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特許7717078複数のイヤホンアーキテクチャ間の切換え
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-24
(45)【発行日】2025-08-01
(54)【発明の名称】複数のイヤホンアーキテクチャ間の切換え
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20250725BHJP
   H04R 1/06 20060101ALI20250725BHJP
   H04R 5/033 20060101ALI20250725BHJP
   H04R 1/10 20060101ALI20250725BHJP
   H04L 41/12 20220101ALI20250725BHJP
【FI】
H04R3/00 310
H04R1/06 310
H04R5/033 C
H04R1/10 104E
H04L41/12
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022549067
(86)(22)【出願日】2021-02-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-06
(86)【国際出願番号】 IB2021000057
(87)【国際公開番号】W WO2021161096
(87)【国際公開日】2021-08-19
【審査請求日】2024-01-30
(31)【優先権主張番号】62/975,630
(32)【優先日】2020-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502208397
【氏名又は名称】グーグル エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Google LLC
【住所又は居所原語表記】1600 Amphitheatre Parkway 94043 Mountain View, CA U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジラルディエ,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】デニス,フロリアン
【審査官】齊田 寛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-347956(JP,A)
【文献】特表2012-511869(JP,A)
【文献】国際公開第2019/205157(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0140674(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0154739(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/00
H04R 1/06
H04R 5/033
H04R 1/10
H04L 41/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プライマリワイヤレススピーカ(11)と少なくとも1つのセカンダリワイヤレススピーカ(12)とを備えるオーディオレンダリングシステム(10)によって第1のオーディオソース(20)と第2のオーディオソース(21)とを切換えるための方法(50)であって、前記オーディオレンダリングシステム(10)は、第1のオーディオトポロジを用いることによって前記第1のオーディオソース(20)から第1のオーディオストリームを受信し、前記第1のオーディオトポロジは、前記プライマリワイヤレススピーカ(11)と前記セカンダリワイヤレススピーカ(12)と前記第1のオーディオソース(20)との間に確立されたワイヤレスリンクの第1のセットに対応しており、前記方法(50)は、
・第2のオーディオトポロジを用いることによって、前記第2のオーディオソース(21)から第2のオーディオストリームを受信するように切換えるための要求を受信するステップ(51)を含み、前記第2のオーディオトポロジは、前記プライマリワイヤレススピーカ(11)と前記セカンダリワイヤレススピーカ(12)と前記第2のオーディオソース(21)との間のワイヤレスリンクの第2のセットに対応しており、前記第2のオーディオトポロジは前記第1のオーディオトポロジとは異なっており、前記方法(50)はさらに、
・前記第2のオーディオトポロジの前記ワイヤレスリンクの第2のセットを確立するステップ(52)と、
・前記第2のオーディオストリームの受信を開始するステップ(53)と、
・前記第2のオーディオストリームを受信している間、前記オーディオレンダリングシステム(10)と前記第1のオーディオソース(20)とを前記ワイヤレスリンクの第1のセットのうちのワイヤレスリンクによって接続された状態で維持するステップ(54)とを含み、
前記第2のオーディオストリームを受信する場合、前記ワイヤレスリンクの第1のセットのうち1つのワイヤレスリンクのみが、前記プライマリワイヤレススピーカ(11)と前記第1のオーディオソース(20)との間で維持され、前記ワイヤレスリンクの第1のセットのうちの他のワイヤレスリンクはいずれも維持されない、方法(50)。
【請求項2】
前記第2のオーディオストリームを受信する場合、かつ、前記オーディオレンダリングシステム(10)が、ワイヤレスリンクの第3のセットに対応する第3のオーディオトポロジを用いることによって第3のオーディオソースから第3のオーディオストリームを予め受信していた場合、前記ワイヤレスリンクの第3のセットのうち1つのワイヤレスリンクのみが前記セカンダリワイヤレススピーカ(12)と前記第3のオーディオソースとの間に維持され、前記ワイヤレスリンクの第3のセットのうちの他のワイヤレスリンクはいずれも維持されない、請求項1に記載の方法(50)。
【請求項3】
前記第2のオーディオストリームを受信する場合、前記第1のオーディオトポロジの前記ワイヤレスリンクの第1のセットのうちすべての前記ワイヤレスリンクが維持される、請求項1に記載の方法(50)。
【請求項4】
プライマリワイヤレススピーカ(11)と少なくとも1つのセカンダリワイヤレススピーカ(12)とを備えるオーディオレンダリングシステム(10)によって第1のオーディオソース(20)と第2のオーディオソース(21)とを切換えるための方法(50)であって、前記オーディオレンダリングシステム(10)は、第1のオーディオトポロジを用いることによって前記第1のオーディオソース(20)から第1のオーディオストリームを受信し、前記第1のオーディオトポロジは、前記プライマリワイヤレススピーカ(11)と前記セカンダリワイヤレススピーカ(12)と前記第1のオーディオソース(20)との間に確立されたワイヤレスリンクの第1のセットに対応しており、前記方法(50)は、
・第2のオーディオトポロジを用いることによって、前記第2のオーディオソース(21)から第2のオーディオストリームを受信するように切換えるための要求を受信するステップ(51)を含み、前記第2のオーディオトポロジは、前記プライマリワイヤレススピーカ(11)と前記セカンダリワイヤレススピーカ(12)と前記第2のオーディオソース(21)との間のワイヤレスリンクの第2のセットに対応しており、前記第2のオーディオトポロジは前記第1のオーディオトポロジとは異なっており、前記方法(50)はさらに、
・前記第2のオーディオトポロジの前記ワイヤレスリンクの第2のセットを確立するステップ(52)と、
・前記第2のオーディオストリームの受信を開始するステップ(53)と、
・前記第2のオーディオストリームを受信している間、前記オーディオレンダリングシステム(10)と前記第1のオーディオソース(20)とを前記ワイヤレスリンクの第1のセットのうちのワイヤレスリンクによって接続された状態で維持するステップ(54)と、
・前記第2のオーディオトポロジで用いられるべき前記プライマリワイヤレススピーカ(11)および前記セカンダリワイヤレススピーカ(12)の第2のオーディオ構成を取得するステップを含み、前記第2のオーディオ構成は、前記第1のオーディオトポロジで用いられる第1のオーディオ構成とは異なっており、さらに、
・前記第2のオーディオストリームの受信を開始する前に、前記第2のオーディオ構成で前記プライマリワイヤレススピーカ(11)および前記セカンダリワイヤレススピーカ(12)を構成するステップを含む、法(50)。
【請求項5】
前記第1のオーディオ構成および前記第2のオーディオ構成は、
・役割パラメータ、
・同期パラメータ、
・オーディオ符号化パラメータ、
・チャネルマッピングパラメータ、
のうち少なくとも1つを含む、請求項4に記載の方法(50)。
【請求項6】
プライマリワイヤレススピーカ(11)と少なくとも1つのセカンダリワイヤレススピーカ(12)とを備えるオーディオレンダリングシステム(10)によって第1のオーディオソース(20)と第2のオーディオソース(21)とを切換えるための方法(50)であって、前記オーディオレンダリングシステム(10)は、第1のオーディオトポロジを用いることによって前記第1のオーディオソース(20)から第1のオーディオストリームを受信し、前記第1のオーディオトポロジは、前記プライマリワイヤレススピーカ(11)と前記セカンダリワイヤレススピーカ(12)と前記第1のオーディオソース(20)との間に確立されたワイヤレスリンクの第1のセットに対応しており、前記方法(50)は、
・第2のオーディオトポロジを用いることによって、前記第2のオーディオソース(21)から第2のオーディオストリームを受信するように切換えるための要求を受信するステップ(51)を含み、前記第2のオーディオトポロジは、前記プライマリワイヤレススピーカ(11)と前記セカンダリワイヤレススピーカ(12)と前記第2のオーディオソース(21)との間のワイヤレスリンクの第2のセットに対応しており、前記第2のオーディオトポロジは前記第1のオーディオトポロジとは異なっており、前記方法(50)はさらに、
