(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-24
(45)【発行日】2025-08-01
(54)【発明の名称】清掃装置
(51)【国際特許分類】
B08B 5/00 20060101AFI20250725BHJP
A21D 13/00 20170101ALI20250725BHJP
A21D 13/40 20170101ALI20250725BHJP
【FI】
B08B5/00 A
A21D13/00
A21D13/40
(21)【出願番号】P 2025051113
(22)【出願日】2025-03-26
【審査請求日】2025-04-16
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 [ウェブサイトの掲載日] 令和6年5月8日 [ウェブサイトのアドレス]http://www.neutral-jp.com/ [開催日] 令和7年2月18日~2月21日 [集会名、開催場所] 2025モバックショウ、インテックス大阪5号館 (大阪府大阪市住之江区南港北1-5-102)
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507053404
【氏名又は名称】株式会社ニュートラル
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】中川 健司
【審査官】下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3166552(JP,U)
【文献】特開2008-062148(JP,A)
【文献】特許第5660286(JP,B2)
【文献】特許第4606208(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 5/00
A21D 13/00
A21D 13/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方への開口と底部の1つ以上の貫通孔とが形成された食品製造用の容器を所定位置へ搬送する搬送部と、
物体を出射する第1出射口を有し、前記所定位置にある前記容器の前記貫通孔より上方に配置された上部物体出射部と、
物体を出射する第2出射口を有し、前記所定位置にある前記容器の前記貫通孔から前記第2出射口までの距離が、前記所定位置にある前記容器の前記貫通孔から前記第1出射口までの距離より小さくなるように、前記貫通孔より下方に配置された下部物体出射部と、
物体を、前記第1出射口及び前記第2出射口の両方から出射させ、前記所定位置にある前記容器における少なくとも1つの前記貫通孔と衝突させるように、前記上部物体出射部及び前記下部物体出射部を制御する制御部と、を備えていることを特徴とする食品製造用容器の清掃装置。
【請求項2】
前記制御部が、
前記上部物体出射部からの物体が前記1つの貫通孔に衝突するタイミングと、前記下部物体出射部からの物体が前記1つの貫通孔に衝突するタイミングとがずれるように前記上部物体出射部及び前記下部物体出射部を制御することを特徴とする請求項1に記載の食品製造用容器の清掃装置。
【請求項3】
前記搬送部が、前記容器が載置される、前記容器の搬送方向に沿って延びた帯状部材と、前記帯状部材を移動させる帯状部材移動部とを有しており、
前記下部物体出射部が、平面視において前記帯状部材と重複しないように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の食品製造容器の清掃装置。
【請求項4】
前記上部物体出射部及び前記下部物体出射部の少なくともいずれかが、前記物体として圧縮空気を噴射する噴射部であることを特徴とする請求項1に記載の食品製造容器の清掃装置。
【請求項5】
前記容器が、製パン用の食型であることを特徴とする請求項1に記載の食品製造用容器の清掃装置。
【請求項6】
前記容器の底部における前記1つ以上の貫通孔の周縁部が上方又は下方に向かって突出していることを特徴とする請求項1に記載の食品製造用容器の清掃装置。
【請求項7】
