(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-24
(45)【発行日】2025-08-01
(54)【発明の名称】大気プラズマ処理によって分子コードを材料上へとグラフトするシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
H05H 1/24 20060101AFI20250725BHJP
D06B 19/00 20060101ALI20250725BHJP
B01J 19/08 20060101ALI20250725BHJP
【FI】
H05H1/24
D06B19/00 E
B01J19/08 E
(21)【出願番号】P 2022580173
(86)(22)【出願日】2021-06-16
(86)【国際出願番号】 US2021037547
(87)【国際公開番号】W WO2021262496
(87)【国際公開日】2021-12-30
【審査請求日】2024-04-10
(32)【優先日】2020-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591203428
【氏名又は名称】イリノイ トゥール ワークス インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【氏名又は名称】赤木 啓二
(72)【発明者】
【氏名】ロリー ウルフ
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-214062(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0040067(US,A1)
【文献】特表2017-504575(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0240355(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/24
D06B 19/00
B01J 19/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不均一な幾何学形状を有する物体の処理を行うように構成される材料表面処理システムであって、
分子コードを含む溶液を受け取る気化器であって、前記分子コードを有する蒸気を生み出す、気化器と、
イオン化プロセスガス及び前記蒸気から構成されるプラズマを生み出すように放電を発生させる電極と、
前記プラズマを前記電極の近くの前記物体の材料に印加するノズルであって、前記プラズマの印加により、前記分子コードを前記材料にグラフトする、ノズルと、
前記材料の周りの前記ノズルの移動により前記分子コードを適用するように構成される非直線状のコンベヤ
を備える、材料表面処理システム。
【請求項2】
前記電極は、本体内に延在する、請求項
1に記載の材料表面処理システム。
【請求項3】
前記本体内に配置され、前記蒸気を受け取るように構成される第1の容積部と、1つ以上の誘電体素子を含む第2の容積部との間の部分的な障壁としての役割を果たすフィルターを更に備える、請求項
2に記載の材料表面処理システム。
【請求項4】
前記第2の容積部は、前記蒸気を前記電極と前記誘電体素子との間の放電に供することにより前記プラズマを生み出すように構成される、請求項
3に記載の材料表面処理システム。
【請求項5】
前記電極は、プラズマ電極又はコロナ電極のうちの一方を含む、請求項
1に記載の材料表面処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
この出願は、「Systems And Methods For Grafting A Molecular Code Onto A Material By An Atmospheric Plasma Treatment」という名称の2020年6月26日に出願された米国仮特許出願第63/044861号の優先権及び利益を主張するものである。上記に挙げた米国出願の開示全体が全ての目的で引用することにより本明細書の一部をなす。
【背景技術】
【0002】
いくつかの材料表面処理システムは、放電によってフォイル又はフィルム等の物品の表面を処理するために高電圧電極を利用する。従来の処理システムは、処理中の材料の性質を改質するために使用される。しかしながら、材料に情報を加える場合、従来のシステムは、改変、複製、又は除去が行われやすい従来の印刷方法に限定される。したがって、製造者としては、より消去不能な様式で情報を材料上に埋め込む材料表面処理のシステム又は方法があれば利益に与るであろう。
【発明の概要】