・前記第2のオーディオトポロジの前記ワイヤレスリンクの第2のセットを確立するステップ(52)と、
・前記第2のオーディオストリームの受信を開始するステップ(53)と、
・前記第2のオーディオストリームを受信している間、前記オーディオレンダリングシステム(10)と前記第1のオーディオソース(20)とを前記ワイヤレスリンクの第1のセットのうちのワイヤレスリンクによって接続された状態で維持するステップ(54)と、
・前記第1のオーディオソース(20)から前記第1のオーディオストリームを受信するように切換え戻すための要求を受信するステップ(55)と、
・前記ワイヤレスリンクの第1のセットのうちすべてのワイヤレスリンクが維持されていたわけではなかった場合、前記第1のオーディオトポロジの前記ワイヤレスリンクの第1のセットのうちの前記ワイヤレスリンクをすべて確立するステップ(56)と、
・前記第1のオーディオストリームの受信を開始するステップ(57)と、
・前記第1のオーディオストリームを受信している間、前記オーディオレンダリングシステム(10)と前記第2のオーディオソース(21)とを前記ワイヤレスリンクの第2のセットのうちのワイヤレスリンクによって接続された状態で維持するステップ(58)とを含む、法(50)。
【請求項7】
切換え戻し要求を受信した後、前記第1のオーディオトポロジは、前記オーディオレンダリングシステム(10)のメモリに格納されたデータから取出されるか、または、前記オーディオレンダリングシステム(10)と前記第1のオーディオソース(20)との間に維持される前記ワイヤレスリンクを介して前記第1のオーディオソース(20)から受信される、請求項6に記載の方法(50)。
【請求項8】
プライマリワイヤレススピーカ(11)と少なくとも1つのセカンダリワイヤレススピーカ(12)とを備えるオーディオレンダリングシステム(10)によって第1のオーディオソース(20)と第2のオーディオソース(21)とを切換えるための方法(50)であって、前記オーディオレンダリングシステム(10)は、第1のオーディオトポロジを用いることによって前記第1のオーディオソース(20)から第1のオーディオストリームを受信し、前記第1のオーディオトポロジは、前記プライマリワイヤレススピーカ(11)と前記セカンダリワイヤレススピーカ(12)と前記第1のオーディオソース(20)との間に確立されたワイヤレスリンクの第1のセットに対応しており、前記方法(50)は、
・第2のオーディオトポロジを用いることによって、前記第2のオーディオソース(21)から第2のオーディオストリームを受信するように切換えるための要求を受信するステップ(51)を含み、前記第2のオーディオトポロジは、前記プライマリワイヤレススピーカ(11)と前記セカンダリワイヤレススピーカ(12)と前記第2のオーディオソース(21)との間のワイヤレスリンクの第2のセットに対応しており、前記第2のオーディオトポロジは前記第1のオーディオトポロジとは異なっており、前記方法(50)はさらに、
・前記第2のオーディオトポロジの前記ワイヤレスリンクの第2のセットを確立するステップ(52)と、
・前記第2のオーディオストリームの受信を開始するステップ(53)と、
・前記第2のオーディオストリームを受信している間、前記オーディオレンダリングシステム(10)と前記第1のオーディオソース(20)とを前記ワイヤレスリンクの第1のセットのうちのワイヤレスリンクによって接続された状態で維持するステップ(54)とを含み、
前記第1のオーディオトポロジは、
・転送オーディオトポロジ、
・盗聴オーディオトポロジ、および
・デュアルストリームオーディオトポロジ、
のうちの1つであり、前記第2のオーディオトポロジは、
・前記転送オーディオトポロジ、
・前記盗聴オーディオトポロジ、
・前記デュアルストリームオーディオトポロジ、および
・ブロードキャストオーディオトポロジ、
のうちの別の1つであり、
前記第1のオーディオトポロジが前記転送オーディオトポロジであり、前記第2のオーディオトポロジが前記デュアルストリームオーディオトポロジであり、かつ、前記ワイヤレスリンクの第1のセットが、前記セカンダリワイヤレススピーカ(12)と前記プライマリワイヤレススピーカ(11)との間のワイヤレスリンクと、前記第1のオーディオソース(20)と前記プライマリワイヤレススピーカ(11)との間のワイヤレスリンクとにある場合、
・前記セカンダリワイヤレススピーカ(12)と前記プライマリワイヤレススピーカ(11)との間の前記ワイヤレスリンクを終了させるステップと、
・前記プライマリワイヤレススピーカ(11)の役割パラメータをマスタからスレーブに変更するステップとを含む、方法(50)。
【請求項9】
・前記デュアルストリームオーディオトポロジは、前記第1のオーディオソースまたは前記第2のオーディオソース(20,21)と、それぞれの前記プライマリワイヤレススピーカおよび前記セカンダリワイヤレススピーカとの間において2つのBluetooth(登録商標)低エネルギ接続型アイソクロナスストリーム論理トランスポートを用い、ならびに/または、
・前記ブロードキャストオーディオトポロジは、前記第1のオーディオソースまたは前記第2のオーディオソース(20,21)と前記プライマリワイヤレススピーカおよび前記セカンダリワイヤレススピーカ(11,12)との間において1つのBluetooth(登録商標)低エネルギブロードキャストアイソクロナスストリーム論理トランスポートを用いる、請求項8に記載の方法(50)。
【請求項10】
命令を含むコンピュータプログラムプロダクトであって、前記命令は、プライマリワイヤレススピーカ(11)および少なくとも1つのセカンダリワイヤレススピーカ(12)を含むオーディオレンダリングシステム(10)によって実行されると、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法を実行するように前記オーディオレンダリングシステム(10)を構成し、前記プライマリワイヤレススピーカ(11)および前記少なくとも1つのセカンダリワイヤレススピーカ(12)の各々は、処理回路(111,121)、無線通信ユニット(110,120)、およびオーディオレンダリングユニット(112,122)を備える、プログラム。
【請求項11】
プライマリワイヤレススピーカ(11)および少なくとも1つのセカンダリワイヤレススピーカ(12)を含むオーディオレンダリングシステム(10)であって、前記プライマリワイヤレススピーカおよび前記セカンダリワイヤレススピーカ(11,12)の各々は、処理回路(111,121)、無線通信ユニット(110,120)、およびオーディオレンダリングユニット(112,122)を備え、前記オーディオレンダリングシステム(10)は、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法を実行するように構成される、オーディオレンダリングシステム(10)。
【請求項12】
前記オーディオレンダリングシステム(10)はワイヤレスイヤホンに対応する、請求項11に記載のオーディオレンダリングシステム(10)。
【請求項13】
前記無線通信ユニット(110,120)はBluetooth(登録商標)通信ユニットである、請求項11または12に記載のオーディオレンダリングシステム(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、第1のオーディオソースが第1のオーディオトポロジを用いるとともに第2のオーディオソースが第1のオーディオトポロジとは異なる第2のオーディオトポロジを用いる場合に、プライマリワイヤレススピーカと少なくとも1つのセカンダリワイヤレススピーカとを備えるオーディオレンダリングシステムによって当該第1のオーディオソースと当該第2のオーディオソースとを切換えるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在のBluetooth(登録商標)オーディオレンダリングシステムのほとんどは、関連するオーディオソースを備えた単一の承認済みBluetooth(登録商標)オーディオストリームを用いている。実際には、Bluetooth(登録商標)プロトコル、特にアドバンストオーディオディストリビューションプロファイル(Advanced Audio Distribution Profile:A2DP)、すなわちBluetooth(登録商標)リンク上で如何にオーディオストリームを送信するかを定義するBluetooth(登録商標)プロファイルは、オーディオソースとオーディオレンダリングシステムとの間の単一のポイントツーポイント通信のみをサポートするように定義されたものであった。
【0003】
別個のイヤピースの形状をした2つの独立したBluetooth(登録商標)レンダリングユニットを備えるシステムである純粋なワイヤレスイヤホンであっても、Bluetooth(登録商標)プロトコルのこのような制限のせいで、単に、スマートフォンなどのオーディオソースを備えた単一の承認済みBluetooth(登録商標)オーディオストリームを有するだけとなっている。
【0004】
規格への準拠を維持するために、両方のBluetooth(登録商標)イヤピースがオーディオデータを受信することを可能にするための2つのオーディオトポロジが開発されてきた。
【0005】
第1のオーディオトポロジは転送オーディオトポロジと称され、第1のBluetooth(登録商標)イヤピースとの第1の承認済みBluetooth(登録商標)オーディオストリームを含み、第1のBluetooth(登録商標)イヤピースは、第2の承認済みBluetooth(登録商標)オーディオストリームを用いてオーディオデータを第2のBluetooth(登録商標)イヤピースに中継する。
