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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-23
(45)【発行日】2025-07-31
(54)【発明の名称】櫛及び方法
(51)【国際特許分類】
   A45D 24/00 20060101AFI20250724BHJP
【FI】
A45D24/00 C
A45D24/00 M
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2024128595
(22)【出願日】2024-08-03
【審査請求日】2024-08-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520014730
【氏名又は名称】株式会社バンガードエンタープライズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001782
【氏名又は名称】弁理士法人ライトハウス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 修
【審査官】東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-103505(JP,U)
【文献】実開昭51-113694(JP,U)
【文献】特開2009-160294(JP,A)
【文献】特開2011-045407(JP,A)
【文献】登録実用新案第3174290(JP,U)
【文献】米国特許第06079420(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1の方向から毛髪の挿入が可能なように複数の溝が並べて設けられ、
前記1の方向を上下方向と定義し、上下方向及び厚さ方向に垂直な方向を左右方向と定義した場合に、溝の開口よりも奥側の溝内の少なくとも1の点の左右方向の位置が、前記開口の左右方向の位置と異なり、
第1の溝の開口と、第1の溝の隣にある第2の溝の開口との間に、凹部を有する、櫛。
【請求項2】
第1の溝の開口よりも奥側の溝内で、左右方向において第1の溝の開口から最も離れた点と、第1の溝の開口との左右方向における距離が、前記最も離れた点と、第1の溝の隣にある第2の溝の開口との左右方向における距離よりも長くなるように、第1の溝及び第2の溝が設けられた、請求項1に記載の櫛。
【請求項3】
第1の溝の開口よりも奥側の溝内で、左右方向において第1の溝の開口から最も離れた点の左右方向の位置が、第1の溝の隣にある第2の溝の開口から、第2の溝の開口よりも奥側の溝内で、左右方向において第2の溝の開口から最も離れた点までの左右方向の位置と重複するように、第1の溝及び第2の溝が設けられた、請求項1又は2に記載の櫛。
【請求項4】
溝の開口よりも奥側の少なくとも一部の領域において、溝の開口から奥側へ毛髪を移動可能な方向が、溝の開口において溝の奥側へ毛髪を挿入可能な方向に対して交差するように、溝が設けられた、請求項1又は2に記載の櫛。
【請求項5】
溝の開口よりも奥側の溝内で、左右方向において溝の開口から最も離れた点と、溝の開口との左右方向における距離が3mm以上である、請求項1又は2に記載の櫛。
【請求項6】
第1の溝の開口と、第1の溝の隣にある第2の溝の開口との距離が、2mm以上である、請求項1又は2に記載の櫛。
【請求項7】
溝の開口の中央の点と、溝の開口よりも奥側の溝内で、左右方向において溝の開口から最も離れた点との距離が、5mm以上である、請求項1又は2に記載の櫛。
【請求項8】
溝の形状が、L字状である、請求項1又は2に記載の櫛。
【請求項9】
凹部の幅が、1~5mmである、請求項1又は2に記載の櫛。
【請求項10】
凹部の深さが、0.3~2mmである、請求項又はに記載の櫛。
【請求項11】