付着物をはがしやすくするための表面加工が前記容器の内底面に施されていることを特徴とする請求項6に記載の食品製造用容器の清掃装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、食パン製造用の容器内に残存した付着物を除去するための清掃装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品製造用の容器を清掃する装置の一例として、特許文献1に係る集塵装置がある。この集塵装置は、使用後の食型の内部へと圧縮空気噴射手段から圧縮空気を噴射させ、食型内に残存したパンくずを吹き飛ばした後、負圧発生フードにパンくず等の異物を吸引させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
食型等の容器の内表面に付着物が残存していることがある。本発明者の鋭意研究の結果、特許文献1のように単に圧縮空気を噴射したり異物を吸引したりするのみでは、このような付着物を除去しづらい場合があることが分かった。
【0005】
本発明の目的は、食品製造用の容器内に残存した付着物を除去しやすい食品製造用容器の清掃装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の食品製造用容器の清掃装置は、上方への開口と底部の1つ以上の貫通孔とが形成された食品製造用の容器を所定位置へ搬送する搬送部と、物体を出射する第1出射口を有し、前記所定位置にある前記容器の前記貫通孔より上方に配置された上部物体出射部と、物体を出射する第2出射口を有し、前記所定位置にある前記容器の前記貫通孔から前記第2出射口までの距離が、前記所定位置にある前記容器の前記貫通孔から前記第1出射口までの距離より小さくなるように、前記貫通孔より下方に配置された下部物体出射部と、物体を、前記第1出射口及び前記第2出射口の両方から出射させ、前記所定位置にある前記容器における少なくとも1つの前記貫通孔と衝突させるように、前記上部物体出射部及び前記下部物体出射部を制御する制御部と、を備えている。
【0007】
本発明者は、容器内の付着物が除去しづらいのは、容器の底部に形成された貫通孔に付着している場合であることに到達した。このような付着物をより確実に除去するため、貫通孔に近い位置から貫通孔を狙って圧縮空気等の物体をこれに衝突させ、これにより効率的に貫通孔から付着物を離脱させることが考えられる。
【0008】
しかしながら、容器の上方から貫通孔に向けて物体を出射する上部物体出射部のみでは、付着物を除去する能力に限界がある。容器の搬送を妨害しないように上部物体出射部を配置する必要があることから、上部物体出射部は容器の底部に近接させにくい。よって、第1出射口を貫通孔に近接させにくいためである。
【0009】
そこで、本発明は、下方から貫通孔に物体を衝突させる下部物体出射部を採用した。容器の下方であれば、容器の底部に形成された貫通孔と下部物体出射部とを近接させやすい。このため、下部物体出射部は、第2出射口が第1出射口より貫通孔に近接するように配置しやすい。
【0010】
そして、上部物体出射部及び下部物体出射部の両方から物体を出射させ、貫通孔に衝突させることにより、貫通孔への付着物をより確実に除去できる装置が実現した。
【0011】
また、本発明において、前記制御部が、前記上部物体出射部からの物体が前記1つの貫通孔に衝突するタイミングと、前記下部物体出射部からの物体が前記1つの貫通孔に衝突するタイミングとがずれるように前記上部物体出射部及び前記下部物体出射部を制御する
ことが好ましい。
【0012】
上部物体出射部からの物体と下部物体出射部からの物体とが貫通孔と同時に衝突する場合、上方からと下方からの両方同時に付着物に物体が衝突することとなる。このため、付着物が上下両方からの物体に挟み込まれることになり、付着物が貫通孔から離脱しにくいおそれがある。
【0013】
これに対し、上記構成によると、上部物体出射部からの物体と下部物体出射部からの物体とが異なるタイミングで貫通孔に衝突する。よって、付着物を効率的に貫通孔から離脱させることができる。
【0014】
また、本発明において、前記搬送部が、前記容器が載置される、前記容器の搬送方向に沿って延びた帯状部材と、前記帯状部材を移動させる帯状部材移動部とを有しており、前記下部物体出射部が、平面視において前記帯状部材と重複しないように配置されていることが好ましい。これによると、下部物体出射部から出射される物体が搬送部によって妨害されにくい。
【0015】
また、本発明において、前記上部物体出射部及び前記下部物体出射部の少なくともいずれかが、前記物体として圧縮空気を噴射する噴射部であることが好ましい。これにより、圧縮空気を付着物に衝突させることにより貫通孔から付着物を吹き飛ばすことができる。
【0016】
また、本発明において、前記容器が、製パン用の食型であることが好ましい。
【0017】