【0006】
第2のオーディオトポロジは盗聴オーディオトポロジと称され、第1のBluetooth(登録商標)イヤピースとの第1の承認済みBluetooth(登録商標)オーディオストリームも含み、第1のイヤピースは、上記第2のイヤピースがオーディオソースと第1のイヤピースとの間のワイヤレスリンク上で送信されるオーディオストリームを傍受/盗聴することができるように、第2のイヤピースに情報を提供する。しかしながら、第2のイヤピースは、オーディオソースを直接承認することはない(一般に、第2のイヤピースが第1のイヤピースを承認し、次いで、当該第1のイヤピースがオーディオソースを承認することとなる)。
【0007】
これらのオーディオトポロジはいずれも最適ではない。転送オーディオトポロジは、第1のイヤピースがオーディオデータを再送信することを必要とし、盗聴オーディオトポロジは、(ステレオオーディオストリームの2つのオーディオチャンネルのうち一方のオーディオチャンネルのみを再生している間)両方のイヤピースが同じステレオオーディオストリームを受信することを必要とする。これらは追加の帯域幅の使用を必要とするため、安定性が低下し、電力消費が増大する。
【0008】
また、単一のオーディオソースからオーディオストリームを受信するオーディオレンダリングシステムの数はこれらのオーディオトポロジで制限される。
【0009】
このため、既存のオーディオトポロジに対する性能を向上させるとともに新しいユースケースをサポートするために新しいオーディオトポロジが開発されてきた。これらの新しいオーディオトポロジは以下を含む。
【0010】
・両方のイヤピースが同じオーディオソースからモノラルオーディオストリームを得ることを可能にし、これにより電力消費を低減させるデュアルストリームオーディオトポロジ。
【0011】
・単一のオーディオソースから同じオーディオストリームを得るための能力を無限数のワイヤレスイヤホンに提供するブロードキャストオーディオトポロジ。
【0012】
これらのオーディオトポロジは、現在のところ、Bluetooth(登録商標)規格の範囲外であり、プロプライエタリエンハンスメントとしてこれらの新しい能力を実装するオーディオソース上でのみ利用可能である。
【0013】
したがって、オーディオトポロジは、オーディオソースとワイヤレスイヤホンとの間の接続セットアッププロセス中に、それぞれのオーディオトポロジ能力を交換することによって選択される。しかしながら、その構成は常に静的である。これは、全てのオーディオソースがワイヤレスイヤホンから切断されるまで変化しないであろうことを意味する。2つのオーディオソース間の切換えは、第1のオーディオソースを切断し、第2のオーディオソースに接続することによって行なわれるが、これは、はるかに長い時間を要するので、ユーザ体験の質を低下させてしまう。
【0014】
Bluetooth(登録商標)低エネルギ(Bluetooth Low Energy:BLE)を介するオーディオについての新しい仕様は、これらの新しいオーディオトポロジをBluetooth(登録商標)規格に導入することを目的としている。しかしながら、既存のBluetooth(登録商標)オーディオレンダリングシステムは、ハードウェアの変更を必要とするために上記規格を実装することができないので、依然として同じ問題が残ることとなる。
【0015】
したがって、ユーザ体験に適した態様で第1のオーディオソースから第2のオーディオソースへの切換えを容易にする、たとえば待ち時間を減らす、といった解決策が必要とされている。BLE規格に新しいオーディオトポロジを導入することにより、さまざまなオーディオトポロジ間の切換えが必要となり得るユースケースの数が増加するので、上記のような解決策が必要とされる。
【発明の概要】
【0016】
概要
本開示は、上述の限定事項の全てまたは一部を克服する解決策を提案することを目的とする。
【0017】
特に、本開示は、ユーザ体験に適した態様で第1のオーディオソースから第2のオーディオソースに切換えるための解決策を提案することを目的とする。
【0018】
また、本開示は、少なくともいくつかの実施形態において、効率的な切換えを可能にしつつオーディオレンダリングシステムの電力消費を制限することを可能にする解決策を提案することを目的とする。
【0019】
この目的のために、第1の局面に従うと、本開示は、プライマリワイヤレススピーカと少なくとも1つのセカンダリワイヤレススピーカとを備えるオーディオレンダリングシステムによって第1のオーディオソースと第2のオーディオソースとを切換えるための方法に関し、当該オーディオレンダリングシステムは、第1のオーディオトポロジを用いることによって当該第1のオーディオソースから第1のオーディオストリームを受信する。当該第1のオーディオトポロジは、当該プライマリワイヤレススピーカと当該セカンダリワイヤレススピーカと当該第1のオーディオソースとの間に確立されたワイヤレスリンクの第1のセットに対応している。当該方法は、
・第2のオーディオトポロジを用いることによって、当該第2のオーディオソースから第2のオーディオストリームを受信するように切換えるための要求を受信するステップを含み、当該第2のオーディオトポロジは、当該プライマリワイヤレススピーカと当該セカンダリワイヤレススピーカと当該第2のオーディオソースとの間のワイヤレスリンクの第2のセットに対応しており、当該第2のオーディオトポロジは当該第1のオーディオトポロジとは異なっており、当該方法はさらに、
・当該第2のオーディオトポロジの当該ワイヤレスリンクの第2のセットを確立するステップと、
・当該第2のオーディオストリームの受信を開始するステップと、
・当該第2のオーディオストリームを受信している間、当該オーディオレンダリングシステムと当該第1のオーディオソースとを当該ワイヤレスリンクの第1のセットのうちのワイヤレスリンクによって接続された状態で維持するステップとを含む。
【0020】
プライマリワイヤレススピーカまたはセカンダリワイヤレススピーカは、ワイヤレスイヤホン、ブックシェルフスピーカ、フロアスピーカ、屋外スピーカ、サブウーファ、ヘッドセットスピーカであり得る。
【0021】
したがって、本開示に従うと、第1のオーディオソースで用いられる第1のオーディオトポロジとは異なる第2のオーディオトポロジを用いることを必要とする第1のオーディオソースから第2のオーディオソースへの切換えの際に、オーディオレンダリングシステム(たとえば、ワイヤレスイヤホンまたはスピーカ)は、第2のオーディオソースから第2のオーディオストリームを受信している間、第1のオーディオトポロジのワイヤレスリンクの第1のセットのうちのワイヤレスリンクのうち少なくとも1つを維持する。
【0022】
維持される少なくとも1つのワイヤレスリンクは、オーディオレンダリングシステムが第2のオーディオソースから第2のオーディオストリームを受信して再生している間、第1のオーディオソースとオーディオレンダリングシステムとが接続されたままとなるように、第1のオーディオソースとプライマリワイヤレススピーカおよびセカンダリワイヤレススピーカのうちの1つとの間のワイヤレスリンクとされている。
【0023】
本開示では、2つのエンティティ間のワイヤレスリンクとは、上記エンティティのそれぞれのデータリンク層が構成されて、無線物理層を用いてプロトコルデータユニットを交換する準備ができていることを意味する。データリンク層は物理層のすぐ上のプロトコル層であり、ワイヤレスリンクは、上記エンティティ間でプロトコルデータユニットを交換するために接続モードまたは非接続モードのいずれかを用い得る。
【0024】
本開示では、ワイヤレスリンクを維持することは、接続モードの場合に関するものであり、ワイヤレスリンクの終了をいずれも防止するために少なくともシグナリングデータがワイヤレスリンクを介して反復的に交換されることを意味する。したがって、第1のオーディオトポロジは、第1のオーディオソースとオーディオレンダリングシステムとの間に、第1のオーディオソースから第2のオーディオソースへの切換え時に維持される少なくとも1つのワイヤレスリンクを接続モードで含むものと想定される。
【0025】
オーディオレンダリングシステムと第1のオーディオソースとの間に少なくとも1つのワイヤレスリンクが維持されているおかげで、第1のオーディオソースはオーディオレンダリングシステムから切断されない。そのため、第2のオーディオストリームの受信の開始に対して、第1のオーディオストリームの受信を予め停止させる必要はない。したがって、第1のオーディオストリームの再生を停止させた直後にまたは停止させる前であっても第2のオーディオストリームの再生に切換えることができ、結果としてユーザ体験が向上する。
【0026】
また、第2のオーディオストリームの受信中にオーディオレンダリングシステムと第1のオーディオソースとの間で少なくとも1つのワイヤレスリンクが維持されているおかげで、切換え戻し要求(すなわち、第2のオーディオソースを切換えて第1のオーディオソースに戻すための要求)を迅速に処理することが可能になり、これにより、切換え待ち時間が短縮され、ユーザ体験が向上することとなる。
【0027】
上記ワイヤレスリンクを介して反復的にシグナリングデータを交換することにより、たとえば、オーディオレンダリングシステムおよび第1のオーディオソースが範囲内にある限り、ならびに/または、予め定められた期間にわたって(たとえば、予め定められたタイマが終了するまで)、第1のオーディオソースとオーディオレンダリングシステムとの間に少なくとも1つのワイヤレスリンクを維持し続けることができる。これは、たとえば、オーディオストリームのそれぞれのタイプに左右される可能性もある。たとえば、第1のオーディオストリームが音楽ストリーミングに対応し、第2のオーディオストリームが電話呼に対応する場合、ワイヤレスリンクは電話呼の期間全体にわたって維持され得る。なぜなら、音声レンダリングシステムのユーザによって自動または手動のいずれかでトリガされた電話呼(第2のオーディオストリーム)が終了すると切換え戻し要求が受信される可能性が高いからである。さらに、第1のオーディオストリームが電話呼に対応し、第2のオーディオストリームが音楽ストリーミングに対応している場合、オーディオレンダリングシステムと第1のオーディオソースとの間のワイヤレスリンクを予め定められた期間などにわたって維持することが可能である。