1の方向から毛髪の挿入が可能なように複数の溝が並べて設けられ、前記1の方向を上下方向と定義し、上下方向及び厚さ方向に垂直な方向を左右方向と定義した場合に、溝の開口よりも奥側の溝内の少なくとも1の点の左右方向の位置が、前記開口の左右方向の位置と異なり、第1の溝の開口と、第1の溝の隣にある第2の溝の開口との間に、凹部を有する櫛を用いて、溝に毛髪を通すことにより、皮膚側にある毛髪の一部を、表面側にある毛髪の一部よりも表面側に位置させる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、櫛に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、板状の櫛が存在する。この従来から存在する櫛は、本体から真っすぐに伸びた細長い形状の歯により、複数の細長い溝が形成されている。この櫛を利用することにより、毛髪の絡まりをほぐし、頭髪を梳かすことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、皮膚側にある毛髪の一部を、表面側にある毛髪の一部よりも表面側に位置させることのできる櫛を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の課題は、
[1]1の方向から毛髪の挿入が可能なように複数の溝が並べて設けられ、前記1の方向を上下方向と定義し、上下方向及び厚さ方向に垂直な方向を左右方向と定義した場合に、溝の開口よりも奥側の溝内の少なくとも1の点の左右方向の位置が、前記開口の左右方向の位置と異なる、櫛;
[2]第1の溝の開口よりも奥側の溝内で、左右方向において第1の溝の開口から最も離れた点と、第1の溝の開口との左右方向における距離が、前記最も離れた点と、第1の溝の隣にある第2の溝の開口との左右方向における距離よりも長くなるように、第1の溝及び第2の溝が設けられた、前記[1]に記載の櫛;
[3]第1の溝の開口よりも奥側の溝内で、左右方向において第1の溝の開口から最も離れた点の左右方向の位置が、第1の溝の隣にある第2の溝の開口から、第2の溝の開口よりも奥側の溝内で、左右方向において第2の溝の開口から最も離れた点までの左右方向の位置と重複するように、第1の溝及び第2の溝が設けられた、前記[1]又は[2]に記載の櫛;
[4]溝の開口よりも奥側の少なくとも一部の領域において、溝の開口から奥側へ毛髪を移動可能な方向が、溝の開口において溝の奥側へ毛髪を挿入可能な方向に対して交差するように、溝が設けられた、前記[1]~[3]のいずれかに記載の櫛;
[5]溝の開口よりも奥側の溝内で、左右方向において溝の開口から最も離れた点と、溝の開口との左右方向における距離が3mm以上である、前記[1]~[4]のいずれかに記載の櫛。
[6]第1の溝の開口と、第1の溝の隣にある第2の溝の開口との距離が、2mm以上である、前記[1]~[5]のいずれかに記載の櫛;
[7]溝の開口の中央の点と、溝の開口よりも奥側の溝内で、左右方向において溝の開口から最も離れた点との距離が、5mm以上である、前記[1]~[6]のいずれかに記載の櫛;
[8]溝の形状が、L字状である、前記[1]~[7]のいずれかに記載の櫛;
[9]第1の溝の開口と、第1の溝の隣にある第2の溝の開口との間に、凹部を有する、前記[1]~[8]のいずれかに記載の櫛;
[10]凹部の幅が、1~5mmである、前記[9]に記載の櫛;
[11]凹部の深さが、0.3~2mmである、前記[9]又は[10]に記載の櫛;
[12]1の方向から毛髪の挿入が可能なように複数の溝が並べて設けられ、前記1の方向を上下方向と定義し、上下方向及び厚さ方向に垂直な方向を左右方向と定義した場合に、溝の開口よりも奥側の溝内の少なくとも1の点の左右方向の位置が、前記開口の左右方向の位置と異なる櫛を用いて、溝に毛髪を通すことにより、皮膚側にある毛髪の一部を、表面側にある毛髪の一部よりも表面側に位置させる、方法;
により解決される。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、皮膚側にある毛髪の一部を、表面側にある毛髪の一部よりも表面側に位置させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の実施の形態にかかる櫛を正面から視た図である。