【0003】
表面処理プロセスを通じて材料にコード化物質をグラフトする材料表面処理のシステム及び方法が開示される。特に、このシステム及び方法は、コード化物質を含むプラズマを生み出すために電極を利用し、コード化物質は、その後、プラズマ表面処理プロセス中に材料上へとグラフトされる。
【0004】
本発明のこれらの特徴及び利点並びに他の特徴及び利点は、添付の特許請求の範囲と併せて以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【0005】
本発明の利益及び利点は、以下の詳細な説明及び添付図面を検討した後に当業者に容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本開示の態様に係る材料表面処理システムの一例示の概略図である。
【
図2】本開示の態様に係る材料表面処理システムの別の例示の概略図である。
【
図3】本開示の態様に係る材料表面処理システムの更に別の例示の概略図である。
【
図4】本開示の態様に係る、分子コードを材料上へとグラフトするように
図1~
図3の例示の材料表面処理システムによって実行することができる例示の機械可読命令を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図面は、必ずしも正確な縮尺ではない。適切な場合は、同様の又は同一の参照番号を使用して、同様の又は同一の構成要素を指す。
【0008】
本開示は、表面処理プロセスを通じてコード化物質(例えば、分子コード)を材料にグラフトする材料表面処理システム及び方法を記載する。いくつかの例において、材料は、分子コードを含むプラズマ放出に供され、分子コードは、分子レベルで材料上へとグラフトされ、これにより、処理済の材料の性質にほとんど又は全く影響がない。
【0009】
いくつかの例において、コード化物質をグラフトする材料表面処理システム及び方法は、分子コードを含む溶液を受け取る気化器を備える。気化器は、分子コードを有する蒸気を生み出し、この蒸気はその後電極にさらされ、放電によりイオン化プロセスガス及び蒸気からプラズマが生み出される。その後、プラズマは電極の近くの材料に印加され、プラズマにより分子コードを材料上へとグラフトするようになっている。
【0010】
材料表面処理システムは、印刷インク、コーティング、及び/又は接着剤等、表面処理による接合を阻害する低い表面張力を伴う表面を有する多様な材料(例えば、ポリエチレン及びポリプロピレン等のプラスチック)を処理するように装備を施すことができる。材料表面処理システムは、特定の用途(例えば、インク、コーティング、接着剤及び/又は積層)のために特定の材料(例えば、プラスチック及び/又は可撓性基板)の特性を改変するために利用される。例えば、プラスチックフィルムは、一般に、インク、接着剤等による適切な化学的接合を達成するために何らかのタイプの表面処理を必要とする。これは、インクが媒体を貫通することができる紙のような多孔質材料とは対照的である。
【0011】
そのようなシステム及び方法を使用すれば、多様な材料(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ビニル、PVC、PET、金属化表面、フォイル、紙、及び板紙ストック)を有効に処理することができる。
【0012】
そのような材料の所望の材料特性を提供するために、様々な技法が実施されている。例えば、コロナ処理は、材料の表面特性を変化させるために比較的低温のコロナ放電を利用する表面処理である。1つ以上の電極を利用するコロナ処理は、手頃なコストで所望の接着特性を提供する。コロナ電極は、高電圧放出を発生させ、加工材料(例えば、プラスチック、紙、フォイル等)の表面エネルギーを改質するために有効である。
【0013】
別の例としては、材料表面を処理するために電極放出にガスを注入するプラズマ処理がある。例えば、材料によっては、接合特性等の所望の材料性質を達成するために、コロナ処理よりもプラズマ処理を受けることが多いものがある。
【0014】
プラズマ処理は、コロナ処理と比較して、より複雑な電極及びより多くのプロセス制御の使用等、コスト及び複雑さの上昇と関連することが多い。そのため、当該産業においてプラズマ処理をより大規模に実施するには制限がつきまとう。しかしながら、材料によっては、コロナ処理よりもプラズマ処理に対する反応が有利なものがある(例えば、フルオロポリマー、ポリプロピレン等)。
【0015】
本明細書に開示されるように、コロナ電極及びプラズマ電極をそれぞれ利用するコロナ処理システム及びプラズマ処理システムの両方は、以下の例において提供されるように、表面処理プロセスを通じてコード化物質(例えば、分子コード)を材料にグラフトするために利用することができる。