【0028】
特定の実施形態では、切換えのための方法は、単独で、または技術的に可能な任意の組合わせで検討される以下の特徴のうち1つ以上をさらに含み得る。
【0029】
特定の実施形態では、当該第2のオーディオストリームを受信する場合、当該ワイヤレスリンクの第1のセットのうち1つのワイヤレスリンクのみが、当該プライマリワイヤレススピーカと当該第1のオーディオソースとの間で維持され、当該ワイヤレスリンクの第1のセットのうちの他のワイヤレスリンクはいずれも維持されず、実際にはアクティブに終了され得る。
【0030】
このような場合、単一のワイヤレスリンクを維持することによって帯域幅使用が低減されるので、電力消費および安定性が最適化される。
【0031】
特定の実施形態では、当該第2のオーディオストリームを受信する場合、かつ、当該オーディオレンダリングシステムが、ワイヤレスリンクの第3のセットを含む第3のオーディオトポロジを用いることによって第3のオーディオソースから第3のオーディオストリームを予め受信していた場合、当該ワイヤレスリンクの第3のセットのうち1つのワイヤレスリンクのみが当該セカンダリワイヤレススピーカと当該第3のオーディオソースとの間に維持され、当該ワイヤレスリンクの第3のセットのうちの他のワイヤレスリンクはいずれも維持されない。
【0032】
したがって、オーディオレンダリングシステムが、別のオーディオソース(第2のオーディオソース)からオーディオストリームを受信している間、2つのオーディオソース(第1のオーディオソースおよび第3のオーディオソース)に接続されたままである場合、負荷と電力消費とのバランスを取る目的で、(第1のワイヤレススピーカおよび第2のワイヤレススピーカのうちの)別々のワイヤレススピーカを用いて、それぞれ第1のオーディオソースおよび第3のオーディオソースとのワイヤレスリンクを維持することが有利であり得る。
【0033】
特定の実施形態では、当該第2のオーディオストリームを受信する場合、当該第1のオーディオトポロジの当該ワイヤレスリンクの第1のセットのうちすべての当該ワイヤレスリンクが維持される。
【0034】
このような場合、第2のオーディオストリームを受信している間、第1のオーディオトポロジ全体が維持され得るので、電力消費および安定性は最適化されないが、いずれの切換え戻し要求も非常に迅速に処理されるだろう。
【0035】
特定の実施形態では、切換えのための当該方法は、
・当該第2のオーディオトポロジで用いられるべき当該プライマリワイヤレススピーカおよび当該セカンダリワイヤレススピーカの第2のオーディオ構成を取得するステップを含み、当該第2のオーディオ構成は、当該第1のオーディオトポロジで用いられる第1のオーディオ構成とは異なっており、当該方法はさらに、
・当該第2のオーディオストリームの受信を開始する前に、当該第2のオーディオ構成で当該プライマリワイヤレススピーカおよび当該セカンダリワイヤレススピーカを構成するステップを含む。
【0036】
たとえば、当該第1のオーディオ構成および当該第2のオーディオ構成は、
・役割パラメータ、
・同期パラメータ、
・オーディオ符号化パラメータ、および
・チャネルマッピングパラメータ、
のうち少なくとも1つを含む。
【0037】
特定の実施形態では、切換えのための当該方法は、
・当該第1のオーディオソースから当該第1のオーディオストリームを受信するように切換え戻すための要求を受信するステップと、
・当該ワイヤレスリンクの第1のセットのうちすべてのワイヤレスリンクが維持されていたわけではなかった場合、当該第1のオーディオトポロジの当該ワイヤレスリンクの第1のセットのうちの当該ワイヤレスリンクをすべて確立するステップと、
・当該第1のオーディオストリームの受信を開始するステップと、
・当該第1のオーディオストリームを受信している間、当該オーディオレンダリングシステムと当該第2のオーディオソースとを当該ワイヤレスリンクの第2のセットのうちのワイヤレスリンクによって接続された状態で維持するステップとを含む。
【0038】
上述したように、第1のオーディオストリームを受信している間、ワイヤレスリンクの第2のセットのうち1つ以上のワイヤレスリンクを維持することが可能である。第1のオーディオストリームを受信している間、ワイヤレスリンクの第2のセットのうちすべてのワイヤレスリンクを維持することも可能である。
【0039】
特定の実施形態では、切換え戻し要求を受信した後、当該第1のオーディオトポロジは、当該オーディオレンダリングシステムのメモリに格納されたデータから取出されるか、または、当該オーディオレンダリングシステムと当該第1のオーディオソースとの間に維持されるワイヤレスリンクを介して当該第1のオーディオソースから受信される。
【0040】
特定の実施形態では、当該第1のオーディオトポロジは、
・転送オーディオトポロジ、
・盗聴オーディオトポロジ、および
・デュアルストリームオーディオトポロジ、
のうちの1つであり、当該第2のオーディオトポロジは、
・転送オーディオトポロジ、
・盗聴オーディオトポロジ、
・デュアルストリームオーディオトポロジ、および
・ブロードキャストオーディオトポロジ、
のうちの別の1つである。
【0041】
特定の実施形態では、当該デュアルストリームオーディオトポロジは、当該第1のオーディオソースまたは当該第2のオーディオソースと、それぞれの当該プライマリワイヤレススピーカおよび当該セカンダリワイヤレススピーカとの間において2つのBLE接続型アイソクロナスストリーム(connected isochronous stream:CIS)論理トランスポートを用いる。
【0042】
特定の実施形態では、当該ブロードキャストオーディオトポロジは、当該第1のオーディオソースまたは当該第2のオーディオソースと当該プライマリワイヤレススピーカおよび当該セカンダリワイヤレススピーカとの間において1つのBLEブロードキャストアイソクロナスストリーム(broadcast isochronous stream:BIS)論理トランスポートを用いる。
【0043】
特定の実施形態では、切換えのための当該方法は、当該第1のオーディオトポロジが転送オーディオトポロジであり、当該第2のオーディオトポロジがデュアルストリームオーディオトポロジであり、かつ、当該ワイヤレスリンクの第1のセットが、当該セカンダリワイヤレススピーカと当該プライマリワイヤレススピーカとの間のワイヤレスリンクと、当該第1のオーディオソースと当該プライマリワイヤレススピーカとの間のワイヤレスリンクとにある場合、
・当該セカンダリワイヤレススピーカと当該プライマリワイヤレススピーカとの間の当該ワイヤレスリンクを終了させるステップと、
・当該プライマリワイヤレススピーカの役割パラメータをマスタからスレーブに変更するステップとを含む。
【0044】
第2の局面に従うと、本開示は、命令を含むコンピュータプログラムプロダクトに関し、当該命令は、プライマリワイヤレススピーカおよび少なくとも1つのセカンダリワイヤレススピーカを含むオーディオレンダリングシステムによって実行されると、本発明の実施形態のうちいずれか1つに従った切換え方法を実行するように当該オーディオレンダリングシステムを構成し、当該プライマリワイヤレススピーカおよび当該少なくとも1つのセカンダリワイヤレススピーカの各々は、処理回路、無線通信ユニット、およびオーディオレンダリングユニットを備える。
【0045】
第3の局面に従うと、本開示は、プライマリワイヤレススピーカおよび少なくとも1つのセカンダリワイヤレススピーカを含むオーディオレンダリングシステムに関し、当該プライマリワイヤレススピーカおよび当該セカンダリワイヤレススピーカの各々は、処理回路、無線通信ユニット、およびオーディオレンダリングユニットを備え、当該オーディオレンダリングシステムは、本発明の実施形態のいずれか1つに従った切換え方法を実行するように構成される。
【0046】
特定の実施形態では、当該オーディオレンダリングシステムはさらに、単独で、または技術的に可能な任意の組合わせで検討される以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る。
【0047】
特定の実施形態では、オーディオレンダリングシステムはワイヤレスイヤホンに対応する。
【0048】
特定の実施形態では、当該無線通信ユニットは、Bluetooth(登録商標)通信ユニット、好ましくはBLE通信ユニットである。
【0049】
図面の簡単な説明
本発明は、非限定的な例として与えられる以下の説明を読むことによってより良く理解され得るとともに、図を参照して説明がなされる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】オーディオレンダリングシステムとオーディオソースとの間のさまざまなオーディオトポロジを示す概略図である。
図2】オーディオレンダリングシステムの例示的な実施形態を示す概略図である。
図3】さまざまなオーディオソース間での切換えのための方法についての例示的な実施形態の主要なステップを示す図である。
図4】さまざまなオーディオソース間での切換えのための方法についての別の例示的な実施形態の主要なステップを示す図である。
図5】切換えシナリオを示す概略図である。
図6】切換えシナリオを示す概略図である。
図7】オーディオレンダリングシステムによる転送オーディオトポロジからデュアルストリームオーディオトポロジへの切換えについての例示的な実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
