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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-22
(45)【発行日】2025-07-30
(54)【発明の名称】流し込み材
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/66 20060101AFI20250723BHJP
   B22D 41/02 20060101ALI20250723BHJP
   F27D 1/00 20060101ALI20250723BHJP
   F27D 1/16 20060101ALI20250723BHJP
   C04B 35/101 20060101ALN20250723BHJP
【FI】
C04B35/66
B22D41/02 A
F27D1/00 N
F27D1/16 F
C04B35/101
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2024189310
(22)【出願日】2024-10-28
【審査請求日】2024-10-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000170716
【氏名又は名称】黒崎播磨株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】弁理士法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 啓介
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-270781(JP,A)
【文献】特開平1-313368(JP,A)
【文献】特開平2-6373(JP,A)
【文献】特開2000-203952(JP,A)
【文献】特開2004-137122(JP,A)
【文献】特開昭62-100483(JP,A)
【文献】竹内紫保ほか,シリカゾル及び種々のバインダーを用いたキャスタブルの特性の比較,耐火物,2023年10月01日,Vol.75, No.10,PP.424-429,ISSN:0039-8993
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/66
B22D 41/02
F27D 1/00
F27D 1/16
C04B 35/101
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカフュームを0.2~12質量%、水を添加すると再水和反応を起こし硬化する耐火原料である反応性アルミナを0.1~2質量%含有し、残部がその他の耐火原料よりなる耐火原料配合物100質量%に対して、アルミン酸カルシウムのうちCA、CA2及びC12A7から選択される一種以上を合計で0.05~1質量%、乳酸アルミニウムを0.1~1.2質量%の添加率で添加してなる、流し込み材。
【請求項2】
耐火原料配合物100質量%に占める割合において、シリカフュームの含有率が0.5~12質量%、水を添加すると再水和反応を起こし硬化する耐火原料である反応性アルミナの含有率が0.2~1.5質量%であり、
耐火原料配合物100質量%に対する添加割合において、アルミン酸カルシウムのうちCA、CA2及びC12A7から選択される一種以上の合計の添加率が0.1~0.6質量%、乳酸アルミニウムの添加率が0.3~0.8質量%である、請求項1に記載の流し込み材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、高炉樋、溶銑予備処理設備(KR)インペラー、取鍋蓋、タンディッシュ蓋、加熱炉スキッドパイプ、各種窯炉、焼却炉、流動床炉、産業廃棄物キルン処理炉、循環流動層(CFB)ボイラ用炉、セメント製造設備用炉、ガス化溶融炉、ストーカ炉等に使用される流し込み材に関する。
【背景技術】
【0002】