【0016】
開示される材料表面処理システム及び方法は、処理後の材料の所望の性質に影響することなく、分子コードを材料上へとグラフトするように構成されることが有利である。加えて、材料表面処理システム及び方法は、分子コードを材料内へと分子レベルで組み込むため、コード化情報の導入、改変、又は除去を極めて困難にし、材料の製造者に対して強固な保護を提供することができる。
【0017】
開示される例において、材料表面処理システムは、分子コードを含む溶液を受け取る気化器であって、分子コードを有する蒸気を生み出す、気化器と、電極であって、イオン化プロセスガス及び蒸気から構成されるプラズマを生み出すように放電を発生させ、プラズマを電極の近くの材料に印加し、プラズマの印加により、分子コードを材料にグラフトする、電極とを備える。
【0018】
いくつかの例において、材料表面処理システムは、材料に係合するように構成される接地ロールを更に備え、材料は、プラズマが接地ロールに引き寄せられる際に、電極から放出されたプラズマに供され、接地ロールは、基準電圧に電気的に接続される。
【0019】
例において、材料の1つ以上の性質は、プラズマを印加する結果として改変される。例において、材料は、ポリマー、合成織布及び/又は不織布、天然繊維織布、フィラメント、糸、エラストマー、又は金属のうちの1つである。
【0020】
いくつかの例において、イオン化プロセスガスは、ヒドロキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、又はアミンを形成する。いくつかの例において、非イオン化プロセスガスが気化器に導入され、気化器は、非イオン化プロセスガス及び分子溶液を加熱して、非イオン化プロセスガス及び分子溶液を結合又は蒸発させる加熱器を備える。
【0021】
いくつかの例において、電極は、プラズマ電極又はコロナ電極のうちの一方を含む。いくつかの例において、電極は、電流を提供して電極を活性化するように構成される電力源に接続される。
【0022】
いくつかの例において、材料は、巻かれたウェブである。例において、材料は、平坦な構造体である。例において、材料は、多面体である。
【0023】
いくつかの開示される例において、材料表面処理システムは、平坦な物体の処理を行うように構成される。システムは、分子コードを含む溶液を受け取る気化器であって、分子コードを有する蒸気を生み出す、気化器と、イオン化プロセスガス及び蒸気から構成されるプラズマを生み出すように放電を発生させる電極と、平坦な物体を電極に向かって搬送して、プラズマを電極の近くの平坦な物体の材料に印加する1つ以上のローラーであって、プラズマの印加により、分子コードを材料にグラフトする、1つ以上のローラーとを備える。
【0024】
いくつかの例において、材料表面処理システムは、材料に対して電極の反対側に接地ブロックを更に備え、材料は、プラズマが接地ブロックに引き寄せられる際に、電極から放出されたプラズマに供され、接地ブロックは、基準電圧に電気的に接続される。例において、材料の1つ以上の性質は、プラズマを印加する結果として改変される。
【0025】
いくつかの開示される例において、材料表面処理システムは、不均一な幾何学形状を有する物体の処理を行うように構成される。システムは、分子コードを含む溶液を受け取る気化器であって、分子コードを有する蒸気を生み出す、気化器と、イオン化プロセスガス及び蒸気から構成されるプラズマを生み出すように放電を発生させる電極と、プラズマを電極の近くの物体の材料に印加するノズルであって、プラズマの印加により、分子コードを材料にグラフトする、ノズルとを備える。
【0026】
いくつかの例において、電極は、本体内に延在する。例において、本体内に配置され、蒸気を受け取るように構成される第1の容積部と、1つ以上の誘電体素子を含む第2の容積部との間の部分的な障壁としての役割を果たすフィルターを更に備える。例において、第2の容積部は、蒸気を電極と誘電体素子との間の放電に供することによりプラズマを生み出すように構成される。
【0027】
いくつかの例において、材料表面処理システムは、材料の周りのノズルの移動により分子コードを適用するように構成される非直線状のコンベヤを更に備える。いくつかの例において、電極は、プラズマ電極又はコロナ電極のうちの一方を含む。
【0028】
本明細書において使用される場合、「電源」という用語は、電力が印加されると、材料処理システムに電力を供給することが可能な任意の装置を指す。これには、限定しないが、インバーター、変換器、共振電源、擬似共振電源等の他に、制御回路部及びこれに関連する他の補助回路部が含まれる。この用語は、エネルギー貯蔵装置、及び/又は多様な外部電源から電力を引き出す回路部及び/又は接続部を含むことができる。