図2】本発明の実施の形態にかかる櫛の拡大図であり、L字状の溝を有する第1櫛部を正面から視た図である。
図3】本発明の実施の形態にかかる櫛を正面から視た図である。
図4】本発明の実施の形態にかかる櫛の溝に毛髪を通した場合における毛髪の移動の様子を示す図である。
図5】従来の櫛を利用して毛髪を梳かした後の頭髪の状態を撮影した写真である。
図6】本発明の実施の形態にかかる櫛の溝に毛髪を通した後の頭髪の状態を撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態について説明をするが、本発明の趣旨に反しない限り、本発明は以下の実施の形態に限定されない。
【0008】
本発明の櫛は、1の面から複数の歯が突出しているブラシであってもよく、板状で複数の歯が突出しているコームであってもよい。以下では、主に、本発明の櫛がコームである場合について説明をするが、ブラシに本発明を適用する場合は、厚さ方向に、後述する図1及び図2に示すような歯及び溝が、複数設けられる。
【0009】
図1は、本発明の実施の形態にかかる櫛を正面から視た図である。図1に示す櫛1はコームであり、板状のコームの厚さ方向に垂直な平面を正面視している。図2は、本発明の実施の形態にかかる櫛の拡大図であり、L字状の溝を有する第1櫛部を正面から視た図である。図2も、図1と同様に、板状の櫛の厚さ方向に垂直な平面を正面視した図である。図3は、本発明の実施の形態にかかる櫛を例示したものであり、図3も、図1と同様に、板状の櫛の厚さ方向に垂直な平面を正面視した図である。
【0010】
図示しないが、利用者が櫛1を把持するための把持部を備えていてもよい。櫛1が把持部を備えない場合、利用者は基部21又は基部31を把持して、櫛1を利用する。櫛1の厚さ方向に垂直な平面の形状は、特に限定されないが、例えば、略長方形であってもよく、略半円形であってもよい。
【0011】
櫛1は、第1櫛部2と、第2櫛部3とを備える。第2櫛部3は、従来から存在する櫛(コーム)と同じ機能を有する。第2櫛部3では、基部31から複数の歯32が突出し、複数の溝33を形成している。利用者は、毛髪を溝33に通した状態で、櫛1を厚さ方向に移動させることにより、毛髪を梳かすことができる。なお、本発明にかかる櫛は、第2櫛部3を備えていなくてもよい。
【0012】
第1櫛部2においても、基部21から複数の歯22が突出し、複数の溝23が形成されている。複数の歯22の形状は同じであってもよく、異なる形状であってもよい。また、複数の歯22は、歯22が基部21から延びる方向が同じとなるように平行に設けられていることが好ましい。また、複数の歯22は、少なくとも溝23の開口24の近傍において、歯22が基部21から延びる方向及び厚さ方向に垂直な方向に沿って並んでいることが好ましい。
【0013】
ただし、第1櫛部2を1の方向から毛髪と接触させることで、複数の溝23において毛髪が挿入され、第1櫛部2を1の方向に沿って毛髪から遠ざけることで、溝23から毛髪を取り出すことが可能なかぎりにおいては、複数の歯22が突出する向きは平行でなくてもよい。例えば、1の歯22は、それに隣り合う他の歯22に対して、2°以下の傾斜を有していてもよい。なお、複数の歯22の基部21から延びる方向が平行である場合は、歯22の基部21から延びる方向が前記1の方向となる。
【0014】
ここで、前記1の方向を上下方向として定義することができる。基部21のある側を上側と定義し、溝23の開口24のある側を下側と定義することができる。また、上下方向、及び、板状の櫛1の厚さ方向に垂直な方向を、左右方向と定義することができる。
【0015】
櫛1の複数の溝23それぞれの形状は同じであってもよく、異なる形状であってもよい。図1及び図2では、複数の溝23それぞれの形状は同じである。また、複数の溝23についても、開口24近傍において、開口24から奥側へ向かう溝23の向き(上下方向の下側から上側へ向かう向き)が同じとなるように、平行に設けられていることが好ましい。この際、複数の溝23は、少なくとも開口24近傍において、左右方向に沿って並んでいることが好ましい。