また、本発明において、前記容器の底部における前記1つ以上の貫通孔の周縁部が上方又は下方に向かって突出していることが好ましい。これによると、貫通孔の周縁部が突出している場合、貫通孔に付着物が残存しやすい。したがって、貫通孔を直接狙って物体を衝突させる本発明を適用する有効性が高い。
【0018】
また、本発明において、付着物をはがしやすくするための表面加工が前記容器の内底面に施されていることが好ましい。これによると、容器の底部の貫通孔周辺はその他の部分と比べて表面加工が均一になりにくい。よって、貫通孔周辺は付着物がはがれにくくなりやすいため、本発明を適用する有効性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る食品製造用容器の清掃装置の概略構成図である。
【
図2】
図1に示す清掃装置の搬送ベルトに食型が載置された状態の平面図である。
【
図3】
図1に示す清掃装置の上部出射口及び下部出射口から、食型の貫通孔に圧縮空気が噴射される状態を示す一部断面図である。
【
図4】
図1に示す食型の底部の貫通孔を含む上下方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態に係る食品製造用容器の清掃装置1について、
図1~
図4を参照しつつ説明する。本実施形態においては、一方向に長尺な棒状の食パン(食品)を製造するための容器である食型20の清掃装置1について述べるが、食パン以外の食品用の食型を清掃するための装置であってもよい。
【0021】
清掃装置1は、
図1~
図2に示すように、搬送機構10(本発明でいう搬送部)と、センサー300と、噴射機構200と、負圧発生フード400と、制御部100とを含む。
図1に示すように、食型20の搬送方向Aを前方、その反対側を後方とし、
図1に示す前後方向と直交する方向を上下方向とする。
【0022】
食型20は、
図1及び
図2に示すように左右方向に長尺な直方体である。食型20は上方に開口している。食型20の底部21には、左右方向に等間隔に並んだ6つの貫通孔22が形成されている。
図4に示すように、底部21の貫通孔22の周縁部21aが上方に向かって突出している。使用後の食型20の貫通孔22には、食パンの生地由来の付着物Dが残存していることがある。食型20の内表面20aには、付着物をはがしやすくするため、シリコンで覆う等の表面加工が施されている。内表面20aは、貫通孔22が形成された底部21の表面である内底面を含む。なお、食型20の貫通孔22の数は適宜調整されてよい。
【0023】
制御部100は、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等とを有している。制御部100は、清掃装置1の動作の仕方を調整するためのスイッチ等をユーザが操作したことを示す信号やセンサー100の信号を受信することで、搬送機構10、噴射機構200及び負圧発生フード400を駆動制御する。
【0024】
搬送機構10は、
図1及び
図2に示すように、一対のプーリ11a,11b(本発明でいう帯状部材移動部)と、一対の搬送ベルト11c,11d(本発明でいう帯状部材)と、プーリ11aを駆動する搬送モータ(図示なし)とを有している。搬送ベルト11c,11dは、コンベアチェーンである。搬送ベルト11c,11dは搬送方向Aに沿って延びており、左右方向について互いに離隔している。搬送ベルト11c,11dには、食型20が載置される。プーリ11a,11bには、搬送ベルト11c,11dが掛け渡されている。
【0025】
この構成において、制御部100が、搬送機構10を駆動制御することで、プーリ11aが回転し、これに応じて搬送ベルト11c,11dが走行する。プーリ11bは搬送ベルト11c,11dの走行に従動して回転する。こうして、搬送機構10は、
図1に示すように、食型20を搬送方向Aに搬送する。なお、搬送機構10は、複数のローラを有するローラ搬送機構から構成されていてもよい。
【0026】
センサー300は、
図1に示すように、光出射部310と、受光部320とを有している。光出射部310は、搬送ベルト11c,11dの上方に配置され、噴射機構200より搬送方向Aの上流に配置されている。光出射部310は、その下部からレーザー光等の光を出射する。受光部320は、搬送機構10によって搬送される食型20の搬送経路を光出射部310との間に挟む位置に配置されている。受光部320は、光出射部310から出射される光を受け取り、受け取った光の強さを検出する。光出射部310及び受光部320は6組設置されている。これら6組のそれぞれは、光出射部310から受光部320までの光の経路を搬送機構10によって搬送される食型20の6つの貫通孔22のそれぞれがちょうど通過するよう配置されている。