これらの図において、図中同一の参照符号は同一または類似の要素を示している。明確にするために、図示される要素は別段の明示的な規定がない限り縮尺通りではない。
【0052】
実施形態の説明
本開示では、オーディオソースは、1つ以上のワイヤレスリンクを介してオーディオストリームを送信することができる任意のデバイスであり得る。オーディオソースは、たとえば、スマートフォン、ラップトップ、音声アシスタント、タブレット等であり得る。
【0053】
オーディオレンダリングシステム10は、ワイヤレスリンクを介してオーディオストリームを受信するとともに、受信したオーディオストリームコンテンツを再生することでユーザにとって知覚可能にすることができる任意のデバイスであり得る。また、オーディオレンダリングシステム10は、プライマリワイヤレススピーカ11と少なくとも1つのセカンダリワイヤレススピーカ12とを備える。これらのスピーカの各々は、各ワイヤレススピーカによって再生されるべきオーディオデータがワイヤレスリンクを介して受信されるという意味で「ワイヤレス」である。プライマリワイヤレススピーカ11およびセカンダリワイヤレススピーカ12の各々は、たとえば、ワイヤレスラウドスピーカ、ワイヤレス音響または骨伝導型イヤピース、ワイヤレスサブウーファなどであってもよい。
【0054】
本開示は、第1のオーディオソース20および第2のオーディオソース21が別々のオーディオトポロジを用いる場合にオーディオレンダリングシステム10によって第1のオーディオソース20と第2のオーディオソース21とを切換えるための方法50に関する。各オーディオトポロジは、プライマリワイヤレススピーカ11とセカンダリワイヤレススピーカ12とオーディオソース20、21との間に確立された少なくとも1つのワイヤレスリンクのセットに対応する。
【0055】
たとえば、オーディオレンダリングシステム10はワイヤレスイヤホンに対応しているが、本開示はこれに限定されず、プライマリワイヤレススピーカ11および少なくとも1つのセカンダリワイヤレススピーカ12を備える任意のタイプのオーディオレンダリングシステム10に適用可能である。
【0056】
図1は、本開示において用いることができるさまざまなオーディオトポロジの非限定的な例を概略的に示す。
【0057】
図1のパートa)は、「転送オーディオトポロジ」と称される第1のオーディオトポロジを示す。転送オーディオトポロジでは、ワイヤレスリンクのセットは2つのワイヤレスリンクを含む。第1のワイヤレスリンクは、オーディオソース20とプライマリワイヤレススピーカ11との間に確立される。第2のワイヤレスリンクは、プライマリワイヤレススピーカ11とセカンダリワイヤレススピーカ12との間に確立されて、プライマリワイヤレススピーカ11が、セカンダリワイヤレススピーカ12によって再生されるべきオーディオデータ(たとえば、ステレオオーディオストリームの特定のオーディオチャネル)を当該セカンダリワイヤレススピーカ12に転送することを可能にする。転送オーディオトポロジでは、オーディオソース20とセカンダリワイヤレススピーカ12との間にワイヤレスリンクは確立されない。
【0058】
図1のパートb)は、「盗聴オーディオトポロジ」と称される第2のオーディオトポロジを示す。盗聴オーディオトポロジでは、ワイヤレスリンクのセットは2つのワイヤレスリンクを含む。第1のワイヤレスリンクは、オーディオソース20とプライマリワイヤレススピーカ11との間に確立される。第2のワイヤレスリンクは、プライマリワイヤレススピーカ11とセカンダリワイヤレススピーカ12との間に確立されて、プライマリワイヤレススピーカ11が第1のワイヤレスリンクに関する情報をセカンダリワイヤレススピーカ12に提供することを可能にし、これにより、セカンダリワイヤレススピーカ12が、オーディオソース20に実際には接続されることなく(点線によって表わされる)第1のワイヤレスリンク上で送信されるオーディオストリームコンテンツを傍受/盗聴することができるようになる。
【0059】
図1のパートc)は、「デュアルストリームオーディオトポロジ」と称される第3のオーディオトポロジを示す。デュアルストリームオーディオトポロジでは、ワイヤレスリンクのセットは2つのワイヤレスリンクを含む。第1のワイヤレスリンクは、オーディオソース20とプライマリワイヤレススピーカ11との間に確立される。第2のワイヤレスリンクは、オーディオソース20とセカンダリワイヤレススピーカ12との間に確立される。プライマリワイヤレススピーカ11およびセカンダリワイヤレススピーカ12の各々は、オーディオソース20との別個のポイントツーポイントワイヤレスリンクを介してそれ自体のオーディオデータ(たとえば、ステレオオーディオストリームの特定のオーディオチャネル)を受信する。
【0060】
図1のパートd)は、「ブロードキャストオーディオトポロジ」と称される第4のオーディオトポロジを示す。ブロードキャストオーディオトポロジでは、ワイヤレスリンクのセットは、一般に非接続モードを用いる単一のワイヤレスリンクを備える。したがって、ブロードキャストオーディオトポロジでは、オーディオソース20およびオーディオレンダリングシステム10は、必ずしもデータリンク層レベルで接続されるとは限らない。オーディオソース20の観点から見ると、異なるそれぞれのワイヤレス経路を介してプライマリワイヤレススピーカ11およびセカンダリワイヤレススピーカ12の両方にプロトコルデータユニットを送信するために用いられるのは、単一のデータリンク層構成だけである。プライマリワイヤレススピーカ11およびセカンダリワイヤレススピーカ12の各々は、オーディオソース20との別個のワイヤレス経路を介してオーディオストリーム全体を受信する。デュアルストリームオーディオトポロジと比べて、ポイントツーマルチポイントアーキテクチャの別々のワイヤレス経路を介して(プライマリワイヤレススピーカ11およびセカンダリワイヤレススピーカ12だけではなく)複数の受信機によって受信され得るオーディオソース20による送信は1つしか存在しない。
【0061】
図2は、オーディオレンダリングシステム10の例示的な実施形態の主要な構成要素を概略的に示す。
【0062】
図2に示すように、オーディオレンダリングシステム10は、プライマリワイヤレススピーカ11と少なくとも1つのセカンダリワイヤレススピーカ12とを備える。たとえば、プライマリワイヤレススピーカ11およびセカンダリワイヤレススピーカ12の各々は、ワイヤレスラウドスピーカ、ワイヤレスイヤピース、ワイヤレスサブウーファなどであり得る。
【0063】
プライマリワイヤレススピーカ11およびセカンダリワイヤレススピーカ12の各々は、無線通信ユニット110、120、処理回路111、121、およびオーディオレンダリングユニット112、122も備える。
【0064】
各々の無線通信ユニット110、120は、オーディオソースとのワイヤレスリンクを確立するために用いられるとともに、たとえば、当業者にとって公知であると見なされている構成要素(アンテナ、増幅器、局所発振器、ミキサ、アナログおよび/またはデジタルフィルタなど)を備える高周波回路に対応する。無線通信ユニット110、120は、少なくとも1つの無線通信プロトコルを実現する。たとえば、無線通信ユニット110、120は以下のうち少なくとも1つを含み得る。
【0065】
・Bluetooth(登録商標)通信ユニット、
・超広帯域(Ultra Wide-Band:UWB)通信ユニット、
・Wi-Fi(登録商標)通信ユニット、
・ZigBee(登録商標)通信ユニットなど。
【0066】
たとえば、各々の処理回路111、121は、1つ以上のプロセッサおよび格納手段(磁気ハードディスク、ソリッドステートディスク、光ディスク、電子メモリなど)を備える。当該格納手段には、第1のオーディオソース20と第2のオーディオソース21とを切換えるための方法50のステップのすべてまたは一部を実施するために実行されるべきプログラムコード命令のセットの形態でコンピュータプログラムプロダクトが格納されている。代替的には、または、これらの組合せで、処理回路111、121は、切換え方法50の上記ステップのすべてまたは一部を実施するように適合された、1つ以上のプログラマブル論理回路(FPGA、PLDなど)および/または1つ以上の専用の集積回路(ASIC)および/または個別の電子構成要素のセットなどを備え得る。
【0067】
各オーディオレンダリングユニット112、122は、ユーザにとってオーディオストリームが聴取可能となるように適合された任意の適切な機器であり得る。このため、各オーディオレンダリングユニット112、122は、たとえば、如何なる種類の電気音響変換器であってもよい。
【0068】
オーディオレンダリングシステム10の処理回路111、121、無線通信ユニット110、120およびオーディオレンダリングユニット112、122は、以下に記載する切換え方法50のステップを実施するために、ソフトウェア(特定のコンピュータプログラムプロダクト)によって、および/またはハードウェア(プロセッサ、FPGA、PLD、ASIC、個別の電子部品、高周波回路、電気音響変換器など)によって構成された手段のセットを形成する。
【0069】
以下の説明では、オーディオレンダリングシステム10の無線通信ユニット110、120は、非限定的には、Bluetooth(登録商標)通信ユニットであると見なされる。したがって、オーディオレンダリングシステム10によって確立されるオーディオソースとのワイヤレスリンクや、プライマリワイヤレススピーカ11とセカンダリワイヤレススピーカ12との間に確立されるワイヤレスリンクはBluetooth(登録商標)リンクであると見なされる。
【0070】