【0029】
本明細書において使用される場合、「回路」又は「回路部」は、任意のアナログ及び/又はデジタルコンポーネント、電力及び/又は制御要素、例えば、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、ソフトウェア等、別個の及び/又は統合されたコンポーネント、又はこれらの部分及び/又は組合せを含む。
【0030】
本明細書において使用される場合、「電力変換回路部」及び/又は「電力変換回路」は、電力を1つ以上の第1の形態(例えば、発電機によって出力された電力)から、電圧、電流、周波数、及び/又は反応特性の任意の組合せを有する1つ以上の第2の形態に変換する回路部及び/又は電気コンポーネントを指す。電力変換回路部は、安全回路部、出力選択回路部、測定及び/又は制御回路部、及び/又は適切な特徴を提供する他の任意の回路を含むことができる。
【0031】
本明細書において使用される場合、「第1の」及び「第2の」という用語は、同じタイプの異なるコンポーネント又は要素を列挙するために使用される場合があり、必ずしも何らかの特定の序列を暗示するものではない。
【0032】
図1は、電源12と電気接続する放電極14を備える材料処理システム10を示している。電極14は、筐体24内に配置することができ、筐体24は、材料処理プロセスを行うための制御された環境(例えば、制御された圧力、温度、副生成物による汚染等)を生み出すことができる。いくつかの例において、材料22のウェブ(例えば、繊維、紙、プラスチック、フィルム等)を、電極14の放出によって発生するプラズマ32によって処理するために、電極14の近くに通すように接地ローラー16(例えば、接地又は他の基準電圧への通路を有する接地裸ロール)が利用及び配置される。
【0033】
いくつかの例において、放電極14は、誘電体管(例えば、セラミック)又はステンレス鋼電極からなり、接地ローラー16は、ステンレス鋼ローラー、又はセラミック若しくはガラスに覆われた接地ローラーからなり、いずれのローラーも、電極14の長さに沿って高電圧電荷を均一に分配するように協働する。
【0034】
電力入力を提供する電源12は、高電圧変圧器、電力変換器、及び/又は電源(例えば、商用電源)を含むことができる。いくつかの例において、電源12は、印加される電力密度を放電極14に、1平方メートルあたりおよそ10ワット分~1平方メートルあたり110ワット分、いくつかの例において、1平方メートルあたりおよそ20ワット分~1平方メートルあたり60ワット分を提供するが、他の範囲も想定される。
【0035】
図示のように、システム10は、ガス又は流体等の1つ以上の入力を受け取る気化器又はフラッシュ蒸発器26を備える。
図1の例において、入力は、分子コードを含む溶液及び/又はプロセスガスを含む。分子コードは、分子レベルで材料22上へとグラフトすることができる特定の形質に関する情報を含むことができる。情報は、例えば、場所、エンティティ、プロセスを含む場合があり、これらは、後に材料の化学組成の分析によって明らかにすることができる。
【0036】
いくつかの例において、分子コード溶液は、1部の分子コード溶液に対しておよそ20部~110部の脱イオン水、いくつかの例において、1部のDNA溶液に対しておよそ40部~80部の脱イオン水からなるが、他の範囲も想定される。いくつかの例において、分子コード溶液は、1分あたり電極長さのセンチメートルあたりおよそ0.1ミリリットル~1分あたり電極長さのセンチメートルあたり1.0ミリリットル、いくつかの例において、1分あたり電極長さのセンチメートルあたりおよそ0.3ミリリットル~1分あたり電極長さのセンチメートルあたり0.8ミリリットルの速度で気化器26に導入されるが、他の範囲も想定される。
【0037】
いくつかの例において、プロセスガスは、窒素と酸素との混合体を含む、異なるガスの混合物を含むことができる。例えば、プロセスガスの混合物は、およそ99%~80%の濃度、いくつかの例において、およそ97%~88%の濃度の窒素を含むことができるが、他の範囲も想定される。プラズマガスの混合物は、およそ20%~1%の濃度、いくつかの例において、およそ12%~3%の濃度の酸素を含むことができるが、他の範囲も想定される。いくつかの例において、プロセスガス又は混合物ガスは、イオン化すると、非限定的な例のリストとして、ヒドロキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、又はアミン等の或る特定の官能基を形成することができる。