【0027】
センサー300が作動すると、光出射部310は受光部320に向けて光を出射する。その光の経路上に食型20がない場合には、光出射部310からの光を受け取ったことを受光部320が検出する。搬送機構10によって搬送された食型20は光出射部310から受光部320へと向かう光を遮断する。このとき、受光部320は食型20による光の遮断を検出する。一方、食型20の貫通孔22がその光の経路に差し掛かると、貫通孔22が正常であれば、光出射部310からの光が貫通孔22を通過して受光部320に受け取られる。よって、受光部320は貫通孔22の通過を検出する。これに対し、
図4に示すような付着物Dがあり、付着物Dによって光が遮断された場合、受光部320は貫通孔22の通過を検出しない。センサー300は、受光部320による一連の検出結果を示す検出信号を制御部100に送信する。これに基づき、後述するように噴射機構200が制御される。
【0028】
噴射機構200は、
図1に示すように、上部噴射部210(本発明でいう上部物体出射部、噴射部)と、下部噴射部250(本発明でいう下部物体出射部、噴射部)とを有している。
【0029】
上部噴射部210は、搬送ベルト11c,11dの上方に配置されている。上部噴射部210は、
図1に示すように、圧力増強部220と、4つの上部ノズル部230とを有している。圧力増強部220は、供給ダクトを通じてコンプレッサー(図示なし)と接続されており、コンプレッサーから圧縮空気が供給される。圧力増強部220の下端には、搬送方向Aに沿って並んだ4つの上部ノズル部230が下方に突出している。圧力増強部220は、コンプレッサーからの圧縮空気を瞬間的に流出させることで圧力を一時的に増大させつつ各上部ノズル部230へと供給する装置である。圧力増強部220は、上部ノズル部230への圧縮空気の供給のオンとオフを、上部ノズル部230ごとに切り替えることができる。上部ノズル部230のそれぞれは、食型20の6つの貫通孔22と同じ間隔で左右方向に並んだ6つのノズル管231を有している。4つの上部ノズル部230は、4つの食型20が上部噴射部210の下方の所定位置に到達すると、
図3に示すように、食型20の各貫通孔22のちょうど真上にノズル管231のそれぞれが位置するように配置されている。言い換えれば、所定位置とは、各貫通孔22が上部ノズル部230の各ノズル管231の真下に配置されるような4つの食型20の位置をいう。なお、上部ノズル部230のノズル管231の数は、食型20の貫通孔22の数に合わせて適宜調整されてよい。
【0030】
ノズル管231は上下方向に沿っており、その下端には出射口231a(本発明でいう第1出射口)が形成されている。出射口231aは、
図3に示すように、圧力増強部220から送られた圧縮空気A1を直下の貫通孔22に向けて噴射する。なお、上部噴射部210は上下に移動可能であり、搬送ベルト11c,11d上の食型20に対する高さが調整される。
【0031】
下部噴射部250は、搬送ベルト11c,11dの上方に配置されている。下部噴射部250は、
図1に示すように、圧力増強部260と、4つの下部ノズル部270とを有している。圧力増強部260は、供給ダクトを通じてコンプレッサー(図示なし)と接続されており、コンプレッサーから圧縮空気が供給される。圧力増強部260の上端には、搬送方向Aに沿って並んだ4つの下部ノズル部270が上方に突出している。圧力増強部260は、コンプレッサーからの圧縮空気を瞬間的に流出させることで圧力を一時的に増大させつつ各下部ノズル部270へと供給する装置である。圧力増強部260は、下部ノズル部270への圧縮空気の供給のオンとオフを、下部ノズル部270ごとに切り替えることができる。下部ノズル部270のそれぞれは、6つの貫通孔22と同じ間隔で左右方向に並んだ6つのノズル管271を有している。4つの下部ノズル部270は、4つの食型20が上部噴射部210の下方の所定位置に到達すると、
図3に示すように、食型20の各貫通孔22のちょうど真下にノズル管271のそれぞれが位置するように配置されている。なお、下部ノズル部270のノズル管271の数は、食型20の貫通孔22の数に合わせて適宜調整されてよい。
【0032】
ノズル管271は上下方向に沿っており、その上端には出射口271a(本発明でいう第2出射口)が形成されている。