【0016】
ただし、第1櫛部2を1の方向から毛髪と接触させることで、複数の溝23において毛髪が挿入され、第1櫛部2を1の方向に沿って毛髪から遠ざけることで、溝23から毛髪を取り出すことが可能なかぎりにおいては、開口24から奥側へ向かう溝23の向きは平行でなくてもよい。例えば、1の溝23の向きは、それに隣り合う溝23に対して、2°以下の傾斜を有していてもよい。
【0017】
複数の歯22の先端(歯22が凹部25を備える場合は、凹部25の窪みの外側が歯22の先端となる)は、直線上にならんでいてもよく、円弧上にならんでいてもよい。複数の歯22の先端が円弧上に並んでいる場合は、第1櫛部2の端側から中央になるにつれ、先端の上下方向の位置が上側になるようにする。このようにすることにより、第1櫛部2の外形が、頭部の曲線状の形状とかみ合ったものとなり、第1櫛部2を頭髪と接触させた際に、溝23内により多くの毛髪を挿入することが可能となる。例えば、複数の凹部25について、凹部25の底部の上下方向の位置は同一としつつ、凹部25の深さを変え、第1櫛部2の端側から中央になるにつれ、凹部25の深さが浅くなるようにすることで、第1櫛部2の端側から中央になるにつれ、歯22の先端の上下方向の位置が上側になるようにすることができる。
【0018】
複数の凹部25について、凹部25の底部の上下方向の位置は同一としつつ、凹部25の深さを変え、第1櫛部2の端側から中央になるにつれ、凹部25の深さが浅くなるようにする際の、第1櫛部2の両端にある歯22の先端と、第1櫛部2の中央にある歯22の先端との上下方向における距離は、0.1~3mmであることが好ましく、0.5~2mmであることがより好ましい。
【0019】
櫛1の素材は特に限定されないが、例えば、木、プラスチック又は金属などを採用することができる。
【0020】
櫛1の上下方向の長さLは、特に限定されない。櫛1の平面の形状が長方形でない場合は、櫛1の歯22の先端から基部21までの距離のうち、最短の距離を長さLと定義する。例えば、櫛1の上下方向の長さLは、15~30mmであることが好ましく、20~25mmであることがより好ましい。
【0021】
櫛1の左右方向の長さLは、特に限定されない。ここで、長さLは、例えば、最も左にある溝の左端から、最も右にある溝の右端までの長さであると、定義することができる。例えば、櫛1の左右方向の長さLは、30~100mmであることが好ましく、50~80mmであることがより好ましい。
【0022】
毛髪が通過する複数の溝23が設けられている。溝23の開口24の幅(長さ)Lは、0.3~3mmであることが好ましく、0.5~1.5mmであることが好ましい。ここで、溝23は、開口24からの深さが2mmより深い窪みを有しているものをいう。深さ2mm以下のものは、後述する凹部であると、定義することもできる。溝23の幅は、開口24よりも奥側においても、開口24の幅Lと同じであってもよく、開口24の幅Lよりも狭くなってもよく、開口24の幅Lよりも広くなってもよい。
【0023】
溝23の開口24近傍における歯の幅(長さ)L(つまり、歯22の先端部分の幅であり、1の溝23aの開口24aと、その溝23bの隣にある溝23bの開口との距離)は、2~12mmであることが好ましく、4~8mmであることが好ましい。歯の幅(長さ)Lが大きくなるほど、頭髪の表面側にある毛髪のより多くを、溝23内に挿入させることなく、溝23の外部にとどめおくことができる。
【0024】
歯22の幅は、開口24よりも奥側においても、開口24近傍における歯の幅Lと同じであってもよく、前記歯の幅Lよりも狭くなってもよく、前記歯の幅Lよりも広くなってもよい。
【0025】
溝23は、開口24から奥側で、右側に曲がっているが、左側に曲がってもよい。
【0026】