本開示では、オーディオストリームは、オーディオ信号を表わすアプリケーションレベルデータに対応しており、たとえば、オーディオストリーミングアプリケーションから生じるビットストリーム、アプリケーションによって読出されるローカルに格納された音楽ファイル、オーディオサーバの出力などであり得る。オーディオストリームコンテンツは、オーディオレンダリングシステム10によって実際に再生されるオーディオデータを表わす有用なデータ(対メタデータ)に対応する。オーディオストリームコンテンツは、1つ以上のオーディオチャネル(たとえば、モノラル音楽またはステレオ音楽など)を含み得る。
【0071】
Bluetooth(登録商標)オーディオストリームは、Bluetooth(登録商標)用語を指しており、オーディオソースとオーディオレンダリングシステム10との間でアプリケーションレベルのオーディオストリームコンテンツをストリーミングするための論理通信を指定する。Bluetooth(登録商標)オーディオストリームは、単一のBluetooth(登録商標)論理リンク上でBluetooth(登録商標)パケットを用いる(複数のBluetooth(登録商標)オーディオストリームが同じ論理リンクを用いることができる)。
【0072】
たとえば、デュアルストリームオーディオトポロジは、オーディオソースとそれぞれのプライマリワイヤレススピーカ11およびセカンダリワイヤレススピーカ12との間のBLE接続型アイソクロナスストリーム(CIS)論理トランスポートを用いる2つのBluetooth(登録商標)オーディオストリームを用いてもよい。一例として、ブロードキャストオーディオトポロジは、オーディオソースとプライマリワイヤレススピーカ11およびセカンダリワイヤレススピーカ12との間の1つのBLEブロードキャストアイソクロナスストリーム(BIS)論理トランスポートを用いて1つのBluetooth(登録商標)オーディオストリームを用いてもよい。
【0073】
また、上述したように、オーディオレンダリングシステム10は、それぞれのデータリンク層が構成されて、接続モードを用いてプロトコルデータユニットを交換する準備ができている場合、オーディオソースとのワイヤレスリンクによって「接続されている」と称される。
【0074】
また、オーディオストリームコンテンツがオーディオソースからオーディオレンダリングシステム10に無線で送信されるとともに、オーディオレンダリングシステム10が受信済みの無線信号を処理してオーディオソースによって送信されるオーディオストリームコンテンツを抽出する場合、オーディオストリームは「アクティブ」と称される。オーディオストリームコンテンツがいずれも無線で送信されない場合、またはオーディオストリームコンテンツが無線で送信されるが、受信済みの無線信号からオーディオレンダリングシステム10によって抽出されない場合、オーディオストリームは「非アクティブ」と称される。
【0075】
図3は、第1のオーディオソース20と第2のオーディオソース21とを切換えるための方法50についての例示的な実施形態の主要なステップを概略的に示す。上記ステップはオーディオレンダリングシステム10によって実行される。
【0076】
図3によって示されるように、上記切換え方法50は、プライマリワイヤレススピーカ11とセカンダリワイヤレススピーカ12と第2のオーディオソース21との間のワイヤレスリンクの第2のセットを含む第2のオーディオトポロジを用いることによって、第2のオーディオソース21から第2のオーディオストリームを受信するように切換えるための要求を受信するステップ51を含む。
【0077】
第2のオーディオトポロジは、第1のオーディオトポロジとは異なっており、さまざまなパラメータに基づいて決定され得る。
【0078】
たとえば、第2のオーディオトポロジは、いくつかの実施形態では、第2のオーディオソース21のオーディオソース能力に基づいて決定され得る。その場合、オーディオレンダリングシステム10と第2のオーディオソース21との間に第1のワイヤレスリンクを確立する際に、第2のオーディオソース21は、サポートされているオーディオトポロジのリストを提供し得る。このリストは、後の使用のためにオーディオレンダリングシステム10のメモリに格納され得る。第2のオーディオソース21に切換えるための要求を受信すると、このリストが取出され得るとともに、サポートされているオーディオトポロジの中から第2のオーディオトポロジが選択され得る。別の例に従うと、第2のオーディオソース21は、特定のオーディオトポロジを第2のオーディオトポロジとして用いることを明示的に要求し得る。
【0079】
さらに別の例に従うと、第2のオーディオトポロジは、いくつかの実施形態では、オーディオストリーム能力に基づいて決定され得る。実際には、第2のオーディオストリームが特定のオーディオトポロジを第2のオーディオトポロジとして用いることを必要とする可能性がある。その場合、第2のオーディオソース21に切換えるための要求を受信すると、オーディオレンダリングシステム10は、第2のオーディオストリームが特定のオーディオトポロジを用いることを必要とするため、この特定のオーディオトポロジを第2のオーディオトポロジとして選択することを決定し得る。
【0080】
上述の説明に基づいて、(たとえば、第2のオーディオソース21のオーディオソース能力を読取ることによって)第2のオーディオソース21とオーディオレンダリングシステム10との間に第1のワイヤレスリンクが確立される場合、新しいオーディオストリームが(たとえば、新しいオーディオストリーム指示ブロードキャストメッセージまたはユニキャスト要求で)利用可能であることが検出される場合などに、第2のオーディオトポロジが決定され得ることが理解される。
【0081】
また、切換え要求が、たとえば、オーディオレンダリングシステム10に接続されたさまざまなオーディオソースから利用可能なオーディオストリームのそれぞれの優先順位に基づくなどして、第2のオーディオソース21または第1のオーディオソース20によってトリガされてもよく、ユーザによって手動でトリガされてもよく、オーディオレンダリングシステム10によって自動的にトリガされてもよいことが強調される。
【0082】
切換え方法50は、オーディオレンダリングシステム10が切換え要求を受信すると、第2のオーディオトポロジを用いることによって第2のオーディオストリームを受信できるようにするために、第2のオーディオトポロジのワイヤレスリンクの第2のセットのうちすべてのワイヤレスリンクを確立するステップ52を含む。
【0083】
場合によっては、第1のオーディオトポロジから第2のオーディオトポロジへの切換えは、ワイヤレスリンクの新しいセットを確立することだけでなく、プライマリワイヤレススピーカ11およびセカンダリワイヤレススピーカ12のオーディオ構成を変更することも必要とし得ることに留意されたい。プライマリワイヤレススピーカ11およびセカンダリワイヤレススピーカ12のオーディオ構成は、確立されたワイヤレスリンク上のオーディオレンダリングシステム10の挙動に影響を及ぼすパラメータの値に対応する。たとえば、(第1のオーディオトポロジおよび第2のオーディオトポロジにそれぞれ関連付けられる)第1のオーディオ構成および第2のオーディオ構成は、以下のパラメータのうち少なくとも1つを含む。
【0084】
・役割パラメータ、
・同期パラメータ、
・オーディオ符号化パラメータ、
・チャネルマッピングパラメータなど。
【0085】
役割パラメータは、オーディオレンダリングシステム10によって確立される各ワイヤレスリンクごとに、プライマリワイヤレススピーカ11またはセカンダリワイヤレススピーカ12がこのワイヤレスリンク上で「マスタ」として動作するかまたは「スレーブ」として動作するかを示す。たとえば、転送オーディオトポロジでは、ワイヤレスリンクのセットのうち両方のワイヤレスリンクに関与するプライマリワイヤレススピーカ11は、上記ワイヤレスリンクの両方の上で「マスタ」として機能し得る。さらに、セカンダリワイヤレススピーカ12は、それが関与する単一のワイヤレスリンク上で「スレーブ」として機能し得る。デュアルストリームオーディオトポロジでは、プライマリワイヤレススピーカ11およびセカンダリワイヤレススピーカ12の両方が、オーディオソースなどとのワイヤレスリンク上で「スレーブ」として機能し得る。
【0086】
同期パラメータは、プライマリワイヤレススピーカ11およびセカンダリワイヤレススピーカ12によってそれぞれ再生されるオーディオデータが時間の点でどのように同期されるかを示す。たとえば、転送オーディオトポロジでは、プライマリワイヤレススピーカ11は、最初にストリーミングクロック値を評価し、次いで、それをプライマリワイヤレススピーカ11とセカンダリワイヤレススピーカ12との間で同期されたローカルクロックの値に変換し、これを用いて、セカンダリワイヤレススピーカ12に転送されるオーディオデータにタイムスタンプを刻印し得る。デュアルストリームオーディオトポロジでは、オーディオソースによってオーディオデータにタイムスタンプを刻印するためにBluetooth(登録商標)クロックが直接用いられ得るので、ローカルクロック値への変換は不要である。
【0087】
オーディオ符号化パラメータは、どのタイプのオーディオコーデックが用いられるかを示す。たとえば、デュアルストリームオーディオトポロジは、より高いビットレートのオーディオコーデックを用いてもよい。なぜなら、たとえば、プライマリワイヤレススピーカ11およびセカンダリワイヤレススピーカ12の各々がステレオオーディオストリームの2つのオーディオチャネルのうち1つのオーディオチャネルしか受信しないからである。さらに、転送オーディオトポロジは、より低いビットレートのオーディオコーデックを用いてもよい。用いられるオーディオコーデックのタイプはオーディオソースの能力に左右される可能性もある。
【0088】