流し込み材とは、流し込み施工できる不定形耐火物の総称であり、キャスタブル耐火物、キャスタブルとも呼ばれるものである。かかる流し込み材としては、結合材としてセメント(アルミナセメント、ポルトランドセメント、マグネシアセメント等)を用いたものが汎用されている。ただし、結合材としてセメントを用いた場合、常温で水和反応が起こって流し込み施工体のマトリックスが緻密になるため脱水がしづらくなり、施工体の温度が上昇すると爆裂を生じる危険性がある。そのため、流し込み施工後に乾燥工程が必要となり、乾燥工程の実施に費用を要すると共に長時間の操業停止時間を要するという問題がある。
【0003】
一方で、結合材としてシリカゾルすなわちコロイダルシリカを用いた流し込み材も知られている。例えば、特許文献1には、結合材としてコロイダルシリカを用いることなどにより、流し込み施工後に乾燥工程が不要であって、炉内物からの物理的な衝撃を抑制できると共にアルカリアタックを抑制できる焼成炉用の流し込み材が開示されている。
【0004】
流し込み材の施工において混練時に用いる混練液としては、通常、水が使用される。また、多くの混練ミキサーには、水量計及び水用タンクが設置されている。ここで、流し込み材に使用されるコロイダルシリカは、結合材としての役割のほか、混練液としての役割を有する。そこで、コロイダルシリカを混練液として使用する施工を実施する際に、混練ミキサーに設置されている水量計及び水用タンクを使用した場合、施工後に入念な清掃が必要となり、多くの時間と労力が必要となる。これに対して、混練ミキサーに設置されている水量計及び水用タンクを使用しない場合、コロイダルシリカが入ったタンクを製鉄所等の施工現場まで運搬しなければならず、その後、コロイダルシリカは、手付きビーカーなどで必要量の計量を行った後、耐火原料の入った混練ミキサーに添加される。このように、流し込み材にコロイダルシリカを使用する場合、水を使用する場合と比較して、作業負荷が多くなるという問題がある。
【0005】
他方で、非特許文献1には、マイクロシリカゲルボンドを形成するノーセメントキャスタブルが開示されている。マイクロシリカゲルボンドは、シリカフューム等の耐火原料と混練液に水を使用することで得ることができる。
ここで、非特許文献1に開示されているのはノーセメントキャスタブルであるが、「ノーセメント」といってもセメントを全く含まないものではない。すなわち、ASTM C401-91ではCaO成分の含有率により、一般キャスタブル、低セメントキャスタブル、極低セメントキャスタブル、ノーセメントキャスタブルの4つの分類があり、このうちノーセメントキャスタブルは、CaO成分の含有率が0.2質量%以下のものとされている。この点、非特許文献1に開示されているノーセメントキャスタブルは、70%CAC(70質量%Al・30質量%CaOのアルミン酸カルシウムセメント)を0.5質量%添加しており、CaO成分の含有率は、概ね0.5×0.3=0.15質量%となり、ノーセメントキャスタブルの分類に属する。
このように非特許文献1に開示されているノーセメントキャスタブルは、CaO成分を含んでおり、溶液中にCa2+(及び/又は他の多価カチオン)が溶出することで負電荷に帯電したマイクロシリカ(シリカフューム)の表面においてゲル化作用を引き起こす。マイクロシリカゲルボンドは、このゲル化作用により、連結されたマイクロシリカ粒子が3次元ネットワークを形成した状態である。
このようにマイクロシリカゲルボンドの形成を利用した流し込み材は、コロイダルシリカのような特別な液体を使用することなく、液体としては水のみを使用して施工することができ、施工時の作業負荷が軽減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第7510557号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】”Effect of Additives and Installation Temperatures on Setting Behaviour and Mechanical Properties of Self-flowing Silica Bonded No-cement Castables”,ALUMINIUM 2016 11th Trade Fair & Conference, p.75-79