図2に示すように、出射口271aは、搬送ベルト11c,11dと重複しないように配置されている。出射口271aは、圧力増強部260から送られた圧縮空気A2を直上の貫通孔22に対して出射する。なお、下部噴射部250は上下に移動可能であり、搬送ベルト11c,11d上の食型20に対する高さが調整される。食型20の貫通孔22から出射口271aまでの距離が、食型20の貫通孔22から出射口231aまでの距離より小さくなるよう、上部噴射部210及び下部噴射部250の高さが調整されている。
【0033】
以上の構成において、制御部100は、搬送機構10による食型20の搬送及び噴射機構200による圧縮空気の噴射を制御する。制御部100は、搬送機構10の動作を制御することにより、4つの食型20に光出射部310の下方の位置を通過させる。この間、制御部100はセンサー300からの検出信号によって、4つの食型20のうち、いずれの食型20の貫通孔22に付着物Dが付着しているかを判断する。付着物Dの付着の判断は、各食型20が光出射部310の下方を通過した際に受光部320が貫通孔22の通過を検出したか否かに基づいてなされる。制御部100は、4つの食型20が所定位置に到達するまで搬送機構10に食型20を搬送させる。4つの食型20が所定位置に到達すると、制御部100は、搬送機構10の動作を一旦停止させる。
【0034】
次に、制御部100は、付着物Dが付着した食型20に対応する上部ノズル部230のみから圧縮空気A1が噴射されるように上部噴射部210を制御する。これにより、付着物Dの付着が検出された食型20の貫通孔22に圧縮空気A1を衝突させる。また、制御部100は、同じ食型20に対応する下部ノズル部270のみから圧縮空気A2が噴射されるように下部噴射部250を制御する。これにより、付着物Dの付着が検出された貫通孔22に圧縮空気A2を衝突させる。圧縮空気A1及びA2の衝突により、貫通孔22から付着物Dが除去される。
【0035】
ここで、制御部100は、貫通孔22に圧縮空気A1が到達するタイミングと、同じ貫通孔22に圧縮空気A2が到達するタイミングとがずれるように、上部噴射部210及び下部噴射部250を制御する。この制御は、上部噴射部210から圧縮空気A1が噴射されるタイミングと、下部噴射部250から圧縮空気A1が噴射されるタイミングとを制御することで行われる。例えば、上部噴射部210からの圧縮空気A1が食型20の貫通孔22に衝突し、次に、下部噴射部250からの圧縮空気A2が貫通孔22に衝突する。また、下部噴射部250からの圧縮空気A2が食型20の貫通孔22に衝突し、次に、上部噴射部210からの圧縮空気A1が貫通孔22に衝突してもよい。
【0036】
制御部100に、上部噴射部210から圧縮空気A1が噴射されるタイミングと、下部噴射部250から圧縮空気A2が噴射されるタイミングとを一致させてもよい。この場合であっても、上記の通り、貫通孔22から出射口271aまでの距離は、貫通孔22から出射口231aまでの距離より小さいため、圧縮空気A1が貫通孔22に届くタイミングと、圧縮空気A2が貫通孔22に届くタイミングとがずれやすいからである。
【0037】
その後、制御部100は、搬送機構10の動作を再開し、所定位置を通過した4つの食型20を負圧発生フード400まで搬送機構10に搬送させる。そして、制御部100は、次の4つの食型20を所定位置まで搬送機構10に搬送させ、その間に受け取ったセンサー300からの検出信号に基づき、上記同様に噴射機構200を制御して4つの食型20の貫通孔22から付着物Dを除去させる。
【0038】
負圧発生フード400は、
図1に示すように、搬送ベルト11c,11dの上方に配置され、噴射機構200より搬送方向Aの下流に配置されている。負圧発生フード400は、その内側下面に下向きの開口を有する天蓋部410を有している。天蓋部410の内部は、1つの食型20を覆うほどの大きさを有している。負圧発生フード400には、吸引ダクト(図示なし)が接続されている。天蓋部410の下方に食型20が搬送されると、吸引ダクトによって内部が負圧にされた天蓋部410は、噴射機構200によって貫通孔22から除去された付着物D等を吸引する。なお、負圧発生フード400は上下に移動可能であり、搬送ベルト11c,11d上の食型20に対する高さが調整される。
【0039】