【0038】
気化器26は、分子コードを有する蒸気28及び/又はプロセスガスを受け取り、これはその後、導管27を介して(例えば、ファン、ポンプ等を介して)電極14と接地ローラー16との間の領域に搬送される。例において、気化器26は、熱を発生させて入力を蒸気28に変換する加熱器34を備える。例えば、気化器26は、およそ摂氏100度~摂氏250度、いくつかの例において、およそ摂氏180度~摂氏220度の温度で入力を加熱することができるが、他の範囲も想定される。
【0039】
いくつかの例において、1つ以上のセンサー(例えば、流量計、圧力センサー等)又は弁を利用することで、分子コード溶液及び/又はプロセスガスがフラッシュ蒸発器26及び/又は筐体内に蒸気28として入る速度及び/又は量を監視及び/又は制御することができる。そのため、分子コード溶液が気化すると、蒸気28は、プロセスガスによって電極14に、1分あたり電極長さのセンチメートルあたりおよそ1リットル~1分あたり電極長さのセンチメートルあたり10リットル、いくつかの例において、1分あたり電極長さのセンチメートルあたりおよそ2リットル~1分あたり電極長さのセンチメートルあたり5リットルの流量で搬送することができるが、他の範囲も想定される。
【0040】
蒸気28が電極14に達すると、高電圧放電により、プロセスガス及び分子コードの分子をイオン化するプラズマ32が生み出される。例えば、プロセスガス内のイオン化分子の官能基(例えば、ヒドロキシ基)は、分子コードの結合剤としての役割を果たし、イオン化分子はその後、接地ロール16に引きつけられ、分子コードを有するプラズマ32が材料22に引き寄せられる。また、プラズマ32は、イオン化分子の衝突を伝播する。結果として、分子コードは材料22上へとグラフトされる。例えば、分子コードは分子レベルでグラフトされ、これにより、処理済の材料の性質にほとんど又は全く影響がない。特に、材料表面処理プロセス中、材料の1つ以上の性質は、非限定的な性質のリストとして、材料の多孔性、接着容量、又は強度を調整するため等、改変することができる。例示的な材料処理プロセスは、1つ以上の副生成物30(例えば、水蒸気、無反応ガス、オゾン)を生成する場合があり、これらは排気として及び/又は追加の処理のために処理エリアから引き離すことができる。
【0041】
開示される例において、材料は、非限定的な性質のリストとして、ポリマー、合成織布及び/又は不織布、天然繊維織布、フィラメント、糸、エラストマー、又は金属のうちの1つである。いずれの場合にせよ、材料は様々な構成において処理のために提示されたものであり得る。例えば、材料は、実質的に可撓性のウェブ、フィルム、フォイル等として提示される場合があり、材料の搬送は、供給源ロール20から受取りロール18に移送されるようになっている。いくつかの例において、材料は、実質的に平坦な、例えば剛性の、半剛性の、又は可撓性のシート、プレート、ボード等として提示される(例えば、
図2の例示のシステムを参照)。いくつかの例において、材料は、不均一な幾何学形状を有して提示され、分子コードの適用は、非直線状のコンベヤ及び/又は可動電極構成の使用によって実施することができる(例えば、
図3の例示のシステムを参照)。各例示の構成において、システム及び方法は、開示される技法に従って分子コードを適用するように設計される。
【0042】
いくつかの例において、材料処理プロセスは、統合又は遠隔コンピューティングプラットフォーム上等、1つ以上の制御回路によって実行される1つ以上のプログラムによって制御される。例えば、制御回路、制御回路部、及び/又はコントローラーは、デジタル及び/又はアナログ回路部、別個の及び/又は統合された回路部、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、及び/又は他の論理回路部、及び/又は関連ソフトウェア、ハードウェア、及び/又はファームウェアを含むことができる。制御回路又は制御回路部は、コントローラーの一部又は全てを形成する1つ以上の回路基板上に位置することができ、材料処理プロセスを制御するために使用される。制御回路は、制御回路によって実行されるプログラム命令等の情報を記憶するメモリを含むことができ、メモリは、揮発性メモリ装置及び/又は不揮発性メモリ装置及び/又は他の記憶装置を含むことができる。
【0043】
本明細書に開示のプロセスによって処理された材料は、埋め込まれたコード化情報を明らかにするために試験することができる。例えば、材料は、1つ以上の化学試験技法(例えば、電気泳動法、クロマトグラフィー、分光法、質量分析法等)に供することができ、それにより、分子コード内に含まれる情報を逆コンパイルする。そのような試験結果により、分子コードの存否が示される。