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の通り、マイクロシリカゲルボンドの形成を利用した流し込み材は、施工時の作業負荷を軽減することができる。しかしながら、コロイダルシリカを用いた流し込み材のように、乾燥工程を不要とする特性を得るまでには至っていない。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、施工時の作業負荷を軽減することができると共に、乾燥工程を不要とすることができる流し込み材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、マイクロシリカゲルボンドの形成を利用した流し込み材において、乾燥工程を不要とする特性を得るべく試験及び研究を重ねた結果、乳酸アルミニウムの添加が有効であるとの知見を得た。すなわち、マイクロシリカゲルボンド形成のためにシリカフューム及び水を添加すると再水和反応を起こし硬化する耐火原料である反応性アルミナをそれぞれ特定範囲の含有率で含有する耐火原料配合物に対して、アルミン酸カルシウムのうちCA、CA2及びC12A7から選択される一種以上を特定範囲の添加率で添加すると共に、乳酸アルミニウムを特定範囲の添加率で添加すると、施工時に乳酸アルミニウムが混練水によってゲル化し、その後、乾燥に至る過程で体積収縮することによって施工体中に多数の微細な亀裂が発生し、これが水蒸気の逃げ道となることで脱水速度が大きく上昇し、その結果、乾燥工程を不要とする特性を得ることができるとの知見を得た。
【0010】
すなわち、本発明の一観点によれば次の流し込み材が提供される。
シリカフュームを0.2~12質量%、水を添加すると再水和反応を起こし硬化する耐火原料である反応性アルミナを0.1~2質量%含有し、残部がその他の耐火原料よりなる耐火原料配合物100質量%に対して、アルミン酸カルシウムのうちCA、CA2及びC12A7から選択される一種以上を合計で0.05~1質量%、乳酸アルミニウムを0.1~1.2質量%の添加率で添加してなる、流し込み材。
【発明の効果】
【0011】
本発明の不定形流し込み材によれば、施工時の作業負荷を軽減することができると共に、乾燥を不要とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の流し込み材は、シリカフュームを0.2~12質量%、水を添加すると再水和反応を起こし硬化する耐火原料である反応性アルミナを0.1~2質量%含有し、残部がその他の耐火原料よりなる耐火原料配合物100質量%に対して、アルミン酸カルシウムのうちCA、CA2及びC12A7から選択される一種以上を合計で0.05~1質量%、乳酸アルミニウムを0.1~1.2質量%の添加率で添加してなる。なお、以下の説明では、水を添加すると再水和反応を起こし硬化する耐火原料である反応性アルミナのことを単に「反応性アルミナ」といい、アルミン酸カルシウムのうちCA、CA2及びC12A7から選択される一種以上のアルミン酸カルシウムのことを「特定アルミン酸カルシウム」という。
本発明において、耐火原料配合物中のシリカフューム及び反応性アルミナ、並びに耐火原料配合物に対して添加する特定アルミン酸カルシウムは、主として、マイクロシリカゲルボンドを形成するマイクロシリカゲルボンド形成材としての役割を有する。すなわち本発明は、上述の通り、マイクロシリカゲルボンド形成のために、シリカフューム及び反応性アルミナをそれぞれ特定範囲の含有率で含有する耐火原料配合物に対して、特定アルミン酸カルシウムを特定範囲の添加率で添加すると共に、乳酸アルミニウムを特定範囲の添加率で添加することにより、乾燥工程を不要とする特性を付与することを技術的特徴とするものである。以下、具体的に説明する。
【0013】