この構成において、制御部100が負圧発生フード400の吸引ダクトを制御する。吸引ダクトの負圧の圧力を調整することで、天蓋部410の内部の負圧の強度を調整し、噴射機構200によって食型20への付着が離脱された付着物D等を吸引することが可能となる。負圧発生フード400によって吸引された付着物Dは、天蓋部410内のフィルター等に捕捉されて回収された後、廃棄される。なお、天蓋部410の周辺に空気噴射部がさらに設置され、この空気噴射部から食型20内に噴射された空気によって飛び散らされた付着物D等を天蓋部410が吸引するように負圧発生フード400が構成されていてもよい。
【0040】
清掃装置1は、制御部100の駆動制御により、以下の通りに動作する。まず、搬送機構10の搬送モータによって、プーリ11aを回転させ、搬送ベルト11c,11dを走行させる。プーリ11bは搬送ベルト11c,11dの走行に従動して回転する。こうして、食型20が搬送方向Aに搬送される。
【0041】
次に、センサー300を作動させ、光出射部310から受光部320に向けて光を出射させる。食型20の貫通孔22がその光の経路に差し掛かり、付着物Dによって光が遮断されるか否かに応じ、受光部320は貫通孔22の通過の有無を検出する。センサー300は、受光部320による、このような検出結果を示す検出信号を、制御部100に送信する。
【0042】
次に、プーリ11aの回転を停止させ、これにより搬送ベルト11c,11dの走行を停止させて、4つの食型20を上部噴射部210の下方の所定位置に配置させる。次に、圧力増強部220及び260それぞれに、上部ノズル部230及び下部ノズル270のそれぞれへ圧縮空気を供給させる。制御部100は、センサー300の検出結果に基づき、1つ以上の貫通孔22において付着物Dが検出された食型20の上方の上部ノズル部230及びその下方の下部ノズル部270に対してのみ、圧縮空気を供給するように圧力増強部220及び260を制御する。これにより、付着物Dが検出された食型20の貫通孔22に対し、上部ノズル部230から圧縮空気A1が、下部ノズル部270から圧縮空気A2がそれぞれ噴射される。圧縮空気A1と、圧縮空気A2とは、異なるタイミングで貫通孔22に到達して、貫通孔22の周縁部21aの付着物Dに衝突する。このようにして、貫通孔22から付着物Dが吹き飛ばされる。
【0043】
次に、制御部100は、搬送機構10の動作を再開し、所定位置を通過した4つの食型20を負圧発生フード400まで搬送機構10に搬送させる。そして、制御部100は、次の4つの食型20を所定位置まで搬送機構10に搬送させ、その間に受け取ったセンサー300からの検出信号に基づき、上記同様に噴射機構200を制御して4つの食型20の貫通孔22から付着物Dを除去させる。
【0044】
負圧発生フード400の天蓋部410の下方に食型20が搬送されると、吸引ダクトによって内部が負圧にされた天蓋部410は、噴射機構200によって貫通孔22から除去された付着物D等を吸引する。負圧発生フード400によって吸引された付着物Dは、天蓋部410内のフィルター等に捕捉されて回収された後、廃棄される。
【0045】
以上の通り説明した清掃装置1には、以下のような作用効果がある。
【0046】
食型20内の付着物Dが除去しづらいのは、食型20の底部に形成された貫通孔22に付着している場合である。このような付着物Dをより確実に除去するため、貫通孔22に近い位置から貫通孔22を狙って圧縮空気をこれに衝突させ、これにより効率的に貫通孔22から付着物Dを離脱させることが考えられる。
【0047】
しかしながら、食型20の上方から貫通孔22に向けて圧縮空気A1を噴射する上部噴射部210のみでは、付着物Dを除去する能力に限界がある。また、食型20の搬送を妨害しないように上部噴射部210を配置する必要があることから、上部噴射部210は食型20の底部21に近接させにくい。
【0048】
そこで、下方から貫通孔22に圧縮空気A2を衝突させる下部噴射部250を採用した。食型20の下方であれば、食型20の底部21に形成された貫通孔22と下部噴射部250とを近接させやすい。このため、下部噴射部250は、出射口271aを出射口231aより貫通孔22に近接するように配置しやすい。
【0049】
そして、上部噴射部210及び下部噴射部250の両方から圧縮空気を噴射させ、貫通孔22に衝突させることにより、貫通孔22への付着物Dをより確実に除去できる装置が実現した。
【0050】
また、仮に、上部噴射部210からの圧縮空気A1と下部噴射部250からの圧縮空気A2とが貫通孔22と同時に衝突する場合、上方からと下方からの両方同時に付着物Dに圧縮空気が衝突することとなる。このため、付着物Dが上下両方からの圧縮空気に挟み込まれることになり、付着物Dが貫通孔22から離脱しにくいおそれがある。