チャネルマッピングパラメータは、オーディオチャネルがどのようにマッピングされるかを示す。たとえば、転送オーディオトポロジでは、プライマリワイヤレススピーカ11は、ステレオオーディオストリームの両方のオーディオチャネルを受信し、それ自体のオーディオチャネルのみを再生し、他方のオーディオチャネルをセカンダリワイヤレススピーカ12に転送する。デュアルストリームオーディオトポロジでは、プライマリワイヤレススピーカ11およびセカンダリワイヤレススピーカ12の各々は、ステレオオーディオストリームのそれ自体のオーディオチャネルに対応するモノラルオーディオストリームのみを受信する。ブロードキャストオーディオトポロジでは、プライマリワイヤレススピーカ11およびセカンダリワイヤレススピーカ12の各々は、ステレオオーディオストリームを受信するが、ステレオオーディオストリームのそれ自体のオーディオチャネルしか再生しない。
【0089】
当然ながら、上記パラメータと組合わせて、または上記パラメータの代わりに、他のパラメータがオーディオ構成に含まれてもよい。
【0090】
したがって、第1のオーディオソース20から第2のオーディオソース21への切換えは、第1のオーディオ構成から第2のオーディオ構成への切換えも必要とする可能性がある。切換え方法50は、必要に応じて、
・第2のオーディオトポロジで用いられるべきプライマリワイヤレススピーカ11および第2のワイヤレススピーカ12の第2のオーディオ構成を取得するステップと、
・第2のオーディオストリームの受信を開始する前に、プライマリワイヤレススピーカ11およびセカンダリワイヤレススピーカ12を第2のオーディオ構成で構成するステップと、
を含む付加的な任意のステップを含み得る。
【0091】
第2のオーディオトポロジが動作可能になると、切換え方法50は、オーディオレンダリングシステム10によって第2のオーディオストリームを再生するために第2のオーディオストリームの受信を開始するステップ53を含む。
【0092】
オーディオレンダリングシステム10が第2のオーディオソース21から第2のオーディオストリームを受信している間、切換え方法50は、オーディオレンダリングシステム10と第1のオーディオソース20とが接続されたままとなるように、ワイヤレスリンクの第1のセットのうち少なくとも1つのワイヤレスリンクを維持するステップ54を含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、第1のオーディオソースとプライマリワイヤレススピーカ11およびセカンダリワイヤレススピーカ12のうちの1つとの間の単一のワイヤレスリンクしか維持することができない。他の実施形態では、第1のオーディオトポロジが第2のオーディオトポロジと共存するように第1のセットのうちすべてのワイヤレスリンクを維持することを含め、2つ以上のワイヤレスリンクを維持することが可能である。また、維持されたワイヤレスリンクの数を時間とともに変化させることが可能である。たとえば、最初に、予め定められた期間にわたって第1のセットのワイヤレスリンクをすべて維持し、次いで、第1のオーディオソース20とオーディオレンダリングシステム10との間に維持されるのが第1のセットのうち1つのワイヤレスリンクのみとなるまでワイヤレスリンクのいくつかを終了させること、などが可能である。
【0094】
第1のオーディオトポロジが少なくとも部分的に維持されているおかげで、第1のオーディオストリームが先行技術の解決策の場合よりも長くアクティブに維持され得ることにより、ユーザ体験を向上させ得る。また、第1のオーディオソースからオーディオストリームを受信するように切換え戻すための切換え戻し要求はいずれも、先行技術の解決策の場合よりも迅速に受信および処理されるだろう。
【0095】
図4は、切換え方法50についての例示的な実施形態の主要なステップを概略的に示す。図4に示すように、切換え方法50は図3に示すステップを全て含む。
【0096】
第2のオーディオソース21からの第2のオーディオストリームの受信を開始した後の或る時点で、切換え方法50は、オーディオレンダリングシステム10によって、第1のオーディオソース20から第1のオーディオストリームを受信するように切換え戻すための要求を受信するステップ55を含む。切換え要求(ステップ51)について上述したように、切換え戻し要求は、たとえば、オーディオレンダリングシステム10に接続されたさまざまなオーディオソースから利用可能なオーディオストリームのそれぞれの優先順位に基づくなどして、第2のオーディオソース21または第1のオーディオソース20によってトリガされてもよく、ユーザによって手動でトリガされてもよく、オーディオレンダリングシステム10によって自動的にトリガされてもよい。
【0097】
上述したように、第1のオーディオトポロジのワイヤレスリンクの第1のセットのうち少なくとも1つのワイヤレスリンクが維持される。ワイヤレスリンクの第1のセットのうちすべてのワイヤレスリンクが維持されていた場合、第1のオーディオトポロジのワイヤレスリンクを再確立する必要はない。ワイヤレスリンクの第1のセットのうちすべてのワイヤレスリンクが維持されていたわけではなかった場合、切換え方法50は、第1のオーディオトポロジのワイヤレスリンクの第1のセットのうちすべてのワイヤレスリンクを確立するステップ56を含む。当該ステップ中に、ワイヤレスリンクの第1のセットのうち維持されていないワイヤレスリンクが再確立される。
【0098】
ワイヤレスリンクの第1のセットによって定義される第1のオーディオトポロジがオーディオレンダリングシステム10のメモリに格納され得ることに留意されたい。したがって、切換え戻し要求を受信すると、第1のオーディオトポロジは、上記メモリ内で取出されることによって迅速に決定される。代替的には、第1のオーディオトポロジはまた、上記オーディオレンダリングシステム10と上記第1のオーディオソース20との間に維持されるワイヤレスリンクを介して第1のオーディオソース20から受信されてもよい。実際には、ワイヤレスリンクが第1のオーディオソース20で維持されていたおかげで、この情報も迅速に取出すことができる。
【0099】
前述したように、第1のオーディオトポロジを動作可能にするために、プライマリワイヤレススピーカ11およびセカンダリワイヤレススピーカ12のオーディオ構成も変更することが必要となる可能性がある。好ましくは、第2のオーディオソース21への切換え前に第1のオーディオソース20で用いられた第1のオーディオ構成はオーディオレンダリングシステム10のメモリに格納される。その場合、第1のオーディオ構成は、プライマリワイヤレススピーカ11およびセカンダリワイヤレススピーカ12をより迅速に構成するために、メモリから取出すことができる。代替的には、第1のオーディオ構成はまた、上記オーディオレンダリングシステム10と上記第1のオーディオソース20との間に維持されるワイヤレスリンクを介して第1のオーディオソース20から受信されてもよい。
【0100】
第1のオーディオトポロジが動作可能になると、当該切換え方法50は、第1のオーディオソース20からの第1のオーディオストリームの受信を開始する(すなわち、第1のオーディオストリームがアクティブになる)ステップ57を含む。
【0101】
好ましくは、切換え方法50は、第1のオーディオストリームを受信している間、オーディオレンダリングシステム10と第2のオーディオソース21とを、ワイヤレスリンクの第2のセットのうち少なくとも1つのワイヤレスリンクによって接続された状態で維持する任意のステップ58を含む。ワイヤレスリンクの第1のセットのうち少なくとも1つのワイヤレスリンクを維持することに関して上述したことはすべて、ここでも該当する。特に、必要に応じて第2のオーディオソース21への切換え戻しを促進できるようにするために、第2のオーディオトポロジのワイヤレスリンクの第2のセットのうちすべてのワイヤレスリンクを維持することが可能である。
【0102】
本開示は、第1のオーディオトポロジから当該第1のオーディオトポロジとは異なる第2のオーディオトポロジへの任意の切換えに関する。しかしながら、以下のユースケースが特に関連している。
【0103】
・第1のオーディオトポロジが転送オーディオトポロジであり、第2のオーディオトポロジがデュアルストリームオーディオトポロジまたはブロードキャストオーディオトポロジである。
【0104】
・第1のオーディオトポロジが盗聴オーディオトポロジであり、第2のオーディオトポロジがデュアルストリームオーディオトポロジまたはブロードキャストオーディオトポロジである。
【0105】
図5は、転送オーディオトポロジからデュアルストリームオーディオトポロジへの切換えを概略的に示す。
【0106】
図5のパートa)において、オーディオレンダリングシステム10(ワイヤレスイヤホン)は、転送オーディオトポロジを用いて第1のオーディオソース20(ラップトップ)から第1のオーディオストリームを受信する。転送オーディオトポロジを用いる場合、第1のオーディオソース20は第1のワイヤレスリンクによってプライマリワイヤレススピーカ11に接続され、プライマリワイヤレススピーカ11は、第2のワイヤレスリンクによってセカンダリワイヤレススピーカ12に接続される。
【0107】
図5のパートb)において、オーディオレンダリングシステム10は、デュアルストリームオーディオトポロジを用いて、第2のオーディオソース21(スマートフォン)から第2のオーディオストリームを受信するように切換わる。デュアルストリームオーディオトポロジを用いる場合、第1のオーディオソース20は、第1のワイヤレスリンクによってプライマリワイヤレススピーカ11に接続され、第2のワイヤレスリンクによってセカンダリワイヤレススピーカ12に接続される。図5のパートb)に示されるように、オーディオレンダリングシステム10が第2のオーディオストリームを受信している間、(点線によって表わされる)転送オーディオトポロジのワイヤレスリンクが維持される。
【0108】
図6は、デュアルストリームオーディオトポロジからブロードキャストオーディオトポロジへの切換えを概略的に示す。
【0109】