シリカフュームの含有率は0.2~12質量%である。シリカフュームの含有率が0.2質量%未満では、マイクロシリカゲルボンドが十分に形成されず、養生後の強度(以下「養生強度」という。)が不足する。一方、シリカフュームの含有率が12質量%を超えると、流し込み施工体のマトリックスが過度に緻密化して脱水がしづらくなり、施工体の温度が上昇すると爆裂を生じる危険性がある。すなわち、耐爆裂性が低下して乾燥工程を不要とする特性を得ることができない。シリカフュームの含有率は0.5~12質量%であることが好ましい。なお、シリカフュームとしては、流し込み材に一般的に用いられるものを使用することができる。
【0014】
反応性アルミナの含有率は0.1~2質量%である。反応性アルミナの含有率が0.1質量%未満では、マイクロシリカゲルボンドが十分に形成されず、養生強度が不足する。一方、反応性アルミナの含有率が2質量%を超えると、流し込み施工体のマトリックスが過度に緻密化して通気率が低下し、結果として乾燥工程を不要とする特性を得ることができない。反応性アルミナの含有率は0.5~1.5質量%であることが好ましい。
ここで、反応性アルミナとは、水を添加すると再水和反応を起こし、硬化する耐火原料をいい、代表的にはρアルミナが挙げられる。なお、反応性アルミナは、平均粒子径(D50)が10μm未満程度の超微粉体であるが、耐火原料として一般的に用いられている活性アルミナ等のアルミナ超微粉とは、水との反応性の観点から明確に区別される。また、一般的に、反応性アルミナは非晶質であり、結晶構造の観点からも活性アルミナ等の通常のアルミナ超微粉とは区別可能である。
【0015】
このように、本発明において耐火原料配合物は、マイクロシリカゲルボンド形成材の一部として、シリカフューム及び反応性アルミナを含有するが、その残部は、その他の耐火原料よりなる。なお、その他の耐火原料とは、シリカフューム及び反応性アルミナ以外の耐火原料のことである。その他の耐火原料としては、アルミナ原料、マグネシア原料、スピネル原料、シリカ原料、炭素原料、アルミナシリカ原料、炭化珪素原料等、流し込み材に一般的に使用されている耐火原料を使用することができる。また、その他の耐火原料の粒度分布も流し込み材に一般的に使用されている耐火原料の粒度分布と同様にすることができる。
【0016】
特定アルミン酸カルシウムの添加率は0.05~1質量%である。特定アルミン酸カルシウムの添加率が0.05質量%未満では、マイクロシリカゲルボンドが十分に形成されず、養生強度が不足する。一方、特定アルミン酸カルシウムの添加率が1質量%を超えると、常温で水和反応が起こって流し込み施工体のマトリックスが緻密になるため脱水がしづらくなり、施工体の温度が上昇すると爆裂を生じる危険性がある。すなわち、耐爆裂性が低下して乾燥工程を不要とする特性を得ることができない。特定アルミン酸カルシウムの添加率は0.1~0.6質量%であることが好ましい。
ここで、特定アルミン酸カルシウムとは上述の通り、CA(CaO・Al)、CA2(CaO・2Al)及びC12A7(12CaO・7Al)から選択される一種以上のアルミン酸カルシウムであり、流し込み材の代表的な結合材であるアルミナセメントを構成する主要な水硬性の鉱物として広く知られている。そこで、本発明において特定アルミン酸カルシウムは、アルミナセメントとして添加することができる。この場合、特定アルミン酸カルシウムの添加率は、アルミナセメントの添加率と、このアルミナセメント中の特定アルミン酸カルシウムの含有率とに基づいて算出することができる。一方、特定アルミン酸カルシウムは、鉱物単独として又はアルミナセメントと併用して添加することもできる。
【0017】
乳酸アルミニウムの添加率は、耐火原料配合物100質量%に対して0.1~1.2質量%である。乳酸アルミニウムの添加率が0.1質量%未満では、微細な亀裂の発生数が少ないため耐爆裂性を向上させる効果を十分に得ることができず、乾燥工程を不要とする特性を得ることができない。一方、乳酸アルミニウムの含有量が1.2質量%を超えると、微細な亀裂が過剰に発生して気孔率が上昇するため、耐食性が低下する。乳酸アルミニウムの添加率は0.3~0.8質量%であることが好ましい。
ここで、乳酸アルミニウムとは、不定形耐火物で一般的に使われている塩基性乳酸アルミニウム、変性塩基性乳酸アルミニウム、塩基性乳酸・ヒドロキシ酢酸アルミニウムなどの添加剤をいう。
【0018】