溝23の開口24よりも奥側の少なくとも一部の領域において、溝23の開口24において溝23の奥側へ毛髪を挿入可能な方向D2が、溝23の開口24から奥側へ毛髪を移動可能な方向D1に対して交差するように、溝23が設けられることが好ましい。方向D1は、通常、上下方向に平行であるが、これに交差する方向D2となる領域を有する溝23を設けることが好ましい。溝23の開口24より奥側で左右方向の少なくともいずれかへ延びる方向へ溝23が分岐を有する、溝23の開口24より奥側で左右方向の少なくともいずれかへ延びる方向へ溝23が屈曲する、又は、溝23の開口24より奥側で曲線状に徐々に溝23の延びる方向を変更する、などの方法により、方向D2を方向D1に交差させることができる。方向D1と方向D2により形成される角度は特に限定されないが、90~150°であることが好ましく、110~140°であることがより好ましい。
【0027】
櫛1において、このような溝を設けることで、開口24よりも奥側の溝23内の少なくとも1の点の左右方向の位置は、開口24の左右方向の位置と異なるものとなる。ここで、開口24aよりも奥側の溝23a内の少なくとも1の点Paの左右方向の位置を点Qaであると仮定する。開口24aの位置は、その端点Pa~Paの間の任意の点であり、開口24の左右の位置は、点Qa~点Qaの間の任意の点である。点Qaは、点Qa~点Qaの間のいずれの点とも異なるものである。このような構成を採用することで、櫛1を使用して溝23に毛髪を通した場合に、櫛1の使用前に皮膚側にあった毛髪のうち溝23内に挿入された毛髪を、櫛1の使用前に表面側にあった毛髪のうち、溝23内に挿入されなかった毛髪の表面側に位置させることが可能となる。
【0028】
1の溝23の開口24よりも奥側の溝23内で、左右方向において溝23の開口24から最も離れた点と、1の溝23の開口24との左右方向における距離が、前記最も離れた点と、1の溝23の隣にある溝23の開口24との左右方向における距離よりも長くなるように、溝23を形成することが好ましい。図2において、開口24aよりも奥側の溝23a内で、左右方向において開口24aから最も離れた点Paと、開口24aとの左右方向における距離は、点Qaと点Qaとの距離であらわすことができる。一方で、前記最も離れた点Paと、溝23aの隣にある溝23bの開口24b(端点Pb~Pbの間の任意の点)との左右方向における距離は、点Qaと点Qbとの距離であらわすことができる。そのため、点Qaと点Qaとの距離が、点Qaと点Qbとの距離よりも長くなるように、溝23a、溝23bを設けることが好ましい。このような構成を採用することで、櫛1を使用して溝23に毛髪を通した場合に、櫛1の使用前に皮膚側にあった毛髪のうち溝23内に挿入された毛髪のより多くを、櫛1の使用前に表面側にあった毛髪のうち、溝23内に挿入されなかった毛髪の表面側に位置させることが可能となる。
【0029】
左右方向において溝23の開口24から最も離れた点Paと、溝23の開口24との左右方向における距離、つまり、点Qaと点Qaとの距離は、3mm以上であることが好ましく、5mm以上であることがより好ましい。点Qaと点Qaとの距離は、20mm以下であることが好ましく、10mm以下であることが好ましく、8mm以下であることがより好ましい。点Qaと点Qaとの距離が大きくなることで、櫛1の使用前に皮膚側にあった毛髪のうち、溝23内に挿入された毛髪のより多くを、櫛1の使用前に表面側にあった毛髪のうち、溝23内に挿入されなかった毛髪の表面側に位置させることが可能となる。
【0030】
1の溝23の開口24よりも奥側の溝23内で、左右方向において1の溝23の開口24から最も離れた点の左右方向の位置が、1の溝23の隣にある溝23の開口24から、該隣にある溝23の開口24よりも奥側の溝23内で、左右方向において該隣にある溝23の開口24から最も離れた点Pbまでの左右方向の位置と重複するように、溝23が設けられることが好ましい。開口24aよりも奥側の溝23a内で、左右方向において開口24aから最も離れた点Paの左右方向の位置(点Qa)が、溝23aの隣にある溝23bの開口24b(端点Pb~Pbの間の任意の点)から、開口24bよりも奥側の溝23b内で、左右方向において開口24bから最も離れた点Pbまでの左右方向の位置と重複するように、溝23が設けられることが好ましい。つまり、点Qaが、点Qbと点Qbとの間に位置することが好ましい。