図6のパートa)において、オーディオレンダリングシステム10(ワイヤレスイヤホン)は、デュアルストリームオーディオトポロジを用いて第1のオーディオソース20(スマートフォン)から第1のオーディオストリームを受信する。デュアルストリームオーディオトポロジを用いる場合、第1のオーディオソース20は、第1のワイヤレスリンクによってプライマリワイヤレススピーカ11に接続され、第2のワイヤレスリンクによってセカンダリワイヤレススピーカ12に接続される。
【0110】
図6のパートb)において、オーディオレンダリングシステム10は、ブロードキャストオーディオトポロジを用いて、第2のオーディオソース21(火災警報などの警報)から第2のオーディオストリームを受信するように切換わる。図6のパートb)に示されるように、オーディオレンダリングシステム10が第2のオーディオストリームを受信している間、(点線によって表わされる)デュアルストリームオーディオトポロジのワイヤレスリンクが維持される。
【0111】
図7は、第1のオーディオソース(ラップトップ)での転送オーディオトポロジから第2のオーディオソース21(スマートフォン)でのデュアルストリームオーディオトポロジへの切換えの場合に切換え方法50が如何に実施され得るかを示す例示的な実施形態を表わす。
【0112】
最初に、第1のオーディオソース20からの第1のオーディオストリームはアクティブであり、このため、第1のオーディオストリームコンテンツは、第1のオーディオソース20によって送信され、オーディオレンダリングシステム10(ワイヤレスイヤホン)によって受信される(S70を参照)。次いで、第2のオーディオソース21は、プライマリワイヤレススピーカ11とのワイヤレスリンクを確立し(S71を参照)、オーディオレンダリングシステム10が第2のオーディオソース21に切換わるべきであることを示す切換え要求が受信される(S72を参照)。図示の例では、オーディオレンダリングシステム10は、受信した切換え要求に基づいて、第1のオーディオストリームが非アクティブになるように第1のオーディオストリームの送信を停止するよう第1のオーディオソース20に要求する(S73を参照)。次いで、オーディオレンダリングシステム10は、たとえば、オーディオレンダリングシステム10によって予め格納された、および/もしくは第2のオーディオソース21から受信された第2のオーディオソース21のオーディオソース能力に基づいて、または、第2のオーディオストリームのオーディオストリーム能力などに基づいて、第2のオーディオトポロジを決定する(S74を参照)。次いで、オーディオレンダリングシステム10は、セカンダリワイヤレススピーカ12とプライマリワイヤレススピーカ11との間の転送オーディオトポロジのワイヤレスリンクを終了させる(S75を参照)。また、オーディオレンダリングシステム10および第1のオーディオソース20は、第1のオーディオソース20とプライマリワイヤレススピーカ11との間の転送オーディオトポロジのワイヤレスリンク上のプライマリワイヤレススピーカ11の役割を変更する。プライマリワイヤレススピーカ11の役割が「マスタ」から「スレーブ」に変更され、第1のオーディオソース20とプライマリワイヤレススピーカ11との間の転送オーディオトポロジのワイヤレスリンクが維持される(S76を参照)。次いで、オーディオレンダリングシステム10は、デュアルストリームオーディオトポロジのワイヤレスリンクのセットのうちのワイヤレスリンクを第2のオーディオソース21で確立する。プライマリワイヤレススピーカ11はワイヤレスリンクによって既に第2のオーディオソース21に接続されているので、第2のオーディオソース21とセカンダリワイヤレススピーカ12との間のワイヤレスリンクのみが確立される(S77を参照)。次いで、オーディオレンダリングシステム10は、プライマリワイヤレススピーカ11およびセカンダリワイヤレススピーカ12を、デュアルストリームオーディオトポロジで用いられるべきオーディオ構成で構成する(S78を参照)。最後に、第1のオーディオソース20およびプライマリワイヤレススピーカ11が転送オーディオトポロジのワイヤレスリンクによって接続されたままの状態で、第2のオーディオストリームコンテンツが第2のオーディオソース21によって送信されるとともにオーディオレンダリングシステム10によって処理されるように、第2のオーディオストリームがアクティブ化される(S79を参照)。
【0113】
図7に表わされる動作の順序が例示的なものであり、他の順序が実現可能であることに留意されたい。たとえば、図7では、第1のオーディオストリームは、切換え要求が受信された直後に非アクティブ化される。しかしながら、第1のオーディオストリームは、後で非アクティブ化されてもよく、(特に、第1のオーディオトポロジが完全に維持され、第2のオーディオトポロジと共存する場合)第2のオーディオストリームがアクティブ化された後に非アクティブ化されてもよい。
【0114】
いくつかの実施形態では、最大で1つのアクティブオーディオストリームを有することが可能であることに留意されたい。その場合、ある種の「ブレーク・ビフォア・メイク(break before make)」アプローチにおいては、第2のオーディオストリームがアクティブ化される前に第1のオーディオストリームが非アクティブ化される必要がある。したがって、オーディオレンダリングシステム10は、第2のオーディオストリームの受信を開始する前に、第1のオーディオストリームの受信を停止する。このようなアプローチは、オーディオレンダリングシステム10の電力消費および処理を減らし得るという点で有利である。
【0115】
本開示において、オーディオストリームの受信を停止することは、オーディオレンダリングシステムが、オーディオソースから受信した無線信号からのオーディオストリームコンテンツの抽出を停止することを意味することに留意されたい。これは、接続モードを用いるワイヤレスリンクの場合、オーディオソースとオーディオレンダリングシステム10との間でシグナリングを交換することで、オーディオソースがオーディオレンダリングシステム10へのオーディオストリームコンテンツの送信を停止することを確実にすることを示唆し得る。たとえば、オーディオレンダリングシステム10は、オーディオ/ビデオ配信トランスポートプロトコル(audio/video distribution transport protocol:AVDTP)一時停止要求をオーディオソースに送信し、これに応答して、(アプリケーションレベルの)オーディオストリームコンテンツの送信が停止されるように当該オーディオソースがBluetooth(登録商標)オーディオストリームを一時停止することによって、オーディオストリームコンテンツの受信を停止してもよい。ブロードキャストオーディオトポロジを考慮すると、オーディオソースによるオーディオストリームコンテンツの送信は停止されないが、オーディオレンダリングシステム10は、オーディオソースによってブロードキャストされたオーディオストリームコンテンツを抽出するために無線信号の処理を停止するだけでよい。
【0116】
また、オーディオストリームの受信を開始することは、オーディオレンダリングシステムが、オーディオソースから受信した無線信号からのオーディオストリームコンテンツの抽出を開始することを意味する。当然ながら、これは、接続モードを用いるワイヤレスリンクの場合、オーディオソースとオーディオレンダリングシステム10との間でシグナリングを交換することで、オーディオソースがオーディオレンダリングシステム10へのオーディオストリームコンテンツの送信を開始することを確実にすることを示唆し得る。たとえば、オーディオレンダリングシステム10は、オーディオソースにAVDTP開始要求を送信する(これに応答して、Bluetooth(登録商標)オーディオストリームを開始し、アプリケーションレベルのオーディオストリームコンテンツの送信を開始する)ことによって、かつ、受信された無線信号からのオーディオストリームコンテンツの抽出を開始することによって、オーディオストリームコンテンツの受信を開始してもよい。ブロードキャストオーディオトポロジを考慮すると、オーディオソースによるオーディオストリームコンテンツの送信は継続したままであるので、オーディオレンダリングシステム10は、オーディオソースによってブロードキャストされたオーディオストリームコンテンツを抽出するために、無線信号の処理を開始するだけでよい。
【0117】
他の実施形態では、少なくとも一時的に、2つ(以上)のオーディオストリームを同時にアクティブにすることが可能である。その場合、その時点では1つのオーディオストリームコンテンツしか再生できない。したがって、オーディオレンダリングシステム10は、オーディオレンダリングユニット112、122による第2のオーディオストリームコンテンツの再生を開始する前に、第1のオーディオストリームコンテンツの再生を停止させる。オーディオレンダリングシステム10によってもさらに受信および抽出される第1のオーディオストリームコンテンツは、たとえば、オーディオレンダリングユニット112、122によって再生されることなく破棄される。しかしながら、他の実施形態では、たとえば、第1のオーディオストリームコンテンツを第2のオーディオストリームコンテンツとともにダッキング(ducking)することによって、第1のオーディオストリームコンテンツおよび第2のオーディオストリームコンテンツを同時に少なくとも一時的に再生することも可能である。
【0118】
本発明が上述の例示的な実施形態に限定されないことが強調される。上述の例示的な実施形態の変形例も本発明の範囲内である。
【0119】
たとえば、ワイヤレスリンクがBluetooth(登録商標)リンクであることに着目してこれらの例示的な実施形態を説明してきた。しかしながら、他の実施形態では、他の無線通信プロトコルを用いることも可能である。いくつかの実施形態では、オーディオレンダリングシステム10は、複数の無線通信プロトコルさえもサポートし得るとともに、さまざまなデバイスに無線接続するためにさまざまな無線通信プロトコルを用い得る。
図1a)】
図1b)】
図1c)】
図1d)】
図2
図3
図4
図5
図6
図7