本発明において耐火原料配合物には、特定アルミン酸カルシウム(アルミナセメント)及び乳酸アルミニウムのほかに爆裂防止剤、分散剤などの各種添加剤を適宜添加することができる。
爆裂防止剤の具体例は、有機質ファイバー、有機発泡剤、金属アルミニウム等である。有機質ファイバーの具体例は、ビニロン(ポリビニールアルコールを含む)、レーヨン、ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの高分子有機質ファイバーである。
分散剤は耐火物の施工時の流動性を付与するもので、具体例としては、トリポリリン酸ソーダ、ヘキサメタリン酸ソーダ、ウルトラポリリン酸ソーダ、酸性ヘキサメタリン酸ソーダ、ホウ酸ソーダ、炭酸ソーダ、ポリメタリン酸塩などの無機塩、クエン酸ソーダ、酒石酸ソーダ、ポリアクリル酸ソーダ、スルホン酸ソーダ、ポリカルボン酸塩、β-ナフタレンスルホン酸塩類、ナフタリンスルフォン酸等である。
これらの添加剤は、特定アルミン酸カルシウム(アルミナセメント)及び乳酸アルミニウムと同様に、耐火原料配合物100質量%に対して添加する。その添加率は、一般的な流し込み材と同等でよい。
【0019】
また、本発明の流し込み材には、以上の耐火原料配合物、並びに特定アルミン酸カルシウム(アルミナセメント)、乳酸アルミニウム及び各種添加剤のほかに、粒径8mm以上の大粗粒を使用することもできる。この大粗粒は流し込み施工体のマトリックスに発生した亀裂の進展を防止する役割を有する。
【0020】
なお、本発明において耐火原料の粒径とは、耐火原料を篩いで篩って分離したときの篩い目の大きさのことであり、例えば粒径8mm未満の耐火原料とは、篩い目が8mmの篩いを通過する耐火原料のことで、粒径8mm以上の耐火原料とは、篩い目が8mmの篩い目を通過しない耐火原料のことである。
【実施例
【0021】
表1~4に、本発明の実施例及び比較例の原料配合と評価結果を示している。ここで、表1~3に示す各例において特定アルミン酸カルシウムは、アルミナセメントとして添加した。そして、表1~3に示す特定アルミン酸カルシウムの添加率は上述の通り、アルミナセメントの添加率と、このアルミナセメント中の特定アルミン酸カルシウムの含有率とに基づいて算出したものである。一方、表4に示す各例において特定アルミン酸カルシウムは、鉱物単独で添加した。
表1~4に示す各例の流し込み材に関する評価項目と評価方法は以下の通りである。
【0022】
<養生強度(養生後の曲げ強さ)>
各例の流し込み材に約5質量%の施工水を添加して混練し、その混練物を型枠に流し込み、20℃で24h養生し脱枠して得た試験片を用いて、JIS R 2553に準じて曲げ強さを測定した。養生強度は、0.5MPa以上の場合を○(優)、0.2MPa以上0.5MPa未満の場合を△(良)、0.2MPa未満の場合を×(不良)として三段階評価し、○(優)又は△(良)を合格とした。この養生強度の評価が合格であると、実際の施工時に、施工体の倒壊等が発生することなく、安定して脱枠することができる。
【0023】
<見掛気孔率>
各例の流し込み材に約5質量%の施工水を添加して混練し、その混練物を型枠に流し込み、20℃で24h養生して脱枠し、更に110℃で24時間乾燥して得た試験片を用いて、JIS R 2205に準じて見掛気孔率を測定した。見掛気孔率は、15%未満の場合を○(優)、15以上20%未満の場合を△(良)、20%以上の場合を×(不良)として三段階評価し、○(優)又は△(良)を合格とした。この見掛気孔率の評価が合格であると、緻密な組織が得られ耐食性に優れた施工体を得ることができる。
【0024】
<通気率>
各例の流し込み材に約5質量%の施工水を添加して混練し、その混練物を型枠に流し込み、20℃で24h養生して脱枠し、更に110℃で24時間乾燥して得た試験片を用いて、JIS R 2115に準拠して通気率を測定した。通気率は、1.0×10-14以上を○(優)、1.0×10-16以上1.0×10-14未満の場合を△(良)、1.0×10-16未満の場合を×(不良)として三段階評価し、○(優)又は△(良)を合格とした。
【0025】
<耐爆裂性>