【0031】
溝23の形状は、図2に示すように、L字状であってもよい。なお、ここでL字状は、溝の形状が2つの細長い溝が垂直に結合した形状だけでなく、垂直とは異なる角度を形成したうえで結合した形状も含む概念である。また、図1及び図2では、溝23は、開口24の上側において左側に屈曲した形状となっているが、開口24の上側において右側に屈曲した形状であってもよい。
【0032】
溝23の形状をL字状とすることで、歯22の幅を細くしすぎることなく、つまり、歯22の強度が低下しすぎることなく、点Qaと点Qaとの距離を長くすることが可能となる。
【0033】
溝23は、開口24から方向D1に沿って上側に延び、屈曲点Pにおいて右側に曲がり、方向D2に沿って左上側に延びる。開口24の中央にある点Pと屈曲点Pとの距離Lは、特に限定されない。距離Lは、例えば、0.5mm以上であることが好ましく、1mm以上であることがより好ましい。距離Lは、3mm以下であることが好ましく、2mm以下であることがより好ましい。
【0034】
また、屈曲点Pと、開口24よりも奥側の溝23内で、左右方向において溝23の開口24から最も離れた点Pとの距離Lは、特に限定されない。距離Lは、3mm以上であることが好ましく、5mm以上であることがより好ましい。距離Lは、15mm以下であることが好ましく、12mm以下であることがより好ましい。
【0035】
溝23の開口24の中央の点Pと、溝23の開口24よりも奥側の溝23内で、左右方向において溝23の開口24から最も離れた点Pとの距離(つまり、距離Lと距離Lの合計)は、特に限定されない。距離Lと距離Lの合計は、5mm以上であることが好ましく、6mm以上であることが好ましい。
【0036】
溝23の形状は特に限定されない。例えば、図3(a)に示すようにY字状であってもよく、図3(b)に示すように十字状であってもよい。図3(c)及び(d)に示すように、左右方向に延びる溝23の上下方向の高さが異なってもよい。図3(d)では水平方向に平行に溝23が延びており、図3(c)では、水平方向よりも傾斜した方向へ溝23が延びている。その他、溝23の形状は、T字状であってもよい。上記の図1及び図2の説明として記載した事項は、矛盾が生じない範囲で、図3に示すような、図1及び図2とは異なる形状の溝を有する櫛においても、適用が可能である。
【0037】
1の溝23aの開口24aと、該溝23aの隣にある溝23bの開口24bとの間に(つまり、歯22の先端部分に)、凹部25を有することが好ましい。櫛1の溝23に毛髪を通す際に、凹部25にて、頭髪の表面側にある毛髪の一部を凹部25内に収めることができる。なお、櫛1は、凹部25を備えていてもよく、凹部25を備えていなくてもよい。
【0038】
凹部25の幅Lは、特に限定されないが、1~10mmであることが好ましく、2~5mmであることがより好ましい。凹部25の幅Lは、1の溝23aの開口24aと、該溝23aの隣にある溝23bの開口24bとの距離よりも、短くなる。凹部25の幅Lが大きくなるほど、頭髪の表面側にある毛髪のより多くを、溝23内に挿入させることなく凹部25内に収めることができる。
【0039】
凹部25の深さLは、特に限定されないが、0.1~2mmであることが好ましく、0.5~1.5mmであることがより好ましい。溝23の形状が、溝23の奥側で曲がっている場合、或いは、溝23の奥側で分岐している場合、凹部25の深さLは、奥側の溝23に貫通しない程度の深さとする。
【0040】
本発明の櫛1を用いて、溝23に毛髪を通すことにより、皮膚側にある毛髪の一部を、表面側にある毛髪の一部よりも表面側に位置させることができる。例えば、利用者が、カツラやウィッグを装着しているような場合、図1の第2櫛部3に示すような従来の櫛を利用して頭髪を梳かすと、カツラやウィッグによる毛髪と、利用者の地毛に由来する毛髪との絡みがなくなる。その結果、地毛の色味・明るさと、カツラやウィッグによる毛髪の色味・明るさとが、近しいものであったとしても、第三者が利用者を視たときに、地毛の上にカツラやウィッグがのっていることを把握しやすい状態となる。