【0051】
これに対し、清掃装置1の構成によると、上部噴射部210からの圧縮空気A1と下部物体噴射部250からの圧縮空気A2とが異なるタイミングで貫通孔22に衝突する。よって、付着物Dを効率的に貫通孔22から離脱させることができる。
【0052】
また、下部噴射部250における下部ノズル部270の出射口271aは、平面視において搬送ベルト11c,11dと重複しないように配置されている(
図2参照)。これによると、ノズル管271から噴射される圧縮空気A2が搬送機構10によって妨害されにくい。
【0053】
また、食型20は、貫通孔22の周縁部21aが上方に向かって突出している。貫通孔22の周縁部21aが突出していると、貫通孔22に付着物Dが残存しやすい。したがって、貫通孔22を直接狙って圧縮空気を衝突させる清掃装置1を適用する有効性が高い。
【0054】
また、食型20は、付着物Dをはがしやすくするため、内表面20aにシリコンで覆う等の表面加工が施されている。底部21の貫通孔22の周縁部21aが上方に向かって突出しているため、貫通孔22周辺はその他の部分と比べて表面加工が均一になりにくい。よって、貫通孔22の周辺は付着物Dがはがれにくくなりやすいため、清掃装置1を適用する有効性が高い。
【0055】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。以下、上述の実施形態に係る変形例について説明する。
【0056】
上述の実施形態では、貫通孔22の周縁部21aが上方に向かって突出している。しかし、貫通孔の周縁部が下方に向かって突出していてもよい。また、1つの食型は、周縁部が上方に向かって突出している貫通孔及び下方に向かって突出している貫通孔の両方を有していてもよい。
【0057】
上述の実施形態では、上部噴射部210及び下部噴射部250の両方が圧縮空気を噴射する。これらの代わりに、針等の硬質な物体が出射して、その部材を食型の貫通孔に衝突させる出射部が採用されてもよい。このような出射部は、上部噴射部210及び下部噴射部250の一方のみと代えて採用されてもよいし、それぞれと代えて採用されてもよい。また、出射部が、圧縮空気のような気体と、針等の部材との両方を出射口から出射できる仕組みを有していてもよい。
【0058】
上述の実施形態では、所定位置の4つの食型20のうち、センサー300によって、貫通孔22に付着物Dが検出された食型20に対してのみ、噴射機構200から圧縮空気が噴射される。しかし、所定位置に位置するすべての食型20に対して、噴射機構200から圧縮空気が噴射されてもよい。あるいは、圧力増強部220及び260が、上部ノズル部230のノズル管231のそれぞれ及び下部ノズル部270のノズル管271のそれぞれに対して圧縮空気の供給のオン及びオフを個別に切り替えることができるようになっていてもよい。この場合、センサー300によって付着物Dが検出された貫通孔22のみに対して圧縮空気が噴射されるように、制御部100が圧力増強部220及び260を制御する。
【0059】
上述の実施形態では、上部噴射部210及び下部噴射部250はそれぞれ、4つの上部ノズル部230及び4つの下部ノズル部270を有している。しかし、それぞれのノズル部の数は、1~3つ又は5つ以上であってもよい。なお、所定位置に位置する食型20の数は、ノズル部の数と一致する。
【符号の説明】
【0060】
1 清掃装置
10 搬送機構
11a,11b プーリ
11c,11d 搬送ベルト
20 食型
21a 周縁部
22 貫通孔
100 制御部
200 噴射機構
231a,271a 出射口
210 上部噴射部
250 下部噴射部
A1,A2 圧縮空気
【要約】
【課題】食品製造用の容器内に残存した付着物を除去しやすい食品製造用容器の清掃装置を提供する。
【解決手段】清掃装置は、貫通孔22が形成された食型20を所定位置に搬送する搬送機構10と、上部噴射部210及び下部噴射部250を有した噴射機構200と、制御部とを含む。圧縮空気A1が、上部噴射部210の出射口231aから下方に向かって、貫通孔22に噴射される。圧縮空気A2が、下部噴射部250の出射口271aから上方に向かって、貫通孔22に噴射される。貫通孔22から出射口271aまでの距離は、貫通孔22から出射口231aまでの距離より小さい。制御部は、貫通孔22に圧縮空気A1が到達するタイミングと、同じ貫通孔22に圧縮空気A2が到達するタイミングとがずれるように、上部噴射部210及び下部噴射部250を制御する。
【選択図】
図3