【0044】
図2は、処理用の実質的に平坦な物品の処理を行うように構成される別の例示の材料処理システム10を示している。
図2に示すように、搬送システムは、電極14と接地ブロック38との間の領域を横断する際に、材料構造体36(例えば、実質的に平坦な構造体、例えば、剛性の、半剛性の、又は可撓性のシート、プレート、ボード等)が上に静置されるプラットフォーム及び/又はベルト41のうちの1つ以上を含む。いくつかの例において、プラットフォーム41は、1つ以上のローラー40、42によって駆動され、材料構造体36のコンベヤとして動作する。追加の又は代替の例において、材料構造体36は、1つ以上のローラー40、42上に静置され、プラットフォーム41の支援なしで筐体24を通して搬送される。
【0045】
図3は、不均一な幾何学形状を有する物体70の処理を行うように構成される更に別の例示の材料表面処理システム50を提供している。例えば、物体70は、複数の表面を有する三次元物体とすることができ、表面のうちの1つ以上は、物体70の材料に分子コードをグラフトするために処理される。そのため、分子コードの適用は、非直線状のコンベヤの使用によって、及び/又は物品の周りの電極の移動、及び/又は電極の周りの物品の移動によって実施することができる。
【0046】
図3の例において、電源12は、本体52内に延在する電極54に電力を提供する。フィルター60が、本体52内に配置され、蒸気64を受け取るように構成される第1の容積部76と、1つ以上の誘電体素子62を含む第2の容積部78との間の部分的な障壁としての役割を果たす。蒸気64は、導管56を介して気化器26から搬送され、蒸気64は、分子コード及び/又はプロセスガスを含む。蒸気64は、第2の容積部78に導入され、電極54と誘電体素子62との間の放電に供され、これにより、ノズル58を介して物体70に印加されるプラズマ66を生み出す。このようにして、分子コードは、物体70の材料におけるプラズマ66にさらされた領域上へとグラフトされる。
【0047】
いくつかの例において、窒素等の前駆体ガスは、導管74を介して本体52に導入することができる。加えて又は代替的に、システム50は、筐体内に完全に又は部分的に取り囲むことができる。いくつかの例において、物体70は、接地への直通路を介して、又は接地若しくは基準電圧へのコネクタを介してのいずれかで接地することができる。
【0048】
図4は、本開示の態様に係る、分子コードを材料上へとグラフトするように
図1~
図3の例示の材料表面処理システムによって実行することができる例示の命令100を示すフローチャートを提供している。ブロック102において、分子コードを含む溶液を、蒸発器又は気化器等において受け取る。ブロック104において、溶液及び処理ガスを蒸発させ、ブロック106において電極に導入する。ブロック108において、蒸気をイオン化してプラズマを生み出し、ブロック110において、プラズマを材料の表面に印加して分子コードを材料上へとグラフトする。
【0049】
本明細書において使用される場合、「及び/又は」は、「及び/又は」によって連結されるリストにおける項目のうちの任意の1つ以上の項目を意味する。一例として、「x及び/又はy」は、3つの要素の組{(x),(y),(x,y)}のうちの任意の要素を意味する。言い換えれば、「x及び/又はy」は、「x及びyのうちの一方又は両方」を意味する。別の例として、「x、y及び/又はz」は、7つの要素の組{(x),(y),(z),(x,y),(x,z),(y,z),(x,y,z)}のうちの任意の要素を意味する。言い換えれば、「x、y及び/又はz」は、「x、y及びzのうちの1つ以上」を意味する。本明細書において使用される場合、「例示的な」という用語は、非限定的な例、事例又は例証としての役割を果たすことを意味する。本明細書において使用される場合、「例えば」という用語は、1つ以上の非限定的な例、事例又は例証のリストを開始する。
【0050】
本方法及び/又はシステムを、或る特定の実施態様を参照して記載してきたが、当業者であれば、本方法及び/又はシステムの範囲から逸脱することなく、種々の変更を行うことができること及び均等物に置き換えることができることを理解するであろう。加えて、本開示の範囲から逸脱することなく、本開示の教示に対して特定の状況又は材料を適合させるように多くの改変を行うことができる。例えば、開示した例のシステム、ブロック及び/又は構成要素を、組み合わせ、分割し、再配置し、及び/又は他の方法で変更することができる。したがって、本方法及び/又はシステムは、開示されている特定の実施態様に限定されない。代わりに、本方法及び/又はシステムは、字義どおりにでも均等論のもとにおいても、添付の特許請求の範囲内に入る全ての実施態様を含む。本発明の実施態様の一部を以下の項目[1]-[20]に記載する。
