12をグランドライン19に接続して、第2の負荷抵抗12の中間接続点16から第2のFET8のゲートにオン電圧を入力して、オン状態に切り換える。オン状態に切り換えられた第2のFET8は、第3の負荷抵抗13の中間接続点17から”High”の起動信号を電池接続回路2に出力する。”High”の起動信号が入力された電池接続回路2は、低消費電力モードから動作モードに切り換えられて正常な動作状態となる。図1の電池接続回路2は、検出回路21とマイコン22とを備え、起動回路3は検出回路21に起動信号を出力し、検出回路21がマイコン22に起動信号を出力してマイコン22を低消費電力モードから再起動させる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の電源装置は、使用しない状態では低消費電力モードとして電力消費を削減し、使用状態では起動スイッチを押して再起動する装置に有効に使用できる。
【符号の説明】
【0050】
100…電源装置
1…電池セル
2…電池接続回路
3…起動回路
4…起動スイッチ
5…入力トランジスタ
6…FET出力回路
7…第1のFET
8…第2のFET
10…電池モジュール
11…第1の負荷抵抗
12…第2の負荷抵抗
13…第3の負荷抵抗
14…ベース抵抗
15…接続点
16…中間接続点
17…中間接続点
18…電源ライン
19…グランドライン
21…検出回路
22…マイコン
90…電池モジュール
92…電池接続回路
93…起動回路
94…起動スイッチ
95…入力FET
96…負荷抵抗
97…バイアス抵抗
97A…第1のバイアス抵抗
97B…第2のバイアス抵抗
98…電源ライン
99…グランドライン
図1
図2