各例の流し込み材に約5質量%の施工水を添加して混練し、その混練物を100mmφ×100mmhの円筒状型枠に流し込み、20℃で24h養生し脱枠して得た円柱状試験片の二つを、それぞれ900℃の温度の電気炉へ投入して加熱し、30分間保持した後に取り出した際の各試験片について、その爆裂の有無や亀裂発生の有無を調べて耐爆裂性を評価した。耐爆裂性は、亀裂無し又は微小亀裂の場合を○(優)、表層において部分的破断が発生した場合を△(良)、破断等、50%以上の損壊が発生した場合を×(不良)として三段階評価し、○(優)又は△(良)を合格とした。この耐爆裂性の評価と上記通気率の評価が共に合格であると、流し込み施工後の乾燥工程を不要とすることができる。
【0026】
<総合評価>
総合評価は、全ての評価結果が〇の場合を◎(優)、評価結果の少なくとも一つが△であって×の評価結果がない場合を〇(良)、評価結果の少なくとも一つが×の場合を×(不良)とし、◎(優)又は〇(良)を合格とした。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
【表3】
【0030】
【表4】
【0031】
表1~2に示した各例は、その他の耐火原料としてアルミナ原料を用いた例である。このうち、本発明の実施例である実施例1~12の流し込み材は、養生強度、見掛気孔率、通気率及び耐爆裂性のいずれの評価においても合格であり、総合評価も合格であった。
具体的に実施例1~4は、シリカフュームの含有率を変化させた例である。いずれも本発明の範囲であり、いずれの評価も合格であった。これに対して、比較例1はシリカフュームを含有しない例であり、十分な養生強度が得られなかった。一方、比較例2はシリカフュームの含有率が本発明の上限値を上回る例であり、耐爆裂性が低下した。
実施例5~6、3、7~8は、反応性アルミナの含有率を変化させた例である。いずれも本発明の範囲であり、いずれの評価も合格であった。これに対して、比較例3は反応性アルミナを含有しない例であり、十分な養生強度が得られなかった。一方、比較例4は反応性アルミナの含有率が本発明の上限値を上回る例であり、通気率が低下した。
実施例9~10、3、11~12は、特定アルミン酸カルシムの添加率を変化させた例である。いずれも本発明の範囲であり、いずれの評価も合格であった。これに対して、比較例5は特定アルミン酸カルシム(アルミナセメント)を添加しない例であり、十分な養生強度が得られなかった。一方、比較例6は特定アルミン酸カルシムの添加率が本発明の上限値を上回る例であり、通気率及び耐爆裂性が低下した。
実施例13~14、3、15~16は、乳酸アルミニウムの添加率を変化させた例である。いずれも本発明の範囲であり、いずれの評価も合格であった。これに対して、比較例7は乳酸アルミニウムを添加しない例であり、通気率及び耐爆裂性が低下した。一方、比較例8は乳酸アルミニウムの添加率が本発明の上限値を上回る例であり、見掛気孔率が高くなり、十分な養生強度も得られなかった。
【0032】
表3に示した各例は、その他の耐火原料の原料構成を変化させた例である。いずれも本発明の範囲であり、いずれの評価も合格であった。
表4に示した各例は、特定アルミン酸カルシウムを、鉱物単独として添加した例である。いずれも本発明の範囲であり、いずれの評価も合格であった。
【0033】
以上の実施例1~29のうち、シリカフューム及び反応性アルミナの各含有率、並びに特定アルミン酸カルシウム及び乳酸アルミニウムの各添加率が全て好ましい範囲内にある実施例2、3、4、6、7、10、11、14、15、17~25においては、総合評価が◎(優)となり、特に優れた特性が得られた。
【要約】
【課題】施工時の作業負荷を軽減することができると共に、乾燥工程を不要とすることができる流し込み材を提供する。
【解決手段】シリカフュームを0.2~12質量%、反応性アルミナを0.1~2質量%含有し、残部がその他の耐火原料よりなる耐火原料配合物100質量%に対して、アルミン酸カルシウムのうちCA、CA2及びC12A7から選択される一種以上を合計で0.05~1質量%、乳酸アルミニウムを0.1~1.2質量%の添加率で添加してなる、流し込み材。
【選択図】なし