[1]
材料表面処理システムであって、
分子コードを含む溶液を受け取る気化器であって、前記分子コードを有する蒸気を生み出す、気化器と、
電極であって、イオン化プロセスガス及び前記蒸気から構成されるプラズマを生み出すように放電を発生させ、前記プラズマを該電極の近くの材料に印加し、前記プラズマの印加により、前記分子コードを前記材料にグラフトする、電極と、
を備える、材料表面処理システム。
[2]
前記材料に係合するように構成される接地ロールを更に備え、前記材料は、前記プラズマが前記接地ロールに引き寄せられる際に、前記電極から放出された前記プラズマに供され、前記接地ロールは、基準電圧に電気的に接続される、項目1に記載の材料表面処理システム。
[3]
前記材料の1つ以上の性質は、前記プラズマを印加する結果として改変される、項目1に記載の材料表面処理システム。
[4]
前記材料は、ポリマー、合成織布及び/又は不織布、天然繊維織布、フィラメント、糸、エラストマー、又は金属のうちの1つである、項目1に記載の材料表面処理システム。
[5]
前記イオン化プロセスガスは、ヒドロキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、又はアミンを形成する、項目1に記載の材料表面処理システム。
[6]
非イオン化プロセスガスが前記気化器に導入され、前記気化器は、前記非イオン化プロセスガス及び前記分子溶液を加熱して、前記非イオン化プロセスガス及び前記分子溶液を結合又は蒸発させる加熱器を備える、項目1に記載の材料表面処理システム。
[7]
前記電極は、プラズマ電極又はコロナ電極のうちの一方を含む、項目1に記載の材料表面処理システム。
[8]
前記電極は、電流を提供して前記電極を活性化するように構成される電力源に接続される、項目1に記載の材料表面処理システム。
[9]
前記材料は、巻かれたウェブである、項目1に記載の材料表面処理システム。
[10]
前記材料は、平坦な構造体である、項目1に記載の材料表面処理システム。
[11]
前記材料は、多面体である、項目1に記載の材料表面処理システム。
[12]
平坦な物体の処理を行うように構成される材料表面処理システムであって、
分子コードを含む溶液を受け取る気化器であって、前記分子コードを有する蒸気を生み出す、気化器と、
イオン化プロセスガス及び前記蒸気から構成されるプラズマを生み出すように放電を発生させる電極と、
前記平坦な物体を前記電極に向かって搬送して、前記プラズマを前記電極の近くの前記平坦な物体の材料に印加する1つ以上のローラーであって、前記プラズマの印加により、前記分子コードを前記材料にグラフトする、1つ以上のローラーと、
を備える、材料表面処理システム。
[13]
前記材料に対して前記電極の反対側に接地ブロックを更に備え、前記材料は、前記プラズマが前記接地ブロックに引き寄せられる際に、前記電極から放出された前記プラズマに供され、前記接地ブロックは、基準電圧に電気的に接続される、項目12に記載の材料表面処理システム。
[14]
前記材料の1つ以上の性質は、前記プラズマを印加する結果として改変される、項目12に記載の材料表面処理システム。
[15]
不均一な幾何学形状を有する物体の処理を行うように構成される材料表面処理システムであって、
分子コードを含む溶液を受け取る気化器であって、前記分子コードを有する蒸気を生み出す、気化器と、
イオン化プロセスガス及び前記蒸気から構成されるプラズマを生み出すように放電を発生させる電極と、
前記プラズマを前記電極の近くの前記物体の材料に印加するノズルであって、前記プラズマの印加により、前記分子コードを前記材料にグラフトする、ノズルと、
を備える、材料表面処理システム。
[16]
前記電極は、本体内に延在する、項目15に記載の材料表面処理システム。
[17]
前記本体内に配置され、前記蒸気を受け取るように構成される第1の容積部と、1つ以上の誘電体素子を含む第2の容積部との間の部分的な障壁としての役割を果たすフィルターを更に備える、請求項16に記載の材料表面処理システム。
[18]
前記第2の容積部は、前記蒸気を前記電極と前記誘電体素子との間の放電に供することにより前記プラズマを生み出すように構成される、項目17に記載の材料表面処理システム。
[19]
前記材料の周りの前記ノズルの移動により前記分子コードを適用するように構成される非直線状のコンベヤを更に備える、項目15に記載の材料表面処理システム。
[20]
前記電極は、プラズマ電極又はコロナ電極のうちの一方を含む、項目15に記載の材料表面処理システム。