【0041】
一方で、本発明の櫛1を用いて、櫛1の溝23に毛髪を通した場合(例えば、毛髪を溝に挿入した状態で、毛髪の皮膚に近い側から毛髪の先端側へ櫛を移動させた場合、皮膚側にある毛髪の一部を、表面側にある毛髪の一部よりも表面側に位置させ、つまり、利用者の地毛の一部を、カツラやウィッグに由来する毛髪の一部よりも表面側に位置させて、地毛と、カツラやウィッグによる毛髪とが絡みあった状態とすることができる。その結果、第三者が利用者を視たときに、利用者がカツラ又はウィッグを利用していることを把握しにくい状態とすることができる。
【0042】
また、地毛の色味・明るさと、カツラやウィッグによる毛髪の色味・明るさとが、明らかに異なるものである場合に、本発明の櫛を用いると、メッシュがはいったような状態とすることができる。
【0043】
図4は、本発明の実施の形態にかかる櫛の溝に毛髪を通した場合における毛髪の移動の様子を示す図である。図4(a)は、櫛1の溝23に毛髪を通す前の状態である。毛髪は、表面側の毛髪41と、頭皮側の毛髪42とからなる。図4(b)は、櫛1の溝23に毛髪を通した状態である。表面側の毛髪41の一部は、凹部25内に収まるが、その他の表面側の毛髪41は、溝23内に入り込む。それとともに、溝23内に入り込んだ表面側の毛髪41の頭皮側に存在した、頭皮側の毛髪42も、溝23内に入り込む。溝23内に毛髪が入り込んだ状態で、櫛1を毛髪の地毛側から毛髪の先端側へ移動させることで、図4(c)に示すように、櫛1の溝23に毛髪を通す前に、頭皮側にあった毛髪42の一部が、表面側にあった毛髪41よりも表面側に移動することとなる。
【0044】
利用者は、頭髪の同じ箇所について、溝23内に毛髪が入り込んだ状態で、櫛1を厚さ方向に毛髪の地毛側から毛髪の先端側へ移動させる動作を複数回行うことで、利用者がカツラ又はウィッグを利用していることを把握しにくい状態、或いは、メッシュがはいったような状態とすることができる。図5は、第2櫛部のような従来の櫛を利用して毛髪を梳かした後の頭髪の状態を撮影した写真である。図6は、第1櫛部のような本発明の実施の形態にかかる櫛の溝に毛髪を通した後の頭髪の状態を撮影した写真である。図6は、従来の櫛を利用して毛髪を複数回梳かして、図5のような状態とした後に、本発明の実施の形態にかかる櫛の溝に、毛髪を複数回通している。図5図6の比較からわかるように、図6では、頭髪にメッシュがはいったような状態となっている。
【0045】
利用者は、頭髪の同じ箇所について、複数回にわたり、溝23内に毛髪が入り込んだ状態で、櫛1を厚さ方向に移動させる動作を行うことで、櫛1の溝23に毛髪を通す前に、頭皮側にあった毛髪42の一部が、表面側にあった毛髪41よりも表面側に移動させることができる。そのため、通常は、表面側にある毛髪41を頭皮側に移動させることができるため、常に同じ毛髪が紫外線にさらされている状態を回避することができる。このように、本発明の実施の形態にかかる櫛を利用することで、頭髪が紫外線により傷むことを抑えることができる。
【0046】
1 櫛
2 第1櫛部
21 基部
22 歯
23 溝
24 開口
25 凹部
3 第2櫛部
31 基部
32 歯
33 溝
34 開口

【要約】
【課題】
皮膚側にある毛髪の一部を、表面側にある毛髪の一部よりも表面側に位置させることのできる櫛を提供する。
【解決手段】
1の方向から毛髪の挿入が可能なように複数の溝が並べて設けられ、前記1の方向を上下方向と定義し、上下方向及び厚さ方向に垂直な方向を左右方向と定義した場合に、溝の開口よりも奥側の溝内の少なくとも1の点の左右方向の位置が、前記開口の左右方向の位置と異なる、櫛。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6